(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記折り返し部分は、前記サイドエアバッグの展開膨張時に前記シートフレームから反力を受けて、前記重ね合わせ部分を、車幅方向の前記車両部材に向かう方向へ押し出すことが可能なように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用サイドエアバッグ装置。
前記折り返し部分は、前記サイドエアバッグの展開膨張時に前記シートフレームから反力を受けて、前記重ね合わせ部分を、車幅方向の前記車両部材に向かう方向へ押し出すことが可能なように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用サイドエアバッグ装置。
前記サイドエアバッグは、広げた状態で、前記折り返し部分と前記重ね合わせ部分との間に、追加の折り返しを有する追加の折り返し部分を有し、展開前の収納状態で、該追加の折り返し部分は、該折り返し部分と並行な配置で、車両前方から車両後方へ向けてもしくは反対方向に向けて、該追加の折り返しにより少なくとも1回折り返されて形成され、該重ね合わせ部分は、車幅方向に該追加の折り返し部分と該折り返し部分との間に配置されることを特徴とする請求項1〜6いずれかの項に記載の車両用サイドエアバッグ装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
サイドエアバッグは、側突対策として、乗員と乗員の車幅方向側方に位置している車両部材、例えばドア等との間で、車両前方に向かって展開膨張していく。上記背景技術では、サイドエアバッグをスピーディに且つ円滑に上方へ向けて広げてゆくことを企図している。この場合、サイドエアバッグが乗員の腕の下方に進入してしまって、あるいは、乗員の腕がサイドエアバッグの上に位置してしまって、当該サイドエアバッグにより乗員の腕が直接的に強くかつ瞬時に跳ね上げられ、このため、乗員に対して不必要な負荷を与えてしまうと共に、乗員の姿勢が崩されて、適正な乗員拘束性能を確保できなくなってしまうおそれがあるという課題があった。
【0008】
本発明は上記従来の課題に鑑みて創案されたものであって、展開膨張するサイドエアバッグによる乗員の腕の跳ね上げ作用を軽減・緩和することが可能で、乗員拘束性能を向上することが可能な車両用サイドエアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明にかかる車両用サイドエアバッグ装置は、車両のシートに内蔵され、該シートから乗員と乗員の車幅方向側方に位置される車両部材との間へ展開膨張可能なサイドエアバッグと、上記シートのシートフレームに取り付け可能で、上記サイドエアバッグにインフレータガスを導入するインフレータとを備え、該インフレータは、上記サイドエアバッグ内部にその展開膨張方向後端部近傍に収容して設けられ、上記サイドエアバッグは、
展開状態で、上記インフレータが収容される高さ方向範囲が下方部分
(2b)とされ、該インフレータよりも上方の高さ方向範囲が上方部分
(2c)とされて、該上方部分
(2c)が車両前後方向前方に向かって、斜め上方へ指向するように形成され、前記サイドエアバッグは、上記上方部分
(2c)が上記下方部分
(2b)に重なるように下方へ向けて折り畳まれた
状態で、上記インフレータ側からその展開膨張方向前端部に向かって
順に、折り返し
(F1)を有する折り返し部分
(X1)と重ね合わせ部分
(S)とを一連に有し、
上記サイドエアバッグの展開前の収納状態で、
上記一連の該折り返し部分
(X1)と上記重ね合わせ部分(S)とは、該インフレータの車両前後方向前方側で、車両前方から車両後方へ向けて
折り返し(F1)で該重ね合わせ部分(S)が重なり合うように該折り返し部分(X1)が折り返
され、該折り返し部分(X1)が上記シートへの取り付け時に上記シートフレームに当接される当接部
(Q)を含むように形成され、
上記折り返し(F1)は、高さ方向上端側が車両後方に寄った位置で、高さ方向下端側が車両前方に寄った位置で折り返されるように、車両前後方向に対して斜めに形成され、該重ね合わせ部分
(S)は、上下方向の下部が上部よりも広くなるように、ロール状に巻かれて重ね合わされもしくは蛇腹状に畳まれて形成された構成であり、
上記当接部(Q)を含む上記折り返し部分
(X1)は、車幅方向に上記シートフレームと上記重ね合わせ部分
(S)との間に配置されるように折り畳まれた
構成であり、上記下方部分(2b)は、展開膨張初期に車両前方へ展開膨張し、上記上方部分(2c)は、インフレータガスの導入に伴って解きほぐされ上記シートのシートバックの側から車両前方の斜め上方へ指向して乗員の腕を跳ね上げることなく展開膨張することを特徴とする。
【0010】
前記折り返し部分は、前記サイドエアバッグの展開膨張時に前記シートフレームから反力を受けて、前記重ね合わせ部分を、車幅方向の前記車両部材に向かう方向へ押し出すことが可能なように構成されていることが好ましい。
【0011】
