特許第6357136号(P6357136)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6357136
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】火葬炉
(51)【国際特許分類】
   F23G 1/00 20060101AFI20180702BHJP
【FI】
   F23G1/00 F
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-147482(P2015-147482)
(22)【出願日】2015年7月27日
(65)【公開番号】特開2017-26255(P2017-26255A)
(43)【公開日】2017年2月2日
【審査請求日】2017年2月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】591256974
【氏名又は名称】富士建設工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123021
【弁理士】
【氏名又は名称】渥美 元幸
(72)【発明者】
【氏名】鳴海 利彦
【審査官】 渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭55−150228(JP,U)
【文献】 特開昭57−090590(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3197843(JP,U)
【文献】 実公昭07−000770(JP,Y1)
【文献】 特開昭52−071879(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23G 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
未燃焼排ガスを再燃焼させるため未燃焼排ガスを通過させる渦流火導孔を貫通した耐火物で構成される渦流火導孔装置を主燃焼室の上部の再燃焼室に備えた火葬炉であって、
前記渦流火導孔装置は、渦流火導孔および外形の形状がそれぞれ異なる少なくとも2種以上の耐火物で構成され
同種の耐火物を縦方向に積み重ね、かつ、異種の耐火物を横方向に隣接させて配列することにより構築され、
少なくともいずれか1種の耐火物に凸部と凹部とが設けられて嵌合可能になっている
ことを特徴とする火葬炉。
【請求項2】
前記渦流火導孔装置は、
円形の渦流火導孔が貫通された、断面正方形の直方体形状の第1耐火物と、
横長四角形の渦流火導孔が貫通された、断面横長四角形の直方体形状の第2耐火物とで構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の火葬炉。
【請求項3】
前記第2耐火物の平面中央部の長さ方向に凸部が設けられており、底面中央部の長さ方向に凹部が設けられている
ことを特徴とする請求項2に記載の火葬炉。
【請求項4】
前記第1耐火物における円形の渦流火導孔は、排ガス導入口から排出口に向かって徐々に小径になる円形のテーパー孔である
ことを特徴とする請求項2または3に記載の火葬炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火葬炉に関するものであり、さらに詳しくは、主燃焼室と連設する再燃焼室に渦流火導孔装置を設置して未燃焼ガスの燃焼を促進させる火葬炉に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の火葬炉には、主燃焼室の上部にある再燃焼室の中程に、排ガスを通過させる渦流火導孔装置を設置し、主燃焼室から流れてくる未燃焼排ガスを効果的に完全燃焼させてダイオキシンやメタンガスなどの有害物質を除去して無煙、無臭化するものがある。
【0003】
図9および図10に示すように、この種の従来の火葬炉において、渦流火導孔装置31は、長さ方向に円形の渦流火導孔32を貫通した断面四角形で細長状の耐火れんが33を用い、この耐火れんが33を交互に隙間34をあけて上下左右に積み重ね、円形の渦流火導孔32と角形の渦流火導路35とを隣接することにより形成されている。そして、再燃焼室内の排ガスが渦流火導孔32および渦流火導路35に流入され孔壁面と接触することにより、排ガスと熱風とが混和し、完全燃焼されて無煙、無臭化を図り公害の発生を抑えるという火葬炉が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公平4−356976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の渦流火導孔装置31では、耐火れんが33の隅角部に接着剤を塗布し、上部の耐火れんが33の隅角部を合致させて接合一体化する必要があるところ、接地面の小さい隅角部同士を確実に合致させるのは難しく、設定されるべき位置での接合ができずに位置ずれを生じさせてしまうことがある。また、耐火性の接着剤は熱収縮が大きく、加熱により耐火れんが間の接着部に亀裂や隙間が生じる場合があり、熱収縮に起因する接着部の破損により積み上げられた耐火れんがの一部が傾斜したり、脱落したりして構造物自体が崩れてしまうこともある。
【0006】
また、円形の渦流火導孔32と、角形の渦流火導路35は形状が円形と角形で異なっているが、両者に断面積の差があまりないため、渦流火導孔32を通過する排ガスと渦流火導路35を通過する排ガスの速度および勢いは殆ど変らない。そのため、排出側で生じる乱流の発生が弱くなり、排ガスと熱風とが十分に混合されず、排ガスが完全に燃焼されないまま排出されてしまうおそれもある。
