(54)【発明の名称】コードされている腫瘍抗原の発現を増加させるための、ヒストンステムループとポリ(A)配列又はポリアデニル化シグナルとを含むか又はコードしている核酸
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記改変核酸の少なくとも1つのペプチド又はタンパク質をコードしているコード領域のG/C含量が、野生型核酸のコード領域のG/C含量に比べて増加している請求項13から14のいずれかに記載の核酸。
含有されている前記核酸のうちの1種が、PSA、PSMA、PSCA、STEAP−1、NY−ESO−1、5T4、サバイビン、MAGE−C1、又はMAGE−C2をコードしている請求項17から19のいずれかに記載の組成物。
a) 請求項1から16のいずれかに記載の核酸であって、コードされているペプチド又はタンパク質が、腫瘍抗原PSA、又はその断片、変異体、若しくは誘導体を含む核酸と、
b) 請求項1から16のいずれかに記載の核酸であって、コードされているペプチド又はタンパク質が、腫瘍抗原PSMA、又はその断片、変異体、若しくは誘導体を含む核酸と、
c) 請求項1から16のいずれかに記載の核酸であって、コードされているペプチド又はタンパク質が、腫瘍抗原PSCA、又はその断片、変異体、若しくは誘導体を含む核酸と、
d) 請求項1から16のいずれかに記載の核酸であって、コードされているペプチド又はタンパク質が、腫瘍抗原STEAP−1、又はその断片、変異体、若しくは誘導体を含む核酸と
を少なくとも含み、
前記断片、又は変異体が、野生型ペプチド又はタンパク質の全アミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含み、かつ、野生型ペプチド又はタンパク質に比べて、同じ生物機能又は特異的活性を有し、
前記誘導体が、野生型ペプチド又はタンパク質の完全長配列、及びN末端又はC末端の更なる配列特徴を含む請求項17から23のいずれかに記載の組成物、キット、又はキットのパーツ。
癌又は腫瘍疾患の治療において使用するための請求項1から16のいずれかに記載の核酸又は請求項17から26のいずれかに記載の組成物、キット若しくはキットのパーツ。
コードされているペプチド又はタンパク質の発現を増加させるための請求項1から16のいずれかに記載の核酸又は請求項17から26のいずれかに記載の組成物、キット若しくはキットのパーツのインビトロでの使用。
【発明を実施するための形態】
【0033】
これに関連して、本発明の第1の態様に係る本発明の核酸は、好ましくは本明細書に記載する通りDNA又はRNAの合成によって少なくとも部分的に作製されるか、又は単離核酸であることが特に好ましい。
【0034】
本発明は、ポリ(A)配列又はポリアデニル化シグナルと少なくとも1つのヒストンステムループとの組み合わせが、個々のエレメントのいずれかでみられたレベルの何倍もタンパク質発現を増加させることから、自然界では別の機序を表すにもかかわらず、相乗的に作用するという本発明者らの驚くべき知見に基づいている。ポリ(A)と少なくとも1つのヒストンステムループとの組み合わせの相乗効果は、ポリ(A)及びヒストンステムループの順序、並びにポリ(A)配列の長さにかかわらずみられる。
【0035】
したがって、本発明の核酸配列は、a)腫瘍抗原又はその断片、変異体又は誘導体を含む少なくとも1つのペプチド又はタンパク質をコードしているコード領域と、(好ましくはコードされている前記ペプチド又はタンパク質の発現レベルを増加させるために)b)少なくとも1つのヒストンステムループと、c)ポリ(A)配列又はポリアデニル化配列とを含むか又はコードしていることが特に好ましい。幾つかの実施形態では、コードされている前記タンパク質が、ヒストンタンパク質、特にH4、H3、H2A、及び/又はH2Bヒストンファミリーのヒストンタンパク質、或いはヒストン(様)機能、即ちヌクレオソームを形成する機能を保持しているその断片、誘導体、又は変異体ではないことが好ましい場合がある。また、コードされている前記タンパク質は、典型的に、H1ヒストンファミリーのヒストンリンカータンパク質には相当しない。本発明の核酸分子は、典型的に、(マウスヒストン遺伝子、特にマウスヒストン遺伝子H2A、更に最も好ましくはマウスヒストン遺伝子H2A614の5’及び/又は特に3’に)任意の調節シグナルを含有しない。特に、本発明の核酸分子は、マウスヒストン遺伝子、特にマウスヒストン遺伝子H2A、最も好ましくはマウスヒストン遺伝子H2A614由来のヒストンステムループ及び/又はヒストンステムループプロセシングシグナルを含有しない。
【0036】
また、本発明の核酸は、典型的に、その要素(a)において、レポータータンパク質(例えば、ルシフェラーゼ、GFP、EGFP、β−ガラクトシダーゼ、特にEGFP)、ガラクトキナーゼ(galK)及び/又はマーカー若しくは選択タンパク質(例えば、アルファグロビン、ガラクトキナーゼ、及びキサンチン:グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(GPT))、或いは細菌のレポータータンパク質(例えば、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT))、或いは他の細菌の抗生物質耐性タンパク質(例えば、細菌neo遺伝子由来の抗生物質耐性タンパク質)を提供しない。
【0037】
レポーター、マーカー、又は選択タンパク質は、典型的に、本発明に係る腫瘍抗原ではないと理解される。レポーター、マーカー、若しくは選択タンパク質、又はその基本となる遺伝子は、細菌、細胞培養物、動物、又は植物における研究用ツールとして一般的に用いられている。これらは、(好ましくは、異種性に)それを発現する生物に対して、測定することができるか又は選択を可能にする容易に同定可能な性質を付与する。具体的には、マーカー又は選択タンパク質は、選択可能な機能を示す。典型的には、かかる選択、マーカー、又はレポータータンパク質は、自然界ではヒト又は他の哺乳類には存在せず、他の生物、特に細菌又は植物に由来する。したがって、哺乳類以外、特にヒト以外の種に由来する選択、マーカー、又はレポーター機能を有するタンパク質は、好ましくは、本発明に係る「腫瘍抗原」として作用する性質を有するタンパク質であると理解されるものから除外される。具体的には、選択、マーカー又はレポータータンパク質は、例えば、蛍光又は他の分光学的技術、及び抗生物質に対する耐性に基づくインビトロアッセイによって形質転換細胞を同定することを可能にする。したがって、かかる性質を形質転換細胞に付与する選択、レポーター、又はマーカー遺伝子は、典型的に、インビボにおいて本発明に係る腫瘍抗原として作用するタンパク質であるとは理解されない。
【0038】
いずれの場合も、レポーター、マーカー、又は選択タンパク質は、通常、腫瘍抗原性を全く発揮せず、したがって、腫瘍疾患を治療する免疫学的効果を全く発揮しない。任意の単一のレポーター、マーカー、又は選択タンパク質が、(そのレポーター、選択、又はマーカー機能に加えて)抗原効果を発揮する場合であっても、かかるレポーター、マーカー又は選択タンパク質は、好ましくは、本発明の意味の範囲内で「腫瘍抗原」であるとは理解されない。
【0039】
対照的に、本発明に係る腫瘍抗原として作用するタンパク質又はペプチド(特に、H1、H2A、H2B、H3、及びH4ファミリーのヒストン遺伝子を除く)は、典型的に、選択、マーカー、又はレポーター機能を示さない。任意の単一の「腫瘍抗原」が(その腫瘍抗原機能に加えて)選択、マーカー、又はレポーター機能を示す場合であっても、かかる腫瘍抗原は、好ましくは、本発明の意味の範囲内で「選択、マーカー、又はレポータータンパク質」であるとは理解されない。
【0040】
最も好ましくは、本発明に係る腫瘍抗原として作用するタンパク質は、哺乳類、特にヒト、特に哺乳類腫瘍に由来し、選択、マーカー、又はレポータータンパク質として適切ではないと理解される。具体的には、かかる腫瘍抗原は、哺乳類、特にヒトの腫瘍に由来する。これら腫瘍抗原タンパク質は、抗原性であると理解されるが、その理由は、前記腫瘍抗原タンパク質が、TH1及び/又はTH2免疫応答によって被験体の免疫系が前記被験体の腫瘍細胞と戦うことができるように、前記被験体の免疫応答を誘発することによって前記被験体を治療するためである。したがって、かかる抗原性腫瘍タンパク質は、典型的に、被験体の癌の種類を特徴付ける哺乳類、特にヒトのタンパク質である。
【0041】
したがって、(a)少なくとも1つのペプチド又はタンパク質をコードしているコード領域は、少なくとも、(b)少なくとも1つのヒストンステムループ、又はより広くは、任意の適切なステムループと異種であることが好ましい。言い換えれば、本発明において「異種」とは、少なくとも1つのステムループ配列が、本発明の核酸の要素(a)の(腫瘍抗原)タンパク質又はペプチドをコードしている特定の遺伝子の(例えば、3’UTRにおける)(調節)配列として自然界で存在することはないことを意味する。したがって、本発明の核酸の(ヒストン)ステムループは、本発明の核酸の要素(a)のコード領域を含む遺伝子以外の遺伝子の3’UTRに由来することが好ましい。例えば、要素(a)のコード領域は、本発明の核酸が異種である場合、ヒストンタンパク質、又は(ヒストンタンパク質の機能を保持している)その断片、変異体、若しくは誘導体をコードするのではなく、生物学的機能、好ましくはヒストン(様)機能以外の腫瘍抗原機能を発揮する(同じ種又は別の種の)任意の他のペプチド又は配列をコードし、例えば、(例えば、哺乳類、特にヒトの腫瘍に対するワクチン接種の観点で腫瘍抗原機能を発揮する)タンパク質をコードして、(好ましくは本発明の核酸によってコードされている腫瘍抗原を発現する)被験体の腫瘍細胞に対する免疫反応を誘発する。
【0042】
これに関連して、本発明の核酸は、5’から3’方向に、
a)腫瘍抗原、又はその断片、変異体、若しくは誘導体を含む少なくとも1つのペプチド又はタンパク質をコードしているコード領域と、
b)任意でヒストンステムループの3’にヒストン下流要素(HDE)を有しない、少なくとも1つのヒストンステムループと、
c)ポリ(A)配列又はポリアデニル化シグナルと
を含むか又はコードすることが特に好ましい。
【0043】
用語「ヒストン下流要素(HDE)」は、ヒストンプレmRNAの成熟ヒストンmRNAへのプロセシングに関与するU7snRNAの結合部位を表す、自然界に存在するヒストンステムループの3’における約15個〜約20個のヌクレオチドのプリンリッチポリヌクレオチド伸長を指す。例えばウニでは、HDEは、CAAGAAAGAである(Dominski,Z.and W.F.Marzluff(2007),Gene 396(2):373−90)。
【0044】
更に、本発明の第1の態様に係る本発明の核酸は、イントロンを含まないことが好ましい。
【0045】
別の特に好ましい実施形態では、本発明の第1の態様に係る本発明の核酸配列は、5’から3’に向かって
a)好ましくは、腫瘍抗原、又はその断片、変異体、若しくは誘導体を含む少なくとも1つのペプチド又はタンパク質をコードしているコード領域と、
c)ポリ(A)配列と、
b)少なくとも1つのヒストンステムループと
を含むか又はコードする。
【0046】
本発明の第1の実施形態に係る本発明の核酸配列は、例えば、任意の(一本鎖又は二本鎖)DNA(好ましくは、ゲノムDNA、プラスミドDNA、一本鎖DNA分子、二本鎖DNA分子等であるがこれらに限定されない)から選択されるか、例えば、任意のPNA(ペプチド核酸)から選択してよいか、又は例えば、任意の(一本鎖又は二本鎖)RNA(好ましくはメッセンジャーRNA(mRNA))から選択してよい任意の好適な核酸を含む。また、本発明の核酸配列は、ウイルスRNA(vRNA)を含んでいてもよい。しかし、本発明の核酸配列は、ウイルスRNAではなくてもよく、ウイルスRNAを含有していなくてもよい。より具体的には、本発明の核酸配列は、ウイルス配列エレメント、例えば、ウイルスエンハンサー又はウイルスプロモーター(例えば、不活化ウイルスプロモーター又は配列エレメントを含有しない、より具体的には、置換ストラテジによって不活化されない)、或いは、他のウイルス配列エレメント又はウイルス若しくはレトロウイルスの核酸配列を含有していなくてもよい。より具体的には、本発明の核酸配列は、レトロウイルス若しくはウイルスのベクター、又は改変されているレトロウイルス若しくはウイルスのベクターでなくてよい。
【0047】
いずれの場合も、本発明の核酸配列は、エンハンサー及び/又はプロモーター配列を含有していてもよく、含有していなくてもよく、前記エンハンサー及び/若しくはプロモーター配列は、改変されていてもよく、改変されていなくてもよい、又は活性化されていてもよく、活性化されていなくてもよい。前記エンハンサー又はプロモーター配列は、植物で発現可能であってもよく発現可能でなくてもよく、及び/又は真核生物で発現可能であってもよく発現可能でなくてもよく、及び/又は原核生物で発現可能であってもよく発現可能でなくてもよい。本発明の核酸配列は、(自己スプライシング)リボザイムをコードしている配列を含有していてもよく、含有していなくてもよい。
【0048】
具体的な実施形態では、本発明の核酸配列は、自己スプライシングRNA(レプリコン)を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。
【0049】
好ましくは、本発明の核酸配列は、プラスミドDNA、又はRNA、特にmRNAである。
【0050】
本発明の第1の態様の特定の実施形態では、本発明の核酸は、特に適切なインビトロ転写ベクターにおいて、インビトロ転写に好適な核酸に含まれる核酸である(例えば、T3、T7、又はSp6プロモーター等、インビトロ転写のための特定のプロモーターを含むプラスミド又は直鎖状核酸配列)。
【0051】
本発明の第1の態様の更なる特に好ましい実施形態では、本発明の核酸は、(例えば、発現ベクター又はプラスミドにおける)発現系、特に原核生物(例えば、大腸菌等の細菌)又は真核生物(例えば、CHO細胞等の哺乳類細胞、酵母細胞、若しくは昆虫細胞、又は植物若しくは動物等の生物全体)の発現系における転写及び/又は翻訳に好適な核酸に含まれる。
【0052】
用語「発現系」は、ペプチド、タンパク質、又はRNA、特にmRNAの生成(組み換え発現)に好適な系(細胞培養物又は生物全体)を意味する。
【0053】
本発明の第1の態様に係る本発明の核酸配列は、少なくとも1つのヒストンステムループを含むか又はコードする。本発明では、かかるヒストンステムループは、(ヒストンステムループであるかどうかにかかわらず)一般的に、典型的に、ヒストン遺伝子に由来し、2つの隣接する全体的に又は部分的に逆相補的な配列が分子内塩基対合してステムループを形成したものを含む。ステムループは、一本鎖DNA、又はより一般的にはRNAにおいて形成され得る。また、その構造は、ヘアピン又はヘアピンループとして知られており、通常、連続配列内のステム及び(末端)ループからなり、前記ステムは、ステムループ構造のループを構成する一種のスペーサーとしての短い配列によって分断されている2つの隣接する全体的に又は部分的に逆相補的な配列によって形成される。前記2つの隣接する全体的に又は部分的に逆相補的な配列は、例えば、ステムループエレメント、ステム1及びステム2として定義することができる。ステムループは、これら2つの隣接する全体的に又は部分的に逆相補的な配列(例えば、ステムループエレメント、ステム1及びステム2)が互いに塩基対を形成するときに形成されて、連続配列におけるステムループエレメント、ステム1とステム2との間に位置する短い配列によって形成される不対ループを末端に含む二本鎖核酸配列伸長をもたらす。したがって、不対ループは、典型的に、これらステムループ要素のいずれとも塩基対合することができない核酸の領域を表す。得られるロリポップ形構造は、多くのRNA二次構造の重要な構成要素である。したがって、ステムループ構造の形成は、得られるステム及びループ領域の安定性に依存し、第1の必要条件は、典型的に、折り重ねられて対合二本鎖を形成することができる配列の存在である。対合ステムループエレメントの安定性は、対合領域の長さ、含まれているミスマッチ又はバルジの数(特に長い二本鎖伸長では、少数のミスマッチは、典型的に許容可能である)、及び塩基組成によって決定される。本発明では、3塩基〜15塩基のループ長が考えられるが、より好ましいループ長は、3塩基〜10塩基、より好ましくは3塩基〜8塩基、3塩基〜7塩基、3塩基〜6塩基、又は更により好ましくは4塩基〜5塩基、最も好ましくは4塩基である。二本鎖構造を形成するステム配列は、典型的に、5塩基長〜10塩基長、より好ましくは5塩基長〜8塩基長を有する。
【0054】
本発明では、ヒストンステムループは、典型的に、ヒストン遺伝子(例えば、ヒストンファミリーH1、H2A、H2B、H3、H4に由来する遺伝子)に由来し、2つの隣接する全体的に又は部分的に逆相補的な配列が分子内塩基対合してステムループを形成したものを含む。典型的に、ヒストン3’UTRステムループは、ヒストンmRNAの核細胞質輸送、並びに細胞質における安定性及び輸送効率の調節に関与するRNAエレメントである。後生動物のヒストン遺伝子のmRNAは、ポリアデニル化及びポリ(A)テールを含まず、その代わりに、高度に保存されているステムループと約20ヌクレオチド下流のプリンリッチ領域(ヒストン下流要素、又はHDE)との間の部位において3’プロセシングが行われる。ヒストンステムループは、31kDaのステムループ結合タンパク質(SLBP、ヒストンヘアピン結合タンパク質又はHBPとも呼ばれる)によって結合する。かかるヒストンステムループ構造は、好ましくは、他の配列エレメント及び構造と組み合わせて本発明で使用されるが、前記他の配列エレメント及び構造は、自然界(これは、形質転換されていない生存生物/細胞を意味する)でヒストン遺伝子中に存在するのではなく、人工の異種核酸を提供するために本発明に従って組み合わせられる。したがって、本発明は、具体的には、ヒストン遺伝子又は後生動物のヒストン遺伝子には存在せず、且つヒストン以外のタンパク質をコードしている遺伝子の操作可能及び/又は調節性の配列領域(転写及び/又は翻訳に影響を及ぼす)から単離される他の異種配列エレメントとヒストンステムループ構造との人工的な(非ネイティブな)組み合わせが、有利な効果をもたらすという知見に基づいている。したがって、本発明の1つの態様は、後生動物のヒストン遺伝子には存在しない、ヒストンステムループ構造とポリ(A)配列又はポリアデニル化シグナルを表す配列(コード領域の3’末端)との組み合わせを提供する。本発明の別の好ましい態様によれば、ヒストンステムループ構造と好ましくは後生動物のヒストン遺伝子には存在しない腫瘍抗原タンパク質をコードしているコード領域との組み合わせをこれと共に提供する(コード領域とヒストンステムループ配列とは異種である)。かかる腫瘍抗原タンパク質は、腫瘍疾患に罹患しているとき、哺乳類、好ましくはヒトに存在することが好ましい。更に好ましい実施形態では、本発明の核酸の全ての要素(a)、(b)、及び(c)は、互いに異種であり、3つの異なる起源から人工的に組み合わせられる(例えば、(a)ヒト遺伝子に由来する腫瘍抗原タンパク質コード領域、(b)後生動物、例えば、哺乳類、非ヒト又はヒトのヒストン遺伝子の非翻訳領域に由来するヒストンステムループ、並びに(c)例えば、ヒストン遺伝子以外の遺伝子及びかかる本発明の核酸の要素(a)に係る腫瘍抗原コード領域の非翻訳領域以外の遺伝子の非翻訳領域由来のポリ(A)配列又はポリアデニル化シグナル)。
【0055】
したがって、ヒストンステムループは、本明細書に記載するステムループ構造であり、これは、機能的に定義されることが好ましい場合、その自然界における結合パートナーであるステムループ結合タンパク質(SLBP、ヒストンヘアピン結合タンパク質又はHBPとも呼ばれる)に対して結合する性質を示す/保持している。
【0056】
本発明によれば、請求項1に記載の成分(b)に係るヒストンステムループ配列は、マウスヒストンタンパク質に由来していなくてもよい。より具体的には、前記ヒストンステムループ配列は、マウスヒストン遺伝子H2A614に由来していなくてもよい。また、本発明の核酸は、マウスヒストンステムループ配列もマウスヒストン遺伝子H2A614も含有していなくてよい。更に、本発明の核酸配列が少なくとも1つの哺乳類ヒストン遺伝子を含有していてよい場合でさえも、本発明の核酸配列は、ステムループプロセシングシグナル、より具体的には、マウスヒストンプロセシングシグナル、最も具体的には、マウスステムループプロセシングシグナルH2kA614を含有していなくてよい。しかし、前記少なくとも1つの哺乳類ヒストン遺伝子は、国際公開第01/12824号パンフレットに記載の配列番号7でなくてもよい。
【0057】
本発明の第1の態様の1つの好ましい実施形態によれば、本発明の核酸配列は、少なくとも1つのヒストンステムループ配列、好ましくは、以下の式(I)又は(II)のうちの少なくとも1つに係るヒストンステムループ配列を含むか又はコードする:
式(I)(ステム境界エレメントを含まないステムループ配列):
【化1】
式(II)(ステム境界エレメントを含むステムループ配列):
【化2】
(式中、
ステム1又はステム2の境界エレメントN
