特許第6356903号(P6356903)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6356903
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】精密駆動装置
(51)【国際特許分類】
   G12B 5/00 20060101AFI20180702BHJP
   H02N 2/02 20060101ALI20180702BHJP
   H02N 2/10 20060101ALI20180702BHJP
   B81C 99/00 20100101ALN20180702BHJP
   H01L 21/302 20060101ALN20180702BHJP
【FI】
   G12B5/00 T
   H02N2/02
   H02N2/10
   !B81C99/00
   !H01L21/302 201B
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-505696(P2017-505696)
(86)(22)【出願日】2015年4月8日
(65)【公表番号】特表2017-524941(P2017-524941A)
(43)【公表日】2017年8月31日
(86)【国際出願番号】CN2015076109
(87)【国際公開番号】WO2015161740
(87)【国際公開日】20151029
【審査請求日】2016年10月18日
(31)【優先権主張番号】201410165949.7
(32)【優先日】2014年4月23日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】502134971
【氏名又は名称】中国科学院物理研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100124811
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 資博
(74)【代理人】
【識別番号】100187724
【弁理士】
【氏名又は名称】唐鎌 睦
(72)【発明者】
【氏名】武 栄庭
(72)【発明者】
【氏名】▲ファン▼ 慶
(72)【発明者】
【氏名】▲イェン▼ 凌昊
(72)【発明者】
【氏名】任 俊海
(72)【発明者】
【氏名】呉 澤賓
(72)【発明者】
【氏名】高 鴻鈞
【審査官】 榮永 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−126518(JP,A)
【文献】 特開平03−056895(JP,A)
【文献】 特開平09−269388(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第1921026(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G12B 5/00
H02N 2/02
H02N 2/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2方向への精密駆動を実現するための精密駆動装置であって、
設置空間(101)が内部に形成され、上面(102)と内側面(103)とを有し、前記設置空間(101)は、前記上面(102)から内部に向かって凹むと共に当該上面(102)に向かって開口し、前記設置空間(101)の周囲は、前記内側面(103)で形成されている第1の移動部品(10)と、
前記第1の移動部品(10)と伝動接続され、当該第1の移動部品(10)が第1の方向に沿って移動するよう当該第1の移動部品(10)を駆動するために用いられる第1の精密駆動機構(11)と、
前記第1の移動部品(10)と共に前記第1の方向へ移動可能になるよう前記設置空間(101)内に設置され保持される、第2の移動部品(20)および第2の精密駆動機構(21)と、を備え、
前記第2の精密駆動機構(21)は、前記第2の移動部品(20)と伝動接続され、当該第2の移動部品(20)が前記第1の方向とは異なる第2の方向に沿って前記設置空間内を移動するよう前記第2の移動部品(20)を駆動するために用いられ、
前記第1の精密駆動機構(11)と前記第1の移動部品(10)との間、および/または、前記第2の精密駆動機構(21)と前記第2の移動部品(20)との間に、案内・制限構造(40)を設け、
