【実施例】
【0088】
試薬及び物質
次のリストに、以下の発明の実施例で用いられた試薬及び物質を、その任意の前処理及び供給元と共に示す。
− アニリン(Aldrich):減圧で蒸留して不活性雰囲気で保存した;
− 二塩化コバルト(CoCl
2)(Stream Chemicals):そのまま使用した;
− 二塩化コバルト六水和物(CoCl
2・6H
2O)(Stream Chemicals):そのまま使用した;
− テトラヒドロフラン(THF)(Carlo Erba, RPE):カリウム/ベンゾフェノン上で還流温度に保ち、その後窒素下で蒸留した;
− メタノール(Carlo Erba, RPE):マグネシウム(Mg)上で蒸留により無水物化した、又は、そのまま使用した;
− エタノール(Carlo Erba, RPE):マグネシウム(Mg)上で蒸留により無水物化した;
− n−ブタノール(Carlo Erba, RPE):マグネシウム(Mg)上で蒸留により無水物化した;
− イソプロピルアルコール(Carlo Erba, RPE):マグネシウム(Mg)上で蒸留により無水物化した;
− ギ酸(85%)(Carlo Erba, RPE):そのまま使用した;
− 2−tert−ブチルアニリン(Aldrich):減圧で蒸留して不活性雰囲気で保存した;
− 2,6−ジ−イソ−プロピルアニリン(Aldrich):減圧で蒸留して不活性雰囲気で保存した;
− トルエン(Aldrich):純度≧99.5%、不活性雰囲気でナトリウム(Na)上で蒸留した;
− 1,3−ブタジエン(Air Liquide):純度≧99.5%、各生産前に容器から蒸発し、分子篩充填カラムに通すことで乾燥し、−20℃で予め冷却された反応炉内で凝縮した;
− メチルアルミノキサン(MAO)(10重量%のトルエン溶液)(Aldrich):そのまま使用した;
− n−ヘプタン(Aldrich):純度≧99%、不活性雰囲気でナトリウム(Na)上で蒸留した;
− ペンタン(Aldrich):純度≧99%、不活性雰囲気でナトリウム(Na)上で蒸留した;
− ジクロロメタン(Aldrich):純度≧99%、不活性雰囲気で水素化カルシウム(CaH
2)上で蒸留した;
− 重水素化テトラクロルエタン(C
2D
2Cl
4)(Acros):そのまま使用した;
− 重水素化クロロホルム(CDCl
3)(Acros):そのまま使用した;
− シクロヘキシルアミン(Aldrich):そのまま使用した;
− ベンジルアミン(Aldrich):そのまま使用した;
− 2,6−ジ−アセチルピリジン(Aldrich):そのまま使用した;
− 氷酢酸(Aldrich):そのまま使用した;
− 37%の水溶液における塩酸(Aldrich):そのまま使用した。
【0089】
以下の分析及び特性化法を用いた。
【0090】
元素分析
a)
Coの決定
本発明に用いられるコバルトビスイミノピリジン錯体中のコバルト(Co)の重量を決定するべく、窒素フロー下のドライボックスにおいて、サンプルの約30mg〜50mgの、正確に計量されたアリコートを、40%のフッ化水素酸(HF)1mlと96%の硫酸(H
2SO
4)0.25mlと70%の硝酸(HNO
3)1mlとの混合物と共に、約30mlの白金るつぼ内に置いた。そして、るつぼをプレート上で加熱し、硫黄白煙が生じるまで昇温した(約200℃)。こうして得られた混合物を室温(20℃〜25℃)まで冷却し、70%の硝酸(HNO
3)1mlを添加し、煙が再び生じるまで混合物を加熱した。さらに二回シーケンスを繰り返した後、透明でほとんど無色の溶液が得られた。それから、硝酸(HNO
3)1mlと水約15mlとを熱なしで加え、混合物を80℃まで約30分加熱した。こうして生成されたサンプルを、正確に計量された、約50gまでの重量のミリQ純度を有する水で希釈して、溶液を得た。この溶液に、既知の濃度の溶液との比較により、ICP-OES(optical detection plasma) Thermo Optek IRIS Advantage Duo分光計を用いて分析機器決定を行った。このために、認証液の重量による希釈によって得られる周知の力価を有する溶液を測定し、0ppm〜10ppmの範囲内で、各被分析物用に検量線を作成した。
