(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、ホモポリマーとしてのガラス転移温度が70℃以上のハードモノマーを含有することを特徴とする請求項1または2に記載の粘着シート。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について説明する。
〔粘着シート〕
本実施形態に係る粘着シートは、プラスチック板および段差に貼付される粘着剤層を有するものである。本実施形態に係る粘着シートの粘着剤層は、一方の面に段差を有するプラスチック板における当該段差が存在する側の面に貼付されることが好ましい。そのため、主として、一方の面に段差を有するプラスチック板における当該段差が存在する側の面を貼付対象として説明するが、これに限定されるものではない。例えば、本実施形態に係る粘着シートの粘着剤層は、平坦なプラスチック板と、段差を有する所望の部材(例えば、ガラス板)とを接着するものであってもよい。
【0026】
図1に示すように、本実施形態に係る粘着シート1は、2枚の剥離シート12a,12bと、それら2枚の剥離シート12a,12bの剥離面と接するように当該2枚の剥離シート12a,12bに挟持された粘着剤層11とから構成される。なお、本明細書における剥離シートの剥離面とは、剥離シートにおいて剥離性を有する面をいい、剥離処理を施した面および剥離処理を施さなくても剥離性を示す面のいずれをも含むものである。
【0027】
1.粘着剤層
上記粘着剤層11は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)と、架橋剤(B)と、マクロモノマー(C)と、光重合開始剤(D)とを含有する粘着性組成物(以下「粘着性組成物P」という場合がある。)を架橋してなる粘着剤からなる。なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸及びメタクリル酸の両方を意味する。他の類似用語も同様である。また、「重合体」には「共重合体」の概念も含まれるものとする。
【0028】
粘着性組成物Pを架橋してなる粘着剤においては、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は架橋剤(B)によって架橋されて三次元網目構造を形成しており、複数のマクロモノマー(C)は互いに重合して重合体を形成し、その重合体が上記三次元網目構造の網目部分に絡み付き、隙間を埋めているものと推定される。かかる構造(以下「構造X」という場合がある。)を有する粘着剤は、凝集力は高いが、硬くはない。そのため、粘着剤層11は、耐ブリスター性に優れるとともに、段差追従性にも優れ、通常トレードオフの関係にある段差追従性と耐ブリスター性との両立が可能となっている。
【0029】
したがって、上記粘着剤層11をプラスチック板の段差が存在する側の面に貼付したときに、粘着剤層11がその段差に追従するため、段差近傍に浮きや気泡等のないものとなる。また、上記粘着剤層11と上記プラスチック板との積層体を耐久条件下においても、段差近傍に気泡等が発生することが抑制されるとともに、プラスチック板からアウトガスが発生しても、気泡、浮き、剥がれ等のブリスターが発生することが抑制される。
【0030】
(1)(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、反応性官能基を含有し、当該反応性官能基は、架橋剤(B)と反応する。(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマーとして、反応性官能基含有モノマーを含有することが好ましく、特に、アルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、反応性官能基含有モノマーと、所望により用いられる他のモノマーとを含有することが好ましい。重合体を構成するモノマーとして、アルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含有すると、得られる粘着剤は、好ましい粘着性を発現することができる。なお、当該(メタ)アクリル酸アルキルエステルから後述のハードモノマーは除かれる。
【0031】
アルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ペンチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n−デシル、(メタ)アクリル酸n−ドデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。中でも、粘着性をより向上させる観点から、アルキル基の炭素数が1〜8の(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、(メタ)アクリル酸n−ブチルおよび(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルが特に好ましい。なお、これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、アルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを1〜99質量%含有することが好ましく、特に5〜95質量%含有することが好ましく、さらには10〜85質量%含有することが好ましい。なお、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が後述のハードモノマーを含有する場合、アルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを10〜70質量%含有することが好ましく、特に30〜65質量%含有することが好ましい。
【0033】
上記反応性官能基含有モノマーとしては、分子内に水酸基を有するモノマー(水酸基含有モノマー)、分子内にカルボキシル基を有するモノマー(カルボキシル基含有モノマー)、分子内にアミノ基を有するモノマー(アミノ基含有モノマー)などが好ましく挙げられる。
【0034】
水酸基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル等が挙げられる。中でも、得られる(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)における水酸基の架橋剤(B)との反応性および他の単量体との共重合性の点から(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルが好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
