特許第6357077号(P6357077)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社沖データの特許一覧

<>
  • 特許6357077-媒体搬送装置及び画像形成装置 図000002
  • 特許6357077-媒体搬送装置及び画像形成装置 図000003
  • 特許6357077-媒体搬送装置及び画像形成装置 図000004
  • 特許6357077-媒体搬送装置及び画像形成装置 図000005
  • 特許6357077-媒体搬送装置及び画像形成装置 図000006
  • 特許6357077-媒体搬送装置及び画像形成装置 図000007
  • 特許6357077-媒体搬送装置及び画像形成装置 図000008
  • 特許6357077-媒体搬送装置及び画像形成装置 図000009
  • 特許6357077-媒体搬送装置及び画像形成装置 図000010
  • 特許6357077-媒体搬送装置及び画像形成装置 図000011
  • 特許6357077-媒体搬送装置及び画像形成装置 図000012
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6357077
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】媒体搬送装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 20/34 20060101AFI20180702BHJP
   B41J 15/16 20060101ALI20180702BHJP
【FI】
   B65H20/34
   B41J15/16
【請求項の数】8
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-221415(P2014-221415)
(22)【出願日】2014年10月30日
(65)【公開番号】特開2016-88640(P2016-88640A)
(43)【公開日】2016年5月23日
【審査請求日】2017年3月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】591044164
【氏名又は名称】株式会社沖データ
(74)【代理人】
【識別番号】100082740
【弁理士】
【氏名又は名称】田辺 恵基
(74)【代理人】
【識別番号】100174104
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 康一
(72)【発明者】
【氏名】畠山 元延
【審査官】 佐藤 秀之
(56)【参考文献】
【文献】 特開平01−133854(JP,A)
【文献】 特開平08−034549(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0125820(US,A1)
【文献】 特開2014−094825(JP,A)
【文献】 特開2004−210422(JP,A)
【文献】 特開平04−189257(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 19/00−21/02
B65H 23/00−23/34
B65H 26/00−27/00
B41J 15/00−15/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体を所定の搬送経路に沿って案内する第1案内部と、
前記第1案内部から離れた位置において前記媒体を前記搬送経路に沿って案内する第2案内部と、
前記第1案内部及び前記第2案内部を結ぶ仮想的な直線である仮想直線と交差する交差方向に沿って移動可能であり、前記仮想直線から離れた退避位置から当該仮想直線の反対側へ向かう方向へ付勢され、前記媒体を案内する移動案内部と、
前記移動案内部を前記退避位置に移動させる退避移動部と、
前記移動案内部を前記退避位置に維持する退避維持部と、
前記退避維持部による前記移動案内部に対する前記退避位置への維持を解消させる維持解消部と
を具え、
前記退避移動部は、
前記移動案内部を前記退避位置の近傍にある準備位置へ移動させる準備移動部と、
前記移動案内部を前記準備位置から前記退避位置へ移動させる最終移動部と
を具えることを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項2】
前記媒体を前記移動案内部から引き離す方向へ進行させる媒体進行部
をさらに具え、
前記準備位置は、前記媒体が前記仮想直線上にあるときに前記移動案内部が当該仮想直線の前記退避位置側で当該媒体に当接する位置であり、
前記準備移動部は、前記媒体進行部により前記媒体を進行させ前記仮想直線に沿って張架させることにより、前記移動案内部を前記準備位置に移動させる
ことを特徴とする請求項に記載の媒体搬送装置。
【請求項3】
前記媒体進行部は、回転する軸体の周囲に前記媒体を巻き付けて巻き取る巻取軸である
ことを特徴とする請求項に記載の媒体搬送装置。
【請求項4】
媒体を所定の搬送経路に沿って案内する第1案内部と、
前記第1案内部から離れた位置において前記媒体を前記搬送経路に沿って案内する第2案内部と、
前記第1案内部及び前記第2案内部を結ぶ仮想的な直線である仮想直線と交差する交差方向に沿って移動可能であり、前記仮想直線から離れた退避位置から当該仮想直線の反対側へ向かう方向へ付勢され、前記媒体を案内する移動案内部と、
前記移動案内部を前記退避位置に移動させる退避移動部と、
前記移動案内部を前記退避位置に維持する退避維持部と、
前記退避維持部による前記移動案内部に対する前記退避位置への維持を解消させる維持解消部と
を具え、
前記退避維持部は、永久磁石であり、
前記移動案内部は、磁性体を有する
ことを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項5】
前記維持解消部は、前記永久磁石のうち前記移動案内部に向けられた磁極と反対の磁極を前記移動案内部側に発生させる電磁石である
ことを特徴とする請求項に記載の媒体搬送装置。
【請求項6】
前記退避移動部は、前記永久磁石のうち前記移動案内部に向けられた磁極と同一の磁極を前記移動案内部側に発生させる電磁石である
ことを特徴とする請求項に記載の媒体搬送装置。
【請求項7】
