【文献】
明石 真 Makoto AKASHI,ヒトの概日時計を評価するための新手法 A new method for assessing the human circadian clock,医学のあゆみ 第239巻 第9号,2011年11月26日,897-903
【文献】
Toshihisa HATTA,Hiroki OTANI,DOES CIRCADIAN RHYTHM AFFECT HAIR CYCLE?,Jpn J Deuterium Sci,日本,2001年 8月,Vol.10,No.1,11-15
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記概日リズム推定部によって推定された前記生体の概日リズムと、予め定められた明暗条件の時刻とに基づいて、前記生体の概日リズムの位相ずれを算出する位相ずれ算出部
をさらに備えることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の概日リズム検査装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
〔第1実施形態〕
〔概日リズム検査装置100の構成例〕
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る概日リズム検査装置100の構成例を示す図である。概日リズム検査装置100は、検査対象者(特許請求の範囲の生体の一例)の皮膚表面に取り付けられて、検査対象者の概日リズムを検査する装置である。
【0014】
図1に示すように、第1実施形態の概日リズム検査装置100は、本体100Aおよびベルト100Bを備えて構成されている。これにより、概日リズム検査装置100は、腕時計のような形状をなしている。概日リズム検査装置100は、ベルト100Bが検査対象者の手または足に巻きつけられることにより、本体100Aを検査対象者の手または足の皮膚表面に固定することが可能となっている。
【0015】
概日リズム検査装置100は、照射装置103および撮像装置104を備えている(
図3参照)。これにより、概日リズム検査装置100は、検査対象者の皮膚表面に取り付けられている状態で、照射装置103により検査対象者の皮膚表面に対して光を照射するとともに、撮像装置104により検査対象者の皮膚の画像(以下、「皮膚画像」と示す)を撮像することができるようになっている。
【0016】
また、概日リズム検査装置100は、制御モジュール150を備えている(
図3参照)。この制御モジュール150は、撮像装置104によって複数時点に亘って撮像された複数の皮膚画像の各々から成長期の体毛を特定することにより、
図2(a)に示すような体毛の長さの経時的変化を求める。そして、制御モジュール150は、この経時的変化に基づいて、
図2(b)に示すような検査対象者の概日リズムを推定する。さらに、制御モジュール150は、推定された概日リズムと、予め定められた明暗条件の時刻とに基づいて、検査対象者の概日リズムの位相ずれを算出する。そして、制御モジュール150は、
図10(a)に示すような表示画面により、推定された概日リズムと、算出された概日リズムの位相ずれとを、ディスプレイ101(
図3参照)に表示させる。
【0017】
〔概日リズムの一例〕
図2は、本発明の第1実施形態に係る概日リズム検査装置100によって推定される概日リズムの一例を示す図である。
【0018】
概日リズム検査装置100においては、例えば所定時間毎(例えば、30分毎、1時間毎等)の、複数の測定時期が予め定められている。概日リズム検査装置100は、測定時期が到来するごとに、撮像装置104によって皮膚画像を撮像する。すなわち、撮像装置104は、複数の測定時期に亘って、複数の皮膚画像を撮像する。制御モジュール150は、複数の皮膚画像の各々から検査対象者の成長期の体毛の長さを検出する。
【0019】
そして、制御モジュール150は、複数回検出した検査対象者の成長期の体毛の長さに基づいて、
図2(a)に示すような検査対象者の成長期の体毛の長さの経時的変化を特定する。さらに、制御モジュール150は、特定した検査対象者の成長期の体毛の長さの経時的変化を微分することにより、
図2(b)に示すような検査対象者の体毛の成長速度の経時的変化を特定し、この体毛の成長速度の経時的変化を検査対象者の概日リズムと推定する。検査対象者の成長期の体毛の成長速度は、その検査対象者の概日リズムに基づいて変化すると考えられるからである。
【0020】
また、概日リズム検査装置100においては、時間生物学における明暗条件の時刻が予め定められている。制御モジュール150は、推定された概日リズムと予め定められている明暗条件の時刻とに基づいて、明暗条件の時刻に対する概日リズムの位相ずれを算出する。具体的には、制御モジュール150は、
図2(b)に示すように、推定された概日リズムにおいてピーク(すなわち、体毛の成長速度のピーク)となる時刻tに、検査対象者の体内時刻CT(Circadian Time)=0を設定する。このとき、明暗条件の時刻として、時刻t’に、明暗条件における時刻ZT(Zeitgeber Time)=0が予め設定されているとする。この場合、制御モジュール150は、体内時刻CT=0とする時刻tと、明暗条件における時刻ZT=0とする時刻t’との差分を、概日リズムの位相ずれとして算出する。
【0021】
ここで、明暗条件における時刻ZT=0は、光条件の開始時間(自然条件においては日の出)を意味する。例えば、春分・秋分の日であれば、午前6時頃がZT=0となる。すなわち、日付によって時刻ZT=0となる時刻t’が変わるため、日付ごとに時刻ZT=0とする時刻t’を記憶しておき、概日リズムの位相ずれを求める際に、現在の日付に対応する時刻t’を用いることが好ましい。
【0022】
一方、体内時刻CT=0は、概日リズムに依存する体内時計における活動開始時刻を意味する。この活動開始時刻以降、生体は概日リズムに従って活動することとなる。例えば、生体は、CT=0前後では、覚醒し、同時に髭などが成長し、消化管の活動が開始する。また、CT=8〜12頃には、深部体温がピークに達し、CT=16頃には消化管の活動が低下する。さらに、入眠後、CT=18〜0頃に深部体温が最低となり、徐波睡眠(熟睡)が生まれる。
【0023】
したがって、ZT=0とする時刻t’とCT=0とする時刻tとが一致している場合、日の出と同時に活動を開始する概日リズムを有することになる。よって、この場合、制御モジュール150は、概日リズムの位相ずれが生じていないと判断する。しかしながら、概日リズムは個体差が大きく、ZT=0とする時刻t’とCT=0とする時刻tとが一致しない場合が殆どである。この場合、制御モジュール150は、概日リズムの位相ずれが生じていると判断する。
【0024】
例えば、
図2(b)に示す例では、体内時刻CT=0とする時刻tが、明暗条件における時刻ZT=0とする時刻t’よりも3時間ほど遅れていることが示されている。すなわち、推定された概日リズムが、明暗条件の時刻t’に対して、3時間ほど位相のずれ(遅延)が生じていることを意味する。このように生体の概日リズムおよびその位相ずれを測定することは、時間薬理学・時間治療学、あるいは睡眠障害の治療等において極めて重要である。
【0025】
このように、第1実施形態の概日リズム検査装置100は、皮膚画像を複数回撮像するだけで、これによって得られる複数の皮膚画像から、検査対象者の概日リズムおよびその位相ずれを推定することができる。このため、第1実施形態の概日リズム検査装置100は、検査対象者の概日リズムおよびその位相ずれを容易に把握することができる。
【0026】
〔概日リズム検査装置100の装置構成〕
図3は、本発明の第1実施形態に係る概日リズム検査装置100の装置構成例を示す図である。
図3(a)は、概日リズム検査装置100の本体100Aの正面図である。また、
図3(b)は、概日リズム検査装置100の本体100Aの側断面図(
図3(a)に示す本体100AのA−A断面図)である。また、
図3(c)は、概日リズム検査装置100の本体100Aの背面図である。
【0027】
図3に示すように、概日リズム検査装置100は、その本体100Aに、ディスプレイ101、タッチパネル102、照射装置103、撮像装置104、マクロレンズ105、第1の偏光フィルタ106A、第2の偏光フィルタ106B、第3の偏光フィルタ106C、遮蔽部材107、バッテリ108、カバー109、現在位置検出装置110および制御モジュール150を備えている。これらの各構成部材(遮蔽部材107およびカバー109を除く)は、本体100Aの筐体100a内に収容されている。カバー109は、筐体100aの背面側に取り付けられていることにより、筐体100aの背面(皮膚表面と対向する外面)を構成している。また、遮蔽部材107は、カバー109の表面に取り付けられている。
【0028】
(筐体100a)
筐体100aは、容器状の部材である。
図3に示す例では、筐体100aは、背面が開放された直方体形状をなしているが、筐体100aの形状はこれに限らない。例えば、筐体100aは、検査対象者の皮膚表面に沿って湾曲した形状であってもよい。または、筐体100aは、可撓性を有する材料から形成されたものを用いることにより、通常時は平板状であるが、装着時に検査対象者の皮膚表面に沿って湾曲するように変形可能であってもよい。
【0029】
筐体100aは、外部からの光が内部に進入しないように、その背面(図中z軸負方向側の面)を除き、遮光性を有する材料によって形成されている。筐体100aは、その背面が検査対象者の皮膚表面と対向するように、検査対象者の皮膚表面上に取り付けられる。すなわち、概日リズム検査装置100は、筐体100aの背面側から検査対象者の皮膚へ光を照射するとともに、筐体100aの背面側から皮膚画像を撮像する。このため、筐体100aの背面には、光の透過性を有する材料(例えば、プラスチック、シリコン、アクリル等)からなるカバー109が用いられている。
【0030】
(ディスプレイ101)
ディスプレイ101は、筐体100aの表面側(図中z軸正方向側)に設けられており、各種情報(主に、概日リズムの検査結果)を表示する。ディスプレイ101には、例えば液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等が用いられる。
【0031】
(タッチパネル102)
タッチパネル102は、各種情報を入力するための入力デバイスの一例である。タッチパネル102は、筐体100aの表面側に設けられており、ディスプレイ101の表面に重ねて設けられている。なお、概日リズム検査装置100には、タッチパネル102に加えて、または、タッチパネル102に代えて、他の入力デバイス(例えば、ボタン等)を設けるようにしてもよい。
【0032】
(照射装置103)
照射装置103は、検査対象者の皮膚に対して光を照射する。照射装置103は、筐体100aの背面側に照射面を有している。これにより、照射装置103は、本体100Aが検査対象者の皮膚表面に取り付けられているときに、検査対象者の皮膚に光を照射することができるようになっている。照射装置103は、例えばLED等の発光体を備えて構成される。
【0033】
図3(c)に示すように、筐体100a内には、複数組(図では4組であるが、これに限らない)の照射装置103A〜103Fが設けられている。照射装置103A〜103Fの各々は、皮膚表面における光の照度ができるだけ均一化されるように、撮像装置104の周囲4方向に1組ずつ配置されている。これにより、無影灯の原理によって撮影時に影ができるのを防止することができる。また、ある任意の視点から見て複数の体毛が重複している場合でも、それぞれの体毛に光を照射することができる。照射装置103A〜103Fの各々は、制御モジュール150の制御により、他の照射装置から独立して光を照射することができる。
【0034】