1−6は、1個〜6個、好ましくは2個〜6個、より好ましくは2個〜5個、更により好ましくは3個〜5個、最も好ましくは4個〜5個、又は5個のNの連続配列であり、各Nは、互いに独立して、A、U、T、G、及びCから選択されるヌクレオチド、又はこれらのヌクレオチドアナログから選択され、
ステム1[N
0−2GN
3−5]は、エレメントステム2に対して逆相補的であるか又は部分的に逆相補的であり、5個〜7個のヌクレオチドの連続配列であり、N
0−2は、0個〜2個、好ましくは0個〜1個、より好ましくは1個のNの連続配列であり、各Nは、互いに独立して、A、U、T、G、及びCから選択されるヌクレオチド、又はこれらのヌクレオチドアナログから選択され、N
3−5は、3個〜5個、好ましくは4個〜5個、より好ましくは4個のNの連続配列であり、各Nは、互いに独立して、A、U、T、G、及びCから選択されるヌクレオチド、又はこれらのヌクレオチドアナログから選択され、Gは、グアノシン又はそのアナログであり、任意でシチジン又はそのアナログによって置換されてもよいが、但し、その場合、ステム2におけるその相補的ヌクレオチドであるシチジンも、グアノシンによって置換され、
ループ配列[N
0−4(U/T)N
0−4]は、エレメントステム1とステム2との間に位置し、3個〜5個のヌクレオチド、より好ましくは4個のヌクレオチドの連続配列であり、各N
0−4は、互いに独立して、0個〜4個、好ましくは1個〜3個、より好ましくは1個〜2個のNの連続配列であり、各Nは、互いに独立して、A、U、T、G、及びCから選択されるヌクレオチド、又はこれらのヌクレオチドアナログから選択され、U/Tは、ウリジン又は任意でチミジンを表し、
ステム2[N
3−5CN
0−2]は、エレメントステム1に対して逆相補的であるか又は部分的に逆相補的であり、5個〜7個のヌクレオチドの連続配列であり、N
3−5は、3個〜5個、好ましくは4個〜5個、より好ましくは4個のNの連続配列であり、各Nは、互いに独立して、A、U、T、G、及びCから選択されるヌクレオチド、又はこれらのヌクレオチドアナログから選択され、N
0−2は、0個〜2個、好ましくは0個〜1個、より好ましくは1個のNの連続配列であり、各Nは、互いに独立して、A、U、T、G、及びCから選択されるヌクレオチド、又はこれらのヌクレオチドアナログから選択され、Cは、シチジン又はそのアナログであり、任意でグアノシン又はそのアナログによって置換されてもよいが、但し、その場合、ステム1におけるその相補的ヌクレオチドであるグアノシンも、シチジンによって置換され、
ステム1及びステム2は、互いに塩基対合して逆相補的配列を形成することができ、前記塩基対合は、例えば、ヌクレオチドAとU/T又はGとCとのワトソン−クリック塩基対合、又は非ワトソン−クリック塩基対合(例えば、ゆらぎ塩基対合、逆ワトソン−クリック塩基対合、フーグスティーン塩基対合、逆フーグスティーン塩基対合)によってステム1とステム2との間で生じ得るか、或いは、互いに塩基対合して部分的に逆相補的な配列を形成することができ、この場合、1つのステムにおける1以上の塩基が、他のステムの逆相補的な配列に相補的塩基を有しないことに基づいて、ステム1とステム2との間で不完全な塩基対合が生じ得る)。
【0058】
上記に関連して、ゆらぎ塩基対合は、典型的に、2つのヌクレオチド間の非ワトソン−クリック塩基対合である。(用いることができる)本状況における4つの主なゆらぎ塩基対は、グアノシン−ウリジン、イオシン−ウリジン、イオシン−アデノシン、イオシン−シチジン(G−U/T、I−U/T、I−A、及びI−C)、及びアデノシン−シチジン(A−C)である。
【0059】
したがって、本発明では、ゆらぎ塩基は、上記の通り別の塩基とゆらぎ塩基対を形成する塩基である。したがって、非ワトソン−クリック塩基対合、例えば、ゆらぎ塩基対合は、本発明に係るヒストンステムループ構造のステムにおいて生じ得る。
【0060】
上記に関連して、部分的に逆相補的な配列は、ステム1及びステム2の塩基対合によって形成されるステムループ配列のステム構造においてミスマッチを最大2個、好ましくは1個のみ含む。言い換えれば、ステム1及びステム2は、好ましくは、ステム1及びステム2の全配列に亘って互いに(完全な)塩基対合(100%可能な正確なワトソン−クリック塩基対合又は非ワトソン−クリック塩基対合)を形成して逆相補的な配列を形成することができ、ここで、各塩基は、相補的結合パートナーとして正確なワトソン−クリック塩基ペンダント又は非ワトソン−クリック塩基ペンダントを有する。或いは、ステム1及びステム2は、好ましくは、ステム1及びステム2の全配列に亘って互いに部分的に塩基対合することができ、この場合、100%可能な正確なワトソン−クリック塩基対合又は非ワトソン−クリック塩基対合のうちの少なくとも約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、又は約95%が、前記正確なワトソン−クリック塩基対合又は非ワトソン−クリック塩基対合で占められ、最大約30%、約25%、約20%、約15%、約10%、又は約5%の残りの塩基は、不対である。
【0061】
本発明の第1の態様の好ましい実施形態によれば、本明細書に定義する本発明の核酸配列の少なくとも1つのヒストンステムループ配列(ステム境界エレメントを含む)は、約15ヌクレオチド長〜約45ヌクレオチド長、好ましくは約15ヌクレオチド長〜約40ヌクレオチド長、好ましくは約15ヌクレオチド長〜約35ヌクレオチド長、好ましくは約15ヌクレオチド長〜約30ヌクレオチド長、更により好ましくは約20ヌクレオチド長〜約30ヌクレオチド長、最も好ましくは約24ヌクレオチド長〜約28ヌクレオチド長を有する。
【0062】
本発明の第1の態様の更に好ましい実施形態によれば、本明細書に定義する本発明の核酸配列の少なくとも1つのヒストンステムループ配列(ステム境界エレメントを含まない)は、約10ヌクレオチド長〜約30ヌクレオチド長、好ましくは約10ヌクレオチド長〜約20ヌクレオチド長、好ましくは約12ヌクレオチド長〜約20ヌクレオチド長、好ましくは約14ヌクレオチド長〜約20ヌクレオチド長、更により好ましくは約16ヌクレオチド長〜約17ヌクレオチド長、最も好ましくは約16ヌクレオチド長を有する。
【0063】
本発明の第1の態様の更に好ましい実施形態によれば、本発明の第1の態様に係る本発明の核酸配列は、以下の特定の式(Ia)又は(IIa)のうちの少なくとも1つに係る少なくとも1つのヒストンステムループ配列を含むか又はコードしていてよい:
式(Ia)(ステム境界エレメントを含まないステムループ配列):
【化3】
式(IIa)(ステム境界エレメントを含むステムループ配列):
【化4】
(式中、N、C、G、T、及びUは、上に定義した通りである)。
【0064】
第1の態様の更により好ましい実施形態によれば、本発明の核酸配列は、以下の特定の式(Ib)又は(IIb)のうちの少なくとも1つに係る少なくとも1つのヒストンステムループ配列を含むか又はコードしていてよい:
式(IIb)(ステム境界エレメントを含まないステムループ配列):
【化5】
式(IIb)(ステム境界エレメントを含むステムループ配列):
【化6】
(式中、N、C、G、T、及びUは、上に定義した通りである)。
【0065】
本発明の第1の態様の更により好ましい実施形態によれば、本発明の第1の態様に係る本発明の核酸配列は、ステムループ構造で及び実施例1に従って作製したヒストンステムループ配列を表す直鎖配列として示される以下の特定の式(Ic)〜(Ih)又は(IIc)〜(IIh)のうちの少なくとも1つに係る少なくとも1つのヒストンステムループ配列を含むか又はコードしていてよい:
式(Ic)(ステム境界エレメントを含まない後生動物及び原生動物のヒストンステムループコンセンサス配列):
【化7】
式(IIc)(ステム境界エレメントを含む後生動物及び原生動物のヒストンステムループコンセンサス配列):
【化8】
式(Id)(ステム境界エレメントを含まない):
【化9】
式(IId)(ステム境界エレメントを含む):
【化10】
式(Ie)(ステム境界エレメントを含まない原生動物のヒストンステムループコンセンサス配列):
【化11】
式(IIe)(ステム境界エレメントを含む原生動物のヒストンステムループコンセンサス配列):
【化12】
式(If)(ステム境界エレメントを含まない後生動物のヒストンステムループコンセンサス配列):
【化13】
式(IIf)(ステム境界エレメントを含む後生動物のヒストンステムループコンセンサス配列):
【化14】
式(Ig)(ステム境界エレメントを含まない脊椎動物のヒストンステムループコンセンサス配列):
【化15】
式(IIg)(ステム境界エレメントを含む脊椎動物のヒストンステムループコンセンサス配列):
【化16】
式(Ih)(ステム境界エレメントを含まないヒト(Homo sapiens)のヒストンステムループコンセンサス配列):
【化17】
式(IIh)(ステム境界エレメントを含むヒトのヒストンステムループコンセンサス配列):
【化18】
上記式(Ic)〜(Ih)又は(IIc)〜(IIh)のそれぞれにおいて、N、C、G、A、T、及びUは、上に定義した通りであり、各Uは、Tで置換されてもよく、ステムエレメント1及び2におけるそれぞれの(高度に)保存されているG又はCは、その相補的ヌクレオチド塩基であるC又はGで置換されてもよいが、但し、その場合、対応するステムにおける相補的ヌクレオチドが、並行してその相補的ヌクレオチドによって置換され、及び/又はG、A、T、U、C、R、Y、M、K、S、W、H、B、V、D、及びNは、以下の表に定義するヌクレオチド塩基である:
【表1】
【0066】
これに関連して、本発明の式(I)又は(Ia)〜(Ih)又は(II)又は(IIa)〜(IIh)のうちの少なくとも1つに係るヒストンステムループ配列は、特に好ましくは自然界に存在するヒストンステムループ配列から、より特に好ましくは原生動物又は後生動物のヒストンステムループ配列から、更により特に好ましくは脊椎動物のヒストンステムループ配列から、最も好ましくは哺乳類のヒストンステムループ配列から、特にヒトのヒストンステムループ配列から選択される。
【0067】
第1の態様の特に好ましい実施形態によれば、本発明の式(I)又は(Ia)〜(Ih)又は(II)又は(IIa)〜(IIh)のうちの少なくとも1つに係るヒストンステムループ配列は、
図1〜5に示す後生動物及び原生動物(
図1)、原生動物(
図2)、後生動物(
図3)、脊椎動物(
図4)、及びヒト(
図5)における自然界に存在するヒストンステムループ配列のうちの最も頻繁に生じるヌクレオチド、又は最も頻繁に若しくは2番目に頻繁に生じるヌクレオチドを各ヌクレオチド位置に含むヒストンステムループ配列である。これに関連して、全てのヌクレオチドのうちの少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、又は最も好ましくは少なくとも90%が、自然界に存在するヒストンステムループ配列のうちの最も頻繁に生じるヌクレオチドに対応することが特に好ましい。
【0068】
第1の態様の更に具体的な実施形態では、本発明の特定の式(I)又は(Ia)〜(Ih)のうちの少なくとも1つに係るヒストンステムループ配列は、実施例1に従って作製されるヒストンステムループ配列を表す以下のヒストンステムループ配列(ステム境界エレメントを含まない)から選択される:
VGYYYYHHTHRVVRCB(式(Ic)に係る配列番号13)
SGYYYTTYTMARRRCS(式(Ic)に係る配列番号14)
SGYYCTTTTMAGRRCS(式(Ic)に係る配列番号15)
DGNNNBNNTHVNNNCH(式(Ie)に係る配列番号16)
RGNNNYHBTHRDNNCY(式(Ie)に係る配列番号17)
RGNDBYHYTHRDHNCY(式(Ie)に係る配列番号18)
VGYYYTYHTHRVRRCB(式(If)に係る配列番号19)
SGYYCTTYTMAGRRCS(式(If)に係る配列番号20)
SGYYCTTTTMAGRRCS(式(If)に係る配列番号21)
GGYYCTTYTHAGRRCC(式(Ig)に係る配列番号22)
GGCYCTTYTMAGRGCC(式(Ig)に係る配列番号23)
GGCTCTTTTMAGRGCC(式(Ig)に係る配列番号24)
DGHYCTDYTHASRRCC(式(Ih)に係る配列番号25)
GGCYCTTTTHAGRGCC(式(Ih)に係る配列番号26)
GGCYCTTTTMAGRGCC(式(Ih)に係る配列番号27)
【0069】
更に、これに関連して、特定の式(II)又は(IIa)〜(IIh)のうちの1つに係る実施例1に従って作製される以下のヒストンステムループ配列(ステム境界エレメントを含む)が特に好ましい:
H
*H
*HHVVGYYYYHHTHRVVRCBVHH
*N
*N
*(式(IIc)に係る配列番号28)
M
*H
*MHMSGYYYTTYTMARRRCSMCH
*H
*H
*(式(IIc)に係る配列番号29)
M
*M
*MMMSGYYCTTTTMAGRRCSACH
*M
*H
*(式(IIc)に係る配列番号30)
N
*N
*NNNDGNNNBNNTHVNNNCHNHN
*N
*N
*(式(IIe)に係る配列番号31)
N
*N
*HHNRGNNNYHBTHRDNNCYDHH
*N
*N
*(式(IIe)に係る配列番号32)
N
*H
*HHVRGNDBYHYTHRDHNCYRHH
*H
*H
*(式(IIe)に係る配列番号33)
H
*H
*MHMVGYYYTYHTHRVRRCBVMH
*H
*N
*(式(IIf)に係る配列番号34)
M
*M
*MMMSGYYCTTYTMAGRRCSMCH
*H
*H
*(式(IIf)に係る配列番号35)
M
*M
*MMMSGYYCTTTTMAGRRCSACH
*M
*H
*(式(IIf)に係る配列番号36)
H
*H
*MAMGGYYCTTYTHAGRRCCVHN
*N
*M
*(式(IIg)に係る配列番号37)
H
*H
*AAMGGCYCTTYTMAGRGCCVCH
*H
*M
*(式(IIg)に係る配列番号38)
M
*M
*AAMGGCTCTTTTMAGRGCCMCY
*M
*M
*(式(IIg)に係る配列番号39)
N
*H
*AAHDGHYCTDYTHASRRCCVHB
*N
*H
*(式(IIh)に係る配列番号40)
H
*H
*AAMGGCYCTTTTHAGRGCCVMY
*N
*M
*(式(IIh)に係る配列番号41)
H
*M
*AAAGGCYCTTTTMAGRGCCRMY
*H
*M
*(式(IIh)に係る配列番号42)
【0070】
本発明の第1の態様の更に好ましい実施形態によれば、本発明の核酸配列は、特定の式(I)又は(Ia)〜(Ih)又は(II)又は(IIa)〜(IIh)のうちの少なくとも1つに係るヒストンステムループ配列における(100%ではないが)保存されているヌクレオチド又は自然界に存在するヒストンステムループ配列と、少なくとも約80%、好ましくは少なくとも約85%、より好ましくは少なくとも約90%、又は更により好ましくは少なくとも約95%の配列同一性を示す少なくとも1つのヒストンステムループ配列を含むか又はコードする。
【0071】
好ましい実施形態では、ヒストンステムループ配列は、ループ配列5’−UUUC−3’を含有しない。より具体的には、ヒストンステムループは、それぞれ、ステム1配列5’−GGCUCU−3’及び/又はステム2配列5’−AGAGCC−3’を含有しない。別の好ましい実施形態では、ステムループ配列は、ループ配列5’−CCUGCCC−3’又はループ配列5’−UGAAU−3’を含有しない。より具体的には、ステムループは、それぞれ、ステム1配列5’−CCUGAGC−3’を含有しないか若しくはステム1配列5’−ACCUUUCUCCA−3’を含有しない、及び/又はステム2配列5’−GCUCAGG−3’若しくは5’−UGGAGAAAGGU−3’を含有しない。また、本発明がヒストンステムループ配列に明確に限定されない限り、ステムループ配列は、好ましくは、哺乳類インスリン受容体の3’−非翻訳領域に由来するものではない。また、好ましくは、本発明の核酸は、ヒストンステムループプロセシングシグナルを含有していなくてよく、具体的には、マウスヒストン遺伝子H2A614遺伝子(H2kA614)に由来するものでなくてない。
【0072】
本発明の第1の態様に係る本発明の核酸配列は、任意で、ポリ(A)配列を含むか又はコードしていてよい。前記ポリ(A)配列を含むか又はコードしている場合、かかるポリ(A)配列は、約25個〜約400個のアデノシンヌクレオチドの配列、好ましくは約30個のアデノシンヌクレオチドの配列、より好ましくは約50個〜約400個のアデノシンヌクレオチドの配列、より好ましくは約50個〜約300個のアデノシンヌクレオチドの配列、更により好ましくは約50個〜約250個のアデノシンヌクレオチドの配列、最も好ましくは約60個〜約250個のアデノシンヌクレオチドの配列を含む。これに関連して、用語「約」は、それが付される値の±10%の偏差を指す。したがって、前記ポリ(A)配列は、少なくとも25個又は25個超、より好ましくは少なくとも30個、より好ましくは少なくとも50個のアデノシンヌクレオチドを含有する。したがって、かかるポリ(A)配列は、典型的に、20個未満のアデノシンヌクレオチドを含有しない。より具体的には、10個及び/又は10個未満のアデノシンヌクレオチドを含有しない。
【0073】
好ましくは、本発明に係る核酸は、以下からなる群の構成要素のうちの1つ又は2つ又は少なくとも1つ又は1つを除く全て又は全てを含有しない:リボザイム(好ましくは自己スプライシングリボザイム)をコードしている配列、ウイルス核酸配列、ヒストンステムループプロセシングシグナル(特にマウスヒストンH2A614遺伝子に由来するヒストンステムループプロセシング配列)、Neo遺伝子、不活化プロモーター配列、及び不活化エンハンサー配列。更により好ましくは、本発明に係る核酸は、リボザイム(好ましくは自己スプライシングリボザイム)と、以下からなる群のうちの1つとを含有しない:Neo遺伝子、不活化プロモーター配列、不活化エンハンサー配列、ヒストンステムループプロセシングシグナル(特にマウスヒストンH2A614遺伝子に由来するヒストンステムループプロセシング配列)。したがって、前記核酸は、好ましい態様では、リボザイム(好ましくは自己スプライシングリボザイム)もNeo遺伝子も含有しなくてよく、或いは、リボザイム(好ましくは自己スプライシングリボザイム)も任意の耐性遺伝子(例えば、通常、選択のために適用される)も含有しなくてよい。別の好ましい態様では、本発明の核酸は、リボザイム(好ましくは自己スプライシングリボザイム)もヒストンステムループプロセシングシグナル(特に、マウスヒストンH2A614遺伝子に由来するヒストンステムループプロセシング配列)も含有しなくてよい。
【0074】
或いは、本発明の第1の態様によれば、本発明の核酸は、任意で、特定のタンパク質因子(例えば、切断及びポリアデニル化特異性因子(CPSF)、切断刺激因子(CstF)、切断因子I及びII(CF I及びCF II)、ポリ(A)ポリメラーゼ(PAP))によって(転写された)mRNAをポリアデニル化するシグナルとして、本明細書に定義されているポリアデニル化シグナルを含む。これに関連して、NN(U/T)ANAコンセンサス配列を含むコンセンサスポリアデニル化シグナルが好ましい。特に好ましい態様では、ポリアデニル化シグナルは、以下の配列:AA(U/T)AAA又はA(U/T)(U/T)AAA(式中、ウリジンは、通常、RNAに存在し、チミジンは、通常、DNAに存在する)のうちの1つを含む。幾つかの実施形態では、本発明の核酸において用いられるポリアデニル化シグナルは、U3 snRNA、U5、ヒト遺伝子G−CSFに由来するポリアデニル化プロセシングシグナル、又はSV40ポリアデニル化シグナル配列には相当しない。具体的には、上記ポリアデニル化シグナルは、かかる本発明の核酸において、本発明の核酸の要素(a)に係るコード領域の遺伝子として、任意の抗生物質耐性遺伝子(又は任意の他のレポーター、マーカー若しくは選択遺伝子)、特に、耐性neo遺伝子(ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ)とは組み合わせられない。また、上記ポリアデニル化シグナルのうちのいずれかは、好ましくは、本発明の核酸において、マウスヒストン遺伝子H2A614に由来するヒストンステムループ又はヒストンステムループプロセシングシグナルとは組み合わせられない。
【0075】
本発明の第1の態様に係る本発明の核酸配列は、更に、腫瘍抗原又はその断片、変異体、若しくは誘導体を含むタンパク質又はペプチドをコードしていてよい。
【0076】