当該案内・制限構造(40)は、前記第1の移動部品および/または前記第2の移動部品が、対応する前記第1の精密駆動機構および/または前記第2の精密駆動機構に対して対応する前記第1の方向および/または前記第2の方向に沿ってのみ移動するよう、案内するものであり、
前記案内・制限構造(40)は、
案内溝(41)と、
前記案内溝(41)との協働に用いられ、当該案内溝(41)内に設けられるスライドブロック(42)と、を備え、
前記第1の精密駆動機構および/または前記第2の精密駆動機構は、前記案内溝(41)または前記スライドブロック(42)のいずれか一方を備え、前記第1の移動部品および/または前記第2の移動部品は、前記案内溝(41)または前記スライドブロック(42)の他方を備える、
精密駆動装置。
【請求項2】
請求項1に記載の精密駆動装置であって、
前記第1の移動部品(10)は、平板ブロック状に形成され、厚さのある拡張平面によって形成される拡張空間内に位置し、前記第1の移動部品(10)の前記第1の方向に沿った移動は前記拡張空間内で行われ、
前記第2の移動部品(20)は、平板ブロック状に形成されて前記拡張空間内に位置し、当該第2の移動部品(20)の前記第2の方向に沿った移動は前記拡張空間内で行われ、
さらに、前記第1の精密駆動機構(11)と前記第2の精密駆動機構(21)が前記拡張空間内に位置する、
精密駆動装置。
【請求項3】
請求項2に記載の精密駆動装置であって、
前記第1の方向は、第1の直線方向であり、
前記第2の方向は、前記第1の直線方向と同一平面上で当該第1の直線方向に垂直な第2の直線方向であるか、または、前記拡張平面に垂直な回転軸を中心として前記拡張空間内で回転する回転方向である、
精密駆動装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の精密駆動装置であって、
記第1の移動部品および/または前記第2の移動部品は、前記案内・制限構造を介して、対応する第1の精密駆動機構および/または前記第2の精密駆動機構によってのみ移動可能に支持される、
精密駆動装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の精密駆動装置であって、
前記第1の精密駆動機構および/または前記第2の精密駆動機構に形成された案内溝(41)またはスライドブロック(42)は、対応する前記第1の移動部品および/または前記第2の移動部品を操作するための前記第1の精密駆動機構および/または前記第2の精密駆動機構の操作ヘッドとして形成される、
精密駆動装置。
【請求項6】
請求項1乃至のいずれか1項に記載の精密駆動装置であって、
さらに、前記第1の精密駆動機構(11)を前記第1の移動部品(10)に対して押圧する弾性力を発生するために使用される弾性部材(30)を備える、
精密駆動装置。
【請求項7】
請求項1乃至のいずれか1項に記載の精密駆動装置であって、
前記第2の精密駆動機構(21)は、前記第1の移動部品(10)の内側面(103)に設置されて保持され、
前記設置空間(101)は、前記内側面に形成された設置溝(104)を有し、当該設置溝(104)は、前記第2の精密駆動機構(21)を収容して保持するために使用され、前記設置溝(104)は、前記内側面(103)から離れる方向に向かって開口し、前記第2の精密駆動機構(21)の一部が前記設置溝(104)の外部へ延びて前記第2の移動部品(20)を保持し、
さらに、前記設置溝(104)の一部は、前記第1の移動部品(10)の前記上面(102)に向かう方向に開口する、
精密駆動装置。
【請求項8】
請求項1乃至のいずれか1項に記載の精密駆動装置であって、
前記第1の精密駆動機構(11)は、複数の第1の駆動部品(111)を備え、該複数の第1の駆動部品(111)は、前記第1の移動部品(10)の周囲に配置され、
および/または、前記第2の精密駆動機構(21)は、複数の第2の駆動部品(211)を備え、該複数の第2の駆動部品(211)は、前記第2の移動部品(20)の周囲に配置される、
精密駆動装置。
【請求項9】
請求項に記載の精密駆動装置であって
前記第1の移動部品(10)は、2つの互いに平行な直線状の側辺を有し、前記第1の方向は、前記第1の移動部品(10)の該2つの直線状の側辺に平行であり、複数の前記第1の駆動部品(111)は各々、前記第1の移動部品(10)の該2つの直線状の側辺に沿って前記第1の移動部品(10)の対向する2辺に分配され、