照射装置103Aは、白色光(または広域スペクトル光)を出射し、且つ、筐体100a内において皮膚表面から離間した位置(
図4(a)参照)に配置された照射装置103である。照射装置103Bは、白色光(または広域スペクトル光)を出射し、且つ、筐体100a内において皮膚表面に近接する位置(
図4(b)参照)に配置された照射装置103である。
【0035】
照射装置103Cは、特定の波長の光を出射し、且つ、筐体100a内において皮膚表面から離間した位置(
図4(a)参照)に配置された照射装置103である。照射装置103Dは、特定の波長の光を出射し、且つ、筐体100a内において皮膚表面に近接する位置(
図4(b)参照)に配置された照射装置103である。
【0036】
照射装置103Eは、白色光(または広域スペクトル光)を出射し、且つ、筐体100a内において皮膚表面から離間した位置(
図4(c)参照)に配置された照射装置103である。また、照射装置103Eは、第1の偏光フィルタ106Aに覆われている。
【0037】
照射装置103Fは、任意の波長の光を出射し、且つ、筐体100a内において皮膚表面に近接する位置(
図4(d)参照)に配置された照射装置103である。また、照射装置103Fは、第3の偏光フィルタ106Cに覆われている。
【0038】
白色光とは、可視光線の各色の光(青色光(400〜500nm)、緑色光(500〜600nm)、赤色光(600〜700nm))が均等に混ざった光であり、色合いの感覚を与えない光をいう。広域スペクトル光とは、白熱電球に代表される、特定の光の波長を持たない、広域スペクトルを持つ光である。白色光または広域スペクトル光を出射する際に使用する光源としては、例えば、小型の白熱電球、白色LED、有機白色EL、ハロゲンランプ、キセノンランプ、白色レーザなどが挙げられる。
【0039】
一方、この第1実施形態において、特定の波長の光とは、メラニン(体毛の色を構成する主要素)に吸収され易く且つヘモグロビン(皮膚の色を構成する主要素)に吸収され難い特性を有する光である。このような特性を有する光としては、例えば、
図5に示すように、500nm近傍の光(例えば、アルゴンレーザ光)および690nm近傍の光(例えば、ルビーレーザ光)等が挙げられる。第1実施形態の概日リズム検査装置100は、このような特定の波長の光を用いることにより、体毛が強調された皮膚画像を得ることができる。これにより、概日リズム検査装置100は、皮膚画像から体毛を特定しやすくすることができるようになっている。
【0040】
なお、照射装置103A,103B,103Eには、撮像装置104の撮像素子の検出域をカバーする白色光または広域スペクトル光を出射することが可能な光源を用いることが好ましい。例えば、撮像装置104の撮像素子に、検出域が300〜800nmのCCD(Charge Coupled Device)を用いる場合、照射装置103A,103B,103Eには、この300〜800nmの波長域をカバーする白色光または広域スペクトル光を出射することが可能な光源を用いることが好ましい。
【0041】
(撮像装置104)
撮像装置104は、皮膚画像を撮像する。撮像装置104は、筐体100aの背面側(図中z軸負方向側)に撮像面を有している。これにより、撮像装置104は、本体100Aが検査対象者の皮膚表面に取り付けられているときに、皮膚からの反射光による皮膚画像を撮像することができるようになっている。撮像装置104は、例えばCCD,CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の撮像素子を備えて構成される。
【0042】
なお、第1実施形態では、撮像装置104によって撮像された皮膚画像から体毛を特定するようにしているため、撮像装置104には十分な画像解像度を有するものを用いることが好ましい。例えば、体毛の太さは、四肢体毛で30〜60μm程度であり、20μmよりは大きい。このため、例えば撮像する皮膚の範囲を20mm×20mmとすると、その1辺の長さの1000分の1の大きさのオブジェクトを検出できる撮像装置104が必要となる。この場合、100万画素以上の画像解像度を有する撮像装置104を用いることで、体毛等の微細成分も充分に検出することができる。なお、撮像する皮膚の範囲が上記例(20mm×20mm)と異なる場合は、必要に応じて、撮像装置104の画像解像度を上記例(100万画素)から変更することが好ましい。
【0043】
(マクロレンズ105)
マクロレンズ105は、撮像装置104の撮像面よりも外側(皮膚表面側)に配置されている。マクロレンズ105は、撮像装置104の焦点距離を短くして、皮膚からの反射光による像を撮像装置104の撮像面で結像させる。なお、撮像装置104が撮像範囲に比して十分に大きな撮像素子を有するものであれば、マクロレンズ105を設けない構成とすることもできる。
【0044】
(第1の偏光フィルタ106A)
第1の偏光フィルタ106Aは、照射装置103Eを覆うように、照射装置103Eの照射面の前方に配置されている。第1の偏光フィルタ106Aは、照射装置103Eから出射された光のうち、検査対象者の皮膚に照射される光を、所定の振動方向を有する光に制限する。
【0045】
(第2の偏光フィルタ106B)
第2の偏光フィルタ106Bは、撮像装置104を覆うように、撮像装置104の撮像面の前方に配置されている。第2の偏光フィルタ106Bは、検査対象者の皮膚で反射された光のうち、撮像装置104に入射される光を、所定の振動方向を有する光に制限する。
【0046】
(第3の偏光フィルタ106C)
第3の偏光フィルタ106Cは、照射装置103Fを覆うように、照射装置103Fの照射面の前方に配置されている。第3の偏光フィルタ106Cは、照射装置103Fから出射された光のうち、検査対象者の皮膚に照射される光を、所定の振動方向を有する光に制限する。
【0047】
第1の偏光フィルタ106Aおよび第2の偏光フィルタ106Bは、偏光方向が互いに平行となるように配置されている。これにより、第1の偏光フィルタ106Aを透過して検査対象者の皮膚に照射される光の振動方向と、第2の偏光フィルタ106Bを透過して撮像装置104に入射される光の振動方向とが、互いに平行となるようになっている。
【0048】
また、第3の偏光フィルタ106Cおよび第2の偏光フィルタ106Bは、偏光方向が互いに直交するように配置されている。これにより、第3の偏光フィルタ106Cを透過して検査対象者の皮膚に照射される光の振動方向と、第2の偏光フィルタ106Bを透過して撮像装置104に入射される光の振動方向とが、互いに直交するようになっている。
【0049】
〔皮膚画像の撮像方法の具体例〕
ここで、
図4〜
図6を参照して、第1実施形態に係る概日リズム検査装置100による皮膚画像の撮像方法の具体例について説明する。
図4は、本発明の第1実施形態に係る照射装置103および撮像装置104の配置例を示す図である。
図5は、酸化ヘモグロビンおよびメラニンの吸光特性を示す図である。
図6は、皮膚に照射された光が反射される様子を説明するための図である。
【0050】
第1実施形態の概日リズム検査装置100では、検査対象者の皮膚20の皮膚画像の撮像方法として、後述する設定情報記憶部111に対する設定により、以下に説明する第1〜第6の撮像方法のうちの1つまたは複数を、選択的に適用することが可能となっている。
【0051】
(第1,第2の撮像方法)
第1の撮像方法は、皮膚表面20Aから離間した照射装置103Aによって皮膚20に対して白色光または広域スペクトル光を照射しつつ、撮像装置104によって皮膚20の皮膚画像を撮像する方法である。第2の撮像方法は、皮膚表面20Aに近接する照射装置103Bによって皮膚20に対して白色光または広域スペクトル光を照射しつつ、撮像装置104によって皮膚20の皮膚画像を撮像する方法である。
【0052】
第1,第2の撮像方法によれば、照射装置103A,103Bから照射された白色光または広域スペクトル光に対する吸光度が皮膚20と体毛20Bとで同程度であるため、ヘモグロビン色素を多く含む皮膚20の像と、メラニン色素を多く含む体毛20Bの像とが同程度の輝度を有する皮膚画像を得ることができる。
【0053】
特に、第1の撮像方法は、
図4(a)に示すように、皮膚表面20Aから離間した位置に配置された照射装置103A(特許請求の範囲に記載の第1の照射装置)を使用している。このため、撮像装置104は、皮膚表面20Aからの反射光を多く得ることができる。よって、人間が通常の光の下で皮膚表面20Aを見たときに認識する像と同様の像が写し出されている皮膚画像が得られる。この場合、撮像装置104によって撮像された皮膚画像から、皮膚表面20Aに露出している体毛20Bをより良く観察することが可能となる。
【0054】
一方、第2の撮像方法は、
図4(b)に示すように、皮膚表面20Aに近接する位置に配置された照射装置103B(特許請求の範囲に記載の第2の照射装置)を使用している。このため、撮像装置104は、皮膚深層20Cからの反射光を多く得ることができる。この場合、撮像装置104によって撮像された皮膚画像から、皮膚表面20Aに露出している体毛20Bに加えて、表皮内および表皮下に存在する体毛20Bを観察することが可能となる。
【0055】
(第3の撮像方法)
第3の撮像方法は、まず、皮膚表面20Aから離間した照射装置103Aによって皮膚20に対して白色光または広域スペクトル光を照射しつつ、撮像装置104によって皮膚20の皮膚画像(第1の画像)を撮像する。次に、皮膚表面20Aから離間した照射装置103Cによって皮膚20に対してメラニンに吸収され易く且つヘモグロビンに吸収され難い特定の波長の光(例えば、500nm近傍の光または690nm近傍の光)を照射しつつ、撮像装置104によって皮膚20の皮膚画像(第2の画像)を撮像する。
【0056】
(第4の撮像方法)
第4の撮像方法は、まず、皮膚表面20Aに近接する照射装置103Bによって皮膚20に対して白色光または広域スペクトル光を照射しつつ、撮像装置104によって皮膚20の皮膚画像(第1の画像)を撮像する。次に、皮膚表面20Aに近接する照射装置103Dによって皮膚20に対してメラニンに吸収され易く且つヘモグロビンに吸収され難い特定の波長の光(例えば、500nm近傍の光または690nm近傍の光)を照射しつつ、撮像装置104によって皮膚20の皮膚画像(第2の画像)を撮像する。
【0057】
第3,第4の撮像方法によれば、白色光または広域スペクトル光を皮膚表面20Aに照射したときの当該光の吸光度が、皮膚20と体毛20Bとで同程度であるため、第1の画像として、ヘモグロビン色素を多く含む皮膚20の像と、メラニン色素を多く含む体毛20Bの像とが同程度の輝度を有する皮膚画像を得ることができる。
【0058】
また、第3,第4の撮像方法によれば、特定の波長の光を皮膚20に照射したときの当該特定の波長の光の吸光度が、皮膚20と体毛20Bとで大きく異なるため、第2の画像として、ヘモグロビン色素を多く含む皮膚20の像と、メラニン色素を多く含む体毛20Bの像とで輝度が大きく異なる画像を得ることができる。
【0059】
特に、第3の撮像方法は、
図4(a)に示すように、皮膚表面20Aから離間した位置に配置された照射装置103C(特許請求の範囲に記載の第1の照射装置)を使用している。このため、撮像装置104は、皮膚表面20Aからの反射光を多く得ることができる。この場合、撮像装置104によって撮像された皮膚画像から、皮膚表面20Aに露出している体毛20Bをより良く観察することが可能となる。
【0060】
一方、第4の撮像方法は、
図4(b)に示すように、皮膚表面20Aに近接する位置に配置された照射装置103D(特許請求の範囲に記載の第2の照射装置)を使用している。このため、撮像装置104は、皮膚深層20Cからの反射光を多く得ることができる。この場合、撮像装置104によって撮像された皮膚画像から、皮膚表面20Aに露出している体毛20Bに加えて、表皮内および表皮下に存在する体毛20Bを観察することが可能となる。
