(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6357021
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】車両用シートの操作レバー構造
(51)【国際特許分類】
B60N 2/22 20060101AFI20180702BHJP
A47C 1/024 20060101ALI20180702BHJP
【FI】
B60N2/22
A47C1/024
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-115084(P2014-115084)
(22)【出願日】2014年6月3日
(65)【公開番号】特開2015-229375(P2015-229375A)
(43)【公開日】2015年12月21日
【審査請求日】2017年4月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000133098
【氏名又は名称】株式会社タチエス
(74)【代理人】
【識別番号】100141221
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 和明
(74)【代理人】
【識別番号】100091764
【弁理士】
【氏名又は名称】窪谷 剛至
(74)【代理人】
【識別番号】100103366
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 礼至
(72)【発明者】
【氏名】田口 雅之
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 優強
(72)【発明者】
【氏名】牧田 直之
(72)【発明者】
【氏名】藤田 大輔
【審査官】
小島 哲次
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭63−128842(JP,U)
【文献】
国際公開第02/085664(WO,A2)
【文献】
特開平03−062210(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00 −2/90
A47C 1/024−1/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のシートに設けられた操作レバー構造において、
乗員が操作する操作レバーと、
端部が前記操作レバーに固定されると共に、前記シート内に挿入される操作軸と、
前記操作軸の軸線方向の移動により、前記操作軸が押込み状態で係止されると共に、前記操作軸が引出し状態で係止されるストッパ機構と、
を備え、
前記ストッパ機構は、
前記操作軸に設けられたストッパピンと、前記操作軸が挿入されて前記シート側に固定されると共に、前記軸線方向に延在して前記ストッパピンが入り込むガイド溝が形成された筒状の軸受部と、を有し、
前記ガイド溝には、前記操作軸が押込み係止状態を維持するために前記ストッパピンが落ち込む第1の凹部と、前記操作軸が引出し係止状態を維持するために前記ストッパピンが落ち込む第2の凹部と、を有することを特徴とする車両用シートの操作レバー構造。
【請求項2】
車両のシートに設けられた操作レバー構造において、
乗員が操作する操作レバーと、
端部が前記操作レバーに固定されると共に、前記シート内に挿入される操作軸と、
前記操作軸の軸線方向の移動により、前記操作軸が押込み状態で係止されると共に、前記操作軸が引出し状態で係止されるストッパ機構と、
を備え、
前記ストッパ機構は、
引出し方向に付勢されると共に、係止爪を外周に有する筒状の回転子と、
前記操作レバーに固定されると共に、前記回転子を前記軸線方向で押込み方向に移動させる筒状の前記操作軸と、
前記回転子及び前記操作軸を包囲すると共に、前記回転子の前記係止爪を係止させるために周方向に等間隔に設けられた爪部と、前記爪部間で前記軸線方向に延在して前記係止爪を前記軸線方向に摺動させる係止解除溝と、が内壁面に設けられた筒状の軸受け部と、を備えたことを特徴とする車両用シートの操作レバー構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートの操作レバー構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、このような技術分野として、実公平4−11552号記載のものがある。この公報に記載された車両用シートは、リクライニング機構に連結される揺動アームを有し、この揺動アームにシートバックの下端部が固定されている。揺動アームは、操作軸の回転により傾動する。この操作軸の先端部には、被係合部が設けられ、被係合部には円盤の周縁部にギアが形成されてなる。そして、操作軸の先端には操作レバーに固定された嵌合軸が挿入されている。また、この操作レバーには、操作軸に固定された円盤のギアに噛み合うリング状の係合部が設けられ、この係合部にもギアが形成されている。従って、操作レバーを外側に引き出すことで、操作レバーの係合部と操作軸の被係合部とがギア結合し、これにより、操作レバーを回すことで操作軸を回転させるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公平4−11552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述した従来の車両用シートの操作レバー構造では、操作レバーの回動によって操作軸を回転させるためには、ギア連結を利用しなければならず、操作レバーの回転を操作軸に間接的に伝達しているので、ギアの摩耗により、操作レバーの回転が操作軸に伝わらず、操作軸が空回りする虞があり、確実に操作軸を回転させ難いという課題がある。
