(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
我が国において、公道下の地中埋設配管には、一般に上水道、下水道、ガス管がある。地域によっては、電力を供給する配線(配線は、絶縁埋設管の中を通す)、蒸気管、温水管なども埋設されている。
下水道は、主に都市部の雨水及び汚水を管渠(下水道管と人孔とからなる)などで集めた後、公共用水域へ排出するための施設、設備の集合体であり、多くは浄化などの水処理を行う。
【0003】
雨水は、気象学における降水、及び一旦降り積もった雪が気温の上昇などで融けた融雪水も含むが、何れも路面など地表にあるものが対象で、河川水や地下水となったものは除く。
汚水は、水洗式便所からのし尿や、家庭における調理、洗濯で生じる生活排水と、商店やホテル、町工場から大工場にいたる事業場からの産業排水(耕作は除く)などがある。
【0004】
下水道管内に管を何本同時に通すかは、地方自治体によって大きく異なる。
雨水(雨どい)、生活排水(台所、洗面台、お風呂)及びし尿の3本を別々に通す自治体、生活排水及びし尿の2本を別々に通す自治体(雨水は側溝、河川放流)、生活排水とし尿とを1本にして通す自治体(雨水は側溝、河川放流)とがあり、生活排水とし尿とを1本にして通す自治体(雨水は側溝、河川放流)が主流である。
また、地方では、し尿は汲み取り式で、生活排水だけの自治体もある。
しかし、し尿のみで、雨水と生活排水とを河川放流する自治体は減っている。
【0005】
下水道の管渠は、適当な間隔で、マンホール(Manhole)を堀り、マンホールとマンホールとの間を、自然に汚水が流れるように、傾斜を付けて下水道管を接続する構造となっている。マンホールは、地下の下水道、暗渠、埋設された電気、通信ケーブルなどの管理(点検、修理、清掃、排気など)を目的として作業員が地上から出入りできるように地面にあけられた縦孔(人孔)であり、普通「桝」と呼ばれている。しかし、傾斜が足りないときや、傾斜地では、マンホールポンプを併用して、高低差を生むように操作されている。
【0006】
下水道管は、固液混合の液体を流すため、その損耗が激しい。古くはレンガ積み配管もあったが、陶器管、鉄管が戦後の主力であった。
陶器管、鋼管は数十年持つといわれていたが、実際には老朽化が激しく、昭和の時代に多くはコンクリート管に更新されている。
最近は、支線配管など小口径の場合は、強度と耐久性に優れた塩化ビニール製管が増えている。
更には、硬質ポリエチレン製管や硬質ポリプロピレン製管なども用いられるようになってきた。
【0007】
下水道管の更新は、下水道管の老朽化、接続部の異常により適宜交換されてゆくが、住宅が多くなり配管容量の不足(細すぎる)によって、より太い管に更新される場合も多い。
水道管、温水管は常に水で満たされており、電線配管には重い銅線が収納されている。そのため、地震による液状化でも水道管、温水管が浮き上がることは無いが、下水道管はマンホール、下水道管とも内部は空気(空間部)が多く、地震による液状化で浮き上がり、多くのダメージを受けている。
【0008】
そこで、下水道を維持し続けるため、交換工事を如何に実施するかが問題となっている。
下水道管の更新工事方法で最も多いのが開削工法による交換である。
開削工法では、交通を迂回あるいは遮断した後、アスファルトをダイヤモンドカッターで切断し、土留め(崩れ止め)をしながらバックフォーで掘削し、既設の下水道管やガス管、水道管などの周囲は手堀りで掘削する。その後、汚水のバイパスを行い、既設の下水道管の切断除去、新しい下水道管への交換を行い、汚水のバイパスを解除し、埋め戻しを行い、最後に再舗装するという手順を要する。
【0009】
このため、開削工法では、道路を長い期間占有すると共に、工事費も莫大になる。しかも、人が溝へ降りて作業するので、溝が崩れて埋まるなどの危険がある。さらに、既設の下水道管を切断作業するためのスペースが必要となるなどの問題が指摘されている。
そこで、開削工法に変わる手段として、地下での置換工法が開発されてきた。
例えば、地中に埋設された既設管を切削若しくは破砕しながら、同時に、先行させる先導管と共に新しい更新管を推進する改築推進装置で用いるカッターヘッドにおいて、ローラ形のカッター本体に、押圧により既設管の端面に溝を形成する押圧歯が軸方向に複数形成されたローラ型カッターと、直線状の一つの切削刃を有する切削ビットと、を組み合わせてカッターヘッドの面板に配置し、ローラ型カッターがカッターヘッドの面板の半径上に位置するようにローラ型カッターを面板上に回転自在に取り付けた既設管改築推進用カッターヘッド(例えば、特許文献1参照)が提案されている。
【0010】
特許文献1では、老朽化した塩化ビニール製管を更新する場合に、カッターで切削しても連続した切り屑とならずに短く細断した形状の切り屑にして、容易にスクリューで排出させることができるなどの利点がある。
また、推進用長尺体を挿通させる貫通孔を長手方向に有する本体の先端寄り位置の周方向複数箇所にデイスクカッタを回転自在に設け、本体の貫通孔内にその軸線方向に移動可能に筒状のシリンダロッドを設け、シリンダロッドを本体に対して進退駆動させるための駆動流体供給機構を設け、本体を推進用長尺体に係脱可能に係止するため係止体を本体に設け、シリンダロッドを推進用長尺体に係脱可能に係止するためシリンダロッドに係止体を設けた非開削式旧管取替用装置(例えば、特許文献2参照)が提案されている。