また、本発明にかかる車両用サイドエアバッグ装置は、車両のシートに内蔵され、該シートから乗員と乗員の車幅方向側方に位置される車両部材との間へ展開膨張可能なサイドエアバッグと、上記シートのシートフレームに取り付け可能で、上記サイドエアバッグにインフレータガスを導入するインフレータとを備え、該インフレータは、上記サイドエアバッグ内部にその展開膨張方向後端部近傍に収容して設けられ、上記サイドエアバッグは、
展開状態で、上記インフレータが収容される高さ方向範囲が上方部分
(2e)とされ、該インフレータよりも下方の高さ方向範囲が下方部分
(2d)とされて、該下方部分
(2d)が車両前後方向前方に向かって、斜め下方へ指向するように形成され、前記サイドエアバッグは、上記下方部分
(2d)が上記上方部分
(2e)に重なるように上方へ向けて折り畳まれた
状態で、上記インフレータ側からその展開膨張方向前端部に向かって
順に、折り返し
(F1)を有する折り返し部分
(X1)と重ね合わせ部分
(S)とを一連に有し、
上記サイドエアバッグの展開前の収納状態で、
上記一連の該折り返し部分
(X1)と上記重ね合わせ部分(S)とは、該インフレータの車両前後方向前方側で、車両前方から車両後方へ向けて
折り返し(F1)で該重ね合わせ部分(S)が重なり合うように該折り返し部分(X1)が折り返
され、該折り返し部分(X1)が上記シートへの取り付け時に上記シートフレームに当接される当接部
(Q)を含むように形成され、
上記折り返し(F1)は、高さ方向上端側が車両前方に寄った位置で、高さ方向下端側が車両後方に寄った位置で折り返されるように、車両前後方向に対して斜めに形成され、該重ね合わせ部分
(S)は、上下方向の上部が下部よりも広くなるように、ロール状に巻かれて重ね合わされもしくは蛇腹状に畳まれて形成された構成であり、
上記当接部(Q)を含む上記折り返し部分
(X1)は、車幅方向に上記シートフレームと上記重ね合わせ部分
(S)との間に配置されるように折り畳まれた
構成であり、上記上方部分(2e)は、展開膨張初期に車両前方へ展開膨張し、上記下方部分(2d)は、インフレータガスの導入に伴って解きほぐされ上記シートのシートバックの側から車両前方の斜め下方へ指向して展開膨張することを特徴とする。
【0012】
前記折り返し部分は、前記サイドエアバッグの展開膨張時に前記シートフレームから反力を受けて、前記重ね合わせ部分を、車幅方向の前記車両部材に向かう方向へ押し出すことが可能なように構成されていることが好ましい。
【0013】
前記車両部材は、車両のドアまたは車両の車幅方向中央側に配置されるコンソールボックスであることが望ましい。
【0015】
前記サイドエアバッグは、前記折り返し部分と前記重ね合わせ部分との間に、追加の折り返しを有する追加の折り返し部分を有し、展開前の収納状態で、該追加の折り返し部分は、該折り返し部分と並行な配置で、車両前方から車両後方へ向けてもしくは反対方向に向けて、該追加の折り返しにより少なくとも1回折り返されて形成され、該重ね合わせ部分は、車幅方向に該追加の折り返し部分と該折り返し部分との間に配置されることが望ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明にかかる車両用サイドエアバッグ装置にあっては、展開膨張するサイドエアバッグによる乗員の腕の跳ね上げ作用を軽減・緩和することができ、乗員拘束性能を向上することができる。
詳細には、サイドエアバッグが、展開状態で、インフレータが収容される高さ方向範囲が下方部分とされ、インフレータよりも上方の高さ方向範囲が上方部分とされて、上方部分が車両前後方向前方に向かって、斜め上方へ指向するように形成される場合は、重ね合わせ部分は、サイドエアバッグの下部側が先行して展開膨張するのに追随して、次第にサイドエアバッグの上部側が、ロール状に巻かれたあるいは蛇腹状に畳まれた形態から徐々に解きほぐされて展開膨張していくので、乗員の腕を強くかつ瞬時に跳ね上げることなく、乗員の腕を持ち上げるようにして、サイドエアバッグを斜め上方へ指向して展開膨張させることができる。従って、乗員に対して不必要な負荷を与えることがなく、乗員の姿勢が崩されることも防止できて、適正な乗員拘束性能を確保することができる。そして、サイドエアバッグは、乗員の腰部から頭部を越える高さ範囲で展開膨張し、持ち上げた腕の下方から、乗員の胸や脇腹を受け止めて、乗員をシート側へ確実に拘束でき、同時にドアやコンソールボックス等の車両部材から乗員を遮ることによって保護でき、乗員に加わる傷害値を低減することができる。あるいは、サイドエアバッグが、展開状態で、インフレータが収容される高さ方向範囲が上方部分とされ、インフレータよりも下方の高さ方向範囲が下方部分とされて、下方部分が車両前後方向前方に向かって、斜め下方へ指向するように形成される場合には、シートバックへのサイドエアバッグの収納性を確保しながら、十分に満足できる展開速度でサイドエアバッグを下方へ展開膨張させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明にかかる車両用サイドエアバッグ装置の好適な実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る車両用サイドエアバッグ装置のサイドエアバッグが展開膨張した状態を上から見下ろした平面図、
