特許第6357171号(P6357171)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6357171コバルトビスイミノピリジン錯体を含む触媒系の存在下での共役ジエン(共)重合体の生成プロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6357171
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】コバルトビスイミノピリジン錯体を含む触媒系の存在下での共役ジエン(共)重合体の生成プロセス
(51)【国際特許分類】
   C08F 4/70 20060101AFI20180702BHJP
   C08F 36/04 20060101ALI20180702BHJP
【FI】
   C08F4/70
   C08F36/04
【請求項の数】14
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2015-548868(P2015-548868)
(86)(22)【出願日】2013年12月20日
(65)【公表番号】特表2016-501957(P2016-501957A)
(43)【公表日】2016年1月21日
(86)【国際出願番号】IB2013061193
(87)【国際公開番号】WO2014097245
(87)【国際公開日】20140626
【審査請求日】2016年10月24日
(31)【優先権主張番号】MI2012A002206
(32)【優先日】2012年12月20日
(33)【優先権主張国】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】508128303
【氏名又は名称】ベルサリス、ソシエタ、ペル、アチオニ
【氏名又は名称原語表記】VERSALIS S.P.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100181272
【弁理士】
【氏名又は名称】神 紘一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100196298
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 高雄
(72)【発明者】
【氏名】フランチェスコ マージ
(72)【発明者】
【氏名】ジョバンニ リッチ
(72)【発明者】
【氏名】アンナ ソマッツィ
(72)【発明者】
【氏名】ジュゼッペ レオーネ
(72)【発明者】
【氏名】マリア カルダラロ
【審査官】 渡辺 陽子
(56)【参考文献】
【文献】 欧州特許出願公開第01367069(EP,A1)
【文献】 米国特許第06479601(US,B1)
【文献】 特表2007−530506(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0215792(US,A1)
【文献】 特表2002−510661(JP,A)
【文献】 米国特許第06063881(US,A)
【文献】 特表2002−506091(JP,A)
【文献】 米国特許第06451939(US,B1)
【文献】 特開2000−344822(JP,A)
【文献】 米国特許第06414098(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F4,36、C07C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
【化1】
(式中、R及びRは、同一又は異なり、水素原子を表すか、又は、任意にハロゲン化される直鎖状又は分岐鎖状C−C20アルキル基、任意に置換されるシクロアルキル基、及び任意に置換されるアリール基から選択される、
及びRは、互いに異なり、水素原子を表すか、又は、任意にハロゲン化される直鎖状又は分岐鎖状C−C20アルキル基、任意に置換されるシクロアルキル基、任意に置換されるアリール基、及びアリールアルキル基から選択される、
あるいは、R及びRは、任意に互いに結合して、R及びRが結合する他の原子と共に、飽和、不飽和、又は芳香族であり、直鎖状又は分岐鎖状C−C20アルキル基で任意に置換される、3〜6の炭素原子を含む環を形成し得る、前記環は、酸素、硫黄、窒素、ケイ素、リン、セレン等の他のヘテロ原子を任意に含有する、
あるいは、R及びRは、任意に互いに結合して、R及びRが結合する他の原子と共に、飽和、不飽和、又は芳香族であり、直鎖状又は分岐鎖状C−C20アルキル基で任意に置換される、3〜6の炭素原子を含む環を形成し得る、前記環は、酸素、硫黄、窒素、ケイ素、リン、セレン等の他のヘテロ原子を任意に含有する、
、R、及びRは、同一又は異なり、水素原子を表すか、又は、任意にハロゲン化される直鎖状又は分岐鎖状C−C20アルキル基、任意に置換されるシクロアルキル基、任意に置換されるアリール基、及びアリールアルキル基から選択される、
あるいは、R及びRは、任意に互いに結合して、R及びRが結合する他の原子と共に、飽和、不飽和、又は芳香族であり、直鎖状又は分岐鎖状C−C20アルキル基で任意に置換される、3〜6の炭素原子を含む環を形成し得る、前記環は、酸素、硫黄、窒素、ケイ素、リン、セレン等の他のヘテロ原子を任意に含有する、
あるいは、R及びRは、任意に互いに結合して、R及びRが結合する他の原子と共に、飽和、不飽和、又は芳香族であり、直鎖状又は分岐鎖状C−C20アルキル基で任意に置換される、3〜6の炭素原子を含む環を形成し得る、前記環は、酸素、硫黄、窒素、ケイ素、リン、セレン等の他のヘテロ原子を任意に含有する、
及びXは、同一又は異なり、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子を表すか、又は、直鎖状又は分岐鎖状C−C20アルキル基、−OCOR基、及び−OR基から選択される、ここで、Rは、直鎖状又は分岐鎖状C−C20アルキル基から選択される)
を有する少なくとも1つのコバルトビスイミンピリジン錯体を含む触媒系の存在下での少なくとも1つの共役ジエンの重合を含む、共役ジエン(共)重合体の生成プロセス。
【請求項2】
前記触媒系は、炭素と異なる元素M’の有機化合物から選択される少なくとも1つの共触媒(b)を含む、ここで、元素M’は、ホウ素、アルミニウム、亜鉛、マグネシウム、ガリウム、スズ等の、元素周期表の族2、12、13、又は14に属する元素から選択される、請求項1に記載の共役ジエン(共)重合体の生成プロセス。
【請求項3】
前記共触媒(b)は、一般式(II)
Al(X’)(R3−n (II)
(式中、X’は、塩素、臭素、ヨウ素、フッ素等のハロゲン原子であり、Rは1以上のケイ素又はゲルマニウム原子で任意に置換されていてもよい直鎖状又は分岐鎖状C−C20アルキル基、シクロアルキル基、及びアリール基から選択され、nは0〜2の整数である)
を有するアルキルアルミニウム(b)から選択される、請求項2に記載の共役ジエン(共)重合体の生成プロセス。
【請求項4】
前記共触媒(b)は、元素周期表の族13又は14に属する炭素と異なる元素M’の有機含酸素化化合物(b)から選択される、請求項2に記載の共役ジエン(共)重合体の生成プロセス。
【請求項5】
前記共触媒(b)は、一般式(I)を有するコバルトビスイミンピリジン錯体と反応しそこからσ結合置換基X又はXを抽出して、一方で少なくとも1つの中性化合物を形成し、他方で配位子に配位される金属(Co)を含有するカチオンと金属M’を含有する非配位性有機アニオンとからなるイオン化合物を形成することのできる、炭素と異なる元素M’の有機金属化合物又は有機金属化合物混合物(b)から選択される、ここで、負電荷は多中心性構造上で非局在化される、請求項2に記載の共役ジエン(共)重合体の生成プロセス。
【請求項6】
前記共役ジエンは、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、及びシクロ−1,3−ヘキサジエンから選択される、請求項1〜5のいずれかに記載の共役ジエン(共)重合体の生成プロセス。
【請求項7】
前記一般式(I)を有するコバルトビスイミンピリジン錯体において、
及びRは、同一又は異なり、水素原子であるか、又は、直鎖状又は分岐鎖状C−C20アルキル基から選択され、好ましくはメチル基である、
及びRは、互いに異なり、水素原子であるか、又は、直鎖状又は分岐鎖状C−C20アルキル基であって好ましくはメチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、s−ブチル、イソ−ブチル、tert−ブチル、任意に置換されるシクロアルキル基であって好ましくはシクロヘキシル基、直鎖状又は分岐鎖状C−C20アルキル基で任意に置換され好ましくは1以上のイソ−プロピル、tert−ブチル基で置換されるフェニル基、アリールアルキル基であって好ましくはベンジル、から選択される、
、R、及びRは、同一又は異なり、水素原子を表すか、又は、直鎖状又は分岐鎖状C−C20アルキル基から選択され、好ましくはメチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、s−ブチル、イソ−ブチル、tert−ブチルである、
及びXは、同一で、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子であり、好ましくは塩素である、請求項1〜6のいずれかに記載の共役ジエン(共)重合体の生成プロセス。
【請求項8】
前記一般式(II)を有するアルキルアルミニウム(b)は、ジ−エチル−アルミニウムクロライド(DEAC)、モノ−エチル−アルミニウムジクロライド(EADC)、エチルアルミニウセスキクロライド(EASC)である、請求項3に記載の共役ジエン(共)重合体の生成プロセス。
【請求項9】
前記有機含酸素化化合物(b)は、一般式(III)を有するアルミノキサンから選択される:
(R10−Al−O−[−Al(R11)−O−]−Al−(R12 (III)
10、R11、及びR12は、同一又は異なり、水素原子か、塩素、臭素、ヨウ素、フッ素等のハロゲン原子を表すか、又は、1以上のケイ素又はゲルマニウム原子で任意に置換される直鎖状又は分岐鎖状C−C20アルキル基、シクロアルキル基、及びアリール基から選択され、pは、0〜1,000の整数である、請求項4に記載の共役ジエン(共)重合体の生成プロセス。
【請求項10】
前記有機含酸素化合物(b)は、メチルアルミノキサン(MAO)である、請求項9に記載の共役ジエン(共)重合体の生成プロセス。
【請求項11】
前記化合物又は化合物混合物(b)は、以下の一般式で表されるような、アルミニウムや特にホウ素の有機化合物から選択される:
[(R4−W]・[B(R;B(R;Al(R;B(RP;
[PhC]・[B(R;[(RPH]・[B(R
[Li]・[B(R;[Li]・[Al(R
(式中、wは、0〜3の整数であり、各基Rは個別に、炭素数1〜10のアルキル基又はアリール基を表し、各基Rは個別に、部分的又は全体的、好ましくは全体的に、フッ素化され、炭素数6〜20のアリール基を表し、Pは任意に置換されていてもよいピロールラジカルを表す)
、請求項5に記載の共役ジエン(共)重合体の生成プロセス。
【請求項12】
前記プロセスは、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、これらの混合物等の飽和脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、これらの混合物等の飽和脂環式炭化水素、1−ブテン、2−ブテン、これらの混合物等のモノオレフィン、ベンゼン、トルエン、キシレン、これらの混合物等の芳香族炭化水素、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、トリクロロエチレン、ペルクロロエチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、クロロトルエン、これらの混合物等のハロゲン化炭化水素から選択される不活性有機溶媒の存在下で行われる、請求項1〜11のいずれかに記載の共役ジエン(共)重合体の生成プロセス。
【請求項13】
前記不活性有機溶媒中の(共)重合される共役ジエンの濃度は、共役ジエンと不活性有機溶媒との混合物の総重量の5重量%〜50重量%である、請求項12に記載の共役ジエン(共)重合体の生成プロセス。
【請求項14】
前記プロセスは、−70℃〜+100℃の温度で行われる、請求項1〜13のいずれかに記載の共役ジエン(共)重合体の生成プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共役ジエン(共)重合体の生成プロセスに関する。
【0002】
特に、本発明は、コバルトビスイミノピリジン錯体を含む触媒系の存在下での少なくとも1つの共役ジエンの重合を含む、共役ジエン(共)重合体の生成プロセスに関する。
【背景技術】
【0003】
共役ジエンの立体特異性(共)重合は、最も広く利用されているゴムの一つである製品を得るために化学産業において非常に重要なプロセスであることが知られている。
【0004】
