特許第6357047号(P6357047)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6357047
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】ニトリル化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 253/08 20060101AFI20180702BHJP
   C07C 253/10 20060101ALI20180702BHJP
   C07C 255/12 20060101ALI20180702BHJP
   C07C 255/04 20060101ALI20180702BHJP
   B01J 27/198 20060101ALI20180702BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20180702BHJP
   C01C 3/02 20060101ALN20180702BHJP
【FI】
   C07C253/08
   C07C253/10
   C07C255/12
   C07C255/04
   B01J27/198 Z
   !C07B61/00 300
   !C01C3/02 D
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-159131(P2014-159131)
(22)【出願日】2014年8月5日
(65)【公開番号】特開2016-34928(P2016-34928A)
(43)【公開日】2016年3月17日
【審査請求日】2017年7月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000167646
【氏名又は名称】広栄化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】嶋津 秀高
(72)【発明者】
【氏名】田黒 明
【審査官】 斉藤 貴子
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第02842584(US,A)
【文献】 特表2005−511738(JP,A)
【文献】 特表2008−525467(JP,A)
【文献】 特開平10−251012(JP,A)
【文献】 特開平07−328447(JP,A)
【文献】 特開平03−026342(JP,A)
【文献】 特開2000−119258(JP,A)
【文献】 特表2010−511652(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C1/00−409/44
B01J27/198
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で示される酸化物触媒の存在下、メタノールをアンモニア及び酸素と気相接触反応させて青酸を含む反応ガスを得、さらに前記青酸を含む反応ガスに含まれる青酸とカルボニル化合物及び/又はオレフィン化合物とを反応させることを特徴とするニトリル化合物の製造方法。
式(1):
AlSi (1)
(式中、a、b、c、d及びeはそれぞれバナジウム、リン、アルミニウム、ケイ素及び酸素の原子比を表し、aを1としたとき、bは0.3〜3、cは0〜2(ただし、0は除く。)、dは0〜6(ただし、0は除く。)であり、eは酸素の原子価並びに他の元素の原子価及び原子比により決定される値である。)
【請求項2】
青酸を含む反応ガスに含まれる青酸とカルボニル化合物及び/又はオレフィン化合物とを反応させる際に、青酸を含む反応ガスを反応系内に吹き込みながら、カルボニル化合物及び/又はオレフィン化合物を反応系内へ連続的に添加して反応させることを特徴とする請求項に記載のニトリル化合物の製造方法。
【請求項3】
前記カルボニル化合物が、ホルムアルデヒドである請求項1又は2に記載のニトリル化合物の製造方法。
【請求項4】
前記オレフィン化合物が、アクリロニトリルである請求項1又は2に記載のニトリル化合物の製造方法。
【請求項5】
メタノール1モルに対して、アンモニアを0.5〜0.9モル使用する請求項1〜のいずれかに記載のニトリル化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