カルボキシル基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸等のエチレン性不飽和カルボン酸が挙げられる。中でも、得られる(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)におけるカルボキシル基の架橋剤(B)との反応性および他の単量体との共重合性の点からアクリル酸が好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
アミノ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸n−ブチルアミノエチル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が、当該重合体を構成する反応性官能基含有モノマーとして水酸基含有モノマーを含有する場合、その含有量は、1〜30質量%であることが好ましく、特に5〜25質量%であることが好ましく、さらには15〜20質量%であることが好ましい。
【0038】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が、当該重合体を構成する反応性官能基含有モノマーとしてカルボキシル基含有モノマーを含有する場合、その含有量は、1〜30質量%であることが好ましく、特に5〜25質量%であることが好ましく、さらには10〜20質量%であることが好ましい。
【0039】
ここで、タッチパネル等が高温高湿の環境下に置かれると、粘着剤層中に水分が浸入し、タッチパネル等が常温に戻ったときに、粘着剤層が白化して透明性が低下する「湿熱白化」の問題がある。(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が反応性官能基含有モノマーを上記の範囲で含有すると、粘着剤層中に、所定量の反応性官能基が残存することとなる。反応性官能基は通常親水性基であり、そのような親水性基が所定量粘着剤層中に存在すると、粘着剤層が高温高湿条件下に置かれた場合でも、その高温高湿条件下で粘着剤層に浸入した水分との相溶性がよく、その結果、粘着剤層の白化が抑制され、粘着剤層11は耐湿熱白化性に優れたものとなる。
【0040】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、ホモポリマーとしてのガラス転移温度(Tg)が70℃以上のハードモノマーを含有することが好ましい。(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を構成するモノマー単位として、上記ハードモノマーを含有させることにより、得られる粘着剤は、耐ブリスター性により優れたものとなる。上記ハードモノマーのホモポリマーとしてのガラス転移温度(Tg)は、75〜200℃であることが好ましく、特に80〜180℃であることが好ましい。
【0041】
上記ハードモノマーとしては、例えば、メタクリル酸メチル(Tg105℃)、アクリル酸イソボルニル(Tg94℃)、メタクリル酸イソボルニル(Tg180℃)、アクリロイルモルホリン(Tg145℃)、アクリル酸アダマンチル(Tg115℃)、メタクリル酸アダマンチル(Tg141℃)、ジメチルアクリルアミド(Tg89℃)、アクリルアミド(Tg165℃)等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
上記ハードモノマーの中でも、粘着性や透明性等の他の特性への悪影響を防止しつつハードモノマーの性能をより発揮させる観点から、メタクリル酸メチル、アクリル酸イソボルニルおよびアクリロイルモルホリンがより好ましく、メタクリル酸メチルが特に好ましい。
【0043】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、上記ハードモノマーを5〜35質量%含有することが好ましく、特に10〜30質量%含有することが好ましく、さらには15〜25質量%含有することが好ましい。上記ハードモノマーを5質量%以上含有することにより、当該モノマー単位による耐ブリスター性の改善効果を見込むことができる。一方、上記ハードモノマーを35質量%以下の含有量とすることにより、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)中におけるそれ以外のモノマー単位の相対的な不足を防止し、得られる粘着剤の粘着性、段差追従性および耐湿熱白化性を良好なものとすることができる。
【0044】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、当該重合体を構成するモノマー単位として、水酸基含有モノマーおよび上記ハードモノマーを、それぞれ前述した範囲で含有することが好ましい。これにより、得られる粘着剤は、耐ブリスター性がさらに優れたものとなる。
【0045】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、所望により、当該重合体を構成するモノマー単位として、他のモノマーを含有してもよい。他のモノマーとしては、水酸基含有モノマーの作用を妨げないためにも、反応性を有する官能基を含まないモノマーが好ましい。かかる他のモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等の脂肪族環を有する(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノプロピル等の非架橋性の3級アミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステル、酢酸ビニル、スチレンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重合態様は、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよい。
【0047】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重量平均分子量(Mw)は、10万〜150万であることが好ましく、特に20万〜130万であることが好ましく、さらには30万〜80万であることが好ましい。なお、本明細書における重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定した標準ポリスチレン換算の値である。
