【実施例2】
【0063】
アスタキサンチン合成経路に関与する酵素の立体構造解析
1.立体構造データ及び手法
酵素A、酵素Cの立体構造モデルはホモロジーモデリングにより構築した。モデリングには、ソフトウェアSwiss-Pdb viewer及びSWISS-MODELを使用した[1, 2]。変異体モデルはSwiss-Pdb viewerで作製した。アミノ酸残基の置換はmutateコマンドを、分子内エネルギーの算出はcompute energyコマンドを、また、エネルギー最小化計算はenergy minimizationコマンドを使用した。基質等との複合体モデルの作製、基質近傍残基の検出、原子間距離の測定、立体構造の表示はソフトウェアWaals(Altif Labs. Inc.)を使用して行った。低分子化合物の立体構造モデルはMarvinSketch (ChemAxon Ltd.)により作製した。
【0064】
テンプレート構造の立体構造の座標データは、タンパク質立体構造データベースであるProtein Data Base (PDB)(http://www.rcsb.org/pdb/)から取得した。テンプレート構造は、PDBに登録されているデータの中で、酵素A、酵素Cそれぞれと最もアミノ酸一致度が高いものを使用した。ホモロジーモデリングのテンプレートとして使用した立体構造データを表1に示す。
【表1】
【0065】
2.酵素Aの立体構造モデルの構築と変異体の解析
酵素Aは、アスタキサンチン合成の原料となるイソプレニル二リン酸(IPP)を生合成するイソプレノイド生合成経路の1つであるデオキシキシルロース経路において、ピルビン酸とD-グリセルアルデヒド三リン酸から、1-デオキシ-Dキシルロース5リン酸を合成する1-デオキシ-D-キシルロース5リン酸合成酵素:1-deoxy-D-xylurose-5-phosphate synthase (DXS)である。
【0066】
構築した酵素Aの立体構造モデルから、ゲノム解析で同定された変異G225Dは、変異が生じるとDXSの酵素活性が向上する例が複数報告されている、活性部位近傍のdisordered領域にあることがわかった。変異体モデルの解析結果より、酵素Aの変異G225Dは、DXSの活性を向上させる既知の変異と同様の構造変化を引き起こすことが推察され、変異G225D酵素も既知の変異と同様にDXSの酵素活性が向上していることが予測される。DXSの活性向上により、アスタキサンチンの原料であるIPPの供給量が増加することに伴い、アスタキサンチンの産生量が増加すると考えられる。
【0067】
2.1. 1-デオキシ-D-キシルロース5リン酸合成酵素の酵素反応
酵素A、1-デオキシ-D-キシルロース5リン酸合成酵素:1-deoxy-D-xylurose-5-phosphate synthase (DXS)は、ピルビン酸とD-グリセルアルデヒド三リン酸から、マグネシウムイオン(Mg)存在下で、1-デオキシ-D-キシルロース5リン酸を合成する。触媒反応には、補酵素としてチアミンピロリン酸(Thiamine pyrophosphate, TPP)を必要とし、まず、補酵素TPPが基質のピルビン酸に付加し、ヒドロキシエチル-TPP中間体を生じる。この中間体とグリセルアルデヒド三リン酸が反応することにより1-デオキシ-D-キシルロース5リン酸が生成する。以下に酵素Aの酵素反応を示す。
【化1】
【0068】
2.2. 酵素Aの立体構造モデルの構築
(1) ホモロジーモデリングによる酵素Aの立体構造モデルの構築
酵素Aの立体構造モデルは、補酵素TPPとの複合体の立体構造がX線結晶構造解析により決定されているDeinococcus radiodurans(D. radiodurans)由来の1-deoxy-D-xylurose-5-phosphate synthase(DXS、テンプレート)の立体構造(PDB ID:2O1X) [3]に基づき(
図2)、ホモロジーモデリングにより構築した。
【0069】
ホモロジーモデリングは、酵素Aとテンプレート構造の立体構造アライメントに基づいて行った(
図3A,3B)。
酵素AとD. radiodurans由来DXSのアミノ酸一致度は44.1%である。テンプレートのDXSの立体構造では、アミノ酸番号199〜242残基の領域(44残基)がdisorderedであり、X線結晶構造解析により原子の位置が特定できていない。そのため、酵素Aのdisordered領域に相当する196〜238残基(43残基)を除く、アミノ酸残基番号7〜630残基の立体構造モデルを構築した。次に、酵素Aの立体構造モデルとテンプレート構造を重ね合わせることにより、TPP及びMgをはめ込み、酵素AとTPPの複合体モデルを作製した。