図2は、
図1に示したサイドエアバッグを収納状態に組み立てる組立手順の第1段階を説明する説明図、
図3は、組立手順の第2段階を説明する説明図、
図4は、組立手順の第3段階を説明する説明図、
図5は、組立手順の第4段階を説明する説明図、
図6は、組立手順の第5段階を説明する説明図、
図7は、上記組立手順の前半を略示した説明図、
図8は、上記組立手順の後半を略示した説明図、
図9は、
図1に示したサイドエアバッグ(ロール状タイプ)の展開前の収納状態であって、当該サイドエアバッグがシートフレームに取り付けられた様子を上から見下ろした図、
図10は、
図1に示したサイドエアバッグ(蛇腹状タイプ)の展開前の収納状態であって、当該サイドエアバッグがシートフレームに取り付けられた様子を上から見下ろした図、
図11は、
図1に示したサイドエアバッグが展開膨張していく様子を上から見下ろした図、
図12は、
図11に示したサイドエアバッグの展開膨張過程を横から見た図である。
【0019】
図1に示すように、車両用サイドエアバッグ装置1のサイドエアバッグ2は、展開膨張する前、巻き取ったりあるいは畳まれた収納状態で、車両に備えられるシート3のシートバック3aに内蔵して設けられる。シート3には、乗員Pが着座する。シート3の左右車幅方向両側には、乗員Pの車幅方向側方に位置させて、すなわち乗員Pの側部に面して、例えばドア4(車外側)や車両の車幅方向中央側のコンソールボックス5(車内側)などの車両部材が配置されている。
【0020】
サイドエアバッグ2は従来周知のように、側突などにより車両に衝撃が加わると、乗員Pと乗員Pの車幅方向側方のドア4やコンソールボックス5等の車両部材との間へ、シートバック3aからシート3前方、すなわち車両前後長さ方向(以下、車両前後方向という)前方に展開膨張可能に設けられる。従って、
図2に示すように、サイドエアバッグ2のシートバック3a側(車両後方側)は展開膨張方向後端部側となり、車両前方側が展開膨張方向前端部側となる。
【0021】
収納状態のサイドエアバッグ2の展開膨張は、インフレータ6からのインフレータガスがサイドエアバッグ2内部に導入されることによって達成される。サイドエアバッグ2は通常、乗員Pの腰部から頭部を越える高さ範囲で展開膨張され、乗員Pをシート3側へ拘束すると共に乗員Pからドア4等の車両部材を遮り、これによって乗員Pを保護し、乗員Pに加わる傷害値を低減するようになっている。
【0022】
シートバック3a内部には、乗員Pの身体などがもたれかかるのを受け止めて支持する剛強なシートフレーム7が設けられている。シートフレーム7は、
図9に示されているように、溝形部材もしくは角筒部材等を枠状に組んで構成される。シートフレーム7は、ドア4等の車両部材側に面する平面部分を有し、本実施形態では、この平面部分は、インフレータ6を取り付けたり、展開膨張するサイドエアバッグ2を支持したりするための支持面7aを構成する。従って、インフレータ6は、シート3、例えばシートフレーム7に取り付け可能である。
【0023】
インフレータ6の一側面には、シートバック3a内部のシートフレーム7の支持面7aにナット9で固定されるスタッドボルト8が一体的に設けられる。インフレータ6は、スタッドボルト8がシートフレーム7に固定されることにより、当該シートフレーム7の支持面7aに取り付けられる。インフレータ6は、サイドエアバッグ2内部に収容される。インフレータ6の収容位置は、サイドエアバッグ2の展開膨張方向後端部近傍に設定される。
【0024】
サイドエアバッグ2内部に収容したインフレータ6をシートフレーム7に取り付けることにより、サイドエアバッグ2の展開膨張方向後端部近傍がシートフレーム7に固定される。また、インフレータ6がサイドエアバッグ2内部に収容されるので、インフレータ6から噴出されるインフレータガスは、サイドエアバッグ2内部に充満して、当該サイドエアバッグ2を展開膨張させる。
【0025】
以下、サイドエアバッグ2を収納状態に組み立てる組立手順に沿って説明する。
図2には、サイドエアバッグ2を平面的に広げた様子が示されている。図中、上方向が車両上下高さ方向(以下、高さ方向という)上方、下方向が高さ方向下方、左方向が展開膨張方向前端部側(車両前方側)、右方向が展開膨張方向後端部側(車両後方側)である。
【0026】
サイドエアバッグ2は周知のように、二枚の基布を重ね合わせたり、一枚の基布を折り返して重ね合わせるなどした後、周縁を縫製などで接合することにより、開口部分2aを有する袋状に形成される。
【0027】
図示されるサイドエアバッグ2では、開口部分2aは、展開膨張方向後端部(以下、展開方向後端部という)に、車両後方側へ迫り出して形成される。インフレータ6は、この開口部分2aからサイドエアバッグ2内部に収容される。スタッドボルト8は、サイドエアバッグ2に形成されるボルト孔からサイドエアバッグ2外方へ突出される。なお、10はハーネスである。