および/または前記第2の移動部品(20)は、2つの互いに平行な直線状の側辺を有し、前記第2の方向は、前記第2の移動部品(20)の該2つの直線状の側辺に平行であり、複数の前記第2の駆動部品(211)は各々、前記第2の移動部品(20)の該2つの直線状の側辺に沿って前記第2の移動部品(20)の対向する2辺に分配されるか、または、前記第2の移動部品(20)は円盤状であり、複数の前記第2の駆動部品(211)は、前記第2の移動部品(20)の周囲に沿って均一に分配される、
精密駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精密駆動技術の分野に関し、特に精密駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
精密駆動とは、対象物が特定の方向に沿ってマイクロ・ナノスケールで運動(移動または回転)するよう制御する技術であり、表面分析、マイクロ・ナノ加工、光学調整、細胞操作等の分野で、コア技術として広く適用されている。精密駆動機構は、レバー型、差動ネジ型、差動バネ型等の当初の機械的駆動型から、ライスクローリング型、ウォームクローリング型、慣性スライド型等の、現在のステッパモータ駆動型まで、2つの開発段階で開発されてきた。
【0003】
現在の比較的成熟した精密駆動機構は、一般的に圧電セラミックステッパモータによって実現されている。複数の自由度を有する精密駆動機構は、複数の自由度のマイクロ・ナノスケールで移動または回転制御を同時に実現することができる。例えば、二次元の精密移動機構は、二次元平面上で対象位置への位置決めを正確に制御することができ、三次元精密回転機構は、三次元空間において対象角度への位置決めを正確に制御することができる。
【0004】
二次元の精密移動機構等の、複数の自由度を有する既存の精密駆動機構は、体積が大きく移動範囲が狭いという欠点があることが多い。そのため、複数の自由度を持つ精密駆動機構全体の安定性が低下するだけでなく、表面分析、マイクロ・ナノ加工、光学調整、細胞操作等の分野における適用が大きく制限される。
【0005】
また、既存の精密駆動機構は、一般的に駆動部品と精密移動機構が磁力で固定されているため、磁界環境での精密駆動装置の適用が大きく制限される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の1つの目的は、精密駆動装置を提供することである。本発明の精密駆動装置は、構造設計がよりコンパクトであり、専有面積が小さく、移動範囲が広いものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1つの態様によれば、
少なくとも2方向への精密駆動を実現するために使用される精密駆動装置であって、
設置空間が内部に形成され、上面と内側面とを有し、該設置空間は、上面から内部に向かって凹むと共に上面に向かって開口し、該設置空間の周囲は内側面で規定されている第1の移動部品と、
第1の移動部品と伝動接続され、第1の移動部品が第1の方向に沿って移動するよう第1の移動部品を駆動するために用いられる第1の精密駆動機構と、
第1の移動部品と共に第1の方向へ移動可能になるよう設置空間内に設置され保持される第2の移動部品および第2の精密駆動機構と、を備え、
第2の精密駆動機構は、第2の移動部品と伝動接続され、第2の移動部品が第1の方向とは異なる第2の方向に沿って設置空間内を移動するよう第2の移動部品を駆動するために用いられる、精密駆動装置が提供される。
【0008】
また、第1の移動部品は平板ブロック状に形成され、厚さのある拡張平面によって形成される拡張空間内に実質的に位置し、第1の移動部品の第1の方向に沿った移動は、該拡張空間内で行われ、
好ましくは、第2の移動部品は、平板ブロック状に形成されて実質的に拡張空間内に位置し、第2の移動部品の第2の方向に沿った運動は、拡張空間内で行われ、
さらに好ましくは、第1の精密駆動機構と第2の精密駆動機構が拡張空間内に位置する。
【0009】
また、第1の方向は第1の直線方向であり、第2の方向は、第1の直線方向と同一平面上で第1の直線方向に垂直な第2の直線方向であるか、または、拡張平面に垂直な回転軸を中心として拡張空間内で回転する回転方向である。
【0010】
