【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI INSTITUTE OF MATERIA MEDICA, CHINESE ACADEMY OF SCIENCES
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
イオンチャネルは、細胞膜上にある重要な膜タンパク質のファミリーであり、神経や筋肉の興奮、ホルモン分泌、細胞分化、感覚伝導、学習や記憶、血圧制御、塩と水とのバランスなどのプロセスにおいて重要な役割を果たしている。そして、研究によって、60種類以上のイオンチャネルの変異が疾患と密接に関連されていることを発見した。現在、イオンチャネルは、GPCR(Gタンパク質共役受容体)とプロテインキナーゼとに続き、3番目の薬剤標的となった(YuらScience’s STKE, 2004, 253, 15-21)。ヒトゲノムには、イオンチャネルをコードする400種類以上の遺伝子があり、そのうち、カリウムイオンチャネルスーパーファミリーのメンバーが最も多い。それらの機能及び構造の特徴により、カリウムイオンチャネルは、主に、内向き整流性カリウムチャネル(K
ir)、二孔ドメイン(Two-pore domain)カリウムチャネル(K
2p)、カルシウム活性化カリウムチャネル(K
Ca)および電位依存性カリウムチャネル(K
V)( Wulff, H.らNature Reviews Drug Discovery, 2009, 8 (12), 982-1001)という4つのカテゴリに分けることができる。カリウムイオンチャネルは、ニューロンの興奮性の調節に重要な役割を発揮し、そのイオン機構(Ionic basis)は、細胞内のカリウムイオンの濃度が細胞外よりも高く、膜電位が脱分極(depolarization)してチャネルが活性化された後に、正電荷を帯びたカリウムイオンが外に流れ、これによって膜電位が負(負極化ひいては過分極化)になって細胞の興奮性が低下する。近年、癲癇の遺伝学的研究によると、カリウムイオンチャネルの異常は家族性良性新生児痙攣(BFNC)ような癲癇(Wulff, H.ら Chemical Review, 2008, 108 (5), 1744-1773.)を直接誘発させることが分かった。
【0003】
電位依存性カリウムチャネル(K
V)は、カリウムチャネルスーパーファミリーの重要な構成として、12のメンバー(K
V1.X-K
V12.X)を含む。その中では、KCNQチャネルは、電位依存性カリウムチャネルの7番目のメンバー(K
v7)として、それぞれKCNQ1〜KCNQ5と呼称される5つのサブタイプを含む。KCNQは、サブタイプごとに、その分布及び機能が互いに異なる。例えば、KCNQ1は、主に心臓や蝸牛殻に存在し、その異変は、先天性QT延長症候群及び先天性難聴と密接に関連している。KCNQ2、KCNQ3及びKCNQ5は、主に脳や神経に存在し、神経興奮と密接に関連している。KCNQ4は、主に蝸牛殻や前庭に存在し、聴覚と密接に関連している(D. A. Brownら, British Journal of Pharmacology, 2009, 156, 1185-1195)。他の電位依存性カリウムメンバーと比べて、KCNQチャネルは、その活性化閾値が低いので、活動電位が−60mVになると、チャネルが開き、且つその活性化が遅く、持続的な脱分極時にもその活性化を失わない。これらの特徴によって、KCNQチャネルは細胞の興奮性の調節において基本的なレベルにあり、その開放は神経興奮性を低下することができ、機能の抑制により、神経細胞膜電位の脱分極を引き起こし、興奮性が増強し、より多くの神経インパルスを誘発することができる。従って、KCNQチャネルは、多種の神経興奮性障害の疾患を予防や治療する薬剤標的とな医薬品用ターゲットである。
【0004】
KCNQカリウムチャネル作動薬は、KCNQのターゲットの上記の特徴に基づき、カリウムチャネルを活性化することで、神経細胞の興奮性を低下させ、癲癇の治療だけでなく、痙攣、神経因性疼痛、急性虚血性脳卒中や神経変性疾患のような他の過剰な神経興奮性による疾患にも使用できる(Dalby-Brownら、Current Topics in Medicinal Chemistry, 2006, 6, 999-1023)。