また、このような操作レバーの構造にあっては、シートの側面に操作レバーが設けられており、この操作レバーとドアとの間の隙間が狭く、ドアの側面に設けているドアポケットの内部からものを取り出す際には、操作レバーが邪魔となり、ドアポケットからものが取り出し難かったし、操作レバーとシート側面との間に隙間があるので、シートベルトがこの隙間に嵌まり込み、シートベルトが引っ張られることにより操作レバーが誤動作する恐れを生じ、一層の安全性の確保を図る必要もあった。
【0005】
本発明は、操作レバーをシート側面に格納でき、この操作レバーの回転を確実に操作軸に伝達するようにした車両用シートの操作レバー構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
車両のシートに設けられた操作レバー構造において、
操作レバー構造は、
乗員が操作する操作レバーと、
端部が前記操作レバーに固定されると共に、前記シート内に挿入される操作軸と、
前記操作軸の軸線方向の移動により、前記操作軸が押込み状態で係止されると共に、前記操作軸が引出し状態で係止されるストッパ機構と、
を備えたことを特徴とする。
【0007】
この車両用シートの操作レバー構造においては、リクライニング機構などの操作に直接関与する操作軸の端部が操作レバーに固定されているので、この操作レバーの回転を確実に操作軸に伝達することが出来る。このように、操作レバーに端部が固定された操作軸の軸線方向の移動により、操作軸の押し込み状態の係止、即ち、操作レバーの押し込み状態の係止と、操作軸の押し出し状態の係止、即ち、操作レバーの押し出す状態の係止とをストッパ機構で行っている。操作レバーは操作軸の軸線方向に移動し、操作時に、乗員が操作しやすい位置まで操作レバーが移動するので、乗員は操作レバーの操作が行い易く、操作レバーが非操作時には、シート側に押し込まれるので、その分、操作レバーとドアとの間に空間が生じ、この空間を有効に利用することができ、操作レバーをシート側に格納できる。
【0008】
前記ストッパ機構は、
前記操作軸に設けられたストッパピンと、前記操作軸が挿入されて前記シート側に固定されると共に、前記軸線方向に延在して前記ストッパピンが入り込むガイド溝が形成された筒状の軸受部と、を有し、
前記ガイド溝には、前記操作軸が押込み係止状態を維持するために前記ストッパピンが落ち込む第1の凹部と、前記操作軸が引出し係止状態を維持するために前記ストッパピンが落ち込む第2の凹部と、を有することを特徴とすると好適であり、この様な構成では、簡易にストッパ機構を達成することができる。
【0009】
前記ストッパ機構は、
引出し方向に付勢されると共に、係止爪を外周に有する筒状の回転子と、
前記操作レバーに固定されると共に、前記回転子を前記軸線方向で押込み方向に移動させる筒状の前記操作軸と、
前記回転子及び前記操作軸を包囲すると共に、前記回転子の前記係止爪を係止させるために周方向に等間隔に設けられた爪部と、前記爪部間で前記軸線方向に延在して前記係止爪を前記軸線方向に摺動させる係止解除溝と、が内壁面に設けられた筒状の軸受け部と、を備えたことを特徴とすると好適である。操作レバーの押し込みによって、ワンタッチで操作レバーを押し出し状態、即ち、突出状態とすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、操作ハンドルをシート側に格納できるので、操作レバーとドアとの間に空間が生じ、この空間を有効に使用することができ、またはシートのレイアウトの自由度が広がる。
また、操作レバーが格納されることで、シートベルトが操作レバーとシート側面との間の隙間に嵌まり込むことがなくなり、シートベルトが引っ張られることによる誤動作が生じることがない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る車両用シートの操作レバー構造の第1の実施形態を示す分解斜視図である。
【
図2】操作レバーの押込み状態を示す側面図である。
【
図3】操作レバーの引き出し状態を示す側面図である。
【
図4】本発明に係る車両シートの操作レバー構造の第2の実施形態を示す分解斜視図である。
【
図6】操作レバーの押込み状態を示す側面図である。
【
図7】操作レバーを引出すために僅かに押込んだ状態を示す側面図である。
【
図8】操作レバーの引出し状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る車両用シートの操作レバー構造の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0013】
(第1の実施形態)
図1〜
図3に示されるように、車両用シート1の操作レバー構造において、乗員が操作する操作レバー10は、その端部が操作レバー10に固定されると共に、シート1内に挿入される操作軸2と、操作軸2の軸線L方向の移動により、操作軸2が押込み状態で係止されると共に、操作軸2が引出し状態で係止されるストッパ機構Sと、を備えている。なお、操作軸2は、リクライニング機構に連結され、操作軸2の回転によってリクライニング機構を作動させる。
【0014】
シート1の側面すなわちシートクッションの側面にはサイドプレート3が固定されている。このサイドプレート3には、操作レバー10を格納するための凹部4が形成されている。そして、凹部4の底部4bには、操作軸2を挿入させるための軸孔4aが設けられている。
