(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6356917
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】インクジェットプリンタ
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20180702BHJP
B41J 2/165 20060101ALI20180702BHJP
B41J 11/04 20060101ALI20180702BHJP
【FI】
B41J2/01 305
B41J2/165 101
B41J2/01 401
B41J11/04
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-528258(P2017-528258)
(86)(22)【出願日】2015年7月16日
(86)【国際出願番号】JP2015070429
(87)【国際公開番号】WO2017010003
(87)【国際公開日】20170119
【審査請求日】2017年10月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】592019877
【氏名又は名称】富士通周辺機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113608
【弁理士】
【氏名又は名称】平川 明
(74)【代理人】
【識別番号】100105407
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】武田 郁夫
(72)【発明者】
【氏名】平田 幸司
(72)【発明者】
【氏名】脇原 純二
【審査官】
川俣 洋史
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−126268(JP,A)
【文献】
特開2000−191195(JP,A)
【文献】
特開2000−313147(JP,A)
【文献】
特開2005−153143(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0256178(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 − 2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを下方へ吐出するインクヘッドと、
前記インクヘッドの下側を通る印刷用紙を支持する複数のローラであり、少なくとも前記インクヘッドの真下に間隔を空けて互いに平行に配置される複数のローラと、
前記複数のローラの間に配置され、前記複数のローラの上側を通る前記印刷用紙を支持する搬送ガイドと、
少なくとも印刷中は前記搬送ガイドを前記複数のローラの間から退避させる駆動機構と、を備える
インクジェットプリンタ。
【請求項2】
前記搬送ガイドは、前記複数のローラの間で上向きの板面を形成する板状の部材である、
請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項3】
前記搬送ガイドを支持するアームを更に備え、
前記駆動機構は、前記複数のローラと平行な回転軸を中心に前記アームを回転させて前記搬送ガイドを前記複数のローラの間から退避させる、
請求項1または2に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項4】
前記駆動機構は、前記インクヘッドを覆うキャップの開閉動作に連動して前記搬送ガイドを前記複数のローラの間から退避させる、
請求項1から3の何れか一項に記載のインクジェットプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、インクジェットプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェットプリンタが普及の一途を辿っている。インクジェットプリンタには、インクヘッドを保守するための各種機構を備えたものがある(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−256023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
インクジェットプリンタのインクヘッドは、インクが乾燥すると、ノズルが詰まる。そこで、インクジェットプリンタは、ノズルの詰まりを予防するダミージェットを行う場合がある。ダミージェットとは、印字を目的としないインクの吐出である。ダミージェットは、例えば、インクジェットプリンタで連続印刷をする場合に行われる。
【0005】
ところで、例えば、幅の狭い連続用紙で印刷中にダミージェットを行うと、用紙の無い部分へ吐出されたインクが、用紙を案内する搬送ガイドといった紙送り機構の部品類を汚す。そこで、本願は、ダミージェットによる汚れが生じないインクジェットプリンタを開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
インクジェットプリンタであって、インクを下方へ吐出するインクヘッドと、インクヘッドの下側を通る印刷用紙を支持する複数のローラであり、少なくともインクヘッドの真下に間隔を空けて互いに平行に配置される複数のローラと、複数のローラの間に配置され、複数のローラの上側を通る印刷用紙を支持する搬送ガイドと、少なくとも印刷中は搬送ガイドを複数のローラの間から退避させる駆動機構と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
