【実施例1】
【0013】
以下、実施例1の蓄電装置100について説明する。
図1に示すように、蓄電装置100は、ケース1と、ケース1に収容された電極組立体3と、ケース1に固定された電極端子としての端子5、7とを備えている。電極組立体3と端子5、7とは電気的に接続されている。また、蓄電装置100は、電極組立体3と端子7との間に配置された電流遮断装置10を備えている。ケース1の内部は、電解液が注入されており、電極組立体3は、電解液に浸漬している。
【0014】
ケース1は、金属製であり、略直方体形状の箱型部材である。ケース1は、本体111と、本体111に固定された蓋部112とを備えている。蓋部112は、本体111の上部を覆っている。蓋部112には、開口部81、82が形成されている。端子5は、開口部81を介してケース1の内外に通じており、端子7は、開口部82を介してケース1の内外に通じている。
【0015】
電極組立体3は、正極シートと、負極シートと、正極シートと負極シートとの間に配置されたセパレータとを備えている。電極組立体3は、複数の正極シート、複数の負極シート及び複数のセパレータが積層されて構成されている。正極シート及び負極シートは、集電部材と、集電部材上に形成されている活物質層とを備えている。集電部材としては、正極シートに用いられるものは例えばアルミ箔であり、負極シートに用いられるものは例えば銅箔である。また、電極組立体3は、正極集電タブ41及び負極集電タブ42を備えている。正極集電タブ41は、正極シートの上端部に形成されている。負極集電タブ42は、負極シートの上端部に形成されている。正極集電タブ41及び負極集電タブ42は、電極組立体3の上方に突出している。正極集電タブ41は正極リード43に固定されている。負極集電タブ42は負極リード44に固定されている。
【0016】
正極リード43は、正極集電タブ41と端子5とに接続されている。正極リード43を介して、正極集電タブ41と端子5とが電気的に接続されている。正極リード43とケース1との間には、絶縁部材72が配置されている。絶縁部材72は、正極リード43とケース1の蓋部112とを絶縁している。
【0017】
負極リード44は、負極集電タブ42と接続端子46とに接続されている。接続端子46は、電流遮断装置10を介して端子7に電気的に接続されている。よって、負極リード44、接続端子46及び電流遮断装置10を介して、負極集電タブ42と端子7とが電気的に接続されている。これにより、電極組立体3と端子7とを接続する通電経路が形成されている。電流遮断装置10は、この通電経路を遮断可能である。電流遮断装置10の構成については後述する。負極リード44とケース1との間には、絶縁部材73が配置されている。絶縁部材73は、負極リード44とケース1とを絶縁している。
【0018】
蓋部112の上面には、樹脂製のガスケット62、63が配置されている。ガスケット62は、蓋部112より上方に突出した突出部66と、蓋部112に沿って伸びる平板部68を有する。突出部66は、蓋部112の開口部81より中央側に配置され、平板部68は、蓋部112の開口部81側に配置される。ガスケット62の上面には、外部端子60が、ガスケット62の上面の形状に沿って配置されている。ボルト64の頭部は、突出部66に形成された有底穴62a内に配置されている。ボルト64の軸部は、外部端子60の開口を通って上方に突出している。端子5、外部端子60及びボルト64は、互いに電気的に接続されており、正極端子を構成している。ガスケット63、外部端子61及びボルト65の構成は、上述したガスケット62、外部端子60及びボルト64の構成と同様である。端子7、外部端子61及びボルト65は、互いに電気的に接続されており、負極端子を構成している。
【0019】
ここで、
図2を参照して端子7について説明する。
図2に示すように、端子7は、ケース1にカシメ固定されている。端子7は、円筒部94、基底部95及び固定部96を備えている。円筒部94は開口部82に挿入されている。円筒部94には貫通孔97が形成されている。基底部95は環状に形成されている。基底部95は円筒部94の下端部に固定されている。基底部95はケース1の内部に配置されている。基底部95には、凹所98が形成されている。凹所98は貫通孔97と連通しており、凹所98内は大気圧に保たれる。固定部96は環状に形成されており、円筒部94の上端部に配置されている。固定部96はケース1の外部に配置されている。端子7は、固定部96によりケース1の蓋部112に固定されている。
【0020】
