(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記補正ユニットが、前記残差にゲイン値を乗算して、前記補正信号を生成する、ゲインユニットを含み、前記スイッチユニットが、前記プロセス変数計測信号の新しい値が利用可能である前記予測手段ユニットの実行サイクル中に前記ゲインユニットに新しいゲイン値を求めさせ、前記プロセス変数計測信号の新しい値が利用可能ではない前記予測手段ユニットの実行サイクル中に前記ゲインユニットに以前に計算されたゲイン値を使用させるように動作する、請求項6に記載の制御システム。
前記プロセスモデルが、前記最初のプロセス変数推定を生成するためにむだ時間を伴うプロセスをモデリングするための遅延ユニットを含む、請求項6に記載の制御システム。
前記予測手段ユニットが、前記さらなるプロセス変数推定を生成するためにむだ時間を伴うプロセスをモデル化するさらなるプロセスモデルを含み、前記プロセスモデルが、前記最初のプロセス変数推定を生成するためにむだ時間を伴わないプロセスをモデル化するプロセスモデルである、請求項11に記載の制御システム。
前記予測手段ルーチンを実現することが、前記プロセスモデルにおけるプロセスモデル不正確さを補正しつつ前記プロセス変数推定を生成することによって観測手段ルーチンを実施することを含む、請求項14に記載の方法。
前記の数の実行サイクルの各々中に前記補正信号を生成するために前記残差にゲイン値を乗算すること、及び前記プロセス変数計測信号の新しい値が利用可能である実行サイクル中に新しいゲイン値を求めること、及び前記プロセス変数計測信号の新しい値が利用可能ではない実行サイクル中に以前に計算されたゲイン値を用いることをさらに含む、請求項18に記載の方法。
前記補正信号を求めることが、さらなるプロセスモデルを用いて、さらなるプロセス変数推定を生成すること、及び前記プロセス変数計測信号の新しい値が利用可能である実行サイクル中に、新しい残差を、前記さらなるプロセス変数推定と前記プロセス変数計測信号の値の差として計算し、前記補正信号として前記新しい残差を用いること、及び前記プロセス変数計測信号の新しい値が利用可能ではない実行サイクル中に前記補正信号として以前に計算された残差を用いることを含む、請求項14に記載の方法。
前記さらなるプロセスモデルを用いることが、前記さらなるプロセス変数推定を生成するために前記さらなるプロセスモデルとしてむだ時間を伴うプロセスをモデル化するプロセスモデルを用いることを含み、前記最初のプロセス変数推定を生成することが、むだ時間を伴わないプロセスをモデル化するプロセスモデルを用いることを含む、請求項22に記載の方法。
前記各実行サイクル中に前記残差にゲイン値を乗算して、前記補正信号を生成すること、及び前記予測手段ルーチンで前記プロセス変数計測信号の新しい値が利用可能である実行サイクル中に新しいゲイン値を求めること、及び前記予測手段ルーチンで前記プロセス変数計測信号の新しい値が利用可能ではない実行サイクル中に以前に計算されたゲイン値を用いることをさらに含む、請求項25に記載の方法。
前記補正信号を求めることが、さらなるプロセスモデルを用いて、さらなるプロセス変数推定を生成すること、及び前記予測手段ルーチンで前記プロセス変数計測信号の新しい値が利用可能である実行サイクル中に、新しい残差を、前記さらなるプロセス変数推定と前記プロセス変数計測信号の値の差として計算し、前記補正信号として前記新しい残差を用いること、及び前記予測手段ルーチンで前記プロセス変数計測信号の新しい値が利用可能ではない実行サイクル中に前記補正信号として以前に計算された残差値を用いることを含む、請求項24に記載の方法。
前記さらなるプロセスモデルを用いることが、前記さらなるプロセス変数推定を生成するために前記さらなるプロセスモデルとしてむだ時間を伴うプロセスをモデル化するプロセスモデルを用いることを含み、前記最初のプロセス変数推定を生成することが、むだ時間を伴わないプロセスをモデル化するプロセスモデルを用いることを含む、請求項27に記載の方法。
前記インターフェースが、前記プロセス変数計測信号の新しい値が前記インターフェースで利用可能である実行サイクル中に新しい値フラグを発生させ、前記スイッチユニットが、前記各実行サイクル中に前記残差を計算するのに前記プロセス変数計測信号の新しい値又は前記プロセス変数計測信号の最新の受信した値のいずれかを前記第1のコンバイナに提供するために新しい値フラグを使用する、請求項30に記載のカルマンフィルタ。
前記ゲインユニットが前記残差に前記ゲイン値を乗算して、前記補正信号を生成し、前記ゲインユニットが、前記プロセス変数計測信号の新しい値が利用可能である実行サイクル中に新しいゲイン値を求め、前記ゲインユニットが、前記プロセス変数計測信号の新しい値が利用可能ではない実行サイクル中に以前に計算されたゲイン値を用いる、請求項31に記載のカルマンフィルタ。
前記補正ユニットが、前記最初のプロセス変数推定を前記プロセス変数計測信号の単位と整合するように変換する変換ユニットを含み、前記補正ユニットの第1のコンバイナが、前記残差を、前記受信したプロセス変数計測信号と前記変換された最初のプロセス変数推定の差として計算することによって前記受信したプロセス変数計測信号を前記最初のプロセス変数推定と組み合わせる、請求項29に記載のカルマンフィルタ。
その数の実行サイクルの各々中にプロセス変数推定を生成することをコンピュータプロセッサ上で実行サイクルレートで実行するように適合されたカルマンフィルタであって、
一時的でないコンピュータ可読媒体に格納され、実行サイクルレートよりも低頻度にプロセス変数計測信号を受信し且つプロセスを制御するのに用いられる制御信号を受信することをプロセッサ上で実行するように適合された、インターフェースルーチンと、
前記一時的でないコンピュータ可読媒体に格納され、各実行サイクル中に前記制御信号を用いて最初のプロセス変数推定を生成することを前記プロセッサ上で実行するように適合された、プロセスモデリングルーチンと、
前記一時的でないコンピュータ可読媒体に格納され、残差を、受信したプロセス変数計測信号と前記最初のプロセス変数推定の差として計算すること及び補正信号を生成するために前記残差をゲイン値と組み合わせることを前記プロセッサ上で実行するように適合された、補正ルーチンと、
前記一時的でないコンピュータ可読媒体に格納され、前記最初のプロセス変数推定を前記補正信号と組み合わせて前記プロセス変数推定を生成することを前記プロセッサ上で実行するように適合された、コンバイナルーチンと、
を含み、前記補正ルーチンが、前記プロセス変数計測信号の新しい値が利用可能である実行サイクル中に、前記残差を、前記プロセス変数計測信号の新たに受信した値と前記最初のプロセス変数推定の差として計算すること、及び前記プロセス変数計測信号の新しい値が利用可能ではない実行サイクル中に、前記残差を、前記プロセス変数計測信号の以前に受信した値と前記最初のプロセス変数推定の差として計算することを実行する、
カルマンフィルタ。
前記プロセス変数計測信号の新しい値が利用可能である実行サイクル中にインターフェースルーチンが新しい値フラグを発生させ、前記スイッチングルーチンが、前記各実行サイクル中に前記残差を計算するのにさらなるコンバイナルーチンに前記プロセス変数計測信号の新しい値又は前記プロセス変数計測信号の最新の受信した値のいずれかを提供するために新しい値フラグを使用する、請求項37に記載のカルマンフィルタ。
前記補正ルーチンが前記残差に前記ゲイン値を乗算して、前記補正信号を生成し、前記補正ルーチンが、前記プロセス変数計測信号の新しい値が利用可能である実行サイクル中に新しいゲイン値を求め、前記補正ルーチンが、前記プロセス変数計測信号の新しい値が利用可能ではない実行サイクル中に以前に計算されたゲイン値を用いる、請求項36に記載のカルマンフィルタ。
【発明を実施するための形態】
【0032】
開示されるシステム及び方法は種々の形態での実施形態が可能であるが、本開示が例示説明となることを意図され且つ本発明を本明細書で説明され及び例示説明される具体的な実施形態に限定することを意図されないという理解のもとで、本発明の具体的な実施形態が図面で例示説明されている(及び以下で説明する)。
【0033】
図1は、プロセスの非常に正確な制御を依然として提供しながら、間欠的な、遅い、又は非定時的なプロセス変数計測値の受取りに基づいて、予測手段に基づく制御を用いて制御ルーチンを実現するのに用いられ得るプロセス制御システム10を描いている。一般的に言えば、
図1のプロセス制御システム10は、データヒストリアン12に、及びそれぞれがディスプレイ画面14を有する1つ又は複数のホストワークステーション又はコンピュータ13(いかなるタイプのパーソナルコンピュータ、ワークステーションなどであってもよい)に接続されるプロセスコントローラ11を含む。コントローラ11はまた、入力/出力(I/O)カード26及び28を介してフィールドデバイス15〜22にハードワイヤード通信接続を通じて接続される。データヒストリアン12は、データを記憶するためのあらゆる所望のタイプのメモリ及びあらゆる所望の又は公知のソフトウェア、ハードウェア、又はファームウェアを有するあらゆる所望のタイプのデータコレクションユニットであってもよく、別個のデバイスとして示されているが、代わりに又は加えてワークステーション13又はサーバのような別のコンピュータデバイスのうちの1つの一部であってもよい。単なる例として、Emerson Process Managementによって販売されるDeltaV(商標)コントローラであってもよいコントローラ11は、例えばイーサネット接続であってもよい通信ネットワーク29を介してホストコンピュータ13に及びデータヒストリアン12に通信可能に接続される。
【0034】
コントローラ11は、例えば、標準4〜20mA通信、及び/又はFOUNDATION(登録商標)Fieldbus通信プロトコル、HART(登録商標)通信プロトコルなどのようなあらゆるスマート通信プロトコルを用いるあらゆる通信を含むハードワイヤード通信を実現するためにあらゆる所望のハードウェア、ソフトウェア及び/又はファームウェアの使用を含む可能性があるハードワイヤード通信方式を用いてフィールドデバイス15〜22に通信可能に接続されるものとして示される。フィールドデバイス15〜22は、センサ、バルブ、送信器、ポジショナなどのようなあらゆるタイプのデバイスであってもよく、一方、I/Oカード26及び28は、いかなる所望の通信プロトコル又はコントローラプロトコルに準拠するあらゆるタイプのI/Oデバイスであってもよい。
図1で示される実施形態では、フィールドデバイス15〜18は、アナログラインによってI/Oカード26と通信する標準4〜20mAデバイスであり、一方、フィールドデバイス19〜22は、Fieldbusプロトコル通信を用いてデジタルバスによってI/Oカード28と通信するFieldbusフィールドデバイスのようなスマートデバイスである。もちろん、フィールドデバイス15〜22は、将来開発される任意の規格又はプロトコルを含む、いかなる他の所望の規格(単数又は複数)又はプロトコルに準拠していてもよい。
【0035】
加えて、プロセス制御システム10は、制御されるべきプラントに配置されるいくつかの無線フィールドデバイス60〜64及び71を含む。フィールドデバイス60〜64は、
