【文献】
Kuniko Mitamura et al.,"Simultaneous determination of androstenediol 3-sulfate and dehydroepiandrosterone sulfate in human serum using isotope diluted liquid chromatography-electrospray ionization-mass spectrometry",Journal of Chromatography B,Elsevier B.V.,2003年10月25日,Vol. 796, No. 1,p. 121-130
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記標的分析物を含む単一検体中の前記第1較正物質の前記第1既知量および前記第2較正物質の前記第2既知量を組み合わせることにより前記単一試料を調製すること;ならびに
質量分析器を使用して前記単一試料から前記質量分析器シグナルを生成すること
を更に含む、請求項1または2に記載の方法。
前記質量分析器シグナルを得る前に、前記第1較正物質、前記第2較正物質および前記標的分析物を前記単一試料の他の構成要素から分離することを更に含む、請求項1または2に記載の方法。
前記分離が、固相抽出、液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー、アフィニティー、イムノアフィニティーおよび超臨界流体クロマトグラフィーの少なくとも1つを含む、請求項4に記載の方法。
第3較正物質の第3既知量、第4較正物質の第4既知量、および追加の標的分析物を含む前記単一試料からの第3較正物質シグナル、第4較正物質シグナルおよび追加の標的分析物シグナルを前記質量分析器シグナルから得ることであって、
前記第3既知量と前記第4既知量が異なり、前記第1較正物質、前記第2較正物質、前記第3較正物質、前記第4較正物質、前記標的分析物および前記追加の標的分析物が、質量分析により前記単一試料中でそれぞれ識別可能であること;ならびに
前記第3較正物質シグナル、前記第4較正物質シグナルおよび前記追加の標的分析物シグナルを使用して、前記単一試料中の前記追加の標的分析物を定量化すること
を更に含む、請求項1または2に記載の方法。
第5較正物質の第5既知量を含み、第6較正物質の第6既知量を含み、潜在的に第2の追加の標的分析物を含む前記単一試料からの第5較正物質シグナル、第6較正物質シグナルおよび第2の追加の標的分析物シグナルを前記質量分析器シグナルから得ることであって、
前記第5既知量と前記第6既知量が異なり、前記第1較正物質、前記第2較正物質、前記第3較正物質、前記第4較正物質、前記第5較正物質、前記第6較正物質、前記標的分析物、前記追加の標的分析物および前記第2の追加の標的分析物が、質量分析により前記単一試料中でそれぞれ識別可能であること;ならびに
前記第5較正物質シグナル、前記第6較正物質シグナルおよび前記第2の追加の標的分析物シグナルを使用して、前記単一試料中の前記第2の追加の標的分析物を定量化すること
を更に含む、請求項10に記載の方法。
第3較正物質の第3既知量および第4較正物質の第4既知量、および追加の標的分析物を更に含み、前記第3既知量と前記第4既知量が異なり、前記第1較正物質、前記第2較正物質、前記第3較正物質、前記第4較正物質、前記標的分析物および前記追加の標的分析物が、質量分析により複数の較正物質及び標的分析物を含む単一試料中でそれぞれ識別可能であり、前記第3および第4較正物質の両方が、前記追加の標的分析物の定量化を促進するために選択される、請求項14に記載の組成物。
第5較正物質の第5既知量および第6較正物質の第6既知量、および第2の追加の標的分析物を更に含み、前記第5既知量と前記第6既知量が異なり、前記第1較正物質、前記第2較正物質、前記第3較正物質、前記第4較正物質、前記第5較正物質、前記第6較正物質、前記標的分析物、前記追加の標的分析物および前記第2の追加の標的分析物が、質量分析により複数の較正物質及び標的分析物を含む単一試料中でそれぞれ識別可能であり、前記第5および第6較正物質の両方が、前記第2の追加の標的分析物の定量化を促進するために選択される、請求項15に記載の組成物。
第3較正物質の第3既知量を更に含み、前記第1既知量、前記第2既知量および前記第3既知量が異なり、前記第1較正物質、前記第2較正物質、前記第3較正物質および前記標的分析物が、質量分析により複数の較正物質及び標的分析物を含む単一試料中でそれぞれ識別可能であり、前記第1、第2および第3較正物質が、標的分析物の定量化を促進するために選択される、請求項14に記載の組成物。
第4較正物質の第4既知量を更に含み、前記第1既知量、前記第2既知量、前記第3既知量および前記第4既知量が異なり、前記第1較正物質、前記第2較正物質、前記第3較正物質、前記第4較正物質および前記標的分析物が、質量分析により複数の較正物質及び標的分析物を含む単一試料中でそれぞれ識別可能であり、前記第1、第2、第3および第4較正物質が、標的分析物の定量化を促進するために選択される、請求項17に記載の組成物。
少なくとも1つの試料容器を画定する試料ホルダーを更に含み、前記第1較正物質の前記第1既知量および前記第2較正物質の前記第2既知量が、両方とも、少なくとも1つの試料容器内に含まれる、請求項14に記載の組成物。
少なくとも1つの試料容器を画定する試料ホルダーを更に含み、前記第1較正物質の前記第1既知量および前記第2較正物質の前記第2既知量が、両方とも、少なくとも1つの試料容器内に含まれる、請求項20に記載のキット。
少なくとも1つの試料容器を画定する試料ホルダーを更に含み、前記第1較正物質の前記第1既知量、前記第2較正物質の前記第2既知量、前記第3較正物質の前記第3既知量および前記第4較正物質の前記第4既知量が、全て、少なくとも1つの試料容器内に含まれる、請求項21に記載のキット。
第1較正物質の第1既知量、第2較正物質の第2既知量、および非標識の標的分析物を含む単一試料からの第1較正物質シグナル、第2較正物質シグナル、および非標識の標的分析物シグナルを含む質量分析器シグナルを得ることであって、
前記第1既知量と前記第2既知量が異なり、および前記第1較正物質および前記第2較正物質が、それぞれ、前記非標識の標的分析物の異なる安定同位体類似体であり、および前記第1較正物質、前記第2較正物質および前記非標識の標的分析物が、質量分析により前記単一試料中でそれぞれ識別可能であること;ならびに
前記第1較正物質シグナル、前記第2較正物質シグナルおよび前記非標識の標的分析物シグナルを使用して、前記単一試料中の前記非標識の標的分析物を定量化すること
に適合されたコンピューター実行可能命令を含む、コンピューター読み出し可能媒体。
質量分析器シグナルを得る前に、前記第1較正物質、前記第2較正物質および前記非標識の標的分析物を前記単一試料の他の構成要素から分離するように構成された分離系を更に含む、請求項26に記載の機器。
前記分離系が、固相抽出、液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー、アフィニティー、イムノアフィニティーおよび超臨界流体クロマトグラフィーの少なくとも1つを含む、請求項27に記載の機器。
前記自動較正系が、1個以上の分析物のそれぞれについて、前記所定の検体を、前記第1較正物質の前記第1既知量および前記第2較正物質の前記第2既知量を含む試料容器に送達するように構成される、請求項29に記載の機器。
前記自動較正系が、1個以上の分析物のそれぞれについて、前記第1較正物質の前記第1既知量および前記第2較正物質の前記第2既知量を、前記所定の検体を含む試料容器に送達するように構成される、請求項29に記載の機器。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかとなる。
【0043】
本発明は、試料中の標的分析物を定量化するための組成物、キット、方法および機器を提供する。本発明は、第1較正物質の第1既知量および第2較正物質の第2既知量を用い、ここで第1既知量と第2既知量は異なり、第1較正物質、第2較正物質および標的分析物は、試料中の標的分析物を定量化するために、質量分析により試料中でそれぞれ識別可能である。第1較正物質、第2較正物質および/または標的分析物は、例えば同位体置換および/または化学官能基置換に基づいて識別可能でありうる。以下の詳細な説明は、分析物および較正物質、続いて組成物、キット、方法および機器、最後に例示的な実施例によって追加的な詳細を提供する。
【0044】
分析物
上記の概要に加えて、分析物または標的分析物は、質量分析器で検出されうる本質的にあらゆる目的分子を含むことができる。標的分析物は、臨床化学、医療、獣医学、法化学、薬理学、食品産業、労働安全(safety at work)および環境汚染の少なくとも1つが目的でありうる。一般に、標的分析物は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個またはそれ以上の炭素原子などの少なくとも1個の炭素原子を含む有機分子である。標的分析物は、1,000、100、90、80、70、60、50、45、40、35、30、25、20または15個までの炭素原子を含むことができる。分析物は、無機分析物(例えば、リン化合物、ケイ素化合物、無機ポリマーなど)を含むこともできる。
【0045】
臨床化学標的分析物は、生体(例えば、人体、動物の身体、真菌、細菌、ウイルスなど)の中に存在する任意の有機化合物を含むことができる。例えば、臨床化学標的分析物は、ヌクレオシドに基づくもの(例えば、アデニン、シチジン、グアニン、チミン、ウラシル)、これらの類似体(例えば、7−デアザグアニン)および誘導体(例えば、モノ−、ジ−、トリホスフェートまたは環状ホスフェート);ホルモン(例えば、ステロイド系ホルモン);アミノ酸;タンパク質(例えば、脳性ナトリウム利尿ペプチド);代謝産物(例えば、クレアチニン、ビリルビン);心臓マーカー(例えば、クレアチンキナーゼ−MB);肝臓マーカー(例えば、アスパラギン酸トランスアミナーゼ);神経伝達物質(例えば、GABA、グリシン、生体アミン(例えば、ドーパミン、ノルエピネフリン、エピネフリン、ヒスタミン、セロトニン)、アセチルコリン、アデノシン、アナンドアミド);薬剤およびこれらの代謝産物(例えば、鎮静薬、精神安定薬、抗高血圧薬、麻薬)を含むが、これらに限定されない。
【0046】
ヒト医療および獣医学用標的分析物は、対象における疾患または状態の診断、予防または治療に使用することができる任意の有機化合物を含むことができる。例えば、ヒト医療および獣医学用標的分析物は、疾患マーカー(例えば、腫瘍関連抗原);紫外線遮断剤、造影剤;予防または治療剤(例えば、アレルゲン、抗生物質、抗真菌剤、抗菌剤、抗ヒスタミン剤、抗新生物剤、鎮痛薬、食欲抑制薬(anorexics)、駆虫剤、抗痙攣薬、抗うつ薬、抗糖尿病剤、止痢薬、抗ヒスタミン薬、抗炎症剤、抗片頭痛調合剤、制吐薬、抗パーキンソン症候群薬(antiparkinsonism drugs)、鎮痒薬、抗精神病薬、解熱薬、鎮痙薬、抗コリン作用薬、交感神経作動薬、キサンチン誘導体;カルシウムチャンネルブロッカー、ベータブロッカー、抗不整脈薬、抗高血圧薬、利尿薬、血管拡張薬を含む心血管有効剤(cardiovascular effective agents)、CNS刺激薬、咳および感冒に対する作用物質、鬱血除去剤、ホルモン、睡眠薬、免疫抑制薬、昆虫忌避剤、筋弛緩薬、副交感神経遮断薬、副交感神経作動薬、神経刺激薬、鎮静薬、精神安定薬、生理学的に活性なペプチドおよびタンパク質)を含むが、これらに限定されない。
【0047】
法化学用標的分析物は、被害者の身体からの試料など(例えば、組織または体液試料、毛髪、血液、精液、尿など)、犯罪現場から取られた試料に存在する任意の有機化合物を含むことができる。例えば、臨床化学用標的分析物は、毒物、薬剤およびこれらの代謝産物(例えば、鎮静薬、精神安定薬、抗高血圧薬および麻薬)、核酸、DNA、RNA、農薬、天然物、汚染物質ならびに工業用化合物を含むが、これらに限定されない。
【0048】
薬理学用標的分析物は、医薬品もしくはこれらの代謝産物であるまたは薬剤の設計、合成およびモニタリングに使用することができる任意の有機化合物を含むことができる。例えば、薬理学用標的分析物は、予防および/または治療剤、これらのプロドラッグ、中間体および代謝産物を含むが、これらに限定されない。
【0049】
食品産業および農業用標的分析物は、食品、飲料および/または他の食品産業/農業生産物の安全性をモニタリングすることに関係する任意の有機化合物を含むことができる。食品産業の分野における標的分析物の例は、ステロイド、可塑剤、病原体マーカー、農薬、殺真菌剤、汚染物質、アレルゲン(例えば、グルテンおよびナッツタンパク質)、マイコトキシン、魚介毒および抗生物質(例えば、エビにおけるクロラムフェニコール)を含むが、これらに限定されない。
【0050】
職場の安全用の標的分析物は、職場に存在しうる潜在的に有害な任意の有機化合物を含むことができる。例えば、職場の安全用の標的分析物は、溶媒、低揮発性物質、汚染物質、発癌性物質、毒素、農薬、殺真菌剤および職業曝露限度が(例えば、企業、政府、規制または行政機関により)設定されている任意の有機物質を含むが、これらに限定されない。
【0051】
環境汚染(または工業)用標的分析物は、環境(例えば、環境中の生物)にとって有害でありうる任意の有機化合物を含むことができる。例えば、環境汚染(または工業)用標的分析物は、持続性有機汚染物質(例えば、アルドリン、クロルデン、DDT、ジエルドリン、エンドリン、ヘプタクロル、ヘキサクロロベンゼン、マイレックス、ポリ塩化ビフェニール、ポリ塩化ジベンゾ−p−ダイオキシン、ポリ塩化ジベンゾフランおよびトキサフェン)、多環式芳香族炭化水素(例えば、ベンズ[a]アントラセンおよびクリセン)、揮発性有機化合物および環境生体異物(鎮痛薬、例えば、アセトアミノフェン、アセチルサリチル酸、ジクロフェナク、コデイン、イブプロフェン;抗生物質、例えば、マクロライド抗生物質、スルホンアミド、フルオロキノロン、クロラムフェニコール、チロシン、トリメトプリム、エリスロマイシン、リンコマイシン、スルファメトキサゾール、トリメトプリム;抗痙攣薬、例えば、カルバマゼピン、プリミドン;ベータブロッカー、例えば、メトプロロール、プロパノロール、ベタキソロール、ビソプロロール、ナドロール;X線媒質、例えば、イオプロミド、イオパミドール、イオヘキソール、ジアトリゾネート;細胞増殖抑制剤;ステロイドおよびホルモン、例えば、17α−エチニルエストラジオール、メストラノール、19−ノルエチステロンなど)を含むが、これらに限定されない。分析物は、無機分析物(例えば、リン化合物、ケイ素化合物、無機ポリマーなど)を含むこともできる。分析物は、油および石油化学製品(例えば、鉱油など)を含むこともできる。
【0052】
標的分析物は、アミノ酸(例えば、Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Trp、Cys、Met、Ser、Thr、Tyr、His、Lys、Arg、Asp、Glu、Asn、Gln、セレノシステイン、オルニチン、シトルリン、ヒドロキシプロリン、メチルリジン、カルボキシグルタメート)、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、糖タンパク質、リポタンパク質;ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、核酸、DNA、RNA、ペプチド−核酸;糖、単糖類、二糖類、オリゴ糖類、多糖類、デンプン、複合糖類;脂質、脂肪酸、脂肪、複合脂質、ステロイド;ビタミン(A、B
