【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第一の態様は、
a)式Iで表されるセミフッ化化合物:
CF
3−(CF
2)x−(CH
2)y−CH
3 (I)
(式中、xは1乃至8の整数を表し、及びyは2乃至10の整数を表す。)
b)20℃にて前記セミフッ化化合物と混和可能である、トリグリセリド;及び
c)乳化剤、
を含む水性エマルションである。
【0010】
本発明のさらなる具体的な態様は、
a)式Iで表されるセミフッ化化合物:
CF
3−(CF
2)x−(CH
2)y−CH
3 (I)
(式中、xは1乃至8の整数を表し、及びyは2乃至10の整数を表す。)
b)中鎖トリグリセリド(MCT);及び
c)乳化剤、
を含む水性エマルションである。
【0011】
本発明のエマルションは、好ましくは、セミフッ化化合物を必須に含有する、水中油型エマルションである。
【0012】
本発明で意味するところのセミフッ化化合物は、セミフッ化アルカン類である。セミフッ化アルカン類は、フッ化炭素及び炭化水素部分を含む。一般に、セミフッ化アルカン類は、以下の命名法に従う:FXHY、式中、Xはフッ素原子で置換された炭素原子の数を表し、Yは水素原子で置換された炭素原子の数を表す。例えば、ペルフルオロヘキシルオクタンは、式:F6H8で表される。
【0013】
F6H8は、下記式で示される。
【化1】
【0014】
本発明のエマルションに適するセミフッ化化合物は、式(I)に反映される。
CF
3−(CF
2)x−(CH
2)y−CH
3 (I)
(式中、xは1乃至8の整数を表し、及びyは1乃至10の整数を表す。)
【0015】
一実施態様において、式(I)中のxは、2乃至6の範囲、好ましくは3乃至6の範囲、より好ましくは4乃至6の範囲であり、特にxは5である。
【0016】
さらに好ましい実施態様において、式(I)中のyは、2乃至9の範囲、好ましくは3乃至8の範囲、より好ましくは5乃至8の範囲、さらに好ましくは6乃至8の範囲であり
、特にyは7である。
【0017】
イメージング(画像)の観点から良好な結果及びエマルションの安定性は、式中のyがxより大きい値である式(I)で表されるセミフッ化化合物を用いて達成可能である。
【0018】
特に好ましいセミフッ化化合物は、ペルフルオロヘキシルオクタン(F6H8)及び/又はペルフルオロブチルペンタン(F4H5)である。
【0019】
さらなる本発明の成分は、20℃でセミフッ化化合物と混和可能である、トリグリセリド(以下化合物b)ともいう)である。
【0020】
本発明の目的の範囲内にて、温度20℃の場合に、前記トリグリセリド(成分b))は、セミフッ化化合物(成分a))と混和可能であり、そして混合及びその後の20℃で24時間保存後に、成分a)と成分b)が別の連続相を形成しない。
【0021】
好ましい実施態様において、成分b)は成分a)と任意の比率にて混和可能である。特に、成分a)と成分b)は、質量比にて、成分a)と成分b)が1:20乃至1:0.7、好ましくは1:15乃至1:0.8、より好ましくは1:10乃至1:0.9、さらに好ましくは1:4乃至1:1、特に1:2乃至1:1で、混和可能である。
【0022】
別の実施態様において、成分a)と成分b)の質量比は、1:20乃至1:0.20、好ましくは1:15乃至1:0.25、より好ましくは1:10乃至1:0.30、さらに好ましくは1:4乃至1:0.35、特に1:2乃至1:0.4である。
【0023】
好ましい実施態様において、セミフッ化化合物と混和可能なトリグリセリドは、中鎖トリグリセリド(MCT)である。
【0024】
具体的な実施態様において、成分a)、好ましくはF6H8と、MCTの質量比は、4:1乃至1:4の範囲、特に3:2乃至2:3の範囲である。
【0025】
本明細書に記載の水性エマルションにおける油は、好ましくは中鎖トリグリセリドを含む。“中鎖トリグリセリド”(MCTs)は、天然由来の或いは合成であり得るトリグリセリド油の分類(クラス)である。MCTsは炭素原子数6乃至14、好ましくは炭素原子数6乃至12、特に炭素原子数8乃至10の長さの脂肪酸から形成される。MCTは、カプリル酸(例えば、MCTの約50質量%乃至約80質量%の量で)、すなわち8−炭素飽和FA(脂肪酸)(8:0)を含み得る。MCTは、カプリン酸(例えば、MCTの約20質量%乃至約50質量%の量で)、すなわち10−炭素飽和FA(脂肪酸)(10:0)を含み得る。例えば中鎖トリグリセリドは、中鎖トリグリセリドの少なくとも90質量%の量で、カプリル酸及びカプリン酸のトリグリセリドを含み得る。この開示において使用するMCTの説明は、例えば、EPモノグラフ(ヨーロッパ薬局方論文)0868、表題“トリグリセリド、中鎖”(トリグリセリド飽和媒体(Triglycerida
saturate media)(ヨーロッパ薬局方0868、2008)の要件を満たし得る。
【0026】
本発明のさらなる態様によれば、中鎖トリグリセリド(MCT)は、以下に規定されるカルボン酸でエステル化されたグリセロールである:カプロン酸 2質量%以下の量;カプリル酸 約50乃至約80質量%の範囲の量;カプリン酸 約20乃至約50質量%の範囲の量;ラウリン酸 3質量%以下の量;ミリスチン酸 1質量%以下の量 (質量%は脂肪酸の総質量に基づく)。
【0027】
