【文献】
The Journal of biological chemistry. 2006 [Available online 2006-02-24], ,Vol.281, No.20, p.14136-14143
【文献】
Analytical chemistry. 2005, Vol.77, No.3, p.797-805
【文献】
Annual review of biochemistry. 2003, Vol.72, p.249-289
【文献】
Gene. 1997, Vol.192, No.2, p.271-281
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
細胞は培養培地中にあり、分泌された第2キメラポリペプチドをキチン誘導体化樹脂に曝露することにより、分泌された第2キメラポリペプチドを培養培地から単離する、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の製法。
ジスルフィド結合を形成できる連続アミノ酸の区域が、TNR1A細胞外ドメイン、TNR1B細胞外ドメイン、VGFR1細胞外ドメイン、VGFR2細胞外ドメイン、VGFR3細胞外ドメイン、ErbB1細胞外ドメイン、ErbB2細胞外ドメイン、ErbB3細胞外ドメイン、または、ErbB4細胞外ドメインを含む、請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の製法。
C末端残基がスルフヒドリルもしくはセレノヒドリル基を含む該システイン、ホモシステイン、セレノシステイン、若しくはホモセレノシステインの誘導体であり、ジスルフィド結合を形成できる連続アミノ酸の区域がVH−CHタンパク質、またはIgG免疫グロブリンFcポリペプチドおよびIgG M1エキソンポリペプチドを含む、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の製法。
第2キメラポリペプチド内の連続アミノ酸の区域が別のこのような連続アミノ酸の区域とジスルフィド結合を形成する、請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の製法。
工程(d)で回収される、システイン、ホモシステイン、セレノシステイン、若しくはホモセレノシステイン残基、またはスルフヒドリルもしくはセレノヒドリル基を含むシステイン、ホモシステイン、セレノシステイン、若しくはホモセレノシステインのいずれかの誘導体をそのC末端側において含む連続アミノ酸の区域が生物活性を有する、請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載の製法。
工程(d)で回収される、システイン、ホモシステイン、セレノシステイン、若しくはホモセレノシステイン残基、またはスルフヒドリルもしくはセレノヒドリル基を含むシステイン、ホモシステイン、セレノシステイン、若しくはホモセレノシステインのいずれかの誘導体をそのC末端側において含む連続アミノ酸の区域が独立してフォールディングするタンパク質である、請求項1乃至請求項13のいずれか1項に記載の製法。
工程(d)で回収される、システイン、ホモシステイン、セレノシステイン、若しくはホモセレノシステイン残基、またはスルフヒドリルもしくはセレノヒドリル基を含むシステイン、ホモシステイン、セレノシステイン、若しくはホモセレノシステインのいずれかの誘導体をそのC末端側において含む連続アミノ酸の区域が糖化タンパク質である、請求項1乃至請求項14のいずれか1項に記載の製法。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、下記を含む化合物を提供する:連続アミノ酸の第1区域:そのそれぞれはその前のアミノ酸にペプチド結合により結合しており、その配列はあるターゲットに対する結合部位を含む;および連続アミノ酸の第2区域:そのそれぞれはその前のアミノ酸にペプチド結合により結合しており、その配列は連続アミノ酸の第1区域の配列と同一であり、かつ前記ターゲットに対する同一結合部位を含む;その際、アミノ酸の第1区域およびアミノ酸の第2区域はそれぞれ、その予め定めた末端にシステイン残基またはセレノシステイン残基を有し、それらのシステイン残基またはそれらのセレノシステイン残基は下記の構造を有する結合で連結している:
【0025】
(各Xは同一であり、硫黄(S)またはセレン(Se)を表わし、各Cは前記のシステイン残基またはセレノシステイン残基のうちの1つのベータ−炭素を表わす)。
ある態様において、結合は下記の構造をもつ:
【0027】
ある態様において、連続アミノ酸の第1区域および第2区域のそれぞれの予め定めた末端にある残基はシステイン残基である。1態様において、連続アミノ酸の第1区域および第2区域のそれぞれの予め定めた末端にある残基はセレノシステイン残基である。
【0028】
本発明は、下記を含む化合物をも提供する:連続アミノ酸の第1区域:そのそれぞれはその前のアミノ酸にペプチド結合により結合しており、その配列はあるターゲットに対する結合部位を含む;および連続アミノ酸の第2区域:そのそれぞれはその前のアミノ酸にペプチド結合により結合しており、その配列は連続アミノ酸の第1区域の配列と異なり、かつ異なる部分に対する結合部位を含む;その際、アミノ酸の第1区域およびアミノ酸の第2区域はそれぞれ、その予め定めた末端にシステイン残基またはセレノシステイン残基を有し、それらの残基は下記の構造を有する結合で連結している:
【0030】
(各Xは同一でも異なってもよく、硫黄(S)またはセレン(Se)を表わし、各Cは前記のシステイン残基またはセレノシステイン残基のうちの1つのベータ−炭素を表わす)。
【0031】
ある態様において、結合は下記の構造をもつ:
【0033】
ある態様において、アミノ酸の第1区域およびアミノ酸の第2区域のそれぞれの予め定めた末端にある残基は両方ともシステイン残基である。ある態様において、アミノ酸の第1区域およびアミノ酸の第2区域のそれぞれの予め定めた末端にある残基は両方ともセレ
ノシステイン残基である。ある態様において、アミノ酸の第1区域またはアミノ酸の第2区域のうちの1つの予め定めた一方の末端にある残基はシステイン残基であり、予め定めた他方の末端にある残基はセレノシステイン残基である。
【0034】
本発明は、2以上の同一の本発明化合物が少なくとも1つの結合により互いに連結したものを含む多量体を提供する。ある態様において、多量体は二量体である。ある態様において、多量体は三量体である。ある態様において、多量体は四量体である。多量体のある態様においては、1以上の結合がジスルフィド結合を含む。
【0035】
化合物のある態様において、アミノ酸の第1区域およびアミノ酸の第2区域の両方の予め定めた末端はそのN−末端である。ある態様において、アミノ酸の第1区域およびアミノ酸の第2区域の両方の予め定めた末端はそのC−末端である。ある態様においては、アミノ酸の第1区域およびアミノ酸の第2区域のうちの1つの予め定めた一方の末端がC末端であり、予め定めた他方の末端がN末端である。
【0036】
化合物のある態様において、アミノ酸の第1区域はL−アミノ酸を含む。ある態様において、アミノ酸の第1区域はD−アミノ酸を含む。ある態様において、アミノ酸の第1区域はL−アミノ酸およびD−アミノ酸を含む。
【0037】
ある態様において、アミノ酸の第2区域はL−アミノ酸を含む。ある態様において、アミノ酸の第2区域はD−アミノ酸を含む。ある態様において、アミノ酸の第2区域はL−アミノ酸およびD−アミノ酸を含む。
【0038】
ある態様において、アミノ酸の第1区域は少なくとも50個の連続アミノ酸を含む。ある態様において、アミノ酸の第2区域は少なくとも50個の連続アミノ酸を含む。ある態様において、アミノ酸の第1区域および/または第2区域は、1〜100、100〜200または200〜300個のアミノ酸の長さである。ある態様において、アミノ酸の第1区域または第2区域は、少なくとも20、25、30、35、40または45個の連続アミノ酸を含む。
【0039】
ある態様において、アミノ酸の第1区域は1種類より多いアミノ酸を含む。ある態様において、アミノ酸の第2区域は1種類より多いアミノ酸残基を含む。
本発明化合物のある態様において、アミノ酸の第1区域および/または第2区域は、免疫グロブリンの定常部の配列に相応する。ある態様において、免疫グロブリンはヒト免疫グロブリンである。ある態様において、免疫グロブリンの定常部は、IgG、IgA、IgE、IgD、またはIgM免疫グロブリンの定常部である。ある態様において、免疫グロブリンの定常部は、IgG−1、IgG−2、IgG−3、またはIgG−4免疫グロブリンの定常部である。ある態様において、IgG−1、IgG−2、IgG−3、またはIgG−4免疫グロブリンの定常部である免疫グロブリン定常部は、本明細書に示す配列の1つを有する。ある態様において、免疫グロブリンの定常部はIgG免疫グロブリンの定常部であり、そして、ヒンジ部、CH6領域およびCH3領域を含む。ある態様において、異なる部分はイムノエフェクターまたはイムノレギュレーターである。
【0040】
ある態様において、ターゲットはタンパク質である。ある態様において、ターゲットは、EGF受容体、HER2、VEGF受容体、CD20抗原、CD11a、IgE免疫グロブリン、グリコプロテインIIa受容体、グリコプロテインIIIa受容体、TNFアルファ、またはTNF受容体、gp120である。ある態様において、連続アミノ酸の第1区域および第2区域は、TNFRSF1a、TNFRSF1b、VEGFR1、VEGFR6、VEGFR3、ヒトErb1、ヒトErb2、ヒトErb6、ヒトErb3、またはヒトErb4のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含む。ある態様において、連続
アミノ酸の第1区域または第2区域は、TNFRSF1a、TNFRSF1b、VEGFR1、VEGFR6、VEGFR3、ヒトErb1、ヒトErb2、ヒトErb6、ヒトErb3、またはヒトErb4のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含む。
【0041】
本発明は、ターゲットを結合するのに有効な量の本発明のいずれかの化合物、およびキャリヤーを含む、組成物を提供する。ある態様において、化合物はターゲットを結合するのに有効な量である、およびキャリヤー。ある態様において、化合物は多量体であってターゲットを結合するのに有効な量である、およびキャリヤー。ある態様において、多量体は異なる部分をも結合するのに有効な量で存在する。ある態様において、キャリヤーは医薬的に許容できるキャリヤーである。ある態様において、キャリヤーはリン酸緩衝化生理食塩水である。そのような組成物を凍結乾燥することができる。
【0042】
本発明は、ターゲットの活性に影響を及ぼす方法であって、化合物がターゲットに結合してその活性に影響を及ぼす条件下で、ターゲットを1以上の本発明化合物の組成物と接触させることを含む方法を提供する。1態様においては、ターゲットへの組成物の結合によりターゲットの活性が増大する。1態様においては、ターゲットへの組成物の結合によりターゲットの活性が低下する。1態様において、ターゲットはEGF受容体、HER2タンパク質、VEGF受容体、CD20抗原、CD11a、IgE免疫グロブリン、グリコプロテインIIa受容体、グリコプロテインIIIa受容体、gp40、gp120、TNFアルファ、またはTNF受容体である。
【0043】
本発明は、本発明のいずれかの組成物、および連続アミノ酸の第3区域を含む複合体であって、連続アミノ酸の第3区域が連続アミノ酸の第1区域または第2区域のうち一方に1またはそれ以上の結合により結合している複合体を提供する。ある態様において、1またはそれ以上の結合はファンデルワールス力を含む。1態様において、1またはそれ以上の結合は水素結合を含む。1態様において、1または結合は共有結合を含む。ある態様において、1または結合はジスルフィド結合を含む。ある態様において、少なくとも1つの結合はジスルフィド結合である。ある態様において、ジスルフィド結合は2つの非末端アミノ酸残基の間にある。ある態様において、ジスルフィド結合は2つのアミノ酸残基の間にあり、それらのうち少なくとも一方は非末端アミノ酸残基である。
【0044】
本発明は、本発明化合物の1つを調製する方法であって、下記を含む方法を提供する:
(a)(i)その配列がN−末端シグナル配列である第1部分、これと接した(ii)その配列が連続アミノ酸の区域をコードする第2部分、これと接した(iii)その配列がC−末端インテイン含有結合ドメインをコードする第3部分を含む、組換え核酸により、連続アミノ酸の区域がC−末端インテイン含有結合ドメインと接したものを含むキメラポリペプチドの合成を可能にする条件下で、細胞をトランスフェクションし;
(b)工程(a)で産生されたキメラポリペプチドを単離し;
(c)キメラポリペプチドを、連続アミノ酸の区域からC−末端インテイン含有結合ドメインのチオ仲介開裂が起き、それがC−末端チオエステルで置換されるように処理し;
(d)工程(c)の生成物を、生成物へのシステイン残基の結合が可能となり、これによりC−末端システインを含む生成物が形成されるように処理し;そして
(e)工程(e)の生成物を工程(e)の他の生成物の存在下において、前記化合物の形成が可能な条件下で酸化する。
【0045】
1態様において、組換え核酸はSEQ ID NO.1〜8のいずれかの1つに示す配列を有する。1態様において、C−末端インテイン含有結合ドメインはインテイン−キチン結合ドメインである。1態様において、C−末端インテイン含有結合ドメインはMth
RIR1インテイン−キチン結合ドメインである。1態様においては、工程b)においてアフィニティークロマトグラフィーによりキメラポリペプチドを単離する。1態様にお
いては、工程b)において生成物をキチン誘導体化樹脂に曝露することによりキメラポリペプチドを単離する。1態様において、酸化条件は生成物それぞれのC−末端システイン間にジスルフィド結合の形成が可能となるものである。
【0046】
本発明は、独立してフォールディングするタンパク質ドメインが第2の独立してフォールディングするタンパク質ドメインに非ペプチド結合により融合したものを含む化合物を提供する。本発明は、末端システイン残基を含む第1ポリペプチド鎖がそれのS−末端において末端システイン残基を含む第2ポリペプチド鎖のS−末端に融合したものを含む化合物を提供する。本発明は、末端セレノシステイン残基を含む第1ポリペプチド鎖がそれのSe−末端において末端システイン残基を含む第2ポリペプチド鎖のS−末端に融合したものを含む化合物を提供する。本発明は、末端セレノシステイン残基を含む第1ポリペプチド鎖がそれのSe−末端において末端セレノシステイン残基を含む第2ポリペプチド鎖のSe−末端に融合したものを含む化合物を提供する。本発明は、請求項66〜69のいずれかの1項に記載される2以上の同一化合物が少なくとも1つの結合により互いに連結したものを含む多量体を提供する。
【0047】
本発明は、N−末端システインを含む連続アミノ酸の区域を調製する方法であって、下記を含む方法を提供する:
(a)(i)その配列がN−末端シグナル配列をコードする第1部分、これと接した(ii)その配列がN−末端システイン残基を含む連続アミノ酸の区域をコードする第2部分を含む、組換え核酸により、下記を可能にする条件下で細胞をトランスフェクションし:(i)N−末端シグナル配列がそれのC−末端においてペプチド結合により連続アミノ酸の区域のN−末端システインに連結したものを含む、キメラポリペプチドが合成され、そして(ii)N−末端シグナル配列が細胞内でキメラポリペプチドから開裂し、これによりN−末端システインを含む連続アミノ酸の区域が産生される;
(b)工程(a)で産生された連続アミノ酸の区域を回収する。
【0048】
本明細書に開示する1態様においては、連続アミノ酸の区域を工程(b)において単離する。
1態様において、連続アミノ酸の区域は免疫グロブリンFcポリペプチドを含む。1態様において、免疫グロブリンFcポリペプチドはヒト免疫グロブリンFcポリペプチドである。1態様において、N−末端システイン残基はヒト免疫グロブリンFcポリペプチドのCys−5残基である。1態様において、細胞は293ヒト胚細胞またはCHO−K1ハムスター卵巣細胞である。1態様において、トランスフェクションはプラスミドpSAを用いて実施される。1態様において、N−末端シグナル配列はN−末端システインを有するタンパク質から選択される。1態様において、シグナルペプチドはソニックヘッジホッグ、インターフェロンアルファ−2またはコレステロールエステルトランスフェラーゼである。1態様においては、連続アミノ酸の区域をアフィニティークロマトグラフィーにより回収する。1態様において、細胞内でのキメラポリペプチドの開裂は細胞性シグナルペプチダーゼにより行なわれる。
【0049】
本発明は、N−末端システインまたはセレノシステインを含む連続アミノ酸の区域を調製する方法であって、下記を含む方法を提供する:
(a)(i)その配列がN−末端シグナル配列をコードする第1部分、これと接した(ii)その配列がN−末端システイン残基を含む連続アミノ酸の区域をコードする第2部分を含む、組換え核酸により、下記を可能にする条件下で細胞をトランスフェクションし:(i)N−末端シグナル配列がそれのC−末端においてFcポリペプチドのN−末端システインに連結したものを含む、キメラポリペプチドが合成され、そして(ii)N−末端シグナル配列が細胞内でキメラポリペプチドから開裂し、これによりN−末端システインを含む連続アミノ酸の区域が産生される;
(b)工程(a)で産生された連続アミノ酸の区域のN−末端を、アミノ酸配列cys−asp−lys−thr−his−thrを含むペプチドのC−末端と、またはアミノ酸配列sec−asp−lys−thr−his−thrを含むペプチドとライゲートさせ、これによりN−末端システインまたはセレノシステインを含む連続アミノ酸の区域を生成させ;そして
(c)工程(b)で生成した連続アミノ酸の区域を回収する。
【0050】
ある態様において、連続アミノ酸の区域は免疫グロブリンFcポリペプチドを含む。ある態様において、免疫グロブリンFcポリペプチドはヒト免疫グロブリンFcポリペプチドである。ある態様において、N−末端システイン残基はヒト免疫グロブリンFcポリペプチドのcys−5残基である。1態様において、N−末端システイン残基はヒト免疫グロブリンFcポリペプチドのcys−11残基である。ある態様において、工程(b)のペプチドはアミノ酸配列cys−asp−lys−thr−his−thrを含み、生成した連続アミノ酸の区域はN−末端システインを含む。ある態様において、工程(b)のペプチドはアミノ酸配列sec−asp−lys−thr−his−thrを含み、生成した連続アミノ酸の区域はN−末端セレノシステインを含む。ある態様においては、工程(b)のペプチドをライゲーションの前にN−末端Msc保護基で保護する。ある態様において、細胞は293ヒト胚細胞またはCHO−K1ハムスター卵巣細胞である。ある態様において、トランスフェクションはプラスミドpSAを用いて実施される。ある態様において、N−末端シグナル配列はN−末端システインを有するタンパク質から選択される。ある態様において、シグナルペプチドはソニックヘッジホッグ、インターフェロンアルファ−2またはコレステロールエステルトランスフェラーゼである。ある態様においては、連続アミノ酸の区域をアフィニティークロマトグラフィーにより回収する。ある態様において、細胞内でのキメラポリペプチドの開裂は細胞性シグナルペプチダーゼにより行なわれる。ある態様において、N−末端システインまたはセレノシステインをもつ他の短いペプチド配列を前記配列の代わりに用いる。
【0051】
本発明は、C−末端システインまたはC−末端セレノシステインを含む連続アミノ酸の区域を調製する方法であって、下記を含む方法を提供する:
(a)(i)その配列がN−末端シグナル配列をコードする第1部分、これと接した(ii)その配列が連続アミノ酸の区域をコードする第2部分、これと接した(iii)その配列がC−末端インテイン含有結合ドメインをコードする第3部分を含む、組換え核酸により、下記を可能にする条件下で細胞をトランスフェクションし:(i)N−末端シグナル配列、これと接した連続アミノ酸の区域、これと接したC−末端インテイン含有結合ドメインを含む、キメラポリペプチドが合成され、そして(ii)N−末端シグナル配列がキメラポリペプチドから開裂し、これによりN−末端リジン残基を有しかつ連続アミノ酸の区域がC−末端インテイン含有結合ドメインと接したものを含む、第2キメラポリペプチドが産生される;
(b)工程(a)で産生された第2キメラポリペプチドを単離し;
(c)第2キメラポリペプチドを、連続アミノ酸の区域からC−末端インテイン含有結合ドメインのチオ仲介開裂が起き、これによりC−末端チオエステルが形成されるように処理し;
(d)工程(c)の生成物をそれのC−末端においてシステイン残基またはセレノシステイン残基とライゲートさせ、これによりC−末端システインまたはC−末端セレノシステインを含む生成物を形成させ;そして
(e)工程(d)の生成物を回収する。
【0052】
ある態様において、接した連続アミノ酸の区域はIgG免疫グロブリンFcポリペプチドおよびIgG M1エキソンを含む。ある態様において、IgG免疫グロブリンはヒトIgG免疫グロブリンである。ある態様において、接した連続アミノ酸の区域はCD4細
胞外ドメインを含む。ある態様において、N−末端シグナル配列はN−末端リジンを有するタンパク質から選択される。ある態様において、N−末端シグナル配列はCD2 T細胞表面糖タンパク質またはCD4 T細胞表面糖タンパク質である。ある態様において、細胞は293ヒト胚細胞またはCHO−K1ハムスター卵巣細胞である。ある態様において、トランスフェクションはプラスミドpSAを用いて実施される。ある態様において、C−末端インテイン含有結合ドメインはインテイン−キチン結合ドメインである。ある態様において、C−末端インテイン含有結合ドメインはMth RIR1インテイン−キチン結合ドメインである。ある態様において、C−末端インテイン含有結合ドメインは自己スプライシングインテイン含有結合ドメインである。ある態様においては、工程b)において生成物をキチン誘導体化樹脂に曝露することによりキメラポリペプチドを単離する。ある態様において、細胞内での第2キメラポリペプチドの開裂は細胞性シグナルペプチダーゼにより行なわれる。ある態様においては、工程(c)の生成物をシステイン残基とライゲートさせる。ある態様においては、工程(c)の生成物をセレノシステイン残基とライゲートさせる。
【0053】
本発明は、N−末端システインおよびC−末端システインまたはセレノシステインを含む連続アミノ酸の区域を調製する方法であって、下記を含む方法を提供する:
(a)(i)その配列がN−末端シグナル配列をコードする第1部分、これと接した(ii)その配列が連続アミノ酸の区域をコードする第2部分、これと接した(iii)その配列がC−末端インテイン含有結合ドメインをコードする第3部分を含む、組換え核酸により、下記を可能にする条件下で細胞をトランスフェクションし:(i)N−末端シグナル配列、これと接した連続アミノ酸の区域、これと接したC−末端インテイン含有結合ドメインを含む、キメラポリペプチドが合成され、そして(ii)N−末端シグナル配列がキメラポリペプチドから開裂し、これによりN−末端システイン残基を有しかつ連続アミノ酸の区域がC−末端インテイン含有結合ドメインと接したものを含む、第2キメラポリペプチドが産生される;
(b)工程(a)で産生された第2キメラポリペプチドを単離し;
(c)第2キメラポリペプチドを、連続アミノ酸の区域からC−末端インテイン含有結合ドメインのチオ仲介開裂が起き、これによりC−末端チオエステルが形成されるように処理し;
(d)工程(c)の生成物をそれのC−末端においてシステイン残基またはセレノシステイン残基とライゲートさせ、これによりC−末端システインまたはC−末端セレノシステインを含む生成物を形成させ;そして
(e)工程(d)の生成物を回収する。
【0054】
ある態様において、接した連続アミノ酸の区域はIgG免疫グロブリンFcポリペプチドおよびIgG M1エキソンを含む。ある態様において、IgG免疫グロブリンはヒトIgG免疫グロブリンである。ある態様において、N−末端シグナル配列はN−末端システインを有するタンパク質から選択される。ある態様において、N−末端システイン残基はヒト免疫グロブリンFcポリペプチドのcys−5残基である。ある態様において、N−末端システイン残基はヒト免疫グロブリンFcポリペプチドのcys−11残基である。ある態様において、N−末端シグナルはソニックヘッジホッグ、インターフェロンアルファ−2またはコレステロールエステルトランスフェラーゼである。ある態様において、細胞は293ヒト胚細胞またはCHO−K1ハムスター卵巣細胞である。ある態様において、トランスフェクションはプラスミドpSAを用いて実施される。ある態様において、C−末端インテイン含有結合ドメインはインテイン−キチン結合ドメインである。ある態様において、C−末端インテイン含有結合ドメインはMth RIR1インテイン−キチン結合ドメインである。ある態様において、C−末端インテイン含有結合ドメインは自己スプライシングインテイン含有結合ドメインである。ある態様においては、工程b)において生成物をキチン誘導体化樹脂に曝露することにより第2キメラポリペプチドを単離す
る。ある態様においては、工程e)においてアフィニティークロマトグラフィーにより生成物を回収する。ある態様において、細胞内でのキメラポリペプチドの開裂は細胞性シグナルペプチダーゼにより行なわれる。ある態様においては、工程(c)の生成物をシステイン残基とライゲートさせる。ある態様においては、工程(c)の生成物をセレノシステイン残基とライゲートさせる。
【0055】
本発明は、N−末端システインまたはセレノシステインおよびC−末端システインまたはセレノシステインを含む連続アミノ酸の区域を調製する方法であって、下記を含む方法を提供する:
(a)(i)その配列がN−末端シグナル配列をコードする第1部分、これと接した(ii)その配列が連続アミノ酸の区域をコードする第2部分、これと接した(iii)その配列がC−末端インテイン含有結合ドメインをコードする第3部分を含む、組換え核酸により、下記を可能にする条件下で細胞をトランスフェクションし:(i)N−末端シグナル配列、これと接した連続アミノ酸の区域、これと接したC−末端インテイン含有結合ドメインを含む、キメラポリペプチドが合成され、そして(ii)N−末端シグナル配列がキメラポリペプチドから開裂し、これによりN−末端システイン残基を有しかつ連続アミノ酸の区域がC−末端インテイン含有結合ドメインと接したものを含む、第2キメラポリペプチドが産生される;
(b)工程(a)で産生された第2キメラポリペプチドを単離し;
(c)(i)工程(a)で産生された連続アミノ酸の区域のN−末端を、cys−asp−lys−thr−his−thrを含むペプチドのC−末端と、またはアミノ酸配列sec−asp−lys−thr−his−thrを含むペプチドとライゲートさせ、これによりそれぞれN−末端システインまたはN−末端セレノシステインを含む連続アミノ酸の区域を形成させ;
(ii)キメラポリペプチドを、連続アミノ酸の区域からC−末端インテイン含有結合ドメインのチオ仲介開裂が起き、それがC−末端チオエステルで置換されるように処理し;
(iii)工程(c)の生成物をそれのC−末端においてシステイン残基またはセレノシステイン残基とライゲートさせ、これによりC−末端システインまたはセレノシステインを含む生成物を形成させ;そして
(d)工程(c)(iii)の生成物を回収する。
【0056】
ある態様において、接した連続アミノ酸の区域はIgG免疫グロブリンFcポリペプチドおよびIgG M1エキソンを含む。ある態様において、IgG免疫グロブリンはヒトIgG免疫グロブリンである。ある態様において、N−末端シグナル配列はN−末端システインを有するタンパク質から選択される。ある態様において、N−末端システイン残基はヒト免疫グロブリンFcポリペプチドのcys−11残基である。ある態様において、N−末端シグナル配列はN−末端システインを有するタンパク質から選択される。ある態様において、N−末端シグナルはソニックヘッジホッグ、インターフェロンアルファ−2またはコレステロールエステルトランスフェラーゼである。ある態様において、細胞は293ヒト胚細胞またはCHO−K1ハムスター卵巣細胞である。ある態様において、トランスフェクションはプラスミドpSAを用いて実施される。ある態様において、C−末端インテイン含有結合ドメインはインテイン−キチン結合ドメインである。ある態様において、C−末端インテイン含有結合ドメインはMth RIR1インテイン−キチン結合ドメインである。ある態様においては、工程b)において生成物をキチン誘導体化樹脂に曝露することによりキメラポリペプチドを単離する。
【0057】
ある態様において、免疫グロブリンFcポリペプチドはヒト免疫グロブリンFcポリペプチドである。ある態様において、FcポリペプチドのN−末端システイン残基はcys−11残基である。ある態様において、工程(c)(i)のペプチドはアミノ酸配列cy
s−asp−lys−thr−his−thrを含み、連続アミノ酸の区域。ある態様において、工程(c)(i)のペプチドはアミノ酸配列sec−asp−lys−thr−his−thrを含み、生成した連続アミノ酸の区域はN−末端セレノシステインを含む。ある態様においては、工程(c)のペプチドをライゲーションの前にN−末端Msc保護基で保護する。ある態様において、細胞は293ヒト胚細胞またはCHO−K1ハムスター卵巣細胞である。ある態様において、トランスフェクションはプラスミドpSAを用いて実施される。ある態様において、N−末端シグナル配列はN−末端システインを有するタンパク質から選択される。ある態様において、シグナルペプチドはソニックヘッジホッグ、インターフェロンアルファ−2またはコレステロールエステルトランスフェラーゼである。ある態様においては、連続アミノ酸の区域をアフィニティークロマトグラフィーにより回収する。
【0058】
ある態様においては、工程(c)を工程(c)(i);工程(c)(ii);工程(c)(iii)の順序で実施する。ある態様においては、工程(c)を工程(c)(ii);工程(c)(iii);工程(c)(i)の順序で実施する。
【0059】
本発明は、下記の連続アミノ酸の区域を還元条件下で接触させてこれにより化合物を製造すること含む、化合物の製造方法を提供する:連続アミノ酸の区域:そのそれぞれはその前のアミノ酸にペプチド結合により結合しており、その配列はあるターゲットに対する結合部位を含む;および連続アミノ酸の第2区域:そのそれぞれはその前のアミノ酸にペプチド結合により結合しており、その配列は連続アミノ酸の第1区域の配列と同一であり、かつ前記ターゲットに対する同一結合部位を含む;その際、アミノ酸の第1区域およびアミノ酸の第2区域はそれぞれ、その予め定めた末端にシステイン残基またはセレノシステイン残基を含む。
【0060】
本発明は、下記の連続アミノ酸の区域を還元条件下で接触させてこれにより化合物を製造すること含む、化合物の製造方法を提供する:連続アミノ酸の区域:そのそれぞれはその前のアミノ酸にペプチド結合により結合しており、その配列はあるターゲットに対する結合部位を含む;および連続アミノ酸の第2区域:そのそれぞれはその前のアミノ酸にペプチド結合により結合しており、その配列は連続アミノ酸の第1区域の配列と異なり、かつ前記ターゲットに対する同一結合部位を含む;その際、アミノ酸の第1区域およびアミノ酸の第2区域はそれぞれ、その予め定めた末端にシステイン残基またはセレノシステイン残基を含む。
【0061】
本発明の方法のある態様において、還元条件は連続アミノ酸の区域を変性させない。ある態様において、還元条件は、トリス−HCLおよびメルカプトエタノールを含む緩衝液に連続アミノ酸の区域を曝露することを含む。ある態様において、緩衝液はpH7.6〜8.4である。ある態様において、緩衝液はpH8である。ある態様においては、さらに生成物を酸化用緩衝液中へ入れ替えることを含む。ある態様において、連続アミノ酸の区域はCD4細胞外ドメインを含む。ある態様において、連続アミノ酸の区域は免疫グロブリンFcポリペプチドの配列を含む。ある態様において、免疫グロブリンはヒト免疫グロブリンである。
【0062】
ある態様において、本発明のトランスフェクションした細胞を、前記ポリペプチドを発現させるのに適切な条件下で増殖させる。
ある態様においては、下記を含む化合物を提供する:
連続アミノ酸の第1区域:そのそれぞれはその前のアミノ酸にペプチド結合により結合しており、その配列はあるターゲットに対する結合部位を含む;および
連続アミノ酸の第2区域:そのそれぞれはその前のアミノ酸にペプチド結合により結合しており、その配列は連続アミノ酸の第1区域の配列と同一であり、かつ前記ターゲット
に対する同一結合部位を含む;
その際、アミノ酸の第1区域およびアミノ酸の第2区域はそれぞれ独立して、その予め定めた末端に、硫黄(S)またはセレン(Se)を含む直鎖状脂肪族側鎖酸を有する天然アミノ酸または非天然アミノを有し、それらの硫黄(S)またはセレン(Se)は下記の構造を有する結合で連結している:
【0064】
(各Xは硫黄(S)またはセレン(Se)であり、各(C)は前記の天然または非天然アミノ酸のうちの1つの直鎖状脂肪族側鎖の炭素を表わし、nおよびmは独立して2、3、4、5、6、7、8、9または10である)。
【0065】
ある態様において、天然アミノ酸はホモシステインまたはホモセレノシステインである。ある態様において、アミノ酸の第1区域および第2区域はその予め定めた末端にホモシステイン残基を有する。ある態様において、アミノ酸の第1区域および第2区域はその予め定めた末端にホモセレノシステイン残基を有する。ある態様において、アミノ酸の第1区域および第2区域はその予め定めた末端にホモシステイン残基を有する。ある態様において、予め定めた末端はC−末端である。
【0066】
下記を含む化合物が提供される:
連続アミノ酸の第1区域:そのそれぞれはその前のアミノ酸にペプチド結合により結合しており、その配列はあるターゲットに対する結合部位を含む;および
連続アミノ酸の第2区域:そのそれぞれはその前のアミノ酸にペプチド結合により結合しており、その配列は連続アミノ酸の第1区域の配列と異なり、かつ異なる部分に対する結合部位を含む;
その際、アミノ酸の第1区域およびアミノ酸の第2区域はそれぞれ独立して、その予め定めた末端に、硫黄(S)またはセレン(Se)を含む直鎖状脂肪族側鎖酸を有する天然アミノ酸または非天然アミノを有し、それらの硫黄(S)またはセレン(Se)は下記の構造を有する結合で連結している:
【0068】
(各Xは同一でも異なってもよく、硫黄(S)またはセレン(Se)を表わし、各(C)は前記の天然または非天然アミノ酸のうちの1つの直鎖状脂肪族側鎖の炭素を表わし、nおよびmは独立して1、2、3、4、5、6、7、8、9または10である)。
【0069】
ある態様において、天然アミノ酸はホモシステインまたはホモセレノシステインである。ある態様において、アミノ酸の第1区域および第2区域はその予め定めた末端にホモシステイン残基をもつ。ある態様において、アミノ酸の第1区域および第2区域はその予め定めた末端にホモセレノシステイン残基をもつ。ある態様において、アミノ酸の第1区域および第2区域はその予め定めた末端にホモシステイン残基をもつ。ある態様において、予め定めた末端はC−末端である。
【0070】
インテインと接した第1ポリペプチドを含み、このインテインが結合ドメインを含む第2ポリペプチドと接したタンパク質を製造する方法であって、動物細胞に動物細胞が該タンパク質を発現および分泌する条件下で核酸をトランスフェクションすることを含み、この核酸が(i)該ポリペプチドをコードする第1部分、これと接した(ii)インテインをコードする第2部分、これと接した、結合ドメインをコードする第3部分を含む、前記方法が提供される。ある態様において、動物細胞は哺乳動物に由来する。ある態様において、結合ドメインはキチン結合ドメインである。
【0071】
固体表面に末端ジスルフィド結合により結合したポリペプチドを含む組成物が提供される。ある態様において、固体表面はチップまたはビーズである。
下記を含む化合物が提供される:
連続アミノ酸の第1区域:そのそれぞれはその前のアミノ酸にペプチド結合により結合しており、その連続アミノ酸の第1区域はカルコゲン官能基を含む側鎖を有するアミノ酸残基を含む;および
連続アミノ酸の第2区域:少なくとも100個のアミノ酸を含み、そのそれぞれはその前のアミノ酸にペプチド結合により結合しており、連続アミノ酸の第2区域のうち少なくとも90個の連続アミノ酸はヒト免疫グロブリン定常部ポリペプチドの一部と同一の配列を有し、かつ連続アミノ酸の第2区域はその予め定めた末端にカルコゲン官能基を含む側鎖を有するアミノ酸残基を含む;
その際、連続アミノ酸の第1区域のカルコゲン官能基を含む側鎖を有するアミノ酸残基と、連続アミノ酸の第2区域のカルコゲン官能基を含む側鎖を有するアミノ酸残基は下記の構造を有する結合で連結している:
【0073】
(各Xは独立してカルコゲンを表わし、C
1は連続アミノ酸の第1区域のカルコゲン官能基を含む側鎖を有するアミノ酸残基の側鎖炭素を表わし、C
2は連続アミノ酸の第2区域の側鎖炭素を表わす)。
【0074】
ある態様においては、連続アミノ酸の第2区域の少なくとも91、92、93、94、95、96、97、98、99または100個の連続アミノ酸が、ヒト免疫グロブリン定常部ポリペプチドの一部と同一の配列をもつ。
【0075】
ある態様において、C
1およびC
2のうち少なくとも1つはアミノ酸のベータ炭素である。ある化合物の態様において、結合は下記の構造をもつ:
【0077】
(Sは硫黄である)。ある態様において、結合は下記の構造をもつ:
【0079】
(Sは硫黄であり、Seはセレンである)。
ある態様において、連続アミノ酸の第2区域の予め定めた末端にカルコゲン官能基を含む側鎖を有するアミノ酸残基はシステインである。ある態様において、連続アミノ酸の第2区域の予め定めた末端にカルコゲン官能基を含む側鎖を有するアミノ酸残基はセレノシステイン、ホモシステインまたはホモセレノシステインである。ある態様において、連続アミノ酸の第1区域のカルコゲン官能基を含む側鎖を有するアミノ酸残基はシステインである。ある態様において、連続アミノ酸の第1区域のカルコゲン官能基を含む側鎖を有するアミノ酸残基はセレノシステイン、ホモシステインまたはホモセレノシステインである。ある態様において、連続アミノ酸の第1区域のカルコゲン官能基を含む側鎖を有するアミノ酸残基は末端残基である。ある態様において、連続アミノ酸の第1区域のカルコゲン官能基を含む側鎖を有するアミノ酸残基はピナルト、アンテピナルトまたはプレアンテピナルト末端残基である。
【0080】
ある態様において、連続アミノ酸の第2区域はヒト免疫グロブリン定常部と同一の配列をもつ。ある態様において、連続アミノ酸の第2区域はヒト免疫グロブリン定常部の一部である。ある態様において、連続アミノ酸の第1区域はヒト免疫グロブリン定常部と同一の配列をもつ。
【0081】
ある態様において、ヒト免疫グロブリンの定常部ポリペプチドは、ヒトIgG1、ヒトIgG2、ヒトIgG3、またはヒトIgG4である。カルコゲン官能基を含む側鎖を有するアミノ酸残基のうち少なくとも1つの側鎖はC1−C10アルキレンである化合物が提供される。
【0082】
2つの本発明化合物がそれぞれの化合物の連続アミノ酸の第2区域間で少なくとも1つのジスルフィド結合により互いに結合したものを含む組成物が提供される。
SEQ ID NO:35〜46のうちの1つに示す配列を有する、またはSEQ ID NO:53〜67のうちの1つに示す配列を有する、またはSEQ ID NO:74〜82のうちの1つに示す配列を有する、またはSEQ ID NO:89〜97のうちの1つに示す配列を有する連続アミノ酸からなるポリペプチドを含む組成物が提供され、その際、ポリペプチドは天然免疫グロブリンポリペプチド(その酵素開裂フラグメントを含む)から構成されない。
【0083】
SEQ ID NO:35〜46のうちの1つに示す配列を有する、またはSEQ ID NO:53〜67のうちの1つに示す配列を有する、またはSEQ ID NO:74〜82のうちの1つに示す配列を有する、またはSEQ ID NO:89〜97のうちの1つに示す配列を有する連続アミノ酸からなるポリペプチドを含む組成物が提供される。
【0084】
本発明のポリペプチドおよびキャリヤーを含む組成物が提供される。化合物の態様において、キャリヤーはリン酸緩衝化生理食塩水である。
独立して選択される本発明の2つのポリペプチドが非ペプチド結合により結合したものを含む組成物が提供される。1態様において、結合はジ−カルコゲニド(di−chalcogenide)結合である。1態様において、結合はジスルフィド結合である。
【0085】
本発明の2つのポリペプチドが2つのポリペプチド間で少なくとも1つのジスルフィド結合により互いに結合したものを含む組成物が提供される。
SEQ ID NO:44、SEQ ID NO:64、SEQ ID NO:81またはSEQ ID NO:96に示す配列の一部と同一の配列を有する連続アミノ酸からなり、ポリペプチドの末端残基のうち少なくとも1つはカルコゲン官能基を含む側鎖をもつものを含む組成物が提供される。
【0086】
化合物のある態様において、カルコゲン官能基を含む側鎖を有する末端残基はシステインまたはその類似体である。
前記に示した種々のN−末端シグナル配列、プラスミド、発現ベクター、組換え核酸、連続アミノ酸の区域、インテイン結合ドメイン、細胞タイプ、回収/単離法などは限定ではない例であり、それらをさらに後記の実施例に示す。
【0087】
用語の定義
連続アミノ酸の区域(stretch of amino acids):鎖状に配列した複数のアミノ酸であって、そのそれぞれはその前のアミノ酸にペプチド結合により結合しており、ただし、その鎖の第1アミノ酸はその前のアミノ酸に結合していない。鎖のアミノ酸は自然界に存在するものまたは自然界に存在しないものであってもよく、あるいはその混合物を含むこともできる。別途指摘しない限り、アミノ酸は遺伝子によりコードされるもの、自然界に存在するけれども遺伝子によりコードされないもの、または自然界に存在しないもの、およびそのいずれの選択肢であってもよい。
【0088】
ある態様において、連続アミノ酸の区域は生物活性をもつ;これにはターゲット結合活性またはイムノエフェクター活性が含まれるが、これらに限定されない;この生物活性は連続アミノ酸の区域が他の連続アミノ酸の区域に−X−X−結合(たとえば−S−S−、−S−Se−、−Se−Se−、または−Se−S−結合)により結合した際に保持される。“連続アミノ酸のセグメント”は“連続アミノ酸の区域”の別の記述である。
【0089】
N−末端アミノ酸残基:2個以上の連続アミノ酸の区域の末端残基であって、遊離α−アミノ(NH
2)官能基、またはα−アミノ(NH
2)官能基の誘導体をもつもの。
N−末端:N−末端アミノ酸残基の遊離α−アミノ(NH
2)基(またはその誘導体)。
【0090】