【0061】
なお、
図4(a)および
図4(b)に示すように、撮像装置104の前方には、第2の偏光フィルタ106Bが配置されている。しかしながら、第1〜第4の撮像方法では、撮像装置104に入射される光の振動方向を制限する必要はない。このため、第1〜第4の撮像方法の場合には、例えば液晶による偏光機能のON/OFFを利用する等により、光の振動方向を制限する機能をOFFにすることができるように、第2の偏光フィルタ106Bを構成することが好ましい。もしくは、第1〜第4の撮像方法用に、前方に偏光フィルタが配置されていない撮像装置104をさらに設けるようにしてもよい。
【0062】
(第5の撮像方法)
第5の撮像方法は、皮膚表面20Aに対して特定の振動方向を有する光(白色光または広域スペクトル光)を照射して、その光と平行な振動方向を有する反射光による皮膚20の皮膚画像を、撮像装置104によって撮像する方法である。具体的には、
図4(c)に示すように、照射装置103Eから光を照射させるようにする。照射装置103Eから出射された光は、第1の偏光フィルタ106Aを透過する。これにより、特定の振動方向を有する成分のみが、皮膚20に照射されることとなる。皮膚表面20Aからの反射光は、第2の偏光フィルタ106Bを透過する。これにより、皮膚20に照射された光と平行な振動方向を有する成分のみが、撮像装置104に入射されることとなる。これにより、撮像装置104は、皮膚20に照射された光と平行な振動方向を有する反射光による皮膚20の皮膚画像を撮像することができる。
【0063】
第5の撮像方法によれば、皮膚20に照射された光は、
図6に詳細を図示するように、その一部(およそ4〜7%)が皮膚表面20Aにて反射され、他の一部が皮膚深層20Cにて拡散反射される。すなわち、皮膚20からの反射光は、皮膚表面20Aでの反射光と、皮膚深層20Cでの反射光とを含んでいる。このうち、皮膚表面20Aでの反射光は、振動方向が変化しない(すなわち、皮膚20に照射された光と平行である)ために、第2の偏光フィルタ106Bを透過して撮像装置104に入射される。一方、皮膚深層20Cでの反射光は、内部構造や内部の物質との間で乱反射・干渉・吸収・励起を繰り返し、これによって偏光が消失するため、第2の偏光フィルタ106Bによって除去される。このため、撮像装置104は、皮膚表面20Aでの反射光による皮膚画像(すなわち、皮膚表面20Aの凹凸状態に関する情報量を多く有する皮膚画像)を撮像することができる。
【0064】
また、第5の撮像方法において、互いに皮膚表面20Aに対する撮像方向の傾きが異なる撮像装置104を2つ以上設けるようにしてもよい。この場合、立体視の原理により、同一の体毛を複数の視点方向から撮像することができるため、複数の視点方向から体毛の立体形状(すなわち体毛の輪郭)を検出することができるようになる。
【0065】
(第6の撮像方法)
第6の撮像方法は、皮膚20に対して特定の振動方向を有する任意の波長の光を照射して、その光と直交する振動方向を有する反射光による皮膚20の皮膚画像を、撮像装置104によって撮像する方法である。具体的には、
図4(d)に示すように、照射装置103Fから光を照射させるようにする。照射装置103Fから出射された光は、第3の偏光フィルタ106Cを透過する。これにより、特定の振動方向を有する成分のみが、皮膚20に照射されることとなる。皮膚20からの反射光は、第2の偏光フィルタ106Bにより、皮膚20に照射された光と直交する振動方向を有する成分のみが、撮像装置104に入射されることとなる。これにより、撮像装置104は、皮膚20に照射された光と直交する振動方向を有する反射光による皮膚画像を撮像することができる。
【0066】
第6の撮像方法によれば、皮膚20からの反射光は、皮膚表面20Aでの反射光と、皮膚深層20Cでの反射光とを含んでいる。このうち、皮膚表面20Aでの反射光は、振動方向が変化しない(すなわち、皮膚20に照射された光と平行である)ために、第2の偏光フィルタ106Bによって除去される。一方、皮膚深層20Cでの反射光は、散乱光であり無偏光成分を多く持つ(すなわち、皮膚20に照射された光と平行でない)ため、第2の偏光フィルタ106Bを透過して撮像装置104に入射される。このため、撮像装置104は、皮膚深層20Cでの反射光による皮膚画像(すなわち、皮膚内部の状態に関する情報量を多く有する皮膚画像)を撮像することができる。
【0067】
また、第1〜第6の撮像方法において、
図4(a)〜
図4(d)に示されているように、照射装置103と撮像装置104との間に遮光性を有する遮蔽板600を設けることにより、照射装置103から照射された光が撮像装置104に直接入射しないようにすることができる。これにより、皮膚20からの反射光に不要な光が混入してしまうことを防止することができるため、撮像装置104によって撮像される皮膚画像をより鮮明にすることができる。
【0068】
また、第1〜第6の撮像方法において、
図4(a)〜
図4(d)に示されているように、照射装置103の出射方向を、撮像装置104の光軸側に向けて適度に傾けることが好ましい。これにより、皮膚表面20Aまたは皮膚深層20Cからの反射光を、撮像装置104が検出しやすくなるようにすることができる。
【0069】
概日リズム検査装置100は、上述の第1〜第6の撮像方法のうち、設定情報記憶部111に設定された撮像方法を、検査対象者の概日リズムの検査に使用するようになっている。特に、概日リズム検査装置100は、設定情報記憶部111の設定に基づいて複数の撮像方法を組み合わせて実施することにより、検査対象者の体毛の検出精度を高めることができる。
【0070】
特に、複数の撮像方法を組み合わせて実施することにより、皮膚表面20Aの反射光による皮膚画像と、皮膚深層20Cの反射光による皮膚画像の双方を撮像することが好ましい。皮膚表面20Aの反射光による皮膚画像は、第1,第3,第5の撮像方法により撮像することができる。皮膚深層20Cの反射光による皮膚画像は、第2,第4,第6の撮像方法により撮像することができる。
【0071】
第2,第4,第6の撮像方法は、皮膚深層20Cに存在する体毛を特定することが可能な撮像方法であるため、皮膚表面20Aに存在する体毛20Bを特定することが可能な第1,第3,第5のいずれかの撮像方法と組み合わせて実施することが好ましい。これにより、皮膚表面20Aに存在する体毛20Bと、皮膚深層20Cに存在する体毛20Bとの双方を特定することが可能となる。
【0072】
これ以外にも、撮像方法の組み合わせは様々である。例えば、第1〜第6の撮像方法の全てによる皮膚画像を撮像し、各々の皮膚画像から体毛20Bを特定するようにしてもよい。この場合、全ての皮膚画像において特定された体毛20Bを、概日リズムの推定対象とする体毛20Bとして決定するようにしてもよい。
【0073】
また、いずれか一の撮像方法にて皮膚画像を撮像し、当該皮膚画像から体毛20Bを検出できなかった場合、他の撮像方法にて皮膚画像を撮像し、当該皮膚画像から体毛20Bの検出を試みるようにしてもよい。
【0074】
なお、特にコストを削減したい場合、検査対象者に有効な撮像方法が限られている場合等、第1〜第6の撮像方法のうちの一部のみを実施できるように概日リズム検査装置100を構成するようにしてもよい。すなわち、概日リズム検査装置100において、実施しない撮像方法のための装置(例えば、照射装置、偏光フィルタ等)を省くようにしてもよい。
【0075】
(遮蔽部材107)
遮蔽部材107は、筐体100aの背面を構成するカバー109の表面上且つ外周縁部に沿って設けられている。遮蔽部材107は、本体100Aを検査対象者の皮膚表面に取り付けたときに、皮膚表面と密着することにより、筐体100aの背面と皮膚表面との間の隙間において、外部からの光が筐体100aの内部に進入しないように、外部からの光を遮蔽する。このため、遮蔽部材107は、遮光性を有する材料によって形成されている。また、遮蔽部材107は、皮膚表面との摩擦力により、皮膚表面に対する筐体100aのズレを防止することもできる。なお、遮蔽部材107は、皮膚表面に沿って変形することによって、皮膚表面との密着度を高めることができるように、可撓性を有する材料(例えば、ゴム素材)からなることが好ましい。
【0076】
(バッテリ108)
バッテリ108は、概日リズム検査装置100が動作するための電力を供給する。バッテリ108には、例えば、リチウムイオン電池、ニッカド電池、アルカリ電池、マンガン電池等が用いられる。
【0077】
(カバー109)
カバー109は、筐体100aの背面側を覆う透明且つ平板状の部材である。カバー109は、筐体100aの背面側に取り付けられることにより、筐体100aの背面を構成する。筐体100aの内部において照射装置103から出射された光は、カバー109を透過することにより、筐体100aの外部に出射されて、検査対象者の皮膚に照射されるようになっている。また、検査対象者の皮膚からの反射光は、カバー109を透過することにより、筐体100aの内部に入射されて、撮像装置104へ入射されるようになっている。また、カバー109は、筐体100aの内部に異物が混入したり、筐体100aの内部の構成物が検査対象者の皮膚表面に接触したりすることを防止する役割を果たす。
【0078】
ここで、撮像装置104によって良好な皮膚画像を撮像するためには、本体100Aの背面側を皮膚表面に近接させる必要がある。このとき、カバー109の表面には、皮膚表面から皮脂が付着する虞がある。カバー109の表面に皮脂が付着した場合、カバー109を透過する光に悪影響(例えば、乱反射等)を及ぼして、撮像装置104が撮像する皮膚画像の画質が劣化してしまう可能性がある。そこで、第1実施形態の概日リズム検査装置100では、カバー109の表面に皮脂が付着しないように、カバー109の表面に、皮脂の付着を防止するための加工(例えば、フッ素コーティング等)が施されている。
【0079】
なお、筐体100aを皮膚表面に沿って湾曲した形状とする場合は、これに合わせて、カバー109を皮膚表面に沿って湾曲した形状とすることが好ましい。また、筐体100aに皮膚表面に沿って変形可能な材料を用いる場合は、これに合わせて、カバー109を皮膚表面に沿って変形可能な材料を用いることが好ましい。
【0080】
(現在位置検出装置110)
現在位置検出装置110は、概日リズム検査装置100の現在位置を検出する装置である。現在位置検出装置110は、例えば、GPS(Global Positioning System)を備えて構成されている。
【0081】
(制御モジュール150)
制御モジュール150は、概日リズム検査装置100の各部を制御する。例えば、制御モジュール150は、照射装置103の照射タイミングを制御したり、撮像装置104の撮像タイミングを制御したり、概日リズムの推定および概日リズムの位相ずれの算出を行ったりする。制御モジュール150の機能の詳細については、
図7を用いて後述する。
【0082】
制御モジュール150は、例えば、ICチップ、マイクロコンピュータ等によって構成することができる。制御モジュール150をマイクロコンピュータによって構成する場合、
図7に示す各機能ブロック121〜127は、CPU、RAM、ROMなどを備えて構成され、RAMやROM等の記録媒体に記憶されたプログラムが動作することによって実現される。
【0083】
〔制御モジュール150の機能構成〕
図7は、本発明の第1実施形態に係る制御モジュール150の機能構成例を示すブロック図である。
図7に示すように、制御モジュール150は、設定情報記憶部111、画像記憶部112および基準時刻記憶部113を備える。また、制御モジュール150は、その機能構成として、制御部121、画像取得部122、体毛特定部123、概日リズム推定部124、現在位置特定部125、位相ずれ算出部126および表示制御部127を備える。