所定の退避条件が満たされた場合、前記移動案内部を前記退避移動部により前記退避位置に移動させて前記退避維持部により当該退避位置に維持させ、所定の退避解除条件が満たされた場合、前記退避維持部による前記退避位置への維持を前記維持解消部により解消させるよう制御する制御部
をさらに具えることを特徴とする請求項1又は請求項4に記載の媒体搬送装置。
【請求項8】
前記媒体に画像を形成する画像形成部と、請求項1乃至の何れかに記載の媒体搬送装置とを有する画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は媒体搬送装置及び画像形成装置に関し、例えば電子写真式プリンタ(以下、これをプリンタとも呼ぶ)に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、プリンタは、LEDヘッド等の露光装置によりトナー像を形成し、これを用紙等の媒体に転写し、さらに定着器によって用紙にトナー像を定着させることにより、この用紙の紙面に画像を形成するものが広く普及している。
【0003】
またプリンタのなかには、いわゆる長尺紙のように長手方向に極めて長い用紙に画像を形成する画像形成部と、画像を形成した用紙を効率的に収納するための収納部とを有するものがある。この収納部は、例えば用紙を搬送する搬送部と、搬送された用紙を回転する軸の周側面に巻き付けて巻き取る巻取部とを有している。
【0004】
ところでプリンタでは、画像形成部における画像の品質や収納部における用紙の巻取状態を良好なものにする観点から、搬送中の用紙に所定の張力を生じさせるようになっている。プリンタでは、画像形成部及び収納部において用紙の搬送速度を揃えることが望ましいものの、様々な要因により差異が生じることがある。
【0005】
そこでプリンタのなかには、収納部内の搬送部に、用紙の搬送経路を動的に伸縮させる走行張力安定装置を組み込むことにより、用紙の搬送速度や張力を安定させるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
この走行張力安定装置は、例えば用紙を案内するローラを2個設け、これらのローラの間に、この用紙の搬送方向と交差する方向に沿って移動する移動ローラを設け、この移動ローラにより用紙の一面側から他面側へ向けて力を印加するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭62−51544号公報(第2図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、かかる構成のプリンタでは、例えば用紙の交換や各部の保守のような保守作業を行う場合等に、移動ローラを操作することにより、当該移動ローラから用紙に対する力の印加を一時的に解除させ、またこの保守作業が終了した段階で、再び移動ローラから用紙に対し力を加えさせる状態に復元する必要がある。
【0009】
しかしながらこのような移動ローラに対する操作は、操作そのものが煩雑であり、本来の目的である保守作業の効率を低減させる恐れがある。また、保守作業の終了時に作業員が移動ローラを復元する操作を失念する恐れがあり、このような場合、プリンタは用紙の搬送速度や張力を安定させることができず、例えば用紙における皺の発生や巻取状態の悪化等を引き起こす可能性がある、という問題があった。
【0010】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、簡易な構成により、媒体に関する保守作業の効率向上と、媒体の搬送動作の安定性確保とを両立させ得る媒体搬送装置及び画像形成装置を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる課題を解決するため本発明の媒体搬送装置においては、媒体を所定の搬送経路に沿って案内する第1案内部と、第1案内部から離れた位置において媒体を搬送経路に沿って案内する第2案内部と、第1案内部及び第2案内部を結ぶ仮想的な直線である仮想直線と交差する交差方向に沿って移動可能であり、仮想直線から離れた退避位置から当該仮想直線の反対側へ向かう方向へ付勢され、媒体を案内する移動案内部と、移動案内部を退避位置に移動させる退避移動部と、移動案内部を退避位置に維持する退避維持部と、移動案内部に対する退避維持部による退避位置への維持を解消させる維持解消部とを設け、さらに退避移動部には、移動案内部を退避位置の近傍にある準備位置へ移動させる準備移動部と、移動案内部を準備位置から退避位置へ移動させる最終移動部とを設けるようにした。
また本発明の媒体搬送装置においては、媒体を所定の搬送経路に沿って案内する第1案内部と、第1案内部から離れた位置において媒体を搬送経路に沿って案内する第2案内部と、第1案内部及び第2案内部を結ぶ仮想的な直線である仮想直線と交差する交差方向に沿って移動可能であり、仮想直線から離れた退避位置から当該仮想直線の反対側へ向かう方向へ付勢され、媒体を案内する移動案内部と、移動案内部を退避位置に移動させる退避移動部と、移動案内部を退避位置に維持する退避維持部と、移動案内部に対する退避維持部による退避位置への維持を解消させる維持解消部とを設け、さらに退避維持部は、永久磁石であり、移動案内部は、磁性体を有するようにした。
【0012】
また本発明の画像形成装置においては、媒体に画像を形成する画像形成部と上述した媒体搬送装置とを設けるようにした。
【0013】
これにより、保守作業等が行われる場合に、移動案内部を退避位置に移動させると共にその状態を維持でき、さらにその維持を解消して元の状態に戻させることができるので、保守作業者等により手作業で移動案内部を退避位置へ移動させ、或いはその状態を維持し、さらには元の状態に戻させる必要が無い。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、簡易な構成により、媒体に関する保守作業の効率向上と、媒体の搬送動作の安定性確保とを両立させ得る媒体搬送装置及び画像形成装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】画像形成装置の構成を示す略線的ブロック図である。
図2】用紙収納部の構成を示す略線図である。
図3】収納制御部の構成を示す略線的ブロック図である。
図4】用紙の巻取を示す略線図である。
図5】退避準備位置への移動を示す略線図である。
図6】退避位置への移動を示す略線図である。
図7】退避位置からの復帰を示す略線図である。
