(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ハウジングと、前記ハウジングに形成された収容部内に固定され、前記ハウジングに形成された開口部を通じて導電性の材料で構成された接続対象物が挿入又は抜去されると共に導電性の材料で構成された端子と、を備え、
前記端子は、
前記収容部に固定される固定部が形成された基部と、
前記基部において前記開口部側を前部とし、前記基部において前記固定部よりも前方側から延出され、前記接続対象物に対して弾性的に接触する第1接触子と、
前記基部において前記固定部よりも後方側から延出され、前記接続対象物に対して弾性的に接触する第2接触子と、
を備え、
前記第1接触子は、前記開口部内へ前記接続対象物が挿入される挿入方向に対して直交する前記基部の幅方向の一端から延出されると共に、前記第2接触子は、前記基部の幅方向の他端から延出されているコネクタ。
前記第1接触子の自由端側に形成された第1自由端部と前記第2接触子の自由端側に形成された第2自由端部は、前記接続対象物の挿入方向に沿って前後に配置され、前記接続対象物の表面にそれぞれ接触可能とされる請求項1に記載のコネクタ。
前記第1接触子は前記固定部の前方側から延出されたフロント接触子であると共に、前記第1自由端部は前記フロント接触子の自由端側に形成されたフロント接触部であり、
前記第2接触子は前記固定部の後方側から延出されたリア接触子であると共に、前記第2自由端部は前記リア接触子の自由端側に形成され、かつ前記フロント接触部よりも前記基部側に配置されたリア接触部である請求項2に記載のコネクタ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記先行技術では、長接点ばね部及び短接点ばね部が、それぞれ雌コンタクトの固定部の一部である壁部に形成されている。そして、この固定部は、断面形状がU字状を成しているため、長接点ばね部及び短接点ばね部を介して弾性変形が生じやすくなっている。
【0007】
つまり、長接点ばね部及び短接点ばね部の弾性変形により、略U字状に屈曲形成された固定部は、断面が開く方向に変形しやすくなっている。このため、例えば、長接点ばね部が雄コンタクトに対して適切な接触圧で接触していたとしても、その後に接触する短接点ばね部が弾性変形したとき、その影響を受けて固定部が変形する可能性がある。
【0008】
仮に、固定部が変形すると、固定部の変形に伴って長接点ばね部が雄コンタクトから離間する方向に変位し、長接点ばね部が雄コンタクトの表面に接触する接触圧が低下して十分な接触圧を得られない場合がある。
【0009】
本発明は上記事実を考慮し、接続対象物に対し、当該接続対象物の挿入方向に沿って異なる複数の接点を有していても、各接点において、接続対象物に対する接触圧を維持することができるコネクタを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の本発明に係るコネクタは、ハウジングと、前記ハウジングに形成された収容部内に固定され、前記ハウジングに形成された開口部を通じて導電性の材料で構成された接続対象物が挿入又は抜去されると共に導電性の材料で構成された端子と、を備え、前記端子は、前記収容部に固定される固定部が形成された基部と、前記基部において前記開口部側を前部とし、前記基部において前記固定部よりも前方側から延出され、前記接続対象物に対して弾性的に接触する第1接触子と、前記基部において前記固定部よりも後方側から延出され、前記接続対象物に対して弾性的に接触する第2接触子と、
を備え、前記第1接触子は、前記開口部内へ前記接続対象物が挿入される挿入方向に対して直交する前記基部の幅方向の一端から延出されると共に、前記第2接触子は、前記基部の幅方向の他端から延出されている。
【0011】
請求項1に記載の本発明に係るコネクタでは、ハウジングに形成された収容部内に、導電性の材料で構成された端子が固定されている。この端子には、ハウジングに形成された開口部を通じて導電性の材料で構成された接続対象物が挿入又は抜去されるようになっている。
【0012】
一方、端子は、基部と第1接触子と第2接触子とを含んで構成されている。基部には、ハウジングに固定される固定部が形成されており、基部において、ハウジングの開口部側を前部として、固定部よりも前方側からは第1接触子が延出されている。そして、この第1接触子は、接続対象物に対して弾性的に接触するようになっている。また、基部において、固定部よりも後方側からは第2接触子が延出されており、当該第2接触子は、接続対象物に対して弾性的に接触するようになっている。
【0013】
すなわち、本発明では、端子の一部を構成する基部に、第1接触子及び第2接触子が形成されると共に、第1接触子及び第2接触子が接続対象物に対して弾性的に接触するようにしており、接続対象物の挿入方向に沿って異なる複数の接点を有している。
【0014】