C−末端アミノ酸残基:2個以上の連続アミノ酸の区域の末端残基であって、遊離α−カルボキシル(COOH)官能基、またはα−カルボキシル(COOH)官能基の誘導体をもつもの。
【0091】
C−末端:C−末端アミノ酸残基の遊離α−カルボキシル(COOH)基(またはその誘導体)。
S−末端システイン残基:連続アミノ酸の区域のN−および/またはC−末端残基であるシステインであって、遊離β−スルフヒドリル(SH)官能基、またはβ−スルフヒドリル(SH)官能基の誘導体をもつもの。
【0092】
S−末端:S−末端システイン残基の遊離β−スルフヒドリル(SH)基(またはその
誘導体)。
Se−末端セレノシステイン残基:連続アミノ酸の区域のN−および/またはC−末端残基であるセレノシステインであって、遊離β−セレノヒドリル(SeH)官能基、またはβ−セレノヒドリル(SeH)官能基の誘導体をもつもの。
【0093】
Se−末端:Se−末端セレノシステイン残基の遊離β−セレノヒドリル(SeH)基(またはその誘導体)。
X−末端アミノ酸残基:連続アミノ酸の区域のN−および/またはC−末端残基であるシステイン(またはシステイン誘導体)またはホモシステイン(またはホモシステイン誘導体)またはセレノシステイン(またはセレノシステイン誘導体)またはホモセレノシステイン(またはホモセレノシステイン誘導体)であって、それぞれ遊離β−スルフヒドリル(SH)もしくはβ−セレノヒドリル(SeH)官能基、またはその硫黄含有もしくはセレン含有誘導体をもつもの。
【0094】
X−末端:それぞれ、S−末端システイン/システイン誘導体残基またはSe−末端セレノシステイン/セレノシステイン誘導体残基の遊離β−スルフヒドリル(SH)またはβ−セレノヒドリル(SeH)基。さらに、X−末端はS−末端ホモシステイン残基またはSe−末端ホモセレノシステイン残基の遊離β−スルフヒドリル(SH)またはβ−セレノヒドリル(SeH)基の可能性がある。
【0095】
ターゲット:連続アミノ酸の区域またはその三次元構造体の一部の明確に区別される選択部位に結合するもの;受容体、輸送タンパク質、ホルモン、細胞接着タンパク質、組織特異的接着因子、増殖因子、および酵素が含まれるが、これらに限定されない。ターゲットの具体例には、ヒトEGF受容体、HER2タンパク質、VEGF受容体、ヒトCD20抗原、ヒトCD11a、ヒトIgE免疫グロブリン、ヒトグリコプロテインIIa受容体、ヒトグリコプロテインIIIa受容体、ヒトTNFアルファ、およびTNF受容体が含まれる。
【0096】
“結合(bond)”は、別途特定しない限り、または状況に反しない限り、共有結合、双極子−双極子相互作用、たとえば水素結合、および分子間相互作用、たとえばファンデルワールス力を含むと理解される。
【0097】
“シグナル配列”は、ポリペプチドの翻訳後輸送を導く短い(アミノ酸3〜60個の長さ)ペプチド鎖である。
本明細書中で用いる“アミノ酸”は、1態様において、遺伝子コードされるアミノ酸、すなわちイソロイシン、アラニン、ロイシン、アスパラギン、リジン、アスパラギン酸、メチオニン、システイン、フェニルアラニン、グルタミン酸、トレオニン、グルタミン、トリプトファン、グリシン、バリン、プロリン、アルギニン、セリン、ヒスチジン、チロシン、セレノシステイン、ピロリジンのLまたはD異性体を意味し、ホモシステインおよびホモセレノシステインも含まれる。
【0098】
アミノ酸の他の例には、タウリン、ギャバ(γ−アミノ酪酸、gaba)、ドーパミン、ランチオニン、2−アミノイソ酪酸、デヒドロアラニン、オルニチンおよびシトルリン、ならびに非天然相同体およびその合成修飾形が含まれ、これには最高2個の炭素原子が短縮または延長されたアルキレン鎖をもつアミノ酸、場合により置換されたアリール基を含むアミノ酸、およびハロゲン化された基(ハロゲン化されたアルキル基およびアリール基を含む)を含むアミノ酸、ならびにベータまたはガンマアミノ酸、ならびに環状類似体が含まれる。
【0099】
イオン化しうるアミノ基およびカルボキシル基が存在するため、これらの態様における
アミノ酸は酸塩または塩基塩の形のであってもよく、あるいは中性の形であってもよい。個々のアミノ酸残基を酸化または還元により修飾することもできる。考慮される他の修飾には、プロリンおよびリジンのヒドロキシル化、セリルまたはトレオニル残基のヒドロキシル基のリン酸化、ならびにリジン、アルギニンおよびヒスチジン側鎖のアルファ−アミノ基のメチル化が含まれる。
【0100】
共有結合誘導体は、特定の官能基をアミノ酸側鎖またはN−もしくはC−末端に連結させることにより製造できる。
本明細書中で用いる“カルコゲン(chalcogen)”は、硫黄、セレン、テルルおよびポロニウムのみに限定される;すなわち、本明細書中で用いる“カルコゲン”には酸素およびウンウンヘキシウム(ununhexium)は含まれない。
【0101】
本明細書中で用いる“カルコゲン官能基を含む側鎖”は、末端の反応性非酸素、非ウンウンヘキシウム原子を含むアミノ酸残基の側鎖である。限定ではない例として、カルコゲン官能基を含む側鎖をもつアミノ酸はシステイン、セレノシステイン、ホモシステインなどであるが、たとえばカルコゲン原子(S)を含むけれども末端の反応性カルコゲン原子を含まないメチオニンは含まれない。
【0102】
R−基置換をもつアミノ酸を含む化合物が本発明の範囲に含まれる。本発明化合物における置換基および置換パターンを当業者が選択して、容易に入手できる出発物質から化学的に安定な化合物を得ることができると理解される。
【0103】
本明細書中で用いる“天然アミノ酸”は、遺伝子コードされるアミノ酸、すなわちイソロイシン、アラニン、ロイシン、アスパラギン、リジン、アスパラギン酸、メチオニン、システイン、フェニルアラニン、グルタミン酸、トレオニン、グルタミン、トリプトファン、グリシン、バリン、プロリン、アルギニン、セリン、ヒスチジン、チロシン、セレノシステイン、ピロリジン、ならびにホモシステインおよびホモセレノシステインのLまたはD異性体を意味する。
【0104】
本明細書中で用いる“非天然アミノ酸”は、化学修飾されたイソロイシン、アラニン、ロイシン、アスパラギン、リジン、アスパラギン酸、メチオニン、システイン、フェニルアラニン、グルタミン酸、トレオニン、グルタミン、トリプトファン、グリシン、バリン、プロリン、アルギニン、セリン、ヒスチジン、チロシン、セレノシステイン、ピロリジン、ホモシステイン、ホモセレノシステイン、タウリン、ギャバ、ドーパミン、ランチオニン、2−アミノイソ酪酸、デヒドロアラニン、オルニチンまたはシトルリンのLまたはD異性体を意味し、これにはアルファ炭素とSまたはSeとの間にC
3−C
10脂肪族側鎖をもつシステイン誘導体およびセレノシステイン誘導体が含まれる。1態様において、脂肪族側鎖はアルキレンである。他の態様において、脂肪族側鎖はアルケニレンまたはアルキニレンである。
【0105】
本明細書に記載する連続アミノ酸の区域のほか、適切なヌクレオチド変化をエンコーディングDNAに導入することにより、および/または目的とする連続アミノ酸配列を合成することにより、そのバリアントを製造できることを考慮する。選択した合成法が発現である(たとえば化学合成ではなく)場合、アミノ酸の変更が本明細書に記載する連続アミノ酸の区域の翻訳後プロセスを変化させる可能性があることは当業者には認識されるであろう;たとえばグリコシレーション部位の個数もしくは位置の変更、または膜付着特性の変化。
【0106】
本明細書に記載する配列の変更は、たとえば保存的および非保存的変異のためのいずれかの技術および指針、たとえばU.S.Pat.No.5,364,934に示されたも
のを用いて行なうことができる。変更は、目的とする連続アミノ酸配列をコードする1以上のコドンの置換、欠失または挿入であって、天然配列と比較してアミノ酸配列の変化をもたらすものであってもよい。場合により、変更は1以上のドメインにおいて少なくとも1個のアミノ酸を他のいずれかのアミノ酸で置換するものであってもよい。目的活性に有害な影響を与えることなく挿入、置換または欠失するアミノ酸残基を決定する際の指針は、その配列を既知の相同タンパク質分子の配列と比較し、相同性の高い領域において行なうアミノ酸配列変化の個数を最小限に抑えることにより見いだすことができる。アミノ酸置換は、1つのアミノ酸を、類似の構造特性および/または化学的特性をもつ他のアミノ酸で置換した結果であってもよい;たとえば、ロイシンをセリンと交換、すなわち類似(保存的)アミノ酸置換。挿入または欠失は、場合により約1〜5個のアミノ酸の範囲であってもよい。許容される変更は、系統的に配列中のアミノ酸の挿入、欠失または置換を行ない、得られたバリアントを全長または成熟天然配列が示す活性について試験することにより決定できる。末端の変更はいずれも本明細書に開示する概念の範囲内で行なわれると理解される。
【0107】
結合パートナーのアミノ酸配列バリアントは多様な目的を考慮して製造でき、これにはリガンドに対する結合パートナーのアフィニティーの増大、結合パートナーの安定性、精製および製造の促進、それの血漿半減期の改変、療法効果の改善、ならびに結合パートナーを療法に使用する際の副作用の重症度および発生率の低下が含まれる。
【0108】
本明細書においては、挿入、置換または欠失バリアントを含めたこれらの配列のアミノ酸配列バリアントも考慮される。それらのバリアントは、通常はターゲット結合モノマーをコードするDNA中のヌクレオチドを部位特異的変異誘発し、これによりバリアントをコードするDNAを得た後、そのDNAを組換え細胞培養で発現させることにより製造できる。最高で約100〜150個のアミノ酸残基をもつフラグメントは、インビトロ合成で好都合に製造することもできる。そのようなアミノ酸配列バリアントは予め定めたバリアントであり、自然界ではみられない。バリアントは、必ずしも量的に同一値ではないが非バリアント型の質的生物活性(ターゲット結合性を含む)を示す。アミノ酸配列変更を導入する部位は予め定められるが、変異自体は必ずしも予め定められている必要はない。たとえば、特定部位における変異の性能を最適化するために、ランダムまたは飽和変異誘発(この場合は可能な残基20個すべてを導入する)をターゲットコドンにおいて実施し、発現したバリアントをスクリーニングして最適組合わせの目的活性を求める。そのようなスクリーニングは当業者が容易になしうる範囲のものである。
【0109】
アミノ酸の挿入は、通常はアミノ酸残基1〜10個の水準であろう;置換は、一般に単一残基に導入される;欠失は約1〜30残基の範囲であろう。欠失または挿入は、好ましくは隣接対において行なわれる;すなわち、2個の残基の欠失または2個の残基の挿入。置換、欠失、挿入またはそのいずれかの組合わせを導入または組み合わせて最終構築体が得られることは、以下の考察から十分に明らかになるであろう。
【0110】
1観点において、本発明は、本発明の明細書、図面、SEQ ID NO.または配列表に開示するアミノ酸配列に対して、少なくとも80%の配列同一性、好ましくは少なくとも81%の配列同一性、より好ましくは少なくとも82%の配列同一性、よりさらに好ましくは少なくとも83%の配列同一性、よりさらに好ましくは少なくとも84%の配列同一性、よりさらに好ましくは少なくとも85%の配列同一性、よりさらに好ましくは少なくとも86%の配列同一性、よりさらに好ましくは少なくとも87%の配列同一性、よりさらに好ましくは少なくとも88%の配列同一性、よりさらに好ましくは少なくとも89%の配列同一性、よりさらに好ましくは少なくとも90%の配列同一性、よりさらに好ましくは少なくとも91%の配列同一性、よりさらに好ましくは少なくとも92%の配列同一性、よりさらに好ましくは少なくとも93%の配列同一性、よりさらに好ましくは少
なくとも94%の配列同一性、よりさらに好ましくは少なくとも95%の配列同一性、よりさらに好ましくは少なくとも96%の配列同一性、よりさらに好ましくは少なくとも97%の配列同一性、よりさらに好ましくは少なくとも98%の配列同一性、よりさらに好ましくは少なくとも99%の配列同一をもつ連続アミノ酸の区域を含む化合物に関する。
【0111】
アミノ酸配列同一性%値は、たとえばWU−BLAST−2コンピュータープログラム(Altschul et al., Methods in Enzymology 266:460-480 (1996))を用いて容易に求める
ことができる。
【0112】
天然配列のフラグメントを本明細書に示す。それらのフラグメントは、全長天然タンパク質と比較した場合にN−末端またはC−末端がトランケートしていてもよく、あるいは内部残基が欠如していてもよい。この場合も、末端変更はいずれも本明細書に開示する発明の範囲内で行なわれると理解される。特定のフラグメントは、その配列の目的とする生物活性に必須ではないアミノ酸残基を欠如する。
【0113】
多数の一般的な方法をいずれも使用できる。目的とするペプチドフラグメントまたは連続アミノ酸の区域のフラグメントを化学的に合成することができる。他の方法は、酵素消化により、たとえばタンパク質を特定のアミノ酸残基が規定する部位において開裂させる酵素でタンパク質を処理し、または適切な制限酵素でDNAを消化し、目的フラグメントを単離することにより、フラグメントを調製することを伴う。さらに他の適切な方法は、目的とするポリペプチド/配列フラグメントをコードするDNAフラグメントを単離し、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により増幅することを伴う。DNAフラグメントの目的末端を規定するオリゴヌクレオチドをPCRの5’および3’プライマーに使用する。
【0114】
特定の態様において、目的とする同類置換は好ましい置換という項目の下に表1に示される。そのような置換により生物活性の変化を生じさせる場合、表1に例示置換と表示した、または後記にアミノ酸クラスに関して記載する、より実質的な変化を導入し、生成物をスクリーニングする。
【0116】
配列の機能または免疫学的同一性の実質的な改変は、下記に対するそれらの作用が有意に異なる置換を選択することにより達成される(a)置換領域におけるポリペプチド主鎖の構造、たとえばシートまたはらせんコンホメーションの維持、(b)ターゲット部位における分子の電荷もしくは疎水性の維持、または(c)側鎖の嵩の維持。自然界に存在する残基は、共通の側鎖特性に基づいてグループ分けすることができる:
(1)疎水性:ノルロイシン、met、ala、val、leu、ile;
(2)中性親水性:cys、ser、thr;
(3)酸性:asp、glu;
(4)塩基性:asn、gln、his、lys、arg;
(5)鎖の配向に影響を及ぼす残基:gly、pro;
(6)芳香族:trp、tyr、phe。
【0117】
非同類置換は、これらのクラスのうちのひとつのメンバーで他のクラスを交換することを伴うであろう。それらの置換残基を同類置換部位に、またはより好ましくは残りの(非同類)部位に導入することもできる。
【0118】
これらの変異は当技術分野で既知の方法、たとえばオリゴヌクレオチド仲介(部位特異的)変異誘発、アラニンスキャン、およびPCR変異誘発を用いて行なうことができる。
部位特異的変異誘発(Carter et al., Nucl. Acids Res., 13:4331 (1986); Zoller et al., Nucl. Acids Res., 10:6487 (1987))、カセット変異誘発(Wells et al., Gene, 34:315 (1985))、制限選択変異誘発(Wells et al., Philos. Trans. R. Soc. London SerA, 317:415 (1986))、または他の既知の技術をクローン化DNAについて実施して、バリアン
トDNAを製造することができる。
【0119】
スキャンニングアミノ酸分析は、連続アミノ酸配列に沿って1以上のアミノ酸を同定するためにも採用できる。好ましいスキャンニングアミノ酸には、比較的小さい中性アミノ酸が含まれる。そのようなアミノ酸には、アラニン、グリシン、セリンおよびシステインが含まれる。このグループのうちアラニンが一般に好ましいスキャンニングアミノ酸である;アラニンでは側鎖がベータ−炭素より遠ざかっており、バリアントの主鎖コンホメーションを変化させる可能性がより低いからである(Cunningham and Wells, Science, 244:1081-1085 (1989))。アラニンは最も一般的なアミノ酸であるという理由からも好ましい
。さらに、それは埋め込まれた位置および露出した位置の両方にしばしばみられる(Creighton, The Proteins, (W.H. Freeman & Co., N.Y.); Chothia, J. Mol. Biol., 150:1 (1976))。アラニン置換によって適切な量のバリアントが得られない場合、アイソテリック
(isoteric)アミノ酸を使用できる。
【0120】
共有結合修飾:連続アミノ酸の区域を共有結合修飾することができる。1タイプの共有結合修飾には、標的アミノ酸残基を、選択した側鎖または−x−x−結合に関与しないN−もしくはC−末端残基と反応しうる有機誘導体化剤と反応させることが含まれる。目的とする抗体のアンチ配列を精製する方法およびその逆の方法に使用するために水不溶性支持体マトリックスまたは表面に架橋させるには、二官能性試薬による誘導体化が有用である。一般に用いられる架橋剤には、たとえば下記のものが含まれる:1,1−ビス(ジアゾアセチル)−2−フェニルエタン、グルタルアルデヒド、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、たとえば4−アジドサリチル酸とのエステル、ホモ二官能性イミドエステル:ジスクシンイミジルエステル、たとえば3,3’−ジチオビス(スクシンイミジルプロピオネート)を含む;二官能性マレイミド、たとえばビス−N−マレイミド−1,8−オクタン、およびメチル−3−((p−アジドフェニル)ジチオ)プロピオイミデートのような剤。
【0121】
他の修飾には下記のものが含まれる:グルタミニルおよびアスパラギニル残基からそれぞれ対応するグルタミルおよびアスパルチル残基へのアミド分解、プロリンおよびリジンのヒドロキシル化、セリルまたはトレオニル残基のヒドロキシ基のリン酸化、リジン、アルギニンおよびヒスチジン側鎖のアルファ−アミノ基のメチル化(T. E. Creighton, Proteins: Structure and Molecular Properties, W.H. Freeman & Co.,サンフランシスコ, pp. 79-86 (1983))、N−末端アミンのアセチル化、ならびにいずれかのC−末端カルボキシル基のアミド化。
【0122】
他のタイプの共有結合修飾は、連続アミノ酸の区域またはポリペプチドの天然グリコシレーションパターンの変更を含む。“天然グリコシレーションパターンの変更”は、本発明の目的について、アミノ酸配列中にみられる1以上の炭水化物部分を欠失させること(基礎となるグリコシレーション部位を除去することによるか、あるいは化学的手段および/または酵素手段でグリコシレーションを欠失させることによる)、および/または天然配列中に存在しない1以上のグリコシレーション部位を付加することを意味するものとする。さらにこの句は、天然タンパク質のグリコシレーションにおける質的変化であって、存在する種々の炭水化物部分の性質および割合の変化を伴うものを含む。
【0123】
アミノ酸配列へのグリコシレーション部位の付加は、アミノ酸配列を変更することにより達成できる。この変更は、たとえば天然配列への1個以上のセリンまたはトレオニン残
基の付加、またはそれらによる置換によって行なうことができる(O−連結グリコシレーション部位について)。アミノ酸配列は、場合によりDNAレベルでの変化により、特にそのアミノ酸配列をコードするDNAを予め選択した塩基において変異させて、これにより目的アミノ酸に翻訳されるであろうコドンを形成することにより変更できる。
【0124】
アミノ酸配列上の炭水化物部分の数を増加させる他の手段は、化学的に、または酵素によりグリコシドをポリペプチドに結合させるものである。そのような方法は当技術分野で記載されている;たとえばWO 87/05330、1987年9月11日公開、およびAplin and Wriston, CRC Crit. Rev. Biochem., pp. 259-306 (1981)。
【0125】
アミノ酸配列上に存在する炭水化物部分の除去は、化学的に、もしくは酵素により、またはグリコシレーションの標的となるアミノ酸残基をコードするコドンの変異置換により達成できる。化学的デグリコシレーション技術は当技術分野で既知であり、たとえばHakimuddin, et al., Arch. Biochem. Biophys., 259:52 (1987)、およびEdge et al., Anal.
Biochem., 118:131 (1981)に記載されている。ポリペプチド上の炭水化物部分の酵素開
裂は、種々のエンド−およびエキソ−グリコシダーゼを用いて達成できる;Thotakura et
al., Meth. Enzymol., 138:350 (1987)に記載。
【0126】
他のタイプの共有結合修飾は、アミノ酸配列を下記のものに連結させることを含む:種々の非タンパク質ポリマーのひとつ、たとえばポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコールもしくはポリオキシアルキレンに、たとえばU.S.Pat.Nos.4,640,835;4,496,689;4,301,144;4,670,417;4,791,192もしくは4,179,337に示された方法で;またはタグポリペプチドに連結させ、これによりアンチタグ抗体がこれに選択的に結合しうるエピトープを得る。種々のタグポリペプチドおよびそれらの各抗体は当技術分野で周知である。例には下記のものが含まれる:ポリヒスチジン(ポリ−his)またはポリ−ヒスチジン−グリシン(ポリ−his−gly)タグ;flu HAタグポリペプチドおよびその抗体12CA5(Field et al., Mol. Cell. Biol., 8:2159-2165 (1988));c−mycタグならびにそれに対する8F9、3C7、6E10、G4、B7および9E10抗体(Evan et al., Molecular and Cellular Biology, 5:3610-3616 (1985);ならびに単純ヘルペスウイルスグリコプロテインD(gD)タグおよびそれの抗体(Paborsky et al., Protein Engineering, 3(6):547-553 (1990))。他のタグポリペプチドには、Flag−ペプチド(Hopp
et al., BioTechnology, 6:1204-1210 (1988));KT3エピトープペプチド(Martin et al., Science, 255:192-194 (1992));アルファ-チューブリンエピトープペプチド(Skinner et al., J. Biol. Chem., 266:15163-15166 (1991));ならびにT7遺伝子10タンパ
ク質ペプチドタグ(Lutz-Freyermuth et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87:6393-6397 (1990))が含まれる。
【0127】
塩類
本明細書に開示する化合物の塩類は本発明の範囲に含まれる。本明細書中で用いる“塩類”は、本発明化合物の酸塩または塩基塩を調製することにより修飾した本発明化合物の塩である。
【0128】
医薬
前記の塩類は医薬的に許容できる。医薬的に許容できる塩類の例には、塩基性残基、たとえばアミンの鉱酸塩または有機酸塩;酸性残基、たとえばカルボン酸残基のアルカリ塩または有機塩が含まれるが、これらに限定されない。これらの塩類は、有機酸または無機酸を用いて調製できる。そのような酸性塩は、クロリド、ブロミド、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、スルホン酸塩、ギ酸塩、酒石酸塩、マレイン酸塩、リンゴ酸塩、クエン酸塩、安息香酸塩、サリチル酸塩、アスコルビン酸塩などである。カルボン酸塩は、アルカリ土類
金属塩、ナトリウム塩、カリウム塩またはリチウム塩である。
【0129】
本明細書に開示する医薬的に許容できる塩類は、いずれか好都合な方法で、たとえば対応する遊離塩基または遊離酸の溶液または懸濁液を1化学当量の医薬的に許容できる酸または塩基で処理することにより調製できる。好都合な濃縮法または結晶化法を用いて塩類を単離できる。適切な酸の具体例は、酢酸、乳酸、コハク酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、グルコン酸、アスコルビン酸、安息香酸、ケイ皮酸、フマル酸、硫酸、リン酸、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、スルファミン酸、スルホン酸、たとえばメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸および関連の酸である。具体的な塩基は、ナトリウム、カリウムおよびカルシウムである。
【0130】
用語“医薬的に許容できるキャリヤー”は、賦形剤、キャリヤーまたは希釈剤を含むと理解される。用いられる特定のキャリヤー、希釈剤または賦形剤は、有効成分を適用する手段および目的に依存するであろう。
【0131】
本発明化合物は単独で、または1種類以上の医薬的に許容できるキャリヤーと組み合わせて、1回量または多数回量で投与できる。適切な医薬的に許容できるキャリヤーには、不活性固体希釈剤または充填剤、無菌の水性溶液および種々の有機溶剤が含まれる。本明細書に開示する医薬組成物は、種々の剤形、たとえば注射用液剤、錠剤、散剤、トローチ剤、シロップ剤などで容易に投与できる。これらの医薬組成物は、所望により他の成分、たとえば着香剤、結合剤、賦形剤などを含有することができる。さらに、滑沢剤、たとえばステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウムおよびタルクを錠剤製造のために使用できる。同様なタイプの固体組成物を、充填済み軟および硬ゼラチンカプセル剤中の充填剤として使用することもできる。これに好ましい物質には、乳糖(lactoseまたはmilk sugar)および高分子量ポリエチレングリコールが含まれる。経口投与のために水性懸濁液剤またはエリキシル剤が望ましい場合、それに含まれる必須有効成分を種々の甘味剤または着香剤、着色剤または色素、および所望により乳化剤または懸濁化剤、ならびに希釈剤、たとえば水、エタノール、プロピレングリコールおよびその組合わせと組み合わせることができる。
【0132】
非経口投与のためには、本発明化合物またはその医薬的に許容できる塩を無菌水溶液中に含有する液剤を使用できる。それらの水性液剤は必要に応じて適切に緩衝化すべきであり、液体希釈剤は十分な生理食塩水またはグルコースでまず等張にすべきである。これらの特定の水性液剤は、静脈内、筋肉内、皮下および腹腔内投与に特に適切である。用いる無菌媒質はすべて、当業者に既知の標準法によって容易に入手できる。
【0133】
最終的な医薬組成物を単位剤形に加工し(たとえばバイアル中の散剤もしくは凍結乾燥製剤、バイアル中の液剤、錠剤、カプセル剤またはサッシェ)、次いで販売のために包装することができる。加工工程は個々の単位剤形に応じて異なるであろう。たとえば、錠剤は通常は加圧下で圧縮して目的形状にされ、カプセル剤またはサッシェには単純な充填操作を用いる。種々の単位剤形を製造するために用いられる手法は当業者には自明である。
【0134】
本発明組成物は多様な形態をとることができる。これらには、たとえば液体、半固体および固体剤形、たとえば液剤(たとえば注射用および注入用液剤)、分散液剤または懸濁液剤、錠剤、丸剤、散剤、リポソームおよび坐剤が含まれる。好ましい形態は意図する投与様式および療法用途に依存する。ある組成物は注射用または注入用液剤の形態である。ある投与様式は非経口(たとえば静脈内、皮下、腹腔内、筋肉内)である。ある態様においては、本発明化合物を静脈内注入または注射により投与する。他の態様においては、本発明化合物を筋肉内または皮下注射により投与する。
【0135】
本発明において意図する療法用組成物は、一般に無菌でありかつ製造および貯蔵の条件下で安定でなければならない。本発明組成物は、高い薬物濃度に適切な液剤、マイクロエマルション、分散液剤、リポソーム、または他の特注構造として配合することができる。無菌の注射用液剤は、必要量の本発明化合物を、必要に応じて1種類または組み合わせた成分と共に、適切な溶剤に含有させ、続いて濾過滅菌することにより調製できる。一般に分散液剤は、基本的な分散媒質および前記に挙げたもののうち必要な他の成分を含有する無菌ビヒクルに有効化合物を取り込ませることにより調製される。無菌注射液剤を調製するための無菌散剤の場合、好ましい調製法は真空乾燥および凍結乾燥であり、これにより有効成分といずれかの希望する追加成分を合わせた散剤が、予め無菌濾過したその溶液から得られる。液剤の適正な流動性は、たとえばレシチンなどのコーティングの採用により、分散液剤の場合は必要な粒径の維持により、および界面活性剤の使用により、維持することができる。注射用組成物の持続的な吸収は、吸収を遅延させる物質、たとえばモノステアリン酸塩およびゼラチンを組成物に含有させることによってもたらすことができる。
【0136】
ある態様において、有効化合物は化合物が急速に放出されるのを防ぐキャリヤーと共に調製することができる;たとえば埋込み剤、経皮パッチ、およびマイクロカプセル化送達系を含む、制御放出配合物。生分解性、生体適合性ポリマー、たとえばエチレンビニルアセテート、ポリアンヒドリド、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステルおよびポリ乳酸を使用できる。それらの配合物を調製するための多数の方法が特許査定されており、または当業者に一般的に知られている。たとえばSustained and Controlled Release Drug Delivery Systems, J. R. Robinson, ed., Marcel Dekker, Inc., ニューヨーク, 1978を参照。特定の態様において、本発明化合物は、たとえば不活性希釈剤または同化しうる食用キャリヤーと共に経口投与することができる。本発明化合物(および、所望により他の成分)を硬殻もしくは軟殻ゼラチンカプセルに内包するか、圧縮して錠剤にするか、または対象の食事に直接取り込ませることもできる。経口療法投与のためには、本発明化合物を賦形剤と共に含有させ、摂取可能な錠剤、口腔錠、トローチ剤、カプセル剤、エリキシル剤、懸濁液剤、シロップ剤、カシェ剤などの形で使用できる。本発明化合物を非経口投与以外で投与する場合、化合物の不活性化を阻止する物質で化合物をコーティングし、またはそれと共に投与することができる。
【0137】
補助有効成分、たとえば化学療法薬、抗新生物薬または抗腫瘍薬を組成物に取り込ませることもできる。さらに、本発明化合物を1種類以上の追加の療法薬と共配合および/または共投与することができる。これらの薬剤には、限定ではないが、他のターゲットに結合する抗体(たとえば1種類以上の増殖因子またはサイトカイン、それらの細胞表面受容体に結合する抗体)、結合タンパク質、抗新生物薬、化学療法薬、抗腫瘍薬、アンチセンスオリゴヌクレオチド、増殖因子が含まれる。1態様において、本明細書に開示する化合物の医薬組成物は1種類以上の追加療法薬を含むことができる。
【0138】
療法用として、本明細書に開示する組成物を多様な様式で投与でき、これには可溶性形態のボーラス注射、連続注入、埋込み剤からの持続放出、経口摂取、局所注射(たとえば心臓内、筋肉内)、全身注射、または医薬技術分野で周知の他の適切な方法によるものが含まれる。医薬投与のための他の方法には経口、皮下、経皮、静脈内、筋肉内および非経口投与法が含まれるが、これらに限定されない。典型的には、可溶性組成物は精製した化合物を生理的に許容できるキャリヤー、賦形剤または希釈剤と共に含むであろう。それらのキャリヤーは、使用する用量および濃度でレシピエントに対して無毒性であろう。それらの組成物の調製は、化合物と、緩衝剤、酸化防止剤、炭水化物(グルコース、ショ糖またはデキストリンを含む)、キレート化剤、たとえばEDTA、グルタチオン、ならびに他の安定剤および賦形剤との混和を伴うことができる。中性緩衝化生理食塩水または同種血清アルブミンと混合した生理食塩水は、適切な希釈剤の例である。適切な賦形剤溶液(たとえばショ糖)を希釈剤として用いて、製品を凍結乾燥品として配合することができる
。
【0139】
他の誘導体は、非タンパク質ポリマーに共有結合した本発明化合物/組成物を含む。ポリマーへの結合は、通常は、化合物の好ましい生物活性、たとえば化合物がターゲットに結合する活性を妨げないように行なわれる。非タンパク質ポリマーは普通は親水性合成ポリマー、すなわち合成しなければ自然界にみられないポリマーである。しかし、自然界に存在し、組換えまたはインビトロ法で製造されるポリマーも、自然界から単離したポリマーと同様に有用である。親水性ポリビニルポリマー、たとえばポリビニルアルコールおよびポリビニルピロリドンが本発明の範囲に含まれる。特に有用なものは以下のものである:ポリアルキレンエーテル、たとえばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレンエステルまたはメトキシポリエチレングリコール;ポリオキシアルキレン、たとえばポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、およびポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンのブロックコポリマー(プルロニック(Pluronic));ポリメタクリレート;カルボマー(carbomer);下記を含む分枝または非分枝多糖類:糖モノマーであるD−マンノース、D−およびL−ガラクトース、フコース、フルクトース、D−キシロース、L−アラビノース、D−グルクロン酸、シアル酸、D−ガラクツロン酸、D−マンヌロン酸(たとえばポリマンヌロン酸またはアルギン酸)、D−グルコサミン、D−ガラクトサミン、D−グルコースならびにノイラミン酸:ホモ多糖類およびヘテロ多糖類、たとえば乳糖、アミロペクチン、デンプン、ヒドロキシエチルデンプン、アミロース、デキストラン硫酸、デキストラン、デキストリン、グリコーゲン、または酸性ムコ多糖類の多糖サブユニット、たとえばヒアルロン酸を含む;糖アルコールのポリマー、たとえばポリソルビトールおよびポリマンニトール;ならびにヘパリンまたはヘパロン。
【0140】
本発明の医薬組成物は、“治療有効量”または“予防有効量”の本発明化合物を含有することができる。“治療有効量”は、必要な用量または期間で目的とする治療結果を達成するのに有効な量を表わす。本発明化合物の治療有効量は、個体の疾病状態、年齢、性別および体重などの要因に従って異なる可能性がある。治療有効量は、その治療上有益な効果の方が化合物の毒性または有害作用を上回る量でもある。“予防有効量”は、必要な用量または期間で目的とする予防結果を達成するのに有効な量を表わす。典型的には、予防量は疾病の前または初期段階の対象に用いられるので、予防有効量は治療有効量より少ないであろう。
【0141】
医薬組成物の例
限定ではないが、そのような組成物および用量の例を以下に示す:
ベバシズマブ(bevacizumab)(たとえばAvastin)の配列をもつ連続アミノ酸を含む連続アミノ酸の区域を含む化合物を含有する組成物は、トレハロース2水和物、リン酸ナトリウム(一塩基性、1水和物)、リン酸ナトリウム(二塩基性、無水物)、ポリソルベート20(polysorbate 20)、およびUSP注射用水を含有することができる。この組成物を凍結乾燥することもでき、これに再構成のために水を添加することができる。ある態様において、組成物は6.2または約6.2のpHをもつ。1態様においては、本発明化合物を化学療法薬、たとえば静脈内5−フルオロウラシルと組み合わせて、結腸または直腸の転移性癌を伴う患者の処置のために投与することができる。1態様においては、本発明化合物を0.1〜10mg/kgの用量で14日毎に1回、静脈内注入として投与する。他の態様において、用量は5mg/kgであり、14日毎に1回投与される。ある態様において、用量は1.0〜2.0mg/kgであり、14日毎に1回投与される。ある態様において、用量は0.01〜1.5mg/kgであり、14日毎に1回投与される。ある態様において、用量は0.001〜10mg/kgであり、1〜21日毎に1回投与される。
【0142】
トラスツヅマブ(trastuzumab)(たとえばHerceptin)の配列をもつ連続アミノ酸を含む連続アミノ酸の区域を含む化合物を含有する組成物は、トレハロース2水和物、塩酸L−ヒスチジン、L−ヒスチジンおよびポリソルベート20、USPを含有することができる。これは、保存剤として1.1%のベンジルアルコールまたはその均等物を含有する静菌注射用水(Bacteriostatic Water for
Injection)(BWFI)USPまたはその均等物を用いて再構成することができる。ある態様において、組成物は約6.0のpHをもつ。この組成物を凍結乾燥することもでき、これに再構成のために水を添加することができる。1態様においては、転移性乳癌を伴う対象であってその腫瘍がHER2タンパク質を過剰発現している対象に、本発明化合物を投与することができる。ある態様において、対象は化学療法を受けた/受けている。他の態様においては、本発明化合物をパクリタキセル(paclitaxel)と組み合わせて、転移性乳癌を伴う対象であってその腫瘍がHER2タンパク質を過剰発現しておりかつそれらの転移性疾患に対する化学療法を受けていない対象に投与する。1態様においては、本発明化合物を0.1〜10mg/kgの初回量で連続45〜120分間注入の静脈注入により投与する。他の態様においては、本発明化合物を4mg/kgの用量で90分間の注入により投与する。ある態様においては、1週間の維持量を対象に2mg/kgの用量で30分間の注入により投与する。ある態様においては、0.5〜1.5mg/kgの用量で90分間の注入により投与する。ある態様においては、1週間の維持量を対象に0.5〜1.0mg/kgの用量で30分間の注入により投与する。ある態様においては、本発明化合物を0.04〜0.5mg/kgの用量で90分間の注入により投与する。ある態様においては、本発明化合物を0.001〜10mg/kgの用量で90分間の注入により投与する。
【0143】
リツキシマブ(rituximab)(たとえばRituxin)の配列をもつ連続アミノ酸を含む連続アミノ酸の区域を含む化合物を含有する組成物は、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム2水和物、ポリソルベート80、および注射用水(USP)またはその均等物を含有することができる。ある態様においては、組成物のpHを6.5に調整する。この組成物を凍結乾燥することもでき、これに再構成のために水を添加することができる。1態様においては、本発明化合物を再発性または難治性、軽度または濾胞性、CD20陽性、B細胞性非ホジキンリンパ腫の処置のために対象に投与する。1態様においては、本発明化合物を250〜500mg/m2の用量で週1回、4または8用量、静脈内注入投与する。他の態様においては、本発明化合物を375mg/m2の用量で週1回、4または8用量、静脈内注入投与する。1態様においては、本発明化合物を150〜250mg/m2の用量で週1回、4または8用量、静脈内注入投与する。1態様においては、本発明化合物を1.5〜5mg/m2の用量で週1回、4または8用量、静脈内注入投与する。1態様においては、本発明化合物を1.0〜500mg/m2の用量で週1回、4または8用量、静脈内注入投与する。
【0144】
エファリズマブ(efalizumab)(たとえばRaptiva)の配列をもつ連続アミノ酸を含む連続アミノ酸の区域を含む化合物を含有する組成物は、ショ糖、塩酸L−ヒスチジン1水和物、L−ヒスチジンおよびポリソルベート20を含有することができる。そのような組成物を無菌の非USP水もしくは無菌注射用水USPまたはその均等物で希釈して適切な剤形にすることができる。この組成物を凍結乾燥することもでき、これに再構成のために水を添加することができる。1態様においては、本発明化合物を慢性の中等度ないし重篤な斑状乾癬の処置のために対象に投与する。そのような対象は全身療法または光線療法の候補であってもよい。ある態様においては、本発明化合物を0.1〜1.1mg/kg皮下(SC)コンディショニング量で1回投与し、続いて0.8〜1.5mg/kg(最大1回量は合計250mgを超えない)を週1回、皮下投与する。他の態様においては、本発明化合物を0.7mg/kg皮下コンディショニング量で1回投与し、続いて1mg/kg(最大1回量は合計200mgを超えない)を週1回、皮下投与す
る。ある態様においては、本発明化合物を0.001〜1.0mg/kg皮下コンディショニング量で1回投与し、続いて0.008〜0.015mg/kgを週1回、皮下投与する。
【0145】
オマリズマブ(omalizumab)(たとえばXolair)の配列をもつ連続アミノ酸を含む連続アミノ酸の区域を含む化合物を含有する組成物は、ショ糖、塩酸L−ヒスチジン1水和物、L−ヒスチジンおよびポリソルベート20を含有することができる。そのような組成物を凍結乾燥することができる。ある態様においては、この組成物を無菌注射用水USPまたはその均等物で希釈して適切な剤形にする。1態様においては、本発明化合物を中等度ないし重篤な持続性喘息の処置のために対象に投与する。他の態様においては、本発明化合物を、多年草空中アレルゲンに対して陽性皮膚検査またはインビトロ反応性を示す対象、および喘息増悪の発生率を低下させるための吸入コルチコステロイドによって適切に症状制御されない対象に投与する。ある態様においては、本発明化合物を100〜400mgの用量で2または4週毎に皮下投与する。ある態様においては、本発明化合物を150〜375mgの用量で2または4週毎に皮下投与する。ある態様においては、本発明化合物を25〜150mgの用量で2または4週毎に皮下投与する。ある態様においては、本発明化合物を1〜4mgの用量で2または4週毎に皮下投与する。
【0146】
