(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6356841
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】切替弁および切替弁の使用方法
(51)【国際特許分類】
F16K 31/68 20060101AFI20180702BHJP
F16K 11/07 20060101ALI20180702BHJP
【FI】
F16K31/68 E
F16K11/07 F
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-9304(P2017-9304)
(22)【出願日】2017年1月23日
(62)【分割の表示】特願2012-85147(P2012-85147)の分割
【原出願日】2012年4月4日
(65)【公開番号】特開2017-101831(P2017-101831A)
(43)【公開日】2017年6月8日
【審査請求日】2017年2月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000215785
【氏名又は名称】TPR株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】597139675
【氏名又は名称】TPR熱学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000121
【氏名又は名称】アイアット国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】入口 智也
(72)【発明者】
【氏名】大西 裕史
【審査官】
冨永 達朗
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭48−13824(JP,U)
【文献】
特開平8−28267(JP,A)
【文献】
実開昭59−188362(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/68
F16K 11/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁本体の内部にワックスエレメント本体が固定されており、前記ワックスエレメント本体内の温度検知部を弁本体の外部に配置された切替弁において、
前記弁本体は外側に突出する三つの流出入口を有し、
前記ワックスエレメント本体は、検知した前記弁本体の外部の温度に応じて膨張・収縮するワックスが封入されている前記温度検知部と、前記弁本体の内部にワックスエレメント本体を固定する固定部と、前記固定部の内側に固定されるアクチュエータ部とが一体で構成され、前記アクチュエータ部内部に前記ワックスの膨張に伴う押圧により摺動するピストンと、を有し、
前記弁本体の内部は、前記ピストンの端面に押圧されて摺動する一つの円柱状の弁体と前記弁体と前記ピストンとを常時押圧しているリターンスプリングが配設され、
前記三つの流出入口は、前記弁体が摺動する領域において摺動方向に弁体の長さと同じ距離に離間して位置する二つの流出入口と、前記弁体が摺動する領域外にあって前記二つの流出入口に対して前記温度検知部から離れる側に位置する他の流出入口とであり、
前記二つの流出入口のいずれか一方を選択的に閉塞する前記弁体は、前記温度検知部から離れる側の端面側に前記リターンスプリングを収納する前記弁体と同心状の円柱状凹部が形成され、かつ、前記円柱状凹部の底面から前記弁体の他の端面に貫通する連通孔が周方向に間隔をおいて複数本形成されている、
ことを特徴とする切替弁。
【請求項2】
請求項1記載の切替弁において、
前記ピストンの端面が前記弁体を押圧する部位が前記弁体の内部に位置し、前記ピストンは前記アクチュエータ部から前記弁体側に向かって突出して形成される円筒状のピストン収納筒の内部を摺動し、前記ピストン収納筒は前記弁体の前記温度検知部側の端面側に前記弁体と同心状に形成される円柱状凹部の内部に挿入され、前記弁体の前記円柱状凹部の外側には、前記温度検知部側の端面から他の端面及び他の円柱状凹部の底面に貫通する連通孔が周方向に間隔をおいて複数本形成されている、
ことを特徴とする切替弁。
【請求項3】
請求項1または2に記載の切替弁において、
前記弁本体の三つの流出入口において、前記二つの流出入口が流体の流入部であり、いずれか一方の流出入口から選択的に流入した流体が前記他の流出入口から流出する、または、前記他の流出入口が流体の流入部であり、前記二つの流出入口のいずれか一方の流出入口から選択的に流体が流出する
