(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6356967
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】AD変換回路
(51)【国際特許分類】
H03M 1/08 20060101AFI20180702BHJP
【FI】
H03M1/08 A
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-1012(P2014-1012)
(22)【出願日】2014年1月7日
(65)【公開番号】特開2015-130583(P2015-130583A)
(43)【公開日】2015年7月16日
【審査請求日】2016年12月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】特許業務法人 佐野特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100085501
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 静夫
(74)【代理人】
【識別番号】100134555
【弁理士】
【氏名又は名称】林田 英樹
(72)【発明者】
【氏名】向井 徹
(72)【発明者】
【氏名】西村 知宏
(72)【発明者】
【氏名】増田 信也
【審査官】
齋藤 正貴
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−294666(JP,A)
【文献】
特開2003−283300(JP,A)
【文献】
特開平06−275014(JP,A)
【文献】
特開平09−307449(JP,A)
【文献】
特開昭61−195023(JP,A)
【文献】
特開2009−200809(JP,A)
【文献】
特開2007−019908(JP,A)
【文献】
特開2001−358618(JP,A)
【文献】
特開2006−191216(JP,A)
【文献】
特開2010−161635(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03M 1/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アナログ信号の高周波成分を除去して第1信号を生成するアナログフィルタと、
前記第1信号をAD[analog/digital]変換して第2信号を生成するAD変換器と、
前記第2信号の高周波成分を除去してデジタル信号を生成するデジタルフィルタと、
マスタクロック信号に応じて前記アナログフィルタのカットオフ周波数を調整するフィルタ調整部と、
を有し、
前記アナログフィルタの次数は、前記アナログフィルタ、前記AD変換器、及び、前記デジタルフィルタを組み合わせた仮想フィルタの次数よりも低く、
前記AD変換器のサンプリング周波数は、前記AD変換器のサンプリング周波数に依存するナイキスト周波数と、前記アナログフィルタの次数及び前記マスタクロック信号に応じて調整される前記アナログフィルタのカットオフ周波数との関係により、前記AD変換器の折り返し雑音がシステムに影響しない高さに設定されていることを特徴とするAD変換回路。
【請求項2】
前記AD変換器のサンプリング周波数は、前記アナログ信号帯域の最大周波数に対して4倍以上に設定されていることを特徴とする請求項1に記載のAD変換回路。
【請求項3】
前記アナログ信号の振幅を前記AD変換器の入力ダイナミックレンジに適合させる可変ゲインアンプをさらに有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のAD変換回路。
【請求項4】
前記マスタクロック信号に応じて前記AD変換器のサンプリングクロック信号を生成するPLL[phase-locked loop]部をさらに有することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のAD変換回路。
【請求項5】
前記アナログフィルタは、gmアンプとキャパシタを含むgm−Cフィルタであり、前記フィルタ調整部は、前記マスタクロック信号に応じて前記gmアンプのバイアス電圧を可変制御することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載のAD変換回路。
【請求項6】
アナログ信号をデジタル信号に変換する請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載のAD変換回路と、
前記デジタル信号を処理するデジタル信号処理回路と、
を集積化したことを特徴とする半導体装置。
【請求項7】
請求項6に記載の半導体装置と、
前記半導体装置と電力線との間を絶縁しながらアナログ信号の伝達を行うトランスと、
を有することを特徴とする電力線通信機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、AD[analog/digital]変換回路に関する。
