(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6356971
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】近接露光装置、近接露光方法及び照明光学系
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20180702BHJP
G02B 3/00 20060101ALI20180702BHJP
G02B 19/00 20060101ALI20180702BHJP
【FI】
G03F7/20 501
G02B3/00 A
G02B19/00
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-8826(P2014-8826)
(22)【出願日】2014年1月21日
(65)【公開番号】特開2014-167616(P2014-167616A)
(43)【公開日】2014年9月11日
【審査請求日】2016年10月25日
(31)【優先権主張番号】特願2013-14955(P2013-14955)
(32)【優先日】2013年1月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】500171707
【氏名又は名称】株式会社ブイ・テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原田 智紀
(72)【発明者】
【氏名】富樫 工
(72)【発明者】
【氏名】小林 健一
【審査官】
田口 孝明
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−246144(JP,A)
【文献】
特開2008−256810(JP,A)
【文献】
国際公開第2008/120785(WO,A1)
【文献】
特開平04−256944(JP,A)
【文献】
特開2009−157325(JP,A)
【文献】
特開平05−217855(JP,A)
【文献】
特開2008−129047(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC H01L 21/30、
21/027、
21/46、
G03F 7/20−7/24、
9/00−9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を保持する基板保持部と、
前記基板と対向するように、マスクを保持するマスク保持部と、
前記マスクに向けてパターン露光用の光を照射する照明光学系と、
を備え、
前記基板と前記マスクとを近接させた状態で、前記照明光学系からの露光用の光を、前記マスクを介して前記基板に照射して、前記基板の露光面に前記マスクのパターンを露光転写する近接露光装置であって、
前記照明光学系を構成する部品として、集光鏡と、ランプと、交換可能な複数のフライアイレンズと、を有し、
前記集光鏡と、前記ランプと、前記フライアイレンズとは、いずれも位置調整可能に構成されており、
前記露光面での照度を検出するセンサを備え、さらに、
使用される前記フライアイレンズのサイズに応じて前記照明光学系を構成する部品の少なくとも一つの位置を調整し、前記露光用の光を前記フライアイレンズに集光させることによって、前記センサが所定の照度を検出するように制御される制御部を有することを特徴とする近接露光装置。
【請求項2】
使用される前記フライアイレンズに応じて前記集光鏡の位置を調整し、前記露光用の光を前記フライアイレンズに集光させることによって、前記露光面にて所定の照度が得られることを特徴とする請求項1に記載の近接露光装置。
【請求項3】
使用される前記フライアイレンズに応じて前記フライアイレンズの位置を調整し、前記露光用の光を前記フライアイレンズに集光させることによって、前記露光面にて所定の照度が得られることを特徴とする請求項1に記載の近接露光装置。
【請求項4】
使用される前記フライアイレンズに応じて前記ランプの位置を調整し、前記露光用の光を前記フライアイレンズに集光させることによって、前記露光面にて所定の照度が得られることを特徴とする請求項1に記載の近接露光装置。
【請求項5】
基板とマスクとを近接させた状態で、露光用の光を前記マスクを介して前記基板に照射して、前記基板の露光面に前記マスクのパターンを転写する近接露光装置に使用され、前記マスクに向けてパターン露光用の光を照射する照明光学系であって、
前記照明光学系を構成する部品として、集光鏡と、ランプと、交換可能な複数のフライアイレンズと、を有し、
前記集光鏡と、前記ランプと、前記フライアイレンズとは、いずれも位置調整可能に構成されており、