中鎖トリグリセリド(MCT)は、セミフッ化化合物にとって優れた溶媒である。本発明によれば、一種以上のMCT’sが使用され得る。MCTは、例えばミグリオール(Miglyol)812(サソール(SASOL)ゲーエムベーハー、ドイツ)、或いは、クロダモール(CRODAMOL)GTCC−PN(クローダ(Croda)インク、ニュージャージー)として市販されている。
【0028】
本発明の別の好ましい実施態様によれば、エマルションは、7、9及び11の炭素原子を有する脂肪酸の群から選択される脂肪酸を少なくとも50質量%含む脂肪酸でエステル化されたグリセロールで構成されるMCTを含む。好ましくはトリヘプタノイン(tripheptanoin)である。
【0029】
本発明のエマルションにおけるトリグリセリドb)、好ましくは、中鎖トリグリセリドの量は、エマルションの総質量に基いて、2乃至40質量%、好ましくは5乃至25質量%、そして最も好ましくは8乃至18質量%(wt%)の範囲であり得る。
【0030】
本発明の好ましい態様において、セミフッ化化合物a)、及びトリグリセリドb)、好ましくは中鎖トリグリセリドの量は、エマルションの総質量に基いて、5乃至40質量%、好ましくは10乃至30質量%、特に15乃至25質量%、とりわけ18乃至22質量%の範囲、例えば約20質量%である。
【0031】
セミフッ化炭素化合物a)対トリグリセリド、好ましくは中鎖トリグリセリド(MCT)との質量比を、1:20乃至1:0.7、好ましくは1:15乃至1:0.8、より好ましくは1:10乃至1:0.9、より好ましくは1:4乃至1:1、特に1:2乃至1:1の範囲、例えば約1:1.5とした場合、セミフッ化化合物の高い濃度と非常に長期間の安定性との優れたバランスを獲得できる。
【0032】
別の実施態様において、成分a)と成分b)sの質量比は1:20乃至1:0.20、好ましくは1:15乃至1:0.25、より好ましくは1:10乃至1:0.30、さらに好ましくは1:4乃至1:0.35、特に1:2乃至1:0.4である。
【0033】
本発明のエマルションは、セミフッ化化合物及び好ましくは中鎖トリグリセリド(MCT)を含む。本発明の一態様によれば、エマルションの油成分は、20℃で均質(均一)な溶液を形成する。MCTとF6H8などのセミフッ化化合物は20℃で混和可能であり、そのため均質な溶液を形成する。油相は、植物油又は魚油等のマリンオイルに基づく長鎖脂肪酸トリグリセリドなどのさらなる油成分を含み得る。さらなる油成分の量は、好ましくは、完全に混和可能な油相が維持できるように調整される。一般に、セミフッ化化合物とトリグリセリドb)、好ましくはMCTとは異なる油成分の量は、50質量%未満、好ましくは40質量%未満、より好ましくは30質量%未満、さらに好ましくは20質量%未満、特に10質量%未満、とりわけ5質量%未満であり、或いは本質的に含まれておらず、ここで量は油成分の総質量に基づく。
【0034】
本発明のエマルション中のMCTと長鎖トリグリセリド(LCT)の質量比は、一般に、1:1乃至10000:1 又はそれ以上の範囲、好ましくは、3:2乃至1000:1の範囲、より好ましくは3:1乃至500:1の範囲、特に5:1乃至200:1である。
【0035】
本発明のエマルション中に存在し得、そしてMCTとは異なる油は、“長鎖トリグリセリド”(LCT)から選択され得る。
【0036】
特定の実施態様において、油は植物油を含み得る。“植物油”は種又は木の実由来の油
を言及する。植物油は、概して、3つの脂肪酸(油源に応じて、通常14乃至22の炭素鎖長であり、種々の数と位置に不飽和結合を有する)が、グリセロールの3つのヒドロキシ基とのエステル結合を形成する際に形成される、“長鎖トリグリセリド”(LCTs)である。特定の実施態様において、高精製グレード(“超精製”とも呼ばれる)の植物油は、安全性と水中油型エマルションの安定性を確保するために使用される。特定の実施態様において、植物油の制御された水素化により製造される水素化(水添)植物油が、使用され得る。
【0037】
典型的な植物油としては、但し限定されないが、アーモンド油、ババス油、クロフサスグリ種油、ルリジサ油、キャノーラ油、ひまし油、ココナッツ油、コーン油、綿実油、オリーブ油、ピーナッツ油、ヤシ油、パーム核油、菜種油、紅花油、大豆油、ひまわり油、及びごま油が挙げられる。これら油の水素化及び/又は、或いは、部分水素化形態もまた使用され得る。特定の実施態様において、油はさらに紅花油、ごま油、コーン油、オリーブ油及び/又は大豆油を含む。より特定の実施態様において、油はさらに紅花油及び/又は大豆油を含む。
【0038】
油が更に大豆油を含む特定の実施態様において、大豆油は9乃至13%のパルミチン酸含量(wt./wt)、2.5%乃至5%のステアリン酸含量、17%乃至30%のオレイン酸含量、48%乃至58%のリノール酸含量、及び5%乃至11%のリノレン酸含量を有し得る。
【0039】
さらに、特定の実施態様において、本発明の水性エマルションは、構造化トリグリセリドを含み得る。本明細書において使用される“構造化トリグリセリド”は、6乃至12の炭素原子の炭素鎖長を有する少なくとも1つの脂肪酸群と、12より多い炭素単位の炭素鎖長を有する少なくとも1つの脂肪酸群とを有する、トリグリセリド又はトリグリセリドの混合物を含む、トリグリセリドである。
【0040】
本発明のエマルションのさらなる成分は、乳化剤である。好ましくは、乳化剤は、リン脂質、脂肪酸塩などの両性及びイオン性界面活性剤からなる群から選択される。
【0041】