また、第1の精密駆動機構と第1の移動部品との間、および/または、第2の精密駆動機構と第2の移動部品との間に、案内・制限構造を設け、案内・制限構造は、第1の移動部品および/または第2の移動部品が、対応する第1の精密駆動機構および/または第2の精密駆動機構に対して対応する第1の方向および/または第2の方向に沿ってのみ移動するよう、案内するものであり、
好ましくは、第1の移動部品および/または第2の移動部品は、案内・制限構造を介して、対応する第1の精密駆動機構および/または第2の精密駆動機構によってのみ移動可能に支持される。
【0011】
また、案内・制限構造は、案内溝と、案内溝との嵌合に用いられ案内溝内に設けられるスライドブロックと、を備え、第1の精密駆動機構および/または第2の精密駆動機構は、案内溝またはスライドブロックのいずれか一方を備え、第1の移動部品および/または第2の移動部品は、案内溝またはスライドブロックの他方を備える。
【0012】
また、第1の精密駆動機構および/または第2の精密駆動機構に形成された案内溝またはスライドブロックは、対応する第1の移動部品および/または第2の移動部品を操作するための第1の精密駆動機構および/または第2の精密駆動機構の操作ヘッドとして形成される。
【0013】
また、精密駆動装置はさらに、第1の精密駆動機構を第1の移動部品に対して押圧する弾性力を発生するために使用される弾性部材を備える。
【0014】
また、第2の精密駆動機構は、第1の移動部品の内側面に設置されて保持され、
好ましくは、設置空間は、内側面に形成された設置溝を有し、設置溝は、第2の精密駆動機構を収容して保持するために使用され、設置溝は、内側面から離れる方向に向かって開口し、第2の精密駆動機構の一部が設置溝の外部へ延びて第2の移動部品を保持し、
さらに好ましくは、設置溝の一部は、第1の移動部品の上面に向かう方向に開口する。
【0015】
また、第2の精密駆動機構は、複数の第2の駆動部品を備え、該複数の第2の駆動部品は第2の移動部品の周囲に配置され、および/または
第1の精密駆動機構は複数の第1の駆動部品を備え、該複数の第1の駆動部品は第1の移動部品の周囲に配置される。
【0016】
また、第1の移動部品は、2つの互いに平行な直線状の側辺を有し、第1の方向は、第1の移動部品の該2つの直線状の側辺に平行であり、複数の第1の駆動部品は各々、第1の移動部品の該2つの直線状の側辺に沿って第1の移動部品の対向する2辺に分配され、および/または
第2の移動部品は、2つの互いに平行な直線状の側辺を有し、前記第2の方向は、第2の移動部品の該2つの直線状の側辺に平行であり、複数の第2の駆動部品は各々、第2の移動部品の該2つの直線状の側辺に沿って第2の移動部品の対向する2辺に分配されるか、または、
第2の移動部品は円盤状であり、複数の第2の駆動部品は、第2の移動部品の周囲に沿って均一に分配される。
【0017】
また、第1の駆動部品および第2の駆動部品は各々、駆動力を提供するための圧電セラミックを備え、第1の駆動部品および第2の駆動部品は各々、対応する第1および第2の移動部品との間の接触面に接する駆動力を発生するよう構築される。
【0018】
1つの方向に沿う第2の移動部品が、別の方向に沿う第1の移動部品に一体化されて、よりコンパクト化された構造が可能となる。そのため、精密駆動装置全体の体積を大幅に削減することが可能となり、精密駆動装置の2方向への移動範囲が拡大し、精密駆動装置の安定性と一体性が改善される。
【0019】
以下の本発明の具体的な実施形態の詳細な説明と添付の図面により、本発明の上記およびその他の目的、効果、および特徴は、当業者により良く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
以下、本発明の実施形態のいくつかについて、図面を参照して詳細に説明する。これらは一例であり、本発明はこれに限定されない。図面全体を通して、同一または類似の部品または部分は同一の符号で示す。これらの添付図面が必ずしも正確な縮尺率でないことは、当業者には理解される。
図1】本発明の1つの実施形態にかかる精密駆動装置の正面図である。
図2図1に示す精密駆動装置の側面図である。
図3図1に示す精密駆動装置の概略図である。
図4】本発明の別の実施形態にかかる精密駆動装置の正面図である。
図5】本発明の別の実施形態にかかる精密駆動装置の正面図である。