前記露光面での照度を検出するセンサを備え、さらに、
使用される前記フライアイレンズのサイズに応じて前記照明光学系を構成する部品の少なくとも一つの位置を調整し、前記露光用の光を前記フライアイレンズに集光させることによって、前記センサが所定の照度を検出するように制御される制御部を有することを特徴とする照明光学系。
【請求項6】
使用される前記フライアイレンズに応じて前記集光鏡の位置を調整することによって、前記露光用の光を前記フライアイレンズに集光させることによって、前記露光面にて所定の照度が得られることを特徴とする請求項5に記載の照明光学系。
【請求項7】
使用される前記フライアイレンズに応じて前記フライアイレンズの位置を調整し、前記露光用の光を前記フライアイレンズに集光させることによって、前記露光面にて所定の照度が得られることを特徴とする請求項5に記載の照明光学系。
【請求項8】
使用される前記フライアイレンズに応じて前記集光鏡と、前記ランプと、前記フライアイレンズと、のうち少なくとも一つの位置を調整し、前記露光用の光を前記フライアイレンズに集光させることによって、前記露光面にて所定の照度が得られることを特徴とする請求項5に記載の照明光学系。
【請求項9】
基板を保持する基板保持部と、
前記基板と対向するように、マスクを保持するマスク保持部と、
前記マスクに向けてパターン露光用の光を照射する照明光学系と、
を備え、
前記基板と前記マスクとを近接させた状態で、前記照明光学系からの露光用の光を、前記マスクを介して前記基板に照射して、前記基板の露光面に前記マスクのパターンを露光転写する近接露光方法であって、
前記照明光学系を構成する部品として、集光鏡と、ランプと、交換可能な複数のフライアイレンズと、を有し、
前記集光鏡と、前記ランプと、前記フライアイレンズとは、いずれも位置調整可能に構成されており、
前記露光面での照度を検出するセンサを備え、さらに、
使用される前記フライアイレンズのサイズに応じて前記照明光学系を構成する部品の少なくとも一つの位置を調整し、前記露光用の光を前記フライアイレンズに集光させることによって、前記センサが所定の照度を検出することを特徴とする近接露光方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近接露光装置、近接露光方法及び照明光学系に関し、より詳細には、液晶ディスプレイ装置のTFTアレイ基板やカラーフィルタ基板の露光転写に好適な近接露光装置及び照明光学系に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フラットパネルディスプレイ装置のカラーフィルタ等のパネルを製造する装置として、種々の近接露光装置が考案されている。例えば、分割逐次近接露光装置では、基板より小さいマスクをマスクステージで保持すると共に基板をワークステージで保持して両者を近接して対向配置した後、ワークステージをマスクに対してステップ移動させて各ステップ毎にマスク側から基板にパターン露光用の光を照射することにより、マスクに描かれた複数のパターンを基板上に露光転写して、一枚の基板に複数のパネルを製作する。
【0003】
また、近接露光装置に用いられる照明光学系では、露光面にて所定の照度を得るため、ランプから放たれる光の輝点を調整する手法が種々考案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0004】
特許文献1に記載の露光用ランプでは、露光用ランプに内部の電極先端または輝度中心の位置の製造誤差に関する情報を記録し、露光用ランプに記録されている製造誤差に関する情報に基いて、光軸調整手段にて前記露光用ランプの光軸調整をすることができる。
また、特許文献2に記載の光源装置においては、2以上の結像光学系と、該結像光学系の像点の位置に設けられ、複数のセグメントに分割された入射面を有する光電変換素子と、各々のセグメントからの電気信号を比較する比較手段を備え、放電灯のアークの位置が集光鏡の焦点に対してどの位置にあるかを表示する。そして、表示した結果に基づいて、手動にて放電灯の輝点の位置を調整することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−299270号公報
