特許第6357035号(P6357035)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6357035
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】模様面の形成方法
(51)【国際特許分類】
   B05D 5/06 20060101AFI20180702BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20180702BHJP
   E04F 13/08 20060101ALI20180702BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20180702BHJP
【FI】
   B05D5/06 104C
   B05D7/24 303B
   B05D7/24 303E
   E04F13/08 E
   B05D7/00 L
【請求項の数】3
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-134613(P2014-134613)
(22)【出願日】2014年6月30日
(65)【公開番号】特開2015-27667(P2015-27667A)
(43)【公開日】2015年2月12日
【審査請求日】2017年5月31日
(31)【優先権主張番号】特願2013-135871(P2013-135871)
(32)【優先日】2013年6月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】599071496
【氏名又は名称】ベック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】片山 泰徳
【審査官】 伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−090527(JP,A)
【文献】 特開2011−025172(JP,A)
【文献】 特開2011−025173(JP,A)
【文献】 特開2011−106100(JP,A)
【文献】 特開2013−000731(JP,A)
【文献】 特開2005−186062(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0072110(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D 1/00− 7/26
E04F 13/00−13/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材に対し、被覆材Aを塗付して着色被膜(A)を形成する工程と、
前記着色被膜(A)に被覆材Bを塗付して厚みが0.2mm〜10mmの模様被膜(B)を形成する工程によって、着色被膜(A)、模様被膜(B)を順に設ける模様面の形成方法であって、
前記被覆材Aが、樹脂成分及び粉粒体を含み、前記粒粉体が、(I)赤外線反射性粉粒体、(II)赤外線反射性粉粒体及び赤外線透過性粉粒体、のいずれかの態様であり、
前記被覆材Bが、合成樹脂エマルション、粉粒体、並びに、水溶性高沸点化合物、あるいは、水溶性高沸点化合物及び水溶性高分子化合物を含み、
前記赤外線反射性粉粒体が、アルミニウムフレーク、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛、酸化鉄、炭酸カルシウム、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、酸化インジウム、アルミナ、鉄−クロム複合酸化物、マンガン−ビスマス複合酸化物、マンガン−イットリウム複合酸化物、黒色酸化鉄、鉄−マンガン複合酸化物、鉄−銅−マンガン複合酸化物、鉄−クロム−コバルト複合酸化物、銅−クロム複合酸化物、銅−マンガン−クロム複合酸化物から選ばれる1種以上、
前記赤外線透過性粉粒体が、ペリレン顔料、アゾ顔料、黄鉛、チタニウムレッド、カドミウムレッド、キナクリドンレッド、イソインドリノン、ベンズイミダゾロン、フタロシアニングリーン、フタロシアニンブルー、コバルトブルー、インダスレンブルー、群青、紺青から選ばれる1種以上、
前記水溶性高沸点化合物が、20℃において液体、沸点が100℃以上、水への溶解度が1g/100g以上であり、
前記水溶性高分子化合物が、20℃において固体、重量平均分子量が500以上である、
ことを特徴とする模様面の形成方法。
【請求項2】
前記被覆材Bにおける粒粉体が、
(I)赤外線反射性粉粒体、
(II)赤外線反射性粉粒体及び赤外線透過性粉粒体、
のいずれかの態様であり、
前記赤外線反射性粉粒体が、アルミニウムフレーク、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛、酸化鉄、炭酸カルシウム、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、酸化インジウム、アルミナ、鉄−クロム複合酸化物、マンガン−ビスマス複合酸化物、マンガン−イットリウム複合酸化物、黒色酸化鉄、鉄−マンガン複合酸化物、鉄−銅−マンガン複合酸化物、鉄−クロム−コバルト複合酸化物、銅−クロム複合酸化物、銅−マンガン−クロム複合酸化物から選ばれる1種以上、
前記赤外線透過性粉粒体が、ペリレン顔料、アゾ顔料、黄鉛、チタニウムレッド、カドミウムレッド、キナクリドンレッド、イソインドリノン、ベンズイミダゾロン、フタロシアニングリーン、フタロシアニンブルー、コバルトブルー、インダスレンブルー、群青、紺青から選ばれる1種以上、
であることを特徴とする請求項1に記載の模様面の形成方法。