バナジウム、リン、アルミニウム及びケイ素を含有する酸化物触媒の存在下、メタノールをアンモニア及び酸素と気相接触反応させて青酸を含む反応ガスを得、さらに前記青酸を含む反応ガスに含まれる青酸と分子内に二重結合を有する化合物とを反応させることを特徴とするニトリル化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ニトリル化合物は、医農薬中間原料やポリマーの原料等として重要な化合物であり、例えば、グリコロニトリルのようなシアノヒドリン化合物、スクシノニトリルやアジポニトリルのような脂肪族ジニトリル化合物が知られている。
【0003】
シアノヒドリン化合物の製造方法としては、例えば、メタンとアンモニアを反応させて青酸を含む反応ガスを得(アンドリュッソー法)、さらに前記青酸を含む反応ガスに含まれる青酸を液状又は溶液状態のアルデヒド化合物に吹き込むことでシアノヒドリン化合物を得る方法が知られている。(特許文献1参照)。また、脂肪族ジニトリル化合物の製造方法としては、例えば、アンドリュッソー法により青酸を含む反応ガスを得、さらに前記青酸を含む反応ガスに含まれる青酸とアクリロニトリルとを塩基触媒下で反応させてスクシノニトリルを得る方法が知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】ドイツ特許1254615号明細書
【特許文献2】米国特許2842584号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来法において、メタンとアンモニアを反応させて青酸を含む反応ガスを製造する際の反応温度は1000℃以上と非常に高温であるため、高温に対応した高価な設備が必要であり、その結果として、ニトリル化合物の製造コストが高価になる問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らはかかる事情に鑑み、鋭意検討した結果、バナジウム、リン、アルミニウム及びケイ素を含有する酸化物触媒存在下でメタノール、アンモニア及び酸素を含むガスから気相接触反応により青酸を含む反応ガスを得、さらに前記青酸を含む反応ガスに含まれる青酸と分子内に二重結合を有する化合物とを反応させることで、比較的温和な条件で効率的にニトリル化合物が製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明は、バナジウム、リン、アルミニウム及びケイ素を含有する酸化物触媒の存在下、メタノールをアンモニア及び酸素と気相接触反応させて青酸を含む反応ガスを得、さらに前記青酸を含む反応ガスに含まれる青酸と分子内に二重結合を有する化合物とを反応させることを特徴とするニトリル化合物の製造方法に関するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、メタノールをアンモニア及び酸素と気相接触反応させて青酸を含む反応ガスを得る反応を、高価な設備を必要としない300〜500℃程度で行うことができ、さらにこのようにして得られた青酸を含む反応ガスに含まれる青酸と分子内に二重結合を有する化合物とを反応させることで、ニトリル化合物を製造することができる。よって、本発明は、工業的に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳しく説明する。
【0010】
本発明は、バナジウム、リン、アルミニウム及びケイ素を含有する酸化物触媒の存在下、メタノールをアンモニア及び酸素と気相接触反応させて青酸を含む反応ガスを得る反応(以下、第1反応という。)と、第1反応で得られた青酸を含む反応ガス中の青酸と、分子内に二重結合を有する化合物とを反応させて、ニトリル化合物を製造する反応(以下、第2反応という。)の2つの反応からなる。
【0011】
まず、第1反応について説明する。
【0012】
第1反応は、バナジウム、リン、アルミニウム及びケイ素を含有する酸化物触媒の存在下、メタノールをアンモニア及び酸素と気相接触反応させることにより行われ、その反応温度は、通常、100〜600℃、好ましくは300〜500℃で、常圧又は加圧下で行われる。反応方式は特に制限されず、固定床、流動床又は移動床で行われ、バッチ式、連続式のいずれの方式も採用することができるが、好ましくは連続式である。
【0013】