図6】本発明の別の実施形態にかかる集束イオンビーム(FIB)エッチング装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1乃至図3は、本発明の1つの実施形態における精密駆動装置の概略図である。本実施形態の精密駆動装置は、表面分析、マイクロ・ナノ加工、光学調整、細胞操作等の分野で利用することができる。図1では、精密駆動装置の主要な部品のみを示し、外殻、回路等は示していない。
【0022】
本発明の精密駆動装置は、二方向への精密駆動を実現するものでもよい。精密駆動装置は、第1の移動部品10、第1の精密駆動機構11、第2の移動部品20、および第2の精密駆動機構21を備えてもよい。第1の移動部品10と第2の移動部品20は、各々、二方向へ精密移動する。
【0023】
第1の移動部品10には設置空間101が形成される。第1の移動部品10は、上面102、下面105、および内側面103を有する。設置空間101は、上面102から下面105に向かって第1の移動部品10の内部に凹んで設けられ、上面102に向かって開口している。設置空間101の周囲は、内側面103によって規定される。図1に示す本実施形態においては、設置空間101は、第1の移動部品10の厚さ全体を貫通して、第1の移動部品10の厚さ方向に沿って貫通空間を形成している。他の実施形態では、設置空間101は、第1の移動部品10の上面102から第1の移動部品10の厚さの一部に沿って下方に延び、設置空間が内部の凹部のように形成されてもよい。
【0024】
第1の精密駆動機構11は、第1の移動部品10と伝動接続される。第1の精密駆動機構11は、第1の移動部品10を第1の方向A1に沿って移動させるよう駆動するために用いられる。図1において、第1の方向A1は、図1の紙面の縦方向に沿った直線方向でもよい。
【0025】
第2の移動部品20および第2の精密駆動機構21はいずれも、設置空間101内に設置され保持される。第2の移動部品20および第2の精密駆動機構21は、第1の移動部品10と共に第1の方向A1に沿って移動可能である。設置空間101内に保持される第2の移動部品20および第2の精密駆動機構21は、設置空間101に設置されることで、設置空間101と一体的に固定され、その位置状態が維持される。しかし、以下に述べるように、このように保持されることにより、第2の移動部品20と第2の精密駆動機構21との間の相対移動が可能となる。
【0026】
第2の精密駆動機構21は、第2の移動部品20と伝動接続される。第2の精密駆動機構21は、第2の移動部品20を第1の方向A1とは異なる第2の方向A2に沿って設置空間101内を移動させるよう、第2の移動部品20を駆動するために用いられる。図1に示すように、第1の方向A1は第1の直線方向でもよく、第2の方向A2は、第1の直線方向に垂直な第2の直線方向であり、第2の方向A2は図1の紙面の横方向または水平方向に沿った直線方向でもよい。
【0027】
二方向に移動する第1の精密移動部品10および第2の精密移動部品20は、上記の方法で一体化されている。そのため、精密駆動装置全体の構造がよりコンパクトになり、体積が効果的に削減され、また二方向への移動範囲が大きくなる。
【0028】
第1の移動部品10は、平板ブロック状に形成されてもよく、所定の厚さの拡張平面によって形成される拡張空間内に実質的に位置している。本実施形態においては、第1の移動部品10は一般的に平らな立方体であり、拡張空間Vは、第1の移動部品10の上面102が位置する平面P1と、下面105が位置する平面P2との間の空間を意味し、その厚さは第1の移動部品10の幅よりも小さい。第1の移動部品10の、第1の方向A1に沿った動きは、図2の紙面に垂直な方向への移動として図2に具体的に示されており、これは拡張空間V内に位置する。
【0029】
第1の移動部品10の体積と合わせるために、第2の移動部品20も平板ブロック状に形成され、実質的に拡張空間V内に広がる。また、第2の移動部品20の第2の方向A2に沿った動きも、拡張空間V内に位置する。さらに精密駆動装置の体積をさらに削減するために、第1の精密駆動機構11および第2の精密駆動機構21も拡張空間V内に位置してもよい。このように、精密駆動装置全体が拡張空間V内に限定されるため、精密駆動装置は一般的に平坦状、例えば、平板状である。これは精密駆動装置の体積を削減する上で有効であり、より多くの機会または分野に適用することができる
【0030】