【0048】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重量平均分子量が上記の範囲内にあることにより、前述した構造Xを良好に形成することができ、段差追従性および耐ブリスター性がより優れたものとなる。
【0049】
なお、粘着性組成物Pにおいて、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0050】
(2)架橋剤(B)
粘着性組成物Pを加熱等すると、架橋剤(B)は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の反応性官能基と反応する。これにより、架橋剤(B)によって(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が架橋され、三次元網目構造が形成される。
【0051】
架橋剤(B)としては、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が有する反応性官能基と反応するものであればよく、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アミン系架橋剤、メラミン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、ヒドラジン系架橋剤、アルデヒド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、アンモニウム塩系架橋剤等が挙げられる。上記の中でも、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が有する反応性官能基が水酸基の場合、水酸基との反応性に優れたイソシアネート系架橋剤を使用することが好ましく、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が有する反応性官能基がカルボキシル基の場合、カルボキシル基との反応性に優れたエポキシ系架橋剤を使用することが好ましい。なお、架橋剤(B)は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0052】
イソシアネート系架橋剤は、少なくともポリイソシアネート化合物を含むものである。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネートなど、及びそれらのビウレット体、イソシアヌレート体、さらにはエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油等の低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体などが挙げられる。中でも水酸基との反応性の観点から、トリメチロールプロパン変性の芳香族ポリイソシアネート、特にトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネートおよびトリメチロールプロパン変性キシリレンジイソシアネートが好ましい。
【0053】
エポキシ系架橋剤としては、例えば、1,3−ビス(N,N’−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルアミン等が挙げられる。
【0054】
粘着性組成物P中における架橋剤(B)の含有量は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部に対して、0.001〜10質量部であることが好ましく、特に0.01〜5質量部であることが好ましく、さらには0.02〜1質量部であることが好ましい。
【0055】
架橋剤(B)の含有量が上記の範囲にあることにより、前述した構造Xを良好に形成することができ、段差追従性および耐ブリスター性がより優れたものとなる。
【0056】
(3)マクロモノマー(C)
マクロモノマー(C)は、重合性基を有する高分子量のモノマーである。重合性基としては、エチレン性不飽和基が好ましく、具体的には、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基等が挙げられ、中でも(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0057】
マクロモノマー(C)は、1分子中に重合性基を1個以上有するが、その数は、1〜3個であることが好ましく、特に1〜2個であることが好ましく、さらには1個であることが好ましい。重合性基は、マクロモノマー(C)の側鎖に存在してもよいが、末端に存在することが好ましく、特に一方の末端のみに存在することが好ましい。重合性基がこのように存在することにより、マクロモノマー(C)同士のラジカル重合が良好に進行し得る。
【0058】
マクロモノマー(C)の主鎖部分は、(メタ)アクリル酸エステルをモノマー構成単位とする重合体であることが好ましい。すなわち、マクロモノマー(C)は、(メタ)アクリル酸エステルマクロモノマーであることが好ましい。(メタ)アクリル酸エステルマクロモノマーは、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)(架橋剤(B)によって架橋された(メタ)アクリル酸エステル重合体(A))との相溶性に優れ、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)および架橋剤(B)によって構成される三次元網目構造に絡み付きやすく、前述した構造Xを良好に形成することができる。
【0059】
マクロモノマー(C)を構成する(メタ)アクリル酸エステルは、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。かかる(メタ)アクリル酸エステルとしては、アルキル基の炭素数が1〜10の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、特にアルキル基の炭素数が1〜6の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、さらにはアルキル基の炭素数が1〜4の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましい。それらの中でも、特にメタクリル酸メチル(MMA)およびアクリル酸n−ブチル(BA)が好ましい。すなわち、上記(メタ)アクリル酸エステルマクロモノマーは、メタクリル酸メチルマクロモノマーまたはアクリル酸ブチルマクロモノマーであることが好ましい。それらのマクロモノマーは、混合して使用することもできる。
【0060】
メタクリル酸メチルマクロモノマーは、耐ブリスター性の観点から好ましく、アクリル酸ブチルマクロモノマーは、相溶性(透明性)の観点から好ましい。