【特許文献2】特開平3−115828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、露光転写パターンの精度に応じて、フライアイレンズのサイズを変更することが検討されている。通常、基板の露光面における照度は、タクトタイムとの兼ね合いで最大の照度となるように設計され、このため、フライアイレンズの入射面での照度が最大となるように設計されている。フライアイレンズのサイズが変更されると、フライアイレンズに入射される光量も変化するため、基板の露光面における照度もフライアイレンズのサイズに応じて変化する。しかしながら、例えば、通常のフライアイレンズに対してサイズの小さな高精度用のフライアイレンズに変更すると、想定よりもフライアイレンズに光を集光させられず、基板の露光面にて所定の照度を得ることができないという課題が発生した。特許文献1に記載の露光用ランプの光軸調整、及び、特許文献2に記載の放電灯の輝点位置の調整は、このような課題を認識するものではない。
【0007】
本発明は、前述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、フライアイレンズのサイズを変更しても、露光用の光をフライアイレンズに集光させ、所定の照度が得られる近接露光装置、近接露光方法及び照明光学系を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
出願人は、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、フライアイレンズのサイズを交換した際に、フライアイレンズに入射される光の焦点がフライアイレンズの各レンズの入射面からずれてしまうため、露光面において所定の照度が得られないことを発見した。このため、出願人は、下記の構成によって上記課題を解決する手法を見出した。
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
(1) 基板を保持する基板保持部と、
前記基板と対向するように、マスクを保持するマスク保持部と、
前記マスクに向けてパターン露光用の光を照射する照明光学系と、
を備え、
前記基板と前記マスクとを近接させた状態で、前記照明光学系からの露光用の光を、前記マスクを介して前記基板に照射して、前記基板の露光面に前記マスクのパターンを露光転写する近接露光装置であって、
前記照明光学系を構成する部品として、集光鏡と、ランプと、交換可能な複数のフライアイレンズと、を有し、
前記集光鏡と、前記ランプと、前記フライアイレンズとは、いずれも位置調整可能に構成されており、
前記露光面での照度を検出するセンサを備え、さらに、
使用される前記フライアイレンズのサイズに応じて前記照明光学系を構成する部品の少なくとも一つの位置を調整し、前記露光用の光を前記フライアイレンズに集光させることによって、前記センサが所定の照度を検出するように制御される制御部を有することを特徴とする近接露光装置。
(2) 使用される前記フライアイレンズに応じて前記集光鏡の位置を調整し、前記露光用の光を前記フライアイレンズに集光させることによって、前記露光面にて所定の照度が得られることを特徴とする(1)に記載の近接露光装置。
(3) 使用される前記フライアイレンズに応じて前記フライアイレンズの位置を調整し、前記露光用の光を前記フライアイレンズに集光させることによって、前記露光面にて所定の照度が得られることを特徴とする(1)に記載の近接露光装置。
(4) 使用される前記フライアイレンズに応じて前記ランプの位置を調整し、前記露光用の光を前記フライアイレンズに集光させることによって、前記露光面にて所定の照度が得られることを特徴とする(1)に記載の近接露光装置。
(5) 基板とマスクとを近接させた状態で、露光用の光を前記マスクを介して前記基板に照射して、前記基板の露光面に前記マスクのパターンを転写する近接露光装置に使用され、前記マスクに向けてパターン露光用の光を照射する照明光学系であって、
前記照明光学系を構成する部品として、集光鏡と、ランプと、交換可能な複数のフライアイレンズと、を有し、
前記集光鏡と、前記ランプと、前記フライアイレンズとは、いずれも位置調整可能に構成されており、
前記露光面での照度を検出するセンサを備え、さらに、
使用される前記フライアイレンズのサイズに応じて前記照明光学系を構成する部品の少なくとも一つの位置を調整し、前記露光用の光を前記フライアイレンズに集光させることによって、前記センサが所定の照度を検出するように制御される制御部を有することを特徴とする照明光学系。
(6) 使用される前記フライアイレンズに応じて前記集光鏡の位置を調整することによって、前記露光用の光を前記フライアイレンズに集光させることによって、前記露光面にて所定の照度が得られることを特徴とする(5)に記載の照明光学系。
(7) 使用される前記フライアイレンズに応じて前記フライアイレンズの位置を調整し、前記露光用の光を前記フライアイレンズに集光させることによって、前記露光面にて所定の照度が得られることを特徴とする(5)に記載の照明光学系。
