(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1の工程で、少なくともM3とM4との間のディスク素材部分が、隣接するディスク素材部分または、ハット外周部に設けられディスク素材の板厚より板厚が小の第1の板厚減少部よりも、板厚が厚い厚肉部に成形される、請求項3記載の乗用車用ホイールディスクの製造方法。
第2の工程の後に、M2とM3との間のディスク素材部分を整形して最終のディスクフランジ部形状にする第3の工程を有する、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の乗用車用ホイールディスクの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明実施例の自動車用ホイールディスクと、本発明実施例の自動車用ホイールディスクの製造方法を、図面を参照して、説明する。
【0021】
先ず、本発明実施例の自動車用ホイールディスクを、図面を参照して、説明する。
本発明実施例の自動車用ホイールディスク(以下、単に、ホイールディスクまたはディスクともいう)10は、
図2に示すように、シングル取り付けタイプ(ハット部を有し乗用車などで使用されるタイプ)のディスクである。ディスク10は、
図25に示すようなダブル取り付けタイプ(ハット部を有さず基本的にトラック・バスなどで使用されるタイプ)のディスク100ではない。ディスク10は、平板状のディスク素材から製造されるディスクが対象である。ディスク10は、たとえばスチール製である。ただし、ディスク10は、スチール製でなくてもよく、アルミ合金製、チタン合金製、マグネシウム合金製等であってもよい。ディスク10は、環状のリム(図示略のタイヤを保持する部分)20とは別に製造されており、リム20と溶接、リベット、接着等で接合されてホイール1になる。
【0022】
リム20は、板材から製造される。リム20は、内側フランジ部21、内側ビードシート部22、内側サイドウォール部23、ドロップ部24、外側サイドウォール部25、外側ビードシート部26および外側フランジ部27を備える。内側フランジ部21、内側ビードシート部22および内側サイドウォール部23は、外側サイドウォール部25、外側ビードシート部26および外側フランジ部27よりも、ホイール1を車両に装着した際にディスク軸方向(ホイール軸方向)で車両の内側に近い側(車幅方向中央側)に位置する。
【0023】
ディスク10は、ハブ穴11と、ハブ取付け部12と、ディスクフランジ部13と、ハット部14と、板厚減少部18と、を有する。ハット部14は、ハット頂部15と、ハット内周部16と、ハット外周部17と、を有する。
ディスク10は、ハット頂部15よりディスク半径方向外側でディスクフランジ部13よりディスク半径方向内側にある第1のディスク部位(D1)と、ハット外周部17とディスクフランジ部13との境界にある第2のディスク部位(D2)と、ディスクフランジ部13のディスク軸方向内側端にある第3のディスク部位(D3)と、第2のディスク部位(D2)よりディスク軸方向内側で第3のディスク部位(D3)よりディスク軸方向外側にある第4のディスク部位(D4)と、を有する。ディスクフランジ部13全体が後述のディスクフランジ部厚肉部13cとなる場合、第2のディスク部位(D2)と第4のディスク部位(D4)は一致する。なお、図中Aは、ディスク軸方向内側を示している。
【0024】
ハブ穴11は、
図1に示すように、ディスク10のディスク半径方向(ホイール半径方向)中央部に設けられる。
ハブ取付け部12は、ハブ穴11の周囲に設けられている。ハブ取付け部12は、平板状または略平板状であり、ディスク軸方向(ホイール軸方向)と直交またはほぼ直交する平面内にある。ハブ取付け部12のディスク半径方向中間部にはハブ取付けボルト穴12aが複数設けられている。ハブ取付けボルト穴12aは、ディスク周方向(ホイール周方向)に同心円上等間隔にたとえば4個設けられている。ただし、ハブ取付けボルト穴12aの数は、4個に限定されるものではなく、3個であってもよく、5個以上であってもよい。車両のハブから延びてくるハブ取付けボルト(両方共に図示略)をハブ取付けボルト穴12aに挿通し、ハブ取付けボルトに図示略のハブナットを螺合することにより、ディスク10(ホイール1)はハブに固定される。ただし、ディスク10(ホイール1)は、ハブ取付け部12に開けられたタップ穴にハブボルトにて螺合することによりハブに固定されてもよい。ハブ取り付け部12の平坦な部分であるハブ取付け部平坦部12cは、しごき加工による薄肉化を行わないので、製品となったときの厚さは、ディスク素材の厚さとほぼ同じである。
【0025】
図1および
図2に示すように、ハブ取付け部12には、ディスク周方向に互いに隣り合うハブ取付けボルト穴12a間でディスク軸方向外側に凸状に膨らんだリブ12bが設けられていてもよい。リブ12bは、ハブ取付け部12の剛性向上、耐久性向上などのために設けられる。リブ12bは、ディスク10がシングル取り付けタイプでありダブル取り付けタイプではないため、設けることができる。なお、一般的にダブル取り付けタイプのディスク100(
図25参照)では、取り付け位置によりハブ取付け部のディスク軸方向内側の面およびディスク軸方向外側の面がハブあるいは別のホイールのハブ取付け部と密着する必要があるためリブ12bは設けられていない。ダブル取り付けタイプのディスク100では、車両のハブへの取付けの理由により板厚を比較的大とすることで剛性および強度を高めているためリブ12bの成形も困難である。