腫瘍抗原は、好ましくは、哺乳類、特にヒトの腫瘍(例えば、全身性腫瘍疾患又は固形腫瘍疾患)を特徴付ける(腫瘍)細胞の表面上に位置する。また、腫瘍抗原は、正常細胞と比べて腫瘍細胞で過剰発現しているタンパク質から選択してよい。更に、腫瘍抗原は、それ自体は変性していない(又は元々はそれ自体変性していなかった)が、推定腫瘍に関連している細胞で発現している抗原も含む。腫瘍供給管又はその(再)形成に関連する抗原、特に、血管新生に関連する抗原(例えば、VEGF、bFGF等の成長因子)も本明細書では含まれる。腫瘍に関連する抗原は、更に、典型的に腫瘍が存在している細胞又は組織に由来する抗原を含む。更に、幾つかの物質(通常、タンパク質又はペプチド)は、癌疾患に罹患している患者(本人が気付いていようがいまいが)で発現しており、これらは、前記患者の体液中に高濃度で存在する。これら物質も「腫瘍抗原」と呼ばれるが、免疫応答誘導物質というより限定的な意味では抗原ではない。腫瘍抗原は、腫瘍特異的抗原(TSA)及び腫瘍関連抗原(TAA)に更に分類することができる。腫瘍細胞のみがTSAを提示することができ、正常な「健常」細胞は提示することができない。TSAは、典型的に、腫瘍特異的突然変異から生じる。TAAは、より一般的であり、通常、腫瘍細胞及び健常細胞の両方によって提示される。細胞傷害性T細胞は、これら抗原を認識し、抗原提示細胞を破壊することができる。更に、腫瘍抗原は、例えば、突然変異型受容体の形態で腫瘍の表面上に存在する場合もある。この場合、腫瘍抗原は、抗体によって認識され得る。
【0077】
更に、腫瘍関連抗原は、メラニン形成細胞特異的抗原、癌−精巣抗原、及び腫瘍特異的抗原とも呼ばれる組織特異的抗原に分類することもできる。癌−精巣抗原は、典型的に、広範な腫瘍において活性化され得る生殖細胞系関連遺伝子のペプチド又はタンパク質であると理解されている。ヒトの癌−精巣抗原は、X染色体にコードされている抗原(所謂、CT−X抗原)とX染色体にコードされていない抗原(所謂、非X CT抗原)に更に細かく分類することができる。X染色体にコードされている癌−精巣抗原は、例えば、メラノーマ抗原遺伝子のファミリー(所謂、MAGEファミリー)を含む。MAGEファミリーの遺伝子は、共通のMAGE相同ドメイン(MHD)を特徴とし得る。これら抗原、即ち、メラニン形成細胞特異的抗原、癌−精巣抗原、及び腫瘍特異的抗原は、それぞれ、自己細胞性及び体液性免疫応答を誘発することができる。したがって、本発明の核酸配列によってコードされている腫瘍抗原は、好ましくは、メラニン形成細胞特異的抗原、癌−精巣抗原、又は腫瘍特異的抗原であり、好ましくは、CT−X抗原、非X CT抗原、CT−X抗原の結合パートナー、非X CT抗原の結合パートナー、又は腫瘍特異的抗原であってよく、より好ましくは、CT−X抗原、非X CT抗原の結合パートナー、又は腫瘍特異的抗原であってよい。
【0078】
特に好ましい腫瘍抗原は、以下からなる群より選択される:5T4、707−AP、9D7、AFP、AlbZIP HPG1、アルファ−5−ベータ−1−インテグリン、アルファ−5−ベータ−6−インテグリン、アルファ−アクチニン−4/m、アルファ−メチルアシル補酵素Aラセマーゼ、ART−4、ARTC1/m、B7H4、BAGE−1、BCL−2、bcr/abl、ベータ−カテニン/m、BING−4、BRCA1/m、BRCA2/m、CA15−3/CA27−29、CA19−9、CA72−4、CA125、カルレチクリン、CAMEL、CASP−8/m、カテプシンB、カテプシンL、CD19、CD20、CD22、CD25、CDE30、CD33、CD4、CD52、CD55、CD56、CD80、CDC27/m、CDK4/m、CDKN2A/m、CEA、CLCA2、CML28、CML66、COA−1/m、コアクトシン様タンパク質、コラーゲンXXIII型、COX−2、CT−9/BRD6、Cten、サイクリンB1、サイクリンD1、cyp−B、CYPB1、DAM−10、DAM−6、DEK−CAN、EFTUD2/m、EGFR、ELF2/m、EMMPRIN、EpCam、EphA2、EphA3、ErbB3、ETV6−AML1、EZH2、FGF−5、FN、Frau−1、G250、GAGE−1、GAGE−2、GAGE−3、GAGE−4、GAGE−5、GAGE−6、GAGE7b、GAGE−8、GDEP、GnT−V、gp100、GPC3、GPNMB/m、HAGE、HAST−2、ヘプシン、Her2/neu、HERV−K−MEL、HLA−A
*0201−R17I、HLA−A11/m、HLA−A2/m、HNE、ホメオボックスNKX3.1、HOM−TES−14/SCP−1、HOM−TES−85、HPV−E6、HPV−E7、HSP70−2M、HST−2、hTERT、iCE、IGF−1R、IL−13Ra2、IL−2R、IL−5、未成熟ラミニン受容体、カリクレイン2、カリクレイン4、Ki67、KIAA0205、KIAA0205/m、KK−LC−1、K−Ras/m、LAGE−A1、LDLR−FUT、MAGE−A1、MAGE−A2、MAGE−A3、MAGE−A4、MAGE−A6、MAGE−A9、MAGE−A10、MAGE−A12、MAGE−B1、MAGE−B2、MAGE−B3、MAGE−B4、MAGE−B5、MAGE−B6、MAGE−B10、MAGE−B16、MAGE−B17、MAGE−C1、MAGE−C2、MAGE−C3、MAGE−D1、MAGE−D2、MAGE−D4、MAGE−E1、MAGE−E2、MAGE−F1、MAGE−H1、MAGEL2、マンマグロビンA、MART−1/melan−A、MART−2、MART−2/m、基質タンパク質22、MC1R、M−CSF、ME1/m、メソテリン、MG50/PXDN、MMP11、MN/CA IX抗原、MRP−3、MUC−1、MUC−2、MUM−1/m、MUM−2/m、MUM−3/m、ミオシンクラスI/m、NA88−A、N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ−V、Neo−PAP、Neo−PAP/m、NFYC/m、NGEP、NMP22、NPM/ALK、N−Ras/m、NSE、NY−ESO−B、NY−ESO−1、OA1、OFA−iLRP、OGT、OGT/m、OS−9、OS−9/m、オステオカルシン、オステオポンチン、p15、p190マイナーbcr−abl、p53、p53/m、PAGE−4、PAI−1、PAI−2、PAP、PART−1、PATE、PDEF、Pim−1キナーゼ、Pin−1、Pml/PARアルファ、POTE、PRAME、PRDX5/m、プロステイン、プロテイナーゼ3、PSA、PSCA、PSGR、PSM、PSMA、PTPRK/m、RAGE−1、RBAF600/m、RHAMM/CD168、RU1、RU2、S−100、SAGE、SART−1、SART−2、SART−3、SCC、SIRT2/m、Sp17、SSX−1、SSX−2/HOM−MEL−40、SSX−4、STAMP−1、STEAP−1、サバイビン、サバイビン−2B、SYT−SSX−1、SYT−SSX−2、TA−90、TAG−72、TARP、TEL−AML1、TGFベータ、TGFベータRII、TGM−4、TPI/m、TRAG−3、TRG、TRP−1、TRP−2/6b、TRP/INT2、TRP−p8、チロシナーゼ、UPA、VEGFR1、VEGFR−2/FLK−1、及びWT1。かかる腫瘍抗原は、好ましくは、p53、CA125、EGFR、Her2/neu、hTERT、PAP、MAGE−A1、MAGE−A3、メソテリン、MUC−1、GP100、MART−1、チロシナーゼ、PSA、PSCA、PSMA、STEAP−1、VEGF、VEGFR1、VEGFR2、Ras、CEA、又はWT1、より好ましくはPAP、MAGE−A3、WT1、及びMUC−1からなる群より選択してよい。かかる抗原は、好ましくは、以下からなる群より選択してよい:MAGE−A1(例えば、MAGE−A1、アクセッション番号M77481)、MAGE−A2、MAGE−A3、MAGE−A6(例えば、MAGE−A6、アクセッション番号NM_005363)、MAGE−C1、MAGE−C2、melan−A(例えば、melan−A、アクセッション番号NM_005511)、GP100(例えば、GP100、アクセッション番号M77348)、チロシナーゼ(例えば、チロシナーゼ、アクセッション番号NM_000372)、サバイビンg(例えば、サバイビン、アクセッション番号AF077350)、CEA(例えば、CEA、アクセッション番号NM_004363)、Her−2/neu(例えば、Her−2/neu、アクセッション番号M11730)、WT1(例えば、WT1、アクセッション番号NM_000378)、PRAME(例えば、PRAME、アクセッション番号NM_006115)、EGFRI(上皮細胞成長因子受容体1)(例えば、EGFRI(上皮細胞成長因子受容体1)、アクセッション番号AF288738)、MUC1、ムチン1(例えば、ムチン1、アクセッション番号NM_002456)、SEC61G(例えば、SEC61G、アクセッション番号NM_014302)、hTERT(例えば、hTERT、アクセッション番号NM_198253)、5T4(例えば、5T4、アクセッション番号NM_006670)、TRP−2(例えば、TRP−2、アクセッション番号NM_001922)、STEAP1、PCA、PSA、PSMA等。
【0079】
更に、腫瘍抗原は、癌又は腫瘍疾患、特にリンパ腫又はリンパ腫関連疾患に関連するイディオタイプ抗原を含んでもよく、前記イディオタイプ抗原は、リンパ血球の免疫グロブリンイディオタイプ又はリンパ血球のT細胞受容体イディオタイプである。
【0080】
癌又は腫瘍疾患を治療するための腫瘍抗原タンパク質は、典型的に、哺乳類起源、好ましくはヒト起源のタンパク質である。被験体を治療するための前記腫瘍抗原タンパク質の選択は、治療される腫瘍の種類及び個々の腫瘍の発現プロファイルに依存する。例えば、前立腺癌に罹患しているヒトは、好ましくは、前立腺癌腫で典型的に発現している(又は過剰発現している)腫瘍抗原、又は具体的には、治療を受ける被験体で過剰発現している腫瘍抗原、例えば、PSMA、PSCA、及び/又はPSAのいずれかによって治療される。
【0081】
本発明の第1の態様に係る本発明の核酸のコード配列は、モノ−、ジ−、又は更にはマルチシストロン性核酸、即ち、1、2、又はそれ以上のタンパク質又はペプチドのコード配列を有する核酸として存在してよい。ジ−又は更にはマルチシストロン性核酸におけるかかるコード配列は、例えば、本明細書に記載する少なくとも1つの内部リボソーム進入部位(IRES)配列によって、又は幾つかのタンパク質又はペプチドを含む得られるポリペプチドの切断を誘導するシグナルペプチドによって分断されていてもよい。
【0082】
本発明の第1の態様によれば、本発明の核酸配列は、腫瘍抗原、又はその断片、変異体、若しくは誘導体を含むペプチド又はタンパク質をコードしているコード領域を含む。好ましくは、コードされている腫瘍抗原は、ヒストンタンパク質ではない。本発明では、かかるヒストンタンパク質は、典型的に、真核生物細胞の核にみられる強アルカリ性タンパク質であり、DNAに指令を出し、ヌクレオソームと呼ばれる構造ユニットにパッケージングする。ヒストンタンパク質は、クロマチンの主なタンパク質成分であり、その周囲にDNAが巻きつく糸巻きとして作用し、遺伝子調節において役割を果たす。ヒストンがないと、巻きがほどけた染色体中のDNAは、非常に長くなる(ヒトDNAでは、長さ対幅比が1,000万超対1)。例えば、各ヒト細胞は、約1.8メートルのDNAを有するが、ヒストンに巻きついて、約90ミリメートルのクロマチンを形成する。クロマチンは、有糸分裂中に複製及び凝縮するときに約120マイクロメートルの染色体となる。より好ましくは、本発明では、かかるヒストンタンパク質は、典型的に、以下のヒストンの5つの主なクラス:H1/H5、H2A、H2B、H3、及びH4”のうちの1つから選択され、好ましくは哺乳類ヒストンから選択され、より好ましくはヒトヒストン又はヒストンタンパク質から選択される、高度に保存されているタンパク質として定義される。かかるヒストン又はヒストンタンパク質は、典型的に、ヒストンH2A、H2B、H3、及びH4”を含むコアヒストン並びにヒストンH1及びH5を含むリンカーヒストンとして定義される2つのスーパークラスに体系付けられる。
【0083】
これに関連して、好ましくは係属中の発明の保護範囲から除外されるリンカーヒストン、好ましくは哺乳類リンカーヒストン、より好ましくはヒトリンカーヒストンは、典型的に、H1Fを含むH1(具体的には、H1F0、H1FNT、H1FOO、H1FXを含む)、及びH1H1(具体的には、HIST1H1A、HIST1H1B、HIST1H1C、HIST1H1D、HIST1H1E、HIST1H1Tを含む)から選択される。
【0084】
更に、好ましくは係属中の発明の保護範囲から除外されるコアヒストン、好ましくは哺乳類コアヒストン、より好ましくはヒトコアヒストンは、典型的に、H2AF(具体的には、H2AFB1、H2AFB2、H2AFB3、H2AFJ、H2AFV、H2AFX、H2AFY、H2AFY2、H2AFZを含む)、及びH2A1(具体的には、HIST1H2AA、HIST1H2AB、HIST1H2AC、HIST1H2AD、HIST1H2AE、HIST1H2AG、HIST1H2AI、HIST1H2AJ、HIST1H2AK、HIST1H2AL、HIST1H2AMを含む)、及びH2A2(具体的には、HIST2H2AA3、HIST2H2ACを含む)を含むH2A;H2BF(具体的には、H2BFM、H2BFO、H2BFS、H2BFWT)、H2B1(具体的には、HIST1H2BA、HIST1H2BB、HIST1H2BC、HIST1H2BD、HIST1H2BE、HIST1H2BF、HIST1H2BG、HIST1H2BH、HIST1H2BI、HIST1H2BJ、HIST1H2BK、HIST1H2BL、HIST1H2BM、HIST1H2BN、HIST1H2BOを含む)、及びH2B2(具体的には、HIST2H2BEを含む)を含むH2B;H3A1(具体的には、HIST1H3A、HIST1H3B、HIST1H3C、HIST1H3D、HIST1H3E、HIST1H3F、HIST1H3G、HIST1H3H、HIST1H3I、HIST1H3Jを含む)、及びH3A2(具体的には、HIST2H3Cを含む)、及びH3A3(具体的には、HIST3H3を含む)を含むH3;H41(具体的には、HIST1H4A、HIST1H4B、HIST1H4C、HIST1H4D、HIST1H4E、HIST1H4F、HIST1H4G、HIST1H4H、HIST1H4I、HIST1H4J、HIST1H4K、HIST1H4Lを含む)及びH44(具体的には、HIST4H4を含む)を含むH4;並びにH5から選択される。
【0085】
本発明の第1の態様によれば、本発明の核酸配列は、腫瘍抗原、又はその断片、変異体、若しくは誘導体を含むペプチド又はタンパク質をコードしているコード領域を含む。好ましくは、コードされている腫瘍抗原は、レポータータンパク質(例えば、ルシフェラーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)、高感度緑色蛍光タンパク質(EGFP)、β−ガラクトシダーゼ)ではなく、且つマーカー又は選択タンパク質(例えば、アルファグロビン、ガラクトキナーゼ、及びキサンチン:グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(GPT))ではない。好ましくは、本発明の核酸配列は、(細菌)抗生物質耐性遺伝子、特に、neo遺伝子配列(ネオマイシン耐性遺伝子)又はCAT遺伝子配列(クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ;クロラムフェニコール耐性遺伝子)を含有しない。
【0086】
上に定義した通り本発明の核酸は、a)腫瘍抗原、又はその断片、変異体、若しくは誘導体を含むペプチド又はタンパク質をコードしているコード領域と、(好ましくは、コードされている前記ペプチド又はタンパク質の発現を増加させるために)b)少なくとも1つのヒストンステムループと、c)ポリ(A)配列又はポリアデニル化シグナルとを含むか又はコードし、コードされている前記ペプチド又はタンパク質は、好ましくは、上に定義した通り、ヒストンタンパク質、レポータータンパク質、及び/又はマーカー若しくは選択タンパク質ではない。本発明の核酸の要素b)〜c)は、任意の順序で本発明の核酸中に存在してよく、即ち、要素a)、b)、及びc)は、本発明の核酸配列の5’から3’方向にa)、b)、及びc)又はa)、c)、及びb)の順序で存在してよく、5’−CAP構造、ポリ(C)配列、安定化配列、IRES配列等の本明細書に定義する更なる要素を含有していてもよい。本発明の核酸の各要素a)〜c)、特に、ジ−若しくはマルチシストロン性コンストラクトにおけるa)並びに/又は各要素b)及びc)、より好ましくは要素b)は、本発明の核酸において少なくとも1回、好ましくは2回以上反復していてもよい。一例として、本発明の核酸は、配列エレメントa)、b)、及び任意でc)を、例えば以下の順序で含んでよい:
5’−コード領域−ヒストンステムループ−ポリ(A)配列−3’;又は
5’−コード領域−ヒストンステムループ−ポリアデニル化シグナル−3’;又は
5’−コード領域−ポリ(A)配列−ヒストンステムループ−3’;又は
5’−コード領域−ポリアデニル化シグナル−ヒストンステムループ−3’;又は
5’−コード領域−コード領域−ヒストンステムループ−ポリアデニル化シグナル−3’;又は
5’−コード領域−ヒストンステムループ−ヒストンステムループ−ポリ(A)配列−3’;又は
5’−コード領域−ヒストンステムループ−ヒストンステムループ−ポリアデニル化シグナル−3’等。
【0087】
これに関連して、本発明の核酸配列は、a)腫瘍抗原、又はその断片、変異体、若しくは誘導体を含むペプチド又はタンパク質をコードしているコード領域と、(好ましくは、コードされている前記ペプチド又はタンパク質の発現レベルを増加させるために)b)少なくとも1つのヒストンステムループと、c)ポリ(A)配列又はポリアデニル化配列とを含むか又はコードし、コードされている前記タンパク質は、好ましくは、ヒストンタンパク質、レポータータンパク質(例えば、ルシフェラーゼ、GFP、EGFP、β−ガラクトシダーゼ、特にEGFP)、及び/又はマーカー若しくは選択タンパク質(例えば、アルファグロビン、ガラクトキナーゼ、及びキサンチン:グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(GPT))ではない。
【0088】
第1の態様の更に好ましい実施形態では、本明細書に定義する本発明の核酸配列は、改変核酸の形態で存在してもよい。
【0089】
これに関連して、本明細書に定義する本発明の核酸配列は、「安定化核酸」、好ましくは安定化RNA、より好ましくは(例えば、エキソヌクレアーゼ又はエンドヌクレアーゼによる)インビボにおける分解に対して本質的に耐性であるRNAを提供するために修飾してよい。安定化核酸は、例えば、本発明の核酸配列のコード領域のG/C含量を変化させることによって、ヌクレオチドアナログ(例えば、骨格修飾、糖修飾、又は塩基修飾を有するヌクレオチド)を導入することによって、或いは本発明の核酸配列の3’及び/又は5’非翻訳領域に安定化配列を導入することによって得ることができる。
【0090】
上述の通り、本明細書に定義する本発明の核酸配列は、ヌクレオチドアナログ/修飾、例えば、骨格修飾、糖修飾、又は塩基修飾等を含有していてよい。本発明に関連する骨格修飾は、本明細書に定義する本発明の核酸配列に含まれるヌクレオチドの骨格のリン酸が化学的に修飾される修飾である。本発明に関連する糖修飾は、本明細書に定義する本発明の核酸配列のヌクレオチドの糖の化学修飾である。更に、本発明に関連する塩基修飾は、本発明の核酸配列の核酸分子のヌクレオチドの塩基部分の化学修飾である。これに関連して、ヌクレオチドアナログ又は修飾は、好ましくは、転写及び/又は翻訳に適用可能なヌクレオチドアナログから選択される。
【0091】
本発明の第1の態様の特に好ましい実施形態では、本明細書に定義するヌクレオチドアナログ/修飾は、コードされているタンパク質の発現を更に増加させ且つ好ましくは以下から選択される塩基修飾から選択される:2−アミノ−6−クロロプリンリボシド−5’−トリホスフェート、2−アミノアデノシン−5’−トリホスフェート、2−チオシチジン−5’−トリホスフェート、2−チオウリジン−5’−トリホスフェート、4−チオウリジン−5’−トリホスフェート、5−アミノアリルシチジン−5’−トリホスフェート、5−アミノアリルウリジン−5’−トリホスフェート、5−ブロモシチジン−5’−トリホスフェート、5−ブロモウリジン−5’−トリホスフェート、5−ヨードシチジン−5’−トリホスフェート、5−ヨードウリジン−5’−トリホスフェート、5−メチルシチジン−5’−トリホスフェート、5−メチルウリジン−5’−トリホスフェート、6−アザシチジン−5’−トリホスフェート、6−アザウリジン−5’−トリホスフェート、6−クロロプリンリボシド−5’−トリホスフェート、7−デアザアデノシン−5’−トリホスフェート、7−デアザグアノシン−5’−トリホスフェート、8−アザアデノシン−5’−トリホスフェート、8−アジドアデノシン−5’−トリホスフェート、ベンズイミダゾール−リボシド−5’−トリホスフェート、N1−メチルアデノシン−5’−トリホスフェート、N1−メチルグアノシン−5’−トリホスフェート、N6−メチルアデノシン−5’−トリホスフェート、O6−メチルグアノシン−5’−トリホスフェート、プソイドウリジン−5’−トリホスフェート、又はピューロマイシン−5’−トリホスフェート、キサントシン−5’−トリホスフェート。5−メチルシチジン−5’−トリホスフェート、7−デアザグアノシン−5’−トリホスフェート、5−ブロモシチジン−5’−トリホスフェート、及びプソイドウリジン−5’−トリホスフェートからなる塩基修飾ヌクレオチドの群から選択される塩基修飾のためのヌクレオチドが特に好ましい。