【請求項3】
(1)基材に対し、被覆材Aを塗付して着色被膜(A)を形成する工程、
(2)前記着色被膜(A)の表面に目地材を貼着する工程、
(3)上記(2)で得られた面に被覆材Bを塗付して模様被膜(B)を形成する工程、
(4)上記目地材を除去する工程、
によって、基材上に着色被膜(A)、目地により区画された模様被膜(B)を順に設ける特徴とする、請求項1または請求項2に模様面の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物、土木構造物等における模様面の形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物、土木構造物等の壁面等に対し、意匠性模様を有する模様被膜を形成することが行われている。
例えば、特許文献1では、基材に合成樹脂エマルジョンと2色以上の骨材とを含有した高粘度の吹付材を吹付ガンにより吹付けて、凹凸模様を形成し、マイカ薄片を散布し、乾燥後、凸部の頂部をサンダーにより平坦にカットし、トップコートを形成することで、天然石の風合いをもった装飾材を得るものである。
このように、吹付け等によって、厚膜の被膜を形成し、その表面に形成する凹凸を調整することで、様々な質感をもった模様面を形成することができる。しかしながら、このような厚膜被膜の塗り継ぎ部分では、質感を統一し、シームレスな仕上りを得ることが難しい場合がある。このような場合、塗り継ぎ部分が目立ってしまい、仕上り性が損なわれるおそれがある。
【0003】
また、被膜が厚膜であることを活かして目地仕上げとする場合がある。例えば特許文献2には、目地材を被塗面に貼り付けた上から、吹付け材を塗付した後、目地材を除去して、目地による意匠性模様を形成する方法が記載されている。特許文献3には、目地で区切られた意匠性模様の凸部領域に、模様押付具によってさらに模様を付与することが記載されている。
しかしながら、このような方法では、目地材がうまく除去できずに、目地近傍の被膜が剥落しまうことによって、仕上り性、美観性が損なわれてしまう場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−100991号公報
【特許文献2】特開平10−266517号公報
【特許文献3】特開平8−333861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述のような問題点に鑑みなされたものであり、意匠性模様が設けられた模様被膜を有する模様面において、仕上り性、美観性等を高めることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、上記の課題が被膜の硬化性に関連するということをつきとめ、特定の成分を有する被覆材を順に塗付する模様面の形成方法に想到し、本発明を完成させるに到った。
【0007】
すなわち、本発明は以下の特徴を有するものである。
1. 基材に対し、被覆材Aを塗付して着色被膜(A)を形成する工程と、
前記着色被膜(A)に被覆材Bを塗付して厚みが0.2mm〜10mmの模様被膜(B)を形成する工程によって、着色被膜(A)、模様被膜(B)を順に設ける模様面の形成方法であって、
前記被覆材Aが、樹脂成分及び粉粒体を含み、前記粒粉体が、(I)赤外線反射性粉粒体、(II)赤外線反射性粉粒体及び赤外線透過性粉粒体、のいずれかの態様であり、
前記被覆材Bが、合成樹脂エマルション、粉粒体、並びに、水溶性高沸点化合物、あるいは、水溶性高沸点化合物及び水溶性高分子化合物を含み、
前記赤外線反射性粉粒体が、アルミニウムフレーク、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛、酸化鉄、炭酸カルシウム、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、酸化インジウム、アルミナ、鉄−クロム複合酸化物、マンガン−ビスマス複合酸化物、マンガン−イットリウム複合酸化物、黒色酸化鉄、鉄−マンガン複合酸化物、鉄−銅−マンガン複合酸化物、鉄−クロム−コバルト複合酸化物、銅−クロム複合酸化物、銅−マンガン−クロム複合酸化物から選ばれる1種以上、
前記赤外線透過性粉粒体が、ペリレン顔料、アゾ顔料、黄鉛、チタニウムレッド、カドミウムレッド、キナクリドンレッド、イソインドリノン、ベンズイミダゾロン、フタロシアニングリーン、フタロシアニンブルー、コバルトブルー、インダスレンブルー、群青、紺青から選ばれる1種以上、
前記水溶性高沸点化合物が、20℃において液体、沸点が100℃以上、水への溶解度が1g/100g以上であり、
前記水溶性高分子化合物が、20℃において固体、重量平均分子量が500以上である、
ことを特徴とする模様面の形成方法。
2.前記被覆材Bにおける粒粉体が、
(I)赤外線反射性粉粒体、
(II)赤外線反射性粉粒体及び赤外線透過性粉粒体、
のいずれかの態様であり、
前記赤外線反射性粉粒体が、アルミニウムフレーク、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛、酸化鉄、炭酸カルシウム、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、酸化インジウム、アルミナ、鉄−クロム複合酸化物、マンガン−ビスマス複合酸化物、マンガン−イットリウム複合酸化物、黒色酸化鉄、鉄−マンガン複合酸化物、鉄−銅−マンガン複合酸化物、鉄−クロム−コバルト複合酸化物、銅−クロム複合酸化物、銅−マンガン−クロム複合酸化物から選ばれる1種以上、