【0026】
ディスクフランジ部13は、
図2に示すように、ディスク10のディスク半径方向外側端部(その近傍を含む)に位置する。ディスクフランジ部13は、ディスク周方向に連続するリング状である。ただし、ディスクフランジ部13は、ディスク周方向で部分的に不連続なリング状であってもよい。ディスクフランジ部13は、ディスク半径方向断面視で(ディスク周方向と直交する断面視で)、ディスク軸方向に直線状に延びている。
ディスクフランジ部13のディスク軸方向内側端(第3のディスク部位D3)は、
図2、
図3(c)に示すように、ディスク周方向に全周にわたって1つの平面内に位置していてもよく、
図11(c)に示すように、ディスク軸方向外側に凹状に湾曲するベンチレーション部13aを有していてもよい。
ディスクフランジ部13は、
図2に示すように、リム20のドロップ部24に嵌入されドロップ部24に接合(固定、溶接)される部分である。ディスクフランジ部13は、ディスク半径方向断面視で、ディスク軸方向内側端D3からディスク軸方向外側にディスク10の内周面および外周面が共にディスク10のディスク軸方向と交わる方向へ傾き始めるまでのディスク部分である。
【0027】
ハット部14は、ディスク半径方向でハブ取付け部12とディスクフランジ部13との間に設けられており、ディスク半径方向にハブ取付け部12とディスクフランジ部13とをつなぐ部分である。ハット部14は、ハブ取付け部12およびディスクフランジ部13よりディスク軸方向外側に位置する部分を有する。ハット部14の少なくともハット頂部15は、ハブ取付け部12およびディスクフランジ部13よりディスク軸方向外側に位置する。
【0028】
頂点15aは、任意のディスク半径方向断面において、ハット頂部15で(ディスク10で)最もディスク軸方向外側に位置する点である。ディスク周方向で、頂点15aのディスク軸方向位置は、一定であってもよく異なっていてもよい。ディスク周方向で頂点15aのディスク軸方向位置が異なっている場合、異なるディスク軸方向位置にある頂点15aは、ディスクの耐久性、成形性の面からディスク周方向で滑らかに連なっていることが望ましい。
【0029】
ハット内周部16は、ディスク半径方向でハブ取付け部12とハット頂部15との間に設けられており、ディスク半径方向にハブ取付け部12とハット頂部15とをつなぐ部分である。ハット内周部16は、ディスク半径方向断面で、全体または略全体がディスク半径方向外側かつディスク軸方向外側に傾斜しており、ハブ取付け部12とハット頂部15とを滑らかにつなぐ。
【0030】
ハット外周部17は、ディスク半径方向でハット頂部15とディスクフランジ部13との間に設けられており、ディスク半径方向にハット頂部15とディスクフランジ部13とをつなぐ部分である。ハット外周部17は、ディスク半径方向断面で、全体または略全体がディスク半径方向外側かつディスク軸方向内側に傾斜している。
【0031】
ハット頂部15は、ディスク軸方向外側に突出する部分である。ハット頂部15は、ディスク10の剛性、強度を確保するための部位であり、
図2に示すように円弧状にディスク軸方向外側に突出している。ハット頂部15は、ディスク周方向に連続的に延びる頂点15aと、頂点15aのディスク半径方向内側でディスク軸方向内側に湾曲する内周湾曲部15bと、頂点15aのディスク半径方向外側でディスク軸方向内側に湾曲する外周湾曲部15cと、を備える。ハット部14は、ハブ取付け部12から、ディスク半径方向外側に延び、ディスク半径方向内側から順番に、ハット内周部16ではディスク軸方向外側に延び、次にハット頂部15ではディスク軸方向外側からディスク軸方向内側に向きを変えて延び、さらにハット外周部17ではディスク軸方向内側に延びて、ディスクフランジ部13につながっている。そのため、ハブ取付け部12とディスクフランジ部13のディスク軸方向距離が小さく、ホイール1を自動車に取付けたとき、タイヤおよびリム20を介してハット部14からハブ取付け部12に力が伝わるときディスク10にはあまり大きな曲げモーメントはかかりにくい。これに対して、
図25に示すダブル取付けタイプのディスク100には、ディスク10のハット内周部16およびハット頂部15に相当する部分がないため、ハブ取付け部とディスクフランジ部のディスク軸方向距離が大きく、ディスク100に大きな曲げモーメントがかかる。このため、ディスク10のハット部14にかかる応力状態とダブル取付けタイプのディスク100のハット部140にかかる応力状態とが違う。
【0032】
ハット外周部17には、飾り穴19が形成されている。
飾り穴19は、ハット外周部17のディスク半径方向中間部に設けられている。飾り穴19は、
図1に示すように、ディスク周方向に等間隔に複数設けられている。ただし、飾り穴19は無くてもよく、ディスク周方向に不等間隔に設けられていてもよく、1つのみ設けられていてもよい。
ハット外周部17のうち、後述する第1の板厚減少部18a以外の部分(例えば飾り穴19よりも径方向内側の部分)は、プレスによる大きな塑性変形もなく、しごき加工による薄肉化を行わないので、自動車用ホイールディスクとなったときの厚さは、ディスク素材の厚さとほぼ同じである。
【0033】
板厚減少部18は、
図3(b)または