図1では送信器(例えば、プロセス変数センサ)として描かれており、一方、フィールドデバイス71は、バルブとして描かれている。しかしながら、これらのフィールドデバイスは、物理的制御挙動を実施するために又はプロセス内の物理的パラメータを計測するためにプロセス内に配置されるいかなる他の所望のタイプのデバイスであってもよい。現在公知の又は後で開発されるハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又はいかなる組み合わせをも含むいかなる所望の無線通信機器を用いてコントローラ11とフィールドデバイス60〜64及び71との間の無線通信が確立されてもよい。
図1で示される事例では、アンテナ65は、送信器60に連結され及びその無線通信を行うことに特化され、一方、無線ルータ又はアンテナ67を有する他のモジュール66は、送信器61〜64の無線通信を一括に取り扱うために連結される。同様に、アンテナ72は、バルブ71の無線通信を行うためにバルブ71に連結される。フィールドデバイス又は関連するハードウェア60〜64、66、及び71は、コントローラ11と送信器60〜64とバルブ71との間の無線通信を実施するためにアンテナ65、67、及び72を介して無線信号を受信する、デコードする、ルーティングする、エンコードする、及び送信するのに適切な無線通信プロトコルによって用いられるプロトコルスタック動作を実施してもよい。
【0036】
所望の場合、送信器60〜64は、種々のプロセスセンサ(送信器)とコントローラ11との間に唯一のリンクを構成してもよく、したがって製品品質及び流れが損なわれないことを保障するためにコントローラ11に正確な信号を送信することを担う。送信器60〜64は、しばしばプロセス変数送信器(process variable transmitter:PVT)と呼ばれ、したがってプラントの制御における大きな役割を果たす可能性がある。加えて、バルブ又は他のフィールドデバイス71は、コントローラ11に、バルブ71内のセンサによって計測される計測値を提供してもよく、若しくはバルブ71内で実行される機能ブロックFB1及びFB2によって収集され、計算され、又は他の方法で生成されるデータを含むバルブ71によって生成される又は計算される他のデータをバルブ71の動作の一部として提供してもよい。もちろん、バルブ71はまた、物理的パラメータ、例えば、プラント内の流れをもたらすためにコントローラ11から制御信号を受信してもよい。
【0037】
コントローラ11は、それぞれがそれぞれのアンテナ75及び76に接続される1つ又は複数のI/Oデバイス73及び74に連結され、これらのI/Oデバイスとアンテナ73〜76は、1つ又は複数の無線通信ネットワークを介して無線フィールドデバイス61〜64及び71と無線通信を行うために送信器/受信器として動作する。フィールドデバイス(例えば、送信器60〜64及びバルブ71)間の無線通信は、WirelessHART(登録商標)プロトコル、Emberプロトコル、WiFiプロトコル、IEEE無線規格などのような1つ又は複数の公知の無線通信プロトコルを用いて行われてもよい。さらにまた、I/Oデバイス73及び74は、コントローラ11と送信器60〜64とバルブ71との間の無線通信を実現するためにアンテナ75及び76を介して無線信号を受信する、デコードする、ルーティングする、エンコードする、及び送信するのにこれらの通信プロトコルによって用いられるプロトコルスタック動作を実現してもよい。
【0038】
図1で示されるように、コントローラ11は、メモリ78に格納される1つ又は複数のプロセス制御ルーチン(又はあらゆるモジュール、ブロック、又はそのサブルーチン)を実現する又は監督するプロセッサ77を含む。メモリ78に格納されるプロセス制御ルーチンは、プロセスプラント内に実装される制御ループを含んでいてもよく又はこれと関連付けられてもよい。一般的に言えば、コントローラ11は、1つ又は複数の制御ルーチンを実行し、プロセスをあらゆる所望の様態(単数又は複数)で制御するためにフィールドデバイス15〜22、60〜64、及び71、ホストコンピュータ13、及びデータヒストリアン12と通信する。しかしながら、本明細書に記載のいかなる制御ルーチン又はモジュールも、その一部が複数のデバイスにわたって分散された状態で実装され又は実行されてもよいことに留意されたい。結果として、制御ルーチン又はモジュールは、そのように望まれる場合には、異なるコントローラ、フィールドデバイス(例えば、スマートフィールドデバイス)、若しくは他のデバイス又は他の制御要素によって実装される部分を有していてもよい。
【0039】
同様に、プロセス制御システム10内に実装されるべき本明細書に記載の制御ルーチン又はモジュールは、ソフトウェア、ファームウェア、ハードウェアなどを含む任意の形態をとり得る。こうした機能性を提供することに関係するあらゆるデバイス又は要素は、ソフトウェア、ファームウェア、又はそれに関連するハードウェアがコントローラ、フィールドデバイス、又はプロセス制御システム10内のどの他のデバイス(又はデバイスの集合体)に配置されるかに関係なく、本明細書では概して「制御要素」と呼ばれ得る。もちろん、制御モジュールは、例えば、任意のコンピュータ可読媒体上に格納されるルーチン、ブロック、又はそのあらゆる要素を含むプロセス制御システムのいかなる一部又は部分であってもよい。こうした制御モジュール、制御ルーチン、又はそのあらゆる一部は、本明細書で概して制御要素と呼ばれるプロセス制御システム10のあらゆる要素又はデバイスによって実装され又は実行されてもよい。さらに、モジュール、又はサブルーチン、サブルーチンの一部(例えばコードのライン)などのような制御手順のあらゆる部分であり得る制御ルーチンが、オブジェクト指向プログラミング、ラダーロジック、シーケンシャルファンクションチャート、機能ブロック図のようなあらゆる所望のソフトウェアフォーマットで、又はあらゆる他のソフトウェアプログラミング言語又は設計パラダイムを用いて実装されてもよい。同様に、制御ルーチンは、例えば、1つ又は複数のEPROM、EEPROM、特定用途向け集積回路(ASIC)、若しくは任意の他のハードウェア要素又はファームウェア要素にハードコード化されてもよい。さらにまた、制御ルーチンは、グラフィカル設計ツールを含むあらゆる設計ツール、又はあらゆる他のタイプのソフトウェア/ハードウェア/ファームウェアプログラミング又は設計ツールを用いて設計されてもよい。結果として、コントローラ11は、制御ストラテジ又は制御ルーチンをいかなる所望の様態で実装するように構成されてもよい。
【0040】
いくつかの実施形態では、コントローラ11は、通称、機能ブロックと呼ばれるものを用いて制御ストラテジ又は方式を実施し、この場合、各機能ブロックは、プロセス制御システム10内でプロセス制御ループを実現するために他の機能ブロック(リンクと呼ばれる通信を介して)と併せて動作する制御ルーチン全体のオブジェクト又は他の部分(例えば、サブルーチン)である。機能ブロックは、典型的に、送信器、センサ、又は他のプロセスパラメータ計測デバイスに関連する入力機能のような入力機能、PID、ファジー論理などを行う制御制御ルーチンに関連する制御機能のような制御機能、又はプロセス制御システム10内のいくつかの物理的機能を果たすためにバルブのようないくつかのデバイスの動作を制御する出力機能のうちの1つを行う。もちろん、ハイブリッド及び他のタイプの機能ブロックが存在し、本明細書で用いられ得る。機能ブロックは、コントローラ11に格納され及びこれによって実行されてもよく、これは機能ブロックが標準4〜20mAデバイス及びHART(登録商標)デバイスのようないくつかのタイプのスマートフィールドデバイスのために用いられ又はこれと関連するときに典型的に当てはまる。代替的に又は加えて、機能ブロックは、フィールドデバイス自体、I/Oデバイス、又はプロセス制御システム10の他の制御要素に格納され又はこれによって実現されてもよく、これは、Fieldbusデバイスを用いるシステムに当てはまる可能性がある。制御システム10の説明は、機能ブロック制御ストラテジを用いて本明細書で概して提供されるが、開示された技術及びシステムはまた、他の規則又はプログラミングパラダイムを用いて実現され又は設計されてもよい。
【0041】
いずれにしても、
図1の分解されたブロック80によって示されるように、コントローラ11は、いくつかの制御モジュール(モジュール82、84、及び86として示される)を含んでいてもよく、各制御モジュールは、1つ又は複数のプロセス制御ループを実現する。この場合、制御モジュール82は、観測手段に基づく制御方式又はルーチン(本明細書では1つのタイプの予測手段に基づく制御方式と呼ばれる)を実現し、制御モジュール84は、予測手段に基づく制御ルーチンを実施する。モジュール82及び84は、バルブのようなプロセス制御デバイス、温度送信器及び圧力送信器のような計測デバイス、又はプロセス制御システム10内のあらゆる他のデバイスと関連付けられ得る適切なアナログ入力(AI)及びアナログ出力(AO)機能ブロックに接続される観測手段(OBS)又は予測手段(PRD)及び単一入力/単一出力に基づくPID制御ブロック(PID)を用いて単一ループ制御を行うものとして示される。複数入力/複数出力制御ループ86はまた、1つ又は複数のAI機能ブロックに通信可能に接続される入力及び1つ又は複数のAO機能ブロックに通信可能に接続される出力を有する進歩した制御ブロック88を含むものとして示されるが、進歩した制御ブロック88の入力及び出力は、他のタイプの入力を受信する及び他のタイプの制御出力を提供するためにいかなる他の所望の機能ブロック又は制御要素に接続されてもよい。進歩した制御ブロック88は、観測手段又は予測手段に基づく制御を含むあらゆるタイプの複数の入力、複数の出力制御方式を実現し得、モデル予測制御(MPC)ブロック、ニューラルネットワークモデリング又は制御ブロック、多変数ファジー論理制御ブロック、リアルタイム−オプティマイザブロックなどを構成し又は含んでいてもよい。
図1で示される機能ブロックは、コントローラ11によって実行されることが可能であり、又は代替的に、例えばワークステーション13のうちの1つ若しくはフィールドデバイス19〜22又は60〜64又は71のうちの1つ又は複数における、プロセス制御システムのいかなる他の処理デバイス又は制御要素にも位置する及びこれによって実行されることも可能であることが理解されるであろう。
【0042】
図1の予測手段/観測手段に基づく制御モジュール82、84、及び86は、これまで、一般に、制御ルーチンの複数の繰返しによる定時的実行のために構成されてきた。従来の事例では、各繰返しは、例えば、送信器又は他のフィールドデバイスによって提供される更新されたプロセス計測によってサポートされる。コントローラの各実行サイクル中の最新のプロセス計測を保証するために定時的実行の各繰返し間でなされる典型的に複数のプロセス計測が存在する。実際には、計測値を制御と同期させるという制約を回避するために、多くの過去のコントローラ(又は制御ループ)は、計測値を2〜10倍オーバーサンプリングするように設計されていた。こうしたオーバーサンプリングは、プロセス計測が制御方式で用いられるその時のものであったことを保障する一助となった。また、制御変動を最小にするために、従来の設計は、フィードバック制御がプロセス応答時間よりも4〜10倍速く実行されるべきであることを規定した。これらの従来の設計要件を満たすために、計測値は、制御実行レートよりもかなり速くサンプリングされる必要があり、これはプロセス応答時間よりもかなり速い又は高いものであった。