1、B
2、B
6、B
9、B
12、C、D、D
2、E、F、K、K
1、K
2);ホルモン(例えば、ペプチドホルモン(例えば、TRHおよびバソプレシン)、脂質ホルモン(例えば、ステロイドホルモンおよびエイコサノイド)、芳香族アミノ酸から誘導されたモノアミン(例えば、チロキシンおよびアドレナリン))、アンドロゲン(例えば、アナボリックステロイド、アンドロステンジオン、デヒドロエピアンドロステロン、ジヒドロテストステロン、テストステロン)、エストロゲン(例えば、エストラジオール、エストリオール、エストロン、17α−エチニルエストラジオール、メストラノール)、プロゲスターゲン(例えば、プロゲステロン、19−ノルエチステロン)、プロゲスチン(例えば、ノルエチンドロン、ノルエチノドレル、ノルエチンドロンアセテート、エチノジオールジアセテート、レボノルゲストレル、ノルエチステロン、ノルゲストレル、デソゲストレル、ゲストデン、ノルゲスチメート、ドロスピレノン、ジエノゲスト、ドロスピレノン、ネストロン(nestorone)、ノメゲストロールアセテートおよびトリメゲストン(trimegestone));ステロイド、例えば、昆虫ステロイド(例えば、エクジステロン)、脊椎動物ステロイド(例えば、性ステロイド/ホルモン、コルチコステロイド(グルココルチコイドおよびミネラルコルチコイドを含む(例えば、ヒドロコルチゾン、コルチゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾン、トリアムシノロンアセトニド、トリアムシノロンアルコール、モメタゾン、アムシノニド、ブデソニド、デソニド、フルオシノニド、フルオシノロンアセトニド、ハルシノニド、ベタメタゾン、デキサメタゾン、フルオコルトロン、ヒドロコルチゾン−17−ブチレート、ヒドロコルチゾン−17−バレレート、アクロメタゾンジプロピオネート(aclometasone dipropionate)、フルニソリド、ベクロメタゾンジプロピオネート))、アナボリックステロイド(例えば、テストステロン、ノルテストステロンおよびこれらの誘導体(例えば、17−アルファ位置でのアルキル化(例えば、メチルもしくはエチル)または17−ベータ位置でのエステル化))、コレステロールおよびこれらの誘導体(例えば、オキシステロールおよび胆汁酸))、植物ステロイド(例えば、フィトステロールおよびブラシノステロイド(例えば、β−シトステロール、カンペステロール、スチグマステロール、ブラシカステロール(brassicasterol)))、真菌ステロイド(例えば、エルゴステロール);工業用ポリマー(例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリアクリルアミド)およびこれらのモノマー;小型有機分子、例えば、薬剤および薬剤様分子またはこれらのフラグメントを含むことができる。
【0053】
多様な実施形態において、特に興味深い標的分析物は、ステロイド(好ましくは、テストステロン、コルチゾール、エストロン、エストラジオール、17−OH−プロゲステロンもしくはアルドステロンなどのステロイドホルモンもしくは性ホルモン);免疫抑制薬(例えば、シクロスポリンA、タクロリムス、シロリムス、エベロリムスもしくはミコフェノール酸);甲状腺マーカー(例えば、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、チログロブリン、トリヨードチロニン(T3)、遊離T3、チロキシン(T4)、遊離T4もしくはフェリチン);ビタミンもしくはこの代謝産物(例えば、25−ヒドロキシ−、1,25−ジヒドロキシ−もしくは24,25−ジヒドロキシ形態のビタミンD2もしくはビタミンD3);心臓マーカー(例えば、トロポニンもしくは脳性ナトリウム利尿ペプチド);アルファ−フェトプロテイン;アプリポタンパク質(applipoprotein)または乱用性薬物(例えば、ヒドロモルホン、他のオピオイド薬もしくは治療薬)を含む。
【0054】
試料
一般に、試料は、少なくとも1個の標的分析物を(例えば、上記に開示された部類または種類の分析物をマトリックスと一緒に)含む組成物である。試料は、固体、液体、気体、混合物、材料(例えば、抽出物、組織、生体などの中間的な一貫性のもの)またはこれらの組み合わせを含むことができる。多様な実施形態において、試料は、身体試料、環境試料、食品試料、合成試料、抽出物(例えば、分離技術により得たもの)またはこれらの組み合わせである。
【0055】
身体試料は、個体の身体から誘導された任意の試料を含むことができる。この文脈において、個体は、動物、例えば哺乳動物、例えばヒトでありうる。他の例示的な個体は、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、ネコ、イヌ、ヤギ、ヒツジ、ブタ、ウシまたはウマを含む。個体は、患者、例えば疾患を罹患しているまたは疾患を罹患していると疑われる個体でありうる。身体試料は、例えば疾患を研究または診断するために(例えば、病原体またはバイオマーカーの存在を検出および/または同定することにより)、例えば科学または医学的検査の目的で採取された体液または組織でありうる。身体試料は、細胞、例えば個体の身体試料の病原体または細胞(例えば、腫瘍細胞)を含むこともできる。そのような身体試料は、組織の生検(例えば、穿刺生検)を含む既知の方法および血液、気管支吸引、唾液、尿、糞便または他の体液の採取により得ることができる。例示的な身体試料は、体液、全血、血漿、血清、臍帯血(特に、経皮的臍帯血試料採取(PUBS)により得た血液、脳脊髄液(CSF)、唾液、羊水、母乳、分泌液、膿漿、尿、糞便、胎便、皮膚、爪、毛髪、臍、胃内容物、胎盤、骨髄、末梢血リンパ球(PBL)および実質臓器組織抽出物を含む。
【0056】
環境試料は、自然環境(例えば、海、土壌、空気および植物相)または人工環境(例えば、運河、トンネル、建築物)などの環境から誘導される任意の試料を含むことができる。そのような環境試料を使用して、環境汚染を発見、モニター、研究、制御、軽減および回避することができる。例示的な環境試料は、水(例えば、飲料水、河川水、地表水、地下水、飲用水、下水、排水、廃水または浸出水)、土壌、空気、堆積物、生物相(例えば、土壌生物相)植物相、動物相(例えば、魚)および土塊(earth mass)(例えば、掘削土(excavated material))を含む。
【0057】
食品試料は、食品(飲料を含む)から誘導される任意の試料を含むことができる。そのような食品試料を、例えば(1)食品が安全であるかを調べること;(2)食品の食用時に食品が有害な汚染物質を含有しているか(保持試料)もしくは食品が有害な汚染物質を含有していないかを調べること;(3)食品が認められた添加物のみを含有しているかを調べること(例えば、法規制の順守);(4)正確なレベルの必須成分を含有しているか(食品ラベルの申告が正確であるか)を調べること;または(5)食品に含有された栄養素の量を分析することを含む多様な目的のために使用することができる。例示的な食品試料は、動物、植物または合成由来の食用生産物(例えば、乳汁、パン、卵または食肉)、食料、飲料および保持試料などのこれらの一部を含む。食品試料は、果実、野菜、豆類、ナッツ、油脂種子、油脂果実、穀類、茶、コーヒー、薬草浸剤、ココア、ホップ、薬草、香辛料、糖科植物、食肉、脂肪、腎臓、肝臓、臓物、乳汁、卵、蜂蜜、魚および飲料を含むことができる。
【0058】
合成試料は、工業プロセスから誘導される任意の試料を含むことができる。工業プロセスは、生物学的な工業プロセス(例えば形質移入細胞を使用する発酵プロセスなどの、遺伝子情報を含有し、それ自体複製することができるもしくは生物学的な系において複製されうる生物学的材料を使用するプロセス)または非生物学的な工業プロセス(例えば、医薬品などの化合物の化学合成もしくは分解)でありうる。合成試料を使用して、工業プロセスの進展を調べるおよびモニターすること、所望の生産物の収量を決定するならびに/または副産物および/もしくは出発材料の量を測定することができる。
【0059】
較正物質
上記の概要に加えて、較正物質または内部較正物質は、化学組成(例えば、実験式)、構造(例えば、原子配置および結合)ならびに/または物理化学的特性に関して対応する標的分析物と同様であるが、質量分析器により内部較正物質と標的分析物の挙動が識別可能である化合物である。較正物質と分析物は、少なくとも共通の同じ基本構造(例えば、ステランなどの特徴的な単環式または多環式環構造)を有することができる。多くの実施形態において、化合物はこれらの化学組成および/または分子量に関して僅かしか異ならない。例えば、組成および/または質量における差は、(i)1個の基を同族基で置き換えること(例えば、同族基は炭素原子を1個多くまたは少なく有することができる(例えば、エチル(エチレン)は、メチルおよびプロピル(メチレンおよびプロピレン)と同族であると考慮することができる。)。);(ii)官能基を修飾すること(例えば、アミノ基のアセチル化;エステル化;メチル化;ヒドロキシル化;水和;ビオチン化;アミド、エステル、チオエステル、アセタール、ケタール基の開裂;脱カルボキシル化;脱メチル化;脱水);(iii)原子を元素周期表の同じ族の別の原子で置き換えること(例えば、1個のハロゲンを別のハロゲンで置き換えること);ならびに(iv)原子を前記原子の対応する同位体で置き換えること(例えば、
1Hが
2Hで置き換えられる。)からもたらされる可能性がある。
【0060】
更に、内部較正物質は、内部較正物質の物理化学的特性の少なくとも1つが標的分析物の対応する物理化学的特性と本質的に同一であるように、対応する標的分析物を模倣することができる。物理化学的特性は、その値が化合物の物理的および/または化学的状態を記載する、任意の測定可能な特性を含むことができる。例えば、物理化学的特性は、大きさ、質量、吸光度、発光、電荷、電位、等電点(pI)、流速(例えば、滞留時間)、磁場、回転、溶解度、粘度、他の物質(例えば、抗生物質、酵素)に対する反応性または親和性、毒性、所定の環境における化学安定性、別の化学物質の存在下での特定の物理的条件下における変換(例えば、分子解離、化学結合、レドックス反応)のセットを受ける能力、極性および疎水性/親水性を含むが、これらに限定されない。
【0061】
多様な実施形態において、内部較正物質およびこの対応する標的分析物は、質量分析法の前に試料を処理するために一般的に使用される1つ以上の技術では、実際的に互いに識別不能である。例えば、内部較正物質およびこの対応する標的分析物は、溶解度(溶媒、例えば水もしくは有機溶媒または溶媒の混合物中の)、保持時間(液体クロマトグラフィーなどの分離技術における)、親和性(例えば前記標的分析物に特異的な抗体に対する)、解離定数、酵素(例えばヒドロラーゼ、トランスフェラーゼ)に対する反応性および/または特異性に基づいて識別不能でありうる。
【0062】
内部較正物質は、一般に、分析される試料中に不在であるまたは無視できる(そうでなければ補うことができる)初期量である。内部較正物質は、合成化合物、例えば天然に生じない(例えば、試料中に)または天然存在度が質量分析器の検出限界を下回る化合物でありうる。例えば、内部較正物質は、対応する標的分析物の同位体標識類似体、対応する標的分析物の誘導体または対応する標的分析物の代謝産物でありうる。
【0063】
同位体は、同じ数の陽子であるが、異なる数の中性子によって核種と関連する(すなわち、同じ原子番号を有し、したがって同じ化学元素である。)。同じ化学元素の異なる同位体は、本質的に同じ化学特性を一般に有し、したがって化学および/または生物学系において本質的に同一に挙動する。したがって、対応する標的分析物の同位体標識類似体は、標的分析物の少なくとも1個の原子がその同位体で置換されていることを除いて、化学組成および構造が標的分析物と本質的に同一である化合物を含む。
【0064】
多様な実施形態において、標的分析物の少なくとも1個の原子は、最も存在度のある天然に生じる同位体であり、較正物質の置換同位体は、存在度の少ない同位体である。例えば、標的分析物は、
1H(
12C、
14N、
16Oまたは
80Se)の位置を含むことができ、較正物質は、その位置の原子を
2H(それぞれ
13C、
15N、
17O、
18O、
33S、
36Sおよび
74Se)に置換することができる。同位体の天然存在度は、49%未満(例えば、全ての存在する同位体の総量の40%、30%、20%、10%、5%、4%、3%、2%、1%、0.9%、0.8%、0.7%、0.6%、0.5%、0.4%、0.3%、0.2%、0.1%、0.09%、0.08%、0.07%、0.06%、0.05%、0.04%、0.03%、0.02%または0.001%未満)でありうる。同位体標識類似体は、安定同位体を使用することができる。
【0065】
原子の安定同位体は、非放射性または放射性でありうる。安定同位体が放射性である場合、その半減期は、宇宙の年齢よりも長い半減期など、測定するには長過ぎ、例えば、13.75×10
9年またはそれ以上の半減期である。安定同位体は、
2H、
6Li、
11B、
13C、
15N、
17O、
18O、
25Mg、
26Mg、
29Si、
30Si、
33S、
34S、
36S、
37Cl、
41K、
42Ca、
43Ca、
44Ca、
46Ca、
48Ca、
46Ti、
47Ti、
49Ti、
50Ti、
50V、
50Cr、
53Cr、
54Cr、
54Fe、
57Fe、
58Fe、
60Ni、
61Ni、
62Ni、
64Ni、
65Cu、
66Zn、
67Zn、
68Zn、
70Zn、
71Ga、
73Ge、
76Ge、
74Se、
76Se、
77Se、
78Se、
82Se、
81Br、
84Sr、
96Zr、
94Mo、
97Mo、
100Mo、
98Ru、
102Pd、
106Cd、
108Cd、
113In、
112Sn、
112Sn、
114Sn、
115Sn、
120Te、
123Te、
130Ba、
132Ba、
138La、
136Ce、
138Sn、
148Nd、
150Nd、
144Sm、
152Gd、
154Gd、
156Dy、
158Dy、
162Er、
164Er、
168Yb、
170Yb、
176Lu、
174Hf、
180m1Ta、
180W、
184Os、
187Os、
190Pt、
192Pt、
196Hgおよび
204Pbを含むが、これらに限定されない。好ましい安定同位体の例は、
2H、
11B、
13C、
15N、
17O、
18O、
33S、
34S、
36S、
74Se、
76Se、
77Se、
78Seおよび
82Seを含む。
【0066】
同位体標識類似体は、1個からn個の間の原子を同位体で置換することができ、ここでn個は標的分析物分子における原子の数である。多様な実施形態において、同位体標識類似体は、1、2、3、…、n個の置換を含むことができ、次に内部較正物質のセットを形成することができる。例えば、第1較正物質は1個の置換を有する類似体、第2較正物質は2個の置換を有する類似体、第3内部較正物質は3個の置換を有する類似体などでありうる。同位体標識類似体は、(例えば、1個を超える置換が類似体の間で生じる場合および/または同位体が最も一般的な天然に生じる同位体と1質量単位を超えて異なる場合)1以上の質量単位によって変わりうる。所定の類似体は、置換位置の原子に関して同位体的に純粋でありうる。
