(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6357238
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】ポリオキシメチレン樹脂組成物およびこれを含む成形品
(51)【国際特許分類】
C08L 59/00 20060101AFI20180702BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20180702BHJP
C08L 83/04 20060101ALI20180702BHJP
C08L 23/06 20060101ALI20180702BHJP
C08K 5/103 20060101ALI20180702BHJP
【FI】
C08L59/00
C08K3/22
C08L83/04
C08L23/06
C08K5/103
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-544158(P2016-544158)
(86)(22)【出願日】2014年12月31日
(65)【公表番号】特表2017-501284(P2017-501284A)
(43)【公表日】2017年1月12日
(86)【国際出願番号】KR2014013100
(87)【国際公開番号】WO2015102405
(87)【国際公開日】20150709
【審査請求日】2016年6月30日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0168006
(32)【優先日】2013年12月31日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2014-0194416
(32)【優先日】2014年12月30日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】513104239
【氏名又は名称】コーロン プラスティックス,インク
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】カン,キョン ミン
(72)【発明者】
【氏名】シン,ボム シク
(72)【発明者】
【氏名】パク,ウン ハ
【審査官】
大木 みのり
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−142176(JP,A)
【文献】
特開2009−082786(JP,A)
【文献】
国際公開第98/021280(WO,A1)
【文献】
特開2010−270203(JP,A)
【文献】
特開平10−237268(JP,A)
【文献】
特表2008−527131(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00 −101/14
C08K 3/00 − 13/08
B01J 20/00 − 20/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオキシメチレン樹脂;
前記ポリオキシメチレン樹脂100重量部に対して、
水酸化アルカリ土類金属0.01〜0.5重量部;
多孔性有機・無機混成シリケート0.01〜1重量部;
LDPE(Low Density Polyethylene)0.01〜1重量部;および
多価アルコール脂肪酸エステル0.02〜0.5重量部を含み、
前記多孔性有機・無機混成シリケートは、シリカ前駆体と、有機シランとを混合して加水分解することを含む工程により製造可能なものである、ポリオキシメチレン樹脂組成物。
【請求項2】
前記多孔性有機・無機混成シリケートは50nm以下の気孔および200〜2000m2/gの表面積を有することを特徴とする、請求項1に記載のポリオキシメチレン樹脂組成物。
【請求項3】
前記LDPEは0.910〜0.940g/cm3の密度を有することを特徴とする、請求項1に記載のポリオキシメチレン樹脂組成物。
【請求項4】
前記多価アルコール脂肪酸エステルは300〜1000の重量平均分子量を有することを特徴とする、請求項1に記載のポリオキシメチレン樹脂組成物。
【請求項5】
次の式1による、正の値で表現した黄色度変化率(ΔYI、Delta Yellow Index)が3以下であり、金型離型性(mold deposit)が500以上であることを特徴とする、請求項1に記載のポリオキシメチレン樹脂組成物。
(式1)ΔYI*=YI*t−YI*
ここで、YI*tは200℃で30分エージング後のサンプルのYI値であり、YI*は200℃で3時間エージング後のサンプルのYI値である。