(8) 使用される前記フライアイレンズに応じて前記集光鏡と、前記ランプと、前記フライアイレンズと、のうち少なくとも一つの位置を調整し、前記露光用の光を前記フライアイレンズに集光させることによって、前記露光面にて所定の照度が得られることを特徴とする(5)に記載の照明光学系。
(9) 基板を保持する基板保持部と、
前記基板と対向するように、マスクを保持するマスク保持部と、
前記マスクに向けてパターン露光用の光を照射する照明光学系と、
を備え、
前記基板と前記マスクとを近接させた状態で、前記照明光学系からの露光用の光を、前記マスクを介して前記基板に照射して、前記基板の露光面に前記マスクのパターンを露光転写する近接露光方法であって、
前記照明光学系を構成する部品として、集光鏡と、ランプと、交換可能な複数のフライアイレンズと、を有し、
前記集光鏡と、前記ランプと、前記フライアイレンズとは、いずれも位置調整可能に構成されており、
前記露光面での照度を検出するセンサを備え、さらに、
使用される前記フライアイレンズのサイズに応じて前記照明光学系を構成する部品の少なくとも一つの位置を調整し、前記露光用の光を前記フライアイレンズに集光させることによって、前記センサが所定の照度を検出することを特徴とする近接露光方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の近接露光装置、近接露光方法及び照明光学系によれば、フライアイレンズ等のサイズを変更しても、使用されるフライアイレンズに応じて照明光学系を構成する部品の少なくとも一つの位置を調整して、フライアイレンズ等に光を集光させることができるため、基板の露光面にて所定の照度を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る近接露光装置を説明するための一部分解斜視図である。
【
図4】
図1に示す近接露光装置の照明光学系とマスクと基板との関係を示す図である。
【
図5】
図1に示したイ矢視図に示したフライアイレンズをスライドして交換することを示す図である。
【
図6】本発明の第1実施形態に係る照明光学系の模式図である。
【
図7】フライアイレンズを交換した際の露光面での照度について説明する図である。
【
図8】本発明の第2実施形態に係る照明光学系の模式図である。
【
図9】本発明の第3実施形態に係る照明光学系の模式図である。
【
図10】本発明の第4実施形態に係る照明光学系の模式図である
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の各実施形態に係る近接露光装置及び近接露光方法を図面に基づいて詳細に説明する。
【0012】
(第1実施形態)
図1及び
図2に示すように、第1実施形態の近接露光装置PEは、マスクMを保持するマスクステージ10と、ガラス基板(以下、単に「基板W」とも称する。)Wを保持する基板ステージ20と、パターン露光用の光を照射する照明光学系70(
図4参照)と、を備えている。
【0013】
なお、基板Wは、マスクMに対向配置されており、このマスクMに描かれたマスクパターンを露光転写すべく表面(マスクMの対向面側)にレジストが塗布されている。
【0014】
マスクステージ10は、中央部に矩形形状の開口11aが形成されるマスクステージベース11と、マスクステージベース11の開口11aにX軸,Y軸,θ方向に移動可能に装着されるマスク保持部であるマスク保持枠12と、マスクステージベース11の上面に設けられ、マスク保持枠12をX軸,Y軸,θ方向に移動させて、マスクMの位置を調整するマスク駆動機構16と、を備える。
【0015】
マスクステージベース11は、装置ベース50上に立設される支柱51、及び支柱51の上端部に設けられるZ軸移動装置52によりZ軸方向に移動可能に支持され(
図2参照)、基板ステージ20の上方に配置される。
【0016】
図3に示すように、マスクステージベース11の開口11aの周縁部の上面には、平面ベアリング13が複数箇所配置されており、マスク保持枠12は、その上端外周縁部に設けられるフランジ12aを平面ベアリング13に載置している。これにより、マスク保持枠12は、マスクステージベース11の開口11aに所定のすき間を介して挿入されるので、このすき間分だけX軸,Y軸,θ方向に移動可能となる。
【0017】
また、マスク保持枠12の下面には、マスクMを保持するチャック部14が間座15を介して固定されている。このチャック部14には、マスクMのマスクパターンが描かれていない周縁部を吸着するための複数の吸引ノズル14aが開設されており、マスクMは、吸引ノズル14aを介して図示しない真空式吸着装置によりチャック部14に着脱自在に保持される。また、チャック部14は、マスク保持枠12と共にマスクステージベース11に対してX軸,Y軸,θ方向に移動可能である。