乳化剤はエマルション中に、エマルションの総質量に基いて、最大10wt%までの量で、好ましくは0.5乃至5質量%の量で存在し得る。
【0042】
好ましくは、乳化剤はリン脂質又はリン脂質の混合物である。
【0043】
一態様において、乳化剤は、レシチン、好ましくは天然に存在するレシチン、例えば大豆レシチン、エッグレシチン、ひまわり油レシチン、スフィンゴシン、ガングリオシド、フィトスフィンゴシン、及びそれらの組み合わせを含み得る。レシチンの制御された水素化生成物などの水素化レシチンもまた、乳化剤において更に使用され得る。
【0044】
本発明において有用な例示リン脂質としては、但し限定されないが、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、リゾ−ホスファチジルコリン、及びそれらの混合物が挙げられる。組成物のリン脂質成分は、一種のリン脂質或いは数種のリン脂質の混合物であり得る。非経口投与、特に静脈内投与が可能であれば、使用されるリン脂質は、天然物又は合成物としてよい。
【0045】
完全に網羅しているわけではないが、乳化剤中に更に存在し得る好適なリン脂質の一覧を以下に示す:1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスファチジン酸、ナトリウム塩(DMPA、Na)、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスファチジン酸、ナトリウム塩(DPPA、Na)、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ
−3−ホスファチジン酸、ナトリウム塩(DSPA、Na)等のホスファチジン酸類;1,2−ジラウロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DLPC)、1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DMPC)、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DPPC)、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DSPC)等のホスホコリン類;1,2−ジラウロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(DLPE)、1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(DMPE)、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(DPPE)、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(DSPE)等のホスホエタノールアミン類;1,2−ジラウロイル−sn−グリセロ−3−ホスホグリセロール、ナトリウム塩(DLPG、Na)、1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスホグリセロール、ナトリウム塩(DMPG、Na)、1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−sn−1−グリセロール、アンモニウム塩(DMP−sn−1−G、NH4)、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホグリセロール、ナトリウム塩(DPPG、Na)、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホグリセロール、ナトリウム塩(DSPG、Na)、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−sn−1−グリセロール、ナトリウム塩(DSP−sn−1G、Na)等のホスホグリセロール類;1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−L−セリン、ナトリウム塩(DPPS、Na)等のホスホセリン類;1−パルミトイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(POPC)、1−パルミトイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホグリセロール、ナトリウム塩(POPG、Na)、1−パルミトイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホグリセロール、アンモニウム塩(POPG、NH4)、等の混合鎖リン脂質;1−パルミトイル−2−リゾ−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(P−リゾ−PC)、1−ステアロイル−2−リゾ−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(S−リゾ−PC)等のリゾリン脂質;N−(カルボニル−メトキシポリエチレングリコール2000)−MPEG−2000−DPPE、ナトリウム塩、N−(カルボニル−メトキシポリエチレングリコール5000)−MPEG−5000−DSPE、ナトリウム塩、N−(カルボニル−メトキシポリエチレングリコール5000)−MPEG−5000−DPPE、ナトリウム塩、N−(カルボニル−メトキシポリエチレングリコール750)−MPEG−750−DSPE、ナトリウム塩、N−(カルボニル−メトキシポリエチレングリコール2000)−MPEG−2000−DSPE、ナトリウム塩等のペグ化リン脂質。