【背景技術】
【0002】
図7は、AD変換回路の一従来例を示すブロック図である。アナログ信号SAをDSP[digital signal processor]301で処理するためには、DSP301よりも前段においてアナログ信号SAをデジタル信号SDに変換するAD変換回路Xが必要となる。
【0003】
本従来例のAD変換回路Xは、AD変換器302(サンプリング周波数fs)と、可変ゲインアンプ303と、アナログフィルタ304とを含む。このように、AD変換回路Xでは、AD変換器302で折り返し雑音が発生しないように、AD変換器302よりも前段にアナログフィルタ304(いわゆるアンチエイリアシングフィルタ)が設けられる。
【0004】
図8は、アナログフィルタ特性(周波数−ゲイン特性)の一従来例を示す図である。本図に示したように、アナログフィルタ304は、アナログ信号帯域の最大周波数fhよりも高い周波数成分を除去するローパスフィルタの一種である。
【0005】
アナログ信号帯域全域で折り返し雑音を発生させないためには、fh<fs/2(=ナイキスト周波数fn)という条件を満たす必要がある(標本化定理)。そこで、従来のAD変換回路Xは、高次(例えば9次)のアナログフィルタ304を用いてアナログ信号SAから不要な高周波成分(>fh)をできるだけ除去すると共に、アナログ信号帯域の最大周波数fhに対して2倍強のサンプリング周波数fsを持つAD変換器302(例えばfh=30MHzに対してfs=62.5Msps)を用いる構成とされていた。
【0006】
なお、上記に関連する従来技術の一例としては、特許文献1を挙げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013−118495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来のAD変換回路Xでは、半導体装置300の回路面積縮小や消費電流低減といった観点から、高次のアナログフィルタ304を外付け部品(インダクタLやキャパシタCなどの受動素子)によって形成する必要があった。そのため、従来のAD変換回路Xでは、外付け部品点数の増大や製造コストの上昇が課題となっていた。
【0009】
本発明は、本願の発明者らにより見出された上記の課題に鑑み、半導体装置への集積化に好適なAD変換回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明に係るAD変換回路は、アナログ信号の高周波成分を除去して第1信号を生成するアナログフィルタと、前記第1信号をAD変換して第2信号を生成するAD変換器と、前記第2信号の高周波成分を除去してデジタル信号を生成するデジタルフィルタと、を有する構成(第1の構成)とされている。
【0011】
なお、第1の構成から成るAD変換回路において、前記アナログフィルタの次数は、前記アナログフィルタ、前記AD変換器、及び、前記デジタルフィルタを組み合わせた仮想フィルタの次数よりも低い構成(第2の構成)にするとよい。
【0012】
また、第2の構成から成るAD変換回路において、前記AD変換器のサンプリング周波数は、前記第1信号のAD変換時に生じる折り返し雑音がシステムに影響しない高さに設定されている構成(第3の構成)にするとよい。
【0013】
また、第3の構成から成るAD変換回路において、前記AD変換器のサンプリング周波数は、前記アナログ信号帯域の最大周波数に対して4倍以上に設定されている構成(第4の構成)にするとよい。
【0014】
また、第1〜第4いずれかの構成から成るAD変換回路は、前記アナログ信号の振幅を前記AD変換器の入力ダイナミックレンジに適合させる可変ゲインアンプをさらに有する構成(第5の構成)にするとよい。
【0015】
また、第1〜第5いずれかの構成から成るAD変換回路は、マスタクロック信号に応じて前記AD変換器のサンプリングクロック信号を生成するPLL[phase-locked loop]部をさらに有する構成(第6の構成)にするとよい。
【0016】
また、第6の構成から成るAD変換回路は、前記マスタクロック信号に応じて前記アナログフィルタのカットオフ周波数を調整するフィルタ調整部をさらに有する構成(第7の構成)にするとよい。
【0017】
また、第7の構成から成るAD変換回路において、前記アナログフィルタは、gmアンプとキャパシタを含むgm−Cフィルタであり、前記フィルタ調整部は、前記マスタクロック信号に応じて前記gmアンプのバイアス電圧を可変制御する構成(第8の構成)にするとよい。
【0018】
また、本発明に係る半導体装置は、アナログ信号をデジタル信号に変換する第1〜第8いずれかの構成から成るAD変換回路と、前記デジタル信号を処理するデジタル信号処理回路と、を集積化した構成(第9の構成)とされている。
【0019】
