特許第6356780号(P6356780)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6356780
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】セミフッ化炭素化合物含有造影剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 49/18 20060101AFI20180702BHJP
   A61K 47/14 20060101ALI20180702BHJP
   A61B 5/055 20060101ALI20180702BHJP
【FI】
   A61K49/18
   A61K47/14
   A61B5/055 383
【請求項の数】24
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2016-504568(P2016-504568)
(86)(22)【出願日】2014年3月18日
(65)【公表番号】特表2016-515553(P2016-515553A)
(43)【公表日】2016年5月30日
(86)【国際出願番号】EP2014055398
(87)【国際公開番号】WO2014154531
(87)【国際公開日】20141002
【審査請求日】2017年3月1日
(31)【優先権主張番号】13160868.9
(32)【優先日】2013年3月25日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508240177
【氏名又は名称】ビー.ブラウン メルズンゲン アーゲー
【氏名又は名称原語表記】B.BRAUN MELSUNGEN AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】特許業務法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ケラー,トルステン
(72)【発明者】
【氏名】レスライン,ドリス
(72)【発明者】
【氏名】シュミット,ユルゲン
(72)【発明者】
【氏名】ディエトリッヒ,トール
(72)【発明者】
【氏名】スタボーウィー,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】フレック,エッカート
【審査官】 深草 亜子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/093113(WO,A1)
【文献】 特開2004−035572(JP,A)
【文献】 特表2007−526245(JP,A)
【文献】 特表2005−536537(JP,A)
【文献】 Nature Biotechnology,2005年,Vol.23,p.983-987
【文献】 Eur.J.Pharm.Sci.,2011年,Vol.42,416-422
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 49/00−49/22
CA/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)式Iで表されるセミフッ化化合物:
CF−(CF)x−(CH)y−CH (I)
(式中、xは1乃至8の整数を表し、及びyは2乃至10の整数を表す。)
b)20℃にて前記セミフッ化化合物と混和可能である、トリグリセリド;及び
c)乳化剤、
を含む水性エマルション。
【請求項2】
前記セミフッ化化合物が、ペルフルオロヘキシルオクタン(F6H8)及び/又はペルフルオロブチルペンタン(F4H5)である、請求項1に記載のエマルション。
【請求項3】
前記セミフッ化炭素化合物a)及び前記トリグリセリドb)の量が、エマルションの総質量に基いて、5乃至40質量%範囲である、請求項1又は請求項2に記載のエマルション。
【請求項4】
前記セミフッ化炭素化合物a)及び、前記トリグリセリドb)の量が、エマルションの総質量に基いて、10乃至30質量%の範囲である、請求項3に記載のエマルション。
【請求項5】
前記セミフッ化炭素化合物a)及び、前記トリグリセリドb)の量が、エマルションの総質量に基いて、15乃至25質量%の範囲である、請求項4に記載のエマルション。
【請求項6】
前記トリグリセリドb)が中鎖トリグリセリドである、請求項3乃至請求項5のうちいずれか一項に記載のエマルション。
【請求項7】
前記セミフッ化炭素化合物a)と前記トリグリセリドb)の質量比が、1:20乃至1:0.20範囲である、請求項1乃至請求項のうち何れか一項に記載のエマルション。
【請求項8】
前記セミフッ化炭素化合物a)と、前記トリグリセリドb)の質量比が、1:15乃至1:0.25の範囲である、請求項7に記載のエマルション。
【請求項9】
前記セミフッ化炭素化合物a)と、前記トリグリセリドb)の質量比が、1:10乃至1:0.30の範囲である、請求項8に記載のエマルション。
【請求項10】
前記セミフッ化炭素化合物a)と、前記トリグリセリドb)の質量比が、1:4乃至1:0.35の範囲である、請求項9に記載のエマルション。
【請求項11】
前記セミフッ化炭素化合物a)と、前記トリグリセリドb)の質量比が、1:2乃至1:0.4の範囲である、請求項10に記載のエマルション。
【請求項12】
前記トリグリセリドb)が中鎖トリグリセリド(MCT)である、請求項7乃至請求項11のうちいずれか一項に記載のエマルション。
【請求項13】
造影剤(contrast agent)又はコントラスト増強剤(contrast enhancing agent)としての使用のための、請求項1乃至請求項12のうち何れか一項に記載のエマルション。
【請求項14】
MR技術を利用するイメージング法を用いる、診断検出(the diagnostic
detection)のためのコントラスト増強剤又は造影剤としての使用のための、請求項1乃至請求項13のうち何れか一項に記載のエマルション。
【請求項15】
19F同位体の核磁気共鳴測定に基づくイメージング法を用いる、梗塞の周辺の炎症反応心筋梗塞、脳卒中;臓器の炎症心筋炎、脳炎、髄膜炎;消化管の炎症クローン病;血管の炎症、動脈硬化不安定プラーク;膿瘍並びにまた関節炎の検出、からなる群から選択される炎症過程の、診断検出における使用のための、請求項1乃至請求項13のうち何れか一項に記載のエマルション。
【請求項16】
心筋、動脈及び静脈等の心血管系;脳卒中又は腫瘍などの神経学で見られる血管系の炎症及び変性過程に至る、心筋梗塞、心筋炎、アテローム性動脈硬化症、及び血栓症のような疾患経過に生ずる炎症反応;血栓症、炎症、サルコイドーシス等の呼吸器系学(pulmology;プルモロジー);腫瘍、クローン病等の炎症性腸疾患などの消化器病学;及び高安動脈炎などの血管の自己免疫疾患などのリウマチ学の、非侵襲のイメージング法に基づく、診断検出における使用のための、請求項1乃至請求項13のうち何れか一項に記載のエマルション。
【請求項17】
磁気共鳴イメージング法におけるコントラスト増強剤又は造影剤である、請求項1乃至請求項13のうち何れか一項に記載のエマルション
【請求項18】
請求項1乃至請求項17のうち何れか一項に記載のエマルションを製造する方法であって、
a) ・式Iで表されるセミフッ化化合物
CF−(CF)x−(CH)y−CH (I)
(式中、xは1乃至8の整数を表し、及びyは2乃至10の整数を表す。)
・20℃にて前記セミフッ化化合物と混和可能である、トリグリセリド;
・乳化剤;及び
・水
を混合することにより、混合物を調製する工程;
b) 工程a)にて得られた混合物を均質化させる工程;及び
c) 所望によりエマルションを殺菌する工程
を含む方法。
【請求項19】
以下の工程を含む、請求項18に記載の方法。
a)
a−1)水及び乳化剤を含む混合物を調製する工程、
a−2)セミフッ化化合物及びトリグリセリドを含有する均質化混合物を調製する工程、a−3)工程a−1)で得られた混合物を工程a−2)で得られた混合物と組み合わせる工程により混合物を調製する工程;及び
b)工程a)で得られた混合物を均質化させる工程
【請求項20】
前記b)工程が、工程a)で得られた混合物を高圧ホモジナイザーで均質化させる工程である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
請求項1乃至請求項17のうち何れか一項に記載のエマルション中
式I:
CF−(CF)x−(CH)y−CH (I)
(式中、xは1乃至8の整数を表し、及びyは2乃至10の整数を表す。)
で表されるセミフッ化化合物を検出する方法であって、
該方法は、
−交流磁場を照射する工程、
−検査される試料による照射された磁場の吸収を検出する工程;を含み、
前記交流磁場の周波数がH・40.05650MHz/T乃至H・40.06150MHz/T(Hはテスラによる磁場の強さを表す)の間であることを特徴とする、
方法。
【請求項22】
検査される試料中で、
請求項1乃至請求項17のうち何れか一項に記載のエマルション中の式I:
CF−(CF)x−(CH)y−CH (I)
(式中、xは1乃至8の整数を表し、及びyは2乃至10の整数を表す。)
で表されるセミフッ化化合物を検出する方法であって、
該方法は以下の方法工程:
−交流磁場を照射する工程、
−検査される試料による照射された磁場の吸収を検出する工程;
を含み、
以下の方法工程:
−少なくともひとつの19F−フッ素プロトンイメージを、Hプロトンイメージ上に重ねあわせる工程
(ここで、Hプロトンイメージをグレースケールイメージで表示し、
19Fフッ素イメージをカラーグラデーション(色勾配)を用いて表示し、
このカラーグラデーション(色勾配)の一端が低濃度の19Fを示し、
このカラーグラデーション(色勾配)のもう一端が高濃度の19Fを示す)
を特徴とする、方法。