図4にテンプレート構造と構築したモデル構造を示す。
酵素Aは、テンプレート構造と同様、ホモ二量体を形成しており、それぞれのサブユニットにTPP結合部位及び基質結合部位を持つ。酵素Aの単量体は、ドメインI(1〜319残基)、ドメインII(320〜495残基)、ドメインIII(496〜629残基)の3つのドメインで構成される。
【0070】
(2) 酵素Aの基質複合体モデルの作製
酵素Aの基質との結合に関与するアミノ酸残基を推察するため、酵素Aに基質が結合した複合体モデルを構築した。テンプレート構造の2O1Xでは、基質であるピルビン酸及びグリセルアルデヒド3リン酸の座標は確定できていないため、先ず、ピルビン酸結合部位を検出するために、補酵素TPPにピルビン酸が付加したヒドロキシエチル-TPP中間体との複合体モデルを、類縁のSaccharomyces cerevisiae (S. cerevisiae ) 由来のトランスケトラーゼTransketolase(TK)とヒドロキシエチル-TPP中間体が結合した立体構造(PDB ID: 1GPU)[6]に基づき、重ね合わせにより、ヒドロキシエチル-TPP中間体をはめ込み、複合体モデルを作製した。同様にS. cerevisiae由来のTKとエリトロース-4-リン酸との立体構造(PDB ID: 1NGS)[7]に基づき、エリトロース-4-リン酸をはめ込み、さらにエリトロース-4-リン酸からグリセルアルデヒド3リン酸モデルを作製することにより、酵素Aとグリセルアルデヒド三リン酸との複合体モデルを作製した。
図5に酵素Aと基質複合体のモデル構造を示す。
【0071】
2.3. 酵素Aの活性部位の推察
補酵素及び基質を結合するアミノ酸残基を推定するため、酵素Aと補酵素の複合体モデルにおいて、TPP中間体、GAP及びMgとの相互作用について調べた。
【0072】
(1) 補酵素TPPの結合部位
酵素AとTPPとの複合体モデルでは、テンプレート構造と同様、TPPはドメインIとドメインIIの間に位置しており、TPPのピリミジン環はドメインIIに、リン酸基はドメインIに結合している。
【0073】
TPPは、アミノピリミジン環、チアゾリン環、ピロリン酸で構成される(
図6)。アミノピリミジン環は酵素Aの結合ポケットの内部にぴったりと収まるように結合している。Phe396とIle369の側鎖は、アミノピリミジン環を両側から挟むように疎水性相互作用で結合している。特にPhe396の側鎖である環状のフェニル基とアミノピリミジン環はπスタッキングによる強い結合が推察される。Gly120の主鎖の酸素と、Glu371の側鎖の酸素はアミノピリミジン環の1位の窒素原子と水素結合を形成する。TPPのピリミジン環の1位の窒素原子とGlu残基との水素結合は、TPPを介した触媒反応に重要であり、TPPを補酵素として使用する酵素で保存されていることが知られている。Arg399の側鎖は、疎水性結合だけでなく、周辺のアミノ酸残基Glu371、Ser122の側鎖との水素結合により、結合ポケットを形成していると推測される。チアゾリン環との相互作用としては、Ile184, Ile369との疎水性結合が見られた。ピロリン酸との相互作用としては、Gly152の主鎖、Lys285の側鎖及びHis79の側鎖と間に水素結合が推察された。
【0074】
補酵素TPPの結合にはMgを必要とする。MgはTPPの2つのリン酸基の間に配位しており、 Asp151とAsn180の側鎖及びMet182の主鎖がMgと結合していることが推察された。DXSについてはTPP結合モチーフとして、GDGX25-30Nの配列が保存されていることが知られている[3]。酵素AでMg結合が推察されたAsp151とAsn180を含むアミノ酸配列Gly150-Asp151-Gly152-Asn180の配列は、このモチーフと合致する。
【0075】
以上のように、TPPのアミノピリミジン環とチアゾリン環の炭素は、酵素Aの疎水性残基Ile184, Ile369, Phe396, Arg399との間に疎水性相互作用が推察された。また、アミノピリミジン環の2つの窒素原子はGly120, Glu371と水素結合を形成することが推察された。ピロリン酸との間にはHis79, Gly152, Lys285との水素結合の他、Asp151, Asn180, Met182によるMgを介した水素結合が推察される。