また、1,3−ブタジエン(すなわち、1,2ユニットの可変含有量を有する、1,4−シス、1,4−トランス、1,2シンジオタクチック、1,2イソタクチック、1,2アタクチック、混合1,4−シス/1,2構造)の立体特異性重合から得られる種々の重合体の中で、1,4−シスポリブタジエン及びシンジオタクチック1,2ポリブタジエンのみが工業的に生産され市販されていることが知られている。これら重合体の詳細については、例えば、以下に記載されている:Takeuchi Y. et al., “New Industrial Polymers”, “American Chemical Society Symposium Series” (1974), Vol. 4, pp. 15-25;Halasa A. F. et al., “Kirk-Othmer Encyclopedia of Chemical Technology” (1989), 4th Ed., Kroschwitz J. I. Ed., John Wiley and Sons, New York, Vol. 8, pp. 1031-1045;Tate D. et al., “Encyclopedia of Polymer Science and Engineering (1989), 2nd Ed., Mark H. F. Ed., John Wiley and Sons, New York, Vol. 2, pp. 537-590;Kerns M. et al., “Butadiene Polymers”, “Encyclopedia of Polymer Science and Technology” (2003), Mark H. F. Ed., Wiley, Vol. 5, pp. 317-356。
【0005】
1,4−シスポリブタジエンは、合成エラストマーであり、一般的に、1,4−シスユニット含有量が96%〜97%、融点(T)が約−2℃、結晶化温度(T)が約−25℃、ガラス転移点(T)が−100℃未満である。その性質は天然ゴムによく似ており、主な用途は自動車及び/又はトラックのタイヤ生産である。特に、タイヤ生産において、1,4-死すユニット含有量が高いポリブタジエンが使用される。
【0006】
一般的に、1,4−シスポリブタジエンは、チタン(Ti)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、ネオジム(Nd)をベースとする触媒を含む種々の触媒系を用いる重合プロセスで生成される。コバルトをベースとする触媒を含む触媒系は、高い触媒活性と立体特異性とを有し、上に列記したものの中で最も汎用性があると考えられる。なぜなら、コバルトをベースとする触媒を含む触媒系は、配合を変えることによって、上記のポリブタジエンの全ての可能な立体異性体を提供することができるからである。例えば、以下を参照のこと: Porri L. et al., “Comprehensive Polymer Science” (1989), Eastmond G.C. et al. Eds., Pergamon Press, Oxford, UK, Vol. 4, Part II, pp. 53-108;Thiele S. K. H. et al., “Macromolecular Science. Part C: Polymer Reviews” (2003), C43, pp. 581-628;Osakada, K. et al., “Advanced Polymer Science” (2004), Vol. 171, pp. 137-194;Ricci G. et al., “Advances in Organometallic Chemistry Research” (2007), Yamamoto K. Ed., Nova Science Publisher, Inc., USA, pp. 1-36; Ricci G. et al., “Coordination Chemistry Reviews” (2010), Vol. 254, pp. 661-676;Ricci G. et al., “Cobalt: Characteristics, Compounds, and Applications” (2011), Lucas J. Vidmar Ed., Nova Science Publisher, Inc., USA, pp. 39-81。
【0007】
例えば、Racanelli P. et al., “European Polymer Journal” (1970), Vol. 6, pp. 751-761等に記載されているように、触媒系コバルトビス−アセチルアセトネート/ジ−エチルアルミニウムクロライド/水[Co(acac)/AlEtCl/HO]は、1,4−シスユニット含有量約97%のポリブタジエンを提供し、この重合体の工業生産に通常用いられる。また、Ricci G. et al., “Polymer Communication” (1991), Vol. 32, pp. 514-517等に記載されているように、触媒系コバルトトリス-アセチルアセトネート/メチルアルミノキサン[Co(acac)/MAO]も、1,4−シスユニット含有量約97%のポリブタジエンを提供する。
【0008】
一方、Furukawa J. et al., “Polymer Journal” (1971), Vol. 2, pp. 371-378等に記載されているように、触媒系コバルトトリス−アセチルアセトネート/トリ−エチルアルミニウム/水[Co(acac)/AlEt/HO]は、混合1,4−シス/1,2等二成分系構造を有するポリブタジエンを提供する。この触媒系は、二硫化炭素(CS)の存在下で、高結晶質の1,2シンジオタクチックポリブタジエンの工業生産プロセスに用いられる。同プロセスの詳細については、例えば、以下に記載されている:Ashitaka H. et al., “Journal of Polymer Science: Polymer Chemistry Edition” (1983), Vol. 21, pp. 1853-1860;Ashitaka H. et al., “Journal of Polymer Science: Polymer Chemistry Edition” (1983), Vol. 21, pp. 1951-1972;Ashitaka H. et al., “Journal of Polymer Science: Polymer Chemistry Edition” (1983), Vol. 21, pp. 1973-1988;Ashitaka H. et al., “Journal of Polymer Science: Polymer Chemistry Edition” (1983), Vol. 21, pp. 1989-1995。
【0009】
1,2−シンジオタクチックポリブタジエンの生成のための極めて活性の高い立体特異的な触媒系は、コバルトアリル錯体(η−C)(η−C13)Co(Natta G. et al., “Chemical Communications” (1967), Issue 24, pp. 1263-1265等に記載)と二硫化炭素(CS)(Ricci G. et al., “Polymer Communication” (1988), Vol. 29, pp. 305-307等に記載)との結合によって得られる。この触媒系は、室温で1,3−ブタジエンを二量化することができる(米国特許US 5,879,805等に記載)が、低温(−30℃)では1,2−シンジオタクチック重合体を与えることができるのみである(Ricci G. et al., “Polymer Communication” (1988), Vol. 29, pp. 305-307等に記載)。
【0010】
1,2−シンジオタクチックポリブタジエンは、二塩化コバルト(CoCl)又は二臭化コバルト(CoBr)とアルミニウム(例:アルキルアルミニウム化合物)、水、及びホスフィン(例:トリフェニルホスフィン)の有機化合物(以下の米国特許等に記載: US 5,879,805、US 4,324,939、US 3,966,697、US 4,285,833、US 3,498,963、US 3,522,332、US 4,182,813、US 5,548,045、US 7,009,013)との結合によって得られる触媒系を用いて生成することもできる。この触媒系で得られるポリブタジエンの位置規則性及び結晶性は、Ricci G. et al., “Polymer Communication” (1988), Vol. 29, pp. 305-307に記載されている上記触媒系で得られるポリブタジエンよりはるかに低い(例えば、1,2ユニット:80%〜90%、融点(T):75℃〜90℃)。
【0011】
種々のホスフィンを有するコバルト錯体を含む触媒系を用いた1,3−ブタジエンの重合の詳細については、例えば、以下を参照のこと: Ricci G. et al., “Macromolecules” (2005), Vol. 38, pp. 1064-1070;Ricci G. et al., “Journal of Organometallic Chemistry” (2005), Vol. 690, pp. 1845-1854;Takeuchi M. et al., “Polymer International” (1992), Vol. 29, pp. 209-212;Takeuchi M. et al., “Polymer International” (1995), Vol. 36, pp. 41-45;Takeuchi M. et al., “MacromolecularChemistry and Physics” (1996), Vol. 197, pp. 729-743;イタリア特許IT 1,349,141、IT 1,349,142、IT 1,349,143。種々のホスフィンの使用は、ホスフィンの立体的及び電子特性がリン原子の置換基の種類にどのように大きく依存するかが知られているという事実に由来する(例えば、以下を参照のこと:Dierkes P. et al., “Journal of Chemical Society, Dalton Transactions” (1999), pp. 1519-1530;van Leeuwen P. et al., “Chemical Reviews” (2000), Vol. 100, pp. 2741-2769;Freixa Z. et al., “Dalton Transactions” (2003), pp. 1890-1901;Tolman C., “Chemical Reviews” (1977), Vol. 77, pp. 313-348)。
【0012】
上記のホスフィンの使用に関する文献では、如何にして、メチルアルミノキサン(MAO)と結合したコバルトホスフィン錯体を使用することによって、コバルト原子と配位結合されるホスフィンの種類に応じて、ポリブタジエンの微細構造を管理することができ、異なる構造のポリブタジエンを得ることができるかが示されている。
【0013】
立体障害型脂肪族ホスフィン(例:PBu、PPr、PBuMe、PCy、PCyp、ここで、Pはリン、Buはtert−ブチル、Prはイソプロピル、Cyはシクロヘキシル、Cypはシクロペンチルである)を有するコバルト錯体を含む触媒系を用いた1,3−ブタジエンの重合によって、広く1,4−シス構造を持つポリブタジエンが得られる。一方、立体障害のより低いホスフィン(例:PCyH、PBuH、PEt、PPr、ここで、Pはリン、Cyはシクロヘキシル、Buはtert−ブチル、Etはエチル、Prはn−プロピルである)を有するコバルト錯体を含む触媒系を用いると、混合1,4−シス/1,2構造のポリブタジエンが得られる(例えば、以下を参照のこと:Ricci G. et al., “Advances in Organometallic Chemistry Research” (2007), Yamamoto K. Ed., Nova Science Publisher, Inc., USA, pp. 1-36;Ricci G. et al., “Coordination Chemistry Reviews” (2010), Vol. 254, pp. 661-676;Ricci G. et al., “Journal of Molecular Catalysis A: Chemical” (2005), Vol. 226, pp. 235-241;イタリア特許出願IT 1,349,141)。
【0014】
1,4−シスユニット含有量が高い(約95%)ポリブタジエンは、コバルト原子と配位結合される二座ホスフィンの種類にかかわらず、二座ホスフィン(例:CoCl[RP(CHPR]/MAO、ここで、Coはコバルト、Clは塩素、Rはメチル、エチル、フェニル、nは1又は2、Pはリン、MAOはメチルアルミノキサン)を有するコバルト錯体を含む触媒系を用いて得られる(例えば、以下を参照のこと:Ricci G. et al., “Advances in Organometallic Chemistry Research” (2007), Yamamoto K. Ed., Nova Science Publisher, Inc., USA, pp. 1-36; Ricci G. et al., “Coordination Chemistry Reviews” (2010), Vol. 254, pp. 661-676;イタリア特許出願IT 1,349,141)。
【0015】