【請求項23】
−検査されない第二試料中の19Fフッ素プロトンにより励起された妨害シグナル(信号)を、以下の方法工程:
− 第一ピクセル(画素)中のフッ素濃度の値を、この第一ピクセル周囲の三次元空間における全ピクセルの値と比較する工程、
(ここで、2つの隣接したピクセルのフッ素濃度値の間の相違が閾値を下回る場合、これ
ら2つのピクセルはピクセルのクラスタ(一群)に属するとみなされる。)
− 前記クラスタが検査される試料を示すものでない場合、この妨害ピクセルクラスタを得られたイメージから除去する工程;
により除外する工程を含むことを特徴とする、
請求項22に記載の方法。
【請求項24】
者の血流内に溶解するように事前に投与され非侵襲性のイメージング法により画像を獲得するための、請求項1乃至請求項17のうち何れか一項に記載のエマルション
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定のセミフッ化炭素化合物、中鎖トリグリセリド(MCT)及び乳化剤を含有する水性エマルション、並びに、前記エマルションの造影剤又はコントラスト増強剤としての使用に関する。さらに本発明は、MRイメージングを用いた炎症病的状態を診断検出するための前記エマルションの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
炎症性疾患は、世界規模での罹患率及び死亡率の極めて重大な原因である。急性炎症性疾患(大部分は病原菌によって引き起こされる)のための、効果的な診断法及び治療法は多くの場合に存在するものの、慢性炎症性疾患の診断は最も難しく、そしてそれらの治療は、症状の対策に限られる。例えば心エコー検査、コンピュータ断層撮影法、及び核磁気共鳴分光法などの非侵襲イメージング法(画像法)は、詳細な解剖学的情報を提供し、そして、それにより、臓器の機能を評価するための有益な方法である。しかしこれまで、高い空間分解能にて、明瞭に炎症過程を検出する方法は挙げられていない。
【0003】
ネイチャーバイオテクノロジー(vol.23,No.8、2005年8月、p983−987)において、アレンスらは、免疫療法細胞の追跡方法を記載する。ペルフルオロ−15−クラウン−5エーテルの核磁気共鳴画像法(MRI)により、生体内で、免疫療法の関連性を有する細胞の検出を試みている。彼らは、生体外でペルフルオロ−15−クラウン−5エーテルでチャージさせた樹枝状細胞を用いた。その後、マウス組織内への注射後、或いは、マウスの血管内注射後に、それらの結末を生体内で検査した。国際公開第2005/072780号及び国際公開第03/075747号は、類似の試験に関する。メディカ ムンディ(47/1、2003年4月、p.34−39)において、G.M.ランザらは、標的細胞のための常磁性ナノ粒子の使用を記載する。この方法において、常磁性ナノ粒子は、H磁気共鳴イメージのシグナル(信号)消滅を生じさせるために使用される。19Fでチャージされたビヒクルが、プローブとして使用される。
【0004】
国際公開第2005/072780号は、ペルフルオロ炭素を用いた単離(分離)細胞の生体外ラベリング(標識化)に関する。生体外にてペルフルオロ炭素でラベルされた単離細胞は、注射(投与)後に生体内での細胞の移行を研究するのに適している。オク、ナオトら(バイオキミカ エト バイオフィジカ アクタ 1280(1996)、149−154)は、“リポソーム型トラフィッキング(輸送)”の研究のための、18F−ラベル化グルコースでチャージしたリポソームの使用に関する。該研究は、PET診断法にて実施される。
【0005】
米国特許公開第2009−0280055号公報は、イメージング法に使用する診断目的のペルフルオロオクチルブロミドの使用を開示する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、イメージング法により、炎症過程等の、特に病的状態の可視化を可能にする方法、そしてそれにより、病変部位の認識を可能にする方法を提供することを目的とする。
【0007】
本発明のさらなる目的は、心血管疾患の特異診断のための、特に、心血管系の炎症過程の診断のための、より特に、心筋炎又は炎症性心筋症の診断のための、フッ化炭素ベースの診断薬の提供である。
【0008】
本発明のさらなる目的は、磁気共鳴分光法に使用可能であり、そして殺菌などのストレス条件下であっても安定に保存できる、生体適合性の水中油型エマルションの提供である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第一の態様は、
a)式Iで表されるセミフッ化化合物:
CF−(CF)x−(CH)y−CH (I)
(式中、xは1乃至8の整数を表し、及びyは2乃至10の整数を表す。)
b)20℃にて前記セミフッ化化合物と混和可能である、トリグリセリド;及び
c)乳化剤、
を含む水性エマルションである。
【0010】
本発明のさらなる具体的な態様は、
a)式Iで表されるセミフッ化化合物:
CF−(CF)x−(CH)y−CH (I)
(式中、xは1乃至8の整数を表し、及びyは2乃至10の整数を表す。)
b)中鎖トリグリセリド(MCT);及び
c)乳化剤、
を含む水性エマルションである。
【0011】
本発明のエマルションは、好ましくは、セミフッ化化合物を必須に含有する、水中油型エマルションである。
【0012】
本発明で意味するところのセミフッ化化合物は、セミフッ化アルカン類である。セミフッ化アルカン類は、フッ化炭素及び炭化水素部分を含む。一般に、セミフッ化アルカン類は、以下の命名法に従う:FXHY、式中、Xはフッ素原子で置換された炭素原子の数を表し、Yは水素原子で置換された炭素原子の数を表す。例えば、ペルフルオロヘキシルオクタンは、式:F6H8で表される。
【0013】
F6H8は、下記式で示される。
【化1】
【0014】
本発明のエマルションに適するセミフッ化化合物は、式(I)に反映される。
CF−(CF)x−(CH)y−CH (I)
(式中、xは1乃至8の整数を表し、及びyは1乃至10の整数を表す。)
【0015】
一実施態様において、式(I)中のxは、2乃至6の範囲、好ましくは3乃至6の範囲、より好ましくは4乃至6の範囲であり、特にxは5である。
【0016】
さらに好ましい実施態様において、式(I)中のyは、2乃至9の範囲、好ましくは3乃至8の範囲、より好ましくは5乃至8の範囲、さらに好ましくは6乃至8の範囲であり
、特にyは7である。
【0017】
イメージング(画像)の観点から良好な結果及びエマルションの安定性は、式中のyがxより大きい値である式(I)で表されるセミフッ化化合物を用いて達成可能である。
【0018】
特に好ましいセミフッ化化合物は、ペルフルオロヘキシルオクタン(F6H8)及び/又はペルフルオロブチルペンタン(F4H5)である。
【0019】
さらなる本発明の成分は、20℃でセミフッ化化合物と混和可能である、トリグリセリド(以下化合物b)ともいう)である。
【0020】
本発明の目的の範囲内にて、温度20℃の場合に、前記トリグリセリド(成分b))は、セミフッ化化合物(成分a))と混和可能であり、そして混合及びその後の20℃で24時間保存後に、成分a)と成分b)が別の連続相を形成しない。
【0021】
好ましい実施態様において、成分b)は成分a)と任意の比率にて混和可能である。特に、成分a)と成分b)は、質量比にて、成分a)と成分b)が1:20乃至1:0.7、好ましくは1:15乃至1:0.8、より好ましくは1:10乃至1:0.9、さらに好ましくは1:4乃至1:1、特に1:2乃至1:1で、混和可能である。
【0022】
別の実施態様において、成分a)と成分b)の質量比は、1:20乃至1:0.20、好ましくは1:15乃至1:0.25、より好ましくは1:10乃至1:0.30、さらに好ましくは1:4乃至1:0.35、特に1:2乃至1:0.4である。
【0023】
好ましい実施態様において、セミフッ化化合物と混和可能なトリグリセリドは、中鎖トリグリセリド(MCT)である。
【0024】
具体的な実施態様において、成分a)、好ましくはF6H8と、MCTの質量比は、4:1乃至1:4の範囲、特に3:2乃至2:3の範囲である。
【0025】
本明細書に記載の水性エマルションにおける油は、好ましくは中鎖トリグリセリドを含む。“中鎖トリグリセリド”(MCTs)は、天然由来の或いは合成であり得るトリグリセリド油の分類(クラス)である。MCTsは炭素原子数6乃至14、好ましくは炭素原子数6乃至12、特に炭素原子数8乃至10の長さの脂肪酸から形成される。MCTは、カプリル酸(例えば、MCTの約50質量%乃至約80質量%の量で)、すなわち8−炭素飽和FA(脂肪酸)(8:0)を含み得る。MCTは、カプリン酸(例えば、MCTの約20質量%乃至約50質量%の量で)、すなわち10−炭素飽和FA(脂肪酸)(10:0)を含み得る。例えば中鎖トリグリセリドは、中鎖トリグリセリドの少なくとも90質量%の量で、カプリル酸及びカプリン酸のトリグリセリドを含み得る。この開示において使用するMCTの説明は、例えば、EPモノグラフ(ヨーロッパ薬局方論文)0868、表題“トリグリセリド、中鎖”(トリグリセリド飽和媒体(Triglycerida
saturate media)(ヨーロッパ薬局方0868、2008)の要件を満たし得る。
【0026】
本発明のさらなる態様によれば、中鎖トリグリセリド(MCT)は、以下に規定されるカルボン酸でエステル化されたグリセロールである:カプロン酸 2質量%以下の量;カプリル酸 約50乃至約80質量%の範囲の量;カプリン酸 約20乃至約50質量%の範囲の量;ラウリン酸 3質量%以下の量;ミリスチン酸 1質量%以下の量 (質量%は脂肪酸の総質量に基づく)。
【0027】