【0092】
更なる実施形態によれば、本明細書に定義する本発明の核酸配列は、脂質修飾を含有していてよい。かかる脂質修飾核酸は、典型的に、本明細書に定義する核酸を含む。本明細書に定義する本発明の核酸配列のかかる脂質修飾核酸分子は、典型的に、前記核酸分子と共有結合している少なくとも1つのリンカーと、それぞれの前記リンカーと共有結合している少なくとも1つの脂質とを更に含む。或いは、前記脂質修飾核酸分子は、本明細書に定義する少なくとも1つの核酸分子と、前記核酸分子と(リンカーなしで)共有結合している少なくとも1つの(二官能性)脂質とを含む。第3の選択肢によれば、前記脂質修飾核酸分子は、本明細書に定義する核酸分子と、前記核酸分子と共有結合している少なくとも1つのリンカーと、それぞれの前記リンカーと共有結合している少なくとも1つの脂質と、前記核酸分子と(リンカーなしで)共有結合している少なくとも1つの(二官能性)脂質とを含む。これに関連して、脂質修飾は、直鎖状の本発明の核酸配列の末端に存在することが特に好ましい。
【0093】
本発明の第1の態様の別の好ましい実施形態によれば、本明細書に定義する本発明の核酸配列は、特に(m)RNAとして提供される場合、所謂「5’CAP」構造の付加によってRNase分解に対して安定化させることができる。
【0094】
本発明の第1の態様の更に好ましい実施形態によれば、本明細書に定義する本発明の核酸配列は、少なくとも10個のシチジン、好ましくは少なくとも20個のシチジン、より好ましくは少なくとも30個のシチジンの配列(所謂、「ポリ(C)配列」によって修飾してよい。好ましくは、本発明の核酸配列は、典型的に約10個〜約200個のシチジンヌクレオチド、好ましくは約10個〜約100個のシチジンヌクレオチド、より好ましくは約10個〜約70個のシチジンヌクレオチド、又は更により好ましくは約20個〜約50個、又は更には20個〜30個のシチジンヌクレオチドのポリ(C)配列を含有していてもよく、コードしていてもよい。前記ポリ(C)配列は、好ましくは、本発明の第1の態様に係る本発明の核酸に含まれるコード領域の3’に位置する。
【0095】
本発明の特に好ましい実施形態では、本明細書に定義する本発明の核酸配列の、腫瘍抗原、又はその断片、変異体、若しくは誘導体を含む少なくとも1つのペプチド又はタンパク質をコードしているコード領域のG/C含量を、その特定の野生型コード領域、即ち、非修飾コード領域のG/C含量に比べて変化させる、好ましくは増加させる。コード領域にコードされているアミノ酸配列は、好ましくは、特定の野生型コード領域にコードされているアミノ酸配列に比べて変化しない。
【0096】
本明細書に定義する本発明の核酸配列のコード領域のG/C含量の変更は、翻訳される任意のmRNA領域の配列が、そのmRNAの効率的な翻訳にとって重要であるという事実に基づいている。したがって、様々なヌクレオチドの組成及び配列が重要である。具体的には、G(グアノシン)/C(シトシン)含量の多いmRNA配列は、A(アデノシン)/U(ウラシル)含量の多いmRNA配列よりも安定である。本発明によれば、含まれるG/Cヌクレオチドの量が増加するように、翻訳されるアミノ酸配列を保持しながら、その野生型コード領域に対してコード領域のコドンを変化させる。幾つかのコドンが1つの同じアミノ酸をコードしている(所謂、遺伝コードの縮重)という事実に関連して、安定性のために最も好ましいコドンを決定することができる(所謂、代替コドンの利用)。
【0097】
本明細書に定義する本発明の核酸配列のコード領域によってコードされているアミノ酸によっては、その野生型コード領域に対して、核酸配列、例えばコード領域を様々に改変できる可能性がある。G又はCヌクレオチドのみを含有するコドンによってコードされているアミノ酸の場合、コドンを改変する必要はない。したがって、Pro(CCC又はCCG)、Arg(CGC又はCGG)、Ala(GCC又はGCG)、及びGly(GGC又はGGG)のコドンは、AもUも存在しないので、改変する必要がない。
【0098】
対照的に、A及び/又はUヌクレオチドを含有するコドンは、同じアミノ酸をコードしているがA及び/又はUを含有していない他のコドンで置換することによって改変してよい。その例は、以下の通りである:
Proのコドンは、CCU又はCCAからCCC又はCCGに改変してよい;
Argのコドンは、CGU又はCGA又はAGA又はAGGからCGC又はCGGに改変してよい;
Alaのコドンは、GCU又はGCAからGCC又はGCGに改変してよい;
Glyのコドンは、GGU又はGGAからGGC又はGGGに改変してよい。
【0099】
他の場合、A又はUヌクレオチドをコドンからなくすことはできないが、A及び/又はUヌクレオチドの含量が低いコドンを使用することによってA及びU含量を減少させることができる。その例は、以下の通りである:
Pheのコドンは、UUUからUUCに改変してよい;
Leuのコドンは、UUA、UUG、CUU又はCUAからCUC又はCUGに改変してよい;
Serのコドンは、UCU又はUCA又はAGUからUCC、UCG又はAGCに改変してよい;
Tyrのコドンは、UAUからUACに改変してよい;
Cysのコドンは、UGUからUGCに改変してよい;
Hisのコドンは、CAUからCACに改変してよい;
Glnのコドンは、CAAからCAGに改変してよい;
Ileのコドンは、AUU又はAUAからAUCに改変してよい;
Thrのコドンは、ACU又はACAからACC又はACGに改変してよい;
Asnのコドンは、AAUからAACに改変してよい;
Lysのコドンは、AAAからAAGに改変してよい;
Valのコドンは、GUU又はGUAからGUC又はGUGに改変してよい;
Aspのコドンは、GAUからGACに改変してよい;
Gluのコドンは、GAAからGAGに改変してよい;
終止コドンUAAは、UAG又はUGAに改変してよい。
【0100】
他方、Met(AUG)及びTrp(UGG)のコドンの場合、配列を改変することはできない。
【0101】
上記置換は、その特定の野生型コード領域(即ち、オリジナル配列)に比べて、本明細書に定義する本発明の核酸配列のコード領域のG/C含量を増加させるために個々に又は全ての可能な組み合わせで用いることができる。したがって、例えば、野生型配列に存在するThrの全てのコドンをACC(又はACG)に改変してもよい。
【0102】
上記では、mRNAのコドンを示す。したがって、mRNA中に存在するウリジンは、特定のmRNAをコードしているそれぞれのDNAにおいてチミジンとして存在し得る。
【0103】
本明細書に定義する本発明の核酸配列のコード領域のG/C含量は、野生型コード領域のG/C含量に比べて、好ましくは少なくとも7%、より好ましくは少なくとも15%、特に好ましくは少なくとも20%増加させる。特定の実施形態によれば、腫瘍抗原、又はその断片、変異体、若しくは誘導体を含む少なくとも1つのペプチド又はタンパク質をコードしているコード領域における置換可能なコドンのうちの少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、より好ましくは少なくとも70%、更により好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも90%、95%、又は更には100%を置換して、前記コード領域のG/C含量を増加させる。
【0104】
これに関連して、本明細書に定義する本発明の核酸配列のコード領域のG/C含量を、野生型コード領域に比べて最大まで(即ち、置換可能なコドンの100%)増加させることが特に好ましい。
【0105】
本発明によれば、本明細書に定義する本発明の核酸配列の、腫瘍抗原、又はその断片、変異体、若しくは誘導体を含む少なくとも1つのペプチド又はタンパク質をコードしているコード領域の更に好ましい改変は、細胞内のtRNAの異なる発生頻度によっても翻訳効率が決定されるという知見に基づく。したがって、本明細書に定義する本発明の核酸配列のコード領域に所謂「レアコドン」が存在している場合、前記レアコドンに対応する改変核酸配列は、比較的「高頻度の」tRNAをコードしているコドンが存在する場合よりも、翻訳される程度が著しく低くなる確率が高い。
【0106】
これに関連して、本発明の核酸配列のコード領域は、好ましくは、細胞内で比較的レアなtRNAをコードしている野生型配列のうちの少なくとも1つのコドンが、細胞内で比較的高頻度で存在するtRNAをコードしており且つ前記比較的レアなtRNAと同じアミノ酸を運搬するコドンと交換されるように、対応する野生型コード領域に対して改変される。この改変により、本明細書に定義する本発明の核酸配列のコード領域は、高頻度で存在するtRNAを利用可能なコドンが挿入されるように改変される。言い換えれば、本発明によれば、この改変により、細胞内で比較的レアなtRNAをコードしている野生型コード領域の全てのコドンを、細胞内で比較的高頻度で存在し且つそれぞれの場合において前記比較的レアなtRNAと同じアミノ酸を運搬するコドンと交換してよい。
【0107】
どのtRNAが細胞内で比較的高頻度で存在するか、及び対照的にどのtRNAが比較的低頻度で存在するかは、当業者に公知である。例えば、Akashi,Curr.Opin.Genet.Dev.2001,11(6):660−666を参照されたい。特定のアミノ酸について最も高頻度で存在するtRNAを用いるコドン、例えば、(ヒト)細胞内で最も高頻度で存在するtRNAを用いるGlyコドンが特に好ましい。
【0108】
本発明によれば、核酸配列のコード領域によってコードされているペプチド又はタンパク質のアミノ酸配列を改変することなしに、本明細書に定義する本発明の核酸配列のコード領域において配列のG/C含量を(特に、最大限)増加させることと、「高頻度の」コドンとを組み合わせることが特に好ましい。この好ましい実施形態により、特に効率的に翻訳され且つ安定化(改変)されている本明細書に定義する本発明の核酸配列を提供することができる。
【0109】
本発明の第1の態様の別の好ましい実施形態によれば、本明細書に定義する本発明の核酸配列は、好ましくは、少なくとも1つの5’及び/又は3’安定化配列を更に有する。5’及び/又は3’非翻訳領域におけるこれら安定化配列は、核酸、特にサイトゾルにおけるmRNAの半減期を延長する効果を有する。これら安定化配列は、ウイルス、細菌、及び原核生物に存在する天然配列と100%の配列同一性を有していてもよいが、部分的に又は完全に合成してもよい。例えば、安定化核酸のために本発明で用いることができる安定化配列の例として、ヒト又はアフリカツメガエル由来の(アルファ)グロビン遺伝子の非翻訳配列(UTR)を挙げることができる。安定化配列の別の例は、一般式(C/U)CCAN
xCCC(U/A)Py
xUC(C/U)CC(配列番号55)を有する配列であり、これは、(アルファ)グロビン、(I)型コラーゲン、15−リポキシゲナーゼ、又はチロシンヒドロキシラーゼをコードしている非常に安定なRNAの3’−UTRに含まれている(Holcik et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 1997,94:2410−2414を参照)。かかる安定化配列は、無論、個々に又は互いに組み合わせて用いてよく、また、当業者に公知の他の安定化配列と組み合わせて用いてもよい。これに関連して、アルファグロビン遺伝子の3’UTR配列は、本発明の第1の態様に係る本発明の核酸配列に含まれる腫瘍抗原、又はその断片、変異体、若しくは誘導体を含む少なくとも1つのペプチド又はタンパク質をコードしているコード領域の3’に位置することが特に好ましい。
【0110】
塩基の置換、付加、又は除去は、好ましくは、周知の部位特異的突然変異誘発の技術によって核酸配列を調製するためのDNAマトリクスを用いて又はオリゴヌクレオチドライゲーションストラテジを用いて、本明細書に定義する本発明の核酸配列を用いて行われる(例えば、Maniatis et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,3rd ed.,Cold Spring Harbor,NY,2001を参照)。上記改変はいずれも、本発明において用いるとき、本明細書に定義する本発明の核酸配列、更には任意の核酸に適用することができ、好ましい又は必要な場合、これら改変の組み合わせがそれぞれの核酸において互いに干渉しない限り、任意の組み合わせで互いに組み合わせてよい。当業者は、適宜選択を行うことができる。
【0111】
本明細書に定義する本発明に従って用いられる核酸配列は、例えば、固相合成等の合成方法に加えて、インビトロ転写反応等のインビトロ方法、又は細菌におけるDNAプラスミドのインビボ増殖等のインビボ反応を含む当技術分野において公知の任意の方法を用いて調製することができる。
【0112】
本明細書に定義する本発明の核酸配列を調製するためのかかるプロセスでは、特に核酸がmRNAの形態である場合、対応するDNA分子をインビトロで転写させてよい。このDNAマトリクスは、好ましくは、インビトロ転写用に例えばT7又はSP6プロモーター等の好適なプロモーターを含み、この後に、調製される核酸分子(例えば、mRNA)の所望のヌクレオチド配列、及びインビトロ転写のための終止シグナルが続く。少なくとも1つの対象RNAのマトリクスを形成するDNA分子は、発酵増殖させ、次いで細菌内で複製され得るプラスミドの一部として単離することによって調製することができる。本発明にとって好適であり得るプラスミドは、例えば、プラスミドpT7T(Genbankアクセッション番号U26404;Lai et al.,Development 1995,121:2349−2360)、pGEM(登録商標)シリーズ、例えば、pGEM(登録商標)−1(Genbankアクセッション番号X65300;Promega製)、及びpSP64(Genbankアクセッション番号X65327)である。Griffin and Griffin(ed.),PCR Technology:Current Innovation,CRC Press,Boca Raton,FL,2001のMezei and Storts,Purification of PCR Productsも参照。
【0113】
本明細書に定義する本発明の核酸配列に加えて、この核酸配列によってコードされているタンパク質又はペプチドは、これら配列の断片又は変異体を含んでいてよい。かかる断片又は変異体は、典型的に、核酸レベル又はアミノ酸レベルで、全野生型配列に対して、上記核酸のうちの1つ、或いは本発明の核酸配列によってコードされている場合、タンパク質又はペプチド又は配列のうちの1つと、少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、更により好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%、又は更には97%、98%若しくは99%の配列同一性を有する配列を含んでいてよい。
【0114】
(例えば、本明細書に定義する本発明の核酸配列によってコードされているとき)本発明におけるタンパク質又はペプチドの「断片」は、本明細書に定義するタンパク質又はペプチドの配列を含んでいてよく、前記配列は、そのアミノ酸配列に関して(又はコードしている核酸分子に関して)、オリジナル(ネイティブ)タンパク質のアミノ酸配列(又はコードしている核酸分子)に比べてN末端、C末端、及び/又は配列内が切断/短縮されている。したがって、かかる切断は、アミノ酸レベルで、又は対応する核酸レベルで生じ得る。したがって、本明細書に定義する前記断片に関する配列同一性は、好ましくは、本明細書に定義する全タンパク質又はペプチド、或いはかかるタンパク質又はペプチドの全(コード)核酸分子を参照してよい。同様に、本発明における核酸の「断片」は、本明細書に定義する核酸の配列を含んでいてよく、前記配列は、その核酸分子に関して、オリジナル(ネイティブ)核酸分子の核酸分子に比べて5’、3’、及び/又は配列内が切断/短縮されている。したがって、本明細書に定義するかかる断片に関する配列同一性は、好ましくは、本明細書に定義する全核酸を参照してよく、好ましい配列同一性レベルは、典型的に、本明細書に指定する通りである。断片は、完全長ネイティブペプチド又はタンパク質に比べて、同じ生物機能又は特異的活性(例えば、特異的抗原性又は治療性)を有するか、或いは天然完全長タンパク質の活性の少なくとも50%、より好ましくは少なくとも70%、更により好ましくは少なくとも90%(適切な機能アッセイ、例えば、(免疫反応の指標として)適切なサイトカインの発現及び/又は分泌等の免疫反応を測定する適切なアッセイ系によって抗原性をアッセイするアッセイで測定)を少なくとも保持している。したがって、好ましい実施形態では、「断片」は、本明細書に指定する通り免疫系に対して腫瘍抗原性を発揮する、完全長の(自然界に存在する)腫瘍抗原タンパク質の一部である。
【0115】
(例えば、本明細書に定義する本発明の核酸配列によってコードされているとき)本明細書におけるタンパク質又はペプチドの断片は、約6アミノ酸長〜約20アミノ酸長、又は更に長いアミノ酸長を有する本明細書に定義するタンパク質又はペプチドの配列を更に含んでいてもよく、前記配列は、例えば、好ましくは約8アミノ酸長〜約10アミノ酸長(例えば、8アミノ酸長、9アミノ酸長、又は10アミノ酸長(或いは、更には6アミノ酸長、7アミノ酸長、11アミノ酸長又は12アミノ酸長))を有するMHCクラスI分子によって処理及び提示される断片、或いは、好ましくは約13以上のアミノ酸長(例えば、13アミノ酸長、14アミノ酸長、15アミノ酸長、16アミノ酸長、17アミノ酸長、18アミノ酸長、19アミノ酸長、20アミノ酸長、又は更にはそれ以上のアミノ酸長)を有するMHCクラスII分子によって処理及び提示される断片であり、これら断片は、アミノ酸配列の任意の部分から選択してよい。これら断片は、典型的に、ペプチド断片及びMHC分子からなる複合体の形態のT細胞によって認識され、即ち、前記断片は、典型的に、ネイティブな形態では認識されない。本明細書に定義するタンパク質又はペプチドの断片は、これらタンパク質又はペプチドの少なくとも1つのエピトープを含んでいてよい。更に、細胞外ドメイン、細胞内ドメイン、又は膜貫通ドメイン等のタンパク質のドメイン、及びタンパク質の短縮型又は切頭型も、タンパク質の断片を含むと理解してよい。
【0116】
また、(例えば、本明細書に定義する本発明の核酸配列によってコードされているとき)本明細書に定義するタンパク質又はペプチドの断片は、これらタンパク質又はペプチドのエピトープを含んでいてよい。本発明においてT細胞エピトープ又はタンパク質の一部は、好ましくは、約6アミノ酸長〜約20アミノ酸長、又は更に長いアミノ酸長を有する断片を更に含んでいてもよく、例えば、前記断片は、好ましくは約8アミノ酸長〜約10アミノ酸長(例えば、8アミノ酸長、9アミノ酸長、又は10アミノ酸長(或いは、更には11アミノ酸長又は12アミノ酸長))を有するMHCクラスI分子によって処理及び提示される断片、或いは、好ましくは約13以上のアミノ酸長(例えば、13アミノ酸長、14アミノ酸長、15アミノ酸長、16アミノ酸長、17アミノ酸長、18アミノ酸長、19アミノ酸長、20アミノ酸長、又は更にはそれ以上のアミノ酸長)を有するMHCクラスII分子によって処理及び提示される断片であり、これら断片は、アミノ酸配列の任意の部分から選択してよい。これら断片は、典型的に、ペプチド断片及びMHC分子からなる複合体の形態のT細胞によって認識され、即ち、前記断片は、典型的に、ネイティブな形態では認識されない。
B細胞エピトープは、典型的に、好ましくは5アミノ酸〜15アミノ酸、より好ましくは5アミノ酸〜12アミノ酸、更により好ましくは6アミノ酸〜9アミノ酸を有する本明細書に定義する(ネイティブ)タンパク質又はペプチド抗原の外表面に位置する断片であり、これは、即ちそのネイティブな形態の抗体によって認識され得る。
タンパク質又はペプチドのかかるエピトープは、更に、かかるタンパク質又はペプチドの本明細書で言及する変異体のいずれかから選択してよい。これに関連して、抗原決定基は、本明細書に定義するタンパク質又はペプチドのアミノ酸配列において不連続であるが、三次元構造では近接する本明細書に定義するタンパク質又はペプチドのセグメントで構成される高次構造的エピトープ又は不連続エピトープであってもよく、単一ポリペプチド鎖で構成される連続エピトープ又は線状エピトープであってもよい。
【0117】
本発明において定義されるタンパク質又はペプチドの「変異体」は、本明細書に定義する本発明の核酸配列によってコードされ得る。それによって、1以上のアミノ酸の置換、挿入、及び/又は欠失等、1以上(2、3、4、5、6、7、又はそれ以上)の突然変異によってオリジナル配列とは異なるアミノ酸配列を有するタンパク質又はペプチドが生成され得る。完全長天然タンパク質配列における「変異体」の好ましい配列同一性レベルは、典型的に、本明細書で指定する通りである。好ましくは、変異体は、完全長ネイティブペプチド又はタンパク質に比べて、同じ生物機能又は特異的活性(例えば、特異的抗原性)を有するか、或いは天然完全長タンパク質の活性の少なくとも50%、より好ましくは少なくとも70%、更により好ましくは少なくとも90%(適切な機能アッセイ、例えば、1以上のサイトカインの分泌及び/又は発現によって腫瘍抗原に対する免疫反応をアッセイするアッセイによって測定)を少なくとも保持している。したがって、好ましい実施形態では、「変異体」は、腫瘍抗原タンパク質の変異体であり、本明細書に指定する程度に腫瘍抗原性を発揮する。
