(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6357036
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】梁補強金具および梁補強構造
(51)【国際特許分類】
E04C 3/08 20060101AFI20180702BHJP
E04B 1/24 20060101ALI20180702BHJP
【FI】
E04C3/08
E04B1/24 Z
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-135697(P2014-135697)
(22)【出願日】2014年7月1日
(65)【公開番号】特開2016-14233(P2016-14233A)
(43)【公開日】2016年1月28日
【審査請求日】2017年2月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】316001674
【氏名又は名称】センクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】望月 久智
(72)【発明者】
【氏名】青木 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】田中 秀宣
【審査官】
富士 春奈
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−063931(JP,A)
【文献】
特開2013−014956(JP,A)
【文献】
特開2009−167615(JP,A)
【文献】
特開2006−214184(JP,A)
【文献】
特開2003−193619(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/148260(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B1/00−1/36
E04C3/00−3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通孔を有する梁を補強するための梁補強金具であって、
梁のウェブに接触する接触面と、
前記ウェブに溶接される溶接面と、
前記溶接面と略対向し、梁のフランジ部と対向するフランジ部対向面と、
を具備し、
長手方向の中央部の断面が、両端部の断面よりも大きく、
前記溶接面と前記フランジ部対向面との距離である幅と、前記接触面を下面とした際の前記接触面から上面までの距離である高さとが、ともに長手方向の中央部で長手方向の両端部よりも大きいことを特徴とする梁補強金具。
【請求項2】
前記フランジ部対向面は、長手方向に対して略直線状であり、
前記溶接面が屈曲または湾曲し、長手方向の中央部の幅が、両端部の幅よりも大きいことを特徴とする請求項1記載の梁補強金具。
【請求項3】
前記フランジ部対向面の方向を示す、マークが設けられることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の梁補強金具。
【請求項4】
前記マークは、前記フランジ部対向面に設けられた突起であることを特徴とする請求項3記載の梁補強金具。
【請求項5】
前記突起は前記接触面の縁部まで形成されず、前記突起の下端と前記接触面の縁部との間に隙間が形成されることを特徴とする請求項4記載の梁補強金具。
【請求項6】
前記突起は、前記接触面の縁部まで形成されることを特徴とする請求項4記載の梁補強金具。
【請求項7】
前記溶接面には、溶接範囲を示す溶接範囲特定部が設けられることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の梁補強金具。
【請求項8】
前記溶接範囲特定部は、幅方向断面における角度の変化部であることを特徴とする請求項7記載の梁補強金具。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれかに記載の梁補強金具を用いた梁補強構造であって、
前記ウェブに貫通孔が形成された梁に対し、前記貫通孔の上下のそれぞれのフランジ部近傍に、前記梁補強金具の前記フランジ部対向面が、それぞれの前記フランジ部と対向し、前記接触面が前記ウェブに接触するように、一対の前記梁補強金具が配置され、