エタネルセプト(etanercept)(たとえばEnbrel)の配列をもつ連続アミノ酸を含む連続アミノ酸の区域を含む化合物を含有する組成物は、マンニトール、ショ糖およびトロメタミンを含有することができる。ある態様において、組成物は凍結乾燥品の形態である。ある態様においては、この組成物をたとえば無菌の静菌注射用水(BWFI)USP(0.9%ベンジルアルコールを含有)またはその均等物で再構成することができる。ある態様においては、本発明化合物を、中等度ないし重篤な活動性リウマチ性関節炎を伴う対象における徴候および症状の軽減、主臨床応答の誘導、構造損傷の進行抑制、ならびに身体機能の改善のために対象に投与する。本発明化合物をメトトレキセート(methotrexate)(MTX)と組み合わせて、または単独で初回投与することができる。ある態様においては、本発明化合物を、1種類以上のDMARDに対して適切な応答が得られない対象における中等度ないし重篤な活動性多関節型若年性リウマチ性関節炎の徴候および症状を軽減するために対象に投与する。ある態様においては、本発明化合物を、乾癬性関節炎を伴う対象における徴候および症状の軽減、活動性関節炎の構造損傷の進行抑制、ならびに身体機能の改善のために対象に投与する。ある態様においては、本発明化合物を、強直性脊椎炎を伴う対象における徴候および症状の軽減のために対象に投与する。ある態様においては、本発明化合物を、慢性の中等度ないし重篤な斑状乾癬の処置のために対象に投与する。対象がリウマチ性関節炎、乾癬性関節炎または強直性脊椎炎を伴う態様においては、本発明化合物を25〜75mg/週で、1回以上の皮下(SC)注射として投与する。他の態様においては、本発明化合物を50mg/週で、1回の皮下注射として投与する。対象が斑状乾癬を伴う態様においては、本発明化合物を25〜75mgで週2回または4日間空けて3カ月間投与し、続いて25〜75mg/週の維持量に減らす。他の態様においては、本発明化合物を50mgの用量で週2回または4日間空けて3カ月間投与し、続いて50mg/週の維持量に減らす。ある態様において、用量は上記用量より2〜100倍少ない。対象が活動性多関節型若年性リウマチ性関節炎を伴う態様においては、本発明化合物を0.2〜1.2mg/kg/週の用量(最大75mg/週まで)で投与することができる。他の態様においては、本発明化合物を0.8mg/kg/週の用量(最大50mg/週まで)で投与する。ある態様において、用量は上記用量より2〜100倍少ない。
【0147】
インフリキシマブ(infliximab)(たとえばRemicade)の配列をもつ連続アミノ酸を含む連続アミノ酸の区域を含む化合物を含有する組成物は、ショ糖、ポリソルベート80、一塩基性リン酸ナトリウム1水和物、および二塩基性リン酸ナトリウ
ム2水和物を含有することができる。保存剤は1態様においては存在しない。ある態様において、組成物は凍結乾燥品の形態である。ある態様においては、この組成物をたとえば注射用水(BWFI)USPで再構成する。ある態様において、組成物のpHは7.2または約7.2である。1態様においては、本発明化合物を、リウマチ性関節炎を伴う対象に、2〜4mg/kgの用量で静脈内注入として投与し、続いて同様な追加量を第1回注入の2および6週後、次いでその後8週毎に投与する。他の態様においては、本発明化合物を、3mg/kgの用量で静脈内注入として投与し、続いて同様な追加量を第1回注入の2および6週後、次いでその後8週毎に投与する。さらなる態様においては、用量を最大10mg/kgに調整し、または4週毎の頻度で処置する。ある態様においては、本発明化合物をメトトレキセートと組み合わせて投与する。1態様においては、本発明化合物を、クローン病または瘻孔形成クローン病を伴う対象に、中等度ないし重篤な活動性クローン病または瘻孔形成疾患の処置のために、2〜7mg/kgの用量で誘導レジメンとして0、2および6週目に投与し、続いてその後8週毎に4〜6mg/kgの維持レジメンを施す。さらなる態様においては、本発明化合物を、中等度ないし重篤な活動性クローン病または瘻孔形成疾患の処置のために、5mg/kgの用量で誘導レジメンとして0、2および6週目に投与し、続いてその後8週毎に5mg/kgの維持レジメンを施す。ある態様においては、用量を最大10mg/kgに調整する。1態様においては、本発明化合物を、強直性脊椎炎を伴う対象に、2〜7mg/kgの用量で静脈内注入として投与し、続いて第1回注入の2および6週後、次いでその後6週毎に、同様な追加量を投与する。他の態様においては、本発明化合物を、5mg/kgの用量で静脈内注入として投与し、続いて第1回注入の2および6週後、次いでその後6週毎に、同様な追加量を投与する。1態様においては、本発明化合物を、乾癬性関節炎を伴う対象に、2〜7mg/kgの用量で静脈内注入として投与し、続いて第1回注入の2および6週後、次いでその後8週毎に、同様な追加量を投与する。さらなる態様においては、本発明化合物を、5mg/kgの用量で静脈内注入として投与し、続いて第1回注入の2および6週後、次いでその後8週毎に、同様な追加量を投与する。ある態様においては、本発明化合物をメトトレキセートと共に投与する。1態様においては、本発明化合物を、潰瘍性大腸炎を伴う対象に中等度ないし重篤な活動性潰瘍性大腸炎の処置のために、2〜7mg/kgの用量で誘導レジメンとして0、2および6週目に投与し、続いてその後8週毎に2〜7mg/kgの維持レジメンを施す。他の態様においては、本発明化合物を、潰瘍性大腸炎を伴う対象に、5mg/kgの用量で誘導レジメンとして0、2および6週目に投与し、続いてその後8週毎に5mg/kgの維持レジメンを施す。ある態様において、個々の疾患の処置につき用量は上記用量より2〜100倍少ない。
【0148】
セツキシマブ(cetuximab)(たとえばErbitux)の配列をもつ連続アミノ酸を含む連続アミノ酸の区域を含む化合物を含有する組成物は、塩化ナトリウム、二塩基性リン酸ナトリウム7水和物、一塩基性リン酸ナトリウム1水和物を含有し、保存剤を含有しない組成物を含むことができる。ある態様において、組成物は凍結乾燥品の形態である。ある態様においては、この組成物をたとえば注射用水USPで再構成する。ある態様において、組成物のpHは約7.0〜約7.4の範囲である。1態様においては、本発明化合物を、EGFR発現性の転移性結腸直腸癌の処置のために対象に投与する。他の態様においては、本発明化合物を、イリノテカン(irinotecan)ベースの化学療法に対して治療抵抗性である患者の処置のためにイリノテカンと併用する。ある態様においては、本発明化合物を、300〜500mg/m2の用量で120分間の静脈内注入(最大注入速度5mL/分)で投与する初回負荷量(初回注入)として投与する。さらなる態様においては、本発明化合物を、400mg/m2の用量で120分間の静脈内注入(最大注入速度5mL/分)で投与する初回負荷量(初回注入)として投与する。ある態様において、週間維持量(他のすべての注入)は200〜300mg/m2であり、60分間かけて注入される(最大注入速度5mL/分)。ある態様において、週間維持量(他のすべての注入)は250mg/m2であり、60分間かけて注入される(最大注入速度
5mL/分)。ある態様において、個々の疾患の処置につき用量は上記用量より2〜100倍少ない。
【0149】
アブシキシマブ(abciximab)(たとえばRecopro)の配列をもつ連続アミノ酸を含む連続アミノ酸の区域を含む化合物を含有する組成物は、リン酸ナトリウム、塩化ナトリウムおよびポリソルベート80を含有し、保存剤を含有しない組成物を含むことができる。ある態様において、組成物は凍結乾燥品の形態である。ある態様においては、この組成物をたとえば注射用水USPで希釈または再構成する。ある態様において、組成物のpHは7.2または約7.2である。ある態様においては、本発明化合物を経皮冠状動脈介入(PCI)に対する補助として用いる。そのような用途においては、本発明組成物を0.15〜0.35mg/kgの静脈内ボーラスとしてPCI開始の10〜60分前に投与することができる。他の態様において、用量は0.2mg/kgである。ある態様においては、ボーラス投与に続いて0.1〜0.15g/kg/分を最高12時間、静脈内連続注入する。他の態様において、用量は0.125g/kg/分で最高12時間である。1態様においては、本発明組成物を、不安定狭心症に罹患している対象に経皮冠状動脈介入(PCI)に対する補助として用いる。そのような用途の1態様においては、本発明組成物を0.1〜0.4mg/kgの静脈内ボーラスとしてPCI開始前に投与し、続いて5〜15g/分を最高24時間、静脈内連続注入し、PCI後1時間で終了する。他の態様においては、本発明組成物を0.25mg/kgの静脈内ボーラスとしてPCI開始前に投与し、続いて10g/分を最高24時間、静脈内連続注入し、PCI後1時間で終了する。ある態様において、個々の疾患の処置につき用量は上記用量より2〜100倍少ない。
【0150】
本明細書に記載する組成物の各態様において、凍結乾燥品の形態である場合、組成物をたとえば無菌水溶液、無菌水、無菌注射用水(USP)、無菌の静菌注射用水(USP)、および当業者に既知であるその均等物で再構成することができる。
【0151】
本発明化合物のいずれかを投与する際、化合物を単独で、キャリヤー中において、医薬組成物の一部として、またはいずれか適切なビヒクル中において、投与することができると理解される。
【0152】
用量
本明細書中に用量範囲、たとえば1〜10mg/kg/週と記載した場合、本発明は上限〜下限のそれぞれの整数、およびその10分の1をも含むと理解される。したがって、上記のに挙げた例の場合、本発明は1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、・・・・・mg/kg、最大10mg/kgまでを意図する。
【0153】
各態様において、本発明化合物は1回量として投与でき、あるいは多数回量として投与できる。
一般に、前記の方法により障害または状態を処置するための1日量は、通常は約0.01から約10.0mg/kg(処置される対象の体重)までの範囲である。
【0154】
通常の技術をもつ医師が、処置される者の体重、年齢および状態、疾患の重症度、ならびに選択した特定の投与経路など既知の事項を考慮して、前記用量範囲に基づく変更を行なうことができる。
【0155】
本明細書に開示する化合物が、付随する予後との相互関係で、必要な有効量に影響を及ぼすことも予想される。
キット
本発明の他の観点は、本明細書に開示する化合物およびこれらの化合物を含む医薬組成物を含むキットを提供する。キットは、本発明の化合物または医薬組成物のほかに、診断薬または療法薬を含むことができる。キットは、診断法または療法に使用するための指示も含むことができる。診断態様において、キットは本発明の化合物または医薬組成物および診断薬を含む。療法態様において、キットは抗体またはその医薬組成物、および1種類以上の療法薬、たとえば追加の抗新生物薬、抗腫瘍薬または化学療法薬を含む。
【0156】
対象
ある態様において、対象はヒトである。ある態様において、対象は18歳以上である。他の態様において、対象は18歳未満である。
【0157】
本明細書に開示する種々の要素の組合わせはすべて本発明の範囲に含まれる。
本発明は以下の実験の詳細を参照することによってより良く理解されるであろう。ただし、詳述した具体例は特許請求の範囲にさらに十分に記載した本発明の説明にすぎないことは当業者に自明であろう。
【0158】
シンメトロアドヘシン
本明細書には、遺伝子デバイスであって、連続アミノ酸の機能性区域が新規な様式で連結したものを含むデバイスを記載する。現在まで、タンパク質を遺伝子工学的に操作して、それらが新たな固定された構造またはコンホメーションをとることにより新たな機能が作り出されてきた。遺伝子工学的に作製されたそのようなこれまでのタンパク質と対照的に、本明細書に開示する遺伝子デバイスは2以上の識別可能なタンパク質ドメインを含み、それらが新規な化学結合により、それらのドメイン間での相対的な運動が可能な様式で連結している。タンパク質ドメイン間の相対的な運動によりこの遺伝子デバイスの可動部分が構成され、これによりそれらは有用な作業を行なうことができる。この作業のための入力エネルギーは、これらのタンパク質ドメイン自体に固有の運動および回転エネルギー、ならびにこれらのタンパク質ドメインと溶剤分子の間の機械的相互作用のエネルギーなどにより供給される。
【0159】
ここには、遺伝子デバイスの特定クラスである“シンメトロアドヘシン”について開示する。シンメトロアドヘシンは化学結合した2以上のアドヘシン(独立してフォールディングするポリペプチド結合ドメインまたは連続アミノ酸の区域)を含む。これらの化学結合したアドヘシンは互いに相対的に動くことができ、その結果、二量体リガンド、三量体リガンド、四量体リガンドなどを結合するのに有用な2以上の対称的に配向した結合ドメインを形成し、アフィニティーが大幅に増大する。シンメトロアドヘシン−Fcハイブリッドタンパク質は、特に有用な遺伝子デバイスの態様である。
【0160】
療法用タンパク質の有効性における対称性の重要さは、大部分のタンパク質疾患ターゲット自体がそのような高次対称構造を示すという事実による。たとえば疾患ターゲットが2つのタンパク質からなる場合、それは二量体であると言われ、それが3つのタンパク質からなる場合、それは三量体であるなどと言われる。タンパク質療法薬がタンパク質疾患ターゲットに一度に1つの基準で(one−at−a−time basis)結合するにすぎない場合、その結合の強度は一般にナノモル濃度範囲(nano−molar range)の水準である。今日の療法タンパク質に一般的なこの通常レベルの結合では、タンパク質疾患ターゲットに対比して著しくかつ無駄に過剰な療法タンパク質を身体に大量供給することが必要になる(100万対1の基準)。
【0161】
各シンメトロアドヘシンは、タンパク質をより対称的にすることによってより有用な療法薬にする簡単な一連の規則を用いて工学的に作製される。タンパク質疾患ターゲットに一度に2つの基準で(two−at−a−time basis)結合するように設計さ
れたシンメトロアドヘシンについては、結合強度はナノHナノモル範囲(nano H nano−molar range)の水準であろう。協同結合によりそのような異例のレベルの結合が可能になる。この異例のレベルの結合では、タンパク質疾患ターゲットに対比してはるかに少ない療法タンパク質を投与する必要があるにすぎない(1対1の基準)。
【0162】
ペプチド結合化学
すべてのタンパク質は1以上のペプチド鎖、すなわち連続アミノ酸の区域からなり、それぞれがその前のアミノ酸にペプチド結合により連結している。アミド結合に起きる単結合形態(−C−N−)と二重結合形態(−C=N−)の間の共鳴のため、ペプチド結合は有意程度の二重結合性をもつ(−C=N−C
α−C=N−)。その結果、タンパク質中のペプチド結合はほぼ平面である。隣接するN−C
αとC
α−C結合は比較的自由に回転するが、ペプチド結合の剛性により、フォールディングしたポリペプチド鎖の自由度はそれが単一の静的物体のような挙動を示す点まで低下する。
【0163】
1に示すペプチド結合をもつN個の連続アミノ酸の第1区域およびP個の連続アミノ酸の第2区域、AA
1−[ ]−AA
nおよびAA
1−[ ]−AA
pについて考える:
【0165】
連続アミノ酸の第1区域がそのN−末端において新たなペプチド結合により連続アミノ酸の第2区域のC−末端に連結すると、2に示すペプチド結合をもつキメラポリペプチドAA
1−[ ]−AA
n−AA
n+1−[ ]−AA
n+pが形成されるであろう:
【0167】
このキメラポリペプチドは、それの前駆体と同様に連続アミノ酸の単一区域であり、そのそれぞれが同様にがその前のアミノ酸にペプチド結合により連結している。したがって、フォールディングしたキメラポリペプチド鎖も通常は単一の静的物体のように挙動するであろう。
【0168】
本発明は、本明細書中で
遺伝子デバイスと呼ぶ新規なタンパク質様の分子を提供する;これは機械的デバイスと同様に動的物体であり、相対的な動きが可能な様式で相互に連結した2以上の可動部分をもつ。遺伝子デバイスにおけるそれぞれの部分、または
ドメインは、連続アミノ酸の区域であり、それぞれの相互連結はそれぞれの連続アミノ酸の区域の予め定めた末端を連結する非ペプチド結合により行なわれる。好ましくは、遺伝子デバイス中のドメインは
結合ドメインである。それらの相互連結のトポロジーにより、3、4および5に示す3つの異なるタイプの遺伝子デバイスが区別される:
【0170】
異なる末端において連結した2つの同一結合ドメインを備えた遺伝子デバイス(6)は非対称的なコンフィギュレーションをもつ:
【0172】
同一末端において連結した2つの同一結合ドメインを備えた遺伝子デバイス(7および8)は点対称性を備えたコンフィギュレーションをもつ:
【0174】
7および8に示す遺伝子デバイスを、本明細書中で
ヘミ−シンメトロアドヘシンと呼ぶ。ヘミ−シンメトロアドヘシンは点対称性を備えたコンフィギュレーションをもつが、それらはそれらの両方の結合ドメインを独立して回転させることはできず、したがってそれらは通常は対称的ターゲット中の1より多い結合部位に結合することはできない。
【0175】
本発明は、対称的ターゲット中の2以上の結合部位に対称的に(すなわち協同的に)結合できるタンパク質様の分子をも提供する。対称的ターゲットを対称的に結合できる遺伝子デバイスを、本明細書中で
シンメトロアドヘシンと呼ぶ。過大サイズではあるが対称的な物体(たとえば医療用体操ボール)を片手ではなく両手で掴むことができる人体のように、シンメトロアドヘシンが対称的ターゲットを結合する能力は通常はタンパク質よりはるかに大きい。
【0176】
シンメトロアドヘシンサブタイプ
限定ではないが、表2〜11に種々のシンメトロアドヘシンの多様な態様を示す。たとえばCD4−シンメトロアドヘシンを記載した表2の最上列に、CD4ヘミ−シンメトロアドヘシンのコンフィギュレーションを示す;すなわち、C−末端側X−末端を備えたCD4ドメイン、たとえば連続アミノ酸の区域[C−末端システインまたはセレノシステイン残基をもつCD4ドメイン]が、非ペプチド結合(たとえばシステイン−システインジスルフィド結合またはセレノシステイン−セレノシステインジセレニド結合)により、連続アミノ酸の第2区域[C−末端システインまたはセレノシステイン残基をもつCD4ドメイン]に非ペプチド結合により結合したものを、一般的に[CD4−Xc−Xc−CD
4]と記載する。CD4ヘミ−シンメトロアドヘシンとFcヘミ−シンメトロアドヘシンの二量体がイムノ−シンメトロアドヘシンを形成したものを、表2の第2列に示す;たとえば[CD4−Xc−Sn−Fc]
2と記載。各表において、XcはC−末端側X−末端、XnはN−末端側X−末端、SnはN−末端システイン残基を表わす。
【0193】
連続アミノ酸の区域
本明細書中で述べる連続アミノ酸の区域の例には、結合ドメインを含む連続アミノ酸、たとえば分泌型または膜貫通タンパク質、細胞内結合ドメインおよび抗体(全体またはそ
の一部)ならびにその修飾形が含まれるが、これらに限定されない。下記は限定ではない若干例である:
1)
免疫グロブリン
免疫グロブリンは、鎖内ジスルフィド結合により互いに保持されたポリペプチド鎖を含む分子であり、その際、結合したアミノ酸のうち少なくとも1個は末端残基でなく、一般に2つの軽鎖および2つの重鎖をもつ。各鎖において、1つのドメイン(V)は分子の抗体特異性に応じた可変アミノ酸配列をもつ。他のドメイン(C)は、同一クラスの分子間に共通のかなり一定の配列をもつ。これらのドメインはアミノ末端から順に番号が付けられる。
【0194】
免疫グロブリン遺伝子スーパーファミリーは、免疫グロブリン様のドメインをもつ分子からなる。このファミリーのメンバーには下記のものが含まれる:クラスIおよびII主要組織適合性抗原、免疫グロブリン、T細胞受容体アルファ、ベータ、ガンマおよびデルタ鎖、CD1、CD2、CD4、CD8、CD28、CD3のガンマ、デルタおよびイプシロン鎖、OX−2、Thy−1、細胞間または神経細胞接着分子(I−CAMまたはN−CAM)、リンパ球機能関連抗原−3(LFA−3)、神経細胞質タンパク質(NCP−3)、ポリ−Ig受容体、ミエリン結合糖タンパク質(MAG)、高アフィニティーIgE受容体、末梢ミエリンの主要糖タンパク質(Po)、血小板由来増殖因子受容体、コロニー刺激因子−1受容体、マクロファージFc受容体、Fcガンマ受容体、ならびに癌胎児性抗原。
【0195】
ある免疫グロブリンの可変ドメイン(超可変部を含む)で他を置換し、またある種から他の種に置換できることは知られている。たとえばEP 0 173 494;EP 0
125 023; Munro, Nature 312 (13 Dec. 1984); Neuberger et al., Nature 312: (13 Dec. 1984); Sharon et al., Nature 309 (May 24, 1984); Morrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:6851-6855 (1984); Morrison et al. Science 229:1202-1207 (1985); and Boulianne et al., Nature 312:643-646 (Dec. 13, 1984)を参照。
【0196】
Morrison et al., Science 229:1202-1207 (1985)は、ある種に由来する可変部を他の
種に由来する免疫グロブリン定常部に融合させた免疫グロブリンキメラの調製を教示している。
【0197】
免疫グロブリン遺伝子スーパーファミリーの2つのメンバー−−CD4およびT細胞受容体−−に由来する免疫グロブリン可変部様のドメインで、免疫グロブリンの可変部を置換しうることも示されている;たとえばCapon et al., Nature 337:525-531, 1989, Traunecker et al., Nature 339:68-70, 1989, Gascoigne et al., Proc. Nat. Acad. Sci. 84:2936-2940, 1987、および公開された欧州特許出願EPO 0 325 224 A2
を参照。
【0198】
U.S.Patent 5,116,964(Caponら、1992年5月26日)(本明細書に援用する)には、一般にイムノアドヘシンと呼ばれるハイブリッド免疫グロブリンが記載されている;これは、たとえばリガンド結合パートナーの接着性およびターゲティング特性と免疫グロブリンのエフェクター機能を組み合わせたものである。U.S.Patent No.5,336,603(Caponら、1994年8月9日)(本明細書に援用する)には、ヘテロ機能性イムノアドヘソンが記載されている;これは、ヒトCD4抗原可変部(V)を含むポリペプチドをそれのC−末端において、免疫グロブリン鎖の定常部を含むポリペプチドのN−末端に融合させた融合タンパク質が、予め定めた抗原を結合しうる抗体の結合部位を保有するコンパニオン免疫グロブリン重鎖−軽鎖対にジスルフィド結合したものを含む。
【0199】
免疫グロブリンの“構成要素”には、無傷抗体の一部を含む抗体フラグメント、好ましくは無傷抗体の抗原結合領域または可変部が含まれる。抗体フラグメントの例には、Fab、Fab’、F(ab’)
2、およびFvフラグメント;ディアボディー(diabodies);直鎖状抗体(Zapata et al., Protein Eng. 8(10): 1057-1062 (1995));一本鎖抗体分子;ならびに抗体フラグメントから形成された多重特異性抗体(multispecific antibodies)が含まれる。
【0200】
抗体をパパイン消化すると、それぞれ1つの抗原結合部位をもつ“Fab”フラグメントと呼ばれる2つの同一の抗原結合フラグメント、および“Fc”フラグメント(容易に結晶化しうることを反映した表記)が生成する。ペプシン処理ではF(ab’)
2フラグメントが得られ、これは2つの抗原結合部位をもち、なお抗原を架橋することができる。
【0201】
“Fv”は、完全な抗原認識部位および抗原結合部位を含む最小抗体フラグメントである。この領域は、緊密に非共有会合した1つの重鎖可変ドメインと1つの軽鎖可変ドメインの二量体からなる。各可変ドメインの3つのCDRが相互作用してV
H−V
L二量体の表面の抗原結合部位を規定するのは、このコンフィギュレーションにおいてである。6つのCDRが合わせて抗体に抗原結合特異性を付与する。しかし、結合部位全体より低いアフィニティーではあるが、単一の可変ドメイン(すなわち抗原に特異的な3つのCDRのみを含むFvの半分)が抗原を認識して結合する能力をもつ。
【0202】
Fabフラグメントは軽鎖の定常ドメインおよび重鎖の第1定常ドメイン(CH1)をも含む。Fabフラグメントは、重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端に、抗体ヒンジ部に由来する1個以上のシステインを含む数個の残基が付加されていることにより、Fab’フラグメントと異なる。Fab’−SHは本明細書においてFab’に代わる表記であり、その際、定常ドメインのシステイン残基(1以上)は遊離チオール基を保有する。F(ab’)
2抗体フラグメントは本来、それらの間にヒンジシステインをもつFab’フラグメントの対として生成したものである。抗体フラグメントの他の化学結合も知られている。
【0203】
いずれかの脊椎動物種に由来する抗体(免疫グロブリン)の“軽鎖”は、それらの定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパおよびラムダと呼ばれる明らかに異なる2タイプのひとつに配属させることができる。
【0204】
免疫グロブリンは、それらの重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて異なるクラスに配属させることができる。5つの主要なクラスの免疫グロブリン:IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMがあり、これらのうち幾つかはさらにサブクラス(イソ型)、たとえばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgAおよびIgA2に分類できる。
【0205】
“一本鎖Fv”または“sFv”抗体フラグメントは抗体のV
HおよびV
Lドメインを含み、その際、これらのドメインは単一ポリペプチド鎖中に存在する。好ましくは、FvポリペプチドはさらにV
HドメインとV
Lドメインの間にポリペプチドリンカーを含み、これによりsFvは抗原結合のために望ましい構造を形成できる。sFvの概説については、Pluckthun, The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg and Moore eds., Springer-Verlag, ニューヨーク, pp. 269-315 (1994)を参照されたい。
【0206】
このように、免疫グロブリンおよび他の生物活性分子の種々の構成要素を結合させることにより、個々の構成要素の機能性を保持したハイブリッド分子を調製できる。
ある態様において、本明細書に記載する発明は、1以上の免疫グロブリン構成要素を含む新規なハイブリッド分子を提供する。
【0207】
2)
細胞外タンパク質
細胞外タンパク質は、特に多細胞生物の形成、分化および維持に重要な役割を果たす。関連する種々の細胞内タンパク質はU.S.Patent No.6,723,535、Ashkenaziら、2004年4月20日発行に示されており、これを本明細書に援用する。
【0208】
多くの個々の細胞の運命、たとえば増殖、移動、分化、または他の細胞との相互作用は、一般に他の細胞および/または近辺の環境から受ける情報により支配される。この情報はしばしば分泌ポリペプチド(たとえばマイトジェン因子、生存因子、細胞傷害性因子、分化因子、神経ペプチド、およびホルモン)により伝達され、これらは多様な細胞受容体または膜結合型タンパク質により受容および解釈される。これらの分泌ポリペプチドまたはシグナル伝達分子は、普通は細胞の分泌経路を通過して細胞外環境にあるそれらの作用部位に到達する。
【0209】
分泌タンパク質は、医薬、診断薬、バイオセンサーおよびバイオリアクターとしての用途を含めた、多様な産業用途をもつ。現在利用されている大部分のタンパク質薬物、たとえば血栓溶解薬、インターフェロン、インターロイキン、エリスロポエチン、コロニー刺激因子、および他の種々のサイトカインは、分泌タンパク質である。膜タンパク質であるそれらの受容体も、療法薬または診断薬としての可能性をもつ。企業および研究の両方により、新規な自然分泌タンパク質を同定する試みがなされている。多くの試みは哺乳動物組換えDNAライブラリーをスクリーニングして新規な分泌タンパク質をコードする配列を同定することに注目している。スクリーニングのための方法および技術の例は文献に記載されている(たとえばKlein et al., Proc. Natl. Acad. Sci. 93:7108-7113 (1996);U.S.Patent No.5,536,637を参照)。
【0210】
膜結合型のタンパク質および受容体は、特に多細胞生物の形成、分化および維持に重要な役割を果たすことができる。多くの個々の細胞の運命、たとえば増殖、移動、分化、または他の細胞との相互作用は、一般に他の細胞および/または近辺の環境から受ける情報により支配される。この情報はしばしば分泌ポリペプチド(たとえばマイトジェン因子、生存因子、細胞傷害性因子、分化因子、神経ペプチド、およびホルモン)により伝達され、これらは多様な細胞受容体または膜結合型タンパク質により受容および解釈される。そのような膜結合型タンパク質および細胞受容体には、サイトカイン受容体、受容体型キナーゼ、受容体型ホスファターゼ、細胞−細胞相互作用に関与する受容体、および細胞アドヘシン分子、たとえばセレクチンおよびインテグリンが含まれるが、これらに限定されない。たとえば細胞の増殖および分化を調節するシグナルの伝達は、一部は種々の細胞タンパク質のリン酸化により調節される。そのプロセスを触媒する酵素であるタンパク質チロシンキナーゼも、増殖因子受容体として機能することができる。例には、線維芽細胞増殖因子受容体および神経増殖因子受容体が含まれる。
【0211】
膜結合型のタンパク質および受容体分子は、医薬および診断薬としての用途を含む多様な産業用途をもつ。たとえば受容体イムノアドヘシンは、受容体−リガンド相互作用を遮断するための療法薬として利用できる。膜結合型タンパク質は、関連する受容体/リガンド相互作用の有望なペプチド阻害薬または低分子阻害薬のスクリーニングにも利用できる。
【0212】
それらのタンパク質の例には、EGFおよび増殖因子が含まれる。
上皮増殖因子(EGF)は、上皮細胞および線維芽細胞を含めた種々のタイプの細胞の増殖を刺激する一般的なマイトジェン因子である。EGFはEGF受容体(EGFR)に結合して活性化し、これにより細胞内シグナル伝達、およびこれに続く作用を開始する。
EGFRは、中枢神経系(CNS)の他の領域のニューロンのほか、大脳皮質、小脳および海馬に発現する。さらに、EGFもCNS中の種々の領域に発現する。したがって、EGFは分裂細胞に対してだけでなく、分裂後のニューロンにも作用する。事実、多数の研究が、EGFはCNS中の種々のタイプのニューロンに対して神経栄養作用または神経調節作用をもつことを指摘している。たとえば、EGFは培養した大脳皮質および小脳のニューロンに直接的に作用し、神経突起の伸展および生存を高める。他方、EGFは、中隔コリン作動性および中脳ドーパミン作動性ニューロンを含めた他の細胞タイプに対しても、グリア細胞を介して間接的に作用する。EGFがCNS中のニューロンに作用することの証拠が蓄積されつつあるが、作用機序は依然として本質的に未知である。分裂細胞におけるEGF誘導によるシグナル伝達は、分裂後ニューロンの場合より良く理解されている。クローン化されたクロム親和性細胞腫PC12細胞および培養された大脳皮質ニューロンの研究により、EGF誘導による神経栄養作用は、EGFに応答したEGFRおよびマイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)の持続的な活性化により仲介されることが示唆された。持続的な細胞内シグナル伝達はEGFRのダウンレギュレーション速度の低下と相関し、これがEGFに対する神経細胞の応答を決定すると思われる。EGFは、分裂細胞および分裂後ニューロンを含めた種々のタイプの細胞に作用する多能性増殖因子であり得る。
【0213】
EGFは唾液腺および胃腸系のブルンナー腺、腎臓、膵臓、甲状腺、下垂体、ならびに神経系により産生され、唾液、血液、脳脊髄液(CFS)、尿、羊水、前立腺液、膵液および乳汁などの体液中にみられる;Plata-Salaman, Peptides 12:653-663 (1991)。
【0214】
EGFはそれの膜特異性受容体により仲介され、これは内因性チロシンキナーゼを含有する。Stoscheck et al., J. Cell Biochem. 31:135-152 (1986)。EGFはそれの受容体の細胞外部分に結合することにより機能すると考えられ、これにより内因性チロシンキナーゼを活性化する膜貫通シグナルが誘導される。
【0215】
EGF様ドメインの精製および配列分析により、架橋して3つのペプチドループを形成する6つの保存されたシステイン残基の存在が明らかになった;Savage et al., J. Biol. Chem. 248:7669-7672 (1979)。他の幾つかのペプチドがEGF受容体と反応しうることが現在では一般に知られている;これらは普遍化したモチーフX
nCX
7CX
4/5CX
10CXCX
5GX
2CX
nを共有し、これらにおいてXはいずれかの非システインアミノ酸を表わし、nは反復変数である。このモチーフをもつ単離されていないペプチドには下記のものが含まれる:TGF−アルファ、アンフィレギュリン(amphiregulin)、シュヴァン鞘腫由来増殖因子(SDGF)、ヘパリン結合EGF様増殖因子、およびあるウイルスコードペプチド(たとえばワクシニアウイルス、Reisner, Nature 313:801-803 (1985)、ショープ線維腫(Shope fibroma)ウイルス、Chang et al., Mol Cell Biol. 7:535-540 (1987)、伝染性軟属腫(Molluscum cont
agiosum)、Porter and Archard, J. Gen. Virol. 68:673-682 (1987)、および粘液腫ウイルス、Upton et al., J. Virol. 61:1271-1275 (1987)、Prigent and Lemoine, Prog. Growth Factor Res. 4:1-24 (1992)。
【0216】
EGF様ドメインは増殖因子に限定されず、種々の細胞表面タンパク質および細胞外タンパク質中に見いだされており、それらは細胞接着、タンパク質−タンパク質相互作用、および発生において重要な特性をもつ;Laurence and Gusterson, Tumor Biol. 11:229-261 (1990)。これらのタンパク質には、血液凝固因子(VI、IX、X、XII因子、プ
ロテインC、プロテインS、プロテインZ、組織プラスミノーゲンアクチベーター、ウロキナーゼ)、細胞外マトリックス成分(ラミニン、サイトタクチン(cytotactin)、エンタクチン(entactin))、細胞表面受容体(LDL受容体、トロンボモジュリン受容体)、および免疫関連タンパク質(補体C1r、ウロモジュリン(uro
modulin))が含まれる。
【0217】
さらに興味深いことに、EGF様前駆物質の一般構造パターンは哺乳動物細胞の場合と同様に下等生物全体においても保存されている。EGF様反復配列をもつ、発生上重要な多数の遺伝子が無脊椎動物において同定された。たとえばショウジョウバエ(Drosophila)のnotch遺伝子は、EGFに対して相同性を示す40アミノ酸の反復配列36個が縦列配列したものをコードする;Wharton et al., Cell 43:557-581 (1985)。ハイドロパシー(疎水性親水性指標)プロットは推定膜貫通ドメインを示し、EGF関連配列は膜の細胞外側に位置する。EGF様反復配列を含む他のホメオティック遺伝子には、Notchに基づくプローブを用いて同定されたDelta、95Fおよび5ZD、ならびに2つの特定の細胞間で伝達される発生シグナルに対する推定受容体をコードする線虫遺伝子Lin−12が含まれる。
【0218】
詳細には、EGFは胃腸粘膜を保持および維持し、かつ急性および慢性粘膜病変を修復すの能力をもつことが示された;Konturek et al., Eur. J. Gastroenterol Hepatol. 7 (10), 933-37 (1995);これには壊死性小腸大腸炎、ゾリンジャー-エリソン症候群、胃腸潰瘍胃腸潰瘍および先天性微絨毛萎縮の処置が含まれる;Guglietta and Sullivan, Eur.
J. Gastroenterol Hepatol, 7(10), 945-50 (1995)。さらに、EGFは下記に関連する
ことが示されている:毛嚢の分化、du Cros, J. Invest. Dermatol. 101 (1 Suppl.), 106S-113S (1993)、Hillier, Clin. Endocrinol. 33(4), 427-28 (1990);腎機能、Hamm et
al., Semin. Nephrol. 13(1): 109-15 (1993)、Harris, Am. J. Kidney Dis. 17(6): 627-30 (1991);涙液、van Setten et al., Int. Ophthalmol 15(6); 359-62(1991);ビタ
ミンK仲介血液凝固、Stenflo et al., Blood 78(7): 1637-51(1991)。EGFは、異常な角化細胞分化を特徴とする種々の皮膚疾患、たとえば乾癬、上皮癌、たとえば肺の扁平上皮癌、外陰部の類表皮癌、および神経膠腫に関連することも示されている。King et al.,
Am. J. Med. Sci. 296:154-158 (1988)。
【0219】
重要なことは、増殖因子シグナル伝達経路の遺伝子変異が発生異常および癌を含めた慢性疾患に密接に関連するという証拠の蓄積である。Aaronson, Science 254: 1146-1153 (1991)。たとえば、EGF受容体タンパク質に近似する構造類似体をもつ癌原遺伝子であ
るc−erb−2(HER−2としても知られる)は、ヒト乳癌に過剰発現する。King et al., Science 229:974-976 (1985); Gullick, Hormones and their actions, Cooke et
al., eds, Amsterdam, Elsevier, pp 349-360 (1986)。
【0220】
増殖因子は、特異的な細胞表面受容体に結合することにより、単独でまたは協調して細胞の生育または増殖を高める分化シグナルまたはメディエーターである。しかし、増殖因子に対しては、発現時の増殖だけでなく、他の細胞反応もある。その結果、増殖因子は多機能かつ有効な細胞レギュレーターと特徴づける方が良い。それらの生物作用には、増殖、走化性、および細胞外マトリックス産生刺激が含まれる。増殖因子は刺激作用および阻害作用の両方をもつ可能性がある。たとえばトランスフォーミング増殖因子(TGF−ベータ)は多面性が高く、ある細胞、特に結合組織においては増殖を刺激し、一方、他の細胞、たとえばリンパ球および上皮細胞においては有効な増殖インヒビターである。
【0221】
増殖因子による増殖刺激または阻害の生理作用は、ターゲット組織の発生および分化の状態に依存する。関与する古典的なエンドクリン分子の局所細胞調節の機序は、オートクリン(同一細胞)、ジュクスタクリン(隣接細胞)、およびパラクリン(近傍細胞)経路を含む。ペプチド増殖因子は複雑な生物学的言語の要素であり、細胞間コミュニケーションの基礎を提供する。それらは細胞が相互に情報を伝達し、細胞間の相互作用を仲介し、遺伝子発現を変化させるのを可能にする。これらの多機能かつ多能性因子の作用は、他のペプチドの存否に依存する。
【0222】
FGF−8は、正常な2倍体線維芽細胞および樹立された細胞系の両方に対して有効なヘパリン結合性マイトジェンのファミリーである線維芽細胞増殖因子(FGF)のメンバーである;Gospodarowicz et al. (1984), Proc. Nat. Acad. Sci. USA 81:6963。FGFファミリーには、特に酸性FGF(FGF−1)、塩基性FGF(FGF−2)、INT−2(FGF−3)、K−FGF/HST(FGF−4)、FGF−5、FGF−6、KGF(FGF−7)、AIGF(FGF−8)が含まれる。すべてのFGFが2個の保存されたシステイン残基をもち、アミノ酸レベルで30〜50%の配列相同性をもつ。これらの因子は、下記を含めた広範な正常2倍体中胚葉由来細胞および神経冠由来細胞に対してマイトジェン性である:顆粒膜層(granulosa)細胞、副腎皮質細胞、軟骨細胞、筋芽細胞、角膜内皮細胞および血管内皮細胞(ウシまたはヒト)、血管平滑筋細胞、水晶体、網膜および前立腺上皮細胞、乏突起神経膠細胞、星状神経膠細胞、クロンドサイト、筋原細胞および骨芽細胞。
【0223】
線維芽細胞増殖因子は、多数の細胞タイプを非マイトジェン様式で刺激することもできる。これらの活性には下記のものが含まれる:創傷領域への細胞移動の促進(走化性)、新たな血管形成の開始(血管新生)、神経の再生および生存の調節(神経栄養作用)、エンドクリン機能の調節、および特異的細胞タンパク質発現の刺激または抑制、細胞外マトリックス産生、ならびに細胞生存。Baird & Bohlen, Handbook of Exp. Pharmacol. 95(1): 369418, Springer, (1990)。これらの特性は、創傷治癒、神経修復、側副血管形成な
どを促進するための療法に線維芽細胞増殖因子を使用するための基礎を提供する。たとえば、線維芽細胞増殖因子は心臓の疾患および手術における心筋損傷を最小限に抑えることが示唆された(U.S.Pat.No.4,378,347)。
【0224】
アンドロゲン誘導増殖因子(AIGF)としても知られるFGF−8は、アミノ酸215個のタンパク質であり、FGFファミリーの他のメンバーと30〜40%の配列相同性をもつ。FGF−8は、マウス乳癌細胞系SC3において、アンドロゲンによる調節および誘導の下にあると提唱された。Tanaka et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:8928-8932 (1992); Sato et al., J. Steroid Biochem. Molec. Biol. 47:91-98 (1993)。その結果、FGF−8はアンドロゲン応答臓器であることが知られている前立腺において局所的役割をもつ可能性がある。FGF−8は、NIH−3T3線維芽細胞中へトランスフェクションされた場合にトランスフォーミング活性を示すので、癌原性の可能性もある。Kouhara et al., Oncogene 9 455462 (1994)。FGF−8は心臓、脳、肺、腎臓、精巣、前立腺および卵巣に検出されているが、外因性アンドロゲンの不存在下でも発現が検出された。Schmitt et al., J. Steroid Biochem. Mol. Biol. 57 (34): 173-78 (1996)。
【0225】
FGF−8はネズミ胚形成の様々な段階で発現する点で他の幾つかのFGFと共通の特性をもち、これは種々のFGFが分化および胚形成において多重の、おそらく協調した役割をもつという学説を支持する。さらに、FGF−8は乳腺腫瘍形成の過程でWnt−1と協同作用する癌原遺伝子としても同定された(Shackleford et al., Proc. Natl. Acad.