図7に、推察されたTPPとの結合に関与するアミノ酸残基を示す。
【0076】
(2) ピルビン酸との相互作用
基質であるピルビン酸はTPPと反応し、ヒドロキシエチル-TPP中間体となる。酵素Aとヒドロキシエチル-TPP中間体の複合体モデルからは、ピルビン酸由来のヒドロキシエチル基との相互作用として、Val77との疎水性相互作用及びHis432との水素結合が推察された。これらのアミノ酸残基がピルビン酸との結合に関与していると考えられる。
図8に、ヒドロキシエチル基との相互作用が推測されるアミノ酸残基を示す。
【0077】
(3) グリセルアルデヒド3リン酸との相互作用
基質であるグリセルアルデヒド3リン酸(GAP)と相互作用するアミノ酸残基として、His48, Tyr393, Arg421, Asp428, Arg479との水素結合が推察された(
図9)。
His48とAsp428はGAPのアルデヒド基と水素結合を形成する。Tyr393, Arg421, Arg479はGAPのリン酸基との水素結合を形成することが推察された。
【0078】
以上、推察された活性部位について表2〜4に示す。
【表2】
【表3】
【表4】
【0079】
また、酵素Aと補酵素TPPとの結合様式、酵素Aとピルビン酸との結合様式、酵素Aとグリセルアルデヒド3リン酸との結合様式の図をそれぞれ、
図6、10、11に示す。
酵素Aは、テンプレートのD. radiodurans由来DXSで明らかになっている補酵素のTTP、基質のピルビン酸及びGAPを結合する活性部位を保持していることから、DXSの酵素活性を持つと推測される。これらのアミノ酸残基は、D. radiodurans由来DXSの他、大腸菌等のDXSやS. cerevisiae由来TKにおいても保存性が高いことが知られている[3]。
【0080】
大腸菌DXSでは、酵素AのGlu370, Arg399, Arg479に相当するアミノ酸残基をAlaへ置換すると、失活することが明らかになっている[3]。また、文献[8]では、大腸菌DXSの酵素AのHis48, Glu371, Asp428に相当するアミノ酸残基を変異させた実験で、いずれも酵素活性がほぼ失活することが示されている。酵素Aにおいてもこれらのアミノ酸残基はDXSの活性に重要であると推測される。
【0081】
2.4. 酵素Aの変異G225Dによる影響
酵素Aの変異G225Dは立体構造が特定できなかったdisordered領域(196〜238残基)に存在する。この変異が酵素Aの立体構造に与える影響を推察するため、これまでの知見や立体構造上でのdisordered領域の位置と活性部位との関連について調べた。
【0082】
(1) 既知のdisordered領域での変異について
これまでに、マスカットと大腸菌のDXSについて、disordered領域で起こった変異、それぞれ2箇所、計4種がいずれも酵素活性を増加させることが報告されている。
マスカット (Vitis vinifera)由来DXSでは、K284Nの変異が野生型に比べVmax及びKcat/Kmで約2倍の活性の増大をもたらすこと、過剰発現によりモノテルペンの産生量が大幅に増加することが報告されている[9]。
【0083】
また、マスカットにおいてK284NとR306Cの変異が、大腸菌においてK213NとK234Cの変異に関する発明が知られている(特表2014-500710、US20130276166)。この発明は、DXSの活性向上によりテルペンの産生量を増加させる方法に関するもので、4例のいずれも、それぞれの一残基の変異によりテルペンの産生量が増加する。
【0084】
図12に、酵素Aと大腸菌とマスカットのDXSにおける酵素活性が増加した変異の位置を示す。
マスカットのK284NとR306C、大腸菌のK213NとK234Cは、いずれもdisordered領域(青)に存在する。酵素Aの変異G225Dもこれらと同じくdisordered領域に存在する。アミノ酸配列アライメントから、DXSの活性部位(green)が保存されており、酵素AもこれらのDXSと同様の反応様式を持つと推測される。なお、disordered領域のN末端側(magenta)には、活性部位が存在する。
【0085】
以上のように、DXSのdisordered領域にはDXSの酵素活性を上げる変異が複数存在しており、本領域への変異導入が、DXSの活性に何らかの影響を及ぼすことが推測される。