また、第1接触子は、基部の固定部よりも前方側から延出され、第2接触子は、基部の固定部よりも後方側から延出されるように設定されている。ここで、基部の固定部は、ハウジングに固定されているため、第1接触子及び第2接触子は、基部に対してそれぞれ独立した状態で延出されている。これにより、第1接触子と第2接触子とは固定部を介して分断され、第1接触子が弾性変形しても、この第1接触子の変形が第2接触子に及ばないようにすることができる。
【0015】
つまり、第1接触子、第2接触子を変形させる応力の伝達が固定部によって遮断され、第1接触子、第2接触子はそれぞれ独立した状態で弾性変形する。したがって、第1接触子の弾性変形の影響を受けて第2接触子が弾性変形することを抑制し、第2接触子の弾性変形の影響を受けて第1接触子が弾性変形することを抑制することができる。その結果、第1接触子、第2接触子は、接続対象物に接触した状態で接続対象物に対してそれぞれ所望の接触圧を維持することができ、コネクタと接続対象物との間で安定した導通接続を行うことができる。
また、本発明では、第1接触子は、基部において、接続対象物がハウジングの開口部内へ挿入される挿入方向(以下、単に「接続対象物の挿入方向」という)に対して直交する当該基部の幅方向の一端から延出されている。一方、第2接触子は、基部の幅方向の他端から延出されている。
このため、端子を前方側から見たとき、基部とフロント接触子とリア接触子とで閉断面部を構成することが可能となる。これにより、端子において、当該閉断面部が構成されない場合と比較して、端子自体の剛性を向上させることができ、端子自体の変形を抑制することができる。
【0016】
請求項2に記載の本発明に係るコネクタは、請求項1に記載の本発明に係るコネクタにおいて、前記第1接触子の自由端側に形成された第1自由端部と前記第2接触子の自由端側に形成された第2自由端部は、前記接続対象物の挿入方向に沿って前後に配置され、前記接続対象物の表面にそれぞれ接触可能とされる。
【0017】
請求項2に記載の本発明に係るコネクタでは、第1接触子の自由端側に形成された第1自由端部と第2接触子の自由端側に形成された第2自由端部が、接続対象物の挿入方向に沿って前後に配置されている。このため、例えば、第1接触子の第1自由端部が第2接触子の第2自由端部よりもハウジングの開口部側に配置されている場合、接続対象物をハウジングの開口部内へ挿入させると、接続対象物は、まず、第1接触子の第1自由端部に接触する。そして、次に、接続対象物は、第2接触子の第2自由端部に接触する。
【0018】
本発明では、接続対象物に対して第1接触子の第1自由端部及び第2接触子の第2自由端部が弾性的に接触するようになっているため、ハウジング内に接続対象物が挿入されると、接続対象物の表面は、少なくとも第1接触子の第1自由端部及び第2接触子の第2自由端部によって摺動されることとなる。
【0019】
この場合、接続対象物の表面に異物が付着していたとしても、接続対象物の表面に付着した異物は、第1接触子の第1自由端部を摺動することで除去される。そして、接続対象物の表面において異物が除去された状態で、接続対象物の表面には第2接触子の第2自由端部が接触することとなる。
【0020】
また、仮に、第1接触子の第1自由端部が接続対象物の表面に付着した異物の上に乗り上げたとしても、第2接触子の第2自由端部は異物のない接続対象物の表面に付着される。したがって、本発明では、端子と接続対象物との間で確実に導通接続を行うことができ、これにより、端子と接続対象物との間で導通不良を防ぐことができる。
【0021】
請求項3に記載の本発明に係るコネクタは、請求項2に記載の本発明に係るコネクタにおいて、前記第1接触子は前記固定部の前方側から延出されたフロント接触子であると共に、前記第1自由端部は前記フロント接触子の自由端側に形成されたフロント接触部であり、前記第2接触子は前記固定部の後方側から延出されたリア接触子であると共に、前記第2自由端部は前記リア接触子の自由端側に形成され、かつ前記フロント接触部よりも前記基部側に配置されたリア接触部である。
【0022】
請求項3に記載の本発明に係るコネクタでは、第1接触子は、固定部よりも前方側から延出されたフロント接触子であり、第2接触子は、固定部よりも後方側から延出されたリア接触子である。そして、フロント接触子の自由端側にはフロント接触部が形成されており、当該フロント接触部が接続対象物の表面に接触する。また、リア接触子の自由端側にはリア接触部が形成されており、当該リア接触部は、フロント接触部よりも基部側に配置され、接続対象物の表面に接触する。
【0023】
前述のように、フロント接触子は基部における固定部よりも前方側から延出され、リア接触子は基部における固定部よりも後方側から延出されるように設定されている。例えば、フロント接触子の自由端側に形成されたフロント接触部とリア接触子の自由端側に形成されたリア接触部が、接続対象物の挿入方向に沿った同じ位置に配置されていると仮定する。この場合、リア接触子の延出長さ(根元から先端(リア接触部)までの長さ)は、フロント接触子の延出長さよりも長くなり、フロント接触子とリア接触子の板厚が略同じであった場合は、リア接触子はフロント接触子よりもばね定数が低くなってしまう。