また、本発明に係る電力線通信機器は、第9の構成から成る半導体装置と、前記半導体装置と電力線との間を絶縁しながらアナログ信号の伝達を行うトランスと、を有する構成(第10の構成)とされている。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、半導体装置への集積化に好適なAD変換回路を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図2】HD−PLCアダプタの一構成例を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0022】
<宅内LAN[local area network]システム>
図1は、宅内LANシステムの一構成例を示す図である。本構成例の宅内LANシステム100は、複数のHD−PLC[high definition - power line communication]アダプタ1と、電力線2と、ルータ3と、テレビ4と、パソコン5と、冷蔵庫6と、空気調和機7と、を有する。
【0023】
複数のHD−PLCアダプタ1は、それぞれ、情報信号(映像信号や音声信号など)をウェーブレット直交周波数分割多重方式(Wavelet-OFDM[orthogonal frequency-division multiplexing]方式)で変調して電力線2に重畳することにより、各々に接続された端末相互間の双方向通信を実現する電力線通信機器(ブリッジ機能を備えたモデム)である。例えば、パソコン5を用いてインターネット200へのアクセス(ウェブサイトの閲覧など)を行う場合には、ルータ3に接続されたHD−PLCアダプタ1(例えば親機)と、パソコン5に接続されたHD−PLCアダプタ1(例えば子機)との間で、電力線2を介した双方向通信が行われる。
【0024】
このように、HD−PLCアダプタ1を用いた宅内LANシステム100であれば、宅内に既設の電力線2を通信回線として使用することが可能となる。なお、HD−PLCアダプタ1をマルチポート型とすれば、1台のHD−PLCアダプタ1に複数の端末を接続することも可能となる。また、宅内LANシステム100を構築する端末の種類については、本構成例(ルータ3、テレビ4、パソコン5、冷蔵庫6、及び、空気調和機7)に限定されるものではなく、種々の端末を接続することが可能である。
【0025】
<HD−PLCアダプタ>
図2は、HD−PLCアダプタ1の一構成例を示すブロック図である。本構成例のHD−PLCアダプタ1は、半導体装置10と、フラッシュメモリ20と、トランス30と、を有する。なお、HD−PLCアダプタ1には、電力線2から電力供給が行われる。
【0026】
半導体装置10は、トランス30を介した電力線通信を制御するコントローラICであり、CPU[central processing unit]11と、RAM[random access memory]12と、フラッシュコントローラ13と、PLCDSP[PLC digital signal processor]14と、DA[digital/analog]変換回路15と、AD[analog/digital]変換回路16とを集積化して成る。
【0027】
CPU11は、半導体装置10の動作を統括的に制御する主体であり、例えば、PLCDSP14やフラッシュコントローラ13の動作制御を行うほか、HD−PLCアダプタ1に接続された端末(不図示)との通信制御などを行う。
【0028】
RAM12は、CPU11の作業領域や各種データの一時格納領域として用いられる揮発性半導体メモリである。
【0029】
フラッシュコントローラ13は、CPU11からの指示に応じてフラッシュメモリ20へのアクセス制御を行うメモリ制御回路である。
【0030】
PLCDSP14は、CPU11からの指示に応じてデジタル信号を処理するデジタル信号処理回路である。
【0031】
DA変換回路15は、PLCDSP14から入力されるデジタル信号をアナログ信号に変換してトランス30に出力する回路ブロックであり、HD−PLCアダプタ1の送信回路TXとして機能する。
【0032】
AD変換回路16は、トランス30から入力されるアナログ信号をデジタル信号に変換してPLCDSP14に出力する回路ブロックであり、HD−PLCアダプタ1の受信回路RXとして機能する。
【0033】
フラッシュメモリ20は、HD−PLCアダプタ1のファームウェアなどを格納する不揮発性半導体メモリである。なお、フラッシュメモリ20としては、シリアルバスを採用したシリアルフラッシュメモリを用いることが望ましい。
【0034】
トランス30は、半導体装置10と電力線2との間を絶縁しながらアナログ信号の伝達を行う。なお、トランス30には、商用電源の交流周波数成分(50Hz/60Hz)を遮断するために結合キャパシタを含めてもよい。
【0035】
なお、上記に挙げた半導体装置10、フラッシュメモリ20、及び、トランス30は、一つの通信モジュールとしてHD−PLCアダプタ1に実装するとよい。
【0036】
<AD変換回路(第1構成例)>
図3は、AD変換回路16の第1構成例を示すブロック図である。第1構成例のAD変換回路16は、可変ゲインアンプ161と、アナログフィルタ162と、AD変換器163と、デジタルフィルタ164と、を含む。
【0037】