第1反応で使用するアンモニアは、工業的に入手可能なものであれば特に制限されない。アンモニアの使用量は、通常、メタノール1モルに対して1モル以下であり、好ましくは0.5〜0.95モル、より好ましくは0.5〜0.9モル、さらに好ましくは0.8〜0.9モルである。メタノールに対してアンモニアが過剰であると、第1反応で得られる青酸を含む反応ガス中にアンモニアが残存するため、残存したアンモニアが第2反応で生成するニトリル化合物と反応して、ニトリル化合物がアミノ化された化合物が副生する可能性がある。
【0014】
第1反応において酸素源は経済上の理由から空気が好んで用いられるが、純酸素又はこれと空気との混合物を使用することもできる。酸素の使用量としては、通常、メタノール1モルに対して0.8〜2モルであり、好ましくは1〜4モルである。
【0015】
反応は希釈剤の存在下又は不存在下に行われる。希釈剤としては、反応に不活性なものであれば特に限定されることなく、任意のものを用いることができる。具体的には、窒素、アルゴン等が挙げられる。
【0016】
メタノールの空間速度は、通常LHSV(液空間速度)で0.01〜2g/cc−触媒・hrであり、好ましくは0.1〜1g/cc−触媒・hrである。
【0017】
第1反応では、バナジウム、リン、アルミニウム及びケイ素を含有する酸化物触媒を用いる。バナジウム、リン、アルミニウム及びケイ素を含有する酸化物触媒としては、式(1):
AlSi (1)
(式中、a、b、c、d及びeはそれぞれバナジウム、リン、アルミニウム、ケイ素及び酸素の原子比を表し、aを1としたとき、bは0.3〜3、cは0〜2(ただし、0は除く。)、dは0〜6(ただし、0は除く。)であり、eは酸素の原子価並びに他の元素の原子価及び原子比により決定される値である。)で示される酸化物触媒が好ましく、更に好ましくは、上記式(1)においてaを1としたとき、bが0.4〜2、cが0.3〜1.5及びdが0.1〜5.5の酸化物触媒である。
【0018】
第1反応に用いられる触媒は、一般に広く知られている酸化物触媒の調製法を利用して調製することができる。一例を示せば、バナジウム、リン、アルミニウム又はケイ素を含む化合物を水等の溶媒中で加熱、攪拌した後、得られた混合物を濃縮、乾燥し、次いで空気存在下で焼成すれば、本発明の触媒であるバナジウム、リン、アルミニウム及びケイ素を含有する酸化物触媒が得られる。
【0019】
前記触媒の調製に使用するバナジウム、リン、アルミニウム又はケイ素を含む化合物として、次の化合物が挙げられる。バナジウムを含む化合物としては、メタバナジン酸アンモニウム、五酸化バナジウム、シュウ酸バナジル、リン酸バナジル等、リンを含む化合物としては、リン酸、メタリン酸、亜リン酸、リン酸塩(例えば、リン酸アンモニウムなど)等、アルミニウムを含む化合物としては、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、硫酸アルミニウム、リン酸アルミニウム等、ケイ素を含む化合物としては、酸化ケイ素及びケイ酸(シリカゲル及びシリカゾル等)、並びにケイ酸塩(ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸アンモニウム等)、アルコキシシラン(テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等)等が挙げられる。
【0020】
第1反応においては、反応器中に触媒層として存在するバナジウム、リン、アルミニウム及びケイ素を含有する酸化物触媒の一部又は全部を、反応に不活性な固体で希釈してもよい。
【0021】
反応に不活性な固体とは、それ自身は本発明の反応に対する触媒として作用せず、また、副反応を促進することがないような固体であり、しかもそれ自身が本発明の反応条件下で変質しないものである。このような固体であればいずれも本発明に使用することができる。反応に不活性な固体としては、触媒の担体として通常使用されるものが好ましく、具体的には、例えば、シリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、炭化ケイ素、酸化チタン、ケイソウ土、ゼオライト等が挙げられる。
【0022】
バナジウム、リン、アルミニウム及びケイ素を含有する酸化物触媒の一部又は全部を反応に不活性な固体で希釈する方法としては、例えば、バナジウム、リン、アルミニウム及びケイ素を含有する酸化物触媒の一部又は全部を反応に不活性な固体と混合する方法やバナジウム、リン、アルミニウム及びケイ素を含有する酸化物触媒を反応に不活性な固体に担持させる使用する方法等が挙げられる。
【0023】