Sci. USA 90, 740-744 (1993); Heikinheimo et al., Mech. Dev. 48:129-138 (1994))
。
【0226】
他のFGFと異なり、FGF−8は一次転写体のオータナティブスプライシングの結果、3つのタンパク質イソ型として存在する。Tanaka et al.,前掲。成体における正常な
FGF−8発現は弱く、性腺組織に限定されるが、ノーザンブロット分析によりFGF−8 mRNAはネズミの妊娠10日から12日目まで存在することが示された;これは、FGF−8が正常な発生に重要であることを示唆する。Heikinheimo et al., Mech Dev. 48(2): 129-38 (1994)。さらに、妊娠8〜16日目のインサイチュハイブリダイゼーションアッセイにより、第1気管支アーチ、前頭鼻突起、前脳および中脳−後脳接合部の表面
外胚葉に初期発現が示された。10〜12日目に、FGF−8は前肢芽および後肢芽、鼻itsおよび鼻咽頭、漏斗部(infundibulum)の表面外胚葉、ならびに終脳、
間脳および後脳に発現した。発生中の後肢では妊娠13日目まで発現が続くが、その後は検出できなくなる。この結果は、FGF−8が胚形成において時間的および空間的に独特のパターンをもつことを示唆し、原腸形成後の胚において外胚葉分化の多数の領域でこの増殖因子が役割をもつことを示唆する。
【0227】
分泌タンパク質の1グループであるTGF−ベータ超遺伝子ファミリー、または簡単にTGF−ベータスーパーファミリーには、事実上すべての系統に発現する多数の関連する増殖因子および分化因子が含まれる。スーパーファミリーのメンバーは特異的な細胞表面受容体に結合し、これがそれらの多機能性サイトカイン作用を誘導するシグナル伝達機序を活性化する。Kolodziejczyk and Hall, Biochem. Cell. Biol., 74:299-314 (1996); Attisano and Wrana, Cytokine Growth Factor Rev., 7:327-339 (1996); and Hill, Cellular Signaling, 8:533-544 (1996)。
【0228】
このファミリーのメンバーには下記のものが含まれる:5つの異なる形態のTGF−ベータ(Sporn and Roberts, in Peptide Growth Factors and Their Receptors, Sporn and
Roberts, eds. (Springer-Verlag: Berlin, 1990) pp. 419-472)、ならびに分化因子v
g1(Weeks and Melton, Cell, 51:861-867 (1987))およびDPP−Cポリペプチド(Padgett et al., Nature, 325:81-84 (1987))、ホルモンであるアクチビンおよびインヒビン(Mason et al., Nature 318-659-663 (1985); Mason et al., Growth Factors, 1:77-88 (1987))、ミュラー管抑制物質(MIS)(Cate et al., Cell, 45: 685-698 (1986))、骨
形態発生タンパク質(BMP)(Wozney et al., Science, 242:1528-1534 (1988);PCT
WO 88/00205、1988年1月14日公開;U.S.Pat.No.4,877,864、1989年10月31日発行)、発生において調節されるタンパク質Vgr−1(Lyons et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 86:45544558 (1989))およびVgr−2(Jones et al., Molec. Endocrinol., 6:1961-1968 (1992))、マウス増殖分化因子(GDF)、たとえばGDF−3およびGDF−9(Kingsley, Genes Dev., 8:133-146 (1994); McPherron and Lee, J. Biol. Chem., 268:3444-3449 (1993))、マウスlefty
/Stra1(Meno et al., Nature, 381:151-155 (1996); Bouillet et al., Dev. Biol., 170: 420-433 (1995))、グリア細胞系由来神経栄養因子(GDNF)(Lin et al., Science, 260:1130-1132 (1993))、ノイルツリン(neurturin)(Kotzbauer et al., Nature, 384:467-470 (1996))、ならびに子宮内膜出血関連因子(EBAF)(Kothapalli et al., J. Clin. Invest., 99:2342-2350 (1997))。サブセットBMP−2Aおよ
びBMP−2Bは、DPP−Cに対して配列が約75%相同であり、そのタンパク質の哺乳動物均等物である。
【0229】
TGF−ベータスーパーファミリーのタンパク質はジスルフィド結合したホモ−またはヘテロ二量体であって、疎水性シグナル配列、数百個のアミノ酸の長くかつ保存度が比較的乏しいN−末端プロ領域、開裂部位(通常は多塩基型)、ならびにより短くかつ保存度がより高いC−末端領域を含む、より大きな前駆ポリペプチド鎖によりエンコードされる。このC−末端領域はプロセシングされた成熟タンパク質に相応し、特徴的なシステインモチーフをもつ、すなわち既知のすべてのファミリーメンバーに含まれるTGF−ベータの9個のシステイン残基のうち7個を保存した、約100個のアミノ酸を含む。成熟領域とプロ領域の間の開裂部位の位置はファミリーメンバー間で異なるが、これらのすべてのタンパク質のC−末端は同一位置にあり、配列Cys−X−Cys−Xで終わる;ただし、いずれの場合も、Cys−Lys−Cys−SerのTGF−ベータコンセンサスC−末端とは異なる。Sporn and Roberts, 1990, 前掲。
【0230】
少なくとも5つの形態のTGF−ベータが現在同定されている:TGF−ベータ1、T
GF−ベータ2、TGF−ベータ3、TGF−ベータ4、およびTGF−ベータ5。活性形のTGF−ベータ1はホモ二量体であり、アミノ酸390個の前駆体のカルボキシ末端112個のアミノ酸の二量体化により形成される。組換えTGF−ベータ1がクローン化され(Derynck et al., Nature, 316:701-705 (1985))、チャイニーズハムスター卵巣細胞において発現された(Gentry et al., Mol. Cell. Biol. 7:3418-3427 (1987))。さらに、組換えヒトTGF−ベータ2(deMartin et al., EMBO J., 6:3673 (1987))、ならびにヒ
トおよびブタTGF−ベータ3(Derynck et al., EMBO J., 7:3737-3743 (1988); ten Dijke et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85:4715 (1988))がクローン化された。TG
F−ベータ2はアミノ酸414個の前駆体の形態であり、同様にプロセシングされて活性形TGF−ベータ1と約70%の相同性をもつカルボキシ末端112個のアミノ酸からなるホモ二量体となる(Marquardt et al., J. Biol. Chem., 262:12127 (1987))。EP 200,341;169,016;268,561;および267,463;U.S Pat No.4,774,322;Cheifetz et al., Cell, 48:409-415 (1987); Jakowlew
et al., Molecular Endocrin., 2:747-755 (1988); Derynck et al., J. Biol. Chem., 261:4377-4379 (1986); Sharples et al., DNA, 6:239-244 (1987); Derynck et al., Nucl. Acids. Res., 15:3188-3189 (1987); Derynck et al., Nucl. Acids. Res. 15:3187 (1987); Seyedin et al., J. Biol. Chem., 261:5693-5695 (1986); Madisen et al., DNA 7:1-8 (1988); and Hanks et al., Proc. Natl. Acad. Sci. (U.S.A.), 85:79-82 (1988も)も参照されたい。
【0231】
TGF−ベータ4およびTGF−ベータ5は、ニワトリ軟骨細胞cDNAライブラリーから(Jakowlew et al., Molec. Endocrinol., 2:1186-1195 (1988))、およびカエル卵母
細胞cDNAから、それぞれクローン化された。
【0232】
TGF−ベータのプロ領域は、成熟TGF−ベータ二量体と非共有結合により会合しており(Wakefield et al., J. Biol. Chem., 263:7646-7654 (1988); Wakefield et al., Growth Factors, 1:203-218 (1989))、このプロ領域はTGF−ベータおよびアクチビンの両方の適正なフォールディングおよび活性成熟二量体の分泌に必要であることが認められている (Gray and Mason, Science, 247:1328-1330 (1990))。TGF−ベータの成熟領域とプロ領域の間の会合は成熟二量体の生物活性を遮蔽し、その結果、不活性な潜在形態が形成される。潜在性はTGF−ベータスーパーファミリーに一定のものではない;プロ領域の存在はアクチビンまたはインヒビンの生物活性には影響を及ぼさないからである。
【0233】
TGF−ベータスーパーファミリーに属するタンパク質の生物学的特性を統合する特徴は、発生プロセスを調節するそれらの能力である。TGF−ベータは種々の正常細胞および新生細胞の両方に対して多数の調節作用をもつことが示された。TGF−ベータは細胞の増殖、分化、および細胞機能における他の重要なプロセスを刺激または阻害することができるので、多機能性である(Sporn and Roberts, 前掲)。
【0234】
TGF−ベータスーパーファミリーの1メンバーであるEBAFは、子宮内膜に、異常な子宮内膜出血の分泌後期および途中にのみ発現する。Kothapalli et al., J. Clin. Invest., 99:2342-2350 (1997)。ヒトの子宮内膜は、規則的な間隔で出血する唯一の身体組織であるという点で独特である。さらに、異常な子宮内膜出血は婦人科疾患の最も一般的な症状発現のひとつであり、子宮切除の主指標となる。インサイチュハイブリダイゼーションにより、EBAFのmRNAは間質に発現し、子宮内膜腺または子宮内膜細胞に有意のmRNA発現はないことが示された。
【0235】
EBAFの推定タンパク質配列は、TGF−ベータスーパーファミリーのマウスlefty/stra3によりコードされるタンパク質と強い相同性を示した。モチーフ探査により、推定EBAFは、TGF−ベータ関連タンパク質間で保存されている、システイン
結び目(knot)構造形成に必要なシステイン残基の大部分を含むことが明らかになった。EBAF配列は、追加システイン残基を第1保存システイン残基からアミノ酸12個上流に含む。追加システイン残基を含むことが知られている他の唯一のファミリーメンバーは、TGF−ベータ類、インヒビン類およびGDF−3である。LEFTY、GDF−3/Vgr2、およびGDF−9と同様に、EBAFは、分子間ジスルフィド結合を形成することが知られているシステイン残基を欠如する。したがってEBAFは、非対合システイン残基をもつ、二量体として存在しない可能性のあるTGF−ベータスーパーファミリーの追加メンバーであると思われる。しかし、2つのモノマーサブユニット間の疎水性接触が二量体形成を促進する可能性がある。蛍光インサイチュハイブリダイゼーションにより、ヒト染色体1のバンドq42.1にebaf遺伝子があることが示された。
【0236】
そのような細胞外タンパク質の他の例は、当技術分野で周知である;たとえばU.S.Patent No.6,723,535を参照。
コンジュゲート
本発明は、シンメトロアドヘシン/イムノシンメトロアドヘシンのコンジュゲートにも関する。よって、本発明組成物は下記のものにコンジュゲートさせることができる:細胞傷害性物質、たとえば化学療法薬、毒素(たとえば、細菌、真菌、植物もしくは動物由来の酵素活性毒素、またはそのフラグメント)、または放射性同位体(すなわち放射性コンジュゲート)。
【0237】
そのようなイムノコンジュゲートの形成に有用な化学療法薬は当技術分野で周知である。使用できる酵素活性毒素およびそのフラグメントには、下記のものが含まれる:ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性フラグメント、エキソトキシンA鎖(緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)由来)、リシン(ricin)A鎖、アブリン(abrin)A鎖、モデシン(modeccin)A鎖、アルファ−サルシン(alpha−sarcin)、シナアブラギリ(Aleurites fordii)タンパク質、ダイアンチン(dianthin)タンパク質、ヨウシュヤマゴボウ(Phytolaca americana)タンパク質(PAPI、PAPHおよびPAP−S)、ニガウリ(momordica charantia)インヒビター、クルシン(curcin)、クロチン(crotin)、サパオナリア・オフィシナリス(sapaonaria officinalis)インヒビター、ゲロニン(gelonin)、ミトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン(restrictocin)、フェノマイシン(phenomycin)、エノマイシン(enomycin)およびトリコテセン類(tricothecene)。種々の放射性核種を放射性コンジュゲート抗体の調製に使用できる。例には、
212Bi、
131I、
113In、
90Yおよび
186Reが含まれる。
【0238】
細胞傷害性物質を含有する本発明組成物のコンジュゲートは、種々の二官能性タンパク質結合剤、たとえば下記のものを用いて調製できる:N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオール)プロピオネート(SPDP)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(たとえばジメチルアジピミデート塩酸塩)、活性エステル(たとえばスベリン酸ジスクシンイミジル)、アルデヒド類(たとえばグルタルアルデヒド)、ビス−アジド化合物(たとえばビス(p−アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス−ジアゾニウム誘導体(たとえばビス−(p−ジアゾニウムベンゾイル)−エチレンジアミン)、ジイソシアネート類(たとえばトリエン2,6−ジイソシアネート)、およびビス−活性フッ素化合物(たとえば1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼン)。たとえばリシンイムノトキシンは、Vitetta et al., Science, 238:1098 (1987)の記載に従って調製できる。カーボン−14標識1−イソチオシアナトベンジル−3−メチルジエチレントリアミンペンタ酢酸(MX−DTPA)は、放射性核種を抗体にコンジュゲートさせるためのキレート化剤の一例である。WO 94111026を参照。
【0239】
遺伝子デバイスの合成
本明細書に開示する遺伝子デバイスは、多様な経路で合成できる。特定の1経路は、化合物をインビボで組換えDNA技術により合成し、次いで分泌または入手された生成物を本発明化合物が形成される条件下で化学修飾するものである。別経路には固体状態合成が含まれる。
【0240】
一般法
以下の記載は主に、エンコーディング核酸を含むベクターで形質転換またはトランスフェクションした細胞を培養することによる、目的とする連続アミノ酸の区域またはポリペプチドの調製に関する。当技術分野で周知の別法を採用しうることももちろん考慮される。たとえば、固相法を用いる直接ペプチド合成により、アミノ酸配列またはその一部を製造することができる(たとえばStewart et al., Solid-Phase Peptide Synthesis, W.H. Freeman Co., カリフォルニア州サンフランシスコ(1969); Merrifield, J. Am. Chem. Soc., 85:2149-2154 (1963)を参照)。インビトロタンパク質合成は、手動法を用いて、また
は自動法により実施できる。自動合成は、たとえばApplied Biosystemsペプチド合成装置(カリフォルニア州フォスターシティー)により、製造業者の指示を用いて達成できる。目的とする連続アミノ酸の区域またはポリペプチドの種々の部分を個別に化学合成し、化学的方法または酵素法を用いて組み合わせて、目的とする連続アミノ酸の区域またはポリペプチドの全長を製造することができる。
【0241】
1.目的とする連続アミノ酸の区域またはポリペプチドをコードするDNAの単離
目的とするmRNAを保有すると考えられる組織から作成したcDNAライブラリーからエンコーディングDNAを入手し、それを検出可能なレベルで発現させることができる。したがってヒトDNAはヒト組織から作成したcDNAライブラリーから簡便に入手できる、など。エンコーディング遺伝子はゲノムライブラリーから、または既知の合成法により入手することもできる(たとえば自動核酸合成)。
【0242】
目的遺伝子またはそれによりコードされるタンパク質を同定するために設計されたプローブ(たとえば、連続アミノ酸の区域に対する抗体、または少なくとも20〜80塩基のオリゴヌクレオチド)で、ライブラリーをスクリーニングすることができる。選択したプローブによるcDNAまたはゲノムライブラリーのスクリーニングは、標準法を用いて実施できる;たとえばSambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual (ニュ
ーヨーク: Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989)に記載。エンコーディング遺伝子を単離するための別法は、PCR法を用いるものである(Sambrook et al., 前掲; Dieffenbach et al., PCR Primer: A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1995))。
【0243】
プローブとして選択したオリゴヌクレオチド配列は、偽陽性配列を最小限に抑えるのに十分な長さおよび十分に確実なものでなければならない。スクリーニングするライブラリー中のDNAにハイブリダイズした際に検出できるように、オリゴヌクレオチドを標識することが好ましい。標識法は当技術分野で周知であり、放射性標識、たとえば
32P−標識ATP、ビオチニル化または酵素標識の使用を含む。中等度の緊縮および高度の緊縮を含むハイブリダイゼーション条件は、Sambrook et al.,前掲に示されている。
【0244】
そのようなライブラリースクリーニング法により同定した配列を、寄託された他の既知配列、および公開データベース、たとえばGenBankデータベース、または他の私的配列データベース中に入手できる配列と、比較およびアラインさせることができる。分子の特定領域内または全長配列全体の配列同一性(アミノ酸またはヌクレオチドのいずれかのレベルでの)は、当技術分野で既知の、本明細書に記載する方法を用いて決定できる。
【0245】
タンパク質コード配列をもつ核酸は、下記により入手できる:選択したcDNAまたはゲノムライブラリーを、まず本明細書に開示する演繹アミノ酸配列を用いて、かつ必要ならばSambrook et al.,前掲に記載された一般的なプライマー延長法を用いてスクリーニングして前駆体を検出し、そしてcDNAに逆転写されていない可能性のあるmRNAの中間体を処理する。
【0246】
2.宿主細胞の選択および形質転換
本明細書に記載する調製用の発現ベクターまたはクローニングベクターで宿主細胞をトランスフェクションまたは形質転換し、プロモーターの誘導、形質転換体の選択、または目的配列をコードする遺伝子の増幅のために適宜改変した、一般的な栄養培地で培養する。培養条件、たとえば培地、温度、pHなどは、多大な実験なしに当業者が選択できる。全般的に、細胞培養を最大にするための原理、プロトコルおよび実際の技術は、Mammalian Cell Biotechnology: a Practical Approach, M. Butler, ed. (IRL Press, 1991)およびSambrook et al.,前掲中にある。
【0247】
真核細胞のトランスフェクション法および原核細胞の形質転換法は当業者に既知である;たとえばCaCl
2、CaPO
4、リポソーム仲介法およびエレクトロポレーション。使用する宿主細胞に応じて、それらの細胞に適切な標準法を用いて形質転換を実施する。塩化カルシウムを用いるカルシウム処理(Sambrook et al.,前掲に記載)またはエレクトロポレーションは、通常は原核細胞に用いられる。アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)の感染は、特定の植物細胞の形質転換に用いられる;Shaw et al., Gene, 23:315 (1983)およびWO 89/05859,1989年6月29日公開に記載。そのような細胞壁をもたない哺乳動物細胞には、Graham and van der Eb, Virology, 52:456-457 (1978)のリン酸カルシウム沈殿法を採用できる。哺乳動物宿主細胞系トランスフェクションの全般的観点は、U.S.Patent No.4,399,216に記載されている。酵母内への形質転換は、一般にVan Solingen et al., J. Bact., 130:946(1977)およびHsiao et al., Proc. Natl. Acad. Sci. (USA), 76:3829 (1979)の方法に従って実施される。しかし、DNAを細胞に導入するための他の方法、たとえば核マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、無傷細胞との細菌プロトプラスト融合、またはポリカチオン、たとえばポリブレン、ポリオルニチンによる方法も使用できる。哺乳動物細胞を形質転換するための種々の技術については、Keown et al., Methods in Enzymology, 185:527-537 (1990)、およびMansour et al., Nature, 336:348-352 (1988)を参照。
【0248】
本発明におけるベクター中のDNAをクローニングまたは発現させるのに適切な宿主細胞には、原核細胞、酵母、またはより高等な真核細胞が含まれる。適切な原核細胞には真性細菌、たとえばグラム陰性またはグラム陽性生物、たとえば腸内細菌科(Enterobacteriaceae)、たとえば大腸菌(E.coli)が含まれるが、これらに限定されない。種々の大腸菌株が公開利用可能である:たとえば大腸菌K12株MM294(ATCC 31,446);大腸菌X1776(ATCC 31,537);大腸菌株W3110(ATCC 27,325)およびK5772(ATCC 53,635)。他の適切な原核宿主細胞には下記のものが含まれる:腸内細菌科、たとえばエシェリキア属(Escherichia)、たとえば大腸菌、エンテロバクター属(Enterobacter)、エルウイニア属(Erwinia)、クレブシエラ属(Klebsiella)、変形菌属(Proteus)、サルモネラ属(Salmonella)、たとえばネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、セラチア属(Serratia)、たとえば霊菌(Serratia marcescans)、および赤痢菌属(Shigella)、ならびに桿菌属(Bacilli)、たとえば枯草菌(B.subtilis)およびバチルス・リケニフォルミス(B.lichenifo
rmis)(たとえばバチルス・リケニフォルミス41P、DD 266,710に開示、1989年4月12日公開)、シュードモナス属(Pseudomonas)、たとえば緑膿菌(P.aeruginosa)、ならびに放線菌属(Streptomyces)。これらの例は例示であって、限定ではない。菌株W3110は組換えDNA生成物発酵に慣用される宿主株であるので、特に好ましい宿主または親宿主である。宿主細胞が分泌するタンパク質分解酵素は最少量であることが好ましい。たとえば株W3110を、この宿主の内因性タンパク質をコードする遺伝子に遺伝子変異を起こすように改変することができる;そのような宿主の例には下記のものが含まれる:大腸菌W3110株1A2、これは完全遺伝子型tonAをもつ;大腸菌W3110株9E4、これは完全遺伝子型tonA ptr3をもつ;大腸菌W3110株27C7(ATCC 55,244)、これは完全遺伝子型tonAptr3phoA E15(argF−lac)169 degP ompT kan.sup.rをもつ;大腸菌W3110株37D6、これは完全遺伝子型tonA ptr3 phoA E15(argF−lac)169 degP
ompT rbs7 ilvG kan.sup.rをもつ;大腸菌W3110株40B4、これは非カナマイシン耐性degP欠失変異をもつ株37D6である;および変異ペリプラズムプロテアーゼをもつ大腸菌株:U.S Patent No.4,946,783,1990年8月7日発行に開示。あるいは、インビトロクローニング法、たとえばPCRまたは他の核酸ポリメラーゼ反応が適切である。
【0249】
原核細胞のほか、真核細胞微生物、たとえば糸状菌または酵母も、エンコーディングベクターのための適切なクローニング宿主または発現宿主である。サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)は慣用される下等真核細胞宿主微生物である。他には下記のものが含まれる:シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)(Beach and Nurse, Nature, 290:140 (1981);EP 139,383,1985年5月2日公開);クライベラ属(Kluyveromyces)宿主(U.S.Pat.No.4,943,529;Fleer et al., Bio/Technology, 9:968-975 (1991))、たとえばクライベラ・ラクティス(K.lact
is)(MW98−8C,CBS683,CBS4574 Louvencourt et al., J. Bacteriol., 737 (1983))、クライベラ・フラギリス(K.fragilis)(ATCC
12,424)、クライベラ・ブルガリカス(K.bulgaricus)(ATCC 16,045)、クライベラ・ウィッケラミイ(K.wickeramii)(ATCC
24,178)、クライベラ・ワルティイ(K.waltii)(ATCC 56,500)、クライベラ・ドロソフィララム(K.drosophilarum)(ATCC
36,906;Van den Berg et al., Bio/Technology, 8:135 (1990))、クライベラ・サーモトレランス(K.thermotolerans)、およびクライベラ・マルキシアヌス(K.marxianus);ヤロウィア属(yarrowia)(EP 402,226);ピキア・パストリス(Pichia pastoris)(EP 183,070; Sreekrishna et al., J. Basic Microbiol., 28:265-278 (1988));カンジダ属(Candida);トリコデルマ・リーシア(Trichoderma reesia)(EP 244,234);ニューロスポラ・クラッサ(Neurospora crassa)(Case et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 76:5259-5263 (1979));シュバンニオミセス属(Schwanniomyces)、たとえばシュバンニオミセス・オッシデンタリス(Schwanniomyces occidentalis)(EP 394,538,1990年10月31日公開);ならびに糸状菌、たとえばニューロスポラ属(Neurospora)、ペニシリウム属(Penicillium)、トリポクラジウム属(Tolypocladium)(WO 91/00357,1991年1月10日公開)、およびアスペルギルス属(Aspergillus)宿主、たとえばアスペルギルス・ニデュランス(A.nidulans)(Ballance et al., Biochem. Biophys. Res. Commun., 112:284-289 (1983); Tilburn et al., Gene, 26:205-221 (1983); Yelton et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:1470-1474 (1984))およびアスペル
ギルス・ニガー(A.niger)(Kelly and Hynes, EMBO J., 4:475479 (1985))。メ
チロトロピック酵母は本発明に適切であり、メタノール上で生育しうる下記よりなる属から選択される酵母が含まれるが、これらに限定されない:ハンゼヌラ属(Hansenula)、カンジダ属(Candida)、クレッケラ属(Kloeckera)、ピキア属(Pichia)、サッカロミセス属(Saccharomyces)、トルロプシス属(Torulopsis)およびロドトルラ属(Rhodotorula)。このクラスの酵母の例示である具体的な種のリストは、C. Anthony, The Biochemistry of Methylotrophs, 269 (1982)中にある。
【0250】
グリコシレーションされた目的とする連続アミノ酸の区域またはポリペプチドの発現に適切な宿主細胞は、多細胞生物に由来する。無脊椎動物細胞の例には、昆虫細胞、たとえばショウジョウバエ(Drosophila)S2およびヨトウ(Spodoptera)Sf9、ならびに植物細胞が含まれる。有用な哺乳動物細胞系の例には、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞およびCOS細胞が含まれる。より具体的な例には、下記のものが含まれる:SV40で形質転換したサル腎CV1細胞系(COS−7,ATCC
CRL 1651);ヒト胚性腎系(293細胞、または懸濁培養用にサブクローニングした293,Graham et al., J. Gen Virol., 36:59 (1977));チャイニーズハムスター卵巣細胞/−DHFR(CHO,Urlaub and Chasin, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77:4216 (1980));マウスセルトリ細胞(sertoli cell)(TM4、Mather, Biol. Reprod., 23:243-251 (1980));ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL 75
);ヒト肝細胞(Hep G2、HB 8065);およびマウス乳腺腫(MMT 060562、ATCC CCL51)。適切な宿主細胞の選択は当業者が容易になしうる範囲のものであると考えられる。
【0251】
3.複製可能なベクターの選択および使用
目的とする連続アミノ酸の区域またはポリペプチドをコードする核酸(たとえばcDNAまたはゲノムDNA)を、複製可能なベクターにクローニング(DNAの増幅)または発現のために挿入することができる。多様なベクターが公開されている。ベクターは、たとえばプラスミド、コスミド、ウイルス粒子またはファージの形であってもよい。適切な核酸配列を多様な方法でベクターに挿入することができる。一般に、当技術分野で既知の技術を用いてDNAを適切な制限エンドヌクレアーゼ部位(1以上)に挿入する。ベクター構成要素には通常は、1以上のシグナル配列、複製起点、1以上のマーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモーター、および転写終止配列が含まれるが、これらに限定されない。これらの構成要素のうち1以上を含む適切なベクターの構築には、当業者に既知の標準ライゲーション法を用いる。
【0252】
目的とする連続アミノ酸の区域またはポリペプチドを組換えにより、そのものとしてだけではなく、ヘテロロガスポリペプチドとの融合ポリペプチドとしても製造できる;ヘテロロガスポリペプチドは、シグナル配列であるか、または成熟タンパク質もしくはポリペプチドのN−末端に特異的開裂部位をもつ他のポリペプチドであってもよい。通常は、シグナル配列はベクターの構成要素であってもよく、あるいはそれはベクターに挿入されるエンコーディングDNAの一部であってもよい。シグナル配列は、アルカリ性ホスファターゼ、ペニシリナーゼ、1pp、または耐熱性エンテロトキシンIIリーダーの群から選択される原核細胞シグナル配列であってもよい。酵母の分泌のためには、シグナル配列はたとえば酵母インベルターゼリーダー、アルファ因子リーダー(サッカロミセス属およびクライベラミセス属のアルファ因子リーダーを含む;後者はU.S.Pat.No.5,010,182に記載されている)、または酸性ホスファターゼリーダー、カンジダ・アルビカンス(C.albicans)グルコアミラーゼリーダー(EP 362,179,1990年4月4日公開)、またはWO 90/13646,1990年11月15日公開に記載されたシグナルであってもよい。哺乳動物細胞発現の場合、タンパク質の分泌
を指令するために哺乳動物シグナル配列、たとえば同一種または関連種の分泌ポリペプチドに由来するシグナル配列、およびウイルス分泌リーダーを使用できる。
【0253】
発現ベクターおよびクローニングベクターは共に、1以上の選択した宿主細胞においてベクターが複製するのを可能にする核酸配列を含む。そのような配列は種々の細菌、酵母およびウイルスについて周知である。プラスミドpBR322からの複製起点は大部分のグラム陰性菌に適切であり、2muプラスミドの起点は酵母に適切であり、種々のウイルス起点(SV40、ポリオーマ、アデノウイルス、VSVまたはBPV)は哺乳動物細胞におけるクローニングベクターに有用である。
【0254】
発現ベクターおよびクローニングベクターは一般に選択遺伝子(選択マーカーとも呼ばれる)を含むであろう。一般的な選択遺伝子は、(a)抗生物質もしくは他の毒素、たとえばアンピシリン、ネオマイシン、メトトレキセートもしくはテトラサイクリンに対する耐性を付与するタンパク質、(b)栄養要求欠乏を補うタンパク質、または(c)複合培地から得られない必須栄養素を供給するタンパク質をコードする;たとえば桿菌(Bacilli)についてD−アラニンラセマーゼをコードする遺伝子である。
【0255】
哺乳動物細胞に適切な選択マーカーの例は、エンコーディング核酸の取込みに対して受容能をもつ細胞を同定しうるもの、たとえばDHFRまたはチミジンキナーゼである。野生型DHFRを用いる場合に適切な宿主細胞は、DHFR活性を欠如するCHO細胞系であり、Urlaub et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77:4216 (1980)の記載に従って調
製および増殖される。酵母に用いるのに適切な選択遺伝子は、酵母プラスミドYRp7中に存在するtrp1遺伝子である(Stinchcomb et al., Nature, 282:39 (1979); Kingsman et al., Gene, 7:141 (1979); Tschemper et al., Gene, 10:157 (1980))。trp1遺伝子は、トリプトファン中で増殖する能力を欠如する酵母変異株、たとえばATCC No.44076またはPEP4−1に対する選択マーカーを提供する(Jones, Genetics, 85:12 (1977))。
【0256】
発現ベクターおよびクローニングベクターは通常は、エンコーディング核酸配列に作動可能な状態で連結してmRNA合成を指令するプロモーターを含む。有望な種々の宿主細胞が認識するプロモーターは周知である。原核細胞宿主に使用するのに適切なプロモーターには、ベータ−ラクタマーゼおよび乳糖プロモーター系(Chang et al., Nature, 275:615 (1978); Goeddel et al., Nature, 281:544 (1979))、アルカリ性ホスファターゼ、トリプトファン(trp)プロモーター系(Goeddel, Nucleic Acids Res., 8:4057 (1980)
;EP 36,776)、およびハイブリッドプロモーター、たとえばtacプロモーター(deBoer et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 80:21-25 (1983))が含まれる。細菌系に用いるプロモーターは、エンコーディングDNAに作動可能な状態で連結したシャイン・ダルガーノ(S.D.)配列をも含むであろう。
【0257】
酵母宿主に使用するのに適切なプロモーター配列の例には、下記のものに対するプロモーターが含まれる:3−ホスホグリセリン酸キナーゼ(Hitzeman et al., J. Biol. Chem., 255:2073 (1980))、または他のグリコール溶解酵素(Hess et al., J. Adv. Enzyme Re.g., 7:149 (1968); Holland, Biochemistry, 17:4900 (1978))、たとえばエノラーゼ、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ、ヘキソキナーゼ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、グルコース−6−リン酸イソメラーゼ、3−ホスホグリセレートムターゼ、ピルビン酸キナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、ホスホグルコースイソメラーゼ、およびグルコキナーゼ。
【0258】
増殖条件により転写が制御されるという追加利点をもつ誘導プロモーターである他の酵母プロモーターは、下記のものに対するプロモーター領域である:アルコールデヒドロゲ
ナーゼ2、イソシトクロムC、酸性ホスファターゼ、窒素代謝に関連する分解酵素、メタロチオネイン、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ、ならびにマルトースおよびガラクトース利用に関与する酵素。酵母発現に使用するのに適切なベクターおよびプロモーターは、さらにEP 73,657に記載されている。
【0259】
哺乳動物宿主におけるベクターからの転写は、たとえばウイルス、たとえばポリオーマウイルス、鶏痘ウイルス(UK 2,211,504,1989年7月5日公開)、アデノウイルス(たとえばアデノウイルス2)、ウシパピローマウイルス、トリ肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、レトロウイルス、B型肝炎ウイルスおよびシミアンウイルス40(SV40)のゲノムから得られるプロモーター、ヘテロロガス哺乳動物プロモーター、たとえばアクチンプロモーターまたは免疫グロブリンプロモーター、ならびに熱ショックプロモーターにより制御される;ただし、それらのプロモーターは宿主細胞系と適合性である。
【0260】
高等真核細胞による、目的とする連続アミノ酸の区域またはポリペプチドをコードするDNAの転写は、エンハンサー配列をベクターに挿入することによって増強される。エンハンサーはDNAのシス作用エレメントであり、通常は10〜300bpであって、プロモーターに作用してそれの転写を増強する。哺乳動物遺伝子(グロビン、エラスターゼ、アルブミン、アルファ−フェトプロテインおよびインスリン)に由来する多数のエンハンサー配列が現在知られている。しかし、一般に真核細胞性ウイルスに由来するエンハンサーが用いられるであろう。例には、複製起点の末端側(late side)のSV40エンハンサー(bp 100〜270)、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、複製起点の末端側のポリオーマエンハンサー、およびアデノウイルスエンハンサーが含まれる。エンハンサーは、ベクターにコード配列の5’側または3’側でスプライス挿入できるが、好ましくはプロモーターから5’側の部位に配置される。
【0261】
真核宿主細胞(酵母、真菌、昆虫、植物、動物、ヒト、または他の多細胞生物に由来する成核細胞)に用いられる発現ベクターは、転写の終止およびmRNAの安定化に必要な配列をも含むであろう。それらの配列は一般に、真核細胞またはウイルスのDNAまたはcDNAの5’側、および場合により3’側非翻訳領域から得られる。これらの領域は、目的とする連続アミノ酸の区域またはポリペプチドをコードするmRNAの非翻訳部分にポリアデニル化フラグメントとして転写されるヌクレオチドセグメントを含む。
【0262】
連続アミノ酸の区域またはポリペプチドを組換え脊椎動物細胞培養における合成に適合させるのに適切なさらに他の方法、ベクターおよび宿主細胞は、Gething et al., Nature
293:620-625 (1981); Mantei et al., Nature, 281:4046 (1979);EP 117,06
0;およびEP 117,058に記載されている。
【0263】
4.遺伝子増幅/発現の検出
遺伝子の増幅および/または発現は、試料において直接に、たとえば一般的なサザンブロット法、mRNAの転写を定量するためのノーザンブロット法(Thomas, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77:5201-5205 (1980))、ドットブロット法(DNA分析)、またはイン
サイチューハイブリダイゼーション法により、適宜標識されたプローブを用い、本明細書に提示する配列に基づいて測定できる。あるいは、DNAデュプレックス、RNAデュプレックスおよびDNA−RNAハイブリッドデュプレックス、またはDNA−タンパク質デュプレックスを含めた特異的デュプレックスを認識しうる抗体を使用できる。これらの抗体を標識し、デュプレックスが表面に結合した状態でアッセイを実施することができ、これにより、表面にデュプレックスが形成された状態でデュプレックスに結合した抗体の存在を検出できる。
【0264】
あるいは、遺伝子発現は免疫学的方法により、たとえば細胞または組織切片を免疫組織化学的に染色し、また細胞培養物または体液をアッセイして、遺伝子生成物の発現を直接に定量することにより測定できる。試料流体の免疫組織化学的な染色および/またはアッセイに有用な抗体は、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体であってもよく、いずれかの哺乳動物において産生させることができる。抗体は、目的とする連続アミノ酸の区域もしくはポリペプチドの天然配列に対して、または本明細書に提示するDNA配列に基づく合成ペプチドに対して、または目的とする連続アミノ酸の区域もしくはポリペプチドをコードするDNAに融合した、特異的抗体エピトープをコードする外因性配列に対して産生させるのが好都合である。
【0265】
5.ポリペプチドの精製
目的とする連続アミノ酸の区域またはポリペプチドの形態は、培養培地から、または細胞溶解物から回収できる。膜結合している場合、適切な界面活性剤溶液(たとえばTriton−X 100)を用いて、または酵素開裂により、それを膜から開放することができる。目的とする連続アミノ酸の区域またはポリペプチドの発現に用いた細胞は、種々の物理的または化学的手段、たとえば凍結融解サイクル、音波処理、機械的破壊、または細胞溶解剤により破壊することができる。
【0266】