【0086】
(2) 酵素Aの変異G225D(disordered領域)の立体構造での位置
図13に、酵素Aの変異G225Dが存在するdisordered領域(196〜238残基)位置を青の点線で示す。
本領域は、DXSの活性に必須である補酵素TPPの結合部位近傍に位置する。本領域のN末端側のループ(magenta)には活性部位であるAsn180, Met182及びIle184が存在する。 Asn180の側鎖とMet182の主鎖はMgを結合する。Ile184の側鎖はTPPと疎水性結合している。DXSの活性に必須なTPPとMgが結合するには、このループが適切な構造をとることが重要であると思われる。文献[9]では、生理的役割は不明ではあるが、本領域は活性部位の近くに存在し、本領域内の変異が合理的に酵素の活性に影響するではないか、と考察されている。
図12、13に示すように、本領域は、アミノ酸配列上でも立体構造上でも、TPP結合部位の近傍に存在するため、本領域への変異がこれらの活性部位に影響を与えることは、十分起こりうると考えられる。
【0087】
(3) 酵素Aのdisordered領域のモデル及び変異G225D酵素の作製
次に、酵素Aの変異G225Dがdisordered領域の立体構造に与える影響を調べるため、酵素Aの196〜238残基(43残基)のdisordered領域についてモデル構造を作製した。マスカットの変異K284Nについて報告された文献[9]では、マスカットDXSのdisordered領域について、モデルを作製し、変異による静電ポテンシャルの変化を見ている。参考のため、酵素Aについても同様の解析を行った。ホモロジーモデリングにより、酵素Aのdisordered領域と相同性の高いアミノ酸配列のフラグメント構造を基に立体構造モデルを作製した。テンプレート構造として、PDBに登録された立体構造の中で最も高いアミノ酸一致度(34%)を持つ1AL7のフラグメントを使用した。disordered領域はゆらいだ構造をとっていると推測されるが、本領域が形成しやすいフォールディングとしては参考になると思われる。作製したモデルを
図14(左)に示す。
【0088】
さらに、変異箇所のGly225をAspに置換することにより変異G225D酵素の立体構造モデルを作製した。Gly225は表面に位置しており、Aspへの置換によりAspの側鎖が表面に露出する。作製した立体構造モデルの表面形状に静電ポテンシャルをマップした結果を
図14(右)に示す。青がpositive(正電荷)領域を、赤がnegative(負電荷)な領域を示す。
【0089】
野生型では、強い正電荷の領域が存在するが、変異G225D酵素では正電荷が弱まり、負電荷が強くなっていることが確認できる。野生型では、正電荷を持つArg227, Arg228, Lys230, K234の側鎖が集まり、強い正電荷の領域を形成している。この領域に存在する電荷を持たないGly225が負電荷を持つAspに置換されることにより、Asp225の近傍の正電荷が弱まったためと考えられる。この結果は、文献[9]で示されているマスカットの変異K284Nの静電ポテンシャルの変化、すなわちdisordered領域の表面に正電荷から負電荷への静電ポテンシャルの変化と同じ傾向を示している。酵素AのG225Dによるdisordered領域の構造変化は、TPP結合部位を含む活性部位にマスカットの変異と同様の影響を及ぼすことが予測さ、その影響により、酵素Aの変異体G225Dもマスカットの変異体K284Nと同様に酵素活性が増加していることが示唆される。
【0090】
2.5. アスタキサンチン合成経路における酵素Aの変異G225Dの影響
以上のように、酵素Aの変異G225Dは酵素Aのdisordered領域で起きていること、本領域は、活性に必須なTPP結合部位の近傍に存在することが確認された。また、本領域にはこれまで複数のDXSの酵素活性を向上させる変異が見つかっており、G225Dの変異は、DXSの活性を向上させる既知の変異と同様の構造変化を起こすことが予測された。
【0091】
立体構造モデルで確認されたdisordered領域の位置からは、少なくとも文献で述べられているように、disordered領域への変異がTPP結合領域に何らかの影響を及ぼすことにより、酵素活性が向上していると考えられる。マスカットの例では、in vitroの酵素学的実験により変異体のKcat/Kmが野生型の約2倍になっていることが示されており、disordered領域での変異がTPPの結合により適した構造変化をもたらすことが予測される。