【0091】
分光光度検出を行う前に、上記の通り生成されたサンプルの溶液を、参照用に近い濃度を得るべく重量で再度希釈した。全サンプルを、2つ生成した。2つにおいて単一のテストデータがそれらの平均値に対して2%以内で異なる場合、結果を許容範囲とみなした。
【0092】
b)塩素の決定
このために、本発明に使用されるコバルトビスイミノピリジン錯体のサンプル約30mg〜50mgを、窒素気流下で、ドライボックス内の100mlグラスで正確に計量した。ドライボックスの外で、炭酸ナトリウム(Na
2CO
3)2gとミリQ水50mlとを添加した。この混合物を、約30分間、磁気撹拌下で、プレート上で沸点にした。それから放冷し、反応が酸性になるまで希硫酸(H
2SO
4)1/5を添加し、混合物を電位差滴定装置で硝酸銀(AgNO
3)0.1Nと滴定した。
【0093】
c)炭素、水素、窒素、酸素の決定
本発明に使用されるコバルトビスイミノピリジン錯体中の、また本発明に使用される配位子における、炭素、水素、及び窒素の決定は、Thermo Flash 2000自動分析器により行い、酸素の決定は、Thermo EA1100自動分析器により行った。
【0094】
13C−HMR及び1H−HMRスペクトル
ヘキサメチルジシロキサン(HDMS)を内部標準として103℃で重水素化テトラクロロエチレン(C
2D
2Cl
4)を用いて、あるいは、テトラメチルシラン(TMS)を内部標準として25℃で重水素化クロロホルム(CDCl
3)を用いて、
13C−HMR及び
1H−HMRスペクトルを核磁気共鳴分光計mod. Bruker Avance 400によって記録した。このために、高分子溶液総重量に対して10重量%の濃度の高分子溶液を使用した。
【0095】
重合体[即ち、1,4−シスユニット分(%)]の微細構造を、Mochel, V. D., “Journal of Polymer Science Part A-1: Polymer Chemistry” (1972), Vol. 10, Issue 4, pp. 1009-1018の記載に基づいて上記スペクトルの分析により決定した。
【0096】
I.R.スペクトル
I.R.スペクトル(FT−IR)を、Thermo Nicolet Nexus 670及びBruker IFS 48 分光光度計によって記録した。
【0097】
本発明に使用される配位子のI.R.スペクトル(FT−IR)は、分析対象の配位子を無水臭化カリウム(KBr)(KBrのディスク)又はヌジョール懸濁液に分散することによって得た。
【0098】
本発明に使用されるコバルトビスイミノピリジン錯体のI.R.スペクトル(FT−IR)は、分析対象のコバルトビスイミノピリジン錯体を無水臭化カリウム(KBr)(KBrのディスク)又はヌジョール懸濁液に分散することによって得た。
【0099】
重合体のI.R.スペクトル(FT−IR)は、臭化カリウム(KBr)のタブレット上の高分子フィルムから得た。当該フィルムは、分析対象の重合体の溶液を高温o−ジクロルベンゼンに沈殿させることによって得た。分析された高分子溶液の濃度は、高分子溶液総重量に対して10重量%であった。
【0100】
熱分析(DSC)
得られた重合体の融点(T
m)及び結晶化温度(T
c)を決定するべく、DSC(示差走査熱量計)熱分析を、Perkin Elmer Pyris示差走査熱量計を用いて行った。このために、不活性窒素雰囲気で、1℃/分〜20℃/分の走査速度で、重合体5mgを分析した。
【0101】
得られた重合体のガラス転移温度(T
g)を決定するべく、DSC(示差走査熱量計)熱分析を、上記の熱量計により以下の熱プログラムを用いて行った:+70℃で3分間の等温;10℃/分の速度で+70℃から−90℃まで冷却;−90℃で3分間の等温;10℃/分の速度で−90℃から+70℃まで加熱。
【0102】
分子量の決定
得られた重合体の分子量(MW)の決定を、GPC(ゲルろ過法)により以下の条件下で行った:
− Agilent 1100ポンプ;
− I.R. Agilent 1100検出器;
− PL Mixed−Aカラム;
− 溶媒/溶離液:テトラヒドロフラン(THF);
− 流速:1ml/分;