【0043】
一般的に言えば、
図1の観測手段/予測手段に基づく制御モジュール(本明細書でより詳細に説明されることになる)は、例えば、間欠的なプロセス変数フィードバック通信だけが存在するプロセスでの制御が可能となるように、又は例えば、プロセス変数計測を行う無線センサ又は送信器(例えば、送信器60〜64のうちの1つ)に電力を与える電力供給からの電力の消費を減らすために、かなり遅いレート、間欠的なレート、又は非定時的なレートでのプロセス変数計測値(計算された値又はシミュレートされた値のような他の値を含む)の伝送を可能にする。この後者の事例では、多くのFieldbus制御方式のように、計測と制御実行が同期される場合であっても、制御の繰返しをプロセス応答よりも4〜10倍速くスケジューリングする従来の手法は、依然として結果的にデータ伝送中に過度の電力消費をもたらす可能性がある。
【0044】
より詳細に後述するように、本明細書に記載の予測手段に基づく制御技術は、プロセス制御システム10において、特にコントローラ11において、並びに制御システム10の伝送デバイス及び他のフィールドデバイスにおいて、これらのデバイスが新しい計測値又は他の値を非定時的に又は間欠的に伝送する又は受信するときに、例えば或る条件が満たされるときに特に有用である。例えば、新しい計測値は、プロセス変数が所定の閾値(例えば、有意と判定される量)を超えて変化したかどうかに基づいて伝送されてもよい。例えば、新しい計測値と最後に通信された計測値との差異の大きさが指定された分解能よりも大きい場合、計測値が更新され又は送信されることになるようにトリガが生成されてもよい。離散計測(例えば、オン/オフ計測、デジタルビット、若しくは状態又は離散値の所定の組のうちの1つが期待される又は計測される他の状態計測)を取り扱うときに、1つの状態から別の状態への変化は、一般に閾値又は分解能の大きさを超過すると考えられる。
【0045】
他の場合には、差異が指定された分解能(前述の場合と同様)を超過するときに、並びに最後の通信からの時間が所定のリフレッシュ時間を超過するときに、新しい計測値が伝送されてもよい。ここで、プロセス変数の変化又はデフォルト時間の経過のいずれかが、結果的に計測値の伝送をもたらし得る。計測値の伝送に関するリフレッシュ時間又はデフォルト時間は、プロセスが遅く動いているか又は迅速に応答するか(例えばプロセス時定数によって示される場合の)に応じてより頻繁な又はあまり頻繁でない更新が適切な場合があるので、制御ループ間で変化する可能性がある。いくつかの場合、時定数に基づいて制御ループの調整中に判定がなされ、その後、所望に応じて調節されてもよい。例えば、信号の計測又は送信間の時間は、変数又は値の計測される状態に依存する可能性があり、この場合、計測周期は、監視されているデバイス、機器、又はプロセスの状態を反映するように調節することができる。いずれの場合にも、デフォルト時間又はリフレッシュ時間は、計測値更新のない時間周期後に完全性チェック又はオーバーライドとして作用する。こうしたチェックは、例えば、目標へのプロセス変数の最終駆動を容易にするのに有用な場合がある。
【0046】
一方では、計測値を得ることを担当する送信器、センサ、又は他のフィールドデバイスは、計測値を従来の4〜10倍のプロセス応答時間のような任意の所望のレートで依然として定時的にサンプリングする可能性がある。通信技術は、次いで、サンプリングされた値がコントローラ11に伝送されるかどうかを判定する。
【0047】
しかしながら、標準制御設計(例えば、z変換、差分方程式などを用いる)及び比例−積分−微分(PID)制御のような制御ルーチンのデジタル実装における基礎をなす仮定は、制御アルゴリズムが定時的に実行されるということである。各実行サイクル中に計測値が更新されない場合、ルーチンの積分(又はリセット)部分又は寄与のようなステップは適切でない場合がある。例えば、制御アルゴリズムが最後の古い計測値を用いて実行を続行する場合、出力は、リセット調整及び最後の計測値とセットポイントとの間の誤差に基づいて動き続けるであろう。一方、新しい計測値が通信されるときにだけ制御ルーチンが実行される場合、セットポイント変化への制御応答及び計測される外乱に対するフィードフォワードアクションを遅延し得る。制御ルーチンはまた、最後の繰返しから経過した時間に基づく計算を含んでいてもよい。しかしながら、非定時的な及び/又はあまり頻繁でない計測値の伝送により、制御実行周期(すなわち、最後の繰返しからの時間)に基づいてリセット寄与を計算することは、結果的に増加したプロセス変動性をもたらす可能性がある。
【0048】
上記の課題に鑑みて、計測値が定時的に更新されないときに正確且つ応答性に優れた制御を提供するために、プロセス変数の更新が利用可能であるかどうかに基づいてプロセス制御ルーチンを概して修正する制御技術が用いられてもよい。いくつかの場合、予測手段に基づく制御ルーチンは、最後の計測値更新からの期待されるプロセス応答に基づいて本明細書に記載の技術に従って再構築されてもよい。
【0049】
後述の制御技術は、特に、無線通信ネットワークを介して通信を実施する制御ルーチンに有用であり及び適用可能であるが、これらの技術は、ハードワイヤード接続を介して実施される通信にも同様に適用可能であることに留意されたい。例えば、ハードワイヤードデバイス15〜22のうちの1つ又は複数はまた、制限された電力供給に依拠する可能性があり、又は他の方法で低減されたデータ伝送レートから恩恵を受ける。加えて、プロセス制御システム10は、ハードワイヤード通信ネットワークを介して間欠的に又は制御実行レートよりも遅いレートで計測データを提供するように設計されるサンプル化分析器(sampled analyser)又は他のサンプリングシステムを含んでいてもよい。
【0050】
例示説明のために、
図2は、プロセス102に接続されるコントローラ101を有し、且つコントローラ101とプロセス102との間に接続される予測手段104を含む、典型的な従来技術の予測手段に基づく制御システム100を描いている。
図2で示されるように、例えば、PIDコントローラ(P、PI、PD、ID、及びPID型コントローラのいずれかを含む)であり得るコントローラ101は、制御されるプロセス変数X
jの値をもたらす又は変化させるためにプロセス102内のバルブのようないくつかのデバイスの動作を制御する制御信号U
jを生成する。さらに、送信器106は、プロセス変数計測値Z
jを生成するために制御動作によってもたらされるプロセス変数を計測する又はサンプリングする。この場合、プロセス変数値Z
jはプロセス変数X
jの計測値であってもよく、若しくはプロセス変数X
jとのいくつかの公知の関係性と関連付けられる又はこれにおいて変化するいくつかの他のプロセス変数の計測値であってもよい。送信器106は、計測値Z
jを、例として観測手段であってもよい予測手段104に提供する。この場合、送信器106は、配線式送信器として示され、そのため配線式通信ネットワークを介して計測値Z
jを予測手段104に通信する。また、上記のように、送信器106は、典型的にコントローラ101の実行レートよりも4〜10倍速いレートで新しいプロセス変数値Z
jを計測し及び送信する。
【0051】
図2で示されるように、予測手段104は、受信したプロセス変数計測値Z
jをコントローラ101によって生成される制御信号U
jと併せて用いて、計測されるプロセス変数値の推定
【数1】
を生じ、これは次に、プロセス102を制御する、特にプロセス変数値X
jを制御するのに用いられるコントローラ101に入力として提供される。予測手段104の使用は、コントローラ101がプロセス102のより良好な又はより正確な制御を行うことを可能にするために計測遅延、計測誤差、プロセスノイズなどのような事象をプロセス制御システム10が考慮に入れることを可能にする。予測手段104は、典型的には、コントローラ101の各実行サイクルでのコントローラ101の入力でプロセス変数推定
【数2】
の新しい値が利用可能であるようにコントローラ101と同じ又はより速い実行サイクルで動作することに留意されたい。したがって、新しいプロセス変数計測値Z
jを予測手段104の実行レートに等しい又はより高い(例えば、4〜10倍高い)レートで予測手段104の入力に提供することが典型的である。
【0052】
一般的に言えば、
図2の予測手段104のような予測手段は、プロセスのモデルを用いてプロセス変数推定を提供することによってプロセス制御を支援する。例えば、多くの工業プロセスユニットは、1つの操作された入力U(t)及び1つの計測されたプロセス出力X(t)によって特徴付けられる。1つの操作された入力及び1つの計測されたプロセス出力を伴う線形プロセスのモデルは、以下のような状態変数形式で表わされ得る。
X
j=aX
j−1+bU
j
式中、
X
j=時刻jでのプロセス出力、
U
j=時刻jでのプロセス入力、と
a及びb=プロセスゲイン及び動的応答を定義する定数。
例えば、一次プロセスの状態変数表現は、以下の形式で表わされ得る。
【数3】
式中、
K=プロセスゲイン、
τ=プロセス時定数、
ΔT=プロセスモデルの実行周期、
j=現在の時間インスタンス。
積分プロセスでは、一次プロセスの状態変数表現は、以下の形式で表わされ得る。
a=1、及び、
b=ΔT
*K
I
【0053】
説明を助けるために、
図2に描かれるプロセス102は、ほとんどのプロセスに内在する種々の誤差の発生源及び他の動作を例示説明するために及び予測手段104のより良好な理解を可能にするために上記の数式で示される。特に、プロセス102は、プロセスゲインブロック120、加算器122、変換ブロック124、加算器126、並びに遅延ユニット132及びゲインユニット134を含むフィードバックループ130によってモデル化される。プロセス102の数学的演算を表すために、ゲインユニット120は、コントローラ101によって生成される制御信号U
jにプロセスゲインbを乗算し、この値は、(加算器122において)プロセスノイズW
j、及びプロセス変数X
jを生成するためにフィードバックループ130によって推定される又はモデル化される動的応答に加算される。プロセスノイズW
jは、例えば、入力と相関のない共分散Qを伴うガウスホワイトノイズ又はゼロ平均ホワイトノイズとみなされてもよいが、代わりに他のタイプのノイズモデルが用いられてもよい。したがって、プロセス変数値X
jは、プロセスゲインブロック120の出力とプロセスノイズW
jと動的ゲイン応答との和として数学的にモデル化される。この場合、加算器122の入力での動的ゲイン応答は、フィードバックループ130によって生成され又はモデル化され、フィードバックループ130では、プロセス変数値X
jが遅延ユニット132における1つのサンプリング又はコントローラ実行時間だけ遅延され、且つプロセス変数値の遅延されたバージョンX
j−1にプロセス動的応答ゲインaが乗算される。理解されるように、プロセスゲインbと動的プロセス応答ゲインaは、典型的に、定数としてモデル化されるが、プロセス102の実際の動作に基づいて(定時的に又は他の方法で)更新されてもよい。
【0054】
プロセス102内で、プロセス変数値X