【0067】
同位体的に純粋とは、化合物(例えば標的分析物)に含有された所定の種類の原子の少なくとも95%(例えば、
1Hなどの高存在度同位体)が、別のもの、好ましくは同じ元素の存在度の少ない同位体(例えば、
2H)で置き換えられていることを意味することができる。例えば、所定の種類の原子の少なくとも96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、99.91%、99.92%、99.93%、99.94%、99.95%、99.96%、99.97%、99.98%もしくは99.99%またはそれ以上は、別のもの、好ましくは同じ元素の存在度の少ない同位体で置き換えることができる。
【0068】
標的分析物の誘導体は、誘導体化されていることを除いて、化学組成が標的分析物と同様である化合物を含む。誘導体化するまたは誘導体化は、化合物(出発材料)から生成物への、すなわち出発材料と同様の構造を有する誘導体への変換に関する。誘導体は、変更された反応性、溶解度、沸点、融点、凝集状態または化学組成など、(例えば、出発材料と比べて)1つ以上の変更された物理化学的特性を示すことができる。変更された物理化学的特性を使用して、誘導体および/または出発材料の定量化および/または分離に使用することができる。誘導体化の例は、還元(酵素を用いるまたは用いない)、酸化(酵素を用いるまたは用いない)、アシル化(例えば、アセチル化)、アルキル化(例えば、メチル化)、加水分解(例えば、エステル、アミド、エポキシド基の加水分解)、付加(例えば、二重または三重結合の水素化)、縮合(例えば、イミン結合の生成)、脱離(例えば、還元的脱離または水の脱離)および置換(例えば、求核または求電子置換)を含む。
【0069】
代謝産物は、天然(または人工的な)生化学プロセスによる有機化合物の代謝、例えば変換、分解および脱離による中間体および生成物を含む。代謝産物は、例えば1500Da未満の分子量を有する小型分子でありうる。代謝産物は、内因性または外因性(例えば、医薬品)化合物でありうるまたは化合物に由来しうる。
【0070】
質量分析器における挙動に基づいて識別可能である特性は、2つ以上の化合物(例えば、第1および第2内部較正物質;第1もしくは第2内部較正物質と標的分析物;または第1内部較正物質、第2内部較正物質および標的分析物)が、これらの質量の差(すなわち、MS器具もしくは所定のカットオフにより解像されうる質量の差)および/またはフラグメンテーションパターンの差に起因して、質量分析器により互いに識別されうる状況を含む。
【0071】
例えば、2つの化合物(例えば、第1内部較正物質および標的分析物)は、これらの質量の差に起因して質量分析器により互いに識別されうる。2つの化合物(例えば、第1内部較正物質および標的分析物)の質量は、少なくとも1(または2、3、4、5、…)質量単位で異なり、ここで化合物は同位体類似体である。質量の差は、1質量単位未満または1を超える非整数質量単位でありうる。器具の解像度および/または所望の解像度カットオフに応じて、質量の差は、±0.1、0.01、0.001、0.0001、0.0001質量単位の差でありうる。これらの2つの化合物の質量の差は、異なる同位体の存在(例えば、2つの化合物の一方における低い同位体存在度に対する2つの化合物の他方における高い同位体存在度)および/または異なる化学部分の存在に由来しうる。
【0072】
任意の2つの化合物(例えば、第1内部較正物質および標的分析物)は、また、これらのフラグメンテーションパターンの差に起因して質量分析器により互いに識別されうる。化合物のフラグメンテーションパターンは、質量分析器により化合物から生成された化合物特異的なフラグメントのセット(例えば、生成/娘イオン)に関連する。2つ以上の化合物(例えば、較正物質および対応する標的分析物、2個の較正物質)は、本質的に同じ方法でMS分析の際に細分化され、それにより化学組成および構造が同様のフラグメントを生成することができる。しかし、1つの化合物(例えば、較正物質)から生成されたフラグメントは、使用される器具により(または所定のカットオフにより)解像されうる質量の差によって、他の化合物(例えば、対応する標的分析物)から生成された対応する構造的に同様のフラグメントと異なる可能性がある。
【0073】
内部較正物質として使用することができる多くの化合物は、市販されているまたは既知の有機合成化学方法の使用により調製することができる。内部較正物質は、例えば、以下の一般スキーム(a)所定の標的分析物を、そのフラグメンテーションパターンを得るために質量分析器のフラグメンテーションに付すこと;(b)前記フラグメンテーションパターンの特定のフラグメントを選択すること;(c)質量の解像可能な差により工程(b)で選択されたフラグメントと異なり、工程(a)で得られた他のフラグメントおよびイオンのフラグメンテーションパターンから識別可能である、工程(b)において選択されたフラグメントに基づいて同位体標識フラグメントを設計すること;(d)質量分析器により工程(c)で設計された前記同位体標識フラグメントを生じる同位体標識内部較正物質を設計すること;ならびに(e)前記同位体標識内部較正物質を調製することに従って、選択することができる。
【0074】
図1は、本発明のMSに基づいたアッセイのために内部較正物質を選択する別の例示的な方法を概説するフローチャートを表す。
【0075】
工程1.1は、分析物を選択することを含む。分析物は、使用者の必要性に基づいてならびに/または本明細書に記載された分析物の分類およびリストから選択することができる。
【0076】
工程1.2は、選択された分析物のMS挙動を決定することを含む。例えば、MS挙動は、分析物質量、イオン化特性、フラグメンテーション特性などの1つ以上の特性を確定する最終アッセイのために選択されたMS方法(例えば、MS、MS/MS、高解像度など)の使用により選択分析物を分析して、決定することができる。
【0077】
工程1.3は、1つ以上の内部較正物質構造を提案するために、工程1.2からの情報を組み込む。例えば、内部較正物質が安定同位体標識類似体である場合、分析物および全ての内部較正物質が互いに識別可能であり、これらの応答がMSにより個別に測定可能であるように、適切な標識位置を確認して、(適切であれば)前駆イオンおよび生成イオンの十分な追加質量を提供することができる。
【0078】
工程1.4は、提案された内部較正物質の推定MSパラメーターを使用して、典型的な試料を干渉についてスクリーニングすることを含む。例えば、この工程は、提案された内部較正物質のために提案されたMSパラメーターを使用して(例えば、MRMモードのタンデム四重極MSと連結されたLCを使用して)、内部較正物質のために提案された特定の前駆体>生成物移行をモニターする、典型的な試料(例えば、処理済血漿、尿、飲料水)を分析するサブ工程1.4.1を含むことができる。この分析は、このアッセイにおいても干渉しうる、典型的な試料において予測される干渉を同定することができる。したがって、干渉が最終アッセイにおいて予測される場合、提案された内部較正物質を、これらが購入または合成される前に再設計することができ、それによって、アッセイを開発する時間および費用を最小限にし、頑強で成果のあるアッセイを開発する機会を最大限にすることができる。
【0079】
工程1.5は、干渉が1つ以上の内部較正物質に対して存在するかを決定することを含む。干渉が生じる場合、アッセイを開発している当事者は、工程1.3に戻って、干渉を回避することが予測される新たな内部較正物質構造を提案するべきである。材料の干渉が生じない場合(または干渉を補うことができる場合)、アッセイを開発している当事者は次の工程に進むことができる。
【0080】
工程1.6は、工程1.5において選択された内部較正物質を得ることを含む。選択された内部較正物質は、商業供給者からまたは慣用の合成により得ることができる。安定同位体標識内部較正物質では、合成が、分子の適切な部分に適切な同位体標識を提供することができる。類似体内部較正物質では、合成が、例えばペプチドまたはタンパク質分析物の分析のために修飾アミノ酸配列を提供することができる。合成は、分析物と内部較正物質が質量分析の使用により互いに識別可能になり、これらの応答が個別に測定されることを可能にする1つ以上の所望の特性を提供することができる。
【0081】
工程1.7は、分析物の標準参照に対して最適化されたMSパラメーターを使用して、選択された内部較正物質を分析することを含む。例えば、この工程は、分析物標準に対するそれぞれの内部較正物質の相対応答を決定するサブ工程1.7.1を含むことができる。
【0082】
工程1.8は、相対応答係数または濃度値を内部較正物質貯蔵材料に割り当てることを含む。内部較正物質は、安定同位体標識による原子の置換(例えば、
2Hで置換された
1H)または類似体内部較正物質の場合はアミノ酸の置換;官能基の置換などに起因して、親分析物と比較して僅かに異なるイオン化効率またはフラグメンテーション効率を有する可能性がある。または、少量の内部較正物質のみが利用可能である場合、正確に分かっている濃度で溶液を調製することが可能ではないことがある。したがって、特定の状況下では、目的分析物の既知濃度の応答に対して内部較正物質のMS応答を測定することが必要である。幾つかの実施形態において、既知濃度は、参照標準、例えばNISTから追跡可能である。測定値を使用して、相対応答係数を計算するおよび/または見掛け分析物濃度値を内部較正物質溶液に割り当てることができる。例えば、90%の相対応答を有する内部較正物質では、特定の状況下において、結果を0.9で割ることにより、試料において決定された分析物濃度を修正することまたは内部較正物質の真の濃度の0.9×の濃度値を内部較正物質に割り当てることが、有利でありうる。
【0083】
工程1.9は、それぞれの較正物質がアッセイに組み込まれたときに分析物の異なる既知濃度を表し、一緒になって、内部較正物質が、適切な範囲を網羅する較正を形成するように、確定された比で内部較正物質の混合物を調製することを含む。内部標準混合物を、多様な方法により、例えば、試料調製の際の較正物質溶液の手作業による添加;内部較正物質が予め装填された管または他の容器への確定量の試料の添加;質量分析器に(例えば、クロマトグラフィー装置を介して)直接的もしくは間接的に連結されうるまたは一体型分析器の一部でありうる試料調製装置による試料への内部較正物質溶液の自動添加によりアッセイに組み込むことができる。単一アッセイが複数の分析物による結果を生成できるように、複数セットの内部較正物質を上記の手段のいずれかにより単一試料に加えることも可能である。較正物質組成物についての更なる記載および例は、上記の概要および以下の組成物の章において考察されている。
【0084】
表1は、5つの異なる適用領域における多様な分析物の定量化のために安定同位体標識および/または類似体内部較正物質を開発する、
図1に関連して考察された方法を適用した結果を提示する。
【0086】
内部較正物質を選択するこれら2つの例示的な方法は、説明のためである。当業者は、個別の工程を追加する、省くおよび/または繰り返すことができ、更なる代替的な方法が可能であることを理解する。
【0087】
組成物およびキット
上記の概要に加えて、本発明の組成物は、第1較正物質の第1既知量および第2較正物質の第2既知量を含むことができ、ここで第1既知量と第2既知量は異なり、第1較正物質、第2較正物質および標的分析物は、質量分析により単一試料中でそれぞれ識別可能である。本発明のキットは、本発明の組成物のいずれか1つ以上を、方法を実施するためおよび/または本発明の機器を用いるための使用説明書(および/または他の/追加的な手段)と一緒に含むことができる。
【0088】
標的分析物を定量化するため、組成物は、標的分析物に対応する少なくとも2個の内部較正物質を必要とする。しかし、特定の状況において、標的分析物に対応する2個を超える内部較正物質を含むことが(例えば、精密度および/または精度を達成するため、シグナルノイズおよび/もしくは干渉を減少するためまたは測定範囲を広げるため)有利でありうる。したがって、内部較正物質のセットは、標的分析物のために2、3、4、5、6、7、8、9、10個および任意の数までの内部較正物質を含むことができる(例えば、理論最大値は、所定の標的分析物のために設計および使用できる較正物質の最大数によって、例えば、安定同位体で置換することができる位置の数ならびに標的分析物、他の内部較正物質および試料マトリックスの文脈において使用可能なシグナルを生成する位置の数によって決定することができる。)。セットのそれぞれの内部較正物質は、MSにより互いにおよび標的分析物から識別可能であるべきである。
【0089】
標的分析物を定量化するため、組成物は、内部較正物質の少なくとも2個が異なる量/濃度で存在することも必要とする。多様な実施形態において、それぞれの内部較正物質の量は異なる。しかし、特定の実施形態は、内部較正物質の2個以上を(例えば、内部較正物質の少なくとも2個が異なる量/濃度で存在する限り)本質的に同じ量/濃度で含むことができる。例えば、第3内部較正物質の量は、第1内部較正物質の第1量および第2内部較正物質の第2量と異なる必要はない(例えば、第3内部較正物質の量は、第1内部較正物質の第1量または第2内部較正物質の第2量と同一でありうる。)。
【0090】
2個以上の内部較正物質の量を、標的分析物の定量化を促進するために選択することができる。例えば、内部較正物質の量を、(例えば、特定の標的分析物が所定の範囲内で変動することが知られている場合)分析物の特定の分析範囲にわたって精度および精密度を提供するために選択することができる。別の例では、内部較正物質の量を(例えば、標的分析物が広範囲に変動することが予測されるまたは異なる特性を有する複数の分析物が分析される場合)、器具の分析範囲にわたって最大限の柔軟性を提供するために選択することができる。
【0091】
多様な実施形態において、2個以上の内部較正物質は、分析される試料において標的分析物の分析範囲の一部または本質的に全てに及ぶ。分析範囲は、意味のあるデータを(例えば、所定の統計パラメーターの範囲内で)集めることができる範囲を記載することができる。分析範囲は、質量分析器における内部較正物質もしくは標的分析物の検出限界によりおよび/または試料中の標的分析物の予測量により定義することができる。
【0092】
したがって、1個以上の内部較正物質の量は、試料中の標的分析物のほぼ予測量でありうる(例えば、試料中の標的分析物の予測量の…、50%、…、95%、96%、97%、98%、99%、100%、101%、102%、103%、104%、105%、…、150%、…でありうる。)。試料中の標的分析物の量が桁で変動することが予測される場合、1個以上の内部較正物質の量は、例えば、試料中の標的分析物の予測量の…、1%、…、10%、…、100%、…、1000%、…、10,000%でありうる。
【0093】