図1に示すように、案内・制限構造40、40’によって、本実施形態の精密駆動装置は、第1の移動部品10および第2の移動部品20の移動方向、つまり第1の方向A1および第2の方向A2が規定される。第1の精密駆動機構11と第1の移動部品10との間に形成された案内・制限構造40は、図2にさらに明確に示されている。案内・制限構造40は、対応する第1の方向A1に沿ってのみ、対応する第1の精密駆動機構11に対して移動するよう、第1の移動部品10を導くように使用される。
【0031】
本実施形態において、案内・制限構造40は、制限および案内機能だけでなく、第1の移動部品10を支持するためにも使用されている。そのため、第1の移動部品10は、案内・制限構造40によって、対応する第1の精密駆動機構11のみによって移動可能に保持されている。案内・制限構造40の具体的な構造は、案内溝41とスライドブロック42とを備えてもよい。スライドブロック42は、案内溝41と嵌合するよう使用されるものであり、案内溝41内に設置される。他の実施形態では、第1の移動部品10は別の方法で支持されていてもよい。
【0032】
図2、3、6を参照すると、案内・制限構造40は、第1の移動部品10と第1の精密駆動機構11との間に位置する。そのため、案内・制限構造40も駆動力を伝達する機能を持つ。本実施形態において、スライドブロック42は、第1の精密駆動機構11に形成され、案内溝41は第1の移動部品10に形成される。スライドブロック42は、第1の移動部品10を操作する第1の精密駆動機構11の操作ヘッドとして利用することもできる。そのため、案内・制限構造40は、スライドブロック42と案内溝41とによって伝達を行うことができる。なお、スライドブロック42と案内溝41の位置は交換可能であり、他のいくつかの実施形態では、スライドブロック42が第1の移動部品10に位置し、案内溝41が第1の精密駆動機構11に位置し、案内溝41が第1の精密駆動機構11の操作ヘッドとして用いられる。位置が変わっても、案内・制限構造40の、制限、案内、支持、保持、伝達駆動という機能は同じである。
【0033】
本実施形態では、対応する第2の精密駆動機構に対して移動する第2の移動部品20を、対応する第2の方向に沿ってのみ案内するために、第2の移動部品20と第2の精密駆動機構21との間の案内・制限構造40’が、上記の案内・制限構造40と実質的に同じであってもよい。案内・制限構造40と同様、案内・制限構造40’は、制限および案内機能だけでなく、上記の支持、保持、および伝達駆動の機能も持つ。本実施形態において、案内溝は第2の移動部品20に形成され、スライドブロックは第2の精密駆動機構21に形成される。もちろん、スライドブロックが第2の移動部品20に形成され、案内溝が第2の精密駆動機構21に形成されてもよい。
【0034】
第1の精密駆動機構11は、複数の第1の駆動部品、例えば、図1に示す4つの第1の駆動部品111を備えてもよく、複数の第1の駆動部品111は、第1の移動部品10の周囲に配置されてもよい。第2の精密駆動機構21も、複数の第2の駆動部品、例えば、図1に示す4つの第2の駆動部品211を備えてもよく、複数の第2駆動部品211は第2の移動部品20の周囲に配置されていてもよい。
【0035】
図1に示すように、第1の移動部品10は、2つの互いに平行な直線状の側辺を有し、第1の方向A1は、第1の移動部品10の、この2つの直線状の側辺に平行である。複数の第1の駆動部品111は各々、第1の移動部品10の2つの直線状の側辺に沿って、第1の移動部品10の対向する2辺に分配される。図1に示すように、2つの第1の駆動部品111が、第1の移動部品10の左右各々の側辺に配置される。
【0036】
第2の移動部品20は、2つの互いに平行な直線状の側辺を有し、第2の方向A2は、第2の移動部品20の、この2つの直線状の側辺に平行である。複数の第2の駆動部品211は各々、第2の移動部品20の2つの直線状の側辺に沿って、第2の移動部品20の対向する2辺に分配される。図1に示すように、2つの第2の駆動部品211が、第2の移動部品20の上下各々の側辺に配置される。
【0037】
第1の駆動部品111および第2の駆動部品211の各々は、駆動力を与える圧電セラミックを備える圧電セラミックモータであってもよい。また、第1の駆動部品111および第2の駆動部品211の各々は、対応する第1の移動部品10と第2の移動部品20との間の接触面に接する駆動力を発生させる構造となっている。図1および図6に示すように、第1の駆動部品111は、第1の移動部品10の左右両側に設置されているが、操作ヘッドであるスライドブロック42により、第1の方向A1(つまり上下方向)に沿って駆動力を提供する。このように、第1の精密駆動機構11または第1の駆動部品111の設置位置によって、第1の移動部品10の移動範囲が制限されることはない。これは第2の精密駆動機構21または第2の駆動部品211および駆動される第2の移動部品20と同様である。