図8】用紙収納制御処理手順を示す略線的フローチャートである。
図9】用紙巻取処理手順を示す略線的フローチャートである。
図10】退避処理手順を示す略線的フローチャートである。
図11】復帰処理手順を示す略線的フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、発明を実施するための形態(以下実施の形態とする)について、図面を用いて説明する。
【0017】
[1.プリンタの構成]
図1に示すように、画像形成装置1は、カラー用電子写真式プリンタであり、長手方向の長さが極めて長い用紙Pに対し、所望のカラー画像を印刷するようになっている。画像形成装置1は、大きく分けて、全体を統括制御する統括制御部2と、用紙Pを供給する用紙供給部3と、供給された用紙Pに対し画像を形成する画像形成部4と、画像が形成された用紙Pを収納する用紙収納部5とにより構成されている。
【0018】
統括制御部2は、図示しない通信処理部を介して、パーソナルコンピュータのような上位装置(図示せず)と無線又は有線により接続されている。また統括制御部2は、上位装置から印刷対象のカラー画像を表す画像データが与えられると共に当該カラー画像の印刷が指示されると、これに従い各部に種々の命令を送信することにより制御する。
【0019】
用紙供給部3は、図示しないローラに用紙Pを巻き付けた状態で保持すると共に、図示しない搬送機構を有しており、このローラを回転させ搬送機構を適宜動作させることにより、用紙Pを所定の搬送速度で繰り出し、画像形成部4へ供給する。画像形成部4は、例えば用紙Pを内部で搬送しながら、画像データに応じたトナー像を形成し、これを用紙Pに転写し、さらにこのトナー像を用紙Pに定着させることにより、当該用紙Pに画像を形成する。この画像形成部4は、画像を形成した用紙Pを搬送して用紙収納部5へ供給する。
【0020】
用紙収納部5は、図2に示すように、用紙Pを搬送する部品として、概ね前方から後方へ向けてガイドローラ11、ダンサローラ12、ガイドローラ13及び巻取軸14が設けられている。ガイドローラ11、ダンサローラ12及びガイドローラ13は、何れも中心軸を左右方向(前後方向及び上下方向と交差する方向)に向けた円柱状に形成されており、それぞれ中心軸に挿通され、何れも自在に回転する。またダンサローラ12は、ガイドローラ11及び13よりも低い位置に配置されている。
【0021】
媒体進行部としての巻取軸14は、中心軸を左右方向に向けた円柱状に形成されており、モータ15から伝達される駆動力により矢印R1方向、すなわち図2における反時計回りに回転する。この巻取軸14は、その周側面に用紙Pを巻き付けて回転することにより、当該用紙Pを巻き取るようになっている。
【0022】
かかる構成により用紙収納部5は、前方の画像形成部4から用紙Pが供給されると、この用紙Pをガイドローラ11の上面、ダンサローラ12の下面及びガイドローラ13の上面に順次当接させながら、すなわち当該用紙Pを上下から交互に挟むようにして、後方の巻取軸14へ向けて案内する。巻取軸14は、回転することによりこの用紙Pを巻き取っていく。
【0023】
さらにダンサローラ12は、ローラ移動部16に支持されている。ローラ移動部16は、キャリッジ17及びダンサローラガイド18により構成されている。キャリッジ17は、ダンサローラ12の中心軸が取り付けられており、当該ダンサローラ12を回転可能に保持している。またキャリッジ17は、例えば鉄などの磁性体により構成されている。ダンサローラガイド18は、上下方向に長く形成されており、キャリッジ17を上下方向へ移動可能に支持している。ダンサローラガイド18は、その上端をガイドローラ11及び13の上端同士を結ぶ仮想的な仮想直線L1よりも上側に位置させ、且つキャリッジ17及びダンサローラ12を当該仮想直線L1よりも上側に到達させ得るようになっている。
【0024】
ローラ移動部16は、ダンサローラガイド18に対しキャリッジ17を上下方向へ移動させることにより、ダンサローラ12を上下方向へ移動させることができる。ダンサローラ12は、自重により下方へ降下し、用紙Pに下面を支えられるようにして、ガイドローラ11及び13よりも下側に位置する。これによりダンサローラ12は、画像形成部4と巻取軸14との間で用紙Pに張力を与え、撓みの発生を抑制し、皺や折目、或いは用紙Pの詰まり等を生じることなく、安定的に進行させることができる。
【0025】
またダンサローラガイド18の上側には、永久磁石21及びコイル22が設けられている。永久磁石21は、所定の磁極(例えばN極)を下方に向けており、その磁力が中程度に調整されている。具体的に永久磁石21は、例えば磁性体で構成されたキャリッジ17がダンサローラガイド18の上端又はその極近傍にあるときに、当該キャリッジ17を吸着してダンサローラ12を仮想直線L1よりも上側に、当該仮想直線L1からやや引き離した高さまで持ち上げ、その状態を維持する。その一方で永久磁石21は、キャリッジ17が離れているとき、例えばダンサローラ12の下端が仮想直線L1よりも下側に位置しているときに、当該キャリッジ17に磁力を及ぼすことができず、当該キャリッジ17及びこれに支持されるダンサローラ12をダンサローラガイド18に沿って上下方向へ移動させる。
【0026】
コイル22は、中心軸を上下方向に向けた筒状に電線が巻回されており、収納制御部10から供給される電流により磁力を発生させ、電磁石として機能する。このコイル22は、収納制御部10から供給される電流の向きに応じて、下側に発生させる磁極をN極又はS極に切り替えることができる。
【0027】
またローラ移動部16の近傍には、キャリッジ17の高さを検知するための巻取下限位置センサ25、巻取上限位置センサ26及び退避準備位置センサ27(以下、これらをまとめてセンサ群とも呼ぶ)が設けられている。巻取下限位置センサ25は、ダンサローラガイド18における下端近傍に配置されている。巻取上限位置センサ26は、仮想直線L1の下側に配置されている。退避準備位置センサ27は、仮想直線L1の上側に配置されている。巻取下限位置センサ25、巻取上限位置センサ26及び退避準備位置センサ27は、それぞれの位置(高さ)にキャリッジ17があるか否かをそれぞれ検知し、その検知結果を収納制御部10に通知する。
【0028】
このように用紙収納部5は、ガイドローラ11及び13並びにダンサローラ12により用紙Pをガイドしながら搬送して巻取軸14に巻き取ると共に、ローラ移動部16によりダンサローラ12を上下方向へ移動させ得るようになっている。