目的とする連続アミノ酸の区域またはポリペプチドを組換え細胞のタンパク質またはポリペプチドから精製することが望ましい可能性がある。以下の方法は適切な精製法の例示である:イオン交換カラム上での分画;エタノール沈殿法;逆相HPLC;シリカまたはカチオン交換樹脂、たとえばDEAE上でのクロマトグラフィー;クロマトフォーカシング;SDS−PAGE;硫酸アンモニウム沈殿法;たとえばSephadex G−75を用いるゲル濾過;IgGなどの混在物を除去するためのプロテインAセファロース(Sepharose)カラム;およびエピトープ−タグ形態を結合するための金属キレートカラム。種々のタンパク質精製法を使用でき、それらの方法は当技術分野で既知であり、たとえばDeutscher, Methods in Enzymology, 182 (1990); Scopes, Protein Purification: Principles and Practice, Springer-Verlag, ニューヨーク(1982)に記載されている。選択する精製工程(1以上)は、たとえば使用する製造方法の性質、および製造される特定の目的とする連続アミノ酸の区域またはポリペプチドに依存するであろう。
【0267】
大腸菌における目的とする連続アミノ酸の区域またはポリペプチドの発現例
目的とする連続アミノ酸の区域またはポリペプチドをコードするDNA配列を、選択したPCRプライマーによりまず増幅させる。プライマーは、選択した発現ベクター上の制限酵素部位に相応する制限酵素部位を含むべきである。種々の発現ベクターを使用できる。適切なベクターの例はpBR322(大腸菌由来;参照:Bolivar et al., Gene, 2:95 (1977))であり、これはアンピシリン耐性およびテトラサイクリン耐性に対する遺伝子を
含む。このベクターを制限酵素で消化し、脱リン酸する。次いでPCR増幅した配列をベクターにライゲートさせる。ベクターは、好ましくは下記を含むであろう:抗生物質耐性遺伝子をコードする配列、trpプロモーター、ポリhisリーダー(最初の6つのSTIIコドン、ポリhis配列、およびエンテロキナーゼ開裂部位を含む)、目的とする特定のアミノ酸配列/ポリペプチドをコードする領域、ラムダ転写ターミネーター、およびargU遺伝子。
【0268】
次いでライゲーション混合物を用いて、Sambrook et al.,前掲に記載された方法により、選択した大腸菌株を形質転換する。形質転換体をそれらがLBプレート上で生育する能力により同定し、次いで抗生物質耐性コロニーを選択する。プラスミドDNAを単離し、制限分析およびDNA配列決定により確認することができる。
【0269】
選択したクローンを液体培養培地、たとえば抗生物質を補充したLBブロス中で、一夜
増殖させることができる。続いて、一夜培養物を大規模培養に使用できる。次いで細胞を目的とする光学濃度まで増殖させる;その間に発現プロモーターが始動する。
【0270】
細胞をさらに数時間培養した後、細胞を遠心分離により回収することができる。遠心分離により得られた細胞ペレットを当技術分野で既知の各種試薬で可溶化し、可溶化した目的とするアミノ酸配列またはポリペプチドを、次いで金属キレートカラムにより、前記タンパク質を緊密に結合させる条件下で精製することができる。
【0271】
プライマーは、選択した発現ベクター上の制限酵素に相応する制限酵素部位、ならびに効率的かつ信頼性のある転写開始、金属キレートカラム上での迅速精製、およびエンテロキナーゼによるタンパク質分解分離をもたらす他の有用な配列を含むことができる。PCR増幅したポリ−Hisタグ付き配列を発現ベクターにライゲートさせ、たとえば株52に基づく大腸菌宿主(W3110 fuhA(tonA) Ion galE rpoHts(htpRts) clpP(lacIq)の形質転換に使用できる。形質転換体をまず、50mg/mlのカルベニシリンを含有するLB中、30℃で振とうしながら、O.D.600が3〜5に達するまで増幅させることができる。次いで培養物をC RAP培地(下記を混合することにより調製:3.57gの(NH
4)
2SO
4、0.71gのクエン酸ナトリウム−2H
2O、1.07gのKCl、5.36gのDifco酵母エキス、5.36gのSheffield hycase SF、水500mL中、ならびに110mMのMPOS、pH7.3、0.55%(w/v)グルコースおよび7mMのMgSO
4)中へ50〜100倍希釈し、30℃で約20〜30時間、振とうしながら増殖させる。試料を分離し、SDS−PAGE分析により発現を証明し、バルク細胞を遠心分離して細胞をペレット化する。細胞ペレットを精製およびリフォールディングまで凍結しておいた。
【0272】
0.5〜1Lの発酵物からの大腸菌ペースト(6〜10gのペレット)を、10容量(w/v)の7Mグアニジン、20mMトリス(Tris)、pH8緩衝液中に再懸濁した。固体亜硫酸ナトリウムおよびナトリウムテトラチオネートを添加して、それぞれ0.1Mおよび0.02Mの最終濃度にし、溶液を4℃で一夜撹拌する。この工程により、すべてのシステイン残基がスルフィトライゼーション(sulfitolization)で遮断された変性タンパク質が得られる。この溶液をBeckman超遠心機により40,000rpmで30分間遠心分離した。上清を3〜5容量の金属キレートカラム用緩衝液(6Mのグアニジン、20mMのトリス、pH7.4)で希釈し、0.22ミクロンのフィルターで濾過して澄明にした。それに応じて、澄明にした抽出液を、金属キレートカラム用緩衝液中で平衡化した5mil Qiagen Ni−NTA金属キレートカラムに装填した。50mMのイミダゾール(Calbiochem, Utrolグレード)を含有する他の緩衝液(Calbiochem,Utrolグレード)、pH7.4でカラムを洗浄した。250mMのイミダゾールを含有する緩衝液で前記タンパク質を溶離した。目的タンパク質を含有する画分をプールし、4℃に保存した。280nmにおけるそれの吸光度により、そのアミノ酸配列に基づいて計算した吸光係数を用いてタンパク質濃度を推定した。
【0273】
哺乳動物細胞における連続アミノ酸区域の発現
この一般例は、グリコシレーションされた形の目的とするアミノ酸配列またはポリペプチド構成要素を哺乳動物細胞において組換え発現により調製することを説明する。
【0274】
ベクターpRK5(参照:EP 307,247,1989年3月15日公開)を発現ベクターとして使用できる。場合により、Sambrook et al.,前掲に記載されたライゲーション法により、選択した制限酵素を用いてエンコーディングDNAをpRK5中へライゲートさせて、DNAを挿入することができる。
【0275】
1態様において、選択した宿主細胞は293細胞であってもよい。ヒト293細胞(ATCC CCL 1573)を、組織培養プレート内で、ウシ胎仔血清ならびに場合により栄養成分および/または抗生物質を補充したDMEMなどの培地中において、周密状態まで増殖させる。約10μgのライゲートしたベクターDNAを、VA RNA遺伝子をコードするDNA[Thimmappaya et al., Cell 31:543 (1982)]約1μgと混合し、500μlの1mMトリス−HCl、0.1mM EDTA、0.227M CaCl
2に溶解する。この混合物に、500μlの50mM HEPES(pH7.35)、280mM
NaCl、1.5mM NaPO
4を滴加し、25℃で10分間、沈殿を生成させる。沈殿を懸濁し、293細胞に添加し、37℃で約4時間、沈降させる。培養培地を吸引除去し、PBS中の20%グリセロール2mlを30秒間添加する。次いで293細胞を無血清培地で洗浄し、新鮮な培地を添加し、細胞を約5日間インキュベートする。
【0276】
トランスフェクションの約24時間後、培養培地を除去し、培養培地(単独)、または200μCi/mlの
35S−システインおよび200μCi/mlの
35S−メチオニンを含有する培養培地と交換する。12時間のインキュベーション後、コンディショニングされた培地を採集し、スピンフィルターで濃縮し、15% SDSゲルに装填する。処理したゲルを乾燥させ、選択した期間、フィルムに露光して、目的とするアミノ酸配列またはポリペプチド構成要素の存在を解明することができる。トランスフェクションされた細胞を含有する培養物をさらにインキュベートし(無血清培地中で)、選択したバイオアッセイ法で培地を検査することができる。
【0277】
別法においては、目的とするアミノ酸配列またはポリペプチド構成要素の核酸を293細胞に、Somparyrac et al., Proc. Natl. Acad. Sci., 12:7575 (1981)に記載されたデ
キストラン硫酸法により一過性導入することができる。293細胞をスピンナーフラスコ内で最大密度にまで増殖させ、ライゲートしたベクター700μgを添加する。細胞をまずスピンナーフラスコから遠心分離により濃縮し、PBSで洗浄する。DNA−デキストラン沈殿を細胞ペレット上で4時間インキュベートする。細胞を20%グリセロールで90分間処理し、組織培養培地で洗浄し、組織培養培地、5μg/mlのウシインスリンおよび0.1μg/mlのウシトランスフェリンを入れたスピンナーフラスコ内へ再導入する。約4日後、コンディショニングされた培地を遠心分離し、濾過して細胞および細胞屑を除去する。次いで、発現した目的とするアミノ酸配列またはポリペプチド構成要素を含有する試料を濃縮し、いずれかの選択した方法、たとえば透析および/またはカラムクロマトグラフィーにより精製する。
【0278】
他の態様においては、目的とするアミノ酸配列またはポリペプチド構成要素をCHO細胞において発現させることができる。目的とするアミノ酸配列またはポリペプチド構成要素は、既知の試薬、たとえばCaPO
4またはDEAE−デキストランを用いてCHO細胞中へトランスフェクションすることができる。前記のように、細胞培養物をインキュベートし、培地を培養培地(単独)、または
35S−メチオニンなどの放射性標識を含有する培地と交換することができる。目的とするアミノ酸配列またはポリペプチド構成要素の存在を判定した後、培養培地を無血清培地と交換することができる。好ましくは、培養物を約6日間インキュベートし、コンディショニングされた培地を次いで採集する。発現した目的とするアミノ酸配列またはポリペプチド構成要素を含有する培地を、次いで濃縮し、選択したいずれかの方法で精製することができる。
【0279】
エピトープタグ付きの目的とするアミノ酸配列またはポリペプチド構成要素を、宿主CHO細胞において発現させることもできる。目的とするアミノ酸配列またはポリペプチド構成要素をpRK5ベクターからサブクローニングすることができる。サブクローン挿入配列をPCR処理して、選択したエピトープタグ、たとえばポリ−hisタグと読み枠を
一致させてバキュロウイルス発現ベクター中へ融合させることができる。このポリ−hisタグ付きの目的とするアミノ酸配列またはポリペプチド構成要素の挿入配列を、次いで安定クローンの選択のためのDHFRなどの選択マーカーを含むSV40駆動ベクター中へサブクローニングすることができる。最後に、CHO細胞を(前記に従って)SV40駆動ベクターでトランスフェクションすることができる。標識化を前記に従って実施して、発現を確証することができる。発現したポリ−hisタグ付きの目的とするアミノ酸配列またはポリペプチド構成要素を含有する培養培地を、次いで濃縮し、選択したいずれかの方法、たとえばNi
2+−キレートアフィニティークロマトグラフィーにより精製することができる。
【0280】
ある態様においては、目的とするアミノ酸配列またはポリペプチド構成要素をIgG構築体(イムノアドヘシン)として発現させることができる;その際、各タンパク質の可溶性形態のためのコード配列(たとえば細胞外ドメイン)は、ヒンジ、CH2およびCH2ドメインを含むIgG1構築体定常部配列に融合され、および/またはポリ−Hisタグ付き形態である。
【0281】
PCR増幅に続いて、各DNAをCHO発現ベクター中へ、Ausubel et al., Current Protocols of Molecular Biology, Unit 3.16, John Wiley and Sons (1997)に記載され
た標準法によりサブクローニングする。CHO発現ベクターは、cDNAの好都合なシャトリングを可能にするために、適合する制限部位を目的DNAの5’側および3’側にもつように構築される。CHO細胞における発現に用いられるベクターは、Lucas et al., Nucl. Acids Res. 24:9 (1774-1779 (1996)に記載されたものであり、目的cDNAおよ
びジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)の発現を駆動するためにSV40初期プロモーター/エンハンサーを用いる。DHFR発現により、トランスフェクション後に安定に維持されたプラスミドを選択することができる。
【0282】
酵母における連続アミノ酸の区域の発現
以下の方法は、希望する目的アミノ酸配列またはポリペプチド構成要素を酵母において組換え発現させることを記載する。
【0283】
まず、連続アミノ酸の区域をADH2/GAPDHプロモーターから細胞内産生または分泌させるための酵母発現ベクターを構築する。希望する目的アミノ酸配列またはポリペプチド構成要素をコードするDNA、選択したシグナルペプチドおよび前記プロモーターを、選択したプラスミド内の適切な制限酵素部位へ挿入して、目的とするアミノ酸配列またはポリペプチド構成要素の発現を指令する。分泌のためには、連続アミノ酸の区域をコードするDNAを、ADH2/GAPDHプロモーターをコードするDNA、酵母アルファ−因子分泌シグナル/リーダー配列、およびリンカー配列(必要であれば)と共に、連続アミノ酸の区域を発現させるために、選択したプラスミド中へクローニングすることができる。
【0284】
酵母細胞、たとえば酵母株AB110を、次いで前記の発現プラスミドで形質転換し、選択した発酵培地中で培養することができる。形質転換酵母の上清を10%トリクロロ酢酸で沈殿させ、SDS−PAGEにより分離し、続いてゲルをクーマシーブルー染色で染色することにより分析できる。
【0285】
目的とする組換えアミノ酸配列またはポリペプチド構成要素は、次いで酵母細胞を発酵培地から遠心分離により除去し、選択したカートリッジフィルターで培地を濃縮することにより、単離および精製できる。目的とするアミノ酸配列またはポリペプチド構成要素を含有する濃縮物は、選択したカラムクロマトグラフィー樹脂を用いてさらに精製できる。
【0286】
バキュロウイルス感染させた昆虫細胞における連続アミノ酸の区域の発現
以下の方法は、バキュロウイルス感染させた昆虫細胞において連続アミノ酸の区域を組換え発現させることを記載する。
【0287】
連続アミノ酸の区域をコードする目的核酸を、バキュロウイルス発現ベクターに含まれるエピトープタグの上流に融合させる。そのようなエピトープタグには、ポリ−hisタグおよび免疫グロブリンタグ(たとえばIgGのFc領域)が含まれる。種々のプラスミドを使用でき、これには市販のプラスミド、たとえばpVL1393(Novagen)から誘導されたものが含まれる。要約すると、目的とするアミノ酸配列もしくはポリペプチド構成要素、または目的とするアミノ酸配列もしくはポリペプチド構成要素の希望する部分(たとえば膜貫通タンパク質の細胞外ドメインをコードする配列)を、5’および3’領域に相補的なプライマーを用いるPCRにより増幅させる。5’プライマーはフランキングする(選択した)制限酵素部位を含むことができる。次いで、選択した制限酵素で生成物を消化し、発現ベクター中へサブクローニングする。
【0288】
組換えバキュロウイルスは、前記プラスミドおよびBaculoGold(商標)ウイルスDNA(Pharmingen)をツマジロクサヨトウ(Spodoptera frugiperda)(“Sf9”)細胞(ATCC CRL 1711)内へ、リポフェクチン(GIBCO−BRLから市販)により共トランスフェクションすることによって作製できる。28℃で4〜5日間インキュベートした後、放出されたウイルスを収穫し、以後の増幅に用いる。ウイルス感染およびタンパク質発現は、O’Reilley et al., Baculovirus expression vectors: A laboratory Manual, Oxford: Oxford University Press (1994)の記載に従って実施される。
【0289】
ポリ−hisタグ付きの目的とするアミノ酸配列もしくはポリペプチド構成要素を、次いで下記に従って、たとえばNi
2+−キレートアフィニティークロマトグラフィーにより精製することができる。抽出物を組換えウイルス感染させたSf9細胞から、Rupert et al., Nature, 362:175-179 (1993)に従って調製する。要約すると、Sf9細胞を超音
波処理緩衝液(25mL Hepes,pH7.9;12.5mM MgCl
2;0.1mM EDTA;10%グリセロール;0.1% NP40;0.4M KCl)で洗浄および再懸濁し、氷上で20秒間、2回、超音波処理する。超音波処理物を遠心分離で澄明にし、上清を装填用緩衝液(50mMリン酸塩,300mM NaCl,10%グリセロール,pH7.8)で50倍希釈し、0.45μmフィルターにより濾過する。Ni
2+−NTAアガロースカラム(Qiagenから市販)をベッド容量5mLで調製し、25mLの水で洗浄し、25mLの装填用緩衝液で平衡化する。濾過した細胞抽出物をカラムに0.5mL/分で装填する。カラムをベースラインA
280まで装填用緩衝液で洗浄し、この時点で画分採集を開始する。次いでカラムを二次洗浄用緩衝液(50mMリン酸塩;300mM NaCl,10%グリセロール,pH6.0)で洗浄すると、非特異的に結合していたタンパク質が溶出する。再びA
280ベースラインに達した後、カラムを二次洗浄用緩衝液中の0−500mMイミダゾール勾配で展開する。1mL画分を採集し、SDS−PAGEおよび銀染色、またはアルカリ性ホスファターゼにコンジュゲートしたNi
2+−NTA(Qiagen)を用いるウスタンブロットにより分析する。溶出したHis
10−タグ付き配列をプールし、装填用緩衝液に対して透析する。
【0290】
あるいは、IgGタグ付き(またはFcタグ付き)アミノ酸配列の精製は、たとえばプロテインAまたはプロテインGカラムクロマトグラフィーを含む既知のクロマトグラフィー法により実施できる。
【0291】
タンパク質のイムノアドヘシン(Fcを含む)構築体は、コンディショニングされた培地から下記に従って精製できる。コンディショニングされた培地を、20mMリン酸ナト
リウム緩衝液、pH6.8中で平衡化した5mlのプロテインAカラム(Pharmacia)に送入する。装填後、カラムを平衡用緩衝液で十分に洗浄した後に100mMクエン酸、pH3.5で溶離する。275mLの1Mトリス緩衝液、pH9を入れた試験管中へ1ml画分を採集することにより、溶離したタンパク質を直ちに中和する。この高度に精製されたタンパク質を、次いで脱塩して、ポリ−Hisタグ付きタンパク質について前記に述べた保存用緩衝液に入れる。タンパク質の均質性を、SDSポリアクリルアミドゲル(PEG)電気泳動およびエドマン分解による末端アミノ酸配列決定により証明する。
【0292】
インテインベースのC−末端合成
たとえばU.S.Patent No 6,849,428、2005年2月1日発行に記載されるように、インテインは自己スプライシングRNAイントロンのタンパク質均等物であり(参照:Perler et al., Nucleic Acids Res. 22:1125-1127 (1994))、前駆タンパク質からのそれら自身の切除を触媒し、同時に、エクステイン(extein)として知られるフランキングタンパク質配列を融合させる(Perler et al., Curr. Opin. Chem. Biol. 1:292-299 (1997); Perler, F. B. Cell 92(1):1-4 (1998); Xu et al., EMBO J. 15(19):5146-5153 (1996)に概説)。
【0293】
インテインスプライシングの機序の研究により、Sce VMAインテインのN−末端におけるペプチド結合のチオール誘導開裂を利用するタンパク質精製系が開発された(Chong et al., Gene 192(2):271-281 (1997))。このインテイン仲介系を用いる精製により、C−末端チオエステルをもつ細菌発現タンパク質が生成する(Chong et al., (1997))。細胞傷害性タンパク質を単離するためと記載されている1用途においては、このC−末端チオエステルをもつ細菌発現タンパク質を、次いでN−末端システインをもつ化学合成ペプチドに、“自然化学ライゲーション(native chemical ligation)”について記載された化学的方法で融合させる(Evans et al., Protein Sci. 7:2256-2264 (1998); Muir et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:6705-6710 (1998))。
【0294】
“インテイン仲介タンパク質ライゲーション”(IPL)と呼ばれるこの技術は、タンパク質の半合成技術における重要な進歩である。しかし、ライゲーションパートナーとして化学合成ペプチドが要求されることにより、約100残基より大きな化学合成ペプチドは入手が困難であるため、全般的なIPL利用が制限されていた。
【0295】
予め定めたN−末端、たとえばシステインをもつ発現タンパク質が調製された時点で、IPL技術は著しく拡張された;たとえばU.S.Patent No.6,849,428に記載。これにより、細菌、酵母または哺乳動物細胞などの宿主細胞から発現させた1以上のタンパク質を融合させることが可能になる。限定ではないが、インテインの一例においては、C−末端またはN−末端のいずれかで開裂する改変RIR1メタノバクテリウム・サーモオートトロフィカム(Methanobacterium thermoautotrophicum)を使用する;これにより1カラム精製中に細菌発現タンパク質の放出が可能となり、こうしてプロテアーゼの必要性が完全に除かれる。
【0296】
インテイン技術は、構成要素を得るための1経路の一例である。1態様において、本発明化合物のサブユニットは、成熟キメラポリペプチドを発現および分泌しうる適切な細胞をトランスフェクションすることにより得られる;その際、それらのポリペプチドは、たとえば単離しうるC−末端インテインドメインに接したアドヘシンドメインを含む(参照:U.S.Patent No.6,849,428,Evansら,2005年2月1日発行、本明細書に援用する)。哺乳動物細胞または細菌細胞などの細胞を既知の組換えDNA技術によりトランスフェクションする。次いで、分泌されたキメラポリペプチドを、インテイン−キチン結合ドメインの場合はたとえばキチン誘導体化樹脂を用いて単離することができ(参照:U.S.Patent No.6,897,285,Xuら,20
05年5月24日発行、本明細書に援用する)、次いでチオール仲介による開裂およびこ
の時点ではC−末端側チオエステル末端付きであるアドヘシンサブユニットの放出が可能な条件下で処理する。チオエステル末端付きアドヘシンサブユニットは容易にC−末端側システイン末端付きサブユニットに変換される。
【0297】
これらのサブユニットを酸化条件下で処理して、たとえば2つの末端システイン残基間にジスルフィド結合を形成することができ、こうしてシンメトロアドヘシンが形成される。さらにこの技術を利用して、個々のアドヘシン−Fcヘテロ二量体をヘテロ二量体のFc部分間で結合を形成しうる条件下で処理することにより、シンメトロアドヘシン−Fcハイブリッドサブユニットを作製することができる。
【実施例】
【0298】
実施例1
N−末端側−S−末端をもつ免疫グロブリンFc(S−Fc)の調製
免疫グロブリン(IgG)をパパインで消化すると、2つのFabフラグメントと1つのFcフラグメントが得られる(Porter (1959) Biochem. 73, 119-126)。ヒトIgGのタンパク質分解部位は重鎖ヒンジ部のcys−5残基とcys−11残基の間である;EPKS
CDKTHT
CPPCP(Fleischman et al., Biochem J. (1963) 88, 220-227; Edelman et al. (1969) Proc. Natl. Acad. Sci. 63, 78-85)。cys−5残基は普通はヒ
トIgG軽鎖とジスルフィド結合を形成し、これは緩和な還元条件下で容易に開裂し、このためN−末端側−S−末端をもつFc様分子(S−Fc)の理想的な候補となる。
【0299】
したがって、シグナルペプチドがそれのC−末端においてペプチド結合によりcys−5で始まるFcドメインのN−末端、
CDKTHTCPPCP、に連結したものからなるIgG1プレ−Fcキメラポリペプチド(
図35A)をコードする発現ベクターで、宿主細胞をトランスフェクションした。用いたヘテロロガスシグナルペプチドは、N−末端システインをもつタンパク質から選択される(パートi)。したがって、細胞性シグナルペプチダーゼにより開裂すると、N−末端にcys−5をもつ成熟S−Fcタンパク質が生成するであろう(パートii)。
【0300】
図35AのIgG1前駆体ポリペプチドの配列をSEQ ID NO:32、SEQ ID NO:33およびSEQ ID NO:34に示す。
図35Aの成熟IgG1ポリペプチドの配列をSEQ ID NO:35に示す。実施例1〜5に記載した方法により調製した他の成熟IgG1ポリペプチドをSEQ ID NO:36〜SEQ ID NO:46に示す。
【0301】
シグナルペプチドがそれのC−末端においてペプチド結合によりcys−4で始まるFcドメインのN−末端、
CCVECPPCP、に連結したものからなるIgG2プレ−Fcキメラポリペプチド(
図35B)をコードする発現ベクターで、宿主細胞をトランスフェクションした。用いたヘテロロガスシグナルペプチドは、N−末端システインをもつタンパク質から選択される(パートi)。したがって、細胞性シグナルペプチダーゼにより開裂すると、N−末端にcys−4をもつ成熟S−Fcタンパク質が生成するであろう(パートii)。
【0302】
図35BのIgG2前駆体ポリペプチドの配列をSEQ ID NO:50、SEQ ID NO:51およびSEQ ID NO:52に示す。
図35Bの成熟IgG2ポリペプチドの配列をSEQ ID NO:53に示す。実施例1〜5に記載した方法により調製した他の成熟IgG2ポリペプチドをSEQ ID NO:54〜SEQ ID NO:67に示す。
【0303】
シグナルペプチドがそれのC−末端においてペプチド結合によりcys−13で始まるFcドメインのN−末端、
CPRCP、に連結したものからなるIgG3プレ−Fcキメラポリペプチド(
図35C)をコードする発現ベクターで、宿主細胞をトランスフェクションした。用いたヘテロロガスシグナルペプチドは、N−末端システインをもつタンパク質から選択される(パートi)。したがって、細胞性シグナルペプチダーゼにより開裂すると、N−末端にcys−13をもつ成熟S−Fcタンパク質が生成するであろう(パートii)。
【0304】
図35CのIgG3前駆体ポリペプチドの配列をSEQ ID NO:71、SEQ ID NO:72およびSEQ ID NO:73に示す。
図35Cの成熟IgG2ポリペプチドの配列をSEQ ID NO:74に示す。実施例1〜5に記載した方法により調製した他の成熟IgG2ポリペプチドをSEQ ID NO:75〜SEQ ID NO:82に示す。
【0305】
シグナルペプチドがそれのC−末端においてペプチド結合によりcys−8で始まるFcドメインのN−末端、
CPSCP、に連結したものからなるIgG4プレ−Fcキメラポリペプチド(
図35D)をコードする発現ベクターで、宿主細胞をトランスフェクションした。用いたヘテロロガスシグナルペプチドは、N−末端システインをもつタンパク質から選択される(パートi)。したがって、細胞性シグナルペプチダーゼにより開裂すると、N−末端にcys−8をもつ成熟S−Fcタンパク質が生成するであろう(パートii)。
【0306】
図35DのIgG4前駆体ポリペプチドの配列をSEQ ID NO:86、SEQ ID NO:87およびSEQ ID NO:88に示す。
図35Cの成熟IgG2ポリペプチドの配列をSEQ ID NO:89に示す。実施例1〜5に記載した方法により調製した他の成熟IgG4ポリペプチドをSEQ ID NO:90〜SEQ ID NO:97に示す。
【0307】
適切な宿主細胞には、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(メリーランド州ロックビル)から入手した293ヒト胚細胞(ATCC CRL−1573)およびCHO−K1ハムスター卵巣細胞(ATCC CCL−61)が含まれる。細胞を37℃で、空気95%:二酸化炭素5%の雰囲気において増殖させる。293細胞は、最小必須培地(イーグル)中に維持される:2mMのL−グルタミンおよびEarleのBSSを含み、1.5g/Lの炭酸水素ナトリウム、0.1mMの非必須アミノ酸、および1.0mMのピルビン酸ナトリウム、90%;ウシ胎仔血清10%を含有するように調整。CHO−K1細胞は、HamのF12K培地中に維持される:2mMのL−グルタミンを含み、1.5g/Lの炭酸水素ナトリウム、90%;ウシ胎仔血清10%を含有するように調整。他の適切な宿主細胞には、下記のものが含まれる:CV1サル腎細胞(ATCC CCL−70)、COS−7サル腎細胞(ATCC CRL−1651)、VERO−76サル腎細胞(ATCC CRL−1587)、HELAヒト子宮頚細胞(ATCC CCL−2)、W138ヒト肺細胞(ATCC CCL−75)、MDCKイヌ腎細胞(ATCC CCL−34)、BRL3Aラット肝細胞(ATCC CRL−1442)、BHKハムスター腎細胞(ATCC CCL−10)、MMT060562マウス乳腺細胞(ATCC CCL−51)、およびヒトCD8
+ Tリンパ球(U.S.S.N.08/258,152に記載、その全体を本明細書に援用する)。
【0308】
適切な発現ベクターの例は、プラスミドpSA(SEQ ID NO:1)である。プラスミドpSAは下記のDNA配列エレメントを含む:1)pBluescriptIIKS(+)(ヌクレオチド912−2941/1−619,GenBank寄託No.X52327)、2)ヒトサイトメガロウイルスプロモーター、エンハンサー、および第1
エキソンスプライスドナー(ヌクレオチド63−912,GenBank寄託No.K03104)、3)ヒトアルファ1−グロビン第2エキソンスプライスアクセプター(ヌクレオチド6808−6919,GenBank寄託No.J00153)、4)SV40
T抗原ポリアデニル化部位(ヌクレオチド2770−2533,Reddy et al. (1978) Science 200, 494-502)、および5)SV40複製起点(ヌクレオチド5725−557
8,Reddy et al., 同書)。目的ポリペプチドの発現のために、そのポリペプチドをコー
ドするEcoRI−BglII DNAフラグメントを、プラスミドpSAのそれぞれ1,608および1,632に位置するEcoRI制限部位とBglII制限部位の間に挿入する。他の適切な発現ベクターには、下記のものが含まれる:プラスミドpSVeCD4DHFRおよびpRKCD4(U.S.Pat.No.5,336,603)、プラスミドpIK.1.1(U.S.Pat.No.5,359,046)、プラスミドpVL−2(U.S.Pat.No.5,838,464)、プラスミドpRT43.2F3(U.S.S.N.08/258,152に記載、その全体を本明細書に援用する)、ならびにプラスミドpCDNA3.1(+)(Invitrogen,Inc.)。
【0309】
適切な選択マーカーには、Tn5トランスポゾンネオマイシンホスホトランスフォラーゼ(NEO)遺伝子(Southern and Berg (1982) J. Mol. Appl. Gen. 1, 327-341)、およびジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)cDNA(Lucas et al. (1996) Nucl. Acids Res. 24, 1774-1779)が含まれる。NEO遺伝子を含む適切な発現ベクターの一例はプラ
スミドpSA−NEOであり、これはSEQ ID NO:2をEcoRIおよびBglIIで消化することにより調製した第1DNAフラグメントと、SEQ ID NO:1をEcoRIおよびBglIIで消化することにより調製した第2DNAフラグメントとをライゲートさせることにより構築される。SEQ ID NO:2はNEO遺伝子(ヌクレオチド1551−2345,Genbank寄託No.U00004)を含み、その前に転写開始配列を含む(Kozak (1991) J. Biol. Chem, 266, 19867-19870)。NEO遺伝子およびDHFR cDNAを含む適切な他の発現ベクターの例は、プラスミドpSVe−NEO−DHFRであり、これはSEQ ID NO:2をEcoRIおよびBglIIで消化することにより調製した第1DNAフラグメントと、pSVeCD4DHFRをEcoRIおよびBglIIで消化することにより調製した第2DNAフラグメントとをライゲートさせることにより構築される。プラスミドpSVe−NEO−DHFRには、NEO遺伝子およびDHFR cDNAの発現を誘導するためにSV40初期プロモーター/エンハンサーが用いられる。他の適切な選択マーカーには、XPGT遺伝子(Mulligan and Berg (1980) Science 209, 1422-1427)およびハイグロマイシン耐性遺伝子(Sugden
et al. (1985) Mol. Cell. Biol. 5, 410-413)が含まれる。
【0310】
ヒトIgG1のDNA配列は、Ellison et al. (1982) Nuc. Acids Res. 10, 4071-4079)(Genbank寄託No.Z17370)に記載されている。
シグナルペプチドの適切な例は、ソニックヘッジホッグ(SHH)(GenBank寄託No.NM
000193)、インターフェロンα−2(IFN)(GenBank寄託No.NP
000596)、およびコレステロールエステルトランスフェラーゼ(CETP)(GenBank寄託No.NM
000078)である。他の適切な例には、下記のものが含まれる:インディアンヘッジホッグ(Indian hedgehog)(Genbank寄託No.NM
002181)、デザートヘッジホッグ(desert hedgehog)(Genbank寄託No.NM
021044)、IFNα−1(Genbank寄託No.NP
076918)、IFNα−4(Genbank寄託No.NM
021068)、IFNα−5(Genbank寄託No.NM
002169)、IFNα−6(Genbank寄託No.NM
021002)、IFNα−7(Genbank寄託No.NM
021057)、IFNα−8(Genbank寄託No.NM
002170)、IFNα−10(Genbank寄託No.NM
002171)、IFNα−13(Genbank寄託No.NM_006900)、IFN
α−14(Genbank寄託No.NM
002172)、IFNα−16(Genbank寄託No.NM
002173)、IFNα−17(Genbank寄託No.NM
021268)およびIFNα−21(Genbank寄託No.NM
002175)。
【0311】
適切な発現ベクターは、EcoRIおよびBglIIで消化することにより調製した挿入フラグメントおよびベクターフラグメントのライゲーションにより構築される。非増幅発現のために、プラスミドpSHH−Fc5(SHHシグナル)はSEQ ID NO:3およびSEQ ID NO:1を用いて構築され、プラスミドpIFN−Fc5(IFNシグナル)はSEQ ID NO:4およびSEQ ID NO:1を用いて構築され、プラスミドpCETP−Fc5(CETPシグナル)はSEQ ID NO:3およびSEQ ID NO:1を用いて構築される。増幅発現のために、プラスミドpSHH−Fc5−DHFRはSEQ ID NO:3およびpSVeCD4DHFR(U.S.Patent No.5,336,603)を用いて構築され、pIFN−Fc5−DHFRはSEQ ID NO:4およびpSVeCD4DHFRを用いて構築され、pCETP−Fc5−DHFRはSEQ ID NO:5およびpSVeCD4DHFRを用いて構築される。
【0312】
ヒトIgG1 Fcポリペプチドに適切な発現ベクターは、Hind IIIおよびEagIで消化することにより調製した挿入フラグメントとHind IIIおよびPspOM1で消化することにより調製したベクターフラグメントのライゲーションにより構築された。プラスミドpCDNA3−SHH−IgG1−Fc(SHHシグナル)はSEQ
ID NO:29およびpCDNA3.1(+)を用いて構築され、プラスミドpCDNA3−IFN−IgG1−Fc(IFNシグナル)はSEQ ID NO:30およびpCDNA3.1(+)を用いて構築され、プラスミドpCDNA3−IgG1−Fc(CETPシグナル)はSEQ ID NO:31およびpCDNA3.1(+)を用いて構築された。
【0313】
ヒトIgG2 Fcポリペプチドに適切な発現ベクターは、Hind IIIおよびEagIで消化することにより調製した挿入フラグメントとHind IIIおよびPspOM1で消化することにより調製したベクターフラグメントのライゲーションにより構築される。プラスミドpCDNA3−SHH−IgG2−Fc(SHHシグナル)はSEQ
ID NO:47およびpCDNA3.1(+)を用いて構築され、プラスミドpCDNA3−IFN−IgG2−Fc(IFNシグナル)はSEQ ID NO:48およびpCDNA3.1(+)を用いて構築され、プラスミドpCDNA3−IgG2−Fc(CETPシグナル)はSEQ ID NO:49およびpCDNA3.1(+)を用いて構築される。
【0314】
ヒトIgG3 Fcポリペプチドに適切な発現ベクターは、Hind IIIおよびEagIで消化することにより調製した挿入フラグメントとHind IIIおよびPspOM1で消化することにより調製したベクターフラグメントのライゲーションにより構築される。プラスミドpCDNA3−SHH−IgG3−Fc(SHHシグナル)はSEQ
ID NO:68およびpCDNA3.1(+)を用いて構築され、プラスミドpCDNA3−IFN−IgG3−Fc(IFNシグナル)はSEQ ID NO:69およびpCDNA3.1(+)を用いて構築され、プラスミドpCDNA3−IgG3−Fc(CETPシグナル)はSEQ ID NO:70およびpCDNA3.1(+)を用いて構築される。
【0315】
ヒトIgG4 Fcポリペプチドに適切な発現ベクターは、Hind IIIおよびEagIで消化することにより調製した挿入フラグメントとHind IIIおよびPsp
OM1で消化することにより調製したベクターフラグメントのライゲーションにより構築される。プラスミドpCDNA3−SHH−IgG4−Fc(SHHシグナル)はSEQ
ID NO:83およびpCDNA3.1(+)を用いて構築され、プラスミドpCDNA3−IFN−IgG4−Fc(IFNシグナル)はSEQ ID NO:84およびpCDNA3.1(+)を用いて構築され、プラスミドpCDNA3−IgG4−Fc(CETPシグナル)はSEQ ID NO:85およびpCDNA3.1(+)を用いて構築される。
【0316】
1態様においては、Graham et al. (1977) J. Gen. Virol. 36, 59-74のリン酸カルシ
ウム法により細胞をトランスフェクションする。DNA混合物(10マイクログラム)を、0.5mlの1mMトリス−HCl、0.1mM EDTA、および227mM CaCl
2に溶解する。このDNA混合物は、発現ベクターDNA、選択マーカーDNA、およびVA RNA遺伝子をコードするDNA(Thimmappaya et al. (1982) Cell 31, 543-551)を含有する(10:1:1の比率で)。この混合物に、0.5mLの50mM Hepes(pH7.35)、280mM NaCl、および1.5mM NaPO
4を滴加する。DNA沈殿を25℃で10分間生成させ、次いで懸濁し、100mmのプラスチック培養皿上で周密状態まで増殖させた細胞に添加する。37℃で4時間後、培養培地を吸引し、PBS中の20%グリセロール2mlを0.5分間添加する。次いで細胞を無血清培地で洗浄し、新鮮な培養培地を添加し、細胞を5日間インキュベートする。
【0317】
他の態様においては、Somparyrac et al. (1981) Proc. Nat. Acad. Sci. 12, 7575-7579のデキストラン硫酸法により細胞を一過性トランスフェクションする。細胞をスピンナーフラスコ内で最大密度にまで増殖させ、遠心分離により濃縮し、PBSで洗浄する。DNA−デキストラン沈殿を細胞ペレット上でインキュベートする。37℃で4時間後、DNA−デキストランを吸引し、PBS中の20%グリセロールを1.5分間添加する。次いで細胞を無血清培地で洗浄し、5マイクログラム/mlのウシインスリンおよび0.1マイクログラム/mlのウシトランスフェリングを含む新鮮な培養培地を入れたスピンナーフラスコ内へ再導入し、細胞を4日間インキュベートする。いずれかの方法でトランスフェクションした後、コンディショニングされた培地を遠心分離し、濾過して宿主細胞および細胞屑を除去する。次いで、S−Fcドメインを含む試料を濃縮し、いずれかの選択した方法、たとえば透析および/またはカラムクロマトグラフィーにより精製する(下記を参照)。
【0318】
細胞培養上清中のS−Fcを同定するために、トランスフェクションの24時間後に培養培地を分離し、それぞれ200マイクロCi/mlの
35S−メチオニンおよび
35S−システインを含有する培養培地と交換する。12時間のインキュベーション後、遠心分離して宿主細胞および細胞屑を除去することにより、コンディショニングされた培地を採集し、スピン透析フィルターで濃縮する。標識された上清を、添加抗体の不存在下でプロテインAセファロースビーズを用いる免疫沈降法により分析する。沈降したタンパク質を、β-メルカプトエタノールにより還元して、または還元せずに、7.5%ポリアクリル
アミド−SDSゲル上で分析する。処理したゲルを乾燥させ、x線フィルムに露光して、S−Fcドメインの存在を明らかにする。
【0319】
非増幅発現のために、プラスミドpSHH−Fc−5、pIFN−Fc−5およびpCETP−Fc−5をヒト293細胞内へ(Graham et al., J. Gen. Virol. 36:59 74 (1977))、効率の高い方法(Gorman et al., DNA Prot. Eng. Tech. 2:3 10 (1990))によりトランスフェクションする。培地を無血清のものに交換し、5日目まで毎日収穫する。S−Fcタンパク質を、細胞曝露した上清からプロテインA−セファロースCL−4B(Pharmacia)により精製する。溶出したS−Fcタンパク質をCentricon−30(Amicon)によりPBS中へ緩衝液交換し、0.5mlに濃縮し、Millex
−GV(Millipore)を用いて無菌濾過し、4℃に保存する。
【0320】
非増幅発現のために、プラスミドpCDNA3−SHH−IgG1−Fc、pCDA3−IFN−IgG1−FcおよびpCDA−3−CETP−IgG1−Fcをヒト293細胞内へ(Graham et al., J. Gen. Virol. 36:59 74 (1977))、効率の高い方法(Gorman et al., DNA Prot. Eng. Tech. 2:3 10 (1990))によりトランスフェクションする。培地
を無血清のものに交換し、5日目まで毎日収穫する。S−Fcタンパク質を、細胞曝露上清からプロテインA−セファロースCL−4B(Pharmacia)により精製する。溶出したS−Fcタンパク質をCentricon−30(Amicon)により、PBS中へ緩衝液交換し、0.5mlに濃縮し、Millex−GV(Millipore)を用いて無菌濾過し、4℃に保存する。
【0321】
図52は、293腎細胞におけるN−末端側−S−末端をもつヒトIgG1 Fcシンメトロアドヘシンサブユニットの発現を示す。列1〜6および列7〜12は、それぞれ
図35A(ii)および
図36A(ii)のIgG1 Fcポリペプチドを示す。細胞上清:列1、3、5、7、9および11;細胞溶解物:列2、4、6、8、10および12。用いたシグナル配列:SHH(列1、2、7および8);IFNA(列3、4、9、10);CETP(列5、6、11および12)。
【0322】
