特許第6357104号(P6357104)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6357104-製錬プロセスの起動 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6357104
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】製錬プロセスの起動
(51)【国際特許分類】
   C21B 11/08 20060101AFI20180702BHJP
   C21B 13/00 20060101ALI20180702BHJP
   F27B 3/12 20060101ALI20180702BHJP
   F27B 3/18 20060101ALI20180702BHJP
   F27B 3/19 20060101ALI20180702BHJP
   F27B 3/22 20060101ALI20180702BHJP
   F27D 3/14 20060101ALI20180702BHJP
   F27D 13/00 20060101ALI20180702BHJP
【FI】
   C21B11/08
   C21B13/00 101
   F27B3/12
   F27B3/18
   F27B3/19
   F27B3/22
   F27D3/14 A
   F27D13/00 C
【請求項の数】14
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-545039(P2014-545039)
(86)(22)【出願日】2012年12月6日
(65)【公表番号】特表2015-504969(P2015-504969A)
(43)【公表日】2015年2月16日
(86)【国際出願番号】AU2012001486
(87)【国際公開番号】WO2013082658
(87)【国際公開日】20130613
【審査請求日】2015年12月4日
(31)【優先権主張番号】2011905068
(32)【優先日】2011年12月6日
(33)【優先権主張国】AU
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】318006000
【氏名又は名称】タタ スチール リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ドライ,ロドニー ジェイムズ
(72)【発明者】
【氏名】メイイェル,ヘンドリクス コーエンラード アルベルトゥス
【審査官】 藤長 千香子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−032006(JP,A)
【文献】 特開2001−073019(JP,A)
【文献】 特開平01−079311(JP,A)
【文献】 特開昭62−243707(JP,A)
【文献】 特開2008−297623(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21B 3/00−5/06
C21B 11/00−15/04
F27B 1/00−3/28
F27D 7/00−15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
製錬装置において金属含有供給材料を製錬するための溶融浴に基づくプロセスの起動方法において、前記装置が、溶融金属が供給されたときに溶融浴を包含する主チャンバと、製錬キャンペインの間に前記主チャンバから溶融金属を排出するための前炉と、前記主チャンバおよび前記前炉を接続する前炉接続部とを含む製錬容器を含み、前記方法は、次のステップ、すなわち、
(a)前記主チャンバ、前記前炉および前記前炉接続部を予熱するステップと、
(b)ある装入量の溶融金属を、前記前炉を経由して前記主チャンバの中に注入するステップと、
(c)前記溶融金属の装入完了後長くても3時間以内に700〜800℃未満の温度である酸素含有ガスおよび150℃未満の温度である炭素質材料の前記主チャンバの中への供給を開始して、前記溶融金属へのスラグ層の形成の前に前記炭素質材料の点火と、前記主チャンバおよび前記主チャンバ内の溶融金属の加熱とを開始するステップと、
(d)酸素含有ガスおよび炭素質材料の前記主チャンバの中への供給と、炭素質材料の燃焼と、前記主チャンバおよび前記主チャンバ内の溶融金属の加熱とを、少なくとも10分間継続するステップと、
(e)金属の製造を開始するために、金属含有材料の前記主チャンバの中への供給を開始するステップと、