ことを特徴とする切替弁。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の前記切替弁の前記弁本体を外部物体に取り付けるための取り付け部材の使用により外部物体に取り付けることを特徴とする切替弁の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弁本体が3つの流出入口を有し、弁体が外部流体の温度に応じて弁本体内を摺動して2つの流出入口のいずれか一方を選択的に閉塞する切替弁および切替弁の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1によれば、ワックスエレメントを使用した三方弁は、弁本体がT字型に配列された3つの流出入口を有し、対峙する弁体および弁座により流出入する2つの流出入口が同一直線上に配置され、それらの弁体が弁本体内を温度に応じて変位して2つの流出口のいずれか一方を選択的に閉塞する弁であって、弁本体の内部にワックスエレメント本体を有し、かつ、温度を検知するワックスエレメントがワックスエレメント本体の内部に封入されており、前記ワックスエレメントは温度に応じて膨張・収縮するワックスと、ワックスの膨張・収縮により進退動するピストンとを有し、前記ピストンの進退動によりリターンスプリングで付勢されている前記弁体が移動して前記流出口の開閉を行なう切替弁が開示されている。
【0003】
特許文献2によれば、温度検出部が弁本体の外部に露出している切替弁が開示されている。バルブ本体は1つで球状であり、2つの弁座を有し、3つの通路の内、中央に位置する通路に対して、バルブ本体の移動により他の2つの通路からの流体の流入を切り替えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−094101号公報
【特許文献2】実開昭48−013824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、特許文献1、2の温度調整弁では、弁座部材を必要としている。
【0006】
本発明は、弁体が一つで弁本体が弁座の機能を果たし、外部物体の温度に応じて二つの流体を、切替可能であり、また、一つの流体の流路切替可能な三方弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、弁本体の内部にワックスエレメント本体が固定されており、ワックスエレメント本体内の温度検知部を弁本体の外部に配置された切替弁において、弁本体が外側に突出する3つの流出入口を有し、ワックスエレメント本体は、検知した弁本体の外部の温度に応じて膨張・収縮するワックスが封入されている温度検知部と、弁本体の内部にワックスエレメント本体を固定する固定部と、固定部の内側に固定されるアクチュエータ部とが一体で構成され、アクチュエータ部内部にワックスの膨張に伴う押圧により摺動するピストンを有し、弁本体の内部は、ピストンの端面に押圧されて摺動する1つの円柱状の弁体と弁体とピストンとを常時押圧しているリターンスプリングとが配設され、3つの流出入口は、弁体が摺動する領域において摺動方向に弁体の長さと同じ距離に離間して位置する2つの流出入口と、弁体が摺動する領域外にあって2つの流出入口に対して温度検知部から離れる側に位置する他の流出入口とであり、2つの流出入口のいずれか一方を選択的に閉塞する弁体は、温度検知部から離れる側の端面側にリターンスプリングを収納する弁体と同心状の円柱状凹部が形成され、かつ、円柱状凹部の底面か
ら弁体の他の端面に貫通する連通孔が周方向に間隔をおいて複数本形成されていることを特徴とする。
【0008】
また、切替弁において、ピストンの端面が弁体を押圧する部位が弁体の内部に位置し、ピストンはアクチュエータ部から弁体側に向かって突出して形成される円筒状のピストン収納筒の内部を摺動し、ピストン収納筒は弁体の温度検知部側の端面側に弁体と同心状に形成される円柱状凹部の内部に挿入され、前記弁体の前記円柱状凹部の外側には、前記温度検知部側の端面から他の端面
及び他の円柱状凹部の底面に貫通する連通孔が周方向に間隔をおいて複数本形成されていることを特徴とする。
【0009】
切替弁において、弁本体の3つの流出入口において、2つの流出入口が流体の流入部であり、いずれか一方の流出入口から選択的に流入した流体が他の流出入口から流出する、または、他の流出入口が流体の流入部であり、2つの流出入口のいずれか一方の流出入口から選択的に流体が流出することが好ましい。
【0010】