【0046】
一実施態様において、本発明のエマルション中のリン脂質の量は、組成物の総質量に基いて、0.1乃至30質量%の範囲内である。特定の実施態様において、リン脂質は、0.5乃至15質量%、例えば0.8乃至10質量%、例えば1乃至5質量%の範囲内で存在し得る。
【0047】
例示的な実施態様において、本発明の水性エマルション中のリン脂質の量は、エマルションの総質量に基いて、最大10質量%(wt%)まで、好ましくは0.5乃至5質量%である。
【0048】
一実施態様において、乳化剤は、60−80%wt/wt、例えば67%wt/wtのホスファチジルコリン;10−20%wt/wt、例えば15%wt./wtのホスファチジルエタノールアミン;<=3%wt/wt、例えば2%wt/wtのスフィンゴミエリン;そして<=3%wt/wt、例えば1%wt/wtのリゾホスファチジルコリンを含む、エッグレシチンを含む。
【0049】
“エッグレシチンPL90”(フレゼニウス カービ アーベー)は上記リン脂質含量内容を有するエッグレシチンの一例である。
【0050】
特に、優れた結果は、
約80乃至約85wt%のホスファチジルコリン;
約7.0乃至約9.5wt%のホスファチジルエタノールアミン;
3wt%未満のリゾホスファチジルコリン;
0.5wt%未満のリゾホスファチジルエタノールアミン;及び
約2乃至約3%wt%のスフィンゴミエリン
を含む、レシチンを含有する乳化剤にて達成され得る。
【0051】
本発明の好ましい実施態様によれば、乳化剤は、リン脂質及び糖脂質の混合物を含む。驚くべきことに、リン脂質と糖脂質の混合物が、さらに高温(40℃)でのエマルションの保存安定性を改善することが見出された。特に、これら混合物は、エマルションの殺菌といったストレス条件下であってもエマルションを安定化させる。本発明のエマルションは、通常、例えば回転式オートクレーブ中、圧力2barにて、121℃で15分間殺菌される。
【0052】
糖脂質は、炭水化物が結合した脂質である。糖脂質は一種以上のモノ或いはオリゴサッカリド(単糖類)が脂質に結合されてなる、リンを含まない細胞膜の膜脂質である。該脂質は、エステル結合を介してグリセロールと結合するか、アミド結合を介してスフィンゴシンと結合する脂肪酸である。
【0053】
好ましい実施態様において、本発明のエマルションはさらに糖脂質を含有し、好ましくは、モノガラクトシルジグリセリド、又は、スフィンゴ糖脂質、又は、セレブロシドなどのグリセロ糖脂質から選択される。
【0054】
好ましい実施態様において、糖脂質及びリン脂質の合計総質量に基いて、糖脂質は5乃至30wt%、好ましくは10乃至28wt%の量である。リン脂質と糖脂質の混合物は、リポイドゲーエムベーハー、ドイツからLipoid S 75として市販されている。
【0055】
特に好ましい実施態様において、乳化剤は、約68乃至約73質量%のホスファチジルコリン;約7乃至10質量%のホスファチジルエタノールアミン;約3質量%未満のリゾホスファチジルコリン;及び約14乃至約25質量%の糖脂質を含む(全ての質量は、糖脂質及びリン脂質の合計総質量に基づく)。
【0056】
エマルションは、好ましくは、0.5乃至5質量%、より好ましくは1.0乃至4.0質量%の乳化剤を含む(量はエマルションの総質量に基づく)。
【0057】
本発明のエマルションは、好ましくは、水相が連続相であり、油相が非連続相である、水中油型エマルションである。
【0058】
上述したように、本発明の水中油型エマルションは、さらに、水性媒体を含む。“水性媒体”又は“水相”は、水を含有する液体を言及する。いくつかの実施態様において、水性媒体は水及び/又は水性緩衝溶液である。
【0059】
本発明の水性エマルション、好ましくは水中油型エマルションは、エマルションの総質量に基いて、70乃至98wt%、好ましくは70乃至90wt%の水を含み得る。
【0060】
いくつかの実施態様において、エマルションは、0乃至4mM、好ましくは0.5乃至3mMの生理学的適合性の緩衝液を含み得る。
【0061】
いくつかの実施態様において、本発明による水性エマルションは、所望により、補助界面活性剤を含む。本発明のエマルションにおける使用に適する補助界面活性剤は、脂質エマルションの凝集及び/又は合体を防止するものである。例示的な補助界面活性剤は、但し限定されないが、コレステロール、オレイン酸、オレイン酸塩、トゥイーン(Tween)80(モノオレイン酸PEG溶液)、HCO−60、ソルトール(Solutol)H15(ポリオキシエチレン−660−ヒドロキシステアレート)、PEG−400(ポリエチレングリコール)、プルロニック(Pluronic)(F68)(BASF)、クレモフォール(Cremophor)EL(ポリオキシエチレン−35−リシノレート)又は、デオキシコール酸などの胆汁酸の塩が挙げられる。他の実施態様において、補助界面活性剤は、例えば炭素原子数16乃至20の脂肪酸、それらの塩、及び/それらの混合物、或いは、炭素原子数18の脂肪酸、それらの塩、及び/又はそれらの混合物などの、炭素原子数12乃至22の脂肪酸、それらの塩、及び/又はそれらの混合物からなる群から選択される。特定の実施態様において、脂肪酸はモノ不飽和である。