を含む、ことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記主チャンバ内における酸素含有ガスおよび炭素質材料の点火を確認するステップを含む、ことを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法において、ステップ(a)が、前記容器の炉床と、前記前炉と、前記前炉接続部とを、前記炉床と、前記前炉と、前記前炉接続部との平均表面温度が1000℃を超えるように予熱するステップを含む、ことを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法において、ステップ(a)が、前記容器の炉床と、前記前炉と、前記前炉接続部とを、前記炉床と、前記前炉と、前記前炉接続部との平均表面温度が1200℃を超えるように予熱するステップを含む、ことを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載の方法において、ステップ(b)が、前記前炉を経由して前記主チャンバの中に注入する溶融金属の装入量を、前記主チャンバ内の金属のレベルが前記前炉接続部の頂部の少なくとも100mmだけ上部になるように選択するステップを含む、ことを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法において、ステップ(b)が、前記前炉を経由して前記主チャンバの中に注入する溶融金属の装入量を、前記主チャンバ内の金属のレベルが前記前炉接続部の頂部の少なくとも200mmだけ上部になるように選択するステップを含む、ことを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか1項に記載の方法において、ステップ(c)が、酸素含有ガスおよび炭素質材料の前記主チャンバの中への供給を、溶融金属の前記主チャンバの中への装入完了後2時間以内に開始するステップを含む、ことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法において、ステップ(c)が、酸素含有ガスおよび炭素質材料の前記主チャンバの中への供給を、溶融金属の前記主チャンバの中への装入完了後1時間以内に開始するステップを含む、ことを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1〜8の何れか1項に記載の方法において、ステップ(d)が、前記主チャンバ内において炭素質材料および酸素含有ガスを燃焼することによって、前記主チャンバを30〜60分間加熱するステップを含む、ことを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1〜9の何れか1項に記載の方法において、ステップ(c)における前記主チャンバの中への酸素含有ガスおよび炭素質材料の当初の供給量を、前記炭素質材料を完全に燃焼するのに十分な酸素が存在するように計算する、ことを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法において、この最初の点火ステップ(c)が完了すると、酸素含有ガスおよび炭素質材料の供給量を、ステップ(d)において、ステップ(c)の供給量から、前記炭素質材料の完全燃焼のための酸素量の少なくとも40%の酸素量になるように調整する、ことを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1〜11の何れか1項に記載の方法において、ステップ(d)に続いて、ステップ(e)の前に、前記主チャンバ内における金属含有材料の製錬用としての適切なスラグ保有量を形成するために、前記主チャンバの中にスラグまたはスラグ形成剤を供給するステップを含む、ことを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項1〜12の何れか1項に記載の方法において、前記溶融浴に基づく製錬プロセスが、次のステップ、すなわち、
(a)炭素質材料および固体または溶融態の金属含有材料を前記溶融浴の中に供給し、反応ガスを発生させて、金属含有材料を製錬し、前記浴中において溶融金属を製造するステップと、
(b)前記浴から放出される可燃ガスを前記浴の上部で燃焼するために前記主チャンバの中に酸素含有ガスを供給し、前記浴中の製錬反応のための熱を発生させるステップと、
(c)溶融材料の熱同伴液滴および飛び散りであって、前記主チャンバの頂部空間内の燃焼領域の中に放出された時に加熱され、その後前記浴中に再落下する熱同伴液滴および飛び散りを生成するために、前記浴からの溶融材料の顕著な上向きの動きをガスの湧昇によって作出するステップであって、それによって、前記液滴および飛び散りが、熱を前記浴の中に下向きに伝達し、前記浴中において前記熱が金属含有材料の製錬に用いられる、ステップと、
を含む、ことを特徴とする方法。
【請求項14】
製錬装置において金属含有供給材料を製錬するための溶融浴に基づくプロセスの起動方法において、前記装置が、溶融金属が供給されたときに溶融浴を包含する主チャンバと、製錬キャンペインの間に前記主チャンバから溶融金属を排出するための前炉と、前記主チャンバおよび前記前炉を接続する前炉接続部とを含む製錬容器を含み、前記方法は、次のステップ、すなわち、
(a)前記主チャンバ、前記前炉および前記前炉接続部を予熱するステップと、
(b)ある装入量の溶融金属を、前記前炉を経由して前記主チャンバの中に注入するステップと、
(c)前記金属の装入物上に断熱性のスラグ皮膜層が、前記皮膜層によって溶融金属による炭素質材料の点火が妨げられる程度まで形成される前のある時間間隔内において、700〜800℃未満の温度である酸素含有ガスおよび150℃未満の温度である炭素質材料の前記主チャンバの中への供給を開始して、炭素質材料の点火と、前記主チャンバおよび前記主チャンバ内の溶融金属の加熱とを開始するステップと、
(d)酸素含有ガスおよび炭素質材料の前記主チャンバの中への供給と、炭素質材料および酸素含有ガスの燃焼と、前記主チャンバおよび前記主チャンバ内の溶融金属の加熱とを、少なくとも10分間継続するステップと、
