特許第6357055号(P6357055)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ダイハツ工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6357055-内燃機関のシール構造 図000002
  • 特許6357055-内燃機関のシール構造 図000003
  • 特許6357055-内燃機関のシール構造 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6357055
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】内燃機関のシール構造
(51)【国際特許分類】
   F02F 11/00 20060101AFI20180702BHJP
   F02F 1/24 20060101ALI20180702BHJP
   F02F 7/00 20060101ALI20180702BHJP
【FI】
   F02F11/00 A
   F02F1/24 Q
   F02F7/00 L
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-171732(P2014-171732)
(22)【出願日】2014年8月26日
(65)【公開番号】特開2016-44653(P2016-44653A)
(43)【公開日】2016年4月4日
【審査請求日】2017年8月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086380
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100103078
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 達也
(72)【発明者】
【氏名】樽井 聡
(72)【発明者】
【氏名】三百田 渉
(72)【発明者】
【氏名】山路 日出夫
【審査官】 松永 謙一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−057628(JP,A)
【文献】 特開2008−019781(JP,A)
【文献】 特開昭54−035510(JP,A)
【文献】 特開2010−251616(JP,A)
【文献】 特開2007−024210(JP,A)
【文献】 特開2002−276462(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02F 1/00−1/42,5/00−11/00,
F16J 15/00−15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダヘッドカバーと、カムシャフトが延びる方向である第1方向において互いに結合されたシリンダヘッドおよびタイミングチェーンカバーとが、前記第1方向とは直角である第2方向においてシール部材を介して結合された内燃機関のシール構造であって、
前記タイミングチェーンカバーは、前記第1方向一方端に設けられた前記カムシャフトに接続される機能部品を挿通させる開口、前記第1方向および前記第2方向のいずれとも直角である第3方向に延びており前記第2方向視において前記開口と重なる前方シール面、該前方シール面の前記第3方向両端から前記第1方向他方側へと延びる一対の天側シール面、該一対の天側シール面の前記第1方向他方端から前記第1方向他方側に向かうほど前記第2方向において前記天側シール面から離間するように傾斜した一対の傾斜シール面、および該一対の傾斜シール面の前記第1方向他方端から前記第1方向他方側へと延びる一対の地側シール面を有しており、
前記シリンダヘッドは、前記一対の側シール面と面一とされた後方シール面を有しており、
前記シリンダヘッドカバーは、前記タイミングチェーンカバーの前記前方シール面、前記一対の天側シール面、前記一対の傾斜シール面、前記一対の地側シール面、および前記シリンダヘッドの前記後方シール面とともに、前記シール部材を挟持するヘッド側シール面を有することを特徴とする、内燃機関のシール構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関のシール構造に関する
【背景技術】
【0002】
内燃機関においては、シリンダヘッドとシリンダヘッドカバーとが、シール部材を介して互いに結合されたシール構造が採用されている。特許文献1には、従来のシール構造の一例が開示されている。このシール構造Xにおいては、図3に示すように、カムシャフト98との干渉を回避するために、シール部材90の前方部位の中央部91が、天側にシフトした配置とされている。また、シール部材90の天側に位置する中央部91の両側には、一対の傾斜部92を介して地側に位置する一対の地側部93が設けられている。さらに、シール部材90には、これらの一対の地側部93から後方に延びる一対の側方部94が設けられている。また、前記シリンダヘッドおよび前記シリンダヘッドカバーには、このような形状とされたシール部材を挟持する形状とされたシール面が各々に形成されている。
