(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6356892
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】小型構造の逆入力遮断クラッチ
(51)【国際特許分類】
F16D 41/10 20060101AFI20180702BHJP
F16D 41/06 20060101ALI20180702BHJP
F16D 41/066 20060101ALI20180702BHJP
F16D 65/16 20060101ALI20180702BHJP
F16D 67/02 20060101ALI20180702BHJP
F16D 127/06 20120101ALN20180702BHJP
【FI】
F16D41/10
F16D41/06 E
F16D41/066
F16D65/16
F16D67/02 K
F16D127:06
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-191102(P2017-191102)
(22)【出願日】2017年9月29日
【審査請求日】2017年10月26日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000103976
【氏名又は名称】オリジン電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100102417
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100202496
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿角 剛二
(74)【代理人】
【識別番号】100194629
【弁理士】
【氏名又は名称】小嶋 俊之
(72)【発明者】
【氏名】吉田 拓峰
【審査官】
日下部 由泰
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−174320(JP,A)
【文献】
特開2007−247763(JP,A)
【文献】
特開2010−048388(JP,A)
【文献】
特許第6046859(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 41/00−47/06
F16D 65/16,67/02,127/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定された筒状の外輪と、前記外輪内で共通の回転軸を中心として回転可能な入力軸及び出力軸を備え、前記入力軸からの正・逆方向の回転は前記出力軸に伝達されると共に、前記出力軸からの前記入力軸への回転の伝達は、前記出力軸を回転不能として遮断される逆入力遮断クラッチであって、
前記外輪の内側には、前記入力軸に設けられた入力突出部と、前記出力軸に設けられた出力突出部とが配置され、前記入力突出部の周方向両側には押圧面が形成されると共に、前記出力突出部には前記外輪の内周面と対向する凹状のカム面が形成され、前記カム面は、周方向の中央から左右に向けて対称的に径が増大する斜面を備えており、さらに、
前記カム面と前記外輪の内周面との間には、単一の球形状の転動体が設置されると共に、前記外輪の内周面には、前記転動体が嵌り込んで周方向に移動可能な円弧状断面の環状溝が形成され、前記環状溝の深さは前記転動体の直径の6乃至21%に設定されており、
前記入力軸が回転すると、前記押圧面の一方が前記出力突出部と共に前記転動体を押圧して前記出力軸を回転させる一方、前記出力軸が回転しようとしても、前記転動体が前記外輪の内周面と前記カム面との間で噛み込んで回転することができない、ことを特徴とする逆入力遮断クラッチ。
【請求項2】
前記外輪の内側には、前記入力突出部が固着される入力円板部材と前記出力突出部が固着される出力円板部材とが設けられ、かつ、前記入力円板部材と前記出力円板部材とは軸方向に対向して位置し、前記転動体を挟持している、請求項1に記載の逆入力遮断クラッチ。
