(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
バイメタルねじの頭部及び軸部となるビスと、バイメタルねじの先端部となるピンとを溶接接合し、バイメタルねじのブランク製造を行うバイメタルねじ用ブランク製造システムであって、
前記ビスと前記ピンとの接合面において該接合面の中央部のみを抵抗溶接にて接合する抵抗溶接手段と、
前記接合面の周縁部をTIG溶接にて接合するTIG溶接手段とを有していることを特徴とするバイメタルねじ用ブランク製造システム。
バイメタルねじの頭部及び軸部となるビスと、バイメタルねじの先端部となるピンとを溶接接合し、バイメタルねじのブランク製造を行うバイメタルねじ用ブランク製造方法であって、
前記ビスと前記ピンとの接合面において該接合面の中央部のみを抵抗溶接にて接合する抵抗溶接工程と、
前記接合面の周縁部をTIG溶接にて接合するTIG溶接工程とを有していることを特徴とするバイメタルねじ用ブランク製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
図1は、本発明を適用したバイメタルねじ用ブランク製造システム(以下、本システムと称する)1の概略構成を示す図であり、本システムを上から見た場合の各機能部の配置を示している。本システム1は、各機能部として、ビス供給部2、ピン供給部3、ロボットアーム4、溶接装置5、および排出部6を具備して構成される。本システム1は、
図2に示すように、接合前の各パーツとしてビス11およびピン12を用い、これらのパーツを接合してバイメタルねじ用のブランク10を製造する。ビス11は最終的にはバイメタルねじの頭部及び軸部となり、ピン12はバイメタルねじの先端部となる。ビス11およびピン12は、互いに異なる金属材料からなる。例えば、ビス11は耐食性の高い材料(例えばSUSSXM7)とし、ピン12は耐熱性や強度の高い材料(例えばSUS410)とすることができる。
【0013】
以下、各機能部についてより詳細に説明する。
【0014】
ビス供給部2は、ビスフィーダ部21、ビス給送レール22、およびターンテーブル部23からなる。ビスフィーダ部21は多数のビス11をストックしており、ビス給送レール22はビスフィーダ部21からビス11を1つずつ分離給送する。このとき、ビス給送レール22で給送されるビス11は、頭部11a(
図2参照)を上側、軸部11b(
図2参照)を下側とした鉛直姿勢で給送される。ターンテーブル部23は、ビス給送レール22から給送されたビス11をロボットアーム4がつかみ易い状態で保持する。
【0015】
図3に示すように、ターンテーブル部23は、中心軸回りに回転可能な円盤状のテーブル23Aと、テーブル23Aの周囲に配置されるガード23Bとからなる。テーブル23Aの周囲には、ビス給送レール22から給送されるビス11を保持するための、複数(ここでは3個)の切欠き231が設けられている。切欠き231は、上からみてテーブル23Aの外周側が開放されたU字形状を有しており、その幅は、ビス11の頭部11aの径より小さく、軸部11bの径より大きい。このため、各切欠き231では、ビス11の頭部11aを上にして吊下げた状態で保持することができる。
【0016】
ビス給送レール22から給送されるビス11は、
図3中の位置Pにて切欠き231にて保持され、テーブル23Aが時計方向(図中の矢印方向)に回転することによって位置Qに運ばれる。ガード23Bは、位置Pから位置Qへの移動の間にビス11が落下することを防止する。
【0017】
位置Qに運ばれたビス11は、ロボットアーム4で掴んで切欠き231から横方向(ターンテーブル部23の外周方向)に引き抜くことが可能である。このため、位置Qにおいては、切欠き231は、ガード23Bではなく2枚の弾性板232によってビス11の落下が防止されるようになっている。弾性板232は、ビス11の落下を防止できるが、ロボットアーム4によるビス11の引き抜きは阻害しない。
【0018】
ピン供給部3は、ピンフィーダ部31およびピン給送レール32からなる。ピンフィーダ部31は多数のピン12をストックしており、ピン給送レール32はピンフィーダ部31からピン12を1つずつ分離給送する。