【0084】
設定情報記憶部111は、各種設定情報を記憶する。例えば、設定情報記憶部111は、以下の設定情報を記憶する。これらの設定情報は、ユーザがタッチパネル102を操作することにより、設定および変更することが可能となっている。
(a)検査対象者のプロファイル情報(氏名、年齢、性別、ID、身長、体重等)
(b)検査地(例えば、緯度・経度情報、国籍、地域、住所等)
(c)測定時期(例えば、30分毎、1時間毎等)
(d)推定時期(例えば、24時間経過後、48時間経過後等)
(e)装着部位(例えば、手、足等)
(f)内蔵時計に設定する現在時刻
(g)現在位置(例えば、緯度・経度情報、国籍、地域、住所等)
(h)検査に使用する撮像方法(第1〜第6の撮像方法)の設定
【0085】
例えば、上記設定情報(b)および(g)は、現在位置特定部125が概日リズム検査装置100の現在位置を特定するために使用される。また、上記設定情報(c)は、制御部121が皮膚画像を撮像する時期を特定する際に使用される。また、上記設定情報(d)は、概日リズム推定部124が概日リズムの推定を行う時期を特定する際に使用する。また、上記設定情報(h)は、制御部121が皮膚画像を撮像する際に使用する撮像方法を特定する際に使用される。上記設定情報(a)および(e)は、この第1実施形態では、各種検査結果とともにディスプレイ101に表示される情報として設定情報記憶部111に設定されている。
【0086】
基準時刻記憶部113は、予め定められた明暗条件の時刻を記憶する。例えば、基準時刻記憶部113は、
図2(b)で例示したように、明暗条件における時刻ZT=0とする時刻t’を、明暗条件の時刻として予め記憶する。基準時刻記憶部113に記憶されている明暗条件の時刻は、位相ずれ算出部126に読み取られて、概日リズム推定部124によって推定された概日リズムの位相ずれを算出するために用いられる。特に、基準時刻記憶部113は、地域ごと且つ時期ごとの、複数の明暗条件の時刻を記憶する。
【0087】
制御部121は、照射装置103による光の照射を制御する。また、制御部121は、撮像装置104による皮膚画像の撮像を制御する。具体的には、制御部121は、設定情報記憶部111に設定された測定時期(例えば、30分毎)が到来する毎に、照射装置103に光を出射させる。そして、制御部121は、照射装置103が出射した光が皮膚に照射されているときに、撮像装置104に皮膚画像を撮像させる。これにより、撮像装置104は、照射装置103によって照射された光の反射光による皮膚画像を撮像することができる。
【0088】
上述したとおり、概日リズム検査装置100は、複数の照射装置103A〜103Fを備えている。制御部121は、測定時期が到来する毎に、設定情報記憶部111に設定されている撮像方法(第1〜第6の撮像方法)に応じた照射装置103を、照射装置103A〜103Fの中から選択し、選択した照射装置103が光を出射するように制御する。これにより、概日リズム検査装置100は、皮膚に照射する光の波長および振動方向を、撮像方法に応じて異ならせることができるようになっている。
【0089】
例えば、上述の第1の撮像方法の場合、制御部121は、照射装置103Aから白色光または広域スペクトル光を出射させて、その反射光による皮膚画像を撮像装置104に撮像させる。また、上述の第2の撮像方法の場合、制御部121は、照射装置103Bから白色光または広域スペクトル光を出射させて、その反射光による皮膚画像を撮像装置104に撮像させる。
【0090】
また、上述の第3の撮像方法の場合、制御部121は、初めに、照射装置103Aから白色光または広域スペクトル光を出射させて、その反射光による皮膚画像(第1の画像)を撮像装置104に撮像させる。次に、制御部121は、照射装置103Cから特定の波長の光を出射させて、その反射光による皮膚画像(第2の画像)を撮像装置104に撮像させる。
【0091】
また、上述の第4の撮像方法の場合、制御部121は、初めに、照射装置103Bから白色光または広域スペクトル光を出射させて、その反射光による皮膚画像(第1の画像)を撮像装置104に撮像させる。次に、制御部121は、照射装置103Dから特定の波長の光を出射させて、その反射光による皮膚画像(第2の画像)を撮像装置104に撮像させる。
【0092】
また、上述の第5の撮像方法の場合、制御部121は、照射装置103Eから白色光または広域スペクトル光を出射させて、その反射光による皮膚画像を撮像装置104に撮像させる。また、上述の第6の撮像方法の場合、制御部121は、照射装置103Fから任意の波長の光を出射させて、その反射光による皮膚画像を撮像装置104に撮像させる。
【0093】
設定情報記憶部111に複数の撮像方法が設定されている場合、制御部121は、測定時期が到来する毎に、複数の撮像方法の各々の皮膚画像が得られるように、撮像方法毎に、当該撮像方法に応じた照射装置103から光を出射させて、その光の反射光による皮膚画像を撮像装置に104に撮像させる。例えば、設定情報記憶部111に第1〜第6の撮像方法が設定されている場合、制御部121は、測定時期が到来する毎に、以下の制御1〜6を順番に行う。
【0094】
(制御1)照射装置103Aから白色光または広域スペクトル光を出射させて、その反射光による皮膚画像を撮像装置104に撮像させる。
(制御2)照射装置103Cから特定の波長の光を出射させて、その反射光による皮膚画像を撮像装置104に撮像させる。
(制御3)照射装置103Bから白色光または広域スペクトル光を出射させて、その反射光による皮膚画像を撮像装置104に撮像させる。
(制御4)照射装置103Dから特定の波長の光を出射させて、その反射光による皮膚画像を撮像装置104に撮像させる。
(制御5)照射装置103Eから白色光または広域スペクトル光を出射させて、その反射光による皮膚画像を撮像装置104に撮像させる。
(制御6)照射装置103Fから任意の波長の光を出射させて、その反射光による皮膚画像を撮像装置104に撮像させる。
【0095】
画像取得部122は、撮像装置104が皮膚画像を撮像する毎に、当該皮膚画像を撮像装置104から取得する。そして、画像取得部122は、撮像装置104から取得した皮膚画像を画像記憶部112に記憶させる。このとき、画像取得部122は、撮像装置104から取得した皮膚画像を、少なくともその皮膚画像の撮像時刻と対応付けて、画像記憶部112に記憶させる。皮膚画像の撮像時刻は、例えば、概日リズム検査装置100の内蔵時計(図示省略)から得ることができる。1回の測定時期に複数の皮膚画像が撮像された場合(第3,第4の撮像方法の場合および複数の撮像方法を実行する場合)、画像取得部122は、これら複数の皮膚画像を撮像装置104から取得して、画像記憶部112に記憶させる。
【0096】
画像記憶部112は、撮像装置104によって撮像され、且つ、画像取得部122によって取得された皮膚画像を記憶する。1回の測定時期に複数の皮膚画像が撮像された場合、画像記憶部112は、測定時期毎に、その測定時期において撮像された複数の画像を記憶する。画像記憶部112は、例えばフラッシュメモリなどの不揮発性記録素子などから構成することができる。
【0097】
体毛特定部123は、撮像装置104によって複数の測定時期に亘って撮像された複数の皮膚画像を画像記憶部112から読み出して、これら複数の皮膚画像の各々について、皮膚画像から検査対象者の体毛20Bを特定する。1回の測定時期に複数の皮膚画像が撮像された場合、体毛特定部123は、測定時期毎に、その測定時期において撮像された複数の画像を画像記憶部112から読み出して、これら複数の皮膚画像の各々について、皮膚画像から検査対象者の体毛20Bを特定する。
【0098】
特に、体毛特定部123は、複数の皮膚画像の各々について、当該皮膚画像から特定される体毛20Bの長さを検出することにより、成長期の体毛(すなわち、経時的に長さが変化する体毛20B)を特定する。なお、上述の第1〜第6の撮像方法により、得られる皮膚画像の特徴が異なる。このため、体毛特定部123は、皮膚画像を撮像する際に用いられた撮像方法に応じた方法を用いて、体毛20Bの特定を行う。
【0099】
例えば、第1,第2の撮像方法によれば、ヘモグロビン色素を多く含む皮膚表面20Aの像と、メラニン色素を多く含む体毛20Bの像とが同程度の輝度を有する皮膚画像が得られる。このため、体毛特定部123は、例えば、従来知られている技術を利用して、皮膚画像から、分離行列を推定してメラニンの色空間ベクトルを分離し、メラニン色素成分を多く含むオブジェクトを検出することにより、このようなオブジェクトを体毛20Bとして特定する。
【0100】
また、第3,第4の撮像方法によれば、第1の画像として、ヘモグロビン色素を多く含む皮膚表面20Aの像と、メラニン色素を多く含む体毛20Bの像とが同程度の輝度を有する画像が得られる。また、第2の画像として、ヘモグロビン色素を多く含む皮膚表面20Aの像と、メラニン色素を多く含む体毛20Bの像とで輝度が大きく異なる画像が得られる。このため、体毛特定部123は、第1の画像の輝度情報と第2の画像の輝度情報との差分を求めることにより、体毛20Bの像が強調された差分画像を得る。そして、体毛特定部123は、当該差分画像から、メラニン色素成分を多く含むオブジェクトを検出することにより、このようなオブジェクトを体毛20Bとして特定する。
【0101】
また、第5の撮像方法によれば、皮膚表面20Aでの反射光による皮膚画像(すなわち、皮膚表面20Aの凹凸状態に関する情報量を多く有する皮膚画像)が得られる。このため、体毛特定部123は、皮膚画像から所定の輪郭形状をなすオブジェクトを検出することにより、このようなオブジェクトを体毛20Bとして特定する。すなわち、皮膚20の色および体毛20Bの色に関わらず、体毛20Bを特定することができるため、皮膚20にメラニン成分が多く含まれている場合、体毛20Bのメラニン成分が少ない場合のいずれであっても、皮膚画像から体毛20Bを特定することができる。
【0102】
また、第6の撮像方法によれば、皮膚深層20Cでの反射光による皮膚画像(すなわち、皮膚内部の状態に関する情報量を多く有する皮膚画像)が得られる。このため、体毛特定部123は、皮膚画像から、メラニン色素成分を多く含むオブジェクトを検出することにより、このようなオブジェクトを皮膚深層20Cに存在する体毛20Bとして特定する。
【0103】
なお、皮膚画像から検査対象者の成長期の体毛20Bを特定する方法の詳細については、
図8を用いて後述する。
【0104】
概日リズム推定部124は、体毛特定部123が複数の皮膚画像から成長期の体毛を特定することによって求められる成長期の体毛の長さの経時的変化に基づいて、検査対象者の概日リズムを推定する。検査対象者の概日リズムを推定する方法の詳細については、
図2を用いて後述する。
【0105】
現在位置特定部125は、概日リズム検査装置100の現在位置を特定する。例えば、現在位置特定部125は、現在位置検出装置110から供給された現在位置信号に基づいて、概日リズム検査装置100の現在位置を特定する。なお、概日リズム検査装置100が現在位置検出装置110を備えていない場合、現在位置特定部125は、設定情報記憶部111に設定されている現在位置または検査地を、概日リズム検査装置100の現在位置として特定するようにしてもよい。
【0106】
位相ずれ算出部126は、概日リズム推定部124によって推定された概日リズムと、基準時刻記憶部113に記憶されている明暗条件の時刻とに基づいて、概日リズム推定部124によって推定された概日リズムの位相ずれを算出する。特に、位相ずれ算出部126は、現在日時および現在位置検出装置110によって特定された現在位置に対応する明暗条件の時刻を用いて、概日リズム推定部124によって推定された概日リズムの位相ずれを算出する。概日リズムの位相ずれを算出する方法の詳細については、
図2を用いて後述する。
【0107】