【0011】
特許文献2では、駆動流体の供給によつて推進し、且つ旧管破砕の際にも、その推進力の分力を利用して破砕するため、振動及び騒音の発生が少なく、旧管破砕の際、本体の推進による単なる楔効果によつて旧管を押し広げるだけではなく、デイスクカッタによる切断とその回転力による押し上げがあるので、効率が良いなどの利点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
置換工法では、発進マンホールに、油圧ジャッキなどの押込み装置を設置し、到達マンホールに、油圧巻取り機などの牽引装置を設置し、破砕機、ロータリーカッターなどで既設の下水道管を破砕し、破砕機、ロータリーカッターなどの後方より新しい下水道管を押し込むことによって達成される。
しかし、置換工法は、マンホールが押込み装置や牽引装置などの搬入ができるサイズでないと実施できない。マンホールの強度が、押込み装置や牽引装置などの反力を受け止め可能でないと実施できない。既設の下水道管が共回りしたりすると破砕効率が非常に低下する。既設の下水道管が地震による液状化現象で、屈曲していると施工ができないなどの問題点が提起されている。
【0014】
特許文献1の既設管改築推進用カッターヘッドでは、マンホール内に押込み装置や牽引装置などの搬入ができるサイズでないと実施できない、マンホールの強度が、押込み装置や牽引装置などの反力を受け止め可能でないと実施できない、既設の下水道管が共回りしたりすると破砕効率が非常に低下し、既設の下水道管が地震による液状化現象で、屈曲していると施工ができないなどの解決すべき課題がある。
【0015】
一方、特許文献2の非開削式旧管取替用装置では、既設の下水道管を破壊しながら、その後方より新たな下水道管を敷設するので、既設の下水道管を破壊できる応力、既設の下水道管を破砕できるエネルギーが破砕機には必要である。
また、特許文献2の非開削式旧管取替用装置では、既設の下水道管が共回りして非開削式旧管取替用装置が既設の下水道管を噛み込めなかったり、非開削式旧管取替用装置がマンホールとマンホールの中間で故障したりすると、公道側から開削して既設の下水道管と共に非開削式旧管取替用装置を取り出さなければならないという問題がある。
【0016】
本発明は斯かる従来の問題点を解決するために為されたもので、その目的は、既設の下水道管を確実に破壊した後、破壊した既設の下水道管領域に新たな下水道管を確実に敷設することが可能な下水道管の更新工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
請求項1に係る発明は、既設の
下水道管内に
可撓管を配置する工程と、火工品の破壊力を伝播する圧力媒体を、前記可撓管を除く前記既設の下水道管内に充填する工程と、
前記可撓管内に火工品を引き込む工程と、前記火工品を起爆し、前記既設の下水道管を破壊する工程と、破壊された前記既設の下水道管領域に新たな下水道管を推進工法により敷設する工程とを有することを特徴とする。
【0018】
請求項2に係る発明は、一方のマンホールから既設の
下水道管内を通して他方のマンホールへ牽引部材を配置する工程と、更新管用牽引部材及び補助牽引部材を内部に配置した可撓管に前記牽引部材を取り付けると共に、前記牽引部材を牽引して前記可撓管を前記一方のマンホールから前記既設の下水道管内を通して前記他方のマンホールへ引き込む工程と、前記既設の下水道管内に圧力媒体を充填する工程と、前記補助牽引部材に火工品を取り付け、前記補助牽引部材を牽引して前記可撓管内に前記火工品を引き込む工程と、前記火工品を起爆し、前記既設の下水道管を破壊する工程と、前記一方のマンホール内に押込装置を配置する工程と、前記他方のマンホール内に牽引装置を配置する工程と、先頭の更新管に前記更新管用牽引部材を取り付け、前記更新管用牽引部材を前記牽引装置で牽引しながら後続の更新管を前記押込装置で順次押し込み、前記一方のマンホールから前記他方のマンホールに向かって前記更新管を連続して敷設する工程とを有することを特徴とする。
【0019】
請求項3に係る発明は、一方のマンホールから既設の
下水道管内を通して他方のマンホールへ牽引部材を配置する工程と、内部に補助牽引部材を配置すると共に外側部に更新管用牽引部材を配置した可撓管に前記牽引部材に取り付け、前記牽引部材を牽引して前記可撓管を前記一方のマンホールから前記既設の下水道管内を通して前記他方のマンホールへ引き込む工程と、前記既設の下水道管内に圧力媒体を充填する工程と、前記補助牽引部材に火工品を取り付け、前記補助牽引部材を牽引して前記可撓管内に前記火工品を引き込む工程と、前記火工品を起爆し、前記既設の下水道管を破壊する工程と、前記一方のマンホール内に押込装置を配置する工程と、前記他方のマンホール内に牽引装置を配置する工程と、先頭の更新管に前記更新管用牽引部材を取り付け、前記更新管用牽引部材を前記牽引装置で牽引しながら後続の更新管を前記押込装置で順次押し込み、前記一方のマンホールから前記他方のマンホールに向かって前記更新管を連続して敷設する工程とを有することを特徴とする。
【0020】
請求項4に係る発明は、一方のマンホールから既設の