(e)金属の製造を開始するために、金属含有材料の前記主チャンバの中への供給を開始するステップと、
を含む、ことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は金属含有材料の製錬プロセスの起動方法に関する。
【0002】
本明細書においては、「金属含有材料(metalliferous material)」という用語は、固体供給材料および溶融供給材料を包含するものと理解される。この用語は、さらに、部分還元された金属含有材料をもその範囲内に含む。
【背景技術】
【0003】
本発明は、それに限定するわけではないが、特に、溶融浴内の発生ガスによって生成される強い浴/スラグの噴泉効果を有する製錬容器において、金属含有供給材料から溶融金属を製造するための溶融浴に基づく製錬プロセスの起動方法に関する。この場合、ガスの発生は、少なくとも部分的に、溶融浴内における炭素質材料の分解蒸発の結果である。
【0004】
本発明は、それに限定するわけではないが、特に、鉄鉱石のような鉄含有材料を製錬して鉄を製造するプロセスの起動方法に関する。
【0005】
本発明は、それに限定するわけではないが、特に、金属含有材料製錬用の主チャンバを含む製錬容器における製錬プロセスの起動方法に関する。
【0006】
一般的にHIsmeltプロセスと呼称される既知の溶融浴に基づく製錬プロセスが、当出願人の名前における多数の特許および特許出願に記載されている。
【0007】
以下において「HIsarna」プロセスと呼称される別の溶融浴に基づく製錬プロセスが、当出願人の名前における国際出願第PCT/AU/99/00884号明細書(国際公開第00/022176号パンフレット)に記載されている。
【0008】
HIsmeltプロセスおよびHIsarnaプロセスは、特に、鉄鉱石または別の鉄含有材料からの溶融鉄の製造に関係している。
【0009】
HIsarnaプロセスは次のような製錬装置において実施される。すなわち、(a)主製錬チャンバと、固体供給材料および酸素含有ガスを主チャンバの中に噴射するランスとを含む製錬容器であって、溶融金属およびスラグの浴を包含するように構成される製錬容器と、(b)金属含有供給材料を予備処理するための製錬サイクロンであって、前記製錬容器の上部に配置されると共に、その製錬容器と直接連通する製錬サイクロンとを含む製錬装置である。
【0010】
本明細書においては、「製錬サイクロン(smelt cyclone)」という用語は、通常、垂直の円筒形のチャンバを画定すると共に、チャンバに供給される供給材料がチャンバの垂直の中心軸の回りの径路内において動くように構成される容器であって、金属含有材料を少なくとも部分溶融するのに十分な高い運転温度に耐え得る容器を意味するものと理解される。
【0011】
HIsarnaプロセスの一形態においては、炭素質の供給材料(通常石炭)と、場合によってはフラックス(通常焼成石灰石)とが、製錬容器の主チャンバ内の溶融浴の中に噴射される。炭素質材料は、還元剤源およびエネルギー源として供給される。鉄鉱石のような金属含有供給材料は、場合によってはフラックスと混合して、製錬サイクロンの中に噴射され、その中で加熱され、部分溶融されかつ部分還元される。部分的に還元されたこの溶融金属含有供給材料は、製錬サイクロンから製錬容器内の溶融浴の中に流下し、その浴中において溶融金属に製錬される。溶融浴内において生成される高温の反応ガス(通常CO、CO、HおよびHO)は、主チャンバの上部部分において、酸素含有ガス(通常工業等級の酸素)により部分燃焼される。後燃焼によって生じる熱は、溶融浴の中に戻るように落下する上部部分内の溶融液滴に伝達されて、浴の温度を維持する。部分燃焼した高温の反応ガスは、主チャンバから上方に流出し、製錬サイクロンの底部に流入する。酸素含有ガス(通常工業等級の酸素)が、羽口から製錬サイクロン内に噴射される。この羽口は、サイクロン状の渦巻きパターンを、水平面内に発生させるように、すなわち製錬サイクロンのチャンバの垂直の中心軸の回りに発生させるように配置される。この酸素含有ガスの噴射によって製錬容器ガスのさらなる燃焼が生じ、その結果、非常に高温の(サイクロン状の)フレームが形成される。精密に分画された流入金属含有供給材料は、製錬サイクロンの羽口からこのフレームの中に空気に載せて噴射され、その結果、急速に加熱されて、部分還元(概略的に10〜20%の還元)を伴う部分溶融作用を受ける。この還元は、ヘマタイトの熱分解と、主チャンバからの反応ガス中のCO/Hの還元反応との両者によるものである。部分溶融された高温の金属含有供給材料は、サイクロン状の渦巻き作用によって製錬サイクロンの壁面上に外向きに押し出され、上記のように製錬容器の中に下向きに流下して、前記容器の主チャンバ内において製錬される。
【0012】
HIsarnaプロセスの上記の形態の正味の効果は2段階の向流プロセスにある。金属含有供給材料は、(酸素含有ガスの添加によって)製錬容器から流出する反応ガスによって加熱されると共に部分還元され、製錬容器の中に下向きに流下し、その製錬容器内で溶融鉄に製錬される。全般的に、この向流の構成によって生産性およびエネルギー効率が向上する。
【0013】
上記の記述は、オーストラリアまたは他国において共通の一般的知識として容認されていると解釈されるべきではない。