【0029】
ところで用紙収納部5は、収納制御部10により各部を制御するようになっている。この収納制御部10は、図3に示すように、バス30を介して互いに接続されたCPU(Central Processing Unit)31、ROM(Read Only Memory)32、及びRAM(Random Access Memory)33を中心に構成されている。CPU31は、各種演算処理を実行する。ROM32は、予め各種プログラムや各種データを記憶している。RAM33は、各種情報を一時的に記憶するワークエリアとして使用される。
【0030】
このバス30には、各部分との間で信号を入力及び出力するためのI/O(Input/Output)ポート35が接続されている。I/Oポート35は、巻取下限位置センサ25、巻取上限位置センサ26及び退避準備位置センサ27から供給される検知結果を取得し、これをバス30経由でCPU31に通知する。またI/Oポート35には、インタフェース36、モータ駆動ドライバ37及びコイル駆動ドライバ38が接続されている。
【0031】
インタフェース36は、統括制御部2(図1)と接続されており、I/Oポート35に適した信号形式と当該統括制御部2に適した信号形式とを相互に変換することにより、当該統括制御部2との間で種々の情報を授受する。モータ駆動ドライバ37は、モータ15に電流を供給して回転させ、その駆動力により巻取軸14を矢印R1方向(図2)へ回転させる。コイル駆動ドライバ38は、コイル22に対し直流電流を供給することにより磁力を発生させ、またその直流電流の正負を反転させることにより磁極を反転させる。
【0032】
このように収納制御部10は、巻取下限位置センサ25、巻取上限位置センサ26及び退避準備位置センサ27から検知結果をそれぞれ取得すると共に、モータ15及びコイル22に対する電流の供給を制御するようになっている。
【0033】
[2.用紙の巻取制御]
次に、用紙収納部5において用紙Pを巻取軸14に巻き取る場合の巻取制御について説明する。例えば画像形成装置1の統括制御部2(図1)は、上位装置から印刷の指示や画像データ等を受けると、用紙供給部3に用紙供給開始命令を送信し、画像形成部4に画像形成開始命令及び画像データを送信し、用紙収納部5に用紙収納開始命令を送信する。これに応じて用紙供給部3は、用紙Pを繰り出して画像形成部4に供給する。画像形成部4は、用紙Pを搬送しながら、画像データに応じた画像を当該用紙Pに形成し、これを用紙収納部5に供給する。
【0034】
用紙収納部5では、図2に示したように、画像形成部4から供給される用紙Pが、ガイドローラ11の上側、ダンサローラ12の下側及びガイドローラ13の上側を順次通過して巻取軸14の周囲に形成された巻取済部分の外周面に到達するよう、掛け渡されている。ここで用紙Pは、ある程度の余長を持たされており、その余長に応じてダンサローラ12及びキャリッジ17が仮想直線L1よりも下方に下降している。
【0035】
これを換言すれば、用紙収納部5は、仮にガイドローラ11及び13の間で用紙Pに余長が無ければ、当該用紙Pが仮想直線L1に沿って搬送されるところ、この余長があるため、ダンサローラ12及びキャリッジ17がその自重により仮想直線L1よりも下降し、これに伴って用紙Pに対し常にある程度の張力を持たせている。これにより用紙Pは、ガイドローラ11及び13の間で、仮想直線L1から乖離した搬送経路に沿って搬送される。また収納制御部10は、巻取下限位置センサ25及び巻取上限位置センサ26からの通知を監視している。
【0036】
この用紙収納部5では、巻取軸14に用紙Pを巻き取る場合、画像形成部4から供給される用紙Pの走行速度よりも、巻取軸14に巻き取られる直前における用紙Pの走行速度を高めるよう、当該巻取軸14の回転速度を設定している。このため用紙収納部5では、巻取軸14を回転させて用紙Pを巻き取るに連れて、画像形成部4との間における用紙Pの余長が徐々に縮小され、これに伴ってダンサローラ12がキャリッジ17と共に上昇していく。
【0037】
やがて収納制御部10は、ダンサローラ12及びキャリッジ17が上昇して仮想直線L1の下側(以下これを巻取上限位置Q2とも呼ぶ)に到達すると、巻取上限位置センサ26によりこれを検知する。これに応じて収納制御部10は、モータ15への電流の供給を遮断し、巻取軸14の回転を停止させる。このとき用紙収納部5では、画像形成部4から供給され続けるため、巻取軸14との間の余長が徐々に延長され、これに伴ってダンサローラ12がキャリッジ17と共に下降していく。
【0038】
さらに収納制御部10は、ダンサローラ12及びキャリッジ17が下降してダンサローラガイド18の下端近傍(以下これを巻取下限位置Q1とも呼ぶ)に到達すると、巻取下限位置センサ25によりこれを検知する。これに応じて収納制御部10は、モータ15への電流の供給を再開し、巻取軸14の回転を再開させる。これにより用紙収納部5では、再び用紙Pの余長が徐々に縮小されていく。
【0039】
このように用紙収納部5では、巻取軸14による用紙Pの巻取を断続的に行うことにより、ダンサローラ12及びキャリッジ17を巻取上限位置Q2及び巻取下限位置Q1の間の範囲(以下これを巻取移動範囲とも呼ぶ)で上下に移動させながら、当該用紙Pに一定の張力を持たせつつ、巻取軸14に巻き取っていく。
【0040】
その後、統括制御部2(図1)は、画像データに応じた画像を全て印刷し終えると、用紙供給部3に用紙供給終了命令を送信し、画像形成部4に画像形成終了命令を送信し、用紙収納部5に用紙収納終了命令を送信する。これに応じて用紙供給部3は、用紙Pの供給を停止し、画像形成部4は、用紙Pの搬送を停止し、用紙収納部5は、用紙Pの収納、すなわち巻取軸14に対する当該用紙Pの巻取を停止する。
【0041】
[3.ダンサローラの退避制御]
ところで用紙収納部5では、用紙Pの交換作業が行われる場合に、作業効率の向上等の観点から、ダンサローラ12による当該用紙Pの張力の発生、すなわち下方向への付勢を一時的に中止させることが望ましい。そこで用紙収納部5は、収納制御部10の制御により、用紙交換作業が行われる間はダンサローラ12を巻取移動範囲から一時的に退避させ、またこの用紙交換作業が終了した段階で当該ダンサローラ12を巻取移動範囲内へ戻すようになっている。
【0042】