図11(b)に示す平板状のディスク素材30をしごき加工することにより、しごき加工前のディスク素材30の板厚(ディスク10のハブ取付け部平坦部12cやハット外周部17のうち板厚減少部18以外の部分等のディスク素材と略同じ厚さ)より板厚が小となっている部分である。第1のディスク部位(D1)は、ハット外周部17のうちしごき加工により薄肉化される部分とされない部分の境界である。ディスク素材30の板厚がプレス成形による肉引けなどにより薄肉化した部分は、板厚減少部18ではない。板厚減少部18の板厚は、しごき加工前のディスク素材30の板厚の、80%以下とすることができ、50%以下としてもよい。板厚減少部18の最も板厚の薄い部分の板厚は、例えば1mmとすることもできる。ディスク素材30の板厚をフローフォーミングなど他の方法により薄くしてもよい。
板厚減少部18は、ディスク半径方向でディスク10の外径の80%を含んで80%より外側のみに設けられていることが望ましいが、板材の性質により80%には限らない。これは、板厚減少部18を有するディスク10を割れが無く成形できるようにするためである。
【0034】
板厚減少部18は、
図2に示すように、ハット外周部17に設けられる第1の板厚減少部18aを備える。板厚減少部18は、さらに、ディスクフランジ部13に設けられる第2の板厚減少部18bを備えていてもよい。板厚減少部18が第1の板厚減少部18aと第2の板厚減少部18bを備える場合、第1の板厚減少部18aと第2の板厚減少部18bとは、ディスク軸方向に連なっていてもよいし、連続していなくてもよい。
【0035】
第1の板厚減少部18aは、ハット外周部17のうちディスク半径方向外側端部(その近傍を含む)に設けられている。第1の板厚減少部18aは、第1のディスク部位D1から第2のディスク部位D2にかけて設けられている。第1の板厚減少部18aは、飾り穴19がハット外周部17のディスク半径方向中間部のみに設けられている場合、ハット外周部17の、少なくとも飾り穴19よりディスク半径方向外側に隔たった部分に設けられている。ただし、第1の板厚減少部18aは、飾り穴19の周縁部の一部または全部を含んでいてもよい。第1の板厚減少部18aの板厚は、第1の板厚減少部18a内で一定であってもよく、一定でなくてもよい。たとえば、飾り穴19の周縁部に位置する第1の板厚減少部18a部分の少なくとも一部の板厚を、その他の第1の板厚減少部18a部分の板厚より厚くしてもよい。第1の板厚減少部18aの板厚の一部にディスク素材板厚と略同じ板厚の部分があってもよい。
【0036】
第2の板厚減少部18bは、ディスク軸方向でディスクフランジ部13の全域(全体)あるいは一部に設けられている。第2の板厚減少部18bは、第2のディスク部位D2から第3のディスク部位D3までの全域(全体)あるいは一部に設けられている。第2の板厚減少部18bの板厚は、第2の板厚減少部18b内で一定であってもよく、一定でなくてもよい。第2の板厚減少部18bの板厚は、第1の板厚減少部18aの板厚と同じであってもよく、第1の板厚減少部18aの板厚より大であってもよく、第1の板厚減少部18aの板厚より小であってもよい。第2の板厚減少部18bの板厚の一部にディスク素材板厚と略同じ板厚の部分があってもよい。
【0037】
ディスクフランジ部13の少なくともディスク軸方向内側端部(たとえば第3のディスク部位D3から第4のディスク部位D4)にディスクフランジ部厚肉部13cが設けられていてもよい。ディスクフランジ部厚肉部13cは、ディスクフランジ部厚肉部13cにディスク軸方向に隣接するディスク部分(たとえば第2のディスク部分D2から第4のディスク部分D4であり、ディスクフランジ部厚肉部13cがディスクフランジ部13全体に及ぶ場合は、第1のディスク部位D1から第2のディスク部位D2である)の板厚より板厚が大とされている部分である。ディスクフランジ部厚肉部13cは、ディスク周方向の少なくとも一部に設けられる。ディスクフランジ部厚肉部13cは、ディスク周方向の全周にわたって連続して設けられていてもよいし、ディスク周方向に断続的に設けられていてもよい。ディスクフランジ部厚肉部13cは、
図24(a)に示すように径方向内向きに突出していてもよいし、
図24(b)に示すように径方向外向きに突出していてもよい。また、ディスクフランジ部厚肉部13cは、径方向外向きと径方向内向きの両方に突出していてもよい。ディスクフランジ部厚肉部13cを径方向外向きに突出させると、ディスク10とリム20との接触面積が小さくなり、ディスク10とリム20との組立精度が向上し、ホイール1の振れ精度も向上する。ディスクフランジ部厚肉部13cを径方向内向きに突出させると、ディスク10の剛性を向上させることができる。またディスク10とリム20を組立てたときにディスクフランジ部13の溶接する位置の板厚が厚くなるため溶接をしやすくなる。
ディスクフランジ部厚肉部13cの厚さの最大値は、ディスク素材板厚と同じであってもよく、ディスク素材板厚よりも大であってもよく、ディスク素材板厚より小であってもよい。
第1のディスク部位D1と第2のディスク部位D2の間の断面形状は
図24のように直線状であってもよいし、全体が大きな円弧状であってもよいし、その他の形状であってもよい。
【0038】
つぎに、本発明実施例の自動車用ホイールディスク10の製造方法を、図面を参照して、説明する。なお、
図3〜
図19は、本発明実施例1の自動車用ホイールディスクの製造方法を示しており、
図20は、本発明実施例2の自動車用ホイールディスクの製造方法を示しており、
図21は、本発明実施例3の自動車用ホイールディスクの製造方法を示しており、
図22、
図23は、本発明実施例4の自動車用ホイールディスクの製造方法を示している。