中鎖トリグリセリド(MCT)は、セミフッ化化合物にとって優れた溶媒である。本発明によれば、一種以上のMCT’sが使用され得る。MCTは、例えばミグリオール(Miglyol)812(サソール(SASOL)ゲーエムベーハー、ドイツ)、或いは、クロダモール(CRODAMOL)GTCC−PN(クローダ(Croda)インク、ニュージャージー)として市販されている。
【0028】
本発明の別の好ましい実施態様によれば、エマルションは、7、9及び11の炭素原子を有する脂肪酸の群から選択される脂肪酸を少なくとも50質量%含む脂肪酸でエステル化されたグリセロールで構成されるMCTを含む。好ましくはトリヘプタノイン(tripheptanoin)である。
【0029】
本発明のエマルションにおけるトリグリセリドb)、好ましくは、中鎖トリグリセリドの量は、エマルションの総質量に基いて、2乃至40質量%、好ましくは5乃至25質量%、そして最も好ましくは8乃至18質量%(wt%)の範囲であり得る。
【0030】
本発明の好ましい態様において、セミフッ化化合物a)、及びトリグリセリドb)、好ましくは中鎖トリグリセリドの量は、エマルションの総質量に基いて、5乃至40質量%、好ましくは10乃至30質量%、特に15乃至25質量%、とりわけ18乃至22質量%の範囲、例えば約20質量%である。
【0031】
セミフッ化炭素化合物a)対トリグリセリド、好ましくは中鎖トリグリセリド(MCT)との質量比を、1:20乃至1:0.7、好ましくは1:15乃至1:0.8、より好ましくは1:10乃至1:0.9、より好ましくは1:4乃至1:1、特に1:2乃至1:1の範囲、例えば約1:1.5とした場合、セミフッ化化合物の高い濃度と非常に長期間の安定性との優れたバランスを獲得できる。
【0032】
別の実施態様において、成分a)と成分b)sの質量比は1:20乃至1:0.20、好ましくは1:15乃至1:0.25、より好ましくは1:10乃至1:0.30、さらに好ましくは1:4乃至1:0.35、特に1:2乃至1:0.4である。
【0033】
本発明のエマルションは、セミフッ化化合物及び好ましくは中鎖トリグリセリド(MCT)を含む。本発明の一態様によれば、エマルションの油成分は、20℃で均質(均一)な溶液を形成する。MCTとF6H8などのセミフッ化化合物は20℃で混和可能であり、そのため均質な溶液を形成する。油相は、植物油又は魚油等のマリンオイルに基づく長鎖脂肪酸トリグリセリドなどのさらなる油成分を含み得る。さらなる油成分の量は、好ましくは、完全に混和可能な油相が維持できるように調整される。一般に、セミフッ化化合物とトリグリセリドb)、好ましくはMCTとは異なる油成分の量は、50質量%未満、好ましくは40質量%未満、より好ましくは30質量%未満、さらに好ましくは20質量%未満、特に10質量%未満、とりわけ5質量%未満であり、或いは本質的に含まれておらず、ここで量は油成分の総質量に基づく。
【0034】
本発明のエマルション中のMCTと長鎖トリグリセリド(LCT)の質量比は、一般に、1:1乃至10000:1 又はそれ以上の範囲、好ましくは、3:2乃至1000:1の範囲、より好ましくは3:1乃至500:1の範囲、特に5:1乃至200:1である。
【0035】
本発明のエマルション中に存在し得、そしてMCTとは異なる油は、“長鎖トリグリセリド”(LCT)から選択され得る。
【0036】
特定の実施態様において、油は植物油を含み得る。“植物油”は種又は木の実由来の油
を言及する。植物油は、概して、3つの脂肪酸(油源に応じて、通常14乃至22の炭素鎖長であり、種々の数と位置に不飽和結合を有する)が、グリセロールの3つのヒドロキシ基とのエステル結合を形成する際に形成される、“長鎖トリグリセリド”(LCTs)である。特定の実施態様において、高精製グレード(“超精製”とも呼ばれる)の植物油は、安全性と水中油型エマルションの安定性を確保するために使用される。特定の実施態様において、植物油の制御された水素化により製造される水素化(水添)植物油が、使用され得る。
【0037】
典型的な植物油としては、但し限定されないが、アーモンド油、ババス油、クロフサスグリ種油、ルリジサ油、キャノーラ油、ひまし油、ココナッツ油、コーン油、綿実油、オリーブ油、ピーナッツ油、ヤシ油、パーム核油、菜種油、紅花油、大豆油、ひまわり油、及びごま油が挙げられる。これら油の水素化及び/又は、或いは、部分水素化形態もまた使用され得る。特定の実施態様において、油はさらに紅花油、ごま油、コーン油、オリーブ油及び/又は大豆油を含む。より特定の実施態様において、油はさらに紅花油及び/又は大豆油を含む。
【0038】
油が更に大豆油を含む特定の実施態様において、大豆油は9乃至13%のパルミチン酸含量(wt./wt)、2.5%乃至5%のステアリン酸含量、17%乃至30%のオレイン酸含量、48%乃至58%のリノール酸含量、及び5%乃至11%のリノレン酸含量を有し得る。
【0039】
さらに、特定の実施態様において、本発明の水性エマルションは、構造化トリグリセリドを含み得る。本明細書において使用される“構造化トリグリセリド”は、6乃至12の炭素原子の炭素鎖長を有する少なくとも1つの脂肪酸群と、12より多い炭素単位の炭素鎖長を有する少なくとも1つの脂肪酸群とを有する、トリグリセリド又はトリグリセリドの混合物を含む、トリグリセリドである。
【0040】
本発明のエマルションのさらなる成分は、乳化剤である。好ましくは、乳化剤は、リン脂質、脂肪酸塩などの両性及びイオン性界面活性剤からなる群から選択される。
【0041】
乳化剤はエマルション中に、エマルションの総質量に基いて、最大10wt%までの量で、好ましくは0.5乃至5質量%の量で存在し得る。
【0042】
好ましくは、乳化剤はリン脂質又はリン脂質の混合物である。
【0043】
一態様において、乳化剤は、レシチン、好ましくは天然に存在するレシチン、例えば大豆レシチン、エッグレシチン、ひまわり油レシチン、スフィンゴシン、ガングリオシド、フィトスフィンゴシン、及びそれらの組み合わせを含み得る。レシチンの制御された水素化生成物などの水素化レシチンもまた、乳化剤において更に使用され得る。
【0044】
本発明において有用な例示リン脂質としては、但し限定されないが、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、リゾ−ホスファチジルコリン、及びそれらの混合物が挙げられる。組成物のリン脂質成分は、一種のリン脂質或いは数種のリン脂質の混合物であり得る。非経口投与、特に静脈内投与が可能であれば、使用されるリン脂質は、天然物又は合成物としてよい。
【0045】
完全に網羅しているわけではないが、乳化剤中に更に存在し得る好適なリン脂質の一覧を以下に示す:1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスファチジン酸、ナトリウム塩(DMPA、Na)、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスファチジン酸、ナトリウム塩(DPPA、Na)、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ
−3−ホスファチジン酸、ナトリウム塩(DSPA、Na)等のホスファチジン酸類;1,2−ジラウロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DLPC)、1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DMPC)、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DPPC)、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DSPC)等のホスホコリン類;1,2−ジラウロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(DLPE)、1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(DMPE)、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(DPPE)、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(DSPE)等のホスホエタノールアミン類;1,2−ジラウロイル−sn−グリセロ−3−ホスホグリセロール、ナトリウム塩(DLPG、Na)、1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスホグリセロール、ナトリウム塩(DMPG、Na)、1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−sn−1−グリセロール、アンモニウム塩(DMP−sn−1−G、NH4)、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホグリセロール、ナトリウム塩(DPPG、Na)、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホグリセロール、ナトリウム塩(DSPG、Na)、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−sn−1−グリセロール、ナトリウム塩(DSP−sn−1G、Na)等のホスホグリセロール類;1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−L−セリン、ナトリウム塩(DPPS、Na)等のホスホセリン類;1−パルミトイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(POPC)、1−パルミトイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホグリセロール、ナトリウム塩(POPG、Na)、1−パルミトイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホグリセロール、アンモニウム塩(POPG、NH4)、等の混合鎖リン脂質;1−パルミトイル−2−リゾ−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(P−リゾ−PC)、1−ステアロイル−2−リゾ−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(S−リゾ−PC)等のリゾリン脂質;N−(カルボニル−メトキシポリエチレングリコール2000)−MPEG−2000−DPPE、ナトリウム塩、N−(カルボニル−メトキシポリエチレングリコール5000)−MPEG−5000−DSPE、ナトリウム塩、N−(カルボニル−メトキシポリエチレングリコール5000)−MPEG−5000−DPPE、ナトリウム塩、N−(カルボニル−メトキシポリエチレングリコール750)−MPEG−750−DSPE、ナトリウム塩、N−(カルボニル−メトキシポリエチレングリコール2000)−MPEG−2000−DSPE、ナトリウム塩等のペグ化リン脂質。