1個以上の内部較正物質の量は、器具における内部較正物質の分析範囲のほぼ下端/下端より上でありうる(例えば、器具における内部較正物質の分析範囲の下端の…、95%、96%、97%、98%、99%、100%、101%、102%、103%、104%、105%、…、1000%、…、10,000%でありうる。)。同様に、1個以上の内部較正物質の量は、器具における内部較正物質の分析範囲のほぼ上端/上端より下でありうる(例えば、器具における内部較正物質の分析範囲の上端の0.1%、…、1%、…、95%、96%、97%、98%、99%、100%、101%、102%、103%、104%、105%、…でありうる。)。
【0094】
任意の2個の内部較正物質の相対量(例えば、最高および最低量で存在する内部較正物質)は、例えば、1.1、1.15、1.20、1.25、1.3、1.4、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、90、100、150、200、250、300、350、400、450、500、600、700、800、900、1,000、10,000、100,000、1,000,000またはそれ以上の比により定義することができる。3個以上の内部較正物質を含む実施形態において、内部較正物質の量の間の差は、線状(例えば、2×、3×、4×、…)、指数関数的(例えば、10
1×、10
2×、10
3×、…)、無作為またはこれらの組み合わせもしくは変形でありうる。
【0095】
本発明は、単一試料中で1個を超える標的分析物を定量化するための組成物も包含する。例えば、標的分析物および追加の標的分析物(例えば、単一試料中の合計2個の分析物)を定量化するための組成物は、(i)第1較正物質の第1既知量および第2較正物質の第2既知量を含むことができ、ここで第1既知量と第2既知量は異なり、(ii)第3較正物質の第3既知量および第4較正物質の第4既知量を含むことができ、ここで第3既知量と第4既知量は異なり、第1較正物質、第2較正物質、第3較正物質、第4較正物質、標的分析物および追加の標的分析物は、質量分析により単一試料中でそれぞれ識別可能である。組成物が第2の追加の標的(すなわち、単一試料中の合計3個の分析物)を定量化するように適合された場合、第5較正物質の第5既知量および第6較正物質の第6既知量を更に含むことができ、ここで第5既知量と第6既知量は異なり、第1較正物質、第2較正物質、第3較正物質、第4較正物質、第5較正物質、第6較正物質、標的分析物、追加の標的分析物および第2の追加の標的分析物は、質量分析により単一試料中でそれぞれ識別可能である。
【0096】
複数の分析物(例えば、合計2、3、4、5、6、7、8、9、…個の分析物)を定量化する更なる組成物は、例えば、単一試料中に潜在的の存在する各標的分析物に2個以上の内部較正物質を組み合わせることによって生成することができる。幾つかの場合において、例えば、同様の特性を有する複数の分析物が測定される場合、複数の較正物質の1個以上を使用して、(例えば、オピオイドパネルにおける)複数の異なる分析物を定量化することができる。上記に記載されたように、各標的分析物における2個の内部較正物質は、異なる量で存在するべきである。更に、多様な実施形態において、標的分析物および内部較正物質は、質量分析により単一試料中で全て識別可能であるべきである。異なる標的分析物は、それぞれ独立して、異なる数の対応する内部較正物質を有することができる。異なる内部較正物質は、標的分析物の異なる安定同位体類似体、類似体、誘導体、代謝産物、関連化合物またはこれらの組み合わせから本質的になることができる。
【0097】
特定の実施形態では、他の方法で代替的に識別可能であれば、全ての内部較正物質が、質量分析器における挙動に基づいて互いにおよび全ての対応する標的分析物から厳密に識別可能である必要はない。内部較正物質は、質量分析器による分析の前に試料を処理するために一般的に使用される1つ以上の技術により識別可能でありうる。例えば、技術は、固相抽出、液−液抽出、クロマトグラフィー、電気泳動、沈殿、誘導体化またはこれらの組み合わせを含むことができる。内部較正物質は、1つ以上の物理化学的特性に基づいて識別可能でありうる。例えば、物理化学的特性は、溶解度(溶媒、例えば水もしくは有機溶媒または溶媒の混合物中の)、保持時間(液体クロマトグラフィーなどの分離技術における)、親和性(例えば前記標的分析物のためにマトリックスに特異的な抗体に対する)、解離定数、酵素に対する反応性および/または特異性を含むことができる。
【0098】
本発明の組成物は、乾燥調合剤および液体調合剤(例えば、液剤、乳剤、懸濁剤など)を含む。調合剤は、内部較正物質(例えば、乾燥に適合しないもしくは液体中で不安定である可能性がある。)または試料(例えば、液体が混合を促進することを必要としうるおよび試料と適合するために水性であるもしくは有機性であるもしくはイオン/pHが平衡している必要がありうる。)との適合性の要件によって決定することができる。
【0099】
液体調合剤は、内部較正物質、試料およびMS分析と適合する多様な無機もしくは有機溶媒またはこれらの混合物を含むことができる。幾つかの実施形態において、溶媒は調製、抽出または分離(例えば、クロマトグラフィー移動相および媒体)と適合性があるように選択される。例示的な溶媒は、水、アセトニトリル、脂肪族アルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール)、ヘキサフルオロアセトンおよびこれらの組み合わせを含む。溶媒は、緩衝塩(例えば、酢酸アンモニウム)、無機もしくは有機酸(例えば、ギ酸、トリフルオロ酢酸、オルトリン酸、ヘプタフルオロ酪酸)および/または無機もしくは有機塩基(例えば、NH
3)などの添加剤を含むことができる。
【0100】
乾燥調合剤は、空気乾燥、真空乾燥、噴霧乾燥、円筒乾燥、誘電乾燥、フリーズドライ(例えば、凍結乾燥)、超臨界乾燥またはこれらの組み合わせなどの多様な従来の乾燥技術により調製することができる。乾燥調合剤は、液体、例えば溶媒(例えば水)を実質的に含まない調合剤を含む。多様な実施形態において、乾燥組成物を、10%w/w未満の液体(例えば、9%w/w未満の液体、8%w/w未満の液体、7%w/w未満の液体、6%w/w未満の液体、5%w/w未満の液体、4%w/w未満の液体、3%w/w未満の液体、2%w/w未満の液体、1%w/w未満の液体、0.5%w/w未満の液体または0.1%w/w未満の液体)を有するように定量化することができる。
【0101】
本発明の組成物は、1つ以上の追加の物質、例えば、組成物の安定性を改善する、試料の処理を改善もしくは促進するおよび/または標的分析物の分析を可能にする、改善するもしくは促進する物質を含むことができる。そのような追加の物質は、抗微生物剤(例えば、抗生物質、アジ化物)、酸化防止剤、還元剤、pH調整剤(例えば、無機および/もしくは有機酸、塩基または緩衝液)、キレート剤(例えば、EDTA)、洗剤、カオトロピック剤、プロテアーゼインヒビター(例えば、試料中のペプチド/タンパク質の分解が回避されるべき場合)、DNaseインヒビター(例えば、試料中のDNAの分解が回避されるべき場合)、RNaseインヒビター(例えば、試料中のRNAの分解が回避されるべき場合)、ビーズ(例えば、細胞膜を分裂させるビーズまたはイオン交換、磁気、サイズ排除および/もしくは分配の特性を有するビーズ)、プロテアーゼ(例えば、試料中のペプチド/タンパク質の分解が望ましい場合)、DNase(例えば、試料中のDNAの分解が望ましい場合)、RNase(例えば、試料中のRNAの分解が望ましい場合)ならびに溶媒(例えば、組成物が液体調合剤の形態である場合)を含む。
【0102】
幾つかの実施形態において、組成物(例えば、市販のキットに使用される組成物)は、品質管理(QC)材料、例えば既知量の標的分析物を単独または前記標的分析物に特異的な内部較正物質のセットの1個以上の内部較正物質と組み合わせて含有する乾燥または液体調合剤を含む。多様な実施形態において、QCはマトリックスにおいて測定される。キットは、使用者が自身のブランクマトリックスを供給するためのQCとして、純粋な分析物を含むことができるまたは代替的にキットは、予め添加されているもしくはキットに提供された純粋なQC材料に添加するために所望の使用により選択されうる1つ以上のブランクマトリックスを含むことができる。
【0103】
例えば、キットは、内部較正物質/標的分析物の全てのセットのためにQC材料を含むことができる。組成物は、例えば、内部較正物質およびQC材料の単一混合物を含むことができる。キットは、例えば、内部較正物質の1つ以上の混合物ならびに1つ以上の対応するQC材料を含むことができる。
【0104】
本発明の組成物は、少なくとも1つの試料容器を画定する試料ホルダーに含有されうる。試料ホルダーは、密閉式(例えば、密閉バイアル、すぐに使用できる管などの密閉管、6、24または96ウエルプレートなどの密閉マイクロタイタープレートなど)でありうる。バイアル、管およびプレートなどの多数の試料容器は当該技術において知られている。
【0105】
多様な実施形態において、本発明の組成物は、1つ以上の区画を有する試料ホルダーに含有されうる。一つの例において、試料ホルダーの1つ以上の区画は、1区画あたり、内部較正物質(すなわち、上記に記載された内部較正物質の1つ以上のセット)を1個の試料(例えば、1個以上の標的分析物を含む)の分析のために十分な量で含有する。
【0106】
幾つかの実施形態において、試料ホルダーは、試料容器のアレイを画定し、各容器は同一の組成物(すなわち、各標的分析物あたり2個以上の内部較正物質のセット)を含有または収容し、それによって、複数の試料を共通の分析パネルに対して分析することを促進する。あるいは、試料ホルダーは、試料容器のアレイを画定することができ、各容器は異なる組成物(すなわち、各標的分析物あたり2個以上の内部較正物質の異なるセット)を含有または収容し、それによって、単一試料を複数の分析パネルに対して分析することを促進する。
【0107】
別の実施形態において、組成物は、複数の試料の分析のために十分な量および割合で内部較正物質(例えば、内部較正物質の1つ以上のセット)を含有する1つの区画(例えば、密閉管またはバイアル)に含有される。内部較正物質は、溶媒の添加により液体調合剤に再構成されうる乾燥調合剤でありうる。再構成された液体調合剤を、分析される複数の試料のそれぞれに等しいアリコートで添加することができ、それによって、各試料が同じ品質および量の内部較正物質を含むことを確実にすることができる。
【0108】
本発明の組成物は、すぐに使用できる反応管、例えば、試料処理または分析に直接使用できるプレアリコート反応管に含有されうる。プレアリコート反応管は、1つ以上の試料の分析のために十分な量および割合で内部較正物質を含有することができる。例えば、反応管は、3セットの内部較正物質を含有することができ、ここで各セットは、4個の内部較正物質を含有し、互いに異なる内部較正物質の各セット内の内部較正物質の量を含有する。管を(例えば、ねじ蓋、スナップ式蓋または穴開式蓋(puncture cap)により)確実に閉めることができる。例示的な管は、1mL未満、1から15mLまたは1から2mLの範囲(例えば、1.5mL)の容積を有することができる。一般に、試料容器の容積は、処理/分析される試料の性質および量に基づいて選択することができる。
【0109】
較正物質は、(i)個別の較正物質、(ii)1個の標的分析物あたり2個以上の較正物質のセット、(iii)2個以上の標的分析物との較正物質のセットを含むパネルならびに(iv)これらの組み合わせおよび変形を含む組成物に提供されうる。使用者またはプログラム化された機器は、そのような組成物(例えば、iiまたはiii)をアッセイに直接使用することができる。あるいは、使用者またはプログラム化された機器は、特定の試料、分析物または分析物のパネルをアッセイするため、予め決定されたまたはカスタマイズされた組成物の調製にそのような組成物(例えば、i−iv)を使用することができる。カスタマイズ組成物は、ランダムアクセス稼働および/または複数分析物パネルを単一試料で1回実施することに有利でありうる。したがって、本発明の組成物は、本質的にあらゆるアッセイおよびアッセイフォーマットにおいて柔軟性および適合性をもたらす。
【0110】
本発明のキットは、本明細書に記載されている組成物のいずれか1つ以上を、方法を実施するためおよび/または本発明の機器を用いるための使用説明書(および/または他の/追加的な手段)と一緒に含むことができる。そのような方法および機器は、次に下記において考察される。
【0111】
方法
本発明は、質量分析により標的析物を定量化する方法を特長とする。方法は、第1較正物質の第1既知量を含み、第2較正物質の第2既知量を含み、潜在的に標的分析物を含む単一試料からの第1較正物質シグナルを含み、第2較正物質シグナルを含み、潜在的に標的分析物シグナルを含む質量分析器シグナルを得ることを含む。第1既知量と第2既知量は異なり、第1較正物質、第2較正物質および標的分析物は、(例えば、質量分析により)単一試料中でそれぞれ識別可能である。方法は、第1較正物質シグナル、第2較正物質シグナルおよび標的分析物シグナルを使用して、単一試料中の標的分析物を定量化することも含む。
【0112】
較正物質および分析物の特性および選択の文脈で上記に考察されたように、方法は、所定の分析物に2個を超える較正物質を用いることができる。例えば、3個の較正物質を使用する方法は、第3較正物質の第3既知量を更に含む単一試料中からの第3較正物質シグナルを質量分析器シグナルから得ることを含むことができ、ここで(i)第1既知量、第2既知量および第3既知量は異なり、(ii)第1較正物質、第2較正物質、第3較正物質および標的分析物は単一試料中でそれぞれ識別可能であり、(iii)標的分析物を定量化することは、第3較正物質を使用することを含む。4個の較正物質を使用する方法は、第4較正物質の第4既知量を更に含む単一試料中からの第4較正物質シグナルを質量分析器シグナルから得ることを更に含むことができ、ここで(i)第1既知量、第2既知量、第3既知量および第4既知量は異なり、(ii)第1較正物質、第2較正物質、第3較正物質、第4較正物質および標的分析物は単一試料中でそれぞれ識別可能であり、(iii)標的分析物を定量化することは、第4較正物質を使用することを含む。
【0113】
追加の較正物質を、標的分析物定量化の精密度および/または精度を増加するために潜在的に使用することができる。追加の較正物質は、マトリックス効果が較正物質シグナルを不明瞭にするまたは歪ませることが予測される場合に使用することもでき、それによって、較正物質シグナルによるあらゆる問題にもかかわらず、正確な較正曲線(または式)を決定できることを確実にする。そのような追加の較正物質は、一般に、所定の標的分析物における他の較正物質と異なる濃度である。しかし、幾つかの実施形態において、そのような追加の較正物質は、所定の標的分析物における2個の較正物質が異なる量で存在する限り、別の較正物質と同じまたは本質的に同じ濃度でありうる。
【0114】