上記のインクジェットプリンタであれば、ダミージェットによる汚れが生じない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係るインクジェットプリンタを示した図である。
【
図2】
図2は、搬送ガイドと駆動機構との対応関係を示した図である。
【
図3】
図3は、搬送ガイド及びアームを示した図である。
【
図4】
図4は、搬送ガイドを動かす駆動機構を示した図である。
【
図6】
図6は、搬送ガイドが各搬送ローラの間から退避した状態を示した図である。
【
図7】
図7は、ダミージェットの際のインクの吐出状態を示した図である。
【
図8】
図8は、搬送ガイドが無い状態における印刷用紙のローディングの様子を示した図である。
【
図9】
図9は、インクヘッドの位置関係を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態について説明する。以下に示す実施形態は、単なる例示であり、本開示の技術的範囲を以下の態様に限定するものではない。
【0010】
図1は、実施形態に係るインクジェットプリンタを示した図である。本実施形態に係るインクジェットプリンタ1は、インクヘッド2および紙送り機構3を備える。また、インクジェットプリンタ1は、インクヘッド2および紙送り機構3の他に、図示しない電子回路やセンサ、駆動機構、インクタンク等を備える。
【0011】
インクヘッド2は、インクを吐出するノズル、ノズルから吐出させるインクを加圧する微細なインク室等を備える。インクヘッド2は、インク室で加圧されたインクをノズルから下方へ吐出する。インクヘッド2は、印刷用紙6の送り方向を横切るように配列される多数のノズルを有している。すなわち、インクヘッド2は、印刷中に固定状態で用いられるタイプのインクヘッドであり、印刷中に往復動しない。
【0012】
紙送り機構3は、インクヘッド2の下側を通る印刷用紙6を支持する3つの搬送ローラ4を備える。各搬送ローラ4は、印刷用紙の送り方向に沿って順に並んでいる。各搬送ローラ4は、インクヘッド2の真下に適当な間隔を空けて互いに平行に配置されている。また、紙送り機構3は、各搬送ローラ4の間に配置され、各搬送ローラ4の上側を通る印刷用紙6を支持する2つの搬送ガイド5を備える。搬送ガイド5は、各搬送ローラ4と平行に延在する細長い板状の部材である。搬送ガイド5は、各搬送ローラ4の間で上向きの板面を形成することにより、インクヘッド2の下側を通る印刷用紙6の先端が各搬送ローラ4の間へ入り込むのを阻む。搬送ガイド5は、印刷用紙6の先端が各搬送ローラ4の間へ入り込むのを阻むことにより、印刷用紙6を適正な進路へ案内する。紙送り機構3は、長尺な連続用紙、所定の大きさに裁断された単票紙、その他各種の印刷用紙6を紙送り可能である。
【0013】
また、紙送り機構3は、搬送ローラ4の上側を通った印刷用紙6を引っ張るスカッフローラ7と、搬送ローラ4の上側を通る印刷用紙6の位置や進行方向を整えるトラクタ8とを備える。スカッフローラ7は、周面が軟質な一対のローラで印刷用紙6を挟み、図示しないモータによって回転駆動されることにより、搬送ローラ4の上側を通った印刷用紙6を引っ張る。トラクタ8にスプロケットホールが嵌合した状態の印刷用紙6は、スカッフローラ7に引っ張られることで張力が付与され、インクヘッド2の真下で張られた状態になる。
【0014】
図2は、搬送ガイド5と駆動機構との対応関係を示した図である。
図2において、上側の図は駆動機構9を示し、下側の図は搬送ガイド5を示す。駆動機構9は、複数の歯車10を有している。また、搬送ガイド5は、搬送ガイド5から適当な距離を空けて搬送ガイド5の側方に配置された回転軸12にアーム11で連結されている。回転軸12は、搬送ローラ4と平行な軸を回転中心とする軸である。回転軸12は、特定の歯車10の中心部に固定されており、駆動機構9が作動すると所定の可動範囲内の角度で回転する。
【0015】
なお、本実施形態では、アーム11で互いに連結されている搬送ガイド5と回転軸12との間に搬送ローラ4が位置しているため、アーム11が搬送ローラ4を避ける形状を有している。
図3は、搬送ガイド5及びアーム11を示した図である。アーム11は、搬送ローラ4に干渉しないようL字状に加工されている。また、搬送ガイド5は、断面がL字状の細長い部材である。搬送ガイド5は、各搬送ローラ4の間で平らな板面を上向きにした姿勢を採ることにより、各搬送ローラ4の間の隙間を覆うように支持面13を形成する。よって、各搬送ローラ4の上側を通る印刷用紙6は、支持面13に支持され、適正な進路へ案内される。
【0016】
図4は、搬送ガイド5を動かす駆動機構9を示した図である。インクジェットプリンタ1には、非印刷時にインクヘッド2のインクの乾燥を防ぐキャップ14が備わっている。キャップ14は、インクヘッド2の下側に出し入れ可能な横スライド式のキャップであり、非印刷中にインクヘッド2を覆う。キャップ14は、駆動機構9のプーリ15に懸架されたベルト16によってスライドされる。すなわち、搬送ガイド5とキャップ14は、駆動機構9を併用している。よって、駆動機構9が作動すると、搬送ガイド5がキャップ14の開閉動作に連動して動く。搬送ガイド5とキャップ14は、何れも印刷中はインクヘッド2の下側から退避した状態で用いられる。したがって、インクジェットプリンタ1は、搬送ガイド5とキャップ14を共通の駆動源である駆動機構9で動かすことにより、部品点数の削減を実現している。