【0046】
一実施態様において、本発明のエマルション中のリン脂質の量は、組成物の総質量に基いて、0.1乃至30質量%の範囲内である。特定の実施態様において、リン脂質は、0.5乃至15質量%、例えば0.8乃至10質量%、例えば1乃至5質量%の範囲内で存在し得る。
【0047】
例示的な実施態様において、本発明の水性エマルション中のリン脂質の量は、エマルションの総質量に基いて、最大10質量%(wt%)まで、好ましくは0.5乃至5質量%である。
【0048】
一実施態様において、乳化剤は、60−80%wt/wt、例えば67%wt/wtのホスファチジルコリン;10−20%wt/wt、例えば15%wt./wtのホスファチジルエタノールアミン;<=3%wt/wt、例えば2%wt/wtのスフィンゴミエリン;そして<=3%wt/wt、例えば1%wt/wtのリゾホスファチジルコリンを含む、エッグレシチンを含む。
【0049】
“エッグレシチンPL90”(フレゼニウス カービ アーベー)は上記リン脂質含量内容を有するエッグレシチンの一例である。
【0050】
特に、優れた結果は、
約80乃至約85wt%のホスファチジルコリン;
約7.0乃至約9.5wt%のホスファチジルエタノールアミン;
3wt%未満のリゾホスファチジルコリン;
0.5wt%未満のリゾホスファチジルエタノールアミン;及び
約2乃至約3%wt%のスフィンゴミエリン
を含む、レシチンを含有する乳化剤にて達成され得る。
【0051】
本発明の好ましい実施態様によれば、乳化剤は、リン脂質及び糖脂質の混合物を含む。驚くべきことに、リン脂質と糖脂質の混合物が、さらに高温(40℃)でのエマルションの保存安定性を改善することが見出された。特に、これら混合物は、エマルションの殺菌といったストレス条件下であってもエマルションを安定化させる。本発明のエマルションは、通常、例えば回転式オートクレーブ中、圧力2barにて、121℃で15分間殺菌される。
【0052】
糖脂質は、炭水化物が結合した脂質である。糖脂質は一種以上のモノ或いはオリゴサッカリド(単糖類)が脂質に結合されてなる、リンを含まない細胞膜の膜脂質である。該脂質は、エステル結合を介してグリセロールと結合するか、アミド結合を介してスフィンゴシンと結合する脂肪酸である。
【0053】
好ましい実施態様において、本発明のエマルションはさらに糖脂質を含有し、好ましくは、モノガラクトシルジグリセリド、又は、スフィンゴ糖脂質、又は、セレブロシドなどのグリセロ糖脂質から選択される。
【0054】
好ましい実施態様において、糖脂質及びリン脂質の合計総質量に基いて、糖脂質は5乃至30wt%、好ましくは10乃至28wt%の量である。リン脂質と糖脂質の混合物は、リポイドゲーエムベーハー、ドイツからLipoid S 75として市販されている。
【0055】
特に好ましい実施態様において、乳化剤は、約68乃至約73質量%のホスファチジルコリン;約7乃至10質量%のホスファチジルエタノールアミン;約3質量%未満のリゾホスファチジルコリン;及び約14乃至約25質量%の糖脂質を含む(全ての質量は、糖脂質及びリン脂質の合計総質量に基づく)。
【0056】
エマルションは、好ましくは、0.5乃至5質量%、より好ましくは1.0乃至4.0質量%の乳化剤を含む(量はエマルションの総質量に基づく)。
【0057】
本発明のエマルションは、好ましくは、水相が連続相であり、油相が非連続相である、水中油型エマルションである。
【0058】
上述したように、本発明の水中油型エマルションは、さらに、水性媒体を含む。“水性媒体”又は“水相”は、水を含有する液体を言及する。いくつかの実施態様において、水性媒体は水及び/又は水性緩衝溶液である。
【0059】
本発明の水性エマルション、好ましくは水中油型エマルションは、エマルションの総質量に基いて、70乃至98wt%、好ましくは70乃至90wt%の水を含み得る。
【0060】
いくつかの実施態様において、エマルションは、0乃至4mM、好ましくは0.5乃至3mMの生理学的適合性の緩衝液を含み得る。
【0061】
いくつかの実施態様において、本発明による水性エマルションは、所望により、補助界面活性剤を含む。本発明のエマルションにおける使用に適する補助界面活性剤は、脂質エマルションの凝集及び/又は合体を防止するものである。例示的な補助界面活性剤は、但し限定されないが、コレステロール、オレイン酸、オレイン酸塩、トゥイーン(Tween)80(モノオレイン酸PEG溶液)、HCO−60、ソルトール(Solutol)H15(ポリオキシエチレン−660−ヒドロキシステアレート)、PEG−400(ポリエチレングリコール)、プルロニック(Pluronic)(F68)(BASF)、クレモフォール(Cremophor)EL(ポリオキシエチレン−35−リシノレート)又は、デオキシコール酸などの胆汁酸の塩が挙げられる。他の実施態様において、補助界面活性剤は、例えば炭素原子数16乃至20の脂肪酸、それらの塩、及び/それらの混合物、或いは、炭素原子数18の脂肪酸、それらの塩、及び/又はそれらの混合物などの、炭素原子数12乃至22の脂肪酸、それらの塩、及び/又はそれらの混合物からなる群から選択される。特定の実施態様において、脂肪酸はモノ不飽和である。
【0062】
いくつかの実施態様において、補助界面活性剤は、0.005%以上、0.01%以上、或いは、0.02%以上の量(wt%)でエマルション中に存在し得る。これら任意の実施態様に従い、補助界面活性剤は、4%以下、1%以下、又は0.04%以下の量(wt%)で存在し得る。特定の実施態様において、補助界面活性剤は、パルミチン酸、オレイン酸又はステアリン酸等の長鎖脂肪酸、或いはそれらのアルカリ塩からなる群から選択される。オレイン酸塩及び/又はオレイン酸、特にオレイン酸ナトリウムが、特に好適な補助界面活性剤である。
【0063】
ある実施態様において、補助界面活性剤はオレイン酸塩及び/又はオレイン酸であり、補助界面活性剤は、0.005wt%以上、0.01wt%以上、又は0.02wt%以上の量(wt%)で存在し得る。これら任意の実施態様に従い、補助界面活性剤は、0.5wt%以下、0.2wt%以下、0.1wt%以下、又は0.05wt%以下の量(wt%)で存在し得る。特定の実施態様において、補助界面活性剤はオレイン酸ナトリウムであり、0.03wt%(0.3g/l)の量で存在する。本明細書に記載のエマルションは、非経口注入、例えば静脈注入に適し得る。特定の実施態様において、特定の補助界面活性剤の濃度は、従って、炎症、サイトクロームP450抑制等の副作用を防止するために最小量におさえられる。特定の実施態様において、プルロニックF68(ポリ(エチレングリコール)−13−ポリ(プロピレングリコール コ−プロピレングリコール)は、0.7wt%未満、或いは0.5wt%未満の量で存在する。別の特定の実施態様において、ソルトール−HS(マクロゴール−15−ヒドロキシステアレート)は1.2wt%未満の量で、又は1wt%未満の量で存在する。
【0064】
本発明の水中油型エマルションは、等張化剤を含み得る。前記等張化剤は、200−100mOsm/kg、好ましくは220乃至800mOsm/kg、特に250乃至600mOsm/kg範囲のオスモル濃度を有し得る。
【0065】
本発明の特定の実施態様に従い、エマルションは、等張及び等浸透圧であり得る。該組成物は、220−600mOsm/kg、又は230−360mOsm/kgのオスモル濃度を有し得る。
【0066】
好適な等張化剤としては、塩化カリウム又は塩化ナトリウム、トレハロース、スクロース、ソルビトール、グリセロール、グルコース、キシリトール、マンニトール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、アルブミン、アミノ酸及びそれらの混合物が挙げられる。特定の実施態様において、270乃至330mOsm/kg、例えば、280乃至300mOsm/kgのオスモル濃度が、浸透圧をも増加させる添加剤、例えばグリ
セロール、デキストロース、ラクトース、ソルビトール又はスクロールで獲得できる。
【0067】
一実施態様において、等張化剤は、生理学的適合性のポリオール、例えばグリセロール、ソルビトール又はキシリトールである。特定の実施態様において、等張化剤はグリセロールである。
【0068】
よって、さらなる本発明の態様によれば、エマルションはさらに等張化剤、好ましくはグリセロールを含有する。
【0069】
等張化剤は、エマルションの総質量に基いて、0.1乃至10wt%、好ましくは0.5乃至8wt%、より好ましくは1乃至5wt%の範囲の量で存在し得る。
【0070】