【0015】
操作軸2には、軸線Lに対して直行する方向にストッパピン9が立設されている。凹部4の底部4bには、操作軸2が挿入される筒状の軸受部7が固定されている。この軸受部7には、軸線L方向に延在してストッパピン9が挿入されるガイド溝8が形成されている。
【0016】
ガイド溝8の両端には、第1の凹部8aと第2の凹部8bが形成されている。第1の凹部8aには、操作軸2の押込み係止状態を維持するためにストッパピン9が落ち込む。同様に、第2の凹部8bには、操作軸2の引出し係止状態を維持するためにストッパピン9が落ち込む。
【0017】
そして、ガイド溝8において、第1の凹部8a及び第2の凹部8bの近傍には、山状の溝絞り部8c、8dが形成され、これによって、ストッパピン9が軸線L方向に移動し難くなっている。また、操作軸2は、操作レバー10を矢印A方向に復帰させるための巻バネによって付勢されている。よって、ストッパピン9を、第1の凹部8a又は第2の凹部8b内で確実に維持させることができる。
【0018】
このようにして、ストッパ機構Sは、ストッパピン9と、軸受部7と、軸受部7に形成されるガイド溝8と第1の凹部8aと第2の凹部8bで構成される。このような構成を採用すると、簡易にストッパ機構Sを達成することができる。
【0019】
(第2の実施形態)
図4及び
図5に示されるように、車両用シート21の操作レバー構造において、操作レバー20は、端部が操作レバー20に固定されると共に、シート21内に挿入される操作軸22と、操作軸22の軸線L方向の移動により、操作軸22が押込み状態で係止されると共に、操作軸22が引出し状態で係止されるストッパ機構S1と、を備えている。
【0020】
シート21の側面すなわちシートクッションの側面にはサイドプレート23が固定されている。このサイドプレート23には、操作レバー20を格納するための凹部24が形成されている。そして、凹部24の底部24bには、操作軸22を挿入させるための軸孔24aが設けられている。
【0021】
ストッパ機構S1は、圧縮螺旋バネ31によって引出し方向Aに付勢されると共に、係止爪32aを円筒状の胴部32bの外周面に有する筒状の回転子32と、端部が操作レバー20に固定されると共に、回転子32を軸線L方向で押込み方向Bに移動させる筒状の操作軸22と、回転子32及び操作軸22を包囲する筒状の軸受部33と、を備えている。
この軸受部33の内壁面には、回転子32の係止爪32aを係止させるために周方向に等間隔に設けられた爪部33aと、爪部33a間で軸線方向に延在して係止爪32aを軸線L方向に摺動させる係止解除溝33bと、が設けられている。
【0022】
軸受部33内には、圧縮螺旋バネ31が収容され、圧縮螺旋バネ31は、回転子32を引出し方向Aに付勢している。レバー軸35が回転子32に挿入され、レバー軸35の周囲を回転子32が回転し、レバー軸35を介して回転子32に圧縮螺旋バネ31のバネ力が付与されている。
【0023】
操作レバー20には、筒状の操作軸22の端部が固定され、操作軸22内にレバー軸35が挿入されている。操作軸22の先端には、回転子32の係止爪32aに噛合する鋸歯部22aが全周に渡って形成されている。回転子32の円筒状に形成した胴部32bが操作軸22内に入り込んだ状態で、鋸歯部22aと係止爪32aとが噛合する。そして、回転子32の係止爪32aは、周方向に120度毎に形成され、軸受部33の係止解除溝33bも120度毎に形成されている。
【0024】
図5に示されるように、圧縮螺旋バネ31によって、回転子32が押し出し方向に付勢されているので、回転子32の係止爪32aが軸受部33の爪部33aに係止されている。この状態で
図7に示されるように操作レバー20を押すと、操作軸22の鋸歯部22aが押込み方向Bに移動し、この鋸歯部22aが回転子32の係止爪32aを矢印B方向に押すことによって、回転子32の係止爪32aが軸受部33の爪部33aから外れる。
図8に示されるように、この状態で回転子32は同方向に回転しながら、係止爪32aは、圧縮螺旋バネ31のバネ力によって係止解除溝33bに沿って矢印A方向に移動する。
【0025】
このとき、回転子32の係止爪32aが操作軸22の鋸歯部22aと噛合しながら、操作軸22を矢印A方向に押し、これによって、操作レバー20は、矢印A方向に突出する。
また、この状態で操作レバー20を矢印B方向に押すことで、圧縮螺旋バネ31の不勢力に抗して回転子32の係止爪32aが軸受部33の爪部33aに係止されて、操作レバー20が
図6に示された状態になる。
【0026】
このような操作レバー10、20は、サイドプレート3、23に操作レバー10、20を格納するための凹部4、24が設けられ、非使用時には、この凹部4,24内に格納することができ、サイドプレート3,23の側面よりも内部に位置しているため、ドアとの間の隙間を有効に活用することができる。
また、操作レバー10、20はサイドプレート3,23の側面よりも内部に位置しているので、シートベルトがこの操作レバー10,20に引っ掛かることもなく、シートベルトによる操作レバー10,20の誤動作が防止できる。
【符号の説明】
【0027】
1・・・車両用シート(シートクッション)2・・・操作軸 7…軸受部 8・・・ガイド溝 8a・・・第1の凹部 8b…第2の凹部 9…ストッパピン 10、20…操作レバー
21…車両用シート 22…操作軸 31…圧縮螺旋バネ 32…回転子 32a…係止爪 33…軸受部 33a…爪部 33b…係止解除溝 L・・・軸線 S、S1…ストッパ機構 A…引出し方向 B…押込み方向