前記溶接面において、前記ウェブと前記梁補強金具とが溶接されて固定されることを特徴とする梁補強構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築構造物を構成し、貫通孔を有する梁に接合され、当該梁を補強する梁補強金具等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建築構造物の梁には配管や配線を通すために貫通孔が形成されることがある。この場合、貫通孔により、梁の曲げ耐力が低下する。この梁の曲げ耐力低下を防ぐため梁に梁補強金具を接合し、梁の補強を行っている。
【0003】
このような梁補強金具としては、例えば、貫通孔の周囲に、貫通孔に即した形状の板を溶接する方法がある(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−193619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、通常の板状部材を用いた方法では、貫通孔の周囲を補強するために、所定以上の大きさを有するため、貫通孔が一方のフランジ部の近くに偏心する場合などに対応できない場合がある。
【0006】
また、このような板状部材は厚みが一定であるため、最も補強を要する部位の曲げ耐力を確保できるように厚みを設定すると、他の部位は過剰に補強を行うこととなり、重量増やコスト増の要因となる。
【0007】
これに対し、リング状の補強部材を貫通孔に接合する梁補強部材がある。しかし、リング状の梁補強部材を貫通孔に配置するためには、貫通孔をその分だけ大きくする必要がある。また、十分な耐力を確保するため、大型の補強部材が必要となる場合がある。
【0008】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、効率よく梁を補強することが可能な梁補強金具等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達成するため、第1の発明は、貫通孔を有する梁を補強するための梁補強金具であって、梁のウェブに接触する接触面と、前記ウェブに溶接される溶接面と、前記溶接面と略対向し、梁のフランジ部と対向するフランジ部対向面と、を具備し、長手方向の中央部の断面が、両端部の断面よりも大き
く、前記溶接面と前記フランジ部対向面との距離である幅と、前記接触面を下面とした際の前記接触面から上面までの距離である高さとが、ともに長手方向の中央部で長手方向の両端部よりも大きいことを特徴とする梁補強金具である。
【0010】
前記フランジ部対向面は、長手方向に対して略直線状であり、前記溶接面が屈曲または湾曲し、長手方向の中央部の幅が、両端部の幅よりも大きいことが望ましい。
【0011】
前記フランジ部対向面の方向を示す、マークが設けられてもよい。
【0012】
前記マークは、前記フランジ部対向面に設けられた突起であってもよい。
【0013】
前記突起は、前記接触面の縁部まで形成されてもよく、または、前記突起は前記接触面の縁部まで形成されず、前記突起の下端と前記接触面の縁部との間に隙間が形成されてもよい。
【0014】
前記溶接面には、溶接範囲を示す溶接範囲特定部が設けられてもよい。
【0015】
前記溶接範囲特定部は、幅方向断面における角度の変化部であってもよい。
【0016】
第1の発明によれば、梁補強金具の中央部の断面積が大きくなるような変断面形状であるため、最も曲げ耐力の必要な部位のみを効率よく補強するとともに、軽量化を達成することができる。また、必要な部位の断面積(例えば厚み)が大きいため、全体のサイズ(設置面積)を小さくすることができる。このため、貫通孔とフランジ部との隙間が小さい部位にも設置が可能である。
【0017】
また、溶接面が屈曲又は湾曲し、中央部の幅を大きくすることで、単純な矩形形状や貫通孔に応じた円形状の場合と比較して、溶接が容易である。例えば、矩形の板部材を用いる場合には、全4辺の溶接が必要であるが、本発明では、3辺の溶接で十分であり、また、3辺が互いに直交せずに、なだらかに連続するため、部位による溶接方向の違いが小さく、溶接作業が容易である。
【0018】
また、フランジ部対向面の方向を示すマークを設けることで、梁補強金具の取り付け方向や取り付け面を誤ることがない。この際、マークが突起であれば、視認性に優れ、また、フランジ部対向面を接触面と誤って配置することもない。
【0019】
また、突起が接触面の縁部まで形成されると、すなわち、突起がフランジ部対向面の全高にわたって形成されていると、突起の下端を、ウェブ部とフランジ部との境界のフィレット形状の端部に突き当てることができる。このため、フィレット端部から、所定の距離だけ離して梁補強金具を設置することができる。このようにすることで、梁補強金具の位置決めが容易となる。
