【実施例】
【0014】
実施例に係る物品棚装置の障害物検知装置につき、
図1から
図5を参照して説明する。
【0015】
図1及び
図2に示されるように、主に書庫や倉庫等では、物品棚装置4が配置されている。この物品棚装置4は、床面上に平行に延びる2本のレール5,5と、レール5,5の長手方向両端部に固定的に載置された固定棚2A,2Bと、固定棚2A,2Bの間でレール5,5に沿って移動可能に載置された電動式の移動棚3A,3Bと、によって主に構成されている。この物品棚装置4は、レール5,5の長手寸法が、固定棚2A,2B及び移動棚3A,3Bの移動方向の寸法の合計寸法よりも所定の長さ長くなっており、固定棚2A,2B及び移動棚3A,3Bの間をそれぞれ選択的に離間させて作業空間を形成できるようになっている。尚、本実施例では、固定棚2Aと移動棚3Aとの間を作業空間S1とし、移動棚3A,3Bの間を作業空間S2として説明する。
【0016】
移動棚3A,3Bの底面には図示しない車輪が設けられており、車輪を介してレール5,5上に自走可能に載置されている。また、移動棚3A,3Bには、前記車輪と連動する電動式の可逆モータ16,16が各々内蔵されている。当該可逆モータ16,16は、物品棚装置4の駆動制御を行う駆動制御装置13,13に接続されており、可逆モータ16,16を正転または逆転させることによって、各移動棚3A,3Bがレール5,5に沿って移動できるようになっている。尚、レール5,5自体の長さ寸法や、各棚の幅等を調整することにより、配置可能な固定棚及び移動棚の数量や作業空間の数量及び幅などを適宜変更できるようになっている。
【0017】
これら固定棚2A,2B及び移動棚3A,3Bは、書籍等の物品を陳列できる上下複数段の棚段を有する棚部6,6,…を有しており、棚部6,6,…の側面には、着脱可能に取付けられる化粧パネル7,7,…が設けられている。各棚部6,6,…と各化粧パネル7,7,…との間にはそれぞれ間隙が形成されており、当該間隙内には、後述する各種装置が組み込まれている。
【0018】
固定棚2Aの化粧パネル7の外面には、物品棚装置4全体の電源スイッチ8と、タッチパネル方式で操作可能なモニター9と、が設けられ、固定棚2Bの化粧パネル7の外面には、前記手動操作ボタン14のみ設けられている。移動棚3A,3Bの化粧パネル7,7の外面には、短手方向両端側に前記手動操作ボタン14,15がそれぞれ設けられている。
【0019】
また、物品棚装置4は、棚間に形成された作業空間内の障害物を検知する障害物検知装置1を備えている。
図2に示されるように、障害物検知装置1は、固定棚2Aの化粧パネル7内に配置された検知部11と、各棚の下部にそれぞれ設けられるセンサユニット21,22,31,32と、移動棚3A,3Bにそれぞれ設けられたロータリーエンコーダ17,17と、から主に構成されている。
【0020】
固定棚2Aのセンサユニット21は、移動棚3A側に指向する距離センサ2a〜2cと、センサ制御装置21aとから成り、同様に固定棚2Bのセンサユニット22は、移動棚3B側に指向する距離センサ2d〜2fと、センサ制御装置22aとから成る。
【0021】
移動棚3Aのセンサユニット31は、固定棚2A側を指向する距離センサ3a〜3cと、移動棚3B側を指向する距離センサ3d〜3fと、センサ制御装置31aとから成り、また同様に移動棚3Bのセンサユニット32は、移動棚3A側を指向する距離センサ3g〜3iと、固定棚2B側を指向する距離センサ3h〜3mと、センサ制御装置32aとから成る。
【0022】
これら各センサ制御装置21a,22a,31a,32aには、所定時間毎に各距離センサ2a〜2c,2d〜2f,3a〜3c,3d〜3fをそれぞれ動作させる動作プログラムが組み込まれており、各距離センサは、この動作プログラムに従って所定時間毎に動作するようになっている。
【0023】