【0061】
マクロモノマー(C)の数平均分子量(Mn)は、500〜100,000であることが好ましく、特に1,000〜50,000であることが好ましく、さらには2,000〜10,000であることが好ましい。なお、本明細書における数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定した標準ポリスチレン換算の値である。
【0062】
マクロモノマー(C)の数平均分子量が上記の範囲内にあることにより、前述した構造Xを良好に形成することができ、段差追従性および耐ブリスター性がより優れたものとなる。
【0063】
なお、粘着性組成物Pにおいて、マクロモノマー(C)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0064】
粘着性組成物Pにおけるマクロモノマー(C)の含有量は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部に対して0.1〜10質量部であることが好ましく、特に0.5〜7質量部であることが好ましく、さらには1〜4質量部であることが好ましい。マクロモノマー(C)の含有量が上記の範囲にあることで、前述した効果がより発揮される。マクロモノマー(C)の含有量が多過ぎると、段差追従性能が低下するおそれがある。
【0065】
(4)光重合開始剤(D)
マクロモノマー(C)を重合させるには、通常、粘着性組成物Pに紫外線を照射する。粘着性組成物Pが光重合開始剤(D)を含有することにより、マクロモノマー(C)を効率良く重合させることができ、また重合硬化時間および紫外線の照射量を少なくすることができる。
【0066】
光重合開始剤(D)としては、例えば、ベンソイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−2−(ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p−フェニルベンゾフェノン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−ターシャリ−ブチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、p−ジメチルアミノ安息香酸エステル、オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−1[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン]、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0067】
粘着性組成物Pにおける光重合開始剤(D)の含有量は、マクロモノマー(C)100質量部に対して1〜20質量部であることが好ましく、特に5〜15質量部であることが好ましい。
【0068】
(5)シランカップリング剤(E)
粘着性組成物Pは、さらにシランカップリング剤(E)を含有することが好ましい。これにより、被着体にガラス部材があると、粘着剤層11は、当該ガラス部材との密着性が向上する。また、被着体がプラスチック板であっても、粘着剤層11は、プラスチック板との密着性が向上し、耐ブリスター性により優れたものとなる。
【0069】
シランカップリング剤(E)としては、分子内にアルコキシシリル基を少なくとも1個有する有機ケイ素化合物であって、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)との相溶性がよいものが好ましい。また、粘着シート1が光学用途の場合には、光透過性を有するシランカップリング剤が好適である。
【0070】
かかるシランカップリング剤(E)としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の重合性不飽和基含有ケイ素化合物、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ構造を有するケイ素化合物、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン等のメルカプト基含有ケイ素化合物、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノ基含有ケイ素化合物、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、あるいはこれらの少なくとも1つと、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン等のアルキル基含有ケイ素化合物との縮合物などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0071】
シランカップリング剤(E)の添加量は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部に対して0.01〜1.0質量部であることが好ましく、特に0.05〜0.5質量部であることが好ましい。
【0072】
(6)各種添加剤
粘着性組成物Pには、所望により、アクリル系粘着剤に通常使用されている各種添加剤、例えば帯電防止剤、粘着付与剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、軟化剤、充填剤、屈折率調整剤などを添加することができる。
【0073】
(7)粘着性組成物の製造
粘着性組成物Pは、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を製造し、得られた(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)と、架橋剤(B)と、マクロモノマー(C)と、光重合開始剤(D)とを混合するとともに、所望により、シランカップリング剤(E)、他の添加剤等を加えることで製造することができる。
【0074】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、重合体を構成するモノマー単位の混合物を通常のラジカル重合法で重合することにより製造することができる。(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重合は、所望により重合開始剤を使用して、溶液重合法等により行うことができる。重合溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、トルエン、アセトン、ヘキサン、メチルエチルケトン等が挙げられ、2種類以上を併用してもよい。