表示制御部127は、ディスプレイ101による各種情報の表示を制御する。例えば、表示制御部127は、概日リズム推定部124によって推定された検査対象者の概日リズムをディスプレイ101に表示させる。また、表示制御部127は、位相ずれ算出部126によって算出された検査対象者の概日リズムの位相ずれをディスプレイ101に表示させる。
【0108】
なお、第1実施形態の概日リズム検査装置100では、概日リズムおよび概日リズムの位相ずれをディスプレイ101に表示させるように構成されているが、これに限らない。例えば、概日リズム検査装置100は、概日リズムおよび概日リズムの位相ずれを、無線通信または有線通信を介して、外部機器(例えば、スマートフォン、パーソナルコンピュータ、携帯電話機等)にエクスポートすることができるように構成されてもよい。
【0109】
〔皮膚画像からの体毛の特定方法の具体例〕
次に、
図8を参照して、第1実施形態に係る概日リズム検査装置100による皮膚画像からの体毛の特定方法の具体例について説明する。
図8は、本発明の第1実施形態に係る撮像装置104によって撮像された皮膚画像の一例を示す図である。
図8(a)に示す皮膚画像800は、設定情報記憶部111に設定された複数の測定時期のうちの最初の測定時期に、撮像装置104によって撮像された皮膚画像の一例である。
図8(b)に示す皮膚画像800’は、次の測定時期に、撮像装置104によって撮像された皮膚画像の一例である。特に、皮膚画像800,800’は、上述の第1または第3の撮像方法によって撮像された皮膚表面の画像の一例である。
【0110】
皮膚画像800においては、皮膚表面に存在する複数のオブジェクト802a〜802oが写し出されている。皮膚画像800において、複数のオブジェクト802a〜802oの中には、メラニン成分を含んでいる体毛だけでなく、メラニン成分を含んでいる他のオブジェクト(例えば、シミ、ほくろ等)が含まれている。さらに、複数のオブジェクト802a〜802oの中には、皮膚表面に存在する異物(例えば、埃等)も含まれている。体毛特定部123は、複数のオブジェクト802a〜802oの中から、所定の条件を満たすオブジェクトを成長期の体毛として特定する。
【0111】
具体的には、体毛特定部123は、皮膚画像800,800’に写し出されているオブジェクト802a〜802oのうち、以下の条件1〜3を全て満たすオブジェクトを、成長期の体毛として特定する。
(条件1)メラニン色素成分を多く含んでいる。
(条件2)皮膚画像800および皮膚画像800’の双方且つ同位置に写し出されている。
(条件3)皮膚画像800’において皮膚画像800よりも長さが増加している。
【0112】
例えば、
図8に示す例では、上記条件1〜3を全て満たすオブジェクト802b,802d,802h,802i,802k,802lが、体毛特定部123によって成長期の体毛として特定される。このように体毛特定部123によって成長期の体毛として特定されたオブジェクトは、そのオブジェクト情報が、概日リズム検査装置100のメモリ等に保持される。例えば、オブジェクト情報には、識別情報、位置情報(例えば、XY座標値)、長さ、前回の画像における長さとの差分、オブジェクトの種類の判定結果(すなわち、成長期の体毛である旨)等が含まれる。
【0113】
体毛特定部123は、上記条件1〜3を全て満たすオブジェクトを成長期の体毛として特定することにより、以下のオブジェクトを成長期の体毛としての特定対象から除外することができる。
●シミ、ほくろ等、皮膚表面に形成されている、メラニン色素成分を多く含む体毛以外のオブジェクト(上記条件3を満たさないため)。
●皮膚表面に存在する異物のうち、埃等、メラニン色素成分を多く含んでいないもの(上記条件1,3を満たさないため)。
●皮膚表面に存在する異物のうち、抜け毛等、メラニン色素成分を多く含んでいるもの(上記条件3を満たさないため)。
●成長期でない体毛(上記条件3を満たさないため)。
【0114】
なお、体毛特定部123は、上述の第5の撮像方法によって撮像された皮膚画像から成長期の体毛を特定する場合、上記条件1に代えて、以下の条件1’を用いて成長期の体毛を特定することが好ましい。第5の撮像方法では、皮膚表面の体毛の輪郭が強調された皮膚画像が得られるからである。
(条件1’)所定の範囲内(例えば、30〜150μmの範囲内)のサイズの幅を有しており、且つ、幅のサイズよりも大きい長さのサイズ(すなわち、縦長形状)を有する。
【0115】
また、体毛特定部123は、成長期の体毛として特定しなかったオブジェクトについても、成長期の体毛として特定したオブジェクトと同様に、そのオブジェクト情報を概日リズム検査装置100のメモリ等に保持するようにしてもよい。この場合、オブジェクト情報には、例えば、識別情報、位置情報(例えば、XY座標値)、長さに加えて、オブジェクトの種類の判定結果(すなわち、成長期の体毛か否かを示す情報)等が含まれる。
【0116】
このように成長期の体毛と特定しなかったオブジェクトをメモリに記憶した場合、体毛特定部123は、そのオブジェクトの位置、形状、サイズ等を管理することで、皮膚画像800と皮膚画像800’との位置合わせを行うための基準点として用いるようにしてもよい。
【0117】
なお、
図8に示す皮膚画像800および皮膚画像800’では、説明を分かり易くするために、皮膚が白色で示されており、皮膚表面に存在するオブジェクトが黒色で示されているが、実際に皮膚画像に写し出される皮膚および体毛の色は、撮像方法(第1〜第6の撮像方法)によって異なる。
【0118】
例えば、第1,第2の撮像方法によって皮膚画像を撮像した場合、皮膚が皮膚内部のヘモグロビン色素成分によって赤みを帯びており、且つ、体毛がメラニン色素成分によって概ね黒色をなしている皮膚画像が得られる。また、第3,第4の撮像方法によって皮膚画像を撮像した場合、ヘモグロビン成分に対するメラニン成分の反射光の強度が相対的に高められるため、第1,第2の撮像方法によって撮像される皮膚画像と比べて、皮膚の赤みが弱められ、その反面、体毛の黒色が強調された皮膚画像が得られる。
【0119】
また、第5の撮像方法によって皮膚画像を撮像した場合、皮膚内部の色情報(ヘモグロビン色素成分による赤み等)が除去され、且つ、皮膚表面の凹凸状態に関する情報量を多く有する皮膚画像が得られる。すなわち、皮膚表面に存在する各オブジェクトの輪郭が強調された皮膚画像が得られる。なお、第5の撮像方法によって得られる皮膚画像は、表皮下のオブジェクトは認識しないため、基本的には表皮上に存在するオブジェクト(例えば、体毛、埃等)のみが写し出される。
【0120】
また、第6の撮像方法によって皮膚画像を撮像した場合、皮膚表面での反射光が除去され、皮膚内部の情報量を多く有する皮膚画像が得られるため、第1の撮像方法によって撮像される皮膚画像と比べて、皮膚内部の体毛が写し出され、且つ、皮膚の赤みが強調された皮膚画像が得られる。
【0121】
なお、1回の測定時期に複数の撮像方法によって複数の皮膚画像が撮像された場合、体毛特定部123は、撮像方法毎に、上述のようにして皮膚画像から体毛を特定する。例えば、1回の測定時期に、皮膚表面の反射光による皮膚画像(第1,第3,第5の撮像方法のいずれかによる)と、皮膚深層の反射光による皮膚画像(第2,第4,第6の撮像方法のいずれかによる)とが撮像された場合、体毛特定部123は、皮膚表面の反射光による皮膚画像と、皮膚深層の反射光による皮膚画像との各々について、上述のようにして体毛の特定処理を行う。
【0122】
この場合、概日リズム検査装置100は、皮膚表面の反射光による画像から特定された体毛に関するオブジェクト情報と、皮膚深層の反射光による画像から特定された体毛に関するオブジェクト情報とは、別々に管理してもよい。この場合、概日リズム推定部124は、皮膚表面の反射光による画像から特定された体毛に関するオブジェクト情報から概日リズムを推定するとともに、皮膚深層の反射光による画像から特定された体毛に関するオブジェクト情報から概日リズムを推定してもよい。
【0123】
〔概日リズムの推定方法および概日リズムの位相ずれの算出方法の具体例〕
次に、
図2を再び参照して、第1実施形態に係る概日リズム検査装置100による概日リズムの推定方法および概日リズムの位相ずれの算出方法の具体例について説明する。例えば、概日リズム検査装置100は、以下の手順(1)〜(2)により、検査対象者の概日リズムを推定する。その後、概日リズム検査装置100は、以下の手順(3)〜(5)により、概日リズムの位相ずれを算出する。
【0124】
(1)概日リズム推定部124が、複数の測定時期に亘って撮像装置104によって撮像された複数の皮膚画像の各々から体毛特定部123によって特定された成長期の体毛の長さに基づいて、
図2(a)に示すような成長期の体毛の長さの経時的変化を求める。ここで、複数の皮膚画像から複数の成長期の体毛が体毛特定部123によって特定されている場合には、これら複数の体毛の長さの平均値を用いて、体毛の長さの経時的変化を求める。複数の皮膚画像は、24時間以上に亘って撮像されたものであることが好ましく、体毛の成長を観察するのに好適な間隔(例えば、30分おき)で撮像されたものであることがより好ましい。
【0125】
(2)概日リズム推定部124が、上記(1)で求められた体毛の経時的変化を微分することにより、
図2(b)に示すような体毛の成長速度の経時的変化を求め、この経時的変化を、検査対象者の概日リズムとして推定する。
【0126】
(3)位相ずれ算出部126が、
図2(b)に示すように、上記(2)で推定された概日リズムにおいてピーク(すなわち、体毛の成長速度のピーク)となる時刻tを、便宜上、検査対象者の体内時刻CT=0として設定する。但し、今後の研究等により、概日リズムにおいてピークとなる時刻tからずれた時刻に体内時刻CT=0を設定する方が適切であるとの知見が得られる可能性もある。この場合、時刻tからずれた時刻に体内時刻CT=0を設定するように、位相ずれ算出部126による処理を変更するようにしてもよい。
【0127】
(4)位相ずれ算出部126が、基準時刻記憶部113を参照することにより、明暗条件の時刻である、明暗条件における時刻ZT=0が設定されている時刻t’を特定する。ここで、位相ずれ算出部126は、現在の日付且つ現在位置に対応する時刻t’を特定する。これにより、位相ずれ算出部126は、日の出時刻を基準とする明暗条件における時刻ZTが、地域および時期によって変動するのに応じて、現在の日付および現在位置に応じた適切な明暗条件における時刻ZTを、概日リズムの位相ずれの算出に用いることができる。したがって、概日リズムの位相ずれの算出精度を高めることができる。なお、現在の日付は、例えば、概日リズム検査装置100が備える内蔵時計から得ることができる。また、現在位置は、現在位置特定部125によって特定することができる。
【0128】
(5)位相ずれ算出部126が、明暗条件における時刻ZT=0が設定されている時刻t’に対する、体内時刻CT=0が設定された時刻tの時間差を、上記(2)で推定された概日リズムの、明暗条件の時刻に対する位相ずれとして算出する。その結果、体内時刻CTが明暗条件における時刻ZTと略等しい場合、体内時刻と外部環境との間には乖離がないと判断される。
【0129】
また、体内時刻CTが明暗条件における時刻ZTよりも早い場合、外部環境に対して体内時刻CTが前進している(advance)と判断される。典型的な例では、朝型人間において、このような結果が得られる。また、体内時刻CTが明暗条件における時刻ZTよりも遅い場合、外部環境に対して体内時刻CTが遅延している(delay)と判断される。典型的な例では、夜型人間において、このような結果が得られる。
【0130】
概日リズム検査装置100は、このようにして得られた概日リズムおよび概日リズムの位相ずれを、例えば、