具体的に画像形成装置1において用紙交換作業が行われる場合、統括制御部2(図1)は、用紙供給部3、画像形成部4及び用紙収納部5に対し用紙交換開始命令を送信する。因みに統括制御部2は、例えば図示しない操作パネルを介して保守作業者等から用紙交換の操作指示を受け付けた場合や、用紙供給部3において用紙Pを全て繰り出した旨の通知を受けた場合等に、この用紙交換開始命令を送信する。このとき用紙供給部3は、用紙Pの供給を停止する。また画像形成部4は、用紙Pの搬送及び新たな画像の形成を停止する。
【0043】
用紙収納部5の収納制御部10は、まず巻取軸14による用紙Pの巻取を継続することにより、ガイドローラ11及び13の間における余長を徐々に短縮させ、これに伴ってダンサローラ12及びキャリッジ17を徐々に上昇させる。このとき収納制御部10は、退避準備位置センサ27からの通知を監視することにより、ダンサローラ12及びキャリッジ17が仮想直線L1の上側に、当該ダンサローラ12の下面を概ね仮想直線L1上に重ねる位置(以下これを退避準備位置Q3と呼ぶ)に到達するのを待ち受ける。
【0044】
やがて収納制御部10は、図5に示すように、用紙Pが張架されてダンサローラ12及びキャリッジ17が準備位置としての退避準備位置Q3に到達したことを退避準備位置センサ27により検知すると、モータ15に対する電流の供給を停止して巻取軸14を停止させる。これによりダンサローラ12及びキャリッジ17は、ダンサローラガイド18の上端よりも僅かに下方に位置し、このときキャリッジ17と永久磁石21の下端との間にある程度の隙間を形成している。因みに永久磁石21の磁力は、退避準備位置Q3にあるダンサローラ12及びキャリッジ17を吸着できない程度に調整されている。
【0045】
次に収納制御部10は、コイル22に所定の極性で電流を供給することにより、その下側に永久磁石21の下側と同極(例えばN極)の磁力を発生させる。換言すれば、このときコイル22は、永久磁石21の磁力を補強するような磁力を発生させる。これによりキャリッジ17は、図6に示すように、コイル22及び永久磁石21に引き寄せられて上昇し、その上面を永久磁石21に当接させて吸着され、ダンサローラ12と共にダンサローラガイド18の上端に到達する。これにより用紙Pは、ダンサローラ12と引き離され、当該ダンサローラ12による張力を発生しない状態となる。以下、このときのダンサローラ12及びキャリッジ17の位置を退避位置Q4と呼ぶ。
【0046】
ここで収納制御部10は、コイル22に対する電流の供給を停止し、当該コイル22による磁力の発生を停止させる。これによりキャリッジ17は、永久磁石21の磁力のみにより吸着され、退避位置Q4に保持される。因みに永久磁石21は、既に吸着しているキャリッジ17及びダンサローラ12をそのまま吸着し続け得るように、その磁力が調整されている。用紙収納部5は、このようにダンサローラ12が用紙Pから引き離され、退避位置Q4にある状態において、保守作業者等により用紙Pの交換作業が行われる。
【0047】
やがて用紙Pの交換作業が終了すると、統括制御部2(図2)は、用紙収納部5に対し用紙交換終了命令を送信する。収納制御部10は、この用紙交換終了命令を受信すると、コイル22に対し、キャリッジ17の吸着時と反対の極性で電流を供給することにより、その下側に永久磁石21の下側と反対の磁極(例えばS極)の磁力を発生させる。換言すれば、このときコイル22は、永久磁石21の磁力を打ち消すような磁力を発生させる。
【0048】
これによりダンサローラ12及びキャリッジ17は、図7に示すように、退避位置Q4から下降し、用紙Pにダンサローラ12の下面を当接させる。このときダンサローラ12は、用紙Pがガイドローラ11及び13の間で張架されていれば、退避準備位置Q3又はその近傍に位置する。また用紙Pの余長が比較的長ければ、巻取上限位置Q2又はその下方まで下降する。
【0049】
また収納制御部10は、所定の待機時間が経過した後、コイル22に対する電流の供給を停止する。このとき永久磁石21は、コイル22による磁力の打ち消しが解消されるため、本来の磁力を再び作用させるものの、キャリッジ17が既に下方に放れた箇所にあるため、当該キャリッジ17を吸着することは無い。
【0050】
その後、用紙収納部5は、再び用紙収納開始命令を受信し、画像形成部4から用紙Pが供給されると、収納制御部10の制御により再び用紙の巻取制御を行い、ダンサローラ12及びキャリッジ17を巻取移動範囲で上下に移動させながら、当該用紙Pに一定の張力を持たせる。
【0051】
このように用紙収納部5の収納制御部10は、統括制御部2からの用紙交換開始命令に従ってダンサローラ12及びキャリッジ17を巻取移動範囲外にある退避位置Q4に移動させ、また用紙交換終了命令に従ってダンサローラ12及びキャリッジ17を退避位置から巻取移動範囲内へ戻すようになっている。
【0052】
[4.用紙収納制御処理手順]
次に、用紙収納部5における用紙Pの巻取及びダンサローラ12の退避を制御する用紙収納制御について説明する。用紙収納部5の収納制御部10は、電源が投入されると、図8に示す用紙収納制御処理手順RT1を開始し、ステップSP1へ移る。ステップSP1において収納制御部10は、モータ15の回転を停止させ、次のステップSP2へ移る。ステップSP2において収納制御部10は、統括制御部2(図2)からの命令を受信し、次のステップSP3へ移る。
【0053】
ステップSP3において収納制御部10は、ステップSP2において受信した命令が用紙交換開始命令であるか否かを判定する。ここで否定結果が得られると、収納制御部10は次のステップSP4へ移り、用紙巻取開始命令であるか否かを判定する。ここで否定結果が得られると、このことは受信した命令が他の内容であったことを表しており、このとき収納制御部10は、再度ステップSP2へ戻り、新たな命令の受信を待ち受ける。
【0054】
一方、ステップSP4において肯定結果が得られると、収納制御部10は次のステップSP5へ移り、サブルーチンとして、図9に示す用紙巻取処理手順RT2を開始し、ステップSP21へ移る。因みに統括制御部2から用紙巻取開始命令を受ける場合、画像形成部4は、画像を形成する処理や用紙収納部5に対する用紙Pの供給を行っている。
【0055】