次に、電流遮断装置10について説明する。
図2に示すように、電流遮断装置10は、通電板20と、第1変形板30と、ホルダ80とを備えている。第1変形板30は、円形の導電性のダイアフラムであり、下方に凸となっている。第1変形板30は、中央部32及び外周部31を有している。第1変形板30の中央部32は、通電板20と接続されており、基底部95の凹所98の下端は、第1変形板30により覆われている。凹所98内は大気圧に保たれているため、第1変形板30の上面には大気圧が作用する。第1変形板30の外周部31は、端子7の基底部95に固定されている。通電板20は金属製の部材であり、導電性を有している。通電板20は、平面視において円形状に形成されており、第1変形板30の下方に配置されている。通電板20には、接続端子46が接続されている。通電板20は、中央部22及び外周部21を有している。通電板20の下面には溝部20aが形成されている。溝部20aは中央部22の周囲に形成されており、溝部20aの内側で通電板20と変形板30の中央部32とが接続されている。溝部20aが形成された位置における通電板20の機械的強度は、溝部20a以外の位置における通電板20の機械的強度よりも低い。
【0021】
ホルダ80は、その内部に端子7の基底部95と、第1変形板30と、シール部材75を収容して保持している。ホルダ80の上端には、貫通孔79aが形成されており、貫通孔79aには端子7の円筒部94が挿入されている。ホルダ80の下端は解放されており、通電板20により閉じられている。ホルダ80は、弾性を有する絶縁部材により形成されている。ホルダ80には、例えば、ポリフェニルスルファイド(PPS)が用いられる。ホルダ80は、絶縁材料をモールド成形することにより製造することができる。なお、ホルダ80の材料は上記のPPSに限られず、絶縁性及び耐電解液性を有する材料(例えば、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリプロピレン(PP)等)であればよい。
【0022】
ホルダ80は、上端部79と、中央部78とを備えている。上端部79は、その中心に貫通孔79aを有する環状に形成されている。上述したように、上端部79の貫通孔79aには、端子7の円筒部94が挿入されている。上端部79は、ケース1の蓋部112の下面と、端子7の基底部95の上面との間に配置されている。すなわち、蓋部112の下面は上端部79の上面と当接し、基底部95の上面は上端部79の下面と当接する。蓋部112の下面と基底部95の上面とは、上端部79によって絶縁されている。
【0023】
中央部78は、上端部79の外周縁から下方に伸びており、環状に形成されている。中央部78は、その内部に基底部95と、第1変形板30を収容する。中央部78の下面83(通電板20側の面)には、凹部85が環状に形成されている。凹部85の縦断面の形状は矩形状に形成されている。凹部85の下端は、通電板20によって閉じられている。すなわち、ホルダ80は、凹部85の内側と外側の両側において通電板20と接触している。ただし、ホルダ80と通電板20が接触するだけで、両者が接触部においてシールされているわけではない。凹部85の深さは、後述するシール部材75の線径(圧縮変形前の径)の1/3以上とされている。
【0024】
通電板20の上面と、凹部85の下面との間には、シール部材75が配設されている。シール部材75は、通電板20とホルダ80との間をシールしている。すなわち、シール部材75は、上下方向に圧縮された状態で凹部85内に収容され、通電板20の上面とホルダ80の下面(凹部85の底面)との間をシールしている。シール部材75は、凹部85内に配置され、第1変形板30の周囲を一巡している。シール部材75は、例えば、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)等のエチレン−プロピレン系ゴム(EPM)を材料とするOリングである。なお、シール部材75は上記に限られず、シール性、絶縁性、耐電解液性及び弾性を有する材料が用いられてもよい。なお、凹部85の体積に対する、シール部材75の充填率は90パーセント以下であることが好ましい。シール部材75の充填率を90パーセント以下とすることで、凹部85内にシール部材75が変形可能となる空間を十分に確保することができる。なお、シール部材の充填率とは、圧縮変形前のシール部材の体積と、シール部材が収容される凹部の体積との比をいう。
【0025】