等張化剤は、一般に、有害な生物学的効果を有さず、但し、等浸透圧性及び/又は等張性組成物を提供するのに十分な量で使用される。グリセロールが等張化剤であるとき、グリセロールは、2乃至5%(wt%)、例えば2.1%乃至2.9%(wt%)、例えば2.3%乃至2.7%の量で存在し得る。特定の実施態様において、本発明のエマルションは、2.5%(25g/l)のグリセロールを含む。さらなる実施態様において、等張化剤は、エマルションの総質量に基いて、2.5wt%以上の量で存在する。
【0071】
いくつかの実施態様において、本発明によるエマルションは、pH6.0乃至pH9.0、例えばpH6.5乃至pH8.5、例えばpH7.5乃至8.5、例えば8.0乃至8.5の範囲内のpHを有する。別の実施態様において、pHは5.0乃至9.0の範囲である。組成物のpHは、例えば、脂肪酸のマイナス電荷を中和する適切な塩基の使用、適切な緩衝液、或いはそれらの組み合わせの使用といった従来技術の方法により調整し得る。種々の塩基及び緩衝液が、本発明のエマルションへの使用に適する。エマルションへの緩衝液の添加は、最終pHだけでなく、エマルションのイオン強度にも影響を与えることは、当業者であれば理解し得るであろう。高いイオン強度の緩衝液は、エマルションのゼータポテンシャルに対して負の影響を与え得、そのため望ましくない。特定の実施態様において、pHは水酸化ナトリウム、例えば0.1Nの水酸化ナトリウム或いは1Nの水酸化ナトリウムの添加により望ましい値に調整される。酸化過程に対して本発明のエマルションをさらに安定化させるために、抗酸化剤を存在させ得る。好ましい実施態様において、エマルションはさらに抗酸化剤、好ましくはα−トコフェロールを含む。
【0072】
本発明によるエマルションは、所望により、一種以上の薬物学的に許容される添加剤、例えば、酸性化剤、アルカリ化剤、結合剤、キレート剤、錯化剤、可溶化剤、消毒剤、防腐剤(抗菌剤及び抗酸化剤を含む)、懸濁化剤、安定化剤、湿潤剤、粘度変性剤、溶媒、抗凍結剤、希釈剤、潤滑剤、及びその他の生体適合性物質又は治療薬を含む。特定の実施態様において、前記添加剤は、エマルションのさらなる安定化、或いは、本発明のエマルションを生体適合化させる手助けをする。
【0073】
本発明の好ましい実施態様によれば、25℃での油相の密度は、特にトリグリセリドb)、好ましくはMCTと、セミフッ化化合物とからなる混合物の密度、0.9乃至1.1g/cmの範囲、より好ましくは、0.95乃至1.05g/cm、或いは約0.95乃至約1.10g/cmの範囲である。さらなる本発明の態様において、油相の密度は、水相の密度から10%以上、好ましくは5%以上、特に3%以上外れない。連続相である水相は全ての添加剤を含み、非連続相である油相は全ての成分を含む。
【0074】
優れた診断結果は、ナノ範囲の油滴サイズを有するエマルションを用いて実現できることが見出された。本発明の好ましい態様によれば、非連続相の粒子は、25℃での光子相関分光法(PCS)による測定で、好ましくは1乃至500nm、より好ましくは10乃
至400nm、さらに好ましくは50乃至350nmの範囲の平均粒子径を有する。
【0075】
本発明のさらなる実施態様は、本発明のエマルションの薬剤としての使用である。
【0076】
本発明のエマルション中に存在するセミフッ化化合物は、細胞が特異的にラベル化(標識化)されるように単球/マクロファージによって取り込まれ、イメージング法の診断に利用することが可能となることが見出された。驚くべきことに、特に心血管系の炎症過程及びリンパ節の可視化の診断可能性が見出された。
【0077】
よって、本発明のエマルションは、造影剤或いはコントラスト増強剤としての使用に適する。特に核磁気共鳴画像技術に対して、前記エマルションは、エマルションの前記セミフッ化炭素化合物が特に豊富であり、そして炎症組織に分布するために適している。
【0078】
本発明の別の態様は、MR−技術を利用するイメージング法を用いる、診断検出のためのコントラスト増強剤又は造影剤としての使用のための本発明のエマルションである。
【0079】
本発明のさらなる実施態様は、イメージング法、特に19F同位体の核磁気共鳴測定に基づくイメージング法を用いる、画像検出のための造影剤としての使用のための本発明のエマルションである。
【0080】
対応する測定値の評価とそれらのイメージへの変換は、例えば以下から分かるように、当業者に既知である:
ハッケ(Haacke)M E、ブラウン W R、トンプソン M R、フェンカセタン(Venkasetan)R:磁気共鳴イメージング−物理的原理及びシークエンス設計、ウィリー(Wiley)、ニューヨーク、1999;
ユ(Yu) J X、カディバカー(Kadibagkar)V D、クイ(Cui)W、マソン(Mason)R P.19F:磁気共鳴を用いる非侵襲的な生理学及び薬理学のための多目的レポーター;Curr Med Chem.12:819−48、2005;
ウェルニク(Wernick)M N、アーズボルド(Aarsvold)J N エミッショントモグラフィー:PET及びSPECTの基本、アカデミックプレス、ロンドン、2004。
【0081】
エマルションは特に炎症過程の検出に適する。本発明のさらなる態様によれば、エマルションは、19F同位体の核磁気共鳴測定に基づくイメージング法を用いる、梗塞の周辺の炎症反応、例えば心筋梗塞、脳卒中;臓器の炎症、例えば心筋炎、脳炎、髄膜炎;多発性硬化症;消化管の炎症、例えばクローン病;血管の炎症、例えば動脈硬化、特に不安定プラーク;膿瘍並びにまた関節炎の検出、からなる群から選択される炎症過程の、診断検出のためのものである。
【0082】
本発明の別の態様において、エマルションは、心筋、動脈及び静脈等の心血管系;脳卒中又は腫瘍などの神経学で見られる血管系の炎症及び変性に至る、心筋梗塞、心筋炎、アテローム性動脈硬化症、及び血栓症のような疾患経過に生ずる炎症反応;血栓症、炎症、サルコイドーシス等の呼吸器系学(pulmology;プルモロジー);腫瘍、クローン病等の炎症性腸疾患などの消化器病学;及び高安動脈炎などの血管の自己免疫疾患などのリウマチ学の、非侵襲のイメージング法に基づく、診断検出において使用される。
【0083】
本発明のさらなる実施態様は、患者の血流内に溶解するように、事前に本発明のエマルションを投与された患者に対する非侵襲の画像イメージング法を獲得する工程を含む方法に関する。
【0084】
好ましくは、非侵襲のイメージング法はMRイメージング法である。
【0085】
本発明の方法のさらなる好ましい態様において、イメージング法は、19F同位体又は19F同位体及びH同位体の核磁気共鳴の測定に基づく。
【0086】
フッ化化合物中の19F及び/又は18F同位体の存在は、既に知られており病院内で使用される装置、すなわち19F同位体を用いた核磁気共鳴分光法の使用及び/又は、18F同位体の陽電子放射分光法の使用における利点を可能にする。
【0087】
本発明によるエマルションの使用により、下記の病的状態を特に検出できる:
1)リンパ節及びその病的増大の可視化
a)リンパ節に直接影響を与えるガン:ホジキン病、非ホジキンリンパ腫;
b)腫瘍転移、例えば乳がんからの;
c)ウィルス及び細菌感染、例えば、梅毒、結核;
2)境界域の炎症反応
a)梗塞、例えば心筋梗塞、脳卒中;
b)腫瘍;
3)臓器の炎症:心筋炎、脳炎、髄膜炎(脳髄膜及び脊髄膜);
4)多発性硬化症;
5)消化管の炎症、例えばクローン病;
6)血管の炎症、例えば動脈硬化、特に所謂“不安定プラーク”;
7)膿瘍の検出;
8)関節炎の検出。
【0088】
本発明のエマルションは、通常、イメージング法を始める前に非経口投与される。好ましい実施態様において、エマルションは、静脈内又は関節内に投与される。
【0089】
本発明のさらなる態様は、炎症過程を検出する方法であって:
(a)本発明のエマルションを、それらを必要としている患者に投与する工程;及び
(b)前記患者におけるフッ素含有化合物をイメージングする工程;を含み、
前記炎症過程は、好ましくは下記からなる群から選択される:リンパ節に直接影響を与えるガン;境界域の梗塞又は腫瘍の炎症過程;臓器の炎症;多発性硬化症;消化管の炎症;血管の炎症;関節炎;及び膿瘍。
【0090】
本発明のさらなる実施態様は、以下の工程を含む本発明のエマルションを製造する方法である:
i)
a)式Iで表されるセミフッ化化合物
CF−(CF)x−(CH)y−CH (I)
(式中、xは1乃至8の整数を表し、及びyは2乃至10の整数を表す。)
b)20℃にて前記セミフッ化化合物と混和可能であるトリグリセリド、好ましくは中鎖トリグリセリド(MCT)及び
c)乳化剤、及び
d)水;
を含む混合物を提供する工程;及び
ii)前記混合物を均質化させる工程、好ましくは高圧ホモジナイザーで均質化させる工程;
iii)所望によりエマルションを殺菌する工程。
【0091】
さらなる別の態様において、前記製法は以下の工程を含む:
i)セミフッ化化合物をトリグリセリドb)、好ましくは中鎖トリグリセリドに溶解する工程;及び
ii)好ましくは乳化剤の存在下、水相中に油相を乳化させる工程。
【0092】
特定の実施態様によれば、前記水性組成物が油性組成物と組み合わせられる前に、該水性組成物は、均質化懸濁液を生成するように、均質化される。
【0093】
特定の実施態様において、均質化は、350bar以上、又は370bar以上にて、実施される。
【0094】
特定の実施態様において、エマルションを製造する方法は、乳化剤を(オイル中よりむしろ)水性媒体に溶解する工程、油相を水相に(その逆よりはむしろ)添加する工程、そして350bar以上で均質化させる工程を含む。これらの工程は、粒子サイズ並びにエマルションの安定性に関して有利な特性を有するエマルションにつながる。
【0095】
別の特定の実施態様において、エマルションは密封容器に詰められ、少なくとも121℃(例えば121℃乃至123℃)、最短15分間の保持時間の熱処理などにより、殺菌される。オートクレーブプログラムは回転周期であり得る。
【0096】