【0017】
図5は、キャップ14の動きを示した図である。ベルト16は、印刷用紙6の送り方向に沿って懸架されている。よって、ベルト16が懸架されたプーリ15が回転すると、キャップ14が印刷用紙6の送り方向に沿って動く。キャップ14がインクヘッド2の下側に配置されると、インクヘッド2の吐出口がキャップ14で覆われる。インクヘッド2の吐出口がキャップ14で覆われると、インクヘッド2におけるインクの乾燥が抑制される。また、キャップ14がインクヘッド2の下側から退避させられると、インクヘッド2の吐出口が開かれる。インクヘッド2の吐出口が開かれると、インクヘッド2が印刷用紙6へインクを吐出させることが可能になる。
【0018】
図6は、搬送ガイド5が各搬送ローラ4の間から退避した状態を示した図である。インクジェットプリンタ1は、回転軸12の角度を駆動機構9で調整し、少なくとも印刷用紙6のローディング中は搬送ガイド5を各搬送ローラ4の間に配置する。また、インクジェットプリンタ1は、回転軸12の角度を駆動機構9で調整し、少なくとも印刷中は搬送ガイド5を各搬送ローラ4の間から退避させる。印刷中は搬送ガイド5が各搬送ローラ4の間から退避させられるので、印刷中にインクヘッド2から吐出されたインクが搬送ガイド5に付着することはない。
【0019】
図7は、ダミージェットの際のインクの吐出状態を示した図である。
図7において破線で示す矢印が、インクの吐出状態を示す。インクジェットプリンタ1は、インクヘッド2のノズルが詰まるのを予防する目的でダミージェットを行う場合がある。ダミージェットは、例えば、印刷量や印刷時間、周囲温度、インクの特性といった諸条件に基づき、自動又は手動により適当なタイミングで行われる。ダミージェットは、印字を目的としないインクの吐出であるから、印刷用紙6の大きさや印刷用紙6の有無に関わらず、インクヘッド2の全てのノズルからインクが吐出される。よって、例えば、印刷用紙6の横幅が、各インクヘッド2の全ノズルの横幅より小さい場合、
図7に示すように、インクヘッド2から吐出されたインクの一部が印刷用紙6の横を通り、印刷用紙6の下方へ落ちる。
【0020】
しかし、本実施形態のインクジェットプリンタ1は、少なくとも印刷中は搬送ガイド5を各搬送ローラ4の間から退避させるので、インクヘッド2から吐出されたインクが搬送ガイド5に付着しない。また、本実施形態のインクジェットプリンタ1は、各搬送ローラ4がインクヘッド2の真下に適当な間隔を空けて互いに平行に配置されているので、インクヘッド2から吐出されたインクが搬送ローラ4に付着しない。よって、本実施形態のインクジェットプリンタ1であれば、ダミージェットを行っても、印刷用紙6を案内する搬送ガイド5といった紙送り機構3の部品類が汚れない。本実施形態のインクジェットプリンタ1は、紙送り機構3の部品類が汚れないので、印刷用紙6をインクで汚すことも無い。なお、各搬送ローラ4の間を通って下方へ吐出されたインクは、インクジェットプリンタ1の下部に設けられる図示しない受け皿へ落ちる。
【0021】
また、本実施形態のインクジェットプリンタ1は、少なくとも印刷用紙6のローディング中は搬送ガイド5を各搬送ローラ4の間に配置するので、印刷用紙6の先端が搬送ローラ4の下側へ送り込まれてしまうことがない。
図8は、搬送ガイド5が無い状態における印刷用紙6のローディングの様子を示した図である。仮に搬送ガイド5が無い場合、印刷用紙6のローディング中に印刷用紙6の先端が自重で垂れ下がり、印刷用紙6が搬送ローラ4の下側へ送り込まれてしまう場合がある。しかし、本実施形態のインクジェットプリンタ1には搬送ガイド5が備わっているので、印刷用紙6のローディング中に印刷用紙6の先端が自重で垂れ下がり、印刷用紙6が搬送ローラ4の下側へ送り込まれてしまうことが無い。
【0022】
図9は、インクヘッド2の位置関係を示した図である。本実施形態のインクジェットプリンタ1は、横幅が印刷用紙6の横幅に満たない数cmから十数cm程度の大きさのインクヘッド2を複数備えている。本実施形態のインクジェットプリンタ1を上側から見ると、インクヘッド2は、例えば、
図9に示すように、印刷用紙6の送り方向を横切る方向に2列で交互に配置されている。インクヘッド2が印刷用紙6の送り方向を横切る方向に2列で交互に配置されることにより、横幅が印刷用紙6の横幅に満たない大きさのインクヘッド2であっても、インクジェットプリンタ1は、複数のインクヘッド2を使って印刷用紙6の全面に印刷可能である。しかし、本実施形態のインクジェットプリンタ1は、インクヘッド2を複数設けたものに限定されるものではない。例えば、実施形態のインクジェットプリンタ1は、横幅の長いインクヘッド2を1つ備えたものであってもよい。インクジェットプリンタ1がインクヘッド2を1つ備える場合、搬送ローラ4は2つあればよく、搬送ガイド5は1つあればよい。
【0023】
また、本実施形態では、搬送ガイド5を回転軸12で回転させていたが、各搬送ローラ4の間に配置された搬送ガイド5は、回転軸12による回転以外の手段で各搬送ローラ4の間から退避させてもよい。搬送ガイド5は、例えば、スライド機構、巻取り機構、その他各種の機構を用いて退避させることが可能である。
【符号の説明】
【0024】
1・・インクジェットプリンタ:2・・インクヘッド:3・・紙送り機構:4・・搬送ローラ:5・・搬送ガイド:6・・印刷用紙:7・・スカッフローラ:8・・トラクタ:9・・駆動機構:10・・歯車:11・・アーム:12・・回転軸:13・・支持面:14・・キャップ:15・・プーリ:16・・ベルト