較正物質および分析物の特性および選択の文脈で上記に考察されたように、方法は、所定の試料中の2個以上の分析物を定量化することができる。例えば、2個の分析物(例えば、標的分析物および追加の標的分析物)を定量化する方法は、(i)第3較正物質の第3既知量を含み、第4較正物質の第4既知量を含み、潜在的に追加の標的分析物を含む単一試料からの第3較正物質シグナル、第4較正物質シグナルおよび追加の標的分析物シグナルを質量分析器シグナルから得ること(ここで、第3既知量と第4既知量は異なり、第1較正物質、第2較正物質、第3較正物質、第4較正物質、標的分析物および追加の標的分析物は、単一試料中で互いに識別可能である。);ならびに(ii)第3較正物質シグナル、第4較正物質シグナルおよび追加の標的分析物シグナルを使用して、単一試料中の追加の標的分析物を定量化することを含むことができる。3個の分析物(例えば、標的分析物、追加の標的分析物および第2の追加の標的分析物)を定量化する方法は、(i)第5較正物質の第5既知量を含み、第6較正物質の第6既知量を含み、潜在的に第2の追加の標的分析物を含む単一試料からの第5較正物質シグナル、第6較正物質シグナルおよび第2の追加の標的分析物シグナルを質量分析器シグナルから得ること(ここで、第5既知量と第6既知量は異なり、第1較正物質、第2較正物質、第3較正物質、第4較正物質、第5較正物質、第6較正物質、標的分析物、追加の標的分析物および第2の追加の標的分析物は、単一試料中で互いに識別可能である。);ならびに(ii)第5較正物質シグナル、第6較正物質シグナルおよび第2の追加の標的分析物シグナルを使用して、単一試料中の第2の追加の標的分析物を定量化することを更に含むことができる。
【0115】
質量分析器シグナルを得る異なる方法は、当該技術において知られている。多様な実施において、質量分析法は、1つ以上の化合物をイオン化して荷電分子または分子フラグメントを生成し、これらの質量電荷比を測定することを含む(Sparkman,O.D.(2000)Mass spectrometry desk reference.Pittsburgh:Global View Pub.ISBN0−9660813−2−3を参照すること。)。そのような手順は、以下の工程含むことができる:1つ以上の化合物を含有する混合物をMS器具に装填し、1つ以上の化合物を気化する工程;混合物の構成要素をイオン化して、荷電粒子(イオン)を形成する工程;イオンをこれらの質量電荷比に従って分析器により電磁的に分離する工程;イオンを(例えば、定量的な方法により)検出する工程;およびイオンシグナルを質量スペクトルに変換する工程。
【0116】
質量分析器は、例えば以下のモードのいずれかで稼働することができる:(1)完全走査、例えば、質量分析器はm/z規模で2つの遠隔点(例えば0および10000)の間の全てのイオンを検出する;(2)単一イオンモニタリング(SIM)または単一イオン記録(SIR)、例えば、質量分析器は特定のm/z値を有するまたは小さな質量m/z範囲内(例えば、1もしくは2質量単位の範囲)にあるイオンのみを検出する;(3)複数反応モニタリング(MRM)、例えば、複数の質量分析器ユニットを有する質量分析器において、少なくとも2つのユニットは、SIM/SIRモードで稼働する。
【0117】
質量分析器によりイオンの強度を分離および測定した後、質量スペクトルは、例えば、検出されたイオンで測定された強度をこれらの質量電荷比(m/z)に対してプロットすることにより作り出される。質量分析器が稼働するモード(完全走査、SIM/SIRまたはMRM)に応じて、質量スペクトルは、(1)m/z規模で2つの遠隔点の間で質量分析器により検出された全てのイオン(前駆および生成イオン)に対応するピーク;(2)(a)特定のm/z値を有するもしくは非常に小さなm/z範囲内にある全てのイオンに対応し、(b)場合によって(a)で特定されたイオンから誘導される全ての生成イオンに対応するピーク;または(3)1個以上の選択された生成/娘イオン(MRMチャンネル)のみを含むことができる。
【0118】
例えば、質量分析器がMRMモードで稼働しているとき、内部較正物質および対応する標的分析物のセットの単一質量スペクトルを作り出すことができる。単一質量スペクトルは、各内部較正物質に1つのピークを含有し、試料中に存在する場合、対応する標的分析物に1つのピークを含有する。あるいは、複数の質量スペクトルを、内部較正物質および対応する標的分析物の第1セットにおいて作り出すことができ、一方、複数の質量スペクトルのそれぞれは、内部較正物質または対応する標的分析物のうちの一方のみを表す。そのような単一質量スペクトルまたは複数の質量スペクトルを、内部較正物質および対応する標的分析物の各セットにおいて作り出すことができる。
【0119】
MRMチャンネルを使用して作り出され、ピーク強度が時間(例えば、質量分析器がSPE、クロマトグラフィーまたは電気泳動装置に連結されている場合は滞留時間)に対してプロットされた質量スペクトルは、多くの場合に質量クロマトグラムと記載される。したがって、質量スペクトルという用語は、本明細書で使用されるとき、(例えば、MSがMRMモードで稼働する場合)質量クロマトグラムとも関連しうる。
【0120】
次に、内部較正物質および対応する標的分析物をそれぞれ表すイオンのMSシグナル強度(または相対シグナル強度)が決定される。質量スペクトルにおけるイオンのシグナル強度(例えば、これらのイオンに対応するピークの強度)は、ピーク高さまたはピーク面積に基づいて、例えば特定のイオンのシグナル強度を時間と積算することなどによるピーク面積に基づいて決定することができる。質量スペクトルにおけるイオンシグナルの強度を、検出された最も強力なイオンシグナルに、例えば100%に正規化することができる。
【0121】
較正物質、分析物、組成物およびキットの特性および選択の文脈で上記に考察されたように、較正物質および対応する標的分析物は、質量分析器におけるこれらの挙動に基づいて(例えば、これらの質量および/またはフラグメンテーションパターンの差に起因して)互いに識別可能でありうる。
【0122】
一つの実施形態において、任意の2つ以上の化合物(例えば、第1および第2較正物質ならびに標的分析物)は、これらの質量の差に起因して(例えば、2つの化合物から誘導された前駆イオン/親イオンの質量における差に起因して)質量分析器により互いに識別および分離される。2つの化合物(例えば、第1較正物質および標的分析物)の質量は、使用される器具類により解像されうるまたは所定のカットオフを満たす質量単位の数により異なる可能性がある。例えば、これら2つの親/前駆イオンの間の少なくとも1(または2、3、4、5、…)質量単位の質量の差は、異なる同位体の存在(例えば、2つの親/前駆イオンの一方における低い同位体存在度に対する2つの親/前駆イオンの他方における高い同位体存在度)に由来しうる。
【0123】
別の実施形態において、任意の2つ以上の化合物(例えば、第1および第2較正物質ならびに標的分析物)は、これらのフラグメンテーションパターンの差に起因して質量分析器により互いに識別および分離される。フラグメンテーションパターンは、以下のように生成されうる:同じ質量電荷比を有する一連のイオン(前駆または親イオン)は、質量分析器に入る化合物から単離される;同じ質量電荷比を有する親イオンは安定化されるが、気体と衝突して、衝突誘起解離(CID)により細分化され、それによって生成/娘イオンを生成する。質量分析法の際に2つの化合物の一方の化合物(例えば、第1内部較正物質)から生成または誘導されたフラグメント(例えば、生成/娘イオン)は、質量分析法の際に2つの化合物の他方の化合物(例えば、標的分析物)から生成または誘導されたフラグメントと異なる質量を有する少なくとも1つのフラグメント(例えば、生成/娘イオン)を含むことができる。
【0124】
次に、単一試料中の標的分析物は、第1較正物質シグナル、第2較正物質シグナルおよび標的分析物シグナルを使用して定量化される。方法は、標的分析物シグナルおよび較正曲線または代数方程式(すなわち、較正物質シグナルに基づいた)を使用して、標的分析物を定量化することを含む。例えば、方法は、(i)第1較正物質シグナルおよび第2較正物質シグナルから較正曲線を得ること;ならびに(ii)較正曲線および標的分析物シグナルを使用して、標的分析物を定量化することを含むことができる。あるいは、方法は、第1較正物質シグナル、第2較正物質シグナルおよび標的分析物シグナルを使用して、標的分析物を代数的に定量化することを含むことができる。多様な実施形態(例えば、所定の標的分析物あたり2個以上の較正物質、2個以上の標的分析物およびこれらの組み合わせ)において、定量化工程は、手作業により(例えば、1回限りの研究もしくは開発設定において、例えば紙と鉛筆、計算機もしくはスプレッドシートを使用して)または自動的に(例えば、ハイスループットもしくは商業的な設定において、例えばプログラム化された機械もしくは特定用途向けの機械を使用して)実施することができる。
【0125】
較正曲線は、適切な回帰アルゴリズム(例えば、ガウス最小二乗適合法)をデータに適用して得ることができる。適切な回帰アルゴリズムは、以下の工程を含むことができる:(1)数学関数(モデル)を選択する工程;(2)実験データの関数を適合する工程;および(3)モデルを確認する工程。関数は、分析範囲の全体にわたって線形でありうるが、そうである必要はない。方法が複数の標的分析物を定量化する場合、対応する較正物質シグナルを使用する較正曲線を作り出す工程は、内部較正物質のそれぞれのセットにおいて実施することができ、それによって対応する標的分析物のそれぞれに異なる較正曲線を作り出すことができる。
【0126】
標的分析物の量は、試料に存在する場合、較正曲線を使用して定量化することができる。例えば、定量化は、(1)標的分析物に対応する較正物質に基づいた較正曲線および(2)標的分析物シグナルを使用する外挿により達成することができる。方法が複数の標的分析物を定量化する場合、それぞれの較正曲線および標的分析物シグナルに基づいた外挿工程をそれぞれの標的分析物において実施することができ、それによって、対応する標的分析物をそれぞれ定量化することができる。
【0127】
多様な実施形態において、方法は質量分析の前に1つ以上の追加の工程を含む。追加の工程は、手作業により実施することができるまたは(例えば、特定的にプログラム化されたもしくは特定的に組み立てられた機械により)自動化されうる。
【0128】
一つの実施形態において、方法は、(i)標的分析物を潜在的に含む単一検体中の第1較正物質の第1既知量および第2較正物質の第2既知量を組み合わせることにより単一試料を調製すること;ならびに(ii)質量分析器を使用して単一試料から質量分析器シグナルを生成することも含む。適切な試料調製は、試料、較正物質および分析プロトコールの性質に応じて変わりうる。例えば、試料調製は、適切な較正物質を選択すること、分析パネルを選択することおよび/または多様な内部較正物質の量を選択することを含むことができる。
【0129】
別の実施形態において、方法は、質量分析器シグナルを得る前に、試料を処理することも含む。例えば、試料の処理は、第1較正物質、第2較正物質および標的分析物を試料の他の構成要素から分離することを含むことができる。処理は、(1)質量分析器に導入される化合物の数を低減するため;(2)例えば不要な化合物を涸渇させるおよび/もしくは内部較正物質および標的分析物を豊富化して、内部較正物質および標的分析物を濃縮するため;(3)内部較正物質および標的分析物を、MS分析を干渉しうる他の化合物から分離するため;ならびに/または(4)内部較正物質および対応する標的分析物の少なくとも1つのセットを、内部較正物質および対応する標的分析物の他のセットから分離するため、MS分析の前に試料の処理に一般的に使用される技術によってまたはそのような技術の組み合わせによって実施することができる。そのような技術は、固相抽出、液相抽出ならびにクロマトグラフィー(例えば、液体、ガス、アフィニティー、イムノアフィニティーおよび超臨界流体クロマトグラフィー)の1つ以上を含むことができる。
【0130】
図2は、それぞれ独立して分析物または分析物のパネルを含む1つ以上の試料を、内部較正の使用により定量化する例示的な方法を概説するフローチャートを表す。多様な実施において、
図2の方法は手作業により、半自動的または自動的に実施することができる。同様に、1つ以上の工程を追加する、省くおよび/または繰り返すことができる。
図2の方法(およびこの変形)は、使用説明書(例えば、ヒトおよび/または機械により読み取り可能なフォーマットでキットに含まれる)、プログラム(例えば、コンピューター読取可能媒体に埋め込まれたアルゴリズムもしくはコンピュータープログラム)および/または分析系(例えば、特定的に適合されたもしくは特定用途向け機械)の基礎として機能することもできる。
【0131】
工程2.1は、試料が分析のために提示されるのを待つことを含む。試料は、品質管理試料または系適合試料ならびに慣用の試料(例えば、標的分析物を潜在的に含む試料)を含むことができる。方法が別々の一連の較正物質の分析を必要としないので(例えば、較正物質および標的分析物が単一試料中にあるので)、必要とする分析に従ってバッチが集められるのではなく、試料は任意の順番で提供されうる(例えば、方法はランダムアクセス法である。)。幾つかの実施形態において、バーコードラベルまたは他の特有の識別子が試料に取り付けられて、どの内部較正物質セットを試料に加えるかを使用者または自動化系に通知し、したがって、使用者または自動化系に適切なLCおよび/またはMSパラメーターを使用するように指示することもできる。
【0132】
工程2.2は、どの較正物質が所定の試料に望ましいかを(例えば、バーコードラベルに基づいて)決定することを含む。
【0133】
工程2.3は、内部較正物質を試料に導入することを含む。内部較正物質を、例えば、自動化または手作業のプロセスに合わせるためおよび1つのアッセイにおける単一分析物または分析物のパネルの決定を可能にするため、異なる方法で試料に加えることができる。例えば、工程2.3.1は、分析物に対応する較正物質を試料に手作業で加える実施形態を示し、工程2.3.2は、試料を、較正物質が(例えば、溶液または乾燥フォーマットで)前装填されている容器に加える実施形態を示し、工程2.3.3は、自動化系を使用して、内部較正物質の1つ以上のセットを(例えば試料のバーコード認識により例えば指示されて)加える実施形態を示す。
【0134】
工程2.4は、分析のために試料を調製することを含む。試料調製は、本明細書において考察された多様な技術のいずれか、例えば、タンパク質沈殿、固相抽出、液−液抽出、イムノアフィニティー精製、アフィニティー精製などを含むことができる。試料調製は、オンラインまたはオフラインで実施することができる。
【0135】
工程2.5は、MSにより試料を分析する(例えば、MSを使用して、標的分析物および対応する較正物質のクロマトグラフィーピーク面積などの応答を測定する)ことを含む。
【0136】
工程2.6は、工程2.5のデータ品質を調べることを含む。データが許容可能でない場合、試料を分析のために再提示する(例えば、工程2.1に戻す)ことができる。データが許容可能である場合、確認されたMS応答データ2.7を使用して、標的分析物を定量化することができる。
【0137】
工程2.8は、標的分析物を定量化する適切な計算方法を選択することを含む。1つの選択肢が、工程2.8.1に例示されており、内部較正物質の測定された応答をこれらに割り当てられた濃度値と一緒に使用して、各標的分析物に試料特異的較正線を生成することを含む。別の選択肢が、工程2.8.2に例示されており、内部較正物質の測定された応答をこれらの既知濃度値および測定された相対応答係数と一緒に使用して、各標的分析物に試料特異的較正線を生成することを含む。
【0138】