【0038】
以下、動作モードの例について、第1の駆動部品111を例として説明する。動作プロセスにおいて、通常、すべての第1の駆動部品111に鋸波電圧が同時に印加される。鋸波電圧の立ち上がりエッジは非常に急勾配であり、第1の駆動部品111の圧電セラミックが急速に接線方向に沿って変形する。そのため、スライドブロック42が、第1の移動部品10またはその案内溝41に対して、約数十ナノメートルのわずかな相対移動を発生させる。このとき、第1の移動部品10はほとんど動かない。
【0039】
そして、鋸波電圧の降下エッジは比較的ゆっくり進み、第1の駆動部品111の圧電セラミックはゆっくりと元の形状を回復する。このとき、そのスライドブロック42と第1の移動部品10との間に相対的なスライドは発生しないため、スライドブロック42は、第1の移動部品10が前進移動するよう第1の移動部品10を駆動することができる。このプロセスを絶えず繰り返すことによって、第1の駆動部品111が第1の移動部品10を駆動して移動させる。第2の移動部品20を移動させるよう駆動する第2の駆動部品211の動作モードは、第1の駆動部品111と同様でよい。
【0040】
第2の精密駆動機構21は、第1の移動部品10の内側面103に設置され、保持されてもよい。具体的には、設置空間101は、内側面に形成された設置溝を含む。設置溝104は、第2の精密駆動機構21を収容して保持するために用いられ、内側面103から離れる方向、つまり設置空間101の内部に向かう方向に開口している。第2の精密駆動機構21の一部分、例えば、そのスライドブロックは、設置溝104から突出して第2の移動部品20を支持し、それ以外の部分は、設置溝104内に設置することができる。選択的な実施形態では、設置溝104の一部分のみが第1の移動部品10の上面102に向かう方向に開口されてもよい。つまり、第2の駆動部品211を設置するための開口のみが確保される。このように、開口部分を介して、第2の駆動部品211を簡便に設置溝104に取付けまたは設置溝104から取外しをすることができる。もちろん、設置溝104全体が上面102に向かう方向に開口していてもよい。
【0041】
図1乃至図3を参照すると、本実施形態において、第1の移動部品10と第2の移動部品20は各々、四角形である。4つの第1の駆動部品111が設けられ、第1の移動部品10の2つの直線的な側辺に該当する対向する2辺に各々位置する。また、4つの第2の駆動部品211が設けられ、第2の移動部品20の2つの直線状の側辺に該当する対向する2辺に各々位置する。駆動部品を2辺に設けることの利点は、駆動プロセスがより安定し、良い方向性が維持されることである。なお、他のいくつかの実施形態では、複数の第1の駆動部品111が第1の移動部品10の1つの直線的な側辺に該当する1辺にのみ配置され、他方の直線的な側辺に該当する別の辺に複数の滑車が配置されてもよい。また、複数の第2の駆動部品211が第2の移動部品20の1つの直線的な側辺に該当する1辺にのみ配置され、他方の直線的な側辺に該当する別の辺に複数の滑車が配置されてもよい。このように第1の移動部品10と第2の移動部品20とを駆動する機能も実現される。
【0042】
図1を参照して、第2の精密駆動機構21および第2の移動部品20の設置プロセスの例を、図1の方向に沿って以下に説明する。
【0043】
ます最初のステップで、第2の移動部品20の下方にある2つの第2の駆動部品211が、下方の設置溝104内に配置される。
【0044】
第2のステップで、第2の移動部品20が、第1の移動部品10の上面102に垂直な方向に沿って設置空間101に置かれ、第2の移動部品の下方の案内溝が、下方向への移動により下方の2つの第2の駆動部品211のスライドブロックとしっかり嵌合する。
【0045】
第3のステップで、上方の2つの第2の駆動部品211が上方の設置溝104内に配置され、そのスライドブロックが、下方への移動により第2の移動部品20の上方の案内溝と嵌合する。このとき、上方の第2の駆動部品211と設置空間101の側面103(具体的には上方の設置溝の上壁)との間に、下方への移動のために空間を確保しておく。