【0020】
また、突起が接触面の縁部まで形成されず、突起の下端と接触面の縁部との間に隙間が形成されると、すなわち、突起がフランジ部対向面の上部から途中まで形成されていると、突起の下端がウェブ部とフランジ部との境界のフィレット形状と干渉することがなく、突起をフランジ部に突き当てることができる。このため、フィレット形状の影響を受けることなくフランジ部から所定の距離を離して梁補強金具を設置することができる。このようにすることで、梁補強金具の位置決めが容易となる。
【0021】
また、溶接面に、溶接範囲を示す溶接範囲特定部を設けることで、必要な溶接代を容易に把握することができる。このため、必要以上に溶接を行うことを抑制するとともに、溶接不足等が生じることを防止することができる。
【0022】
また、溶接範囲特定部が、幅方向断面における角度の変化部であれば、視認性に優れる。また、梁補強金具を鍛造等で成型した際、金型の合わせ部を溶接範囲特定部の位置に設定することで、抜きテーパを溶接範囲特定部として利用することができる。
【0023】
第2の発明は、第1の発明にかかる梁補強金具を用いた梁補強構造であって、前記ウェブに貫通孔が形成された梁に対し、前記貫通孔の上下のそれぞれのフランジ部近傍に、前記梁補強金具の前記フランジ部対向面が、それぞれの前記フランジ部と対向し、前記接触面が前記ウェブに接触するように、一対の前記梁補強金具が配置され、前記溶接面において、前記ウェブと前記梁補強金具とが溶接されて固定されることを特徴とする梁補強構造である。
【0024】
第2の発明によれば、効率よく梁を補強することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、効率よく梁を補強することが可能な梁補強金具等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図3】(a)は梁補強金具1を示す正面図、(b)は梁補強金具1を示す平面図。
【
図4】梁補強金具の断面図であり、(a)は
図3(b)のC−C線断面図、(b)は
図3(b)のD−D線断面図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態にかかる梁補強金具1について説明する。
図1は、梁補強金具を示す上方斜視図であり、
図2は、下方斜視図である。また、
図3(a)は梁補強金具1を示す正面図(
図3(b)のB矢視図)であり、
図3(b)は梁補強金具1を示す平面図(
図3(a)のA矢視図)である。
【0028】
梁補強金具1は、溶接面3、フランジ部対向面5、接触面9、突起7等を有する。梁補強金具1は、例えば鋼材やステンレス鋼などの金属製の部材である。梁補強金具1は板状ではなく、3次元的な立体形状を有する。より具体的には、長手方向の端部から中央部にかけて、断面形状が変化する。断面形状の詳細については後述する。
【0029】
接触面9は、梁のウェブ部に対して接触する面である。したがって、接触面9は、完全に平坦に形成される。
【0030】
フランジ部対向面5は、梁のフランジ部に対して対向する部位であり、略直線状に形成される。フランジ部対向面には突起7が形成される。なお、図示した例では、突起7が、長手方向の中央と、その両側に計3か所形成された梁補強金具1を示すが、突起7の位置や個数は図示した例には限られない。
【0031】
突起7は、フランジ部対向面5の方向を示すマークとして機能する。例えば、突起7などのマークが形成されないと、フランジ部対向面5をウェブに接触させる接触面9と間違える恐れがある。また、フランジ部対向面5をフランジ部とは逆向きに配置してしまう恐れがある。突起7を設けることで、突起7をフランジ部の方向に向けて配置することが明確となり、設置間違いを防止することができる。
【0032】
なお、突起7が少なくとも長手方向の中央に形成されれば、中央の突起7を、梁補強金具1の中央位置として把握することができる。このため、貫通孔に対して、梁補強金具1の長手方向の設置位置を容易に把握することができる。
【0033】
なお、梁補強金具1の向き等を把握するためのマークとしては、必ずしも突起7でなくてもよく、方向を把握できれば、その他の構成(凹み、色分け、けがきなど)であってもよい。
【0034】
溶接面3は、梁のウェブ部に対して溶接される部位である。
図3(b)に示すように、溶接面3は、部分的に屈曲部を有する。なお、屈曲部に代えて湾曲部を形成してもよく、溶接面3の全体を湾曲形状としてもよい。