前記赤外線透過性粉粒体が、ペリレン顔料、アゾ顔料、黄鉛、チタニウムレッド、カドミウムレッド、キナクリドンレッド、イソインドリノン、ベンズイミダゾロン、フタロシアニングリーン、フタロシアニンブルー、コバルトブルー、インダスレンブルー、群青、紺青から選ばれる1種以上、
であることを特徴とする1.に記載の模様面の形成方法。
3.(1)基材に対し、被覆材Aを塗付して着色被膜(A)を形成する工程、
(2)前記着色被膜(A)の表面に目地材を貼着する工程、
(3)上記(2)で得られた面に被覆材Bを塗付して模様被膜(B)を形成する工程、
(4)上記目地材を除去する工程、
によって、基材上に着色被膜(A)、目地により区画された模様被膜(B)を順に設ける特徴とする、1.または2.に模様面の形成方法。

【発明の効果】
【0008】
本発明の方法によれば、意匠性模様が施された模様被膜を有する模様面において、仕上り性、美観性等を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
【0010】
本発明は、基材に対し、被覆材Aを塗付、乾燥して着色被膜(A)を形成する工程と、前記着色被膜(A)に被覆材Bを塗付、乾燥して厚みが0.2mm〜10mmの模様被膜(B)を形成する工程によって模様面を形成する方法である。
【0011】
本発明では、前記被覆材Aにおける粒粉体が、(I)赤外線反射性粉粒体、(II)赤外線反射性粉粒体及び赤外線透過性粉粒体、のいずれかを含み、尚且つ被覆材Bが水溶性高沸点化合物及び/または水溶性高分子化合物を含有することによって、仕上り性、美観性に優れた模様面の形成が可能となる。その作用は明らかではないが、以下のような機構によるものと考えられる。
【0012】
被覆材Bは、着色被膜(A)の上に塗付されると、徐々に硬化して模様被膜(B)を形成するが、この際に塗り継ぎ部分が目立つ場合がある。これは、被覆材の硬化性と馴染み性が関係するものと考えられる。すなわち、先に塗付した被覆材の硬化が過剰に速く進行してしまうと、後から塗付した被覆材と馴染みにくくなり、その結果塗り継ぎ部分が目立ってしまうと考えられる。
また、目地によって区画された模様被膜(B)を形成する場合、被覆材が過剰に速く進行してしまうと、目地材の除去性が困難となる場合がある。
このような塗り継ぎ部分や目地部における現象は、特に基材が断熱性の高い基材の場合や、太陽光の影響が強い面等、着色被膜(A)が蓄熱されやすい状況において、顕著となる傾向にある。
【0013】
本発明では、被覆材Aに上記粉粒体を含有し、被覆材Bに上記特定化合物を含有することで、模様面の形成過程における太陽光等の影響を低減し、被覆材Bの硬化を安定的且つ適度に進行させることができる。このような効果によって、塗付面における被覆材同士の馴染み性が向上するため、仕上り性、美観性に優れた模様面を形成することができる。
また、目地模様を形成する場合は、被覆材Bの硬化を安定的且つ適度に進行させることで、目地材の除去性が向上し、目地部やその近傍についても優れた仕上り性、美観性が得られる。このような目地除去性の効果に加えて、上記の硬化性・馴染み性向上による効果も相俟って、目地部、模様被膜部分ともに優れた仕上り性、美観性をもつ模様面を形成することができる。
【0014】
[着色被膜(A)]
着色被膜(A)は、基材に対して塗付されることで、基材と模様被膜(B)との密着性を確保しながら、下地の基材を隠蔽するものである。また、目地模様を形成する際には、模様被膜の目地として現れ、目地色を表出する被膜である。このような着色被膜(A)は、樹脂成分、粉粒体を含む被覆材Aを塗付・乾燥して得られるものである。
【0015】
被覆材Aにおける樹脂成分としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、酢酸ビニル樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、アクリル酢酸ビニル樹脂、アクリルウレタン樹脂、アクリルシリコン樹脂等が挙げられ、これらの1種または2種以上が使用できる。この中でも、アクリル樹脂、アクリルシリコン樹脂等が好適である。
【0016】
被覆材Aにおける粉粒体成分は、(I)赤外線反射性粉粒体、(II)赤外線反射性粉粒体及び赤外線透過性粉粒体、のいずれかの態様である。
【0017】
(I)の態様における赤外線反射性粉粒体としては、例えば、アルミニウムフレーク、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛、酸化鉄、炭酸カルシウム、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、酸化インジウム、アルミナ、鉄−クロム複合酸化物、マンガン−ビスマス複合酸化物、マンガン−イットリウム複合酸化物、黒色酸化鉄、鉄−マンガン複合酸化物、鉄−銅−マンガン複合酸化物、鉄−クロム−コバルト複合酸化物、銅−クロム複合酸化物、銅−マンガン−クロム複合酸化物等が挙げられ、これらの1種または2種以上が使用できる。このような赤外線反射性粉粒体は、例えば、上記組成の天然石の粉砕物、あるいは合成品等を用いることができる。
【0018】
(I)の態様においては、上記赤外線反射性粉粒体の複合物を用いることもできる。ここでいう複合物とは、凝集、固着、被覆等の手段によって、上記赤外線反射性粉粒体の1種または2種以上を複合化したものである。
【0019】
(II)の態様における赤外線反射性粉粒体としては、上記(I)と同様のものを用いることができる。(II)の態様における赤外線透過性粉粒体としては、例えばペリレン顔料、アゾ顔料、黄鉛、チタニウムレッド、カドミウムレッド、キナクリドンレッド、イソインドリノン、ベンズイミダゾロン、フタロシアニングリーン、フタロシアニンブルー、コバルトブルー、インダスレンブルー、群青、紺青等が挙げられ、これらの1種または2種以上が使用できる。