下水道管内を通して他方のマンホールへ牽引部材を配置する工程と、内部に補助牽引部材を配置した可撓管に前記牽引部材を取り付け、前記牽引部材を牽引して前記可撓管を前記一方のマンホールから前記既設の下水道管内を通して前記他方のマンホールへ引き込む工程と、前記既設の下水道管内に圧力媒体を充填する工程と、前記補助牽引部材に火工品を取り付け、前記補助牽引部材を牽引して前記可撓管内に前記火工品を引き込む工程と、前記火工品を起爆し、前記既設の下水道管を破壊する工程と、破壊した前記既設の下水道管領域に推進工法によって更新管用牽引部材を牽引し、前記一方のマンホールと前記他方のマンホールとの間に前記更新管用牽引部材を配置する工程と、前記一方のマンホール内に押込装置を配置する工程と、前記他方のマンホール内に牽引装置を配置する工程と、先頭の更新管に前記更新管用牽引部材を取り付け、前記更新管用牽引部材を前記牽引装置で牽引しながら後続の更新管を前記押込装置で順次押し込み、前記一方のマンホールから前記他方のマンホールに向かって前記更新管を連続して敷設する工程とを有することを特徴とする。
【0021】
請求項5に係る発明は、請求項1乃至請求項4の何れか記載の下水道管の更新工法において、前記可撓管は、内部に火工品を通すことができる内径を有する管状体で構成されていることを特徴とする。
請求項6に係る発明は、請求項1乃至請求項5の何れか記載の下水道管の更新工法において、前記火工品は、導爆線、爆薬を点在するように取り付けた導爆線又は非火薬ガス発生剤を点在するように取り付けたロープであることを特徴とする。
【0022】
請求項7に係る発明は、請求項1乃至請求項6の何れか記載の下水道管の更新工法において、前記圧力媒体は、前記既設の下水道管内に注入後に自然に固まる充填物、前記既設の下水道管内に充填後に水を注入し混合すると固まる充填物、又は前記既設の下水道管内に注入後に固まらない充填物であることを特徴とする。
請求項8に係る発明は、請求項7記載の下水道管の更新工法において、前記既設の下水道管内に注入後に自然に固まる充填物は、コンクリート、モルタル又は石膏であり、前記既設の下水道管内に充填後に水を注入し混合すると固まる充填物は、コンクリートの粉末、石膏の粉末又は吸水性高分子であり、前記既設の下水道管内に注入後に固まらない充填物は、水又は泥水であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、既設の下水道管内に配置した火工品を起爆して既設の下水道管を破壊するので、既設の下水道管の敷設位置に新たな下水道管を敷設する作業が容易になる。
本発明によれば、既設の下水道管内に配置した火工品を起爆して既設の下水道管を破壊した後、既設の下水道管の敷設位置に新たな下水道管を敷設するので、新たな下水道管の敷設に要する押込力及び引込力が従来工法に比して遙かに小さくなり、新たな下水道管を押し込む押込装置及び新たな下水道管を牽引する牽引装置を小型にすることができる。
【0024】
本発明によれば、既設の下水道管内に配置した火工品を起爆して既設の下水道管を破壊した後、既設の下水道管の敷設位置に新たな下水道管を敷設するので、新たな下水道管の敷設に要する速度が従来工法に比して遙かに早くなり、新たな下水道管の敷設速度が飛躍的に増大する。
本発明によれば、既設の下水道管内に配置した火工品を起爆して既設の下水道管を破壊した後、既設の下水道管の敷設位置に新たな下水道管を敷設するので、新たに敷設する下水道管の管径を既設の下水道管の管径よりも大きくすることが可能となる。
【0025】
本発明によれば、既設の下水道管内に配置した可撓管内に既設の下水道管の強度よりも圧倒的に勝る破壊力を発現できる火工品を配置し、既設の下水道管内に圧力媒体を充填して火工品を起爆するため、火工品の破壊力は圧力媒体を伝播して既設の下水道管を確実に破砕することができる。
本発明によれば、既設の下水道管の破砕に使用される圧力媒体に、注入した後に自然に固まる充填物又は水を注入し混合すると固まる充填物を使用するので、圧力媒体は破砕された既設の下水道管の無数の破片をその場で周囲の土壌中に包み込んで硬化物群に変え、破壊による既設の下水道管の無数の破片の拡散を抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(第一実施形態)
図1は、本発明の第一実施形態に係る下水道管の更新工法の作業手順を示すフローチャートである。
本実施形態に係る下水道管の更新工法は、
図1に示すフローチャートに基づいて、例えば、
図3に示すような既設の下水道管1を、
図16、
図17に示すように、現位置(土中)で破砕した後、その位置に複数の更新管25aを連続して押し込んで新たな下水道管25を敷設する工法である。
【0028】
本実施形態では、例えば、道路使用許可、誘導人配置、看板設置、重機械回送、発電機設置、資材置き場確保などの付帯作業が必要に応じて行われる。
既設の下水道管1は、例えば、
図2に示すように、隣接配置されるマンホール2,3間を地下で接続して管渠5を構成する。各マンホール2,3は公道4側の開口が蓋2a,3aで封鎖されている。既設の下水道管1は、例えば、レンガ積み配管、陶器管、鉄管、鋼管、コンクリート管、塩化ビニール製管、硬質ポリエチレン製管、硬質ポリプロピレン製管などの管1aを繋いで構成されている。
【0029】
以下、本実施形態を
図1に示すフローチャートに基づいて説明する。
先ず、第一工程(1)の管内調査工程及び清掃工程を実施する。
第一工程(1)では、既設の下水道管1の管内調査を行う前に、管渠5の施工図面の確認を行う。管渠5の施工図面には、マンホール2,3の位置、既設の下水道管1の配管経路、既設の下水道管1の支線配管の数、位置、経路などが記載されている。