通電板20とホルダ80との間の空間(すなわち、凹部85内の空間)は、シール部材75によってケース1内の空間と連通する第1空間116と、ケース1内の空間に連通しない第2空間118とに分割されている。すなわち、シール部材75には、第1空間116側からは、ケース1の内部の圧力が作用し、第2空間118側からは、ケース1の内部の圧力変化と関係なく一定の圧力が作用している。
【0026】
通電板20及びホルダ80は、固定部材70により固定されている。固定部材70は、通電板20及びホルダ80をカシメ固定している。固定部材70の内側には、絶縁部材71が配置されている。絶縁部材71は、通電板20を固定部材70から絶縁している。
【0027】
上述した説明から明らかなように、電流遮断装置10は、接続端子46と、通電板20と、第1変形板30と、端子7とを直列につなぐ通電経路を有している。このため、電極組立体3と端子7は、電流遮断装置10の通電経路を介して電気的に接続されている。
【0028】
ここで、電流遮断装置10の遮断動作について説明する。上述した蓄電装置100においては、端子5と端子7との間が外部機器(例えば、発電機やモータ等)を介して通電可能な導通状態で用いられる。蓄電装置100の過充電等によってケース1内の圧力が上昇すると、通電板20の下面に作用する圧力が上昇する。一方、第1変形板30の上面には大気圧が作用する。このため、ケース1の内圧が上昇して所定値に達すると、第1変形板30の中央部32に接続されていた通電板20が、機械的に脆弱な溝部20aを起点に破断する。そして、第1変形板30が反転して、上方に凸の状態に変化する。これによって、通電板20と第1変形板30とを接続する通電経路が遮断され、電極組立体3と端子7とが非導通状態となる。このとき、第1変形板30は接続端子46から絶縁されると共に、通電板20は端子7から絶縁される。
【0029】
実施例1の蓄電装置100の作用効果について説明する。上記の蓄電装置100では、通電板20とホルダ80との間をシールするシール部材75が設けられている。シール部材75は、ホルダ80に設けられた凹部85に収容されている。したがって、ケース1内の圧力上昇によって、第1空間116側から第2空間118側に向かう外力がシール部材75に作用しても、これによるシール部材75の変位を抑制することができる。このため、シール部材75のシール性能を維持でき、蓄電装置100の電流遮断装置10の作動精度を高くすることができる。
【0030】
また、ホルダ80は絶縁部材であるため、通電板20と電気的に接続されることはない。したがって、組付けの際に、通電板20の上面とホルダ80とが導通しないため、凹部85の近傍において、ホルダ80と通電板20との間のクリアランスを考慮する必要がない。したがって、シール部材75の変位を抑制するために十分な深さの凹部85を形成することができる。
【0031】
(変形例1)次に、
図3を参照して変形例1について説明する。以下では、実施例1と相違する点についてのみ説明し、実施例1と同一の構成についてはその詳細な説明を省略する。その他の実施例でも同様である。
図3に示すように、凹部85は、その断面積が通電板20側に向かって大きくなるテーパ状に形成されており、凹部85の側面は傾斜している。
【0032】
変形例1の蓄電装置では、凹部85の側面がテーパ状に形成されるため、凹部85にシール部材75を収容する際に、シール部材75の圧縮変形が容易に行われる。このため、シール部材75がテーパ部分にガイドされるように凹部85内に誘い込まれ、滑らかに収容することができ、通電板20とホルダ80とシール部材75とを容易に組付けることができる。
【0033】
(変形例2)次に、
図4を参照して変形例2について説明する。変形例2の蓄電装置では、ホルダ80に形成された凹部85の深さはw
hであり、シール部材75の線径(圧縮変形前の径)はw
sである。w
hとw
sの間には、w
s/3<w
hの関係が成立する。
【0034】
変形例2の蓄電装置では、凹部85の深さw
hが所定値(すなわち、w
s/3)以上の値であるため、ケース1内の圧力上昇によるシール部材75の変位を好適に抑制することができる。なお、シール部材75が用いられるときのつぶし代をδとしたとき、w
h<w
s−δの関係が成立することが好ましい。このように構成すると、シール部材75によってホルダ80と通電板20とを確実にシールすることができる。
【実施例2】
【0035】
次に、
図5を参照して実施例2の蓄電装置について説明する。本実施例の蓄電装置では、電流遮断装置の構成が実施例1のそれと異なっており、それ以外の構成は実施例1と同様である。