【0024】
このため、本発明では、フロント接触子よりも基部における後方側から延出されたリア接触子のリア接触部をフロント接触子のフロント接触部よりも基部側に配置している。これにより、基部に対して延出位置が異なることによって生じるフロント接触子とリア接触子の延出長さの偏りを抑えることができる。
【0025】
すなわち、フロント接触子の延出長さとリア接触子の延出長さを略同じにすることで、フロント接触子とリア接触子の板厚が同じ場合、フロント接触子とリア接触子とでばね定数を略同じにすることができる。その結果、フロント接触子とリア接触子とで弾性力を略同じにして、フロント接触部とリア接触部とで接続対象物を押圧(弾性的に接触)する押圧力を略同じにすることができる。
【0029】
請求項
4に記載の本発明に係るコネクタは、請求項
3に記載のコネクタにおいて、前記リア接触子の根元側に形成され前記基部の幅方向の他端から前記基部に対して直交して延出されたリア連結部と、前記リア接触子において、前記リア連結部と直交しかつ前記基部と対向して配置されたリア支持部と、前記フロント接触子の根元側に形成され前記基部の幅方向の一端から前記基部に対して直交して延出され、かつ側面視で前記リア連結部の前端部と重なるフロント連結部と、前記フロント接触子において、前記フロント連結部と直交しかつ前記リア支持部と対向して配置されたフロント支持部と、を有している。
【0030】
請求項
4に記載の本発明に係るコネクタでは、リア接触子の根元側には、リア連結部が形成されている。このリア連結部は、基部の幅方向の他端から基部と直交して延出されている。また、リア接触子には、リア連結部と直交し、かつ基部と対向して配置されたリア支持部が形成されている。
【0031】
一方、フロント接触子の根元側には、フロント連結部が形成されており、フロント連結部は、側面視でリア連結部の前端部と重なるように形成されている。また、フロント接触子には、フロント連結部と直交し、かつリア支持部と対向して配置されたフロント支持部が形成されている。
【0032】
すなわち、本発明では、端子が、側面視でフロント連結部とリア連結部の前端部とが重なり、平面視で基部とリア支持部とフロント支持部とが重なるように形成されている。これにより、接続対象物の挿入方向に対して略直交する方向に沿って切断された端子の断面形状において、基部とフロント接触子とリア接触子とで閉断面部を構成することができる。これにより、端子自体の剛性を向上させることができ、端子自体の変形を抑制することができる。
【0033】
なお、ここでの「基部に対して直交」における「直交」は、完全に直交する場合だけでなく、製造時のばらつき等も含め完全な直交に対して角度がずれた場合を含む意味であり、いわゆる「略直交」の意である。
【0034】
請求項
5に記載の本発明に係るコネクタは、請求項3
又は請求項4に記載のコネクタにおいて、前記基部の前端から前記開口部側へ向かって延出され、前記フロント接触部及び前記リア接触部と共に前記接続対象物を挟持する伸長部が設けられている。
【0035】
請求項
5に記載の本発明に係るコネクタでは、基部の前端から開口部側へ向かって伸長部が延出されている。フロント接触子のフロント接触部及びリア接触子のリア接触部は、接続対象物に対して弾性的に接触するため、伸長部とフロント接触部及びリア接触部の間に接続対象物が挿入されると、当該接続対象物はこれらによって弾性的に挟持されることとなる。
【0036】
請求項
6に記載の本発明に係るコネクタは、請求項
5に記載のコネクタにおいて、前記伸長部における前記フロント接触部が対向する第1対向部位から前記リア接触部が対向する第2対向部位に亘って平坦部が形成されている。
【0037】
請求項
6に記載の本発明に係るコネクタでは、伸長部において、フロント接触部が対向する第1対向部位からリア接触部が対向する第2対向部位に亘って、平坦部が形成されているため、伸長部とフロント接触部及びリア接触部とで接続対象物が挟持された状態で、接続対象物の表面には平坦部が接触することとなる。
【0038】
これにより、接続対象物と端子との接触面積が増え、接続対象物が端子に挟持された状態において、接続対象物の回動移動等の移動を抑制することができる。このように、フロント接触部やリア接触部により接続対象物が押圧された状態において、接続対象物の移動を抑制することで、フロント接触部やリア接触部に対する摺動を防ぐことができる。これにより、フロント接触部やリア接触部の表面に施されたメッキが剥がれ導通状態が悪化することを抑制することができる。
【発明の効果】
【0039】