【0092】
細胞内で各種のモノテルペンの大幅な増加がもたらされるためには、モノテルペンの原料となるイソペンテニル二リン酸(IPP)の増加が必要である。DXSは、デオキシキシルロース経路の産生物であるIPPによりフィードバック阻害がかかること、IPPはTPPと競争阻害することが報告されている[10]。また、IPPの量が一定量以上になると、デオキシキシルロース経路の最初の酵素であるDXSに阻害がかかり、それ以上のIPPを増やさないように制御されることが知られている。
【0093】
このフィードバック阻害により、供給されるIPPの量は、DXSによって一定に制御されているため、単にDXSの酵素活性Kcat/Kmが増加しただけでは、IPPの供給量は増えず、テルペンが大幅に増加することはできない。既知の例では、disordered領域の変異によりテルペンの合成量が増加しており、この変異によりIPPの供給量が増加していることが予測され、すなわち、DXSのIPPによるフィードバック阻害が効かなくなっていることが示唆される。
【0094】
in vitroでは、IPPは、TPPと競合してDXSに結合し、DXSを阻害することが明らかになっている[10]。disordered領域への変異により、TPP結合領域に構造変化が起こり、TPP結合により適した構造になるだけでなく、IPPの結合に影響を及ぼすことで、IPPによるフィードバック阻害が効かなくなっている可能性が示唆される。
【0095】
酵素Aの変異G225Dも同様、TPP結合領域に構造変化を及ぼし、IPPによるフィードバック阻害が効かなくなることで、IPPの産生量が増加していると推察される。その結果、アスタキサンチン合成の原料となるIPPの供給量が増えることで、アスタキサンチンの合成量が増加していると考えられる(
図15)。
【0096】
3.酵素Cの立体構造モデルの構築と変異体の解析
酵素Cは、アミノ酸配列の相同性および立体構造比較解析から、ポリプレニル二リン酸合成酵素の一種であり、ファルネシル二リン酸(FPP)と7個のイソペンテニル二リン酸(IPP)からデカプレニル二リン酸を合成するデカプレニル二リン酸合成酵素:Decaprenyl diphosphate synthaseである。
【0097】
構築した酵素Cの立体構造モデルから、ゲノム解析で同定された変異A305Vは、周辺のアミノ酸残基との原子の衝突による立体障害を引き起こし、酵素Cの立体構造を不安定化することが推察された。立体構造の不安定化により酵素Cの活性が減少することにより、酵素Cにより消費されるFPPとIPPの量が減少する。その結果、アスタキサンチン合成に使用できるFPP, IPPの量が増加することにより、アスタキサンチンの産生量が増加することが考えられる。
【0098】
3.1.デカプレニル二リン酸合成酵素の酵素反応
デカプレニル二リン酸合成酵素は、FPPとIPPを縮合する活性を持ち、IPPとの縮合を繰り返し、FPPと7個のIPPからデカプレニル二リン酸(DPP)を合成する酵素である。デカプレニル二リン酸合成酵素の酵素反応を以下に示す。
【化2】
【0099】
3.2. 酵素Cの立体構造モデルの構築
(1) ホモロジーモデリングによる酵素Cの立体構造モデルの構築
酵素Cの活性部位及び変異による影響を調べるため、テンプレート構造として、PDBの立体構造でアミノ酸一致度が最も高く(アミノ酸一致度は76.2%)、立体構造がX線結晶構造解析により決定されているRhodobacter capsulatus (R. capsulatus) 由来のデカプレニル二リン酸合成酵素の立体構造(PDB ID: 3MZV)を使用し、ホモロジーモデリングにより立体構造モデルを構築した(
図16) [4]。
ホモロジーモデリングは、酵素Cとテンプレート構造の立体構造アライメントに基づいて行った(
図17)。
【0100】
(2) 酵素Cの基質複合体モデルの作製
テンプレート構造の3MZVは基質が結合していないため、Escherichia coli由来のoctaprenyl pyrophosphate synthase(オクタプレニル二リン酸合成酵素)(PDB ID: 3WJN, 3WJO)の立体構造データ[11]を使用して、酵素Cの立体構造モデルに3WJNを重ね合わせ、基質であるFPPを酵素Cの立体構造モデルにはめ込むことにより、酵素CとFPPの複合体モデルを作製した。次に、同様に、3WJOを重ね合わせて、IPPをはめ込み、酵素CとFPP, IPP複合体モデルを作製した。