図10(a)に示すように、ディスプレイ101に表示させることにより、ユーザ(検査対象者)に把握させることができる。これ以外にも、概日リズム検査装置100は、例えば、概日リズムおよび概日リズムの位相ずれを、外部機器へ出力するようにしてもよい。この場合、例えば、外部機器に出力された概日リズムおよび概日リズムの位相ずれを、医師等による診断に利用することができる。
【0131】
なお、上記(2)にて得られた概日リズムにより、検査対象者の概日リズムが24時間周期であるか否かを判断することができる。例えば、上記(2)にて得られた概日リズムにおけるピーク(すなわち、体毛の成長速度のピーク)の間隔が24時間ではない場合、その検査対象者の概日リズムが24時間周期ではないと判断することができる。すなわち、その検査対象者は、非24時間型(non−24)であると判断される。例えば、時差ボケ(jet lag)またはその他の概日リズム睡眠障害等の疾患にかかっている患者において、このような結果が得られる。
【0132】
ここで、検査対象者のプロファイル(例えば、年齢、性別等)および装着部位によって、体毛の成長速度が異なったり、体毛の成長速度の変化パターンが異なったりする。例えば、上肢、下肢等で成長速度は異なり、成長速度の変化パターンも若干の違いがある。そこで概日リズム検査装置100は、検査対象者のプロファイル(例えば、年齢、性別等)および装着部位に応じた補正値を予めメモリ等に記憶しておき、概日リズム推定部124は、体内時刻CT=0とする時刻を、検査対象者のプロファイル(例えば、年齢、性別等)および装着部位に応じた補正値により、概日リズムにおいてピークとなる時刻tから補正(すなわち、前後に調整)するようにしてもよい。これにより、概日リズム検査装置100は、概日リズム推定部124によって推定される概日リズムの推定精度、および、位相ずれ算出部126によって算出される概日リズムの位相ずれの精度を高めることができる。
【0133】
〔概日リズム検査装置100による処理の一例〕
図9は、本発明の第1実施形態に係る概日リズム検査装置100による処理の一例を示すフローチャートである。
図9に示す処理は、例えば、概日リズム検査装置100が検査対象者に取り付けられている状態で、概日リズム検査装置100において検査対象者の概日リズムの検査を開始するための所定のイベントが発生した場合(例えば、検査対象者が、概日リズムの検査を開始するための操作を概日リズム検査装置100に対して行った場合)、実行が開始される。
【0134】
まず、制御部121が、設定情報記憶部111に設定された最初の測定時期が到来したか否かを判断する(ステップS901)。ここで、最初の測定時期が到来したと制御部121が判断した場合(ステップS901:Yes)、概日リズム検査装置100は、ステップS902へ処理を進める。一方、最初の測定時期が到来していないと制御部121が判断した場合(ステップS901:No)、概日リズム検査装置100は、再度ステップS901の処理を実行する。
【0135】
ステップS902では、制御部121の制御により、照射装置103が、検査対象者の皮膚に対して光を照射する。その状態で、制御部121の制御により、撮像装置104が、皮膚画像を撮像する(ステップS903)。そして、画像取得部122が、ステップS903で撮像された皮膚画像を取得する(ステップS904)。さらに、画像取得部122が、ステップS904で取得した皮膚画像を画像記憶部112に記憶させる(ステップS905)。
【0136】
その後、制御部121が、設定情報記憶部111に設定された次の測定時期が到来したか否かを判断する(ステップS906)。ここで、次の測定時期が到来したと制御部121が判断した場合(ステップS906:Yes)、概日リズム検査装置100は、再度ステップS902以降の処理を実行する。このように、予め定められた複数の測定時期ごとに、ステップS902〜S905の処理が実行される。これにより、画像記憶部112には、撮像装置104によって撮像された複数の皮膚画像が格納されることとなる。一方、次の測定時期が到来していないと制御部121が判断した場合(ステップS906:No)、概日リズム検査装置100は、ステップS907へ処理を進める。
【0137】
ステップS907では、概日リズム推定部124が、検査対象者の概日リズムを推定する推定時期が到来したか否かを判断する。ここで、検査対象者の概日リズムを推定する推定時期が到来したと概日リズム推定部124が判断した場合(ステップS907:Yes)、概日リズム検査装置100は、ステップS908へ処理を進める。一方、検査対象者の概日リズムを推定する推定時期が到来していないと概日リズム推定部124が判断した場合(ステップS907:No)、概日リズム検査装置100は、再度ステップS906以降の処理を実行する。
【0138】
ステップS908では、概日リズム推定部124が、ステップS905で画像記憶部112に格納された複数の皮膚画像を画像記憶部112から読み出す。そして、体毛特定部123が、ステップS908で読み出した複数の皮膚画像の各々について、皮膚画像における成長期の体毛を特定する(ステップS909)。さらに、概日リズム推定部124が、ステップS909で複数の皮膚画像から成長期の体毛が特定されることによって求められる成長期の体毛の長さの経時的変化に基づいて、検査対象者の概日リズムを推定する(ステップS910)。
【0139】
その後、現在位置特定部125が、検査対象者の現在位置を特定する(ステップS911)。そして、位相ずれ算出部126が、基準時刻記憶部113から、ステップS911で特定された検査対象者の現在位置および現在日時に対応する明暗条件の時刻を読み出す(ステップS912)。さらに、位相ずれ算出部126が、ステップS912で読み出した明暗条件の時刻と、ステップS910で推定された検査対象者の概日リズムとに基づいて、検査対象者の概日リズムの位相ずれを算出する(ステップS913)。
【0140】
その後、表示制御部127が、ステップS910で推定された検査対象者の概日リズムと、ステップS913で算出された検査対象者の概日リズムの位相ずれとをディスプレイ101に表示させて(ステップS914)、概日リズム検査装置100は、
図9に示す処理を終了する。
【0141】
なお、第1実施形態では、1回の測定時期に複数の皮膚画像を取得する場合がある。例えば、上述した第3,第4の撮像方法を適用した場合、1回の測定時期に、白色光による皮膚画像と、特定の波長の光による皮膚画像とを、それぞれ取得する必要がある。また、上述した第1〜第6の撮像方法の2つ以上を組み合わせて適用した場合、1回の測定時期に、撮像方法毎に、その撮像方法に応じた皮膚画像を取得する必要がある。これらの場合、概日リズム検査装置100は、制御部121の制御により皮膚に照射する光の種類を変更しつつ、ステップS902〜ステップS905を繰り返し実行することにより、1回の測定時期に複数の皮膚画像を取得する。
【0142】
また、
図9に示す処理では、概日リズムおよび概日リズムの位相ずれを求めた後、直ちに概日リズムおよび概日リズムの位相ずれをディスプレイ101に表示させるようにしているが、これに限らない。例えば、概日リズムおよび概日リズムの位相ずれを、概日リズム検査装置100のメモリに記憶させておき、任意のタイミング(例えば、ユーザが概日リズムおよび概日リズムの位相ずれをディスプレイ101に表示させるための操作を概日リズム検査装置100に対して行った場合)で概日リズムおよび概日リズムの位相ずれをメモリから読み出して、ディスプレイ101に表示させるようにしてもよい。
【0143】
〔表示画面の一例〕
図10は、本発明の第1実施形態に係る概日リズム検査装置100(ディスプレイ101)が表示する表示画面の一例を示す図である。
【0144】
図10(a)に示す画面610は、概日リズムの検査に関する情報を表示するための表示画面の一例である。画面610は、4種類の情報611〜614を含んで構成されている。
図10(a)に示す例では、情報611は、現在日時、現在地、バッテリ残量を含んで構成されている。また、情報612は、概日リズム推定部124により推定された概日リズムに基づく体内時刻CTと、明暗条件における時刻ZTと、位相ずれ算出部126によって算出された概日リズムの位相ずれとを含んで構成されている。
図10(a)に示す例では、明暗条件における時刻ZTに対して、体内時刻CTが4分遅れている。また、情報613は、概日リズム推定部124によって推定された概日リズムのパターンを表す図形を含んで構成されている。また、情報614は、概日リズム検査装置100の装着部位と、ユーザ(検査対象者)のプロファイル情報として、IDと、氏名と、性別と、年齢とを含んで構成されている。
【0145】
図10(b)に示す画面620は、概日リズム検査装置100の各種機能へアクセスするためのメニュー画面の一例である。画面620は、情報621および4つのボタン622〜625を含んで構成されている。情報621は、情報611と同様に、現在日時、現在地、バッテリ残量を含んで構成されている。
【0146】
「Regist Patient」と記されたボタン622は、ユーザ(検査対象者)のプロファイル(例えば、氏名、年齢、性別、ID、身長、体重等)の入力画面をディスプレイ101に表示させるためのボタンである。「Preview Data」と記されたボタン623は、撮像装置104によって撮像された皮膚画像、各種検査結果等をディスプレイ101にプレビュー表示させるためのボタンである。
【0147】
「Settings」と記されたボタン624は、概日リズム検査装置100に対する各種設定(例えば、現在時刻、現在位置、検査に使用する撮像方法等)を行うための設定画面をディスプレイ101に表示させるためのボタンである。「Export」と記されたボタン625は、各種情報(例えば、画像記憶部112に記憶されている皮膚画像、各種検査結果等)を外部機器へ出力するため画面をディスプレイ101に表示させるためのボタンである。
【0148】
以上説明したように、第1実施形態の概日リズム検査装置100によれば、遺伝子測定、細胞培養、頻回の採血、専門の研究施設での分析等を必要とすることなく、皮膚画像を複数回撮像するだけで、これによって得られる複数の皮膚画像から、検査対象者の概日リズムを推定することができる。そして、推定した概日リズムに基づいて、検査対象者の概日リズムの位相ずれを算出することができる。このため、第1実施形態の概日リズム検査装置100によれば、検査対象者の概日リズムおよびその位相ずれを容易に把握することができる。特に、第1実施形態の概日リズム検査装置100によれば、現在位置および現在日時に応じた明暗条件の時刻に基づく、高精度な概日リズムの位相ずれを算出することができる。
【0149】
また、第1実施形態の概日リズム検査装置100によれば、波長および振動方向が異なる複数の種類の光を用いて多様な皮膚画像を撮像することができるように、照射装置103および撮像装置104が構成されている。このため、第1実施形態の概日リズム検査装置100によれば、検査対象者の皮膚に存在する多様な状態の体毛を高精度に特定することができる。例えば、第1,第2の撮像方法により、メラニン成分を多く含む体毛を特定することができる。また、第3,第4の撮像方法により、メラニン色素成分が強調された画像が得られるため、メラニン成分を多く含む体毛をより高精度に特定することができる。
【0150】
また、第5の撮像方法により、皮膚表面の凹凸状態に関する情報を多く含む皮膚画像が得られるため、皮膚におけるメラニン色素成分の含有量が多い場合、および、体毛におけるメラニン色素成分の含有量が少ない場合(例えば、白髪等の場合)のいずれであっても、容易に体毛を特定することができる。また、第6の撮像方法により、皮膚深層の情報量を多く有する画像を撮像することができるため、皮膚内部に存在する体毛を特定することができる。さらに、複数の撮像方法を組み合わせて実施することにより、さらなる体毛の特定精度の向上を図ることができる。
【0151】