【0007】
本発明は上記のような問題点に鑑み開発されたもので、渦流火導孔装置を構築する場合に、構築が容易であり、耐火れんがの脱落および崩れを防止できると共に、未燃焼排ガスを効果的に完全燃焼させて、無煙、無臭で公害を発生させることがない火葬炉を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決し、その目的を達成するために、本発明に係る火葬炉は、主燃焼室の上部の再燃焼室に未燃焼排ガスを再燃焼させるための渦流火導孔装置を設けた火葬炉であって、前記渦流火導孔装置は、未燃焼排ガスを通過させる渦流火導孔の形状が異なる少なくとも2種以上の耐火物が積み重ねられて構築され、少なくともいずれか1種の耐火物に凸部と凹部とが設けられて嵌合可能になっていることを特徴とする。
【0009】
これによれば、主燃焼バーナを有する主燃焼室において、棺や副葬品を燃焼させることで発生した未燃焼ガスは再燃焼室に流入され、再燃焼室の燃焼排ガスと混合されると共に、天井面に設置された再燃焼バーナの噴射により未燃焼排ガスが熱分解される。このとき、再燃焼室の中程に設置されている渦流火導孔装置は、従来のように、1種類の耐火物で隙間をあけて積み上げるのでなく、渦流火導孔の形状が異なる少なくとも2種類の耐火物を交互に隣接面が接するように積み重ねるだけで施工でき、しかも、少なくとも1種類の耐火物に凸部と凹部を設けて互いに嵌合するようにしているので、耐火れんがの一部がズレたり、脱落したりして構造物自体が崩れることがない。
【0010】
さらに、排ガスが渦流火導孔装置に導入される時に、渦流が発生して渦を巻きながら渦流火導孔内を螺旋状に通過し、渦流火導孔の内壁との接触が多くなり、排ガスと熱風とが混和して再燃焼効率を高める。特に排出口側では、形状が異なる渦流火導孔から排出される排ガスの流れが速くて勢いがあることから、2種類の排ガスが激しく衝突、拡散して激しい乱流を生じさせ、未燃焼排ガスは充分に混合されて昇温し完全燃焼される。
【0011】
ここで、前記渦流火導孔装置は、円形の渦流火導孔を貫通した第1耐火物と、横長四角形の渦流火導孔を貫通した第2耐火物とからなり、第1耐火物と第2耐火物とが交互に配されて構築されているのが好ましい。
【0012】
これによって、排ガスが第1耐火物および第2耐火物に導入される時に、導入口の形状が円形と横長四角形の違いがあり、乱流が生じてそのまま渦流火導孔に導入されて進行していき、排ガスは円形の渦流火導孔および横長四角形状の渦流火導孔に接触しながら通過することにより再燃焼バーナの燃焼だけでは昇温しきれなかった排ガスが昇温されて完全燃焼させることができる。
【0013】
また、前記第1耐火物は断面正方形の直方体形状であり、前記第2耐火物は断面横長四角形の直方体形状であるのが好ましい。
【0014】
これによって、第1耐火物および第2耐火物の組み立て時において、第1耐火物と第2耐火物との上下辺および左右を接するように配置すればよく、施工がきわめて簡単にできる。
【0015】
さらに、前記第2耐火物の平面中央部の長さ方向に凸部が設けられており、底面中央部の長さ方向に凹部が設けられているのが好ましい。
【0016】
これによって、第2耐火物は高さ方向の全長に亘って上下部で密嵌合されることになり、耐火れんがの一部がズレたり、脱落したりして構造物自体が崩れることがない。また、凸部と凹部とを嵌合させる時には触感で両者の嵌合を認識することができる。
【0017】
前記第1耐火物における円形の渦流火導孔は、排ガス導入口から排出口に向かって徐々に小径になる円形のテーパー孔であるとしてもよい。
【0018】
これによって、テーパー孔から排出される排ガスは、速度の速い勢いのある排ガスとなり、第2耐火物の横長四角形の孔から出る排ガスも勢いがあることから、それらが激しくぶつかり合って乱流作用が生じ、高温ガスと低温ガスとが偏りなく混合されるので、排ガスを完全燃焼させることができ、炉体の外側にダイオキシンやメタンガスなどの有害物質を放出することがなくなる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明の火葬炉によれば、未燃焼ガスの燃焼化を促進する渦流火導孔装置を、少なくとも2種類の耐火物で容易に構築できる。また、少なくとも1種類の耐火物の上下面に互いに嵌合する凸凹部が設けられているので、耐火れんがの一部がズレたり、脱落したりして構造物自体が崩れることがない。さらに、渦流火導孔の排出側において、排ガスが激しくぶつかり、乱流が生じて混合されることになり、排ガスは完全燃焼され、炉体の外側にダイオキシンやメタンガスなどの有害物質を放出することがなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1実施形態における火葬炉の縦断面図である。
図2】渦流火導孔装置の拡大説明図である。
図3図2のA−A線拡大縦断面図である。
図4】第1耐火物の斜視図である。
図5】第2耐火物の斜視図である。
図6】渦流火導孔装置の断面図である。
図7】本発明の第2実施形態の渦流火導孔装置の拡大説明図である。
図8図7のB−B線拡大縦断面図である。
図9】従来の渦流火導孔装置の正面図である。