【0075】
重合開始剤としては、アゾ系化合物、有機過酸化物等が挙げられ、2種類以上を併用してもよい。アゾ系化合物としては、例えば、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1'−アゾビス(シクロヘキサン1−カルボニトリル)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)、ジメチル2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、4,4'−アゾビス(4−シアノバレリック酸)、2,2'−アゾビス(2−ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、2,2'−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]等が挙げられる。
【0076】
有機過酸化物としては、例えば、過酸化ベンゾイル、t-ブチルパーベンゾエイト、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2−エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシビバレート、(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、ジアセチルパーオキシド等が挙げられる。
【0077】
なお、上記重合工程において、2−メルカプトエタノール等の連鎖移動剤を配合することにより、得られる重合体の重量平均分子量を調節することができる。
【0078】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が得られたら、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の溶液に、架橋剤(B)、マクロモノマー(C)、光重合開始剤(D)、および所望により希釈溶剤・添加剤を添加し、十分に混合することにより、溶剤で希釈された粘着性組成物P(塗布溶液)を得る。
【0079】
上記希釈溶剤としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、塩化メチレン、塩化エチレン等のハロゲン化炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール等のアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、イソホロン、シクロヘキサノン等のケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル、エチルセロソルブ等のセロソルブ系溶剤などが用いられる。
【0080】
このようにして調製された塗布溶液の濃度・粘度としては、コーティング可能な範囲であればよく、特に制限されず、状況に応じて適宜選定することができる。例えば、粘着性組成物Pの濃度が10〜40質量%となるように希釈する。なお、塗布溶液を得るに際して、希釈溶剤等の添加は必要条件ではなく、粘着性組成物Pがコーティング可能な粘度等であれば、希釈溶剤を添加しなくてもよい。この場合、粘着性組成物Pは、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重合溶媒をそのまま希釈溶剤とする塗布溶液となる。
【0081】
(8)粘着剤層の形成
粘着剤層11は、粘着性組成物Pを架橋してなるものである。粘着性組成物Pの架橋は、加熱処理および紫外線の照射により好ましく行うことができる。なお、加熱処理は、粘着性組成物Pの希釈溶剤等を揮発させる際の乾燥処理で兼ねることもできる。
【0082】
加熱処理を行う場合、加熱温度は、50〜150℃であることが好ましく、特に70〜120℃であることが好ましい。また、加熱時間は、30秒〜10分であることが好ましく、特に50秒〜2分であることが好ましい。
【0083】
紫外線の照射量は、光量で50〜1000mJ/cm
2が好ましく、特に100〜500mJ/cm
2が好ましい。
【0084】
上記の加熱処理により、架橋剤(B)を介して(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が良好に架橋され、三次元網目構造が形成される。また、上記の紫外線照射により、マクロモノマー(C)が重合するとともに、その重合体が上記三次元網目構造の網目部分に絡み付き、隙間を埋めるものと推定される。
【0085】
(9)粘着剤層の厚さ
粘着剤層11の厚さ(JIS K7130に準じて測定した値)は、10〜300μmであることが好ましく、特に20〜200μmであることが好ましく、さらには50〜100μmであることが好ましい。粘着剤層11の厚さが10μm以上であると、良好な接着性および段差追従性が発揮され得る。また、粘着剤層11の厚さが300μm以下であると、加工性が良好になる。なお、粘着剤層11は単層で形成してもよいし、複数層を積層して形成することもできる。
【0086】
2.剥離シート
剥離シート12a,12bとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン酢酸ビニルフィルム、アイオノマー樹脂フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム等が用いられる。また、これらの架橋フィルムも用いられる。さらに、これらの積層フィルムであってもよい。
【0087】
上記剥離シート12a,12bの剥離面(特に粘着剤層11と接する面)には、剥離処理が施されていることが好ましい。剥離処理に使用される剥離剤としては、例えば、アルキッド系、シリコーン系、フッ素系、不飽和ポリエステル系、ポリオレフィン系、ワックス系の剥離剤が挙げられる。なお、剥離シート12a,12bのうち、一方の剥離シートを剥離力の大きい重剥離型剥離シートとし、他方の剥離シートを剥離力の小さい軽剥離型剥離シートとすることが好ましい。
【0088】
剥離シート12a,12bの厚さについては特に制限はないが、通常20〜150μm程度である。
【0089】
3.粘着シートの製造
粘着シート1の一製造例としては、一方の剥離シート12a(または12b)の剥離面に、上記粘着性組成物Pの塗布液を塗布し、加熱処理および紫外線照射を行って粘着性組成物Pを架橋し、粘着剤層11を形成した後、その粘着剤層11に他方の剥離シート12b(または12a)の剥離面を重ね合わせる。加熱処理および紫外線照射の条件については、前述した通りである。
【0090】