【請求項3】
前記入力軸及び前記出力軸には、軸方向に延びる同一円形断面の中央穴が形成され、それぞれの前記中央穴には、共通の芯部材が挿通されている、請求項1又は2に記載の逆入力遮断クラッチ。
【請求項4】
前記外輪の内側には潤滑剤が充填される、請求項1乃至3のいずれかに記載の逆入力遮断クラッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力軸と出力軸との間の動力伝達を断・接するクラッチ装置、特に、転動体の噛み込み作動を利用して、入力軸(駆動側)からの正・逆回転を出力軸(従動側)に伝達するとともに、出力軸からの動力伝達は、出力軸を回転不能として遮断する逆入力遮断クラッチに関する。
【背景技術】
【0002】
モーターなどの駆動源から作業機器等を駆動する動力伝達系、例えば、モーターにより物品を上下に移送する昇降装置では、物品が所定の位置に達したとき、モーターを停止すると物品が自動的にその位置を保持する作動が求められる場合がある。そのため、入力軸と出力軸を備えた逆入力遮断クラッチを用いて、入力軸を正・逆回転可能なモーターに連結するとともに、出力軸の回転により物品を昇降させる装置が知られている。逆入力遮断クラッチは、ロックタイプ双方向クラッチとも呼ばれ、入力軸の回転は出力軸へ伝達されるが、出力軸から入力軸を回転させようとしても、出力軸がロックして回転せず、従って出力軸の回転は入力軸へ伝達されずに遮断されるものである。
【0003】
このような逆入力遮断クラッチとして、例えば、本出願人の創案に係る特許文献1に記載された、ローラの噛み込み及び噛み込み解除を利用する装置があり、これについて、
図8及び
図9を参照して説明する。
図8(a)は、逆入力遮断クラッチの全体的な構造を示す断面図、
図8(b)(c)は、それぞれ入力軸及び出力軸の斜視図、また、
図9は、逆入力遮断クラッチの作動を説明するため、
図8(a)のA−A断面の一部を拡大して表示する作動説明図である。
【0004】
図8(a)に示すように、この逆入力遮断クラッチは、固定された外輪(ハウジング)Gと、共通の回転軸を中心として回転可能な入力軸IS及び出力軸OSとを備えている。
図8(b)に示すとおり、入力軸ISには円板部IDが設けられるとともに、そこから軸方向に延びる複数の入力突出部ITが形成され、入力突出部ITは、周方向に等間隔で配置されている。出力軸OSには、
図8(c)に示すとおり、径方向に延びる複数の出力突出部OTが形成されており、各々の出力突出部OTは、入力軸ISの隣り合う入力突出部ITの間に入り込むよう組み合わされて(
図9も参照)、外輪Gの内部空間に設置される。その内部空間には、グリース等の粘着性を有する潤滑剤が封入される。
出力突出部OTの径方向外方の面は、外輪Gの内周面と対向する凹状のカム面CSとなっている。そして、外輪Gの内周面と出力突出部OTのカム面CSとの間には、円筒形状のローラである転動体Rが設置されている。
【0005】
図8の逆入力遮断クラッチにおいて、入力軸ISにも出力軸OSにもトルクが作用しない静止状態にあるときは、
図9(a)に示すとおり、転動体Rは、出力突出部OTの凹状のカム面CSの中央に位置しており、転動体Rと外輪Gの内周面GSとの間にはわずかな間隙が存在する。また、出力突出部OTの周方向側面と入力突出部ITの周方向側面(押圧面)との間には所定の間隙が設定されている。
入力軸ISが反時計方向に回転して入力突出部ITが反時計方向に移動すると、
図9(b)に示すとおり、入力突出部ITの左側押圧面の下方(径方向内方)部が、出力突出部OTの右側面に当接し出力突出部OTを反時計方向に押圧する。このときは、入力突出部ITの左側押圧面の上方(径方向外方)部が転動体Rの移動を規制するので、転動体Rは、凹状のカム面CSのほぼ中央の位置に止まって外輪Gの内周面GSと接触することはない。そのため、入力突出部ITは、転動体Rと共に出力突出部OTを反時計方向に回転させ、出力軸OSを反時計方向に回転させることとなる。入力軸ISが反時計方向に回転した場合は、入力突出部ITの右側押圧面が出力突出部OTの左側面に当接し、同様に出力軸OSを時計方向に回転させる。