本発明全実施例にわたって共通する部分には、本発明全実施例にわたって同じ符号を付してある。
まず、本発明全実施例にわたって共通する部分を説明する。
【0039】
本発明実施例の自動車用ホイールディスク10の製造方法は、
図4に示すように、自動車用のホイールディスク10をディスク素材30から製造する方法である。
【0040】
ディスク素材30は、ハブ穴11に対応するハブ穴対応部31と、ハブ取付け部12に対応するハブ取付け部対応部32と、ディスクフランジ部13に対応するディスクフランジ部対応部33と、ハット部14に対応するハット部対応部34と、ハット頂部15に対応するハット頂部対応部35と、ハット内周部16に対応するハット内周部対応部36と、ハット外周部17に対応するハット外周部対応部37と、飾り穴19に対応する飾り穴対応部39と、を備える。ディスク素材30は、また、第1のディスク部位D1に対応する第1の素材部位M1と、第2のディスク部位D2に対応する第2の素材部位M2と、第3のディスク部位D3に対応する第3の素材部位M3と、第4のディスク部位D4に対応する第4の素材部位M4と、を備える。
【0041】
ディスクフランジ部対応部33は、ディスク素材30をディスク10に製造したときに、ディスクフランジ部13となる部分である。
ハット部対応部34は、ディスク素材30をディスク10に製造したときに、ハット部14となる部分である。
ハット頂部対応部35は、ディスク素材30をディスク10に製造したときに、ハット頂部15となる部分である。
ハット内周部対応部36は、ディスク素材30をディスク10に製造したときに、ハット内周部16となる部分である。
ハット外周部対応部37は、ディスク素材30をディスク10に製造したときに、ハット外周部17となる部分である。
飾り穴対応部39は、ディスク素材30をディスク10に製造する際に打ち抜かれて飾り穴19となる部分である。
第1の素材部位M1は、ディスク素材30をディスク10に製造したときに、第1のディスク部位D1となる部分である。
第2の素材部位M2は、ディスク素材30をディスク10に製造したときに、第2のディスク部位D2となる部分である。
第3の素材部位M3は、ディスク素材30をディスク10に製造したときに、第3のディスク部位D3となる部分である。
第4の素材部位M4は、ディスク素材30をディスク10に製造したときに、第4のディスク部位D4となる部分である。
【0042】
ディスク素材30は、
図3、
図11に示すように、正方形(略正方形を含む)の平板2から、4隅をプレス打ち抜きなどにより落とした平板状の素材である。ディスク素材30は、
図3(b)に示すように、直線部をもたない円形の平板状であってもよく、
図11(b)に示すように、弧部30aと直線部30bをもつ平板状であってもよい。ディスク素材30が
図3(b)に示す形状の場合、ディスク素材30から製造されるホイールディスク10は、ベンチレーション部13a(
図11(c)参照)を有さない。ディスク素材30が
図11(b)に示す形状の場合、ディスク素材30から製造されるホイールディスク10は、
図11(c)に示すようにベンチレーション部13aを有する。なお、ディスク素材30が
図11(b)に示す形状の場合、弧部30aがベンチレーション部13a以外の一般端部13bになり、直線部30bがベンチレーション部13aになる。
【0043】
ホイールディスク10の製造方法は、
(i)
図5〜
図7に示すように、ディスク素材30の少なくとも第1の素材部位M1から第2の素材部位M2までの一部または全部をしごき加工し、しごき加工後の板厚がしごき加工前の板厚より薄い円筒状部40を成形する第1の工程(しごき絞り加工工程)と、
(ii)第1の工程の後に、
図8、
図9に示すように、ディスク素材30の第2の素材部位M2と第3の素材部位M3との間がディスク素材30の第1の素材部位M1よりも大径になるように、ディスク素材30の第2の素材部位M2と第3の素材部位M3との間と、ディスク素材30の第1の素材部位M1と、の少なくともいずれか一方の径を変える第2の工程(径変更工程)と、
を有する。第1の工程では、
図7に示すように、第1の素材部位M1から第3の素材部位M3までの全部をしごき加工してもよい。
ホイールディスク10の製造方法は、さらに、上記(ii)の第2の工程の後に、(iii)
図10に示すように、ディスク素材30の第2の素材部位M2と第3の素材部位M3との間を整形して最終のディスクフランジ部13形状にする第3の工程(整形工程)を有する。
なお、本発明実施例および図示例では、上記(i)の第1の工程で、第1の素材部位M1から第4の素材部位M4または第1の素材部位M1から第3の素材部位M3までをしごき加工する場合を示す。
【0044】
上記(i)の第1の工程について
(i−1)第1の工程は、プレスによって全周同時に行なわれる。しごき絞り加工は1回に限らず、型交換を含めて複数回行ってもよい。
(i−2)第1の工程では、
図5〜
図7に示すように、パンチ50aとダイス50bと押さえパッド50cとをプレス機に組付けたしごき装置50を用いてしごき絞り加工を行なう。絞り加工を行った後しごき加工を行ってもよい。第1の工程では、ディスク素材30の第1の素材部位M1よりディスク半径方向内側に位置する部分を、パンチ50aとパッド50cとで挟持しつつ、ダイス50bを、パンチ50aおよびパッド50cに対してディスク素材30の軸方向(ディスク10の軸方向と同方向)にのみ相対動させてしごき絞り加工する。なお、パンチ50aおよびパッド50cをダイス50bに対して相対動させてもよい。