【0062】
いくつかの実施態様において、補助界面活性剤は、0.005%以上、0.01%以上、或いは、0.02%以上の量(wt%)でエマルション中に存在し得る。これら任意の実施態様に従い、補助界面活性剤は、4%以下、1%以下、又は0.04%以下の量(wt%)で存在し得る。特定の実施態様において、補助界面活性剤は、パルミチン酸、オレイン酸又はステアリン酸等の長鎖脂肪酸、或いはそれらのアルカリ塩からなる群から選択される。オレイン酸塩及び/又はオレイン酸、特にオレイン酸ナトリウムが、特に好適な補助界面活性剤である。
【0063】
ある実施態様において、補助界面活性剤はオレイン酸塩及び/又はオレイン酸であり、補助界面活性剤は、0.005wt%以上、0.01wt%以上、又は0.02wt%以上の量(wt%)で存在し得る。これら任意の実施態様に従い、補助界面活性剤は、0.5wt%以下、0.2wt%以下、0.1wt%以下、又は0.05wt%以下の量(wt%)で存在し得る。特定の実施態様において、補助界面活性剤はオレイン酸ナトリウムであり、0.03wt%(0.3g/l)の量で存在する。本明細書に記載のエマルションは、非経口注入、例えば静脈注入に適し得る。特定の実施態様において、特定の補助界面活性剤の濃度は、従って、炎症、サイトクロームP450抑制等の副作用を防止するために最小量におさえられる。特定の実施態様において、プルロニックF68(ポリ(エチレングリコール)−13−ポリ(プロピレングリコール コ−プロピレングリコール)は、0.7wt%未満、或いは0.5wt%未満の量で存在する。別の特定の実施態様において、ソルトール−HS(マクロゴール−15−ヒドロキシステアレート)は1.2wt%未満の量で、又は1wt%未満の量で存在する。
【0064】
本発明の水中油型エマルションは、等張化剤を含み得る。前記等張化剤は、200−100mOsm/kg、好ましくは220乃至800mOsm/kg、特に250乃至600mOsm/kg範囲のオスモル濃度を有し得る。
【0065】
本発明の特定の実施態様に従い、エマルションは、等張及び等浸透圧であり得る。該組成物は、220−600mOsm/kg、又は230−360mOsm/kgのオスモル濃度を有し得る。
【0066】
好適な等張化剤としては、塩化カリウム又は塩化ナトリウム、トレハロース、スクロース、ソルビトール、グリセロール、グルコース、キシリトール、マンニトール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、アルブミン、アミノ酸及びそれらの混合物が挙げられる。特定の実施態様において、270乃至330mOsm/kg、例えば、280乃至300mOsm/kgのオスモル濃度が、浸透圧をも増加させる添加剤、例えばグリ
セロール、デキストロース、ラクトース、ソルビトール又はスクロールで獲得できる。
【0067】
一実施態様において、等張化剤は、生理学的適合性のポリオール、例えばグリセロール、ソルビトール又はキシリトールである。特定の実施態様において、等張化剤はグリセロールである。
【0068】
よって、さらなる本発明の態様によれば、エマルションはさらに等張化剤、好ましくはグリセロールを含有する。
【0069】
等張化剤は、エマルションの総質量に基いて、0.1乃至10wt%、好ましくは0.5乃至8wt%、より好ましくは1乃至5wt%の範囲の量で存在し得る。
【0070】
等張化剤は、一般に、有害な生物学的効果を有さず、但し、等浸透圧性及び/又は等張性組成物を提供するのに十分な量で使用される。グリセロールが等張化剤であるとき、グリセロールは、2乃至5%(wt%)、例えば2.1%乃至2.9%(wt%)、例えば2.3%乃至2.7%の量で存在し得る。特定の実施態様において、本発明のエマルションは、2.5%(25g/l)のグリセロールを含む。さらなる実施態様において、等張化剤は、エマルションの総質量に基いて、2.5wt%以上の量で存在する。
【0071】
いくつかの実施態様において、本発明によるエマルションは、pH6.0乃至pH9.0、例えばpH6.5乃至pH8.5、例えばpH7.5乃至8.5、例えば8.0乃至8.5の範囲内のpHを有する。別の実施態様において、pHは5.0乃至9.0の範囲である。組成物のpHは、例えば、脂肪酸のマイナス電荷を中和する適切な塩基の使用、適切な緩衝液、或いはそれらの組み合わせの使用といった従来技術の方法により調整し得る。種々の塩基及び緩衝液が、本発明のエマルションへの使用に適する。エマルションへの緩衝液の添加は、最終pHだけでなく、エマルションのイオン強度にも影響を与えることは、当業者であれば理解し得るであろう。高いイオン強度の緩衝液は、エマルションのゼータポテンシャルに対して負の影響を与え得、そのため望ましくない。特定の実施態様において、pHは水酸化ナトリウム、例えば0.1Nの水酸化ナトリウム或いは1Nの水酸化ナトリウムの添加により望ましい値に調整される。酸化過程に対して本発明のエマルションをさらに安定化させるために、抗酸化剤を存在させ得る。好ましい実施態様において、エマルションはさらに抗酸化剤、好ましくはα−トコフェロールを含む。
【0072】
本発明によるエマルションは、所望により、一種以上の薬物学的に許容される添加剤、例えば、酸性化剤、アルカリ化剤、結合剤、キレート剤、錯化剤、可溶化剤、消毒剤、防腐剤(抗菌剤及び抗酸化剤を含む)、懸濁化剤、安定化剤、湿潤剤、粘度変性剤、溶媒、抗凍結剤、希釈剤、潤滑剤、及びその他の生体適合性物質又は治療薬を含む。特定の実施態様において、前記添加剤は、エマルションのさらなる安定化、或いは、本発明のエマルションを生体適合化させる手助けをする。