一方、芳香族ホスフィン(例:CoCl(PRPh/MAO、ここで、Coはコバルト、Clは塩素、Pはリン、Rはメチル、n−プロピル、エチル、イソ−プロピル、シクロヘキシル、Phはフェニル、MAOはメチルアルミノキサンである)から選択される配位子を有するコバルト錯体を含む触媒系は、1,3−ブタジエンの1,2重合に極めて活性の高いことが分かっている(例えば、以下を参照のこと:Ricci G. et al., “Advances in Organometallic Chemistry Research” (2007), Yamamoto K. Ed., Nova Science Publisher, Inc., USA, pp. 1-36; Ricci G. et al., “Coordination Chemistry Reviews” (2010), Vol. 254, pp. 661-676;Ricci G. et al., “Macromolecules” (2005), Vol. 38, pp. 1064-1070;Ricci G. et al., “Journal of Organometallic Chemistry” (2005), Vol. 690, pp. 1845-1854;イタリア特許出願IT 1,349,143)。実際、このような触媒系を用いて、錯体の種類及び重合条件に関連して1,2ユニットの可変含有量を有する、本質的に1,2構造であるポリブタジエンが得られる(70%〜88%の範囲内)。また、得られるポリブタジエンの立体規則性が錯体の種類、即ち、コバルト原子に結合するホスフィンの種類に大きく依存すること、及び、13C−NMRスペクトルによって決定されるシンジオタクチシチーインデックス(シンジオタクチックトライアド「rr」のパーセンテージで表される)がリン原子に結合するアルキル基の立体的条件の増加と共に増加することが観測されている。
【0016】
立体障害のより低いホスフィン配位子(例:PMePh、PEtPh、PPrPh、ここで、Pはリン、Meはメチル、Phはフェニル、Prはn−プロピルである)を有するコバルト系で得られる1,2ポリブタジエンは、非結晶質である一方、立体障害のより高いホスフィン配位子(例:PPrPh、PCyPh、ここで、Pはリン、Prはイソプロピル、Phはフェニル、Cyはシクロヘキシルである)を用いた触媒系で得られるポリブタジエンは、結晶質で、重合条件に応じて、110℃〜120℃の融点(T)を持つことが分かっている。
【0017】
式CoCl(PRPh)/MAO(ここで、Coはコバルト、Clは塩素、Rはメチル、エチル、シクロヘキシル、Phはフェニル、MAOはメチルアルミノキサンである)を有する芳香族ホスフィンを伴うコバルト錯体を含む触媒系での1,3−ブタジエンの重合も、研究されている(例えば、以下を参照のこと:Ricci G. et al., “Advances in Organometallic Chemistry Research” (2007), Yamamoto K. Ed., Nova Science Publisher, Inc., USA, pp. 1-36;Ricci G. et al., “Coordination Chemistry Reviews” (2010), Vol. 254, pp. 661-676;Ricci G. et al., “Journal of Organometallic Chemistry” (2005), Vol. 690, pp. 1845-1854;イタリア特許出願IT 1,349,143)。このような触媒系を用いて、本質的に1,2−ポリブタジエンが得られるが、同じ重合条件における重合体のシンジオタクチシチーインデックスは、上記式CoCl(PRPh)/MAOを有する芳香族ホスフィンを伴うコバルト錯体を含む触媒系で得られる1,2−ポリブタジエンよりわずかに低いことが分かっている。
【0018】
ごく最近では、コバルトホスフィン錯体を含む上記触媒系を用いることによる成功例に続いて、窒素又は酸素をドナー原子として含有する配位子を有するコバルト錯体を含むさまざまな触媒系が研究されている。
【0019】
例えば、Kim J. S. et al.,“e-Polymer”(European Polymer Federation) (2006), No. 27は、ビス(イミン)ピリジン及びエチルアルミニウムセスキクロライド[AlEtCl(EASC)]配位子を有するコバルト錯体を含む触媒系を用いた1,3−ブタジエンの重合について記載している。当該触媒系は、特に活性が高いことが分かっており、96.4%の1,4−シスユニット含有量の高分子量ポリブタジエンを提供する。
【0020】
式(Salen)Co(II)(ここで、Salenは、ビス(サリチルアルデヒド)エチレンジイミナート、Co はコバルトである)を有するコバルト錯体及びメチルアルミノキサン(MAO)を含む触媒系は、高活性及び1,4−シス選択性を特徴とし、例えば、Endo K. et al.,“Journal of Polymer Science: Part A: Polymer Chemistry” (2006), vol. 44, pp. 4088-4094に記載されている。
【0021】
Cariou R. et al.,“Dalton Transactions” (2010), Vol. 39, pp. 9039-9045は、メチルアルミノキサン(MAO)と結合すると1,3−ブタジエンの1,4−シス重合に対して高選択性であることが分かっている、ビス(ベンズイミダゾール)を有する一連のコバルト(II)[Co(II)]錯体の合成及び特性化について記載している。
【0022】
1,3−ブタジエンの重合のために、エチルアルミニウムセスキクロライド(EASC)と結合される、ジベンズイミダゾ-ル配位子を有する一連のコバルト(II)[Co(II)]錯体の合成及び特性化及びその利用法は、Appukuttan et al.,“Polymer” (2009), Vol. 50, pp. 1150-1158に記載されている。ここで得られる触媒系は、高い触媒活性及び高い1,4−シス選択性(最大97%)を特徴とする。
【0023】
2,6−ビス[1−(イミノフェニル)エチル]ピリジン配位子を有するコバルト錯体は、Gong D. et al.(“Polymer” (2009), Vol. 50, pp. 6259-6264)により合成及び特性化されている。この錯体は、メチルアルミノキサン(MAO)と結合して、1,3−ブタジエンの重合用にテストされ、MAO/Co比に関して、1,4−シス又は1,4−トランスポリブタジエンを与えることが可能な触媒系を提供する。実際、MAO/Coモル比が50の場合、本質的に1,4トランスポリブタジエンが得られる(約94.4%)一方、MAO/Coモル比が100の場合、広く1,4−シスポリブタジエンが得られる(約79%)。
【0024】
“Journal of Molecular Catalysis A: Chemical (2010), Vol. 325, pp. 84-90においてAppukuttan V. et al.は、一般式[Py(Bm−R)]CoCl(ここで、Pyはピリジル、Bmはベンズイミダゾリル、Rは水素、メチル、ベンズイミダゾール、Coはコバルト、Clは塩素である)を有する一連の錯体であり、メチルアルミノキサン(MAO)と結合すると、高分子量1,4−シスポリブタジエンを提供することのできる錯体について記載している。
【0025】
“Journal of Organometallic Chemistry” (2011), Vol. 696, pp. 1584-1590においてGong D. et al.は、コバルト(II)[Co(II)]の一連の2,6−ビス(イミノ)ピリジン錯体であって、共触媒としてメチルアルミノキサン(MAO)と結合すると、1,3−ブタジエンの重合において相対的に優れた活性を示し、分子量と分子量分布との両方を制御して、77.5%〜97%の範囲で1,4−シス微細構造を有するポリブタジエンを得ることができる錯体ついて記載している。
【0026】
最後に、“Dalton Transactions” (2011), Vol. 40, pp. 10975-10982においてJie S. et al.及び“Journal of Organometallic Chemistry” (2012), Vol. 705, pp. 51-58においてAi P. et al.は、それぞれ3−アリールイミノメチル−2−ヒドロキシベンズアルデヒド配位子やNNOタイプ(イミノ− 又はアミノ−ピリジルアルコール)配位子を有するコバルト錯体をベースとする触媒を含む触媒系で1,4−シスユニット高含有量(>96%)のポリブタジエンを得る可能性について最近記載している。
【0027】
既述の通り、共役ジエン(共)重合体として、特に1,4−シスユニット高含有量のポリブタジエンは、工業規模で、とりわけタイヤ生産用に最も広く使われている重合体であり、当該(共)重合体を提供することのできる新たなプロセスの研究はいまだ非常に重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0028】
【特許文献1】米国特許第5,879,805号明細書
【特許文献2】米国特許第4,324,939号明細書
【特許文献3】米国特許第3,966,697号明細書
【特許文献4】米国特許第4,285,833号明細書
【特許文献5】米国特許第3,498,963号明細書
【特許文献6】米国特許第3,522,332号明細書
【特許文献7】米国特許第4,182,813号明細書
【特許文献8】米国特許第5,548,045号明細書
【特許文献9】米国特許第7,009,013号明細書
【特許文献10】伊国特許第1,349,141号明細書
【特許文献11】伊国特許第1,349,142号明細書
【特許文献12】伊国特許第1,349,143号明細書
【0029】
【非特許文献1】Ai P. et al. “Journal of Organometallic Chemistry” (2012), Vol. 705, pp. 51-58
【非特許文献2】Appukuttan V. et al. “Journal of Molecular Catalysis A: Chemical(2010), Vol. 325, pp. 84-90
【非特許文献3】Appukuttan et al.,“Polymer” (2009), Vol. 50, pp. 1150-1158
【非特許文献4】Ashitaka H. et al., “Journal of Polymer Science: Polymer Chemistry Edition” (1983), Vol. 21, pp. 1853-1860;Ashitaka H. et al., “Journal of Polymer Science: Polymer Chemistry Edition” (1983), Vol. 21, pp. 1951-1972
【非特許文献5】Ashitaka H. et al., “Journal of Polymer Science: Polymer Chemistry Edition” (1983), Vol. 21, pp. 1973-1988;Ashitaka H. et al., “Journal of Polymer Science: Polymer Chemistry Edition” (1983), Vol. 21, pp. 1989-1995
【非特許文献6】Cariou R. et al.,“Dalton Transactions” (2010), Vol. 39, pp. 9039-9045
【非特許文献7】Dierkes P. et al., “Journal of Chemical Society, Dalton Transactions” (1999), pp. 1519-1530
【非特許文献8】Endo K. et al.,“Journal of Polymer Science: Part A: Polymer Chemistry” (2006), vol. 44, pp. 4088-4094
【非特許文献9】Freixa Z. et al., “Dalton Transactions” (2003), pp. 1890-1901
【非特許文献10】Furukawa J. et al., “Polymer Journal” (1971), Vol. 2, pp. 371-378
【非特許文献11】Gong D. et al. “Journal of Organometallic Chemistry” (2011), Vol. 696, pp. 1584-1590
【非特許文献12】Gong D. et al.(“Polymer” (2009), Vol. 50, pp. 6259-6264)
【非特許文献13】Halasa A. F. et al., “Kirk-Othmer Encyclopedia of Chemical Technology” (1989), 4th Ed., Kroschwitz J. I. Ed., John Wiley and Sons, New York, Vol. 8, pp. 1031-1045
【非特許文献14】Jie S. et al. “Dalton Transactions” (2011), Vol. 40, pp. 10975-10982
【非特許文献15】Kerns M. et al., “Butadiene Polymers”, “Encyclopedia of Polymer Science and Technology” (2003), Mark H. F. Ed., Wiley, Vol. 5, pp. 317-356
【非特許文献16】Kim J. S. et al.,“e-Polymer”(European Polymer Federation) (2006), No. 27
【非特許文献17】Takeuchi Y. et al., “New Industrial Polymers”, “American Chemical Society Symposium Series” (1974), Vol. 4, pp. 15-25
【非特許文献18】Natta G. et al., “Chemical Communications” (1967), Issue 24, pp. 1263-1265
【非特許文献19】Takeuchi M. et al., “Polymer International” (1992), Vol. 29, pp. 209-212