− 温度:25℃;
− 分子量計算:ユニバーサル較正法。
【0103】
M
w/M
n比(M
n=数平均分子量)に対応する重量平均分子量(M
w)及び多分散指数”(PDI)を特定する。
【0104】
分岐の決定
得られた重合体の分岐の決定を、多角度光散乱検出器(MALLS)を従来のSEC/RI溶出と結合したGPC/MALLS技術により以下の条件下で行った:
− Agilent 1050ポンプ;
− I.R. Agilent 1050検出器;
− MALLS Dawn−DSP Wyatt検出器−技術、λ=632.8nm;
− PL GEL Mixed−A (x4)カラム;
− 溶媒/溶離液:テトラヒドロフラン(THF);
− 流速:1ml/分;
− 温度:25℃
【0105】
上記の通り、クロマトグラフシステムによって分離される高分子の分子量と回転半径との絶対測定を同時に行うことができる。ここで、溶液中の高分子種からの散乱光量を、実際に、その分子量を得るために直接利用することができる一方、散乱における角度変動は、その平均次元と直接関係している。使用される基本的関係は、以下の数式(1)で表される:
【数1】
ここで、
− K
*は、使用される光の波長と、重合体の屈折率(dn/dc)と、使用される溶媒とに依存する光学定数;
− M
wは、重量平均分子量;
− cは、高分子溶液の濃度;
− R
θは、角θ(過剰レイリー比)で測定される散乱光度;
− P
θは、0に等しい角θに対して、測定の行われる1に等しい角での散乱光の変動を表す関数;
− A
2は、第2ビリアル係数である。
【0106】
非常に低い濃度(GPCシステムで典型的である)では、上記の数式(1)は、以下の数式(2)に換算される:
【数2】
ここで、K
*、c、R
θ、Mw、P
θは、上記と同じ意味を持ち、いくつかの角で計測することによって、sen
2θ/2に関する関数K
*c/R
θのヌル角での外挿が、インターセプト値の分子量及びスロープの回転半径を直接与える。
【0107】
さらに、この測定をクロマトグラムの全スライスに行うことから、分子量と回転半径との両方の分布を得ることが可能である。
【0108】
溶液中の高分子次元は、その分岐度と直接関連する。同じ分子量では、線形型と比べて高分子次元が小さいほど、分岐度は高くなる。
【0109】
重合体のマクロ構造に関する情報は、パラメータαの値から定性的に推定される。パラメータαは、回転半径と分子量とを互いに関連付ける曲線のスロープを表す。同じ分析条件下でこの値が線形型のマクロ構造に対して低下するとき、分岐型マクロ構造を持つ重合体が存在する。テトラヒドロフラン(THF)において、1,4−シスユニット高含有量の直鎖状ポリブタジエンのパラメータαの典型値は、0.58〜0.60である。
【0110】
実施例1
式(L1)を有する配位子の合成
【化3】
【0111】
ギ酸5滴を、撹拌下で、無水メタノール(85ml)中の2,6−ジ−アセチルピリジン5.87g(36ミリモル)と2−tert−ブチルアニリン4.84g(32.4ミリモル)との溶液に添加した。こうして得られた溶液を、0℃で、24時間冷蔵庫に置いた。その後得られた黄色微結晶固体生成物の沈殿物を、ろ過により回収し、冷メタノールで洗浄し、室温で真空乾燥して、式(L1a)を有する淡黄色固体生成物(収率=66%)7gを得た:
【化4】
元素分析[検出(計算)]: C: 78.0% (77.5%); H: 7.60% (7.53%); N: 9.65% (9.52%); O: 5.10% (5.45%)。
分子量(MW):294.4。
FT−IR(ヌジョール):1694cm
−1ν
(C=O),1644cm
−1ν
(C=N)。
1H−NMR(CDCl
3): 1.39 (s, 9H), 2.41(s, 3H), 2.80 (s, 3H), 2.54 (dd, 1H), 7.24 (m, 2H), 7.43 (dd, 1H), 7.95 (t, 1H), 8.13 (dd, 1H), 8.50 (dd, 1H)。
【0112】