(i−3)第1の工程で成形される円筒状部40の厚みは、後述する厚肉部41を除いて、パンチ50aのダイス50bに対向する側の側面を平面(径が一定の円柱面)または凹凸のある面(起伏のある面、平面でない面、径が一定でない円筒面)とすることで、一定(略一定を含む)とされていてもよく厚さが一定でなくてもよい。
【0045】
(i−4)第1の工程では、
図12に示すように、ディスク素材30の第4の素材部位M4から第3の素材部位M3までの間に、厚肉部41が成形されてもよい。厚肉部41は、第1の工程後のディスク素材30の軸方向内側端部に位置し、厚肉部41に軸方向に隣接する部分よりも板厚が厚い部分である。厚肉部41はディスク素材30の第2の素材部位M2から第3の素材部位M3の全部に及んでもよい。なお、本発明実施例および図示例では、厚肉部41が第4の素材部位M4と第3の素材部位M3との間のみに設けられている場合を示す。厚肉部41は、上記(ii)の第2の工程で(特に拡径工程であるときに)ディスク素材30に割れ等の不具合が生じることを抑制するために設けられる。なお、厚肉部41は、ディスク10がディスクフランジ部厚肉部13cを有する場合には、上記(ii)の第2の工程および上記(iii)の第3の工程の後、ディスクフランジ部厚肉部13cとなる。ただし、厚肉部41は、ディスク10がディスクフランジ部厚肉部13cを有さない場合には、
図3cに示すように、上記(iii)の第3の工程で、第2のディスク部位と第4のディスク部位D4との間と同程度の厚みとなるまで薄肉化される。
【0046】
厚肉部41は、
図3に示すように、ディスク素材30からベンチレーション部13a(
図11(c)参照)を有さないディスク10を製造する場合、
図14に示すように、ディスク素材30の円筒状部40の全周にわたって連続して設けられる。
厚肉部41は、
図11に示すように、ディスク素材30からベンチレーション部13aを有するディスク10を製造する場合、
図15〜
図17に示すように、少なくともベンチレーション部13aとなる部分(以下、凹部という)42の最深部42aに設けられることが望ましい。第2の工程が拡径工程である場合、ディスク素材30の円筒状部40にかかる応力の中で最深部42aにかかる応力が最大だからである。なお、
図15は、厚肉部41が最深部42aを含んで円筒状部40の全周にわたって連続して設けられる場合を示しており、
図16は、厚肉部41が最深部42aを含んで凹部42に設けられる場合を示しており、
図17は、厚肉部41が最深部42aを含む軸方向内側全周に設けられる場合を示している。
【0047】
厚肉部41は、たとえば、以下の(a1)、(a2)の方法で成形される。
(a1)厚肉部41は、
図12に示すように、パンチ50aに後退部50dを設けることで成形される。後退部50dは、パンチ50aの、ダイス50bに対向する側の側面に、ダイス50bから離れる方向に後退して設けられる。後退部50dが設けられることにより、ディスク素材30の第4の素材部位M4から第3の素材部位M3までの間に、内径を小にする方向に突出した厚肉部41を成形することができる。厚肉部41の厚みは、第1の工程前のディスク素材30の板厚と同じ(略同じを含む)であってもよく、第1の工程前のディスク素材30の板厚より小であってもよい。
(a2)厚肉部41は、
図13に示すように、ダイス50bが円筒状部40の軸方向中間部に達した後、ダイス50bをパンチ50aに対して停止させてダイス50bをパンチ50aから抜くことで成形される。ディスク素材30の、ダイス50bの停止位置より先側にある部分(ディスク素材30の第4の素材部位M4から第3の素材部位M3まで)は、しごき加工されず、しごき加工された部分(ディスク素材30の第1の素材部位M1から第4の素材部位M4まで)に比べて外径を大にする方向に厚肉となる。厚肉部41の厚みは、第1の工程前のディスク素材30の板厚と同じ(略同じを含む)である。この場合、
図14〜
図16で径方向内向きに突出している厚肉部41は、径方向外向きに突出する。また、厚肉部41は径方向内向きと径方向外向きの両方に突出していてもよい。
【0048】
上記(a2)の方法(
図13に示す方法)で厚肉部41が成形される場合、第1の工程は、ディスク素材30の第1の素材部位M1から第4の素材部位M4までをしごき加工して円筒状部40を成形する工程となり、厚肉部41が成形されない場合または上記(a1)の方法(
図12に示す方法)で厚肉部41が成形される場合、第1の工程は、ディスク素材30の第1の素材部位M1から第3の素材部位M3までをしごき加工して円筒状部40を成形する工程となる。
【0049】
上記(ii)の第2の工程について
(ii−1)第2の工程は、プレスによって全周同時に行なわれる。
(ii−2)第2の工程では、
図8、
図9に示すように、ディスク素材30の第2の素材部位M2と第3の素材部位M3との間と、ディスク素材30の第1の素材部位M1と第2の素材部位M2との間と、の両方を拡径する。ただし、第2の工程では、ディスク素材30の第1の素材部位M1と第2の素材部位M2との間を縮径してもよい。
(ii−3)第2の工程では、
図8に示すように、パンチ51aと押さえパッド51cとをプレス機に組付けた径変更装置51を用いて、ディスク素材30の第2の素材部位M2と第3の素材部位M3との間と、ディスク素材30の第1の素材部位M1と第2の素材部位M2との間と、の両方を拡径する。第2の工程では、パッド51cをパンチ51aに対してディスク素材30の軸方向(ディスク10の軸方向と同方向)にのみ相対動させて、ディスク素材30の第2の素材部位M2と第3の素材部位M3との間と、ディスク素材30の第1の素材部位M1と第2の素材部位M2との間と、の両方を拡径する。