粘着シート1の他の製造例としては、一方の剥離シート12aの剥離面に、上記粘着性組成物Pの塗布液を塗布し、加熱処理を行って粘着性組成物Pを架橋し、塗布層を形成して、塗布層付きの剥離シート12aを得る。また、他方の剥離シート12bの剥離面に、上記粘着性組成物Pの塗布液を塗布し、加熱処理を行って粘着性組成物Pを架橋し、塗布層を形成して、塗布層付きの剥離シート12bを得る。そして、塗布層付きの剥離シート12aと塗布層付きの剥離シート12bとを、両塗布層が互いに接触するように貼り合わせる。その後、剥離シート12aまたは剥離シート12b越しに、積層された塗布層に対して紫外線照射を照射し、当該塗布層を粘着剤層11とする。これにより、上記粘着シート1が得られる。この製造例によれば、粘着剤層11が厚い場合であっても、安定して製造することが可能となる。
【0091】
上記粘着性組成物Pの塗布液を塗布する方法としては、例えばバーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等を利用することができる。
【0092】
4.物性
(1)粘着力
粘着剤層11を厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルムからなる基材上に積層した積層体の粘着剤層11側の面を、ソーダガラスに貼付した場合における、当該積層体のソーダガラスに対する粘着力は、5〜80N/25mmであることが好ましく、特に10〜70N/25mmであることが好ましく、さらには15〜50N/25mmであることが好ましい。粘着力が上記範囲にあることにより、タッチパネル等を構成する構成部材が確実に接着される。
【0093】
なお、ここでいう粘着力は、基本的にはJIS Z0237:2009に準じた180°引き剥がし法により測定した粘着力をいうが、測定サンプルは25mm幅、100mm長とし、当該測定サンプルを被着体に対し0.5MPa、50℃で20分加圧して貼付した後、常圧、23℃、50%RHの条件下で24時間放置してから、剥離速度300mm/minにて測定するものとする。
【0094】
(2)ゲル分率
本実施形態における粘着剤層11を構成する粘着剤のゲル分率は、15〜95%であることが好ましく、特に40〜90%であることが好ましく、さらには60〜85%であることが好ましい。ゲル分率が15%以上であると、粘着剤の凝集力が十分なものとなり、優れた耐ブリスター性が発揮される。一方、ゲル分率が95%以下であると、優れた段差追従性能が発揮されるとともに、粘着力を高く維持することができる。なお、ゲル分率の測定方法は後述する試験例に示す通りである。
【0095】
(3)ヘイズ値
本実施形態における粘着剤層11は、ヘイズ値(JIS K7136:2000に準じて測定した値)が、3%以下であることが好ましく、特に2%以下であることが好ましく、さらには1%以下であることが好ましい。ヘイズ値が3%以下であると、透明性が非常に高く、光学用途として好適なものとなる。なお、粘着剤層11のヘイズ値は、後述する耐湿熱白化性の評価試験後においても上記範囲内にあることが特に好ましい。
【0096】
〔積層体〕
本実施形態に係る積層体は、一方の面に段差を有するプラスチック板と、そのプラスチック板における上記段差が存在する側の面に積層された粘着剤層とを備えた積層体であって、当該粘着剤層が、前述した粘着シート1の粘着剤層11である積層体である。その粘着剤層におけるプラスチック板とは反対側の面には、表示体モジュールまたは表示体モジュールを含む部材が積層されていることが好ましく、この場合、上記プラスチック板は、表示体モジュールの保護板であることが好ましい。以下、
図2を参照して、この実施形態に係る積層体について説明する。
【0097】
図2に示すように、本実施形態に係る積層体2は、保護板21と、表示体モジュールまたは表示体モジュールを含む部材(以下、包括して「表示体モジュール22」という。)と、それらの間に位置し、保護板21および表示体モジュール22に挟持される粘着剤層11とから構成される。また、本実施形態に係る積層体2では、保護板21は、粘着剤層11側の面に段差を有しており、具体的には、印刷層3の有無による段差を有している。
【0098】
保護板21は、プラスチック板を主体として構成される。プラスチック板としては、特に限定されることなく、例えば、ポリメチルメタクリレート等からなるアクリル板、ポリカーボネート板などが挙げられる。プラスチック板の厚さは、特に限定されないが、通常は0.2〜5mmであり、好ましくは0.4〜3mmである。
【0099】
なお、上記プラスチック板の片面または両面には、各種の機能層(透明導電膜、金属層、シリカ層、ハードコート層、防眩層等)が設けられていてもよいし、光学部材が積層されていてもよい。透明導電膜および金属層は、パターニングされていてもよい。
【0100】
透明導電膜としては、例えば、白金、金、銀、銅等の金属、酸化スズ、酸化インジウム、酸化カドミウム、酸化亜鉛、二酸化亜鉛等の酸化物、スズドープ酸化インジウム(ITO)、酸化亜鉛ドープ酸化インジウム、フッ素ドープ酸化インジウム、アンチモンドープ酸化スズ、フッ素ドープ酸化スズ、アルミニウムドープ酸化亜鉛等の複合酸化物、カルコゲナイド、六ホウ化ランタン、窒化チタン、炭化チタン等の非酸化化合物などからなるものが挙げられ、中でもスズドープ酸化インジウム(ITO)からなるものが好ましい。
【0101】
上記光学部材としては、例えば、偏光板(偏光フィルム)、偏光子、位相差板(位相差フィルム)、視野角補償フィルム、輝度向上フィルム、コントラスト向上フィルム、液晶ポリマーフィルム、拡散フィルム、ハードコートフィルム、半透過反射フィルム等が挙げられる。
【0102】
表示体モジュール22としては、例えば、液晶(LCD)モジュール、発光ダイオード(LED)モジュール、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)モジュール、電子ペーパー等の表示体モジュール、またはそれら表示体モジュールと、1又は2以上のフィルムセンサー、所望の基材等とを積層してなる部材などが挙げられる。フィルムセンサーは、透明導電膜を有していてもよく、透明導電膜はパターニングされていてもよい。
【0103】
上記印刷層3は、保護板21における粘着剤層11側に、額縁状に形成されることが一般的であるが、これに限定されるものではない。印刷層3を構成する材料は特に限定されることなく、印刷用の公知の材料が使用される。印刷層3の厚さ、すなわち段差の高さは、3〜45μmであることが好ましく、5〜35μmであることがより好ましく、7〜25μmであることが特に好ましく、7〜15μmであることがさらに好ましい。
【0104】