【非特許文献20】Takeuchi M. et al., “Polymer International” (1995), Vol. 36, pp. 41-45
【非特許文献21】Takeuchi M. et al., “Macromolecular Chemistry and Physics” (1996), Vol. 197, pp. 729-743
【非特許文献22】Tate D. et al., “Encyclopedia of Polymer Science and Engineering (1989), 2nd Ed., Mark H. F. Ed., John Wiley and Sons, New York, Vol. 2, pp. 537-590
【非特許文献23】Osakada, K. et al., “Advanced Polymer Science” (2004), Vol. 171, pp. 137-194
【非特許文献24】Porri L. et al., “Comprehensive Polymer Science” (1989), Eastmond G.C. et al. Eds., Pergamon Press, Oxford, UK, Vol. 4, Part II, pp. 53-108
【非特許文献25】Racanelli P. et al., “European Polymer Journal” (1970), Vol. 6, pp. 751-761
【非特許文献26】Ricci G. et al., “Advances in Organometallic Chemistry Research” (2007), Yamamoto K. Ed., Nova Science Publisher, Inc., USA, pp. 1-36
【非特許文献27】Ricci G. et al., “Coordination Chemistry Reviews” (2010), Vol. 254, pp. 661-676
【非特許文献28】Ricci G. et al., “Journal of Molecular Catalysis A: Chemical” (2005), Vol. 226, pp. 235-241
【非特許文献29】Ricci G. et al., “Macromolecules” (2005), Vol. 38, pp. 1064-1070
【非特許文献30】Ricci G. et al., “Journal of Organometallic Chemistry” (2005), Vol. 690, pp. 1845-1854
【非特許文献31】Ricci G. et al., “Polymer Communication” (1988), Vol. 29, pp. 305-307
【非特許文献32】Ricci G. et al., “Macromolecules” (2005), Vol. 38, pp. 1064-1070
【非特許文献33】Ricci G. et al., “Polymer Communication” (1991), Vol. 32, pp. 514-517
【非特許文献34】Ricci G. et al., “Cobalt: Characteristics, Compounds, and Applications” (2011), Lucas J. Vidmar Ed., Nova Science Publisher, Inc., USA, pp. 39-81
【非特許文献35】Ricci G. et al., “Advances in Organometallic Chemistry Research” (2007), Yamamoto K. Ed., Nova Science Publisher, Inc., USA, pp. 1-36
【非特許文献36】Thiele S. K. H. et al., “Macromolecular Science. Part C: Polymer Reviews” (2003), C43, pp. 581-628
【非特許文献37】Tolman C., “Chemical Reviews” (1977), Vol. 77, pp. 313-348
【非特許文献38】van Leeuwen P. et al., “Chemical Reviews” (2000), Vol. 100, pp. 2741-2769
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0030】
出願人は、1,4−シスユニット高含有量、即ち1,4−シスユニット含有量≧97%の、ポリブタジエンやポリイソプレン等、特に直鎖状又は分岐鎖状ポリブタジエン等の、共役ジエン(共)重合体の新たな生成プロセスを発見する課題について検討した。
【0031】
そして、出願人は、1,4−シスユニット高含有量、即ち1,4−シスユニット含有量≧97%の、ポリブタジエンやポリイソプレン等、特に直鎖状又は分岐鎖状ポリブタジエン等の、共役ジエン(共)重合体の生成は、以下に定義する一般式(I)を有する少なくとも1つのコバルトビスイミノピリジン錯体を含む触媒系の存在下で有利に行うことができることを見出した。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1図1は、CoCl(L5)錯体[サンプルGL923]のFT−IRスペクトル(実施例7)である。
図2図2は、実施例10、12で得られたポリブタジエンのFT−IRスペクトルである。
図3図3は、実施例11のポリブタジエンの13C−NMRスペクトル(左)及びH−NMRスペクトル(右)である。
図4図4は、実施例10のポリブタジエンのDSCダイアグラムである。
図5図5は、実施例11のポリブタジエンのDSCダイアグラムである。
図6図6は、実施例12のポリブタジエンのDSCダイアグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
従って、本発明の目的は、一般式(I)
【化1】

(式中、R及びRは、同一又は異なり、水素原子を表すか、又は、任意にハロゲン化される直鎖状又は分岐鎖状C−C20、好ましくはC−C15アルキル基、任意に置換されるシクロアルキル基、及び任意に置換されるアリール基から選択される、
及びRは、異なり、水素原子を表すか、又は、任意にハロゲン化される直鎖状又は分岐鎖状C−C20、好ましくはC−C15アルキル基、任意に置換されるシクロアルキル基、任意に置換されるアリール基、及びアリールアルキル基から選択される、
あるいは、R及びRは、任意に互いに結合して、R及びRが結合する他の原子と共に、飽和、不飽和、又は芳香族であり、直鎖状又は分岐鎖状C−C20、好ましくはC−C15アルキル基で任意に置換される、3〜6の炭素原子を含む環を形成し得る、前記環は、酸素、硫黄、窒素、ケイ素、リン、セレン等の他のヘテロ原子を任意に含有する、
あるいは、R及びRは、任意に互いに結合して、R及びRが結合する他の原子と共に、飽和、不飽和、又は芳香族であり、直鎖状又は分岐鎖状C−C20、好ましくはC−C15アルキル基で任意に置換される、3〜6の炭素原子を含む環を形成し得る、前記環は、酸素、硫黄、窒素、ケイ素、リン、セレン等の他のヘテロ原子を任意に含有する、
、R、及びRは、同一又は異なり、水素原子を表すか、又は、任意にハロゲン化される直鎖状又は分岐鎖状C−C20、好ましくはC−C15アルキル基、任意に置換されるシクロアルキル基、任意に置換されるアリール基、及びアリールアルキル基から選択される、
あるいは、R及びRは、任意に互いに結合して、R及びRが結合する他の原子と共に、飽和、不飽和、又は芳香族であり、直鎖状又は分岐鎖状C−C20、好ましくはC−C15アルキル基で任意に置換される、3〜6の炭素原子を含む環を形成し得る、前記環は、酸素、硫黄、窒素、ケイ素、リン、セレン等の他のヘテロ原子を任意に含有する、
あるいは、R及びRは、任意に互いに結合して、R及びRが結合する他の原子と共に、飽和、不飽和、又は芳香族であり、直鎖状又は分岐鎖状C−C20、好ましくはC−C15アルキル基で任意に置換される、3〜6の炭素原子を含む環を形成し得る、前記環は、酸素、硫黄、窒素、ケイ素、リン、セレン等の他のヘテロ原子を任意に含有する、
及びXは、同一又は異なり、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子を表すか、又は、直鎖状又は分岐鎖状C−C20、好ましくはC−C15アルキル基、−OCOR基、及び−OR基から選択される、ここで、Rは、直鎖状又は分岐鎖状C−C20、好ましくはC−C15アルキル基から選択される。)
を有する少なくとも1つのコバルトビスイミノピリジン錯体を含む触媒系の存在下での少なくとも1つの共役ジエンの重合を含む、共役ジエン(共)重合体の生成プロセスに関する。
【0034】
本明細書及び請求項において、特別の定めのない限り、数値幅の定義は常にその極値を含む。
【0035】
本明細書及び請求項において、「含む(comprising)」という語は、「を主成分とする(which essentially consist of)」又は「からなる(which consist of)」という語も包括する。
【0036】
本発明の好適な実施態様によれば、前記触媒系は、炭素と異なる元素M’の有機化合物から選択される少なくとも1つの共触媒(b)を含んでもよい、ここで、元素M’は、元素周期表の族2、12、13、又は14に属する元素から、好ましくはホウ素、アルミニウム、亜鉛、マグネシウム、ガリウム、スズから、より好ましくはアルミニウム、ホウ素から、選択される。
【0037】
一般式(I)を有するコバルトビスイミノピリジン錯体及び共触媒(b)を含む触媒系の形成は、一般的に好ましくは不活性液体媒体で行われ、より好ましくは炭化水素溶媒で行われる。一般式(I)を有するコバルトビスイミノピリジン錯体及び共触媒(b)の選択、及び、使用される特定の方法は、当該分野でイミノ配位子を有する他の遷移金属錯体について専門家が入手可能な特定の文献における同様の記載に応じて、分子構造及び望ましい結果に関連して変わる。例えば、以下を参照のこと:L. K. Johnson et al. “Journal of the American Chemical Society” (1995), Vol. 117, pp. 6414-6415;G. van Koten et al.“Advances in Organometallic Chemistry” (1982), Vol. 21, pp. 151-239。
【0038】
本発明のさらに好適な実施態様によれば、前記共触媒(b)は、一般式(II)を有するアルキルアルミニウム(b)から選択されてもよい:
Al(X’)(R3−n (II)
(式中、X’は、塩素、臭素、ヨウ素、フッ素等のハロゲン原子であり、Rは1以上のケイ素又はゲルマニウム原子で任意に置換されていてもよい直鎖状又は分岐鎖状C−C20アルキル基、シクロアルキル基、及びアリール基から選択され、nは0〜2の整数である)
【0039】
本発明のさらに好適な実施態様によれば、前記共触媒(b)は、元素周期表の族13又は14に属する炭素と異なる元素M’の有機含酸素化化合物(b)、好ましくはアルミニウム、ガリウム、スズの有機含酸素化化合物から選択されてもよい。当該有機含酸素化合物(b)は、M’の有機化合物として定義できる。ここで、後者は、少なくとも1つの酸素原子と、炭素原子数1〜6のアルキル基、好ましくはメチル、からなる少なくとも1つの有機基とに結合する。
【0040】
本発明のさらに好適な実施態様によれば、前記共触媒(b)は、一般式(I)を有するコバルトビスイミノピリジン錯体と反応し、そこからσ結合置換基X又はXを抽出して、一方で少なくとも1つの中性化合物を形成し、他方で配位子に配位される金属(Co)を含有するカチオンと金属M’を含有する非配位性有機アニオンとからなるイオン化合物を形成することのできる、炭素と異なる元素M’の有機金属化合物又は有機金属化合物混合物(b)から選択されてもよい、ここで、負電荷は多中心性構造上で非局在化される。
【0041】
尚、本発明及び請求項において、「元素周期表」は、インターネットウェブサイトwww.iupac.org/fileadmin/user_upload/news/IUPAC_Periodic_Table-1Jun12.pdfにおける2007年6月22日付IUPACバージョンの「元素周期表」を指す。
【0042】
「C−C20アルキル基」は、炭素原子数1〜20の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基を指す。C−C20アルキル基の具体例には、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、s−ブチル、イソ−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、n−ノニル、n−デシル、2−ブチルオクチル、5−メチルヘキシル、4−エチルヘキシル、2−エチルヘプチル、2−エチルヘキシルがある。
【0043】
「任意にハロゲン化されるC−C20アルキル基」は、直鎖状又は分岐鎖状で、飽和又は不飽和の、炭素原子数1〜20のアルキル基を指し、少なくとも1つの水素原子が、フッ素、塩素、臭素等、好ましくはフッ素又は塩素等の、ハロゲン原子で置換される。任意にハロゲン化されるヘテロ原子を含むC−C20アルキル基の具体例には、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、トリクロロメチル、2,2,2−トリフルオロエチル、2,2,2−トリクロロロエチル、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル、パーフルオロペンチル、パーフルオロオクチル、パーフルオロデシルがある。