本発明のさらなる実施態様は、本発明のエマルションを含有するコンテナである。コンテナの材料は、好ましくは、ガラス及び有機ポリマー及びそれらの混合物からなる群から選択される。好ましい有機ポリマーは、ポリエチレン及び/又はポリプロピレンである。
【0097】
本発明の製造方法の好ましい実施態様において、前記方法は以下の工程を含む:
a)
a−1)水及び乳化剤を含む混合物を調製する工程、
a−2)セミフッ化化合物及びトリグリセリドを含有する均質化混合物を調製する工程、a−3)工程a−1)で得られた混合物を工程a−2)で得られた混合物と組み合わせる工程
により、混合物を調製する工程;及び
b)工程a)で得られた混合物を均質化させる工程であって、
好ましくは、工程a)で得られた混合物を高圧ホモジナイザーで均質化させる工程。
【0098】
本発明のエマルションを製造する方法の特に好ましい実施態様において、前記方法は、以下の工程を含む:
a)
a−1)エマルションの水溶性成分の混合物、好ましくは、水、乳化剤及び等張化剤を含む混合物、特に、水、リン脂質、オレイン酸ナトリウム及びグリセロールを含有する混合物を調製する工程、
a−2)エマルションの油溶性成分を含む均質化混合物、好ましくはセミフッ化化合物、トリグリセリド及び抗酸化剤を含む混合物、より好ましくは、F6H8、MCT及びα−トコフェロールを含有する混合物を調製する工程、
a−3)工程a−1)で得られた混合物を工程a−2)で得られた混合物と組み合わせる工程;
により混合物を調製する工程;
b)工程a)で得られた混合物を均質化してプレエマルションを調製する工程
c)工程b)で得られた混合物を高圧ホモジナイザーでさらに均質化する工程。
【0099】
驚くべきことに、工程b)及び工程c)において、好ましくは30乃至70℃、より好
ましくは40乃至60℃の温度範囲でエマルションを均質化することにより、最もよい結果が得られることが見出された。
【0100】
製造方法のさらに好ましい実施態様において、エマルションを、好ましくは、少なくとも121℃で最短15分間の加熱により殺菌する工程d)が提供される。
【0101】
エマルションの好ましい量及び成分は、本発明のエマルションとあわせて言及される。
【0102】
本発明のさらなる態様は、磁気共鳴断層撮影(トモグラフ)を実施する方法である。この方法において、交流磁場が照射され、検査される試料による照射された磁場の吸収が検出される。これら方法の工程は、磁気共鳴断層撮影の通常の操作に対応する。本発明の方法は、本発明のエマルション中の下記式I:
CF−(CF)x−(CH)y−CH (I)
(式中、xは1乃至8の整数を表し、及びyは2乃至10の整数を表す。)
で表されるセミフッ化化合物の検出に役立つ。
【0103】
本発明の方法は、交流磁場の周波数がB×40.045600MHz/T乃至B×40.065600MHz/T(Bはテスラによる磁場の強さである)であることを特徴とする。
【0104】
交流磁場に関して上述の周波数を得るために、下記の方法の工程が実施される:
【0105】
まず、交流磁場の周波数をB×40.05560MHz/Tで選択する。フッ素原子を含む未知化合物を検出するために、広い励起及び受信バンド幅(例えば+/−5kHz)が使用される。この励起バンドの中央は、フッ素原子のコアの励起周波数である(40.05560MHz/T)。この周波数は、ゼロ位置として定義される。
【0106】
励起の間、フッ素含有の未知化合物の特徴的なスペクトルが、特定のオフセット周波数で現れる。そうでない場合、選択されたバンド幅(例えば+/−5kHz)を広げる必要がある。
【0107】
特有のスペクトルが特定の周波数で検出された後、励起スペクトルを、適切なオフセット周波数の選択により、オフセット(補正)する。発明者らは、+/−100Hz乃至+/−10000Hzのオフセット周波数が適切であることを見出した。前記周波数の選択により、励起及び受信バンド幅を大幅に狭めることができ、よってノイズが低減でき、その結果、よりよい信号対雑音比が得られる。
【0108】
本発明のさらなる態様は、検査される試料中で、本発明のエマルション中の下記式I:CF−(CF)x−(CH)y−CH (I)
(式中、xは1乃至8の整数を表し、及びyは2乃至10の整数を表す。)
で表されるセミフッ化化合物を検出する方法に関する。この方法は、交流磁場が照射され、検査される試料による照射された磁場の吸収が検出される。これらの工程は、磁気共鳴断層撮影の通常の操作に対応する。
【0109】
本発明によれば、少なくともひとつの19Fフッ素プロトンイメージを、Hプロトンイメージ上に重ねあわせる。ここでHプロトンイメージは、グレイスケールイメージとして表示され、19Fフッ素プロトンイメージは、カラーグラデーションを用いて表示され、カラーグラデーションの一端が低濃度の19Fフッ素プロトンを示し、このカラーグラデーションのもう一端が高濃度の19Fフッ素プロトンを示す。
【0110】
これらの方法工程は、例えば、検出されたフッ素シグナルを患者の体の特定部分に帰属させるために使用される。この目的に関して、よりよい結果を得るために、19FボリュームとHボリュームを挿入することができる。説明した通り、Hプロトンイメージはグレースケールイメージとして表示され、一方で19Fフッ素プロトンイメージは、例えば、黒色から緑色に変化するカラーグラデーションにて、或いは、例えば青色から赤色に変化するカラーグラデションにて、表示される。
【0111】
第一に、3次元映像が生成される。しかしその後、検査される試料の横断面を示す、各レイヤーの2次元イメージが生成されることが好ましい。最大強度投影値(MIP’s)が算出されることが好ましい。これら2次元レイヤーイメージは、造影剤が存在する解剖学的構造の内部を総合的に示す。
【0112】
本発明の好ましい実施態様において、検査されない第二試料中の19Fフッ素プロトンによって生成された妨害信号は、除外される。前記妨害信号は、例えば、患者の肝臓或いは脾臓中の造影剤によって生成される。肝臓は心臓の非常に近くに存在しているため、例えば患者の心臓領域内の炎症の検出を試みるメージング工程の間、肝臓中の造影剤は、非常に強い妨害信号を引き起こし得る。
【0113】
前記妨害信号を除外するために、第一ピクセルのフッ素濃度に関する値と、この第一ピクセル周辺の3次元空間の全ての近傍ピクセルの値とを比較することが可能である。これによって、2つの近接したピクセルのフッ素濃度に関する値の相違が閾値を下回る場合、これら2つのピクセルは、ピクセルクラスタに属する、例えば患者の肝臓に属するとみなされる。このクラスタが検査される試料(この場合、患者の心臓)を示すものでない場合、この妨害ピクセルクラスタは、得られたイメージから除去できる。この妨害クラスタの除去は、例えば手作業で実施可能である。
【0114】
19Fフッ素イメージをHプロトンイメージと重ね合わせるとき、これらイメージは、測定配置を変えずに得られるものであることが好ましく、これは、双方のデータセットが、同じボリューム値からの同じ信号を含むことを意味する。
【0115】
19フッ素プロトンイメージに存在し得るノイズは、異なる取得値を平均化することにより抑制できる。ノイズの標準偏差σが測定され、それにより、検出されるシグナルに関する閾値として3・σ又は5・σが使用され得る。これは、ノイズの標準偏差に比べて3倍高いシグナルのみが“本当の”シグナルであると認められることを意味する。この閾値は、得られたイメージをノイズ量に適合することができるように、使用者によって変化させ得る。最後に挙げた方法工程は、Hプロトンイメージには、これらがより高いSNRを有しているため、適用しないほうが好ましい。
【0116】
最後に挙げた発明の文脈中で議論された全ての方法工程は、基本的に信号処理工程と関連し、それ故、どんな時及び場所でも、データ取得プロセスから独立して実施され得る。とりわけ、これら方法工程の実施には、患者身体の存在は要求されない。
【0117】
本発明の方法にて使用されるエマルションの好ましい実施態様は、本発明のエマルションとあわせて記載される。
【0118】
以下、本発明を実施例によってさらに説明する:
【図面の簡単な説明】
【0119】
図1図1は、表2(例1乃至例3)並びに比較例9に関するデータを反映した保存安定性試験のデータ(ZAverage(平均粒子径)及びP.I.(多分散性指標))を示す図である。
図2】(図2に挿入されている)図1Aは、例1乃至例3並びに比較例9によるエマルションの粒子成長増加率を示す図である。
図3】(図3に挿入されている)図1Bは、セミフッ化化合物F6H8の濃度における、粒子成長増加率の依存関係を示す図である。
図4】(図4に挿入されている)図1Cは、MCTとF6H8の異なる混合物における(F6H8の濃度に対する)密度測定の結果を示す図である。
図5】(図5に挿入されている)図2は、表6を反映した保存安定性試験のデータ(ZAverage(平均粒子径)及びP.I.(多分散性指標))を示す図であり、左半分には比較例1乃至4によるエマルションのデータを、右半分には比較例5乃至8によるエマルションのデータを、それぞれ示す。
図6】(図6に挿入されている)図3は、表8を反映した保存安定性試験のデータ(ZAverage(平均粒子径)及びP.I.(多分散性指標))を示す図であり、左部分には例4によるエマルションのデータを、右部分には例5によるエマルションのデータを、それぞれ示す。
図7】(図7に挿入されている)図3Aは、例4によるエマルションの3つの試料の試験結果(168日、40℃で保存:ZAverage(平均粒子径)及びP.I.(多分散性指標))を示す図である。
図8】(図8に挿入されている)図4は、例5によるエマルションの3つの試料の試験結果(168日、40℃で保存:ZAverage(平均粒子径)及びP.I.(多分散性指標))を示す図である。