図18に、テンプレート構造と構築したモデル構造を示す。酵素Cはテンプレート構造と同様にホモ二量体を形成している。
【0101】
3.3. 酵素Cについて
(1) 立体構造による比較
酵素Cのデカプレニル二リン酸合成酵素は、ポリプレニル二リン酸合成酵素のファミリー(Pfam PF00348 Polyprenyl synthetase)に属する。
図19に酵素Cの基質結合の様子を示す。
ポリプレニル二リン酸合成酵素は、FPPからIPPをhead-to-tail(ここでは文献[4]に従い、リン酸基側をhead、イソプレニル基側をtailと呼ぶ。)の向きで縮合することにより、各種のポリプレニル二リン酸を合成する。デカプレニル二リン酸合成酵素は、FPPとIPPGの縮合反応を続けることにより、基質結合部位の奥の方へと(
図19 右に矢印で示す)プレニル鎖が伸長され、C50のデカプレニル二リン酸を合成する。
【0102】
酵素CとテンプレートのR. capsulatus由来デカプレニル二リン酸合成酵素はアミノ酸一致度が76.3%と高く、活性部位も保存されている(
図17)。立体構造の、Cαの重ね合わせによるRMSDは0.063Aであり、2つの酵素は非常に類似しており、アミノ酸残基の一致を色分けで表示すると、アミノ酸残基の種類が異なる領域は、分子表面に限られ、活性部位や基質を結合する領域は、全て一致するアミノ酸残基で構成されている(
図20)。
【0103】
(2) アミノ酸配列による比較
次に、酵素Cのアミノ酸配列について、Paracoccus由来のデカプレニル二リン酸合成酵素との比較を行った。Paracoccus由来のデカプレニル二リン酸合成酵素として、既に明らかになっているアミノ酸配列として、UniProt(http://www.uniprot.org)に、Paracoccus zeaxanthinifaciens (Q8L1I6)とParacoccus denitrificans(A1B3M9)由来のアミノ酸配列が登録されている。これらと酵素Cのアミノ酸配列を比較したところ、アミノ酸一致度は75.1% (類似度89.2%)であり、高い相同性を示した(表5)。
アミノ酸配列からも酵素Cはデカプレニル二リン酸合成酵素であると推測される。
図21にアライメントを示す。
【表5】
【0104】
3.4. 酵素Cの活性部位の推察
酵素Cと基質の複合体モデルにおいて、基質であるFPP結合部位とIPP結合部位、触媒に必要なMg結合部位を推察した。これらの結果から推察された活性部位と他のポリプレニル二リン酸合成酵素の活性中心や基質結合部位の保存性は高く、酵素Cはポリプレニル二リン酸合成酵素と同様の反応様式を持つと推察される。
【0105】
酵素Cと基質との複合体モデルを
図22に示す。
酵素Cは、テンプレート構造のデカプレニルニリン酸合成酵素と同様、ホモ二量体を形成すると推測される。
図22に、A鎖(light red)のFPPとIPPとの結合部位を示す。FPPは、A鎖のトンネル状の領域に結合し、FPPとIPPは、IPPのイソペンテニル基にFPPのリン酸基を向けたhead-to-tailの形で結合している。触媒反応は、Mg存在下において、FPPのリン酸基とIPPのイソペンテニル基の間で起こる。
【0106】
酵素Cの活性部位を推察するため、酵素Cと基質複合体モデルにおいて、FPP、IPPの近傍に存在するアミノ酸残基を検出し、基質とアミノ酸残基の相互作用を推察した。FPPについては、リン酸基とArg102, Lys179, Lys244との間に水素結合が、ポリプレニル基とAla88, Thr89, His92, Phe125との間に疎水性相互作用が推察された(
図23上)。
IPPについては、リン酸基とLys54, Arg57, His86, Arg103との間に水素結合が、イソペンテニル基とPhe216との間に疎水性相互作用が推察された(
図23中央)。
【0107】
本触媒反応には、Mgが必要である。Mg結合部位として、既知のポリプレニル二リン酸合成酵素では、2箇所のDDXXDモチーフが知られている[11]。テンプレート構造ではMgの座標は決定されていないが、酵素Cにおいても、DDXXDモチーフ相当するAsp93, Asp94, Asp97及びAsp220, Asp221, Asp224が、既知のMg結合部位と同様にリン酸基の近くに存在し、これらのアミノ酸残基がMgを結合すると推察される(