【0044】
「シクロアルキル基」は、炭素原子数3〜30のシクロアルキル基を指す。当該シクロアルキル基は、ハロゲン原子、水酸基、C−C12アルキル基、C−C12アルコキシル基、シアノ基、アミノ基、ニトロ基から選択される、1以上の等しい又は異なる基で任意に置換することができる。シクロアルキル基の具体例には、シクロプロピル、2,2−ジフルオロシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ヘキサメチルシクロヘキシル、ペンタメチル−シクロペンチル、2−シクロオクチルエチル、メチルシクロヘキシル、メトキシシクロヘキシル、フルオロシクロヘキシル、フェニルシクロヘキシルがある。
【0045】
「アリール基」は、芳香族炭素環基を指す。当該芳香族炭素環基は、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子、水酸基、C−C12アルキル基、C−C12アルコキシル基、シアノ基、アミノ基、ニトロ基から選択される、1以上の等しい又は異なる基で任意に置換することができる。アリール基の具体例には、フェニル、メチルフェニル、トリメチルフェニル、メトキシフェニル、ヒドロキシフェニル、フェニルオキシフェニル、フルオロフェニル、ペンタフルオロフェニル、クロロフェニル、ブロモフェニル、ニトロフェニル、ジメチルアミノフェニル、ナフチル、フェニルナフチル、フェナンスレン、アントラセンがある。
【0046】
「アリールアルキル基」は、1以上のアリール基で置換されるアルキル基を指す。アリールアルキル基の具体例には、ベンジル、フェニルエチル、2,2−ジフェニルエチル、ジフェニルメチル、3,3−ジフェニルプロピル、1,2−ジフェニルエチルがある。
【0047】
「シクロ」は、炭素原子数3〜6であり、任意に存在する窒素原子に加えて、窒素、酸素、硫黄、ケイ素、セレン、リンから選択される他のヘテロ原子を任意に有する環を含有する系を指す。シクロの具体例には、ピリジン、チアジアゾールがある。
【0048】
本発明の好適な実施態様によれば、前記共役ジエンは、例えば、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、シクロ−1,3−ヘキサジエンから選択されてもよい。1,3−ブタジエンやイソプレンが好ましい。
【0049】
本発明の好適な実施態様によれば、前記一般式(I)を有するコバルトビスイミノピリジン錯体において、
及びRは、同一又は異なり、水素原子であるか、又は、直鎖状又は分岐鎖状C−C20アルキル基から選択され、好ましくはメチル基である、
及びRは、異なり、水素原子であるか、又は、直鎖状又は分岐鎖状C−C20アルキル基であって好ましくはメチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、s−ブチル、イソ−ブチル、tert−ブチル、任意に置換されるシクロアルキル基であって好ましくはシクロヘキシル、直鎖状又は分岐鎖状C−C20アルキル基で任意に置換され好ましくは1以上のイソ−プロピル、tert−ブチル基で置換されるフェニル基、アリールアルキル基であって好ましくはベンジル、から選択される、
、R、及びRは、同一又は異なり、水素原子を表すか、又は、C−C20アルキル基から選択され、好ましくはメチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、s−ブチル、イソ−ブチル、tert−ブチルである、
及びXは、同一で、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子であり、好ましくは塩素である。
【0050】
本発明によると、一般式(I)を有するコバルトビスイミノピリジン錯体は、任意の物理形態にあると考えられる。任意の物理形態は、例えば、分離精製固体、適切な溶媒での溶媒和、適切な有機又は無機固体上での支持であり、好ましくは粒状又は粉状の物理形状を持つ。
【0051】
一般式(I)を有するコバルトビスイミノピリジン錯体は、当技術分野で周知の配位子から始めて生成される。
【0052】
本発明に用いることができる配位子の具体例には、以下の式(L1)〜(L5)を有するものが挙げられる。
【化2】


【0053】
式(L1)〜(L5)を有する配位子は、当技術分野で周知のプロセスによって生成することができる。例えば、式(L1)〜(L5)を有する配位子は、第1級アミンとジケトンとの縮合反応によって生成することができる。例えば、以下を参照のこと:国際特許出願WO 2002/10133、WO 2002/34701; Bianchini et al., “European Journal of Inorganic Chemistry” (2003), pp. 1620-1631。
【0054】
一般式(I)を有するコバルトビスイミノピリジン錯体は、当技術分野で周知のプロセスによって生成することができる。例えば、当該コバルトビスイミノピリジン錯体は、1〜1.5の範囲の配位子(L)/コバルト(Co)モル比で、例えば塩化溶媒(例:塩化メチレン)、エーテル溶媒(例:テトラヒドロフラン(THF))、アルコール溶媒(例:ブタノール)、炭化水素溶媒(例:トルエン)、これらの混合物から選択される少なくとも1つの溶媒の存在下で、室温以上で、一般式Co(X)を有するコバルト化合物(ここで、Xは、塩素、臭素、ヨウ素等、好ましくは塩素であるハロゲン原子自体であるか、エーテル(例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、ジメトキシエタン)と錯体を形成する)と上記式(L1)〜(L5)を有する配位子との反応によって生成することができる。こうして得られたコバルトビスイミノピリジン錯体は、その後、例えば次のような当技術分野で周知の方法によって回収することができる:非溶媒(例:ペンタン)による析出の後、ろ過又はデカントによる分離及びその後の適切な溶媒での任意の溶解を行い、続いて低温で結晶化する。
【0055】
本明細書及び請求項において、「室温」は、20℃〜25℃の温度を指す。
【0056】
本発明にとって特に有用である一般式(II)を有するアルキルアルミニウムの具体例には、トリ−メチル−アルミニウム、トリ−(2,3,3−トリ−メチル−ブチル)−アルミニウム、トリ−(2,3−ジ−メチル−ヘキシル)−アルミニウム、トリ−(2,3−ジ−メチル−ブチル)−アルミニウム、トリ−(2,3−ジ−メチル−ペンチル)−アルミニウム、トリ−(2,3−ジ−メチル−ヘプチル)−アルミニウム、トリ−(2−メチル−3−エチル−ペンチル)−アルミニウム、トリ−(2−メチル−3−エチル−ヘキシル)−アルミニウム、トリ−(2−メチル−3−エチル−ヘプチル)−アルミニウム、トリ−(2−メチル−3−プロピル−ヘキシル)−アルミニウム、トリ−エチル−アルミニウム、トリ−(2−エチル−3−メチル-ブチル)−アルミニウム、トリ−(2−エチル−3−メチル−ペンチル)−アルミニウム、トリ−(2,3−ジ−エチル−ペンチル−アルミニウム)、トリ−n−プロピル−アルミニウム、トリ−イソ−プロピル−アルミニウム、トリ−(2−プロピル−3−メチル−ブチル)−アルミニウム、トリ−(2−イソ−プロピル−3−メチル−ブチル)−アルミニウム、トリ−n−ブチル−アルミニウム、トリ−イソ−ブチル−アルミニウム(TIBA)、トリ−tert−ブチル−アルミニウム、トリ−(2−−イソブチル−3−メチル−ペンチル)−アルミニウム、トリ−(2,3,3−トリ−メチル−ペンチル)−アルミニウム、トリ−(2,3,3−トリ−メチル−ヘキシル)−アルミニウム、トリ−(2−エチル−3,3−ジ−メチル−ブチル)−アルミニウム、トリ−(2−エチル−3,3−ジ−メチル−ペンチル)−アルミニウム、トリ−(2−イソ−プロピル−3,3−ジメチル−ブチル)−アルミニウム、トリ−(2−トリ−メチルシリル−プロピル)−アルミニウム、トリ−2−メチル−3−フェニル−ブチル)−アルミニウム、トリ−(2−エチル−3−フェニル−ブチル)−アルミニウム、トリ−(2,3−ジ−メチル-3−フェニル−ブチル)−アルミニウム、トリ−(2−フェニル−プロピル)−アルミニウム、トリ−[2−(4−フルオロ−フェニル)−プロピル]−アルミニウム、トリ−[2−(4−クロロ-フェニル)−プロピル]−アルミニウム、トリ−[2−(3−イソ−プロピル−フェニル−トリ-(2−フェニル-ブチル)−アルミニウム、トリ−(3−メチル−2−フェニル−ブチル)−アルミニウム、トリ−(2−フェニル−ペンチル)−アルミニウム、トリ−[2−(ペンタ−フルオロ−フェニル)−プロピル]−アルミニウム、トリ−(2,2−ジフェニル−エチル]−アルミニウム、トリ−(2−フェニル−メチル−プロピル)−アルミニウム、トリ−ペンチル−アルミニウム、トリ−ヘキシル−アルミニウム、トリ−シクロヘキシル−アルミニウム、トリ−オクチル−アルミニウム、ジ−エチル−アルミニウム水素化物、ジ−n−プロピル−アルミニウム水素化物、ジ−n−ブチル−アルミニウム水素化物、ジ−イソ−ブチル−アルミニウム水素化物(DIBAH)、ジ−ヘキシル−アルミニウム水素化物、ジ−イソ−ヘキシル−アルミニウム水素化物、ジ−オクチル−アルミニウム水素化物、ジ−イソ−オクチル−アルミニウム水素化物、エチル−アルミニウム二水素化物、n−プロピル−アルミニウム二水素化物、イソ−ブチル−アルミニウム二水素化物、ジ−エチル−アルミニウムクロライド(DEAC)、モノ−エチル−アルミニウムジクロライド(EADC)、ジ−メチル−アルミニウムクロライド、ジ−イソ−ブチル−アルミニウムクロライド、イソ−ブチル−アルミニウムジクロライド、エチル−アルミニウムセスキクロライド(EASC)、及び、対応する化合物であってその中の炭化水素置換基の1つが水素原子で置換されるものやその中の炭化水素置換基の1つ又は2つがイソ−ブチル基で置換されるものがある。ジ−エチル−アルミニウムクロライド(DEAC)、モノ−エチル−アルミニウムジクロライド(EADC)、エチル−アルミニウムセスキクロライド(EASC)が特に好ましい。
【0057】
本発明に係る触媒(共)重合系の形成に用いる場合、一般式(II)を有するアルキルアルミニウムを、一般式(I)を有するコバルトビスイミノピリジン錯体に存在するコバルトと一般式(II)を有するアルキルアルミニウムに存在するアルミニウムとのモル比が5〜5000、好ましくは10〜1000の範囲であるような割合で、一般式(I)を有するコバルトビスイミノピリジン錯体と接触させることが好ましい。一般式(I)を有するコバルトビスイミノピリジン錯体と一般式(II)を有するアルキルアルミニウムとを接触させる順序は、特に重要ではない。
【0058】
一般式(II)を有するアルキルアルミニウムは、国際特許出願WO 2011/061151に詳細に記載されている。
【0059】
特に好適な実施態様によれば、前記有機含酸素化化合物(b)は、一般式(III)を有するアルミノキサンから選択されてもよい:
(R10−Al−O−[−Al(R11)−O−]−Al−(R12 (III)
(式中、R10、R11、及びR12は、同一又は異なり、水素原子か、塩素、臭素、ヨウ素、フッ素等のハロゲン原子を表すか、又は、1以上のケイ素又はゲルマニウム原子で任意に置換される直鎖状又は分岐鎖状C−C20アルキル基、シクロアルキル基、及びアリール基から選択され、pは、0〜1,000の整数である。)
【0060】
周知のように、アルミノキサンは、可変O/Al比を持つAl−O−Al結合を含む化合物であり、例えば次のような当技術分野で周知のプロセスによって得られる:制御された状態において、アルキルアルミニウム又はハロゲン化アルキルアルミニウムを、水又はその他の所定量の有効水分を含有する化合物と反応させる。一例として、アルミニウムトリメチルと、硫酸アルミニウム六水和物、硫酸銅五水和物、又は硫酸鉄五水和物との反応がある。
【0061】
当該アルミノキサン、特にメチルアルミノキサン(MAO)は、硫酸アルミニウム水和物のヘキサンにおける懸濁液へのアルミニウムトリメチルの付加等、周知の有機金属化学プロセスによって得られる化合物である。
【0062】
本発明に係る触媒(共)重合系の形成に用いる場合、一般式(III)を有するアルミノキサンを、一般式(III)を有するアルミノキサンに存在するアルミニウム(Al)と一般式(I)を有するコバルトビスイミノピリジン錯体に存在するコバルトとのモル比が10〜10000、好ましくは100〜5000の範囲であるような割合で、一般式(I)を有するコバルトビスイミノピリジン錯体と接触させることが好ましい。一般式(I)を有するコバルトビスイミノピリジン錯体と一般式(III)を有するアルミノキサンとを接触させる順序は、特に重要ではない。
【0063】
上記の好適な一般式(III)を有するアルミノキサンに加えて、本発明に係る化合物(b)の定義は、以下を含み得る:ガロキサン、ここで、一般式(III)において、アルミニウムの代わりにガリウムが存在する;スタノキサン、ここで、一般式(III)において、アルミニウムの代わりにスズが存在する。メタロセン錯体存在下でのオレフィン重合における共触媒としてのその使用が知られている。ガロキサン及びスタノキサンについては、例えば、米国特許US 5,128,295及びUS 5,258,475に詳細に記載されている。
【0064】
本発明にとって特に有用である一般式(III)を有するアルミノキサンの具体例には、メチルアルミノキサン(MAO)、エチル−アルミノキサン、n−ブチル−アルミノキサン、テトラ−イソ−ブチル-アルミノキサン(TIBAO)、tert−ブチル−アルミノキサン、テトラ−(2,4,4−トリ-メチル−ペンチル)−アルミノキサン(TIOAO)、テトラ−(2,3−ジ−メチル−ブチル)−アルミノキサン(TDMBAO)、テトラ−(2,3,3−トリ−メチル−ブチル)−アルミノキサン(TTMBAO)がある。メチルアルミノキサン(MAO)が特に好ましい。