【0020】
(II)の態様においては、上記赤外線反射性粉粒体と赤外線透過性粉粒体の1種または2種以上を併用する。また、これらの複合物を用いることもできる。ここでいう複合物とは、凝集、固着、被覆等の手段によって、上記赤外線反射性粉粒体と赤外線透過性粉粒体の1種または2種以上を複合化したものである。
【0021】
被覆材Aにおける粉粒体の平均粒子径は、好ましくは0.02μm以上2000μm以下、より好ましくは0.1μm以上1000μm以下、さらに好ましくは0.2μm以上500μm以下である。平均粒子径は、レーザー回折式粒子径分布測定装置を用いて測定できる。
【0022】
被覆材Aにおける粉粒体は、実質的に(I)または(II)のいずれかの態様であるものであるが、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、上記以外の粉粒体が含まれていてもよい。但し、カーボンブラック等の赤外線吸収性粉粒体については、被覆材Aにおける粉粒体全量に対して、好ましくは5重量%以下、より好ましくは1重量%以下、さらに好ましくは0.5重量%以下であり、赤外線吸収性粉粒体を含まない態様が最も好ましい。
【0023】
本発明では、これらの粉粒体を被覆材Aに用いることにより、着色被膜(A)に赤外線反射性能を付与しつつ、様々な色彩を表出することが可能となる。この際、着色被膜(A)の色調を、後述する模様被膜(B)に近似した色相(共色)に設定しておけば、全体的な統一感を有する仕上りとなる。また、着色被膜(A)の色調を、模様被膜(B)と異なる色相に設定しておけば、目地模様を有する場合に、目地色と模様被膜(B)とのコントラストが明確な仕上りとなる。
【0024】
本願の効果は、特に着色被膜(A)がCIE表色系の明度値L値が70以下(さらには50以下)であるときに顕著に表れる。通常の被膜では、このような明度値を示す場合に被膜が蓄熱されやすい傾向を示すのに対し、本願発明の着色被膜Aでは、このような蓄熱を抑制することができる。
【0025】
被覆材Aにおける粉粒体の混合比率は、樹脂固形分の固形分100重量部に対し、好ましくは10〜1000重量部、より好ましくは50〜800重量部、さらに好ましくは100〜600重量部である。
【0026】
被覆材Aは、本発明の効果が著しく損われない範囲内であれば、上記成分以外の各種成分を含むものであってもよい。このような成分としては、例えば、艶消し剤、骨材、増粘剤、造膜助剤、レベリング剤、湿潤剤、可塑剤、凍結防止剤、pH調整剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、抗菌剤、分散剤、消泡剤、吸着剤、繊維、架橋剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、触媒等が挙げられる。
【0027】
[模様被膜(B)]
模様被膜(B)は、合成樹脂エマルション、粉粒体、並びに水溶性高沸点化合物及び/または水溶性高分子化合物を含む被覆材Bを塗付して得られ、厚みが0.2mm〜10mmとなるものである。被覆材Bは、塗付、乾燥して得られる模様被膜(B)の厚みが0.2mm〜10mmとなるものであればよく、例えば、砂壁模様、スタッコ模様、クレーター模様、凹凸模様、スチップル模様、石材調模様、砂岩調模様等の模様を呈するものが挙げられる。
【0028】
被覆材Bにおける合成樹脂エマルションは、模様被膜(B)の結合材として作用するものである。合成樹脂エマルションとしては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、酢酸ビニル樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、アクリル酢酸ビニル樹脂、アクリルウレタン樹脂、アクリルシリコン樹脂等が挙げられ、これらの1種または2種以上が使用できる。これらは、水を主成分とする媒体に樹脂粒子が分散したものであり、その固形分は、好ましくは30〜60重量%程度である。
【0029】
本発明では、被覆材Bにおける粉粒体が、(I)赤外線反射性粉粒体、(II)赤外線反射性粉粒体及び赤外線透過性粉粒体、のいずれかの態様であることが好ましい。被覆材Bにおける赤外線反射性粉粒体、赤外線透過性粉粒体としては、被覆材Aと同様のものを用いることができる。本発明では、被覆材Bの粉粒体の色相や粒子径を適宜選択することで、所望の色や形状の模様を有する模様被膜(B)を得ることができる。
被覆材Bにおける粉粒体としては、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、上記以外の粉粒体が含まれていてもよい。但し、カーボンブラック等の赤外線吸収性粉粒体については、被覆材Bにおける粉粒体全量に対して、好ましくは5重量%以下、より好ましくは1重量%以下、さらに好ましくは0.5重量%以下であり、赤外線吸収性粉粒体を含まない態様が最も好ましい。
【0030】
被覆材Bにおける粉粒体の比率は、樹脂成分の固形分100重量部に対し100〜4000重量部、好ましくは150〜2000重量部、より好ましくは200〜1000重量部である。粉粒体の比率がこのような範囲内であれば、厚膜の模様面が形成しやすく、模様形成の点や各種被膜物性の点で好適である。
【0031】
本発明では、被覆材Bが水溶性高沸点化合物及び/または水溶性高分子化合物を含むことにより、模様面の仕上り性、美観性が向上する。その詳細は明らかではないが、以下のような作用によるものと考えられる。