バナジウム、リン、アルミニウム及びケイ素を含有する酸化物触媒を反応に不活性な固体に担持させる方法としては、例えば、バナジウム、リン、アルミニウム及びケイ素の化合物と反応に不活性な固体を、水等の溶媒中で加熱、攪拌した後、得られた混合物を濃縮、乾燥し、次いで空気存在下で焼成する方法、バナジウム、リン、アルミニウム及びケイ素を含有する化合物を溶解した溶液を反応に不活性な固体に含浸させた後、乾燥、焼成する方法、バナジウム、リン、アルミニウム及びケイ素を含有する酸化物を反応に不活性な固体と所望により水等の溶媒を用いて混練する方法、バナジウム、リン、アルミニウム及びケイ素を含有する酸化物で不活性な固体を被覆する方法等が挙げられる。
【0024】
バナジウム、リン、アルミニウム及びケイ素を含有する酸化物(当該酸化物を反応に不活性な固体に担持させたものを含む。)は、円柱状、円筒状、球状、粒状、粉末状等、所望の形状に成形して本発明の反応に使用することができる。
【0025】
バナジウム、リン、アルミニウム及びケイ素を含有する酸化物触媒の一部又は全部を反応に不活性な固体で希釈する場合、触媒層におけるバナジウム、リン、アルミニウム及びケイ素を含有する酸化物触媒と反応に不活性な固体の割合は特に制限されず、反応方式、反応条件等により適宜選択すればよい。通常、触媒層全体におけるバナジウム、リン、アルミニウム及びケイ素を含有する酸化物と反応に不活性な固体の割合として、前者1重量部に対して後者が0.1〜60重量部の範囲から選択され、好ましくは0.5〜30重量部である。
【0026】
第1反応により得られた青酸を含む反応ガスは、冷却して液体とした後に第2反応の原料としてもよいし、青酸を含む反応ガスを溶媒に吹き込んで青酸を吸収させることで青酸を含む溶液とした後に第2反応の原料として用いてもよい。製造効率と安全性の面から、青酸を含む反応ガスを順次第2反応に用いることで、得られた反応ガス中の青酸をすぐに消費してゆくことが好ましい。
【0027】
第2反応について説明する。
【0028】
本発明において第2反応は、第1反応により得られた青酸を含む反応ガス中の青酸と分子内に二重結合を有する化合物とを反応させることにより行われ、反応方式としてはバッチ式が好ましい。
【0029】
第1反応で得られた青酸を含む反応ガス中の青酸と分子内に二重結合を有する化合物とを反応させる方法は特に限定されない。例えば、分子内に二重結合を有する化合物を含む反応系内に第1反応で得られた青酸を含む反応ガスを吹き込んでもよい。また、第1反応で得られた青酸を含む反応ガスを反応系内に吹き込みながら、反応系内へ分子内に二重結合を有する化合物を連続的に添加して反応を行ってもよい。第2反応では、分子内に二重結合を有する化合物が青酸に対して第2反応の反応系内に過剰に存在するとニトリル化合物の収率が低下する傾向がある。このため、第1反応で得られた青酸を含む反応ガスを反応系内に吹き込みながら、反応系内へ分子内に二重結合を有する化合物を連続的に添加して反応を行うことが好ましい。この場合、反応系内へ分子内に二重結合を有する化合物を添加する速度は、青酸に対して分子内に二重結合を有する化合物が大過剰とならなければ特に制限されないが、青酸1モルに対して分子内に二重結合を有する化合物が0.8〜1.1モルとなる範囲で、連続的に添加することが好ましい。
【0030】
分子内に二重結合を有する化合物としては、カルボニル化合物、オレフィン化合物等が挙げられる。
【0031】
カルボニル化合物としては、具体的には、アセトン、メチルエチルケトン、イソブチルメチルケトン等のケトン化合物、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド等のアルデヒド化合物等が挙げられ、青酸と効率よく反応する点で、アルデヒド化合物が好ましく、ホルムアルデヒドが特に好ましい。
【0032】
カルボニル化合物がホルムアルデヒドである場合、ホルムアルデヒドの水溶液が好適に用いられ、30〜50重量%のホルムアルデヒドを含有する水溶液が特に好適に用いられるが、前記水溶液以外にパラホルムアルデヒドまたは1,3,5−トリオキサン、ホルムアルデヒドのアルコール溶液等を使用することもできる。
【0033】
オレフィン化合物等としては、具体的にはアクリロニトリル、2−ブテンニトリル、3−ブテンニトリル、2−メチル−3−ブテンニトリル、2−メチル−2−ブテンニトリル、2−ペンテンニトリル、3−ペンテンニトリル又は4−ペンテンニトリル等が挙げられ、好ましくはアクリロニトリルである。オレフィン化合物の使用量は、通常、青酸1モルに対して0.8モル以上、好ましくは0.8〜1.3モルである。