jは、プロセス変数値X
jの単位とプロセス変数計測値Z
jの単位との間の単位換算を提供する又はモデル化する値hを乗算することによって変換ユニット124において変換されるものとして示される。加算器126は、次いで、ブロック124によって生成される変換されたプロセス変数値にプロセス計測ノイズ(例えば、計測誤差又は不正確さに起因してプロセス変数値に付加されるノイズ)を表す値V
jを合算する。所望の場合、計測ノイズV
jは、ゼロ平均、及び入力又はプロセスノイズW
jと相関のない共分散Rを伴うホワイトノイズであり得る。加算器126の出力は、プロセスノイズ、プロセスダイナミックス、プロセスゲイン、及び計測ノイズに起因する誤差を含有する影響を含むプロセス変数値X
jの推定であるプロセス変数値Z
jを表す。もちろん、
図2で示されるように、送信器106は、「ノイズのある」プロセス変数値Z
jを生成し又は計測し、この値を予測手段104に提供する。
【0055】
上記のように、送信器106は、典型的に、予測手段104が送信器106によってそれに提供されるプロセス変数計測値Z
jに基づいて実際のプロセス変数X
jの有効且つ最新の推定
【数4】
を生成できるように、コントローラ101の動作サイクルにつき及び/又は予測手段104の動作サイクルにつきプロセス計測値Z
jを複数回生成するであろう。
【0056】
図3は、プロセス202を制御するプロセスコントローラ201(
図2のプロセスコントローラ101と同じであってもよい)を含む新しいプロセス制御システム200を示す。
図3で示されるように、プロセスコントローラ201は、プロセス202を制御する又は駆動するために制御信号U
jを生成するPIDコントローラアルゴリズム230のようなコントローラアルゴリズムを含む。この場合、しかしながら、制御システム200は、コントローラ201に及び送信器206に接続される改変された予測手段204を含む。改変された予測手段204は、この場合改変された予測手段204に無線通信ネットワークを介して無線で提供される(
図3に点線で示される)送信器206の出力を受信する。改変された予測手段204は、制御信号U
j及び送信器206によって計測される場合の計測されたプロセス変数信号Z
jに基づいてプロセス変数の推定(予測又は観測)値
【数5】
を生成し、制御信号U
jを生成するのに用いられるPIDコントローラアルゴリズム230の入力にプロセス変数推定値
【数6】
を提供するように動作する。
【0057】
ここで、無線送信器206の出力(すなわち、プロセス変数計測信号Z
j)が、無線通信ネットワークを経由して改変された予測手段204に無線で提供され、したがって、非定時的に、間欠的に、若しくはコントローラ201の実行サイクルレート又は予測手段204の実行サイクルレートよりも遅いレートで提供されてもよい。結果として、この場合、計測されたプロセス変数Z
jの新しい値は、予測手段204の各新しい実行サイクルの開始時に予測手段204の入力で利用可能ではない場合があり、一般に利用可能ではない。それにもかかわらず、改変された予測手段204は、各コントローラ実行サイクル中にコントローラ201又は制御ルーチン230の入力への新しいプロセス変数推定
【数7】
を生成するように後述の様態で依然として動作する。
【0058】
上記のように、これまでは、PIDアルゴリズムのような観測手段/予測手段に基づくコントローラアルゴリズムは、カルマンフィルタのような観測手段の形態の予測手段及びスミス予測器のような他の予測手段に結び付けられ、プロセス変数計測値が各コントローラ実行サイクルの開始時に最新であった、実際には正確であったとみなされていた。結果として、遅い又は間欠的なプロセス変数計測値を典型的な観測手段/予測手段に提供する無線送信器他の機構の使用は、問題を引き起こす及び乏しい制御性能につながる可能性がある。改変された予測手段204は、しかしながら、コントローラ又は観測手段/予測手段入力での間欠的な又は遅いプロセスフィードバック信号の受取りに関連する問題を最小にする又は軽減させるために後述の様態で動作する。
【0059】
図3の改変された予測手段204の詳細を説明する前に、予測ユニットの動作中にモデル不正確さを補正する一般に予測手段である観測手段の形態の1つの公知のタイプの予測手段の典型的な動作を説明することが役立つであろう。1つの周知のタイプの観測手段はカルマンフィルタである。
図4は、配線式送信器406から定時的プロセスフィードバック信号を受信するカルマンフィルタ404の形態の観測手段を用いるプロセス402に連結されるコントローラ401を有する典型的な観測手段に基づく制御システム400を示す。この説明のために、プロセス402は、
図2のプロセス102に関して説明されたのと同じ様態で動作すると仮定され、したがって、
図4のプロセス402で示されるブロックは、
図2のプロセス102の対応するブロックと同じ番号が付される。
【0060】
一般的に言えば、カルマンフィルタを、制御アプリケーションに対するプロセスノイズ又は計測ノイズの影響を低減させるのに用いることができるので、カルマンフィルタ型の観測手段は、典型的に、プロセスが多大なプロセスノイズ又は計測ノイズによって特徴付けられるときのプロセスを制御するのに用いられる。特に、カルマンフィルタは、一般に、以下でより詳細に説明するように、制御に関する推定されたプロセス出力を生成する。
【数8】
=プロセス状態の事前推定(最初のプロセス変数推定)、
【数9】
=プロセス状態の推定、
【数10】
=出力の推定。
【0061】
一般的な意味で、カルマンフィルタは、事前推定されたプロセス出力(最初のプロセス変数推定)を生成するためにプロセスノイズ又は計測ノイズを伴わないプロセスのモデルを含む及び用いる。カルマンフィルタはまた、最初の推定されたプロセス出力と計測されたプロセス出力との差を残差として求める補正ユニットを含み、これはまた当該技術分野ではイノベーションとして公知である。カルマンフィルタの補正ユニットはまた、プロセスモデル変数a、b、又はhにおける不正確さを補償するため及びプロセスノイズ又は計測ノイズを考慮に入れるためにカルマンフィルタモデルにおいて残差のどんな部分が用いられるかを判定するように設定されるカルマンゲインkを含む。
【0062】
したがって、
図4で示されるように、典型的なカルマンフィルタ404は、ハードワイヤード又は規則的にスケジュールされた通信を介して、配線式送信器又はセンサ406によって計測される場合の計測されたプロセス変数Z
jを受信し、プロセス変数の推定
【数11】
を出力として生成し、これは次に、コントローラ401にプロセス変数入力として提供される(
図4でコントローラ401によって実現されるPIDコントローラアルゴリズム430として示される)。カルマンフィルタ404は、ゲインブロック410、加算器412及び414、変換ブロック416、さらなる加算器418、加算器418と加算器414との間に連結されたカルマンゲインブロック422、並びに遅延ユニット424及びゲインブロック426を含む動的フィードバックループ423を含む。本質的に、ブロック410、412、424、及び426は、最初のプロセス変数推定
【数12】
を生成するプロセスモデルを形成し、ブロック416、418、及び422は、ゲインブロック422の出力で補正信号を生成する補正ユニットを形成し、ブロック414は、プロセス変数推定
【数13】
を生成するために最初のプロセス変数推定
【数14】
を補正信号と組み合わせるコンバイナを形成する。結果として、カルマンフィルタ404は、プロセスゲインb、動的応答ゲインa、及びカルマンフィルタゲインk、並びに制御信号U
j及び計測されたプロセス変数信号Z
jの現在値に基づいてプロセス変数に関する推定されるノイズのない値(プロセス402内のプロセス変数X
jの推定である)
【数15】
を生じるように構成される。
【0063】
特に、ゲインユニット410は、制御信号U
j(コントローラ401からの)にプロセスゲインbの推定を乗算し、この値が、変数として示されるプロセス変数の事前推定値
【数16】
を生じるために加算器412において動的応答(フィードバックループ423によって生成される)に加算される。加算器412の入力で提供される動的ゲイン応答は、推定されたプロセス変数値
【数17】
が遅延ユニット424における1つのサンプリング又はコントローラ実行時間だけ遅延され、プロセス変数値の遅延されたバージョン
【数18】
に動的プロセス応答ゲインaが乗算されるフィードバックループ423によって生じる。理解されるように、プロセスゲインbと動的プロセス応答ゲインaは、典型的に、定数としてモデル化されるが、プロセス402の実際の動作に基づいて(定時的に又は他の方法で)更新されてもよい。いずれにしても、事前プロセス変数推定
【数19】
は、次いで、加算器414に提供され、これは、プロセス変数推定(観測されたプロセス変数値とも呼ばれる)
【数20】
を生じるために、この変数値をノイズ及びプロセスモデルにおけるモデル不正確さを補正する補正信号と合算する。この場合、ブロック416、418、及び422は補正信号を生じる。
【0064】
加算器414の入力で補正信号を生じるために、事前推定されたプロセス変数値
【数21】
は、推定値
【数22】
の形態の最初のプロセス変数推定となるように依然として考えられるものを生じるために、プロセス変数値
【数23】
の単位とプロセス変数計測値Z
jの単位との間の単位換算を提供する又はモデル化する値hを乗算することによって変換ユニット416において変換される。加算器418は、次いで、ライン440上に残差を生じるために実際のプロセス変数計測値Z
jから最初の推定されるプロセス変数計測値
【数24】
を差し引く(差を計算する)。次いで、ブロック422において、プロセスにおけるノイズ(例えば、プロセス計測ノイズ及びプロセスノイズ)を補正するのに補正信号を生成するために、並びにゲインa、b、及びhにおける不正確さのようなモデル不正確さを補正するために、残差にカルマンフィルタゲインkが乗算される。最終的に、推定されたプロセス変数値
【数25】
が、プロセス402を制御するのに用いられるコントローラ401への入力として提供される。カルマンゲインk及びカルマンフィルタ404の他の変数は、典型的に、一回生成され、又は適正な制御を判定するために及び観測手段404がより正確となるように微調整するために各実行サイクル中に再生成される。
【0065】
より具体的には、カルマンゲインkは、プロセスがノイズを含まず、且つa、b、及びhの値が正確に分かっている場合に、一定とみなされてもよい。しかしながら、公知のように、カルマンフィルタの各実行サイクル中にカルマンゲインkを再帰的様態で動的に計算することによって最適な線形推定量が以下の様態で達成されてもよい。第1に、以前の値の最初の推測又は推定が以下のように確立されてもよい。
【数26】
=事後状態推定
P
j−1=事後状態共分散
【0066】
次いで、予測手段ステップにおいて、プロセス状態の事前推定の現在値
【数27】
及びプロセスノイズ共分散の事前推定の現在値
【数28】
を求めるために以下の計算がなされてもよい。
【数29】
【0067】
次いで、推定ステップにおいて、カルマンゲインK、プロセス変数推定
【数30】
、状態共分散P
j、及び推定されるプロセス変数計測値Z
jに関する新しい値を求めるために以下の計算が行われてもよい。
