【課題を解決するための手段】
【0003】
この課題は独立請求項に記載の特徴により解決される。有利な構成および派生例は従属請求項に記載のものに示されている。
【0004】
本発明によるNTCデバイスは、1つの第1の電極と1つの第2の電極とを備え、当該第1の電極と当該第2の電極との間に配設されている1つのNTC素子を備えている。このNTC素子は、好ましくは高温導体の電気的特性を備えており、すなわち負の温度係数を備えている。このNTC素子は、一般組成AB
2O
4のセラミックを備え、ここでAおよびBはそれぞれ、マンガン(Mn),ニッケル(Ni),コバルト(Co),および銅(Cu)の材料の1つ以上を含み、かつBは追加的に、鉄(Fe),イットリウム(Y),プラセオジム(Pr),アルミニウム(Al),インジウム(In),ガリウム(Ga),およびアンチモン(Sb)の材料の1つ以上を含む。このNTC素子は、好ましくはスピネル型セラミックを含む。上述の材料を選択することにより、このNTCデバイスの製造方法を有利に簡易化することができる。具体的には、上述の材料を用いて、所定の条件下で化学的還元、たとえば上記のNTC素子の組成の部分Bの化学的還元を、このNTCデバイスの製造の際に有利に制限または防止することができる。このような還元によって、製造の際に、上記の高温導体特性の望ましくない還元劣化または変性が起こり得る。
【0005】
上述の条件は、NTCデバイス用の従来の製造方法または焼結方法と比較して低い温度であってよく、たとえば低減された酸素分圧での保護ガス雰囲気が存在するものであってよい。さらに、本発明によるNTCデバイスによって、既に上記の利点で説明した、代替の、有利な電極材料(複数)、たとえば銅等の貴金属でない金属が用いられ、これによってこのNTCデバイスは、全体として安価および/またはよりコンパクトに製造することができる。
【0006】
1つの実施形態においては、Aは2価のカチオンであり、Bは3価のカチオンである。好ましくは、AおよびBはそれぞれ金属カチオンである。これらのカチオンの価数は、好ましくはそれぞれのカチオンの酸化数および/または酸化状態を示すものである。
【0007】
1つの実施形態においては、上記のセラミックは、(Mn
tNi
uCo
vCu
w)(Mn
xCo
yX
z)O4の式による組成であり、t+u+v+w=1およびx+y+z=2か、またはt+u+v+w≒1およびx+y+z≒2となっており、ここで変数Xで示される材料はFe,Y,Pr,Al,In,Ga,およびSbの材料の1つ以上を含むかあるいはこれから成ることを示している。これらの変数t,u,v,w,x,y,およびzは、好ましくはこれらの変数によって示される材料または物質の原子分率またはモル分率を表す。
【0008】
上記の組成の部分BがFe,Y,Pr,Al,In,Ga,およびSbの材料の少なくとも1つを含有することによって、特に上記のNTCデバイスの製造の際に、上記のセラミック成分の還元あるいは還元劣化を防止または制限することができ、こうして上記のNTC素子の高温導体の特性を得ながら、低温またはさらに低温でのこのセラミックの焼結(Sinterung)または焼結体化(Versinterung)が、たとえば低減された酸素分圧を有する雰囲気下で、可能となる。
【0009】
1つの実施形態においては、Xは鉄を表し、すなわち鉄であり(X=Fe)、ここでtは[0.2〜0.4]から、uは[0.18〜0.38]から、vは[0〜0.15]から、wは[0.27〜0.47]から、xは[0.63〜0.83]から、yは[0〜0.19]から、そしてzは[1.07〜1.27]から選択されている。
【0010】
1つの実施形態においては、Xは鉄に対応し、すなわち鉄であり(X=Fe)、その他のパラメータは、t≒0.3,u≒0.28,v≒0.05,w≒0.37,x≒0.73,y≒0.09,そしてz≒1.17となっている。上記の表現「≒」(ほぼ等しい)は、この場合好ましくは、これらで与えられる大きさまたはそれぞれ与える本発明による成分が、それぞれ±20%で変動するかあるいはその規定値または所定値から+20%および−20%異なり得ることを意味している。代替として、この大きさまたは成分は、±10%まで変動してよい。とりわけ好ましくは、この大きさまたは成分は、±5%まで変動してよい。
【0011】
1つの実施形態においては、上記のNTC素子の材料Xの原子分率またはモル分率を決定する変数zは1より大きい(z>1)。