工程2.9は、測定されたMS応答および試料特異的較正線に基づいて、単一試料中の標的分析物濃度を計算することを含む。代替的な実施形態において、標的分析物濃度は、標的分析物シグナルおよび対応する較正物質シグナルを使用して、代数的に計算することができる。
【0139】
工程2.10は、結果を報告することを含む。多様な実施形態において、結果を、コンピューター(例えば、研究所情報管理システムまたはLIMS)に記憶することができる(工程2.10.1)。多様な実施形態において、結果を、印刷された報告書または画面表示などの使用者が読み取り可能なフォーマットで報告することができる(工程2.10.2)。報告方法は相互排他的ではなく、結果は2つ以上の技術により報告および/または記憶することができる。
【0140】
工程2.1から2.6は、特定的にプログラム化されたまたは特定的に組み立てられた機械に方法の実施を最も直接的に指示することに関するが、続く工程2.8から2.10は、結果を計算および報告するソフトウエアに基づいたプロセスに最も直接的に関する。両方のプロセスを(例えば、計算がMSおよび試料取扱いハードウエアも制御するコンピューターで実施される場合)単一の機器により完了させることができる。しかし、工程が分離可能なので、試料処理および分析工程を計算および報告工程と並行して続けることができ、それによって、機器の速度および効率を増加することができる。
【0141】
本発明の方法を、有形物品に埋め込むことができる。例えば、方法は、使用説明書としてキットに含められうるおよび/または(例えば、方法を実施する機器の稼働のための)コンピューター実行可能命令を含むコンピューター読取可能媒体の中にありうる。使用説明書は、本明細書に記載されている1つ以上の方法のいずれかを実行する、適合するまたは変更する指示を含むことができ、ハードコピー(例えば、ハンドブック、プリントアウトなど)またはソフトコピー(例えば、コンピューターメモリーもしくは記憶装置、ディスプレーなどに電子的に)埋め込むことができる。同様に、コンピューター読取可能媒体(例えば、ディスク記憶装置、半導体メモリーなど)は、本明細書に記載されている1つ以上の方法のいずれかを実行する、適合するまたは変更するコンピューター実行可能命令を含むことができる。
【0142】
分析系
本発明は、質量分析により標的析物を定量化するための機器を特長とする。多様な実施形態において、機器は、本発明の方法ならびにこの変形および組み合わせを実施するために配置される。
【0143】
図3は、標的分析物を潜在的に含む単一検体中の第1較正物質の第1既知量および第2較正物質の第2既知量を組み合わせることにより単一試料を調製するように構成された試料取扱機310を含む、例示的な機器300を示す。機器300は、第1較正物質の第1既知量を含み、第2較正物質の第2既知量を含み、潜在的に標的分析物を含む単一試料からの第1較正物質シグナルを含み、第2較正物質シグナルを含み、潜在的に標的分析物シグナルを含む質量分析器シグナルを生成するように構成された質量分析器320も含み、ここで第1既知量と第2既知量は異なり、第1較正物質、第2較正物質および標的分析物は、質量分析により単一試料中でそれぞれ識別可能である。更に、機器300は、第1較正物質シグナル、第2較正物質シグナルおよび標的分析物シグナルを使用して単一試料中の標的分析物を定量化するように構成されているデータ処理装置330を含む。幾つかの実施形態において、機器300は、質量分析器シグナルを得る前に、第1較正物質、第2較正物質および標的分析物を単一試料の他の構成要素から分離するように構成されている前処理および/または分離系340も含む。前処理は、SPE、液−液抽出、沈殿などを含むことができる。分離は、クロマトグラフィー、例えばLC、HPLC、UPLC、SFCなどを含むことができる。前処理および/もしくは分離系340またはこれらの構成要素のサブセットは、オフラインまたはオンラインモードで稼働することができる。
【0144】
試料取扱機310は、従来の試料取扱設備に基づくことができる。適切な試料取扱機の例は、Tecan EVO(オフライン)およびWaters AQUITY SPE Manager(オンライン)を含む。試料取扱機は、バーコード読取機、真空マニホルド、遠心分離機、ピペットおよびロボットを追加することを含み、ならびに所定の方法で機器を制御するスクリプトを含む、当該技術の既知の方法によって適合させることができる。
【0145】
幾つかの実施形態において、試料取扱機310は、ランダムアクセス稼働に適合させるおよび/または複数分析物パネルを単一試料で1回実施することに適合させることができる。例えば、試料取扱機310は、(i)所定の検体と関連するコードに基づいて所定の検体において試験されるべき1個以上の分析物のリストを決定するように構成された自動コード読取機;および(ii)1個以上の分析物のそれぞれについて、所定の検体を第1較正物質の第1既知量および第2較正物質の第2既知量と組み合わせるように構成された自動較正系を含むことができる。
【0146】
較正物質が(例えば、所定のアッセイ設定によりバイアルまたはプレートの形態で)前もって調製される場合、自動較正系は、1個以上の分析物のそれぞれについて、所定の検体を、第1較正物質の第1既知量および第2較正物質の第2既知量を含む試料容器に送達するように構成されうる。あるいは、較正物質がオンザフライで(on the fly)調製される(例えば、所定の試料のためにカスタマイズされるまたは所定の配合表に従って個別の較正物質構成要素に基づいて作製される)場合、自動較正系は、1個以上の分析物のそれぞれについて、第1較正物質の第1既知量および第2較正物質の第2既知量を、所定の検体を含む試料容器に送達するように構成されうる。
【0147】
質量分析器320(ならびに、本発明の方法のいずれにおける質量分析器)は、質量スペクトルを生成するのに適しているイオン化供給源、分析器および検出器を含む実質的に任意の器具でありうる。質量分析器は、複数の質量分析器ユニット(MS
n、ここでn=2、3、4、…)を含有することができるおよび/またはクロマトグラフィーもしくは電気泳動装置(例えばLC/MS/MSにおける例えば分離系340)などの他の器具に連結されうる。
【0148】
質量分析器320は、エレクトロスプレーイオン化(「ESI」)イオン供給源;大気圧光イオン化(「APPI」)イオン供給源;大気圧化学イオン化(「APCI」)イオン供給源;マトリックス支援レーザー脱離イオン化(「MALDI」)イオン供給源;レーザー脱離イオン化(「LDI」)イオン供給源;大気圧イオン化(「API」)イオン供給源;ケイ素脱離イオン化(「DIOS」)イオン供給源;電子衝撃(「EI」)イオン供給源;化学イオン化(「CI」)イオン供給源;電界イオン化(「FI」)イオン供給源;電界脱離(「FD」)イオン供給源;誘導結合プラズマ(「ICP」)イオン供給源;高速原子衝撃(「FAB」)イオン供給源;液体二次イオン質量分析(「LSIMS」)イオン供給源;脱離エレクトロスプレーイオン化(「DESI」)イオン供給源;ニッケル63放射能イオン供給源;大気圧マトリックス支援レーザー脱離イオン化イオン供給源;およびサーモスプレーイオン供給源などのイオン供給源を含むことができる。
【0149】
質量分析器320は、四重極質量分析器;2Dまたは線形四重極質量分析器;Paulまたは3D四重極質量分析器;2Dまたは線形四重極イオントラップ質量分析器;Paulまたは3D四重極イオントラップ質量分析器;ペニングトラップ質量分析器;イオントラップ質量分析器;磁場質量分析器;イオンサイクロトロン共鳴(「ICR」)質量分析器;フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴(「FTICR」)質量分析器;静電またはオービトラップ(orbitrap)質量分析器;フーリエ変換静電またはオービトラップ質量分析器;フーリエ変換質量分析器;飛行時間型質量分析器;直交加速飛行時間型質量分析器;および線形加速飛行時間型質量分析器などの試料分析器を含むことができる。質量分析器は、イオン移動度分析器を含むことができる。
【0150】
質量分析器320は、エレクトロスプレーイオン化(「ESI」)イオン供給源;大気圧光イオン化(「APPI」)イオン供給源;大気圧化学イオン化(「APCI」)イオン供給源;マトリックス支援レーザー脱離イオン化(「MALDI」)イオン供給源;レーザー脱離イオン化(「LDI」)イオン供給源;大気圧イオン化(「API」)イオン供給源;ケイ素脱離イオン化(「DIOS」)イオン供給源;電子衝撃(「EI」)イオン供給源;化学イオン化(「CI」)イオン供給源;電界イオン化(「FI」)イオン供給源;電界脱離(「FD」)イオン供給源;誘導結合プラズマ(「ICP」)イオン供給源;高速原子衝撃(「FAB」)イオン供給源;液体二次イオン質量分析(「LSIMS」)イオン供給源;脱離エレクトロスプレーイオン化(「DESI」)イオン供給源;ニッケル63放射能イオン供給源;大気圧マトリックス支援レーザー脱離イオン化イオン供給源;およびサーモスプレーイオン供給源などのイオン化供給源を含むことができる。
【0151】
データ処理装置330は、MSシグナルを使用して標的分析物を定量化するのに適しているコンピューターを含むことができる。例えば、MassLynxが実行されるウインドウズPCを使用して、系を制御する、データを収集するおよび/またはクロマトグラムを生成することができる。MassLynxのモジュールは、内部較正物質の計算を実施するために開発することができる。内部較正物質の計算は、手作業によりまたはマイクロソフトエクセルなどの従来のスプレッドシートプログラム、スクリプトもしくは他のコンピュータープログラムの使用により実施することもできる。
【0152】
多様な実施形態において、データ処理装置330は、分析系の任意の1つ以上の構成要素と連通することができる。例えば、データ処理装置は、試料取扱機310と連通して、(i)適切な較正物質が試料と組み合わされること、(ii)試料が適切に調製されることおよび/または(ii)試料が適切に分析されることを確実にすることができる。データ処理装置は、質量分析器320と連通して、質量分析器を制御するおよび/または分析用に質量分析器からシグナルを受け取ることができる。同様に、データ処理装置は、分離系340と連通して、分離系を制御するおよび/または分析用に分離系からシグナルを受け取ることができる。データ処理装置330は、多様な追加の機能(例えば、
図2に関連して記載された機能を参照すること。)、例えば品質管理、データ記憶、データ報告などを実施するように適合させることができる。
【0153】
一般に、分離系340は、1個以上の較正物質/分析物を、互いにおよび/または試料の少なくとも一部(例えば、マトリックス、汚染物)から分離することができる。分離系340は、質量分析器シグナルを得る前に、単一試料の他の構成要素から較正物質および標的分析物を分離するため、少なくとも1つの分離、クロマトグラフィーまたは同様の系(例えば、液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー、アフィニティー、イムノアフィニティー、超臨界流体クロマトグラフィー設備など)を含むことができる。分離の前、分離系340は、1つ以上の試料調製/前処理工程を用いることもできる。例えば、試料の少なくとも一部を、固相抽出(例えば、順相固相抽出(SPE)、逆相SPE、イオン交換SPE、サイズ排除SPE、アフィニティーSPEもしくはこれらの組み合わせ)、液−液抽出、沈殿、誘導体化またはこれらの任意の組み合わせにより前処理することができる。分離は、例えば、クロマトグラフィー(例えば、HPLC、超臨界流体クロマトグラフィー(SFC)、超高性能(Ultra Performance)液体クロマトグラフィー(UPLC)、超高速(Ultra High Performance)液体クロマトグラフィー(UHPLC)、ナノLCなどの液体クロマトグラフィー、特に順相クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー)またはガスクロマトグラフィー)、電気泳動(例えば、キャピラリー電気泳動)を含むことができる。分離系340を、質量分析器と連結する(オンラインモード)またはしない(オフラインモード)ことができる。
【実施例】
【0154】
特に指示のない限り、キットおよび試薬の使用を含む全ての技術は、製造会社の情報に従って、当該技術に既知の方法によりまたは例えばTietz Text Book of Clinical Chemistry第3版(Burtis,C.A.& Ashwood,M.D.編)W.B.Saunders Company、1999;Guidance for Industry.Bioanalytical Method Validation.USA:Centre for Drug Evaluation and Research、US Department of Health and Social Services、Food and Drug Administration、2001;およびSambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版(1989)Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.に記載されたように実施した。下記において使用され、これらの参考文献に記載された方法は、これらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0155】
[実施例1]:単回分析において多点較正を使用したテストステロンの分析(内部較正)
概要:従来の定量化LC/MS/MSは、試料の各バッチを分析するためにマトリックスに基づいた較正物質のセットを必要とする。このことはバッチモードの分析における技術を限定し、最初の結果を得る時間および試薬キットによる時間を遅延し、製造会社が分析物無含有マトリックスを供給および処理することを必要とする。このことは、(例えば、内因性ホルモン、ビタミン、ペプチドなど)目的の分析物がマトリックスに通常存在する場合に特に困難である。この実施例は、各試料が分析物の複数の安定同位体標識類似体を補充される定量化LC/MS/MS法を記載する。各類似体は、分析測定範囲にわたる既知の特有濃度で添加される。類似体および分析物は、単回分析において類似体および分析物の応答が同時に測定できるように、MS特性に基づいて互いに識別されうる。このことは、個別の較正曲線が構築されることおよび結果が単一試料の単回分析から各試料について生成されることを可能にする。この実施例は、安定同位体標識内部較正物質を使用して、テストステロンをヒト血清において精密および正確に定量化できることを示す。この実施例に例示されている方法は、ランダムアクセスLC/MS/MS分析を可能にし、従来の方法に対して最初の結果を得る時間を減少し、マトリックスを供給する要件を排除することで試薬キットの製造を簡素化する。
【0156】
方法
較正物質の調製:従来のアッセイ(例えば、比較)では、テストステロン添加溶液を10ng/mL、100ng/mLまたは1000ng/mLで調製した。6個の別々の較正物質は、ブランクマトリックス(例えば、市販の二重木炭剥離血清(double charcoal stripped serum))の1.0mLのアリコートにテストステロンを添加することにより調製した。較正物質の最終濃度は、0.1、0.5、1.0、2.0、5.0および15.0ng/mLであった。