【数31】
式中、
K
jは、カルマンゲインであり、
Rは、計測ノイズ(V)の共分散であり
Qは、プロセスノイズ(W)の共分散である。
最初の実行後に、例えば各実行サイクル中にカルマンゲインが再計算されるたびに予測手段ステップ及び推定器ステップを繰り返すことができる。
【0068】
したがって、理解されるように、
図4のカルマンフィルタ404は、例えば送信器又はセンサ406によって付加されるプロセスノイズ及び計測ノイズを考慮に入れるプロセス変数X
jの実際の値を推定することを試み、このプロセス変数の推定
【数32】
を入力としてコントローラ401に提供する。最終的に、カルマンフィルタ404のような観測手段の使用は、送信器406によって計測される場合のプロセス変数Z
jの計測された又は感知された値を用いることとは対照的に、プロセス402を制御するのに用いられるコントローラ入力で実際のプロセス変数X
jのより良好な又はより正しい推定を提供する。
【0069】
多大なプロセスむだ時間が存在するときに、カルマンフィルタに用いられるプロセスモデルは、プロセス入力における変化を反映するプロセス計測値における遅延を考慮に入れるように修正されてもよい。例えば、一次+むだ時間として特徴付けられるプロセスに関する状態変数モデルは、以下の形式で表すことができ得る。
X
j=aX
j−1+bU
j−m
【0070】
図5は、それに関連する及びプロセスの加算器126の出力を時間Tだけ遅延させる遅延ブロック510によって示される多大な時間遅延又はむだ時間Tを有するプロセス502を制御するのに用いられるコントローラ501を有する典型的なカルマンフィルタ型観測手段に基づく制御システム500を示す。
図5のカルマンフィルタ504は、遅延ブロック540がカルマンフィルタ504のプロセスモデル内に、すなわちゲインブロック410と加算器412との間に提供されること以外は、
図4のものと本質的に同じである(そのため同様の要素には同じ番号が付される)。遅延ブロック540は、推定された又は計測されたプロセス遅延時間又はむだ時間T
mだけゲインブロック410の出力を遅延させる。このように、
図5のカルマンフィルタ504のプロセスモデルはまた、コントローラ501にプロセス変数値の推定
【数33】
を提供するために、プロセス502内のむだ時間を考慮に入れる。
【0071】
しかしながら、ここでも、
図4のカルマンフィルタ404及び
図5の504は、観測手段404又は504が新しいプロセス変数推定値
【数34】
を求め及びこれを各制御実行サイクルの開始時にコントローラ401又は501に提供することを可能にするために、新しい計測値Z
jが利用可能であり、且つ送信器406によって提供されることを仮定する。しかしながら、計測される信号がコントローラ401又は501の実行レートと同じ又はこれよりも高いレートでカルマンフィルタに送信されない無線送信器又は他のシステムを用いるときに、新しいサンプル値が各実行サイクルで利用可能ではないことから、
図4及び
図5で示されるカルマンフィルタを使用することができない。
【0072】
図6は、プロセスコントローラ601が
図4のプロセス402と同じであり得るプロセス602を制御する概して
図3で示されるような観測手段に基づくプロセス制御システム600を示す。この場合、
図3の改変された予測手段204は、
図6でカルマンフィルタ604として示される。カルマンフィルタ604は、プロセス602において作成される間欠的な、遅い、又は非定時的なプロセス計測値、若しくは他の状態で観測手段604又はコントローラ601の実行サイクルレートよりも実質的に遅い又は低いレートで到着するプロセス計測値の受取りに対処するように改変されること以外は、
図4のカルマンフィルタ404と類似している。この場合、
図6のカルマンフィルタは、
図4(同じ要素が同じ参照番号を含む)で示される基本要素を含み、したがって、一般に、多大なプロセスむだ時間又はプロセス応答遅延が存在しないプロセスに用いられるように適合される。
【0073】
図6に示されるように、しかしながら、改変されたカルマンフィルタ604は、無線送信器606(
図3の無線送信器206と同じであり得る)によって送信されるプロセス計測信号Z
jを受け取る又は受信する入力インターフェース660を含む。カルマンフィルタ602での制御信号の受取りは、このインターフェースを介して達成され得る。ここでは、無線送信器606がプロセス計測信号を観測手段604に間欠的に、非定時的に及び/又は実行レートよりも遅いレートで送信すると仮定される。送信器606は、例えば、プロセス計測信号が最後に送信されたプロセス計測信号から予め設定された量だけ変化するときにのみプロセス計測信号を送信し得、若しくは観測手段604又はコントローラ601の実行レートよりも低い定時的レートで、あるいは例えばあらゆる他の間欠的なレート又はスケジュールに従ってプロセス計測信号を送信し得る。一般的に言えば、この場合、カルマンフィルタ604及びPIDコントローラ601は、送信器606からカルマンフィルタ604によって計測値の更新が受信されるレートよりも速い又はかなり速いレートで定時的に実行する。
【0074】
この状況を補償するために、カルマンフィルタ604は、インターフェース660からプロセス変数計測信号のあらゆる新たに受信される値を受信し、且つプロセス変数計測信号の新しい値がインターフェース660で受信されている(及び利用可能である)かどうかに基づいてあらゆる特定の実行サイクル中に該信号又はスイッチユニット662による最後の信号出力を加算器418に提供するスイッチユニット662を含む。特に、スイッチユニット662は、プロセス変数計測信号の新しい値が利用可能である実行サイクル中に残差を生成するためにコンバイナ418におけるプロセス変数計測信号の新たに受信される値をカルマンフィルタの補正ユニットに使用させ、且つプロセス変数計測信号の新しい値が利用可能ではない実行サイクル中に残差を生成するためにコンバイナ418におけるプロセス変数計測信号の以前に受信した値(例えば、プロセス変数計測信号の最新の受信した値)をカルマンフィルタの補正ユニットに使用させるように動作する。
【0075】
さらにまた、カルマンゲインブロック622は、新しい計測値がカルマンフィルタ604の入力に伝送され又はそこで受信されない限り、カルマンゲインkをその最後の値に維持するように構成される。新しい計測値がインターフェース660に伝送され又はそこで受信されるときに、カルマンゲインブロック622は、カルマンゲインkを再計算する。少し違う言い方をすると、カルマンゲインkは、新しいプロセス変数計測値Z
jがインターフェース660に伝送され及びそこで受信されるときにのみカルマンゲインブロック622で更新される(例えば上記で説明された様態で)。したがって、カルマンゲインkの計算に用いられる共分散値Rは、伝送されている計測値のみを用いて計算される。この要因により、コントローラ601のPID制御アルゴリズム630は、依然としてプロセス変数計測の新たな予測値を用いて働くが、モデル補正のために用いられるカルマンゲインkは、新しい計測値が伝送される又は受信されるときにだけ更新される。
【0076】
より具体的には、動作中に、インターフェース660及びスイッチユニット662は、送信器604によって感知され及び送信される場合の感知された又は計測されたプロセス変数信号Z
jの最新の受信した値を格納するように動作する。インターフェース660は、この最新の受信した及び格納したプロセス変数値Z
jの値を、インターフェース660で新しいプロセス変数計測値が受信されるまで、ライン440上に残差を生成するのに用いるために観測手段604の各実行サイクル中に加算器418の入力に提供する。しかしながら、インターフェース660はまた、インターフェース660が(実行サイクルで)送信器606から新しい値を受信するときにはいつでも新しい値フラグを設定し、この新しい値フラグをスイッチユニット662に及びゲインブロック622に提供する。スイッチユニット662は、新たに受信したプロセス変数計測値又は以前に受信したプロセス変数計測値のいずれを加算器又はコンバイナ418に提供するかを決定するために新しい値フラグを使用する。同様に、カルマンフィルタゲインブロック622は、新しいプロセス変数計測値Z
jがインターフェース660で受信されていることを示す新しい値フラグが設定される時点(すなわち、実行サイクル中)でのみ新しいカルマンフィルタゲインkを計算するように動作する。一方、ゲインブロック622は、新しい値フラグが設定されていない各実行サイクル中にカルマンフィルタゲインkを一定に保つ(すなわち、プロセス変数値の新しい値Z
jが観測手段604で受信されていない実行サイクル中又は時間中であり、その間に、インターフェース660が、これらの実行時間中に新しい値が利用可能ではないことを示す新しい値フラグを設定する)。しかしながら、加算器418は、各実行サイクル中にプロセス変数計測値の新たに受信した値又は最新の受信した値Z
jに基づいてライン440上に残差を生成するように動作し続け、したがって、カルマンフィルタゲインブロック622は、観測手段604の各実行サイクル中にノイズの推定を生じるように動作し、この推定は次に、加算器414に提供され、推定されるプロセス変数値
【数35】
を生成するのに用いられる。このようにして、カルマンフィルタ604は、実際のセンサ計測値に基づいて補正信号を生成するが、各実行サイクル中にカルマンフィルタゲインk(本質的にプロセスモデルとして作用するカルマンフィルタ604の正確さを高めるために各実行サイクル中に典型的に変化しない)を変化させない。この動作は、観測手段604で新しいプロセス変数計測値が受信される時間中又は時間の間に、これらの時間中にカルマンフィルタゲインkを一定に保つことによって、正確なプロセス変数推定を提供する。代わりに、この動作は、新しいプロセス変数計測値が利用可能である実行サイクル中にのみカルマンフィルタゲインkを調節する。
【0077】
プロセスが多大なむだ時間を有する場合、カルマンフィルタ604内のプロセスモデルは、このむだ時間を考慮に入れるように修正されてもよい。特に、
図7は、多大な時間遅延又はむだ時間を有するプロセス702に連結されるコントローラ701(コントローラ601、501、401、301、及び201と類似している又は同一である場合があり、且つコントローラアルゴリズム730を有する)を含むプロセス制御システム700を示す。制御システム700はまた、非定時的な、間欠的な、又は遅い様態で提供される無線プロセス変数計測値を受信するために、
図6に関して前述のように改変されたカルマンフィルタ704を含む。分かるように、カルマンフィルタ704は、フィルタ704のプロセスモデルが
図5のむだ時間ユニット540と類似している、同じ目的で動作するむだ時間遅延ユニット740を含むこと以外は、
図6(同様の要素が同じ番号を付される)のカルマンフィルタ604と同じである。したがって、この場合、カルマンフィルタ704における残差計算は、むだ時間を伴う予測された計測値と伝送される計測値との差に基づく。結果として、
図7のカルマンフィルタ704は、多大なむだ時間又はプロセス遅延を伴うプロセスのための観測手段として用いられるように構成される。
【0078】
理解されるように、
図6及び
