【実施例】
【0035】
上記実施形態で示したトンネル10に設けたレゾネータ30における圧縮波低減効果について確認したので、その結果を以下に示す。
ヘルムホルツ型のレゾネータの共鳴周波数F(Hz)は、以下の式(1)に示す通りである。
F=c/2π×(S/(L+1.57r)・V)
1/2 ・・・(1)
ここで、c:音速(340m/s)、r:開口部31の半径、S:開口部31の断面積、L:開口部31の長さ、V:レゾネータ形成空間Rの容積である。
【0036】
r=0.4m、L=0.6m、V=192m
3(レゾネータ形成空間Rの断面積32m
2、レゾネータ形成空間Rの軸方向長さ6m)とすると、上式(1)において、共鳴周波数Fは、F=約2.5Hzとなる。これにより、トンネル10における圧縮波において、2.5Hzを中心周波数とする超低周波音を低減することができる。
なお、トンネル10における圧縮波において、開口部軸方向の断面積、長さを変化させること、また、損失を考慮した共鳴特性の調整をすることにより、5Hz以下の超低周波音を低減することができる。
【0037】
また、上記検討例のように、レゾネータ形成空間Rの軸方向長さを6mとした場合、長さ3,000mのトンネル10であれば、最大500個のレゾネータ30を備えることができる。
したがって、上記実施形態の構成によれば、超低周波を共鳴周波数とするヘルムホルツ型のレゾネータ30を、トンネル10内に多数備えることができ、高い圧縮波低減効果を備えると言える。
【0038】
リニアモーターカー等、今まで以上に高速度で走行する列車の場合、発生する圧縮波は大幅に大きくなる。圧縮波の圧力上昇(Δp/p
0)の大きさは、
Δp/p
0=γχM
2/(1−M
2)
となることが知られている。ここで、Δpは最大圧力、p
0は大気圧、γは比熱比、χは
トンネル断面積に対する列車の断面積の比、M:列車のマッハ数である。
例えば、時速500km/hで走行する列車の場合、音速を340m/sとすると、マッハ数M=0.41となる。さらに、p
0=101,325Pa、γ=1.4、χ=0.
12とすると、Δp/p
0=0.033となる。
【0039】
また、ヘルムホルツ型のレゾネータにおいて、十分な圧縮波低減効果を得るには、以下の式(2)に示す結合定数κを10程度とするのが好ましいとされている。
κ=V/2εAD ・・・(2)
ここで、Aはトンネル10(列車走行空間S)の断面積、Dは開口部31の設置間隔、εは音圧比である。
音圧比εは、
ε=Δp/p
0×((γ+1)/2γ)
であり、Δp:最大圧力、p
0:大気圧、γ:比熱比、である。
ここで、Δp/p
0=0.033、比熱比γ=1.4とすると、ε=0.029となる。
V:レゾネータ形成空間Rの容積V=192m
3、トンネル10の断面積A=74m
2、開口部31の設置間隔D(=レゾネータ形成空間Rの軸方向長さ)=6mとすると、上式(2)において、κ=7.5となる。これにより、ヘルムホルツ型の上記レゾネータ30において、十分な圧縮波低減効果が得られる。
【0040】
(その他の実施形態)
なお、本発明のトンネルは、図面を参照して説明した上述の実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。
例えば、上記実施形態では、レゾネータ形成空間Rを、仕切壁33により覆工体11の軸方向に沿って複数に仕切るようにしたが、これに限らない。
図4に示すように、レゾネータ形成空間Rは、覆工体11の軸方向に連続して形成され、1つのレゾネータ形成空間Rに、複数の開口部31が形成されているようにしてもよい。
このような構成であっても、圧縮波は、各開口部31を介してレゾネータ形成空間R内で共鳴する。したがって、圧縮波は、覆工体11内を軸方向に伝播していく際に、段階的に低減されていく。また、レゾネータ形成空間Rを、覆工体11の軸方向に連続して形成することで、大きな容積の共鳴空間を確保することができ、圧縮波低減効果を増大させることができる。
また、このように仕切壁33を設けずに、レゾネータ形成空間Rを、覆工体11の軸方向に連続して形成することで、レゾネータ形成空間Rを、緊急時の避難路等として利用することもできる。
【0041】
また、
図5に示すように、路盤20の下方の空間全体をレゾネータ形成空間Rとしても良い。
これにより、レゾネータ形成空間Rの容積を増大させることができる。これにより、圧縮波低減効果を増大させることができる。
【0042】
さらに、
図6に示すように、路盤20の下方の空間全体をレゾネータ形成空間Rとしつつ、路盤20に対してレゾネータ形成空間R側に、路盤20と覆工体11とを結び、レゾネータ形成空間Rを、覆工体11の軸方向に直交する断面で複数に仕切る側壁32が設けられているようにしてもよい。
これにより、複数のレゾネータ形成空間Rを並接することができる。これにより、圧縮波低減効果を増大させることができる。
【0043】
さらには、
図7に示すように、側壁32に、覆工体11の軸方向に直交する断面方向で側壁32を挟んで互いに隣接するレゾネータ形成空間Rどうしを連通させる連通口37が形成されているようにしてもよい。
このようにして、並接されたレゾネータ形成空間Rを連通口37によって連通することで、レゾネータ形成空間Rの容積を増大させることができる。これにより、圧縮波低減効果を増大させることができる。
【0044】
また、開口部31は、例えばトンネル10の入口、出口に近い場合、あるいはトンネル10の出入口から遠い場合等、トンネル10内の位置に応じて、開口部31の開口面積、開口部31の設置ピッチ等を異ならせても良い。
また、複数のレゾネータ形成空間Rの容積も、トンネル10内で様々に異ならせても良い。
このようにすることで、様々な周波数の圧縮波を低減することが可能となる。
【0045】
また、上記実施形態では、レゾネータ形成空間Rを、路盤20の下方に形成するようにしたが、これに限らない。仕切壁を覆工体11の上部に天井板のごとく設け、トンネル10内の上部にレゾネータ形成空間Rを形成しても良い。また、仕切壁を覆工体11の側部に側壁板のごとく設け、トンネル10内の側部にレゾネータ形成空間Rを形成しても良い。
【0046】
さらに、上記したような構成は、トンネル10に限らず、立坑にも同様にして適用することが可能である。
【0047】
加えて、覆工体11は、シールド工法に限らず、
図8に示すように、NATM(New Austrian Tunneling Method)工法によって構築したものであっても良い。この場合、覆工体は、地山を掘削した掘削孔の内周面にコンクリートを吹き付けることによって形成された覆工コンクリート(覆工体)91となる。そして、覆工コンクリート91内に、路盤20を設ける。路盤20の上方は列車走行空間Sとされ、路盤20の下方はレゾネータ形成空間Rとされる。この路盤20に開口部31を形成することで、上記実施形態と同様の作用効果を得ることができるレゾネータ30を備えたトンネル10を構成することができる。
【0048】
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。