各距離センサは、図示しない音波出力部と音波入力部を有した超音波式の距離センサであり、音波出力部から出力された音波が対向する棚に反射し音波入力部に戻ってくる時間を出力として検知部11に送るようになっている。各棚の長手方向に検知範囲が広い超音波センサを距離センサに利用することで、少ない数の距離センサで各棚間のほぼ全ての領域に超音波を出力させることができる。また、対向し合う各距離センサは、各棚の長手方向にずれて配置されており、対向し合う各距離センサの出力の干渉が抑えられている。
【0024】
センサユニット21の距離センサ2a〜2cとセンサユニット31の距離センサ3a〜3cとは、検知部11内により、対向し合う固定棚2Aと移動棚3Aとの間の出力値を計測するセンサグループαとしてグループ化されて管理されている。また、センサユニット31の距離センサ3d〜3fとセンサユニット32の距離センサ3g〜3iとは、移動棚3Aと移動棚3Bとの間の出力値を計測するセンサグループβとしてグループ化され、センサユニット32の距離センサ3h〜3mとセンサユニット22の距離センサ2d〜2fとは、移動棚3Bと固定棚2Bとの間の出力値を計測するセンサグループγとしてグループ化されている。
【0025】
検知部11は、各移動棚3A,3Bの移動方向すなわち可逆モータ16,16の正転逆転に基づき動作させるセンサグループα,β,γを適宜選択するようになっているため、必要のないセンサグループα,β,γを常時動作させる必要が無く、省電力化することができる。
【0026】
また、検知部11は、ロータリーエンコーダ17,17、前記電源スイッチ8及び前記モニター9、センサユニット21,22,31,32と接続されているとともに、ここでは図示しないが、手動操作ボタン14,15と有線又は無線により接続されている。更に、検知部11は、駆動制御装置13に駆動信号及び停止信号を送る送信部12を有している。尚、ここでは図示しないが、検知部11と駆動制御装置13とは有線又は無線により接続されている。
【0027】
ロータリーエンコーダ17,17及び検知部11は、各棚間距離を測定できる棚間距離測定装置を構成するものである。ロータリーエンコーダ17,17は、各可逆モータ16,16の回転方向及び回転量をそれぞれ読み取ることができ、その可逆モータ16,16が回転する度に回転方向及び回転量を出力として検知部11に送るようになっており、検知部11は、このロータリーエンコーダ17,17から随時受け取る出力を基に移動棚3A,3Bの座標を算出し、移動棚3A,3Bの座標と固定棚2A,2Bの座標とから各棚間距離を随時算出している。尚、該棚間距離の算出処理については後述にて説明する。
【0028】
次に、物品棚装置4の各種動作処理について説明する。尚、ここでは、移動棚3Aの動作処理態様のみを説明し、移動棚3Bの動作処理態様の説明を省略する。
【0029】
図2に示されるように、移動棚3Aの停止状態において手動操作ボタン15が押下されると、その押下信号が検知部11に送られ、検知部11はその押下信号に基づき、距離センサ3d〜3iを動作させる。前記距離センサ3d〜3iからセンサユニット21,22,31,32を介して得られた出力は検知部11に送られ、検知部11は当該距離センサ3d〜3iからの出力と、前記ロータリーエンコーダ17,17の出力により算出された移動棚3A,3Bの棚間距離t3と、に基づき、作業空間S2内の障害物18を検知する検知処理を行う。
【0030】
この検知処理により作業空間S2内に障害物18が無いことが確認されると、検知部11の送信部12から駆動制御装置13に駆動信号が送られ、駆動制御装置13が前記可逆モータ16を駆動(ここでは正転とする)させ、移動棚3Aを手動操作ボタン15側方向(矢印方向)に移動させる処理を行う。ところで、移動棚3Aの停止状態において前記検知処理により作業空間S2内の障害物18を検知した場合には、検知部11は駆動制御装置13への駆動信号を送信しない処理を行うとともに、動作エラーメッセージを前記モニター9に表示させる処理を行うようになっている。
【0031】