【0065】
一般式(III)を有するアルミノキサンは、国際特許出願WO 2011/061151に詳細に記載されている。
【0066】
本発明の好適な実施態様によれば、前記化合物又は化合物混合物(b)は、例えば以下の一般式で表されるような、アルミニウムや特にホウ素の有機化合物から選択されてもよい:
[(R4−W]・[B(R;B(R;Al(R;B(RP;
[PhC]・[B(R)4];[(RPH]・[B(R
[Li]・[B(R;[Li]・[Al(R
(式中、wは、0〜3の整数であり、各基Rは個別に、炭素数1〜10のアルキル基又はアリール基を表し、各基Rは個別に、部分的又は全体的、好ましくは全体的に、フッ素化され、炭素数6〜20のアリール基を表し、Pは任意に置換されていてもよいピロールラジカルを表す)
【0067】
本発明に係る触媒(共)重合系の形成に用いる場合、化合物又は化合物混合物(b)を、化合物又は化合物混合物(b)に存在する金属(M’)と一般式(I)を有するコバルトビスイミノピリジン錯体に存在するコバルトとのモル比が0.1〜15、好ましくは0.5〜10、より好ましくは1〜6の範囲であるような割合で、一般式(I)を有するコバルトビスイミノピリジン錯体と接触させることが好ましい。一般式(I)を有するコバルトビスイミノピリジン錯体と化合物又は化合物混合物(b)とを接触させる順序は、特に重要ではない。
【0068】
特に一般式(I)を有するコバルトビスイミノピリジン錯体におけるX及びXがアルキルと異なる場合、化合物又は化合物混合物(b)は、メチルアルミノキサン(MAO)等の一般式(III)を有するアルミノキサン、好ましくは一般式(II)を有するアルキルアルミニウム、より好ましくはトリ−メチル−アルミニウム、トリ−エチル−アルミニウム、トリ−イソ−ブチルアルミニウム(TIBA)等の各アルキル残基における炭素原子数が1〜8のトリアルキルアルミニウムと組み合わせて用いる必要がある。
【0069】
化合物又は化合物混合物(b)を使用する場合に本発明に係る触媒(共)重合系の形成に一般的に用いられる方法の例を以下のリストに定性的に記載するが、本発明の全体的な範囲はこれに限定されない:
(m)XとXとのうちの少なくとも1つがアルキル基である一般式(I)を有するコバルトビスイミノピリジン錯体と、少なくとも1つの化合物又は化合物混合物(b)との接触、ここで、化合物又は化合物混合物(b)のカチオンは、当該アルキル基と反応して中性化合物を形成することができ、アニオンは、大きく、非配位性で、負電荷を非局在化することができる;
(m)一般式(I)を有するコバルトビスイミノピリジン錯体と、10/1〜300/1のモル過剰で使用される、一般式(II)を有する少なくとも1つのアルキルアルミニウム、好ましくはトリアルキルアルミニウムとの反応、及びそれに続く、コバルト(Co)に関してほぼ化学量論的量又は若干過剰であるトリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素[化合物(b)]等の強いルイス酸との反応;
(m)一般式(I)を有するコバルトビスイミノピリジン錯体と、10/1〜1000/1のモル過剰、好ましくは100/1〜500/1のモル過剰の少なくとも1つのトリアルキルアルミニウム又は式AlR’’’3−mで表されるハロゲン化アルキルアルミニウムとの接触及び反応、ここで、R’’’は、直鎖状又は分岐鎖状C−Cアルキル基もしくはこれらの混合、Zはハロゲン、好ましくは塩素又は臭素、mは1〜3の10進数である、及びそれに続く、化合物又は化合物混合物(b)あるいは化合物又は化合物混合物(b)のアルミニウムと一般式(I)を有するコバルトビスイミノピリジン錯体のコバルトとの比が0.1〜15、好ましくは1〜6であるような量での、得られた組成物への少なくとも1つの化合物又は化合物混合物(b)の付加。
【0070】
本発明に従って一般式(I)を有するコバルトビスイミノピリジン錯体との反応によりイオン触媒系を生成することができる化合物又は化合物混合物(b)の例は、イオンメタロセン錯体の形成に関連してではあるが、以下の刊行物に記載されており、その内容は参照によりここに組み込まれる:
− W. Beck et al., “Chemical Reviews” (1988), Vol. 88, pp. 1405-1421;
− S. H. Stares, “Chemical Reviews” (1993), Vol. 93, pp. 927-942;
− 欧州特許出願EP 277 003、EP 495 375、EP 520 732、EP 427 697、EP 421 659、EP 418044;
− 国際特許出願公開WO 92/00333、WO 92/05208。
【0071】
本発明にとって特に有用である化合物又は化合物混合物(b)の具体例には、トリブチルアンモニウム−テトラキス−ペンタフルオロフェニル−ホウ酸塩、トリブチルアンモニウム−テトラキス−ペンタフルオロフェニル−アルミン酸塩、トリブチルアンモニウム−テトラキス−[(3,5−ジ−(トリフルオロフェニル))]−ホウ酸塩、トリブチルアンモニウム−テトラキス−(4−フルオロフェニル))ホウ酸塩、N,N−ジメチルベンジル−アンモニウム−テトラキス−ペンタフルオロフェニル-ホウ酸塩、N,N−ジ−メチル−ヘキシルアンモニウム−テトラキス−ペンタフルオロフェニル−ホウ酸塩、N,N−ジメチルアニリニウム−テトラキス−(ペンタフルオロフェニル)−ホウ酸塩、N,N−ジメチルアニリニウム−テトラキス−(ペンタフルオロフェニル)−アルミン酸塩、ジ−(プロピル)−アンモニウム−テトラキス−(ペンタフルオロフェニル)−ホウ酸塩、ジ−(シクロヘキシル)−アンモニウム−テトラキス−(ペンタフルオロフェニル)−ホウ酸塩、トリ−フェニル−カルベニウム−テトラキス−(ペンタフルオロフェニル)−ホウ酸塩、 トリ−フェニルカルベニウム−テトラキス−(ペンタフルオロフェニル)−アルミン酸塩、トリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素、トリス(ペンタフルオロフェニル)−アルミニウム、及びこれらの混合物がある。テトラキス−ペンタフルオロフェニル−ホウ酸塩が好ましい。
【0072】
本明細書及び請求項において、用語「モル」や「モル比」は、分子からなる化合物に関連して、また、原子やイオンに関連して、用いられる。後者については、科学的により正しいとしても、グラム原子や原子比率といった用語を省略する。
【0073】
特定の実用的要件を満たすように適応させるべく、上記の触媒系に、他の添加剤や成分を任意に加えてもよい。こうして得られる触媒系は、本発明の範囲に含まれるとみなされる。上記触媒系の生成及び/又は配合において加えることが可能な添加剤及び/又は成分の例には、脂肪族及び/又は芳香族炭化水素等の不活性溶媒、脂肪族及び/又は芳香族エーテル、非重合性オレフィン等から選択される弱配位性添加剤(ルイス塩基等)、立体障害型又は電子的に乏しいエーテル、ハロゲン化ケイ素やハロゲン化炭化水素等、好ましくは塩素化のハロゲン化剤、及びこれらの混合物がある。
【0074】
既述の通り、当該触媒系は、当技術分野で周知の方法によって生成することができる。
【0075】
例えば、当該触媒系は、別々に生成して(予め形成して)、その後(共)重合環境に導入してもよい。この点において、任意に上記したものから選択される添加剤又は成分の存在下で、トルエンやヘプタン等の溶媒の存在下で、20℃〜60℃の温度で、10秒〜10時間、好ましくは30秒〜5時間、一般式(I)を有する少なくとも1つのコバルトビスイミノピリジン錯体を少なくとも1つの共触媒(b)と反応させることによって、触媒系を生成することができる。当該触媒系の生成については、以下の実施例でさらに詳細に示される。
【0076】
あるいは、当該触媒系は、その場、即ち、(共)重合環境において直接生成してもよい。この点において、(共)重合が行われる条件下で、一般式(I)を有するコバルトビスイミノピリジン錯体と、共触媒(b)と、(共)重合するべく予め選択した共役ジエンとを別々に導入することによって、触媒系を生成することができる。
【0077】
本発明の処理対象の目的のために、触媒系は、不活性固体上に支持されてもよい。不活性固体は、好ましくは、シリカ、アルミナ、ケイアルミン酸等、酸化ケイ素及び/又はアルミニウムからなる。触媒系を支持するために利用可能な周知の支持技術は、一般に、適切な不活性液体媒体における、200℃より高く加熱することによって任意に活性化された担体と、本発明の対象である触媒系の1つ又は両方の成分、即ち、一般式(I)を有するコバルトビスイミノピリジン錯体及び共触媒(b)、との間の接触を含む。本発明では、両方の成分を支持する必要はない。なぜなら、担体表面上に存在するのは一般式(I)を有するコバルトビスイミノピリジン錯体のみ又は共触媒(b)のみの可能性があるからである。後者の場合、後で重合のための活性触媒を形成する際に、表面上にない成分を支持されている成分と接触させる。
【0078】
一般式(I)を有するコバルトビスイミノピリジン錯体及びそれに基づく触媒系が後者の機能化や固体と一般式(I)を有するコバルトビスイミノピリジン錯体との共有結合の形成によって固体上に支持されることも、本発明の範囲に含まれる。
【0079】
本発明の処理対象で使用され得る一般式(I)を有するコバルトビスイミノピリジン錯体及び共触媒(b)の量は、行われる(共)重合プロセスによって変わる。いずれの場合も、当該量は、一般式(I)を有するコバルトビスイミノピリジン錯体におけるコバルトと共触媒(b)における金属とのモル比が上記の値の範囲に含まれるような量である。ここで、共触媒(b)における金属は、例えば、共触媒(b)がアルキルアルミニウム(b)やアルミノキサン(b)から選択される場合はアルミニウム、共触媒(b)が一般式(III)を有する化合物(b)から選択される場合はホウ素である。
【0080】
本発明の好適な実施態様によれば、前記プロセスは、例えば、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、これらの混合物等の飽和脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、これらの混合物等の飽和脂環式炭化水素、1−ブテン、2−ブテン、これらの混合物等のモノオレフィン、ベンゼン、トルエン、キシレン、これらの混合物等の芳香族炭化水素、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、トリクロロエチレン、パークロロエチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、クロロトルエン、これらの混合物等のハロゲン化炭化水素から選択される不活性有機溶媒の存在下で行われてもよい。前記溶媒は、好ましくは、飽和脂肪族炭化水素から選択される。
【0081】
あるいは、当該プロセスは、「バルク法」として知られる処理によって、(共)重合対象の同じ共役ジエンを溶媒として用いて行われてもよい。
【0082】
本発明の好適な実施態様によれば、前記不活性有機溶媒において(共)重合される共役ジエンの濃度は、共役ジエンと不活性有機溶媒との混合物の総重量の5重量%〜50重量%であり、好ましくは10重量%〜20重量%である。
【0083】
本発明の好適な実施態様によれば、前記プロセスは、−70℃〜+100℃の温度で行われてもよく、好ましくは−20℃〜+80℃の温度で行われる。
【0084】
圧力に関しては、(共)重合対象の混合物成分の圧力での動作が好ましい。
【0085】
当該プロセスは、連続又はバッチ式で行われてもよい。
【0086】
上記の通り、当該プロセスによって、1,4−シスユニット高含有量、即ち1,4−シスユニット含有量≧97%の、ポリブタジエンやポリイソプレン等、特に直鎖状又は分岐鎖状ポリブタジエン等の、共役ジエン(共)重合体を得ることができる。
【0087】
本発明及びその具体的な実施形態の理解を助けるため、説明のための非限定実施例を以下に示す。
【実施例】
【0088】
試薬及び物質
次のリストに、以下の発明の実施例で用いられた試薬及び物質を、その任意の前処理及び供給元と共に示す。
− アニリン(Aldrich):減圧で蒸留して不活性雰囲気で保存した;
− 二塩化コバルト(CoCl)(Stream Chemicals):そのまま使用した;
− 二塩化コバルト六水和物(CoCl・6HO)(Stream Chemicals):そのまま使用した;
− テトラヒドロフラン(THF)(Carlo Erba, RPE):カリウム/ベンゾフェノン上で還流温度に保ち、その後窒素下で蒸留した;
− メタノール(Carlo Erba, RPE):マグネシウム(Mg)上で蒸留により無水物化した、又は、そのまま使用した;
− エタノール(Carlo Erba, RPE):マグネシウム(Mg)上で蒸留により無水物化した;
− n−ブタノール(Carlo Erba, RPE):マグネシウム(Mg)上で蒸留により無水物化した;
− イソプロピルアルコール(Carlo Erba, RPE):マグネシウム(Mg)上で蒸留により無水物化した;
− ギ酸(85%)(Carlo Erba, RPE):そのまま使用した;
− 2−tert−ブチルアニリン(Aldrich):減圧で蒸留して不活性雰囲気で保存した;
− 2,6−ジ−イソ−プロピルアニリン(Aldrich):減圧で蒸留して不活性雰囲気で保存した;
− トルエン(Aldrich):純度≧99.5%、不活性雰囲気でナトリウム(Na)上で蒸留した;