上記の通り得られた式(L1a)を有する生成物6.90g(23.5ミリモル)と新たに蒸留したアニリン17.5g(188ミリモル)との混合物を、15時間、モレキュラーシーブ4Åの存在下で、撹拌なしに、脱気し100℃に加熱した。得られた混合物を、メタノール90mlで希釈し、0℃に冷却した。24時間後、黄色微結晶をろ過により分離し、その後冷メタノールで洗浄した。得られた生成物を、メタノールから結晶化し(二回)、式(L1)を有する黄色固体生成物(収率=50%)4.3gを得た。
元素分析[検出(計算)]:C: 81.20% (81.26%); H: 7.30% (7.37%); N: 11.47% (11.37%)。
分子量(MW):369.50。
FT−IR(ヌジョール):1636cm
−1ν
(C=N)。
【0113】
実施例2
式(L2)を有する配位子の合成
【化5】
【0114】
2,6−ジ−イソ−プロピルアニリン2.48mg(14ミリモル)を、無水メタノール5mlと共に反応フラスコに導入して、透明溶液を得た。この溶液に、2,6−ジアセチルピリジン1.96g(12ミリモル)を含む無水メタノール20mlと、ギ酸0.25mlとを、室温で滴加した。約1時間後、黄色微結晶固体生成物の沈殿物を観測した。黄色固体生成物をろ過により回収し、冷メタノールで洗浄し、室温で真空乾燥して、式(L2a)を有する淡黄色固体生成物(収率=62%)2.4gを得た。
【化6】
元素分析[検出(計算)]:C: 77.80% (78.22%); H: 8.24% (8.13%); N: 8.51% (8.69%); O: 4.91% (4.96%)。
分子量(MW):322.45。
FT−IR(ヌジョール):1700cm
−1ν
(C=O),1648cm
−1ν
(C=N)。
1H−NMR(TMSからδシフト): 1.16 (d, 12H), 2.27 (s, 3H), 2.73 (m, 2H), 2.80 (s, 3H), 7.17 (m, 3H), 7.95 (t, 1H), 8.15 (d, 1H), 8.57 (d, 1H)。
【0115】
上記の通り得られた式(L2a)を有する生成物2.0g(6.2ミリモル)と新たに蒸留したアニリン4.77g(51ミリモル)との混合物を、15時間、モレキュラーシーブ4Åの存在下で、撹拌なしに、脱気し100℃に加熱した。得られた混合物を、メタノール27mlで希釈し、0℃に冷却した。5時間後、黄色微結晶をろ過により分離し、その後冷メタノールで洗浄した。得られた生成物を、メタノールから再結晶化し(二回)、式(L2)を有する黄色固体生成物(収率=61%)1.5gを得た。
元素分析[検出(計算)]:C: 81.10% (81.57%); H: 7.93% (7.86%); N: 10.40% (10.57%)。
分子量(MW):397.56。
FT−IR(ヌジョール):1641cm
−1ν
(C=N)。
【0116】
実施例3
式(L5)を有する配位子の合成
【化7】
【0117】
上記の通り得られた式(L1a)を有する生成物6.90g(23.44ミリモル)と、シクロヘキシルアミン3.50g(351ミリモル)と、クロロホルム少量とを、固体が完全に溶解するまで、撹拌なしに、100℃に加熱した。20時間後、過剰のシクロヘキシルアミンを除去し、得られた残留物を、無水メタノール100mlに溶解して、0℃に冷却した。6時間後、黄色結晶をろ過により分離し、冷メタノールで洗浄し真空乾燥して、式(L5)を有する黄色固体生成物(収率=65%)5.72gを得た。
元素分析[検出(計算)]:C: 80.05% (79.95%); H: 8.90% (8.86%); N: 11.20% (11.19%)。
分子量(MW):375.55。
FT−IR(ヌジョール):1637cm
−1ν
(C=N)。
【0118】
実施例4
式(L3)を有する配位子の合成
【化8】
【0119】
上記の通り得られた式(L2a)を有する生成物2.0g(6.2ミリモル)を、無水エタノール100mlと共に反応フラスコに導入し、その後ベンジルアミン0.75g(12.4ミリモル)と氷酢酸5滴とを撹拌下で添加した。全体を、24時間撹拌下で室温に置き、式(L3)を有する淡黄色固体生成物(収率=65%)1.65gを得た。
元素分析[検出(計算)]:C: 81.20% (81.71%); H: 8.10% (8.08%); N: 9.7% (10.21%)。
分子量(MW):411.59。