【0028】
本実施形態では、サイドエアバッグ2の外形形態は、車両前後方向の長さ寸法に比して、車両上下方向に大きな高さ寸法で形成される。また、サイドエアバッグ2は全体的に、インフレータ6の収容位置から、車両前後方向前方に向かって、斜め上方へ指向する形態で形成されている。
【0029】
言い換えると、インフレータ6が収容される高さ方向範囲を下方部分2b(車両のドアベルトライン高さ及びその近辺に対応)とし、インフレータ6よりも上方の高さ方向範囲を上方部分2c(車両のサイドウインドウ位置に対応)として、サイドエアバッグ2を高さ方向に分けて考えた場合、上方部分2cが車両前後方向前方に向かって、斜め上方へ指向するように形成されている。
【0030】
サイドエアバッグ2をこのような形態とすると、側突等が生じた際、車両前方かつ車幅方向外方へ向かって移動し得る乗員Pの腰部から頭部にわたる領域を、サイドエアバッグ2全体で受け止めて拘束し保護することが可能となる。
【0031】
次に、
図3に示すように、サイドエアバッグ2の開口部分2aは、インフレータ6の収納位置に重なるように、展開膨張方向前端部(以下、展開方向前端部という)側に向けて折り返されて、サイドエアバッグ2の下方部分2bに部分的に重ね合わされる。開口部分2aには、サイドエアバッグ2から突出されるスタッドボルト8を通す通し孔11が形成される(
図2参照)。従って、開口部分2aは、サイドエアバッグ2の下方部分2bに対して、シートフレーム7の支持面7aに面するように重ね合わされる。
【0032】
次に、
図4に示すように、サイドエアバッグ2は、上方部分2cが下方部分2bに重なるように、下方へ向けて折り畳まれる。図示例では、上方部分2cは、サイドエアバッグ2の下方部分2bに対し、開口部分2aを折り返した側とは反対側、すなわちドア4やコンソールボックス5等の車両部材に面するように重ね合わされる。これにより、高さ方向に大きな外形形態のサイドエアバッグ2の収納形態を、高さを低くしてコンパクト化することができる。
【0033】
次に、
図5に示すように、インフレータ6の収容位置よりも車両前方側へ延出される前方延出部分の前端に設定された折り返しF1により、サイドエアバッグ2は、インフレータ6の収容位置よりも車両前方にあった部分(展開膨張方向前端部となる部分)が車両後方(展開膨張方向後端部側)へ向かって折り返される。インフレータ6の収納位置から折り返しF1までの間の延出部分には、インフレータ6の車両前後方向前方側で、シートフレーム7の支持面7aに当接される当接部Qが設定される。
【0034】
説明を簡単化するために、車両前後方向に縦長な長方形状のサイドエアバッグ2を示した
図7及び
図8を参照して説明する。
図7(a)は、おおよそ
図2及び
図3に対応する図であって、インフレータ6を収容したサイドエアバッグ2を平面的に広げた状態を示している。
図4で説明したサイドエアバッグ2の上方部分2cが下方部分2bに重ねられる折り畳みは、省略して説明する。
【0035】
サイドエアバッグ2には、平面的に広げた状態で、インフレータ6側(展開方向後端部側)からその展開方向前端部に向かって順次、折り返しF1を有する折り返し部分X1と、ロール状に巻かれたりあるいは蛇腹状に畳まれる重ね合わせ部分Sとが一連に形成される。
【0036】
折り返し部分X1は詳細には、インフレータ6の収納位置から前方延出部分の前端の折り返しF1で折り返される領域であり、折り返し部分X1を構成する前方延出部分には、サイドエアバッグ2をシート3に取り付けた時に、シートフレーム7、具体的にはシートフレーム7の支持面7aに当接される当接部Qが含まれる。
【0037】
図7(b−1)は、
図5に対応する図である。
図5でも説明したように、インフレータ6の収容位置よりも車両前方に折り返しF1の位置が設定される。サイドエアバッグ2は図示例では、インフレータ6の車両前後方向前方側で、折り返しF1により車両前方から車両後方へ向けて折り返されることで、当接部Qを除き、全体が車両後方へ向かって延出される。
【0038】
この折り返し部分X1は、シートフレーム7の支持面7aとドア4やコンソールボックス5等の車両部材との間に位置させて配設される。他方、重ね合わせ部分Sは、折り返しF1により、折り返し部分X1よりも車両後方側へ延出される。折り返しF1を、インフレータ6の収容位置よりも車両後方に設定して、サイドエアバッグ2を車両後方から前方へ向けて折り返せば、重ね合わせ部分Sは、折り返し部分X1よりも車両前方側へ延出される。
【0039】
図示例では、折り返しF1は、サイドエアバッグ2の高さ方向上端側が車両後方に寄った位置で、高さ方向下端側が車両前方に寄った位置で折り返されるように、車両前後方向に対して僅かに斜めに形成される。これにより、重ね合わせ部分Sは、おおよそ台形状の外形形態とされる。
【0040】
折り返されたサイドエアバッグ2を上から見下ろすと、
図7(b−2)に示すように、折り返し部分X1に連なる重ね合わせ部分Sがサイドエアバッグ2内部のインフレータ6と重なるように位置される。