【0014】
出願人は、HIsarnaプロセスと、HIsmeltプロセスの酸素吹錬方式とを、製錬容器内で、次のような手順によって起動することを提案してきた。すなわち、(外部源からの)高温金属を、容器の前炉を経由して容器の主チャンバの中に供給し、酸素含有ガス(通常工業等級の酸素)および固体の炭素質材料(通常石炭)の供給を開始し、主チャンバ内において熱を発生させるという手順である。この高温起動方法は、主チャンバ内における可燃材料の自然点火によって熱を発生させる。出願人は、高温起動方法におけるこの初期ステップに続いて、スラグ形成剤を添加し、さらにその後、金属含有供給材料(例えば鉄鉱石のような鉄分含有材料)を主チャンバの中に供給することを提案した。
【0015】
酸素含有ガスとしての冷間温度の工業等級の酸素と、固体の炭素質材料としての石炭と、金属含有材料としての鉄鉱石の粉鉱とに基づくHIsarnaプロセスのパイロットプラント試験において、出願人は、上記のような起動方法が特定の条件の下では失敗する可能性があることを見出した。製錬容器の主チャンバの中への高温金属の装入と、酸素/石炭の送入との間に不用意に長い時間を経過させると、主チャンバの中に新鮮な高温金属が先程注入されたばかりであるにも拘らず、石炭−酸素の点火が生起しない場合があることが分かった。これは、未燃焼の石炭および酸素の混合物が製錬容器から流出する結果をもたらし、延いては、下流側の廃熱ボイラにおける石炭ダストの激増的堆積が惹起される。
【0016】
出願人は、このような状況は、深刻な損害および/または機器の損傷を招来する可能性があるので、避けるべきであると考えている。この起動の失敗の結果、出願人は、何が点火失敗の原因になっているかを直接観察するために、製錬容器内にカメラを装着した。
【0017】
ビデオの録画から次のような状況が判明した。すなわち、高温金属が製錬容器の主チャンバの中に注入されると、主チャンバ内において冷間温度の酸素−石炭混合物を容易に点火し得る自然発生の火花および高温金属の小さい飛び散りが生じるが、時間が経過するに連れて、高温金属表面にスラグの薄い層が形成され、高温金属の飛び散りの活発さが次第に消失する。最後には、金属が完全にスラグの皮膜で覆われ、金属の飛び散り活動が停止する。酸素および石炭がこのような状態において供給されると、点火の失敗があり得ると考えられる。
【0018】
スラグは、2つの発生源に由来すると考えられる。すなわち、(1)前回の製錬キャンペインのような先行の運転から製錬容器の主チャンバ内に残されたスラグ、および、(2)高温金属中の特定の金属種(特にケイ素)の酸化、である。後者が生起する程度は、装入金属中に存在するケイ素の量の関数であり、起動操作の一部としてケイ素が故意に高められると、この効果は強化される。重要な実際的結論は、スラグ層が形成される可能性が常にあり、安全な起動方法はこの可能性を受け入れるべきであるということである。
【0019】
スラグ層の形成は、容器の形状と、装入金属の温度/組成と、容器の条件(例えば、容器の側壁上の既存の固形化層の厚さ)との関数である。製錬容器の主チャンバ内に高温金属が注入されると、相対的に静止状態にある浴表面から、高温金属の上部の主チャンバの側壁への放射による熱損失が直ちに生じる。これらの側壁は耐火壁とすることができる。特に出願人が関心を有する製錬容器の場合には、この側壁は水冷パネルを含む。金属は、これらの条件の下では高密度でありかつ相対的に低粘度を有するので、それ自体の内部で循環する傾向がある。これは、金属の上部表面全域に固形化されたまたは高粘度の一様な皮膜を形成するいかなる初期の傾向をも抑制する。一方、スラグは、金属の頂部に多少とも一様な薄い層として浮上する傾向を有する。それが放射によって熱を失うに連れて、その粘度が上昇し、粘着性を呈するようになる。このような条件の下で、断熱性のスラグ皮膜(事実上断熱「ブランケット」)が高温金属の頂部に効果的に形成される。出願人は、これが、起動条件の下で酸素−石炭の点火を抑えるスラグの機能に関わる重要な機構であると考える。これは時間に関係する機構である。
【0020】
このスラグ皮膜の形成に関わる時間スケールを理解することが、安全なプラントの運転にとって重要である。本明細書に記述するパイロットプラントの場合には、(金属)浴の直径は約2.6mであり、頂部空間は、製錬容器の側壁および屋根における完全水冷パネルによって画定された。その時点では、仮の(犠牲)鋳造/吹付け耐火物の層が水冷パネルの上に設けられていた。起動が失敗した場合(石炭ダストの激増的堆積が発生)を含む試験において、金属を容器の主チャンバの中に装入したが、酸素および石炭を主チャンバに添加することによってプロセスを起動するために、7回の別個の試験を実施した。この内、6回は装入後最初の2時間以内に実施した。毎回、点火は実際に生起した(水冷パネルの熱負荷およびガス組成データから)が、続いて、点火には無関係の理由から起動の試みは失敗したことを示すことができた。7回目の(そして最後の)試験は、高温金属装入の完了後約2.5時間経って実施した。最終的な点火の失敗と、その結果としての石炭ダストの激増的堆積とが生じたのはこの試験であった。
【0021】