【0118】
(例えば、本明細書に定義する核酸によってコードされているとき)本発明において定義されるタンパク質又はペプチドの「変異体」は、ネイティブな、即ち、突然変異していない生理学的な配列に比べて、保存的アミノ酸置換を含んでいてよい。特に、これらアミノ酸配列に加えて、それをコードしているヌクレオチド配列も、本明細書に定義する変異体という用語に含まれる。同じ分類に由来するアミノ酸が交換されている置換を保存的置換と呼ぶ。具体的には、脂肪族側鎖、正又は負に帯電している側鎖、側鎖又はアミノ酸における芳香族基、水素結合し得る側鎖、例えば、ヒドロキシル官能基を有する側鎖を有するアミノ酸がある。前記保存的置換とは、例えば、極性側鎖を有するアミノ酸が同様に極性側鎖を有する別のアミノ酸によって置換されたり、例えば、疎水性側鎖を特徴とするアミノ酸が同様に疎水性側鎖を有する別のアミノ酸によって置換されたりする(例えば、セリン(スレオニン)がスレオニン(セリン)によって、又はロイシン(イソロイシン)がイソロイシン(ロイシン)によって置換される)ことを意味する。特に、三次元構造を変化させない又は結合領域に影響を及ぼさない配列位置においては、挿入及び置換が可能である。挿入又は欠失による三次元構造の変化は、例えば、CDスペクトル(円二色性スペクトル)を用いて容易に決定することができる(Modern Physical Methods in Biochemistry,Neuberger et al.(ed.),Elsevier,AmsterdamにおけるUrry,1985,Absorption,Circular Dichroism and ORD of Polypeptides)。
【0119】
更に、本明細書に定義する本発明の核酸配列によってコードされ得る本明細書に定義するタンパク質又はペプチドの変異体は、核酸のヌクレオチドが、前記タンパク質又はペプチドのそれぞれのアミノ酸配列を変化させることなしに遺伝コードの縮重に従って交換されている配列を含んでいてもよく、即ち、前記アミノ酸配列又はその少なくとも一部は、上記意味においては、1以上の突然変異を含んでいてもオリジナル配列とは異なっていない場合もある。
【0120】
2つの配列、例えば、本明細書に定義する核酸配列又はアミノ酸配列、好ましくは本明細書に定義する本発明の核酸配列によってコードされているアミノ酸配列又はアミノ酸配列自体が同一である割合を求めるために、後で互いに比較するために配列をアラインメントしてよい。これによって、例えば、第1の配列のある位置を第2の配列の対応する位置と比較することができる。第1の配列のある位置が第2の配列の対応する位置と同じ成分によって占有されている場合、2つの配列は、その位置において同一である。これが当てはまらない場合、前記配列は、その位置において異なっている。第1の配列と比べて第2の配列に挿入が行われている場合、第1の配列にギャップを挿入して更にアラインメントしてよい。第1の配列に比べて第2の配列が欠失している場合、第2の配列にギャップを挿入して更にアラインメントしてよい。次いで、2つの配列が同一である割合は、同一である位置の数を1つの配列においてのみ占有されている位置を含む位置の合計数で除した数の関数である。2つの配列が同一である割合は、数学的アルゴリズムを用いて求めることができる。用いることができる数学的アルゴリズムの好ましいが非限定的な例は、Karlin et al.(1993),PNAS USA,90:5873−5877又はAltschul et al.(1997),Nucleic Acids Res.,25:3389−3402のアルゴリズムである。かかるアルゴリズムは、BLASTプログラムに統合されている。ある程度本発明の核酸と同一である配列を、このプログラムによって同定することができる。
【0121】
本明細書に定義する本発明の核酸配列は、ペプチド又はタンパク質の誘導体をコードし得る。ペプチド又はタンパク質のかかる誘導体は、前記ペプチド又はタンパク質等の別の分子に由来する分子である。「誘導体」は、典型的に、天然のペプチド又はタンパク質の完全長配列と、例えばN末端又はC末端に更なる配列特徴とを含有し、前記配列特徴は、天然の完全長ペプチド/タンパク質に対して更なる機能を発揮し得る。また、かかる誘導体は、完全長のネイティブなペプチド又はタンパク質と同じ生物機能又は特異的活性(例えば、特異的治療性)を有するか、或いは天然の完全長タンパク質の活性の少なくとも50%、より好ましくは少なくとも70%、更により好ましくは少なくとも90%(適切な機能アッセイで測定(上記を参照)、例えば、免疫反応におけるサイトカインの発現及び/又は分泌によって表したとき)を少なくとも保持している。したがって、ペプチド又はタンパク質の「誘導体」は、例えば、本発明で用いられるペプチド又はタンパク質を含む(キメラ)融合ペプチド/タンパク質、或いは2以上の生物機能を融合ペプチド/タンパク質に付与する別のペプチド/タンパク質と融合している天然の完全長タンパク質(又はその変異体/断片)も含む。例えば、融合は、標識、例えば、FLAGエピトープ又はV5エピトープ又はHAエピトープ等のエピトープを含む。例えば、エピトープは、FLAGエピトープである。かかるタグは、例えば、融合タンパク質の精製に有用である。
【0122】
これに関連して、タンパク質又はペプチドの「変異体」は、前記タンパク質又はペプチドの10個、20個、30個、50個、75個、又は100個のアミノ酸伸長に亘って少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%又は99%のアミノ酸同一性を有し得る。同様に、核酸配列の「変異体」、又は特に「断片」は、前記核酸配列の10個、20個、30個、50個、75個、又は100個のヌクレオチド伸長に亘って少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%又は99%のヌクレオチド同一性を有し得るが、典型的には、自然界に存在する完全長配列を参照する。「断片」の場合、典型的に、最高レベルの配列同一性を示す(断片と同じ長さを表す)完全長タンパク質の部分における(断片の)長さに亘って、断片についての配列同一性が決定される。
【0123】
本発明の第1の態様の更に好ましい実施形態では、本発明の核酸配列のトランスフェクション効率及び/又は免疫刺激性を上昇させるために、本発明の核酸配列をビヒクル、トランスフェクション剤、又は複合体化剤と結合させる。これに関連してトランスフェクション効率を上昇させるのに好適な特に好ましい剤は、カチオン性又はポリカチオン性の化合物であり、例えば、プロタミン、ヌクレオリン、スペルミン若しくはスペルミジン、又は他のカチオン性のペプチド又はタンパク質(例えば、ポリ−L−リシン(PLL)、ポリアルギニン、塩基性ポリペプチド、細胞透過性ペプチド(CPP)(HIV結合ペプチド、HIV−1 Tat(HIV)、Tat由来ペプチド、ペネトラチン、VP22由来ペプチド又はアナログペプチドを含む)、HSV VP22(単純ヘルペス)、MAP、KALA、又はタンパク質形質導入ドメイン(PTD)、PpT620、プロリンリッチペプチド、アルギニンリッチペプチド、リシンリッチペプチド、MPG−ペプチド、Pep−1、L−オリゴマー、カルシトニンペプチド、アンテナペディア由来ペプチド(特にショウジョウバエのアンテナペディア由来)、pAntp、pIsl、FGF、ラクトフェリン、トランスポータン、ブフォリン−2、Bac715−24、SynB、SynB(1)、pVEC、hCT由来ペプチド、SAP、又はヒストン)が挙げられる。更に、好ましいカチオン性又はポリカチオン性のタンパク質又はペプチドは、以下の式を有するタンパク質又はペプチドから選択してよい:(Arg)
l;(Lys)
m;(His)
n;(Orn)
o;(Xaa)
x(式中、l+m+n+o+x=8〜15であり、l、m、n、又はoは、互いに独立して、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15から選択される任意の数であってよいが、但しArg、Lys、His及びOrnの総含量は、オリゴペプチドの全アミノ酸の少なくとも50%であり;Xaaは、Arg、Lys、His又はOrnを除くネイティブ(=自然界に存在する)又は非ネイティブなアミノ酸から選択される任意のアミノ酸であってよく;xは、0、1、2、3又は4から選択される任意の数であってよいが、但し、Xaaの総含量は、オリゴペプチドの全アミノ酸の50%を超えない)。これに関連して、特に好ましいカチオン性ペプチドは、例えば、Arg
7、Arg
8、Arg
9、H
3R
9、R
9H
3、H
3R
9H
3、YSSR
9SSY、(RKH)
4、Y(RKH)
2R等である。トランスフェクション剤として用いることができる更に好ましいカチオン性又はポリカチオン性の化合物は、カチオン性多糖類(例えば、キトサン)、ポリブレン、カチオン性ポリマー(例えば、ポリエチレンイミン(PEI))、カチオン性脂質(例えば、DOTMA:[1−(2,3−シオレイルオキシ)プロピル)]−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド、DMRIE、ジ−C14−アミジン、DOTIM、SAINT、DC−Chol、BGTC,CTAP、DOPC、DODAP、DOPE:ジオレイルホスファチジルエタノールアミン、DOSPA、DODAB、DOIC、DMEPC、DOGS:ジオクタデシルアミドグリシルスペルミン、DIMRI:ジミリスト−オキシプロピルジメチルヒドロキシエチルアンモニウムブロミド、DOTAP:ジオレオイルオキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロパン、DC−6−14:O,O−ジテトラデカノイル−N−(a−トリメチルアンモニオアセチル)ジエタノールアミンクロリド、CLIP1:rac−[(2,3−ジオクタデシルオキシプロピル)(2−ヒドロキシエチル)]−ジメチルアンモニウムクロリド、CLIP6:rac−[2(2,3−ジヘキサデシルオキシプロピル−オキシメチルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウム、CLIP9:rac−[2(2,3−ジヘキサデシルオキシプロピル−オキシスクシニルオキシ)エチル]−トリメチルアンモニウム、オリゴフェクタミン)、又はカチオン性若しくはポリカチオン性のポリマー(例えば、β−アミノ酸ポリマー又は逆ポリアミド等の修飾ポリアミノ酸;PVP(ポリ(N−エチル−4−ビニルピリジニウムブロミド))等の修飾ポリエチレン;pDMAEMA(ポリ(ジメチルアミノエチルメチルメタクリレート))等の修飾アクリレート;pAMAM(ポリ(アミドアミン))等の修飾アミドアミン;ジアミン末端修飾1,4ブタンジオールジアクリレート−co−5−アミノ−1−ペンタノールポリマー等の修飾ポリベータアミノエステル(PBAE);ポリプロピルアミンデンドリマー又はpAMAM系デンドリマー等のデンドリマー;PEI:ポリ(エチレンイミン)、ポリ(プロピレンイミン)等のポリイミン;ポリアリルアミン;シクロデキストリン系ポリマー、デキストラン系ポリマー、キトサン等の糖骨格系ポリマー;PMOXA−PDMSコポリマー等のシラン骨格系ポリマー)、1以上のカチオン性ブロック(例えば、上述のカチオン性ポリマーから選択される)と1以上の親水性又は疎水性のブロックとの組み合わせからなるブロックポリマー(例えば、ポリエチレングリコール)等を含んでいてよい。
【0124】
これに関連して、本発明の核酸は、カチオン性又はポリカチオン性の化合物、好ましくはカチオン性のタンパク質又はペプチドと少なくとも部分的に複合体化することが特に好ましい。部分的にとは、本発明の核酸配列の一部のみがカチオン性又はポリカチオン性の化合物と複合体化し、本発明の核酸配列の残りは、複合体化していない(「遊離」)形態であることを意味する。好ましくは、複合体化核酸の遊離核酸に対する比は、約5:1(w/w)〜約1:10(w/w)、より好ましくは約4:1(w/w)〜約1:8(w/w)、更により好ましくは約3:1(w/w)〜約1:5(w/w)又は1:3(w/w)の範囲から選択され、最も好ましくは、複合体化核酸の遊離核酸に対する比は、約1:1(w/w)の比から選択される。
【0125】
本発明の核酸配列は、ネイキッド形態で提供されるか、或いは例えばあらゆる化学構造のポリカチオン性化合物によって、好ましくは、ポリカチオン性(ポリ)ペプチド又は合成ポリカチオン性化合物によって複合体化している形態で提供されることが好ましい。好ましくは、前記核酸配列は、パッケージング細胞と一緒には提供されない。
【0126】
更なる態様では、本発明は、複数の、即ち1超、好ましくは2〜10、より好ましくは2〜5、最も好ましくは2〜4の本明細書に定義する本発明の核酸配列を含む組成物又はキット又はキットのパーツを提供する。本発明の組成物は、好ましくは様々な腫瘍抗原、又はその断片、変異体、若しくは誘導体を含む様々なペプチド又はタンパク質をコードしていることが好ましい1超の本発明の核酸配列を含む。
【0127】
好ましい実施形態では、特に前立腺癌(PCa)の治療において用いるための、複数(これは、典型的に1個超、2個超、3個超、4個超、5個超、6個超、又は10個超の核酸、例えば、2個〜10個、好ましくは2個〜5個の核酸を意味する)の本発明の核酸配列を含む本発明の組成物、キット又はキットのパーツは、少なくとも以下を含む:
a)少なくとも1つのペプチド又はタンパク質をコードしている本発明の核酸であって、コードされている前記ペプチド又はタンパク質が、腫瘍抗原PSA、又はその断片、変異体、若しくは誘導体を含む核酸と、
b)少なくとも1つのペプチド又はタンパク質をコードしている本発明の核酸であって、コードされている前記ペプチド又はタンパク質が、腫瘍抗原PSMA、又はその断片、変異体、若しくは誘導体を含む核酸と、
c)少なくとも1つのペプチド又はタンパク質をコードしている本発明の核酸であって、コードされている前記ペプチド又はタンパク質が、腫瘍抗原PSCA、又はその断片、変異体、若しくは誘導体を含む核酸と、
d)少なくとも1つのペプチド又はタンパク質をコードしている本発明の核酸であって、コードされている前記ペプチド又はタンパク質が、腫瘍抗原STEAP−1、又はその断片、変異体、若しくは誘導体を含む核酸。
【0128】
更に好ましい実施形態では、特に非小肺癌(NSCLC)の治療において用いるための、複数(これは、典型的に1個超、2個超、3個超、4個超、5個超、6個超、又は10個超の核酸、例えば、2個〜10個、好ましくは2個〜5個の核酸を意味する)の本発明の核酸配列を含む本発明の組成物、キット又はキットのパーツは、少なくとも以下を含む:
a)核酸配列であって、
i. 腫瘍抗原NY−ESO−1、又はその断片、変異体、若しくは誘導体を含む少なくとも1つのペプチド又はタンパク質をコードしているコード領域、
ii. 少なくとも1つのヒストンステムループ、及び
iii. ポリ(A)配列又はポリアデニル化シグナル
を含むか又はコードしている核酸配列と、
b)少なくとも1つのペプチド又はタンパク質をコードしている本発明の核酸であって、コードされている前記ペプチド又はタンパク質が、腫瘍抗原5T4、又はその断片、変異体、若しくは誘導体を含む核酸と、
c)少なくとも1つのペプチド又はタンパク質をコードしている本発明の核酸であって、コードされている前記ペプチド又はタンパク質が、腫瘍抗原サバイビン、又はその断片、変異体、若しくは誘導体を含む核酸。
【0129】
更に別の実施形態では、特に非小肺癌(NSCLC)の治療において用いるための、複数(これは、典型的に1個超、2個超、3個超、4個超、5個超、6個超、又は10個超の核酸、例えば、2個〜10個、好ましくは2個〜5個の核酸を意味する)の本発明の核酸配列を含む本発明の組成物、キット又はキットのパーツは、少なくとも以下を含む:
a)核酸配列であって、
i. 腫瘍抗原NY−ESO−1、又はその断片、変異体、若しくは誘導体を含む少なくとも1つのペプチド又はタンパク質をコードしているコード領域、
ii. 少なくとも1つのヒストンステムループ、及び
iii. ポリ(A)配列又はポリアデニル化シグナル
を含むか又はコードしている核酸配列と、
b)少なくとも1つのペプチド又はタンパク質をコードしている本発明の核酸であって、コードされている前記ペプチド又はタンパク質が、腫瘍抗原5T4、又はその断片、変異体、若しくは誘導体を含む核酸と、
c)少なくとも1つのペプチド又はタンパク質をコードしている本発明の核酸であって、コードされている前記ペプチド又はタンパク質が、腫瘍抗原サバイビン、又はその断片、変異体、若しくは誘導体を含む核酸と、
d)少なくとも1つのペプチド又はタンパク質をコードしている本発明の核酸であって、コードされている前記ペプチド又はタンパク質が、腫瘍抗原MAGE−C1、又はその断片、変異体、若しくは誘導体を含む核酸と、
e)少なくとも1つのペプチド又はタンパク質をコードしている本発明の核酸であって、コードされている前記ペプチド又はタンパク質が、腫瘍抗原MAGE−C2、又はその断片、変異体、若しくは誘導体を含む核酸。
【0130】
更なる態様によれば、本発明は、例えば、a)本明細書に定義する本発明の核酸配列又は複数(これは、典型的に1個超、2個超、3個超、4個超、5個超、6個超、又は10個超の核酸、例えば、2個〜10個、好ましくは2個〜5個の核酸を意味する)の本明細書に定義する本発明の核酸配列を含む本発明の組成物を提供する工程と、b)本明細書に定義する本発明の核酸配列又は複数の本明細書に定義する本発明の核酸配列を含む本発明の組成物を、発現系、例えば、無細胞発現系、細胞(例えば、発現ホスト細胞又は体細胞)、組織、又は生物に適用又は投与する工程とを含む、コードされているペプチド又はタンパク質の発現を増加させる方法を提供する。前記方法は、実験、研究、診断、ペプチド若しくはタンパク質の市販製品、及び/又は治療目的のために応用することができる。これに関連して、典型的に、本明細書に定義する本発明の核酸配列又は複数の本明細書に定義する本発明の核酸配列を含む本発明の組成物は、調製された後、典型的には、例えば、ネイキッド形態又は複合体化形態で、或いは本明細書に記載する医薬組成物又はワクチンとして、好ましくはトランスフェクションを介して、又は本明細書に記載する投与方法のいずれかを用いることによって、無細胞発現系、細胞(例えば、発現ホスト細胞又は体細胞)、組織、又は生物に適用又は投与される。前記方法は、インビトロ、インビボ、又はエキソビボで実施してよい。前記方法は、更に、好ましくは本明細書に定義する通り、特に癌又は腫瘍疾患の治療において、特定の疾患の治療に使用してよい。
【0131】
これに関連して、インビトロとは、生物外の培養物において、本明細書に定義する本発明の核酸配列又は複数の本明細書に定義する本発明の核酸配列を含む本発明の組成物を細胞にトランスフェクション又はトランスダクションすることと本明細書では定義される。インビボとは、生物又は個体全体に対して本発明の核酸又は本発明の組成物を適用することにより、本発明の核酸配列又は複数の本発明の核酸配列を含む本発明の組成物を細胞にトランスフェクション又はトランスダクションすることと本明細書では定義される。エキソビボとは、生物又は個体外において、本発明の核酸配列又は複数(これは、典型的に1個超、2個超、3個超、4個超、5個超、6個超、又は10個超の核酸、例えば、2個〜10個、好ましくは2個〜5個の核酸を意味する)の本発明の核酸配列を含む本発明の組成物を細胞にトランスフェクション又はトランスダクションし、次いで、トランスフェクションされた細胞を前記生物又は個体に適用することと本明細書では定義される。
【0132】
同様に、別の態様によれば、本発明は、また、例えば、本明細書に定義する本発明の核酸配列又は複数の本明細書に定義する本発明の核酸配列を含む本発明の組成物を、例えば、無細胞発現系、細胞(例えば、発現ホスト細胞又は体細胞)、組織、又は生物に適用又は投与することによる、好ましくは、診断目的又は治療目的のため、コードされているペプチド又はタンパク質の発現を増加させるための、本明細書に定義する本発明の核酸配列又は複数の本明細書に定義する本発明の核酸配列を含む本発明の組成物の使用を提供する。前記使用は、実験、研究、診断、ペプチド若しくはタンパク質の市販製品、及び/又は治療目的のために応用することができる。これに関連して、典型的に、本明細書に定義する本発明の核酸配列又は複数の本明細書に定義する本発明の核酸配列を含む本発明の組成物は、調製された後、典型的には、例えば、ネイキッド形態又は複合体化形態で、或いは本明細書に記載する医薬組成物又はワクチンとして、好ましくはトランスフェクションを介して、又は本明細書に記載する投与方法のいずれかを用いることによって、無細胞発現系、細胞(例えば、発現ホスト細胞又は体細胞)、組織、又は生物に適用又は投与される。前記使用は、インビトロ、インビボ、又はエキソビボで実施してよい。前記使用は、更に、好ましくは本明細書に定義する通り、特に癌又は腫瘍疾患の治療において、特定の疾患の治療に使用してよい。