【0018】
マスク駆動機構16は、マスク保持枠12のX軸方向に沿う一辺に取り付けられる2台のY軸方向駆動装置16yと、マスク保持枠12のY軸方向に沿う一辺に取り付けられる1台のX軸方向駆動装置16xと、を備える。
【0019】
Y軸方向駆動装置16yは、マスクステージベース11上に設置され、Y軸方向に伸縮するロッド16bを有する駆動用アクチュエータ(例えば、電動アクチュエータ等)16aと、ロッド16bの先端にピン支持機構16cを介して連結されるスライダ16dと、マスク保持枠12のX軸方向に沿う辺部に取り付けられ、スライダ16dを移動可能に取り付ける案内レール16eと、を備える。なお、X軸方向駆動装置16xも、Y軸方向駆動装置16yと同様の構成を有する。
【0020】
そして、マスク駆動機構16では、1台のX軸方向駆動装置16xを駆動させることによりマスク保持枠12をX軸方向に移動させ、2台のY軸方向駆動装置16yを同等に駆動させることによりマスク保持枠12をY軸方向に移動させる。また、2台のY軸方向駆動装置16yのどちらか一方を駆動することによりマスク保持枠12をθ方向に移動(Z軸回りの回転)させる。
【0021】
さらに、マスクステージベース11の上面には、
図1に示すように、マスクMと基板Wとの対向面間のギャップgを測定するギャップセンサ17と、チャック部14に保持されるマスクMの取り付け位置を確認するためのアライメントカメラ18と、が設けられる。これらギャップセンサ17及びアライメントカメラ18は、移動機構19を介してX軸,Y軸方向に移動可能に保持され、マスク保持枠12内に配置される。
【0022】
また、マスク保持枠12上には、
図1に示すように、マスクステージベース11の開口11aのX軸方向の両端部に、マスクMの両端部を必要に応じて遮蔽するアパーチャブレード38が設けられる。このアパーチャブレード38は、モータ、ボールねじ、及びリニアガイド等からなるアパーチャブレード駆動機構39によりX軸方向に移動可能とされて、マスクMの両端部の遮蔽面積を調整する。なお、アパーチャブレード38は、開口11aのX軸方向の両端部だけでなく、開口11aのY軸方向の両端部に同様に設けられている。
【0023】
基板ステージ20は、
図1及び
図2に示すように、基板Wを保持する基板保持部21と、基板保持部21を装置ベース50に対してX軸,Y軸,Z軸方向に移動する基板駆動機構22と、を備える。基板保持部21は、図示しない真空吸着機構によって基板Wを着脱自在に保持する。基板駆動機構22は、基板保持部21の下方に、Y軸テーブル23、Y軸送り機構24、X軸テーブル25、X軸送り機構26、及びZ−チルト調整機構27と、を備える。
【0024】
Y軸送り機構24は、
図2に示すように、リニアガイド28と送り駆動機構29とを備えて構成され、Y軸テーブル23の裏面に取り付けられたスライダ30が、装置ベース50上に延びる2本の案内レール31に不図示の転動体を介して跨架されると共に、モータ32とボールねじ装置33とによってY軸テーブル23を案内レール31に沿って駆動する。
【0025】
なお、X軸送り機構26もY軸送り機構24と同様の構成を有し、X軸テーブル25をY軸テーブル23に対してX方向に駆動する。また、Z−チルト調整機構27は、くさび状の移動体34,35と送り駆動機構36とを組み合わせてなる可動くさび機構をX方向の一端側に1台、他端側に2台配置することで構成される。なお、送り駆動機構29,36は、モータとボールねじ装置とを組み合わせた構成であってもよく、固定子と可動子とを有するリニアモータであってもよい。また、Z-チルト調整機構27の設置数は任意である。
【0026】
これにより、基板駆動機構22は、基板保持部21をX方向及びY方向に送り駆動するとともに、マスクMと基板Wとの対向面間のギャップを微調整するように、基板保持部21をZ軸方向に微動且つチルト調整する。
【0027】
基板保持部21のX方向側部とY方向側部にはそれぞれバーミラー61,62が取り付けられ、また、装置ベース50のY方向端部とX方向端部には、計3台のレーザー干渉計63,64,65が設けられている。これにより、レーザー干渉計63,64,65からレーザー光をバーミラー61,62に照射し、バーミラー61,62により反射されたレーザー光を受光して、レーザー光とバーミラー61,62により反射されたレーザー光との干渉を測定して基板ステージ20の位置を検出する。
【0028】