以上説明したように、本発明に係るコネクタは、接続対象物に対し、当該接続対象物の挿入方向に沿って異なる複数の接点を有していても、各接点において、接続対象物に対する接触圧を維持することができる、という優れた効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明の一実施形態に係るコネクタについて図面に基づいて説明する。なお、各図に適宜記す矢印FR、矢印UP、矢印RHは、便宜上、本発明の一実施形態に係るコネクタの前方向、上方向、右側を示している。
【0042】
(コネクタの構成)
まず、本実施形態に係るコネクタの構成について説明する。
【0043】
図1には、コネクタ10を前方かつ斜め上方側から見た斜視図が示されている。なお、
図2は、
図1において2−2線に沿って切断したときのコネクタ10を後方かつ斜め上方側から見た状態で一部が拡大された拡大斜視図が示されている。
【0044】
図1に示されるコネクタ10は、例えば、樹脂で形成されたハウジング12と、金属で形成された導電性の端子14と、を含んで構成されている。なお、
図1において、端子14を分かりやすく図示するため、ハウジング12を仮想線で示している。後述する
図3及び
図4において、
図1と同様にハウジング12を仮想線で示している。
【0045】
図1に示されるように、例えば、ハウジング12は直方体状を成しており、
図2に示されるように、ハウジング12の長手方向に対して略直交する幅方向に沿って、略直方体状の収容部13が貫通している。この収容部13は、ハウジング12の長手方向に沿って複数(ここでは5つ)配列されており、収容部13内には、端子14がそれぞれ収容されている。なお、
図2では、説明の都合上、3つの端子14の図示を省略している。また、本実施形態では、ハウジング12は直方体状を成しているが、これに限るものではない。
【0046】
詳細については後述するが、端子14は、コネクタ10が搭載される基板(図示省略)に電気的に接続可能とされており、基板に搭載された状態で、
図3及び
図4に示されるように、導電性の接続ピン(接続対象物)15が接続可能とされている。接続ピン15は、略角柱状を成しており、接続ピン15の先端部15Aは先細りとなる略角錐台状に形成され、ハウジング12に形成された開口部20内に挿入(又は抜去)しやすくなるように形成されている。なお、ここでは、接続ピン15は略角柱状を成しているが、これに限るものではなく、図示はしないが、略円柱状を成していてもよい。
【0047】
一方、ハウジング12の開口部20は略角錐台状に形成されており、開口部20の奥側に収容部13と連通する連通口20Aが形成されている。つまり、開口部20は、連通口20Aへ向かうにつれて開口面積が狭くなるように形成されており、開口部20内へ挿入された接続ピン15を連通口20A内へガイドするようになっている。
【0048】
ここで、端子14について説明する。
端子14は、例えば、略直方体状を成しており、折曲加工により1枚の金属板を折曲させて形成されている。一般に、折曲部において略直角に折り曲げた場合、当該折曲部では応力が集中する可能性が高くなる。このため、折曲部ではR状に折り曲げられており、応力が集中しないようにしている。
【0049】
図6に示されるように、端子14の上部14Aには、端子14の長手方向の後部側に略矩形状の基部16が設けられている。基部16の長手方向の中央部16Aには、基部16の長手方向に対して略直交する幅方向の両端部に固定部18がそれぞれ設けられており、この固定部18を介して端子14が、
図2に示されるように、ハウジング12に設けられた収容部13内に固定されるようになっている。
【0050】
具体的に説明すると、各固定部18には、基部16の長手方向に沿って一対の爪部18Aがそれぞれ設けられている。この爪部18Aは、基部16の幅方向の両端部から水平方向に沿って張り出しており、ハウジング12の収容部13内の側壁13Aに形成された溝壁22に食い込み可能とされている。当該爪部18Aが収容部13内の溝壁22に食い込むことで、端子14がハウジング12に固定される。なお、端子14をハウジング12に固定させることができればよいため、これに限るものではない。
【0051】
また、
図6及び
図7に示されるように、基部16からは端子14の前方側へ向かって板状の伸長片(伸長部)24が張り出している。伸長片24には、側方から見て基部16の面一よりも一段下がった位置で略水平となるように平坦部26が形成されており、連通口20Aを通じて平坦部26が目視可能となっている。そして、これにより、平坦部26には接続ピン15の表面15Bが確実に接触可能とされる(
図5参照)。
【0052】
なお、伸長片24の自由端部24Aは、基部16に対して略面一の状態となるように形成されている。このため、
図5に示されるように、端子14がハウジング12の収容部13内に固定された状態で、平坦部26とハウジング12の天井部12Aとの間には、空間部27が設けられる。
【0053】
さらに、
図6及び