【0133】
更に別の態様では、本発明は、また、本発明の第1の態様に係る本発明の核酸配列、又は発現ベクター、又はプラスミドを含む本発明の発現系に関する。これに関連して、前記発現系は、ペプチド又はタンパク質(例えば、植物又はウシ等の動物)の発現に用いられる無細胞発現系(例えば、インビトロ転写/翻訳系)、細胞発現系(例えば、CHO細胞等の哺乳類細胞、昆虫細胞、酵母細胞、大腸菌等の細菌細胞)、又は生物であってよい。
【0134】
更に、別の態様によれば、本発明は、また、好ましくはネイキッド形態又は複合体化形態で、或いは本明細書に記載する医薬組成物又はワクチンとして、より好ましくは本明細書に記載する投与方法のいずれかを用いて、本明細書に定義する本発明の核酸配列又は複数の本明細書に定義する本発明の核酸配列を含む本発明の組成物を細胞(例えば、発現ホスト細胞又は体細胞)、組織、又は生物に適用又は投与することによる、好ましくは本明細書に定義する通り(例えば、癌又は腫瘍疾患を治療するために)コードされているペプチド又はタンパク質の発現を増加させる医薬組成物を調製するための、本明細書に定義する本発明の核酸配列又は複数の本明細書に定義する本発明の核酸配列を含む本発明の組成物の使用に関する。
【0135】
したがって、特に好ましい態様では、本発明は、また、本明細書に定義する本発明の核酸又は複数の本明細書に定義する本発明の核酸配列を含む本発明の組成物と、任意で薬学的に許容できる担体及び/又はビヒクルとを含む医薬組成物を提供する。
【0136】
第1の成分として、本発明の医薬組成物は、少なくとも1つの本明細書に定義する本発明の核酸を含む。
【0137】
第2の成分として、本発明の医薬組成物は、任意で、少なくとも1つの更なる医薬活性成分を含んでよい。これに関連して医薬活性成分とは、本明細書で言及する特定の適応症又は疾患、好ましくは癌又は腫瘍疾患を治癒させる、寛解させる、又は予防する治療効果を有する化合物である。前記化合物としては、限定するものではないが、(好ましくは本明細書に定義する)ペプチド又はタンパク質、(好ましくは本明細書に定義する)核酸、(治療的に活性のある)低分子量の有機化合物又は無機化合物(分子量:5,000未満、好ましくは1,000未満)、糖類、(好ましくは本明細書に定義する)抗原又は抗体、関連技術において既に知られている治療剤、抗原細胞、抗原細胞断片、細胞画分、細胞壁成分(例えば、多糖類)、(例えば、化学的に又は放射線照射により)改変、弱毒化、又は不活化された病原体(ウイルス、細菌等)、(好ましくは本明細書に定義する)アジュバント等が挙げられる。
【0138】
更に、本発明の医薬組成物は、薬学的に許容できる担体及び/又はビヒクルを含んでいてよい。本発明では、前記薬学的に許容できる担体は、典型的に、本発明の医薬組成物の液体又は非液体の基剤を含む。本発明の医薬組成物が液体形態で提供される場合、前記担体は、典型的に、パイロジェンフリー水;等張生理食塩水又は緩衝(水)溶液、例えば、リン酸、クエン酸等の緩衝溶液である。注射用バッファは、特定のレファレンス媒体に対して高張、等張、又は低張であってよい。即ち、前記バッファは、特定のレファレンス媒体に対してより高い、同一の、又はより低い塩含量を有してよく、ここで、好ましくは、浸透圧又は他の濃度効果により細胞を損傷させない濃度の前述の塩を用いてよい。前記レファレンス媒体は、例えば、血液、リンパ液、サイトゾル液、又は他の体液等の「インビボ」法で用いられる液体、或いは一般的なバッファ若しくは液体等の「インビトロ」法でレファレンス媒体として用いることができる液体である。かかる一般的なバッファ又は液体は、当業者に公知である。乳酸リンゲル液が、液体基剤として特に好ましい。
【0139】
しかし、本発明の医薬組成物のために、治療を受ける患者に投与するのに適している1以上の相溶性の固体又は液体の充填剤又は希釈剤、或いは封入化合物を同様に用いてもよい。用語「相溶性」とは、本明細書で使用するとき、典型的な使用条件下で本発明の医薬組成物の薬学的有効性を実質的に低減させる相互作用が生じないように、本発明医薬組成物のこれら成分と本明細書に定義する本発明の核酸とを混合できることを意味する。
【0140】
特定の実施形態によれば、本発明の医薬組成物は、アジュバントを含んでいてよい。これに関連して、アジュバントとは、自然免疫系の免疫応答、即ち、非特異的免疫応答を開始又は増加させるのに好適な任意の化合物として理解され得る。言い換えれば、投与されたとき、本発明の医薬組成物は、任意で含有されているアジュバントにより自然免疫応答を誘発することが好ましい。好ましくは、かかるアジュバントは、当業者に公知であり且つ本件に好適である、即ち、哺乳類における自然免疫応答の誘導を支持するアジュバント、例えば、上に定義したアジュバントタンパク質又は以下に定義するアジュバントから選択してよい。
【0141】
デポー剤及び送達に好適なアジュバントとして特に好ましいのは、ビヒクル、トランスフェクション剤、又は複合体化剤として本発明の核酸配列について上に定義したカチオン性又はポリカチオン性の化合物である。
【0142】
本発明の医薬組成物は、必要に応じてその免疫原性又は免疫刺激能を増大させるために、1以上の補助物質を更に含有してよい。これによって、本明細書に定義する本発明の核酸配列と任意で本発明の医薬組成物に含有され得る補助物質との相乗作用が得られることが好ましい。これに関連して、補助物質の様々な種類に応じて様々な機序が検討され得る。例えば、樹状細胞(DC)を成熟させる化合物(例えば、リポ多糖類、TNF−アルファ、又はCD40リガンド)は、好適な補助物質の第1のクラスを形成する。一般に、「危険シグナル」(LPS、GP96等)のように免疫系に影響を及ぼす任意の剤、或いは特異的に免疫応答を強化する及び/又は免疫応答に影響を及ぼすことができるGM−CFS等のサイトカインを補助物質として用いることができる。特に好ましい補助物質は、自然免疫応答を更に促進するモノカイン、リンホカイン、インターロイキン、又はケモカイン等のサイトカイン、例えば、IL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−12、IL−13、IL−14、IL−15、IL−16、IL−17、IL−18、IL−19、IL−20、IL−21、IL−22、IL−23、IL−24、IL−25、IL−26、IL−27、IL−28、IL−29、IL−30、IL−31、IL−32、IL−33、IFN−アルファ、IFN−ベータ、IFN−ガンマ、GM−CSF、G−CSF、M−CSF、LT−ベータ、又はTNF−アルファ、hGH等の成長因子である。
【0143】
本発明の医薬組成物に含まれ得る更なる添加剤は、例えば、Tween(登録商標)等の乳化剤;例えば、ラウリル硫酸ナトリウム等の湿潤剤;着色剤;風味付与剤;医薬担体;打錠剤;安定剤;酸化防止剤;保存剤である。
【0144】
また、本発明の医薬組成物は、ヒトToll様受容体TLR1、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、TLR10に対する(リガンドとしての)結合親和性に起因して、又はマウスToll様受容体TLR1、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、TLR10、TLR11、TLR12若しくはTLR13に対する(リガンドとしての)結合親和性に起因して免疫刺激性であることが知られている任意の更なる化合物を更に含有していてもよい。
【0145】
本発明の医薬組成物は、経口的に、非経口的に、吸入スプレーによって、局所的に、直腸内に、経鼻的に、口腔内に、膣内に、又は埋め込まれたレザーバを介して投与してよい。本明細書で使用するとき、非経口という用語は、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、滑液包内、基質内、鞘内、肝臓内、病変内、頭蓋内、経皮、皮内、肺内、腹腔内、手根内、動脈内、及び舌下への注射又は注入技術を含む。
【0146】
好ましくは、本発明の医薬組成物は、非経口注射によって投与してよく、より好ましくは、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、滑液包内、基質内、鞘内、肝臓内、病変内、頭蓋内、経皮、皮内、肺内、腹腔内、手根内、動脈内、及び舌下への注射又は注入技術を介して投与してよい。皮内及び筋肉内への注射が特に好ましい。本発明の医薬組成物の滅菌注射用形態は、水性又は油性の懸濁液であってよい。これら懸濁液は、好適な分散剤又は湿潤剤と懸濁化剤とを用いて当業者に公知の技術に従って製剤され得る。
【0147】
また、本明細書に定義する本発明の医薬組成物は、カプセル剤、錠剤、水性懸濁剤、又は液剤が挙げられるがこれらに限定されない任意の経口的に許容できる剤形で経口投与してよい。
【0148】
また、本発明の医薬組成物は、例えば、皮膚又は任意の他のアクセス可能な上皮組織の疾患を含む、局所塗布によって容易にアクセス可能な領域又は臓器が治療標的に含まれる場合は特に、局所投与してもよい。これら領域又は臓器のそれぞれについて、好適な局所製剤は容易に調製される。局所塗布については、本発明の医薬組成物を、1以上の担体に懸濁又は溶解している本明細書に定義する本発明の核酸を含有する好適な軟膏に製剤してよい。
【0149】
本発明の医薬組成物は、典型的に、「安全且つ有効な量」の本発明の医薬組成物の成分、特に、本明細書に定義する本発明の核酸を含む。本明細書で使用するとき、「安全且つ有効な量」とは、本明細書に定義する疾患又は疾病の好ましい変化を著しく誘導するのに十分である本明細書に定義する本発明の核酸配列の量を意味する。しかし、同時に、「安全且つ有効な量」は、重篤な副作用を避け、且つ利益とリスクとの間の道理に適った関係を可能にするのに十分な程度少ない量である。これらの限度は、典型的に、道理に適った医学的判断の範囲内で決定される。
【0150】
本発明の医薬組成物は、広く医薬組成物として又はワクチンとして、ヒトに、また獣医学的目的のために、好ましくはヒトの医学的目的のために用いてよい。
【0151】
別の特に好ましい態様によれば、本発明の医薬組成物(又は本明細書に定義する本発明の核酸配列若しくは複数の本明細書に定義する本発明の核酸配列を含む本発明の組成物)は、ワクチンとして提供又は使用してよい。典型的に、かかるワクチンは、医薬組成物について上に定義した通りである。更に、かかるワクチンは、典型的に、本明細書に定義する本発明の核酸配列、又は複数の本明細書に定義する本発明の核酸配列を含む本発明の組成物を含有する。
【0152】
また、本発明のワクチンは、本発明の医薬組成物について本明細書に定義した薬学的に許容できる担体、アジュバント、及び/又はビヒクルを含んでいてよい。特に本発明のワクチンに関連して、薬学的に許容できる担体の選択肢は、原則として、本発明のワクチンを投与する方法によって決定される。本発明のワクチンは、例えば、全身に又は局所に投与してよい。一般に、全身投与経路としては、例えば、経皮、経口、非経口経路(皮下、静脈内、筋肉内、関節内、皮内、及び腹腔内への注射、並びに/又は鼻内投与経路を含む)が挙げられる。一般に、局部投与経路としては、例えば、局所投与経路が挙げられ、皮内、経皮、皮下、若しくは筋肉内への注射、又は病変内、頭蓋内、肺内、手根内、及び舌下への注射も含まれる。より好ましくは、ワクチンは、経皮、皮下、又は筋肉内経路によって投与してよい。したがって、本発明のワクチンは、好ましくは、液体(又は時には固体)形態に製剤される。
【0153】
本発明のワクチンは、必要に応じてその免疫原性又は免疫刺激能を増大させるために、1以上の補助物質を更に含有していてもよい。医薬組成物について上に定義した補助物質又は添加剤としてのアジュバントが特に好ましい。
【0154】
本発明は、更に、本明細書に定義する本発明の核酸配列の、複数の本明細書に定義する本発明の核酸配列を含む本発明の組成物の、本発明の医薬組成物の、本発明のワクチンの(これらは全て、本明細書に定義する本発明の核酸配列を含む)、又はこれらを含むキットの幾つかの用途及び使用を提供する。
【0155】
1つの特定の態様によれば、本発明は、本明細書に定義する本発明の核酸配列の、複数の本明細書に定義する本発明の核酸配列を含む本発明の組成物の、特に癌又は腫瘍疾患の治療における医薬としての、好ましくはワクチンとしての第一医薬用途に関する。
【0156】
別の態様によれば、本発明は、本明細書に定義する癌又は腫瘍疾患の治療のための、本明細書に定義する本発明の核酸配列の、又は複数の本明細書に定義する本発明の核酸配列を含む本発明の組成物の第二医薬用途、好ましくは、本明細書に定義する癌又は腫瘍疾患を予防、治療、及び/又は寛解する医薬を調製するための、本明細書に定義する本発明の核酸配列の、複数の本明細書に定義する本発明の核酸配列を含む本発明の組成物の、これらを含む医薬組成物若しくはワクチンの、又はこれらを含むキットの使用に関する。好ましくは、前記医薬組成物又はワクチンは、この目的のためにそれを必要としている患者に用いられるか又は投与される。
【0157】
好ましくは、本明細書で言及する疾患は、癌又は腫瘍疾患から選択され、前記癌又は腫瘍疾患としては、例えば、好ましくは、以下が挙げられる:急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、副腎皮質癌腫、AIDS関連癌、AIDS関連リンパ腫、肛門癌、虫垂癌、星状細胞腫、基底細胞癌腫、総胆管癌、膀胱癌、骨癌、骨肉腫/悪性線維性組織球腫、脳幹神経膠腫、脳腫瘍、小脳星状細胞腫、大脳星状細胞腫/悪性神経膠腫、脳室上衣細胞腫、髄芽細胞腫、テント上方原始神経外胚葉性腫瘍、視路及び視床下部神経膠腫、乳癌、気管支腺腫/カルチノイド、バーキットリンパ腫、若年性カルチノイド、消化管カルチノイド、原発不明癌腫、原発性中枢神経系リンパ腫、若年性小脳星状膠細胞腫、若年性大脳星状膠細胞腫/悪性神経膠腫、子宮頸癌、小児癌、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性骨髄増殖性疾患、結腸癌、皮膚T細胞リンパ腫、線維形成性小円形細胞腫瘍、子宮内膜癌、脳室上衣細胞腫、食道癌、ユーイング腫瘍におけるユーイング肉腫、若年性頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、肝臓外胆管癌、眼内黒色腫、網膜芽細胞腫、胆嚢癌、胃癌、消化管カルチノイド、消化管間質腫瘍(GIST)、頭蓋外、性腺外、又は卵巣胚細胞腫瘍、妊娠性絨毛腫瘍、脳幹の神経膠腫、若年性大脳星状細胞腫、若年性視路及び視床下部神経膠腫、胃カルチノイド、ヘアリーセル白血病、頭頚部癌、心臓癌、肝細胞(肝臓)癌、ホジキンリンパ腫、下咽頭癌、若年性視床下部及び視路神経膠腫、眼内黒色腫、膵島細胞癌(膵臓内分泌腺)、カポージ肉腫、腎臓癌(腎細胞癌)、咽頭癌、白血病、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、ヘアリーセル白血病、口唇及び口腔癌、脂肪肉腫、肝臓癌、非小細胞性肺癌、小細胞性肺癌、リンパ腫、AIDS関連リンパ腫、バーキットリンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、原発性中枢神経系リンパ腫、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、骨の悪性線維性組織球腫/骨肉腫、若年性髄芽細胞腫、黒色腫、眼内(眼)黒色腫、メルケル細胞癌腫、成人悪性中皮腫、若年性中皮腫、潜在性原発性転移性扁平上皮頸癌、口腔癌、若年性多発性内分泌腫瘍症候群、多発性骨髄腫/形質細胞腫瘍、菌状息肉腫、骨髄異形成症候群、骨髄異形成/骨髄増殖性疾患、慢性骨髄性白血病、成人急性骨髄性白血病、若年性急性骨髄性白血病、多発性骨髄腫(骨髄の癌)、慢性骨髄増殖性疾患、鼻腔及び副鼻腔癌、鼻咽頭癌腫、神経芽細胞腫、口腔癌、口腔咽頭癌、骨肉腫/骨の悪性線維性組織球腫、卵巣癌、上皮性卵巣癌(表面上皮間質腫瘍)、卵巣胚細胞腫瘍、卵巣低悪性度腫瘍、膵臓癌、膵島細胞癌、副鼻腔及び鼻腔癌、副甲状腺癌、陰茎癌、咽頭癌、褐色細胞腫、松果体星状細胞腫、松果体胚腫、若年性松果体芽細胞腫及びテント上方原始神経外胚葉性腫瘍、下垂体腺腫、形質細胞腫瘍/多発性骨髄腫、胸膜肺芽腫、原発性中枢神経系リンパ腫、前立腺癌、直腸癌、腎細胞癌腫(腎臓癌)、尿管の癌、網膜芽細胞腫、若年性横紋筋肉腫、唾液腺癌、ユーイング腫瘍の肉腫、カポージ肉腫、軟部組織肉腫、子宮肉腫、セザリー症候群、皮膚癌(非黒色腫)、皮膚癌(黒色腫)、メルケル細胞皮膚癌腫、小腸癌、扁平上皮癌、潜在性原発性転移性扁平上皮頸癌、若年性テント上方原始神経外胚葉性腫瘍、精巣癌、咽喉癌、若年性胸腺腫、胸腺腫及び胸腺癌、甲状腺癌、若年性甲状腺癌、尿管の移行上皮癌、妊娠性絨毛腫瘍、尿道癌、子宮内膜子宮癌、子宮肉腫、膣癌、若年性視路及び視床下部神経膠腫、外陰癌、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、及び若年性ウィルムス腫瘍(腎臓癌)。
【0158】
更なる好ましい態様では、本明細書に定義する本発明の核酸配列、又は複数の本明細書に定義する本発明の核酸配列を含む本発明の組成物は、医薬組成物又はワクチンを調製するため、特に本明細書に定義する目的のために用いてよい。
【0159】
本発明の医薬組成物又はワクチンは、更に、疾患又は疾病、好ましくは本明細書に定義する癌又は腫瘍疾患の治療のために用いてよい。
【0160】
また、最後の態様によれば、本発明は、キット、特にキットのパーツを提供する。かかるキット、特にキットのパーツは、典型的に、単独で又は本明細書に定義する更なる構成要素と組み合わせて、少なくとも1つの本明細書に定義する本発明の核酸配列、本発明の核酸配列を含む本発明の医薬組成物又はワクチンを構成要素として含む。少なくとも1つの本明細書に定義する本発明の核酸配列は、任意で本明細書に定義する更なる構成要素と組み合わせられ、前記少なくとも1つの本発明の核酸は、1以上の他の構成要素を含むキットの少なくとも1つの他のパーツとは別々に(キットの第1のパーツ)提供される。本発明の医薬組成物及び/又は本発明のワクチンは、例えば、キットの1つのパーツ、又は異なるパーツに存在してよい。一例として、例えば、キットの少なくとも1つのパーツは、少なくとも1つの本明細書に定義する本発明の核酸配列と、キットの少なくとも1つの更なるパーツ(本明細書に定義する少なくとも1つの他の構成要素)とを含んでよい。例えば、キットの少なくとも1つの他のパーツは、少なくとも1つの医薬組成物若しくはワクチン、又はこれらの一部を含んでいてよい。例えば、キットの少なくとも1つのパーツは、本明細書に定義する本発明の核酸配列と、キットの少なくとも1つの更なるパーツ(本明細書に定義する少なくとも1つの他の構成要素)と、キットの少なくとも1つの更なるパーツ(本発明の医薬組成物若しくはワクチンの少なくとも1つの構成要素、又は全体としての本発明の医薬組成物若しくはワクチン)と、キットの少なくとも1つの更なるパーツ(例えば、少なくとも1つの医薬担体又はビヒクル)とを含んでいてよい。キット又はキットのパーツが複数の本発明の核酸配列を含む場合、キットの1つの構成要素は、キットに含まれる本発明の核酸配列を1つだけ、幾つか、又は全て含んでいてよい。別の実施形態では、各構成要素がキットのパーツを形成するように、キットの異なる/別々の構成要素に各/全ての本発明の核酸配列が含まれていてよい。また、キットのパーツとして1超の核酸が第1の構成要素に含まれていてよく、一方、(キットの1以上の他のパーツを提供する)1以上の他の(第2の、第3の等)構成要素が、1つ又は1超の本発明の核酸を含有していてもよく、前記核酸は、第1の構成要素と同一であっても、部分的に同一であっても、異なっていてもよい。キット又はキットのパーツは、本発明の核酸配列、本発明の医薬組成物、又は本発明のワクチンの、或いはキットがキットのパーツとして調製される場合はその構成要素又はパーツのいずれかの投与及び投与量に関する情報が記載された技術指示書を更に含んでいてよい。
【0161】
まとめると、本発明は、
a)少なくとも1つのペプチド又はタンパク質をコードしているコード領域と、
b)少なくとも1つのヒストンステムループと、
c)ポリ(A)配列又はポリアデニル化シグナルと
を含むか又はコードしている核酸配列であって、
前記ペプチド又はタンパク質が、腫瘍抗原、前記腫瘍抗原の断片、変異体、又は誘導体を含み、好ましくは、前記腫瘍抗原が、メラニン形成細胞特異的抗原、癌−精巣抗原、又は腫瘍特異的抗原であり、好ましくは、CT−X抗原、非X CT抗原、CT−X抗原の結合パートナー、非X CT抗原の結合パートナー、又は腫瘍特異的抗原であり、より好ましくは、CT−X抗原、非X CT抗原の結合パートナー、腫瘍特異的抗原、又は前記腫瘍抗原の断片、変異体、若しくは誘導体である核酸配列を提供する。
【0162】
更に好ましい実施形態では、本発明は、
a)少なくとも1つのペプチド又はタンパク質をコードしているコード領域と、
b)少なくとも1つのヒストンステムループと、
c)ポリ(A)配列又はポリアデニル化シグナルと
を含むか又はコードしている少なくとも1種の核酸配列を含む組成物であって、