【0003】
たとえば、内燃機関の小型化によってカムシャフト98同士の間隔が相対的に大きい構成となる場合、シール部材90の中央部91の長さが相対的に長くなる。一方、シール部材90の各屈曲部同士が重なることは好ましくない。このため、傾斜部92や地側部93が側方へと追いやられる。このため、内燃機関の小型化が阻害されうる。また、前記シリンダヘッドと前記シリンダヘッドカバーとは、ボルトによってシール部材90を挟圧するように結合されることが一般的である。このボルトは、側方に追いやられたシール部材90の地側部93からさらに側方に退避した位置に設けられる。この結果、当該ボルトがさらに側方に位置することとなり、内燃機関の組み立て時などに他の部材と干渉するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4677283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、内燃機関の小型化を図りつつ、適切にシールすることが可能な内燃機関のシール構造を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によって提供される内燃機関のシール構造は、シリンダヘッドカバーと、カムシャフトが延びる方向である第1方向において互いに結合されたシリンダヘッドおよびタイミングチェーンカバーとが、前記第1方向とは直角である第2方向においてシール部材を介して結合された内燃機関のシール構造であって、前記タイミングチェーンカバーは、前記第1方向一方端に設けられた前記カムシャフトを挿通させる開口、前記第1方向および前記第2方向のいずれとも直角である第3方向に延びており前記第2方向視において前記開口と重なる前方シール面、該前方シール面の前記第3方向両端から前記第1方向他方側へと延びる一対の天側シール面、該一対の天側シール面の前記第1方向他方端から前記第1方向他方側に向かうほど前記第2方向において前記天側シール面から離間するように傾斜した一対の傾斜シール面、および該一対の傾斜シール面の前記第1方向他方端から前記第1方向他方側へと延びる一対の地側シール面を有しており、前記シリンダヘッドは、前記一対の側シール面と面一とされた後方シール面を有しており、前記シリンダヘッドカバーは、前記タイミングチェーンカバーの前記前方シール面、前記一対の天側シール面、前記一対の傾斜シール面、前記一対の地側シール面、および前記シリンダヘッドの前記後方シール面とともに、前記シール部材を挟持するヘッド側シール面を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、前記タイミングチェーンカバーの前記第1方向前方において前記前方シール面が前記第3方向全長にわたって設けられている。そして、前記一対の天側シール面および前記一対の傾斜シール面は、前記前方シール面よりも前記第2方向後方に配置されており、前記前方シール面に対して前記第3方向に隣接する配置ではない。このため、前記カムシャフトや前記機能部品の配置などによって前記前方シール面を相対的に長くしても、前記天側シール面および前記傾斜シール面が前記第3方向側方へと飛び出すように追いやられることがない。この結果、内燃機関の小型化を図りつつ、前記シリンダヘッドと前記タイミングチェーンカバーとの結合や前記シリンダヘッドおよび前記タイミングチェーンカバーと前記シリンダヘッドカバーとの結合の気密性を適切に保つことができる。
【0008】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係る内燃機関のシール構造の一例を示す要部側面図である。
図2】本発明に係る内燃機関のシール構造の一例を示す要部斜視図である。
図3】従来のシール構造の一例を示す要部斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好ましい実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
【0011】
図1および図2は、本発明に係る内燃機関のシール構造の一例を示している。本実施形態のシール構造Aは、シリンダヘッドカバー1、シリンダヘッド2、タイミングチェーンカバー3、カムシャフト4、シール部材51,52およびボルト66,67を備えている。
【0012】