【0073】
本発明の好ましい実施態様によれば、25℃での油相の密度は、特にトリグリセリドb)、好ましくはMCTと、セミフッ化化合物とからなる混合物の密度、0.9乃至1.1g/cm
3の範囲、より好ましくは、0.95乃至1.05g/cm
3、或いは約0.95乃至約1.10g/cm
3の範囲である。さらなる本発明の態様において、油相の密度は、水相の密度から10%以上、好ましくは5%以上、特に3%以上外れない。連続相である水相は全ての添加剤を含み、非連続相である油相は全ての成分を含む。
【0074】
優れた診断結果は、ナノ範囲の油滴サイズを有するエマルションを用いて実現できることが見出された。本発明の好ましい態様によれば、非連続相の粒子は、25℃での光子相関分光法(PCS)による測定で、好ましくは1乃至500nm、より好ましくは10乃
至400nm、さらに好ましくは50乃至350nmの範囲の平均粒子径を有する。
【0075】
本発明のさらなる実施態様は、本発明のエマルションの薬剤としての使用である。
【0076】
本発明のエマルション中に存在するセミフッ化化合物は、細胞が特異的にラベル化(標識化)されるように単球/マクロファージによって取り込まれ、イメージング法の診断に利用することが可能となることが見出された。驚くべきことに、特に心血管系の炎症過程及びリンパ節の可視化の診断可能性が見出された。
【0077】
よって、本発明のエマルションは、造影剤或いはコントラスト増強剤としての使用に適する。特に核磁気共鳴画像技術に対して、前記エマルションは、エマルションの前記セミフッ化炭素化合物が特に豊富であり、そして炎症組織に分布するために適している。
【0078】
本発明の別の態様は、MR−技術を利用するイメージング法を用いる、診断検出のためのコントラスト増強剤又は造影剤としての使用のための本発明のエマルションである。
【0079】
本発明のさらなる実施態様は、イメージング法、特に
19F同位体の核磁気共鳴測定に基づくイメージング法を用いる、画像検出のための造影剤としての使用のための本発明のエマルションである。
【0080】
対応する測定値の評価とそれらのイメージへの変換は、例えば以下から分かるように、当業者に既知である:
ハッケ(Haacke)M E、ブラウン W R、トンプソン M R、フェンカセタン(Venkasetan)R:磁気共鳴イメージング−物理的原理及びシークエンス設計、ウィリー(Wiley)、ニューヨーク、1999;
ユ(Yu) J X、カディバカー(Kadibagkar)V D、クイ(Cui)W、マソン(Mason)R P.19F:磁気共鳴を用いる非侵襲的な生理学及び薬理学のための多目的レポーター;Curr Med Chem.12:819−48、2005;
ウェルニク(Wernick)M N、アーズボルド(Aarsvold)J N エミッショントモグラフィー:PET及びSPECTの基本、アカデミックプレス、ロンドン、2004。
【0081】
エマルションは特に炎症過程の検出に適する。本発明のさらなる態様によれば、エマルションは、
19F同位体の核磁気共鳴測定に基づくイメージング法を用いる、梗塞の周辺の炎症反応、例えば心筋梗塞、脳卒中;臓器の炎症、例えば心筋炎、脳炎、髄膜炎;多発性硬化症;消化管の炎症、例えばクローン病;血管の炎症、例えば動脈硬化、特に不安定プラーク;膿瘍並びにまた関節炎の検出、からなる群から選択される炎症過程の、診断検出のためのものである。
【0082】
本発明の別の態様において、エマルションは、心筋、動脈及び静脈等の心血管系;脳卒中又は腫瘍などの神経学で見られる血管系の炎症及び変性に至る、心筋梗塞、心筋炎、アテローム性動脈硬化症、及び血栓症のような疾患経過に生ずる炎症反応;血栓症、炎症、サルコイドーシス等の呼吸器系学(pulmology;プルモロジー);腫瘍、クローン病等の炎症性腸疾患などの消化器病学;及び高安動脈炎などの血管の自己免疫疾患などのリウマチ学の、非侵襲のイメージング法に基づく、診断検出において使用される。
【0083】
本発明のさらなる実施態様は、患者の血流内に溶解するように、事前に本発明のエマルションを投与された患者に対する非侵襲の画像イメージング法を獲得する工程を含む方法に関する。
【0084】
好ましくは、非侵襲のイメージング法はMRイメージング法である。
【0085】
本発明の方法のさらなる好ましい態様において、イメージング法は、
19F同位体又は
19F同位体及び
1H同位体の核磁気共鳴の測定に基づく。
【0086】
フッ化化合物中の
19F及び/又は
18F同位体の存在は、既に知られており病院内で使用される装置、すなわち
19F同位体を用いた核磁気共鳴分光法の使用及び/又は、
18F同位体の陽電子放射分光法の使用における利点を可能にする。
【0087】
本発明によるエマルションの使用により、下記の病的状態を特に検出できる:
1)リンパ節及びその病的増大の可視化
a)リンパ節に直接影響を与えるガン:ホジキン病、非ホジキンリンパ腫;
b)腫瘍転移、例えば乳がんからの;
c)ウィルス及び細菌感染、例えば、梅毒、結核;
2)境界域の炎症反応
a)梗塞、例えば心筋梗塞、脳卒中;
b)腫瘍;
3)臓器の炎症:心筋炎、脳炎、髄膜炎(脳髄膜及び脊髄膜);
4)多発性硬化症;