(ii−4)第2の工程では、プレスによる軸方向の加工のほかに、
図18のような分割型60を用いて径方向外向きにプレスにより分割金型を動かし、加工力を作用させて径を変更する加工を行ってもよい。
【0050】
上記(iii)の第3の工程について
(iii−1)第3の工程は、ディスクフランジ部13を整形する工程である。
(iii−2)第3の工程は、プレスによって全周同時に行なわれる。
(iii−3)第3の工程では、
図10に示すように、ディスク素材30の第2の素材部位M2と第3の素材部位M3との間を整形加工する。ディスク素材30の第1の素材部位M1と第2の素材部位M2との間も整形加工してもよい。
(iii−4)第3の工程では、パンチ52aとダイス52bと押さえパッド52cとをプレス機に組付けた整形装置52を用いて整形加工を行なう。第3の工程では、ディスク素材30の第1の素材部位M1よりディスク半径方向内側に位置する部分を、パンチ52aとパッド52cとで挟持しつつ、ダイス52bを、パンチ52aおよびパッド52cに対してディスク素材30の軸方向(ディスク10の軸方向と同方向)にのみ相対動させて整形加工する。なお、パンチ52aおよびパッド52cをダイス52bに対して相対動させてもよい。
(iii−5)第3の工程では、整形装置52を用いてディスク素材30の第2の素材部位M2と第3の素材部位M3との間を整形加工するとともに、整形装置52を用いてディスク素材30の第2の素材部位M2と第3の素材部位M3との間をしごき加工して板厚を減少させてもよい。この場合、ディスク素材30の第2の素材部位M2と第3の素材部位M3との間が一定の厚さに成形されてもよいし、第4の素材部位M4と第3の素材部位M3との間にディスク素材30の第2の素材部位M2と第4の素材部位M4との間の厚さよりも厚いディスクフランジ部厚肉部13cが形成するように成形されてもよいし、第3の素材部位M3の厚さが、第2の素材部位M2から第3の素材部位M3の間で最も薄くなるように成形されてもよい。
(iii−6)第3の工程は、
図18のような分割型60を用いて径方向外向きに加工力を作用させて径を変更することで(エキスパンドによって全周同時に行なわれることで)、第2の工程と同時に加工を行ってもよい。
(iii−7)第3の工程は、第2の工程で十分な精度が確保できれば省略してもよい。
【0051】
ホイールディスク10の製造方法は、第1〜第3の工程(上記(i)〜(iii)の工程)に加えて、さらに、
図19のように、第1の工程の前に、(i´)
図19(a)に示すディスク素材30のハブ取付け部対応部32、ハット内周部対応部36、ハット頂部対応部35を、それぞれ、
図19(b)に示すディスク中間部材130(ディスク素材30の一形態)のハブ取付け部中間対応部112、ハット内周部中間対応部116、ハット頂部中間対応部115に予備成形する第1´の工程を有する。ただし、第1´の工程は、第3の工程の後に行なわれていてもよい。また第1´の工程は、行わなくてもよい。第1´の工程は、絞り成形(プレスによる全周同時加工)にて行なわれる。
第1´の工程は、
図19(c)に示すディスク中間部材130(ディスク素材30の一形態)のハブ取付け部中間対応部112、ハット内周部中間対応部116、ハット頂部中間対応部115に、予備成形するものであってもよい。
図19(b)、
図19(c)の形状に成形された部分(第1´の工程で成形された部分)は、それぞれ、第1〜第3の工程とは異なる第4の工程で最終形状に成形されることが望ましい。
【0052】
上記の第4の工程について
第4の工程では、ディスク中間部材130のハブ取付け部中間対応部112、ハット内周部中間対応部116、ハット頂部中間対応部115を、それぞれ、ホイールディスク10のハブ取付け部12、ハット内周部16、ハット頂部15の最終形状に成形する。第4の工程は第3の工程より前にあってもよい。
【0053】
つぎに、(A)本発明実施例の自動車用ホイールディスク10の効果と、(B)本発明全実施例の自動車用ホイールディスク10の製造方法に共通する効果と、を説明する。
【0054】
(A)本発明実施例の自動車用ホイールディスク10の効果
(A−1)ハット外周部17に、ディスク素材30の板厚より板厚が小の第1の板厚減少部18aが設けられているため、自動車用ホイールディスク10の軽量化を効果的に、より確実に図ることができる。
【0055】
(A−2)ディスクフランジ部13に、ディスク素材30の板厚より板厚が小の第2の板厚減少部18bが設けられているため、ハット外周部17だけでなくディスクフランジ部13にも板厚減少部18が設けられる。そのため、ディスクフランジ部13のみに板厚減少部18が設けられている場合に比べて、自動車用ホイールディスク10の軽量化を図ることができる。
【0056】
(A−3)ディスクフランジ部13は、ディスクフランジ部13の少なくともディスク軸方向内側端部でディスク周方向の少なくとも一部にディスクフランジ部厚肉部13cを備えているため、自動車用ホイールディスク10の剛性を向上でき、また、自動車用ホイールリム20との組立精度も向上する。
【0057】
(A−4)第1の板厚減少部18aが、ハット外周部17の、少なくとも飾り穴19よりディスク半径方向外側に隔たった部分に設けられているため、自動車用ホイールディスク10の強度を確保しつつ、軽量化率を大きくすることができる。