図1は、シール構造Aの要部側面図であり、図2は、シール構造Aの要部斜視図である。なお、図2においては理解の便宜上、シリンダヘッドカバー1を想像線で示し、シール部材52を省略している。また、図示されたボルト66およびボルト67以外にも、シリンダヘッドカバー1、シリンダヘッド2およびタイミングチェーンカバー3を互いに結合するためのボルトなどの結合機構が適宜採用されるが、理解の便宜上省略している。これらの図において、x方向が本発明で言う第1方向に相当し、z方向が本発明で言う第2方向に相当し、y方向が本発明で言う第3方向に相当する。また、「前」、「後」、「天」、「地」などの語は、本発明における構成要素の相対的な位置関係を表現するために便宜的に用いられる語であり、いずれかの構成要素の絶対的な姿勢等が限定されるものではない。さらに、本実施形態においては、本発明の主旨を明瞭に説明する便宜により、内燃機関の構造を適宜簡略化しており、いくつかの構成要素を省略している。
【0013】
シリンダヘッドカバー1は、内燃機関のz方向天側に位置しており、カムシャフト4などを天側から覆っている。シリンダヘッドカバー1は、ヘッド側シール面11を有している。ヘッド側シール面11は、シリンダヘッド2およびタイミングチェーンカバー3に設けられた後述するシール面とともにシール部材51を挟持する面である。
【0014】
タイミングチェーンカバー3は、内燃機関のz方向地側に位置しており、またシリンダヘッド2に対してx方向前方に位置している。タイミングチェーンカバー3は、たとえばカムシャフト4を駆動するタイミングチェーン(図示略)、チェーンスプロケット(図示略)を収容するものである。
【0015】
タイミングチェーンカバー3には、2つの開口30が形成されている。2つの開口30は、タイミングチェーンカバー3のx方向前方端の壁部に形成されている。各開口30は、カムシャフト4に接続される機能部品41の前端部をタイミングチェーンカバー3の前方外部に突出するように挿通させるために設けられている。2つの開口30は、y方向に並んで配置されている。機能部品41は、カムシャフト4の前端部に接続されており、たとえば可変バルブ機構を構成するための部品であるが、これに限定されるものではない。
【0016】
また、タイミングチェーンカバー3は、前方シール面31、一対の天側シール面32、一対の傾斜シール面33および一対の地側シール面34を有している。
【0017】
前方シール面31は、y方向に延びておりz方向視において開口30と重なる。より具体的には、前方シール面31は、y方向に平行に延びており、xy平面をなしており、z方向天側を向いている。
【0018】
一対の天側シール面32は、前方シール面31のy方向両端から第1方向後方側へと延びている。より具体的には、各天側シール面32は、x方向に平行に延びており、xy平面をなしており、z方向天側を向いている。また、前方シール面31と一対の天側シール面32との間には、屈曲部が存在する。
【0019】
一対の傾斜シール面33は、一対の天側シール面32のx方向後方端からx方向後方側に向かうほどz方向において天側シール面32から地側に離間するように傾斜している。より具体的には、各傾斜シール面33は、y方向に対して直角であり、x方向およびz方向のいずれに対しても傾斜している。そして、各傾斜シール面33は、斜め後方上方を向く面とされている。また、各天側シール面32と各傾斜シール面33との間には、屈曲部が存在する。
【0020】
一対の地側シール面34は、一対の傾斜シール面33のx方向後方端からx方向後方側へと延びている。より具体的には、各地側シール面34は、各天側シール面32に対してz方向地側に位置している。各地側シール面34は、x方向に平行に延びており、xy平面をなしており、z方向点側を向いている。
【0021】
シリンダヘッド2は、後方シール面22を有している。後方シール面22は、一対の側シール面3と面一とされている。より具体的には、後方シール面22は、xy平面をなし、z方向天側を向いており、z方向における位置が一対の側シール面3と略一致している。本実施形態においては、後方シール面22は、z方向視コの字形状とされているが、これは、内燃機関の構造を簡略化して示した便宜によるものであり、後方シール面22は、様々な形状を取りうる。
【0022】
シリンダヘッド2とタイミングチェーンカバー3とは、シール部材52を介してx方向において結合されている。より具体的には、シリンダヘッド2には起立シール面25が形成されており、タイミングチェーンカバー3には起立シール面35が形成されている。
【0023】
起立シール面25は、z方向に起立した面であり、x方向前方を向いている。起立シール面35は、z方向に起立した面であり、x方向後方を向いている。起立シール面25と起立シール面35との間に、シール部材52が挟まれている。シール部材52は、ゴムや樹脂、または液状ガスケットなどからなるものであり、シリンダヘッド2とタイミングチェーンカバー3との結合部分の気密性を高めるものである。
【0024】
また、シリンダヘッド2とタイミングチェーンカバー3には、一対の前後締結部27と一対の前後締結部37とが形成されており、ボルト67によってシール部材52を挟圧するように結合されている。なお、図示されたボルト67以外にも、シリンダヘッド2とタイミングチェーンカバー3とを強固かつ確実に結合するために、ボルト67と類似の締結機構が適所に設けられている。