YI値は、次の式による値である。
(式2)YI=100(1.28X−1.06Z)/Y
ここで、X、YおよびZは、それぞれ、標準光Cにおける試験用試料および試験片の3刺激値である。このとき、標準光Cとは、標準光源であって、温度が6,744Kの相関色温度を有する昼光を示す光を意味する。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のポリオキシメチレン樹脂組成物を含む、成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオキシメチレン樹脂組成物およびこれを含む成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオキシメチレン(polyoxymethylene)樹脂は、機械的強度と耐衝撃性のバランスが取れた高性能プラスチックであって、電子機器用品、自動車部品などの広範囲な分野において使用されてきた。
【0003】
しかし、ポリオキシメチレン(polyoxymethylene)樹脂は、構造上、加熱酸化雰囲気の下、酸性またはアルカリ性条件の下で分解されやすく、長時間の射出を行うと、金型(mold)に異物が付着する現象が発生する。
【0004】
このように不十分な熱安定性及び金型離型性(金型付着物(mold deposit))を向上させるために、化学的に活性な末端を安定化させ、金型離型剤を添加して金型離型性を改善する方法が知られている。ところが、この場合、成形時または押出時にホルムアルデヒド(formaldehyde)ガス及び多糖類の発生によって開始されるホルモース(Formose)反応による黄褐色への変色や金型への異物付着などの問題があった。
【0005】
これを解決するための従来技術の方案として、ポリオキシメチレン(polyoxymethylene)樹脂の熱安定性を向上させるべく、ヒンダードフェノールと、炭素数10〜20の脂肪酸アルカリ土類金属塩および/またはアルカリ土類金属の水酸化物とを含有させることにより、酸化および熱分解に対して安定化されたポリオキシメチレン樹脂組成物について特公昭55−22508号公報に開示されており、ポリオキシメチレン樹脂にヒンダードフェノールと炭素数22〜36の脂肪酸アルカリ土類金属塩とを含有させることにより、酸化および熱分解に対して安定化され且つ変色が抑制されたポリオキシメチレン樹脂組成物について特公昭60−56784号公報に開示されている。
【0006】
特開平3−14857号公報には、ヒンダードアミン(amin)化合物と分子量400以上のヒンダードフェノール系酸化防止剤と炭素数12以上のカルボン酸の金属塩との組み合わせが提案されており、特開昭62−45662号公報には、脂肪酸とリン酸塩との組み合わせが提案されており、特開平11−29692号公報には、脂肪酸、リン酸塩、カーボンブラック(carbonblack)、キノリン(quinoline)化合物、アミド(amide)化合物、及びアミン(amine)化合物の群から選択された少なくとも1種の熱安定剤の組み合わせが提案されている。特公昭34−5440号公報には、ポリアミド樹脂を配合したポリオキシメチレン(polyoxy methylene)樹脂組成物が開示されているが、その組成物は、高温、長時間での熱安定性には優れるが、発生するホルムアルデヒド(formaldehyde)の作用および酸素の作用を受けた黄褐色への変色を起こすという問題点がある。
【0007】
また、特開平10−251481号公報には、ポリオキシメチレン(polyoxy methylene)樹脂にリン酸カルシウムを配合することが記載されており、ヒンダードフェノール系酸化防止剤などの熱安定剤や、ベンゾトリアゾール(benzotriazole)系物質、シュウ酸アニリド(anilide)系物質、ヒンダードアミン(amine)系物質などの光安定剤を配合することが記載されている。
【0008】
特公昭62−4422号公報には、ポリオキシメチレン(polyoxymethylene)樹脂にポリアミドと、炭素数12〜35の脂肪酸、炭素数12〜35の脂肪酸カルシウム塩、炭素数12〜36の脂肪族アルコールのカルシウムまたはマグネシウム塩よりなる群から選ばれた少なくとも一つとを含有させることにより、成形時に金型への析出物の付着が極めて少なく、熱安定性に優れたポリオキシメチレン(polyoxymethylene)樹脂組成物が開示されており、特公昭62−58387号公報には、ポリオキシメチレン(polyoxymethylene)樹脂に、アミン置換トリアジン化合物とヒンダードフェノールと、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、無機酸塩、カルボン酸塩またはアルコキシドとを含有させることにより、熱安定性を高めたポリオキシメチレン(polyoxymethylene)樹脂組成物が開示されている。