【0041】
重ね合わせ部分Sは、ロール状に巻かれて重ね合わされもしくは蛇腹状に畳まれて重ね合わされて形成される。重ね合わせる際、
図7(c)に示すように、重ね合わせ部分Sの形態に関し、サイドエアバッグ2の高さ方向の下部側が上部側よりも広くなるように、サイドエアバッグ2の上部側で巻き取りの周長Dや畳み込みの間隔Dが狭められ、下部側でそれらの周長Dや間隔Dが広げられる。
【0042】
従って、重ね合わせ部分Sを形成し終えたサイドエアバッグ2の収納状態では、
図8(a)に示すように、折り返し部分X1の当接部Qに対して重ね合わせ部分Sが車幅方向に重ねられ、
図8(b)に示すように、重ね合わせ部分Sがロール状に巻かれる場合には、
図8(c)及び(d)に示すように、上部側が細い径(R1)となり、下部側が緩やかに巻かれて太い径(R2)となって、上方へ向かって先細りになる縦長の円錐台形状(コーン形状)の形態に形成される。収納状態から理解されるように、サイドエアバッグ2は、インフレータ6の収納位置からおおよそ平坦に延出され、当接部Qを含む延出部分と、延出部分前端の折り返しF1と、折り返しF1から展開膨張方向前端部にわたる重ね合わせ部分Sとを順に有し、ほぼ折り返しF1を境界として、当該折り返しF1により、延出部分(当接部Q)に重ね合わせ部分Sが重ねられる構造となっている。
【0043】
重ね合わせ部分Sが蛇腹状に畳まれる場合には
図8(e)に示すように、上部側が狭く(W1)、下部側が広く(W2)なって、上方へ向かって先細りになる縦長の台形状の形態に形成される。
【0044】
重ね合わせ部分Sの上記大きい方の寸法(R2,W2)に対し、インフレータ6から折り返しF1までの長さ寸法が短いと、折り返し部分X1が展開膨張するときに、重ね合わせ部分Sが、車幅方向ではなく、転がるようにして支持面7aから脱落することが考えられる。従って、インフレータ6から折り返しF1までの長さ寸法は、重ね合わせ部分Sの上記寸法(R2,W2)とほぼ同程度に設定することが好ましい。
【0045】
以上により、
図8(a)に対応する
図6に示すように、サイドエアバッグ2が収納状態とされる。上部側に比して下部側が広い(緩めに巻かれるもしくは幅広に畳まれる)形態の重ね合わせ部分Sは、サイドエアバッグ2が展開膨張する際、当該サイドエアバッグ2の下部側をシートバック3aから車両前方へ向けて円滑にかつ素早く展開させ、このサイドエアバッグ3の下部側の展開作用により、重ね合わせ部分Sの上部側が解きほぐされて、サイドエアバッグ2の上部側も即座に追随して展開される。
【0046】
収納状態とされたサイドエアバッグ2は、
図9及び
図10に示すように、インフレータ6のスタッドボルト8をシートフレーム7に固定し、インフレータ6をシートフレーム7に取り付けることによって、シートバック3aに内蔵される。そして、インフレータ6を内蔵したサイドエアバッグ2の収納状態では、折り返し部分X1は、ドア4やコンソールボックス5等の車両部材が位置される車幅方向に向けて、シートフレーム7の支持面7aと重ね合わせ部分Sとの間に配置される。すなわち、折り返し部分X1は、車幅方向にシートフレーム7と重ね合わせ部分Sとの間に配置されるように折り畳まれている。
【0047】
折り返し部分X1は、サイドエアバッグ2の展開膨張時にシートフレーム7から反力を受けて、重ね合わせ部分Sを、車幅方向の、ドア4やコンソールボックス5等の車両部材に向かう方向へ押し出すことが可能なように構成されている。言い換えれば、折り返し部分X1は、インフレータガスが導入されることにより、シートフレーム7の支持面7aで膨張され、重ね合わせ部分Sを車幅方向へ、ドア4やコンソールボックス5等の車両部材に向かって押し出すように構成される。
【0048】
次に、本実施形態に係る車両用サイドエアバッグ装置1の作用について説明する。ドア4側について以下説明するが、コンソールボックス5側でも同様である。
【0049】
図11及び
図12に示すように、スタッドボルト8でシートフレーム7の支持面7aに取り付けられるインフレータ6を収容したサイドエアバッグ2は、収納状態で、シートバック3aに内蔵される。側突等が生じたことに応じてインフレータ6が作動し、インフレータガスがサイドエアバッグ2内部に導入されると、サイドエアバッグ2は、シートバック3aに形成された開口から外方へ飛び出して展開膨張される。
【0050】
サイドエアバッグ2の展開膨張初期では、折り返しF1で形成された折り返し部分X1にインフレータガスが充満する。折り返し部分X1は、その当接部Qがシートフレーム7の支持面7aに重なり合っていて、膨張する際、当該支持面7aに支持されることにより、車幅方向、すなわち車両部材であるドア4側へ向かって膨張する。
【0051】
折り返し部分X1はまた、車幅方向にシートフレーム7の支持面7aと重ね合わせ部分Sとの間に配置されるので、図中、一点鎖線Z1で示すように、ドア4側へ向かって膨張する折り返し部分X1は、重ね合わせ部分Sをドア4側に向かって押し出す(図中、矢印T1参照)。
【0052】