前記ペプチド又はタンパク質が、腫瘍抗原、前記腫瘍抗原の断片、変異体、又は誘導体を含み、好ましくは、前記腫瘍抗原が、メラニン形成細胞特異的抗原、癌−精巣抗原、又は腫瘍特異的抗原であり、好ましくは、CT−X抗原、非X CT抗原、CT−X抗原の結合パートナー、非X CT抗原の結合パートナー、又は腫瘍特異的抗原であり、より好ましくは、CT−X抗原、非X CT抗原の結合パートナー、腫瘍特異的抗原、又は前記腫瘍抗原の断片、変異体、若しくは誘導体であり、前記核酸配列が、それぞれ、異なるペプチド又はタンパク質をコードしている組成物に関する。
【0163】
前記組成物は、本明細書に定義する薬学的に許容できる担体及び/又は薬学的に許容できるアジュバントを更に含んでいてもよい。前記組成物は、ワクチンとして、又は癌若しくは腫瘍に関連する疾患を治療するために使用してよい。
【0164】
更に好ましい実施形態では、本発明は、
a)少なくとも1つのペプチド又はタンパク質をコードしているコード領域と、
b)少なくとも1つのヒストンステムループと、
c)ポリ(A)配列又はポリアデニル化シグナルと
を含むか又はコードしている少なくとも2つ、好ましくは2以上、より好ましくは複数の(これは、典型的に1個超、2個超、3個超、4個超、5個超、6個超、又は10個超の核酸、例えば、2個〜10個、好ましくは2個〜5個の核酸を意味する)核酸配列を含む組成物であって、
前記ペプチド又はタンパク質が、腫瘍抗原、前記腫瘍抗原の断片、変異体、又は誘導体を含み、好ましくは、前記腫瘍抗原が、メラニン形成細胞特異的抗原、癌−精巣抗原、又は腫瘍特異的抗原であり、好ましくは、CT−X抗原、非X CT抗原、CT−X抗原の結合パートナー、非X CT抗原の結合パートナー、又は腫瘍特異的抗原であり、より好ましくは、CT−X抗原、非X CT抗原の結合パートナー、腫瘍特異的抗原、又は前記腫瘍抗原の断片、変異体、若しくは誘導体であり、前記核酸配列が、それぞれ、異なるペプチド又はタンパク質をコードしている組成物を提供する。
【0165】
前記組成物は、本明細書に定義する薬学的に許容できる担体及び/又は薬学的に許容できるアジュバントを更に含んでいてもよい。前記組成物は、ワクチンとして、又は癌若しくは腫瘍に関連する疾患を治療するために使用してよい。
【0166】
更に好ましい実施形態では、本発明は、
a)少なくとも1つのペプチド又はタンパク質をコードしているコード領域と、
b)少なくとも1つのヒストンステムループと、
c)ポリ(A)配列又はポリアデニル化シグナルと
を含むか又はコードしている少なくとも2つ、好ましくは2以上、より好ましくは複数の(これは、典型的に1個超、2個超、3個超、4個超、5個超、6個超、又は10個超の核酸、例えば、2個〜10個、好ましくは2個〜5個の核酸を意味する)核酸配列を含む組成物であって、
前記ペプチド又はタンパク質が、腫瘍抗原、前記腫瘍抗原の断片、変異体、又は誘導体を含み、好ましくは、前記腫瘍抗原が、メラニン形成細胞特異的抗原、癌−精巣抗原、又は腫瘍特異的抗原であり、好ましくは、CT−X抗原、非X CT抗原、CT−X抗原の結合パートナー、非X CT抗原の結合パートナー、又は腫瘍特異的抗原であり、より好ましくは、CT−X抗原、非X CT抗原の結合パートナー、腫瘍特異的抗原、又は前記腫瘍抗原の断片、変異体、若しくは誘導体であり、前記核酸配列が、それぞれ、異なるペプチド又はタンパク質をコードし、好ましくは、前記核酸配列の各種が、異なるペプチド又はタンパク質、好ましくは異なる腫瘍抗原をコードしている組成物を提供する。
【0167】
前記組成物は、本明細書に定義する薬学的に許容できる担体及び/又は薬学的に許容できるアジュバントを更に含んでいてもよい。前記組成物は、ワクチンとして、又は癌若しくは腫瘍に関連する疾患を治療するために使用してよい。
【0168】
更に好ましい実施形態では、本発明は、
a)少なくとも1つのペプチド又はタンパク質をコードしているコード領域と、
b)少なくとも1つのヒストンステムループと、
c)ポリ(A)配列又はポリアデニル化シグナルと
を含むか又はコードしている少なくとも2つ、好ましくは2以上、より好ましくは複数の(これは、典型的に1個超、2個超、3個超、4個超、5個超、6個超、又は10個超の核酸、例えば、2個〜10個、好ましくは2個〜5個の核酸を意味する)核酸配列を含む組成物であって、
前記ペプチド又はタンパク質が、腫瘍抗原、前記腫瘍抗原の断片、変異体、又は誘導体を含み、好ましくは、前記腫瘍抗原が、メラニン形成細胞特異的抗原、癌−精巣抗原、又は腫瘍特異的抗原であり、好ましくは、CT−X抗原、非X CT抗原、CT−X抗原の結合パートナー、非X CT抗原の結合パートナー、又は腫瘍特異的抗原であり、より好ましくは、CT−X抗原、非X CT抗原の結合パートナー、腫瘍特異的抗原、又は前記腫瘍抗原の断片、変異体、若しくは誘導体であり、前記核酸配列が、それぞれ、異なるペプチド又はタンパク質をコードし、好ましくは、前記核酸配列の各種が、異なるペプチド又はタンパク質、好ましくは異なる腫瘍抗原をコードし、より好ましくは、含有されている前記核酸配列のうちの1種が、PSA、PSMA、PSCA、STEAP−1、NY−ESO−1、5T4、サバイビン、MAGE−C1、又はMAGE−C2をコードしている組成物を提供する。
【0169】
前記組成物は、本明細書に定義する薬学的に許容できる担体及び/又は薬学的に許容できるアジュバントを更に含んでいてもよい。前記組成物は、ワクチンとして、又は癌若しくは腫瘍に関連する疾患を治療するために使用してよい。
【0170】
幾つかの実施形態では、前記組成物が核酸配列を1種しか含有していない場合に限り、前記核酸配列がNY−ESO1をコードしていないことが好ましい場合がある。
【0171】
更に好ましい実施形態では、本発明は、
a)少なくとも1つのペプチド又はタンパク質をコードしているコード領域と、
b)少なくとも1つのヒストンステムループと、
c)ポリ(A)配列又はポリアデニル化シグナルと
を含むか又はコードしている少なくとも2つの核酸配列を含む組成物であって、
前記ペプチド又はタンパク質が、腫瘍抗原、前記腫瘍抗原の断片、変異体、又は誘導体を含み、好ましくは、前記腫瘍抗原が、メラニン形成細胞特異的抗原、癌−精巣抗原、又は腫瘍特異的抗原であり、好ましくは、CT−X抗原、非X CT抗原、CT−X抗原の結合パートナー、非X CT抗原の結合パートナー、又は腫瘍特異的抗原であり、より好ましくは、CT−X抗原、非X CT抗原の結合パートナー、腫瘍特異的抗原、又は前記腫瘍抗原の断片、変異体、若しくは誘導体であり、前記核酸配列が、それぞれ、異なるペプチド又はタンパク質をコードし、前記核酸配列のうちの少なくとも1つが、5T4、707−AP、9D7、AFP、AlbZIP HPG1、アルファ−5−ベータ−1−インテグリン、アルファ−5−ベータ−6−インテグリン、アルファ−アクチニン−4/m、アルファ−メチルアシル補酵素Aラセマーゼ、ART−4、ARTC1/m、B7H4、BAGE−1、BCL−2、bcr/abl、ベータ−カテニン/m、BING−4、BRCA1/m、BRCA2/m、CA15−3/CA27−29、CA19−9、CA72−4、CA125、カルレチクリン、CAMEL、CASP−8/m、カテプシンB、カテプシンL、CD19、CD20、CD22、CD25、CDE30、CD33、CD4、CD52、CD55、CD56、CD80、CDC27/m、CDK4/m、CDKN2A/m、CEA、CLCA2、CML28、CML66、COA−1/m、コアクトシン様タンパク質、コラーゲンXXIII型、COX−2、CT−9/BRD6、Cten、サイクリンB1、サイクリンD1、cyp−B、CYPB1、DAM−10、DAM−6、DEK−CAN、EFTUD2/m、EGFR、ELF2/m、EMMPRIN、EpCam、EphA2、EphA3、ErbB3、ETV6−AML1、EZH2、FGF−5、FN、Frau−1、G250、GAGE−1、GAGE−2、GAGE−3、GAGE−4、GAGE−5、GAGE−6、GAGE7b、GAGE−8、GDEP、GnT−V、gp100、GPC3、GPNMB/m、HAGE、HAST−2、ヘプシン、Her2/neu、HERV−K−MEL、HLA−A
*0201−R17I、HLA−A11/m、HLA−A2/m、HNE、ホメオボックスNKX3.1、HOM−TES−14/SCP−1、HOM−TES−85、HPV−E6、HPV−E7、HSP70−2M、HST−2、hTERT、iCE、IGF−1R、IL−13Ra2、IL−2R、IL−5、未成熟ラミニン受容体、カリクレイン2、カリクレイン4、Ki67、KIAA0205、KIAA0205/m、KK−LC−1、K−Ras/m、LAGE−A1、LDLR−FUT、MAGE−A1、MAGE−A2、MAGE−A3、MAGE−A4、MAGE−A6、MAGE−A9、MAGE−A10、MAGE−A12、MAGE−B1、MAGE−B2、MAGE−B3、MAGE−B4、MAGE−B5、MAGE−B6、MAGE−B10、MAGE−B16、MAGE−B17、MAGE−C1、MAGE−C2、MAGE−C3、MAGE−D1、MAGE−D2、MAGE−D4、MAGE−E1、MAGE−E2、MAGE−F1、MAGE−H1、MAGEL2、マンマグロビンA、MART−1/melan−A、MART−2、MART−2/m、基質タンパク質22、MC1R、M−CSF、ME1/m、メソテリン、MG50/PXDN、MMP11、MN/CA IX抗原、MRP−3、MUC−1、MUC−2、MUM−1/m、MUM−2/m、MUM−3/m、ミオシンクラスI/m、NA88−A、N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ−V、Neo−PAP、Neo−PAP/m、NFYC/m、NGEP、NMP22、NPM/ALK、N−Ras/m、NSE、NY−ESO−B、OA1、OFA−iLRP、OGT、OGT/m、OS−9、OS−9/m、オステオカルシン、オステオポンチン、p15、p190 マイナーbcr−abl、p53、p53/m、PAGE−4、PAI−1、PAI−2、PAP、PART−1、PATE、PDEF、Pim−1キナーゼ、Pin−1、Pml/PARアルファ、POTE、PRAME、PRDX5/m、プロステイン、プロテイナーゼ3、PSA、PSCA、PSGR、PSM、PSMA、PTPRK/m、RAGE−1、RBAF600/m、RHAMM/CD168、RU1、RU2、S−100、SAGE、SART−1、SART−2、SART−3、SCC、SIRT2/m、Sp17、SSX−1、SSX−2/HOM−MEL−40、SSX−4、STAMP−1、STEAP−1、サバイビン、サバイビン−2B、SYT−SSX−1、SYT−SSX−2、TA−90、TAG−72、TARP、TEL−AML1、TGFベータ、TGFベータRII、TGM−4、TPI/m、TRAG−3、TRG、TRP−1、TRP−2/6b、TRP/INT2、TRP−p8、チロシナーゼ、UPA、VEGFR1、VEGFR−2/FLK−1、WT1、及びリンパ血球の免疫グロブリンイディオタイプ若しくはリンパ血球のT細胞受容体イディオタイプ、又は前記腫瘍抗原の断片、変異体、若しくは誘導体、好ましくは、サバイビン若しくはそのホモログ、MAGEファミリー由来の抗原若しくはその結合パートナー、又は前記腫瘍抗原の断片、変異体、若しくは誘導体をコードしている組成物を提供する。
【0172】
前記組成物は、本明細書に定義する薬学的に許容できる担体及び/又は薬学的に許容できるアジュバントを更に含んでいてもよい。前記組成物は、ワクチンとして、又は癌若しくは腫瘍に関連する疾患を治療するために使用してよい。
【0173】
本発明では、特に指示しない場合、異なる特徴の代替物及び実施形態を互いに組み合わせてもよい。更に、用語「含む」は、特に明記しない場合、「からなる」を意味すると解釈しないものとする。しかし、本発明では、用語「含む」は、該当する場合、用語「からなる」で置換してもよい。
【実施例】
【0174】
以下の実施例は、本発明を更に例示することを意図し、本発明がそれに限定されると解釈するものではない。
【0175】
1. ヒストンステムループコンセンサス配列の作製
実験前に、後生動物及び原生動物のヒストンステムループ配列に基づいてヒストンステムループコンセンサス配列を決定した。ゲノム配列及び発現配列タグを探索することによって多数の天然ヒストンステムループ配列を同定したLopezら(Davila Lopez,M.,&Samuelsson,T.(2008),RNA(New York,N.Y.),14(1),1−10.doi:10.1261/rna.782308)によって提供された補遺から配列を取り出した。先ず、後生動物及び原生動物由来の全配列(4,001配列)又は原生動物由来の全配列(131配列)、又は後生動物由来の全配列(3,870配列)、又は脊椎動物由来の全配列(1,333配列)、又はヒト由来の全配列(84配列)をグループ分けし、アラインメントした。次いで、全ての位置について、存在するヌクレオチドの数を決定した。このようにして得られた表に基づいて、解析した全配列中に存在するヌクレオチドを表す、5つの異なるグループの配列についてのコンセンサス配列を作製した。更に、保存されているヌクレオチドを段階的に強調するために、より限定的なコンセンサス配列を得た。
【0176】
2. DNAテンプレートの調製
T7プロモーターに続いて、キタアメリカホタルルシフェラーゼ(ppLuc(GC))をコードしているGCリッチ配列、アルファグロビンの3’非翻訳領域(UTR)の中心部分(ag)、及びポリ(A)配列を含むインビトロ転写用ベクターを構築した。A64ポリ(A)配列で終端するmRNAを得るために、インビトロ転写前にベクターを直鎖状にするために用いられる制限酵素部位をポリ(A)配列の直後に配置した。したがって、インビトロ転写によってこのベクターから得られたmRNAを「ppLuc(GC)−ag−A64」と命名した。
【0177】
インビトロ転写前に別の制限酵素部位においてこのベクターを直鎖状にすることによって、A64の3’が更なるヌクレオチドによって伸長しているmRNA又はA64の欠損しているmRNAを得ることができた。更に、別の配列を含むようにオリジナルベクターを改変した。要約すると、インビトロ転写によってこれらベクターから以下のmRNAを得た(mRNA配列は、
図6〜17に示す)。
ppLuc(GC)−ag (配列番号43)
ppLuc(GC)−ag−A64 (配列番号44)
ppLuc(GC)−ag−ヒストンSL (配列番号45)
ppLuc(GC)−ag−A64−ヒストンSL (配列番号46)
ppLuc(GC)−ag−A120 (配列番号47)
ppLuc(GC)−ag−A64−ag (配列番号48)
ppLuc(GC)−ag−A64−aCPSL (配列番号49)
ppLuc(GC)−ag−A64−ポリオCL (配列番号50)
ppLuc(GC)−ag−A64−G30 (配列番号51)
ppLuc(GC)−ag−A64−U30 (配列番号52)
ppLuc(GC)−ag−A64−SL (配列番号53)
ppLuc(GC)−ag−A64−N32 (配列番号54)
【0178】
更に、腫瘍抗原NY−ESO−1、サバイビン、及びMAGE−C1をコードしているDNAプラスミド配列を上記の通り調製した。
要約すると、インビトロ転写によってこれらベクターから以下のmRNAを得た(mRNA配列は、
図18〜21に示す)。
NY−ESO−1(GC)−ag−A62−C30 (配列番号55)
NY−ESO−1(GC)−ag−A62−C30−ヒストンSL
(配列番号56)
サバイビン(GC)−ag−A62−C30−ヒストンSL (配列番号57)
MAGE−C1(GC)−ag−A64−C30−ヒストンSL
(配列番号58)
【0179】
3. インビトロ転写
実施例2に係るDNAテンプレートを直鎖状にし、T7−ポリメラーゼを用いてインビトロで転写させた。次いで、DNAテンプレートをDNase処理によって分解した。過剰のN7−メチル−グアノシン−5’−トリホスフェートー5’−グアノシンを転写反応物に添加することによって、5’−CAP構造を含む全mRNA転写産物を得た。このようにして得られたmRNAを精製し、水に再懸濁させた。
【0180】
4. mRNAの酵素的アデニル化
2つのmRNAを酵素でアデニル化した:
ppLuc(GC)−ag−A64及びppLuc(GC)−ag−ヒストンSL。
このために、製造業者の指示書に従って、大腸菌ポリ(A)−ポリメラーゼ及びATP(ポリ(A)ポリメラーゼテーリングキット、Epicentre,Madison,USA)と共にRNAをインキュベートした。伸長したポリ(A)配列を含むmRNAを精製し、水に再懸濁させた。アガロースゲル電気泳動を介してポリ(A)配列の長さを決定した。出発mRNAを約250アデニレート伸長させ、得られたmRNAを、それぞれ、ppLuc(GC)−ag−A300及びppLuc(GC)−ag−ヒストンSL−A250と命名した。
【0181】
5. mRNAエレクトロポレーションによるルシフェラーゼ発現
HeLa細胞をトリプシン処理し、opti−MEMで洗浄した。opti−MEM200μL中1×10
5個の細胞に、それぞれ、ppLucをコードしているmRNA0.5μgをエレクトロポレーションした。コントロールとして、ppLucをコードしていないmRNAを別個にエレクトロポレーションした。エレクトロポレーションされた細胞を24ウェルプレート中のRPMI1640培地1mLに播種した。トランスフェクションの6時間後、24時間後、又は48時間後に、培地を吸引し、リシスバッファ200μL(25mM Tris、pH7.5(HCl)、2mM EDTA、10% グリセロール、1% Triton X−100、2mM DTT、1mM PMSF)に細胞を溶解させた。ppLuc活性を測定するまで溶解物を−20℃で保存した。
【0182】
6. mRNAリポフェクションによるルシフェラーゼ発現
1ウェル当たり2×10
4個の細胞という密度になるようにHeLa細胞を96ウェルプレートに播種した。次の日、細胞をopti−MEMで洗浄し、次いで、opti−MEM150μL中リポフェクチン複合体化ppLucコードmRNA0.25μgをトランスフェクトした。コントロールとして、ppLucをコードしていないmRNAを別個にリポフェクトした。幾つかのウェルにおいて、トランスフェクション開始の6時間後に、opti−MEMを吸引し、リシスバッファ200μLに細胞を溶解させた。残りのウェルでは、そのとき、opti−MEMをPTMI1640培地に交換した。これらウェルでは、トランスフェクション開始の24時間後又は48時間後に、培地を吸引し、リシスバッファ200μLに細胞を溶解させた。ppLuc活性を測定するまで溶解物を−20℃で保存した。
【0183】
7. ルシフェラーゼ測定
溶解物50μL及びルシフェリンバッファ200μL(25mM グリシルグリシン、pH7.8(NaOH)、15mM MgSO
4、2mM ATP、75μM ルシフェリン)を用いて、5秒間の測定時間でBioTek SynergyHTプレートリーダーによって相対光単位(RLU)としてppLuc活性を測定した。合計RLUからコントロールRNAのRLUを減じることによって、比RLUを計算した。
【0184】
8. 経皮mRNA注射によるルシフェラーゼ発現(インビボにおけるルシフェラーゼ発現)
RompunとKetavetとの混合物を用いてマウスに麻酔をかけた。ppLucをコードしているmRNAをそれぞれ経皮注射した(注射1回当たり50μL中mRNA0.5μg)。コントロールとして、ppLucをコードしていないmRNAを別個に注射した。注射の16時間後、マウスを屠殺し、組織を回収した。組織サンプルを液体窒素で急速冷凍し、リシスバッファ800μL(25mM Tris、pH7.5(HCl)、2mM EDTA、10%グリセロール、1% Triton X−100、2mM DTT、1mM PMSF)中の組織溶解液(Qiagen)に溶解させた。次いで、4℃で10分間13,500rpmにてサンプルを遠心分離した。ppLuc活性を測定するまで溶解物を−80℃で保存した(7.ルシフェラーゼ発現を参照)。
【0185】
9. mRNAのエレクトロポレーションによるNY−ESO−1発現
HeLa細胞をトリプシン処理し、opti−MEMで洗浄した。opti−MEM200μL中2×10
5個の細胞に、NY−ESO−1をコードしているmRNA10μgをエレクトロポレーションした。3回のエレクトロポレーションから得られた細胞を合わせ、6ウェルプレート中のRPMI1640培地2mLに播種した。トランスフェクションの24時間後に、細胞を収集し、96ウェルV底プレートに移した(mRNA当たり2ウェル)。前記細胞をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄し、1ウェル当たり200μLのCytofix/Cytoperm(Becton Dickinson(BD))で透過処理した。15分間後、前記細胞をPermWash(BD)で洗浄した。次いで、マウス抗NY−ESO−1 IgG1又はアイソタイプコントロール(20μg/mL)と共に室温で1時間前記細胞をインキュベートした。前記細胞をPermWashで再度2回洗浄した。次に、Alexa−647結合ヤギ抗マウスIgGの1:500希釈物と共に4℃で1時間前記細胞をインキュベートした。最後に、前記細胞をPermWashで2回洗浄した。前記細胞をバッファ(PBS、2%FCS、2mM EDTA、0.01%アジ化ナトリウム)200μLに再懸濁させた。中央蛍光強度(MFI)としてフローサイトメトリーによって、NY−ESO−1発現を定量した。