被覆材Bは、合成樹脂エマルションの媒体、希釈剤などとして水が含まれている。被覆材Bが塗付されると、この水が蒸発し、着色被膜(A)の上で、模様被膜(B)の硬化被膜が形成される。本発明では、被覆材Bに水溶性高沸点化合物及び/または水溶性高分子化合物を含有することにより、これら水溶性化合物が水に溶解した状態となる。このような被覆材Bを着色被膜(A)に塗付すると、水の蒸発が適度に制御されることにより、塗り継ぎ部分での馴染みを確保することができ、目地模様を形成する際には、目地近傍の剥落等を抑制することができる。
【0032】
被覆材Bにおける水溶性高沸点化合物は、20℃において液体であり、沸点が100℃以上(より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは180℃以上)、水への溶解度が1g/100g以上(より好ましくは10g/100g以上、さらに好ましくは∞)であるものが好適である。なお、本発明における水への溶解度は、水100gに溶解し得る最大質量(g)のことで、測定温度は20℃である。
【0033】
水溶性高沸点化合物としては、例えば、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタジオール等のジオール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のグリコール類;セロソルブ、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル類;メチルグリコールアセテート、エチルグリコールアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノイソブチルエーテルアセテート等のエーテルエステル類、N−メチルピロリドン等が挙げられる。これらは、1種または2種以上で使用できる。
【0034】
被覆材Bおける水溶性高沸点化合物の含有量は、合成樹脂エマルションの固形分100重量部に対して、好ましくは50重量部以下、より好ましくは0.5重量部以上40重量部以下、さらに好ましくは1重量部以上30重量部以下である。
【0035】
被覆材Bにおける水溶性高分子化合物は、20℃において固体であり、重量平均分子量が500以上(より好ましくは800以上、さらに好ましくは1000以上)であるものが好適である。
【0036】
水溶性高分子化合物としては、例えば、酸化デンプン、カルボキシルメチル化デンプン、リン酸化デンプン、カルボキシルメチルセルロ−ス、アルギン酸ナトリウム、ペクチン、アラビアゴム、生デンプン、酵素変性デンプン、ヒドロキシエチルセルロ−ス、メチルセルロ−ス、グア−ガム、ローカストビーンガム、水溶性ロジン、水溶性アクリル樹脂、水溶性ポリエステル樹脂、水溶性ポリエーテルポリオ−ル樹脂、水溶性ポリアミド樹脂、水溶性エポキシ樹脂、水溶性ポリオレフィン樹脂、水溶性フッ素樹脂、水溶性ポリエステル樹脂、水溶性アルキド樹脂、水溶性ウレタン樹脂、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、等あるいはこれらの複合物等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用できる。
【0037】
被覆材Bおける水溶性高分子化合物の含有量は、合成樹脂エマルションの固形分100重量部に対して好ましくは0.01重量部以上20重量部以下、より好ましくは0.1重量部以上15重量部以下、さらに好ましくは0.5重量部以上10重量部以下である。
【0038】
本発明では、被覆材Bが水溶性高沸点化合物及び水溶性高分子化合物を含むことが好適である。このような態様であれば、本発明の効果がいっそう向上する。
【0039】
被覆材Bには、美観性の長期保持等の点で、ピペリジン化合物を含むことが好ましい。
被覆材Bにおけるピペリジン化合物としては、ピペリジル基を有する化合物が使用できる。このピペリジン化合物の形態としては、
ア)樹脂成分とは別異の成分として存在する形態、及び/または、
イ)樹脂成分中に化学的に結合した形態、
が挙げられる。本発明では、特に上記ア)及びイ)を兼備することが好ましい。
【0040】
上記ア)の形態では、非重合性のピペリジン化合物が使用できる。具体的に、このような化合物としては、例えば、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、メチル(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、N,N′,N″,N″′−テトラキス−(4,6−ビス(ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ)−トリアジン−2−イル)−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン、N,N′−ビス−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−1,6−ヘキサメチレンジアミン、N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミン、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノール、デカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1(オクチルオキシ)−4−ピペリジル)エステル、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、2,4−ビス[N−ブチル−N−(1−シクロヘキシロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ]−6−(2−ヒドロキシエチルアミン)−1,3,5−トリアジン等、及びこれらの誘導体等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用できる。