図7の改変されたカルマンフィルタ604及び704は、例えば無線伝送ネットワークを介してプロセスから提供される、間欠的に、非定時的に、又はゆっくりと提供されるプロセス変数計測値の使用を可能にする。結果として、これらの観測手段604及び704は、プロセス変数値が非定時的な又は間欠的な様態で、又はカルマンフィルタ及びコントローラの実行レートよりも遅い又は低いレートで計測される又は制御システムに送信されるプロセスの状況での観測手段に基づく制御を可能にする。
【0079】
図6及び
図7のような観測手段を用いるときに、前述のパラメータa、b、及びhのようなモデルパラメータを設定することが望ましい又は時には必要である。例えば、自己調整プロセスでは、モデルパラメータは、プロセスゲイン、プロセス時定数、及びプロセスむだ時間の知識に基づいて設定されてもよい。積分プロセスでは、モデルパラメータは、ゲインとプロセスむだ時間を積分するプロセスの知識に基づいて設定されてもよい。ユーザがこれらのパラメータを設定する必要性を最小にするために、観測手段に用いられるモデルは、コントローラ調整パラメータ及び調整に関するいくつかの仮定に基づいて自動的に構成できる可能性がある。例えば、制御アルゴリズムがPIDアルゴリズムである場合、観測手段モデルパラメータは、PIDコントローラゲイン、リセット、及びレートに基づいて設定できる可能性がある。
【0080】
カルマンフィルタが無線制御に用いられるとき、カルマンゲインに関連する計算は、ノイズレベルが一定である又は有意でない場合に簡素化されてもよい。例えば、計測ノイズに関連するノイズ共分散Rがゼロ(0)とみなされる場合、カルマンゲインは一定であり、以下のように計算され又は求められてもよい。
R=0と仮定して、
【数36】
【0081】
前述のように、別の通常のタイプの予測手段に基づく制御はスミス予測器を用いる。例示説明するために、
図8は、コントローラ801へのプロセス変数フィードバック入力として用いられるプロセス変数Xの値を推定するためにスミス予測器の形態の予測手段を用いる典型的な又は公知の制御システム800を描いている。コントローラ801は、
図8で示されるようにコントローラアルゴリズムブロック830によって実現されるPIDコントローラとすることができるが、代わりに他の適切なコントローラアルゴリズムを用いる他の適切なタイプのコントローラであり得る。一般的に言えば、スミス予測器は、典型的に、コントローラの応答時間を強化する及び/又はプロセスのより良好な制御を提供するために、制御されているプロセス(例えば、
図8のプロセス802)が多大なむだ時間を有する制御方式で予測手段として用いられる。より具体的には、プロセスが多大なプロセスむだ時間によって特徴付けられるときに、プロセスむだ時間を伴わないプロセス出力計測値を推定するのにスミス予測器が用いられてもよく、これにより、フィードバック制御におけるむだ時間遅延がなくなる又は低減する。
【0082】
図8で示されるように、コントローラ801は、スミス予測器804がコントローラ801とプロセス802との間のフィードバックループにおいて連結されている状態でプロセス802に接続される。この場合、スミス予測器804は、予測手段804及び/又はコントローラ801の実行レートに等しい又はより高い(典型的に4〜10倍)レートで新しいプロセス変数計測値を提供する配線式送信器806からプロセス変数計測値(典型的に多大なむだ時間を含む計測値である)を定時的に受信する。公知のように、スミス予測器804は、2つのプロセスモデル810及び812を含み、プロセスモデル810はプロセスむだ時間を伴わないプロセス802をモデル化するように適合されたプロセスモデルであり、プロセスモデル812はむだ時間を伴うプロセス802をモデル化するプロセスモデルである。プロセスモデル810及び812は、コントローラ801によって生成されたコントローラ信号Uを受信し、それぞれ、プロセス出力の推定(例えば、プロセス変数X)を生成するために制御信号Uへのプロセス802の反応をモデル化するのにそれぞれのプロセスモデルを用いる。スミス予測器804は、プロセスモデル812及び加算器814を含む補正ユニットを含み、これは、配線式送信器806(プロセス変数Zの計測値を計測する又は提供する)の出力を受信するために及びむだ時間を伴う計測されるプロセス変数Xの値を推定するプロセスモデル812の出力に接続される。加算器814は、本明細書では補正信号と呼ばれるライン816上に残差を生成するためにこれらの2つの値を差し引く(その差を計算する)。残差(又はイノベーション)は、計測されたプロセス変数値Zとプロセスモデル812によって生成されるこの変数のモデル化された又は推定された値との間の誤差の推定である。(この場合、変数Z及びXは、同じ単位を有するとみなされる)。ライン816上の残差は、本質的には、計測されたプロセス変数値Zのその推定においてむだ時間を伴うプロセスモデル812が不正確である量の指示を反映する。
【0083】
さらなる加算器又はコンバイナ820は、プロセスモデル810の出力(プロセスむだ時間を伴わないプロセス変数値Xの推定であり、本明細書では最初のプロセス変数推定と呼ばれ得る)を残差に加算し又は他の方法で組み合わせて、プロセス802に関するプロセス変数推定値
【数37】
を生成する。プロセス変数推定
【数38】
は、次いで、コントローラ801に提供され、コントローラは、この値を、制御信号Uを生成するためにそこで用いられるPIDコントローラアルゴリズム830(又は他のコントローラアルゴリズム)に関するフィードバック入力として用いる。
【0084】
カルマンフィルタと同様に、プロセス計測値Zとむだ時間を伴うプロセスモデル812の出力との差は、プロセスモデルにおけるあらゆる誤差又はあらゆる計測されないプロセス外乱を反映する残差とみなされ得る。上で示されるように、残差値又は補正信号は、カルマンフィルタで行われるようにモデル出力の以前の値を調節するのではなくむだ時間を伴わないプロセスモデル810の出力を調節するのに用いられる。
【0085】
もちろん、
図8のスミス予測器のような予測手段の設計は、アルゴリズムが実行されるたびに新しいプロセス出力計測値が利用可能であるという仮定に基づいている。また、PID制御と併せて用いられるときに、正しい動作のために、コントローラ及び予測手段は、定時的に、プロセス応答時間よりも少なくとも4〜10倍速く、すなわち、プロセス時定数+むだ時間で実行されるべきである。したがって、プロセス計測値が遅い、間欠的な、又は非定時的なレートで提供されるプロセス計測値フィードバックのために無線送信器又は他の通信ネットワークが用いられるときに正しい制御動作を可能にするために予測手段を改変する必要がある。
【0086】
一般的に言えば、スミス予測器は、無線計測値(例えば、ゆっくりと、非定時的に、又は間欠的に受信したプロセス変数計測値)と共に動作するように改変されてもよく、この場合、コントローラ及びスミス予測器は、定時的に、新しい計測値Zが予測手段に伝送される又は予測手段で受信されるときにのみむだ時間を伴わないモデルを補正するのに用いられる残差値を更新することによって計測値が伝送されるよりもより速い又は大幅により速いレートで実行される。
【0087】
例として、
図9は、プロセス902を制御するためにコントローラ901を用いる、非定時的な、間欠的な、又は遅い(例えば、コントローラ901又は予測手段904の実行レートよりも低い)プロセス変数計測値又は更新の受取りで作動するように修正されるスミス予測器904の形態の予測手段(
図3の改変された予測手段204であり得る)を含む、プロセス制御システム900を描いている。
図9で表されるように、予測手段904は、同様の要素に同じ番号が付される予測手段804と類似している。したがって、予測手段904は、むだ時間を伴うプロセスモデル810及びむだ時間を伴わないプロセスモデル812並びに加算器814及び820を含む。しかしながら、この場合、スミス予測器904は、無線伝送されたプロセス変数値Zの値を受信し及び格納し、且つスミス予測器904の各実行サイクル中に加算器816に最新の格納した値を提供する、インターフェース960を含む。インターフェース960はまた、制御信号入力部で制御信号Uを受信してもよい。インターフェース960は、プロセス変数計測信号Zの新しい値がインターフェース960で受信され又は格納されているときにはいつでも(実行サイクル中に)新しい値フラグを作成し及び提供する。
図9のインターフェース960は、この新しい値フラグを加算器814及び820の間に配置されるスイッチユニット962に提供する。
【0088】
スイッチユニット962は、加算器814の出力を受信するために連結される第1の入力と、スイッチユニット962の出力を受信するために連結される第2の入力とを有する。スイッチユニット962は、インターフェース960によってスイッチユニット962に提供される新しい値フラグの値に基づいてスイッチユニット出力(加算器820の入力にも接続される)に2つの入力のうちの1つを提供するように動作する。この場合、スイッチユニット962は、計測されたプロセス変数Zの新しい値がインターフェース960に提示される又はインターフェース960によって受信されていることを示す新しい値フラグが設定されるときにはいつでも加算器814の出力をスイッチユニット出力に(したがって加算器820の入力に)提供するように動作し、且つ計測されたプロセス変数Zの新しい値が(観測手段904のこの実行サイクル中に又はその直前に)インターフェース960に提示されない又はインターフェース960によって受信されていないことを示す新しい値フラグが設定されるときにはいつでもスイッチユニット962の前の出力を加算器820の入力に提供するように動作する。もちろん、後者の場合では、加算器814の出力は用いられない。このようにして、スイッチユニット962は、プロセス変数計測値Zの新しい値が利用可能ではない(あらゆる実行サイクル中の)あらゆる時点で加算器820の入力で加算器814によって生成された以前の残差値(例えば、補正信号)をラッチするように動作し、且つ加算器814がプロセス変数計測値Zの新たに受信した値に対して作用しているときに加算器814によって求められる場合の新しい残差値が加算器820に提供されることを可能にするように動作する。したがって、本質的に、スイッチユニット962は、新しいプロセス変数計測値Zが提示される又は利用可能である観測手段904の実行サイクル中にのみ、新たに計算された残差値を加算器820に提供し、それ以外では、加算器820の入力で以前に計算された残差値(すなわち、インターフェース960でプロセス変数計測値Zが受信された最後の時点で計算された残差)をラッチするように動作する。スイッチユニット962は、2つのハードウェア加算器814及び820間に配置されたハードウェアユニットとして示されるが、加算器814及び820並びにスイッチユニット962(並びに改変された観測手段904の要素の残り)は、一時的でないコンピュータ可読媒体に格納され及び専用にプログラムされる汎用プロセッサ又は特別にプログラムされるプロセッサのいずれかであるプロセッサ上で実行される、ソフトウェア又はファームウェアの形態で実現され得る。
【0089】
図10及び11は、配線式又は定時的計測値を受信する伝統的なPIDに基づく制御システムと比較して、間欠プロセス変数計測値を受信した、前述の改変された観測手段/予測手段を用いる制御システムの性能を例示説明するために提供される。特に、