図4に示すように、照明光学系70を構成する部品としては、発光部としての超高圧水銀ランプ71と、このランプ71から発生された露光用の光に指向性をもたせて射出する集光鏡72と、を含む光源部73と、光源部73からの露光用の光をフライアイレンズ74の方へ光路の向きを変える平面鏡75と、入射した光の強度を均一化する複数のレンズセルからなるフライアイレンズ74と、入射した露光用の光に対して所定のコリメーション角を持たせるコリメーションミラー76と、を有する。
【0029】
光源部73からの光は、平面鏡75により、強度を均一化する複数のレンズセルからなるフライアイレンズ74の方へ光路の向きを変えて集光される。フライアイレンズ74の出射面から出射された露光用の光は、コリメーションミラー76によって反射されて、所定のコリメーション角を持ってマスクMに入射する。
【0030】
図5に示すように、照明光学系70は、それぞれサイズの異なるフライアイレンズ74a、74b、74cを3枚備えている。3枚のフライアイレンズ74a、74b、74cは、それぞれスライドして交換することを可能であるとしている。なお、第一実施形態において、照明光学系70にてフライアイレンズ74は3枚としている。しかし、フライアイレンズの枚数は3枚に限らず、複数あればよい。
【0031】
このような近接露光装置PEにおいて、
図4に示すように、基板ステージ20上に載置された基板Wと、マスク保持枠12に保持された、マスクパターンを有するマスクMとが、これらの対向面間のギャップを例えば100〜300μm程度の隙間に調整されて近接対向配置される。そして、光源部73からの露光用の光が平面鏡75によってフライアイレンズ74で集光される。フライアイレンズ74から出射される露光用の光はコリメーションミラー76で反射されて所定のコリメーション角を持った平行光とされてマスクMに入射する。そして、マスクMを透過した露光用の光は、基板Wの表面に塗布されたレジストを感光させてマスクMのマスクパターンが基板Wに露光転写される。
従って、入射される露光用の光をフライアイレンズ74に集光させることで、所定の照度(即ち、実施形態では、最大の照度)を持った光が露光すべき対象となる基板Wの露光面Aに転写される。
【0032】
ここで、第1実施形態の照明光学系70では、
図6に示すように、集光鏡72の位置を調整可能に構成されている。そして、フライアイレンズ74のサイズを交換した際、露光面Aに設置している不図示のセンサにより露光用の光の照度を測定し、平面鏡75から入射された光(点線)がフライアイレンズ74に集光しない場合には、このセンサが所定の照度を検出するまで、露光用の光(一点鎖線)がフライアイレンズ74に集光するように、不図示の制御部によって、集光鏡72の位置を調整する。即ち、光源部73から照射された光の焦点が、フライアイレンズ74の各レンズの入射面に位置するように、集光鏡72の位置を調整する。例えば、
図7に示すように、サイズの大きなフライアイレンズ74aにおける露光面Aでの照度I
1に対して、単にサイズの小さなフライアイレンズ74bに交換すると、露光面Aでの照度がI
2まで低下してしまう。このため、上述した手法で、露光面Aでの照度が最大値I
3となるように、集光鏡72の位置を調整している。これにより、フライアイレンズ74は異なるサイズに交換されても、基板WとマスクMとを所定のギャップgに近接させた状態で、照明光学系70からの露光用の光が、露光面Aにおいて所定の照度を得ることができる。
【0033】
以上説明したように、本実施形態の近接露光装置、近接露光方法及び照明光学系70によれば、照明光学系70を構成する部品として、集光鏡72と、ランプ71と、交換可能な複数のフライアイレンズ74a、74b、74cと、を有し、使用されるフライアイレンズ74a、74b、74cに応じて集光鏡72の位置を調整し、露光用の光をフライアイレンズ74a、74b、74cに集光させることによって、露光面Aにて所定の照度を得る。したがって、露光精度に応じていずれのフライアイレンズ74a、74b、74cを用いた場合であっても、露光面Aにて所定の照度を得ることができ、タクトタイムの短縮を図った露光を実現することができる。
【0034】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る近接露光装置について、
図8を参照して説明する。なお、本実施形態では、照明光学系70において、露光用の光をフライアイレンズ74に集光させるために、フライアイレンズ74の位置を調整する点で、第1実施形態の近接露光装置と異なる。
【0035】
即ち、第2実施形態の照明光学系70では、