図7に示されるように、基部16の固定部18よりも前方側に位置する基部16の前部16Bには、基部16の左端部(幅方向の一端)16Cからフロント接触子(第1接触子)28が延出しており、基部16の固定部18よりも後方側に位置する基部16の後部16Dには、基部16の右端部(幅方向の他端)16Eからリア接触子(第2接触子)30が延出している。
【0054】
リア接触子30は、リア連結片(リア連結部)32と、リア支持片(リア支持部)34と、リア接触片36と、を含んで構成されている。リア連結片32は、リア接触子30の根元側に形成されており、基部16の右端部16Eから基部16に対して略直交した状態で垂下(延出)されている。
【0055】
リア連結片32は、
図7に示されるように、右側方から見ると略L字状を成しており、リア連結片32の下端にはリア支持片34が連設されている。リア支持片34は、リア連結片32に対して略直交した状態で端子14の前方側からみて、リア連結片32との間で略L字状を成し、基部16及び伸長片24と対向して配置されている。
【0056】
また、リア支持片34の前端からは、リア接触片36が斜め上方側へ向かって延出されている。リア接触片36は、側方から見ると略逆V字状を成しており、リア支持片34の前端から延出され、リア接触片36の自由端側に向かうにつれて伸長片24側へ近接する方向へ傾斜し、リア接触片36の頂部(以下、「リア接触部」という)38に接続ピン15の表面15Bが接触可能とされている(
図9(B)参照)。そして、リア接触片36は、リア接触部38を越えると、リア接触片36の自由端に向かうにつれて伸長片24から離間する方向へ傾斜する(離間部39)。
【0057】
一方、
図6及び
図7に示されるように、フロント接触子28は、フロント連結片(フロント連結部)42と、フロント支持片(フロント支持部)44と、フロント接触片46と、を含んで構成されている。フロント連結片42は、フロント接触子28の根元側に形成されており、基部16の左端部16Cから基部16に対して略直交した状態で垂下(延出)されている。
【0058】
フロント連結片42は、
図6に示されるように、左側方から見ると略三角形状を成している。このフロント連結片42の後端42Aは、上下方向に沿って垂下されているが、フロント連結片42の前端42Bは下方側へ向かうにつれて前方側へ向かって傾斜している。つまり、フロント連結片42は、左側方から見ると根元側(基部16側)から先端側(フロント支持片44側)へ向かうにつれて幅広となっている。なお、
図10(A)に示されるように、側面視でフロント連結片42の後部42Cとリア連結片32の前部32Aは、重なるように設定されている。
【0059】
また、
図6に示されるように、フロント連結片42の下端には、フロント支持片44が連設されている。フロント支持片44は、フロント連結片42に対して略直交した状態で端子14の後方側からみて、フロント連結片42との間で略L字状を成して形成されている。そして、フロント支持片44は、リア支持片34の前端側の一部、リア接触片36及び伸長片24が対向して配置されている。つまり、フロント支持片44はリア支持片34の下方側に配置されることとなる(
図8参照)。
【0060】
さらに、フロント支持片44の前端からは、フロント接触片46が斜め上方側へ向かって延出されている。フロント接触片46は、側方から見ると略逆V字状を成しており、フロント支持片44の前端から延出され、フロント接触片46の自由端側に向かうにつれて伸長片24側へ近接する方向へ傾斜し、フロント接触片46の頂部(以下、「フロント接触部」という)48に接続ピン15の表面15Bが接触可能とされている(
図9(B)参照)。そして、フロント接触片46は、フロント接触部48を越えると、フロント接触片46の自由端に向かうにつれて伸長片24から離間する方向へ傾斜する(離間部49)。
【0061】
ここで、
図7及び
図10(A)に示されるように、フロント支持片44の前端は、リア支持片34の前端よりも前方側に位置しており、フロント接触部48はリア接触部38の前方側に配置されている。つまり、フロント接触部48とリア接触部38とは接続ピン15の挿入方向(矢印A方向)に沿って前後に配置されている。
【0062】
また、フロント接触部48及びリア接触部38は、伸長片24の平坦部26とそれぞれ対向して配置されており、フロント接触片46とリア接触片36とは、略同じ長さとなるように設定されている。そして、伸長片24とフロント接触片46及びリア接触片36とで構成される端子14の挿入部50内に接続ピン15が挿入されると、伸長片24の平坦部26とフロント接触部48及びリア接触部38との間で接続ピン15が挟持可能とされる。
【0063】
このため、端子14の挿入部50において、伸長片24の平坦部26とフロント接触部48及びリア接触部38との間の隙間tは、接続ピン15の高さ方向の寸法Hよりも小さくなるように設定される(t<H)。これにより、端子14の挿入部50内へ接続ピン15を挿入すると、