【0041】
上記ア)の形態では、樹脂成分の固形分100重量部に対し、ピペリジン化合物を0.01〜20重量部含むことが好ましく、より好ましくは0.1〜15重量部、さらに好ましくは0.5〜10重量部である。
【0042】
上記イ)の形態では、ピペリジン化合物が樹脂成分中に化学的に結合した状態とするため、重合性のピペリジン化合物を用いることができる。このような化合物としては、ピペリジル基と重合性不飽和二重結合を有する化合物が使用でき、例えば、4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1−メチルカルバモイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−クロトノイル−4−クロトニルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用できる。
【0043】
このような重合性のピペリジン化合物は、樹脂成分の製造時(重合時)に他の単量体と共重合することにより、樹脂成分中に化学的に結合させることができる。樹脂成分中のピペリジン化合物の比率は、好ましくは0.01〜20重量%、より好ましくは0.1〜15重量%である。
【0044】
被覆材Bには、上記以外の成分を混合することができる。このような成分としては、例えば、着色顔料、体質顔料、繊維、造膜助剤、防腐剤、防黴剤、抗菌剤、消泡剤、顔料分散剤、増粘剤、レベリング剤、湿潤剤、pH調整剤、艶消し剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、触媒、架橋剤、水等が挙げられる。
【0045】
[透明被膜(C)]
本発明では、模様被膜(B)を形成した後で、透明被膜(C)を形成することが好適である。
透明被膜(C)を形成することにより、耐久性、耐汚染性等を高めることができ、模様被膜の美観性を長期に亘って保つことが可能となる。
透明被膜(C)は、平均一次粒子径1〜200nmのシリカ、及び樹脂成分を含む被覆材Cを塗付・乾燥させることにより形成することが好ましい。
【0046】
このうち、シリカは、粒子自体の硬度が高く、さらに粒子表面にシラノール基を多く有すること等によって、優れた汚染防止効果を発揮するものである。
シリカの平均一次粒子径は、好ましくは1〜200nm、より好ましくは3〜100nmである。この範囲内であれば、平均一次粒子径が異なる複数のシリカを併用することもできる。このような範囲であれば、本発明の効果を損なうことなく、模様面の耐汚染性を向上し、長期に亘って美観性を保つことができる。なお、ここに言う平均一次粒子径は、光散乱法によって測定される値である。
【0047】
被覆材Cのシリカは、シリカゾルに由来するものが好適であり、さらにはpH5.0以上8.5未満(好ましくは6.0以上8.0以下)の水分散性シリカゾルに由来するものがより好適である。
このような中性タイプの水分散性シリカゾルは、シリケート化合物を原料として製造することができる。シリケート化合物としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラn−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラn−ブトキシシラン、テトライソブトキシシラン、テトラsec−ブトキシシラン、テトラt−ブトキシシラン、テトラフェノキシシラン等、あるいはこれらの縮合物等が挙げられる。この他、上記シリケート化合物以外のアルコキシシラン化合物や、アルコール類、グリコール類、グルコールエーテル類、フッ素アルコール、シランカップリング剤、ポリオキシアルキレン基含有化合物等を併せて使用することもできる。
【0048】
被覆材Cにおける樹脂成分としては、各種樹脂が使用できる。具体的には、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、酢酸ビニル樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、アクリル酢酸ビニル樹脂、アクリルウレタン樹脂、アクリルシリコン樹脂等が挙げられ、これらの1種または2種以上が使用できる。このような樹脂成分としては、水溶性樹脂及び/または水分散性樹脂が好適である。
【0049】
被覆材Cにおけるシリカと樹脂成分との固形分重量比(シリカ:樹脂成分)は、好ましくは0.5:1〜5:1、より好ましくは0.8:1〜4:1、さらに好ましくは1:1〜3:1である。このような比であれば、本発明の効果が安定して発揮される。
【0050】
被覆材Cは、本発明の効果が著しく損われない範囲内であれば、上記成分以外の各種成分を含むものであってもよい。このような成分としては、例えば、増粘剤、造膜助剤、レベリング剤、湿潤剤、可塑剤、凍結防止剤、pH調整剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、抗菌剤、分散剤、消泡剤、架橋剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等が挙げられる。但し、光触媒物質の使用は、経時的な密着性の低下、模様被膜の退色等を引き起こすおそれがあることから、避けることが望ましい。
【0051】
[模様面の形成方法]
本発明の模様面は、基材に対し、被覆材Aを塗付して着色被膜(A)を形成する工程と、前記着色被膜(A)の表面の少なくとも一部に被覆材Bを塗付して模様被膜(B)を形成する工程によって形成することができる。