図9】(図9に挿入されている)図4Aは、例6によるエマルションの試験結果(121℃で15分間オートクレーブで殺菌、その後40℃で保存:ZAverage(平均粒子径)及びP.I.(多分散性指標))を示す図である。
図10】(図10に挿入されている)図5は、標的組織として心臓の、血液プール中の、本発明のエマルション6を示す図であって、ラットからの全データセット(A)、演算により除去された肝臓(B)、完全3Dデータセット(C)、拡大詳細図としての心臓(D)を示す。
図11】(図11に挿入されている)図6は、(A)例6のエマルションの適用24時間後、同じ配置での、着色19F画像(1H/19F)を重ね合わせた、生体内の心筋領域のラット胸部の横断面のT2加重MRI画像(1.5テスラ、フィリップス)、(B)心筋の梗塞のレベル、並びに、手術によって生じた心膜と肋骨間の癒着部分における、フッ素含有造影剤の濃縮を示す、心筋の1H/19F画像の拡大詳細図、及び(C)梗塞領域近傍の心膜(緑色輪郭)の、強く顕著な炎症を示す、ラット心臓の原位置の記録、をそれぞれ示す図である。
図12】(図12に挿入されている)図7は、(A)例6のエマルションの適用24時間後、同じ配置での、着色19F画像(1H/19F)を重ねあわせた、生体内の心筋領域のラット胸部の横断面のT2加重MRI画像(1.5テスラ、フィリップス)、(B)心筋の梗塞のレベル、並びに、手術によって生じた心膜と肋骨間の癒着部分における、フッ素含有造影剤の濃縮を示す、心筋の1H/19F画像の拡大詳細図、及び、(C)A下での、梗塞ラット心筋の典型的な組織短軸切片[7μm]のHE染色、をそれぞれ示す図である。
図13】(図13に挿入されている)図8は、心筋梗塞モデルのタイムラインを示す図である。
図14】(図14に挿入されている)図9は、心筋炎モデルのタイムラインを示す図である。
図15】(図15に挿入されている)図10は、例6の組成物で処理した梗塞(モデル)動物のMR結果を示す図である。
図16】(図16に挿入されている)図11は、乳化剤をペグ化リン脂質に置き換えた以外には例6に記載されたエマルションで処理した心筋炎(モデル)の動物のMR結果を示す図である。
【実施例】
【0120】
実施例セクションのエマルションは、一般に以下の通りに調製された。
1)乳化剤を水と混合する工程;
2)MCT、フッ化化合物及び所望によりα−トコフェロールなどの疎水性成分の混合物を調製する工程;
3)工程1)で得られた水性混合物を工程2)の油混合物に加える工程;
4)Panda(登録商標)Plus 2000高圧ホモジナイザー中、700barで3回、並びに1000barで2回、エマルションを高圧ホモジナイザーで均質化させる工程。
【0121】
表1は、水中油型エマルション組成物を示し、表2は20℃におけるそれぞれの保存安定性データを示す。表中に示される量は、エマルションの総質量に基づく質量%(wt%)である。
【0122】
【表1】
【0123】
【表2】
【0124】
平均粒子径(ZAverage)及び多分散性指標(P.I.)は、光子相関分光法(PCS)によって算出した。
【0125】
図1は、表2並びに比較例9に関するデータを反映した保存安定性試験のデータを示す。
【0126】
図1Aは、例1乃至例3並びに比較例9によるエマルションの粒子成長を示す。粒子成長測定は、エマルション調製後、直ちに開始した。
【0127】
図1Aは、28日以内の油滴の平均粒子径が、例1に関して約11%、例2に関して約15%、例3に関して約17%、そして比較例9に関して約23%増加したことを示す。粒子成長の増加が大きくなるほど、セミフッ化化合物の濃度が高くなる。
【0128】
図1Bは、セミフッ化化合物F6H8の濃度における、粒子成長増加の依存関係を示す。
【0129】
表2Aは、図1図1A及び図1Bに示すデータを反映したものである。保存試験は20℃で実施した。
【0130】
【表3】
【0131】
高濃度のセミフッ化化合物(MR測定において優れたコントラストを得るのに必要とされる)と、エマルションの保存安定性の最適なバランスは、油滴の密度(MCT及びセミフッ化化合物)が水相の密度とほぼ同じである場合に達成される。油相の密度を水相の密度に合わせることにより、エマルションの安定性を損なう液滴の合体現象並びに沈殿現象を減少できる。
【0132】
図1Cは、MCT及びF6H8の異なる混合物における密度測定の結果を示す。
【0133】
約38.5wt%のF6H8及び約61.5wt%のMCT(油相の総質量に基づく質量)において、油混合物の密度は、水相の密度と一致する。
【0134】
比較例1−8、9A及び10−12
ペルフルオロオクチルブロミド(PFOB)は、磁気共鳴分光法に関する既知の造影剤である。PFOBはMCTに溶解できないことが知られている。従って、エマルションは、PFOBが、POFBを溶解可能なペルフルオロデシルブロミド(PFDB)によって安定化されるように、調製される。
【0135】
表3及び表4は、比較例1−8、9A及び10−12の水中油型エマルション組成物を示し、表6は20℃におけるそれぞれの保存安定性データを示す。表2及び表4中に示される量は、エマルションの総質量に基づく質量%(wt%)である。
【0136】
【表4】
【0137】
【表5】
【0138】
【表6】
【0139】
【表7】
【0140】
図2は、表6を反映した保存安定性試験のデータを示す。図2の左部分には、比較例1乃至4によるエマルションのデータが、右部分には比較例5乃至8によるエマルションの
データが描写される。
図2Aは、例9A及び10乃至12に関する保存安定性試験のデータを示す。
【0141】
表6及び図2並びに図2Aに示すように、比較例1乃至8、9A及び10乃至12のエマルションは、28日の保存期間にわたって、平均粒子サイズの顕著な増加を示した。
【0142】
対照的に、本発明の例1乃至例3によるエマルションは、はるかに保存安定性である。28日間の保存期間の間、エマルションの平均粒子サイズにおいて僅かな増加のみが観測された(図1及び表3)。
【0143】
異なる乳化剤を用いた試験
本発明のエマルションは、乳化剤の選択によって、さらに安定化可能であることが、驚くべきことに見出された。
【0144】
Lipid S PC−3乳化剤は、より安定的でないと認められ(図2)、本発明のエマルションに関してはさらに試験されなかった。
【0145】
表7は、例4及び例5による本発明のエマルションを示す。
【0146】
【表8】
【0147】
殺菌条件がエマルションの安定性に影響を与えるかどうか、例4及び例5によるエマルションをさらに分析した。エマルションを回転式オートクレーブ中で殺菌し、殺菌していないエマルションと比較した(殺菌条件:121℃、15分間、2barにて)。
【0148】
表8は、例4及び例5によるエマルションの殺菌なし及び殺菌後の安定性データを示す。
【0149】
【表9】
【0150】
図3は、表8を反映した保存安定性試験のデータを示す。図3の左部分には、例4によるエマルションのデータが、右部分には例5によるエマルションのデータが描写される。
【0151】
図3及び表8は、例5によるエマルションが、例4のエマルションよりもより安定であることを示す。例5によるエマルションはまた、エマルションが回転式オートクレーブ中で殺菌された後も、より安定である。
【0152】
さらに、例4及び例5のエマルションを、168日、40℃で保存した。驚くべきことに、例5のエマルションは、温度40℃の保存であっても、物理的安定性に顕著な変化はなかった(図4)。
【0153】
図4は、例5によるエマルションの3つの試料の試験結果を示す。
【0154】
図3Aは、例4によるエマルションの3つの試料の試験結果を示す。
【0155】
本発明の例6:
【表10】
【0156】
例6によるエマルションを、F6H8、MCT及びα−トコフェロールの均質化混合物を50℃で調製することによって準備した。別に、乳化剤Lipoid S 75及び共乳化剤オレイン酸ナトリウムを、グリセロール及び水ともに一緒にした混合物を、ロータ/ステータ混合装置(Ultra turrax)にて50℃、15000rpmで20分間混合した。続いて、MCT、F6H8及びα−トコフェロールを含む混合物を、水性混合物に入れ、50℃、Ultra Turrax(タイプT25、IKA)で、20000rpmにて20分間均質化させた。続いて得られたプレエマルションを、高圧ホモジナイザー(APVタイプ1000/2000)にてさらに均質化させた[500bar及び続いて60barで5サイクル]。
【0157】
得られたエマルションを、続いて、121℃で15分間、オートクレーブで殺菌した。
【0158】
驚くべきことに、例6のエマルションは、温度40℃での保存であっても、3ヶ月後においても、物理学的安定性は顕著に変化しなかった(図4A)。
【0159】
図4Aは、例6によるエマルションの試験結果を示す。
【0160】
例6のエマルション組成物は、生体内MRI測定に使用される。
【0161】
F6H8/MCTエマルションがMRI法により生体内で可視化され、標的組織内で検出されるかどうかを確認するために、第一薬物動態試験を実施した。
【0162】
図5に典型的な方法にての血液プール効果を示す。
【0163】
図5は、標的組織として心臓の、血液プール中の、本発明のエマルション6を示す。典型的な3D再構築である解剖学的T2 TSE及び、着色3D 19Fシークエンスは、通常、演算により除去された肝臓(B)とともに全データセット(A)として、ラットからの1つのデータセットに再構成される。下の段に、完全3Dデータセット(C)とともに拡大詳細図としての心臓(D)を示す。
【0164】
このようにして、本発明によるエマルションが、生体内で、心筋を可視化できることが示された。さらに、MRIにおける梗塞の表示を試験した。結果を下記図6に示す。
【0165】
図6は:
(A)例6のエマルションの適用24時間後、同じ配置での、着色19F画像(1H/19F)を重ね合わせた、生体内の心筋領域のラット胸部の横断面のT2加重MRI画像(1.5テスラ、フィリップス)。