図10(B)に示されるように、伸長片24、フロント接触子28及びリア接触子30は弾性変形し、接続ピン15は、少なくともフロント接触片46とリア接触片36による付勢力によって押圧された状態で弾性的に挟持される。
【0064】
つまり、本実施形態では、接続ピン15の挿入方向に沿って異なる複数の接点(フロント接触部48及びリア接触部38)を有しており、接続ピン15は、伸長片24とフロント接触部48及びリア接触部38によって挟持される。なお、伸長片24の自由端部24Aと、フロント接触片46の自由端部に形成された離間部39及びリア接触片36の自由端部に形成された離間部49とは、隙間tよりも大きくなるように設定されており、端子14の挿入部50内に接続ピン15が挿入しやすくなっている。
【0065】
(コネクタの作用及び効果)
次に、本実施形態に係るコネクタの作用及び効果について説明する。
【0066】
図3及び
図6に示されるように、本実施形態では、コネクタ10の一部を構成する端子14において、端子14の基部16に、伸長片24、フロント接触子28及びリア接触子30が形成されると共に、伸長片24とフロント接触子28及びリア接触子30とで接続ピン15を弾性的に挟持するようにしている(
図9(B)参照)。
【0067】
そして、
図6及び
図7に示されるように、フロント接触子28は、基部16の固定部18よりも前方側から延出され、リア接触子30は、基部16の固定部18よりも後方側から延出されるように設定されている。つまり、固定部18を間に置いて、基部16の前部16Bにはフロント接触子28が設けられ、基部16の後部16Dにはリア接触子30が設けられている。
【0068】
ここで、基部16の固定部18は、ハウジング12に固定されているため(
図2参照)、フロント接触子28及びリア接触子30は、基部16に対してそれぞれ独立した状態で延出されている。すなわち、フロント接触子28とリア接触子30とは固定部18を介して分断されており、フロント接触子28が弾性変形しても、このフロント接触子28の変形がリア接触子30に及ばないようにすることができる。
【0069】
言い換えると、本実施形態では、フロント接触子28、リア接触子30を変形させる応力の伝達が固定部18によって遮断され、フロント接触子28、リア接触子30はそれぞれ独立した状態で弾性変形する。したがって、フロント接触子28の弾性変形に追従してリア接触子30が弾性変形することを抑制し、また、リア接触子30の弾性変形に追従してフロント接触子28が弾性変形することを抑制することができる。
【0070】
その結果、
図9(B)に示されるように、端子14のフロント接触子28、リア接触子30は、接続ピン15に接触した状態で接続ピン15に対してそれぞれ所望の接触圧を維持することができ、端子14と接続ピン15との間で安定した導通接続を行うことができる。
【0071】
すなわち、本実施形態におけるコネクタ10は、接続ピン15に対し、当該接続ピン15の挿入方向に沿って異なる複数の接点(フロント接触部48及びリア接触部38)を有していても、各接点において、接続ピン15に対する接触圧を維持することができる。
【0072】
また、本実施形態では、
図9(A)に示されるように、フロント接触部48とリア接触部38とは、接続ピン15の挿入方向(矢印A方向)に沿って前後に配置されている。このため、例えば、接続ピン15を端子14の挿入部50内へ挿入させると、接続ピン15は、まず、フロント接触子28の自由端側に設けられたフロント接触部48に接触する。そして、次に、接続ピン15は、リア接触子30の自由端側に設けられたリア接触部38に接触する。
【0073】
ここで、
図9(B)に示されるように、接続ピン15は、伸長片24とフロント接触子28のフロント接触部48及びリア接触子30のリア接触部38とで弾性的に挟持されるようになっている。このため、伸長片24とフロント接触子28及びリア接触子30との間に接続ピン15が挿入されると、接続ピン15の表面15Bは、少なくともフロント接触部48及びリア接触部38によって摺動されることとなる。
【0074】
これにより、図示はしないが、接続ピン15の表面15Bに異物が付着していたとしても、接続ピン15の表面15Bに付着した異物は、フロント接触部48を摺動することで除去される。そして、接続ピン15の表面15Bにおいて異物が除去された状態で、接続ピン15の表面15Bにはリア接触部38が接触することとなる。したがって、本実施形態では、コネクタ10と接続ピン15との間で確実に導通接続を行うことができる。
【0075】
また、仮に、端子14のフロント接触部48が接続ピン15の表面15Bに付着した異物の上に乗り上げたとしても、リア接触部38は異物のない接続ピン15の表面15Bに接触する。つまり、本実施形態では、端子14(コネクタ10)と接続ピン15との間で確実に導通接続を行うことができる。換言すると、本実施形態では、端子14(コネクタ10)と接続ピン15との間で導通不良を防ぐことができる。
【0076】
一方、
図6及び