FT−IR(ヌジョール):1638cm
−1ν
(C=N)。
【0120】
実施例5
式(L4)を有する配位子の合成
【化9】
【0121】
上記の通り得られた式(L2a)を有する生成物7.0g(21.70ミリモル)と、シクロヘキシルアミン32.23g(325ミリモル)と、クロロホルム少量とを、固体が完全に溶解するまで、撹拌なしに、100℃に加熱した。20時間後、過剰のシクロヘキシルアミンを除去し、得られた残留物を、無水メタノール100mlに溶解して、0℃に冷却した。6時間後、黄色結晶をろ過により分離し、冷メタノールで洗浄し真空乾燥して、式(L4)を有する黄色固体生成物(収率=72%)6.31gを得た。
元素分析[検出(計算)]:C: 80.30% (80.35%); H: 9.10% (9.24%); N: 10.40% (10.41%)。
分子量(MW):403.60。
FT−IR(ヌジョール):1636cm
−1ν
(C=N)。
【0122】
実施例6
CoCl2(L1)の合成[サンプルGL771]
【化10】
【0123】
無水二塩化コバルト(CoCl
2)(0.51g、4.15ミリモル)を、テトラヒドロフラン(THF)(50ml)と共に、100ml反応フラスコに導入した。全体を数分間撹拌下で室温に保った後、実施例1の記載の通りに得られた式(L1)を有する配位子(1.71g、4.63ミリモル、モル比L1/Co=1.1)を添加した。配位子を添加してすぐに緑色懸濁液が形成され、これを1日間撹拌下で室温に保った。その後、溶媒を真空除去し、得られた残留物を室温で真空乾燥してから、固体用高温抽出器の多孔隔壁上に投入して、非反応配位子を除去するために24時間沸点でペンタンにより連続抽出した。その後、多孔隔壁に残った緑色残留物を回収し室温で真空乾燥してから、固体用高温抽出器の新たな多孔隔壁上に投入して、24時間沸点でジクロロメタンにより再び連続抽出し、緑色溶液を得た。ジクロロメタンを真空除去し、多孔隔壁に残った固体残留物を回収して室温で真空乾燥して、投入した二塩化コバルトに対して80%変換に等しい、錯体CoCl
2(L1)に対応する極濃緑色固体生成物1.54gを得た。
元素分析[検出(計算)]:C: 59.80% (60.13%); H: 5.10% (5.45%); Cl: 13.90% (14.20%); Co: 11.70% (11.80%); N: 8.20% (8.42%)。
分子量(MW):499.34。
FT−IR(ヌジョール):1590cm
−1ν
(C=N)。
【0124】
実施例7
CoCl2(L5)の合成[サンプルGL923]
【化11】
【0125】
無水二塩化コバルト(CoCl
2)(0.335g、2.58ミリモル)を、テトラヒドロフラン(THF)(70ml)と共に、100ml反応フラスコに導入した。全体を数分間撹拌下で室温に保った後、実施例3の記載の通りに得られた式(L5)を有する配位子(1.067g、2.84ミリモル、モル比L5/Co=1.1)を添加した。配位子を添加してすぐに緑色懸濁液が形成され、これを1日間撹拌下で室温に保った。その後、溶媒を真空除去し、得られた残留物を室温で真空乾燥して得られた緑色固体生成物を、固体用高温抽出器の多孔隔壁上に投入して、非反応配位子を除去するために24時間沸点でペンタンにより連続抽出した。その後、多孔隔壁に残った緑色残留物を回収し室温で真空乾燥して、投入した二塩化コバルトに対して93%変換に等しい、錯体CoCl
2(L5)に対応する濃緑色固体生成物1.21gを得た。
元素分析[検出(計算)]:C: 59.0% (59.41%); H: 6.30% (6.58%); Cl: 13.70% (14.03%); Co: 11.30% (11.66%); N: 8.10% (8.31%)。
分子量(MW):505.39。
FT−IR(ヌジョール):1590cm
−1ν
(C=N)。
【0126】
図1に、得られた錯体CoCl
2(L5)のFT−IRスペクトルを示す(ヌジョールバンドを減算)。
【0127】
実施例8
CoCl2(L4)の合成[サンプルB016]
【化12】
【0128】
二塩化コバルト(CoCl
2・6H