切替弁の弁本体を外部物体に取り付けるための取り付け部材の使用により外部物体に取り付けることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、弁体が一つで弁本体が弁座の機能を果たし、外部物体の温度に応じて二つの流体を、切替可能であり、また、一つの流体の流路切替可能な三方弁を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1の実施形態を示し、ワックス収縮時の切替弁の弁本体の縦断面図である。
【
図2】
図1の状態からワックスが膨張したときの切替弁の弁本体の縦断面図である。
【
図3】
図2の状態からワックスが更に膨張したときの切替弁の弁本体の縦断面図である。
【
図4】取付板部材を示し、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【
図5】本発明の第2の実施形態を示し、ワックス収縮時の切替弁の弁本体の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の第1の実施形態を
図1〜
図4に基づいて説明する。
【0014】
図1に示されているように、切替弁の弁本体1は、内部を透視できる透明または半透明で流出入流路口以外の部分の横断面が矩形であり、ケーシング2の内部に断面円形の中空部を有し、一方の端面に一つの円管部(本実施形態では出口流路口3として使用される。)が突出し、前記出口流路口3寄りの一側面に2つの円管部(本実施形態では入口流路口4,5として使用される。)が突出している。出口流路口3はケーシング2壁部を貫通する連通孔a6でケーシング2内に連通し、入口流路口4,5はケーシング2壁部をそれぞれ貫通する連通孔a7,8でケーシング2内に連通している。
【0015】
弁本体1の内部に弁体9が収納されている。弁体9は弁本体1のケーシング2の中空部と略同径の円柱部材で、弁本体1内を摺動可能である。弁体9の外周面には軸方向に間隔をおいて2つの環状溝が形成されており、これらの溝にそれぞれシールリングa10,11が装着され、弁体9の外周面と弁本体1の内周面との間のシールが行なわれる。
【0016】
弁体9の出口流路口3側の端面には弁体9と同心状に円柱状凹部a12が形成されており、円柱状凹部a12の底面から弁体9の他方の端面に貫通する連通孔b13が周方向に間隔をおいて複数本形成されている。
【0017】
ワックスエレメント本体15は、頭部15aと胴部15bとワックスエレメント14が一体で構成され、温度に応じて膨張・収縮するワックスを胴部15bの一部に収納し、ワックスエレメント14の内部にワックスの膨張・収縮に伴う圧力により進退動するピストン16を有し、ピストン16の端面が弁体9の端面に接触し、押圧する。
【0018】
ワックスエレメント本体15の頭部15aは弁本体1のケーシング2内に配置され、弁本体1のケーシング2の内周面に形成されている環状溝に装着されているシールリングb17によって、弁本体1の内周面とワックスエレメント本体15の頭部15a外周面との間のシールが行なわれるとともに、ワックスエレメント本体15が弁本体1に対して固定される。ワックスエレメント本体15の胴部15bは弁本体1の開口端面に取り付けられた取付板部材18に形成されている貫通孔19を挿通して弁本体1から外部に突出し、露出している。ワックスエレメント本体15の胴部15bの先端側の略半分にワックスが収納され、外部の温度を検出する温度検知部を構成している。
【0019】
弁本体1のケーシング2の内部の出口流路口3側の端面中央部に円筒状凸部が形成されており、リターンスプリング20は前記円筒状凸部の外周に一端部が挿入され、他端部が弁体9の円柱状凹部a12に挿入され、弁本体1のケーシング2の内部の出口流路口3側の端面と弁体9の円柱状凹部a12の底面との間に、常時圧縮状態で装着されている。弁体9はこのリターンスプリング20によってワックスエレメント本体15側に付勢され、ピストンを押圧している。
【0020】
弁本体1の出口流路口3と反対側の開口端面に取付板部材18(
図4参照)が取り付けられている。取付板部材18は弁本体1を外部物体に取り付けるための部材である。取付板部材18は貫通孔19を中央部に有している四角い固定板部18aの対向する二辺から一対の側板部18bが直角に外側に突出し、側板部18bの先端から更に取付板部18cが直角に外側に曲がって延び、取付板部18cに外部物体に取り付けるための貫通孔21を有している。取付板部材18は弁本体1の開口端面に固定板部18aが配置し、ボルト22で弁本体1に固定されている。
【0021】
以下、上記切替弁の作用を
図1〜
図3により説明する。
【0022】