図7に示されるように、本実施形態では、前述のように、フロント接触子28は基部16の前部16Bから延出され、リア接触子30は、固定部18を間に置いて、基部16の後部16Dから延出されるように設定されている。そして、フロント接触子28のフロント接触部48とリア接触子30のリア接触部38は、それぞれ基部16よりも前方側に位置している。
【0077】
例えば、図示はしないが、フロント接触部48とリア接触子30が接続ピン15の挿入方向の同じ位置に配置されていると仮定する。この場合、リア接触子30の延出長さ(根元から先端までの長さ)は、フロント接触子28の延出長さよりも長くなる。本実施形態における端子14は1枚の金属製の板材で形成されているため、フロント接触片46とリア接触片36の板厚は略均一である。このため、リア接触子30はフロント接触子28よりもばね定数が低くなってしまう。
【0078】
したがって、本実施形態では、フロント接触子28よりも基部16の後部16Dから延出されたリア接触子30のリア接触部38をフロント接触子28のフロント接触部48よりも基部16側に配置している。これにより、基部16に対して延出位置が異なることによって生じるフロント接触子28とリア接触子30の延出長さの偏りを抑えることができる。
【0079】
そして、フロント接触子28の延出長さとリア接触子30の延出長さを略同じにすることで、フロント接触子28とリア接触子30の板厚が同じ場合、フロント接触子28とリア接触子30とでばね定数を略同じにすることができる。その結果、フロント接触子28とリア接触子30とで弾性力を略同じにして、フロント接触部48とリア接触部38とで接続ピン15を押圧(弾性的に接触)する押圧力を略同じにすることができる。
【0080】
ところで、本実施形態では、前述のように、リア接触子30では、リア連結片32が基部16に対して垂下され、リア連結片32の下端からは、リア連結片32と略直交しかつ基部16及び伸長片24と対向するリア支持片34が延出されている。一方、フロント接触子28では、フロント連結片42が基部16に対して垂下され、フロント連結片42の下端からは、フロント連結片42と略直交しかつリア支持片34及び伸長片24と対向するフロント支持片44が延出されている。そして、
図10(A)に示されるように、フロント連結片42の後部42Cとリア連結片32の前部32Aは、側方から見て重なるように設定されている。
【0081】
すなわち、本実施形態では、
図10(A)に示されるように、端子14は、側面視でフロント連結片42の後部42Cとリア連結片32の前部32Aと重なり、かつ
図6及び
図7に示されるように、上方側から見ると基部16とリア支持片34とフロント支持片44とが重なるように形成されている。
【0082】
これにより、接続ピン15の挿入方向(
図9(A)で示す矢印A方向)に対して略直交する方向に沿って切断された端子14の断面形状において、基部16とフロント接触子28とリア接触子30とで閉断面部52(
図8参照)を構成することができる。これにより、端子14自体の剛性を向上させることができ、端子14自体の変形を抑制することができる。
【0083】
また、本実施形態では、
図9(A)に示されるように、伸長片24において、フロント接触部48が対向する対向部位(第1対向部位)Pからリア接触部38が対向する対向部位(第2対向部位)Qに亘って、平坦部26が形成されている。このため、
図9(B)に示されるように、伸長片24とフロント接触部48及びリア接触部38とで接続ピン15が挟持された状態で、接続ピン15の表面15Bには平坦部26が接触することとなる。
【0084】
これにより、接続ピン15と端子14(具体的には、伸長片24とフロント接触部48及びリア接触部38)との接触面積が増え、接続ピン15が端子14に挟持された状態において、接続ピン15の回動移動等の移動を抑制することができる。
【0085】
このように、フロント接触部48やリア接触部38により接続ピン15が押圧された状態において、接続ピン15の移動を抑制することで、フロント接触部48やリア接触部38に対する摺動を防ぐことができる。これにより、フロント接触部48やリア接触部38の表面に施されたメッキが剥がれ導通状態が悪化することを抑制することができる。
【0086】
さらに、本実施形態では、
図10(A)に示されるように、フロント接触片46は、フロント支持片44の前端から延出され、フロント接触部48を頂部とし、リア接触片36は、リア支持片34の前端から延出され、リア接触部38を頂部としてそれぞれ形成されている。
【0087】
そして、フロント接触片46とリア接触片36とは、略同じ長さとなるように設定されている。前述のように、本実施形態における端子14は1枚の金属製の板材で形成されているため、フロント接触片46とリア接触片36の板厚は略均一である。したがって、フロント接触片46とリア接触片36のばね定数は略同じであり、フロント接触片46とリア接触片36とで、接続ピン15が接触した状態で付勢力を略同じにすることができる。すなわち、フロント接触部48とリア接触部38とは、伸長片24との間で略同じ挟持力で接続ピン15を挟持することができる。