【0157】
内部較正アッセイでは、3個の市販の安定同位体標識内部較正物質(二、三および五重水素化テストステロン)を使用した。内部較正物質のMS/MS特性を調査し、特定のMRM移行をそれぞれ選択した(表2および
図4を参照すること。)。選択された移行は、フラグメンテーションと同じモードを表したが(式1を参照すること。)、重水素の組み込みにより引き起こされた質量シフトのため、各内部較正物質において特有である。
【0158】
【表2】
【0159】
図4は、内部較正法を使用した試料、特に標的分析物(テストステロン)および対応する内部較正物質(テストステロンのd2、d3およびd5類似体)の分析のための典型的なクロマトグラムの例を示す。
【0160】
式1は、A環からm/z97フラグメントを生成するテストステロン(T)の構造および提案されたフラグメンテーションスキームを示す。各内部較正物質における重水素原子の位置は、T−d2:1,2;T−d3:16,16,17;T−d5:2,2,4,6,6であった。
【0161】
【化1】
【0162】
個別の貯蔵溶液を各内部較正物質のために調製し、0.5ng/mLの希釈液を各貯蔵溶液から作製した。希釈液を、表2に記載された特定のMRM移行を使用して、下記に記載されているようにUPLC/MS/MSで分析した。各希釈液への5個の複製注入による平均積算ピーク面積を、非標識テストステロンおよび計算された相対応答係数から得た値と比較した(表3)。
【0163】
表3は、内部較正物質とテストステロン(T)貯蔵溶液の比較を示す。各内部較正物質の5個の複製の分析による平均積分ピーク面積を、非標識テストステロンの平均積分ピーク面積と比較して、相対応答を決定した。
【0164】
【表3】
【0165】
図5は、
図4に示されたデータから生成された試料特異的較正曲線の例を示す。テストステロンMRMで測定されたピーク面積から、濃度は2.85ng/mL(点線)であると計算される。相対応答係数を使用して、濃度値を内部較正物質貯蔵溶液に割り当てた(例えば、テストステロン−d2貯蔵溶液に割り当てられた濃度は、テストステロン貯蔵溶液の濃度の1.095×であった。)。内部較正物質貯蔵溶液を、60%のMeOHに添加して、割り当てられた濃度に基づいて以下の濃度の各内部較正物質を含有した単一溶液を生成した:2.2ng/mLのテストステロン−d2、44.0ng/mLのテストステロン−d3および110ng/mLのテストステロン−d5。
【0166】
患者試料:慣用の血清テストステロン測定において残った50個の匿名の検体をこの研究に使用した。試料のうちの5個は、従来および内部較正の両方のLC/MS/MSアッセイによる試験にとって不十分な容積を有した。これらの5個の試料を使用して、試料番号46として両方のアッセイにおいて分析されるプールを作製した。プールは、内部較正アッセイにおける精密度を予備評価するためにも使用した。
【0167】
試料調製:
従来のアッセイ
1.100μLの各マトリックス較正物質(N=6)または100μLの各患者試料(N=46)を分離エッペンドルフ管に入れる。
2.内部標準(60%のMeOH中のテストステロン−d3;10μL)を各管に加える。
3.ボルテックスをかけて混合する。
4.1.0mLのMTBEを各管に加え、蓋をして、ボルテックスをかけて混合する。
5.15,000RPMで5分間、室温で遠心分離する。
6.上側(有機)相を可能な限り回収して、Waters Maximum Recoveryバイアルに入れ、窒素流下で減量乾燥する。
7.残渣を75μLの60%MeOHに再溶解し、UPLC/MS/MSで分析する(下記を参照すること。)。
【0168】
内部較正アッセイ
1.100μLの各患者試料(N=46)を分離エッペンドルフ管に入れる。
2.内部較正物質ミックス(10.0μL)を各管に加える。
3.ボルテックスをかけて混合する。
4.1.0mLのMTBEを各管に加え、蓋をして、ボルテックスをかけて混合する。
5.15,000RPMで5分間、室温で遠心分離する。
6.上側(有機)相を可能な限り回収して、Waters Maximum Recoveryバイアルに入れ、窒素流下で減量乾燥する。
7.残渣を75μLの60%MeOHに再溶解し、UPLC/MS/MSで分析する(下記を参照すること。)。
【0169】
超高性能液体クロマトグラフィー−タンデム型質量分析(UPLC/MS/MS):クロマトグラフィーをWaters ACQUITY UPLC系の使用により実施した。試料(15μL)を、酢酸アンモニウムおよびギ酸を表4に示されるように含有したメタノールおよび水の勾配で溶出したWaters CSH Flurophenyl Column(2.1mm×50mm)の使用により分析した。実施時間は3.5分であり、注入間隔はおよそ4分であった。分離の結果を表4に示し、移動相Aは、水中の2mMの酢酸アンモニウムおよび0.1%のギ酸であり、移動相Bは、メタノール中の2mMの酢酸アンモニウムおよび0.1%のギ酸であった。
【0170】
【表4】
【0171】
UPLCカラムからの溶出液を、多重反応モニタリング(MRM)モードで稼働するエレクトロスプレーイオン化供給源のWaters Xevo TQタンデム四重極質量分析器に導いた。従来のアッセイでは、100分の滞留時間を使用して2つのMRM移行をモニターした(テストステロンおよびテストステロン−d3;表5を参照すること。)。
【0172】
TargetLynxソフトウエアを使用して、ピーク面積積算を実施し、応答(分析物ピーク面積/内部標準ピーク面積の比)を計算し、6ポイント外部較正線を生成し、各血清試料における分析物濃度を計算した。内部較正アッセイでは、表6に示されている4つのMRMチャンネルの全てを、60分の滞留時間の使用によりモニタリングした。積算ピーク面積は、TargetLynxソフトウエアを使用して決定し、マイクロソフトエクセルを使用して、各血清試料に個別の内部較正曲線を線形回帰分析の使用により構築した。
【0173】
結果
従来の(外部較正)アッセイ:TargetLynxソフトウエアにより生成され、6個の別々の較正物質の応答により構築された単一外部較正線を
図7に示す。較正線の各点は、個別のUPLC/MS/MS分析を表す。この較正線をTargetLynxが使用して、観察されたMS/MS応答に基づいて46個の血清試料のそれぞれにおけるテストステロン濃度を自動的に計算した。結果はTargetLynxからエクスポートされ、表5にまとめられている。
【0174】
図6は、内部較正方法(Y軸)および既知のテストステロン濃度(X軸)の使用により測定されたテストステロンQC値の比較を示す。
【0175】
図7は、TargetLynxにより生成されたテストステロンの外部較正線を示す。較正線は、0.1ng/mLから15ng/mLの濃度範囲でブランクマトリックスにおいて調製された6個の別個の較正物質の分析に基づいている。
【0176】
表5は、従来の外部較正を使用した46個の血清試料のテストステロン濃度の分析を示す。データはTargetLynxからエクスポートされた。最後の縦の行は、各試料の計算されたテストステロン濃度を示す。
【0177】
【表5】
【0178】
内部較正アッセイ:TargetLynxを使用して、各分析物で収集された4つのMRMクロマトグラムのそれぞれにおいてピーク面積積算を実施した。これらのデータはマイクロソフトエクセルにエクスポートされ、ここでそれぞれ個別の試料のために、LINEST関数を使用して、3個の内部較正物質に割り当てられた濃度(x軸)に対してプロットされた積算ピーク面積(y軸)の回帰線の方程式および決定係数(r
2)を計算した。線形回帰分析を、起点(0,0)を含むまたは除く、の2つの方法で実施した。各試料において、テストステロンの濃度は、テストステロンの回帰線の方程式および積算ピーク面積を使用して計算した。データを下記の表6および表7にまとめる。
【0179】
表6は、内部較正法を使用して分析された46個の血清試料の結果および回帰分析を示す。試料46の5つの別個のアリコートを分析した(T=テストステロン)。
【0180】
【表6】
【0181】
表7は、起点を除いて内部較正法を使用して分析された46個の血清試料の結果および回帰分析を示す。試料46の5つの別個のアリコートを分析した(T=テストステロン)。
【0182】
【表7】
【0183】
50個の分析物(45個の試料+試料46の5個の複製)のそれぞれの個別の内部較正線を
図8に示す。多様な内部較正線の勾配は、潜在的には回収の差をもたらすおよびイオン抑制の差をもたらすマトリックスにおける差の結果により、異なる試料の間で変動する。
図8は、本発明が各試料中の各標的分析物に個別の較正をどのように提供するかを示す。
【0184】
図9は、観察された最小および最大勾配(40%の差)に相当する血清試料22および42の個別の内部較正線を示す。丸印は、線形回帰線の構築に使用された3個の内部較正物質+起点を表す。×印は、その試料中のテストステロンのピーク面積および対応する濃度を表す。
【0185】
結果の比較:内部較正法(起点を含むまたは回帰分析から起点を除く)を使用して得られた結果を、従来の較正を使用して線形回帰分析により得られた結果と比較した(
図10および
図11)。
【0186】
図10は、3個の内部較正物質による外部較正および内部較正を使用して46個の血清試料において決定されたテストステロン濃度の比較を示す。
図11は、3個の内部較正物質+起点による外部較正および内部較正を使用して46個の血清試料において決定されたテストステロン濃度の比較を示す。両方の比較(
図10および
図11)は、r
2>0.99であり、勾配が単一体に近似する優れた一致を示す。勾配は両方とも>0.96であり、従来の外部較正法に対して内部較正法を使用したとき、4%未満の平均差を示唆する。
【0187】
不正確性の推定値:内部較正アッセイにおける日内精密度を推定するために、プールした血清試料(試料46)の5つの別個のアリコートを分析した。結果を表8に示し、不正確性は、およそ2ng/mLのテストステロン濃度で<3%であったことを示す。
【0188】
【表8】
【0189】
考察
この研究に使用された内部較正物質は、原理証明および(例えば、これらがデノボ合成を必要とするのではなく、商業供給源を利用することができるので)利便性を示したが、(例えば、テストステロン、テストステロン−d2およびテストステロン−d3の間の質量差が小さく、同位体干渉の可能性があるので)達成されうる最適なアッセイ結果を表すことが期待されない。理想的には、内部較正物質は、分析物と内部較正物質の間または内部較正物質の間に本質的に干渉が存在しないように、十分な量の同位体標識および特定の位置の同位体標識で設計される。更に、設計された内部較正物質を合成する前に、設計された内部較正物質に特異的なMRM移行をマトリックス試料(例えば、ヒト血清)の使用によりスクリーンして、マトリックスに通常存在する内因性材料が、設計された内部較正物質のいずれも実質的に干渉しないことを確実にする。
【0190】
安定同位体標識材料は、典型的には少量で製造される。したがって、安定同位体材料の正確な量を精密に計量して、内部較正物質の調製に使用できる貯蔵溶液を正確に作製することが困難でありうる。幾つかの場合において、安定同位体標識材料が非標識材料と比較したときに僅かに異なるイオン化特性を有しうることも可能である。少なくともこれらの理由で、非標識材料により得られる応答と比較すると、内部較正物質貯蔵溶液に濃度値を割り当てることが多様な実施形態において有利でありうる。実施例1では、内部較正物質濃度を、非標識テストステロンの内部貯蔵溶液との比較により割り当てた。値の割当は、認められた国際参考文献、例えばCertified Reference Material(例えば、NISTにより供給される)またはSI単位への度量衡学的トレーサビリティーを有する他の参考文献に関連して実施することができる。これらの工程を使用して、内部較正プロセスの精度を確実にすることができる。
【0191】
実施例1に示されているように、従来の較正は、6個の個別のマトリックス較正物質の分析、続く分析されるべき試料のバッチを必要とする。そのようなバッチモード分析は、潜在的な較正ドリフトを最小限にするために必要である。典型的には、同じ日に(従来の方法を使用して)分析される試料の第2バッチは、新たな外部較正曲線を必要とする。この従来の稼働モードでは、最初の結果を得る時間は、8回の分析実施(例えば、ブランク+6個の較正物質+第1試料)にかかる時間と等しい。内部較正を使用すると、外部較正物質を実施する必要はなく、それによって最初の結果を得る時間は、外部較正よりも潜在的に8倍速い(例えば、実施例1ではおよそ32分に対しておよそ4分である。)。バッチモードの分析からの解放は、LC/MS/MSによる初回ランダムアクセスおよび迅速試料分析を可能にする。
【0192】
実施例1の結果は、3個の較正物質のみを使用する内部較正が、6つの較正点による従来の外部較正の使用により得られる結果と平均で4%未満異なる結果をもたらしうることを示す。日内不正確性の予備推定値は<3%であり、内部較正アッセイが精密であり、精度があることを示す。個別の内部較正線は、潜在的にマトリックス効果に起因して試料間で相当な変動(例えば、較正線の勾配において40%までの差)を示し、内部較正物質が意図されたとおりに機能することを示す。異なる条件下(例えば、異なる程度のイオン抑制、不十分な模擬回収、不十分な模擬器具性能など)での内部較正物質の挙動についての更なる研究を使用して、不十分な品質データを拒否できるように内部較正線の勾配における許容可能な基準を開発することができる。
【0193】
[実施例2]:単回分析で多点較正を使用した全血中のシロリムスの分析
序論:この実施例では、本発明を使用して、全血中の免疫抑制薬シロリムスの濃度を測定した。この分析物には、外部品質保証スキーム(the International Proficiency Testing[IPT]Scheme;http://www.bioanalytics.co.uk/Results2012.php)が存在する。IPTスキームは、参加する研究所に3つのQA試料を毎月提供する。研究所は、結果をスキームに報告し、データを処理して、各QA試料の平均値を決定し、データの標準偏差に基づいて許容可能な結果を限定する。本発明を使用して、IPT試料中のシロリムスを定量化し、結果の許容可能性をIPTスキームにより公表された許容基準に基づいて決定した。2つの別個の実験を、下記に記載されているように内部較正物質を加える異なる方法で実施した。加えて、低、中および高QC試料を調製し、複製を分析して、アッセイ精密度の予備評価を提供した。
【0194】
方法
内部較正物質の選択:多重標識形態のシロリムスは入手できなかったので、構造が同様の化合物(類似体)をしたがって下記に示されているように使用した。分析物および内部較正物質のMS/MS特性を調査し、特定のMRM移行をそれぞれに選択した。分析物および選択された内部較正物質は、選択されたMRM移行に基づいて単回LC/MS/MS分析により互いに識別されうる。
【0195】
【表9】
【0196】