【0034】
第2反応で溶媒を用いる場合、通常、溶媒としては、水、アルコール溶媒が用いられ、水が好適に用いられる。
【0035】
第2反応の反応温度としては、ニトリル化合物の収率が良好となる観点から、通常、10〜90℃であり、好ましくは20〜80℃であり、特に好ましくは20〜60℃である。青酸とカルボニル化合物とを反応させる場合、反応温度が高すぎると、ニトリル化合物からカルボニル化合物への逆反応が進行するようになるうえに、突発的な異常反応を起こしやすくなり、ニトリル化合物の生成率が低下する傾向にある。また、温度が低すぎると、反応自体は安定であるが反応速度が遅くなる傾向にある。
【0036】
第2反応において青酸とカルボニル化合物とを反応させる場合、反応液のpHは、反応温度との兼ね合いであるが、通常、8以下であり、ニトリル化合物の生成率が向上することから、1〜7に保つことが好ましく、5〜7に保つことがより好ましい。pHが高すぎると、ニトリル化合物からカルボニル化合物への逆反応が進行するようになるうえに、青酸の分解反応が起きやすくなり、ニトリル化合物の生成率が低下する傾向にある。反応液のpHの調整方法としては、公知の緩衝剤や、硫酸等の酸化合物や水酸化ナトリウム等の塩基化合物を使用して調整する方法が挙げられる。
【0037】
第2反応において、必要に応じて触媒を用いてもよく、触媒としては、酢酸ナトリウム、シアン化ナトリウム、シアン化カリウム等のアルカリ金属塩やトリエチルアミン、イソプロピルアミン等のアミン化合物が挙げられる。青酸と脂肪族ニトリルを反応させる場合、触媒としてアミン化合物を用いることが好ましく、トリエチルアミンを用いることが特に好ましい。
【0038】
第2反応において、青酸とオレフィン化合物を反応させる場合、必要に応じて脂肪族ジニトリルを用いてもよい。脂肪族ジニトリルとしては、スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル等が挙げられ、好ましくはスクシノニトリルである。
【0039】
第2反応終了後、得られたニトリル化合物を含有する反応液を濃縮して溶媒を除去することにより、ニトリル化合物を得ることができる。また、得られたニトリル化合物を含有する反応液を、そのままニトリル化合物を原料とする任意の反応に用いることができる。
【実施例】
【0040】
次に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はなんらこれらに限定されるものではない。なお、実施例中、グリコロニトリルの収率は硝酸銀滴定及びチオシアン酸アンモニウム滴定より求め、メタノールの反応転化率、アミノアセトニトリルの副生率、スクシノニトリルの収率はガスクロマトグラフィー(以下、GCと略記)より求めた。グリコロニトリルの収率、スクシノニトリルの収率及びアミノアセトニトリルの副生率はアンモニアを基準として算出た。GCによる分析は、以下の条件で行った。
【0041】
GC分析条件
ガスクロマトグラフ:株式会社島津製作所製、GC−2010
カラム:アジレント・テクノロジー株式会社製、DB−WAX(30m、内径0.32mm,膜厚0.25μm)
キャリアガス:ヘリウム、線速度:30cm/min
スプリット比:1:100
気化室温度:250℃
カラム温度:50℃→(10℃/min)→200℃(10min)
検出器: FID(水素炎イオン化検出器)
検出器温度:300℃
【0042】
製造例1 触媒調製
イオン交換水500g及び85%リン酸45.6gを、攪拌下、混合して90℃に昇温した後、五酸化バナジウム30.0g、10wt%アルミナゾル84.1g及びシリカゲル19.8gを加え、同温度で20分攪拌した。得られた混合物を濃縮し、濃縮物を200℃で一昼夜乾燥後、空気気流中、640℃で4時間焼成した。このようにして酸素を除く原子比がV1.2Al0.5Si1.0の酸化物である触媒を得た。得られた触媒は粒径1.0〜1.7mm(10〜16メッシュ)に分級して実施例1〜6に使用した。
【0043】
実施例1