この特定の製錬施設の場合には、「安全な」点火の時間枠(その間に酸素および石炭の自然点火が合理的に確保できる時間)は、高温金属の装入完了後約1〜2時間であると見られる。これを超えると、安全な点火が確保されず、代替的な冷間起動方法に準拠する必要がある。冷間起動方法は、本願の国際出願と同じ日に、当出願人の名前において提出された「製錬プロセスの起動(Starting a Smelting Process)」なる表題の関連国際出願に記載されている。
【0022】
この特定の時間枠を他の製錬施設に換算して使用することは、上記の因子(容器形状、装入金属の条件など)を正当に考慮した上で注意深く行わなければならない。
【発明の概要】
【0023】
本発明の製錬プロセスの起動方法は、空の容器状態からの起動操作の一部としてある装入量の新鮮な高温金属が加えられた場合、任意の溶融浴に基づく製錬プロセスの起動に適用可能である。
【0024】
本発明によれば、製錬装置において金属含有供給材料を製錬するための溶融浴に基づくプロセスの起動方法が提供される。この場合、この装置は、溶融浴を包含する主チャンバと、製錬キャンペインの間に主チャンバから溶融金属を排出するための前炉と、主チャンバおよび前炉を接続する前炉接続部とを含む製錬容器を含み、前記方法は、次のステップ、すなわち、
(a)主チャンバ、前炉および前炉接続部を予熱するステップと、
(b)ある装入量の高温金属を、前炉を経由して主チャンバの中に注入するステップと、
(c)高温金属の装入完了後長くても3時間以内に冷間温度の酸素含有ガスおよび冷間温度の炭素質材料の主チャンバの中への供給を開始して、炭素質材料の点火と、主チャンバおよび主チャンバ内の溶融金属の加熱とを開始するステップと、
(d)酸素含有ガスおよび炭素質材料の主チャンバの中への供給と、炭素質材料の燃焼と、主チャンバおよび主チャンバ内の溶融金属の加熱とを、少なくとも10分間継続するステップと、
(e)金属の製造を開始するために、金属含有材料の主チャンバの中への供給を開始するステップと、
を含む。
【0025】
上記のように、ステップ(c)において3時間の点火時間の上限を選択した説明としては、パイロットプラント試験から導かれた安全点火のための2時間という上限時間は、パイロットプラントのサイズおよび運転条件に関わる種々の因子に影響されたものであるということがある。パイロットプラントに関するこれらの因子を考慮し、かつ、他の溶融浴に基づく製錬施設に該当する因子を勘案して、出願人は、パイロットプラントとは異なる他の製錬施設の条件の下では、安全な点火のためのこの時間間隔を3時間程度に引き延ばすことができると結論付けたのである。
【0026】
酸素含有ガスに関する「冷間(温度)(cold)」という用語は、本明細書においては、ガスの温度が、炭素質材料および酸素含有ガスの混合物の自然点火に必要な温度(すなわち石炭−酸素混合物の場合には約700〜800℃)未満の温度であることを意味するものと理解される。
【0027】
炭素質材料に関する「冷間(温度)(cold)」という用語は、本明細書においては150℃未満の固体材料を意味するものと理解される。
【0028】
この方法は、主チャンバ内における酸素含有ガスおよび炭素質材料の点火を確認するステップを含むことができる。この確認は、水冷パネルの熱負荷、および/または、製錬装置用のオンラインのガス分析装置、および/または、カメラまたは容器における適切な開口を利用した直接観察(プロセス条件が可能な場合)によって行うことができる。
【0029】
ステップ(a)は、容器と、前炉と、前炉接続部とを予熱するステップを含むことができる。この予熱は、例えば適切な燃料ガスを使用して、炉床と、前炉と、前炉接続部との平均表面温度が1000℃を超えるように、好ましくは1200℃を超えるように行うことができる。
【0030】
ステップ(b)における溶融金属の装入量は、高温金属の複数個の個別レードルによることができる。
【0031】
ステップ(b)は、前炉を経由して主チャンバの中に注入する高温金属の装入量を、主チャンバ内の金属のレベルが前炉接続部の頂部の少なくとも100mmだけ上部になるように選択するステップを含むことができる。
【0032】
ステップ(b)は、前炉を経由して主チャンバの中に注入する高温金属の装入量を、主チャンバ内の金属のレベルが前炉接続部の頂部の少なくとも200mmだけ上部になるように選択するステップを含むことができる。
【0033】
ステップ(c)は、酸素含有ガスおよび炭素質材料の主チャンバの中への供給を、高温金属の主チャンバの中への装入完了後2時間以内に開始するステップを含むことができる。
【0034】
ステップ(c)は、酸素含有ガスおよび炭素質材料の主チャンバの中への供給を、高温金属の主チャンバの中への装入完了後1時間以内に開始するステップを含むことができる。
【0035】
ステップ(c)は、石炭の炭素質材料の主チャンバの中への供給を、酸素含有ガスの主チャンバの中への供給を開始する前に開始するステップを含むことができる。
【0036】
ステップ(c)は、石炭の炭素質材料および酸素含有ガスの主チャンバの中への供給を同時に開始するステップを含むことができる。
【0037】
ステップ(c)は、酸素含有ガスの主チャンバの中への供給を、石炭の炭素質材料の主チャンバの中への供給を開始する前に開始するステップを含むことができる。
【0038】
ステップ(c)は、固体の炭素質材料の完全燃焼を確保するために、固体の炭素質材料と酸素含有ガスとの比を選択するステップを含むことができる。