【0052】
本発明の適用可能な基材としては、例えば、石膏ボード、合板、壁紙、コンクリート、モルタル、磁器タイル、繊維混入セメント板、セメント珪酸カルシウム板、スラグセメントパーライト板、石綿セメント板、ALC板、サイディング板、押出成形板、鋼板、プラスチック板等が挙げられる。これら基材の表面は、何らかの表面処理(例えば、シーラー、サーフェーサー、フィラー等)が施されたものでもよく、既に塗膜が形成されたものや、既に壁紙が貼り付けられたもの等であってもよい。
【0053】
被覆材Aを塗付する際には、例えば、刷毛、ローラー、スプレー、コテ等の公知の器具を適宜選択して用いることができる。被覆材Aの塗付け量は、固形分換算で、好ましくは0.05〜2kg/m程度である。
【0054】
被覆材Bは、例えば、スプレー、ローラー、刷毛、コテ等の器具を適宜選択して使用し、乾燥後の模様被膜(B)の厚みが0.2mm以上10mm以下(好ましくは0.5mm以上8mm以下、より好ましくは0.8mm以上5mm以下)となるように塗付する。器具は、必要に応じて複数を組み合せて使用してもよい。被覆材Bは、水で希釈してから塗付することもできる。希釈量は、粘性や作業性等を考慮して適宜設定すればよい。被覆材Bの塗付け量は、模様被膜(B)が上記厚みを満たすものであれば特に限定されないが、固形分換算で0.5〜8kg/m程度が好適である。
【0055】
また、本発明において模様被膜(B)を形成する際に、目地により模様被膜(B)を区画することもできる。その際には、
(1)基材に対し、被覆材Aを塗付して着色被膜(A)を形成する工程、
(2)前記着色被膜(A)の表面に目地材を貼着する工程、
(3)上記(2)で得られた面に被覆材Bを塗付して模様被膜(B)を形成する工程、
(4)上記目地材を除去する工程、
という工程によって目地を形成すればよい。
【0056】
さらに、透明被膜(C)を被覆する場合は、工程(5)として、上記工程(4)で得られた面に被覆材Cを塗付して透明被膜(C)を形成する工程を追加すればよい。
【0057】
上記工程(1)において、被覆材Aを塗付する際には、例えば、刷毛、ローラー、スプレー、コテ等の公知の器具を適宜選択して用いることができる。被覆材Aの塗付け量は、固形分換算で、好ましくは0.05〜2kg/m程度である。
【0058】
上記工程(2)における目地材としては、目地棒、目地テープ、目地型枠等が使用できる。このような目地材の材質としては、例えば各種樹脂、ゴム、樹脂発泡体、紙類等が挙げられる。このような目地材を着色被膜(A)の表面に貼着するタイミングは、特に限定されないが、着色被膜(A)が乾燥した後が好ましい。また目地材の貼着には、必要に応じ、接着剤、粘着剤等を使用することができる。
【0059】
目地材を貼り付ける位置、間隔等は、所望の目地模様に応じて決定すればよい。例えば、均等間隔に貼り付けることもできるし、ランダムに貼り付けることもできる。模様としては、例えば、タイル調模様、レンガ調模様、幾何学的模様、水玉模様、縞模様、格子模様、渦巻き模様、紋章柄の他、動植物、器物、文字等をデザイン化した図形模様等が可能である。これらの模様を表出するためには、直線状の目地材を複数組み合わせて用いてもよいし、平面状の型紙を模様形状に応じて打ち抜いたものを目地材として用いてもよい。目地材の幅は、好ましくは0.5〜100mm程度であり、目地材の高さは、好ましくは0.5〜10mm程度である。
【0060】
上記工程(3)において、被覆材Bは、例えば、スプレー、ローラー、刷毛、コテ等の器具を適宜選択して使用し、乾燥後の模様被膜(B)の厚みが0.2mm以上10mm以下(好ましくは0.5mm以上8mm以下、より好ましくは0.8mm以上5mm以下)となるように塗付する。器具は、必要に応じて複数を組み合せて使用してもよい。
被覆材Bの塗付け量は、模様被膜(B)が上記厚みを満たすものであれば特に限定されないが、固形分換算で0.5〜8kg/m程度が好適である。
【0061】
上記工程(4)において、目地材を除去するタイミングは、所望の目地が形成可能であれば特に限定されず、被覆材Bが未硬化の状態のときでもよいし、硬化した状態のときでもよい。
【0062】
上記工程(5)において、被覆材Cは、全面に塗付すればよい。これにより、目地では着色被膜(A)の上に透明被膜(C)、それ以外の領域では着色被膜(A)の上に模様被膜(B)と透明被膜(C)が積層された模様被膜が得られる。
塗装器具としては、例えば、刷毛、ローラー、スプレー等の公知のものを用いることができる。透明被膜(C)を形成する際の被覆材の塗付け量は、固形分換算で、好ましくは0.1〜50g/m、より好ましくは0.5〜20g/mである。
【実施例】
【0063】
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより明確にする。
【0064】
被覆材Aとしては、それぞれ以下に示すものを用意した。
【0065】
○被覆材A1
アクリル樹脂1(アクリル系モノマーの乳化重合物、ガラス転移温度2℃、固形分50重量%)200重量部に対し、炭酸カルシウム240重量部、マンガンビスマス複合酸化物20重量部、造膜助剤6重量部、粘性調整剤3重量部、消泡剤2重量部、水80重量部を常法により均一に混合した。
フィルムアプリケータ(隙間0.15mm)を用いて被覆材A1をコート紙に塗付し、標準状態(温度23℃、相対湿度50%)で48時間乾燥させ、得られた着色被膜の明度値L値を分光光度計により測定した結果、L=15であった。
【0066】
○被覆材A2
アクリル樹脂1(上記と同様)200重量部に対し、炭酸カルシウム240重量部、マンガンビスマス複合酸化物20重量部、フタロシアニンブルー20重量部、造膜助剤6重量部、粘性調整剤3重量部、消泡剤2重量部、水80重量部を常法により均一に混合した。被覆材A1と同様の方法で、着色被膜の明度値L値を測定した結果、L=13であった。