【0012】
1つの実施形態においては、上記の第1の電極は、主成分として1つの非貴金属を用いた1つの層を備える。
【0013】
追加的にまたは代替として、上記の第2の電極は、主成分として1つの非貴金属を用いた1つの層を備えてよい。この実施形態によって、電極材料として高価な貴金属を使わずに済ませることができるので、たとえば上記のNTCデバイスの製造コストを低減することができる。さらに、たとえば湿った環境におけるAgを含有する電極(複数)への電極材料のマイグレーションを、特に上記のNYCデバイスを回路(複数)に組み込む際に、このデバイスでの直流電圧がこれらの回路(複数)に印加される際に、防止あるいは制限することができる。
【0014】
1つの実施形態においては、上記の第1の電極は、主成分として銅を用いた1つの層を備える。さらに銅は電極材料として、またはその主成分として、高い熱伝導率という利点を提供し、これによって上記のNTCデバイスの応答特性を改善することができる。上述の層は1つのフィルム、たとえば1つの銅フィルムであってよい。この実施形態によって、このNTCデバイスの部品高を、たとえば従来のNTCデバイスと比較して小さくすることができる。これは上記の第1の電極用の層すなわち電極層を、銅フィルムとすることでとりわけコンパクトあるいは薄く準備することができるからである。
【0015】
1つの実施形態においては、上記の第1の電極は、上記のNTCデバイスの1つの補強体を形成している。このNTCデバイスの機械的剛性は、補強体として延性のある銅を用いることによって、同様に有利に大きくすることができる。
【0016】
1つの実施形態においては、上記の第1の電極は、10μm〜100μmの層厚を有する1つの層を備える。
【0017】
1つの実施形態においては、上記のNTC素子は、5μm〜100μmの層厚を有する1つの層を備える。
【0018】
1つの実施形態においては、上記のデバイスは30μm〜100μmの部品厚を有する。このデバイス厚は、好ましくは上記のようなNTCデバイスの全厚を表し、すなわち上記の第1の電極、上記のNTC素子、および上記の第2の電極を含む。さらにこの部品厚は、好ましくは、上記の第1の電極、上記のNTC素子、および上記の第2の電極の構成体に沿って、すなわちこれらの素子の積層方向に沿って測られる。
【0019】
上述の厚さの選択またはスケーリングによって、上記のNTCデバイスの部品厚すなわちデバイス厚は有利に小さくすることができ、および/または上記のNTCデバイスは、薄膜構造で、および/または「薄型」("low-profile";"niedrige Form"に対応する英語)の変形例で実装することができる。特に非常に薄い構造すなわち小さな部品高を実現することができる。さらにこれらの薄型構造は、上記のデバイスを、たとえば回路基板上で、他の部品アセンブリの下に省スペースで配置する、あるいはこの回路基板に一体化する可能性を提供する。さらにこの薄型構造は、パッシブインテグレーションである、上記のNTCデバイスの「埋込」("Einbettung")またはカプセル化を容易にする。
【0020】
1つの実施形態においては、上記の第1および第2の電極の少なくとも1つは、100%銅から成っている。
【0021】
1つの代替の実施形態においては、上記の第1および第2の電極の少なくとも1つは、銅の他にガラスおよび/または以下の材料の1つ以上を含む。酸化ジルコニウム、具体的にはZrO
2、酸化アルミニウム、具体的にはAl
2O
3、および酸化マンガン(MgO)。
【0022】
上記の最後に挙げた2つの実施形態は、有利に高価な貴金属、電極材料としてたとえばAg,Pd,および/またはAuを使用せずに済ませることができる。
【0023】
1つの実施形態においては、上記の第1および第2の電極の少なくとも1つは、銀(Ag)が全く含まれていない。
【0024】
1つの好ましい実施形態においては、本発明によるNTCデバイスは表面実装可能に構成されている。この実施形態によって、特に表面実装可能な実施形態の利点、たとえばこのNTCデバイスをプリント基板または電子部品アセンブリ上に直接はんだ付けする可能性を有効に利用することができる。この実施形態は、具体的にはこのNTCデバイスの薄型構造を提供するという可能性を有利に実現する。これはこの場合電子アセンブリ全体の部品高も同様にこれに対応して有利に小さくされ得るからである。