図23下)。
【0108】
以上、推察された活性部位について添付資料の表6〜8に示す。また、酵素CとFPP及びIPPとの結合様式、並びに酵素CとMgとの結合様式についての図をそれぞれ
図24、25に示す。
【表6】
【0109】
【表7】
【0110】
【表8】
【0111】
結合が推察された各アミノ酸残基は、テンプレート構造であるR. capsulatus由来のデカプレニル二リン酸合成酵素と一致する(
図17)。また、酵素CのFPP結合部位、IPP結合部位、Mg結合部位は、基質複合体モデルの作成に使用したE. coli由来のオクタプレニル二リン酸合成酵素の結合部位を保持していることから、酵素Cは、オクタプレニル二リン酸合成酵素と同様の反応様式をとると考えられる。
【0112】
特に、FPPのリン酸基を結合するArg102, Lys179, Lys244、Mgを結合するAsp93, Asp94, Asp97, Asp220, Asp221, Asp224は、リン酸基を転移する触媒活性に直接関与する重要な残基であると思われる。ラットや酵母のFPP合成酵素の変異体作製による実験では、酵素Cのリン酸結合部位であるArg102, Arg103及びMg結合部位であるAsp94, Asp97, Asp220, Asp221, Asp224及びに相当するアミノ酸残基が、酵素活性に重要であること、ポリプレニル二リン酸合成酵素の間でこれらのアミノ酸残基が高く保存されていることが報告されている[14, 15]。
【0113】
また、FPP合成酵素では、酵素CのPhe216, Gln217に相当するアミノ酸残基の変異体作製により、 PheとGlnの側鎖が基質結合に重要であることが明らかにされている[16]。酵素Cの複合体モデルにおいても、Phe216, Gln217が活性部位の領域にあり、活性に重要であると予測される。
【0114】
3.5. 酵素Cの変異A305Vによる影響
酵素Cで同定されたAla305からValへの変異が立体構造に及ぼす影響を推察するため、酵素Cの変異A305V酵素の立体構造モデルを作製した。
【0115】
(1) A305Vの一残基置換による変異モデルの作製
AlaからValへの置換による影響を見るため、まず、他のアミノ酸残基の立体構造を固定して、(rigid bodyと仮定して)、Ala305をValに一残基置換したモデルを作製し、野生型と比較した。
【0116】
図26に、野生型と変異A305V酵素の立体構造モデルを示す。野生型のAla305は、αヘリックス(pink)に存在し、側鎖は隣接するαヘリックス(cyan)のアミノ酸残基と疎水性相互作用によりパッキングしている。
【0117】
図27に、Ala305と隣接するアミノ酸残基の構造を示す。
Ala305の側鎖であるメチル基の炭素原子は周辺のアミノ酸残基、Tyr208, Ala211, His301, Ala302と接しており、炭素の原子間の距離はいずれも4.0Å未満である。Ala305からValへの置換により側鎖のメチル基が2つ分増えることになる。Ala305をValに置換した立体構造モデルでは、Valの側鎖のメチル基の炭素とTyr208及びAla211の炭素との原子間距離は2.42Å, 2.47Åであった。
【0118】
炭素間の非共有結合による接触距離の極限下限値は2.9Aである。Val305で測定された炭素の原子間の距離はこの値を下回るため、これらの炭素原子は衝突し、周辺のアミノ酸残基との立体障害が起きると考えられる。Spece-fillingによる表示では、原子間の距離がファンデルワールス半径より短く、原子間で衝突していることが確認できる。以上より、A305Vの変異は、原子の衝突により酵素Cの立体障害を引き起こし、立体構造の不安定化を招くと予測される。
【0119】
(2) A305Vの変異による分子内エネルギーの変化
A305Vによる構造の不安定化を評価するため、酵素Cの野生型と変異体A305Vの分子内エネルギーを原子間の結合の長さ、結合角、ねじれ、結合エネルギー等の合計により、単位キロジュール/mol(KJ/mol)で算出した。
【0120】
その結果、野生型の-17,912(KJ/mol)に対し、変異A305V酵素では-16,295(KJ/mol)と、変異A305Vの分子内エネルギーが9.02%も増加し、構造が不安定化することが確認された。この分子内エネルギーの増加は、特にTyr208, Ala211, Val305の各アミノ酸残基に認められ、これらのアミノ酸残基が衝突を起こしていることが分子内エネルギーの増加に起因すると考えられる。