5)消化管の炎症、例えばクローン病;
6)血管の炎症、例えば動脈硬化、特に所謂“不安定プラーク”;
7)膿瘍の検出;
8)関節炎の検出。
【0088】
本発明のエマルションは、通常、イメージング法を始める前に非経口投与される。好ましい実施態様において、エマルションは、静脈内又は関節内に投与される。
【0089】
本発明のさらなる態様は、炎症過程を検出する方法であって:
(a)本発明のエマルションを、それらを必要としている患者に投与する工程;及び
(b)前記患者におけるフッ素含有化合物をイメージングする工程;を含み、
前記炎症過程は、好ましくは下記からなる群から選択される:リンパ節に直接影響を与えるガン;境界域の梗塞又は腫瘍の炎症過程;臓器の炎症;多発性硬化症;消化管の炎症;血管の炎症;関節炎;及び膿瘍。
【0090】
本発明のさらなる実施態様は、以下の工程を含む本発明のエマルションを製造する方法である:
i)
a)式Iで表されるセミフッ化化合物
CF
3−(CF
2)x−(CH
2)y−CH
3 (I)
(式中、xは1乃至8の整数を表し、及びyは2乃至10の整数を表す。)
b)20℃にて前記セミフッ化化合物と混和可能であるトリグリセリド、好ましくは中鎖トリグリセリド(MCT)及び
c)乳化剤、及び
d)水;
を含む混合物を提供する工程;及び
ii)前記混合物を均質化させる工程、好ましくは高圧ホモジナイザーで均質化させる工程;
iii)所望によりエマルションを殺菌する工程。
【0091】
さらなる別の態様において、前記製法は以下の工程を含む:
i)セミフッ化化合物をトリグリセリドb)、好ましくは中鎖トリグリセリドに溶解する工程;及び
ii)好ましくは乳化剤の存在下、水相中に油相を乳化させる工程。
【0092】
特定の実施態様によれば、前記水性組成物が油性組成物と組み合わせられる前に、該水性組成物は、均質化懸濁液を生成するように、均質化される。
【0093】
特定の実施態様において、均質化は、350bar以上、又は370bar以上にて、実施される。
【0094】
特定の実施態様において、エマルションを製造する方法は、乳化剤を(オイル中よりむしろ)水性媒体に溶解する工程、油相を水相に(その逆よりはむしろ)添加する工程、そして350bar以上で均質化させる工程を含む。これらの工程は、粒子サイズ並びにエマルションの安定性に関して有利な特性を有するエマルションにつながる。
【0095】
別の特定の実施態様において、エマルションは密封容器に詰められ、少なくとも121℃(例えば121℃乃至123℃)、最短15分間の保持時間の熱処理などにより、殺菌される。オートクレーブプログラムは回転周期であり得る。
【0096】
本発明のさらなる実施態様は、本発明のエマルションを含有するコンテナである。コンテナの材料は、好ましくは、ガラス及び有機ポリマー及びそれらの混合物からなる群から選択される。好ましい有機ポリマーは、ポリエチレン及び/又はポリプロピレンである。
【0097】
本発明の製造方法の好ましい実施態様において、前記方法は以下の工程を含む:
a)
a−1)水及び乳化剤を含む混合物を調製する工程、
a−2)セミフッ化化合物及びトリグリセリドを含有する均質化混合物を調製する工程、a−3)工程a−1)で得られた混合物を工程a−2)で得られた混合物と組み合わせる工程
により、混合物を調製する工程;及び
b)工程a)で得られた混合物を均質化させる工程であって、
好ましくは、工程a)で得られた混合物を高圧ホモジナイザーで均質化させる工程。
【0098】
本発明のエマルションを製造する方法の特に好ましい実施態様において、前記方法は、以下の工程を含む:
a)
a−1)エマルションの水溶性成分の混合物、好ましくは、水、乳化剤及び等張化剤を含む混合物、特に、水、リン脂質、オレイン酸ナトリウム及びグリセロールを含有する混合物を調製する工程、
a−2)エマルションの油溶性成分を含む均質化混合物、好ましくはセミフッ化化合物、トリグリセリド及び抗酸化剤を含む混合物、より好ましくは、F6H8、MCT及びα−トコフェロールを含有する混合物を調製する工程、
a−3)工程a−1)で得られた混合物を工程a−2)で得られた混合物と組み合わせる工程;
により混合物を調製する工程;
b)工程a)で得られた混合物を均質化してプレエマルションを調製する工程
c)工程b)で得られた混合物を高圧ホモジナイザーでさらに均質化する工程。
【0099】
驚くべきことに、工程b)及び工程c)において、好ましくは30乃至70℃、より好
ましくは40乃至60℃の温度範囲でエマルションを均質化することにより、最もよい結果が得られることが見出された。
【0100】
製造方法のさらに好ましい実施態様において、エマルションを、好ましくは、少なくとも121℃で最短15分間の加熱により殺菌する工程d)が提供される。
【0101】
エマルションの好ましい量及び成分は、本発明のエマルションとあわせて言及される。
【0102】
本発明のさらなる態様は、磁気共鳴断層撮影(トモグラフ)を実施する方法である。この方法において、交流磁場が照射され、検査される試料による照射された磁場の吸収が検出される。これら方法の工程は、磁気共鳴断層撮影の通常の操作に対応する。本発明の方法は、本発明のエマルション中の下記式I:
CF
3−(CF
2)x−(CH
2)y−CH
3 (I)
(式中、xは1乃至8の整数を表し、及びyは2乃至10の整数を表す。)
で表されるセミフッ化化合物の検出に役立つ。
【0103】