図10は、定時的プロセス変数計測値が制御システムの実行レートよりも高い又はこれに等しいレートでPIDコントローラの入力に提供されるPID制御と比較して、
図6(プロセス変数計測値が制御システムの実行レートよりも低いレートで観測手段の入力に提供される)に関して説明されたように動作するカルマンフィルタの形態のPIDコントローラ及び改変された観測手段を有する
図6のような制御システムのコンピュータシミュレートされた動作を例証するチャート1000を描いている。
図10では、ライン1001は、コントローラに提供されるセットポイント値を示し、一方、ライン1002は、制御されているプロセスにおける計測されない外乱の値を示す。理解されるように、これらの変数のそれぞれは、プロセス動作中のこれらの2つのタイプの変化のそれぞれへの両方のタイプの制御システムの応答及び動作を示すために異なる時点で変化される。
【0090】
図10のライン1010及び1011は、それぞれ典型的な制御システム(定時的計測値フィードバックを伴うPIDコントローラ)及び改変された制御システム(非定時的な、例えば、無線の計測値フィードバックを受信する改変された観測手段を伴うPIDコントローラ)によって制御されているプロセス変数(PV)のシミュレートされた値を示す。同様に、ライン1020及び1021は、それぞれ、典型的な制御システムによるPIDコントローラ(定時的計測値フィードバックを伴うPIDコントローラ)による制御信号出力及び改変された制御システムのPIDコントローラ(非定時的な、例えば、無線の計測値フィードバックを受信する改変された観測手段を伴うPIDコントローラ)による制御信号出力のシミュレートされた値を示す。これらのラインは、配線式送信器を伴うPIDコントローラと比較して、改変されたカルマンフィルタ型観測手段が無線計測値を用いる閉ループ制御を提供するためにPIDコントローラと共にどのように用いられ得るかを実証する。
【0091】
このシミュレートされたテストでは、比較のために用いられるプロセスは、以下の特徴をもつ一次+むだ時間プロセスであった。
プロセスゲイン=1
プロセス時定数=6秒
プロセスむだ時間=2秒
PIDコントローラは、すべての場合においてラムダ係数1に対して調整された。
ゲイン=1/プロセスゲイン
リセット=プロセス時定数+プロセスむだ時間
プロセス入力及び出力は、グラフとの比較を簡単にするために0〜100%に尺度変更された。したがって、h(単位換算係数)の値は、これらの例では1に等しかった。カルマンフィルタでは、ノイズレベルは最小であり、したがって、カルマンフィルタゲインは1/h=1の一定の値に設定された。シミュレートされた無線送信器は、ウィンドウ通信を用いる1パーセント変化及び10秒のデフォルト周期に関して構成された。モジュール(コントローラ)実行レートは0.5秒に設定された。
【0092】
ライン1010及び1011並びにライン1020及び1021を詳細に調べると分かるように、カルマンフィルタの形態の観測手段を用いる改変された制御システムは、定時的プロセス変数計測値が制御システムの実行レートよりも高い又はこれに等しいレートでコントローラに提供されるPID制御システムと非常に類似して作動した。実際には、
図10のチャートで示されるように、制御性能は、両方のセットポイント変化に関する及び大きい計測されないプロセス外乱に関するPIDコントローラ及び配線式計測値と比較できるものであった。テストモジュールの一部として、無線での制御の積分絶対誤差(integrated absolute error:IAE)及び配線式計測値での制御に関するIAEがそれぞれ332及び327として計算され、したがってこの計測でのほぼ同一の又は非常に類似の制御性能が立証された。
【0093】
同様に、
図11は、定時的プロセス変数計測値が制御システムの実行レートよりも高い又はこれに等しいレートでPIDコントローラの入力に提供されるPIDコントローラと比較した、
図9(プロセス変数計測値が制御システムの実行レートよりも低いレートで予測手段の入力に提供される)に関して前述のように動作するPIDコントローラ及びスミス予測器の形態の改変された予測手段を有する
図9のような制御システムのコンピュータシミュレートされた動作を示すチャート1100を描いている。
図11では、ライン1101は、コントローラに提供されるセットポイント値を示し、一方、ライン1102は、プロセスにおける計測されない外乱の値を示す。理解されるように、これらの各変数は、プロセス動作中のこれらのタイプの変化のそれぞれに応じて両方のタイプの制御システムの応答を示すように異なる時点で変化させられている。
【0094】
ライン1110及び1111は、それぞれ、典型的な制御システム(定時的計測値フィードバックを伴うPIDコントローラ)及び改変された制御システム(非定時的な、例えば無線の計測値フィードバックを受信する改変されたスミス予測器を伴うPIDコントローラ)によって制御されているプロセス変数(PV)のシミュレートされた値を示す。同様に、ライン1120及び1121は、それぞれ、典型的な制御システム(定時的計測値フィードバックを伴うPIDコントローラ)によるPIDコントローラによる制御信号出力及び改変された制御システム(非定時的な、例えば無線の計測値フィードバックを受信する改変されたスミス予測器を伴うPIDコントローラ)のPIDコントローラによる制御信号出力によるシミュレートされた値を示す。一般に、制御は、カルマンフィルタの例に関して前述した同じプロセス動態を用いて行われた。
【0095】
ライン1110及び1111並びにライン1120及び1121を調べると分かるように、改変されたスミス予測器の形態の予測手段を用いる改変された制御システムは、両方のセットポイント変化に関する及び大きい計測されないプロセス外乱に関する配線式計測値と共にPIDコントローラを用いる典型的な制御システムと同様に作動した。試験の一部として、改変されたスミス予測器を伴う無線計測値での制御の積分絶対誤差(IAE)及び配線式計測値(PIDコントローラを用いる)での制御に関するIAEはそれぞれ504及び335として計算された。したがって、IAEに関しての結果は、改変されたカルマンフィルタでのテストにおいて達成されるよりも若干悪かったが、とんどのプロセス制御状況では依然として許容可能である。
【0096】
図12は、
図1の制御システムのような制御システム1200内に改変された予測手段及びコントローラを実装する1つの様態を示す。
図12で示されるように、コントローラ1201は、プロセス1202を制御するために接続され、改変された予測手段1204は、コントローラ1201と無線送信器1206との間に通信可能に連結され、プロセス1202内の1つ又は複数のプロセス変数を計測する。改変された予測手段1204は、前述の改変された予測手段/観測手段、又は本明細書で開示される技術に基づいて構築された改変された予測手段/観測手段のいずれであってもよい。
図12で示されるように、改変された予測手段1204は、制御システム1200に関連する別個の機能ブロック又は別個の制御モジュールのような別個の及び独立したブロックとして構成され、作動され又は実行される。例えば、コントローラ1201が機能ブロック又は制御モジュールとして実現される場合、改変された予測手段1204は、
図12で示されるようにコントローラ機能ブロック又はモジュールに通信可能に連結される別個の機能ブロック又は別個の制御モジュールとして実現され得る。この場合、コントローラ1201の制御ブロック1230は、予測手段1204から別個のデバイス内に格納され及び実行されてもよく(この場合、予測手段1204とコントローラ1201の制御ブロック1230との間の通信に関するデバイス間の通信が起こる)、又は予測手段1204と同じデバイス内に格納され及び実行されてもよい(この場合、予測手段1204とコントローラ1201の制御ブロック1230との間の通信に関するデバイス内通信が起こる可能性がある)。いずれの場合にも、これらの2つのブロックは、通信ライン、パス、又はネットワークを介して互いに通信可能に連結される。
【0097】
この例では、改変された観測手段ブロック1204は、ブロック1204が更新されたプロセス変数推定をコントローラ1201の実行サイクルにつき少なくとも1回コントローラブロック1230に提供するような様態で制御ブロック1230に通信可能に接続することができる。いずれにしても、改変された観測手段ブロック1204は、
図1のコントローラ、フィールドデバイス、I/Oデバイスなどのうちの種々の異なる1つに位置し得、一方、コントローラ1201は、同じ又は他のこうしたデバイスに位置することができる。
【0098】
図13は、コントローラブロック1301がプロセス1302を制御するのに用いられ、改変された観測手段ブロック1304が無線送信器1306から無線伝送信号を受信するプロセス制御システム1301を描いている。ここで、しかしながら、改変された観測手段ブロック1304は、コントローラアルゴリズムブロック1330と同じ複合ブロックであるが別個のモジュールに位置する。したがって、この例では、コントローラアルゴリズムブロック1330と改変された予測手段1304は、同じ複合モジュール(複合ブロック1340として示される)に一体化され、したがって、
図1のプロセス制御ネットワーク10のようなプロセス制御ネットワークにおける同じデバイスで実行する。典型的に、このモジュールは、コントローラ11のうちの1つにおいて実行されるであろうが、配線式又は無線フィールドデバイス、I/Oデバイスなどを含む
図1の他のデバイスのいずれにすることもでき得る。この場合、コントローラブロック1301に関して提供されるユーザ・インターフェースは、コントローラブロック1301へのプロセス変数PV計測値入力として予測手段1304によって生成される予測された計測値を示してもよい。ほとんどの場合は、しかしながら、プラントオペレータは、制御動作にアクセスする又はこれを見るときに最後の通信された計測値を見ることに対してより関心をもつであろう。計測値がオペレータに制御パラメータとして示されることを可能にするために、例えば
図14及び
図15で示されるようにコントローラおよび改変された観測手段ブロックを含むコントローラブロックを作成でき得る。
【0099】
特に、
図14及び
図15は、それぞれ、予測手段/観測手段ブロック1404(
図14に改変されたカルマンフィルタであるように示される)及び予測手段ブロック1504(
図15にスミス予測器であるように示される)がコントローラアルゴリズムブロック1430及び1530と同じブロックに一体化される制御ブロック1401及び1501の例を示す。したがって、これらの場合、コントローラブロック又はモジュール1401又は1501は、コントローラアルゴリズム機能ブロック(1430又は1530)と改変されたカルマンフィルタブロック1404又はスミス予測器ブロック1504との両方を含む。この場合、改変された観測手段/予測手段1404又は1504は、制御モジュール又はルーチン自体1401又は1501の一部として取り扱われ、したがって制御ブロック1401又は1501の一部として見ることができる(アクセス可能なそのパラメータを有する)。したがって、この状況では、計測値変数Zは、オペレータにはコントローラ1401又は1501へのフィードバックプロセス変数(PV)入力となるように見えるであろう。