【0025】
シリンダヘッドカバー1のヘッド側シール面11は、タイミングチェーンカバー3の前方シール面31、一対の天側シール面32、一対の傾斜シール面33、一対の地側シール面34、およびシリンダヘッド2の後方シール面22とともに、シール部材51を挟持しうる3次元的な形状とされている。シール部材51は、ゴムや樹脂などからなるものであり、シリンダヘッドカバー1とシリンダヘッド2およびタイミングチェーンカバー3との結合部分の気密性を高めるものである。シール部材51は、上述した形状とされたヘッド側シール面11、前方シール面31、一対の天側シール面32、一対の傾斜シール面33、一対の地側シール面34、および後方シール面22に適切に圧接しうるように、3次元的な形状に形成されている。
【0026】
また、シリンダヘッドカバー1とタイミングチェーンカバー3とには一対の天地締結部16と一対の天地締結部36とが形成されている。一対の天地締結部16,36は、図2によく表れているように、一対の天側シール面32のy方向外側に配置されている。そして、これらの天地締結部16,36が、ボルト66によって締結されることにより、シリンダヘッドカバー1とシリンダヘッド2およびタイミングチェーンカバー3とは、シール部材51を挟圧するように結合されている。なお、図示されたボルト66以外にも、シリンダヘッドカバー1と、シリンダヘッド2およびタイミングチェーンカバー3とを強固かつ確実に結合するために、ボルト66と類似の締結機構が適所に設けられている。
【0027】
カムシャフト4は、レシプロガソリンエンジン等の内燃機関におけるバルブ(図示略)の開閉を行う軸であり、全体としてx方向に延びている。本実施形態においては、一対のカムシャフト4がy方向に並んで配置されている。上述したように、カムシャフト4の前端部には、機能部品41が接続されている。
【0028】
次に、シール構造Aの作用について説明する。
【0029】
本実施形態によれば、タイミングチェーンカバー3のx方向前方において前方シール面31がy方向全長にわたって設けられている。そして、一対の天側シール面32および一対の傾斜シール面33は、前方シール面31よりもz方向後方に配置されており、前方シール面31に対してy方向に隣接する配置ではない。このため、カムシャフト4や機能部品41の配置などによって前方シール面31を相対的に長くしても、天側シール面32および傾斜シール面33がy方向側方へと飛び出すように追いやられることがない。この結果、内燃機関の小型化を図りつつ、シリンダヘッド2とタイミングチェーンカバー3との結合やシリンダヘッド2およびタイミングチェーンカバー3とシリンダヘッドカバー1との結合の気密性を適切に保つことができる。
【0030】
天地締結部36が天側シール面32に隣接するように設けられており、前後締結部37は地側シール面34に隣接するように設けられている。このため、天地締結部36と、前後締結部37とは、傾斜シール面33のz方向寸法の分だけz方向において離間して配置されている。これにより、前後締結部37と前後締結部27とに挿通されたボルト67を締結する際に、締結のための工具などが天地締結部36やボルト66などと干渉することを回避することができる。
【0031】
仮に、天地締結部36と前後締結部37とがz方向において重なる配置であると、天地締結部36または前後締結部37のいずれかをy方向外側に大きく突出させるなどの方策により、上述した工具等の干渉を回避する必要がある。これに対し、本実施形態によれば、天地締結部36と前後締結部37とがz方向において離間しているため、これらをy方向外側に大きく突出するように配置する必要がない。これは、内燃機関の小型化に好ましい。
【0032】
なお、一対の傾斜シール面33は、このシール面に垂直な方向にシール面圧が作用するため、シリンダヘッドカバー1をシリンダヘッド2に対してx方向にずらそうとする力が作用する。この力によるズレはシール面圧が弱まる方向に作用するため、例えば、シリンダヘッド2とシリンダヘッドカバー1とは、x方向の位置を決めるノックピン等により位置決めがなされる必要がある。
【0033】
本発明に係る内燃機関のシール構造は、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係る内燃機関のシール構造の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【符号の説明】
【0034】
A シール構造
1 シリンダヘッドカバー
11 ヘッド側シール面
16 天地締結部
2 シリンダヘッド
22 後方シール面
25 起立シール面
27 前後締結部
3 タイミングチェーンカバー
30 開口
31 前方シール面
32 天側シール面
33 傾斜シール面
34 地側シール面
35 起立シール面
36 天地締結部
37 前後締結部
4 カムシャフト
41 機能部品
51,52 シール部材
66,67 ボルト
図1
図2
図3