【0039】
ステップ(d)は、固体の炭素質材料と酸素含有ガスとの比を増大させるステップを含むことができる。
【0040】
ステップ(d)は、主チャンバ内において炭素質材料および酸素含有ガスを燃焼することによって、主チャンバを30〜60分間加熱するステップを含むことができる。
【0041】
上記のステップ(c)における主チャンバの中への酸素含有ガスおよび炭素質材料の当初の供給量は、炭素質材料を完全に燃焼するに十分な酸素が存在するように計算することが望ましい。これは、一般的に、最大の熱発生と、良好な点火を達成する最高の可能性とに一致する。
【0042】
この初期の点火ステップ(c)が完了すると、酸素含有ガスおよび炭素質材料の供給量を、ステップ(d)において、ステップ(c)の供給量から、炭素質材料の完全燃焼のための酸素量のおよそ半分、好ましくは少なくともその40%の酸素量になるように調整することが望ましい。これによって、主チャンバの酸素ポテンシャルが、概略的に製錬用の正常な範囲内に調整され、溶融材料の過度の酸化が防止される。
【0043】
この方法は、ステップ(d)に続いて、ステップ(e)の前に、主チャンバ内における金属含有材料の製錬用としての適切なスラグ保有量を形成するために、主チャンバの中にスラグまたはスラグ形成剤を供給するステップを含むことができる。
【0044】
製錬容器は耐火物内張り炉床を含むことができる。
【0045】
前炉は耐火物内張り前炉とすることができる。
【0046】
製錬容器は、容器の主チャンバの頂部空間を画定する部分水冷の側壁を含むことができる。
【0047】
製錬容器は、容器の主チャンバ内の浴の中に炭素質材料を噴射するためのランス/羽口を含むことができる。
【0048】
製錬容器は、容器の主チャンバの頂部空間の中に酸素含有ガスを噴射するためのランス/羽口を含むことができる。
【0049】
この装置は、(i)溶融金属の浴を包含するように構成される上記の製錬容器と、(ii)製錬容器の上部に配置されると共に製錬容器と連通する製錬サイクロン、とを含むことができる。この場合、ステップ(e)は、金属含有供給材料および追加の酸素含有ガスの製錬サイクロンの中への供給を開始して、サイクロン内における材料の回転流れの発生と、容器からサイクロン内に上昇する可燃ガスの燃焼と、サイクロン内における金属含有供給材料の部分的な還元および溶融とを開始するステップを含むことができる。これによって、部分還元された溶融金属含有供給材料が、サイクロンから、製錬容器の主チャンバ内の金属およびスラグの溶融浴の中に流下して、その浴中で溶融金属に製錬される。
【0050】
本発明の方法は、次の各項を含む溶融浴に基づく製錬装置に適用可能である。すなわち、(a)溶融金属およびスラグの浴を包含するように構成される主チャンバを有する製錬容器と、(b)炭素質材料を浴の中に供給するためのランスまたは他の適切な手段と、(c)酸素含有ガスを浴の中に供給するためのランスまたは他の適切な手段と、(d)金属含有材料を、直接的にまたは製錬サイクロンを経由して間接的に、浴の中に供給するためのランスまたは他の適切な手段と、(e)浴上部の製錬容器の壁面領域の少なくとも40%、通常少なくとも50%が固形化したスラグ層を有する水冷パネルによってカバーされる製錬容器の壁面領域と、を含む製錬装置に適用可能である。
【0051】
溶融浴に基づく製錬プロセスは、正常な運転条件の下で、次のステップ、すなわち、
(a)炭素質材料および(固体または溶融態とすることができる)金属含有材料を溶融浴の中に供給し、反応ガスを発生させて、金属含有材料を製錬し、浴中において溶融金属を製造するステップと、
(b)浴から放出される可燃ガスを浴の上部で燃焼するために主チャンバの中に酸素含有ガスを供給し、浴中の製錬反応のための熱を発生させるステップであって、その場合、酸素含有ガスは、通常、石炭−酸素混合物の安全な点火に必要な温度より大幅に低い(すなわち、700〜800℃未満)という意味で「冷間温度」にある工業等級の酸素である、ステップと、
(c)溶融材料の熱同伴液滴および飛び散りであって、主チャンバの頂部空間内の燃焼領域の中に放出された時に加熱され、その後浴中に再落下する熱同伴液滴および飛び散りを生成するために、浴からの溶融材料の顕著な上向きの動きをガスの湧昇によって作出するステップであって、それによって、液滴および飛び散りが、熱を浴の中に下向きに伝達し、その浴中において熱が金属含有材料の製錬に用いられる、ステップと、
を含む。
【0052】
酸素含有ガスは、空気、酸素、または酸素富化空気とすることができる。
【0053】
本発明によれば、製錬装置において金属含有供給材料を製錬するための溶融浴に基づくプロセスの起動方法が提供される。この場合、この装置は、溶融浴を包含する主チャンバと、製錬キャンペインの間に主チャンバから溶融金属を排出するための前炉と、主チャンバおよび前炉を接続する前炉接続部とを含む製錬容器を含み、前記方法は、次のステップ、すなわち、
(a)主チャンバ、前炉および前炉接続部を予熱するステップと、
(b)ある装入量の高温金属を、前炉を経由して主チャンバの中に注入するステップと、
(c)金属の装入物上に断熱性のスラグ皮膜層が、その皮膜層によって溶融金属による炭素質材料の点火が妨げられる程度まで形成される前のある時間間隔内において、冷間温度の酸素含有ガスおよび冷間温度の炭素質材料の主チャンバの中への供給を開始して、炭素質材料の点火と、主チャンバおよび主チャンバ内の溶融金属の加熱とを開始するステップと、