− 1,3−ブタジエン(Air Liquide):純度≧99.5%、各生産前に容器から蒸発し、分子篩充填カラムに通すことで乾燥し、−20℃で予め冷却された反応炉内で凝縮した;
− メチルアルミノキサン(MAO)(10重量%のトルエン溶液)(Aldrich):そのまま使用した;
− n−ヘプタン(Aldrich):純度≧99%、不活性雰囲気でナトリウム(Na)上で蒸留した;
− ペンタン(Aldrich):純度≧99%、不活性雰囲気でナトリウム(Na)上で蒸留した;
− ジクロロメタン(Aldrich):純度≧99%、不活性雰囲気で水素化カルシウム(CaH)上で蒸留した;
− 重水素化テトラクロルエタン(CCl)(Acros):そのまま使用した;
− 重水素化クロロホルム(CDCl)(Acros):そのまま使用した;
− シクロヘキシルアミン(Aldrich):そのまま使用した;
− ベンジルアミン(Aldrich):そのまま使用した;
− 2,6−ジ−アセチルピリジン(Aldrich):そのまま使用した;
− 氷酢酸(Aldrich):そのまま使用した;
− 37%の水溶液における塩酸(Aldrich):そのまま使用した。
【0089】
以下の分析及び特性化法を用いた。
【0090】
元素分析
a)Coの決定
本発明に用いられるコバルトビスイミノピリジン錯体中のコバルト(Co)の重量を決定するべく、窒素フロー下のドライボックスにおいて、サンプルの約30mg〜50mgの、正確に計量されたアリコートを、40%のフッ化水素酸(HF)1mlと96%の硫酸(HSO)0.25mlと70%の硝酸(HNO)1mlとの混合物と共に、約30mlの白金るつぼ内に置いた。そして、るつぼをプレート上で加熱し、硫黄白煙が生じるまで昇温した(約200℃)。こうして得られた混合物を室温(20℃〜25℃)まで冷却し、70%の硝酸(HNO)1mlを添加し、煙が再び生じるまで混合物を加熱した。さらに二回シーケンスを繰り返した後、透明でほとんど無色の溶液が得られた。それから、硝酸(HNO)1mlと水約15mlとを熱なしで加え、混合物を80℃まで約30分加熱した。こうして生成されたサンプルを、正確に計量された、約50gまでの重量のミリQ純度を有する水で希釈して、溶液を得た。この溶液に、既知の濃度の溶液との比較により、ICP-OES(optical detection plasma) Thermo Optek IRIS Advantage Duo分光計を用いて分析機器決定を行った。このために、認証液の重量による希釈によって得られる周知の力価を有する溶液を測定し、0ppm〜10ppmの範囲内で、各被分析物用に検量線を作成した。
【0091】
分光光度検出を行う前に、上記の通り生成されたサンプルの溶液を、参照用に近い濃度を得るべく重量で再度希釈した。全サンプルを、2つ生成した。2つにおいて単一のテストデータがそれらの平均値に対して2%以内で異なる場合、結果を許容範囲とみなした。
【0092】
b)塩素の決定
このために、本発明に使用されるコバルトビスイミノピリジン錯体のサンプル約30mg〜50mgを、窒素気流下で、ドライボックス内の100mlグラスで正確に計量した。ドライボックスの外で、炭酸ナトリウム(NaCO)2gとミリQ水50mlとを添加した。この混合物を、約30分間、磁気撹拌下で、プレート上で沸点にした。それから放冷し、反応が酸性になるまで希硫酸(HSO)1/5を添加し、混合物を電位差滴定装置で硝酸銀(AgNO)0.1Nと滴定した。
【0093】
c)炭素、水素、窒素、酸素の決定
本発明に使用されるコバルトビスイミノピリジン錯体中の、また本発明に使用される配位子における、炭素、水素、及び窒素の決定は、Thermo Flash 2000自動分析器により行い、酸素の決定は、Thermo EA1100自動分析器により行った。
【0094】
13C−HMR及びH−HMRスペクトル
ヘキサメチルジシロキサン(HDMS)を内部標準として103℃で重水素化テトラクロロエチレン(CCl)を用いて、あるいは、テトラメチルシラン(TMS)を内部標準として25℃で重水素化クロロホルム(CDCl)を用いて、13C−HMR及びH−HMRスペクトルを核磁気共鳴分光計mod. Bruker Avance 400によって記録した。このために、高分子溶液総重量に対して10重量%の濃度の高分子溶液を使用した。
【0095】
重合体[即ち、1,4−シスユニット分(%)]の微細構造を、Mochel, V. D., “Journal of Polymer Science Part A-1: Polymer Chemistry” (1972), Vol. 10, Issue 4, pp. 1009-1018の記載に基づいて上記スペクトルの分析により決定した。
【0096】
I.R.スペクトル
I.R.スペクトル(FT−IR)を、Thermo Nicolet Nexus 670及びBruker IFS 48 分光光度計によって記録した。
【0097】
本発明に使用される配位子のI.R.スペクトル(FT−IR)は、分析対象の配位子を無水臭化カリウム(KBr)(KBrのディスク)又はヌジョール懸濁液に分散することによって得た。
【0098】
本発明に使用されるコバルトビスイミノピリジン錯体のI.R.スペクトル(FT−IR)は、分析対象のコバルトビスイミノピリジン錯体を無水臭化カリウム(KBr)(KBrのディスク)又はヌジョール懸濁液に分散することによって得た。
【0099】
重合体のI.R.スペクトル(FT−IR)は、臭化カリウム(KBr)のタブレット上の高分子フィルムから得た。当該フィルムは、分析対象の重合体の溶液を高温o−ジクロルベンゼンに沈殿させることによって得た。分析された高分子溶液の濃度は、高分子溶液総重量に対して10重量%であった。
【0100】
熱分析(DSC)
得られた重合体の融点(T)及び結晶化温度(T)を決定するべく、DSC(示差走査熱量計)熱分析を、Perkin Elmer Pyris示差走査熱量計を用いて行った。このために、不活性窒素雰囲気で、1℃/分〜20℃/分の走査速度で、重合体5mgを分析した。
【0101】
得られた重合体のガラス転移温度(T)を決定するべく、DSC(示差走査熱量計)熱分析を、上記の熱量計により以下の熱プログラムを用いて行った:+70℃で3分間の等温;10℃/分の速度で+70℃から−90℃まで冷却;−90℃で3分間の等温;10℃/分の速度で−90℃から+70℃まで加熱。
【0102】
分子量の決定
得られた重合体の分子量(MW)の決定を、GPC(ゲルろ過法)により以下の条件下で行った:
− Agilent 1100ポンプ;
− I.R. Agilent 1100検出器;
− PL Mixed−Aカラム;
− 溶媒/溶離液:テトラヒドロフラン(THF);
− 流速:1ml/分;
− 温度:25℃;
− 分子量計算:ユニバーサル較正法。
【0103】
/M比(M=数平均分子量)に対応する重量平均分子量(M)及び多分散指数”(PDI)を特定する。
【0104】
分岐の決定
得られた重合体の分岐の決定を、多角度光散乱検出器(MALLS)を従来のSEC/RI溶出と結合したGPC/MALLS技術により以下の条件下で行った:
− Agilent 1050ポンプ;
− I.R. Agilent 1050検出器;
− MALLS Dawn−DSP Wyatt検出器−技術、λ=632.8nm;
− PL GEL Mixed−A (x4)カラム;
− 溶媒/溶離液:テトラヒドロフラン(THF);
− 流速:1ml/分;
− 温度:25℃
【0105】
上記の通り、クロマトグラフシステムによって分離される高分子の分子量と回転半径との絶対測定を同時に行うことができる。ここで、溶液中の高分子種からの散乱光量を、実際に、その分子量を得るために直接利用することができる一方、散乱における角度変動は、その平均次元と直接関係している。使用される基本的関係は、以下の数式(1)で表される:
【数1】
ここで、
− Kは、使用される光の波長と、重合体の屈折率(dn/dc)と、使用される溶媒とに依存する光学定数;
− Mは、重量平均分子量;
− cは、高分子溶液の濃度;
− Rθは、角θ(過剰レイリー比)で測定される散乱光度;
− Pθは、0に等しい角θに対して、測定の行われる1に等しい角での散乱光の変動を表す関数;
− Aは、第2ビリアル係数である。
【0106】
非常に低い濃度(GPCシステムで典型的である)では、上記の数式(1)は、以下の数式(2)に換算される:
【数2】
ここで、K、c、Rθ、Mw、Pθは、上記と同じ意味を持ち、いくつかの角で計測することによって、senθ/2に関する関数Kc/Rθのヌル角での外挿が、インターセプト値の分子量及びスロープの回転半径を直接与える。
【0107】
さらに、この測定をクロマトグラムの全スライスに行うことから、分子量と回転半径との両方の分布を得ることが可能である。
【0108】
溶液中の高分子次元は、その分岐度と直接関連する。同じ分子量では、線形型と比べて高分子次元が小さいほど、分岐度は高くなる。
【0109】
重合体のマクロ構造に関する情報は、パラメータαの値から定性的に推定される。パラメータαは、回転半径と分子量とを互いに関連付ける曲線のスロープを表す。同じ分析条件下でこの値が線形型のマクロ構造に対して低下するとき、分岐型マクロ構造を持つ重合体が存在する。テトラヒドロフラン(THF)において、1,4−シスユニット高含有量の直鎖状ポリブタジエンのパラメータαの典型値は、0.58〜0.60である。
【0110】
実施例1
式(L1)を有する配位子の合成
【化3】
【0111】
ギ酸5滴を、撹拌下で、無水メタノール(85ml)中の2,6−ジ−アセチルピリジン5.87g(36ミリモル)と2−tert−ブチルアニリン4.84g(32.4ミリモル)との溶液に添加した。こうして得られた溶液を、0℃で、24時間冷蔵庫に置いた。その後得られた黄色微結晶固体生成物の沈殿物を、ろ過により回収し、冷メタノールで洗浄し、室温で真空乾燥して、式(L1a)を有する淡黄色固体生成物(収率=66%)7gを得た:
【化4】

元素分析[検出(計算)]: C: 78.0% (77.5%); H: 7.60% (7.53%); N: 9.65% (9.52%); O: 5.10% (5.45%)。
分子量(MW):294.4。
FT−IR(ヌジョール):1694cm−1ν(C=O),1644cm−1ν(C=N)
H−NMR(CDCl): 1.39 (s, 9H), 2.41(s, 3H), 2.80 (s, 3H), 2.54 (dd, 1H), 7.24 (m, 2H), 7.43 (dd, 1H), 7.95 (t, 1H), 8.13 (dd, 1H), 8.50 (dd, 1H)。
【0112】
上記の通り得られた式(L1a)を有する生成物6.90g(23.5ミリモル)と新たに蒸留したアニリン17.5g(188ミリモル)との混合物を、15時間、モレキュラーシーブ4Åの存在下で、撹拌なしに、脱気し100℃に加熱した。得られた混合物を、メタノール90mlで希釈し、0℃に冷却した。24時間後、黄色微結晶をろ過により分離し、その後冷メタノールで洗浄した。得られた生成物を、メタノールから結晶化し(二回)、式(L1)を有する黄色固体生成物(収率=50%)4.3gを得た。
元素分析[検出(計算)]:C: 81.20% (81.26%); H: 7.30% (7.37%); N: 11.47% (11.37%)。
分子量(MW):369.50。
FT−IR(ヌジョール):1636cm−1ν(C=N)
【0113】
実施例2
式(L2)を有する配位子の合成
【化5】
【0114】
2,6−ジ−イソ−プロピルアニリン2.48mg(14ミリモル)を、無水メタノール5mlと共に反応フラスコに導入して、透明溶液を得た。この溶液に、2,6−ジアセチルピリジン1.96g(12ミリモル)を含む無水メタノール20mlと、ギ酸0.25mlとを、室温で滴加した。約1時間後、黄色微結晶固体生成物の沈殿物を観測した。黄色固体生成物をろ過により回収し、冷メタノールで洗浄し、室温で真空乾燥して、式(L2a)を有する淡黄色固体生成物(収率=62%)2.4gを得た。
【化6】

元素分析[検出(計算)]:C: 77.80% (78.22%); H: 8.24% (8.13%); N: 8.51% (8.69%); O: 4.91% (4.96%)。
分子量(MW):322.45。
FT−IR(ヌジョール):1700cm−1ν(C=O),1648cm−1ν(C=N)
H−NMR(TMSからδシフト): 1.16 (d, 12H), 2.27 (s, 3H), 2.73 (m, 2H), 2.80 (s, 3H), 7.17 (m, 3H), 7.95 (t, 1H), 8.15 (d, 1H), 8.57 (d, 1H)。
【0115】
上記の通り得られた式(L2a)を有する生成物2.0g(6.2ミリモル)と新たに蒸留したアニリン4.77g(51ミリモル)との混合物を、15時間、モレキュラーシーブ4Åの存在下で、撹拌なしに、脱気し100℃に加熱した。得られた混合物を、メタノール27mlで希釈し、0℃に冷却した。5時間後、黄色微結晶をろ過により分離し、その後冷メタノールで洗浄した。得られた生成物を、メタノールから再結晶化し(二回)、式(L2)を有する黄色固体生成物(収率=61%)1.5gを得た。
元素分析[検出(計算)]:C: 81.10% (81.57%); H: 7.93% (7.86%); N: 10.40% (10.57%)。
分子量(MW):397.56。
FT−IR(ヌジョール):1641cm−1ν(C=N)
【0116】
実施例3
式(L5)を有する配位子の合成
【化7】
【0117】