ステップSP21において収納制御部10は、退避準備位置センサ27(図2)からの通知を基に、ダンサローラ12及びキャリッジ17が退避準備位置Q3にあるか否かを判定する。ここで肯定結果が得られると、収納制御部10は次のステップSP23へ移る。一方、ステップSP21において否定結果が得られると、収納制御部10は次のステップSP22へ移り、巻取上限位置センサ26(図2)からの通知を基に、ダンサローラ12及びキャリッジ17が巻取上限位置Q2にあるか否かを判定する。ここで肯定結果が得られると、収納制御部10は次のステップSP23へ移る。
【0056】
ステップSP23において収納制御部10は、モータ15を停止させ、或いは停止した状態を維持して、次のステップSP26へ移る。これにより収納制御部10は、画像形成部4(図1)から用紙Pが供給されるに連れてガイドローラ11及び13の間における当該用紙Pの余長を増加させ、ダンサローラ12及びキャリッジ17を下降させていくことができる。
【0057】
一方、ステップSP22において否定結果が得られると、収納制御部10は、次のステップSP24へ移り、巻取下限位置センサ25(図2)からの通知を基に、ダンサローラ12及びキャリッジ17が巻取下限位置Q1にあるか否かを判定する。ここで肯定結果が得られると、収納制御部10は次のステップSP25へ移り、モータ15を回転させて、その次のステップSP26へ移る。これにより収納制御部10は、巻取軸14を回転させて用紙Pを巻き取ることができ、このとき用紙Pの走行速度が画像形成部4(図1)からの供給速度よりも高いために、ガイドローラ11及び13の間における当該用紙Pの余長を減少させ、ダンサローラ12及びキャリッジ17を上昇させていくことができる。
【0058】
一方、ステップSP24において否定結果が得られると、このことはダンサローラ12及びキャリッジ17が巻取移動範囲内にあることを表している。このとき収納制御部10は、モータ15に対する制御を特に行わないことにより、ダンサローラ12及びキャリッジ17の下降又は上昇を継続させ、次のステップSP26へ移る。ステップSP26において収納制御部10は、この用紙巻取処理手順RT2を終了して元の用紙収納制御処理手順RT1におけるステップSP5へ戻り、その次のステップSP6へ移る。
【0059】
このように収納制御部10は、図4に示したように、ダンサローラ12及びキャリッジ17を巻取下限位置Q1及び巻取上限位置Q2の間で上下方向に移動させながら、用紙Pを巻取軸14に巻き取っていく。
【0060】
ステップSP6において収納制御部10は、統括制御部2からの命令を受信し、次のステップSP7において、この命令が用紙巻取終了命令であるか否かを判定する。ここで否定結果が得られると、このことは画像形成部4において画像の形成が継続されており、当該画像形成部4から用紙Pが供給され続けることを表している。このとき収納制御部10は、再度ステップSP5へ戻り、用紙巻取処理手順RT2(図9)に従った処理を継続して用紙Pを巻取軸14に巻き取らせる。
【0061】
一方、ステップSP7において肯定結果が得られると、収納制御部10は再度ステップSP1へ戻り、モータ15を停止させることにより、用紙Pの巻取を終了する。その後収納制御部10は、ステップSP2以降の処理を繰り返す。
【0062】
一方、ステップSP3において肯定結果が得られると、収納制御部10は次のステップSP8へ移り、サブルーチンとして、図10に示す退避処理手順RT3を開始し、ステップSP31へ移る。因みに統括制御部2から用紙交換開始命令を受ける場合、画像形成部4は、画像を形成する処理や用紙収納部5に対する用紙Pの供給を停止している。
【0063】
ステップSP31において収納制御部10は、退避準備位置センサ27(図2)からの通知を基に、ダンサローラ12及びキャリッジ17が退避準備位置Q3にあるか否かを判定する。ここで否定結果が得られると、収納制御部10は次のステップSP32へ移り、モータ15を回転させ、又はその回転を継続させることにより、巻取軸14に用紙Pを巻き取らせる。これにより収納制御部10は、ガイドローラ11及び13の間における用紙Pの余長を減少させていき、ダンサローラ12及びキャリッジ17を徐々に上昇させていく。その後収納制御部10は、再度ステップSP31へ戻ることにより、ダンサローラ12及びキャリッジ17が退避準備位置Q3に到達するのを待ち受ける。
【0064】
一方、ステップSP31において肯定結果が得られると、このことは、図5に示したように、ダンサローラ12及びキャリッジ17が退避準備位置Q3に到達したことを表している。このとき収納制御部10は、次のステップSP33へ移り、モータ15を停止させて巻取軸14による用紙Pの巻取を停止させ、その次のステップSP34へ移る。
【0065】
ステップSP34において収納制御部10は、コイル22に対する所定の極性による電流の供給を開始することにより、下側に永久磁石21の下側と同極の磁極(例えばN極)を発生させ、次のステップSP35へ移る。ステップSP35において収納制御部10は、所定時間(例えば5秒間)だけ待機した後、その次のステップSP36へ移る。これにより収納制御部10は、退避準備位置Q3にあるキャリッジ17を永久磁石21に吸着させ、図6に示したように、ダンサローラ12と共に退避位置Q4に移動させること、すなわち当該ダンサローラ12を用紙Pから引き離すことができる。
【0066】
ステップSP36において収納制御部10は、コイル22に対する電流の供給を停止して次のステップSP37へ移る。このとき永久磁石21は、キャリッジ17の吸着を継続し、ダンサローラ12を退避位置Q4に維持する。ステップSP37において収納制御部10は、退避処理手順RT3を終了して元の用紙収納制御処理手順RT1(図8)におけるステップSP8へ戻り、その次のステップSP9へ移る。
【0067】
ステップSP9において収納制御部10は、統括制御部2(図2)からの命令を受信し、次のステップSP10へ移る。ステップSP10において収納制御部10は、ステップSP9において受信した命令が用紙交換終了命令であるか否かを判定する。ここで否定結果が得られると、収納制御部10は再度ステップSP9へ戻り、統括制御部2から用紙交換終了命令の受信を待ち受ける。
【0068】
一方、ステップSP10において肯定結果が得られると、収納制御部10は次のステップSP11へ移り、サブルーチンとして、図11に示す復帰処理手順RT4を開始し、ステップSP41へ移る。因みに統括制御部2から用紙交換終了命令を受けた場合、保守作業者等による用紙Pの交換作業が完了した状態である。
【0069】