(d)酸素含有ガスおよび炭素質材料の主チャンバの中への供給と、炭素質材料および酸素含有ガスの燃焼と、主チャンバおよび主チャンバ内の溶融金属の加熱とを、少なくとも10分間継続するステップと、
(e)金属の製造を開始するために、金属含有材料の主チャンバの中への供給を開始するステップと、
を含む。
【0054】
以下、本発明による、製錬容器における製錬プロセスの起動方法の実施形態を、添付の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0055】
図1図1は、HIsarnaプロセスの一実施形態に従って金属含有材料を製錬して溶融金属を製造するHIsarna装置の概略図である。
図2図2は、図1に示す製錬容器の拡大断面図であり、図1に示す装置の製錬容器の主チャンバの中にある装入量の溶融金属を供給したすぐ後の製錬容器の状態を表している。容器内の溶融金属および溶融スラグ層の上には皮膜層が形成されている。
【発明を実施するための形態】
【0056】
HIsarnaプロセスは、金属含有供給材料を製錬し、溶融金属、溶融スラグおよびオフガスのプロセス生成物を製造する。HIsarnaプロセスに関する以下の記述は、鉄鉱石の形の金属含有材料の製錬を対象としているが、本発明はこのタイプの金属含有材料に限定されない。
【0057】
図1に示すHIsarna装置は、製錬サイクロン2と、製錬サイクロン2の直下に配置される主チャンバ19を有する溶融浴に基づく製錬容器4とを含む。この場合、製錬サイクロン2のチャンバと製錬容器4との間は直接連通している。
【0058】
図1を参照すると、製錬キャンペインの定常状態の運転の間には、最大寸法6mmのマグネタイトベースの鉱石(または他の鉄鉱石)と石灰石のようなフラックスとの混合物1が、鉱石乾燥機を経由して、空気搬送ガス1aによって製錬サイクロン2の中に供給される。石灰石は、鉱石および石灰石の組合せ流れのおよそ8〜10重量%を占める。酸素8は、鉱石を、予熱し、部分溶融しかつ部分還元するために、羽口から製錬サイクロン2の中に噴射される。酸素8は、また、製錬容器4から製錬サイクロン2の中に上昇流入する可燃ガスを燃焼する。部分溶融されかつ部分還元された鉄鉱石は、製錬サイクロン2から、製錬容器4における主チャンバ19内の金属およびスラグの溶融浴25の中に流下する。この溶融浴25の中で、部分溶融されかつ部分還元された鉄鉱石は製錬され、溶融鉄を形成する。石炭3は、別個の乾燥機を経由して、製錬容器4の主チャンバ19に供給される。石炭3および搬送ガス2aは、ランス35から、主チャンバ19内の金属およびスラグの溶融浴25の中に噴射される。石炭は還元剤源およびエネルギー源を提供する。図1および2は、溶融浴25を2つの層を含むものとして示しており、その内の層25aは溶融金属層、層25bは溶融スラグ層である。図は、層を一様な深さのものとして表現しているが、これは単に例示目的用であり、HIsarnaプロセスの運転における高度に撹拌され、かつ、よく混合した浴の状態を正確に表現するものではない。溶融浴25の混合は、浴内における石炭の分解蒸発の結果であり、その分解蒸発によって、COおよびHのようなガスが発生し、ガスおよび同伴される材料の、溶融浴から、溶融浴25の上部の主チャンバ19の頂部空間の中への上向きの動きが生じる。酸素7は、ランス37から主チャンバ19の中に噴射され、溶融浴25内で発生したこれらのガス、すなわち、溶融浴25から主チャンバ19の頂部空間内に放出されるガス、通常COおよびHのいくらかを後燃焼して、浴内の製錬プロセスに必要な熱を供給する。
【0059】
製錬キャンペインの間のHIsarnaプロセスの正常な運転は、(a)ランス35からの石炭の噴射、およびランス37からの製錬容器4の主チャンバ19の中への冷間温度の酸素の噴射と、(b)製錬サイクロン2の中への鉱石噴射7および追加的な酸素噴射8とを含む。
【0060】
製錬容器4の主チャンバ19の中への石炭および酸素の供給量と、製錬サイクロン2の中への鉱石および酸素の供給量と、主チャンバ19からの熱損失とを含む運転条件、但しこれに限定されない運転条件は、オフガス流出ダクト9経由で製錬サイクロン2から流出するオフガスが、少なくとも90%の後燃焼率を有するように選択される。
【0061】
製錬サイクロン2から流出するオフガスは、オフガスダクト9を経由してオフガス焼却炉10に流入するが、その焼却炉において、追加の酸素11を噴射して残留CO/Hを燃焼し、完全燃焼した排ガス中の遊離酸素の程度(通常1〜2%)の排ガスにする。
【0062】
完全燃焼したオフガスは、続いて、廃熱回収セクション12を通過し、そこでガスが冷却され、蒸気が生成される。排ガスは、さらに、湿式スクラバー13を通過し、そこで冷却され、かつダストが除去される。生じたスラッジ14は、鉱石供給流れ1を経由する製錬器へのリサイクル用として利用可能である。
【0063】
スクラバー13から流出する冷却された排ガスは排ガス脱硫ユニット15に送られる。
【0064】
清浄な排ガスは、続いて煙突16から排気される。このガスは主としてCOから構成され、場合によっては、それを、(残留非凝縮性ガス種を十分に除去して)圧縮し、地下貯留することが可能である。
【0065】