【0006】
これに対し、出力軸OSが反時計方向に回転したときは、
図9(c)に示すとおり、出力突出部OTが反時計方向に移動するので、転動体Rが、カム面CSの右側斜面により図の矢印のように押し上げられ、外輪Gの内周面GSと強く当接して噛み込みを生じる。そのため、出力軸OSはロック状態となってその回転が阻止され、入力軸ISを回転させることはない。出力軸OSの時計方向の回転についても同様である。
ところで、出力軸OSのロック状態は、転動体Rが出力突出部OTに対し相対的に移動することにより生じるものであり、何らかの原因で転動体Rと出力突出部OTとが膠着し転動体Rがカム面CSの中央に止まったままとなると、転動体Rの噛み込みは起こらず、出力軸OSの回転が入力軸ISに伝達されてしまう。
この不具合を防止するため、
図8(a)の逆入力遮断クラッチでは、転動体Rを軸方向に押圧して軽い制動力を付与するばね部材SPを設置している。ばね部材SPは、ウエーブワッシャと平ワッシャとを組み合わせたものであり、転動体Rが出力突出部OTと一体的に移動しないように制動して、噛み込みとその解除との切り換えを確実に行わせるようにしている。
【0007】
逆入力遮断クラッチは、事務用機器の動力伝達部品、例えば、複写機のフィニッシャーにおいて、複写済みの用紙を載せた用紙テーブルを上下させる昇降装置、あるいは、建築物の窓のブラインドを昇降する昇降装置に適用することができる。これを利用すると、簡易な装置による自動的な動力伝達の制御が可能となって、例えば電磁クラッチにより制御する場合のような、電力等の使用が不必要となるとともに、出力軸側から不測の逆入力があった場合に、駆動源のモーターを保護することも可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第6130587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
逆入力遮断クラッチには種々の用途があるが、事務用機器などに使用する場合には、被駆動側の装置に作用する負荷トルクが小さく駆動用モーターの出力も小さい動力伝達装置に用いられることが多い。このような用途にあっては、逆入力遮断クラッチをなるべく小型化し、コンパクトで省スペースな構造とする要請が強い。
【0010】
転動体の噛み込み作動を利用する逆入力遮断クラッチを小型化する一手段として、
図8のような軸方向の長い円筒状の転動体(ローラ)に代えて、球形状の転動体(ボール)を設置することが考えられる。しかし、球形状の転動体が対向する外輪の内周面と接触するときは、理論上、線ではなく1点のみで接触する。そのため、固定された外輪の内周面と転動体との接触面積が非常に小さくなり、その間に働く摩擦力あるいは潤滑剤による粘着力も小さな値となって、転動体が出力突出部と一体的に移動する不具合が生じやすい。これを防ぐために転動体に制動力を付与するばね部材を設置することはできるが、逆入力遮断クラッチが小型のものであると、複雑な形の極めて小さなばね部材を製造しこれを内部に組み込むのは困難な作業となる。
本発明の課題は、動力伝達系に介在される逆入力遮断クラッチを、小型でコンパクトな構造として製造作業を容易化し、さらに、回転を伝達する際の振動等を防止して円滑な動力伝達を可能なものとすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の課題に鑑み、本発明は、逆入力遮断クラッチの転動体として球形状の転動体を用い、これに対向する外輪の内周面には転動体が嵌り込む凹状の環状溝を形成し、逆入力遮断クラッチを小型化しても安定した作動が可能となるようにしたものである。すなわち、本発明は、
「固定された筒状の外輪と、前記外輪内で共通の回転軸を中心として回転可能な入力軸及び出力軸を備え、前記入力軸からの正・逆方向の回転は前記出力軸に伝達されると共に、前記出力軸からの前記入力軸への回転の伝達は、前記出力軸を回転不能として遮断される逆入力遮断クラッチであって、