図8に示すように、フライアイレンズ74の位置を調整可能に構成されている。そして、フライアイレンズ74のサイズを交換した際、露光面Aに設置している不図示センサにより露光用の光の照度を測定し、平面鏡75から入射された露光用の光(点線)がフライアイレンズ74に集光しない場合には、このセンサが所定の照度を検出するまで、露光用の光(一点鎖線)がフライアイレンズ74に集光するように、不図示の制御部によって、フライアイレンズ74の位置を調整する。即ち、光源部73から照射された光の焦点が、フライアイレンズ74の各レンズの入射面に位置するように、フライアイレンズ74の位置を調整する。これにより、フライアイレンズ74は異なるサイズに交換されても、基板WとマスクMとを所定のギャップgに近接させた状態で、照明光学系70からの露光用の光が、露光面Aにおいて所定の照度を得ることができる。
その他の構成及び作用については、第1実施形態のものと同様である。
【0036】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係る近接露光装置について、
図9を参照して説明する。なお、本実施形態では、照明光学系70において、露光用の光をフライアイレンズ74に集光させるために、ランプ71の位置を調整する点で、第1及び第2実施形態の近接露光装置と異なる。
【0037】
即ち、第3実施形態の照明光学系70では、
図9に示すように、ランプ71の位置を調整可能に構成されている。そして、フライアイレンズ74のサイズを交換した際、露光面Aに設置している不図示センサにより、露光用の光の照度を測定し、平面鏡75から入射された露光用の光(点線)がフライアイレンズ74に集光しない場合には、このセンサが所定の照度を検出するまで、光(一点鎖線)がフライアイレンズ74に集光するように、不図示の制御部によって、ランプ71の位置を調整する。即ち、光源部73から照射された光の焦点が、フライアイレンズ74の各レンズの入射面に位置するように、ランプ71の位置を調整する。これにより、フライアイレンズ74は異なるサイズに交換されても、基板WとマスクMとを所定のギャップgに近接させた状態で、照明光学系70からの露光用の光が、露光面Aにおいて所定の照度を得ることができる。
その他の構成及び作用については、第1実施形態のものと同様である。
【0038】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態に係る近接露光装置について、
図10を参照して説明する。本実施形態は、ランプ71と、集光鏡72と、フライアイレンズ74のすべての位置を調整可能に構成されている。そして、フライアイレンズ74のサイズを交換した際、露光面Aに設置している不図示センサにより、露光用の光の照度を測定し、平面鏡75から入射された露光用の光(点線)がフライアイレンズ74に集光しない場合には、このセンサが所定の照度を検出するまで、露光用の光(一点鎖線)がフライアイレンズ74に集光するように、不図示の制御部によって、ランプ71と、集光鏡72と、フライアイレンズ74との位置を調整する。即ち、光源部73から照射された光の焦点が、フライアイレンズ74の各レンズの入射面に位置するように、ランプ71と、集光鏡72と、フライアイレンズ74との位置を調整する。これにより、フライアイレンズ74はスライドして交換されても、基板WとマスクMとを所定のギャップに近接させた状態で、照明光学系70からの露光用の光が、露光面Aにおいて所定の照度を得ることができる。
その他の構成及び作用については、第1実施形態のものと同様である。
【0039】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものでなく、適宜、変更、改良などが可能である。
例えば、本発明では、使用されるフライアイレンズ74a、74b、74cに応じて照明光学系70を構成する部品の少なくとも一つの位置を調整し、露光用の光をフライアイレンズ74に集光させることによって、露光面Aにて所定の照度が得られるように設定すればよい。
【0040】
また、上記実施形態では、本発明のマスクを近接露光装置に適用した例について説明したが、これに限定されず、近接スキャン露光装置にも同様に適用することができ、同様の効果を奏する。近接スキャン露光装置は、マスクMに近接して浮上・支持されながら、所定方向に搬送される略矩形状の基板Wに対して、マスクパターンを形成した複数のマスクMを介して露光用の光を照射し、基板Wにマスクパターンを露光転写するものであり、基板Wが複数のマスクMに対して相対移動しながら露光転写が行われるスキャン露光方式を採用している。
【符号の説明】
【0041】
12 マスク保持枠(マスク保持部)
21 基板保持部
70 照明光学系
71 ランプ
72 集光鏡
73 光源部
74 フライアイレンズ
g マスクと基板との対向面間のギャップ
M マスク
PE 近接露光装置
W ガラス基板(基板)
A 露光面