【0009】
金型離型性と流動性を同時に改良する方法として、特開平4−239566号公報には、液状のエチレン・α−オレフィン系重合体を添加する方法が提案されているが、添加剤及びポリアセタール樹脂の中への分散性に劣るため、射出成形品及び押出成形品において層剥離を起こすという問題がある。
【0010】
しかし、このような、安定剤を適切に組み合わせて配合したポリオキシメチレン(polyox methylene)樹脂組成物も、成形および押出成形時に成形機のシリンダー(cylinder)の中で熱または酸素の作用を受けて重合体の末端または主鎖が分解され、ホルムアルデヒドガスが発生することを完全に防止し、金型への異物付着現象を減少させることは困難である。
【0011】
末端基を安定化させる過程でホルムアルデヒドが酸化してギ酸(formic acid)を生成し、摩擦熱による分解が起こって主鎖を分解させ、安定剤がホルムアルデヒドと反応して成形品への着色および金型への異物付着を起こしやすくなる。つまり、このような安定剤の組成では、ポリオキシメチレン(polyoxymethylene)樹脂組成物の熱安定性を高めるとともに、成形および押出時の変色を抑制し、金型への異物付着を減らすことにおいて問題点があった。特に、押出後の結晶化および応力除去のための高温でのエージング(aging)後の変色が発生して、商品価値を失ってしまうので、これを改善した成形および押出成形品が強く求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこで、本発明は、ポリオキシメチレン樹脂に固有の優れた機械的強度と耐衝撃性は維持しながら、改善された熱安定性および成形品の金型離型性(mold deposit)を有するポリオキシメチレン樹脂組成物を提供することを目的とする。
【0013】
また、本発明は、前記ポリオキシメチレン樹脂組成物を含む成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
このため、本発明は、好適な第1実施形態として、ポリオキシメチレン樹脂;前記ポリオキシメチレン樹脂100重量部に対して、水酸化アルカリ土類金属0.01〜0.5重量部;多孔性有機・無機混成シリケート0.01〜1重量部;LDPE(低密度ポリエチレン;Low Density Polyethylene)0.01〜1重量部;および多価アルコール脂肪酸エステル0.02〜0.5重量部を含む、ポリオキシメチレン樹脂組成物を提供する。
【0015】
前記実施形態による多孔性有機・無機混成シリケートは、50nm以下の気孔および200〜2000m
2/gの表面積を有してもよい。
【0016】
前記実施形態によるLDPEは、0.910〜0.940g/cm
3の密度を有してもよい。
【0017】
前記実施形態による多価アルコール脂肪酸エステルは、300〜1000の重量平均分子量を有してもよい。
【0018】
前記実施形態によるポリオキシメチレン樹脂組成物は、200℃で3時間エージング(aging)の後、黄色度変化率(ΔYI、Delta Yellow Index)が3以下であり、金型離型性(mold deposit)が500以上であってもよい。
【0019】
また、本発明は、好適な第2実施形態として、前記ポリオキシメチレン樹脂組成物を含む成形品を提供する。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係るポリオキシメチレン樹脂組成物は、ポリオキシメチレン樹脂固有の優れた機械的強度と耐衝撃性は維持しながら、熱安定性と、エージング(aging)後の耐変色特性を改善させる特徴を示し、前記ポリオキシメチレン樹脂組成物を含む成形品は、変色が少なく、金型離型性(MD、Mold Deposit)が少ないため、自動車の内外装材、精密電気電子製品及び生活用品分野に適用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明では、重量平均分子量は、次の条件によりGPC(Gel Permeation Chromatography)で測定した値と定義される。
【0022】
(1)溶媒:HFIP(ヘキサフルオロイソプロパノール)+0.02Nトリフルオロ酢酸ナトリウム塩(TFAcNa)