上記の通り得られた式(L1a)を有する生成物6.90g(23.44ミリモル)と、シクロヘキシルアミン3.50g(351ミリモル)と、クロロホルム少量とを、固体が完全に溶解するまで、撹拌なしに、100℃に加熱した。20時間後、過剰のシクロヘキシルアミンを除去し、得られた残留物を、無水メタノール100mlに溶解して、0℃に冷却した。6時間後、黄色結晶をろ過により分離し、冷メタノールで洗浄し真空乾燥して、式(L5)を有する黄色固体生成物(収率=65%)5.72gを得た。
元素分析[検出(計算)]:C: 80.05% (79.95%); H: 8.90% (8.86%); N: 11.20% (11.19%)。
分子量(MW):375.55。
FT−IR(ヌジョール):1637cm−1ν(C=N)
【0118】
実施例4
式(L3)を有する配位子の合成
【化8】
【0119】
上記の通り得られた式(L2a)を有する生成物2.0g(6.2ミリモル)を、無水エタノール100mlと共に反応フラスコに導入し、その後ベンジルアミン0.75g(12.4ミリモル)と氷酢酸5滴とを撹拌下で添加した。全体を、24時間撹拌下で室温に置き、式(L3)を有する淡黄色固体生成物(収率=65%)1.65gを得た。
元素分析[検出(計算)]:C: 81.20% (81.71%); H: 8.10% (8.08%); N: 9.7% (10.21%)。
分子量(MW):411.59。
FT−IR(ヌジョール):1638cm−1ν(C=N)
【0120】
実施例5
式(L4)を有する配位子の合成
【化9】
【0121】
上記の通り得られた式(L2a)を有する生成物7.0g(21.70ミリモル)と、シクロヘキシルアミン32.23g(325ミリモル)と、クロロホルム少量とを、固体が完全に溶解するまで、撹拌なしに、100℃に加熱した。20時間後、過剰のシクロヘキシルアミンを除去し、得られた残留物を、無水メタノール100mlに溶解して、0℃に冷却した。6時間後、黄色結晶をろ過により分離し、冷メタノールで洗浄し真空乾燥して、式(L4)を有する黄色固体生成物(収率=72%)6.31gを得た。
元素分析[検出(計算)]:C: 80.30% (80.35%); H: 9.10% (9.24%); N: 10.40% (10.41%)。
分子量(MW):403.60。
FT−IR(ヌジョール):1636cm−1ν(C=N)
【0122】
実施例6
CoCl(L1)の合成[サンプルGL771]
【化10】
【0123】
無水二塩化コバルト(CoCl)(0.51g、4.15ミリモル)を、テトラヒドロフラン(THF)(50ml)と共に、100ml反応フラスコに導入した。全体を数分間撹拌下で室温に保った後、実施例1の記載の通りに得られた式(L1)を有する配位子(1.71g、4.63ミリモル、モル比L1/Co=1.1)を添加した。配位子を添加してすぐに緑色懸濁液が形成され、これを1日間撹拌下で室温に保った。その後、溶媒を真空除去し、得られた残留物を室温で真空乾燥してから、固体用高温抽出器の多孔隔壁上に投入して、非反応配位子を除去するために24時間沸点でペンタンにより連続抽出した。その後、多孔隔壁に残った緑色残留物を回収し室温で真空乾燥してから、固体用高温抽出器の新たな多孔隔壁上に投入して、24時間沸点でジクロロメタンにより再び連続抽出し、緑色溶液を得た。ジクロロメタンを真空除去し、多孔隔壁に残った固体残留物を回収して室温で真空乾燥して、投入した二塩化コバルトに対して80%変換に等しい、錯体CoCl(L1)に対応する極濃緑色固体生成物1.54gを得た。
元素分析[検出(計算)]:C: 59.80% (60.13%); H: 5.10% (5.45%); Cl: 13.90% (14.20%); Co: 11.70% (11.80%); N: 8.20% (8.42%)。
分子量(MW):499.34。
FT−IR(ヌジョール):1590cm−1ν(C=N)
【0124】
実施例7
CoCl(L5)の合成[サンプルGL923]
【化11】
【0125】
無水二塩化コバルト(CoCl)(0.335g、2.58ミリモル)を、テトラヒドロフラン(THF)(70ml)と共に、100ml反応フラスコに導入した。全体を数分間撹拌下で室温に保った後、実施例3の記載の通りに得られた式(L5)を有する配位子(1.067g、2.84ミリモル、モル比L5/Co=1.1)を添加した。配位子を添加してすぐに緑色懸濁液が形成され、これを1日間撹拌下で室温に保った。その後、溶媒を真空除去し、得られた残留物を室温で真空乾燥して得られた緑色固体生成物を、固体用高温抽出器の多孔隔壁上に投入して、非反応配位子を除去するために24時間沸点でペンタンにより連続抽出した。その後、多孔隔壁に残った緑色残留物を回収し室温で真空乾燥して、投入した二塩化コバルトに対して93%変換に等しい、錯体CoCl(L5)に対応する濃緑色固体生成物1.21gを得た。
元素分析[検出(計算)]:C: 59.0% (59.41%); H: 6.30% (6.58%); Cl: 13.70% (14.03%); Co: 11.30% (11.66%); N: 8.10% (8.31%)。
分子量(MW):505.39。
FT−IR(ヌジョール):1590cm−1ν(C=N)
【0126】
図1に、得られた錯体CoCl(L5)のFT−IRスペクトルを示す(ヌジョールバンドを減算)。
【0127】
実施例8
CoCl(L4)の合成[サンプルB016]
【化12】
【0128】
二塩化コバルト(CoCl・6HO)70mg(0.294ミリモル)を、還流温度に加熱された、無水化・脱気されたn−ブタノール10mlにおいて、窒素流下で溶解した。得られた溶液に、実施例5の記載の通りに得られた式(L4)を有する配位子0.135g(0.334ミリモル)を添加し、10分後、溶液を約5mlの容積まで窒素流において濃縮した。その後、n−ヘプタン7mlを添加し、全体を徐々に室温まで放冷し、投入した二塩化コバルトに対して98%変換に等しい、錯体CoCl(L4)に対応する緑色結晶性固体生成物1.21gを得た。
元素分析[検出(計算)]:C: 60.55% (60.79%); H: 7.01% (6.99%); N: 8.72% (8.87%)。
分子量(MW):644.1。
FT−IR(ヌジョール):ν(C=N1)1590cm−1;ν(C=N2)1587cm−1
【0129】
実施例9(GL794)
約1.4gの1,3−ブタジエン2mlを、25ml試験管において低温(−20℃)で凝縮した。その後トルエン7.2mlを添加し、こうして得られた溶液の温度を20℃にした。トルエン溶液(6.3ml、1×10−2モル、約0.58gに等しい)中のメチルアルミノキサン(MAO)を添加した後、実施例6の記載の通りに得られた錯体CoCl(L1)[サンプルGL771](2mg/mlの濃度のトルエン溶液2.5ml、1×10−5モル、約5mgに等しい)を添加した。全体を140分間磁気撹拌下で20℃に保った。それから、塩酸数滴を含むメタノール2mlの添加によって重合を抑制した。得られた重合体を、Irganox(R)1076抗酸化物質(Ciba)4%を含むメタノール溶液40mlの添加によって凝固して、1,4−シスユニット含有量98.1%のポリブタジエン0.91gを得た。表1に、プロセス及び得られたポリブタジエンの特徴を示す。
【0130】
実施例10(GL977)
約1.4gの1,3−ブタジエン2mlを、25ml試験管において低温(−20℃)で凝縮した。その後トルエン7.2mlを添加し、こうして得られた溶液の温度を50℃にした。トルエン溶液(6.3ml、1×10−2モル、約0.58gに等しい)中のメチルアルミノキサン(MAO)を添加した後、実施例6の記載の通りに得られた錯体CoCl(L1)[サンプルGL771](2mg/mlの濃度のトルエン溶液2.5ml、1×10−5モル、約5mgに等しい)を添加した。全体を60分間磁気撹拌下で20℃に保った。それから、塩酸数滴を含むメタノール2mlの添加によって重合を抑制した。得られた重合体を、Irganox(R)1076抗酸化物質(Ciba)4%を含むメタノール溶液40mlの添加によって凝固して、1,4−シスユニット含有量97.9%のポリブタジエン0.756gを得た。表1に、プロセス及び得られたポリブタジエンの特徴を示す。
【0131】
図2に、得られたポリブタジエンのFT−IRスペクトルを示す。
【0132】
図4に、得られたポリブタジエンのDSCダイアグラムを示す。
【0133】
実施例11(GL962)
約1.4gの1,3−ブタジエン2mlを、25ml試験管において低温(−20℃)で凝縮した。その後トルエン7.2mlを添加し、こうして得られた溶液の温度を20℃にした。トルエン溶液(6.3ml、1×10−2モル、約0.58gに等しい)中のメチルアルミノキサン(MAO)を添加した後、実施例7の記載の通りに得られた錯体CoCl(L5)[サンプルGL923](2mg/mlの濃度のトルエン溶液2.5ml、1×10−5モル、約5mgに等しい)を添加した。全体を140分間磁気撹拌下で20℃に保った。それから、塩酸数滴を含むメタノール2mlの添加によって重合を抑制した。得られた重合体を、Irganox(R)1076抗酸化物質(Ciba)4%を含むメタノール溶液40mlの添加によって凝固して、1,4−シスユニット含有量98.6%のポリブタジエン1.4gを得た。表1に、プロセス及び得られたポリブタジエンの特徴を示す。
【0134】
図3に、得られたポリブタジエンのH−NMR及び13C−NMRスペクトルを示す。
【0135】
図5に、得られたポリブタジエンのDSCダイアグラムを示す。
【0136】
実施例12(GL978)
約1.4gの1,3−ブタジエン2mlを、25ml試験管において低温(−20℃)で凝縮した。その後トルエン7.2mlを添加し、こうして得られた溶液の温度を50℃にした。トルエン溶液(6.3ml、1×10−2モル、約0.58gに等しい)中のメチルアルミノキサン(MAO)を添加した後、実施例7の記載の通りに得られた錯体CoCl(L5)[サンプルGL923](2mg/mlの濃度のトルエン溶液2.5ml、1×10−5モル、約5mgに等しい)を添加した。全体を30分間磁気撹拌下で20℃に保った。それから、塩酸数滴を含むメタノール2mlの添加によって重合を抑制した。得られた重合体を、Irganox(R)1076抗酸化物質(Ciba)4%を含むメタノール溶液40mlの添加によって凝固して、1,4−シスユニット含有量98.3%のポリブタジエン0.820gを得た。表1に、プロセス及び得られたポリブタジエンの特徴を示す。
【0137】
図2に、得られたポリブタジエンのFT−IRスペクトルを示す。
【0138】
図6に、得られたポリブタジエンのDSCダイアグラムを示す。
【0139】
実施例13(D30)
約1.4gの1,3−ブタジエン2mlを、25ml試験管において低温(−20℃)で凝縮した。その後トルエン12.6mlを添加し、こうして得られた溶液の温度を20℃にした。トルエン溶液(3.15ml、5×10−3モル、約0.29gに等しい)中のメチルアルミノキサン(MAO)を添加した後、実施例8の記載の通りに得られた錯体CoCl(L4)[サンプルB016](2mg/mlの濃度のトルエン溶液0.26ml、1×10−6モル、約0.5mgに等しい)を添加した。全体を90分間磁気撹拌下で20℃に保った。それから、塩酸数滴を含むメタノール2mlの添加によって重合を抑制した。得られた重合体を、Irganox(R)1076抗酸化物質(Ciba)4%を含むメタノール溶液40mlの添加によって凝固して、1,4−シスユニット含有量97.8%のポリブタジエン0.24gを得た。表1に、プロセス及び得られたポリブタジエンの特徴を示す。
【0140】
実施例14(P1038)
約1.4gの1,3−ブタジエン2mlを、25ml試験管において低温(−20℃)で凝縮した。その後トルエン11.5mlを添加し、こうして得られた溶液の温度を20℃にした。トルエン溶液(3.15ml、5×10−3モル、約0.29gに等しい)中のメチルアルミノキサン(MAO)を添加した後、実施例8の記載の通りに得られた錯体CoCl(L4)[サンプルB016](2mg/mlの濃度のトルエン溶液1.3ml、5×10−6モル、約2.7mgに等しい)を添加した。全体を52分間磁気撹拌下で20℃に保った。それから、塩酸数滴を含むメタノール2mlの添加によって重合を抑制した。得られた重合体を、Irganox(R)1076抗酸化物質(Ciba)4%を含むメタノール溶液40mlの添加によって凝固して、1,4−シスユニット含有量98.7%のポリブタジエン0.66gを得た。表1に、プロセス及び得られたポリブタジエンの特徴を示す。
【0141】
実施例15(P1047)
約1.4gの1,3−ブタジエン2mlを、25ml試験管において低温(−20℃)で凝縮した。その後トルエン1.27mlを添加し、こうして得られた溶液の温度を20℃にした。トルエン溶液(0.63ml、1×10−3モル、約0.058gに等しい)中のメチルアルミノキサン(MAO)を添加した後、実施例8の記載の通りに得られた錯体CoCl(L4)[サンプルB016](2mg/mlの濃度のトルエン溶液2.7ml、1×10−5モル、約5.4mgに等しい)を添加した。全体を71分間磁気撹拌下で20℃に保った。それから、塩酸数滴を含むメタノール2mlの添加によって重合を抑制した。得られた重合体を、Irganox(R)1076抗酸化物質(Ciba)4%を含むメタノール溶液40mlの添加によって凝固して、1,4−シスユニット含有量97.5%のポリブタジエン0.19gを得た。表1に、プロセス及び得られたポリブタジエンの特徴を示す。
【0142】
【表1】
【0143】
):1時間当たり、コバルトのモル毎の、重合される1,3−ブタジエンのモル数
):融点
):結晶化温度
):ポリブタジエンの線形インデックス
図1
図2
図3
図4
図5
図6