【0025】
本発明のもう1つの態様は、1つの領域に配設された、たとえば並んで配設された複数のNTCデバイスを備えるNTC部品に関する。この実施形態によって、たとえば追加的な電子素子(複数)を有する1つの電子部品への、あるいは複数の個別のNTCデバイスが有利または必要となっている、この電子部品における、NTCデバイスの組み込みまたは配設を簡易化することができ。
【0026】
本発明のもう1つの態様は、本発明によるNTCデバイスの製造のための方法に関する。この方法は、上記の第1の電極と、たとえば上記のNTC素子および/または上記の第2の電極を1つの結着体とするために事前に準備された基本材料とを結合するステップを備え、ここでこの基本材料は、Mn,Ni,Co,およびCuの材料、および/またはこれらの化合物の1つ以上、およびFe,Y,Pr,Al,In,およびSbの材料、および/またはこれらの化合物の1つ以上を含む。
【0027】
上述の元素自体の他に、これらの元素は、たとえばこの基本材料において酸化物または他の化合物として存在してもよい。さらにこの方法は、1つの温度工程を備えてよく、この温度工程において、すなわちここで上記の結着体が1つの温度、好ましくは焼結温度に曝される。この温度工程では、この温度は、上記の基本材料から上記のNTC素子が形成され、かつこの基本材料が上記の第1および第2の電極と共に焼結あるいは焼結体化されるように選択されている。「焼結体化」は、この観点から、好ましくは上記の第1および第2の電極が、上記のNTC素子の焼結に加えて、機械的にも強固にこれらと結合し、あるいはこれらと一緒に焼結されることを意味する。
【0028】
上記の「結着体」なる表現は、好ましくは、上述の素子(複数)が上記の温度工程の前、すなわち上記の温度に曝される前に、それ以前に上記の素子が機械的に強固な一体性を有する必要なしに、何らかの方法で結合されること、あるいは相互または並んで配設されることを意味するものである。
【0029】
本発明による方法の1つの実施形態においては、この基本材料の材料組成が、上記の温度工程の前に選択され、この温度工程の間に、上記の基本材料の個々の成分が安定した酸化段階すなわち酸化状態となるようにされる。
【0030】
上述の組成によって、具体的にはFe,Y,Pr,Al,In,Ga,およびSbの材料の少なくとも1つを含有することによって、本発明によるNTCデバイス用の上記の焼結を、たとえば低減された酸素分圧を有する雰囲気下で行うことができ、同時に高温導体の特性を得ることができる。この理由は、上述のセラミックの部分Bへの上記の最後に挙げた材料の添加により、このセラミックが好適に3価の金属カチオンを含み、たとえば2価のカチオンが過剰となること、すなわち上記のセラミックの部分Aの2価のカチオンが過剰となること、およびこれによりこれらの2価のカチオンのそれぞれの酸化物、たとえば酸化ニッケルが分離されることを防止することができるからである。以上により、このセラミックの電気的特性の劣化または変性も有利に防止することができる。同様に、この結果としてこの焼結の間の高温導体の特性の損失を防止することができる。換言すれば、とりわけ本発明による基本材料の個々の成分すなわち材料組成の固有な材料特性は、上記の高温導体特性を得ること、ならびに上記の焼結の際に、上述した過剰となることを防止することに貢献するものである。この固有の材料特性は、好適に、上記の材料組成の上記の温度工程の際の物理的特性、具体的には上記の材料組成の高温導体の電気特性を用いた、複数の化学反応間の複雑な相互作用、たとえば酸化還元工程に関係するものである。
【0031】
本発明による方法の1つの実施形態においては、上記の基本材料は、結晶粒状すなわち紛体状のセラミックを含み、このセラミックは上記の結合ステップの前に、直径が1μmより小さい中程度の粒子サイズあるいは結晶粒サイズに粉砕される。この微粉砕は、個々のセラミック粒子の質量と比較して大きくされた表面積および表面エネルギのおかげで、好適に1つの結合した固体への焼結すなわち高密度化を容易にし、すなわち可能とする。
【0032】