図53は、293腎細胞におけるヒトIgG1 Fcシンメトロアドヘシンサブユニットの発現を示す。列1〜2、3〜4および列5〜6は、それぞれ
図35A(ii)、
図36A(ii)および
図37B(ii)のIgG1 Fcポリペプチドを示す。細胞上清:列1〜6。用いたシグナル配列:SHH(列1〜6)。
【0323】
図54は、293腎細胞に発現したヒトIgG1 Fcシンメトロアドヘシンサブユニットの精製を示す。列2および8は、それぞれ
図36Aおよび
図35AのIgG1 Fcポリペプチドを示す。列1〜7:
図36AのIgG1 Fcポリペプチドに関するプロテインA−セファロースカラム画分。
【0324】
図55は、
図54に示したプロテインA−精製ヒトIgG1 Fcシンメトロアドヘシンサブユニットのチオール−セファロース結合を示す。列1〜3および列4〜6は、それぞれ
図35Aおよび
図36AのヒトIgG1 Fcポリペプチドを示す。列1および4:出発材料;列2および5:チオール−セファロース通過画分;列3および6:チオール−セファロース結合画分。
【0325】
図35Aおよび
図36Aの2つのIgG1 Fcポリペプチドの質量分析(MALDI)による分析により、それぞれ54,552.85および53,173.43ダルトンの平均分子質量が明らかである。それらの分子質量それぞれがFc二量体に相応すると推定して、2つのポリペプチド間の見掛けの分子質量差(1,379.4ダルトン)は分子質量の推定差(1,371.5)と良好に一致する(0.6%の偏差)。
【0326】
増幅発現のために、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞を、DHFR cDNAを共発現するジシストロンベクターpSHH−Fc5−DHFR、pIFN−Fc−5−DHFRおよびpCETP−Fc−5−DHFRでトランスフェクションする。L. Chasin(Columbia University)が開発したCHO−K1 DUX B
11細胞にプラスミドをリポフェクションにより導入し、無GHT培地中での増殖について選択する(Chisholm (1996),哺乳動物細胞における高効率の遺伝子伝達: Glover, D M,
Hames, B D. DNA Cloning vol 4. Mammalian systems. Oxford Univ. Press, pp 1-41)
。約20の未増幅クローンをランダムに選択し、96ウェルプレートに再播種する。3日後に各ウェルに蓄積したS−Fcタンパク質の定量のためのELISA、およびウェル当
たりの可視細胞数の代理マーカーとしての蛍光色素Calcien AMを用いて、各コロニーの比生産性をモニターする。これらのデータに基づいて、漸増濃度のメトトレキセートの存在下でさらに増幅させるために、幾つかの未増幅クローンを選択する。10、50および100nMのメトトレキセートで生存した個々のクローンを選択し、生産性スクリーニングのために96ウェルプレートへ移す。再現性をもって高い比生産性を示す適切なクローンをT−フラスコ内で増殖させ、スピンナー培養に播種するために使用する。数代の継代後、懸濁適合した細胞を、各種ホルモンおよびタンパク質水解物を補充したGHT含有−無血清培地での生産培養に播種する。収穫したS−Fcタンパク質を含有する細胞培養液を、プロテインA−セファロースCL−4Bにより精製する。
【0327】
実施例2
N−末端側−X−末端をもつ免疫グロブリンFc(X−Fc)の調製
セレノシステイン(sec)は、リボソーム仲介タンパク質合成に際して21番目に取り込まれるアミノ酸である(Zinoni et al. (1986) Proc. Natl Acad. Sci. 83, 4650-4654; Chambers et al. (1986) EMBO J. 5, 1221-1227)。このプロセスは複雑であり、シス
テイン取込みとは異なり、UGA停止コドンを解読するためのmRNAセレノシステイン挿入エレメントを必要とする。タンパク質半合成により、システイン(cys)および/またはセレノシステイン(sec)で始まるN−末端側−X−末端をもつFc様の分子(X−Fc)を調製する手段が得られる。
【0328】
したがって、シグナルペプチドがそれのC−末端においてペプチド結合によりcys−11で始まるFcドメインのN−末端、CDKTHT
CPPCP(
図36A)、およびcys−14で始まるFcドメインのN−末端、CDKTHTCPP
CP(
図36B)、に連結したものからなるプレ−Fcキメラポリペプチドをコードする構築体で、宿主細胞をトランスフェクションする。用いられるヘテロロガスシグナルペプチドは、N−末端システインをもつタンパク質から選択される(パートi)。したがって、細胞性シグナルペプチダーゼにより開裂されると、N−末端にcys−11をもつ成熟S−Fcが生成するであろう(パートii)。次いで、自然化学ライゲーションを利用して、N−末端にcys−5またはsec−5をもつ、
XDKTHTCPPCP、成熟X−Fcタンパク質を調製する(パートiii)。
【0329】
図36AのIgG1前駆ポリペプチドの配列をSEQ ID NO:101、SEQ ID NO:102、およびSEQ ID NO:103に示す。
図36Aの成熟IgG1ポリペプチドの配列をSEQ ID NO:104に示す。
図36BのIgG1前駆ポリペプチドの配列をSEQ ID NO:109、SEQ ID NO:110、およびSEQ ID NO:111に示す。
図36Bの成熟IgG1ポリペプチドの配列をSEQ ID NO:112に示す。
【0330】
したがって、シグナルペプチドがそれのC−末端においてペプチド結合によりcys−14で始まるFcドメインのN−末端、CDKTHTCPPC
P、に連結したものからなるプレ−Fcキメラポリペプチド(
図36B)をコードする構築体で、宿主細胞をトランスフェクションする。用いられるヘテロロガスシグナルペプチドは、N−末端システインをもつタンパク質から選択される(パートi)。したがって、細胞性シグナルペプチダーゼにより開裂されると、N−末端にcys−11をもつ成熟S−Fcが生成するであろう(パートii)。次いで、自然化学ライゲーションを用いて、N−末端にcys−11またはsec−11、
XPPCPをもつ成熟X−Fcタンパク質を調製する(パートiii)。
【0331】
実施例1に記載した方法を用いて、N−末端にcys−11およびcys−14をもつS−Fcタンパク質をまず調製する。S−Fcタンパク質とペプチドFc−A(5−11
:cys−asp−lys−thr−his−thr)またはS−Fcタンパク質とペプチドFc−B(5−11:sec−asp−lys−thr−his−thr)の自然化学ライゲーションを行なう。挿入配列とEcoRIおよびBglIIで消化することにより調製したベクターフラグメントのライゲーションにより、適切な発現ベクターを構築する。非増幅発現のために、プラスミドpSHH−Fc11(SHHシグナル)はSEQ ID NO:6およびSEQ ID NO:1を用いて構築され、プラスミドpIFN−Fc11(IFNシグナル)はSEQ ID NO 7およびSEQ ID NO:1を用いて構築され、プラスミドpCETP−Fc11(CETPシグナル)はSEQ ID
NO:8およびSEQ ID NO:1を用いて構築される。増幅発現のために、プラスミドpSHH−Fc11−DHFRはSEQ ID NO:6およびpSVeCD4DHFRを用いて構築され、プラスミドpIFN−Fc11−DHFRはSEQ ID NO:7およびpSVeCD4DHFRを用いて構築され、プラスミドpCETP−Fc11−DHFRはSEQ ID NO:8およびpSVeCD4DHFRを用いて構築される。
【0332】
ヒトIgG1 Fcに適切な発現ベクターは、Hind IIIおよびEagIで消化した挿入フラグメントとIIIおよびPspOM1で消化したベクターフラグメントのライゲーションにより構築される。プラスミドpCDNA3−SHH−IgG1−Fc11(SHHシグナル)はSEQ ID NO:98およびpCDNA3.1(+)を用いて構築され、プラスミドpCDNA3−IFN−IgG1−Fc11(IFNシグナル)はSEQ ID NO:99およびpCDNA3.1(+)を用いて構築され、プラスミドpCDNA3−IgG1−Fc11(CETPシグナル)はSEQ ID NO:100およびpCDNA3.1(+)を用いて構築される。プラスミド pCDNA3−SHH−IgG1−Fc14(SHHシグナル)はSEQ ID NO:106およびpCDNA3.1(+)を用いて構築され、プラスミドpCDNA3−IFN−IgG1−Fc14(IFNシグナル)はSEQ ID NO:107およびpCDNA3.1(+)を用いて構築され、プラスミドpCDNA3−IgG1−Fc14(CETPシグナル)はSEQ ID NO:108およびpCDNA3.1(+)を用いて構築される。
【0333】
自然化学ライゲーションの一般原理はU.S.Pat.No.6,184,344に記載されており、その全体を本明細書に援用する。ペプチドFc−AおよびFc−BはTAMPAL樹脂を用いて合成でき、これから目的チオエステルを容易に得ることができる。側鎖保護基を脱保護した後、得られたC−末端活性化ペプチドをさらに修飾せずに自然化学ライゲーションに用いる。二官能性ペプチドの環化または重合を阻止するために、スルフヒドリル部分(ペプチドFc−A)およびセレノヒドリル部分(ペプチドFc−B)を可逆的にMscで遮断する。
【0334】
ペプチド合成を手動で固相法により、Boc化学のためのインサイチュー中和/HBTU活性化法を用いて実施する(Schnolzer et al. (1992) Int. J. Pept. Protein Res. 40, 180-193)。各結合工程の後、残存する遊離アミンを定量ニンヒドリンアッセイ法で測定することにより収率を判定する(Sarin et al. (1981) Anal. Biochem. 117, 147-157)。
側鎖保護されたアミノ酸は、Boc−Asp(O−シクロヘキシル)−OH、Boc−Cys(4−メチルベンジル)−OH、Boc−Lys(2−Cl−Z)−OH、およびBoc−Thr(ベンジル)−OHである。鎖の組立てが完了した後、ペプチドを脱保護し、無水HFにより0℃で1時間、スカベンジャーとして4%アニソールを用いて処理することにより、樹脂から開裂させる。
【0335】
ペプチドFc−AおよびFc−Bをトリチル−会合メルカプトプロピオン酸ロイシン(trityl−associated mercaptopropionic acid
leucine)(TAMPAL)樹脂上で合成して、C−末端MPAL−活性チオエ
ステルを得る(Hackeng et al. (1999) Proc. Natl. Acad. Sci. 96, 10068-10073)。このチオエステルペプチドのN−末端cys/sec残基を、2−(メチルスルホニル)エチルカーボネート(Msc)基により、最小容量のジメチルホルムアミド/5%ジイソプロピルエチルアミンに溶解した活性Mscニトロフェノールエステルの2時間反応(10倍過剰)で保護する。チオエステル活性ペプチドを脱保護し、TAMPAL樹脂から開裂させ、HPLC精製し、凍結乾燥させ、使用時まで−20℃に保存する。分離用逆相HPLCは、Vydac C−18カラム(10マイクロメートル,1.0cmx25cm)を用いて実施される。結合したペプチドを、H
20/10%トリフルオロ酢酸中のアセトニトリル直線勾配により溶離する。
【0336】
この精製C−末端S−Fcタンパク質から出発して、Msc−NH−cys
5−thr
10−α−チオエステルペプチド(Fc−A)またはMsc−NH−sec
5−thr
10−α−チオエステルペプチド(Fc−B)との自然化学ライゲーションを、先に記載された非変性条件下で実施する(Evans et al. (1999) J. Biol. Chem. 274, 3923-3926)。
これらのチオエステル活性化ペプチドを過剰モルで、調製したばかりのS−Fcタンパク質(出発濃度1〜200マイクロモル濃度)と混合する。この溶液をCentriprep 3/30装置(Millipore,マサチュセッツ州)により濃縮し、次いでS−Fcタンパク質についてはCentricon 3/10装置により最終濃度0.15〜1.2mMに濃度する。ライゲーション物を4℃で一夜インキュベートし、SDS−page電気泳動により視覚化する。自然化学ライゲーションの後、N−末端Msc保護基をpH13で短時間のインキュベーション(<5分)により除去する。X−Fc生成物を精製して、実施例1の方法を用いてプロテインAセファロースによるアフィニティークロマトグラフィーにより未反応ペプチドを除去する。
【0337】
図36Aの自然ライゲーション生成物の配列をSEQ ID NO:105に示す。
図36Bの自然ライゲーション生成物の配列をSEQ ID NO:113に示す。
実施例3
C−末端側−X−末端をもつ免疫グロブリンFc(Fc−X)の調製
IgGは2つの存在形態で発現する:可溶性抗体分子および細胞結合−B細胞受容体。両形態とも単一メッセンジャーRNAから、オータナティブスプライシングにより2つの追加エキソンがIgG重鎖コード領域に付加された結果として生成する(Tyler et al. (1982) Proc. Natl. Acad. Sci. 79, 2008-2012; Yamawaki-Kataoka et al. (1982) Proc. Natl. Acad. Sci. 79, 2623-2627)。付加された第1エキソン(M1エキソン)は18個
のアミノ酸の区域ELQLEESCAEAQDGELDGをコードする;これはIgGを細胞表面にフレキシブルに繋ぎ留め、このためこれはC−末端側−X−末端をもつ新規なFc様分子(Fc−X)について良好な選択肢となる。M1ドメインのC−末端gly−18残基も、C−末端活性チオエステルの調製に用いるFc−インテイン融合タンパク質の調製に好適である。インテイン自動開裂反応に伴ってチオエステル中間体が生成し、これに自然化学ライゲーションによりC−末端にシステインまたはセレノシステインが容易に付加できる。
【0338】
したがって、M1ドメインがそれのC−末端ELQLEESCAEAQDGELD
Gにおいてペプチド結合により自己スプライシングインテインのN−末端の自動開裂部位に連結したプレ−Fc−インテインキメラポリペプチド(
図37A)またはM1ドメインの一部ELQLEESC(
図37B)を含むFcタンパク質をコードする発現ベクターで、宿主細胞をトランスフェクションする。Fc−Xタンパク質がN−末端側−X−末端をもたないことを確実にするために、細胞性シグナルペプチダーゼによりリジン残基の前で開裂するヘテロロガスシグナルペプチドを用いる(パートi)。こうして、細胞性シグナルペプチダーゼによる開裂により、N−末端にlys−7をもつ、EPKSCD
KTHTCPPCP、Fc−インテイン融合タンパク質が得られるであろう(パートii)。タンパク
質スプライシングによりインテインドメインが切除されると、Fc−チオエステル中間体が得られる(パートiii)。最後に、このFc−チオエステルと遊離システインおよび/またはセレノシステインとの自然化学ライゲーションを利用して、C−末端側−X−末端ELQLEESCAEAQDGELDG
XをもつFc−Xタンパク質を調製する(パート(iv)。
【0339】
図37AのIgG1前駆体ポリペプチドの配列をSEQ ID NO:116およびSEQ ID NO:117に示す。
図37Aの成熟および修飾IgG1ポリペプチドの配列をSEQ ID NO:118〜SEQ ID NO:120に示す。
図37BのIgG1前駆体ポリペプチドの配列をSEQ ID NO:123およびSEQ ID NO:124に示す。
図37Bの成熟IgG1ポリペプチドの配列をSEQ ID NO:125に示す。
【0340】
lys−7をN−末端にもつFc−インテイン融合タンパク質を実施例1に記載した方法により調製する。最初の精製工程は、プロテインAセファロースの代わりにキチン樹脂を用いるアフィニティークロマトグラフィーにより実施される。樹脂から開裂させた後、活性Fc−チオエステル中間体をそのままシステインおよび/またはセレノシステインとの自然ライゲーションに用いる。
【0341】
ヒトIgG1のM1膜ドメインに適切なDNA配列は、Strausberg et. al. (2002) Proc. Natl. Acad. Sci. 99, 16899-16903に記載されている(GenBank寄託No.BC019046)。
【0342】
シグナルペプチドの適切な例は、CD2 T細胞表面糖タンパク質(CD2)(GenBank寄託No.NM
001767)、およびCD4 T細胞表面糖タンパク質(CD4)(GenBank寄託No.NP
000616)である。
【0343】
自己スプライシングインテインの適切な例は、
メタノバクテリウム・サーモオートトロフィカム(
Methanobacterium thermoautotrophicum)リボヌクレオチドレダクターゼラージサブユニット(MthRIR1)(Genbank寄託No.AE000845)である。インテイン自動開裂反応をFc−インテイン融合ジャンクションに限定するために、位置−1のproをglyに交換し、かつ位置134のasnをalaに交換することにより、N−末端開裂活性のみをもつMthRR1インテインバリアントを調製する(Evans et al. (1999) J. Biol. Chem. 274, 3923-3926)。さらに、アフィニティークロマトグラフィーによるFc−インテインキメラポリペ
プチドの精製を促進するために、バシラス・サーキュランス(Bacillus circulans)キチン結合ドメインに融合したMth RRIインテイン配列を用いる。この修飾MthRIR1インテインに適切な配列はプラスミドpTWIN−2中にある(New England BioLabs,マサチュセッツ州)。
【0344】
他の適切な例は、
マイコバクテリウム・ゼノピ(
Mycobacterium xenopi)ジャイレースサブユニットA(Mxe GyrA)(Genbank寄託No.MXU67876)、および
サッカロミセス・セレビシエ(
Saccharomyces
cerevisiae)液胞型ATPアーゼ(Sce VMA1)(GenBank寄託No.NC_001136)中にある。他の適切な自己スプライシングインテインの例は、
Inbase:インテインデータベース(Perler(2002)Nucl. Acids Res. 30, 383-384)に記載されている。
【0345】
適切な発現ベクターは、挿入配列と、EcoRIおよびBglIIで消化することにより調製したベクターフラグメントとのライゲーションにより構築される。非増幅発現のた
めに、プラスミドpCD2−Fc7−Mth(CD2シグナル)はSEQ ID NO:9およびSEQ ID NO:1を用いて構築され、プラスミドpCD4−Fc7−Mth(CD4シグナル)はSEQ ID NO:10およびSEQ ID NO:1を用いて構築される。増幅発現のために、プラスミドpCD2−Fc7−Mth−DHFRはSEQ ID NO:9およびpSVeCD4DHFRを用いて構築され、プラスミドpCD4−Fc7−Mth−DHFRはSEQ ID NO:10およびpSVeCD4DHFRを用いて構築される。
【0346】
適切な発現ベクターは、Hind IIIおよびEagIで消化した挿入配列と、Hind IIIおよびPspOM1で消化することにより調製したベクターフラグメントとのライゲーションにより構築される。プラスミドpCDNA3−CD2−Fc7−Mth(CD2シグナル)はSEQ ID NO:114およびpCDNA3.1(+)を用いて構築され、プラスミドpCDNA3−CD4−Fc7−Mth(CD4シグナル)はSEQ ID NO:115およびpCDNA3.1(+)を用いて構築され、プラスミドpCDNA3−CD2−Fc7−ELQLEESC(CD2シグナル)はSEQ ID NO:121およびpCDNA3.1(+)を用いて構築され、プラスミドpCDNA3−CD4−Fc7−ELQLEESC(CD4シグナル)はSEQ ID NO:122およびpCDNA3.1(+)を用いて構築される。
【0347】
キチンアフィニティー精製および自己スプライシングインテイン自動開裂反応の一般原理は、U.S.Patent No.5,834,247に記載されており、その全体を本明細書に援用する。
【0348】
宿主細胞トランスフェクションの後、緩衝液A(20mMトリス−HCl,pH7.5;500mMのNaClを含有)で平衡化したキチン樹脂(New England BioLabs,マサチュセッツ州)にカラムに細胞培養上清を装入する。結合しなかったタンパク質を10カラム容量の緩衝液Aでカラムから洗い流す。キチン樹脂を緩衝液B(20mMトリス−HCl,pH8;0.5MのNaClおよび0.1Mの2−メルカプトエタン−スルホン酸(MESNA)を含有)中で急速に平衡化することにより、チオール試薬誘導による開裂を開始する。ターゲットタンパク質上にC−末端チオエステルを同時生成するこの開裂を4℃で一夜実施した後、タンパク質をカラムから溶離した。
【0349】
精製したFc−チオエステル中間体から出発して、実施例2の方法を用いてシステインまたはセレノシステインとの自然化学ライゲーションを実施する。最終Fc−X生成物をプロテインAセファロースによるアフィニティークロマトグラフィーにより精製して、未反応のシステインおよびセレノシステインを除去する。
【0350】
実施例4
N−末端側−S−末端およびC−末端側−X−末端をもつ免疫グロブリンFc(S−Fc−X)の調製
S−FcおよびFc−Xタンパク質は、2つの結合ドメインが単一のFcドメインに連結したものをもつイムノシンメトロアドヘシンの調製に有用である(下記を参照)。結合ドメインをN−末端側−S−末端(S−Fc)またはC−末端側−X−末端(Fc−X)に付加する。4つの結合ドメインが単一のFcドメインに連結したものをもつビ−シンメトロアドヘシンの調製に有用なS−Fc−Xドメインを、実施例1および実施例3に記載した方法により調製する。
【0351】
したがって、M1ドメインがそれのC−末端ELQLEESCAEAQDGELD
Gにおいてペプチド結合により自己スプライシングインテインのN−末端の自動開裂部位に連結したものを含むプレ−Fc−インテインキメラポリペプチド(
図38)をコードする発
現ベクターで、宿主細胞をトランスフェクションする。N−末端システインをもつタンパク質からヘテロロガスシグナルペプチドを選択する(パートi)。こうして、細胞性シグナルペプチダーゼによる開裂により、N−末端にcys−5をもつ、
CDKTHTCPPCP、成熟S−Fc−インテイン融合タンパク質が得られるであろう(パートii)。タンパク質スプライシングによりインテインが切除されると、Fc−チオエステル中間体が得られる(パートiii)。最後に、このFc−チオエステルと遊離システインおよび/またはセレノシステインとの自然ライゲーションを利用して、C−末端側−X−末端ELQLEESCAEAQDGELDG
XをもつS−Fc−Xタンパク質を調製する(パートiv)。
【0352】
図38A〜38BのIgG1前駆体ポリペプチドの配列をSEQ ID NO:126、SEQ ID NO:127、およびSEQ ID NO:128に示す。
図38A〜38Bの成熟および修飾IgG1ポリペプチドの配列をSEQ ID NO:129〜SEQ ID NO:131に示す。
【0353】
適切な発現ベクターは、挿入配列と、EcoRIおよびBglIIで消化することにより調製したベクターフラグメントとのライゲーションにより構築される。非増幅発現のために、pSHH−Fc5−MthはSEQ ID NO:11およびSEQ ID NO:1を用いて構築され、pIFN−Fc5−MthはSEQ ID NO:12およびSEQ ID NO:1を用いて構築され、pCETP−Fc5−MthはSEQ ID NO:13およびSEQ ID NO:1を用いて構築される。増幅発現のために、pSHH−Fc5−Mth−DHFRはSEQ ID NO:11およびpSVeCD4DHFRを用いて構築され、pIFN−Fc5−Mth−DHFRはSEQ ID NO:12およびpSVeCD4DHFRを用いて構築され、pCETP−Fc5−Mth−DHFR はSEQ ID NO:13およびpSVeCD4DHFRを用いて構築される。
【0354】
S−Fc−インテイン融合タンパク質をまず、トランスフェクションした宿主細胞の培養上清からキチンアフィニティークロマトグラフィーにより精製する。キチン樹脂から開裂させた後、側鎖の環化または重合反応を防ぐためにFc−チオエステル中間体をそのままプロテインAセファロースカラムに装入する。活性S−Fc−チオエステルが結合したカラムをそのまま、システインおよび/またはセレノシステインとの自然ライゲーションに用いる。次いでカラムを洗浄して過剰のアミノ酸を除去し、S−Fc−XをプロテインAセファロースから溶離する。
【0355】
実施例5
N−末端側−X−末端およびC−末端側−X−末端をもつ免疫グロブリンFc(X−Fc−X)の調製
X−FcおよびFc−Xタンパク質は、2つの結合ドメインが単一のFcドメインに連結したものをもつイムノシンメトロアドヘシンの調製に有用である(下記を参照)。結合ドメインをN−末端側−X−末端(X−Fc)またはC−末端側−X−末端(Fc−X)に付加する。4つの結合ドメインが単一のFcドメインに連結したものをもつビ−シンメトロアドヘシンの調製に有用なX−Fc−Xドメインを、実施例2および実施例3に記載した方法により調製する。
【0356】
したがって、M1ドメインがそれのC−末端ELQLEESCAEAQDGELD
Gにおいてペプチド結合により自己スプライシングインテインのN−末端の自動開裂部位に連結したものを含むプレ−Fc−インテインキメラポリペプチド(
図39)をコードする発現ベクターで、宿主細胞をトランスフェクションする。N−末端システインをもつタンパク質からヘテロロガスシグナルペプチドを選択する(パートi)。こうして、細胞性シグナルペプチダーゼによる開裂により、N−末端にcys−11をもつ成熟S−Fc−イン
テイン融合タンパク質が得られるであろう(パートii)。自然ライゲーションを利用して、N−末端にcys−5またはsec−5をもつ、
XDKTHTCPPCP、X−Fc−インテイン融合タンパク質を調製する(パートiii)。タンパク質スプライシングによりインテインが切除されると、Fc−チオエステル中間体が得られる(パートiv)。最後に、このFc−チオエステルと遊離システインおよび/またはセレノシステインとの2回目の自然化学ライゲーションを実施して、C−末端側−X−末端ELQLEESCAEAQDGELDG
XをもつX−Fc−Xタンパク質を調製する(パートv)。あるいは、パートiiiをパートivおよびvの後に実施する。
【0357】
図39A〜39BのIgG1前駆体ポリペプチドの配列をSEQ ID NO:132、SEQ ID NO:133、およびSEQ ID NO:134に示す。
図39A〜39Bの成熟および修飾IgG1ポリペプチドの配列をSEQ ID NO:135〜SEQ ID NO:138に示す。
【0358】
適切な発現ベクターは、挿入配列と、EcoRIおよびBglIIで消化することにより調製したベクターフラグメントとのライゲーションにより構築される。非増幅発現のために、プラスミドpSHH−Fc11−MthはSEQ ID NO:14およびSEQ
ID NO:1を用いて構築され、pIFN−Fc11−MthはSEQ ID NO:15およびSEQ ID NO:1を用いて構築され、pCETP−Fc11−MthはSEQ ID NO:16およびSEQ ID NO:1を用いて構築される。増幅発現のために、pSHH−Fc11−Mth−DHFRはSEQ ID NO:14およびpSVeCD4DHFRを用いて構築され、pIFN−Fc11−Mth−DHFRはSEQ ID NO:15およびpSVeCD4DHFRを用いて構築され、pCETP−Fc11−Mth−DHFRはSEQ ID NO:16およびpSVeCD4DHFRを用いて構築される。
【0359】
S−Fc−インテイン融合タンパク質をまず、トランスフェクションした宿主細胞の培養上清からキチンアフィニティークロマトグラフィーにより精製する。前記に従って(実施例2)、キチンカラム上で、Msc−NH−cys
5−thr
10−α−チオエステルペプチド(Fc−A)またはMsc−NH−sec
5−thr
10−α−チオエステルペプチド(Fc−B)との自然ライゲーションを実施する。次いでキチンカラムを十分に洗浄して未反応ペプチドを除去する。次いでインテイン自動開裂反応を実施する。開裂させた後、X−Fc−チオエステルをそのまま、プロテインAセファロースカラムに装入する。活性X−Fc−チオエステルが結合したカラムをそのまま、システインおよび/またはセレノシステインとの自然ライゲーションに用いる。次いでカラムを洗浄して過剰のアミノ酸を除去する。Msc−遮断したX−Fc−Xをカラムから溶離し、Msc保護基を除去する処理を行ない、プロテインAセファロースにより再精製して最終X−Fc−X生成物を得る。
【0360】
実施例6
CD4シンメトロアドヘシン
HIV−1感染症を処置するための療法計画は、HIV−1受容体の構成要素であるヒトCD4に基づく。CD4イムノアドヘシン(Capon et al. (1989) Nature 337, 525-531)は、gp120エンベロープタンパク質に結合することによって効果的にHIV−1を
阻害する。その阻害活性はCD4細胞外ドメイン(残基1−371)にある。
【0361】
したがって、CD4−Xを用いて種々のCD4シンメトロアドヘシンを調製し、それらがgp120を結合してHIV−1感染性を阻害する能力を分析する。CD4シンメトロアドヘシンの活性を、記載に従って調製したCD4イムノアドヘシン(Capon et al., 同
書)と比較する。
【0362】
CD4−Xタンパク質を実施例3の方法により調製する。CD4細胞外ドメインがそれのC−末端においてペプチド結合により自己スプライシングインテインのN−末端の自動開裂部位に連結したものを含むプレ−CD4キメラポリペプチド(
図40A〜40B)をコードする発現ベクターで宿主細胞をトランスフェクションする。
【0363】
細胞性シグナルペプチダーゼによるCD4シグナル配列(パートi)の開裂により、成熟CD4−インテイン融合タンパク質(パートii)が得られる。インテインドメインの切除により、CD4−チオエステル中間体が得られる(パートiii)。最後に、このCD4−チオエステルと遊離システインおよび/またはセレノシステインとの自然化学ライゲーションを利用して、C−末端側−X−末端をもつCD4ドメインを調製する(パートv)。
【0364】
これらのポリペプチドの配列をSEQ ID NO:140、SEQ ID NO:141、SEQ ID NO:142、およびSEQ ID NO:143に示す。
適切な発現ベクターは、挿入配列と、EcoRIおよびBglIIで消化することにより調製したベクターフラグメントとのライゲーションにより構築される。非増幅発現のために、プラスミドpCD4−MthはSEQ ID NO:17およびSEQ ID NO:1を用いて構築される。増幅発現のために、プラスミドpCD4−Mth−DHFRはSEQ ID NO:17およびpSVeCD4DHFRを用いて構築される。
【0365】
適切な発現ベクターは、Hind IIIおよびEagIで消化した挿入フラグメントと、Hind IIIおよびPspOM1で消化したベクターフラグメントとのライゲーションにより構築された。プラスミドpCDNA3−CD4−Mthを、SEQ ID NO:139およびpCDNA3.1(+)を用いて構築した。
【0366】
図56は、ヒト293腎細胞におけるヒトCD4−インテイン融合タンパク質の発現を示す。列1〜4は、
図40A(ii)のCD4−インテイン融合ポリペプチドを示す。細胞上清:列1および3;細胞溶解物:列2および4。
【0367】
CD4−Xを用いて種々のCD4シンメトロアドヘシンを調製する(表2)。ヘミ−シンメトロアドヘシンは、CD4−Xタンパク質を単独で用いて調製され、イムノシンメトロアドヘシンはCD4−Xタンパク質をS−Fc、X−FcまたはFc−Xと共に用いて調製され、ビ−シンメトロアドヘシンはCD4−Xタンパク質をS−Fc−XまたはX−Fc−Xと共に用いて調製される。
【0368】
CD4ヘミ−シンメトロアドヘシンは、CD4−Xを用い、X−末端を活性化するけれどもタンパク質を変性させない緩和な還元条件下において調製される(Fleischman et al.
(1962) Arch. Biochem. Biophys. 1 (Suppl.), 174-180; Edelman et al. (1963) Proc.
Nat. Acad. Sci. (1963) 50, 753-761)。CD4−Xタンパク質(0.5〜2.0mg/ml)を還元用緩衝液(0.05Mトリス−HCl緩衝液,pH8.0;2−メルカプトエタノール中に0.1Mで調製)に溶解し、室温で1時間インキュベートする。次いでタンパク質をSephadex G−100クロマトグラフィーにより酸化用緩衝液(0.1M K
2HPO
4)中へ入れ換え、ゆるく詰めた綿栓で封じた丸底ガラス試験管内で穏やかに撹拌し、室温で20時間進行させる(Haber and Anfinsen (1961) J. Biol. Chem. 236, 422-424)。
【0369】
CD4イムノシンメトロアドヘシンおよびCD4ビ−シンメトロアドヘシンは、プロテインAセファロースビーズ上で、指示したS−Fc、X−Fc、Fc−X、S−Fc−XまたはX−Fc−Xタンパク質を用いて調製される(表2)。結合したタンパク質を還元
用緩衝液中において、室温で1時間、穏やかに撹拌し、次いで酸化用緩衝液で洗浄する。CD4−Xを還元用緩衝液で処理し、ビーズに添加し、室温で20時間、反応を進行させる。
【0370】
CD4−gp120飽和結合分析を、記載に従い(Smith et al. (1987) Science 238, 1704-1707)、記載に従って調製した放射性ヨウ素化gp120(Lasky et al. (1987) Cell 50, 975-985)を用いて実施する。反応物(0.2)は、0.25%のNP−40、0.1%のデオキシコール酸ナトリウム、0.06MのNaCl、0.01Mのトリス−HC1、pH8.0(1x緩衝液A)を、
125I−gp120(3ng〜670ng,2.9nCi/ng)と共に含有する。50マイクログラムの非標識精製gp120の存在下または不存在下に0℃で1時間、結合を実施する。結合した
125I−gp120を、次いで免疫沈降法により測定する。結合反応物に5マイクロリットルの正常ウサギ血清を0℃で1時間、予め吸収させ、40マイクロリットルの10%w/v Pansorbin(Calbiochem)により0℃で30分間澄明化し、2マイクロリットルの正常血清または5マイクロリットル(0.25マイクログラム)のOKT4モノクローナル抗体(Ortho Biotech)と共に0℃で一夜インキュベートする。免疫沈降物を10マイクロリットルのPansorbinで採集し、2x緩衝液中で2回、水中で1回、洗浄し、次いで100℃で2分間、0.12M トリス−HC1 pH6.8、4% SDS、0.7Mメルカプトエタノール中に溶離する。結合した
125I−gp120の画分をガンマ計数計で測定し、スカッチャード分析を用いて見掛け溶解定数を判定する。
【0371】
HIV−1阻害試験を記載に従って実施する(Robert-Guroff et al. (1985) Nature 316, 72-74)。等容量の阻害薬およびHIV−1(60マイクロリットル)を4℃で1時間
インキュベートし、次いで同容量のH9細胞(Gallo et al. (1984) Science 224, 500-503)5x10
6/mlを添加し、37℃で1時間インキュベーションを続ける。ウイルス
の吸着後、150マイクロリットル中の細胞2.5x10
5個を2mlのインキュベーション培地へ移す。37℃で4日後、培養物を新鮮な培地で1:2に分け、さらに3日間インキュベートする。培養物を回収し、逆転写活性を測定し(Groopman et al., AIDS Res. Hum. Retroviruses (1987) 3, 71-85)、HIV−1陽性血清による免疫蛍光を記載に従って測定する(Poiesz et al. (1980) Proc. Acad. Nat. Sci. 77, 7415-7419)。攻撃量のウイルスは、H9細胞内で増殖させた100 TCID
50のHIV−1株HTLV−IIIBであり、同一系においてアッセイされる。インキュベーション培地は、2mMのL−グルタミン、100単位/mlのペニシリン、100マイクログラム/mlのストレプトマイシン、2マイクログラム/mlのポリブレンおよび20%のウシ胎仔血清を含有する、RPMI 1640培地である。
【0372】
実施例7
腫瘍壊死因子受容体シンメトロアドヘシン
自己免疫疾患を処置するための療法計画は、腫瘍壊死因子α(TNF−α)、ならびにそれとTNF−α抗体および受容体(TNR)の結合特性に基づく。両方とも成人性リウマチ性関節炎、若年性リウマチ性関節炎、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎、クローン病、および潰瘍性大腸炎における重要な療法選択肢である。
【0373】
したがって、TNR−Xタンパク質を用いて種々のTNRシンメトロアドヘシンを調製し、それらがTNF−αを結合してTNF−αの生物活性を阻害する能力を分析する。TNRシンメトロアドヘシンの活性をTNRイムノアドヘシンのものと比較する(Ashkenazi
et al. (1991) Proc. Natl. Acad. Sci. 88, 10535-10539)。
【0374】
ヒトTNRには、TNR1A(Genbank寄託No.NM
001065);およびTNR1B(GenBank寄託No.NM
001066)が含まれる。TNF−α
抗体Di62は、Di62重鎖(Genbank寄託No.AJ002433);およびDi62軽鎖(Genbank寄託No.AJ002434)を含む(以下、TNR1A=TNR
1;TNR1B=TNR
2;およびDi62−VH−CH+Di62−VkCk=TNR
Fab)。
【0375】
Di62−Vkを実施例1の方法に従って調製する。Di62−VH−X、TNR1A−X、およびTNR1B−Xを実施例3の方法に従って調製する。
Di62−VH−CH−インテインキメラポリペプチドおよびDi62−VkCkタンパク質をコードする2種類の発現ベクターで宿主細胞をトランスフェクションすると、Di62−VH−CH−インテイン:Di62−Vk−Ckタンパク質が共発現し、これを用いてTNF
Fab−Xタンパク質を調製する:
1)Di62−VH−CH1ドメインがそれのC−末端においてペプチド結合により自己スプライシングインテインのN−末端の自動開裂部位に連結したものを含む、プレ−Di62−VH−インテインキメラポリペプチド(
図41A〜41B);および
2)Di62−Vk−Ckドメインを含むプレ−Di62−Vkポリペプチド(
図42)。
【0376】
相同Di62−VH−CHシグナル配列(パートi)が細胞性シグナルペプチダーゼにより開裂すると、成熟Di62−VH−CH−インテイン融合タンパク質(パートii)が得られる。タンパク質スプライシングによりインテインが切除されると、Di62−VH−CH−チオエステル中間体が得られる(パートiii)。最後に、このDi62−VH−CH−チオエステルと遊離システインおよび/またはセレノシステインとの自然化学ライゲーションを利用して、C−末端側−X−末端をもつDi62−VH−CH−Xタンパク質を調製する(パートiv)(
図41A〜41Bを参照)。
【0377】
相同Di62−Vk−Ckシグナル配列(パートi)が細胞性シグナルペプチダーゼにより開裂すると、成熟Di62−Vk−Ckタンパク質(パートii)が得られる(
図42を参照)。
【0378】
TNR1A−インテインキメラポリペプチドおよびTNR1B−インテインポリペプチドをコードする発現ベクターで宿主細胞をトランスフェクションして、それぞれTNF
1−XおよびTNF
2−Xタンパク質を調製する:
1)TNR1A細胞外ドメインがそれのC−末端においてペプチド結合により自己スプライシングインテインのN−末端の自動開裂部位に連結したものを含む、プレ−TNR1A−インテインキメラポリペプチド(
図43);および
2)TNR1B細胞外ドメインがそれのC−末端においてペプチド結合により自己スプライシングインテインのN−末端の自動開裂部位に連結したものを含む、プレ−TNR1B−インテインキメラポリペプチド(
図44A)。
【0379】
相同TNRシグナル配列(パートi)が細胞性シグナルペプチダーゼにより開裂すると、成熟TNR−インテイン融合タンパク質(パートii)が得られる。タンパク質スプライシングによりインテインが切除されると、TNR−チオエステル中間体が得られる(パートiii)。最後に、このTNR−チオエステルと遊離システインおよび/またはセレノシステインとの自然化学ライゲーションを利用して、C−末端側−X−末端をもつTNR−Xタンパク質を調製する(パートiv)(
図43、44Aを参照)。
【0380】
これらのポリペプチドの配列を下記に示す:SEQ ID NO:145、SEQ ID NO:146、SEQ ID NO:147、およびSEQ ID NO:148(Di62−VHCH);SEQ ID NO:150、およびSEQ ID NO:151(Di62−VkCk);SEQ ID NO:153、SEQ ID NO:154
、SEQ ID NO:155、およびSEQ ID NO:156(TNR1A);SEQ ID NO:158、SEQ ID NO:159、SEQ ID NO:160、およびSEQ ID NO:161(TNR1B);ならびにSEQ ID NO:163、およびSEQ ID NO:164(TNR1Bイムノアドヘシン)。
【0381】
適切な発現ベクターは、挿入配列と、EcoRIおよびBglIIで消化することにより調製したベクターフラグメントとのライゲーションにより構築される。非増幅発現のために、プラスミドpDi62−VHCH−MthはSEQ ID NO:18およびSEQ ID NO:1を用いて構築され、プラスミドpDi62−VkCkはSEQ ID
NO:19およびSEQ ID NO:1を用いて構築され、プラスミドpTNR1A−MthはSEQ ID NO:20およびSEQ ID NO:1を用いて構築され、プラスミドpTNR1A−MthはSEQ ID NO:22およびSEQ ID NO:1を用いて構築される。増幅発現のために、プラスミドpDi62−VHCH−Mth−DHFRはSEQ ID NO:18およびpSVeCD4DHFRを用いて構築され、プラスミドpDi62−VkCk−DHFRはSEQ ID NO:19およびpSVeCD4DHFRを用いて構築され、プラスミドpTNR1A−Mth−DHFRはSEQ ID NO:20およびpSVeCD4DHFRを用いて構築され、プラスミドpTNR1A−Mth−DHFRはSEQ ID NO:22およびpSVeCD4DHFRを用いて構築される。
【0382】
適切な発現ベクターは、Hind IIIおよびEagIで消化することにより調製した挿入配列と、Hind IIIおよびPspOM1で消化することにより調製したベクターフラグメントとのライゲーションにより構築される。プラスミドpCDA3−Di62−VHCH−MthはSEQ ID NO:144およびpCDNA3.1(+)を用いて構築される。プラスミドpCDA3−Di62−VkCkはSEQ ID NO:149およびpCDNA3.1(+)を用いて構築される。プラスミドpCDNA−3−TNR1A−Mth−DHFRはSEQ ID NO:152およびpCDNA3.1(+)を用いて構築される。プラスミドpCDNA−3−TNR1B−Mth−DHFRはSEQ ID NO:157およびpCDNA3.1(+)を用いて構築される。プラスミドpCDNA−3−TNR1B−イムノアドヘシンはSEQ ID NO:162およびpCDNA3.1(+)を用いて構築された。
【0383】
図57は、ヒト293腎細胞におけるヒトTNR1B融合タンパク質の発現を示す。列2および5は、
図44A(ii)のヒトTNR1B−インテイン融合タンパク質を示す。列1および3は、
図44B(ii)のヒトTNR1B−イムノアドヘシン融合タンパク質を示す。列3および6は、模擬トランスフェクション細胞からのタンパク質を示す。細胞上清:列1〜3;細胞溶解物:列4〜7。列7:対照TNR1B−イムノアドヘシン(R&D Systems)。
【0384】
図58は、C−末端側−S−末端をもつTNR1Bシンメトロアドヘシンサブユニットを示す。列1〜2は、キチンアフィニティークロマトグラフィーおよびMESNAによる開裂/溶離による精製後の