内部較正物質相対応答(「値の割当」):類似体内部較正物質を使用するとき、分析物と比較した、内部較正物質により生成されたMS/MSシグナルの強度のあらゆる差を説明することが特に重要である。例えば、差は、試料調製の際の挙動(抽出効率)の差のためまたはイオン化効率、フラグメンテーション特性などの分析の際の挙動の差のため生じうる。分析物および3個の内部較正物質を、それぞれ最終濃度の10mg/mLでアセトニトリル:水(2:1、v:v)に添加した。5個の複製を調製し、UPLC/MS/MSを使用して分析した(下記を参照すること。)。エベロリムス、d6−エベロリムスおよび32−デスメトキシラパマイシンの平均積算ピーク面積を、シロリムスの平均積算ピーク面積と比較し、相対応答係数を計算し、ここで、相対応答係数=(平均較正物質ピーク面積)/(平均シロリムスピーク面積)であった。相対応答係数を使用して、「分析物当量」濃度値を内部較正物質貯蔵溶液に割り当て、ここで分析物当量濃度=(内部較正物質濃度)×(相対応答係数)であった。相対応答計算を下記の表10に示す。
【0197】
【表10】
【0198】
試料の調製
1.50μLの全血をエッペンドルフ管に入れる。
2.0.1Mの硫酸亜鉛(200μL)を各管に加える。
3.ボルテックスをかけて混合する。
4.500μLのアセトニトリルを加える。
5.12,500RPMで5分間、5℃で遠心分離する。
6.200μLの上清をWaters Maximum Recoveryバイアルに移し、UPLC/MS/MSで分析する。
【0199】
実験1において、工程4のアセトニトリルは、内部較正物質エベロリムス(0.3ng/mL)、32−デスメトキシラパマイシン(3ng/mL)およびd6−エベロリムス(9ng/mL)を含有した。相対応答係数を考慮し、試料(50μL)と内部較正物質ミックス(500μL)の比を考慮すると、内部較正物質濃度は、それぞれ2.7ng/mL(エベロリムス)、21.0ng/mL(32−デスメトキシラパマイシン)および108ng/mL(エベロリムス−d6)で試料に存在するシロリムスと等しかった。
【0200】
実験2では、内部較正物質を工程1で試料に直接添加した。この場合、内部較正物質濃度は、およそ1.65ng/mL(エベロリムス)、17.5ng/mL(エベロリムス−d6)および22.1ng/mL(32−デスメトキシラパマイシン)で試料中に存在するシロリムスと等しかった。
【0201】
UPLC/MS/MS分析
器具類:エレクトロスプレー陽イオン化モードで稼働し、Z−Sprayイオン供給源を備えたWaters TQD質量分析器に連結されたWaters(登録商標)ACQUITY UPLCを全ての分析物に使用した。系の稼働およびデータ取得の全ての局面は、MassLynx4.1ソフトウエアを使用して制御した。データ処理(クロマトグラフィーピーク面積積算)は、TargetLynxを使用して実施した。試験試料中のシロリムス濃度の計算は、マイクロソフトエクセルを使用して、内部較正物質濃度に対するピーク面積の線形回帰分析により行った。
【0202】
UPLC条件:
移動相A:2mMの酢酸アンモニウム+0.1%のギ酸を有する水
移動相B:2mMの酢酸アンモニウム+0.1%のギ酸を有するメタノール
弱洗浄溶媒:水1000μL
強洗浄溶媒:メタノール500μL
シール洗浄:20%メタノール水溶液
カラム:プレカラムフィルターを有するACQUITY HSS C18 SB 2.1×30mm 1.8μm
カラム温度:50℃
注入容積:37.5μL(PLNO、100μLのループおよび250μLの試料シリンジを備える)、3μLのオーバーフィル、前装填
実施時間:2.25分間
【0203】
UPLC条件を下記の表11に提示する。
【0204】
【表11】
【0205】
【表12】
【0206】
図12は、上記に記載されたLCおよびMS/MS条件の使用による実験2の例示的な質量クロマトグラムを示す。
【0207】
データ処理:TargetLynxを使用して、各試料で収集された4つのMRMクロマトグラムのそれぞれにおいてピーク面積積算を実施した。これらのデータはマイクロソフトエクセルにエクスポートされ、ここでそれぞれ個別の試料のために、LINEST関数を使用して、3個の内部較正物質に割り当てられた濃度(x軸)に対してプロットされた積算ピーク面積(y軸)の回帰線の方程式および決定係数(r
2)を計算した。線形回帰分析を、起点(0,0)を含んだまたは除いた2つの方法で実施した。各試料において、シロリムスの濃度は、シロリムスの回帰線および積算ピーク面積の方程式を使用して計算した。
【0208】
結果
実験1:10個のシロリムスIPT試料を、上記に記載された方法の使用により分析した。内部較正物質は、およそ2ng/mLから100ng/mLの濃度範囲に及んだ。起点を含んで構築された個別の較正線を、
図13に示す。回帰パラメーターおよび計算されたシロリムス濃度を、表13および14に示す。10個の試料全てにおいて、シロリムスの計算濃度は、起点を含んでまたは除いて計算しても、IPTスキームの許容可能範囲内(すなわち、IPT最小≦結果≦IPT最大)であり、内部較正物質法が許容可能な結果をもたらすことを示した(表13および14)。
【0209】
【表13】
【0210】
【表14】
【0211】
実験2:第2の実験において、内部較正物質は、およそ2ng/mLから22ng/mLの濃度範囲に及び、19個のシロリムスIPT試料を分析した。起点を含んで構築された個別の較正線を
図14に示し、計算されたシロリムス濃度を表15、表16に示す。19個の試料の全てにおいて、シロリムスの計算濃度は、起点を含んでまたは除いて計算しても、IPTスキームの許容可能範囲内であった。
【0212】
【表15】
【0213】
【表16】
【0214】
IPT試料に加えて、低(およそ2.5ng/mL)、中(およそ7.5ng/mL)および高(およそ15ng/mL)の全血シロリムスQCの10個の複製を分析した。結果を表17に示し、アッセイ内不正確性が3個のQCにわたって6%未満であることを実証している。
【0215】
【表17】
【0216】
結論
1.全血試料中のシロリムス濃度の測定の正確および精密な結果は、内部較正の使用により得ることができる。
2.目的の分析物の安定同位体類似体が入手可能ではない場合、相対応答係数が注意深く測定される限り、構造類似体を使用することができる。
3.追加の較正物質として起点(x=0、y=0)を含めることが有用でありうる。
4.およそ2ng/mLからおよそ100ng/mLの範囲に及ぶ3個の較正物質は、およそ2ng/mLからおよそ15ng/mLの範囲に集中している濃度値を有する試料の正確な結果をもたらすのに十分であり、内部較正が小数の較正物質により広いダイナミックレンジにわたって正確な定量化をもたらしうることを示唆した。
5.この実施例は、少なくとも幾つかの分析物において、内部較正物質を試料調製プロセスの異なる段階に導入して、許容可能な結果を得ることを実証している。この柔軟性は、日常実験室において本発明を実施する自動化器具の開発および最適化にとって重要でありうる。
【0217】
[実施例3]:単回分析で多点較正を使用したヒト尿中のヒドロモルホンの分析
序論:ヒドロモルホンは、強力な半合成オピオイド薬である。極限状況およびモルヒネが有効ではない場合において疼痛の緩和を提供するために使用される。この薬剤は常習性がある可能性があり、そのためその使用および治療後の退薬症状(withdrawl)が注意深く管理される。ヒドロモルホンは、乱用が増加している多数の処方薬の1つである。したがって、ヒドロモルホン濃度をモニタリングする方法は、臨床中毒学および法中毒学の両方の用途において重要である。
【0218】
方法
外部較正:外部較正物質は、ヒドロモルホンをブランクヒト尿に添加することにより調製した。
【0219】
品質管理試料:低、中および高QCは、ヒドロモルホンを、ブランクヒト尿の複製アリコートにおよそ187.5ng/mL、375ng/mLおよび1250ng/mLのヒドロモルホンの濃度で添加することにより調製した。100ng/mLのヒドロモルホンを含有する市販の尿QCもUTAKから得た。
【0220】
内部較正物質の選択:選択された内部較正物質およびこれらの特定のMRM移行を表18に示す。
【0221】
【表18】
【0222】
試料の調製
1.250μLの尿試料/較正物質/QCを2mLのエッペンドルフ管にアリコートし、10μLの内部較正物質ミックスを添加する。
2.125μLの四ホウ酸緩衝液(四ホウ酸二ナトリウム十水和物の飽和溶液)を、内部較正物質を有する260μLの尿試料/較正物質/QCに加える。
3.750μLの抽出混合物(DCM:MeOH[90:10])を加え、30秒間渦を作る。
4.13000rpmで5分間遠心分離する。下側有機相を取り出し、清浄なエッペンドルフ管に移す。
5.有機物抽出を繰り返し、抽出物を同じエッペンドルフ管にプールする。
【0223】
6.抽出物をN
2下、40℃でおよそ10分間、無水になるまで乾燥する。
7.200μLの移動相Aにおいて再構成し(1.25×濃縮工程)、UPLC/MS/MS分析のためにTotal Recoveryバイアルに移す。
【0224】
UPLC/MS/MS
試料の抽出物は、0.2mMのギ酸アンモニウム緩衝液中のアセトニトリルの勾配およびESI+veモードで稼働するWaters TQD質量分析器を用いるACQUITY UPLCを使用して分析した(表20)。
【0225】
ヒドロモルホンを、下記に詳述されるように液−液抽出手順の使用により尿試料から抽出した。
【0226】
【表19】
【0227】
【表20】
【0228】
実験1
内部較正物質のMS/MS応答は、0.1μg/mLのヒドロモルホンおよび0.1μg/mLの、溶媒に希釈した各内部較正物質の混合物を分析することにより測定した。内部較正物質および計算された相対応答を表21に示す。
【0229】
【表21】
【0230】
計算された相対応答係数を使用して、内部較正物質の混合物を、10μLを250μLの試料に添加したとき、最終見掛け濃度が50ng/mL、500ng/mLまたは1500ng/mLになるように調製した(表21)。
【0231】
一連の伝統的な外部較正物質も以下の濃度で調製した:20ng/mL、50ng/mL、100ng/mL、250ng/mL、500ng/mL、750ng/mL、1000ng/mLおよび1500ng/mL。
【0232】
内部較正を使用する分析用のQC試料に、3個の内部較正物質の混合物を添加して、最終見掛け濃度の50ng/mL、500ng/mLおよび1500ng/mLを得た(表21)。
【0233】
従来の内部標準(ヒドロモルホン−d6)を、外部較正物質に加え、外部較正による分析用のQC試料に加えた。
【0234】
全ての試料を、上記に記載された条件を使用して液−液抽出およびLC/MS/MSにより処理した。
【0235】
結果
それぞれのQCレベルの5個複製を、伝統的な外部較正の使用により2回、内部較正法の使用により2回分析した。UTAK QCの単回調製を、両方の較正法により二重に分析した。分析の結果を表22および23に示し、例示的な内部較正線を
図15に示す。
【0236】
【表22】
【0237】
【表23】
【0238】
内部較正法の結果は、外部較正法のものと十分に相関するが(
図16;R
2=1.000)、勾配(
図16;0.84)は、この実験において、内部較正法が真の濃度をおよそ16%過小評価していることを示唆している。
【0239】
実験2
値の割当:第2実験では、内部較正をブランクヒト尿の5個の複製アリコートに添加した。内部標準(オキシモルホン)も試料および一連の外部較正物質に加えた。全ての試料は、液−液抽出で処理し、上記に記載されたようにLC/MS/MSで分析した(方法を参照すること。)。このことは、各内部較正物質の見掛け濃度を、従来の技術の使用により、ヒドロモルホン外部較正物質に対して正確に測定することを可能にした。
【0240】
内部較正物質に割り当てられたこれらの値を(実験1で使用された相対応答係数の代わりに)使用して、内部較正物質の新たな混合物を、ここでも最終見掛け濃度の50ng/mL、500ng/mLおよび1500ng/mLを目標に調製した。低、中および高QCの5個の複製ならびにUTAK QCの2個の複製を、内部較正の使用により分析し、それぞれのQCからの2個の複製を従来の外部較正により分析した。各試料の個別の内部較正を
図17に示す。
【0241】
内部および外部較正によるQC分析の結果を表24および
図18に示す。
【0242】
【表24】
【0243】
ここでも、2つの較正手順を使用して得られた結果の間に良好な相関関係があり(
図18;R
2=0.9962)、この場合、1.08の勾配は、2つの方法の間に良好な一致(平均誤差≦8%)を示す。
【0244】
考察
第1実験では、簡単な相対応答係数を内部較正物質の見掛け濃度の計算のために使用した。このプロセスは試料調製プロセスのあらゆる効果を考慮しなかった。内部較正により決定されたQC値は、外部較正により決定されたものと十分に相関したが(R
2=1.000;
図16)、この実験において、相関線の勾配(0.84;
図16)は、内部較正による濃度のおよそ16%の過小評価を示した。
【0245】
第2実験では、内部較正物質濃度を、外部較正線との比較により割り当てた。このプロセスにおいて、全ての内部および外部較正物質を尿マトリックスで調製し、液−液抽出試料調製プロセスに付した。結果は、外部および内部較正を使用して決定されたQC値においてかなり近い一致を示し(
図18;R
2=0.9962および勾配=1.07)、液−液抽出試料調製プロセスが実験1において見られた明らかに不十分な一致の一因でありうることを示唆している。
【0246】
結論
ヒドロモルホンは、安定同位体標識類似体および安定同位体標識構造類似体の混合物による内部較正手法を使用してヒト尿から正確に定量化することができる。
【0247】
内部較正物質値を割り当てる複数の方法を探求して、それぞれの分析物/マトリックス/試料調製方法の組み合わせのために最適な手法を決定することができる。
【0248】
まとめ
内部較正は、従来の較正の正確で精密な代替案を提供することができ、(従来のバッチモード分析では可能でなかった)ランダムアクセス分析を可能にすることができる。したがって、使用者にとって、内部較正は最初の結果を得る時間を低減し、作業の流れを合理化し、試薬消費を低減し、完全にマトリックス適合した較正をあらゆる試料に提供することができる。製造会社にとって、内部較正は新たな組成物、キットおよび器具設計をもたらすことができ、また別個のマトリックスが必要ないので簡素化された製造プロセスを提供することができる。
【0249】
本明細書における値の範囲の列挙は、単に、範囲内にあるそれぞれ別個の値を個別に参照する簡素な方法として機能することが意図される。特に指定のない限り、それぞれ個別の値は、これが個別に引用されるかのように明細書に組み込まれる。本明細書に引用されたそれぞれの文献(全ての特許、特許出願、科学出版物、製造会社の仕様および使用説明書を含む)は、この全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0250】
明細書は、文脈から特に指示されない限り、記載された態様、実施形態および実施例の全ての可能な並べ換えおよび組み合わせを開示および包含することが理解されるべきである。当業者は、要約され記載された、例示の目的で提示されている態様、実施形態および実施例以外によって本発明を実施できることならびに本発明が以下の特許請求の範囲のみにより制限されることを理解する。