尚、移動棚3Aが正常に移動した際には、検知部11は随時算出される移動棚3A,3Bの棚間距離t3に基づいて送信部12が駆動制御装置13に停止信号を送り、移動棚3Aを適正な位置で停止させる通常停止処理を行うようになっている。
【0032】
次に、各棚間距離の算出処理について
図3を用いて詳しく説明する。
図3に示されるように、検知部11は、固定棚2Aにおける移動棚3A側の端面2Aaから固定棚2Bにおける移動棚3B側の端面2Baまでの距離を固定棚2A,2Bの棚間距離T1として予め記憶している。さらに、検知部11は、移動棚3Aの幅W1及び移動棚3Bの幅W2をそれぞれ記憶している。
【0033】
また、検知部11は、移動棚3Aの端面3Aaが固定棚2Aの端面2Aaと当接した地点を移動棚3Aの原点位置Z1として記憶している。前述のようにロータリーエンコーダ17は、可逆モータ16が正転方向(矢印+方向)及び逆転方向(矢印−方向)に回転する度にその回転量を検出部11に送るようになっており、検出部11は、前記ロータリーエンコーダ17からの出力に基づき、移動棚3Aが原点位置Z1から正転方向に進んだ距離を算出する処理を行う。検知部11は、上記処理で算出された距離を固定棚2A及び移動棚3Aの棚間距離t1として記憶する。
【0034】
また、検知部11は、移動棚3Bの端面3Baが固定棚2Bの端面2Baと当接した地点を移動棚3Bの原点位置Z2として記憶しており、上記と同様の処理により移動棚3Bが原点位置Z2から逆転方向に進んだ距離を算出し、その距離を固定棚2B及び移動棚3Bの棚間距離t2として記憶する。
【0035】
尚、検知部11は、棚間距離t1と、棚間距離t2と、移動棚3Aの幅W1と、移動棚3Bの幅W2と、の合計を全体の棚間距離T1から引くことにより移動棚3A及び移動棚3Bの棚間距離t3が求められる。すなわち、次のような式により求められる。
棚間距離t3=棚間距離T1−(棚間距離t1+棚間距離t2+棚幅W1+棚幅W2)
【0036】
続いて検知処理について
図4を例に取り、
図5を用いて詳しく説明する。
図4は、移動棚3Aを固定棚2A方向(矢印方向)に移動させる場合において、停止状態で手動操作ボタン14(
図1参照)が押下された時点では、検知処理によって障害物が検知されず、移動棚3Aが移動を開始した後に、棚部6から作業空間S1に障害物18が落下した場合を例示する図である。
【0037】
検知処理は、移動棚が停止状態にある状態で手動操作ボタンが押下された後、移動棚の移動が完了するまで継続して行われる。前述したように手動操作ボタン14が押下され、移動棚3Aが移動を開始しているため、検知部11は検知処理におけるステップSa1において各棚間距離の算出処理を行う。次いでステップSa2において、前記ステップSa1で算出された固定棚2A及び移動棚3Aの棚間距離t1を各距離センサの出力と比較するための閾値として決定する。
【0038】
次いで検知部11はセンサグループαを所定間隔で動作させ、センサグループα内の全ての距離センサ2a〜2c及び距離センサ3a〜cからの出力を取得する。検知部11は、この距離センサ2a〜2c及び距離センサ3a〜cから受け取った各出力を検知処理におけるステップSa3において、距離値にそれぞれ変換する。
【0039】
次いで、ステップSa4においてセンサグループα内全ての距離センサ2a〜2c及び距離センサ3a〜cの距離値と前記閾値とをそれぞれ比較する。
【0040】
続いて、ステップSa5において、前記閾値に対する距離値の差分が許容誤差(30mm)以上となる距離センサが1つ以上存在するか否かを判断する。前記閾値に対する距離値の差分が許容誤差以上となる距離センサが1つ以上存在すると判定した場合、ステップSa6において、その判定情報に基づいて作業空間S1内に障害物18があると判定し、障害物18の存在の検知処理を完了する。
【0041】
検知部11は、この検知物の検知に基づき送信部12から駆動制御装置13に停止処理を送信する非常停止処理を行う。
【0042】