【0019】
図4に示すように、ピン給送レール32は、該レールに形成された溝部(例えばV溝)
321に沿ってピン12を給送するようになっている。このとき、ピン給送レール32で給送されるピン12は、ピン12の長手軸と溝部321の長手方向とが平行となる水平姿勢で給送される。
【0020】
溝部321は、ピン12の給送方向下流側が突き当たりとなっており、先頭のピン12は溝部321の下流側先端に突き当たって停止する。また、先頭のピン12の下方におけるピン給送レール32の一部は、上下に移動可能な可動ブロック322となっている。先頭のピン12が溝部321の先端に突き当たった状態で可動ブロック322が下方に移動すると、先頭のピン12は、軸方向の前後両端のみが溝部321によって支持され、軸部中央付近は浮いた状態となる。この状態で、ロボットアーム4が先頭のピン12を掴んで持ち運ぶことが可能となる。こうして、先頭のピン12がロボットアーム4によって持ち運ばれると、可動ブロック322が元の位置まで上昇し、次のピン12が溝部321の先端に突き当たるまで移動する。
【0021】
ロボットアーム4は、アームベース41上に1本のメインアームを搭載し、メインアームの先端に2つのサブアームを有するものを使用している。これにより、一方のサブアームでターンテーブル部23からビス11を、他方のサブアームでピン給送レール32からピン12を一つずつ掴んで溶接装置5の所定の位置に移動させることができる。ロボットアーム4は、産業ロボットとして製造・販売されている公知のロボットアームを使用可能であるため、
図1では、アームベース41とロボット運動範囲のみを図示し、上述したメインアームおよびサブアームの図示は省略している。尚、本システム1では、ロボットアーム4として、FANUC社製のロボットアーム(LR Mate 200ic)を用いている。
【0022】
溶接装置5は、溶接機51、ビス送りスライダ52、およびピン送りスライダ53からなる。溶接機51は、ビス11およびピン12に対して溶接を行うものであり、本システム1では大阪電研社製の溶接機を用いている。ビス送りスライダ52は、ロボットアーム4によって搬送されたビス11を所定の位置で受け取り、これを保持した状態で溶接位置まで移動させる。ピン送りスライダ53は、ロボットアーム4によって搬送されたピン12を所定の位置で受け取り、これを保持した状態で溶接位置まで移動させる。
【0023】
図5に示すように、ビス送りスライダ52は、移動体52Aと電動スライダ52Bとからなる。移動体52Aは、本体521に3つの保持板522,523,524をネジ等で締結して構成されている。電動スライダ52Bは、移動体52Aを待機位置と溶接位置との間で水平方向に移動させるための駆動手段である。尚、
図5は、移動体52Aが待機位置にある状態を示している。また、溶接位置とは、ビス11とピン12とが溶接機51によって溶接接合されるときの移動体52Aの位置である(
図7参照)。
【0024】
保持板522,523,524は、本体521の上面から上方に立設した箇所を有しており、その立設箇所は溶接位置に近い側から保持板522,523,524の順となっている。保持板522,523の上記立設箇所の上端にはV溝522a,523aが形成されており、V溝522a,523aにビス11が載置されることによって、ビス11が水平姿勢(ビス11の軸が水平方向と平行となる姿勢)で保持される。すなわち、ロボットアーム4は、ビス供給部2から搬送したビス11を、待機位置にある移動体52AのV溝522a,523a上に載置する。また、このとき、ビス11の頭部11aが溶接位置から遠い側とされる。
【0025】
図6に示すように、ピン送りスライダ53は、ガイドレール53Aと移動体53Bと電動スライダ53Cとからなる。ガイドレール53Aは、上面にV溝53Aaが形成されており、V溝53Aa上に載置されたピン12を溶接位置まで導くためガイド部材である。すなわち、ロボットアーム4は、ピン供給部3から搬送したピン12を、ガイドレール53AのV溝53Aaの所定の位置に載置する。移動体53Bは、V溝53Aaに載置されたピン12を溶接位置まで移動させる。電動スライダ53Cは、移動体53Bを待機位置と溶接位置との間で水平方向に移動させるための駆動手段である。尚、