2O)70mg(0.294ミリモル)を、還流温度に加熱された、無水化・脱気されたn−ブタノール10mlにおいて、窒素流下で溶解した。得られた溶液に、実施例5の記載の通りに得られた式(L4)を有する配位子0.135g(0.334ミリモル)を添加し、10分後、溶液を約5mlの容積まで窒素流において濃縮した。その後、n−ヘプタン7mlを添加し、全体を徐々に室温まで放冷し、投入した二塩化コバルトに対して98%変換に等しい、錯体CoCl
2(L4)に対応する緑色結晶性固体生成物1.21gを得た。
元素分析[検出(計算)]:C: 60.55% (60.79%); H: 7.01% (6.99%); N: 8.72% (8.87%)。
分子量(MW):644.1。
FT−IR(ヌジョール):ν
(C=N1)1590cm
−1;ν
(C=N2)1587cm
−1。
【0129】
実施例9(GL794)
約1.4gの1,3−ブタジエン2mlを、25ml試験管において低温(−20℃)で凝縮した。その後トルエン7.2mlを添加し、こうして得られた溶液の温度を20℃にした。トルエン溶液(6.3ml、1×10
−2モル、約0.58gに等しい)中のメチルアルミノキサン(MAO)を添加した後、実施例6の記載の通りに得られた錯体CoCl
2(L1)[サンプルGL771](2mg/mlの濃度のトルエン溶液2.5ml、1×10
−5モル、約5mgに等しい)を添加した。全体を140分間磁気撹拌下で20℃に保った。それから、塩酸数滴を含むメタノール2mlの添加によって重合を抑制した。得られた重合体を、Irganox
(R)1076抗酸化物質(Ciba)4%を含むメタノール溶液40mlの添加によって凝固して、1,4−シスユニット含有量98.1%のポリブタジエン0.91gを得た。表1に、プロセス及び得られたポリブタジエンの特徴を示す。
【0130】
実施例10(GL977)
約1.4gの1,3−ブタジエン2mlを、25ml試験管において低温(−20℃)で凝縮した。その後トルエン7.2mlを添加し、こうして得られた溶液の温度を50℃にした。トルエン溶液(6.3ml、1×10
−2モル、約0.58gに等しい)中のメチルアルミノキサン(MAO)を添加した後、実施例6の記載の通りに得られた錯体CoCl
2(L1)[サンプルGL771](2mg/mlの濃度のトルエン溶液2.5ml、1×10
−5モル、約5mgに等しい)を添加した。全体を60分間磁気撹拌下で20℃に保った。それから、塩酸数滴を含むメタノール2mlの添加によって重合を抑制した。得られた重合体を、Irganox
(R)1076抗酸化物質(Ciba)4%を含むメタノール溶液40mlの添加によって凝固して、1,4−シスユニット含有量97.9%のポリブタジエン0.756gを得た。表1に、プロセス及び得られたポリブタジエンの特徴を示す。
【0131】
図2に、得られたポリブタジエンのFT−IRスペクトルを示す。
【0132】
図4に、得られたポリブタジエンのDSCダイアグラムを示す。
【0133】
実施例11(GL962)
約1.4gの1,3−ブタジエン2mlを、25ml試験管において低温(−20℃)で凝縮した。その後トルエン7.2mlを添加し、こうして得られた溶液の温度を20℃にした。トルエン溶液(6.3ml、1×10
−2モル、約0.58gに等しい)中のメチルアルミノキサン(MAO)を添加した後、実施例7の記載の通りに得られた錯体CoCl
2(L5)[サンプルGL923](2mg/mlの濃度のトルエン溶液2.5ml、1×10
−5モル、約5mgに等しい)を添加した。全体を140分間磁気撹拌下で20℃に保った。それから、塩酸数滴を含むメタノール2mlの添加によって重合を抑制した。得られた重合体を、Irganox
(R)1076抗酸化物質(Ciba)4%を含むメタノール溶液40mlの添加によって凝固して、1,4−シスユニット含有量98.6%のポリブタジエン1.4gを得た。表1に、プロセス及び得られたポリブタジエンの特徴を示す。
【0134】
図3に、得られたポリブタジエンの
1H−NMR及び
13C−NMRスペクトルを示す。
【0135】
図5に、得られたポリブタジエンのDSCダイアグラムを示す。
【0136】
実施例12(GL978)