図10】従来の渦流の進行状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る火葬炉の実施の形態を添付図面に基づいて説明をする。図1乃至図6は本発明の第1実施形態の火葬炉を示すものである。主燃焼室1の前壁面に棺載台車2の出入口3が設けられ、この出入口3には断熱扉4が上下方向に開閉自在になっていると共に、後壁面には主燃焼バーナ5が設置され、その上部に点検窓6と二次燃焼空気口7が設けられ、底面には棺載台車2が移動するガイドレール8が配設されている。
【0022】
主燃焼室1の上部には、主燃焼室1の前方上部に縦設した煙道9により連通する再燃焼室10が設けられており、この再燃焼室10の前方室10aの天井面に再燃焼バーナ11が斜め下方に火炎が噴出するように設置され、その火炎が底板12に当たり跳ね返って再燃焼室10の略中間部の位置にある渦流火導孔装置13が加熱されている。
【0023】
この渦流火導孔装置13は、再燃焼室10の未燃焼ガス成分の燃焼を促進するためのものであり、再燃焼室10の略中程に設置されており、図2に示すように、円形の渦流火導孔14を貫通した第1耐火物15と、横長四角形の渦流火導孔16を貫通した第2耐火物17を交互にして積み重ねたものである。
【0024】
第1耐火物15は縦断面が正方形で細長い直方体形状の耐火レンガ製であり、材質がアルミナの他、SK36(ハイアルミナ質)、SK37(ハイアルミナ質)、SK38(ハイアルミナ質)の円形の渦流火導孔14が中央部の長さ方向に沿って貫通されている。
【0025】
第2耐火物17は縦断面が横長四角形で細長い直方体形状の耐火レンガ製であり、材質がアルミナの他、SK36(ハイアルミナ質)、SK37(ハイアルミナ質),SK38(ハイアルミナ質)の横長四角形の渦流火導孔16が中央部の長さ方向に沿って貫通されている。また、平面中央部の長手方向に延設する凸部18が突設されていると共に、底面中央部には前記凸部18が嵌合する凹部19が設けられている。
【0026】
再燃焼室10の後方室10bには三次燃焼室20が再燃焼室10に対して垂直に起立されており、内側壁面から中心部に向かって水平方向に突出する邪魔板21が取り付けられている。
【0027】
このような構成からなる火葬炉の使用例を説明すると、遺体や副葬品、ドライアイスの入った棺が棺載台車2に載せられ、主燃焼室1内に収容され断熱扉4を閉めて火葬を行う。
【0028】
主燃焼室1では、自然燃焼および主燃焼バーナ5を用いて燃焼量をコントロールしながら燃焼を行い、必要に応じて二次燃焼空気口7から燃焼用空気を補充する。この主燃焼室1での燃焼により発生した排ガスは、上方の煙道9を通って再燃焼室10に流れ込み、排ガスは再燃焼バーナ11の燃焼により未燃有機物が効果的に分解される。
【0029】
また、再燃焼室10の略中程に、円形の渦流火導孔14を持つ第1耐火物15と、横長四角形の渦流火導孔16を持つ第2耐火物17で構築した渦流火導装置孔13が設置されており、主燃焼室1から流入された未燃焼排ガスが渦流火導孔に流入する時に渦流が発生して渦を巻きながら円形の渦流火導孔14と横長四角形の渦流火導孔16を螺旋状に通過するため、渦流火導孔の内壁面との接触が多くなり燃焼が促進される。特に渦流火導孔16は横長四角の孔であるから流速が速くて勢いがあり拡散し、排出側において渦流火導孔14からの排ガスと激しく衝突、激しい乱流を生じさせるので未燃焼排ガスは充分に混合されて完全燃焼される。
【0030】
さらに、再燃焼室10で熱分解されなかったダイオキシン類などの有機物は、三次燃焼室20に設けられている邪魔板21に当たって排ガスの流れが変化し、螺旋状の旋回流となり、燃焼排ガス中の有機物を三次燃焼室内において効率よく除去される。
【0031】
図7図8に示すのは本発明の第2実施形態を示すものである。第1実施形態では、第1耐火物15を円形の渦流火導孔14の例で説明したが、この第2実施形態では、排ガス導入口24aから排出口24bに向かって徐々に小径になる円形のテーパー孔24としたものである。第2耐火物については第1実施形態と何ら変わることがないので、同一部分には同一符号を付し説明は省略する。
【0032】
この円形のテーパー孔24を採用すると、円形の渦流火導孔14よりも流速が速くて勢いがあり、横長四角形の渦流火導孔16からの排ガスと激しく衝突して、強い乱流が生じ未燃焼排ガスは充分に混合されて完全燃焼される。
【0033】
以上、本発明について各実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、例えば、渦流火導孔の断面形状を円形で説明したが他の形状でもよい。また、煙道は主燃焼室の前部から再燃焼室の後部に通じる構造のもので説明したが、後部から再燃焼室の後部に通じる構造のものであってもよく、要するに、本発明の目的を達成でき、かつ本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の設計変更が可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明によれば、無煙、無臭で公害を発生させることがなく、また、省エネ、省力化にも配慮した環境保全に優れた火葬炉として有効に利用可能できる。
【符号の説明】
【0035】
1 主燃焼室
10 再燃焼室
13 渦流火導孔装置
14 第1耐火物の渦流火導孔
15 第1耐火物
16 第2耐火物の渦流火導孔
17 第2耐火物
18 凸部
19 凹部
22 排ガス導入口
23 排ガス排出口
24 テーパー孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10