前記外輪の内側には、前記入力軸に設けられた入力突出部と、前記出力軸に設けられた出力突出部とが配置され、前記入力突出部の周方向両側には押圧面が形成されると共に、前記出力突出部には前記外輪の内周面と対向する凹状のカム面が形成され、
前記カム面は、周方向の中央から左右に向けて対称的に径が増大する斜面を備えており、さらに、
前記カム面と前記外輪の内周面との間には、
単一の球形状の転動体が設置されると共に、前記外輪の内周面には、前記転動体が嵌り込んで周方向に移動可能な円弧状断面の環状溝が形成され
、前記環状溝の深さは前記転動体の直径の6乃至21%に設定されており、
前記入力軸が回転すると、前記押圧面の一方が前記出力突出部と共に前記転動体を押圧して前記出力軸を回転させる一方、前記出力軸が回転しようとしても、前記転動体が前記外輪の内周面と前記カム面との間で噛み込んで回転することができない」
ことを特徴とする逆入力遮断クラッチとなっている。
【0013】
前記転動体を保持するため、前記外輪の内側に、前記入力突出部が固着される入力円板部材と前記出力突出部が固着される出力円板部材とを設け、かつ、前記入力円板部材と前記出力円板部材とは軸方向に対向して位置するようにして、前記転動体を挟持することができる。
【0014】
前記入力軸の中心軸と前記出力軸の中心軸との「ずれ」を防止するため、前記入力軸及び前記出力軸に、軸方向に延びる同一円形断面の中央穴を形成し、それぞれの前記中央穴に共通の芯部材を挿通することができる。
また、前記外輪の内側には潤滑剤を充填することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の逆入力遮断クラッチでは、入力軸に設けられた入力突出部と出力軸に設けられた出力突出部とが、組み合わされた状態で外輪の内部空間に置かれ、出力突出部の凹状のカム面と外輪の内周面との間には、球形状の転動体が設置されている。入力軸が回転したときは、
図8の逆入力遮断クラッチと同じように、入力突出部の側面の押圧面が出力突出部と転動体とを同時に押圧しながら、出力軸を入力軸と一体的に回転させる。出力軸が回転したときは、出力突出部が回転方向に移動して、カム面に置かれた転動体が外輪の内周面に噛み込むため、出力軸がロック状態となって入力軸への回転伝達が阻止される。
こうした基本的な作動は、従来の逆入力遮断クラッチと変わりはないが、本発明の逆入力遮断クラッチにおいては、転動体の形状が球形状であって、外輪の内周面には、球形状の転動体が嵌り込んで周方向に移動可能な円弧状断面の環状溝が形成されている。
【0016】
球形状の転動体は、円筒形状の転動体と比べると軸方向の長さが短いので、本発明の逆入力遮断クラッチは、転動体が円筒形状の逆入力遮断クラッチよりも軸方向の長さを縮小することができる。また、球形状の転動体が環状溝に入り込んで設置されるので、外輪の外径(半径)を環状溝の深さの分だけ縮小することができる。そのため、本発明の逆入力遮断クラッチの寸法は、円筒形状の転動体を用いる従来のものと比較すると、軸方向及び径方向とも小さくすることが可能となる。
そして、球形状の転動体と円弧状断面の環状溝とは、曲線の円弧に沿って接触する。環状溝を形成しないときに球形状の転動体が接触する1点での接触と比べれば、接触面積が大幅に増大することとなり、転動体と外輪の内周面との間に働く摩擦力が大きくなる。これにより、転動体には一定の拘束力が付与されるため、転動体の噛み込みとその解除が切り換る際に転動体が出力突出部と一体的に移動してしまう問題が解消され、例えば、出力軸側からの回転が確実に阻止される。
【0017】
このように、本発明の逆入力遮断クラッチでは、軸方向及び径方向の寸法を小さくすることが可能となり、また、転動体に制動力を付与するばね部材を設置する必要はない。したがって、逆入力遮断クラッチの構造が小型でコンパクトなものとなり、その製造も容易となる。なお、ばね部材により制動力を加えたときには、入力軸から出力軸へ回転を伝達する際に、加えた制動力が負荷トルクとなって伝達損失が増加するけれども、本発明の逆入力遮断クラッチでは、この損失も避けることができる。
【0018】