可変ゲインアンプ161は、アナログ信号SA(本構成例では、差動受信信号RxP及びRxN)の振幅をAD変換器163の入力ダイナミックレンジに適合させる。なお、可変ゲインアンプ161のゲインは、PLCDSP14によって可変制御すればよい。
【0038】
アナログフィルタ162は、可変ゲインアンプ161を介して入力されるアナログ信号SAの高周波成分を除去して第1信号S1を生成するアンチエイリアシングフィルタである。なお、アナログフィルタ162の次数b(例えばb=3)は、アナログフィルタ162、AD変換器163、及び、デジタルフィルタ164を組み合わせた仮想フィルタの次数a(例えばa≧9)よりも低く設定されている。この点については後ほど詳述する。
【0039】
AD変換器163は、第1信号S1をAD変換して第2信号S2を生成する。なお、AD変換器163のサンプリング周波数fsは、第1信号S1のAD変換時に生じる折り返し雑音がシステム(例えばHD−PLCアダプタ1の受信特性)に影響しない高さに設定されている。この点については後ほど詳述する。
【0040】
デジタルフィルタ164は、第2信号S2の高周波成分を除去してデジタル信号SDを生成する。デジタルフィルタ164の次数cは、アナログフィルタ162、AD変換器163、及び、デジタルフィルタ164を組み合わせた仮想フィルタの次数aが所望値となるように適切に設定すればよい(例えばa≧9に対してc=6〜50)。
【0041】
図4は、フィルタ特性(周波数−ゲイン特性)の一例を示す図である。なお、実線はアナログフィルタ162のフィルタ特性を示しており、破線はデジタルフィルタ164のフィルタ特性を示している。
【0042】
アナログ信号SAが取り得る周波数範囲(以下ではアナログ信号帯域と呼ぶ)は、最小周波数fl(例えば2MHz)〜最大周波数fh(例えば30MHz)である。これを踏まえ、AD変換器163のサンプリング周波数fsは、アナログ信号帯域の最大周波数fhに対して4倍強(例えばfs=125MHz)に設定されており、アナログフィルタ162の次数bは、ナイキスト周波数fn(=fs/2、例えばfn=62.5MHz)で折り返し雑音がシステム要求レベル(−XdB)以下となる次数(例えばb=3)に設定されている。なお、上記のシステム要求レベル(−XdB)を一概に例示することは難しいが、様々な要因(通信速度や伝送路の減衰など)を考慮しながら、折り返し雑音がシステムの許容量を超えないように適宜設定すればよい。また、デジタルフィルタ164の次数cは、先述の通り、アナログフィルタ162、AD変換器163、及び、デジタルフィルタ164を組み合わせた仮想フィルタの次数aが所望値となる次数(例えばa≧9に対してc=6〜50)に設定されている。
【0043】
このように、第1構成例のAD変換回路16は、従来構成(アナログフィルタ304のみで不要な高周波成分(>fh)を全て除去する構成、
図7及び
図8を参照)と異なり、従来よりも低次のアナログフィルタ162を用いて不要な高周波成分の一部のみを除去すると共に、従来よりも高いサンプリング周波数fsのAD変換器163を用いてAD変換を行った上で、さらに、デジタルフィルタ164を用いて残存する不要な高周波成分を除去する構成とされている。
【0044】
このような構成とすることにより、半導体装置10への集積化が可能な低次のアナログフィルタ162を用いてもAD変換器163での折り返し雑音を回避することができるので、高次のアナログフィルタ304のみを用いてアンチエイリアシングを行っていた従来構成と比べて製造コストを削減することが可能となる。
【0045】
また、第1構成例のAD変換回路16において、最終的に生成されるデジタル信号SDは、高次化が比較的容易なデジタルフィルタ164によるデジタルフィルタリングを介して生成される。従って、AD変換回路16全体としてみれば、従来のアナログフィルタ304(9次)と同等のフィルタ特性を持たせることが可能となる。
【0046】
なお、AD変換器163のサンプリング周波数fsをさらに高めれば、ナイキスト周波数fnが高くなるので、アナログフィルタ162の次数bを下げることが可能となり、延いては、アナログフィルタ162のさらなる回路面積縮小や消費電流削減を図ることが可能となる。ただし、AD変換器163のサンプリング周波数fsを高めるほど、AD変換器163自体の消費電流が増大してしまう点には留意が必要である。逆に、より高次(例えば4次)のアナログフィルタ162を半導体装置10に集積化することができるのであれば、AD変換器163のサンプリング周波数fsを引き下げることが可能となる。
【0047】
<AD変換回路(第2構成例)>
図5は、AD変換回路16の第2構成例を示すブロック図である。第2構成例のAD変換回路16は、基本的に第1構成例と同様の構成であり、PLL[phase-locked loop]部165とフィルタ調整部166が追加されている点に特徴を有する。そこで、第1構成例と同様の構成要素については、
図3と同一の符号を付すことで重複した説明を割愛し、以下では、第2構成例の特徴部分について重点的な説明を行う。
【0048】