図28に、酵素Cの野生型と変異体A305Vの分子内エネルギーの比較を示す。
【0121】
(3) 変異A305Vによる構造変化
次に、変異体モデルに対しエネルギー最小化計算を行い、周辺のアミノ酸残基の立体構造を動かすことにより、A305Vによる衝突を回避できるかどうかを調べた。その結果、Val305の側鎖の衝突を回避して、側鎖を許容するためには、Val305が存在するαヘリックスと隣接するαヘリックスのアミノ酸残基の立体構造を動かさなければならないことがわかった。すなわち、その構造変化は側鎖のみならず、主鎖にも及ぶものであり、変異A305V酵素では、αヘリックス間の本来のパッキングができなくなり、2本のヘリックス周辺の構造が不安定化することが予想される。また、変異A305Vに隣接するαヘリックスには基質であるIPPやMgを結合する活性部位(Phe216, Gln217, Asp220)が存在する。活性部位の土台となるαヘリックスの主鎖構造の構造変化により、活性部位のアミノ酸残基が本来の位置をとれなくなり、その結果、基質結合や活性そのものに影響がでることが考えられる(
図29右)。
【0122】
図29に、野生型とエネルギー最小化計算後の変異体A305VのAla305とVal305周辺の構造を、
図30、31、32に変異体A305Vの構造変化を示す。
【0123】
(4) 構造の不安定化による酵素Cの活性の減少
以上のように、A305Vの立体構造モデルからは、周辺のアミノ酸残基との立体障害、分子内エネルギーの増加および隣接する2本のαへリックスの構造変化が起きていると推察され、A305Vの変異が酵素Cの立体構造を不安定化することが示唆された。点変異による立体構造の不安定化については、遺伝病等でも数多く報告されている。たとえば、不安定化を引き起こす変異を持ったタンパク質が、溶媒中で本来の立体構造を維持することができずに、通常よりも短かい時間で失活する、また、細胞内では、本来のパッキングができない変異体タンパク質が細胞自身の機能により排除されると考えられている。そのため、本来の活性を有さない、不安定な構造である変異A305V酵素は、細菌内で排除されている可能性があり、結果的に、細菌内での酵素Cの活性が減少するものと推察される。
【0124】
3.6. アスタキサンチン合成経路における酵素Cの変異A305Vの効果
デカプレニル二リン酸合成酵素は、コエンザイムC10(CoQ10)合成経路の酵素の1つである。今回、酵素Cと高い相同性を持つことが確認されたParacoccus zeaxanthinifaciensあるいはParacoccus denitrificans由来のデカプレニル二リン酸合成酵素は、CoQ10の産生に必要な酵素であることが明らかにされている[特開2005-211020、特表2006- 517794]。デカプレニル二リン酸合成酵素の基質であるFPPとIPPは、アスタキサンチン合成経路のゲラニルゲラニル二リン酸(Geranyl-geranyl pyrophosphate; GGPP)合成酵素のCrtEの基質でもある。したがって、通常のParacoccusの細胞内では、デカプレニル二リン酸合成酵素とCrtEが、基質であるFPPとIPPを取り合って使用していると考えられる。
【0125】
酵素Cで同定された変異A305Vは、分子の立体構造を不安定化させることにより、酵素Cの活性を減少させると推察された。酵素Cの活性が減少すれば、使用する基質のFPP及びIPPの量も減少し、その結果、アスタキサンチン合成経路で使用可能なFPP、 IPPの量は増加すると考えられる。
【0126】
CrtEは、1分子のFPPと1分子のIPPから1分子のGGPPを合成する。一方、酵素Cが1分子のデカプレニル二リン酸を合成するには、1分子のFPPと7分子のIPPを必要とする。IPPで見ると、酵素Cは、1つの反応でCrtEの7倍のIPPを消費する。このため、酵素Cの活性減少は、アスタキサンチン合成経路に供給されるIPPを増加させるのに極めて効果的であると考えられ、
【0127】
その結果、アスタキサンチンの合成量が顕著に増加すると推察される(
図33)。
【0128】
参考文献
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