また、第1実施形態の概日リズム検査装置100によれば、概日リズム検査装置100を検査対象者の皮膚表面に固定したままの状態で、
図9に示す全ての検査工程(すなわち、皮膚画像を撮像してから、各種検査結果をディスプレイ101に表示させるまで)を実施することができる。このため、第1実施形態の概日リズム検査装置100によれば、検査対象者に着脱および操作の手間をかけさせたり、撮像時期毎に検査装置の位置合わせを行わせたりする必要なく、同一の測定位置に対する長期間の測定を行うことができる。
【0152】
〔第2実施形態〕
〔概日リズム検査システム10の構成例〕
以下、
図11および
図12を参照して、本発明の第2実施形態を説明する。以下、第2実施形態に関し、第1実施形態からの変更点について説明する。
図11は、本発明の第2実施形態に係る概日リズム検査システム10の構成例を示す図である。
図12は、本発明の第2実施形態に係る概日リズム検査システム10の機能構成例を示すブロック図である。
【0153】
図11に示す概日リズム検査システム10は、皮膚画像撮像装置250およびスマートフォン200を備えて構成されている。皮膚画像撮像装置250は、第1実施形態の概日リズム検査装置100と同様に、検査対象者の皮膚表面に取り付けられて、検査対象者の皮膚画像を撮像する装置である。スマートフォン200は、検査対象者が所持する携帯情報端末である。スマートフォン200は、特許請求の範囲に記載の情報処理装置の一例である。皮膚画像撮像装置250およびスマートフォン200は、無線通信(例えば、Wi−Fi、Bluetooth(登録商標)等)または有線通信(例えば、USBケーブル等)により、互いに通信を行うことが可能となっている。
【0154】
皮膚画像撮像装置250の装置構成は、ディスプレイ101,タッチパネル102,制御モジュール150を備えていない点で、
図3に示した概日リズム検査装置100の装置構成と異なる。
【0155】
〔概日リズム検査システム10の機能構成〕
このように構成された概日リズム検査システム10は、第1実施形態の概日リズム検査装置100の機能を、皮膚画像撮像装置250およびスマートフォン200によって実現するように構成されている。
【0156】
例えば、
図12に示すように、第1実施形態の概日リズム検査装置100の構成部(
図7参照)のうち、照射装置103、撮像装置104および現在位置検出装置110を、この第2実施形態では、皮膚画像撮像装置250に設けるようにしている。一方、第1実施形態の概日リズム検査装置100の構成部(
図7参照)のうち、制御モジュール150の構成部(機能ブロック121〜127、設定情報記憶部111、画像記憶部112、基準時刻記憶部113)を、この第2実施形態では、スマートフォン200に設けるようにしている。
【0157】
また、表示デバイスおよび入力デバイスとして、第1実施形態では概日リズム検査装置100のディスプレイ101およびタッチパネル102を用いたが、この第2実施形態では、スマートフォン200のディスプレイ201およびタッチパネル202を用いている。
【0158】
この第2実施形態では、検査対象者の皮膚表面への装着が必須な機能(皮膚への光の照射、皮膚画像の撮像、現在位置の検出)については、皮膚画像撮像装置250で実現するようにし、その他の機能については、スマートフォン200(既存の情報処理装置)で実現するようにしている。このため、この第2実施形態では、皮膚画像撮像装置250を最小限の構成とすることができ、皮膚画像撮像装置250に係るコストを削減することができる。
【0159】
すなわち、この第2実施形態によれば、スマートフォン200との通信機能を有する皮膚画像撮像装置250を用意し、
図12に示した機能を実現するためのアプリケーションをスマートフォン200に導入するだけで、それ以外に特別な装置およびアプリケーションを必要とすることなく、第1実施形態と同様の概日リズムの検査を行うことが可能な概日リズム検査システム10を構築することができる。
【0160】
なお、第2実施形態では、特許請求の範囲に記載の情報処理装置の一例としてスマートフォン200を用いたが、本発明はこれに限らない。例えば、特許請求の範囲に記載の情報処理装置として、パーソナルコンピュータ、携帯電話機等の他の情報処理装置を用いてもよい。
【0161】
また、上記第2実施形態において、表示デバイスおよび入力デバイスとして、スマートフォン200のディスプレイ201およびタッチパネル202を用いているが、本発明はこれに限らない。例えば、表示デバイスおよび入力デバイスとして、皮膚画像撮像装置250のディスプレイおよびタッチパネルを用いるようにしてもよい。
【0162】
また、上記第2実施形態において、皮膚画像撮像装置250の現在位置検出装置110によって皮膚画像撮像装置250の現在位置を検出するようにしているが、本発明はこれに限らない。例えば、スマートフォン200の現在位置検出装置(例えば、GPS)によってスマートフォン200の現在位置を検出するようにしてもよい。皮膚画像撮像装置250およびスマートフォン200は同一の検査対象者によって所持されるため、皮膚画像撮像装置250が示す現在位置と、スマートフォン200が示す現在位置とは、同位置だからである。
【0163】
〔第3実施形態〕
〔概日リズム検査システム10’の構成例〕
以下、本発明の第3実施形態を図面に基づいて説明する。
図13は、本発明の第3実施形態に係る概日リズム検査システム10’の構成例を示す図である。概日リズム検査システム10’は、複数の概日リズム検査装置100’およびサーバ300を備えて構成されている。
【0164】
各概日リズム検査装置100’は、第1実施形態の概日リズム検査装置100と同様に、検査対象者の皮膚表面に取り付けられて、検査対象者の概日リズムを検査する装置である。各概日リズム検査装置100’は、所定の無線通信方式(例えば、Wi−Fi、Bluetooth(登録商標)等)または有線により、通信ネットワーク12(例えば、無線LAN、携帯電話網、インターネット等)に接続することが可能である。これにより、各概日リズム検査装置100’は、通信ネットワーク12を介してサーバ300にアクセスすることが可能である。
【0165】
〔概日リズム検査システム10’の機能構成〕
図14は、本発明の第3実施形態に係る概日リズム検査システム10’の機能構成例を示すブロック図である。
図14に示す第3実施形態の概日リズム検査装置100’は、通信部128、認識パターン取得部129および検査結果データ出力部130をさらに備える点、および、概日リズム推定部124の代わりに概日リズム推定部124’を備える点で、
図7に示した第1実施形態の概日リズム検査装置100と異なる。
【0166】
通信部128は、通信ネットワーク12を介したサーバ300との通信を制御する。認識パターン取得部129は、通信部128を介して、概日リズムの認識パターンをサーバ300から取得する。特に、認識パターン取得部129は、設定情報記憶部111を参照することによって検査対象者のプロファイルおよび装着部位を特定し、特定された検査対象者のプロファイルおよび装着部位に対応する概日リズムの認識パターンをサーバ300から取得する。
【0167】
認識パターン取得部129が取得した概日リズムの認識パターンは、概日リズム推定部124’へ供給される。概日リズム推定部124’は、第1実施形態で説明した方法により概日リズムを推定する機能(第1の推定機能)に加えて、概日リズムの認識パターンを用いた方法により概日リズムを推定する機能(第2の推定機能)を有している。なお、概日リズムの認識パターンを用いて概日リズムを推定する第2の推定機能の詳細については、
図16を用いて後述する。
【0168】
検査結果データ出力部130は、通信部128を介して、検査結果データをサーバ300へ出力する。この検査結果データには、撮像装置104によって撮像された皮膚画像、概日リズム推定部124’によって推定された概日リズム、位相ずれ算出部126によって算出された位相ずれ、設定情報記憶部111に記憶されている検査対象者のプロファイル情報(年齢、性別、ID、身長、体重等)、設定情報記憶部111に記憶されている装着部位の設定情報等が含まれている。
【0169】
一方、サーバ300は、通信部301、検査結果データ取得部311、検査結果データ格納部312、認識パターン生成部313および認識パターン格納部314を備える。通信部301は、通信ネットワーク12を介した概日リズム検査装置100’との通信を制御する。
【0170】
検査結果データ取得部311は、複数の概日リズム検査装置100’の各々から、通信部301を介して、検査結果データを取得する。検査結果データ格納部312は、検査結果データ取得部311が取得した複数の概日リズム検査装置100’の検査結果データを格納する。検査結果データ取得部311が取得する検査結果データには、検査対象者の概日リズムが含まれている。したがって、検査結果データ取得部311は、特許請求の範囲に記載の概日リズム取得部として機能する。
【0171】
認識パターン生成部313は、検査結果データ格納部312に格納されている複数の概日リズムの波形(但し、後述する認識パターンを用いる方法(
図16参照)によって推定された概日リズムを除く)を補正して合成することにより、概日リズムの認識パターンを生成する。認識パターン格納部314は、認識パターン生成部313によって生成された概日リズムの認識パターンを格納する。なお、複数の概日リズムの波形を合成して概日リズムの認識パターンを生成する方法の詳細については、
図15を用いて後述する。
【0172】
特に、認識パターン生成部313は、複数の概日リズムの波形を、プロファイルの項目(例えば、年齢、性別等)および装着部位ごとに合成することにより、概日リズムの認識パターンを、プロファイルの項目および装着部位ごとに生成する。これに応じて、認識パターン格納部314は、プロファイルの項目および装着部位ごとの、複数の概日リズムの認識パターンを格納する。
【0173】
認識パターン格納部314に格納された概日リズムの認識パターンは、通信部301を介して、適宜(例えば、定期的に、または、概日リズム検査装置100’から要求を受信したとき等)概日リズム検査装置100’へ送信される。概日リズム検査装置100’では、認識パターン取得部129が、通信部128を介して、この概日リズムの認識パターンを取得する。これにより、概日リズム推定部124’は、この概日リズムの認識パターンを用いて、概日リズムを推定することが可能となる。
【0174】
(概日リズムの認識パターンの生成)
図15は、本発明の第3実施形態に係るサーバ300による概日リズムの波形の合成例を示す図である。サーバ300の認識パターン生成部313は、複数の概日リズム検査装置100’から取得した複数の概日リズムの波形(体毛の成長速度の経時的変化の波形)を補正して合成することで、概日リズムの認識パターンを生成する。
【0175】
例えば、認識パターン生成部313は、
図15に示すように、複数の概日リズム検査装置100’から得られた複数の概日リズムの波形を補正して合成することにより、概日リズムの認識パターンを生成する。この時、認識パターン生成部313は、極端に成長速度の大きい者や小さい者の概日リズムの波形がそのまま合成されてしまうことを防ぐために、
図15に示すように、複数の概日リズムの波形の各々に対し、ピーク(すなわち、体毛の成長速度のピーク)の高さを互いに揃えるような係数を乗じて、複数の概日リズムの波形を合成する。また、認識パターン生成部313は、各個人の体内時刻には個人差があることをふまえ、
図15に示すように、複数の概日リズムのピーク位置(時間軸方向の位置)を互いに揃えて、複数の概日リズムの波形を合成する。
【0176】
これにより、認識パターン生成部313は、24時間以上概日リズム検査装置100’を身体に装着して検査を継続しなくても、24時間未満の検査により得られる体毛の成長速度の波形から概日リズムの推定が可能となるような認識パターンを生成する。