【0058】
(A−5)第2の板厚減少部18bが、ディスク軸方向でディスクフランジ部13の全域に設けられているため、第2の板厚減少部18bがディスク軸方向でディスクフランジ部13の一部のみに設けられている場合に比べて、自動車用ホイールディスク10の軽量化を図ることができる。
【0059】
(A−6)ディスクフランジ部厚肉部13cを径方向外向きに突出させると、ディスク10とリム20との接触面積が小さくなり、ディスク10とリム20との組立精度が向上し、ホイール1の振れ精度も向上する。
【0060】
(A−7)ディスクフランジ部厚肉部13cを径方向内向きに突出させると、ディスク10の剛性を向上させることができる。またディスク10とリム20を組立てたときにディスクフランジ部13の溶接する位置の板厚が厚くなるため溶接をしやすくなる。
【0061】
(B)本発明全実施例の自動車用ホイールディスク10の製造方法に共通する効果
(B−1)ディスク素材30の少なくとも第1の素材部位M1から第2の素材部位M2までの一部または全部のディスク素材部分をしごき加工し、しごき加工後の板厚がしごき加工前の板厚より薄い円筒状部40を成形する第1の工程を有するため、ハット外周部17に、第1の工程前のディスク素材30より板厚が小の板厚減少部18を設けることができる。そのため、ディスクフランジ部13のみに板厚減少部18が設けられている場合に比べて、自動車用ホイールディスク10の軽量化を効果的に、より確実に図ることができる。
また、第2の素材部位M2と第3の素材部位M3との間のディスク素材部分が第1の素材部位M1よりも大径になるように、第2の素材部位M2と第3の素材部位M3との間のディスク素材部分と、第1の素材部位M1と、の少なくともいずれか一方の径を変える第2の工程を有するため、第1の工程で成形した円筒状部を、ディスクフランジ部13とハット外周部17に成形できる。
【0062】
(B−2)第2の工程で、第2の素材部位M2と第3の素材部位M3との間のディスク素材30部分と、第1の素材部位M1と第2の素材部位M2との間のディスク素材30部分と、の両方を拡径するため、第2の素材部位M2と第3の素材部位M3との間のディスク素材30部分と、第1の素材部位M1と第2の素材部位M2との間のディスク素材30部分と、の少なくともいずれか一方を縮径させる場合に比べて、成形が容易である。
【0063】
(B−3)第1の工程で、ディスク素材30の少なくとも第1の素材部位M1から第2の素材部位M2までの一部または全部のディスク素材部分をしごき加工し、さらにディスク素材30の第2の素材部位M2から第4の素材部位M4または第2の素材部位M2から第3の素材部位M3までをしごき加工するため、ハット外周部17だけでなくディスクフランジ部13にも、第1の工程前のディスク素材30より板厚が小の板厚減少部18を設けることができる。そのため、ディスクフランジ部のみに板厚減少部が設けられている場合に比べて、自動車用ホイールディスク10の軽量化を効果的に、より確実に図ることができる。
【0064】
(B−4)第1の工程で、少なくとも第3の素材部位M3と第4の素材部位M4との間のディスク素材30部分が、隣接するディスク素材30部分または第1の板厚減少部18aよりも板厚が厚い厚肉部41に成形されるため、第2の工程で(特に拡径工程であるときに)、ディスクに割れ等の不具合が生じることを抑制することができる。
【0065】
(B−5)第2の工程の後に、第2の素材部位M2と第3の素材部位M3との間のディスク素材部分を整形して最終のディスクフランジ部形状にする第3の工程を有するため、ディスクフランジ部13を精度よく整形することができる。
【0066】
(B−6)第3の工程において、第2の素材部位M2から第4の素材部位M4または第2の素材部位M2から第3の素材部位M3までのディスク素材部分の少なくとも一部をしごき加工するため、ディスクフランジ部13を精度よく成形するとともに、自動車用ホイールディスク10の軽量化を図ることができる。
【0067】
(B−7)第1の工程の前に、ディスク素材30のハブ取付け部対応部32、ハット内周部対応部36、ハット頂部対応部35を、予備成形する工程(上記第1´の工程)を有するため、上記第1´の工程を第1の工程前以降(第3の工程後など)に有する場合および第1´の工程を有さない場合に比べて、ハット内周部16およびハブ取付け部12の塑性加工による減肉などの成形不良を防ぐことができる。
【0068】
つぎに、本発明各実施例の自動車用ホイールディスク10の製造方法に特有な部分を説明する。
【0069】
〔製法実施例1〕(
図3〜
図19)
本発明実施例1では、つぎの特有な部分を有する。
(a)第1の工程で成形される円筒状部40の厚み(厚肉部41を除く厚み)は、
図7に示すように、ほぼ一定とされている。しごき装置50のパンチ50aとダイス50bとの隙間(最小隙間)は、第1の工程前のディスク素材30の板厚より狭く設定されている。
(b)第3の工程では、
図10に示すように、整形装置52を用いてディスク素材30の第2の素材部位M2から第3の素材部位M3までの少なくとも一部をしごき加工して板厚を減少させている。整形装置52のパンチ52aとダイス52bとの隙間(最小隙間)は、第2の工程後の第2の素材部位M2から第3の素材部位M3の間の最も厚いフランジ部の板厚より狭く設定されている。また、整形装置52のパンチ52aとダイス52bとの隙間(最小隙間)は、第2の工程後の第2の素材部位M2から第3の素材部位M3の間の最も薄いフランジ部の板厚より狭く設定されていてもよい。