図44A(iii)のTNR1Bポリペプチドを示す。列3は、
図44A(iii)のTNR1Bポリペプチドと蛍光標識ペプチド(New England Biolabs)との自然ライゲーション生成物を示す。パネル(i):直接蛍光;パネル(ii):抗−TNR1B抗体(R&D Systems)を用いたウェスタンブロット;(iii):SYPRO Ruby染色(Sigma−Aldrich)。
【0385】
図59は、C−末端側−S−末端をもつTNR1Bシンメトロアドヘシンサブユニットを示す。列5は、キチンアフィニティークロマトグラフィーおよびシステインによる開裂/溶離による精製後の
図44A(iv)のTNR1Bポリペプチドを示す。列1〜4は、
TNR1B−イムノアドヘシンを示す。
【0386】
図60は、TNR1Bシンメトロアドヘシンを示す。列1〜4は、酸化前(列1および4)、および10mM CuSO4の存在下で酸化した後の
図44A(iv)のTNR1Bシンメトロアドヘシンを示す。列3および6は、TNR1B−イムノアドヘシン対照を示す。列1〜3:還元条件下;列4〜6:非還元条件下。TNR1Bシンメトロアドヘシンモノマー(42kd)および二量体(84kd)を、それぞれ列2および5および列5に示す。
【0387】
図61A〜61Cは、Biacore T−100上の種々のTNR1BポリペプチドによるTNF−アルファ飽和結合分析を示す。(A)
図44A(iv)のTNR1Bシンメトロアドヘシンを、標準Biacoreアミン化学によりBiacore CM−5チップに共有結合させた。(B)TNR1Bイムノアドヘシン(R&D Systems)を、標準Biacoreアミン化学によりBiacore CM−5チップに共有結合させた。(C)
図44A(iv)のTNR1B−シンメトロアドヘシンを、標準Biacoreチオール化学によりBiacore CM−5チップに共有結合させた。結合後、TNF−アルファ(R&D Systems)を指示された濃度で用いて飽和結合分析を実施した。
【0388】
図62A〜62Cは、
図61A〜61Cに示したTNF−アルファ飽和結合分析のスカッチャード分析を示す。(A)
図44A(iv)のTNR1Bシンメトロアドヘシンをアミン化学により共有結合させた;Kd=Kd=4.697x10
−9M。(B)TNR1B−イムノアドヘシン(R&D Systems)をアミン化学により共有結合させた;Kd=4.089x10
−9M。(C)
図44A(iv)のTNR1Bシンメトロアドヘシンをチオール化学により共有結合させた;Kd=0.84767x10
−9M。
【0389】
TNR
1−X、TNR
2−X、およびTNR
Fab−Xタンパク質を個別に、および種々の組合わせで用いて、種々のVGFRシンメトロアドヘシンを調製する(表3、4、および5)。各組合わせについて得られた異なるコンフィギュレーションの個数、およびそれぞれについての一般構造も示す。
【0390】
ヘミ−シンメトロアドヘシンは、TNR−Xタンパク質を単独で用いて調製され、イムノシンメトロアドヘシンはTNR−Xタンパク質をS−Fc、X−FcまたはFc−Xと共に用いて調製され、ビ−シンメトロアドヘシンはTNR−Xタンパク質をS−Fc−XまたはX−Fc−Xと共に用いて調製される。
【0391】
TNR−Xタンパク質またはTNRシンメトロアドヘシンのそれぞれを、下記のものに対するサブタイプ特異的なアフィニティー精製ポリクローナル抗体を用いる定量イムノアッセイにより測定する:TNR1A、TNR1BおよびDi62(ヤギ抗マウス)、ならびに参照標準品としてのイムノアドヘシン(TNR1A−IgおよびTNR2A−Ig)。TNR抗体、TNR−Igイムノアドヘシン、およびTNF−αタンパク質は、R&D
Systems(ミネソタ州)から入手される。
【0392】
TNF−αへのTNGRシンメトロアドヘシンの結合を記載に従って試験する(Ashkenazi et al. (1991) Proc. Natl. Acad. Sci. 88, 10535-10539)。個々の試料(1マイクログラム/ml)を、ヤギ抗ヒトIg Fc抗体でコーティングしたマイクロタイターウェルに固定化する。組換えヒト
125I−TNF−α(ラクトペルオキシダーゼを用いて19.1マイクロCi/マイクログラムの比放射能になるまで放射能標識した;1マイクロCi=37kBq)との反応を、1%のウシ血清アルブミンを含有するリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)中、24℃で1時間実施する。試料を除くことにより、非特異的結合を
判定する。競合結合分析において、
125I−TNF−αを固定化試料と共に漸増濃度の非標識TNF−αの存在下でインキュベートする。競合IC
50値から次式に従ってK
dを決定する:K
d=IC
50/(1+[T]/K
dT);式中、[T]はトレーサーの濃度(0.1nm)であり、K
dTは飽和結合により決定したトレーサーのK
d(80pM)である。
【0393】
TNRの細胞傷害性を記載に従って試験する(Kawade and Watanabe (1984) J. Interferon Res. 4, 571-584)。マウスL−M細胞をマイクロタイター皿に播種し(ウェル当たり4x10
4個)、アクチノマイシンD(3マイクログラム/ml)およびTNF−αまたはTNF−β(1ナノグラム/ml)により、試料または他の阻害薬の存在下または不存在下で処理する。39℃で20時間のインキュベーション後、クリスタルバイオレット色素排除試験により細胞生存を判定する。
【0394】
6〜8週齢BALB/cマウスへのエンドトキシン注射により、敗血症性ショックのマウスモデルを試験する。LD
100用量の
流産菌(
Salmonella abortus)由来エンドトキシン(マウス当たり175マイクログラム)をリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)中において動物に静脈内(i.v.)注射し、少なくとも78時間、生存を追跡する。TNR1−イムノアドヘシンおよびCD4−イムノアドヘシンを、それぞれ陽性および陰性対照として用いる。それぞれをPBS中に希釈し、エンドトキシン投与の前または後に静脈内注射する。
【0395】
実施例8
血管内皮増殖因子受容体シンメトロアドヘシン
血管新生疾患を処置するための療法計画は、血管内皮増殖因子(VEGF)およびそれらとVEGF受容体(VGFR)の結合相互作用に基づく。VEGF−抗体およびVGFR−イムノアドヘシンは、大腸癌、直腸癌、肺癌および乳癌を含めた多数の転移性癌ならびに加齢性黄斑変性症の処置のための有望な候補である。
【0396】
したがって、VGFR−Xを用いて種々のVGFRシンメトロアドヘシンを調製し、それらがVEGFを結合してVEGFの生物活性を阻害する能力を分析する。VGFRシンメトロアドヘシンの活性をVGREイムノアドヘシン(Park et al. (1994) J. Biol. Chem. 269, 25646-25654)のものと比較する。
【0397】
ヒトVGFRにはVGFR1(Genbank寄託No.NM
002019);VGFR2(GenBank寄託No.NM
002253);およびVGFR3(GenBank寄託No.NM
002020)が含まれる。VGFR1−X、VGFR2−X、およびVGFR3−Xを実施例3の方法に従って調製する。下記のものをコードする発現ベクターで宿主細胞をトランスフェクションする:
1)VGFR1細胞外ドメインがそれのC−末端においてペプチド結合により自己スプライシングインテインのN−末端の自動開裂部位に連結したものを含む、プレ−VGFR1−インテインキメラポリペプチド(
図45A〜45C);
2)VGFR1細胞外ドメインがそれのC−末端においてペプチド結合により自己スプライシングインテインのN−末端の自動開裂部位に連結したものを含む、プレ−VGFR2−インテインキメラポリペプチド(
図46A〜46C);
3)VGFR1細胞外ドメインがそれのC−末端においてペプチド結合により自己スプライシングインテインのN−末端の自動開裂部位に連結したものを含む、プレ−VGFR1−インテインキメラポリペプチド(
図47A〜47C)。
【0398】
VGFRシグナル配列(パートi)が細胞性シグナルペプチダーゼにより開裂すると、成熟VGFR−インテイン融合タンパク質(パートii)が得られる。インテインドメイ
ンが切除されると、VGFR−チオエステル中間体が得られる(パートiii)。最後に、このVGFR−チオエステルと遊離システインおよび/またはセレノシステインとの自然化学ライゲーションを利用して、C−末端側−X−末端をもつVGFRドメインを調製する(パートiv)。
【0399】
これらのポリペプチドの配列を下記に示す:SEQ ID NO:166、SEQ ID NO:167、SEQ ID NO:168、およびSEQ ID NO:169(VGFR1);SEQ ID NO:171、SEQ ID NO:172、SEQ ID NO:173、およびSEQ ID NO:174(VGFR2);ならびにSEQ
ID NO:176、SEQ ID NO:177、SEQ ID NO:178、およびSEQ ID NO:179(VGFR3)。
【0400】
適切な発現ベクターは、挿入配列と、EcoRIおよびBglIIで消化することにより調製したベクターフラグメントとのライゲーションにより構築される。非増幅発現について、プラスミドpVGFR1−MthはSEQ ID NO:22およびSEQ ID
NO:1を用いて構築され、プラスミドpVGR1−MthはSEQ ID NO:23およびSEQ ID NO:1を用いて構築され、プラスミドpVGR1−MthはSEQ ID NO:24およびSEQ ID NO:1を用いて構築される。非増幅発現について、プラスミドpVGFR1−Mth−DHFRはSEQ ID NO:22およびpSVeCD4DHFRを用いて構築され、プラスミドpVGR1−Mth−DHFRはSEQ ID NO:23およびpSVeCD4DHFRを用いて構築され、プラスミドpVGR1−Mth−DHFRはSEQ ID NO:24およびpSVeCD4DHFRを用いて構築される。
【0401】
適切な発現ベクターは、Hind IIIおよびEagIで消化することにより調製した挿入配列と、Hind IIIおよびPspOM1で消化することにより調製したベクターフラグメントとのライゲーションにより構築される。プラスミドpCDNA3−VGFR1−MthはSEQ ID NO:165およびpCDNA3.1(+)を用いて構築される。プラスミドpCDNA3−VGFR2−MthはSEQ ID NO:170およびpCDNA3.1(+)を用いて構築される。プラスミドpCDNA3−VGFR3−Mthは、SEQ ID NO:175およびpCDNA3.1(+)を用いて構築される。
【0402】
VGFR1−X、VGFR2−XおよびVEGFR3−Xタンパク質を個別に、および種々の組合わせで用いて、種々のVGFRシンメトロアドヘシンを調製する(表6、7、および8)。各組合わせについて得られた異なるコンフィギュレーションの個数、およびそれぞれについての一般構造も示す。
【0403】
ヘミ−シンメトロアドヘシンは、VGFR−Xタンパク質を単独で用いて調製され、イムノシンメトロアドヘシンはVGFR−Xタンパク質をS−Fc、X−FcまたはFc−Xと共に用いて調製され、ビ−シンメトロアドヘシンはVGFR−Xタンパク質をS−Fc−XまたはX−Fc−Xと共に用いて調製される。
【0404】
VGFR−Xタンパク質またはVGFRシンメトロアドヘシンのそれぞれを、下記のものに対するサブタイプ特異的なアフィニティー精製ポリクローナル抗体を用いる定量イムノアッセイにより測定する:VGFR1、VGFR2、およびVGFR3、ならびに参照標準品としてのイムノアドヘシン(VGFR1−Ig、VGFR2−Ig、およびVGFR3−Ig)。VGFR抗体、VGFR−Igイムノアドヘシン、およびVEGF
165タンパク質は、R&D Systems(ミネソタ州)から入手される。
【0405】
VEGFへのVEGRシンメトロアドヘシンの結合を、VEGF飽和結合アッセイにより試験する。反応物(0.1ml)は、PBS(緩衝液A)中10%ウシ胎仔血清を
125I−VEGF
165(<9000cpm/ウェル,5.69x10
7cpm/マイクログラム)と共に含有する。クロラミンTを用いてVEGF
165を記載に従ってヨウ素化する(Keyt et al. (1996) J. Biol Chem. 271, 5638-5646)。4℃で一夜、50ナノグラ
ムの標識していない精製VEGF
165の存在下または不存在下で結合を実施する。結合した
125I−VEGF
165を、次いで96ウェル−分解式(breakaway)イムノソルベントアッセイプレート(Nunc)内での捕獲により測定する。50mM Na
2CO
3,pH9.6中、2マイクログラム/mlのアフィニティー精製したヤギ抗ヒトFc IgG(Organon−Teknika)により、4℃で一夜、プレートをコーティングし、緩衝液A中で1時間、プレブロックする。次いで結合反応物を、コーティングしたウェル内で室温において1時間インキュベートし、続いて緩衝液Aで4回洗浄する。結合した
125I−VEGF
165の画分をガンマ計数計で測定する。データを4パラメーター非線形曲線あてはめグプログラム(Kalidagraph,Abelbeck Software,ペンシルベニア州)により分析する。
【0406】
VEGRシンメトロアドヘシンへのVEGFの結合を、競合結合アッセイによっても試験する。ELISAプレートを、ヒトIgG Fcに対するウサギF(ab’)
2(Jackson ImmunoResearch,ペンシルベニア州)2マイクログラムでコーティングし、緩衝液Aで遮断する。緩衝液A中のKDR−IgG(3ナノグラム/ml)をプレートに添加し、1時間インキュベートする。系列希釈した試料を、試験管内で2nMのビオチニル化VEGFと共に1時間インキュベートする。反応物を次いでELISAプレートへ移し、1時間インキュベートする。洗浄後、KDR−Igに結合したビオチニル化VEGFの画分を、西洋わさびペルオキシダーゼ標識したストレプトアビジン(Sigma,ミズーリ州)、続いて3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン基質により検出する。データを4パラメーター非線形回帰曲線あてはめ分析により分析する。
【0407】
内皮細胞増殖阻害試験を記載に従って実施する(Leung et al. (1989) Science 246, 1306-1309)。ウシ副腎皮質毛細管内皮細胞を、10%のウシ血清および2mMのグルタミンを補充した低グルコースダルベッコ改変イーグル培地(GIBCO)(増殖培地)の存在下で培養する。細胞を6ウェルプレートに6x10
3個/ウェルの密度で播種する。系列希釈した試料を1〜5000ナノグラム/mlの濃度で細胞に添加し、2〜3時間インキュベートする。精製VEGF
165を3ナノグラム/mlの最終濃度で添加する。細胞を次いで5〜6日間インキュベートし、トリプシンでプレートから分離し、コールターカウンター(Coulter Electronics,フロリダ州)で細胞数を測定する。データを4パラメーター非線形回帰曲線あてはめ分析により分析する。
【0408】
インビボ腫瘍試験を記載に従って実施する(Kim et al. (1993) Nature 362, 841-844; Borgstrom et al. (1996) Cancer Res. 56, 4032-4039)。ヒトA673横紋筋肉腫細胞(ATCC CRL−1598)を、10%のウシ胎仔血清および2mMのグルタミンを補充したDMEM/F12中で培養する。6〜10週齢の雌BALB/cヌードマウスの背面に、2x10
6個の腫瘍細胞を200マイクロリットルの容量で皮下注射する。腫瘍細胞の接種後(24時間)、動物(グループ当たり10匹)を、用量0.05mg/kg、0.5mg/kg、および5mg/kgの系列希釈試料で処理する;0.1mlの容量で週2回、腹腔内投与。腫瘍サイズを週1回の間隔で測定する。腫瘍細胞接種の4週間後、動物を安楽死させ、腫瘍を摘出し、秤量する。ANOVAにより統計分析を行なう。
【0409】
実施例9
ErbBシンメトロアドヘシン
悪性疾患を処置するための療法計画は、上皮増殖因子様受容体(ErbB)およびそれ
らのリガンドに基く;これには、ノイレグリン(neuregulin)類/ヘレグリン(heregulin)類(NRG/HRG)、およびEGF関連タンパク質リガンドのファミリーが含まれる。ErbB−抗体およびErbB−イムノアドヘシンは臨床試験中であり、ErbB2を過剰発現する転移性乳癌の処置において十分に立証されている。
【0410】
したがって、ErbB−Xタンパク質を用いて種々のErbBシンメトロアドヘシンを調製し、それらがヘレグリン類を結合してヘレグリンの生物活性を阻害する能力を分析する。ErbBシンメトロアドヘシンの活性をErbBイムノアドヘシン(Sliwkowski et al. (1994) J. Biol. Chem. 269, 14661-14665)のものと比較する。
【0411】
ヒトErbBには、ErbB1(Genbank寄託No.NM
005228);ErbB2(GenBank寄託No.NM
004448);ErbB3(GenBank寄託No.NM
001982);およびErbB4(GenBank寄託No.NM
005235)が含まれる。ErbB1−X、ErbB2−X、ErbB3−X、およびErbB4−Xを実施例3の方法に従って調製する。下記のものをコードする発現ベクターで宿主細胞をトランスフェクションする:
1)ErbB1細胞外ドメインがそれのC−末端においてペプチド結合により自己スプライシングインテインのN−末端の自動開裂部位に連結したものをが有する、プレ−ErbB1−インテインキメラポリペプチド(
図48A〜48B);
2)ErbB2細胞外ドメインがそれのC−末端においてペプチド結合により自己スプライシングインテインのN−末端の自動開裂部位に連結したものを含有する、プレ−ErbB2−インテインキメラポリペプチド(
図49A〜49B);
3)ErbB3細胞外ドメインがそれのC−末端においてペプチド結合により自己スプライシングインテインのN−末端の自動開裂部位に連結したものを含有する、プレ−ErbB3−インテインキメラポリペプチド(
図50A〜50B);および
4)ErbB4細胞外ドメインがそれのC−末端においてペプチド結合により自己スプライシングインテインのN−末端の自動開裂部位に連結したものを含有する、プレ−ErbB4−インテインキメラポリペプチド(
図51A〜51B)。
【0412】
相同ErbBシグナル配列(パートi)が細胞性シグナルペプチダーゼにより開裂すると、成熟ErbB−インテイン融合タンパク質(パートii)が得られる。タンパク質スプライシングによりインテインが切除されると、ErbB−チオエステル中間体が得られる(パートiii)。最後に、このErbB−チオエステルと遊離システインおよび/またはセレノシステインとの自然化学ライゲーションを利用して、C−末端側−X−末端をもつVEGRドメインを調製する(パートiv)。
【0413】
これらのポリペプチドの配列を下記に示す:SEQ ID NO:181, SEQ ID NO:182, SEQ ID NO:183、およびSEQ ID NO:184(ERBB1);SEQ ID NO:186, SEQ ID NO:187, SEQ ID NO:188、およびSEQ ID NO:189(ERBB2);SEQ
ID NO:191,SEQ ID NO:192, SEQ ID NO:193、およびSEQ ID NO:194(ERBB3);ならびにSEQ ID NO:196, SEQ ID NO:197, SEQ ID NO:198、およびSEQ ID NO:199(ERBB4)。
【0414】
適切な発現ベクターは、挿入配列と、EcoRIおよびBglIIで消化することにより調製したベクターフラグメントとのライゲーションにより構築される。非増幅発現について、プラスミドpErbB1−MthはSEQ ID NO:25およびSEQ ID
NO:1を用いて構築され、プラスミドpErbB2−MthはSEQ ID NO:26およびSEQ ID NO:1を用いて構築され、プラスミドpErbB3−Mth
はSEQ ID NO:27およびSEQ ID NO:1を用いて構築され、プラスミドpErbB4−MthはSEQ ID NO:28およびSEQ ID NO:1を用いて構築される。増幅発現について、プラスミドpErbB1−Mth−DHFRはSEQ ID NO:25およびpSVeCD4DHFRを用いて構築され、プラスミドpErbB2−Mth−DHFRはSEQ ID NO:26およびpSVeCD4DHFRを用いて構築され、プラスミドpErbB3−Mth−DHFRはSEQ ID NO:27およびpSVeCD4DHFRを用いて構築され、プラスミドpErbB4−Mth−DHFRはSEQ ID NO:28およびpSVeCD4DHFRを用いて構築される。
【0415】
適切な発現ベクターは、Hind IIIおよびEagIで消化することにより調製した挿入配列と、Hind IIIおよびPspOM1で消化することにより調製したベクターフラグメントとのライゲーションにより構築される。プラスミドpCDNA3−ERBB1−MthはSEQ ID NO:180およびpCDNA3.1(+)を用いて構築される。プラスミドpCDNA3−ERBB2−MthはSEQ ID NO:185およびpCDNA3.1(+)を用いて構築される。プラスミドpCDNA3−ERBB3−MthはSEQ ID NO:190およびpCDNA3.1(+)を用いて構築される。プラスミドpCDNA3−ERBB4−MthはSEQ ID NO:195およびpCDNA3.1(+)を用いて構築される。
【0416】
ErbB1−X、ErbB2−X、ErbB3−XおよびErbB4−Xタンパク質を個別に、および種々の組合わせで用いて、種々のVGFRシンメトロアドヘシンを調製する(表9、10、および11)。各組合わせについて得られた異なるコンフィギュレーションの個数、およびそれぞれについての一般構造も示す。
【0417】
ヘミ−シンメトロアドヘシンは、ErbB−Xタンパク質を単独で用いて調製され、イムノシンメトロアドヘシンはErbB−Xタンパク質をS−Fc、X−FcまたはFc−Xと共に用いて調製され、ビ−シンメトロアドヘシンはErbB−Xタンパク質をS−Fc−XまたはX−Fc−Xと共に用いて調製される。
【0418】
ErbB−Xタンパク質またはErbBシンメトロアドヘシンのそれぞれを、下記のものに対するサブタイプ特異的なアフィニティー精製ポリクローナル抗体を用いる定量イムノアッセイにより測定する:ErbB1、ErbB2、ErbB3、およびErbB4、ならびに参照標準品としてのイムノアドヘシン(ErbB1−Ig、ErbB2−Ig、ErbB3−Ig、およびErbB4−Ig)。ErbB抗体、ErbB−Igイムノアドヘシン、NRG1−α
177−241タンパク質、NRG1−β
176−246タンパク質、NRG1−β
1−246タンパク質、およびNRG1−SMDF
1−296タンパク質は、R&D Systems(ミネソタ州)から入手される。
【0419】
ノイレグリン類へのErbBシンメトロアドヘシンの結合を、HRG飽和結合アッセイにより試験する(Sliwkowski et al. (1994) J. Biol. Chem. 269, 14661-14665)。反応をNunc分解式イムノモジュールプレート(breakapart immuno−module plate)内で実施する。プレートのウェルを4℃で一夜、50mM炭酸緩衝液(pH9.6)中の5マイクログラム/mlヤギ抗ヒト抗体(Boehringer
Mannheim)100マイクロリットルでコーティングする。プレートを200マイクロリットルの洗浄用緩衝液(PBS/0.05% Tween−20(商標))で2回すすぎ、続いて100マイクロリットルの1% BSA/PBSと共に室温で30分間の短時間インキュベーションを行なう。緩衝液を除去し、各ウェルを100マイクロリットルの試料と共に1% BSA/PBS中で激しい横方向(side−to−side)回転下に1時間インキュベートする。プレートを洗浄用緩衝液で3回すすぎ、種々の量の
非放射性競合ガンマ−HRGおよび
125I−HRGβ1を添加して室温で激しい横方向回転下に2〜3時間インキュベートすることにより競合結合を実施する。ウェルを洗浄用緩衝液で速やかに3回すすぎ、排液し、各ウェルをガンマ計数計で計数する。改変Ligandプログラム(Munson, P. and Robard, D. (1980) Analytical Biochemistry 107: 220-239)によりスカッチャード分析を行なう。
【0420】
ErbBシンメトロアドヘシンがHRG依存性増殖を阻害する能力を、MCF7乳癌細胞系において試験する(Lewis et al. (1996) Cancer Res. 56, 1457-1465)。
3H−チミ
ジン取込みを96ウェル方式で実施する。血清枯渇させたMCF7−7細胞を、50:50 F12/DMEM(高グルコース)中、10,000個/ウェルでプレーティングする。種々の濃度の試料を1nM HRGと共にインキュベートし、細胞に添加する。15時間のインキュベーション後、細胞を
3H−チミジンで標識し、DNA合成を測定する(20mLの1/20希釈したトリチウム化チミジン原液:Amersham TRA 120 B363,1mCi/ml)。次いで、Packard Filtermate 196ハーベスターを用いてGF/Cユニフィルター(96ウェル方式)上に細胞を回収する。フィルターをPackard Topcount装置により計数する。
【0421】
スクリーニング
本発明は、連続アミノ酸配列/またはそれらを含む化合物を用いて、多様な薬物スクリーニング法のいずれかで化合物をスクリーニングするのに特に有用である。そのような試験に用いる化合物は、溶液中に遊離したもの、固体支持体に固定されたもの、細胞表面に生じたもの、または細胞内にあるもののいずれであってもよい。薬物スクリーニングの1方法は、本発明化合物を発現する組換え核酸で安定に形質転換した真核または原核宿主細胞を用いる。そのような形質転換細胞に対して競合結合アッセイにおいて薬物をスクリーニングする。そのような細胞は、生存形態または固定形態のいずれも、標準結合アッセイに使用できる。たとえば、化合物またはフラグメントと被験物質との複合体形成を測定できる。あるいは、被験物質による、化合物とそのターゲット細胞またはターゲット受容体との複合体形成の減少を調べることができる。
【0422】
したがって、本発明は、本発明化合物の連続アミノ酸の区域と関連する疾患または障害に影響を及ぼす可能性のある薬物または他のいずれかの物質をスクリーニングする方法を提供する。これらの方法は、それらの物質と本発明化合物またはそのフラグメントを接触させ、そして(I)その物質と本発明化合物もしくはそのフラグメントとの複合体の存在、または(ii)本発明化合物もしくはそのフラグメントと細胞の複合体の存在を、当技術分野で周知の方法によりアッセイすることを含む。そのような競合結合アッセイにおいて、前記化合物またはそのフラグメントは一般に標識される。適切なインキュベーションの後、遊離の化合物またはそのフラグメントを、結合形態中に存在するものから分離し、そして、遊離標識または複合体形成していない標識の量は、その特定の物質が本発明化合物もしくはそのフラグメントに結合する能力または本発明化合物/細胞複合体を妨害する能力の尺度である。
【0423】
薬物スクリーニングのための他の方法は、ポリペプチドに対する適切な結合アフィニティーをもつ化合物に関するハイスループットスクリーニングを提供し、WO 84/03564、1984年9月13日公開に詳述されている。要約すると、多数の異なる低分子ペプチド被験化合物を、固体表面、たとえばプラスチックピンまたは他の何らかの表面で合成する。本発明の化合物またはそのフラグメントに適用する場合、ペプチド被験化合物を化合物またはそのフラグメントと反応させ、そして洗浄する。結合した化合物またはそのフラグメントを当技術分野で周知の方法により検出する。精製した化合物またはそのフラグメントを、前記の薬物スクリーニング法に用いるプレートに直接コーティングすることもできる。さらに、非中和抗体を用いてペプチドを捕獲し、それを固体支持体に固定化
することができる。
【0424】
本発明は、化合物またはそのフラグメントを結合しうる中和抗体が化合物またはそのフラグメントへの結合に対して被験化合物と特異的に競合する、競合薬物スクリーニングアッセイ法の使用をも意図する。この様式では、これらの抗体を用いて、本発明化合物の連続アミノ酸の区域(1以上)と1以上の抗原決定基を共有するいずれかのペプチドの存在を検出することができる。
【0425】
合理的な薬物設計
合理的な薬物設計の目標は、目的とする生物活性ポリペプチド(すなわち、本発明化合物、または本発明化合物のアミノ酸配列)の構造類似体、またはそれらが相互作用する低分子、すなわちアゴニスト、アンタゴニストもしくは阻害薬を提供することである。これらの例のいずれかを用いて、より活性もしくは安定な形態の本発明化合物もしくは本発明化合物のアミノ酸配列である薬物、または本発明化合物もしくは本発明化合物のアミノ酸配列の機能をインビボで増強もしくは妨害する薬物を、作製できる(参照:Hodgson, Bio/Technology, 9:19-21 (1991))。
【0426】
1方法において、本発明化合物もしくは本発明化合物のアミノ酸配列、または化合物−阻害薬複合体の三次元構造を、x線結晶解析、コンピューターモデリング、または最も一般的にはこれら2方法の組合わせにより決定することができる。構造を解明し、活性部位(1以上)を決定するためには、本発明化合物または本発明化合物のアミノ酸配列の形状および電荷の両方を確認しなければならない。次いで、関連の構造情報を用いて類似分子を設計し、または有効な阻害薬を同定する。合理的な薬物設計の有用な例には、改善された活性もしくは安定性をもつ分子(Braxton and Wells, Biochemistry, 31:7796-7801 (1992)が提示)、または天然ペプチドの阻害薬、アゴニストもしくはアンタゴニストとして作用する分子(Athauda et al., J. Biochem., 113:742-746 (1993)に提示)を含めるこ
とができる。
【0427】
前記の機能アッセイにより選択したターゲット特異的抗体を単離し、次いでそれの結晶構造を解明することもできる。この方法では、原理的に、それに基づいてその後の薬物設計を行なうことができるファーマコア(pharmacore)が得られる。機能性薬理活性抗体の抗イディオタイプ抗体(anti−id)を産生させることにより、タンパク質結晶解析をすべて回避できる。鏡像の鏡像として、anti−idの結晶部位は元の受容体の類似体であると予想される。次いでこのanti−idを用いて、化学的または生物学的に製造したペプチドのバンクからペプチドを同定および単離することができる。単離したペプチドは、次いでファーマコアとして作用する。
【0428】
本発明により、X線結晶解析などの分析試験を実施するのに十分な量の本発明化合物または本発明化合物のアミノ酸配列を得ることができる。
生物活性のアッセイ
本明細書に開示する化合物は、化合物の連続アミノ酸の区域などその構成要素を含めて、当技術分野で既知である1以上の標準的な生物活性アッセイ法を用いて容易にアッセイできる。下記は限定ではないそのようなアッセイ法の例である:
血管内皮増殖因子(VEGF)により刺激された内皮細胞増殖を本発明化合物が阻害する能力
VEGFにより刺激された内皮細胞増殖を種々の本発明化合物が阻害する能力を試験した。このアッセイにおける陽性試験は、そのような作用が有益となるであろう哺乳動物においてその化合物が内皮細胞増殖を阻害する(たとえば腫瘍の増殖を阻害する)のに有用であることの指標となる。
【0429】
アッセイの具体例において、ウシ副腎皮質毛細管内皮細胞(ACE)(初代培養から、最大12〜14継代)を96ウェルプレートに500個/ウェル/100マイクロリットルでプレーティングした。アッセイ培地は、低グルコースDMEM、10%のウシ血清、2mMのグルタミンおよび1xペニシリン/ストレプトマイシン/フンギゾン(fungizone)を含有する。対照ウェルには下記のものが含まれる:(1)ACE細胞を添加しない;(2)ACE細胞のみ;(3)ACE細胞プラス5ng/mlのFGF;(4)ACE細胞プラス3ng/mlのVEGF;(5)ACE細胞プラス3ng/mlのVEGFプラス1ng/mlのTGF−ベータ;および(6)ACE細胞プラス3ng/mlのVEGFプラス5ng/mlのLIF。次いで、被験試料であるポリ−hisタグ付き化合物(100マイクロリットル容量で)をウェルに添加する(それぞれ1%、0.1%および0.01%の希釈度)。細胞培養物を37℃/5% CO
2で6〜6日間インキュベートする。インキュベーション後、ウェル内の培地を吸引し、細胞をPBSで1回洗浄する。次いで酸性ホスファターゼ反応混合物(100マイクロリットル;0.1M酢酸ナトリウム,pH5.5,0.1% Triton X−100,10mMリン酸p−ニトロフェニル)を各ウェルに添加する。37℃で2時間のインキュベーション後、10マイクロリットルの1M NaOHの添加により反応を停止する。光学濃度(OD)をマイクロプレートリーダーにより405nmで読み取る。
【0430】
アッセイした化合物の活性は、VEGF(3ng/ml)刺激した増殖を刺激しなかった細胞に対比した阻害率パーセントとして計算される(酸性ホスファターゼ活性をOD 405nmで測定することにより決定)。TGF−ベータはVEGF刺激によるACE細胞増殖を70〜90%遮断するので、TGF−ベータは1ng/mlで活性基準として使用できる。結果は、癌療法、特に腫瘍血管新生の阻害における被験化合物の有用性の指標となる。数値(相対阻害率)は、刺激しなかった細胞に対比した被験化合物によるVEGF刺激増殖の阻害率パーセントを計算し、次いでそのパーセントを、VEGF刺激による細胞増殖を70〜90%遮断することが知られているTGF−ベータ(1ng/ml)により得られた阻害率パーセントで割ることにより決定される。被験化合物がVEGF刺激による内皮細胞増殖の30%以上の阻害を示した場合(相対阻害率30%以上)、陽性とみなされる。
【0431】
網膜ニューロンの生存率
このアッセイは、被験化合物が網膜ニューロン細胞の生存性を高める効力をもち、したがってたとえば動物における網膜色素変性症(retinitis pigmentosum)、AMDなどによる視力喪失の処置を含めた、網膜の障害または傷害の療法処置に有用であるかを立証することができる。
【0432】
生後7日目のSprague Dawley仔ラット(混合集団:グリアおよび網膜ニューロンタイプ)をCO
2麻酔後に断頭屠殺し、無菌条件下で眼を摘出する。色素上皮および他の眼組織から神経性網膜を剥離し、次いでCa
2+、Mg
2+を含まないPBS中の0.25%トリプシンにより解離させて単細胞懸濁液にする。この網膜を37℃で7〜10分間インキュベートした後、1mlの大豆トリプシンインヒビターの添加によりトリプシンを不活性化する。96ウェルプレートにおいて、N
2を補充した、被験化合物を含むかまたは含まないDMEM/F12中、細胞100,000個/ウェルで細胞をプレーティングする。すべての実験について、細胞を37℃で水飽和した5% CO
2雰囲気において増殖させる。2〜3日間の培養後、細胞総数を決定するために細胞をカルセインAM(calcein AM)で染色し、次いで4%パラホルムアルデヒドで固定し、DAPIで染色する。細胞総数(蛍光性)を20x対物倍率でCCDカメラおよびMacIntosh用NIH画像ソフトウェアにより定量する。ウェル内の視野をランダムに選択する。
【0433】
種々の濃度の被験化合物の作用を本明細書に報告する;その際、生存率パーセントは、培養2〜3日目のカルセインAM陽性細胞の総数を培養2〜3日目のDAPI標識細胞の総数で割ることにより計算される。30%を超える生存率をいずれも陽性とみなす。
【0434】
杆体光受容細胞の生存率
このアッセイは、本発明の特定の化合物が杆体光受容細胞の生存/増殖を高める作用をもち、したがってたとえば動物における色素性網膜炎、AMDなどによる視力喪失の処置を含めた、網膜の障害または傷害の療法処置に有用であるかどうかを示すために使用できる。生後7日目のSprague Dawley仔ラット(混合集団:グリアおよび網膜神経細胞タイプ)をCO
2麻酔後に断頭屠殺し、無菌条件下で眼を摘出する。色素上皮および他の眼組織から神経性網膜を剥離し、次いでCa
2+、Mg
2+を含まないPBS中の0.25%トリプシンにより解離させて単細胞懸濁液にする。この網膜を37℃で7〜10分間インキュベートした後、1mlの大豆トリプシンインヒビターの添加によりトリプシンを不活性化する。96ウェルプレートにおいて、N
2を補充したDMEM/F12中、細胞100,000個/ウェルで細胞をプレーティングする。すべての実験について、細胞を37℃で水飽和した5% CO
2雰囲気において増殖させる。2〜3日間の培養後、細胞を4%パラホルムアルデヒドで固定し、次いでCellTracker Green CMFDAにより染色する。視覚色素ロドプシンに対するモノクローナル抗体であるRho 4D2(腹水またはIgG 1:100)を用いて間接的免疫蛍光により杆体光受容細胞を検出する。結果を生存率%として示す:カルセイン総数−培養2〜3日目のロドプシン陽性細胞を、培養2〜3日目のロドプシン陽性細胞の総数で割る。細胞総数(蛍光性)を20x対物倍率でCCDカメラおよびMacIntosh用NIH imageソフトウェアにより定量する。ウェル内の視野をランダムに選択する。
【0435】
内皮細胞アポトーシスの誘導
本明細書に開示する化合物が内皮細胞のアポトーシスを誘導する能力を、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC,Cell Systems)において試験することができる。このアッセイにおける陽性試験は、内皮細胞のアポトーシス誘導が有益となるであろう腫瘍および血管障害の療法処置における、本発明化合物の有用性の指標となる。
【0436】
細胞を、96ウェルマイクロタイタープレート(Amersham Life Science,cytostar−Tシンチレーション用マイクロプレート、RPNQ160、無菌、組織培養処理済み、個別包装)に、10%血清(CSG−培地, Cell Systems)中、2x10
4個/ウェルで、100μlの容量においてプレーティングする。2日目に、被験化合物を含有する被験試料を1%、0.33%および0.11%の希釈度で三重試験法により添加する。細胞を含まないウェルをブランクとして用い、細胞のみを含むウェルを陰性対照として用いる。陽性対照として、スタウロスポリン(staurosporine)の3x原液50μlの1:3系列希釈液を用いた。本発明化合物がアポトーシスを誘導する能力は、カルシウムおよびリン脂質結合タンパク質のメンバーであるアネキシンV(Annexin V)検出のために96ウェルプレートを処理し、アポトーシスを検出することにより判定される。
【0437】
0.2mlのアネキシンV−ビオチン原液(100μg/ml)を、4.6mlの2xCa
2+結合用緩衝液および2.5% BSA中に希釈した(1:25の希釈度)。この希釈したアネキシンV−ビオチン溶液50μlを各ウェル(対照以外)に最終濃度1.0μg/mlとなるように添加した。試料をアネキシン−ビオチンと共に10〜15分間インキュベートした後、
35S−ストレプトアビジンを直接添加した。
35S−ストレプトアビジンを2倍のCa
2+結合用緩衝液、2.5% BSA中に希釈し、すべてのウェルに最終濃度3x10
4cpm/ウェルとなるように添加した。次いでプレートをシールし、1000rpmで15分間遠心分離し、オービタルシェーカー上に2時間おいた。14
50 Microbeta Trilux(Wallac)により分析を実施した。バックグラウンドを超えるパーセントは、陰性対照を超えるカウント/分のパーセント量を表わす。バックグラウンドより30%以上大きいパーセントを陽性とみなす。
【0438】
PDB12細胞の阻害
このアッセイは、本明細書に開示する化合物がPDB12膵管細胞によるタンパク質産生を阻害する効力をもち、したがって、糖尿病などを含めた膵臓によるタンパク質分泌を伴う障害の療法処置に有用であるかを立証するであろう。
【0439】
PDB12膵管細胞を、フィブロネクチンコーティングした96ウェルプレートに、1.5x10
3個/ウェル、100μL/増殖培地180μLでプレーティングする。化合物被験試料を含む増殖培地または化合物を含まない陰性対照100μLを次いでウェルに添加して、最終容量200μLにする。対照は、このアッセイにおいて不活性であることが示されたタンパク質を含有する増殖培地を含む。細胞を37℃で4日間インキュベートする。次いで20μLのAlamar Blue色素(AB)を各ウェルに添加し、AB添加後4時間目に、マイクロタイタープレートリーダーにより530nmの励起および590nmの発光で蛍光の読みを測定する。使用する基準は、ウシ膵臓抽出物(BPE)を含まない細胞、および種々の濃度のBPEを含む細胞である。緩衝液または未知のものに由来するCM対照を各96ウェルプレート上で2回試験する。
【0440】
これらのアッセイにより、化合物処理細胞が産生したAlamar Blue色素算出タンパク質濃度と、陰性対照細胞が産生したAlamar Blue色素算出タンパク質濃度を比較することによって、タンパク質産生の低下率パーセントを計算することができる。陰性対照細胞と比較して25%以上のタンパク質産生低下率パーセントを陽性とみなす。
【0441】
成体心臓栄養補給の刺激
このアッセイは、本明細書に開示する種々の化合物が成体心臓栄養補給(hypertrophy of adult heart)を刺激する能力を測定するために設計された。このアッセイにおける陽性試験は、その化合物が種々の心不全障害の療法処置に有用であると期待されることの指標となる。
【0442】
成体(250g)Sprague Dawleyラットから単離したばかりの心室心筋細胞を2000個/ウェルで180μl容量においてプレーティングする。細胞を単離して1日目にプレーティングし、2日目に化合物を含有する被験試料または増殖培地のみ(陰性対照)(20μl容量)を添加し、次いで5日目に細胞を固定し、染色する。染色後、細胞のサイズを目視する;その際、対照細胞と比較して増殖増強を示さなかった細胞に0.0の数値を与え、対照細胞と比較してわずかないし中等度の増殖増強を示した細胞に1.0の数値を与え、対照細胞と比較して大幅な増殖増強を示した細胞に2.0の数値を与える。陰性対照細胞と比較していかなる程度の増殖増強でも、そのアッセイについて陽性とみなす。
【0443】
PDB12細胞増殖
このアッセイは、本明細書に開示する種々の化合物がPDB12膵管細胞の増殖を誘導する効力をもち、したがって糖尿病などを含めた膵臓によるタンパク質分泌を伴う障害の療法処置に有用であるかどうかを立証する。
【0444】
PDB12膵管細胞を、フィブロネクチンコーティングした96ウェルプレートに1.5x10
3個/ウェル、100μL/増殖培地180μLでプレーティングする。化合物被験試料を含む増殖培地または被験化合物を含まない陰性対照100μLを次いでウェル
に添加して、最終容量200μLにする。対照は、このアッセイにおいて不活性であることが示されたタンパク質を含有する増殖培地を含む。細胞を37℃で4日間インキュベートする。次いで20μLのAlamar Blue色素(AB)を各ウェルに添加し、AB添加後4時間目に、マイクロタイタープレートリーダーにより530nmの励起および590nmの発光で蛍光の読みを測定する。使用する基準は、ウシ膵臓抽出物(BPE)を含まない細胞、および種々の濃度のBPEを含む細胞である。緩衝液または増殖培地のみの未知のものに由来する対照を各96ウェルプレート上で2回試験する。
【0445】
被験化合物処理細胞が産生したAlamar Blue色素算出タンパク質濃度と、陰性対照細胞が産生したAlamar Blue色素算出タンパク質濃度を比較することによって、タンパク質産生の増加率パーセントを計算する。陰性対照細胞と比較して25%以上のタンパク質産生増加率パーセントを陽性とみなす。
【0446】
新生児心臓栄養補給の増強
このアッセイは、本明細書に開示する種々の化合物が新生児心臓栄養補給を刺激する能力を測定するために設計された。このアッセイにおける陽性試験は、その化合物が種々の心不全障害の療法処置に有用であると期待されることの指標となる。