内径19mmのパイレックス(登録商標)製のガラス反応管に、製造例1で得た触媒を10ml充填し、その上下に直径3mmの球状炭化ケイ素をそれぞれ高さ12cmずつ充填した。この反応管を380℃に昇温し、反応管上部からメタノール:アンモニア:空気:窒素=1:0.8:5.9:5.9(モル比)の混合物をメタノール基準でLHSV=0.175g/cc−触媒・hrで供給した。反応管の下部から排出された反応ガスを350mLの水の中へ吹き込みながら、そこへ37%ホルムアルデヒド水溶液を約1.40g/minの速度で滴下して反応させた。反応中、水は30〜60℃、pH6〜7に保った。反応中のpHは硫酸と48%水酸化ナトリウム水溶液で調整した。反応開始から1時間経過後に反応液を抜き出し、滴定により分析した結果、グリコロニトリルの収率は88%であった。また、GCにより反応液を分析した結果、メタノールの反応転化率は96%であり、アミノアセトニトリルの副生は確認できなかった。
【0044】
実施例2
実施例1においてメタノール:アンモニア:空気:窒素=1:0.85:5.8:5.8(モル比)の混合物を用い、37%ホルムアルデヒド水溶液を約1.48g/minの速度で滴下した以外は実施例1と同様に反応を行った。反応開始から1時間経過後に反応液を抜き出し、滴定により分析した結果、グリコロニトリルの収率は83%であった。また、GCにより反応液を分析した結果、メタノールの反応転化率は99%であり、アミノアセトニトリルの副生は確認できなかった。
【0045】
実施例3
実施例1においてメタノール:アンモニア:空気:窒素=1:0.9:5.9:5.9(モル比)の混合物を用い、37%ホルムアルデヒド水溶液を約1.58g/minの速度で滴下した以外は実施例1と同様に反応を行った。反応開始から1時間後に反応液を抜き出し、滴定により分析した結果、グリコロニトリルの収率は77%であった。また、GCにより反応液を分析した結果、メタノールの反応転化率は99%、アミノアセトニトリルは0.04%副生していた。
【0046】
実施例4
内径19mmのパイレックス(登録商標)製のガラス反応管に、製造例1で得た触媒を10ml充填し、その上下に直径3mmの球状炭化ケイ素をそれぞれ高さ12cmずつ充填した。この反応管を380℃に昇温し、反応管上部からメタノール:アンモニア:空気:窒素=1:1:5.9:5.9(モル比)の混合物をメタノール基準でLHSV=0.175g/cc−触媒・hrで供給した。反応管の下部から排出された反応ガスを401gの水の中へ吹き込みながら、そこへ37%ホルムアルデヒド水溶液を約1.40g/minの速度で滴下して反応させた。反応中、水は30〜60℃、pH6〜7に保った。反応中のpHは硫酸と48%水酸化ナトリウム水溶液で調整した。反応開始から1時間後に、反応液を抜き出し、滴定で分析した結果、グリコロニトリルの収率は65%であった。また、GCにより反応液を分析した結果、メタノールの反応転化率は99%であり、アミノアセトニトリルが5%副生していた。
【0047】
実施例5
内径19mmのパイレックス(登録商標)製のガラス反応管に、製造例1で得た触媒を10ml充填し、その上下に直径3mmの球状炭化ケイ素をそれぞれ高さ12cmずつ充填した。この反応管を380℃に昇温し、反応管上部からメタノール:アンモニア:空気:窒素=1:1:5.9:5.9(モル比)の混合物をメタノール基準でLHSV=0.135g/cc−触媒・hrで供給した。反応管の下部から排出された反応ガスを14.9%ホルムアルデヒド水溶液250.7g(フラスコ内に水150gと37%ホルムアルデヒド100.7gを入れ、混合した。)中へ吹き込み反応させた。反応中、水は30〜60℃、pH6〜7に保った。反応中のpHは硫酸と48%水酸化ナトリウム水溶液で調整した。反応開始から1時間後に、反応液を滴定で分析した結果、グリコロニトリルの収率は57%であった。また、GCにより反応液を分析した結果、メタノールの反応転化率は93%であり、アミノアセトニトリルが4%副生していた。
【0048】
実施例6
内径19mmのパイレックス(登録商標)製のガラス反応管に、製造例1で得た触媒を10ml充填し、その上下に直径3mmの球状炭化ケイ素をそれぞれ高さ12cmずつ充填した。この反応管を380℃に昇温し、反応管上部からメタノール:アンモニア:空気:窒素=1:0.85:5.9:5.9(モル比)の混合物をメタノール基準でLHSV=0.175g/cc−触媒・hrで供給した。反応管の下部から排出された反応ガスを、アクリロニトリル79.6g、スクシノニトリル100g、トリエチルアミン12.7g及びメタノール150gからなるメタノール溶液中へ吹き込み、反応させた。反応開始から1時間後に、反応液をGCにより分析した結果、スクシノニトリルの収率は91%、メタノールの反応転化率は98%であった。