折り返し部分X1に導入されたインフレータガスは引き続き、重ね合わせ部分Sへと導入される。重ね合わせ部分Sは、折り返し部分X1によってドア4に押し付けられた状態で、導入されるインフレータガスにより展開膨張していく。重ね合わせ部分Sの展開膨張は、上述したロール状もしくは蛇腹状の重ね合わせ形態により、サイドエアバッグ2の下部側の展開膨張が先行し、それに追随してサイドエアバッグ2の上部側が展開膨張していく。
【0053】
先行するサイドエアバッグ2の下部側は、折り返し部分X1によるドア4への押し付け作用を受けながら、即座にドア4に沿ってシートバック3a側から車両前方へ展開膨張する。図中、二点鎖線Z2で示すように、サイドエアバッグ2の下部側が展開膨張すると、その動きに追随して、比較的ゆとりなく巻かれているもしくは畳まれている重ね合わせ部分の上部側、すなわちサイドエアバッグ2の上部側がインフレータガスの導入に伴って解きほぐされていき、シートバック3a側から車両前方へ向かって展開膨張していく。
【0054】
図4に示したように、折り返し部分X1及び重ね合わせ部分Sの形成前に、サイドエアバッグ2の上下方向の上方部分2cを下方部分2bに重ねるように折り畳んでいる場合には、重ね合わせ部分Sが展開膨張していく過程で、さらに下方部分2bに対し上方部分2cが上向きに展開膨張する。
【0055】
従って、サイドエアバッグ2は、図中、実線Z3で示すように、下方部分2bがドア4に面して展開膨張し、上方部分2cがサイドウインドウ等に面するように、斜め上方へ指向して展開膨張する。このような作用は、コンソールボックス5側に設けられる車両用サイドエアバッグ装置1であっても、同様に確保することができる。
【0056】
背景技術で説明したように、サイドエアバッグ2が展開膨張していく際、乗員の腕の下方にサイドエアバッグが進入してしまったり、あるいは、乗員の腕がサイドエアバッグの上に位置してしまって、当該サイドエアバッグにより乗員の腕が直接的に強くかつ瞬時に跳ね上げられるおそれがある。
【0057】
これに対し、本実施形態に係る車両用サイドエアバッグ装置1では、車両前方へ向かって展開膨張する重ね合わせ部分Sを、折り返し部分X1でドア4やコンソールボックス5に向かって押し出し、押し付けることができるので、重ね合わせ部分Sを、乗員Pの腕の位置を避けて車両前方へ展開膨張させることができる。
【0058】
また、重ね合わせ部分Sは、サイドエアバッグ2の下部側が先行して展開膨張するのに追随して、次第にサイドエアバッグ2の上部側が、ロール状に巻かれたあるいは蛇腹状に畳まれた形態から徐々に解きほぐされて展開膨張していくので、乗員Pの腕を強くかつ瞬時に跳ね上げることなく、乗員Pの腕を持ち上げるようにして、サイドエアバッグ2を斜め上方へ指向して展開膨張させることができる。
【0059】
従って、乗員Pに対して不必要な負荷を与えることがなく、乗員Pの姿勢が崩されることも防止できて、適正な乗員拘束性能を確保することができる。そして、サイドエアバッグ2は、乗員Pの腰部から頭部を越える高さ範囲で展開膨張し、持ち上げた腕の下方から、乗員Pの胸や脇腹を受け止めて、乗員Pをシート3側へ確実に拘束でき、同時にドア4やコンソールボックス5等の車両部材から乗員Pを遮ることによって保護でき、乗員Pに加わる傷害値を低減することができる。
【0060】
以上説明したように、本実施形態に係る車両用サイドエアバッグ装置1は、展開膨張するサイドエアバッグ2による乗員Pの腕の跳ね上げ作用を軽減・緩和することができ、乗員拘束性能を向上することができる。
【0061】
図13〜
図15には、上記実施形態の変形例が示されている。
図13は、変形例に係るサイドエアバッグ(ロール状タイプ)の展開前の収納状態であって、当該サイドエアバッグがシートフレームに取り付けられた様子を上から見下ろした図、
図14は、変形例に係るサイドエアバッグ(蛇腹状タイプ)の展開前の収納状態であって、当該サイドエアバッグがシートフレームに取り付けられた様子を上から見下ろした図、
図15は、変形例に係るサイドエアバッグが展開膨張していく様子を上から見下ろした図である。
【0062】
図13及び
図14に示すように、この変形例では、サイドエアバッグ2には、平面的に広げた状態で、インフレータ6側からその前端部に向かって順次、折り返し部分X1と、追加の折り返しF2を有する追加の折り返し部分X2と、重ね合わせ部分Sとが一連に形成される。すなわち、折り返し部分X1と重ね合わせ部分Sとの間に、追加の折り返し部分X2が設けられる。
【0063】
追加の折り返し部分X2により、重ね合わせ部分Sは、展開前の収納状態で、車幅方向に、当該追加の折り返し部分X2と折り返し部分X1との間に配置される。すなわち、追加の折り返し部分X2は、重ね合わせ部分Sの車幅方向外側に位置される。追加の折り返し部分X2は、ドア4やコンソールボックス5等の車両部材に面する。
【0064】
この追加の折り返し部分X2は、折り返し部分X1との間に重ね合わせ部分Sを挟み、折り返し部分X1を通じて導入されるインフレータガスで膨張し、折り返し部分X1の膨張によって車幅方向に押し出される重ね合わせ部分Sを、折り返し部分X1側(インフレータ6及びシートフレーム7側)とは反対側(ドア4側もしくはコンソールボックス5側)から支持し、これにより重ね合わせ部分Sの展開膨張方向を乗員Pの側方へ方向付けする。