そして、現地にてマンホール2,3の位置の確認を行い、例えば、
図3に示すように、マンホール2,3の蓋2a,3aを外してマンホール2,3内の換気を行い、マンホール2,3の内部調査、既設の下水道管1の内部の確認などを行う。
【0030】
次に、清掃工程を行う。清掃工程では、既設の下水道管1の内部の清掃を行う。例えば、高圧洗浄装置、真空吸引装置、排水処理装置などを組み合わせ、既設の下水道管1の内部の泥、汚物などを洗浄し除去する。
次に、既設の下水道管1の内部の洗浄後、あるいは洗浄の前後で、ファイバースコープ、管内カメラなどで既設の下水道管1内の各管1aの内部確認を行う。
次に、第二工程(2)の取付管処理工程を実施する。
ここで、取付管6とは、例えば、
図4に示すように、各家庭やビル、工場などから汚水を受け入れるための公共桝7を、既設の下水道管1と結ぶ管を意味する。
【0031】
第二工程(2)では、施工図面確認、溜桝確認(各家庭やビル、工場などから汚水を受け入れる場合、私有地境界付近に設けられる点検用の桝(宅マス)の確認)、配管経路などの確認、配管内の確認などを行う。
次いで、高圧洗浄装置、真空吸引装置、排水処理装置などを組み合わせ、配管及び溜桝内の泥、汚物などを洗浄し除去する配管清掃、溜桝内清掃を行う。
さらに、洗浄後、あるいは洗浄の前後で、ファイバースコープ、管内カメラで内部確認を行う。
次いで、溜桝から上流側の配管を分離後、溜桝を利用停止とするなどの処置を行う。
その後、取付管6内を充填物で閉塞し、取付管6と既設の下水道管1との通路を遮断する。
【0032】
次に、第三工程(3)のメッセンワイヤー引込工程及び可撓管引込工程を実施する。
第三工程(3)を
図5乃至
図9に基づいて説明する。
ここでは、牽引部材の一例としてメッセンワイヤー8を使用する。メッセンワイヤー8とは、例えば、電力用、通信用の架空地線、埋設地線、ちょう架線、自己支持形ケーブル用支持線及び支線、ネット張り用周囲線、電気ホイスト用給電ケーブル支持線、ホース支持線、農事用果樹棚の周囲線などに使用されるワイヤーをいい、亜鉛メッキより線やアルミ鋼より線などで構成されている。本実施形態では、メッセンワイヤー8としてワイヤーロープを使用した。
【0033】
メッセンワイヤー8は、可撓管9をマンホール2,3を経由して既設の下水道管1内に引き込むためにマンホール2,3間に通される。
可撓管9とは、内部に補助牽引部材、更新管用牽引部材及び火工品を通すことができる内径を有する管状体をいい、例えば、内径13mm〜内径20mmの水道用のホース、内径10mm〜内径40mmのプラスチック管などが用いられる。
【0034】
次に、可撓管9を用いる理由について説明する。
先に、メッセンワイヤー8を用いて火工品をマンホール2,3を経由して既設の下水道管1内に引き込んでおいたとすると、次の工程で中込充填材としてモルタル又はコンクリートをマンホール2,3を経由して既設の下水道管1内に流し込む際に、砂や砂利との衝突による衝撃が作用して火工品を起爆したり、火工品を切断したりする虞がある。誤爆すると大変危険であるし、誤爆しないまでも火工品を切断すると、既設の下水道管1の破砕を行うことができなくなる。
そこで、可撓管9を用いれば、火工品は後から通せるので、危険はない。
【0035】
一方、可撓管9を用いないで、中込充填材の充填後に火工品を通そうとしても、中込充填材との摩擦で、大きな張力が働き、火工品を容易に通すことはできない。これも、可撓管9を用いる理由である。
第三工程(3)では、例えば、
図5に示すように、清掃、確認の終わった既設の下水道管1内に、メッセンワイヤー8を一方のマンホール2から他方のマンホール3に向かって人力で押し込み、メッセンワイヤー8を一方のマンホール2から既設の下水道管1を通して他方のマンホール3から引き出す。
または、例えば、
図6に示すように、一方のマンホール2から他方のマンホール3に向かって手でメッセンワイヤー8を押し込みつつ既設の下水道管1内にコンプレッサー10のエア12をエアホース11を介して吹き込み、メッセンワイヤー8を一方のマンホール2から既設の下水道管1を通して他方のマンホール3から引き出す。
【0036】
次に、
図7、
図8、
図9に示すように、予め補助牽引部材として使用するメッセンワイヤー13aと更新管用牽引部材として使用するメッセンワイヤー13bとを内部に配置した可撓管9(以下、メッセンワイヤー入り可撓管9と称する)を引き込む作業を行う。
例えば、
図7に示すように、メッセンワイヤー入り可撓管9をメッセンワイヤー8の片端に固定した後、例えば、
図7に示すように、メッセンワイヤー8を他方のマンホール3側から引っ張って可撓管9を一方のマンホール2から他方のマンホ−ル3に向かって通す。
【0037】
なお、マンホール2,3間の距離が長い場合は、一旦太いロープなど張力に耐えるロープを、メッセンワイヤー8で引き込む。そして、ドラム巻きなどされている可撓管9を引き込む。マンホール2,3間の距離が短ければ、一旦太いロープなど張力に耐えるロープを、メッセンワイヤー8で引き込む作業を行わず、直接メッセンワイヤー8で可撓管9を引き込む。
メッセンワイヤー入り可撓管9は、
図7、
図8に示すように、図面と実測に基づき、マンホール2,3間の既設の下水道管1の長さにマンホール2,3のピットの立ち上がり長さと余長とを考慮した長さで切断した可撓管9を伸ばし、その可撓管9内にメッセンワイヤー13a及びメッセンワイヤー13bを通したものである。メッセンワイヤー13a及びメッセンワイヤー13bは、可撓管9を牽引するためのメッセンワイヤー8とは別に用意する。