(2)カラム(メーカー、型番):PL HFIP gel
(3)温度:35℃
(4)検出器:Waters RI410 detector
(5)流速:0.8mL/分、Waters 515 pump
(6)データシステム:multichro ver.5.0
(7)インジェクション量:100L、濃度:5mg/mL
(8)標準試料:ポリメチルメタクリレート、ポリマーラボラトリーズ社
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0023】
本発明は、ポリオキシメチレン樹脂;前記ポリオキシメチレン樹脂100重量部に対して、水酸化アルカリ土類金属0.01〜0.5重量部;多孔性有機・無機混成シリケート0.01〜1重量部;LDPE(Low Density Polyethylene)0.01〜1重量部;および多価アルコール脂肪酸エステル0.02〜0.5重量部を含む、ポリオキシメチレン樹脂組成物を提供する。
【0024】
[ポリオキシメチレン樹脂]
本発明において、ポリオキシメチレン樹脂は、下記化学式1で表示されるものでありうる。
【0025】
[化学式1]
式中、mおよびnはそれぞれ1〜20の整数であり、Lは2〜100の整数である。
【0026】
前記ポリオキシメチレン樹脂は、射出性および押出性を考慮して、重量平均分子量が500〜5000でありうる。
【0027】
[水酸化アルカリ土類金属]
本発明において、水酸化アルカリ土類金属は、カニッツァロ反応によるポリオキシメチレン(POM、polyoxymethylene)の準安定末端と不安定末端を分解させて、2次加工の際に発生しうるホルムアルデヒドの発生を低減し、色相(color)及び熱安定性を高める役割を果たすことができる。このとき、アルカリ土類金属はカルシウムやマグネシウムなどでありうる。水酸化アルカリ土類金属は、具体的には水酸化カルシウム(Ca(OH)
2)であってもよい。
【0028】
前記水酸化アルカリ土類金属は、その含有量がポリオキシメチレン樹脂100重量部に対して0.01〜0.5重量でありうる。前記水酸化アルカリ土類金属の含有量が0.01重量部未満である場合は、不安定末端を十分に分解させることができないため、射出の際にホルムアルデヒドガスの発生源になるおそれがあり、前記水酸化アルカリ土類金属の含有量が0.5重量部を超える場合は、ポリマーを分解させて物性低下またはポリマー変色を起こすおそれがある。
【0029】
[多孔性有機・無機混成シリケート]
本発明において、多孔性有機・無機混成シリケートは、熱安定性の向上、成形または押出時の変色防止、押出成形後の結晶化及び応力除去のための長時間エージング(aging)後の変色を最小限に抑えることができる。
【0030】
前記多孔性有機・無機混成シリケートは、シリカ前駆体60〜98重量%および有機シラン2〜40重量%を界面活性剤の存在下で加水分解させた後、脱水および洗浄して製造することができる。このとき、前記シリカ前駆体は、4つ以上のアルコキシ基を有するアルコキシシリルアルキレン、テトラアルキルオルソシリケート、および4つ以上のアルコキシ基を有するアルコキシシリルアルカンよりなる群から選ばれた1種以上であってもよく、前記有機シランは、1〜3個のアルコキシ基を有するアルコキシシラン、アルコキシアルケニルシラン、アルコキシアリールシラン及びアルコキシアラルキルシランよりなる群から選ばれる1種以上であってもよい。
【0031】
前記多孔性有機・無機混成シリケートは、50nm以下の孔径および200〜2000m
2/gの表面積を有しうる。このような孔径および表面積によりギ酸(Formic acid)およびVOCs物質などの低分子物質を捕捉(capture)して、変色の原因となる物質を除去することができる。
【0032】
前記多孔性有機・無機混成シリケートは、その含有量がポリオキシメチレン樹脂100重量部に対して0.001〜1重量でありうる。前記多孔性有機・無機混成シリケートの含有量が0.001重量部未満である場合は、揮発性有機化合物(VOCs)の吸着力が低下するおそれがあり、前記多孔性有機・無機混成シリケートの含有量が1重量部を超える場合は、ポリオキシメチレン樹脂の末端基と樹脂との結合力が弱くなって分解が発生することにより、ガスが放出され発泡が起こって製造工程中の安定性が低下するおそれがある。
【0033】
[LDPE]
本発明において、LDPEは、無機物の分散性の向上を考慮して、0.910〜0.940g/cm
3の密度を有してもよい。
【0034】