(B)心筋の梗塞のレベル、並びに、手術によって生じた心膜と肋骨間の癒着部分における、フッ素含有造影剤の濃縮を示す、心筋の1H/19F画像の拡大詳細図。
(C)梗塞領域近傍の心膜(緑色輪郭)の、強く顕著な炎症を示す、ラット心臓の原位置の記録。
を示す。
【0166】
よって、造影剤は梗塞領域で濃縮されることが見出された。さらにMRI画像を組織切片と比較し、図7に示す。
【0167】
図7は:
(A)例6のエマルションの適用24時間後、同じ配置での、着色19F画像(1H/19F)を重ねあわせた、生体内の心筋領域のラット胸部の横断面のT2加重MRI画像(1.5テスラ、フィリップス)。
(B)心筋の梗塞のレベル、並びに、手術によって生じた心膜と肋骨間の癒着部分における、フッ素含有造影剤の濃縮を示す、心筋の1H/19F画像の拡大詳細図。
(C)A下での、梗塞ラット心筋の典型的な組織短軸切片[7μm]のHE染色。
を示す。梗塞心筋領域は、HE染色の青色で示される。
【0168】
エマルションを、2モデルにて試験した:
図8に反映される、心筋梗塞モデルのタイムライン;並びに、
図9に反映される、心筋炎モデル。
【0169】
梗塞の誘導
動物として、体重200乃至350gのSDラットを使用した。
【0170】
麻酔:
これらの動物を、麻酔ボックス内でイソフルラン吸入により鎮静させ、その後筋肉内注射による麻酔をかけた。麻酔の間でさえも、痛みからの解放を確実にする麻酔が保証される。そのため動物は、麻酔及び鎮痛剤の混合物を受けた。筋肉内 0.15mg/kgのメデトミジン+0.05mg/kgのフェンタニル+2.0mg/kgのミダゾラム;拮抗は、0.75mg/kgアチパメゾール+0.12mg/kgナロキサン+0.2mkg 皮下で行われた。フルニキシン(2.5mg/kg皮下)における我々の事前の経験より、我々は、術後疼痛治療のための製剤としてそれを採用した。治療が失敗した場合、我々は、ブプレノルフィン(0.05mg/kg皮下)を用いた鎮痛療法の変更を考慮する必要がある。
【0171】
続いて、動物は、その後の挿管の間、血液循環を補助し、迷走神経の刺激に対し保護するために、筋肉内のアトロピン投与を受けた。
【0172】
循環器疾患におけるフッ素ベースの造影剤:
メデトミジンの使用は基本的に健康な心血管系を有する動物にのみ推奨される場合であっても、それは、健康で若い動物(計画される心胸郭測定が約200gの体重を有する動物で実施される)において、フランク・スターリングメカニズムがまだ完全に成熟していないことが期待される。従って、メデトミジンの中央−反交感神経活動亢進活性によって媒介される徐脈は、上昇拍出量によって十分に相殺されない場合がある。アトロピンの投
与は、心仕事量の増加を引き起こす。しかしながら、末梢α2レセプター刺激によって引き起こされた血管収縮は、冠血流量(並びに脳血流量及び腎血流量)を実質的に変化させず、そのため特定の心臓負荷はここでは想定されず、血液循環の全体的状況に関するアトロピンの変時作用が支配的であるとされる。一過性高血圧性の循環条件は、術後の臨床観察に応じて、良好な耐容性を示すと考えられている。さらに、常に冠状動脈結紮を要し、そしてその心臓のポンプ性能に対する推定される影響(急性効果)が考慮される。しかしながら、手動操作の複雑性及び試験動物における冠動脈組織の差異により、普遍的法則を策定することはできない。
【0173】
メデトミジンの術後拮抗の直後に高血圧効果は低下し、その結果、妥当な制限内で、とりわけ、制御可能な範囲内で、高血圧の継続が続けられる。
【0174】
手術措置の状況で動物は挿管されるため、一方では(継続的な徐脈とともに)迷走神経刺激のリスクが、他方では過流涎の場合において複雑化した挿管のリスクが存在する;後者はまた我々自身の経験と一致する。これらのリスクは、アトロピンの術前投与によって減少させることができる。
【0175】
概して、術前アトロピン投与の兆候が見出された。
【0176】
耐性ステージ開始後、ラットを剃毛し、左側を消毒した。
【0177】
ラットを続いて、1分間当たり75−80拍の周期、及び、1回換気量(呼吸量)2.0mL(ラット重量200−250gに対して)に設定された呼吸ポンプに接続した。人工呼吸は動物にとって別の介入を常に意味することから、開胸開始の前ギリギリに、動物を呼吸ポンプに接続することが望ましい。
【0178】
呼吸ポンプ接続後、第5及び第6肋骨のレベルでカーブ鉗子で胸部を開いた。肺は非常に容易に傷つけられ得るため、これは最大限の注意を払って実施すべきである。開創器が適合するように、胸腔を約1.0cm乃至1.5cmの長さで開いた。所望により対応する軟組織の切開により、十分に大きな操作(手術)領域を創りだすとすぐに、左冠状動脈経路を検出せねばならない。それは肺動脈幹と左心耳の間の大動脈を起源とし、心外膜脂肪系によって容易に認識される。しかし、ラットの冠状血管は表面的にではなく心筋層内に伸びているため、左冠状動脈はしばしば見い出せないか或いは部分的にのみしか見いだせない。左冠状動脈の主枝、即ちLAD(左前下行枝)は、実質的に、大動脈基部から心臓の先端まで真っ直ぐに伸びている。LADの一方の近位側枝(D1又はD2)を冠状動脈結紮により遮断した。D1又はD2側枝の縫合結紮は、シングルノット(単結紮)構造により達成した。(基部)LAD自身の閉塞も、極めてまれにしか動物には存続しない、梗塞シナリオの拡張を引き起こす。その後、胸郭を2層(肋骨及び皮膚縫合)で閉じた。肋骨を2つまたは3つの単結紮縫合で閉じた。胸部筋肉は、それぞれ互いの上に配置されているに過ぎない。皮膚の縫い目を連続グローバー縫合で閉じた。
【0179】
結紮3日後、フッ化炭素含有エマルションを動物に投与した。さらに24時間後、MRI分析を実施した(図8参照)。
【0180】
6日間の全ての試験に亘って、12時間毎に全ての動物に鎮痛を与えた:体重に対してフルニキシン(フィナジン)2.5mg/kg、皮下注射。
【0181】
体重及び行動などの変化の一般データを、週に2度、全ての動物から取得した。
【0182】
梗塞の手術:
これら動物を、麻酔ボックス内でイソフルラン吸入により鎮静させた後、ドミトール(Domitor)(登録商標)/トルミカム(Dormicum)の混合溶液の筋肉内注射(体重1kgあたり0.3gのメデトミジン及び4mgのミダゾラム)によって麻酔をかけた。その後動物は、循環を補助し迷走神経刺激に対して保護するために、その後の挿管の間、アトロピン投与を受けた(体重1kg当たり0.01mgアトロピン、皮下注射)。
【0183】
MRI試験:
これら動物は吸入麻酔のみを受けた(酸素+イソフルラン2.0%)。後者は十分に許容され、動物はその後、長期間の覚醒相を有しなかった(長い時間覚醒しなかった)。
【0184】
麻酔の間、動物はフッ素ベースの造影剤を尾静脈を介して投与された。
【0185】
心筋の炎症モデル:
全ての動物は、連続6週間に渡って、週一度のドキソルビシン又は等張食塩水溶液の点滴投与を受けた。各投与を全身麻酔下で達成した。最後の投与から1週間後、本発明のエマルションを動物に投与した。24時間後、MRI分析を実施した。
【0186】
乳化剤をペグ−リン脂質に置き換えて、例6によるエマルションを変性した。エマルション液滴のopsonation(オプソニン化)が顕著に減少することが見出された。この効果のため、炎症領域中のフッ化炭素化合物(F6H8)の量が、検出限界を下回ることが予想される。しかし、驚くべきことに、心筋炎でさえも、図11に示すように画像化されることが見出された。
【0187】
MRI試験の日に、動物は吸入麻酔を受けた(イソフルラン及び酸素混合物1.5%−2.5%)。さらに、動物は、それらが属するグループに応じて、試験の間、フッ素ベースの造影剤化合物 1回分を、尾静脈を介して投与された。最後のMRI試験の後、それぞれの動物を、イソフルランの過剰投与によって屠殺し、その後臓器を除去した。
【0188】
全ての動物はさらに鎮痛を得た。ごく僅かな抗炎症作用を有するため、この目的のために、パラセタモール ALを採用した。動物は、全試験期間に渡って、体重の150mg/kgの容量で、飲料水を介してパラセタノールを受けた。
【0189】
例えば体重及び行動といった変化の一般データを、全ての動物から毎日収集した。
【0190】
心筋炎の誘導:
動物は吸入麻酔のみを受けた(酸素+イソフルラン2.0%+笑気ガス)。後者は十分に許容され、その後、覚醒相の延長をもたらさなかった(長い時間覚醒しなかった)。麻酔の開始とともに、動物は、対応する鎮静を得た。
【0191】
MRI試験:
動物は吸入麻酔のみを受けた(酸素+イソフルラン2.0%)。後者は十分に許容され、その後、覚醒相の延長をもたらさなかった(長い時間覚醒しなかった)。麻酔の間、動物は、フッ素ベースの造影剤を尾静脈を介して投与された。
【0192】
MR結果
例6の組成物で処理した梗塞動物のMR結果を、図10に反映し、乳化剤をペグ化リン脂質に置き換えた以外には例6に記載されたエマルションで処理した心筋炎の動物のMR結果を、図11に反映する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0193】
【特許文献1】国際公開第2005/072780号
【特許文献2】国際公開第03/075747号
【特許文献3】米国特許公開第2009−0280055号公報
【非特許文献】
【0194】
【非特許文献1】アレンスら、ネイチャーバイオテクノロジー(vol.23,No.8、2005年8月、p983−987)
【非特許文献2】G.M.ランザら、メディカ ムンディ(47/1、2003年4月、p.34−39)
【非特許文献3】。オク、ナオトら(バイオキミカ エト バイオフィジカ アクタ 1280(1996)、149−154)
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