【0038】
メッセンワイヤー13aは、メッセンワイヤー8と同様に、例えば、電力用、通信用の架空地線、埋設地線、ちょう架線、自己支持形ケーブル用支持線及び支線、ネット張り用周囲線、電気ホイスト用給電ケーブル支持線、ホース支持線、農事用果樹棚の周囲線などに使用されるワイヤーで、亜鉛メッキより線やアルミ鋼より線などで構成されている。本実施形態では、メッセンワイヤー13aにはメッセンワイヤー8と同様にワイヤーロープを使用した。
メッセンワイヤー13bは、メッセンワイヤー13aと同様にワイヤーロープを使用するが、直径が8mm〜20mm程度の強靱なワイヤーロープが好ましく、第四工程(4)で注入される中込充填材14が硬化した際に付着しないように外皮を付けておく。また、メッセンワイヤー13bは、火工品の起爆による衝撃を受けても損傷しない強度が要求される。
【0039】
また、第三工程(3)で引き込まれたメッセンワイヤー入り可撓管9の両端部は、
図8に示すように、マンホール2,3の外の公道4上にまで伸ばしておき、外部から異物が侵入しないように養生しておく。
次に、メッセンワイヤー入り可撓管9の先端部の処置について説明する。
例えば、メッセンワイヤー入り可撓管9の先端を両方ともマンホール2,3外まで引き出しておく。
または、メッセンワイヤー入り可撓管9の先端部をテープ止めし、中込充填材14が入らないようにする。テープ止めには、養生テープ、ビニールテープ、布粘着テープなどが使用できる。
【0040】
または、メッセンワイヤー入り可撓管9の先端部をぼろ布などを軽くねじ込んだ後、テープ止めしても良い。
または、メッセンワイヤー入り可撓管9の先端部を針金等で縛り上げて、例えばソーセージのように閉塞しても良い。
ただし、何れの場合も、メッセンワイヤー入り可撓管9の先端部は、中込充填材14を注入するレベルより上に出ていなければならない。
【0041】
次に、第四工程(4)の中込充填材注入工程及び養生工程を実施する。
第四工程(4)を
図10乃至
図13に基づいて説明する。
ここで、中込充填材14は、圧力媒体の一例を示すもので、地中で時間の経過と共に硬化し、次の第五工程(5)で破砕した既設の下水道管1の破片を内包すると共に、周囲の土壌と一体に固まらせることができる。
本発明において、圧力媒体とは、既設の下水道管1内に注入後に自然に固まる充填物、既設の下水道管1内に充填後に水を注入し混合すると固まる充填物、又は既設の下水道管1内に注入後に固まらない充填物をいう。
【0042】
中込充填材14は、既設の下水道管1内に注入後に自然に固まる充填物又は既設の下水道管1内に充填後に水を注入し混合すると固まる充填物である。
また、中込充填材14は、次の第五工程(5)において衝撃力を効率よく伝えるためには、硬化前のものが望ましい。ただし、硬化後のものでも使用可能である。
圧力媒体として使用される、既設の下水道管1内に注入後に自然に固まる充填物は、例えば、コンクリート、モルタル又は石膏などがある。
圧力媒体として使用される、既設の下水道管1内に充填後に水を注入し混合すると固まる充填物は、例えば、コンクリートの粉末、石膏の粉末又は吸水性高分子(ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、ポリエーテルなどいわゆるゲル化剤や硬化剤といわれるもの)などがある。
圧力媒体として使用される、既設の下水道管1内に注入後に固まらない充填物は、例えば、水又は泥水である。
【0043】
第四工程(4)では、例えば、
図10乃至
図13に示すように、第三工程(3)においてメッセンワイヤー8を介して既設の下水道管1内に挿通されたメッセンワイヤー入り可撓管9の外周部と既設の下水道管1の内部空間との間に、中込充填材14を充填する。
中込充填材14は、例えば、
図11、
図12に示すように、マンホール2,3の近傍の公道4上に配置したポンプ(図示せず)により中込充填材14を注入管16を介して既設の下水道管1内に圧送する方法により充填される。その際、
図11、
図12に示すように、既設の下水道管1がマンホール2に開口する部分に、バッフル(止め板)15と注入管16とを取り付け、既設の下水道管1がマンホール3に開口する部分に、バッフル(止め板)17と排気管18とを取り付けている。
【0044】
そして、
図12に示すように、注入管16から中込充填材14を充填し、排気管18から溢れ出る中込充填材14の出具合をみて、充填量を確認する。
図12に示すように、排気管18の規定位置まで中込充填材14が到達すると、既設の下水道管1の全域に亘って中込充填材14が充填されていることが確認できる。
図13は、中込充填材14が充填された既設の下水道管1の縦断面図である。
また、中込充填材14の充填方法には、例えば、マンホール2,3上部より中込充填材14を重力により既設の下水道管1内に自然流下させる方法などを採用しても良い。
なお、中込充填材14の充填時には、残す配管や、今後施工する配管に中込充填材14が流れ込まないように養生する。
また、メッセンワイヤー入り可撓管9は、注入管16の中を通しても良い。
【0045】
次に、第五工程(5)の導爆線引込工程及び発破工程を実施する。
第五工程(5)を
図14乃至
図17に基づいて説明する。
ここで、導爆線19とは、火工品の一例として用いられる紐状爆薬である。