本発明の方法は、交流磁場の周波数がB×40.045600MHz/T乃至B×40.065600MHz/T(Bはテスラによる磁場の強さである)であることを特徴とする。
【0104】
交流磁場に関して上述の周波数を得るために、下記の方法の工程が実施される:
【0105】
まず、交流磁場の周波数をB×40.05560MHz/Tで選択する。フッ素原子を含む未知化合物を検出するために、広い励起及び受信バンド幅(例えば+/−5kHz)が使用される。この励起バンドの中央は、フッ素原子のコアの励起周波数である(40.05560MHz/T)。この周波数は、ゼロ位置として定義される。
【0106】
励起の間、フッ素含有の未知化合物の特徴的なスペクトルが、特定のオフセット周波数で現れる。そうでない場合、選択されたバンド幅(例えば+/−5kHz)を広げる必要がある。
【0107】
特有のスペクトルが特定の周波数で検出された後、励起スペクトルを、適切なオフセット周波数の選択により、オフセット(補正)する。発明者らは、+/−100Hz乃至+/−10000Hzのオフセット周波数が適切であることを見出した。前記周波数の選択により、励起及び受信バンド幅を大幅に狭めることができ、よってノイズが低減でき、その結果、よりよい信号対雑音比が得られる。
【0108】
本発明のさらなる態様は、検査される試料中で、本発明のエマルション中の下記式I:CF
3−(CF
2)x−(CH
2)y−CH
3 (I)
(式中、xは1乃至8の整数を表し、及びyは2乃至10の整数を表す。)
で表されるセミフッ化化合物を検出する方法に関する。この方法は、交流磁場が照射され、検査される試料による照射された磁場の吸収が検出される。これらの工程は、磁気共鳴断層撮影の通常の操作に対応する。
【0109】
本発明によれば、少なくともひとつの
19Fフッ素プロトンイメージを、
1Hプロトンイメージ上に重ねあわせる。ここで
1Hプロトンイメージは、グレイスケールイメージとして表示され、
19Fフッ素プロトンイメージは、カラーグラデーションを用いて表示され、カラーグラデーションの一端が低濃度の
19Fフッ素プロトンを示し、このカラーグラデーションのもう一端が高濃度の
19Fフッ素プロトンを示す。
【0110】
これらの方法工程は、例えば、検出されたフッ素シグナルを患者の体の特定部分に帰属させるために使用される。この目的に関して、よりよい結果を得るために、
19Fボリュームと
1Hボリュームを挿入することができる。説明した通り、
1Hプロトンイメージはグレースケールイメージとして表示され、一方で
19Fフッ素プロトンイメージは、例えば、黒色から緑色に変化するカラーグラデーションにて、或いは、例えば青色から赤色に変化するカラーグラデションにて、表示される。
【0111】
第一に、3次元映像が生成される。しかしその後、検査される試料の横断面を示す、各レイヤーの2次元イメージが生成されることが好ましい。最大強度投影値(MIP’s)が算出されることが好ましい。これら2次元レイヤーイメージは、造影剤が存在する解剖学的構造の内部を総合的に示す。
【0112】
本発明の好ましい実施態様において、検査されない第二試料中の
19Fフッ素プロトンによって生成された妨害信号は、除外される。前記妨害信号は、例えば、患者の肝臓或いは脾臓
中の造影剤によって生成される。肝臓は心臓の非常に近くに存在しているため、例えば患者の心臓領域内の炎症の検出を試みる
イメージング工程の間、肝臓中の造影剤は、非常に強い妨害信号を引き起こし得る。
【0113】
前記妨害信号を除外するために、第一ピクセルのフッ素濃度に関する値と、この第一ピクセル周辺の3次元空間の全ての近傍ピクセルの値とを比較することが可能である。これによって、2つの近接したピクセルのフッ素濃度に関する値の相違が閾値を下回る場合、これら2つのピクセルは、ピクセルクラスタに属する、例えば患者の肝臓に属するとみなされる。このクラスタが検査される試料(この場合、患者の心臓)を示すものでない場合、この妨害ピクセルクラスタは、得られたイメージから除去できる。この妨害クラスタの除去は、例えば手作業で実施可能である。
【0114】
19Fフッ素イメージを
1Hプロトンイメージと重ね合わせるとき、これらイメージは、測定配置を変えずに得られるものであることが好ましく、これは、双方のデータセットが、同じボリューム値からの同じ信号を含むことを意味する。
【0115】
19フッ素プロトンイメージに存在し得るノイズは、異なる取得値を平均化することにより抑制できる。ノイズの標準偏差σが測定され、それにより、検出されるシグナルに関する閾値として3・σ又は5・σが使用され得る。これは、ノイズの標準偏差に比べて3倍高いシグナルのみが“本当の”シグナルであると認められることを意味する。この閾値は、得られたイメージをノイズ量に適合することができるように、使用者によって変化させ得る。最後に挙げた方法工程は、
1Hプロトンイメージには、これらがより高いSNRを有しているため、適用しないほうが好ましい。
【0116】
最後に挙げた発明の文脈中で議論された全ての方法工程は、基本的に信号処理工程と関連し、それ故、どんな時及び場所でも、データ取得プロセスから独立して実施され得る。とりわけ、これら方法工程の実施には、患者身体の存在は要求されない。
【0117】
本発明の方法にて使用されるエマルションの好ましい実施態様は、本発明のエマルションとあわせて記載される。
【0118】
以下、本発明を実施例によってさらに説明する: