特許第6357068号(P6357068)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6357068
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】ナースコールシステム
(51)【国際特許分類】
   A61G 12/00 20060101AFI20180702BHJP
   H04M 9/00 20060101ALI20180702BHJP
【FI】
   A61G12/00 E
   H04M9/00 B
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-203258(P2014-203258)
(22)【出願日】2014年10月1日
(65)【公開番号】特開2016-67825(P2016-67825A)
(43)【公開日】2016年5月9日
【審査請求日】2017年9月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】591253593
【氏名又は名称】株式会社ケアコム
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【弁理士】
【氏名又は名称】橘 和之
(72)【発明者】
【氏名】瀧澤 諭
【審査官】 山口 賢一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−139183(JP,A)
【文献】 特開2014−144209(JP,A)
【文献】 特開2014−100260(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0229249(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 12/00
H04M 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナースコール子機からの1回の呼び出しに対応して複数の携帯端末に対する呼び出しを順番に行う順次呼出機能を備えたナースコールシステムであって、
上記ナースコール子機からの呼び出しに対して上記携帯端末で応答が行われた場合に、その呼び出しと応答に関する呼出履歴情報を呼出履歴記憶部に記憶させる情報記録部と、
上記呼出履歴記憶部に記憶された上記呼出履歴情報に基づいて、上記ナースコール子機からの呼び出しに対して上記携帯端末で応答が行われるまでの時間が所定値よりも長くなる遅応答時間帯を検出する遅応答時間帯検出部と、
上記ナースコール子機からの呼び出しに対して上記複数の携帯端末に対する呼び出しを実行する呼出制御部とを備え、
上記呼出制御部は、上記遅応答時間帯検出部により検出された遅応答時間帯以外において上記ナースコール子機から呼び出しがあった場合、第1の所定時間ずつ間隔を空けて上記複数の携帯端末に対する呼び出しを順番に行う一方、上記遅応答時間帯検出部により検出された遅応答時間帯において上記ナースコール子機から呼び出しがあった場合、n台目(n≧2)以降の携帯端末に対する呼び出しを、上記第1の所定時間ずつ間隔を空けて順番に行う場合に比べて呼び出しまでの時間が短くなるようにして行うことを特徴とするナースコールシステム。
【請求項2】
上記呼出制御部は、上記遅応答時間帯検出部により検出された遅応答時間帯において上記ナースコール子機から呼び出しがあった場合、上記第1の所定時間よりも短い第2の所定時間ずつ間隔を空けて上記複数の携帯端末に対する呼び出しを順番に行うことを特徴とする請求項1に記載のナースコールシステム。
【請求項3】
上記遅応答時間帯検出部が上記遅応答時間帯を検出する際に求めた、上記ナースコール子機からの呼び出しに対して上記携帯端末で応答が行われるまでの時間に基づいて、上記第2の所定時間の値を決定することを特徴とする請求項2に記載のナースコールシステム。
【請求項4】
上記呼出制御部は、上記遅応答時間帯検出部により検出された遅応答時間帯において上記ナースコール子機から呼び出しがあった場合、1台目の携帯端末に対する呼び出しを開始してから上記第1の所定時間または当該第1の所定時間よりも短い第2の所定時間を経過しても応答がないとき、2台目以降の携帯端末を一斉に呼び出すことを特徴とする請求項1に記載のナースコールシステム。
【請求項5】
ナースコール子機からの1回の呼び出しに対応して複数の携帯端末に対する呼び出しを順番に行う順次呼出機能を備えたナースコールシステムであって、
上記ナースコール子機からの呼び出しに対して上記携帯端末で応答が行われた場合に、その呼び出しと応答に関する呼出履歴情報を呼出履歴記憶部に記憶させる情報記録部と、
上記呼出履歴記憶部に記憶された上記呼出履歴情報に基づいて、上記ナースコール子機からの呼び出しに対して上記携帯端末で応答が行われるまでの時間が所定値よりも長くなる遅応答時間帯を検出する遅応答時間帯検出部と、
上記ナースコール子機からの呼び出しに対して上記複数の携帯端末に対する呼び出しを実行する呼出制御部とを備え、
上記呼出制御部は、上記遅応答時間帯検出部により検出された遅応答時間帯以外において上記ナースコール子機から呼び出しがあった場合、第1の所定時間ずつ間隔を空けて上記複数の携帯端末に対する呼び出しを順番に行う一方、上記遅応答時間帯検出部により検出された遅応答時間帯において上記ナースコール子機から呼び出しがあった場合、上記第1の所定時間または当該第1の所定時間よりも短い第2の所定時間ずつ間隔を空けて1台目からn−1(n≧3)台目の携帯端末に対する呼び出しを順番に行い、上記n−1台目の携帯端末からも応答がないとき、n台目以降の携帯端末を一斉に呼び出すことを特徴とするナースコールシステム。
【請求項6】
上記遅応答時間帯検出部が上記遅応答時間帯を検出する際に求めた、上記ナースコール子機からの呼び出しに対して上記携帯端末で応答が行われるまでの時間を上記第1の所定時間で除算して得られる商の値に基づいて、上記nの値を決定することを特徴とする請求項5に記載のナースコールシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナースコールシステムに関し、特に、ナースコール子機からの1回の呼び出しに対応して複数の携帯端末を順番に呼び出す順次呼出機能を備えたナースコールシステムに用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、病院や介護施設などでは、患者や被介護者(以下、単に「患者」と言う)と医師や看護師、介護師(以下、単に「看護師」と言う)との連絡に、ナースコールシステムが用いられている。近年のナースコールシステムは、看護師が携帯するための携帯端末を備え、患者のナースコール子機から看護師の携帯端末に対して呼び出しを行うことができるようになされたものが多くなっている。
【0003】
携帯端末を採用したナースコールシステムにおいて、一人の患者からの呼び出しで複数の携帯端末を鳴らし、最初に携帯端末で応答した看護師が患者と通話できるようになされたシステムも提供されている。ここで、あらかじめ登録した優先順位が高い順に複数の携帯端末を順番に鳴らしていくものが存在する(例えば、特許文献1参照)。このような順次呼出の仕組みは、例えば一人の患者を複数の看護師でサポートするチームナーシングを行う場合などに有効である。
【0004】
上記特許文献1に記載のナースコールシステムでは、患者が使用するナースコール子機から呼び出しがあると、スライド呼出情報をもとに1回目の携帯端末の呼び出しを行い、その携帯端末において30秒間応答がない場合は、スライド呼出情報をもとに次の携帯端末に対して2回目の呼び出しを行うようになされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−349020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、チームナーシングによる順次呼出を行った場合、呼び出される順番が早い方の携帯端末を使用している看護師が看護業務の最中で応答することができず、呼び出される順番の遅い携帯端末にて応答が行われると、ナースコール子機からの呼び出しに対して看護師が応答するまでの時間が長くなってしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、このような問題を解決するために成されたものであり、複数の携帯端末に対する順次呼出を行う場合において、ナースコール子機からの呼び出しに対して看護師が携帯端末で応答するまでの時間をできるだけ短くすることができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した課題を解決するために、本発明では、ナースコールの呼び出しと応答について記録された呼出履歴情報に基づいて、ナースコール子機からの呼び出しに対して携帯端末で応答が行われるまでの時間が所定値よりも長くなる遅応答時間帯を検出する。そして、当該遅応答時間帯においてナースコール子機から呼び出しがあった場合は、n台目(n≧2)以降の携帯端末に対する呼び出しを、複数の携帯端末に対する呼び出しを第1の所定時間ずつ間隔を空けて順番に行う場合に比べて呼び出しまでの時間が短くなるように制御するようにしている。
【発明の効果】
【0009】
上記のように構成した本発明によれば、ナースコール子機による呼び出しの発生から応答までの時間が所定値より長くなるものとして検出された遅応答時間帯では、ナースコール子機からの呼び出しがあると、それに応じて行われる複数の携帯端末に対する順次呼出の際に、n台目(n≧2)以降の携帯端末を呼び出すまでの時間が通常よりも短くなるように制御される。これにより、呼び出される順番の遅い携帯端末(n台目以降の携帯端末)で応答が行われた場合であっても、ナースコール子機による呼び出しの発生から応答までの時間を従来に比べて短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態によるナースコールシステムの全体構成例を示す図である。
図2】本実施形態によるナースコール親機の機能構成例を示すブロック図である。
図3】本実施形態の呼出履歴記憶部に記憶される呼出履歴情報の一例を示す図である。
図4】本実施形態による遅応答時間帯検出部の動作例を示すフローチャートである。
図5】本実施形態のナースコール親機により行われる複数の携帯端末に対する順次呼出の動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態によるナースコールシステムの全体構成例を示す図である。なお、ここでは病院に設置されるナースコールシステムを例にとって説明するが、本実施形態のナースコールシステムは、病院に設置されるものに限定されない。例えば、介護施設等に設置される場合にも適用可能である。
【0012】
図1に示すように、本実施形態のナースコールシステムは、ナースコール親機1、制御機2、廊下灯3、壁埋込形子機4、ハンド形子機5、ハンディナースコール主装置6、構内交換機(PBX)7、無線基地局8および携帯端末(例えば、PHS端末またはスマートフォン)10を備えて構成されている。本実施形態のナースコールシステムは、ナースコール子機(壁埋込形子機4またはハンド形子機5)からの1回の呼び出しに対応して複数の携帯端末10に対する呼び出しを順番に行う順次呼出機能を備えている。
【0013】
ナースコール親機1は、患者(ナースコール子機4,5)からの呼び出しに対する応答の操作または患者(ナースコール子機4,5)の呼び出しの操作を行うためのものであり、例えばナースセンタに設置される。制御機2は、ナースコール親機1と廊下灯3との間に配置され、通話やデータの送受信に関する制御を行う。
【0014】
廊下灯3は、病院の各病室の入口付近外部に設置される。この廊下灯3は、表示装置を備え、病室内の患者名が表示されるとともに、病室内の患者がナースコール子機4,5を用いて看護師の呼び出しを行うと、呼び出しが行われたことが表示されるようになっている。
【0015】
壁埋込形子機4は、ナースコール子機の一例であり、病室の各ベッドサイドの壁に埋め込み設置される。この壁埋込形子機4は、廊下灯3に接続されている。ハンド形子機5は、ナースコール子機の一例であり、壁埋込形子機4に接続される。
【0016】
壁埋込形子機4は、患者が看護師を呼び出すための呼出ボタン、患者が呼び出されたときに応答するための復旧ボタン、患者が看護師と会話を行う際に使用するマイクおよびスピーカ、ハンド形子機5を接続するための接続端子を備えている。ハンド形子機5は、患者が看護師を呼び出すための呼出ボタン、患者が看護師と会話を行う際に使用するマイクおよびスピーカを備えている。
【0017】
ハンディナースコール主装置6は、PBX7を介して、看護師が所持する携帯端末10との間で通話やデータの送受信に関する制御を行う。このハンディナースコール主装置6は、例えば病院内の通信センタに設置され、ナースコール親機1と接続されている。無線基地局8は、携帯端末10との間で通話やデータの無線通信をするためのものであり、PBX7と接続されている。
【0018】
図2は、ナースコール親機1の機能構成例を示すブロック図である。図2に示すように、ナースコール親機1は、その機能構成として、管理情報記憶部11、呼出履歴記憶部12、遅応答時間帯記憶部13、第1のインタフェース部21、第2のインタフェース部22、呼出受付部23、応答受付部24、情報記録部25、遅応答時間帯検出部26および呼出制御部27を備えている。
【0019】
なお、上記各機能ブロック21〜27は、ハードウェア構成、DSP(Digital Signal Processor)、ソフトウェアの何れによっても実現することが可能である。例えばソフトウェアによって実現する場合、上記各機能ブロック21〜27は、実際にはコンピュータのCPU、RAM、ROMなどを備えて構成され、RAMやROM、ハードディスクまたは半導体メモリ等の記録媒体に記憶されたプログラムが動作することによって実現される。
【0020】
管理情報記憶部11は、患者に関する情報(以下、患者情報という)と、看護師に関する情報(以下、看護師情報という)と、ナースコールの呼び出し先に関する情報(以下、呼出先情報という)とをナースコールに関する管理情報として記憶している。
【0021】
本実施形態において患者情報は、例えば、患者の氏名、病室の部屋番号、患者が使用しているベッドを識別するベッド番号、患者を識別するための患者ID、使用するナースコール子機4,5を識別するための子機IDなどの各種情報を含む。また、看護師情報は、例えば、看護師の氏名、看護師を識別するための看護師ID、担当する患者を識別するための患者ID、使用する携帯端末10を識別するための端末IDなどの各種情報を含む。
【0022】
呼出先情報は、患者(例えば、患者ID)と、当該患者からのナースコールに対応して呼び出しを行う担当看護師(例えば、看護師ID)と、当該担当看護師が所持する携帯端末10の端末IDおよび呼出先に関する情報(内線番号など)とを関連付けて記憶したものである。一人の患者を複数の看護師でサポートするチームナーシングを行う場合は、一人の患者と複数の看護師と各看護師が所持する複数の携帯端末10の呼出先とがグルーピングして記憶される。また、複数の携帯端末10に対する順次呼出を行う際の優先順位を定めた情報も記憶される。
【0023】
第1のインタフェース部21は、制御機2との間で通信を行うものである。第2のインタフェース部22は、ハンディナースコール主装置6との間で通信を行うものである。
【0024】
呼出受付部23は、ナースコール子機4,5からの呼び出しを受け付けて、所定の報知処理を行う。すなわち、呼出受付部23は、ナースコール子機4,5から廊下灯3および制御機2を介して送られてくる呼出信号を、第1のインタフェース部21を介して受信する。そして、受信した呼出信号によって伝えられる子機情報(呼び出しを行ったナースコール子機4,5を特定するための子機IDなど)に基づいて、管理情報記憶部11を参照することにより、呼び出しを行った患者を特定する。
【0025】
そして、呼出受付部23は、特定した患者に関する患者情報の一部(例えば、氏名、部屋番号、ベッド番号など)を管理情報記憶部11から読み出し、患者情報のポップアップ画面を生成して図示しないディスプレイに表示させる。また、呼出受付部23は、ナースコール親機1の図示しないスピーカから呼出音を鳴らして看護師に対する報知を行う。
【0026】
また、呼出受付部23は、上述のように特定した患者の患者情報(例えば、呼び出しを行ったナースコール子機4,5を特定する子機IDまたは患者を特定する患者の氏名などの情報)を情報記録部25に供給し、呼出履歴記憶部12に記憶させる。また、呼出受付部23は、ナースコール子機4,5から受信した呼出信号を、上記のように特定した患者情報と共に呼出制御部27に供給し、携帯端末10への呼び出しを指示する。
【0027】
呼出受付部23からの指示を受けた呼出制御部27は、呼出受付部23により特定された患者に対応する担当看護師の呼出先情報を管理情報記憶部11から読み出し、当該読み出した呼出先情報に基づいて、チームナーシングのためにグルーピングされた複数の携帯端末10に対する呼び出しを実行する。呼出制御部27は、具体的には、携帯端末10に対する呼び出しの実行を指示する呼出信号を、第2のインタフェース部22からハンディナースコール主装置6を介してPBX7に送信することにより、携帯端末10に対する呼び出しを実行する。ここで、呼出制御部27は、グルーピングされた複数の携帯端末10に対する呼び出しを、一定の遅延時間を置いて順次実行するように制御する。
【0028】
PBX7は、ナースコール親機1からハンディナースコール主装置6を介して受信する呼出信号に応じて、呼出先として指定された複数の携帯端末10に対する呼び出しを実行する。PBX7からの呼び出しに対して、何れかの携帯端末10にて応答が行われると、応答が行われた携帯端末10から通話開始要求の応答信号が送られてくる。PBX7は、応答信号を受信すると、ハンディナースコール主装置6を介してナースコール親機1に対して応答信号を送信する。この後、ナースコール親機1からハンディナースコール主装置6およびPBX7を介して携帯端末10に通話開始承諾の承認信号が送られて、通話が開始される。
【0029】
応答受付部24は、ナースコール親機1または携帯端末10からの応答を受け付けて、所定の応答処理を行う。例えば、看護師が患者からの呼び出しに応答するためにナースコール親機1のハンドセットをオフフックすると、オフフックされたことを応答受付部24が受け付けて、上述した呼出受付部23による報知処理および呼出制御部27による呼び出し動作を停止させる。
【0030】
また、看護師が患者からの呼び出しに応答するために携帯端末10をオフフックすると、応答信号がハンディナースコール主装置6を介してナースコール親機1に送信され、第2のインタフェース部22を介して応答受付部24に供給される。応答受付部24は、この応答信号を受けて、上述の呼出受付部23による報知処理および呼出制御部27による呼び出し動作を停止させる。
【0031】
また、応答受付部24は、携帯端末10から送られてくる応答信号を受信した場合、その受信した応答信号によって伝えられる端末情報(携帯端末10を特定するための端末IDあるいは内線番号などの情報)に基づいて、管理情報記憶部11を参照することにより、応答を行った看護師を特定する。そして、応答受付部24は、特定した看護師の看護師情報(例えば、端末IDまたは看護師の氏名などの情報)を情報記録部25に供給し、呼出履歴記憶部12に記憶させる。
【0032】
情報記録部25は、上述したように、ナースコール子機4,5からの呼び出しに対してナースコール親機1または携帯端末10で応答が行われた場合に、その呼び出しと応答に関する呼出履歴情報を呼出履歴記憶部12に記憶させる。すなわち、情報記録部25は、患者によるナースコール子機4,5からの呼び出しが行われたとき、つまり、呼出受付部23がナースコール子機4,5からの呼び出しを受け付けたとき、呼び出しを行った患者の患者情報を呼出日時(呼出受付部23が呼出信号を受信した日時)と共に呼出履歴記憶部12に記憶させる。
【0033】
また、情報記録部25は、患者によるナースコール子機4,5からの呼び出しに対して看護師がナースコール親機1または携帯端末10で応答したとき、つまり、応答受付部24がナースコール親機1または携帯端末10での応答を受け付けたとき、応答を行った看護師の看護師情報を応答日時(応答受付部24が応答信号を受信した日時)と共に呼出履歴記憶部12に記憶させる。このとき、情報記録部25は、先に記憶しておいた呼び出しに関する情報に関連付けて応答に関する情報を呼出履歴記憶部12に記憶させる。
【0034】
図3は、呼出履歴記憶部12に記憶される呼出履歴情報の一例を示す図である。図3に示す例では、各レコードに対して、呼び出しに関する履歴情報31と、その呼び出しに対応して行われた応答に関する履歴情報32とが個々の呼び出し毎に記憶されている。呼び出しに関する履歴情報31には、呼び出しを行った患者が使用するナースコール供給4,5を特定する子機IDと、呼出日時とが含まれている。また、応答に関する履歴情報32には、応答を行った看護師が使用する携帯端末10を特定する端末IDと、応答日時とが含まれている。なお、ナースコール親機1で応答が行われた場合は、応答日時のみが記憶され、端末IDは記憶されない。
【0035】
遅応答時間帯検出部26は、呼出履歴記憶部12に記憶された呼出履歴情報に基づいて、ナースコール子機4,5からの呼び出しに対して携帯端末10で応答が行われるまでの時間が所定値よりも長くなる時間帯を検出する。ここで、呼び出しの発生から応答までの時間(以下、「呼出−応答時間」という)は、呼出履歴記憶部12記憶されている応答日時から呼出日時を減算することによって求めることができる。また、時間帯の単位は、1時間単位、2時間単位、3時間単位など、あらかじめ任意の値に設定することが可能である。
【0036】
例えば、時間帯の単位を3時間に設定した場合、遅応答時間帯検出部26は、ある一定期間(例えば、直近の1週間)の呼出履歴情報を対象として、0時〜3時、3時〜6時、・・・、21時〜24時(0時)の各時間帯毎に、呼出−応答時間の平均値を算出する。そして、その算出した呼出−応答時間の平均値が所定値よりも長くなるか否かを各時間帯毎に判定することにより、呼出−応答時間が所定値よりも長くなる時間帯(これを「遅応答時間帯」という)を検出する。遅応答時間帯記憶部13は、遅応答時間帯検出部26により検出された遅応答時間帯を、次回また遅応答時間帯を検出するまでの一定期間(例えば、1週間)記憶しておく。
【0037】
上述の呼出制御部27は、遅応答時間帯検出部26により検出された遅応答時間帯以外においてナースコール子機4,5から呼び出しがあった場合、複数の携帯端末10に対する順次呼出の時間間隔を定める一定の遅延時間として第1の所定時間(例えば、30秒)を設定し、当該第1の所定時間ずつ間隔を空けて複数の携帯端末10に対する呼び出しを順番に行う。
【0038】
一方、呼出制御部27は、遅応答時間帯検出部26により検出された遅応答時間帯においてナースコール子機4,5から呼び出しがあった場合、一定の遅延時間として第1の所定時間よりも短い第2の所定時間(例えば、20秒)を設定し、当該第2の所定時間ずつ間隔を空けて複数の携帯端末10に対する呼び出しを順番に行う。
【0039】
図4および図5は、上記のように構成した本実施形態によるナースコールシステムの動作例を示すフローチャートである。このうち図4は、遅応答時間帯検出部26の動作例を示すフローチャートであり、ナースコール親機1の電源がオンの間は常時実行されている。
【0040】
遅応答時間帯検出部26は、遅応答時間帯を検出するタイミングとなったか否かを判定する(ステップS1)。ここでは、遅応答時間帯を検出するインターバル期間として設定された一定期間(例えば、1週間)が前回の検出時から経過したか否かを判定する。ここで、遅応答時間帯の検出タイミングとなっていない場合は、ステップS1の判定を繰り返す。
【0041】
一方、遅応答時間帯の検出タイミングになった場合、遅応答時間帯検出部26は、呼出履歴記憶部12に記憶されている直近1週間分の呼出履歴情報に基づいて、呼出−応答時間が所定値よりも長くなる遅応答時間帯を検出する(ステップS2)。そして、今回検出した遅応答時間帯を、前回検出して遅応答時間帯記憶部13に記憶しておいた遅応答時間帯に代えて新たに記憶する(ステップS3)。その後、処理はステップS1に戻る。
【0042】
図5は、ナースコール親機1による複数の携帯端末10に対する順次呼出の動作例を示すフローチャートである。図5に示すフローチャートは、ナースコール子機4,5にて呼び出しが行われたときに開始する。
【0043】
まず、呼出受付部23は、ナースコール子機4,5からの呼び出しを受け付けたか否かを判定する(ステップS11)。ここで、呼出受付部23がナースコール子機4,5からの呼び出しを受け付けていない場合は、ステップS11の判定を繰り返す。
【0044】
一方、呼出受付部23がナースコール子機4,5からの呼び出しを受け付けた場合、呼出受付部23は、受信した呼出信号によって伝えられる子機情報に基づいて、管理情報記憶部11を参照することにより、呼び出しを行った患者を特定し、ナースコール親機1にて所定の報知処理を実行する(ステップS12)。また、情報記録部25は、呼び出しに使われたナースコール子機4,5の子機IDと呼出日時とを呼出履歴記憶部12に記憶させる(ステップS13)。
【0045】
次に、呼出制御部27は、遅応答時間帯記憶部13を参照し、呼び出しのあった時間が遅応答時間帯に該当するか否かを判定する(ステップS14)。ここで、呼び出しのあった時間が遅応答時間帯に該当しない場合、呼出制御部27は、順次呼出の時間間隔を定める一定の遅延時間として第1の所定時間(例えば、30秒)を設定する(ステップS15)。一方、呼び出しのあった時間が遅応答時間帯に該当する場合、呼出制御部27は、一定の遅延時間として第2の所定時間(例えば、20秒)を設定する(ステップS16)。
【0046】
そして、呼出制御部27は、管理情報記憶部11を参照し、優先順位の高い方からi番目(i=1,2,・・・。初期状態ではi=1)の携帯端末10に対する呼び出しを実行する(ステップS17)。その後、応答受付部24は、ナースコール親機1または携帯端末10からの応答を受け付けたかを否かを判定する(ステップS18)。
【0047】
応答受付部24が応答を受け付けていない場合、呼出制御部27は、呼び出しを開始してから一定の遅延時間(ステップS15で設定された第1の所定時間またはステップS16で設定された第2の所定時間の何れか)が経過したか否かを判定する(ステップS19)。一定の遅延時間がまだ経過していない場合、処理はステップS18に戻り、携帯端末10に対する呼び出しを続行する。
【0048】
一方、応答がないまま一定の遅延時間が経過した場合、呼出制御部27は、次に優先順位の高い携帯端末10の呼び出しに遷移するため、i=i+1として(ステップS20)、処理はステップS17に戻る。そして、次の携帯端末10に対する呼び出しを実行する。
【0049】
呼出制御部27がこのような順次呼出を実行しているとき、応答受付部24がナースコール親機1または携帯端末10からの応答を受け付けると(ステップS18:Yes)、呼出受付部23はナースコール親機1の報知処理を停止し、呼出制御部27は携帯端末10の呼出処理を停止する(ステップS21)。
【0050】
そして、情報記録部25は、応答に使われた携帯端末10の端末IDおよび応答日時(ナースコール親機1で応答された場合は応答日時のみ)を呼出履歴記憶部12に記憶させる(ステップS22)。これにより、1つのナースコールに関する図5のフローチャートに示す処理を終了する。
【0051】
以上詳しく説明したように、本実施形態では、ナースコールの呼び出しと応答について呼出履歴記憶部12に記憶された呼出履歴情報に基づいて、呼出−応答時間が所定値よりも長くなる遅応答時間帯を検出する。そして、当該遅応答時間帯においてナースコール子機4,5から呼び出しがあった場合は、順次呼出の時間間隔を定める一定の遅延時間を通常の第1の所定時間(30秒)よりも短い第2の所定時間(20秒)に設定するようにしている。
【0052】
このように構成した本実施形態によれば、呼出−応答時間が所定値よりも長いことが呼出履歴情報により示されている遅応答時間帯では、2台目以降の携帯端末10を呼び出すまでの時間間隔が短く設定されるので、優先順位が低く呼び出される順番の遅い携帯端末10で応答が行われた場合であっても、呼出−応答時間を従来に比べて短くすることができる。
【0053】
なお、上記実施形態では、第2の所定時間をあらかじめ定めた固定の時間とする例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、遅応答時間帯検出部26が、遅応答時間帯を検出する際に算出した呼出−応答時間の平均値に基づいて、第2の所定時間の値を決定するようにしてもよい。
【0054】
すなわち、上記実施形態では、各時間帯毎に算出した呼出−応答時間の平均値が1つの所定値を超えている場合に、該当の時間帯が遅応答時間帯であると判定するだけであった。これに対し、例えば、第1の所定値から第mの所定値(m≧2)を設定し、呼出−応答時間が一番小さい第1の所定値を超えている場合に遅応答時間帯であると判定するとともに、どの所定値を超えるかによって第2の所定時間の値を変えるようにすることが可能である。ここで、より大きい所定値を超えるほど、第2の所定時間を短くするのが好ましい。
【0055】
また、上記実施形態では、遅応答時間帯においてナースコール子機4,5から呼び出しがあった場合に、n台目(n≧2)以降の携帯端末10に対する呼び出しを、第1の所定時間ずつ間隔を空けて順番に行う通常の場合に比べて呼び出しまでの時間が短くなるようにして行う動作の一例として、第1の所定時間よりも短い第2の所定時間ずつ間隔を空けて複数の携帯端末10に対する呼び出しを順番に行う例を説明した。しかし、本発明はこの例に限定されない。
【0056】
例えば、呼出制御部27は、遅応答時間帯検出部26により検出された遅応答時間帯においてナースコール子機4,5から呼び出しがあった場合、1台目の携帯端末10に対する呼び出しを開始してから第1の所定時間を経過しても応答がないとき、2台目以降の携帯端末10を一斉に呼び出すようにしてもよい。あるいは、1台目の携帯端末10に対する呼び出しを開始してから第2の所定時間を経過しても応答がないとき、2台目以降の携帯端末10を一斉に呼び出すようにしてもよい。
【0057】
または、呼出制御部27は、遅応答時間帯検出部26により検出された遅応答時間帯においてナースコール子機4,5から呼び出しがあった場合、第1の所定時間または第2の所定時間ずつ間隔を空けて1台目からn−1(n≧3)台目の携帯端末10に対する呼び出しを順番に行い、n−1台目の携帯端末10からも応答がないとき、n台目以降の携帯端末10を一斉に呼び出すようにしてもよい。
【0058】
この場合において、例えば遅応答時間帯検出部26が、遅応答時間帯を検出する際に算出した呼出−応答時間の平均値を第1の所定時間で除算して得られる商の値に基づいて、nの値を決定するようにしてもよい。例えば、ある遅応答時間帯における呼出−応答時間の平均値が96秒で、第1の所定時間が30秒に設定されている場合、「96÷30=3、余り6」なので、nの値を3に設定する。つまり、2台目までは30秒の間隔を空けて順番に呼び出しを行い、60秒を経過した時点で、3台目以降の携帯端末10を一斉に呼び出すようする。なお、計算した商の値+1をnの値(上述の例ではn=4)として設定するようにしてもよい。
【0059】
また、上記実施形態では、各時間帯における呼出−応答時間の平均値を算出し、この平均値が所定値を超えている時間帯を遅応答時間帯として検出する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、各時間帯における呼出−応答時間の最大値を求め、この最大値が所定値を超えている時間帯を遅応答時間帯として検出するようにしてもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、図3のように呼び出しに係る子機IDと呼出日時および応答に係る端末IDと応答日時とを呼出履歴情報として記憶しておき、応答日時と呼出日時との差分から呼出−応答時間を算出する例について説明したが、呼出履歴情報の記憶のし方はこれに限定されない。例えば、応答日時の代わりに、呼出日時からの経過時間(すなわち、呼出−応答時間)を記憶させるようにしてもよい。
【0061】
また、上記実施形態では、ナースコール親機1が複数の携帯端末10に対する順次呼出を制御する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、ナースコール親機1の呼出制御部27による制御に従って、PBX7が複数の携帯端末10に対する順次呼出を制御するようにしてもよい。あるいは、管理情報記憶部11、呼出履歴記憶部12、遅応答時間帯記憶部13、情報記録部25、遅応答時間帯検出部26および呼出制御部27の各機能を制御機2に持たせるようにしてもよい。
【0062】
その他、上記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその精神、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0063】
1 ナースコール親機
2 制御機
4 壁埋込形子機(ナースコール子機)
5 ハンド形子機(ナースコール子機)
7 PBX
10 携帯端末
11 管理情報記憶部
12 呼出履歴記憶部
13 遅応答時間帯記憶部
25 情報記録部
26 遅応答時間帯検出部
27 呼出制御部
図1
図2
図3
図4
図5