このように、閾値は、ロータリーエンコーダ17,17を用いることで距離センサ2a〜2c及び距離センサ3a〜cとは異なる方法で算出されており、この閾値と、センサグループα内全ての距離センサ2a〜2c及び距離センサ3a〜cの各々の距離値とを比較することで、作業空間S1内に障害物18があると検知できるため、特に移動棚の移動走行中等、棚間の距離が定まらない場合にあっても、確実に障害物18を検知することができる。さらに、例えば固定棚2Aと移動棚3Aとの長手方向に全ての距離センサ2a〜2c及び距離センサ3a〜3cに跨るような長いまたは大きな障害物が作業空間S1内にある場合などに有効である。
【0043】
また、前記閾値に対する距離値の差分が許容誤差30mm以上となる距離センサが1つ以上存在する場合に、検知部11が障害物18を検知することとなるため、各距離センサ2a〜2c及び距離センサ3a〜cの測定誤差による誤検知を避けて、確実に障害物18の検知を行うことができる。
【0044】
前述のように、センサ制御装置21a,31aは、前記出力プログラムにより所定時間毎に距離センサ2a〜2c及び距離センサ3a〜cを出力させているため、作業空間S1内に障害物18が無いと判断された場合には、ステップSa1に移行して当該検知処理を繰り返す。このように所定時間毎に検知処理が繰り返されるため、移動棚3Aが移動走行中であっても確実に障害物18を検知できる。
【0045】
尚、本実施例では、棚間距離測定装置としてロータリーエンコーダ17,17を用いた態様について説明したが、例えば、人の往来や物が邪魔にならない各棚の上端に超音波センサを設け、その超音波センサにより得られた出力を棚間の距離と対応する閾値として決定し、その閾値と各距離センサとの出力とを比較するようにしてもよい。
【0046】
また本実施例では、送信部12が検知部11に内蔵された態様となっているが、検知部11と別体の送信部とを化粧パネル7内に設け、検知部11と該送信部とを接続するようにしてもよい。
【0047】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0048】
例えば、前記実施例では、距離センサとして超音波センサを利用していたが、これに限られず、対向する棚までの距離を測定できるものであれば代用してもよい。
【0049】
また、距離センサの動作は、手動操作ボタン14,15の押下及び移動棚の移動走行中に限らず、常時動作させておく態様であってもよい。
【0050】
尚、検知部11は、送信部12を必ずしも備えていなくてもよく、例えば、検知部11により障害物18を検知した際にその検知情報をモニター9に表示させるような態様であってもよい。更に尚、前記検知情報を報知する手段としては、点灯ランプなどであってもよい。
【0051】
また、上記実施例では、距離センサ2a〜2c及び距離センサ3a〜cの出力値をそれぞれ移動棚3A,3B間の距離に対応させて距離値に実際に変換していたが、これに限られず、各距離センサの出力値を移動棚2A,3Aとの距離として認識して変換させることなくそのまま利用しても構わない。また、上記実施例では、障害物として女性あるいは子供の足首の検出を想定して許容誤差を30mm以上と設定した様態について説明したが、障害物として脚立の足のような小さい物の検出を想定する場合は許容誤差を20mm以上としたり、あるいは棚に収納する物品のサイズや形状、棚のサイズや形状や材質などに応じて許容誤差を適宜変更することができる。
【0052】
また、センサグループα、β、γは、対向する棚の距離センサをグループ化する場合について説明したが、センサグループは、一方の棚の距離センサのみをグループ化するものであってもよい。この場合、
図2に示される物品棚装置4の場合、距離センサ2a〜2c、距離センサ3a〜3c、距離センサ3d〜3f、距離センサ3g〜3i、距離センサ3j〜3m及び距離センサ2d〜fからなる6つのセンサグループから構成される。
【0053】
また、移動棚3A,3Bは、可逆モータ16,16により移動する電動式移動棚である態様について説明したが、例えば、手動式で移動できるようなものであってもよい。