PLL部165は、半導体装置10の外部から入力されるマスタクロック信号MCKに応じて、AD変換器163のサンプリングクロック信号SCKを生成する。AD変換器163のサンプリング周波数fsは、サンプリングクロック信号SCKによって決まる。従って、本構成例のAD変換回路16であれば、マスタクロック信号MCKの発振周波数を調整することにより、AD変換器163のサンプリング周波数fsを任意に設定することが可能となる。
【0049】
フィルタ調整部166は、マスタクロック信号MCKの発振周波数に応じて、アナログフィルタ162のカットオフ周波数を調整する。従って、本構成例のAD変換回路16であれば、マスタクロック信号MCKを用いたサンプリング周波数fsの設定動作と同期して、アナログフィルタ162のカットオフ周波数を最適化することも可能となる。なお、フィルタ調整部166は、アナログフィルタ162のバイアス電圧VBを調整する構成とされているが、この点については以下で詳述する。
【0050】
<アナログフィルタ>
図6は、アナログフィルタ162の一構成例を示す回路図である。なお、本構成例では説明の便宜上、シングルエンド型のアナログフィルタ162を例に挙げて説明を行う。本構成例のアナログフィルタ162は、gmアンプ162a〜162cと、アンプ162dと、反転アンプ162e及び162fと、キャパシタ162g〜162jと、を含む。
【0051】
gmアンプ162aの第1入力端は、入力信号IN(アナログ信号SA)の印加端に接続されている。gmアンプ162aの第2入力端は、自身の出力端に接続されている。gmアンプ162aの出力端は、gmアンプ162bの第1入力端とアンプ162dの入力端に各々接続されている。gmアンプ162bの第2入力端は、出力信号OUT(第1信号S1)の印加端に接続されている。gmアンプ162bの出力端は、反転アンプ162eの入力端に接続されている。gmアンプ162cの第1入力端は、反転アンプ162eの出力端に接続されている。gmアンプ162cの第2入力端は、出力信号OUTの印加端に接続されている。gmアンプ162cの出力端は、反転アンプ162fの入力端に接続されている。反転アンプ162fの出力端は、出力信号OUTの印加端に接続されている。キャパシタ162gは、gmアンプ162aの出力端と接地端との間に接続されている。キャパシタ162hは、反転アンプ162hの入力端と出力端との間に接続されている。キャパシタ162iは、アンプ162dの出力端とgmアンプ162cの出力端との間に接続されている。キャパシタ162jは、反転アンプ162fの入力端と出力端との間に接続されている。
【0052】
このように、本構成例のアナログフィルタ162は、gmアンプ162a〜162cとキャパシタ162g〜162jを含むgm−Cフィルタであり、3次連立チェビシェフ特性を持つ。本構成例のアナログフィルタ162であれば、回路面積や消費電流を不必要に増大させることなく、全ての回路素子を半導体装置10に集積化することが可能となる。
【0053】
なお、gmアンプ162a〜162cには、フィルタ調整部166で生成されたバイアス電圧VBが印加されており、各々の出力電流特性はバイアス電圧VBによって決まる。従って、フィルタ調整部166は、マスタクロック信号MCKの発振周波数に応じてバイアス電圧VBの電圧値を可変制御することにより、gmアンプ162a〜162cの出力電流特性を調整し、延いては、アナログフィルタ162のカットオフ周波数を容易に調整することが可能となる。
【0054】
<その他の変形例>
なお、上記の実施形態では、HD−PLCアダプタ1の受信回路として機能するAD変換回路16に本発明を適用した構成を例に挙げて説明を行ったが、本発明の構成はこれに限定されるものではなく、その他の用途に供されるAD変換回路にも広く適用することが可能である。
【0055】
また、本明細書中に開示されている種々の技術的特徴は、上記実施形態のほか、その技術的創作の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。すなわち、上記実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、上記実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、例えば、HD−PLCアダプタなどに利用することが可能である。
【符号の説明】
【0057】
1 HD−PLCアダプタ
2 電力線
3 ルータ
4 テレビ
5 パソコン
6 冷蔵庫
7 空気調和機
10 半導体装置
11 CPU
12 RAM
13 フラッシュコントローラ(メモリ制御回路)
14 PLCDSP
15 DA変換回路(送信回路)
16 AD変換回路(受信回路)
161 可変ゲインアンプ
162 アナログフィルタ
162a〜162c gmアンプ
162d アンプ
162e、162f 反転アンプ
162g〜162j キャパシタ
163 A/D変換器
164 デジタルフィルタ
165 PLL部
166 フィルタ調整部
20 フラッシュメモリ(不揮発性半導体メモリ)
30 トランス
100 宅内LANシステム
200 インターネット