【0046】
最後に、第4のステップで、第3のステップで形成された空間に、少なくとも弾性ガスケット106が設けられ、第2の移動部品20に向かう弾性力が上部の2つの第2の駆動部品211に印加され、4つの第2の駆動部品211の間の第2の移動部品20を押圧して、設置が完了する。
【0047】
第1の精密駆動機構11と第1の移動部品10とを一緒に保持し、精密駆動装置が、極度の低温や強力な磁場等などの極端な環境でも作動するよう、本発明の精密駆動装置は弾性部材30を備えている。弾性部材30の一端は、第1の移動部品10から離れた第1の駆動部品111の一面に当接し、他端は、精密駆動装置のシェル(図示せず)の内壁に当接または固定され、弾性部材30が、第1の精密駆動機構11を第1の移動部品10に対して押圧するための弾性力を発生させる。
【0048】
第1の精密駆動機構11と第1の移動部品10とを一緒に保持する方法は、上記の実施形態の方法に限定されない。本発明の別の実施形態では、図4を参照すると、該実施形態の精密駆動装置の構造は上記の実施形態と実質的に同じであるが、対応する磁石30が第1の精密駆動機構11および第1の移動部品10に各々配置され、第1の精密駆動機構11および第1の移動部品10が、磁石30の磁気引力によって一緒に吸着される点が異なる。
【0049】
図5は、本発明の精密駆動装置の別の実施形態を示す。該実施形態の精密駆動装置は、上記の実施形態と実質的に同じであるが、精密駆動装置の第2の移動部品20が円盤形状であり、複数の第2の駆動部品211が第2の移動部品20の周囲に沿って均一に分配される点が異なる。本実施形態において、第2の移動部品20の移動における第2の方向は、上面102に垂直な回転軸を中心として回転する回転方向である。第2の移動部品20の回転軸は、第1の移動部品10の中心軸と一致してもよい。本実施形態では、3つの第2の駆動部品211が設けられ、第2の移動部品20の周囲の側面に沿って均一に分配され、その3つの第2の駆動部品211によって、案内、保持、および駆動安定性がより確実となる。
【0050】
本発明はさらに、図6に示すように、上記の実施形態の精密駆動装置を集束イオンビーム(FIB)エッチング装置に適用するための実施形態を提供する。
【0051】
集束イオンビーム(FIB)エッチング技術は、イオンビームによって二次元の表面にマイクロ・ナノ構造をエッチングしてマイクロ・ナノ装置を構築するための技術であり、高いエッチング解像度により、科学研究、半導体集積回路の製造等の分野に、幅広く適用されている。この技術では、異なる領域のマイクロ・ナノ構造のエッチングを行うために、エッチング対象サンプル130を精密に移動させる必要がある。動作原理は次の通りである。イオンビーム生成機構110によってイオンビーム120が生成され、それが、エッチング対象サンプル130の表面で直径約10nmのスポットに集束される。高エネルギーのイオンビーム120の影響で、エッチングによってその領域にマイクロ・ナノピットが形成され、エッチング対象サンプル130が二次元の精密駆動装置100に制御されて特定の経路を移動し、エッチングによって、エッチング対象サンプル130の表面に特定のパターンが形成される。本発明の精密駆動装置はコンパクトな設計であるため、自由度の高い移動と回転を簡便に統合することができる。そのため、集束イオンビームのエッチング技術の適用範囲をより拡大することができる。
【0052】
本発明によれば、精密駆動装置の次元と方向を増やすことが可能であることがわかる。例えば、上記の実施形態で具体的に説明した、2つの異なる移動方向を有する(二次元の)精密駆動装置全体を、第3の移動方向を持つ第3の移動部品に配置してもよい。あるいは、第3の移動方向を持つ第3の移動部品を前記の第2の移動部品に設け、三次元の精密駆動装置を実現してもよい。もちろん、このような概念に基づいて、さらに次元数の多い精密駆動装置を実現してもよい。
【0053】
以上、本発明の複数の例示的な実施形態を詳細に説明したが、本発明の原理と一致する多くの他の変形または変更が、本発明の精神および範囲を逸脱することなく、本発明から直接的に決定される、または派生されることは、当業者に認識されるであろう。したがって、本発明の範囲は他のあらゆる変形または変更を含むと理解され、認識される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6