【0447】
1日齢Harlan Sprague Dawleyラットから心筋細胞を得る。細胞(180μl,7.5x10
4/ml,血清<0.1%,単離したばかり)を、1日目に、DMEM/F12+4% FCSで予めコーティングした96ウェルプレートに添加する。被験化合物を含有する被験試料または増殖培地のみ(陰性対照)(20μl/ウェル)を、1日目にウェルに直接添加する。次いで2日目にPGF(20μl/ウェル)を最終濃度10
−6Mで添加する。次いで4日目に細胞を染色し、5日目に目視採点する;その際、陰性対照と比較してサイズ増大を示さなかった細胞を0.0と採点し、陰性対照と比較してわずかないし中等度のサイズ増大を示した細胞を1.0と採点し、陰性対照と比較して大幅なサイズ増大を示した細胞を2.0と採点する。このアッセイにおける陽性結果は、1.0以上の評点である。
【0448】
混合リンパ球反応(MLR)アッセイにおける刺激活性
このアッセイは、本明細書に開示する化合物が刺激されたTリンパ球の増殖の刺激薬として活性であるかを判定するのに用いられる。リンパ球の増殖を刺激する化合物は、免疫応答の増強が有益である場合の療法に有用である。この療法薬は本発明化合物のアンタゴニスト、たとえば本発明化合物に対するネズミ−ヒトキメラ抗体、ヒト化抗体またはヒト抗体の形をとることができる。
【0449】
このアッセイの基本プロトコルは、Current Protocols in Immunology, unit 3.12; eds., J E Coligan, A M Kruisbeek, D H Marglies, E M Shevach, W Strober, 国立予防衛生研究所(National Insitutes of Health), John Wiley & Sons, Inc.発行に記載され
ている。
【0450】
より詳細には、あるアッセイ変法において、末梢血単核細胞(PBMC)を哺乳動物個体、たとえばヒトボランティアから、白血球フェレーシスにより単離する(あるドナーはスティミュレーターPBMCを供給し、他のドナーはレスポンダーPBMCを供給するであろう)。所望により、細胞を単離した後にウシ胎仔血清およびDMSO中で凍結する。凍結細胞をアッセイ培地中で一夜融解し(37℃,5% CO
2)、次いでアッセイ培地(RPMI;10%ウシ胎仔血清,1%ペニシリン/ストレプトマイシン,1%グルタミン,1% HEPES,1%非必須アミノ酸,1%ピルビン酸)に再懸濁して3x10
6個/mlにする。スティミュレーターPBMCは、細胞を照射することにより産生される(約3000ラド)。
【0451】
このアッセイは、三重試験ウェルに下記の混合物をプレーティングすることにより行なわれる:
100:1の、1%または0.1%に希釈した被験試料、
50:1の照射したスティミュレーター細胞、および
50:1のレスポンダーPBMC細胞。
【0452】
100マイクロリットルの細胞培養培地または100マイクロリットルのCD4−IgGを対照として用いる。次いでウェルを37℃、5% CO
2で4日間インキュベートする。5日目に各ウェルをトリチウム化チミジン(1.0mC/ウェル;Amersham)でパルス処理する。6時間後、細胞を3回洗浄し、次いで標識の取込みを評価する。
【0453】
このアッセイの他の変法においては、PBMCをBalb/cマウスおよびC57B6マウスの脾臓から単離する。採取したばかりの脾臓からアッセイ培地(RPMI;10%ウシ胎仔血清,1%ペニシリン/ストレプトマイシン,1%グルタミン,1% HEPES,1%非必須アミノ酸,1%ピルビン酸)中に細胞を掻き取り、これらの細胞をLympholyte M(Organon Teknika)に重ね、2000rpmで20分間遠心分離し、単核細胞をアッセイ培地中で採集および洗浄し、細胞をアッセイ培地に1x10
7個/mlで再懸濁することにより、PBMCを単離する。次いで前記に従ってアッセイを実施する。
【0454】
対照よりプラスの増加を陽性とみなし、180%以上の増加が好ましい。しかし、対照より大きい数値はいずれも被験タンパク質に関する刺激作用の指標となる。
周皮細胞c−Fos誘導
このアッセイは、本明細書に開示する本発明化合物が周皮細胞におけるc−Fos発現を誘導する能力を示し、したがって特定のタイプの周皮細胞関連腫瘍に対する診断マーカーとしてだけでなく、周皮細胞関連腫瘍の療法処置に用いるアンタゴニストを生成するためにも使用されることを示す。詳細には、1日目に周皮細胞をVEC Technologiesから受け取り、フラスコから5ml以外の培地を除去する。2日目に周皮細胞をトリプシン処理し、洗浄し、遠心分離し、次いで96ウェルプレート上にプレーティングする。7日目に培地を除去し、周皮細胞を100μlの被験化合物試料および対照(陽性対照=DME+5%血清+/−PDGF,500ng/ml;陰性対照=プロテイン32)で処理する。二重測定を平均し、SD/CVを判定する。化学発光単位(RLU)ルミノメーター読みで示したプロテイン32(緩衝液対照)値より増加した倍率を、周波数に対してヒストグラム上にプロットする。プロテイン32値より2倍高いものを、このアッセイについて陽性とみなす。アッセイマトリックス:増殖培地=低グルコースDMEM=20% FBS+1xペニシリン/ストレプトマイシン+1xフンギゾン(fungizone)。アッセイ培地=低グルコースDMEM+5% FBS。
【0455】
本発明化合物が軟骨からプロテオグリカンの放出を刺激する能力
本明細書に開示する化合物が軟骨組織からプロテオグリカンの放出を刺激する能力は、下記に従って試験できる。
【0456】
4〜6日月齢のブタの中手指節関節を無菌的に切開し、その下にある骨を慎重に避けて関節軟骨を手動スライシングにより摘出した。軟骨をすりつぶし、95%空気、5% CO
2の加湿雰囲気で、0.1%のBSAならびに100U/mlのペニシリンおよび100μg/mlのストレプトマイシンを含む無血清(SF)培地(DME/F12 1:1)中において24時間、バルク培養した。3回洗浄した後、約100mgの関節軟骨をミクロニクス(micronics)試験管に分配し、前記のSF培地中でさらに24時間培養する。次いで本発明化合物1%を単独で、または軟骨組織からのプロテオグリカン放
出の刺激物質であることが知られているインターロイキン−1アルファ18ng/mlと組み合わせて添加する。次いで上清を採集し、1,9−ジメチル−メチレンブルー(DMB)比色アッセイを用いてプロテオグリカンの量をアッセイする(Farndale and Buttle,
Biochem. Biophys. Acta 883:173-177 (1985))。このアッセイにおける陽性結果は、被
験化合物をたとえばスポーツ関連の軟骨問題、関節軟骨欠損、骨関節炎またはリウマチ性関節炎の処置に使用できるであろうということの指標となる。
【0457】
皮膚血管透過性アッセイ
このアッセイは、本発明化合物が免疫応答を刺激し、動物の注射部位において単核細胞、好酸球およびPMN浸潤の誘導により炎症を誘発するかどうかを試験するために用いられる。免疫応答を刺激する化合物は、免疫応答の刺激が有益である療法に有用である。この皮膚血管透過性アッセイは下記に従って実施される。体重350グラム以上の無毛モルモットをケタミン(ketamine)(75〜80mg/Kg)およびキシラジン(xylazine)5mg/Kgで筋肉内(IM)麻酔する。被験試料である精製した本発明化合物の試料またはコンディショニングした媒質を被験動物の背に、注射部位当たり100μlで皮内注射する。動物当たり約10〜30、好ましくは約16〜24の注射部位が可能である。1μlのエバンスブルー色素(緩衝化生理食塩水中1%)を心臓内注射する。次いで注射部位の斑点(直径mm)を注射の1時間後および6時間後に測定する。注射の6時間後に動物を屠殺した。皮膚注射部位それぞれを組織採取し、ホルマリン中に固定する。次いで皮膚を組織病理学的評価のために調製する。各部位を皮膚への炎症細胞浸潤について評価する。目視できる炎症細胞炎症を伴う部位を陽性と採点する。炎症細胞は、好中球、好酸球、単球またはリンパ球の可能性がある。注射部位に少なくともわずかな血管周囲浸潤があれば陽性と採点し、注射部位に浸潤がないものを陰性と採点する。
【0458】
F2aにより誘導される新生児心臓栄養補給の増強
このアッセイは、本明細書に開示する化合物が新生児心臓の栄養補給を刺激する能力を測定するために設計された;陽性試験は種々の心不全障害の療法処置における有用性の指標となる。
【0459】
1日齢Harlan Sprague Dawleyラットから心筋細胞を得た。細胞(180μl,7.5x10
4/ml,血清<0.1%,単離したばかり)を、1日目に、DMEM/F12+4% FCSで予めコーティングした96ウェルプレートに添加する。被験化合物を含有する被験試料(20μl/ウェル)を、1日目にウェルに直接添加する。次いで2日目に、PGF(20μl/ウェル)を最終濃度10
−6Mで添加する。次いで4日目に細胞を染色し、5日目に目視採点する。目視採点は細胞サイズに基づき、その際、陰性対照と比較してサイズ増大を示さなかった細胞を0.0と採点し、陰性対照と比較してわずかないし中等度のサイズ増大を示した細胞を1.0と採点し、陰性対照と比較して大幅なサイズ増大を示した細胞を2.0と採点する。1.0以上の評点を陽性とみなす。
【0460】
アッセイ応答についてカルシウム濃度が重要であるので、PBSを含有させない。プレートをDMEM/F12プラス4% FCS(200μl/ウェル)でコーティングする。アッセイ培地は下記のものを含有していた:DMEM/F12(2.44gの炭酸水素塩を含む)、μg/mlのトランスフェリン、1μg/mlのインスリン、1μg/mlのアプロチニン、2mmol/Lのグルタミン、100U/mlのペニシリンG、100μg/mlのストレプトマイシン。マンニトール(4%)を含有するタンパク質緩衝液は、陽性信号(評点3.5)を1/10(0.4%)および1/100(0.04%)で示したが、1/1000(0.004%)では示さなかった。したがって、マンニトールを含有する被験試料緩衝液を試験に使用しない。
【0461】
混合リンパ球反応(MLR)アッセイにおける阻害活性
この例は、1以上の本発明化合物が、刺激されたT−リンパ球の増殖阻害薬として有効であることを示す。リンパ球の増殖を阻害する化合物は、免疫応答の抑制が有益な療法に有用である。
【0462】
このアッセイの基本プロトコルは、Current Protocols in Immunology, unit 3.12; eds., J E Coligan, A M Kruisbeek, D H Marglies, E M Shevach, W Strober, 国立予防衛生研究所, John Wiley & Sons, Inc.発行に記載されている。
【0463】
より詳細には、あるアッセイ変法において、末梢血単核細胞(PBMC)を哺乳動物個体、たとえばヒトボランティアから、白血球フェレーシスにより単離する(あるドナーはスティミュレーターPBMCを供給し、他のドナーはレスポンダーPBMCを供給するであろう)。所望により、細胞を単離した後にウシ胎仔血清およびDMSO中で凍結する。凍結細胞をアッセイ培地中で一夜融解し(37℃,5% CO
2)、次いでアッセイ培地(RPMI;10%ウシ胎仔血清,1%ペニシリン/ストレプトマイシン,1%グルタミン,1% HEPES,1%非必須アミノ酸,1%ピルビン酸)中で洗浄および再懸濁して3x10
6個/mlにする。スティミュレーターPBMCは、細胞を照射することにより産生される(約3000ラド)。
【0464】
このアッセイは、三重試験ウェルに下記の混合物をプレーティングすることにより行なわれる:
100:1の、1%または0.1%に希釈した被験試料、
50:1の照射したスティミュレーター細胞、および
50:1のレスポンダーPBMC細胞。
【0465】
100マイクロリットルの細胞培養培地または100マイクロリットルのCD4−IgGを対照として用いる。次いでウェルを37℃、5% CO
2で4日間インキュベートする。5日目に各ウェルをトリチウム化チミジン(1.0mC/ウェル;Amersham)でパルス処理する。6時間後、細胞を3回洗浄し、次いで標識の取込みを評価する。
【0466】
このアッセイの他の変法においては、PBMCをBalb/cマウスおよびC57B6マウスの脾臓から単離する。採取したばかりの脾臓からアッセイ培地(RPMI;10%ウシ胎仔血清,1%ペニシリン/ストレプトマイシン,1%グルタミン,1% HEPES,1%非必須アミノ酸,1%ピルビン酸)中に細胞を掻き取り、これらの細胞をLympholyte M(Organon Teknika)に重ね、2000rpmで20分間遠心分離し、単核細胞をアッセイ培地中で採集および洗浄し、細胞をアッセイ培地に1x10
7個/mlで再懸濁することにより、PBMCを単離する。次いで前記に従ってアッセイを実施する。
【0467】
対照を下回る低下をいずれも阻害化合物について陽性結果とみなし、80%以下の低下が好ましい。しかし、対照より小さい数値はいずれも被験タンパク質に関する阻害作用の指標となる。
【0468】
内皮細胞アポトーシスの誘導(ELISA)
本明細書に開示する化合物が内皮細胞のアポトーシスを誘導する能力を、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC,Cell Systems)において、96ウェル方式により100ng/mlのVEGF、0.1%のBSA、1xペニシリン/ストレプトマイシンを補充した0%血清培地中で試験することができる。
【0469】
このアッセイにおける陽性試験は、望ましくない内皮細胞増殖に関連する種々の状態の
いずれかを療法処置すること、たとえば腫瘍増殖の阻害に対する、本発明化合物の有用性の指標となる。96ウェルプレートのコーティングは、PBS中の0.2%ゼラチン溶液100μlを>30分間、ゲル化させることにより調製できる。ゼラチンミックスを十分に吸引した後、HUVEC細胞を、10%血清含有培地100μl/ウェル中、最終濃度2x10
4個/mlでプレーティングする。細胞を24時間増殖させた後、目的化合物を含有する被験試料を添加する。
【0470】
すべてのウェルに、100ng/mlのVEGF、0.1%のBSA、1xペニシリン/ストレプトマイシンを補充した0%血清培地(Cell Systems)100μlを添加する。被験化合物を含有する被験試料を三重試験法により1%、0.33%および0.11%の希釈度で添加した。細胞を含まないウェルをブランクとして用い、細胞のみを含むウェルを陰性対照として用いる。陽性対照として、50μlの3xスタウロスポリン(staurosporine)原液の1:3系列希釈液を用いる。ELISAの前に細胞を24〜35時間インキュベートする。
【0471】
Boehringer Manual[Boehringer,Cell Death
Detection ELISA plus,カタログNo.1 920 685]に従って溶液を調製して、ELISAによりアポトーシスのレベルを測定する。試料の調製:96ウェルプレートを1 krpmで10分間(200g)遠心分離し;速やかに反転して上清を除去し、プレートをペーパータオル上に裏返すことにより残留液体を除去する。各ウェルに200μlの1x細胞溶解用緩衝液を添加し、室温で30分間、振とうせずにインキュベーションを行なう。プレートを1 krpmで10分間遠心沈殿させ、20μlの溶解物(細胞質画分)をストレプトアビジンコーティングしたMTP内へ移す。80μlの免疫試薬ミックスを、各ウェル内の20μlの溶解物に添加した。MTPを粘着性箔で覆い、室温で2時間、オービタルシェーカー(200rpm)に乗せることによりインキュベートした。2時間後、上清を吸引により除去し、ウェルをウェル当たり250μlの1xインキュベーション用緩衝液で3回すすいだ(吸引により除去)。基質溶液(100μl)を各ウェルに添加し、オービタルシェーカー上、室温、250rpmで、発色が測光分析に十分になるまでインキュベートした(約10〜20分後)。96ウェルリーダーを用いてプレートを405nm、基準波長492nmで読み取った。PIN 32(対照緩衝液)について得たレベルを100%に設定した。>130%のレベルをもつ試料をアポトーシス誘導について陽性とみなした。
【0472】
ヒト静脈内皮細胞カルシウムフラックスアッセイ
このアッセイは、本発明化合物がヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC,Cell Systems)においてカルシウムフラックスを刺激する能力を示すかどうかを判定するために設計された。カルシウムフラックスは特定のリガンドがそれらの受容体に結合する際の応答であり、十分な記載がある。このカルシウムインフラックスアッセイで陽性応答を生じる被験化合物は、ヒト内皮細胞において特定の受容体に結合して生物シグナル伝達経路を活性化すると言うことができる。これにより、最終的にはたとえば内皮細胞分裂、内皮細胞増殖阻害、内皮管形成、細胞移動、アポトーシスなどをもたらす可能性がある。
【0473】
ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC,Cell Systems)を、増殖培地(50:50,グリシンを含まない,1%グルタミン,10mM Hepes,10% FBS,10ng/ml bFGF)中において、96ウェルマイクロタイターViewPlates−96(Packard Instrument Company Part #6005182)マイクロタイタープレートに、細胞密度2x10
4個/ウェルでプレーティングする。プレーティングの翌日、細胞を緩衝液(HBSSプラス10mM Hepes)で3回洗浄し、100μl/ウェルを残す。次いで100μl/ウェルの8μM Fluo−3(2x)を添加する。細胞を37℃/5% CO
2で1.5時間インキュベ
ートする。インキュベーション後、次いで細胞を緩衝液(前記)で3回洗浄し、100μl/ウェルを残す。化合物の被験試料を、異なる96ウェルプレートに、緩衝液中5x濃度で調製する。陽性対照は、50μMイオノマイシン(ionomycin)(5x)に相応する;陰性対照は、プロテイン32に相応する。細胞プレートと試料プレートをFLIPR(Molecular Devices)機器で操作する。FLIPR機器により25μlの被験試料を細胞に添加し、1秒毎に1分間、次いで3秒毎に次の3分間、読取りを行なう。
【0474】
ベースラインから曲線の最大上昇までの蛍光変化(△変化)を計算し、二重測定値を平均する。蛍光増強率をモニターし、1000より大きい△変化および60秒以内での上昇をもつ試料のみを陽性とみなす。
【0475】
線維芽細胞(BHK−21)増殖
このアッセイは、本発明化合物が培養された哺乳動物線維芽細胞の増殖を誘導する作用をもち、したがって機能が哺乳動物系における有用な増殖因子であるかを示すであろう。
【0476】
このアッセイは下記に従って実施される。BHK−21線維芽細胞を標準増殖培地に2500個/ウェルで全容量100μlにおいてプレーティングする。次いで化合物ベータ−FGF(陽性対照)または化合物なし(陰性対照)を、1μg/mlのヘパリンの存在下でウェルに添加し、全最終容量200μlにする。次いで細胞を37℃で6〜7日間インキュベートする。インキュベーション後、培地を除去し、細胞をPBSで洗浄し、次いで酸性ホスファターゼ基質反応混合物(100μl/ウェル)を添加する。次いで細胞を37℃で2時間インキュベートする。次いで10μL/ウェルの1N NaOHを添加して、酸性ホスファターゼ反応を停止する。次いでプレートをOD 405nmで読み取る。このアッセイにおける陽性は、酸性ホスファターゼ活性が陰性対照より少なくとも50%高いものである。
【0477】
成体心臓肥大の阻害
このアッセイは、本明細書に開示する種々の化合物が成体心臓肥大を阻害する能力を測定するために設計された。このアッセイにおいて陽性を示す化合物は、心臓肥大に関連する心障害の療法処置に有用な可能性がある。
【0478】
成体(250g)Harlan Sprague Dawleyラットから新たに心室心筋細胞を単離し、細胞を2000個/ウェルで180μl容量においてプレーティングする。2日後、被験化合物を含有する被験試料(20μl)を添加する。5日目に細胞を固定し、次いで染色する。ANPメッセージの増大をPCRにより数時間後に測定することもできる。結果は細胞サイズの目視採点に基づく:0=阻害なし、−1=わずかな阻害、−2=大幅な阻害。0未満の評点を陽性とみなす。活性基準は0.1mMのフェニルアラニン(PE)に相応し、これが陽性対照である。アッセイ培地には下記のものが含まれる:M199(改変)−グルタミンを含まない、NaHCO
3、フェノールレッド、下記を補充:100nMのインスリン、0.2%のBSA、5mMのクレチン(cretine)、2mMのL−カルニチン、5mMのタウリン、100U/mlのペニシリンG、100μg/mlのストレプトマイシン(CCT培地)。96ウェルプレートの内側60ウェルのみを用いる。これらのうち6ウェルを陰性および陽性(PE)対照用に確保する。
【0479】
内皮細胞におけるc−fosの誘導
このアッセイは、本発明化合物が内皮細胞においてc−fosを誘導する能力を示すかどうかを判定するために設定された。このアッセイにおいて陽性を示す化合物は、たとえば創傷治癒などを含めた、血管新生が有益である状態または障害の療法処置に有用であると期待されるであろう(これらの化合物のアゴニスト)。このアッセイにおいて陽性を示
す化合物のアンタゴニストは癌性腫瘍の療法処置に有用であると期待されるであろう。
【0480】
ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC,Cell Systems)を増殖培地(50%
Ham’s F12 w/o GHT:低グルコース、および50% DMEM、グリシンなし;下記を含む:NaHCO
3、1%グルタミン、10mM HEPES、10%
FBS、10ng/ml bFGF)中において、96ウェルプレートに細胞密度1x10
4個/ウェルでプレーティングする。プレーティングの翌日、増殖培地を除去することにより細胞を飢餓状態にし、細胞を100μl/ウェルの被験試料および対照(陽性対照=増殖培地;陰性対照=プロテイン32、緩衝液=10mM HEPES、14mM NaCl、4%(w/v)マンニトール、pH6.8)で処理する。細胞を37℃で30分間、5% CO
2中でインキュベートする。試料を取り出し、bDNAキットプロトコル(Chiron Diagnostics,カタログ#6005−037)の第1部に従う;下記に挙げる大文字で始まる試薬/緩衝液はそれぞれキットから得られる。
【0481】
要約すると、試験に必要なTM溶解緩衝液(TM Lysis Buffer)およびプローブ(Probe)の量を、製造業者が提供する情報に基づいて計算する。適切な量の融解したプローブをTM溶解緩衝液に添加する。捕獲ハイブリダイゼーション緩衝液(Capture Hybridization Buffer)を室温に高める。bDNAストリップを金属製ストリップホルダーに取り付け、100μlの捕獲ハイブリダイゼーション緩衝液を必要な各b−DNAウェルに添加し、続いて少なくとも30分間インキュベートする。細胞を含む試験プレートをインキュベーターから取り出し、真空マニホールドにより培地を静かに除去する。プローブを含む溶解ハイブリダイゼーション緩衝液(Lysis Hybridization Buffer)100μlを、マイクロタイタープレートの各ウェルにピペットで速やかに添加する。次いでプレートを55℃で15分間インキュベートする。プレートをインキュベーターから取り出して、マイクロタイターアダプターヘッド付きボルテックスミキサーに乗せ、#2設定で1分間、ボルテックス撹拌する。80μlの溶解物を取り出して、捕獲ハイブリダイゼーション緩衝液を入れたbDNAウェルに添加し、ピペットで吸上げ、吸出しして混合する。プレートを53℃で少なくとも16時間インキュベートする。
【0482】
翌日、キットプロトコルの第2部を続ける。詳細には、プレートをインキュベーターから取り出し、台に乗せて10分間冷却させる。必要な添加容量を、製造業者が提供する情報に基づいて計算する。増幅器作動液(Amplifier Working Solution)は、ALハイブリダイゼーション緩衝液(AL Hybridization Buffer)中における増幅器濃縮液(Amplifier Concentrate)(20fm/μl)の1:100希釈液を作成することにより調製される。ハイブリダイゼーション混合物をプレートから除去し、洗浄液A(Wash A)で2回洗浄する。50μlの増幅器作動液を各ウェルに添加し、ウェルを53℃で30分間インキュベートする。次いでプレートをインキュベーターから取り出し、10分間放冷する。標識プローブ作動液(Label Probe Working Solution)は、ALハイブリダイゼーション緩衝液中における標識濃縮液(Label Concentrate)(40pmole/μl)の1:100希釈液を作成することにより調製される。10分間の冷却期間の後、増幅器ハイブリダイゼーション混合物を除去し、プレートを洗浄液Aで2回洗浄する。50μlの標識プローブ作動液を各ウェルに添加し、ウェルを53℃で15分間インキュベートする。10分間冷却させた後、基質(Substrate)を室温に高める。アッセイに必要な基質の各mlに3μlの基質増強剤(Substrate Enhancer)を添加して、プレートを10分間放冷し、標識ハイブリダイゼーション混合物を除去し、プレートを洗浄液Aで2回、洗浄液D(Wash D)で3回洗浄する。増強剤を含む基質溶液50μlを各ウェルに添加する。プレートを37℃で30分間インキュベートし、適切なルミノメーターでRLUを読み取る。
【0483】
二重測定値を平均し、変動定数を決定する。陰性対照(前記のプロテイン32(Protein 32)/HEPES緩衝液)値を超える活性倍率の尺度は、化学発光単位(RLU)により示される。化合物が陰性緩衝液対照より少なくとも2倍高い値を示した場合、それらの結果を陽性とみなす。陰性対照=1.00RLU、希釈度1.00%。陽性対照=8.39RLU、希釈度1.00%。
【0484】
モルモット血管漏出
このアッセイは、本発明化合物が血管透過を誘導する能力を示すかどうかを判定するために設定された。このアッセイにおいて陽性を示す化合物は、たとえば局所免疫系細胞浸潤の増強が有益となる可能性のある状態を含めた、血管透過性増強が有益となる状態の療法処置に有用であると期待される。
【0485】
体重350グラム以上の無毛モルモットをケタミン(75〜80mg/Kg)およびキシラジン5mg/Kgで筋肉内麻酔する。被験化合物を含有する被験試料または被験化合物を含有しない生理食塩水を、被験動物の背に注射部位当たり100μlで皮内注射する。動物当たり約16〜24の注射部位である。次いで1mlのエバンスブルー色素(PBS中1%)を心臓内注射する。被験物質投与の1時間後および6時間後に、化合物に対する皮膚血管透過性応答(すなわち注射の注射部位の斑点)を注射部位からの青色漏出の直径(mm)の測定により目視採点する。注射部位の青色の直径(mm)を測定して記録する;血管漏出の程度。精製タンパク質を試験した場合、少なくとも5mmの直径をこのアッセイについて陽性とみなす;これは血管漏出または透過性を誘導する能力の指標となる。コンディショニングした媒質試料について、直径7mmより大きい応答を陽性とみなす。0.1μg/100μlのヒトVEGFが陽性対照として用いられ、直径15〜23mmの応答を誘導する。
【0486】
内皮細胞アポトーシスの検出(FACS)
本明細書に開示する化合物が内皮細胞のアポトーシスを誘導する能力を、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC,Cell Systems)において、ゼラチン処理したT175フラスコ内で10継代以内のHUVECを用いて試験する。このアッセイで陽性を示す化合物は、たとえば腫瘍の療法処置を含めて内皮細胞のアポトーシスが有益となるであろう状態の療法処置に有用であると期待される。
【0487】
1日目に細胞を分配し[ゼラチン処置した6cm ディッシュ当たり細胞420,000個(11x10
3個/cm
2,Falcon, Primaria)]、血清含有培地(CS−C,Cell System)中で一夜または16〜24時間培養する。
【0488】
2日目に、細胞を5mlのPBSで1回洗浄し;3mlの0%血清培地をVEGF(100ng/ml)と共に添加し;30μlのPRO被験化合物(最終希釈度1%)または0%血清培地(陰性対照)を添加する。収穫前に混合物を48時間培養する。
【0489】
次いで細胞をFACS分析用に収穫する。培地を吸引し、細胞をPBSで1回洗浄する。5mlの1xトリプシンをT−175フラスコ内の細胞に添加し、細胞がプレートから離脱するまで細胞を放置する(約5〜10分間)。5mlの増殖培地の添加によりトリプシン処理を停止する。細胞を1000rpm、4℃で5分間遠心分離する。培地を吸引し、10mlの10%血清補充培地(Cell Systems)に再懸濁し、5μlのAnnexin−FITC(BioVison)を添加し、冷却した試験管をFACS分析する。陽性結果は、陰性対照と比較して化合物処理した試料においてアポトーシスが増大することと判定される。
【0490】
皮質ニューロンにおけるc−fosの誘導
このアッセイは、被験化合物が皮質ニューロンにおいてc−fosを誘導する能力を示すかどうかを判定するために設計された。このアッセイで陽性を示す化合物は、ニューロン増殖が有益となるであろう神経系障害および傷害の療法処置に有用であると期待されるであろう。
【0491】
皮質ニューロンを解離させ、96ウェルプレートにおいて増殖培地に細胞10,000個/ウェルでプレーティングする。約2回の細胞分裂の後、細胞を化合物と共に、または化合物なしで(陰性対照)30分間処理する。次いで細胞を冷メタノールで5分間固定し、リン酸化CREBに対する抗体で染色する。次いで化学発光を用いてmRNAレベルを計算する。このアッセイにおける陽性は、陰性対照と比較して少なくとも2倍のc−fosメッセージ増大をもたらすいずれかの係数である。
【0492】
内皮管形成の刺激
このアッセイは、本発明化合物が内因性増殖因子の不存在下で内皮性の空胞(vacuole)および内腔(lumen)形成を促進する能力を示すかどうかを判定するために設計された。このアッセイで陽性を示す化合物は、たとえばピノサイトーシス、イオンポンプ作用、血管透過性および/またはジャンクション形成の刺激を含めた内皮空胞および/または内腔形成が有益となるであろう障害の療法処置に有用であると期待されるであろう。
【0493】
HUVEC細胞(初代から<8継代)を、I型ラット尾コラーゲン(最終濃度2.6mg/ml)と、細胞6x10
5個/mlの密度で混合し、1%のFBSおよび1μMの6−FAM−FITC色素(空胞の形成中にそれらを染色するため)を補充したM199培養培地50μl/ウェル中で、被験化合物の存在下にプレーティングする。次いで細胞を37
oC/5% CO
2で48時間インキュベートし、3.7%ホルマリンにより室温で10分間固定し、M199培地で5分間洗浄し、次いでRh−Phalloidinにより4℃で一夜染色し、続いて4μM DAPIで核染色する。このアッセイにおける陽性結果は、50%以上の細胞に空胞が存在する場合である。
【0494】
骨格筋におけるグルコースおよび/またはFFA取込みに影響を与える本発明化合物の検出
このアッセイは、本発明化合物が骨格筋によるグルコースまたはFFA取込みに影響を与える能力を示すかどうかを判定するために設計された。このアッセイで陽性を示す化合物は、たとえば糖尿病または高もしくは低インスリン血症を含めて骨格筋によるグルコース取込みの刺激または阻害が有益となるであろう障害の療法処置に有用であると期待されるであろう。
【0495】
96ウェル方式で、アッセイすべき化合物を分化した初代ラット骨格筋に添加し、一夜インキュベートする。次いで本発明化合物(+/−インスリン)を含む新鮮な培地をウェルに添加する。次いで試料培地をモニターして、骨格筋によるグルコースおよびFFA取込みを測定する。インスリンは骨格筋によるグルコースおよびFFA取込みを刺激し、本発明化合物を用いない培地中のインスリンは陽性対照として用いられ、採点の限界である。被験化合物はグルコースおよびFFA取込みを刺激または阻害する可能性があるので、このアッセイにおいてインスリン対照より1.5倍以上または0.5倍未満の場合には、結果は陽性と採点される。
【0496】
杆体光受容細胞生存アッセイ
このアッセイは、本発明化合物が杆体光受容細胞の生存/増殖を高める作用をする能力をもち、したがってたとえば動物における色素性網膜炎、AMDなどによる視力喪失の処
置を含めた、網膜の障害または傷害の療法処置に有用であることを調べる。
【0497】
Sprague Dawley仔ラット(生後7日目、混合集団:グリアおよび網膜神経細胞タイプ)をCO
2麻酔後に断頭屠殺し、無菌条件下で眼を摘出する。色素上皮および他の眼組織から神経性網膜を剥離し、次いでCa
2+、Mg
2+を含まないPBS中の0.25%トリプシンにより解離させて単細胞懸濁液にする。網膜をこの溶液中において37℃で7〜10分間インキュベートした後、1mlの大豆トリプシンインヒビターの添加によりトリプシンを不活性化する。96ウェルプレートに、N
2を補充したDMEM/F12中、約100,000個/ウェルで細胞をプレーティングする。すべての実験について、細胞を37℃で水飽和した5% CO
2雰囲気において増殖させる。7〜10日間の培養後、細胞をカルセインAMまたはCellTracker Green CMFDAにより染色し、次いで4%パラホルムアルデヒドで固定する。視覚色素ロドプシンに対するモノクローナル抗体であるRho 4D2(腹水またはIgG 1:100)を用いて間接的免疫蛍光により杆体光受容細胞を検出する。結果を生存率%として示す:カルセイン総数−培養7〜10日目のロドプシン陽性細胞を、培養7〜10日目のロドプシン陽性細胞の総数で割る。細胞総数(蛍光性)を20x対物倍率でCCDカメラおよびMacIntosh用NIH画像ソフトウェアにより定量する。ウェル内の視野をランダムに選択する。
【0498】
インビトロ抗腫瘍アッセイ
本明細書に開示する化合物の抗増殖活性は、国立癌研究所(National Cancer Institute)(NCI)の発明による疾患指向インビトロ抗癌薬探索アッセイ法で、スルホローダミンB(SRB)色素結合アッセイ法を用いて判定できる;本質的にSkehan et al., J. Natl. Cancer Inst. 82:1107-1112 (1990)に記載の方法。この試験に用いた60の腫瘍細胞系(“NCIパネル”)、ならびにそれらのインビトロでの維持および培養のための条件は、Monks et al., J. Natl. Cancer Inst. 83:757-766 (1991)に記載されている。このスクリーニングの目的は、種々のタイプの腫瘍に対する被験
化合物の細胞毒性および/または細胞増殖抑制活性をまず評価することである(Monks et al.,前掲; Boyd, Cancer: Princ. Pract. Oncol. Update 3(10):1-12 [1989])。
【0499】
約60のヒト腫瘍細胞系に由来する細胞をトリプシン/EDTA(Gibco)で収穫し、1回洗浄し、IMEMに再懸濁し、それらの生存率を測定する。細胞懸濁液をピペットで(100μL容量)別の96ウェルマイクロタイタープレートに添加する。過剰増殖を防ぐために、6日間インキュベーションの細胞密度は、2日間インキュベーションのものより低い。播種物に安定化のために37℃で24時間のプレインキュベート期間をおく。意図する試験濃度の2倍希釈液を、ゼロ時点で100μLずつマイクロタイタープレートのウェルに添加する(1:2希釈)。被験化合物を5種類の半対数希釈(1000〜100,000倍)で評価する。インキュベーションを2日間および6日間、5% CO
2雰囲気および湿度100%で行なう。
【0500】
インキュベーション後、培地を除去し、細胞を0.1mlの10%トリクロロ酢酸中、40℃で固定する。プレートを脱イオン水で5回すすぎ、乾燥させ、1%酢酸に溶解した0.4%スルホローダミンB色素(Sigma)0.1mlで30分間染色し、1%酢酸で4回すすいで結合していない色素を除去し、乾燥させ、染色物を0.1mlの10mMトリス塩基[トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン]、pH10.5で5分間抽出する。492nmにおけるスルホローダミンBの吸光度(OD)をコンピューター連係96ウェルマイクロタイタープレートリーダーにより測定する。
【0501】
被験試料が1種類以上の濃度で少なくとも50%の増殖阻害作用を示した場合、それを陽性とみなす。
初代ラット脂肪細胞によるグルコースまたはFFA取込みに影響を与える本発明化合物の判定
このアッセイは、本発明化合物が脂肪細胞によるグルコースまたはFFA取込みに影響を与える能力を示すかどうかを判定するために設計された。このアッセイで陽性を示す化合物は、たとえば肥満症、糖尿病または高もしくは低インスリン血症を含めて脂肪細胞によるグルコース取込みの刺激または阻害が有益となるであろう障害の療法処置に有用であると期待されるであろう。
【0502】
96ウェル方式で、アッセイすべき化合物を初代ラット脂肪細胞に添加し、一夜インキュベートする。試料を4および16時間目に採取し、グリセロール、グルコースおよびFFAの取込みをアッセイする。16時間のインキュベーション後、インスリンを培地に添加し、4時間インキュベートする。この時点で試料を採取し、グリセロール、グルコースおよびFFAの取込みを測定する。インスリンを含有し、本発明化合物を含有しない培地を陽性基準対照として用いる。被験化合物はグルコースおよびFFA取込みを刺激または阻害する可能性があるので、このアッセイにおいてインスリン対照より1.5倍以上または0.5倍未満の場合、結果は陽性と採点される。
【0503】
軟骨細胞再分化アッセイ
このアッセイは、本発明化合物が軟骨細胞の再分化を誘導し、したがって種々の骨障害および/または軟骨障害、たとえばスポーツ傷害および関節炎の処置に有用であるかどうかを示す。このアッセイは下記に従って実施される。4〜6カ月齢の雌ブタの中手指節関節の関節軟骨を一夜コラゲナーゼ消化することにより、ブタ軟骨細胞を単離する。単離した細胞を、次いで25,000個/cm
2で、10%のFBSおよび4μg/mlのゲンタマイシンを含有するHam F−12中において播種する。培養培地を3日目毎に交換し、次いで細胞を96ウェルプレートに5,000個/ウェルで、血清を含まない同培地100μl中において播種し、100μlの被験化合物、5nMのスタウロスポリン(陽性対照)または培地のみ(陰性対照)を添加して、最終容量200μl/ウェルにする。37℃で5日間のインキュベーション後、各ウェルの写真をとり、軟骨細胞の分化状態を判定する。軟骨細胞の再分化が陰性対照より陽性対照の方に類似すると判定された場合、このアッセイにおいて陽性結果となる。
【0504】
赤芽細胞系における胎児性ヘモグロビン誘導
このアッセイは、赤芽細胞系において成体ヘモグロビンから胎児性ヘモグロビンへの移行を誘導する能力について化合物をスクリーニングするのに有用である。このアッセイで陽性を示す化合物は、種々の哺乳動物ヘモグロビン関連障害、たとえば種々のサラセミア(地中海貧血)の療法処置に有用であると期待される。このアッセイは下記に従って実施される。赤芽細胞を、96ウェル方式で、標準増殖培地に1000個/ウェルでプレーティングする。被験化合物を増殖培地に0.2%または2%の濃度で添加し、細胞を37℃で5日間インキュベートする。陽性対照として細胞を100μMヘミンで処理し、陰性対照としては細胞を処理しない。5日後、細胞溶解物を調製し、ガンマグロビン(胎児マーカー)の発現を分析する。このアッセイにおける陽性は、陰性対照より少なくとも2倍高いレベルのガンマグロビンである。
【0505】
マウス腎メサンギウム細胞増殖アッセイ
このアッセイは、本発明化合物が哺乳動物腎メサンギウム細胞の増殖を誘導し、したがって、メサンギウム細胞機能低下に関連する腎障害、たとえばベルガー病、またはシェーンライン-ヘノッホ紫斑病、セリアック病、疱疹状皮膚炎もしくはクローン病に関連する
他の腎障害の処置に有用であるかどうかを示す。このアッセイは下記に従って実施される。1日目に、マウス腎メサンギウム細胞を96ウェルプレートにおいて、増殖培地(ダルベッコの改変イーグル培地とHamのF12培地との3:1混合物、95%ウシ胎仔血清
、5%の14mM HEPESを補充)中で一夜増殖させる。2日目に、被験化合物を2種類の濃度(1%および0.1%)で無血清培地中に希釈し、細胞に添加する。対照試料は無血清培地のみである。4日目に、20μlのCell Titer 96 Aqueous one溶解試薬(Progema)を各ウェルに添加し、比色反応を2時間進行させた。次いで490 nmで吸光度(OD)を測定する。陽性対照は、対照の読みより少なくとも15%高い吸光度の読みである。
【0506】
ラット卵形嚢支持細胞の増殖
このアッセイは、本発明化合物が、聴覚有毛細胞前駆体である内耳支持細胞に対して有効なマイトジェンとして作用し、したがって、哺乳動物において聴覚有毛細胞の再生を誘導して難聴を処置するのに有用であることを判定するために用いられる。このアッセイは下記に従って実施される。ラットUEC−4卵形嚢(utricular)上皮細胞を、96ウェルプレートに3000個/ウェルの密度で200μlの血清含有培地中において33℃で分配する。細胞を一夜培養し、次いで無血清培地、37℃に切り換える。本発明化合物の種々の希釈液(または対照については化合物なし)を次いで培養物に添加し、細胞を24時間インキュベートする。24時間のインキュベーション後、
3H−チミジン(1μCi/ウェル)を添加し、次いで細胞をさらに24時間培養する。次いで培養物を洗浄して、取り込まれていない放射性標識を除去し、細胞を回収し、Cpm/ウェルを測定する。対照培養と比較して少なくとも30%高いCpmを、このアッセイにおける陽性とみなす。
【0507】
軟骨細胞増殖アッセイ
このアッセイは、本発明化合物が培養された軟骨細胞の増殖および/または再分化を誘導する能力を示すかどうかを判定するために設計された。このアッセイで陽性を示す化合物は、種々の骨障害および/または軟骨障害、たとえばスポーツ傷害および関節炎の療法処置に有用であると期待されるであろう。
【0508】
4〜6カ月齢の雌ブタの中手指節関節の関節軟骨を一夜コラゲナーゼ消化することにより、ブタ軟骨細胞を単離する。単離した細胞を、次いで25,000個/cm
2で、10%のFBSおよび4μg/mlのゲンタマイシンを含有するHam F−12中において播種する。培養培地を3日目毎に交換し、5日目毎に細胞を25,000個/cm
2で再播種する。12日目に、細胞を96ウェルプレートに5,000個/ウェルで、血清を含まない同培地100μl中において播種し、100μlの無血清培地(陰性対照)、スタウロスポリン(5nM;陽性対照)または被験化合物を添加して、最終容量200μl/ウェルにする。37℃で5日後、20μlのAlamarブルーを各ウェルに添加し、プレートを37℃でさらに3時間インキュベートする。次いで各ウェルの蛍光を測定する(励起:530nm;発光:590nm)。200μlの無血清培地を含むプレートの蛍光を測定してバックグラウンドを求める。化合物処理試料の蛍光が陰性対照より陽性対照の方に類似する場合、このアッセイにおいて陽性結果が得られる。
【0509】
LIF+ET−1により誘発される新生児心臓肥大の抑制
このアッセイは、本発明化合物がLIFおよびエンドセリン−1(ET−1)により誘発される新生児心臓肥大を抑制する能力を示すかどうかを判定するために設計された。このアッセイで陽性応答を与える被験化合物は、心筋の不都合な肥大を特徴とするかまたはそれに関連する心不全性の疾患または障害の療法処置に有用であろう。
【0510】
1日齢Harlan Sprague Dawleyラットに由来する心筋細胞(180μl、7.5x10
4個/ml、血清<0.1、単離したばかり)を、1日目に、予めDMEM/F12+4% FCSでコーティングした96ウェルプレートに導入する。次いで2日目に、被験化合物試料または増殖培地のみ(陰性対照)を20μl容量でウェル
に直接添加する。次いで3日目に、LIF+ET−1をウェルに添加する。さらに2日間の培養後に細胞を染色し、次いで翌日に目視採点する。化合物処理した心筋細胞が非処理心筋細胞より平均して視覚的に小さい場合、または個数が少ない場合、このアッセイにおいて陽性となる。