【0177】
なお、認識パターン生成部313は、後述する認識パターンを用いる方法(
図16参照)によって推定された概日リズムを合成の対象から除く。このような概日リズムは、既存の認識パターンと同じ波形を有するものであり、新たな認識パターンを生成する際の標本とするのには適切でないからである。
【0178】
第3実施形態の概日リズム検査システム10’は、上記したような概日リズムの認識パターンの生成処理を、適宜(例えば、定期的に、管理者によって指示されたタイミング等)繰り返し行うことにより、概日リズムの認識パターンを、徐々に標準的な概日リズムへと収束させることができる。例えば、概日リズム検査装置100’の基準パターン取得部129は、適宜(例えば、定期的に、ユーザによって指示されたタイミング等)最新の概日リズムの認識パターンを、通信部128を介してサーバ300から取得することができる。これにより、概日リズム検査装置100’の概日リズム推定部124’は、サーバ300から取得した最新の概日リズムの認識パターンを用いて、24時間未満の検査により得られる体毛の成長速度の波形から概日リズムの推定を行うことができる。
【0179】
(概日リズムの認識パターンを用いた概日リズムの推定方法)
図16は、本発明の第3実施形態に係る認識パターンを用いた概日リズムの推定方法の一例を示す図である。上述したように、概日リズム推定部124’は、サーバ300から取得した概日リズムの認識パターンを用いることにより、24時間未満の検査により得られる体毛の成長速度の波形から概日リズムの推定を行うことができる。
【0180】
具体的には、概日リズム推定部124’は、24時間が経過するまでの間に、一部の測定値(体毛の成長速度)の波形が得られれば、その一部の測定値の波形を、サーバ300から取得した概日リズムの認識パターンの波形と照合することにより、その認識パターンから検査対象者の概日リズムを推定することができる。
【0181】
例えば、
図16(a)は、概日リズムの認識パターンの一例である。この
図16(a)に示すように、体毛の成長速度の変化量が所定の上限基準値(図中th−hi)となるのは、24時間のうち2回(図中t1,t2)だけである。また、体毛の成長速度の変化量が所定の下限基準値(図中th−low)となるのは、24時間のうち2回(図中t3,t4)だけである。
【0182】
そこで、概日リズム推定部124’は、体毛の測定を24時間以上行わなくとも、
図16(b)に示すように、一部の測定結果から体毛の成長速度の変化量を表すグラフを部分的に生成し、その部分的なグラフから所定の上限基準値(または下限基準値)となる2つの時刻t1’,t2’(またはt3’,t4’)を特定する。
【0183】
そして、概日リズム推定部124’は、
図16(c)に示すように、それら2つの時刻t1’,t2’(またはt3’,t4’)を基準点として、2つの時刻t1’,t2’(またはt3’,t4’)に認識パターン(検査対象者のプロファイルおよび装着位置に応じた認識パターン)における所定の上限基準値(または下限基準値)となる2つの時刻t1,t2(またはt3,t4)が重なるように、部分的なグラフに認識パターンを重ね合わせることにより、当該重ね合わせ後の認識パターンの波形を、検査対象者の概日リズムとして推定する。これにより、概日リズム推定部124’は、推定された概日リズムの波形から、そのピーク(体毛の成長速度のピーク)となる時刻に、体内時刻CT=0を設定することができる。
【0184】
なお、上述の部分的なグラフの2つの時刻t1’,t2’の間隔と、上述の概日リズムの認識パターンの2つの時刻t1,t2の間隔とが異なる場合、以下の第1または第2の方法により、部分的なグラフに認識パターンを重ね合わせることが好ましい。
【0185】
(第1の方法)
2つの時刻t1,t2の中間点に、2つの時刻t1’,t2’の中間点が重なりあうように、部分的なグラフに認識パターンを重ね合わせる。この場合、認識パターンの周期を変えないで、当該認識パターンから概日リズムを推定することができる。この第1の方法は、2つの時刻t1’,t2’の間隔に応じて概日リズムの周期を変更しない場合に有効な方法である。
【0186】
(第2の方法)
2つの時刻t1,t2の間隔と2つの時刻t1’,t2’との間隔が等しくなるように、認識パターンの波形を時間軸方向に拡大または縮小して、部分的なグラフに認識パターンを重ね合わせる。この場合、認識パターンの周期が拡大または縮小されて、当該認識パターンから概日リズムを推定することができる。この第2の方法は、2つの時刻t1’,t2’の間隔に応じて概日リズムの周期を変更する場合に有効な方法である。
【0187】
以上説明したように、第3実施形態の概日リズム検査システム10’によれば、複数の概日リズム検査装置100’から取得した複数の概日リズムが合成されてなる概日リズムの認識パターンを、複数の概日リズム検査装置100’の各々が得ることができる。そして、複数の概日リズム検査装置100’の各々は、標準的な概日リズムの認識パターンを用いて、24時間未満の検査により得られる体毛の成長速度の波形から概日リズムの推定を行うことができる。特に、概日リズム検査システム10’は、検査対象者のプロファイルおよび装着部位に対応する概日リズムの認識パターンを用いるため、より高精度に概日リズムの推定を行うことができる。
【0188】
なお、上記第3実施形態において、概日リズム検査装置100’の一部の機能を、サーバ300が備えるようにしてもよい。例えば、体毛特定部123をサーバ300が備えるようにしてもよい。この場合、サーバ300の体毛特定部123が、概日リズム検査装置100’の画像記憶部112に記憶されている画像を通信部301を介して取得し、取得した画像から体毛を特定する。そして、サーバ300の体毛特定部123は、概日リズム検査装置100’の概日リズム推定部124’に体毛の特定結果を戻すようにしてもよい。
【0189】
また、概日リズム推定部124’をサーバ300が備えるようにしてもよい。この場合、サーバ300の概日リズム推定部124’が、概日リズム検査装置100’(またはサーバ300)の体毛特定部123による体毛の特定結果に基づいて、検査対象者の概日リズムを推定する。そして、サーバ300の概日リズム推定部124’は、概日リズム検査装置100’の位相ずれ算出部126および表示制御部127に概日リズムの推定結果を戻すようにしてもよい。
【0190】
また、位相ずれ算出部126をサーバ300が備えるようにしてもよい。この場合、サーバ300の位相ずれ算出部126が、概日リズム検査装置100’(またはサーバ300)の概日リズム推定部124’による概日リズムの推定結果に基づいて、概日リズムの位相ずれを算出する。そして、サーバ300の位相ずれ算出部126は、概日リズムの位相ずれの算出結果を、概日リズム検査装置100’の表示制御部127に戻すようにしてもよい。
【0191】
また、体毛特定部123および概日リズム推定部124’をサーバ300が備えるようにしてもよい。この場合、概日リズム推定部124’が、概日リズム検査装置100’の位相ずれ算出部126および表示制御部127に概日リズムの推定結果を戻すようにしてもよい。
【0192】
また、体毛特定部123、概日リズム推定部124’および位相ずれ算出部126をサーバ300が備えるようにしてもよい。この場合、位相ずれ算出部126が、概日リズムの位相ずれの算出結果を、概日リズム検査装置100’の表示制御部127に戻すようにしてもよい。
【0193】
〔追加機能〕
上記第3実施形態において、以下の追加機能を設けるようにしてもよい。すなわち、サーバ300が、検査対象者による回答が入力されている問診票データを、外部から取得できるようにする。例えば、サーバ300の検査結果データ取得部311が、検査対象者の概日リズム検査装置100’から、問診票データを含んだ検査結果データを取得する。そして、認識パターン生成部313が、概日リズムの波形を合成して認識パターンを生成する際に、各検査対象者の問診票データに基づいて、合成対象とする概日リズムを選別する。
【0194】
例えば、認識パターン生成部313が、問診票に入力された検査対象者の海外渡航歴に基づき、検査対象者が時差のある国間を移動してから2週間以内であることを特定した場合、その検査対象者は時差障害(時差ボケ)をきたしている可能性が高いため、その検査対象者の概日リズムを合成対象から省くようにする。これにより、認識パターン生成部313によって生成される認識パターンの精度を向上させることができる。
【0195】
〔変形例〕
上記各実施形態において、検査対象者の皮膚表面に対する本体100Aの固定方法は、ベルト100Bによる固定に限らない。例えば、概日リズム検査装置100Aにベルト100Bを設けずに、医療用テープ等により、本体100Aを検査対象者の皮膚表面に貼付する方法を採用してもよい。この場合、検査対象者の手および足以外の部分にも、本体100Aを取り付けることができるようになる。また、検査対象者に取り付けられる既存の検査機器(例えば、経皮的酸素飽和度モニタ、腕時計型アクチグラム等)に本体100Aを組み込むようにしてもよい。この場合、既存の検査機器を検査対象者に取り付けることにより、同時に、本体100Aを検査対象者の皮膚表面に固定することができるようになる。
【0196】
また、上記第1,第3実施形態において、概日リズム検査装置100,100’は、ディスプレイ101に各種情報を表示させるのに代えて、外部機器(例えば、パーソナルコンピュータ、携帯端末等)との無線通信または有線通信を介して、外部機器に各種情報を表示させることが可能であってもよい。この場合、概日リズム検査装置100,100’は、ディスプレイ101を備えない構成とすることもできる。
【0197】
また、上記第1,第3実施形態において、概日リズム検査装置100,100’は、外部機器(例えば、外部コントローラ、パーソナルコンピュータ、携帯端末等)との無線通信または有線通信を介して、外部機器から各種情報の入力操作を行うことが可能であってもよい。この場合、概日リズム検査装置100,100’は、タッチパネル102を備えない構成とすることもできる。
【0198】
また、上記第1,第3実施形態において、画像記憶部112は、概日リズム検査装置100,100’の筐体100a内に設けられていてもよく、また、有線もしくは無線で接続されていれば、筐体100aの外部に設けられていてもよい。また、画像記憶部112として、外部機器(例えば、スマートフォン、パーソナルコンピュータ、携帯電話機等)の記録機能を利用してもよい。
【0199】
また、上記第3実施形態において、認識パターン格納部314に格納される概日リズムの認識パターンは、第3実施形態で説明したように認識パターン生成部313によって生成されたものであってもよいが、標準的な認識パターンとして予め定められたものであってもよい。
【0200】
また、上記各実施形態において、概日リズム検査装置100,皮膚画像撮像装置250,概日リズム検査装置100’の本体100Aには、電源ケーブルを接続するための接続端子が設けられていてもよい。これにより、概日リズム検査装置100,皮膚画像撮像装置250,概日リズム検査装置100’は、接続端子に接続された電源ケーブルから供給された電力によって、バッテリ108を充電したり、自ら動作したりすることができるように構成されてもよい。
【0201】
また、上記各実施形態において、概日リズム検査装置100,皮膚画像撮像装置250,概日リズム検査装置100’の本体100Aに、太陽電池モジュールやペルチェ素子等の発電装置がさらに設けられていてもよい。これにより、バッテリ108の消耗を押さえることができ、バッテリ108の充電間隔または交換間隔を長時間化することができる。
【0202】
その他、上記各実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。