前記LDPEは、その含有量がポリオキシメチレン樹脂100重量部に対して0.02〜1重量でありうる。前記LDPEの含有量が0.02重量部未満である場合は、溶融時の流れ性または金型離型性が低下するおそれがあり、前記LDPEの含有量が1重量部を超える場合は、ポリオキシメチレン樹脂の基本物性が低下するおそれがある。
【0035】
[多価アルコール脂肪酸エステル]
本発明において、多価アルコール脂肪酸エステルは、押出時の流動性を改善し、かつ射出時の離型性を向上させることができる。
【0036】
前記多価アルコール脂肪酸エステルは、射出性及び押出性を考慮して、重量平均分子量が300〜1000でありうる。重量平均分子量が過度に大きくなると、相溶性が低下し、或いは流動性の改善並びに滑剤および金型離型性の改善効果が微々たるものになるおそれがある。
【0037】
前記多価アルコール脂肪酸エステルは、グリセロールモノステアレート、グリセロールモノベヘネート、およびグリセロールモノモンタネートよりなる群から選ばれる1種以上であってもよい。
【0038】
前記多価アルコール脂肪酸エステルは、その含有量がポリオキシメチレン樹脂100重量部に対して0.02〜0.5重量でありうる。前記多価アルコール脂肪酸エステルの含有量が0.02重量部未満である場合は、溶融時の流れ性が低下するおそれがあり、前記多価アルコール脂肪酸エステルの含有量が0.5重量部を超える場合は、溶融時の流れ性が過度に良くなって、むしろ安定性が低下することにより、多量のホルムアルデヒドが残留するおそれがある。
【0039】
[製造方法]
本発明に係るポリオキシメチレン樹脂は、ポリオキシメチレン樹脂、水酸化アルカリ土類金属、多孔性有機・無機混成シリケート、LDPE(Low Density Polyethylene)および多価アルコール脂肪酸エステルを配合して、一軸または二軸押出機を通じて押出機温度240〜250℃で溶融混合して製造することができる。
【0040】
本発明に係るポリオキシメチレン樹脂組成物は、200℃で3時間のエージングの後における黄色度変化率(ΔYI、Delta Yellow Index)が3以下であり、金型離型性(mold deposit)が500以上でありうる。このような物性を示すポリオキシメチレン樹脂組成物は、自動車や電気電子部品などに使用できる。
【実施例】
【0041】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。これらの実施例が本発明をより具体的に説明するためのもので、本発明の範囲を制限するものではないことは、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者にとって自明であろう。
【0042】
実施例1
下記表1に示すような組成で、各成分を、240℃に加熱された二軸押出機内で溶融混練した後、チップ(Chip)状にし、90℃、5時間除湿型乾燥機を用いて乾燥させた後、加熱されたスクリュー式射出機を用いて溶融混練時と同じ温度でそれぞれの試験片を製作した。
【0043】
下記表1に示すような組成で、ポリオキシメチレン樹脂、水酸化アルカリ土類金属、多孔性有機・無機混成シリケート、LDPE(Low Density Polyethylene)および多価アルコール脂肪酸エステルを、240℃に加熱された二軸押出機内で溶融混練した後、ポリオキシメチレン樹脂組成物のチップ(Chip)を作り、90℃、5時間除湿型乾燥機を用いて乾燥させた後、加熱されたスクリュー式射出機を用いて溶融混練時と同じ温度でそれぞれの試験片を製作した。
【0044】
実施例2および実施例3
水酸化アルカリ土類金属の含有量を変化させた以外は、実施例1と同様の方法でポリオキシメチレン樹脂組成物を製造した。
【0045】
実施例4および実施例5
多孔性有機・無機混成シリケートの含有量を変化させた以外は、実施例1と同様の方法でポリオキシメチレン樹脂組成物を製造した。
【0046】
実施例6および実施例7
LDPEの含有量を変化させた以外は、実施例1と同様の方法でポリオキシメチレン樹脂組成物を製造した。
【0047】
実施例8および実施例9
多価アルコール脂肪酸エステルの含有量を変化させた以外は、実施例1と同様の方法でポリオキシメチレン樹脂組成物を製造した。
【0048】
比較例1および比較例2
水酸化アルカリ土類金属の含有量を変化させた以外は、実施例1と同様の方法でポリオキシメチレン樹脂組成物を製造した。
【0049】
比較例3および比較例4
多孔性有機・無機混成シリケートの含有量を変化させた以外は、実施例1と同様の方法でポリオキシメチレン樹脂組成物を製造した。
【0050】
比較例5および比較例6
LDPEの含有量を変化させた以外は、実施例1と同様の方法でポリオキシメチレン樹脂組成物を製造した。