【0035】
図示した例では、梁補強金具1は、平面図において、略台形となる。すなわち、溶接面3は、3辺に形成される。本実施形態において、溶接部は3辺で良いため、板状部材を溶接する際のように、全周にわたって溶接を行う必要がない。また、中央の溶接面3に対して、両側の溶接面3は垂直に形成されるのではなく、なだらかなテーパ状に形成される。このため、溶接方向の変化が小さく、溶接作業を行いやすい。
【0036】
図4は、
図3(b)のC−C線断面図(長手方向中央近傍)であり、
図4(b)は
図3(b)のD−D線断面図(長手方向端部近傍)である。前述した様に、梁補強金具1は、長手方向に対して断面形状が変化する。ここで、以下の説明において、梁補強金具1の溶接面3とフランジ部対向面5との距離(接触面9の長さ)を梁補強金具1の幅と称し、接触面9を下面とした際に、接触面9から上面までの距離(フランジ部対向面5の長さ)を高さと称する。
【0037】
梁補強金具1の長手方向の中央部の断面(断面積)は、両端部の断面(断面積)よりも大きい。より具体的には、梁補強金具1の長手方向の中央部の幅Eは、両端部の幅Gよりも大きい。また、梁補強金具1の長手方向の中央部の高さFは、両端部の高さHよりも高い。
【0038】
梁補強金具1の中央部近傍の断面積を大きくすることで、梁補強金具1を梁に固定した際に、最も大きな応力を受け持つ部位の強度を確保することができる。また、この際、梁補強金具1に必要な強度は、中央から離れるにつれて小さくなるため、これに応じて、端部に行くにつれて断面を小さくすることで、重量増およびコスト増を抑制することができる。
【0039】
ここで、突起7は、フランジ部対向面5の全高にわたって形成されず、一部にのみ形成される。具体的には、フランジ部対向面5と接触面9との境界の辺を接触面縁部13とした場合に、突起7はフランジ部対向面5の上部から接触面縁部13までは形成されず、突起7の下端と接触面縁部13との間には隙間が形成される。
【0040】
また、溶接面3の上部には、角度変化部11が設けられる。角度変化部11は、断面において、溶接面3とその上部との間で角度が変化する部位である。角度変化部11は、溶接範囲特定部として機能する。すなわち、角度変化部11が隠れる位置まで溶接を行うことで、必要な溶接強度を確保することができる。
【0041】
なお、溶接範囲特定部としては、角度変化部11ではなく、色分け、段差、粗度変化など、他の構成であってもよい。
【0042】
また、梁補強金具1を鍛造などの金型を用いて製造する場合には、金型からの抜きテーパが必要となるが、この抜きテーパを角度変化部11として利用することもできる。例えば、角度変化部11を金型の合わせ部とすることで、溶接面3の下部の抜きテーパと、上部における逆テーパとの境界に、角度変化部11を形成することができる。
【0043】
次に、梁補強金具1を用いた梁補強構造20について説明する。
図5は、梁補強構造20の斜視図であり、
図6は正面図である。
【0044】
梁15は、ウェブ部19の上下にフランジ部17を有するH鋼である。ウェブ部19には、配管等を通すための貫通孔21が形成される。梁補強金具1は、貫通孔21から離れた位置であって、上下のフランジ部17に沿って配置される。なお、貫通孔21の中心位置は、梁補強金具1の長手方向の中央位置とほぼ一致する。また、梁補強金具1は、貫通孔21の径よりも長い。
【0045】
図7は、
図6のI−I線断面図である。梁補強金具1は、梁補強金具1のフランジ部対向面5が、フランジ部17と対向する方向に配置される。また、接触面9がウェブ部19と接触し、溶接部25によって、ウェブ部19に固定される。この際、溶接部25は、角度変化部11が隠れる高さまで形成される。
【0046】
ここで、梁15の、ウェブ部19とフランジ部17との境界部には、フィレット部23が形成される。ウェブ部19の厚さ変化部であるフィレット部23は、ウェブ部19とフランジ部17とをなだらかにつなぐ凹型の略円弧状の部位である。なお、フィレット部23に代えて、溶接ビードが形成される場合があり、この場合には、凸型の略円弧状となる。以下の説明では、フィレット部23について説明するが、溶接部であっても同様である。
【0047】
梁補強金具1は、フランジ部17に近づけた方が、曲げ耐力向上の効果が大きい。したがって、梁補強金具1は、貫通孔21から離れた位置であって、フランジ部17近傍に配置される。
【0048】