約1.4gの1,3−ブタジエン2mlを、25ml試験管において低温(−20℃)で凝縮した。その後トルエン7.2mlを添加し、こうして得られた溶液の温度を50℃にした。トルエン溶液(6.3ml、1×10
−2モル、約0.58gに等しい)中のメチルアルミノキサン(MAO)を添加した後、実施例7の記載の通りに得られた錯体CoCl
2(L5)[サンプルGL923](2mg/mlの濃度のトルエン溶液2.5ml、1×10
−5モル、約5mgに等しい)を添加した。全体を30分間磁気撹拌下で20℃に保った。それから、塩酸数滴を含むメタノール2mlの添加によって重合を抑制した。得られた重合体を、Irganox
(R)1076抗酸化物質(Ciba)4%を含むメタノール溶液40mlの添加によって凝固して、1,4−シスユニット含有量98.3%のポリブタジエン0.820gを得た。表1に、プロセス及び得られたポリブタジエンの特徴を示す。
【0137】
図2に、得られたポリブタジエンのFT−IRスペクトルを示す。
【0138】
図6に、得られたポリブタジエンのDSCダイアグラムを示す。
【0139】
実施例13(D30)
約1.4gの1,3−ブタジエン2mlを、25ml試験管において低温(−20℃)で凝縮した。その後トルエン12.6mlを添加し、こうして得られた溶液の温度を20℃にした。トルエン溶液(3.15ml、5×10
−3モル、約0.29gに等しい)中のメチルアルミノキサン(MAO)を添加した後、実施例8の記載の通りに得られた錯体CoCl
2(L4)[サンプルB016](2mg/mlの濃度のトルエン溶液0.26ml、1×10
−6モル、約0.5mgに等しい)を添加した。全体を90分間磁気撹拌下で20℃に保った。それから、塩酸数滴を含むメタノール2mlの添加によって重合を抑制した。得られた重合体を、Irganox
(R)1076抗酸化物質(Ciba)4%を含むメタノール溶液40mlの添加によって凝固して、1,4−シスユニット含有量97.8%のポリブタジエン0.24gを得た。表1に、プロセス及び得られたポリブタジエンの特徴を示す。
【0140】
実施例14(P1038)
約1.4gの1,3−ブタジエン2mlを、25ml試験管において低温(−20℃)で凝縮した。その後トルエン11.5mlを添加し、こうして得られた溶液の温度を20℃にした。トルエン溶液(3.15ml、5×10
−3モル、約0.29gに等しい)中のメチルアルミノキサン(MAO)を添加した後、実施例8の記載の通りに得られた錯体CoCl
2(L4)[サンプルB016](2mg/mlの濃度のトルエン溶液1.3ml、5×10
−6モル、約2.7mgに等しい)を添加した。全体を52分間磁気撹拌下で20℃に保った。それから、塩酸数滴を含むメタノール2mlの添加によって重合を抑制した。得られた重合体を、Irganox
(R)1076抗酸化物質(Ciba)4%を含むメタノール溶液40mlの添加によって凝固して、1,4−シスユニット含有量98.7%のポリブタジエン0.66gを得た。表1に、プロセス及び得られたポリブタジエンの特徴を示す。
【0141】
実施例15(P1047)
約1.4gの1,3−ブタジエン2mlを、25ml試験管において低温(−20℃)で凝縮した。その後トルエン1.27mlを添加し、こうして得られた溶液の温度を20℃にした。トルエン溶液(0.63ml、1×10
−3モル、約0.058gに等しい)中のメチルアルミノキサン(MAO)を添加した後、実施例8の記載の通りに得られた錯体CoCl
2(L4)[サンプルB016](2mg/mlの濃度のトルエン溶液2.7ml、1×10
−5モル、約5.4mgに等しい)を添加した。全体を71分間磁気撹拌下で20℃に保った。それから、塩酸数滴を含むメタノール2mlの添加によって重合を抑制した。得られた重合体を、Irganox
(R)1076抗酸化物質(Ciba)4%を含むメタノール溶液40mlの添加によって凝固して、1,4−シスユニット含有量97.5%のポリブタジエン0.19gを得た。表1に、プロセス及び得られたポリブタジエンの特徴を示す。
【0142】
【表1】
【0143】
(
a):1時間当たり、コバルトのモル毎の、重合される1,3−ブタジエンのモル数
(
b):融点
(
c):結晶化温度
(
e):ポリブタジエンの線形インデックス