ステップSP41において収納制御部10は、コイル22に対する所定の極性による電流の供給を開始することにより、当該コイル22の下側に永久磁石21の下側と逆極の磁極(例えばS極)を発生させ、次のステップSP42へ移る。ステップSP42において収納制御部10は、所定時間(例えば5秒間)だけ待機した後、その次のステップSP43へ移る。これにより収納制御部10は、退避位置Q4にあるキャリッジ17を永久磁石21から引き離し、図7に示したように、ダンサローラ12と共に自重により下方へ下降させ、当該ダンサローラ12の下面を用紙Pに当接させることができる。
【0070】
ステップSP43において収納制御部10は、コイル22に対する電流の供給を停止して次のステップSP44へ移る。このとき永久磁石21は、キャリッジ17から十分に離れているため、当該キャリッジ17に磁力を作用させることは無い。ステップSP44において収納制御部10は、復帰処理手順RT4を終了して元の用紙収納制御処理手順RT1におけるステップSP11へ戻り、再びステップSP1へ戻ってモータ15の回転を停止させる。
【0071】
このように収納制御部10は、用紙Pの交換作業が行われる場合、統括制御部2からの命令に従って退避処理手順RT3及び復帰処理手順RT4を順次実行することにより、ダンサローラ12を一時的に巻取移動範囲から退避させ、また当該巻取移動範囲へ復帰させる。
【0072】
[5.動作及び効果]
以上の構成において、画像形成装置1の用紙収納部5は、用紙Pを巻取軸14に巻き取る巻取動作時には、ダンサローラ12及びキャリッジ17を巻取下限位置Q1及び巻取上限位置Q2の間である巻取移動範囲内で上下方向へ移動させる(図4)。また用紙収納部5は、保守作業者等が用紙Pの交換作業を行う用紙交換作業時には、ダンサローラ12及びキャリッジ17を一時的に巻取移動範囲の上方にある退避位置Q4に移動させ(図6)、その後巻取移動範囲内へ復帰させる。
【0073】
これにより用紙収納部5は、用紙交換作業時に、用紙Pからダンサローラ12を引き離した状態とすることができるので、当該用紙Pを容易に交換させることができる。すなわち用紙収納部5は、保守作業者等に対し、ダンサローラ12を用紙Pから引き離す作業や、当該ダンサローラ12を用紙Pから引き離した位置に保持する作業を行わせる必要が無く、当該用紙Pの交換作業のみを行わせることができる。
【0074】
また用紙収納部5は、用紙交換作業の終了後に、ダンサローラ12を退避位置Q4から元の巻取移動範囲へ復帰させるため、保守作業者に対しダンサローラ12を巻取移動範囲へ戻す作業を行わせる必要が無い。これにより用紙収納部5は、保守作業者がダンサローラ12を巻取移動範囲へ戻し忘れる、といった作業ミスの発生を原理的に排除でき、用紙Pを正常に搬送できずに皺や折目を生じさせ、或いは当該用紙Pを詰まらせる、といった問題の発生を未然に防止できる。
【0075】
さらに用紙収納部5は、ダンサローラ12及びキャリッジ17を巻取移動範囲から退避させるための退避準備位置Q3及び退避位置Q4を、巻取下限位置Q1及び巻取上限位置Q2の真上に配置した。このため用紙収納部5は、ダンサローラ12の退避時や復帰時に、ダンサローラガイド18によりキャリッジ17を上下方向に、すなわち巻取移動範囲内における移動方向と同じ方向へ移動させれば良いため、当該ダンサローラガイド18を極めて簡素に構成できる。
【0076】
また用紙収納部5は、巻取軸14を回転させガイドローラ11及び13の間における用紙Pの余長を短縮させることにより、ダンサローラ12及びキャリッジ17を巻取上限位置Q2から退避準備位置Q3へ移動させるようにした(図5)。このため用紙収納部5は、当該ダンサローラ12及びキャリッジ17を上方へ移動させる(持ち上げる)ための他の機構を組み込む場合と比較して、極めて簡素に構成できる。
【0077】
さらに用紙収納部5は、永久磁石21の磁力をコイル22の電磁石としての磁力によって補強し、或いは打ち消すことにより、ダンサローラ12及びキャリッジ17を退避準備位置Q3及び退避位置Q4の間で移動させるようにした。すなわち用紙収納部5は、コイル22に電流を供給するか否か、及びその極性を収納制御部10により制御するだけで良い。このため用紙収納部5は、例えばダンサローラ12等に対し物理的に接触して持ち上げるような他の機構を用いる場合と比較して、動作不良が発生するおそれを格段に低減でき、動作の確実性を高めることができる。
【0078】
そのうえ用紙収納部5は、コイル22のみで無く、当該コイル22を永久磁石21と組み合わせることにより、ダンサローラ12及びキャリッジ17を退避準備位置Q3から退避位置Q4へ移動させるようにした。このため用紙収納部5は、ダンサローラ12等を退避位置Q4へ移動させた後、コイル22への電流の供給を停止した後も、当該ダンサローラ12等を退避位置Q4に保持することができる。これにより用紙収納部5は、例えば保守作業中に電源が遮断されたような場合であっても、ダンサローラ12等を退避位置Q4に保持し続けることができ、保守作業の作業性を低下させることが無い。
【0079】
さらに用紙収納部5は、退避準備位置Q3よりも上方に退避位置Q4を配置し、キャリッジ17が退避準備位置Q3にある場合には永久磁石21の磁力が及ばないようにした。このため用紙収納部5は、例えば巻取動作中にガイドローラ11及び13の間における用紙Pの余長が一時的に極めて短縮され、ダンサローラ12及びキャリッジ17が退避準備位置Q3又はその近傍まで上昇してしまったとしても、意図せずに退避位置Q4に吸着してしまうことが無い。
【0080】
以上の構成によれば、画像形成装置1の用紙収納部5は、巻取動作時には、ダンサローラ12及びキャリッジ17を巻取移動範囲内で上下方向へ移動させ、また用紙交換作業時には、一時的に巻取移動範囲の上方にある退避位置Q4に移動させ、その後巻取移動範囲内へ復帰させる。これにより用紙収納部5は、保守作業者に対しダンサローラ12及びキャリッジ17を移動するための操作を何ら行わせること無く、用紙Pを容易に交換させることができる。
【0081】
[6.他の実施の形態]
なお上述した実施の形態においては、ダンサローラ12及びキャリッジ17を自重により下方へ付勢し、当該ダンサローラ12の下面を用紙Pに当接させる場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えばコイルばねのような付勢部材をローラ移動部16に組み込み、この付勢部材が発生する付勢力によりダンサローラ12及びキャリッジ17を下方へ付勢しても良い。