特に図2を参照すると、製錬容器4は、耐火物内張り炉床33と、主として主チャンバ19を画定する水冷パネルによって画定される側壁41とを含む。製錬容器4は、また、前炉接続部23を介して主チャンバ19に接続される前炉21を含む。HIsarnaプロセスの製錬キャンペインの過程の間、主チャンバ19内で製造された溶融金属は、前炉接続部23および前炉21を経由して主チャンバ19から排出される。
【0066】
製鉄用のHIsarnaプロセスの本発明による起動方法の一実施形態を以下に説明する。
【0067】
この起動方法の開始時点においては、容器4の主チャンバ19と前炉21と前炉接続部23とは空である。
【0068】
この起動方法は、炉床33、前炉21および前炉接続部23を、例えば適切な燃料ガスを用いて、炉床33、前炉21および前炉接続部23の平均表面温度が1000℃を超えるように、好ましくは1200℃を超えるように予熱するステップを含む。
【0069】
予熱ステップの完了後、この起動方法は、容器4の炉床33内に溶融鉄浴25aを形成するために、選択された量の溶融鉄を、前炉21および前炉接続部23から主チャンバ19の中に注入するステップを含む。通常、この装入の量は、主チャンバ19内の溶融鉄のレベルが、前炉接続部23の頂部の少なくとも100mmだけ上部になるように選択される。
【0070】
主チャンバ19内に溶融鉄が装入されると、直ちに、溶融鉄浴25aの表面上に、スラグの固形化された皮膜層29が形成され始める。図2は、この起動方法におけるこの段階の製錬容器4を表現している。熱は、図2に示す溶融鉄浴25aの上部表面から、(主として)放射によって、主チャンバ19の上部部分を画定する側壁41の水冷パネルに向かって失われる。
【0071】
主チャンバ19の中に溶融鉄を装入するステップの完了後に、この起動方法は、石炭および酸素を、主チャンバ19の中にそれぞれランス35および37から供給するステップを含む。
【0072】
起動方法が成功すると、石炭が点火し、主チャンバ19内に熱が発生する。
【0073】
HIsarnaプロセスの安全な起動のための鍵となる点は、3時間未満(この例では1〜2時間)の名目上「安全な」時間間隔の範囲内において、酸素噴射37および石炭噴射35の供給を開始することである。
【0074】
より一般的に言えば、この時間枠は、固形化したスラグの皮膜層29が、固形化したスラグの皮膜層29によって、溶融鉄浴25aから溶融浴25aの上部の主チャンバ19内の頂部空間の中への溶融鉄の火花および飛び散りが酸素37および石炭35を点火できず、他の点火源が存在しない状況に至るまでの時間間隔である。
【0075】
酸素37および石炭35を最初に供給開始する際のこの両者間の比は、すべての石炭35を燃焼するのに十分な酸素が存在するように計算される。点火後、この条件を、点火が健全であることを確認するのに十分な長さの時間(5〜10分間)だけ維持する。その後引き続いて、石炭対鉱石比を、酸素37に対して(完全燃焼用としての石炭量の)約2倍の石炭35の量に調整する。石炭対鉱石比を高める目的は、還元剤源およびエネルギー源として使用するための炭素の量を増加することにある。
【0076】
健全な点火の確認は、水冷パネルの熱負荷、および/または、製錬装置用のオンラインのガス分析装置、および/または、カメラまたは製錬容器4における適切な開口を利用した直接観察(プロセス条件が可能な場合)によって行うことができる。
【0077】
この起動方法は、石炭噴射が行われている任意の時点で、石灰または石灰石のようなフラックス形成剤を噴射するステップを含むことができる。好ましい実施態様は、上記の当初の5〜10分間の点火の確認段階の後まで待つことである。
【0078】
石炭および酸素(さらにフラックス)の噴射は、主チャンバ19、およびチャンバ内の溶融金属を加熱するために約30分間維持する。この時点で、正常運転のための適切なスラグ保有量を急速に形成するために、破砕したスラグを、スラグノッチ6から主チャンバ19の中に空気搬送する。
【0079】
破砕スラグの噴射が完了すると、鉄鉱石および酸素8を製錬サイクロン2の中に噴射し、石炭35および酸素37を製錬容器4の中に噴射する。製錬キャンペインにおける金属の製造が開始され、溶融金属が、前炉21および前炉接続部23を経由して、主チャンバ19から排出される。
【0080】
以上述べた本発明のプロセスの実施形態に対して、本発明の本質および範囲から逸脱することなく、多くの変更を加えることができる。
【0081】
以上の記述は、炭素質材料として石炭に、酸素含有ガスとして工業等級の酸素に焦点を当てているが、本発明はそれに限定されず、任意の適切な酸素含有ガスおよび任意の適切な固体の炭素質材料に広げることができる。
【0082】
上記の実施形態はHIsarnaプロセスに焦点を当てているが、本発明はHIsarnaプロセスに限定されず、製錬容器内における任意の溶融浴に基づくプロセスに広げることができる。例えば、本発明はHIsmeltプロセスの酸素吹錬方式に広げられる。前記のように、HIsmeltプロセスは、当出願人の名前における多数の特許および特許出願に記載されている。例えば、HIsmeltプロセスは、当出願人の名前における国際出願第PCT/AU96/00197号明細書に記載されている。この国際出願と共に提出された特許明細書における開示は、相互参照により本願に組み込まれる。
図1
図2