一方、前述した様に、ウェブ部19とフランジ部17との境界部近傍には、フィレット部23が形成される。梁補強金具1がフィレット部23上に重なると、梁補強金具1がフィレット部23に乗り上げるため、接触面9がウェブ部19から離れてしまう恐れがある。したがって、梁補強金具1は、フィレット部23に乗り上げない位置に設置される。すなわち、接触面縁部13がフィレット部23よりも貫通孔側に位置するように配置される。
【0049】
以上、本実施の形態によれば、貫通孔21を有する梁15を、効率よく補強することができる。特に、梁補強金具1が中央部の断面が大きくなるように形成されるため、必要な部位の強度を確保するとともに、軽量化を達成することができる。また、このように厚みを変化させることで、幅を広くしなくても十分な強度を確保することができるため、フランジ部17と貫通孔21との間が狭くても設置することが可能である。
【0050】
また、貫通孔21にリング状部材を配置しないため、貫通孔21を必要以上に大きくする必要がない。
【0051】
また、梁補強金具1を貫通孔から離れたフランジ部17近傍に配置されるため、梁15の曲げ耐力を効率よく向上させることができる。
【0052】
また、フランジ部対向面5の方向を示す突起7が形成されるため、梁補強金具1の設置方向や設置面を間違えることがない。
【0053】
また、溶接面が屈曲するように形成されるため、3辺を溶接することで、梁補強金具1をウェブ部19に固定することができる。したがって、溶接作業が容易である。
【0054】
また、溶接範囲が、角度変化部によって特定されるため、溶接不足や、過剰な溶接によるコスト増を抑制することができる。
【0055】
次に、他の実施の形態について説明する。
図8は、他の実施形態にかかる梁補強金具1aを示す図であり、
図7に対応する図である。なお、以下の説明において、梁補強金具1と同様の構成については、
図7等と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0056】
梁補強金具1aは、梁補強金具1とほぼ同様の構造であるが、突起7の長さ(突出代)が異なる。梁補強金具1aの突起7の突出代は、フィレット部23の形成範囲よりもわずかに大きい。したがって、梁補強金具1aを設置する際、突起7をフランジ部17に接触するようにすることで、容易に梁補強金具1aの位置決めを行うことができる。この際、梁補強金具1aがフィレット部23に乗り上げることがない。
【0057】
梁補強金具1aによれば、梁補強金具1と同様の効果を得ることができる。また、突起7の長さをフィレット部23の大きさに対応させるため、突起7をフランジ部17に突き合わせて設置することで、確実に梁補強金具1aの位置決めが可能である。このため、設置作業性が良好である。
【0058】
図9は、さらに他の実施形態である梁補強金具1bを示す断面図である。梁補強金具1bは、梁補強金具1とほぼ同様の構成であるが、突起7が接触面縁部13まで形成される点で異なる。
【0059】
梁補強金具1bを配置する際には、突起7の下端先端をフィレット部23の縁部に合わせるようにして配置する。このように配置することで、接触面縁部13は、フィレット部23から所定距離(突起7の長さ分)だけ離れた位置に配置される。したがって、接触面縁部13に接触面9が乗り上げることがない。
【0060】
なお、突起7の先端をフィレット部23の縁部に合わせる際には、梁補強金具1bを貫通孔21側からすべらすようにして配置し、突起7の先端がフィレット部23に突き当たるようにするか、目視で調整すればよい。
【0061】
このようにすることで、梁補強金具1bをフィレット部23から所定距離だけ離した位置に、容易に配置することができる。例えば、フィレット部23は完全にまっすぐではない場合もあるため、フィレット部23に接するように接触面9を配置すると、梁補強金具の一部がフィレット部23への乗り上げの恐れがあるが、フィレット部23から所定距離だけ離すことで、この影響を排除することができる。なお、突起7の端部に面取り加工などによって、フィレット部23の縁部近傍にわずかに突起7が乗り上げても接触面9が浮き上がらないようにすることもできる。
【0062】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0063】
1、1a、1b………梁補強金具
3………溶接面
5………フランジ部対向面
7………突起
9………接触面
11………角度変化部
13………接触面縁部
15………梁
17………フランジ部
19………ウェブ部
20………梁補強構造
21………貫通孔
23………フィレット部
25………溶接部