また、印刷層3の厚さ(段差の高さ)は、粘着剤層11の厚さの3〜30%であることが好ましく、特に3.2〜20%であることが好ましく、さらには3.5〜15%であることが好ましい。これにより、粘着剤層11は、印刷層3による段差に確実に追従し、段差近傍に浮きや気泡等が発生しない。
【0105】
上記積層体2を製造するには、一例として、まず、粘着シート1の一方の剥離シート12a(または12b)を剥離して、粘着シート1の露出した粘着剤層11と保護板21とを貼合する。次いで、粘着シート1の粘着剤層11から他方の剥離シート12b(または12a)を剥離して、粘着シート1の露出した粘着剤層11と表示体モジュール22とを貼合する。
【0106】
上記工程において粘着剤層11と保護板21とを貼合するとき、粘着剤層11は段差追従性に優れるため、印刷層3による段差と粘着剤層11との間に浮きや気泡ができ難く、粘着剤層11が当該段差を埋めることができる。
【0107】
上記積層体2においては、高温高湿条件を施した場合でも、粘着剤層11は段差追従性に優れるため、段差近傍に気泡等が発生することが抑制される。また、プラスチック板21からアウトガスが発生した場合でも、粘着剤層11は耐ブリスター性に優れるため、気泡、浮き、剥がれ等のブリスターの発生が抑制される。
【0108】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0109】
例えば、粘着シート1における剥離シート12a,12bのいずれか一方は省略されてもよい。また、保護板21は、印刷層3以外の段差を有するものであってもよい。また、保護板21は段差を有しておらず、表示体モジュール22が粘着剤層11側に段差を有していてもよい。さらには、保護板21および表示体モジュール22の両者が粘着剤層11側に段差を有していてもよい。
【実施例】
【0110】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0111】
〔実施例1〕
1.(メタ)アクリル酸エステル重合体の調製
アクリル酸2−エチルヘキシル62.5質量部、メタクリル酸メチル22.5質量部およびアクリル酸2−ヒドロキシエチル15質量部を共重合させて、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を調製した。この(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の分子量を後述する方法で測定したところ、重量平均分子量60万であった。
【0112】
2.粘着性組成物の調製
上記工程(1)で得られた(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部(固形分換算値;以下同じ)と、架橋剤(B)としてのトリレンジイソシアネート系架橋剤(東洋インキ製造社製,製品名「BHS8515」)0.23質量部と、マクロモノマー(C)としてのメタクリル酸メチルマクロモノマー(東亞合成社製,製品名「AA−6」,片末端メタクリロイル基,数平均分子量:6000)1質量部と、光重合開始剤(D)としてベンゾフェノンおよび1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンを1:1の質量比で混合したもの(チバ・スペシャリティケミカルズ社製,イルガキュア500)0.1質量部と、シランカップリング剤(E)としての3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製,製品名「KBM−403」)0.25質量部とを混合し、十分に撹拌して、メチルエチルケトンで希釈することにより、固形分濃度35質量%の粘着性組成物の塗布溶液を得た。
【0113】
ここで、当該粘着性組成物の配合を表1に示す。なお、表1に記載の略号等の詳細は以下の通りである。
[(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)]
2EHA:アクリル酸2−エチルヘキシル
MMA:メタクリル酸メチル
HEA:アクリル酸2−ヒドロキシエチル
BA:アクリル酸n−ブチル
AA:アクリル酸
[架橋剤(B)]
BHS8515:トリレンジイソシアネート系架橋剤(東洋インキ製造社製,製品名「BHS8515」)
TC−5:エポキシ系架橋剤(三菱ガス化学社製,製品名「TC−5」)
[マクロモノマー(C)]
AA−6:メタクリル酸メチルマクロモノマー(東亞合成社製,製品名「AA−6」,片末端メタクリロイル基,数平均分子量:6000)
AB−6:アクリル酸ブチルマクロモノマー(東亞合成社製,製品名「AB−6」,片末端メタクリロイル基,数平均分子量:6000)
【0114】
3.粘着シートの製造
得られた粘着性組成物の塗布溶液を、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した重剥離型剥離シート(リンテック社製,製品名「PET752150」)の剥離処理面に、乾燥後の厚さが25μmになるようにナイフコーターで塗布したのち、90℃で1分間加熱処理して塗布層を形成した。同様に、得られた粘着性組成物の塗布溶液を、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した軽剥離型剥離シート(リンテック社製,製品名「PET382120」)の剥離処理面に、乾燥後の厚さが25μmになるようにナイフコーターで塗布したのち、90℃で1分間加熱処理して塗布層を形成した。
【0115】
次いで、上記で得られた塗布層付きの重剥離型剥離シートと、上記で得られた塗布層付きの軽剥離型剥離シートとを、両塗布層が互いに接触するように貼合した。その後、軽剥離型剥離シート越しに以下の条件で紫外線を照射して、上記塗膜層を粘着剤層にすることにより、重剥離型剥離シート/粘着剤層(厚さ:50μm)/軽剥離型剥離シートの構成からなる粘着シートを作製した。なお、粘着剤層の厚さは、JIS K7130に準拠し、定圧厚さ測定器(テクロック社製,製品名「PG−02」)を使用して測定した値である。
<紫外線照射条件>
・フュージョン社製無電極ランプ Hバルブ使用
・照度600mW/cm
2,光量150mJ/cm
2
・UV照度・光量計はアイグラフィックス社製「UVPF−36」を使用
【0116】
〔実施例2〜5,比較例1〜6〕
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を構成する各モノマーの種類および割合、架橋剤(B)の種類および配合量、マクロモノマー(C)の種類および配合量、ならびに光重合開始剤(D)の配合量を表1に示すように変更する以外、実施例1と同様にして粘着シートを製造した。
【0117】