本発明の逆入力遮断クラッチの実施態様として、「外輪の内側に、入力突出部が固着される入力円板部材と出力突出部が固着される出力円板部材とを設け、かつ、入力円板部材と出力円板部材とは軸方向に対向して位置するようにして、転動体を挟持する」構成とした場合には、球形状の転動体が、入力円板部材と出力円板部材との間に保持されて軸方向に位置決めされ、転動体が環状溝から外れるのを防止できる。さらに、入力円板部材と出力円板部材との外周を外輪の内周面に近接させると、入力軸及び出力軸の中心軸が、外輪の中心軸と過大な芯ずれを起こす事態を防止できる。
【0019】
本発明の逆入力遮断クラッチの別の実施態様として、「入力軸及び出力軸に、軸方向に延びる同一円形断面の中央穴を形成し、それぞれの中央穴に共通の芯部材を挿通する」構成とした場合には、入力軸から出力軸に回転が伝達されるときに、振動等に起因して両方の軸の中心軸が相対的に傾いたり、芯ずれを起こしたりする事態を防ぐことができる。
ここで、芯ずれを防止するための芯部材は、入力軸及び出力軸に設けた中央孔に挿通されている。転がりベアリングのように、入力軸等の外方に設置されるものではないので、芯部材の追加により、逆入力遮断クラッチの外径等の寸法が増大してコンパクト性を損ねることはない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の逆入力遮断クラッチの実施例を示す図である。
【
図2】
図1に示す逆入力遮断クラッチを分解して示す斜視図である。
【
図3】
図1に示す逆入力遮断クラッチの外輪を単体で示す図である。
【
図4】
図1に示す逆入力遮断クラッチの入力軸を単体で示す図である。
【
図5】
図1に示す逆入力遮断クラッチの出力軸を単体で示す図である。
【
図6】
図1に示す逆入力遮断クラッチの入力軸を反時計方向に回転させた状態を示 す図である。
【
図7】
図1に示す逆入力遮断クラッチの出力軸を反時計方向に回転させようとした 状態を示す図である。
【
図8】転動体を用いた従来の逆入力遮断クラッチの一例を示す図である。
【
図9】
図8に示す従来の逆入力遮断クラッチの作動を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面に基づき、本発明の逆入力遮断クラッチについて説明する。まず、本発明の逆入力遮断クラッチの全体的な構造を
図1及び
図2に示し、次いで、
図1の逆入力遮断クラッチの主要構成部品の単体図を
図3乃至
図5に、
図1の逆入力遮断クラッチの作動の説明図を
図6及び
図7に夫々示す。
【0022】
図1及び
図2を参照して説明すると、本実施例の逆入力遮断クラッチは、固定された外輪(ハウジング)2の内側に、共通の回転軸oを有する入力軸4及び出力軸6を配置し、さらに、入力軸4及び出力軸6の間に球形状の転動体7を配置した構造であり、図示は省略するが、入力軸4はモーター等の駆動側に接続され、出力軸6は昇降装置等の従動側に接続される。
【0023】
図1、
図2と共に
図3を参照して説明すると、外輪2は全体的に円筒形状であって、軸方向両側端部の内周面には環状のシール溝8が形成されている。シール溝8には薄板金属からなるシール部材2Sが嵌め込んであり、シール部材2Sは、転動体7等が配置された外輪2の内部空間を封鎖している。
外輪2の内周面9の軸方向中央部には、円弧状断面の環状溝10が形成されている。環状溝10は、球形状の転動体7が嵌り込んでこれに沿って移動するよう設けられたもので、環状溝10と転動体7の詳細については後述する。
【0024】
図1、
図2と共に
図4を参照して説明すると、入力軸4は、軸状の入力軸部材12と、その先端に固着された円板状の入力円板部材14とを有しており、中心軸上には、入力円板部材14から入力軸部材12の一部に亘って設けられた断面円形の入力軸孔18(中央穴)が形成されている。入力軸部材12における、入力円板部材14が固着された側とは反対側の軸方向端部には、図示しないモーター等の駆動側と連結するための切欠き18が形成されている。
入力円板部材14には、軸方向に延びる入力突出部20が設けられる。入力突出部20の断面は扇形状であって、その外周縁が入力円板部材14の外周縁と対応しているとともに、周方向の両側は、入力軸からの回転伝達時において、後述する出力突出部及び転動体7を押圧しながら回転させる押圧面22a、22bとなっている。この実施例では、5個の入力突出部20が周方向に等間隔に配置される。