【0082】
また上述した実施の形態においては、ガイドローラ11及び13を結ぶ仮想直線L1がほぼ水平に沿っている場合に、ダンサローラガイド18により、当該仮想直線L1と直交する方向である上下方向に沿ってダンサローラ12及びキャリッジ17を移動させる場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、ガイドローラ11及び13の配置に応じて、これらを結ぶ仮想直線L1と直交する種々の方向に沿ってダンサローラ12及びキャリッジ17を移動させるようにしても良い。この場合、上述した付勢部材によりダンサローラ12及びキャリッジ17を付勢すれば良い。また、ダンサローラ12及びキャリッジ17の移動する方向は、仮想直線L1に対し直交しなくても良く、所定の交差角度をなすように交差していれば良い。
【0083】
さらに上述した実施の形態においては、ダンサローラガイド18によりキャリッジ17を上下方向に沿った直線状に移動させる場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えばダンサローラガイド18によりキャリッジ17を種々の曲線に沿って上下方向に移動させるようにしても良い。
【0084】
さらに上述した実施の形態においては、永久磁石21の磁力と電磁石として機能するコイル22の磁力とを組み合わせることにより、退避準備位置Q3にあるダンサローラ12及びキャリッジ17を退避位置Q4へ移動させる場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば永久磁石21を省略し、コイル22の磁力のみにより、退避準備位置Q3にあるダンサローラ12及びキャリッジ17を退避位置Q4へ移動させるようにしても良い。この場合、コイル22に電流を供給し続けることにより、ダンサローラ12及びキャリッジ17を退避位置Q4に保持でき、この電流を遮断することにより、ダンサローラ12及びキャリッジ17を巻取移動範囲へ戻すことができる。
【0085】
さらに上述した実施の形態においては、ダンサローラ12及びキャリッジ17を巻取上限位置Q2へ移動させた後、巻取軸14により用紙Pを巻き取ることにより退避準備位置Q3まで持ち上げてから、永久磁石21及びコイル22の磁力により退避位置Q4まで移動させる場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えばコイル22の磁力が比較的強力である場合に、ダンサローラ12及びキャリッジ17を巻取上限位置Q2へ移動させた段階で、永久磁石21及びコイル22の磁力により退避位置Q4まで一度に移動させるようにしても良い。
【0086】
さらに上述した実施の形態においては、長尺の用紙Pを搬送して巻取軸14の周囲に巻き付けて収納する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えばA4サイズ等の用紙(いわゆるカット紙)を搬送して所定のトレイ上や収納庫内に収納する場合に適用しても良い。この場合、例えば搬送経路を両側から挟むように配置されたローラを当該搬送経路に沿って適宜配置し、このローラを回転させることにより用紙を進行させることができる。
【0087】
さらに上述した実施の形態においては、統括制御部2からの用紙交換開始命令及び用紙交換終了命令に従い、収納制御部10が退避処理手順RT3(図10)及び復帰処理手順RT4(図11)をそれぞれ実行する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば用紙収納部5内に操作スイッチを設け、この操作スイッチに対する操作に応じて、退避処理手順RT3及び復帰処理手順RT4をそれぞれ実行するようにしても良い。さらにこの場合、例えば用紙収納部5に開閉式の扉を設けると共にその開閉を検知するセンサを設け、この扉の開閉に応じて退避処理手順RT3及び復帰処理手順RT4をそれぞれ実行するようにしても良い。これにより、保守作業員による復帰処理の失念といった人為的な作業ミスを排除することができる。
【0088】
さらに上述した実施の形態においては、画像形成部4により用紙Pに対し画像を形成する画像形成装置1の用紙収納部5に本発明を適用する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、例えば用紙供給部3や、用紙Pを内部で搬送する種々の箇所に本発明を適用しても良い。或いは、画像を形成するための用紙Pに限らず、例えば布や樹脂等、長尺のシート状でなる種々の媒体を搬送する種々の装置に適用しても良い。
【0089】
さらに本発明は、上述した実施の形態及び他の実施の形態に限定されるものではない。すなわち本発明は、上述した実施の形態と上述した他の実施の形態の一部又は全部を任意に組み合わせた実施の形態や、一部を抽出した実施の形態にもその適用範囲が及ぶものである。
【0090】
さらに上述した実施の形態においては、第1案内部としてのガイドローラ11と、第2案内部としてのガイドローラ13と、移動案内部としてのダンサローラ12と、退避移動部及び維持解消部としてのコイル22と、退避維持部としての永久磁石21とによって媒体搬送装置としての用紙収納部5を構成する場合について述べた。しかしながら本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなる第1案内部と、第2案内部と、移動案内部と、退避移動部と、退避維持部と、維持解消部とによって媒体搬送装置を構成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明は、例えば用紙を搬送しながら画像を形成する画像形成装置でも利用できる。
【符号の説明】
【0092】
1……画像形成装置、2……統括制御部、3……用紙供給部、4……画像形成部、5……用紙収納部、10……収納制御部、11……ガイドローラ、12……ダンサローラ、13……ガイドローラ、14……巻取軸、15……モータ、16……ローラ移動部、17……キャリッジ、18……ダンサローラガイド、21……永久磁石、22……コイル、25……巻取下限位置センサ、26……巻取上限位置センサ、27……退避準備位置センサ、L1……仮想直線、P……用紙、Q1……巻取下限位置、Q2……巻取上限位置、Q3……退避準備位置、Q4……退避位置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11