ここで、前述した重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件で測定(GPC測定)したポリスチレン換算の重量平均分子量である。
<測定条件>
・GPC測定装置:東ソー社製,HLC−8020
・GPCカラム(以下の順に通過):東ソー社製
TSK guard column HXL−H
TSK gel GMHXL(×2)
TSK gel G2000HXL
・測定溶媒:テトラヒドロフラン
・測定温度:40℃
【0118】
〔試験例1〕(粘着力の測定)
実施例および比較例で得られた粘着シートから軽剥離型剥離シートを剥がし、露出した粘着剤層を、易接着層を有するポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡社製,PET A4300,厚さ:100μm)の易接着層に貼合した。その積層体を、幅25mm、長さ100mmに裁断し、これをサンプルとした。当該サンプルから重剥離型剥離シートを剥がし、露出した粘着剤層を、ソーダガラスに貼付した。
【0119】
その後、常圧、23℃、50%RHの条件下で24時間放置してから、引張試験機(オリエンテック社製,テンシロン)を用い、JIS Z0237:2009に準じて、剥離速度300mm/min、剥離角度180°の条件で粘着力(N/25mm)を測定した。結果を表2に示す。
【0120】
〔試験例2〕(ゲル分率の測定)
実施例および比較例で得られた粘着シートを80mm×80mmのサイズに裁断して、その粘着剤層をポリエステル製メッシュ(メッシュサイズ200)に包み、その質量を精密天秤にて秤量し、上記メッシュ単独の質量を差し引くことにより、粘着剤のみの質量を算出した。このときの質量をM1とする。
【0121】
次に、上記ポリエステル製メッシュに包まれた粘着剤を、室温下(23℃)で酢酸エチルに24時間浸漬させた。その後粘着剤を取り出し、温度23℃、相対湿度50%の環境下で、24時間風乾させ、さらに80℃のオーブン中にて12時間乾燥させた。乾燥後、その質量を精密天秤にて秤量し、上記メッシュ単独の質量を差し引くことにより、粘着剤のみの質量を算出した。このときの質量をM2とする。ゲル分率(%)は、(M2/M1)×100で表される。結果を表2に示す。
【0122】
〔試験例3〕(ヘイズ値の測定)
実施例および比較例で得られた粘着シートの粘着剤層(厚さ:50μm)について、ヘイズメーター(日本電色工業社製,NDH2000)を用いて、JIS K7136:2000に準じてヘイズ値(%)を測定した。結果を表2に示す。
【0123】
〔試験例4〕(段差追従性評価)
(a)評価用サンプルの作製
ポリメチルメタクリレート(PMMA)からなるアクリル板(三菱ガス化学社製,ユーピロン・シート MR200,厚さ:1mm)の表面に、紫外線硬化型インク(帝国インキ社製,製品名「POS−911墨」)を塗布厚が5μm、10μm及び15μmのいずれか1つとなるように額縁状(外形:縦90mm×横50mm,幅5mm)にスクリーン印刷した。次いで、紫外線を照射(80W/cm
2,メタルハライドランプ2灯,ランプ高さ15cm,ベルトスピード10〜15m/分)して、印刷した上記紫外線硬化型インクを硬化させ、印刷による段差(段差の高さ:5μm、10μm及び15μmのいずれか1つ)を有する段差付プラスチック板を作製した。
【0124】
実施例および比較例で得られた粘着シートから軽剥離型剥離シートを剥がし、露出した粘着剤層を、易接着層を有するポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡社製,PET A4300,厚さ:100μm)の易接着層に貼合した。次いで、重剥離型剥離シートを剥がし、粘着剤層を表出させた。そして、ラミネーター(フジプラ社製,製品名「LPD3214」)を用いて、粘着剤層が額縁状の印刷全面を覆うように上記積層体を各段差付プラスチック板にラミネートし、これを評価用サンプルとした。
【0125】
(b)評価用サンプルの評価
得られた評価用サンプルを、50℃、0.5MPaの条件下で30分間オートクレーブ処理した後、さらに85℃、85%RHの湿熱条件下にて72時間保管した。その後、粘着剤層(特に印刷層による段差の近傍)を目視により確認し、以下の基準により段差追従性を評価した。結果を表2に示す。
◎:気泡、浮きおよび剥がれが全くなかった。
○:直径0.2mm以下の気泡のみが発生した。
×:直径0.2mm超の気泡、浮きまたは剥がれが発生した。
【0126】
〔試験例5〕(耐ブリスター性評価)
実施例および比較例で得られた粘着シートの粘着剤層を、片面にスズドープ酸化インジウム(ITO)からなる透明導電膜が設けられたポリエチレンテレフタレートフィルム(尾池工業社製,ITOフィルム,厚さ:125μm)の透明導電膜と、ポリメチルメタクリレート(PMMA)からなるアクリル板(三菱ガス化学社製,ユーピロン・シート MR200,厚さ:1mm)またはポリカーボネート(PC)板(三菱ガス化学社製,ユーピロン・シート MR58,厚さ:1mm)とで挟み、積層体を得た。
【0127】
得られた積層体を、50℃、0.5MPaの条件下で30分間オートクレーブ処理した後、常圧、23℃、50%RHにて15時間放置した。次いで、85℃、85%RHの耐久条件下にて72時間保管した。その後、粘着剤層に気泡、浮きまたは剥がれがないか否か、目視により確認し、以下の基準により耐ブリスター性を評価した。結果を表2に示す。
◎…気泡、浮きおよび剥がれが全くなかった。
○…直径0.1mm以下の気泡のみが発生した。
×…直径0.1mm超の気泡、浮きまたは剥がれが発生した。
【0128】
〔試験例6〕(耐湿熱白化評価)
実施例または比較例で得られた粘着シートの粘着剤層を、厚さ1.1mmの無アルカリガラス2枚で挟み、その積層体をサンプルとした。
【0129】
まず、得られたサンプルのヘイズ値(湿熱条件前のヘイズ値)を測定した。次に、当該サンプルを85℃、85%RHの湿熱条件下にて72時間保管した。その後、23℃、50%RH(常温常湿)の雰囲気に戻し、30分以内に当該サンプルのヘイズ値(湿熱条件後のヘイズ値)を測定した。ヘイズ値は、JIS K7136:2000に準じて、ヘイズメーター(日本電色工業社製,製品名「NDH2000」)を用いて測定した。
【0130】
上記湿熱条件後のヘイズ値から上記湿熱条件前のヘイズ値を差し引いて、湿熱条件後のヘイズ値上昇(ポイント)を算出した。結果を表2に示す。このヘイズ値上昇が絶対値で1.0ポイント未満であれば、耐湿熱白化性が良好ということができる。
【0131】
【表1】
【0132】
【表2】
【0133】
表2から分かるように、実施例で得られた粘着シートは、段差追従性、耐ブリスター性および耐湿熱白化性のいずれにも優れていた。