【0186】
10. mRNAのワクチン接種による抗NY−ESO−1抗体の誘導
プロタミンと複合体化しているNY−ESO−1をコードしているmRNAをC57BL/6マウスに経皮的にワクチン接種した(14日間以内に5回)。コントロールマウスをバッファで処理した。ELISAによって最後のワクチン接種の8日間後に、ワクチン接種マウス及びコントロールマウスにおけるNY−ESO−1特異的抗体のレベルを分析した。96ウェルELISAプレート(Nunc)を、4℃で16時間、1ウェル当たり100μLの組み換えNY−ESO−1タンパク質10μg/mLでコーティングした。前記プレートを洗浄バッファ(PBS、0.05% Tween−20)で2回洗浄した。次いで、非特異的結合をブロックするために、ブロッキングバッファ(PBS、0.05% Tween−20、1% BSA)と共に37℃で2時間、前記プレートをインキュベートした。ブロッキング後、1ウェル当たり100μLの連続希釈マウス血清を添加し、室温で4時間インキュベートした。次いで、前記プレートを洗浄バッファで3回洗浄した。次に、ブロッキングバッファで1:600希釈したビオチン化ラット抗マウスIgG2a[b]検出抗体(BD Biosciences)(1ウェル当たり100μL)を室温で1時間結合させた。前記プレートを、洗浄バッファで再度3回洗浄し、次いで、1ウェル当たり100μLのセイヨウワサビペルオキシダーゼ結合ストレプトアビジンと共に室温で30分間インキュベートした。洗浄バッファで4回洗浄した後、1ウェル当たり100μLの3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(Thermo Scientific)を添加した。色が変化したら、1ウェル当たり100μLの20%硫酸を添加した。405nmで吸光度を測定した。
【0187】
11. mRNAのワクチン接種による抗サバイビン抗体の誘導
プロタミンと複合体化しているサバイビンをコードしているmRNAをC57BL/6マウスに経皮的にワクチン接種した(14日間以内に5回)。コントロールマウスをバッファで処理した。ELISAによって最後のワクチン接種の8日間後に、ワクチン接種マウス及びコントロールマウスにおけるサバイビン特異的抗体のレベルを分析した。96ウェルELISAプレート(Nunc)を、4℃で16時間、1ウェル当たり100μLの組み換えサバイビンタンパク質10μg/mLでコーティングした。前記プレートを洗浄バッファ(PBS、0.05% Tween−20)で2回洗浄した。次いで、非特異的結合をブロックするために、ブロッキングバッファ(PBS、0.05% Tween−20、1% BSA)と共に37℃で2時間、前記プレートをインキュベートした。ブロッキング後、1ウェル当たり100μLの連続希釈マウス血清を添加し、室温で4時間インキュベートした。次いで、前記プレートを洗浄バッファで3回洗浄した。次に、ブロッキングバッファで1:600希釈したビオチン化ラット抗マウスIgG2a[b]検出抗体(BD Biosciences)(1ウェル当たり100μL)を室温で1時間結合させた。前記プレートを、洗浄バッファで再度3回洗浄し、次いで、1ウェル当たり100μLのセイヨウワサビペルオキシダーゼ結合ストレプトアビジンと共に室温で30分間インキュベートした。洗浄バッファで4回洗浄した後、1ウェル当たり100μLの3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(Thermo Scientific)を添加した。色が変化したら、1ウェル当たり100μLの20%硫酸を添加した。405nmで吸光度を測定した。
【0188】
12. mRNAのワクチン接種による抗MAGE−C1抗体の誘導
プロタミンと複合体化しているMAGE−C1をコードしているmRNAをC57BL/6マウスに経皮的にワクチン接種した(14日間以内に5回)。コントロールマウスをバッファで処理した。ELISAによって最後のワクチン接種の8日間後に、ワクチン接種マウス及びコントロールマウスにおけるMAGE−C1特異的抗体のレベルを分析した。96ウェルELISAプレート(Nunc)を、4℃で16時間、1ウェル当たり100μLの組み換えMAGE−C1タンパク質10μg/mLでコーティングした。前記プレートを洗浄バッファ(PBS、0.05% Tween−20)で2回洗浄した。次いで、非特異的結合をブロックするために、ブロッキングバッファ(PBS、0.05% Tween−20、1% BSA)と共に37℃で2時間、前記プレートをインキュベートした。ブロッキング後、1ウェル当たり100μLの連続希釈マウス血清を添加し、室温で4時間インキュベートした。次いで、前記プレートを洗浄バッファで3回洗浄した。次に、ブロッキングバッファで1:600希釈したビオチン化ラット抗マウスIgG2a[b]検出抗体(BD Biosciences)(1ウェル当たり100μL)を室温で1時間結合させた。前記プレートを、洗浄バッファで再度3回洗浄し、次いで、1ウェル当たり100μLのセイヨウワサビペルオキシダーゼ結合ストレプトアビジンと共に室温で30分間インキュベートした。洗浄バッファで4回洗浄した後、1ウェル当たり100μLの3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(Thermo Scientific)を添加した。色が変化したら、1ウェル当たり100μLの20%硫酸を添加した。405nmで吸光度を測定した。
【0189】
13. ELISPOTによる抗原特異的細胞免疫応答(T細胞免疫応答)の検出
プロタミンと複合体化しているMAGE−C1をコードしているmRNAをC57BL/6マウスに経皮的にワクチン接種した(14日間以内に5回)。コントロールマウスをバッファで処理した。最後のワクチン接種の1週間後にマウスを屠殺し、脾臓を摘出し、脾臓細胞を単離した。前記脾臓細胞を、上記抗原由来のペプチド(ペプチドライブラリー)の存在下で7日間再刺激するか、又はネイティブ同系マウスの骨髄細胞から生成された樹状細胞と共にコインキュベートし、これに抗原をコードしているmRNAをエレクトロポレーションした。抗原特異的細胞免疫応答を求めるために、再刺激後にINFガンマの分泌を測定した。INFガンマを検出するために、INFγ(BD Pharmingen,Heidelberg,Germany)に対する抗体を含むコーティングバッファ(0.1M炭酸−重炭酸塩バッファ、pH9.6、10.59g/L Na2CO3、8.4g/L NaHCO3)と共に、コートマルチスクリーンプレート(Millipore)を一晩インキュベートする。刺激物質及びエフェクター細胞を、24時間1:20の比でプレート中にて一緒にインキュベートする。前記プレートを1×PBSで洗浄し、ビオチン結合二次抗体と共にインキュベートする。1×PBS/0.05% Tween−20で洗浄した後、基質(5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルホスフェート/ニトロブルーテトラゾリウム液体基質系(Sigma Aldrich,Taufkirchen,Germany製))を前記プレートに添加したところ、基質の変換を目視で検出することができた。
【0190】
14. 結果
14.1 ヒストンステムループ配列:
ヒストンステムループ配列の特性評価を行うために、後生動物及び原生動物由来の配列(4,001配列)、又は原生動物由来の配列(131配列)、又は後生動物由来の配列(3,870配列)、又は脊椎動物由来の配列(1,333配列)、又はヒト由来の配列(84配列)をグループ分けし、アラインメントした。次いで、全ての位置について、存在するヌクレオチドの数を決定した。このようにして得られた表に基づいて、解析した全配列中に存在するヌクレオチドを表す、5つの異なるグループの配列についてのコンセンサス配列を作製した。後生動物と原生動物とを合わせたコンセンサス配列では、ループにおけるT/U、並びにステムにおけるG及びC(これらは、塩基対を形成する)の3個のヌクレオチドが保存されていた。構造的には、典型的に、6塩基対のステム及び4ヌクレオチドのループが形成される。しかし、異なる構造も一般的である:84個のヒトヒストンステムループのうち、2個は、4塩基対及び1個の不一致を含む5ヌクレオチドのみのステムを含有する。別のヒトヒストンステムループは、5塩基対のみのステムを含有する。4個の更なるヒトヒストンステムループは、6ヌクレオチド長のステムを含有するが、それぞれ、3箇所の異なる位置において1個の不一致を含む。更に、4個のヒトヒストンステムループは、それぞれ、2箇所の異なる位置において1個のゆらぎ塩基対を含有する。ループについては、細胞性粘菌(D.discoideum)で同定されている5ヌクレオチドのループのように、厳密に4ヌクレオチド長である必要はないと考えられる。
【0191】
解析した全配列中に存在するヌクレオチドを表すコンセンサス配列に加えて、保存されているヌクレオチドを段階的に強調するためにより限定的なコンセンサス配列も得た。要約すると、以下の配列が得られた:
(Cons):存在する全てのヌクレオチドを表す
(99%):存在する全てのヌクレオチドのうちの少なくとも99%を表す
(95%):存在する全てのヌクレオチドのうちの少なくとも95%を表す
(90%):存在する全てのヌクレオチドのうちの少なくとも90%を表す
【0192】
ヒストンステムループ配列の解析結果を以下の表1〜5に要約する(
図1〜5も参照):
【0193】
【表2】
【0194】
【表3】
【0195】
【表4】
【0196】
【表5】
【0197】
【表6】
【0198】
ここで用いた略記は、以下の通り定義した:
【表7】
【0199】
14.2 ポリ(A)とヒストンSLの組み合わせがmRNAからのタンパク質発現を相乗的に増加させる
mRNAからのタンパク質発現に対するポリ(A)とヒストンSLとの組み合わせの効果について調べるために、アルファグロビン3’−UTRの3’に様々な配列を含むmRNAを合成した:丁度3’−UTRの3’で終端し、ポリ(A)配列もヒストンSLも欠損しているmRNA、又はA64ポリ(A)配列若しくはヒストンSLのいずれかを含むmRNA、又は3’−UTRの3’にA64ポリ(A)配列及びヒストンSLの両方を含むmRNA。ルシフェラーゼをコードしているmRNA又はコントロールmRNAをHeLa細胞にエレクトロポレーションした。トランスフェクションの6時間後、24時間後、及び48時間後にルシフェラーゼレベルを測定した(以下の表6及び
図22を参照)。
【0200】
【表8】
【0201】
ポリ(A)配列もヒストンSLも有しないmRNAからは、ルシフェラーゼが殆ど発現しなかった。ポリ(A)配列又はヒストンSLは、両方とも、ルシフェラーゼレベルを同様の程度増加させた。これらmRNAからは、ポリ(A)及びヒストンSLの両方が欠損しているmRNAよりも遥かに高いルシフェラーゼレベルが得られた。しかし、驚くべきことに、ポリ(A)とヒストンSLとの組み合わせは、個々のエレメントのいずれかでみられたレベルの何倍もルシフェラーゼレベルを更に強く増加させた。同じmRNAにおいてポリ(A)とヒストンSLとを組み合わせることによるルシフェラーゼレベルの増加の大きさは、これらが相乗的に作用することを証明する。
【0202】
ポリ(A)−ヒストンSL mRNA(+/+)から得られたシグナルをヒストンSL mRNA(−/+)から得られたシグナルとポリ(A)mRNA(+/−)から得られたシグナルとの合計で除すことによって、ポリ(A)とヒストンSLとの相乗効果を定量した(以下の表7を参照)。
【0203】
【表9】
【0204】
このようにして計算された係数は、ポリ(A)及びヒストンSLの効果が純粋に相加的である場合に予測されるよりも、ポリ(A)とヒストンSLとを組み合わせたmRNAから得られるルシフェラーゼレベルの方がどれだけ高いかを示す。ポリ(A)とヒストンSLとを組み合わせたmRNAから得られるルシフェラーゼレベルは、これらの効果が純粋に相加的である場合の最大16.6倍高かった。この結果は、ポリ(A)とヒストンSLとの組み合わせが、タンパク質発現における著しい相乗的増加に影響を及ぼすことを確認するものである。
【0205】
14.3 ポリ(A)とヒストンSLとの組み合わせは、その順序に関係なくmRNAからのタンパク質発現を増加させる
ポリ(A)とヒストンSLとの組み合わせの効果は、ポリ(A)配列の長さ及びポリ(A)とヒストンSLとの順序に依存している可能性があった。したがって、ポリ(A)配列を伸長したmRNA、及びポリ(A)とヒストンSLの順序を逆にしたmRNAを合成した。2つのmRNAは、3’−UTRの3’にA120ポリ(A)配列又はA300ポリ(A)配列を含有していた。1つの更なるmRNAは、3’−UTRの3’に先ずヒストンSL、続いてA250ポリ(A)配列を含有していた。ルシフェラーゼをコードしているmRNA又はコントロールmRNAをHeLa細胞にリポフェクトした。トランスフェクション開始の6時間後、24時間後、及び48時間後にルシフェラーゼレベルを測定した(以下の表8及び
図23を参照)。
【0206】
【表10】
【0207】
A64ポリ(A)配列及びヒストンSLからは、同等のルシフェラーゼレベルが得られた。前述の実験と一致して、A64とヒストンSLとの組み合わせは、個々のエレメントのいずれかでみられたレベルの何倍もルシフェラーゼレベルを強く増加させた。同じmRNAにおいてポリ(A)とヒストンSLとを組み合わせることによるルシフェラーゼレベルの増加の大きさは、これらが相乗的に作用することを証明する。前述の通り、A64−ヒストンSL mRNA、A64mRNA、及びヒストンSL mRNAのルシフェラーゼレベルに基づいて、A64とヒストンSLとの相乗効果を定量した(以下の表9を参照)。A64とヒストンSLとを組み合わせたmRNAから得られるルシフェラーゼレベルは、ポリ(A)及びヒストンSLの効果が純粋に相加的である場合の最大61.7倍高かった。
【0208】
【表11】
【0209】
対照的に、A64からA120、又はA300へとポリ(A)配列の長さを伸長しても、ルシフェラーゼレベルはほんの僅かしか増加しなかった(表8及び
図19を参照)。また、最も長いポリ(A)配列(A300)を有するmRNAを、同様の長さのポリ(A)配列をヒストンSLと組み合わせたmRNA(ヒストンSL−A250)と比較した。A64−ヒストンSL mRNAと比べてこのmRNAでは、長いポリ(A)配列を有することに加えて、ヒストンSLとポリ(A)の順序が逆になっている。A250とヒストンSLとの組み合わせは、ヒストンSL又はA300でみられるレベルの何倍もルシフェラーゼレベルを強く増加させた。また、前述の通り、ヒストンSL−A250mRNAから得られたRLUとA300mRNAから得られたRLU+ヒストンSL mRNAから得られたRLUとを比較することにより、A250とヒストンSLとの相乗効果を定量した(表10を参照)。A250とヒストンSLとを組み合わせたmRNAから得られるルシフェラーゼレベルは、ポリ(A)及びヒストンSLの効果が純粋に相加的である場合の最大17.0倍高かった。
【0210】
【表12】
【0211】
要約すると、実質的に異なる長さのポリ(A)について、ポリ(A)とヒストンSLの順序には関係なく、mRNAからのタンパク質発現に対してヒストンSLとポリ(A)との組み合わせが高い相乗効果を示すことが証明された。
【0212】
14.4 ポリ(A)とヒストンSLとの組み合わせによるタンパク質発現の増加は特異的である
mRNAからのタンパク質発現に対するポリ(A)とヒストンSLとの組み合わせの効果が特異的であるかどうかを調べるために、ポリ(A)と別の配列との組み合わせを含むmRNAを合成した:これらmRNAは、それぞれ、A64の3’に7つの異なる配列のうちの1つを含有していた。ルシフェラーゼをコードしているmRNA又はコントロールmRNAをHeLa細胞にエレクトロポレーションした。トランスフェクションの6時間後、24時間後、及び48時間後にルシフェラーゼレベルを測定した(以下の表11及び
図24を参照)。
【0213】
【表13】
【0214】
ポリ(A)配列及びヒストンSLからは、同等のルシフェラーゼレベルが得られた。また、ポリ(A)とヒストンSLとの組み合わせは、個々のエレメントのいずれかでみられたレベルの何倍もルシフェラーゼレベルを強く増加させた。したがって、相乗的に作用した。対照的に、ポリ(A)と別の配列のいずれかとの組み合わせは、ポリ(A)配列のみを含有するmRNAに比べてルシフェラーゼレベルに対する効果はなかった。したがって、ポリ(A)とヒストンSLとの組み合わせは、相乗的にmRNAからのタンパク質発現を増加させる、この効果は特異的である。
【0215】
14.5 ポリ(A)とヒストンSLとの組み合わせは、インビボにおいてmRNAからのタンパク質発現を相乗的に増加させる
インビボにおけるmRNAからのタンパク質発現に対するポリ(A)とヒストンSLとの組み合わせの効果を調べるために、アルファグロビン3’−UTRの3’に様々な配列を含むルシフェラーゼをコードしているmRNA又はコントロールmRNAをマウスに経皮注射した:前記mRNAは、3’−UTRの3’にA64ポリ(A)配列、ヒストンSL、又はA64ポリ(A)配列とヒストンSLの両方を含んでいた。注射の16時間後にルシフェラーゼレベルを測定した(以下の表12及び
図25を参照)。
【0216】
【表14】
【0217】
ヒストンSL又はポリ(A)配列を有するmRNAからルシフェラーゼが発現した。しかし、ポリ(A)とヒストンSLとの組み合わせは、個々のエレメントのいずれかでみられたレベルの何倍もルシフェラーゼレベルを更に強く増加させた。同じmRNAにおいてポリ(A)とヒストンSLとを組み合わせることによるルシフェラーゼレベルの増加の大きさは、これらが相乗的に作用することを証明する。
【0218】
ポリ(A)−ヒストンSL mRNA(+/+)から得られたシグナルをヒストンSL mRNA(−/+)から得られたシグナルとポリ(A)mRNA(+/−)から得られたシグナルとの合計で除すことによって、ポリ(A)とヒストンSLとの相乗効果を定量した(以下の表13を参照)。
【0219】
【表15】
【0220】
このようにして計算された係数は、ポリ(A)及びヒストンSLの効果が純粋に相加的である場合に予測されるよりも、ポリ(A)とヒストンSLとを組み合わせたmRNAから得られるルシフェラーゼレベルの方がどれだけ高いかを示す。ポリ(A)とヒストンSLとを組み合わせたmRNAから得られるルシフェラーゼレベルは、これらの効果が純粋に相加的である場合の8倍高かった。この結果は、ポリ(A)とヒストンSLとの組み合わせが、インビボにおけるタンパク質発現における著しい相乗的増加に影響を及ぼすことを確認するものである。
【0221】
14.6 ポリ(A)とヒストンSLとの組み合わせは、mRNAからのNY−ESO−1タンパク質発現を増加させる
mRNAからのタンパク質発現に対する、ポリ(A)とヒストンSLとの組み合わせの効果を調べるために、アルファグロビン3’−UTRの3’に様々な配列を有するNY−ESO−1をコードしているmRNAを合成した。前記mRNAは、3’−UTRの3’にA64ポリ(A)配列又はA64ポリ(A)とヒストンSLとの両方を含有していた。NY−ESO−1をコードしているmRNAをHeLa細胞にエレクトロポレーションした。フローサイトメトリーによって、トランスフェクションの24時間にNY−ESO−1レベルを測定した(以下の表14及び
図26を参照)。
【0222】
【表16】
【0223】
ポリ(A)配列のみを有するmRNAからNY−ESO−1が発現した。しかし、驚くべきことに、ポリ(A)とヒストンSLとの組み合わせは、ポリ(A)配列のみでみられたレベルの何倍もNY−ESO−1レベルを強く増加させた。
【0224】
14.7 ポリ(A)とヒストンSLとの組み合わせは、mRNAのワクチン接種により誘発される抗体のレベルを増加させる
mRNAのワクチン接種により誘発される抗体の誘導に対するポリ(A)とヒストンSLとの組み合わせの効果を調べるために、プロタミンと複合体化している、アルファグロビン3’−UTRの3’に様々な配列を有するNY−ESO−1をコードしているmRNAをC57BL/6マウスに経皮的にワクチン接種した。前記mRNAは、3’−UTRの3’にA64ポリ(A)配列又はA64ポリ(A)とヒストンSLとの両方を含有していた。ワクチン接種マウス及びコントロールマウスにおけるNY−ESO−1特異的抗体のレベルを、血清の連続希釈物を用いてELISAによって分析した(以下の表15及び
図27を参照)。
【0225】
【表17】
【0226】
ポリ(A)配列のみを有するmRNAによって抗NY−ESO−1 IgG2a[b]が誘導された。しかし、驚くべきことに、ポリ(A)とヒストンSLとの組み合わせは、ポリ(A)配列のみでみられたレベルの何倍も抗NY−ESO−1 IgG2a[b]レベルを強く増加させた。