【0067】
○被覆材A3
アクリル樹脂1(上記と同様)200重量部に対し、炭酸カルシウム240重量部、鉄クロム複合酸化物20重量部、造膜助剤6重量部、粘性調整剤3重量部、消泡剤2重量部、水80重量部を常法により均一に混合した。被覆材A1と同様の方法で、着色被膜の明度値L値を測定した結果、L=17であった。
【0068】
○被覆材A4
アクリル樹脂1(上記と同様)200重量部に対し、炭酸カルシウム240重量部、カーボンブラック20重量部、造膜助剤6重量部、粘性調整剤3重量部、消泡剤2重量部、水80重量部を常法により均一に混合した。被覆材A1と同様の方法で、着色被膜の明度値L*値を測定した結果、L*=18であった。
【0069】
○被覆材B1
アクリル樹脂2(アクリル系モノマーの乳化重合物、ガラス転移温度0℃、固形分50重量%)200重量部に対し、黒色珪砂{マンガン−ビスマス複合酸化物によって珪砂を被覆したもの、マンガンビスマス複合酸化物:珪砂=2:100(重量比)}420重量部、エチレングリコール(沸点197℃、水への溶解度∞)10重量部、消泡剤2重量部を常法により均一に混合した。
【0070】
○被覆材B2
エチレングリコールをプロピレングリコール(沸点188℃、水への溶解度∞)に変更した以外は、被覆材B1と同様の方法で被覆材B2を作製した。
【0071】
○被覆材B3
アクリル樹脂2(上記と同様)200重量部に対し、黒色珪砂{マンガン−ビスマス複合酸化物によって珪砂を被覆したもの、マンガンビスマス複合酸化物:珪砂=2:100(重量比)}420重量部、ヒドロキシエチルセルロース(重量平均分子量300,000)2重量部、消泡剤2重量部を常法により均一に混合した。
【0072】
○被覆材B4
ヒドロキシエチルセルロースをカルボキシルメチルセルロース(重量平均分子量10,000)に変更した以外は、被覆材B3と同様の方法で被覆材B4を作製した。
【0073】
○被覆材B5
被覆材B1に、さらにヒドロキシエチルセルロース(重量平均分子量300,000)を2重量部加えて混合し、被覆材B5を作製した。
【0074】
○被覆材B6
アクリル樹脂2(上記と同様)200重量部に対し、黒色珪砂{鉄−クロム複合酸化物によって珪砂を被覆したもの、鉄−クロム複合酸化物:珪砂=2:100(重量比)}420重量部、エチレングリコール(沸点197℃、水への溶解度∞)10重量部、ヒドロキシエチルセルロース(重量平均分子量300,000)を2重量部、消泡剤2重量部を常法により均一に混合した。
【0075】
○被覆材B7
エチレングリコールを20重量部、ヒドロキシエチルセルロースを1重量部に変更した以外は、被覆材B6と同様の方法で被覆材7を作製した。
【0076】
○被覆材B8
エチレングリコールを25重量部、ヒドロキシエチルセルロースを0.5重量部に変更した以外は、被覆材B6と同様の方法で被覆材8を作製した。
【0077】
○被覆材B9
エチレングリコールを5重量部、ヒドロキシエチルセルロースを5重量部に変更した以外は、被覆材B6と同様の方法で被覆材9を作製した。
【0078】
○被覆材B10
エチレングリコールをプロピレングリコール(沸点188℃、水への溶解度∞)に変更し、ヒドロキシエチルセルロースをポリエチレングリコール(重量平均分子量1000)に変更した以外は、被覆材B6と同様の方法で被覆材B10を作製した。
【0079】
○被覆材B11
エチレングリコールをジエチレングリコールモノブチルエーテル(沸点230℃、水への溶解度∞)に変更し、ヒドロキシエチルセルロースを水溶性アクリル樹脂(重量平均分子量200,000)に変更した以外は、被覆材B6と同様の方法で被覆材B11を作製した。
【0080】
○被覆材B12
エチレングリコールをジプロピレングリコールモノブチルエーテル(沸点229℃、水への溶解度5g/100g)に変更した以外は、被覆材B1と同様の方法で被覆材B12を作製した。
【0081】
○被覆材B13
アクリル樹脂2(上記と同様)200重量部に対し、黒色珪砂{カーボンブラックによって珪砂を被覆したもの、カーボンブラック:珪砂=2:100(重量比)}420重量部、エチレングリコール(沸点197℃、水への溶解度∞)10重量部、消泡剤2重量部を常法により均一に混合した。
【0082】
○被覆材B14
アクリル樹脂2(上記と同様)200重量部に対し、黒色珪砂{カーボンブラックによって珪砂を被覆したもの、カーボンブラック:珪砂=2:100(重量比)}420重量部、消泡剤2重量部を常法により均一に混合した。
【0083】
(試験)
スレート板に対し、被覆材Aを塗付け量0.8kg/m(固形分)でスプレー塗装し、標準状態(気温23℃、相対湿度50%)で6時間養生後、250Wの赤外線ランプを3時間照射して着色被膜Aが加熱されたところで、
棒状目地材(目地幅10mm、高さ5mm、ポリエチレン製)を粘着剤にて格子状に貼り付けた。次いで、赤外線を照射したままで、被覆材Bを塗付け量2kg/m(固形分)でスプレー塗装し、さらに30分間赤外線照射した後、棒状目地材を除去した。
この際の着色被膜全体と、目地部の仕上りを評価した。
着色被膜全体の仕上りは、美観性に優れたものを5、塗り継ぎ部分が目立つものを1として、5>4>3>2>1の5段階で評価した。
目地部の仕上りは、外観に異常がないものを5、目地部の剥落がみられるものを1とし、5>4>3>2>1の5段階で評価した。
【0084】
(試験結果)
上記試験で使用した被覆材と、その試験結果を表1に示す。実施例では、着色被膜全体、及び目地部の仕上がりが、ともに良好な結果となった。
【0085】
【表1】