【0065】
追加の折り返し部分X2は、重ね合わせ部分Sの折り返し部分X1につながる部位に追加の折り返しF2を設定することで形成される。追加の折り返しF2により、重ね合わせ部分Sの巻く向きあるいは畳む向きは、上記実施形態とは反対向き(
図9及び
図10参照)とされる。追加の折り返し部分X2は、上述したように重ね合わせ部分S及び折り返し部分X1双方につながるもので、折り返し部分X1に対しては、重ね合わせ部分Sの外側を車両後方側からほぼ半周ほど取り囲むように迂回して(図中、Yで示す)つながる。
【0066】
折り返し部分X1の折り返しF1と追加の折り返し部分X2の追加の折り返しF2は、インフレータ6に対し、車両前後方向で同じ側に設定される。また、追加の折り返し部分X2と折り返し部分X1とは、車両前後方向に互いに並行な配置に設定される。
【0067】
追加の折り返し部分X2は、折り返し部分X1との間に重ね合わせ部分Sが位置される限り、上記とは反対方向に向けて、具体的には、車両後方から前方へ向けて折り返して形成してもよい。また、図示例では、追加の折り返し部分X2は1回折り返されて形成されているが、複数回折り返して複数の追加の折り返し部分X2を形成し、これら複数の追加の折り返し部分X2が重ねられるようにしてもよい。
【0068】
追加の折り返し部分X2は、シートフレーム7の支持面7aと並行な位置関係で、インフレータ6や折り返し部分X1とドア4やコンソールボックス5等の車両部材との間に位置させて配設される。
【0069】
図15に、一点鎖線Z1で示すように、サイドエアバッグ2の展開膨張初期では、折り返し部分X1は、内部に充満するインフレータガスで膨張し、重ね合わせ部分S及び追加の折り返し部分X2をドア4側に向かって押し出す(図中、矢印T2参照)。引き続き、インフレータガスは、折り返し部分X1から追加の折り返し部分X2に導入され、追加の折り返し部分X2が膨張する。
【0070】
追加の折り返し部分X2は、ドア4やコンソールボックス5等の車両部材に重なり合うこととなり、膨張する際、車両部材に支持されることにより、車幅方向、すなわちシートフレーム7の支持面7a側(シートバック3a側)へ向かって膨張する。追加の折り返し部分X2はまた、車幅方向に車両部材(4,5)と重ね合わせ部分Sとの間に配置されるので、シートフレーム7の支持面7a側へ向かって膨張する追加の折り返し部分X2は、重ね合わせ部分Sをシートフレーム7の支持面7a側に向かって押圧する(図中、矢印T3参照)。
【0071】
加えて、追加の折り返し部分X2は、重ね合わせ部分Sを車両後方側から取り囲むように迂回して折り返し部分X1につながっているため、インフレータガスの流通で膨張することにより、重ね合わせ部分Sを折り返し部分X1と追加の折り返し部分X2との間から車両前方へ向かって押し出す作用を呈する(図中、矢印T4参照)。
【0072】
本変形例では、追加の折り返し部分X2を備えることにより、重ね合わせ部分Sの展開膨張方向を車両前方へ的確に案内することができる。また、折り返し部分X1のみの場合よりも、サイドエアバッグ2全体を、乗員Pに近づけて展開膨張させることができて、乗員Pを受け止める作用を向上することができる。このような作用は、コンソールボックス5側に設けられる車両用サイドエアバッグ装置1であっても、同様に確保することができる。
【0073】
次いで、追加の折り返し部分X2から重ね合わせ部分Sにインフレータガスが導入されると、図中、二点鎖線Z2で示すように、サイドエアバッグ2の下部側が展開膨張していき、その動きに追随して、比較的ゆとりなく巻かれているもしくは畳まれている重ね合わせ部分の上部側、すなわちサイドエアバッグ2の上部側がインフレータガスの導入に伴って解きほぐされていき、シートバック3a側から車両前方へ向かって展開膨張していく。
【0074】
その後は、図中、実線Z3で示すように、サイドエアバッグ2は、上記実施形態と同様にして、下方部分2bがドア4に面して展開膨張し、上方部分2cがサイドウインドウ等に面するように、斜め上方へ指向して展開膨張する。このような変形例にあっても、上記実施形態と同様の作用効果を奏することはもちろんである。
【0075】
図16〜
図21には、本発明にかかる車両用サイドエアバッグ装置の他の変形例が示されている。
図16は、サイドエアバッグを収納状態に組み立てる組立手順の第1段階を説明する説明図、
図17は、組立手順の第2段階を説明する説明図、
図18は、組立手順の第3段階を説明する説明図、
図19は、組立手順の第4段階を説明する説明図、
図20は、組立手順の第5段階を説明する説明図、
図21は、本変形例に係るサイドエアバッグの展開膨張過程を横から見た説明図である。上記実施形態と異なる点を中心に、以下説明する。
【0076】
この変形例では、サイドエアバッグ2は、