【0088】
(本実施形態の補足)
本実施形態では、固定部よりも前方側から延出される第1接触子がフロント接触子28であり、固定部よりも前方側から延出される第2接触子はリア接触子30であるが、第1接触子がリア接触子30であり、第2接触子がフロント接触子28であってもよい。
【0089】
また、本実施形態では、1枚の金属板を折曲させて端子14が形成されているが、複数の金属板、或いは他の部材を含んで端子が形成されてもよい。これにより、端子14の板厚を部分的に厚くするなどして、端子14の剛性を効果的に向上させるようにしてもよい。また、端子14の形成方法においては、折曲加工に限るものではなく、電気鋳造、射出成形、ダイキャスト、切削加工等、他の形成方法により形成されてもよいのは勿論のことである。
【0090】
さらに、本実施形態では、フロント接触部48とリア接触部38とは接続ピン15の挿入方向(矢印A方向)に沿って前後、つまり、同一直線上に配置されているが、必ずしも同一直線上に配置されなくてもよい。
【0091】
さらにまた、本実施形態では、
図10(A)に示されるように、端子14が、側面視でフロント連結片42の後部42Cとリア連結片32の前部32Aと重なり、かつ
図6及び
図7に示されるように、上方側から見ると基部16とリア支持片34とフロント支持片44とが重なるように形成されている。そして、これにより、本実施形態では、端子14自体の剛性を向上させているが、端子14の剛性を向上させることができればよいため、これに限るものでない。例えば、リア支持片34及びフロント支持片44の板厚を厚くするなどしてもよい。
【0092】
また、本実施形態では、
図6及び
図7に示されるように、端子14は、基部16の固定部18よりも前方側において、基部16の左端部16Cからフロント接触子28が延出し、基部16の固定部18よりも後方側において、基部16の右端部16Eからリア接触子30が延出している。
【0093】
つまり、本実施形態では、端子14は、基部16の前部16Bにおいて、幅方向の一端(左端部16C)からフロント接触子28が延出し、基部16の後部16Dにおいて、基部16の幅方向の他端(右端部16E)からリア接触子30が延出しているが、これに限るものではない。例えば、基部16の幅方向の一端からフロント接触子28及びリア接触子30が延出されてもよい。
【0094】
具体的に説明すると、例えば、
図11〜
図13に示されるように、端子54の基部56の前部56Aにおいて、右端部(幅方向の一端)56Bからフロント接触子(第1接触子)58が延出しており、基部56の後部56Cにおいて、フロント接触子58と同様に、右端部56Bからリア接触子(第2接触子)60が延出してもよい。
【0095】
また、本実施形態では、
図5に示されるように、接続ピン15が挿入されると、伸長片24とフロント接触部48及びリア接触部38との間で接続ピン15が挟持されるようになっているが、伸長片24は必ずしも必要ではない。但し、この場合、ハウジング12の天井部12Aが開口部20の連通口20Aと繋がるように形成される。これにより、接続ピン15は、ハウジング12の天井部12Aとフロント接触部48及びリア接触部38とで挟持されることとなる。
【0096】
さらに、本実施形態では、
図9(A)に示されるように、伸長片24において、フロント接触部48が対向する対向部位Pからリア接触部38が対向する対向部位Qに亘って、平坦部26が形成されている。これにより、接続ピン15が端子14に挟持された状態において、接続ピン15の回動移動等の移動を抑制することができるが、必ずしも対向部位Pから対向部位Qに亘って平坦部26が形成されていなくてもよい。また、平坦部26は、側方から見て基部16の面一よりも一段下がった位置で略水平となるように形成されているが、基部16と面一の状態で形成されてもよい。
【0097】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論のことである。
【課題】接続対象物に対し、当該接続対象物の挿入方向に沿って異なる複数の接点を有していても、各接点において、接続対象物に対する接触圧を維持することができるコネクタを得る。
【解決手段】固定部18を間に置いて、基部16の前部16Bにはフロント接触子28が設けられ、基部16の後部16Dにはリア接触子30が設けられている。これにより、フロント接触子28とリア接触子30とは固定部18を介して分断され、フロント接触子28の弾性変形の影響を受けてリア接触子30が弾性変形することを抑制し、また、リア接触子30の弾性変形の影響を受けてフロント接触子28が弾性変形することを抑制することができる。その結果、フロント接触子28、リア接触子30は、接続ピンに接触した状態で接続ピンに対してそれぞれ所望の接触圧を維持することができる。