本発明において、火工品とは、導爆線、爆薬を点在するように取り付けた導爆線又は非火薬ガス発生剤を点在するように取り付けたロープなどをいう。
導爆線は、ペンスリットを被覆して、ひも状に加工したものであり、それ自身が爆薬であると共に、自身に取り付けられた、含水爆薬、ダイナマイトを起爆可能である。各種の太さの導爆線があり、単独又は複数での使用が可能である。また、導爆線は、電気雷管、導火管付き雷管、工業雷管(工業雷管と導火線)などで起爆が可能である。
【0046】
一方、分散して取り付けた爆薬は、各々に電気雷管、導火管付き雷管、工業雷管(工業雷管と導火線)などで起爆するか、導爆線に取り付けて導爆線によって順次起爆して使用可能である。
また、例えば、蒸気圧破砕薬剤などの非火薬ガス発生剤も分散して使用可能である。
第五工程(5)では、
図14に示すように、マンホール2,3間の既設の下水道管1内に挿通されている可撓管9に予め通してあるメッセンワイヤー13aの片端に導爆線19を取り付け、メッセンワイヤー13aを例えばマンホール3方向に引き抜きながら可撓管9内に導爆線19を引き込む。可撓管9内に導爆線19を引き込む際に、摩擦が大きいときは、潤滑を兼ねて水を可撓管9内に流し込んでも良い。
【0047】
その後、導爆線19の端部に電気雷管などの起爆装置(図示せず)を取り付ける。
次に、発破工程を実施する。
発破工程では、作業者を退避し、安全確認後に遠隔起爆する。多くは、電気雷管、発破器、30m以上の長さの発破母線、補助母線を用いて電気雷管を起爆する。導火管付雷管と導火管及び点火器を使用しても良い。
導爆線19が起爆すると、導爆線19の破壊力は既設の下水道管1などの強度よりも圧倒的に勝るため、導爆線19の破壊力は中込充填材14を伝播して既設の下水道管1を破砕する。その際、既設の下水道管1は周囲の土壌に包囲されているので、中込充填材14は、逃げ場が無く、例えば、
図17に示すように、その場で既設の下水道管1の無数の破片Xと周囲の土壌Yと共に一体化して硬化物群21を生成する。
【0048】
メッセンワイヤー13bは、
図16、
図17に示すように、導爆線19の破壊力では切断せず、一方のマンホール2から破壊された既設の下水道管1の領域を経由して他方のマンホール3に亘って配置された状態を保っている。
なお、爆圧を調整することで、周囲の土壌にも中込充填材14が染み込み、既設の下水道管1の無数の破片Xが周囲の土壌Yと共に一体化した硬化物群21を広範囲に渡って生成することができる。
【0049】
次に、第六工程(6)の撤去工程を実施する。
爆発音を確認し、起爆後5分以上経過した後、マンホール2,3のピット内に引き込んだ発破母線、補助母線、発破器、雷管の脚線、養生に使用した機材などを撤去する。
次に、第七工程(7)の地中更新工程を実施する。
先ず、例えば、
図18、
図19に示すように、一方のマンホール2内に更新管25aを押し込む押込装置26を配置し、他方のマンホール3内にメッセンワイヤー(更新管用牽引部材)13bを牽引する牽引装置27を配置する。
【0050】
押込装置26は、例えば、更新管25aを移動自在に保持するベッドと、このベッド上の更新管25aを前方へ押し出す油圧ジャッキ装置とを備えている。油圧ジャッキは、更新管25aの後端部に当接して前方へ押し込む部材と、更新管25a内に挿通される回転可能な駆動軸と、この駆動軸の先端に取り付けられる拡張機26aとを備えている。拡張機26aは、硬化物群21を効率良く砕くようにくさび形状を為し、先端にメッセンワイヤー13bを取り付けることができる。
牽引装置27は、メッセンワイヤー13bを巻き取る巻取装置を備えている。
次に、押込装置26及び牽引装置27の配置が完了後、押込装置のベッド上に更新管25aを載置する。
【0051】
次に、
図19、
図20に示すように、メッセンワイヤー13bの一方を拡張機26aに取り付け、メッセンワイヤー13bの他方を牽引装置27に取り付ける。
次に、押込装置26及び牽引装置27を駆動し、押込装置26で更新管15aを押し込みながら更新管25aをメッセンワイヤー13bを介して牽引装置27で牽引する。
ここで、更新管25aを押し込む土壌は、第五工程(5)によって、既設の下水道管1を破壊して脆弱化されているので、押込装置26の押込力及び牽引装置27の牽引力に加えて拡張機26aによる破壊力によって容易に破壊される。
【0052】
次に、更新管25aが所定長押し込まれたことを確認すると、押込装置26及び牽引装置27の駆動を停止し、油圧ジャッキ装置を後退させ、次の更新管25aをベッド上に載置する。
次に、押込装置26及び牽引装置27を再び駆動し、押込装置26で次の更新管15aを押し込みながら先頭の更新管25aをメッセンワイヤー13bを介して牽引装置27で牽引して圧入する。
【0053】
次に、更新管25aが所定長押し込まれたことを確認すると、押込装置26及び牽引装置27の駆動を停止し、油圧ジャッキ装置を後退させ、次の更新管25aをベッド上に載置する。
以下、同様にして更新管25aの押込操作を順次繰り返し、
図21に示すように、新たな下水道管25を破壊された既設の下水道管1と同じ位置に敷設する。
次に、第八工程(8)の現状復帰工程を実施する。
ここでは、マンホール2,3上部を撤去した後、マンホール2,3の蓋2a,3aを閉め、道路占有をとき、現状復旧を行う。
【0054】
以上のように、本実施形態によれば、