【0036】
図5に示すように、電流遮断装置10aは、通電板20と、第1変形板30と、金属製の第2変形板40とを備えている。
【0037】
第2変形板40は、通電板20の下方に配置されており、その中央部が下方に突出している。第2変形板40の外周部の上面と、通電板20の外周部の下面とは、溶接により固定されている。また、第2変形板40の上面中央には、上方に突出する突出部40aが設けられている。突出部40aの上方には通電板20の中央部22が位置している。第2変形板40の下面にはケース1内の圧力が作用する。
【0038】
通電板20は、第2変形板40と第1変形板30との間に配置されており、通電板20には、通気孔20bが形成されている。第2変形板40と通電板20との間の空間120は、通気孔20bを介して第1変形板30と通電板20との間の空間122と連通している。第1変形板30は、通電板20の上方に配置されている。第1変形板30の上面には、空間124が形成されている。空間124は、大気圧に保たれている。
【0039】
通電板20とホルダ80との間の第1空間116は、ケース1内の空間と連通しており、第2空間118は、空間122と連通している。すなわち、シール部材75の第1空間116側には、ケース1内の圧力が作用し、シール部材75の第2空間118側には、空間122及び空間120の圧力が作用する。
【0040】
電流遮断装置10aは、接続端子46と、通電板20と、第1変形板30と、端子7とを直列に繋ぐ通電経路を有している。このため、電極組立体3と端子7は、電流遮断装置10aの通電経路を介して電気的に接続されている。
【0041】
ここで、電流遮断装置10aの遮断動作について説明する。上述した蓄電装置では、ケース1の内圧が上昇すると、第2変形板40の下面に作用する圧力が上昇する。一方、第2変形板40の上面には、ケース1内の空間からシールされた空間120の圧力が作用する。このため、ケース1内の圧力が所定値を超えると、第2変形板40が反転して、下方に凸の状態から上方に凸の状態に変化する。これによって、第2変形板40(詳細には、第2変形板40の突出部40a)は、第1位置から第2位置に変化する。このとき、空間120内の空気は通気孔20bを通って空間122に移動し、空間122内の圧力が上昇する。また、第2変形板40が第2位置に移動すると、第2変形板40の突出部40aが通電板20の中央部22に衝突し、通電板20が溝部20aで破断する。これにより、第1変形板30が反転し、第1変形板30及び通電板20の中央部22が上方に変位する。このため、通電板20と第1変形板30を接続する通電経路が遮断され、電極組立体3と端子7との間の導通が遮断される非導通状態となる。このとき、第1変形板30は接続端子46から絶縁されるとともに、通電板20は端子7から絶縁されている。実施例2の蓄電装置においても、ホルダ80の凹部85が実施例1のそれと同様の構成であるため、実施例1の蓄電装置100と同様の作用効果を奏することができる。
【0042】
以上、本明細書が開示する技術の実施例について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。例えば、実施例2において、第1変形板30に、空間122と空間124とを連通する連通孔を形成し、空間120、122を大気圧に維持してもよい。
【0043】
また、凹部85は、深さ方向の長さが適切な値であればよく、凹部85の断面積は適宜変更することができる。また、変形例1において、凹部85の側面は、いずれか一方がテーパ状に形成される構成であってもよい。
【0044】
また、電流遮断装置10は、端子5側に設けられてもよいし、端子5と端子7の双方に設けられてもよい。端子5側に電流遮断装置10が設けられる場合は、端子5と蓋部112との間に、上記の実施例の構成と同様に絶縁部材を配置することができる。また、上記の実施例では、第1変形板30が反転することで通電板20との導通が遮断される。しかしながら、第1変形板30の変形の態様は反転に限られない。例えば、第1変形板30の中央部32が上方に撓むことで通電板20が溝部20aを起点に破断し、第1変形板30と通電板20との導通が遮断される構成であってもよい。第1変形板30は、第1変形板30と通電板20との導通が遮断されるのであればどのように変形してもよい。第2変形板40についても同様である。
【0045】
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。