【0025】
図1、
図2と共に
図5を参照して説明すると、出力軸6は、軸状の出力軸部材30と、その先端に固着された円板状の出力円板部材32とを有しており、中心軸上には、出力円板部材32と出力軸部材30の一部に亘って設けられた断面円形の出力軸孔34(中央穴)が形成されている。出力軸部材30における、出力円板部材32が固着された側とは反対側の軸方向端部には、図示しない昇降装置等の従動側の機器と連結するための切欠き36が形成されている。
出力円板部材32には、中心から等角度間隔で放射状に延びる5個の出力突出部38が設けられ、出力突出部38は、入力円板部材14の方向に向け軸方向に突き出している。出力突出部38の周方向両側は、互いに平行な壁面(側面42a、42b)となっていて、出力突出部38の先端(径方向外方)にはカム面44が形成される。カム面44は、軸方向から見て凹状をなしており、周方向の中央から左右に向けて対称的に径が増大する斜面を備えている。
【0026】
図1に示すように、本実施例の逆入力遮断クラッチでは、外輪2の内側に、入力軸4の入力円板部材14と出力軸6の出力円板部材32とが軸方向に対向して配置され、その間に、
単一の球状の転動体7が設置される。入力軸4と出力軸6とは、
図8に示す従来の逆入力遮断クラッチと同様に、入力円板部材14に形成した入力突出部20が、出力円板部材32に形成した出力突出部38の間に入り込むように組み合わされており、転動体7は、径方向においては、出力突出部38のカム面44と外輪2の内周面9との間に位置している。外輪2の内部空間には潤滑剤が充填されると共に、外輪2の軸方向両側端部のシール溝8に環状のシール部材2Sを嵌入して、外輪2の内部空間を閉鎖する。
【0027】
ここで、
図1に示す本発明の逆入力遮断クラッチにおいては、外輪2の内周面9には円弧状断面の環状溝10が形成され、球形状の転動体7は、環状溝10に嵌り込んでいる。また、
図1の実施例のものでは、転動体7は、入力円板部材14と出力円板部材32との間に挟持され、かつ、入力軸孔18と出力軸孔34(中央孔)には、回転軸oと共通の軸を有する断面円形で棒状の芯部材46が挿通される。以下では、本発明の逆入力遮断クラッチの作動とともに、作用効果等について説明する。
【0028】
図6は、
図1の逆入力遮断クラッチにおいて、入力軸4が駆動源のモーターにより(図の左方向から見て)反時計方向に回転したときの状態を示す図である。入力軸4が反時計方向に回転すると、入力軸4に設けられた入力突出部20が同一方向に回転し、その押圧面22bが、出力突出部38の側面42bと共に転動体7と当接してこれらを押圧する(右図の太線部と黒丸部)。このときは、転動体7が、出力突出部38のカム面44のほぼ中央位置に保持されて外輪2の内周面と噛み込むことはなく、入力軸4の回転は出力軸6に伝達される。入力軸4の時計方向の回転についても同様である。
このように、本発明の逆入力遮断クラッチの基本的な作動は、
図9に示す従来のものと変わりはない。しかし、本発明の逆入力遮断クラッチでは、外輪2の内周面に環状溝10が形成され、球形状の転動体7は、これに嵌り込んでいる。
そのため、本発明の逆入力遮断クラッチにおいては、
図8のものと比べ、球形状の転動体7が外輪2の外周面に近接して配置されることとなる。つまり、外輪2の外周寸法を、その分縮小することが可能であり、また、球形状の転動体の軸方向寸法は、円筒形の転動体(ローラー)よりも短いので、軸方向の寸法も短縮できる。
【0029】
そして、
図1の実施例の逆入力遮断クラッチでは、球形状の転動体7は、入力円板部材14と出力円板部材32との間に保持されて軸方向に位置決めされる。そのため、転動体7が球形状であっても、環状溝10から外れるのを防止できる。入力円板部材14と出力円板部材32とは、その外周が外輪2の内周面9に近接するように設置されるので、入力軸4から出力軸6に回転伝達が行われる際に、両方の軸の中心軸が、外輪2の中心軸と過大な芯ずれを起こす事態も防止できる。