図1に示す第一工程(1)乃至第八工程(8)を実施することによって、既設の下水道管1内に配置した導爆線(火工品)19を起爆して既設の下水道管1を破砕し、既設の下水道管1の無数の破片Xを地下の現位置で周囲の土壌Yに内包された状態で硬化物群21とした後、既設の下水道管1の位置に新たに下水道管25を地中掘進で容易に設置することができる。
この際、既設の下水道管1は、導爆線19の起爆によって無数の破片Xとされて脆弱化されると共に、無数の破片Xが地下の現位置で周囲の土壌Yに内包された状態で硬化物群21とされるため、更新管25aの押込力及び引込力が従来工法に比して遙かに小さくなり、新たな下水道管1を押し込む押込装置26及び新たな下水道管25を牽引する牽引装置27を小型にすることができる。
【0055】
本実施形態によれば、既設の下水道管1内に配置した導爆線(火工品)19を起爆して既設の下水道管1を破砕する際に、予め更新管用検索部材としてメッセンワイヤー13bを配置しておくので、既設の下水道管1の破砕後に、メッセンワイヤー13bを利用して更新管25aを牽引して既設の下水道管1の位置に新たに下水道管25を地中掘進で設置することができる。
本実施形態によれば、既設の下水道管1内に配置した導爆線(火工品)19を起爆して既設の下水道管1を破壊した後、既設の下水道管1の敷設位置に新たな下水道管25を敷設するので、新たな下水道管25の敷設に要する速度が従来工法に比して遙かに早くなり、新たな下水道管25の敷設速度が飛躍的に増大する。
【0056】
本実施形態によれば、既設の下水道管1内に配置した導爆線(火工品)19を起爆して既設の下水道管1を破壊した後、既設の下水道管1の敷設位置に新たな下水道管25を敷設するので、新たに敷設する下水道管25の管径を既設の下水道管1の管径よりも大きくすることが可能となる。
本実施形態によれば、既設の下水道管1内に配置した可撓管9内に既設の下水道管1の強度よりも圧倒的に勝る破壊力を発現できる導爆線(火工品)19を配置し、既設の下水道管1内に中込充填材14(圧力媒体)を充填して導爆線(火工品)19を起爆するため、導爆線(火工品)19の破壊力は中込充填材14(圧力媒体)を伝播して既設の下水道管1を確実に破砕することができる。
本実施形態によれば、メッセンワイヤー13bは中込充填材14の硬化時に付着しないように外皮を設けているので、牽引装置27によって牽引すると、メッセンワイヤー13bの周囲で硬化した中込充填材14は容易に剥離し、更新管25aの押込作業及び牽引作業を妨げることがない。
【0057】
(第二実施形態)
図22は、本発明の第二実施形態に係る下水道管の更新工法を示すフローチャートである。
本実施形態では、第四工程(4)において圧力媒体である中込充填材14に代えて水又は泥水を圧力媒体として使用する点で、本発明の第一実施形態に係る下水道管の更新工法とは相違する。
本実施形態では、第四工程(4)において、例えば、
図10乃至
図13に示すように、第三工程(3)においてメッセンワイヤー8を介して既設の下水道管1内に挿通されたメッセンワイヤー入り可撓管9の外周部と既設の下水道管1の内部空間との間に、中込充填材14に代えて水又は泥水を充填する。
【0058】
例えば、
図11、
図12に示すように、水道の配管を注入管16に接続し、水道水を2MPaを超えない程度の圧送圧力で圧送して、既設の下水道管1内に注入する。注入後、水道からの配管を外し、関係車両を退避させた。
泥水の場合には、
図11、
図12に示すように、泥水をタンク車で搬送し、タンク車の配管を注入管16に接続し、泥水を2MPaを超えない程度の圧送圧力で圧送して、既設の下水道管1内に注入する。注入後、タンク車の配管を外し、関係車両を退避させた。
水又は泥水は、中込充填材14と同様に、火工品である導爆線19からの衝撃力を、既設の下水道管1の内側から作用させ、既設の下水道管1を効率良く破砕する媒体となる。
【0059】
水又は泥水を使用する場合は、既設の下水道管1の破砕後にその場で既設の下水道管1の無数の破片Xを周囲の土壌Yと共に一体化して硬化せず、既設の下水道管1は確実に破砕され、無数の破片Xが地下の現位置で周囲の土壌Y中に飛散する。圧力媒体として使用された水又は泥水は、地下の現位置で周囲の土壌Yに吸収される。
従って、本実施形態では、第七工程(7)において、更新管25aを押し込む際、更新管25aが受ける抵抗力は硬化物群21を破壊しながら行う第一実施形態に比べて遙かに小さくなる。その結果、本実施形態では、更新管25aの敷設作業速度をさらに速めることが可能となる。
【0060】
(第三実施形態)
図23は、本発明の第三実施形態に係る下水道管の更新工法を示すフローチャートである。
本実施形態では、第五工程(5)において導爆線19に代えて蒸気圧破砕体30を使用する点で、本発明の第一実施形態に係る下水道管の破砕工法とは相違する。
蒸気圧破砕体30は、例えば、
図24に示すように、着火具32を取り付けた蒸気圧破砕薬剤カートリッジ31を、例えば、直径10mm程度の合成樹脂製ロープ、麻、綿などの天然素材系ロープ、又はワイヤーロープなどのロープ34に1m間隔でビニールテープなどで固定することによって構成されている。着火具32は脚線33を介して直列に結線されている。着火具32は、すべて直列結線にすることが望ましい。
【0061】