図21中、実線Z5で示すように、上方部分2eがサイドウインドウ及びドア4の周辺で展開膨張し、下方部分2dがサイドウインドウ下で、ドア4に面するように、斜め下方へ指向して展開膨張される。
【0077】
図16に示すように、インフレータ6が収容される高さ方向範囲を上方部分2e(車両のドアベルトライン高さ及びその近辺に対応)とし、インフレータ6よりも下方の高さ方向範囲を下方部分2d(車両のドア4位置に対応)として、サイドエアバッグ2を高さ方向に分けて考えた場合、下方部分2dが車両前後方向前方に向かって、斜め下方へ指向するように形成されている。
【0078】
図17に示すように、サイドエアバッグ2の開口部分2aは、インフレータ6の収納位置に重なるように、展開膨張方向前端部(以下、展開方向前端部という)側に向けて折り返されて、サイドエアバッグ2の上方部分2eに部分的に重ね合わされる。開口部分2aは、サイドエアバッグ2の上方部分2eに対して、シートフレーム7の支持面7aに面するように重ね合わされる。
【0079】
次に、
図18に示すように、サイドエアバッグ2は、下方部分2dが上方部分2eに重なるように、上方へ向けて折り畳まれる。図示例では、下方部分2dは、サイドエアバッグ2の上方部分2eに対し、開口部分2aを折り返した側とは反対側、すなわちドア4やコンソールボックス5等の車両部材に面するように重ね合わされる。
【0080】
次に、
図19に示すように、インフレータ6の収容位置よりも車両前方側へ延出される前方延出部分の前端に設定された折り返しF1により、サイドエアバッグ2は、インフレータ6の収容位置よりも車両前方にあった部分(展開膨張方向前端部となる部分)が車両後方(展開膨張方向後端部側)へ向かって折り返される。インフレータ6の収納位置から折り返しF1までの間の延出部分には、インフレータ6の車両前後方向前方側で、シートフレーム7の支持面7aに当接される当接部Qが設定される。
【0081】
その後、上記実施形態の
図7及び
図8で説明した手順を経て、
図20に示すように、サイドエアバッグ2が収納状態とされる。下部側に比して上部側が広い(緩めに巻かれるもしくは幅広に畳まれる)形態の重ね合わせ部分Sは、サイドエアバッグ2が展開膨張する際、当該サイドエアバッグ2の上部側をシートバック3aから車両前方へ向けて円滑にかつ素早く展開させ、このサイドエアバッグ3の上部側の展開作用により、重ね合わせ部分Sの下部側が解きほぐされて、サイドエアバッグ2の下部側も即座に追随して展開される。
【0082】
この変形例における展開膨張挙動は、重ね合わせ部分Sの展開膨張が、上述したロール状もしくは蛇腹状の重ね合わせ形態により、サイドエアバッグ2の上部側の展開膨張が先行し、それに追随してサイドエアバッグ2の下部側が展開膨張していく。
【0083】
先行するサイドエアバッグ2の上部側は、折り返し部分X1によるドア4への押し付け作用を受けながら、即座にドア4に沿ってシートバック3a側から車両前方へ展開膨張する。図中、二点鎖線Z4で示すように、サイドエアバッグ2の上部側が展開膨張すると、その動きに追随して、比較的ゆとりなく巻かれているもしくは畳まれている重ね合わせ部分の下部側、すなわちサイドエアバッグ2の下部側がインフレータガスの導入に伴って解きほぐされていき、シートバック3a側から車両前方へ向かって展開膨張していく。
【0084】
図18に示したように、折り返し部分X1及び重ね合わせ部分Sの形成前に、サイドエアバッグ2の上下方向の下方部分2dを上方部分2eに重ねるように折り畳んでいる場合には、重ね合わせ部分Sが展開膨張していく過程で、さらに上方部分2eに対し下方部分2dが上向きに展開膨張する。
【0085】
従って、サイドエアバッグ2は、図中、実線Z5で示すように、上方部分2eがサイドウインドウ及びドア4に面してその周辺で展開膨張し、下方部分2cがドア4に面するように、斜め下方へ指向して展開膨張する。このような作用は、コンソールボックス5側に設けられる車両用サイドエアバッグ装置1であっても、同様に確保することができる。
【0086】
重ね合わせ部分Sは、サイドエアバッグ2の上部側が先行して展開膨張するのに追随して、次第にサイドエアバッグ2の下部側が、ロール状に巻かれたあるいは蛇腹状に畳まれた形態から徐々に解きほぐされて展開膨張していき、サイドエアバッグ2は斜め下方へ指向して展開膨張される。
【0087】
この変形例では、シートバック3aへのサイドエアバッグ2の収納性を確保しながら、十分に満足できる展開速度でサイドエアバッグ2を下方へ展開膨張させることができる。
【0088】
このような変形例にあっても、上記実施形態と同様の作用効果を奏することはもちろんである。
【0089】
以上に述べた車両用サイドエアバッグ装置は、本発明の好ましい例であって、これ以外の実施形態例も、各種の方法で実施または遂行できる。特に、本願明細書中に限定される主旨の記載がない限り、この発明は、添付図面に示した詳細な部品の形状、大きさおよび構成配置等に制約されるものではない。また、本願明細書中に用いられた表現および用語は、説明を目的としたもので、特に限定される主旨の記載がない限り、それに限定されるものではない。