切替弁は取付板部材18が図示外の外部物体に取り付けられ、ワックスエレメント本体15の胴部15bの先端面が外部物体に接触している。
【0023】
図1の状態は、ワックスエレメント本体15の胴部15bが外部物体の温度を検知してワックスが収縮状態にある場合を示す。
【0024】
この場合、弁体9は、弁本体1の出口流路口3から遠い方の入口流路口5に連通している連通孔a8を閉塞している。したがって、流体Aが出口流路口3から近い方の入口流路口4から流入して弁本体1の内部に流入し、出口流路口3から流出する。
【0025】
次に、外部物体の温度が上昇し、ワックスエレメント本体15の胴部15bが外部物体の温度を検知すると、ワックスが膨張し、ピストン16が前進し、リターンスプリング20の付勢力に抗して弁体9を移動させ、
図1の状態から、
図2の状態に、更に
図3の状態に移動させる。
【0026】
図3の状態は、ワックスエレメント本体15の胴部15bが外部物体の温度を検知してワックスが膨張状態にある場合を示す。
【0027】
この場合、弁体9は、弁本体1の出口流路口3に近い方の入口流路口4に連通している連通孔a7を閉塞している。したがって、流体Bが出口流路口3から遠い方の入口流路口5から流入して弁本体1の内部に流入し、弁体9の連通孔b13を通って出口流路口3から流出する。
このように、弁本体1のケーシング2の内周面が弁座の機能を有しており、別部材として弁座部材を必要としない切替弁となっている。
【0028】
上記のようにして、2種類の異なる流体A,Bのいずれかを外部物体の温度に応じて出口流路口3から選択的に流出させることができる。したがって、切替弁を例えば小型発電機等の汎用エンジンのシリンダブロック壁部に取り付け、シリンダブロック壁部の温度が低い場合は流体A(ガソリン)を出口流路口3から流出させてガソリンを燃料として使用し、シリンダブロック壁部の温度が高い場合は流体B(エタノール)を出口流路口3から流出させてエタノールを燃料として使用するように構成することが可能になる。
【0029】
図5は本発明の第2の実施形態を示している。以下、上記実施形態の切替弁と相違する点を説明する。
【0030】
本実施形態では、上記実施形態で出口流路口3が形成されていた弁本体1の端部は閉塞されており、円管部(本実施形態で出口流路口3として使用される。)は弁本体1のケーシング2における入口流路口4,5と反対側のケーシング2外周面から突出している例を示し、出口流路口3はケーシング2壁部を貫通する連通孔a6でケーシング2内に連通している。
【0031】
弁体9の胴部15側の端面には弁体9と同心状に円柱状凹部b23が形成されており、この円柱状凹部b23に、ワックスエレメント14から突出しピストン16を収納したピストン収納筒24が挿入され、ピストン16の端面が円柱状凹部b23の底面に接触している。弁体9の円柱状凹部b23の内周面には環状溝が形成されており、この溝にシールリングc25が装着され、弁体9の円柱状凹部b23の内周面とピストン収納筒24の外周面との間のシールが行なわれる。弁体9は、ピストン16の進退動およびリターンスプリング20の付勢力に伴い、外周面がケーシング2の内周面を摺動する。また、第1の実施形態における弁体9内の貫通孔b13は、胴部15側の端面か
ら他の端面側に形成されている円柱状凹部a12の底面に貫通する貫通孔b13となっている。
【0032】
シールリングc25は、ピストン収納筒24とピストン16との間に流体が流入することを防止することができる。
【0033】
本発明の第1、第2の実施形態では、2種類の異なる流体を外部物体の温度に応じて出口流路口3から流出させる使用方法を示したが、これに限ることはない。出口流路口3を入口流路口とし、他の2つの入口流路口4,5を出口流路口とし、入口流路口から流入した流体を2つの出口流路口のいずれか一方から選択的に流出させるように使用することもできる。切替弁の動作は、第1、第2の実施形態と同じである。
【符号の説明】
【0034】
1・・弁本体、2・・ケーシング、3・・出口流路口、4,5・・入口流路口、6,7,8・・連通孔a、9・・弁体、10,11・・シールリングa、12・・円柱状凹部a、13・・連通孔b、14・・ワックスエレメント(アクチュエータ部)、15・・ワックスエレメント本体、15a・・頭部、15b・・胴部(温度検知部)、16・・ピストン、17・・シールリングb、18・・取付板部材、18a・・固定板部、18b・・側板部、18c・・取付板部、19・・貫通孔、20・・リターンスプリング、21・・貫通孔、22・・ボルト、23・・円柱状凹部b 24・・ピストン収納筒、25・・シールリングc、A,B・・流体。