【0100】
本明細書で提供される説明は、異なる説明された実施形態のそれぞれに関して、改変された観測手段に連結されるコントローラがPID制御ルーチンを実現することを前提としていたが、この説明は、単に一貫性のために提供される。伝統的なPID制御アルゴリズム(P、PI、PD、PIDなどのようなあらゆる形態のPIDを含む)以外の他のタイプの制御アルゴリズムが本明細書に記載の改変された観測手段を用いる制御方式でコントローラとして用いられてもよいことが理解されるであろう。もちろん、本明細書に記載の改変された観測手段を実現する多くの他の方法が存在し、理解されるように、改変された観測手段は、それに改変された観測手段が接続されるコントローラ又は制御ブロック又は制御要素と一緒に(例えば、同じモジュール又はデバイスにおいて)用いられてもよいし、又は別々に(例えば、異なるモジュール又はデバイスにおいて)用いられてもよい。同様に、本明細書に記載のコントローラ及び改変された観測手段は、ハードウェア、汎用コンピュータ上で実行されるソフトウェアルーチン、若しくは特殊用途コンピュータ又はプロセッサデバイス上で実行されるソフトウェア又はファームウェアルーチンで実現されてもよい。
【0101】
開示される実施形態のいずれにおいても、改変された観測手段又はデバイス、改変された観測手段は、入ってくるプロセス変数計測信号を処理する通信スタックと、入ってくる信号が計測値更新を提供したときを検出するモジュール又はルーチンを含んでいてもよい。検出ルーチンは、次いで、通信スタックを介して提供されているデータが新しい計測値又は他のタイプの値又は更新を含むことを示すフラグ又は他の信号を生じてもよい。新しいデータ及び更新フラグが、次いで、観測手段及び制御ルーチンの動作と組み合わせて前述のように実施される場合に前述のように観測手段の1つ又は複数の要素に提供されてもよい。代替的に又は加えて、新しいデータ及び更新フラグは、例えば
図1のコントローラ11で又は制御システムの中のどこかで実行される1つ又は複数の監視モジュール又はアプリケーションに提供されてもよい。更新検出機能が、同様に機能ブロックレベルで実現されてもよく、制御及び/又は観測手段モジュールに関連する1つ又は複数の機能ブロックによって提供されてもよい。フィールドデバイス71のような他の無線デバイスは、例えば、そこに常駐する機能ブロック(例えば、FB1及びFB2)のうちの1つ又は複数によってこうした信号の受取及び処理をサポートする類似のコンポーネント及び機能性を含んでいてもよい。
【0102】
いくつかの場合、通信スタック及び更新検出モジュールは、
図1のI/Oデバイス26、28、73、及び74のうちの1つ又は複数によって実現されてもよい。さらに、更新検出モジュールがその判定を行う様態は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又はこれらのあらゆる組み合わせが関与し得、プロセス変数の値を比較するために、いかなる適切なルーチンが含まれ得る。
【0103】
本明細書に記載のプロセス制御システムは、例外による報告(report−by−exception basis)でなされるプロセス制御データ伝送が関与する無線通信のような通信方式と組み合わせて用いられてもよい。無線通信コンテクストでのプロセス制御データの例外報告は多数の利点を呈し得る。例えば、送信器又は他のフィールドデバイスによるフィールドでの電力消費率が下がる可能性があり、これにより、バッテリ電力又は他の制限された電力供給を節約する。過去の例外報告とは異なり、しかしながら、開示される技術は、定時的に実行されるプロセス制御ルーチンで用いられるデータの伝送を支援する。イベントトリガベースで提供されるデータを用いる過去の思わしくないプロセス制御ルーチンの実行の忠告にもかかわらず、開示される技術の実施は、性能の有害な犠牲を伴わないプロセス制御ルーチンの定時的実行に対処する。開示される技術はさらに、同様に性能の有害な犠牲を伴わずにデータをシステム監視アプリケーションにイベントトリガベースで提供することをサポートする。
【0104】
開示される技術の実施は、無線通信方式と組み合わせるのに大変都合がよく、本明細書では無線通信方式と組み合わせて時折説明されるが、いかなる特定の通信方式、コンテクスト、又はプロトコル、若しくはいかなるプロセス制御ネットワーク、アーキテクチャ、コントローラ、又はシステム、或いはいかなる監視アプリケーションにも限定されない。代わりに、開示される技術は、あらゆる所望の理由でプロセス制御データが制御ルーチン実行周期又は監視サイクルよりも低頻度に伝送される任意の数の又は様々なコンテクストに適用されてもよい。こうしたコンテクストは、通信を信頼できない又は間欠的なものにする望ましくない条件又は悪条件を呈する可能性がある。したがって、上記の説明は、開示される技術の実施が特に本明細書で説明される低電力又は他の無線通信方式に限定されないという理解のもとで記載される。
【0105】
理解されるように、
図1、
図3、
図6、
図7、
図9、及び
図12〜
図15の無線(又は他の)送信器に関して前述した通信技術は、フィールドからコントローラ11への計測値の通信が、定時的な様態で報告し、次に制御ルーチン(単数又は複数)の定時的実行をサポートするように伝統的に構造化されているときに、一般に、結果的に非定時的な、不規則な、又は他の状態であまり頻繁でないデータ伝送をもたらす。言い換えれば、制御ルーチンは、一般に、計測値の定時的更新のために設計され、これに依拠する。非定時的な又は他の状態で利用可能でない計測値更新(及び他の利用可能でない通信伝送)に対処するために、予測手段、制御及び監視ルーチン(単数又は複数)が、プロセス制御システム10が制御実行周期又はいくつかの他の標準周期よりも低頻度に起こる非定時的な又は他の間欠的な更新に依拠することを可能にするように前述のように再構造化され又は改変されてもよい。このようにして、開示される技術は、いくつかの場合、一般に、プロセス制御ルーチンの定時的実行にかかわらずプロセス変数計測値に関する例外報告の形態を支援し得る。開示される技術はまた、制御ルーチンと制御ルーチンの下流のデバイスとの間の伝送に関係する例外報告の形態に対処し及び支援し得、例えば、アクチュエータ及び他のデバイス又は要素は、制御ルーチンによって生じる制御信号に応答する。
【0106】
もちろん、いくつかの場合、デバイスは、複数の異なる計測値(すなわち、異なる信号の計測値)を収集し及び監視してもよく、これらの1つ又は複数の計測値のそれぞれに関して本明細書に記載の同じ伝送技術を用い得るとが理解されるであろう。さらにまた、いくつかの場合、計測値を収集するデバイスは、データの進歩した解析(例えば、エラー検出解析、調整解析など)又は計測を行うことができ、本明細書に記載の同じ通信技術を、フル解析、単一のステータスを送信するか否かを判定する、又は信号を伝送することを次のサンプルインターバルまで待つために適用でき得る。
【0107】
本開示のいくつかの態様によれば、本明細書に記載の技術は、コントローラとフィールドデバイス(単数又は複数)又はプロセス制御システムの他の要素との間の多数の異なる無線(又は他の)通信が不所望に遅延される又は失われるコンテクストに適用されてもよい。したがって、コントローラと送信器との間及びコントローラとアクチュエータとの間の通信問題に関する上記の例は、それらが例示の性質を帯びるという理解のもとで記載されている。さらに、通信に関与するパラメータは、制御ルーチンによって制御されているプロセス変数に限定されない。それと反対に、開示される技術は、制御ルーチン又は監視ルーチンによって用いられる計測されている又はフィードバックされている若しくは他の方法で通信されているあらゆるパラメータに関係する通信と組み合わせて適用されてもよい。結果として、前述の応答指示(すなわち、プロセス変数計測値及びアクチュエータ位置)は、それらが例示の性質を帯びるという理解のもとで記載される。制御信号への応答を示す他のデータに関係する通信問題もまた、開示される技術によって対処されてもよい。結果として、制御ルーチンの下流の要素(例えば、フィールドデバイス、別のプロセス制御ルーチンなど)からのデータのあらゆる通信が関与し得る。
【0108】
開示された方法、システム、及び技術の実施は、いかなる1つの特定の無線アーキテクチャ又は通信プロトコルにも限定されない。実際には、制御ルーチンへの開示された修正は、制御ルーチンが定時的な様態で実施されるが各制御の繰返しに関するプロセス変数計測値更新を伴わないいかなるコンテクストにも大変都合がよい。他の例となるコンテクストは、例えば分析器によって又は実験サンプルを介してサンプリングされた値が不規則に又はよりまれに提供される場合を含む。
【0109】
さらに、開示された技術の実施は、単一入力、単一出力PI又はPID制御ルーチンとの使用に限定されず、むしろ、観測手段を用いる多数の異なる複数入力及び/又は複数出力制御方式及びカスケードされた制御方式に適用されてもよい。より一般には、開示された技術はまた、1つ又は複数のプロセス変数、1つ又は複数のプロセス入力、又はモデル予測制御(MPC)のような他の制御信号が関与するいかなる閉ループモデルベースの制御ルーチンとの関連でも適用され得る。
【0110】
「フィールドデバイス」という用語は、本明細書では、多数のデバイス又はデバイスの組み合わせ(すなわち、送信器とアクチュエータとのハイブリッドのような複数の機能を提供するデバイス)、並びに制御システムにおける機能を果たすあらゆる他のデバイス(単数又は複数)を含むように広義に用いられる。いずれにしても、フィールドデバイスは、例えば、入力デバイス(例えば、温度、圧力、流量などのようなプロセス制御パラメータを示すステータス、計測値、又は他の信号を提供するセンサ及び機器のようなデバイス)、並びにコントローラ及び/又は他のフィールドデバイスから受信したコマンドに応答してアクションを行う制御オペレータ又はアクチュエータを含んでいてもよい。
【0111】
実現されるときに、本明細書に記載のユニット、ブロック、モジュール、スイッチ、コンバイナ、加算器、ゲインブロックなどのいずれも、磁気ディスク、レーザディスク、又は他の記憶媒体上、コンピュータ又はプロセッサのRAM又はROMの中などのような任意のコンピュータ可読メモリに格納されるソフトウェア又はファームウェアとして実行されてもよい。したがって、特定のハードウェアのような本明細書に記載の実施形態は、本明細書に記載の技術を用いてコンピュータプロセッサ上のソフトウェアにおいて実現することができる。同様に、このソフトウェアは、例えば、コンピュータ可読ディスク又は他の可搬型コンピュータ記憶機構上で、若しくは電話線、インターネット、ワールドワイドウェブ、あらゆる他のローカルエリアネットワーク又はワイドエリアネットワークなどのような通信チャネルを経由して、あらゆる公知の又は所望の送達方法を用いて、ユーザ、プロセスプラント、又はオペレータワークステーションに配信されてもよい。
【0112】
本発明は、単なる例示となることを意図され且つ本発明を限定することを意図されない具体例を参照して説明されたが、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、開示される実施形態への変化、追加、又は削除がなされてもよいことが当該技術分野の当業者には明らかであろう。