図6は、移動体53Bが待機位置にあり、ピン12がロボットアーム4によってV溝53Aaに載置された直後の状態を示している。
【0026】
移動体53Bは、本体531と押し出し棒532とバネ533とケース534とを有している。押し出し棒532は、その長手軸がV溝53Aaの長手方向と平行となるように配置され、その一端でV溝53Aaに載置されたピン12を溶接位置まで押し出して移動させる。バネ533は、押し出し棒532の他端側に配置され、押し出し棒532に対して溶接位置方向への付勢力を与える。ケース534は、押し出し棒532の他端とバネ533とを内部に保持している。
【0027】
溶接機51は、抵抗溶接のための抵抗溶接ヘッド(抵抗溶接手段)511と、TIG(Tungsten Inert Gas)溶接のためのTIG溶接ヘッド(TIG溶接手段)512(
図8参照)とを備えている。
図7は、溶接時における抵抗溶接ヘッド511付近の状態を示している。
【0028】
抵抗溶接ヘッド511は、4つの電極511a〜511dを有しており、溶接時には、これら4つの電極511a〜511dの中央に接合箇所(
図2参照)が配置されるようにする。このため、ビス送りスライダ52では、移動体52Aが待機位置から溶接位置まで移動し、ビス11を溶接位置まで移動させる。このとき、
図7に示すように、ビス11は、頭部11aが保持板524に当接することによって位置決めされる。
【0029】
また、ピン送りスライダ53では、移動体53Bが待機位置から溶接位置まで移動し、ピン12が押し出し棒532によって押され、溶接位置まで移動する。ピン12は、ビス11との当接によって位置決めされる。この時、ピン12には、押し出し棒532を介してバネ533の付勢力が作用する。バネ533の付勢力は、ビス11とピン12との溶接箇所における接触圧となる。
【0030】
4つの電極511a〜511dのうち、下部電極511cおよび511dは不動であるが、上部電極511aおよび511bは上下方向に移動可能である。上部電極511aおよび511bは、溶接時以外は上方に退避しており、ビス11およびピン12が溶接位置に配置されると下降する。これにより、溶接時には、上部電極511aおよび511bは、下部電極511cおよび511dとともにビス11およびピン12を挟み込む。
【0031】
より具体的には、ビス側電極となる電極511aおよび511cがビス11を挟み、ピン側電極となる電極511bおよび511dがピン12を挟む。そして、ビス11とピン12との溶接箇所に軸方向に沿った電流を流すことで抵抗溶接を行う。溶接箇所となるビス11とピン12との接触面は上記電流に対して高抵抗となるため、この箇所でジュール熱が発生し、ビス11とピン12とが溶融接合される。
【0032】
本システム1によるブランク10の製造工程では、抵抗溶接に続いてTIG溶接が行われる。TIG溶接には、TIG溶接ヘッド512が使用される。本システム1では、
図8に示すように、TIG溶接ヘッド512(
図7では不図示)がビス11およびピン12の溶接箇所の周囲に円周方向に沿って略等間隔で3個配置されている。すなわち、TIG溶接は、溶接箇所の円周方向に沿った3箇所で施される。
【0033】
各TIG溶接ヘッド512は、その先端にタングステン電極512aを有しており、タングステン電極512aと母材(すなわち、ビス11およびピン12)との間にアークを発生させてアーク熱で母材を溶融させて溶接する。また、タングステン電極512aの周囲は、不活性ガス(ここではアルゴン)を放出するためのノズル512bとなっており、上記溶接は不活性ガス雰囲気中で行われる。
【0034】
溶接(抵抗溶接およびTIG溶接)が完了すると、上部電極511aおよび511bが退避位置に上昇し、ビス送りスライダ52の移動体52Aとピン送りスライダ53の移動体53Bとは待機位置に戻される。この時、ビス11とピン12とが接合されてなるブランク10は、ビス11の頭部11aが保持板523のV溝523aに引っ掛かることにより、移動体52Aと共に移動する。