なお、第1の工程で第4の素材部位M4から第3の素材部位M3の間に厚肉部41を成形し、第3の工程でディスク軸方向に隣接するディスク部分の板厚より板厚が大となるようにしごき加工することで、ディスクフランジ部厚肉部13cを有するディスク10とすることができる。
【0070】
本発明実施例1では、つぎの特有な効果を得ることができる。
第3の工程では、ディスク素材30の第2の素材部位M2と第3の素材部位M3との間のしごき加工を伴うため、第3の工程でディスク素材30の第2の素材部位M2と第2の素材部位M3との間のしごき加工を伴わない場合に比べて、自動車用ホイールディスク10のディスクフランジ部13を高精度に成形することができる。
【0071】
〔製法実施例2〕(
図20)
本発明実施例2では、つぎの特有な部分を有する。
(a)第3の工程では、整形装置52を用いてディスク素材30の第2の素材部位M2と第3の素材部位M3との間と、ディスク素材30の第1の素材部位M1と第2の素材部位M2との間と、の両方を絞り加工するだけであり、ディスク素材30をしごき加工していない。
なお、第1の工程で第4の素材部位M4から第3の素材部位M3の間に厚肉部41を成形し、第3の工程では、厚肉部41に対して厚さの加工をしない整形加工をすることで、ディスクフランジ部厚肉部13cを有するディスク10とすることができる。
【0072】
本発明実施例2では、つぎの特有な効果を得ることができる。
第3の工程では、ディスク素材30の第2の素材部位M2と第3の素材部位M3との間のしごき加工を伴わないため、第3の工程でディスク素材30の第2の素材部位M2と第2の素材部位M3との間のしごき加工を伴う場合に比べて、加工条件が厳しくないため金型費用を安価に抑えることができる。
【0073】
〔製法実施例3〕(
図21)
本発明実施例3では、つぎの特有な部分を有する。
(a)第1の工程で成形される円筒状部40の厚み(厚肉部41を除く厚み)は、
図21に示すように、少なくとも2種類の厚さとなるように成形されている。円筒状部40の厚みは、パンチ50aの、ダイス50bに対向する側の側面に段付部(テーパ部を含む)50eを1つ設けることで、2種類の厚さで成形されている。段付部50eを複数設けて、2種類以上の厚さで成形してもよい。
図21の例では、ディスク素材30の第2の素材部位M2と第3の素材部位M3との間が、ディスク素材30の第1の素材部位M1と第2の素材部位M2との間の板厚に比べて小となっている。段付部50eより軸方向外側にあるパンチ部分50fと、ダイス50bとの隙間(最小隙間)は、第1の工程前のディスク素材30の板厚より狭く設定されている。また、段付部50eより軸方向内側にあるパンチ部分50gと、ダイス50bとの隙間(最小隙間)は、パンチ部分50fと、ダイス50bとの隙間(最小隙間)より狭く設定されている。
ただし、ディスク素材30の第2の素材部位M2と第3の素材部位M3との間が、ディスク素材30の第1の素材部位M1と第2の素材部位M2との間の板厚に比べて大となっていてもよい。この場合は、段付部50eより軸方向内側にあるパンチ部分50gと、ダイス50bとの隙間(最小隙間)は、第1の工程前のディスク素材30の板厚より、狭く設定されていてもよいし、広く設定されていてもよいし、同じに設定されていてもよい。また、段付部50eより軸方向外側にあるパンチ部分50fと、ダイス50bとの隙間(最小隙間)より広く設定されている。段付部50eより軸方向外側にあるパンチ部分50fと、ダイス50bとの隙間(最小隙間)は、第1の工程前のディスク素材30の板厚より狭く設定されている。段付部50eは軸方向で、第1の素材部位M1と第2の素材部位M2の間にあってもよいし、第2の素材部位M2と第3の素材部位M3の間にあってもよい。
(b)第3の工程では、整形装置52を用いてディスク素材30の第2の素材部位M2と第3の素材部位M3との間と、ディスク素材30の第1の素材部位M1と第2の素材部位M2との間と、の両方を整形加工しており、ディスク素材30をしごき加工していない。ただし、しごき加工を行なってもよい。
【0074】
本発明実施例3では、つぎの特有な効果を得ることができる。
第1の工程でしごき加工した部分が、2種類以上の厚みを備えるため、第1の工程でしごき加工した部分が1種類の厚みのみを備える場合に比べて、強度と軽量化を兼ね備えた必要な板厚で構成した自動車用ホイールディスク10を容易に製造することができる。
【0075】
〔製法実施例4〕(
図22、
図23)
本発明実施例4では、つぎの特有な部分を有する。
(a)第1の工程で成形される円筒状部40の外径は自動車用ホイールディスク10の外径とほぼ同径となるように成形されている。
(b)第2の工程では、径変更装置51を用いてディスク素材30の第1の素材部位M1と第2の素材部位M2との間を縮径加工している。
【0076】
本発明実施例4では、つぎの特有な効果を得ることができる。
第2の工程では、しごき加工工程後のディスク素材30の第2の素材部位M2と第3の素材部位M3との間と、ディスク素材30の第1の素材部位M1と第2の素材部位M2との間に拡径を伴わないため、第2の工程で、しごき加工工程後のディスク素材30の第2の素材部位M2と第3の素材部位M3との間と、ディスク素材30の第1の素材部位M1と第2の素材部位M2との間に拡径を伴う場合に比べて、しごき加工した部分を拡径しないので、割れが発生しにくい。