【0030】
図1の実施例の逆入力遮断クラッチでは、入力軸4及び出力軸6に、軸方向に延びる同一円形断面の入力軸孔18と出力軸孔34(中央孔)とを形成し、それぞれの中央穴に共通の芯部材46を挿通している。このような芯部材46を設けているので、入力軸4及び出力軸6の回転により振動等が発生したとしても、入力軸4と出力軸6との中心軸が相対的に傾いたり、芯ずれを起こしたりする事態を防ぐことができる。また、芯部材46は、入力軸4及び出力軸6の中心部に設けた中央孔に挿通されているから、これを設けるための特別なスペースは必要なく、逆入力遮断クラッチも寸法の増加を来すことはない。
【0031】
図7には、
図1の逆入力遮断クラッチにおいて、出力軸6側からの回転トルクにより、出力軸6と出力突出部38とが(図の左方向から見て)反時計方向にわずかに移動した状態を示す。このときは、従来の逆入力遮断クラッチの作動を示す
図9(c)と同様に、転動体7が出力突出部38のカム面44の右側斜面により押し上げられ、外輪2の内周面9に形成された環状溝10と強く当接して噛み込みを生じる。そのため、出力軸6はロック状態となってその回転が阻止され、これは、出力軸6の時計回りの回転でも同様である。しかし、前述したとおり、何らかの原因で転動体7が出力突出部38のカム面44の中央に止まったまま、転動体7が出力突出部38と一体的に移動すると、出力軸6のロック状態が起こらない。
【0032】
本発明の逆入力遮断クラッチでは、外輪2の内周面に断面円弧状の環状溝10が形成してあり、球形状の転動体7はこの環状溝10に嵌り込んでいる。これにより、
図1の拡大図に示すとおり、球形状の転動体7が、円弧状の曲線部Cの全体で環状溝10の接触することとなり、環状溝10を設けない外輪2の内周面9に接触する場合(理論上は1点で接触)に比較して、大幅に接触面積が拡大する。
その結果、転動体7と外輪2の内周面9との間に働く摩擦力あるいは粘着力が大きくなって、転動体7には、それが出力突出部38と一体的に移動しないよう一定の拘束力が付与される。転動体7の噛み込みと解除の作用が確実に行われるので、本発明の逆入力遮断クラッチでは、出力軸側からの回転が確実にロックされる。なお、転動体7に十分な拘束力を付与するため、環状溝10の深さDは、転動体7の直径の6〜21%であるのが好ましく、
図1のものでは、約12%に設定されている。
【0033】
以上詳述したように、本発明の逆入力遮断クラッチは、出力軸をロックするための転動体として球形(ボール)状の転動体を用いると共に、これに対向する外輪の内周面には転動体が嵌り込む凹状の環状溝を形成して、逆入力遮断クラッチの全体を小型とし、かつ、安定した作動が可能となるようにしたものである。上記の実施例では、入力軸と出力軸に中央孔を形成し、それぞれの中央穴に芯部材を挿通して芯ぶれ等を防止しているが、一方の軸に円形の突出部を設け、これを他方の軸の中央孔に挿入することもできる。また、外輪の内部空間の潤滑剤をシールするためシール部材を設置するなど、上記の実施例に各種の変更を加えることができるのは明らかである。
【符号の説明】
【0034】
2:外輪
4:入力軸
6:出力軸
7:転動体
10:環状溝
20:入力突出部
22:押圧面
38:出力突出部
44:カム面
46:芯部材
【要約】
【課題】入力軸からの回転を出力軸に伝達し、逆方向の回転伝達を阻止する逆入力遮断クラッチを、球形状の転動体を利用して、小型で簡潔な構造のものとする。
【解決手段】外輪2の内部空間に、入力軸4に固着した複数の入力突出部20を配置すると共に、出力軸6に固着した複数の出力突出部38を、入力突出部20の間に入り込むように組み合わせて設置する。出力突出部38と外輪2の内周面の間には球形状の転動体7を設置して、出力軸6が回転したときは、転動体7が外輪2の内周面と噛み合って出力軸6の回転が阻止される。転動体7は、外輪2の内周面に形成された断面円弧状の環状溝10の嵌め込まれているため、外輪2の外径を縮小することが可能で、また、転動体7が球形状であっても、外輪2との噛み合い及びその解除が確実に行われるようになる。
【選択図】
図1