蒸気圧破砕薬剤カートリッジ31は、例えば、ガンサイザー(商品名:日本工機株式会社製)として知られている。ガンサイザーは、岩石、岩盤、コンクリート等の脆性体を薬剤の熱分解時に発生する水蒸気圧により、瞬時にしかも低振動、低騒音状態で破砕できる破砕薬剤である。発熱剤としての酸化剤と還元剤との混合物にガス化して破砕圧力を発生する添加剤を混合した破砕薬剤と、それを着火するための着火具とで構成されている。ガンサイザーによる破砕施工は、岩石、岩盤又はコンクリートに所定の間隔、深さの穿孔を行い、その孔中にガンサイザーを装填し、残孔部を砂等でステミングした後、着火具により破砕薬剤の反応を開始させる手順で実施される。ガンサイザーは非火薬でありながら、脆性体を瞬時に破砕する性能を有する。その特徴は以下の通りである。
【0062】
・破砕作業手順は、発破工法に準じた方法であり、非火薬組成の破砕薬剤であることから、使用に当って消費許可を必要としない。
・岩石、岩盤、コンクリート等、引張強度が200kgf/cm
2程度のまでの脆性体を瞬時に破砕できる。
・破砕する場所の適応する環境温度は−15℃〜+75℃で、一定の破砕が可能である。
・発破工法と比較し、破砕時の振動、騒音が小さく、それぞれ振動速度値で50%程度、騒音レベル(A特性)で15dB程度低くなる。
・非火薬で威力が弱いことから保安物件近傍でも火薬類に準じた施工ができ、施工時間の短縮が図れる。
【0063】
本実施形態では、可撓管9内を通したメッセンワイヤー13aの先端にロープ34を固定し、順次可撓管9内にロープ34に間隔をあけて取り付けた蒸気圧破砕体30を引き込む。
これにより、
図25に示すように、既設の下水道管1内に挿通された可撓管9内には、蒸気圧破砕薬剤カートリッジ31が1m間隔で分散配置される。
脚線33の長さに対して、可撓管9の長さ、すなわちマンホール2,3間の距離が短ければ、全ての脚線33を可撓管9の外に出すことも不可能ではないが、通常は脚線33の長さ数mに対して、マンホール2,3の間隔は数十mなので、直列結線になる。
結線の接続部は、自己融着テープ、ビニールテープ、樹脂キャップなどで絶縁する。
脚線33も適宜ロープにビニールテープで止める。
1本の蒸気圧破砕薬剤カートリッジ31の薬量は、60gから120gであるが、威力をさらに必要とする場合は、300gから750gである。
その他の作業は第一実施形態と同様である。
本実施形態においても、第一実施形態と同様の作用効果を奏することができる上、火薬類取締法における火薬類消費許可を必要としない。
【0064】
(第四実施形態)
図26は、本発明の第四実施形態に係る下水道管の更新工法を示すフローチャートである。
本実施形態では、第五工程(5)において導爆線19に代えて蒸気圧破砕体30を使用する点で、本発明の第二実施形態に係る下水道管の更新工法とは相違する。
蒸気圧破砕体30は、着火具32を取り付け、例えば、直径10mm程度のロープ34に1m間隔でビニールテープなどで固定されている。着火具32は脚線33を介して直列に結線されている。
本実施形態においても、第二実施形態と同様の作用効果を奏することができる上、火薬類取締法における火薬類消費許可を必要としない。
【0065】
(第五実施形態)
本実施形態は、本発明の第一実施形態乃至第四実施形態におけるメッセンワイヤー入り可撓管9に代えて、
図27に示すように、メッセンワイヤー13aを内部に配置する可撓管9の外側部に長手方向に沿ってメッセンワイヤー13bを配置したものである。
メッセンワイヤー13bは、テープ、紐などで可撓管9の外側部に固定してある。
本実施形態は、
図27に示すように、メッセンワイヤー13aを内部に配置する可撓管9の外側部に長手方向に沿ってメッセンワイヤー13bを配置した点で、本発明の第一実施形態乃至第四実施形態とは相違するが、その他の構成は同様であるから、他の要件の説明は省略する。
本実施形態においても、本発明の第一実施形態乃至第四実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0066】
(第六実施形態)
本実施形態は、既設の下水道管1を破壊した後に、推進工法によって更新管用牽引部材42を配置した点で、本発明の第一実施形態乃至第五実施形態とは相違する。
上記各実施形態では、
図16、
図17に示すように、導爆線19などの火工品を起爆した後に残すことができるメッセンワイヤー13bを可撓管9の内外に配置した場合について説明したが、本実施形態は、メッセンワイヤー13bを使用せず、導爆線19などの火工品を起爆して破壊した既設の下水道管1の領域に、推進工法によって更新管用牽引部材42を配置するものである。
【0067】
例えば、
図28、
図29に示すように、他方のマンホール3内に推進装置40を配置し、誘導管41を用いて方向修正を行いながら一方のマンホール2まで圧入推進すると共に、誘導管41で更新管用牽引部材42を他方のマンホール3と一方のマンホール2との間に挿入する。その後、誘導管などを撤去する。以下、上記各実施形態と同様に、一方のマンホール2内に更新管25aを押し込む押込装置26を配置し、他方のマンホール3内に更新管用牽引部材42を牽引する牽引装置27を配置する。
本実施形態によれば、導爆線19などの火工品を起爆して既設の下水道管1を破壊した後で、脆弱化した既設の下水道管1の領域を推進工法で誘導管41を圧入推進して更新管用牽引部材42を配置するので、誘導管41の圧入推進を容易に行うことができる。
本実施形態においても、本発明の第一実施形態乃至第五実施形態と同様の作用効果を奏することができる。