【0051】
比較例7および比較例8
多価アルコール脂肪酸エステルの含有量を変化させた以外は、実施例1と同様の方法でポリオキシメチレン樹脂組成物を製造した。
【0052】
<測定例>
実施例および比較例で製造されたポリオキシメチレン樹脂組成物の試験片に対して、次の方法で引張強度、衝撃強度、引張強度保持率、衝撃強度保持率、耐燃性および表面特性を測定し、その結果を表2に示した。
【0053】
−Delta YI(ΔYI
*ab、2サンプルの黄色度(Yellow Index)を測定):ポリオキシメチレン樹脂組成物を、200℃の電気オーブンにて、それぞれ30分間及び3時間滞留させる。その後、色度計(Color meter)を用いてそれぞれのプレート(plate)のYI値を測定した後、次の式1によって計算して値を求める。
【0054】
(式1)ΔYI
*=YI
*t−YI
*
ここで、YI
*tは30分エージング後のサンプルのYI値であり、YI
*は3時間エージング後のサンプルのYI値である。
【0055】
−YI(Yellow Index、黄色度):次の式2によって計算し、小数点以下2桁まで求める。
【0056】
(式2)YI=100(1.28X−1.06Z)/Y
ここで、X、YおよびZは、それぞれ、標準光Cにおける試験用試料および試験片の3刺激値である。このとき、標準光Cとは、標準光源であって、温度が6,744Kの相関色温度を有する昼光を示す光を意味する。
【0057】
−ホルムアルデヒド(FA、Formaldehyde):ポリオキシメチレン樹脂(Chip)10gを140℃で30分エージングした後に放出されたホルムアルデヒド(formaldehyde)ガスに対して、GC(ガスクロマトグラフィー;Gas Chromatograph)を用いて、ホルムアルデヒド(formaldehyde)の含有量を測定する。
【0058】
−金型離型性(MD、Mold Deposit):射出成形機のシリンダー温度:240℃/240℃/240℃/190℃)およびホットランナー(Hot runner)温度:250℃でダンベル状試験片を射出して金型にガスや異物がくっ付いているのかを、初期には射出50サイクルごとに肉眼によって確認し、300回以上からは射出100サイクル単位で肉眼によって確認した後、異物がくっ付いている時点を、回数として決定する。回数が増加するほど金型離型性が良いと判断する。
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】
【0061】
物性測定の結果、表2から、比較例1の如く、水酸化アルカリ土類金属が適正の含有量未満である場合は、FA発生量が増加し、金型離型性が良くないことが分かった。また、比較例2の如く、水酸化アルカリ土類金属が適正の含有量を超過する場合は、Delta YI値が増加して変色しやすいことが確認されたとともに、FA発生量が増加し、金型離型性が良くないことが分かった。
【0062】
また、比較例3の如く、多孔性有機・無機混成シリケートが適正の含有量未満である場合は、Delta YI値が増加して変色しやすいことが確認されたとともに、FA発生量が増加し、金型離型性が良くないことが分かった。また、比較例4の如く、多孔性有機・無機混成シリケートが適正の含有量を超える場合は、FA発生量が増加し、金型離型性が良くないことが分かった。
【0063】
また、比較例5および比較例6の如く、LDPEが適正の含有量未満または超過である場合は、FA発生量が増加し、金型離型性が良くないことが分かった。
【0064】
比較例7の如く、多価アルコール脂肪酸エステルが適正の含有量未満である場合は、金型離型性が良くないことが分かった。比較例8の如く、多価アルコール脂肪酸エステルが適正の含有量を超える場合は、Delta YI値が増加して変色しやすいことが確認されたとともに、FA発生量が増加し、金型離型性が良くないことが分かった。
【0065】
ところが、実施例で製造されたポリオキシメチレン組成物は、Delta YI値が3以下であり、MDが500以上であって、変色のおそれが少なく、金型離型性が良く、FA発生量が少ないため、自動車の内外装材、精密電気電子製品および生活用品分野に適用することができることが分かる。
【0066】
以上、本発明の内容の特定の部分を詳細に記述したが、当業界における通常の知識を有する者にとって、このような具体的記述は単に好適な実施様態に過ぎず、これにより本発明の範囲を制限するものではないことは明らかであろう。よって、本発明の実質的な範囲は添付された請求項とそれらの等価物によって定義されるというべきである。