【0035】
ブランク10がビス送りスライダ52の移動体52Aと共に待機位置まで戻されると、完成品として排出部6によって本システム1の外部に排出される。排出部6は、
図1および
図9に示すように、プッシャ61と排出シュート62とからなる。プッシャ61は、待機位置にあるブランク10に対して、ブランク10の軸方向と直交する方向に水平移動可能である。また、プッシャ61の移動方向先端(ブランク10側)には傾斜面61aが形成されている。このため、プッシャ61がブランク10に向かって移動すると、移動体52Aの保持板522,523によって保持されているブランク10は、傾斜面61aに沿って持ち上げられ、プッシャ61と反端側に押し出される。
【0036】
ブランク10の押し出される側の下方には、排出シュート62が配置されている。プッシャ61によって押し出されたブランク10は、排出シュート62上に落下し、排出シュート62上を滑り落ちて本システム1の外部に排出される。
【0037】
本システム1では、溶接箇所においてバリの発生しないブランク10を製造するために、溶接方法において以下の工夫を行っている。
【0038】
まず、溶接を抵抗溶接とTIG溶接との二段階工程とし、先工程である抵抗溶接では、接合面全体の溶接は行わず、接合面の中央部のみを溶接する。
図10(a)は、抵抗溶接終了時点での溶接箇所の断面図であり、抵抗溶接による接合領域を斜線ハッチングで示している。
【0039】
そして、後工程であるTIG溶接によって接合面の周縁部を溶接する。
図10(b)は、TIG溶接終了時点での溶接箇所の断面図であり、TIG溶接による接合領域を網点ハッチングで示している。このように、抵抗溶接による接合領域とTIG溶接による接合領域とで、接合面の全体が溶接される。尚、抵抗溶接による接合領域は接合面全体に対する面積比で70〜80%とすることが好ましく、TIG溶接による接合領域は抵抗溶接領域に少し溶け込ませるように周縁部から面積比で30〜40%(面積比)とすることが好ましい。
【0040】
従来のバイメタルねじにおけるブランク製造工程では、ビスとピンとの溶接に抵抗溶接のみが使用されていたが、抵抗溶接では接合面に圧力を加えながら溶接が行われる。このため、抵抗溶接時に接合面全体を溶融させると、溶融した金属が上記圧力によって円周方向にはみだしてバリとなる。これに対し、本発明では、抵抗溶接時に接合面全体を溶融させることなく、中央部のみを溶融させて接合する。このため、上記圧力によって円周方向にはみだす溶融金属は殆ど無い。
【0041】
本発明において、抵抗溶接で接合面の中央部のみを溶接するには、溶接時間(すなわち、電流の通電時間)を適切に制御することが必要である。本発明における適切な溶接時間は、溶接箇所の径、母材材料、および加圧力等の種々の条件に応じて変化するが、これらの各条件に応じた溶接時間は、予め実験等によって求めることが可能である。
【0042】
TIG溶接では、溶融した金属は自動的に内部に埋め込まれるため、バリの無い綺麗な仕上がり面が得られる。尚、TIG溶接のみによってビスとピンとの溶接を行った場合には、接合面の周縁部は接合できるものの中央部が十分に接合できず、接合箇所における十分な強度が得られない。
【0043】
以上のように、本システム1を用いた溶接接合では、先工程である抵抗溶接で接合面の中央部のみを溶接し、後工程であるTIG溶接によって接合面の周縁部を溶接する。これにより、製造されるブランク10において接合箇所でのバリが発生せず、ねじ部加工前にバリを除去するための二次加工が不要となり、製造工程数及び製造コストを低減することができる。さらに、接合箇所では、中央部から周縁部まで良好な溶融接合が行われるため、十分な強度が確保できる。
【0044】
本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施例はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。