本発明による方法の1つの実施形態においては、上記の結着体は、銅電極の場合、500℃〜1050℃、好ましくは850℃〜1050℃の温度に曝される。このような焼結温度の設定は、銅電極の場合、上記の基本材料の焼結体化、あるいは上記のNTC素子の、上記の第1および/または上記の第2の電極との焼結体化を有利に可能とする。これは銅がこのような条件でまだ融解せず、むしろ固い状態となっているからである。この銅電極の使用は、その電気的特性が良いことおよび低コストであること、ならびに、たとえば上記の第1の電極を銅フィルムとして実装し、この際これが同時に上記のNTCデバイスのための補強体として用いられ得ることから、とりわけ有利である。
【0033】
「銅電極」なる表現は、この場合好ましくは、これらのそれぞれの電極、すなわちたとえば上記の第1および第2の電極が、銅から成っており、または銅(Cu)が主成分として含まれていることを意味する。
【0034】
本発明による方法の1つの実施形態においては、上記の結着体は、1μbarより小さな酸素分圧を有する保護雰囲気下で上記の温度に曝される。
【0035】
本発明による方法の1つの実施形態においては、上記の結着体は、銅−銅酸化物(Cu/Cu
2O)の平衡分圧より低い酸素分圧を用いて、上記の温度に曝される。
【0036】
上述の最後に挙げた2つの実施形態によって、上記の第1の電極および/または上記の第2の電極が上記の焼結の際に大幅にあるいは顕著に酸化されること、これによってこれらの電極が使用不能となり得ることを好適に防止することができる。
【0037】
本発明による方法の1つの実施形態においては、上記の結着体用の第1の電極には、シルクスクリーン印刷、インクジェット印刷、または薄膜成形(Foliengiesen)を用いて、上記のNTC素子が設けられる、すなわちコーティングされる。この実施形態によれば、好ましくはまず上記の第1の電極が準備され、そして次にこの上に上記のNTC素子が堆積される。
【0038】
1つの実施形態においては、上記の結着体の製造のためのこれらのNTC素子は、たとえば結合されていない層における小さな正方形の形態で、上記の第1の電極上に取り付けられる。この実施形態によれば、このNTC素子は、好ましくはシルクスクリーン印刷を用いて準備され、すなわち塗布される。
【0039】
本発明による方法の1つの代替の実施形態においては、上記のNTC素子は、大面積ですなわち全面的に上記の第1の電極と結着される。この実施形態によれば、上記のNTC素子は、好ましくは薄膜成形を用いて準備され、すなわち上記の第1の電極上に取り付けられる。
【0040】
本発明による方法の1つの実施形態においては、上記の第2の電極はパターニングされる。
【0041】
本発明による方法の1つの実施形態においては、上記の第2の電極はパターニングされて、上記のNTC素子と結着され、すなわちこの上に取り付けまたは堆積される。
【0042】
本発明による方法の1つの実施形態においては、上記の第1の電極、上記の基本材料、および上記の第2の電極の結着の前に、上記の基本材料が、薄膜成形によって準備され、ここで上記のNTC素子は、上記の結着体用に、これらの第1および第2の電極でコーティングされる。
【0043】
本発明による方法の1つの実施形態においては、上記の結着体は、上記の温度工程の前に、300℃〜500℃の温度で脱炭される。
【0044】
本発明による方法の1つの実施形態においては、上記の結着体には、上記の温度工程の後に、少なくとももう1つの電極、たとえばさらなる外部電極(複数)が設けられる。
【0045】
本発明のもう1つの態様は、NTC部品の製造のための方法に関し、このNTC部品は、上述したように、複数の、1つの領域に並んで配設された複数のNTCデバイスを備える。この際これらの個々のNTCデバイスは、好適に並行して処理され、こうして上記の個々のNTCデバイスに対して記載された方法ステップ(複数)は正にこのNTC部品に対し有効となり得る。
【0046】
上術の最後に記載した方法の1つの実施形態においては、上記のNTC部品は、上記の結着体を上記の温度に曝した後に、複数の個々のNTC部品および/またはNTCデバイスに個々に分離される。ここで上述の最後に挙げたNTC部品は、好ましくは、それ自体たとえば一列にまたは1つの帯状に配設された複数のNTCデバイスを備える1つのNTC部品である。
【0047】
本発明のもう1つの態様は、上記のNTCデバイスまたは上記のNTC部品の、温度センサとしてあるいは突入電流リミッタとしての使用に関する。
【0048】
本発明のさらなる利点,有利な実施形態,および有用性が、以下の実施例の、図を参照した説明により示される。