【0005】
既に知られているKCNQカリウムチャネル作動薬は、主に以下のようなものがある。
【0006】
1)US5384330には、下記のような構造を有する化合物が開示されている。
【化1】
その構造の特徴は、o-ジアミノ基で置換されたベンゼン環を含有することである。
【0007】
2)WO2005/087754には、下記のような構造のKCNQカリウムチャネル作動薬が記載されている。
【化2】
その構造の特徴は、p-ジアミノ基で置換されたベンゼン環を含有し、且つ一方の窒素が一つの飽和環(複素環の場合、W=O)に含まれるとともに、他方の窒素と隣接の箇所がR
1、R
2で置換されていることである。
【0008】
3)WO2008024398には、下記のような構造が記載されている。
【化3】
この化合物の構造は、WO2005/087754の構造と類似しており、N-複素環式炭化水素に縮合したベンゼン環の構造単位を導入しただけである。
【0009】
現在、臨床上に最も代表的なKCNQカリウムチャネル作動薬として、GSK(GlaxoSmithKline)社によって開発され、かつ2011年に市販された抗癲癇薬であるレチガビン(Retigabine、RTGと略する)があり、その構造は下記の通りである。レチガビンは、初めて系統的に研究されたKCNQカリウムチャネル作動薬であり、KCNQ2-5を活性化することができるものであり、主に部分発作型癲癇の成人患者の治療に用いられる。
【0010】
レチガビンの構造には、三つのアミノ基で置換された電子豊富なベンゼン環を含有する。レチガビンは、その構造の特徴によって合成および保存の際に酸化されて変性しやすい。さらに、レチガビンは、臨床応用において、めまい、眠気、倦怠感、意識混乱、震え、調整不足、複視、視力障害、注意障害、記憶喪失、運動障害、失語症、構音障害、平衡障害、食欲増加、幻覚、ミオクローヌス、末梢浮腫、運動低下、ドライマウス、嚥下障害などのような副作用が多い。膀胱の腫れ、膀胱壁の肥厚や尿閉などのような排尿障害もレチガビンでよく見かける副作用である。2013年4月26日に、FDA医薬品安全性委員会は、レチガビンが臨床応用において皮膚の青色への変色と網膜色素変性などのような色素反応をもたらすことを公表したが、その具体的な作用機構はまだ不明なので、その医薬品を服用するすべての患者に眼科検査を定期的に受けるように提案した (S. Jankovicら,Expert Opinion on Drug Discovery, 2013, 8(11), 1-9; F. Rodeら, European Journal of Pharmacology, 2010, 638, 121-127)。
【0011】
発明者らは、初期段階の成果(WO2013060097、その公開された内容を全体的に引用する方式で本願に引用している)として、下記のような構造を有するKCNQカリウムチャネル作動薬を開示している。
【化4】
ただし、R
1がアリル基またはプロパルギル基の場合、化合物はレチガビンと同等またはより優れるKCNQカリウムチャネル作動薬の活性を維持するだけでなく、体内における抗癲癇効果が顕著で、保護効果がレチガビンと同等となり、マウスにおける予備的な薬物動態学の研究では、この化合物はレチガビンと比べてより優れる脳内暴露量を有することを表している。しかし、更なる安全評価研究においては、WO2013060097に記載の化合物の神経毒性が強く、例えば化合物K21をSDラットに一回の用量≧30mg/kgで経口投与した場合、ラットの死亡が観察され、毒性の致死量は、既に報告されたラットのレチガビンによる致死量より明らかに高い(100mg/kg, データはFDA Phamacology Review(s), Potiga tabletsより)。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、具体的な実施例で本発明を詳細に説明するが、本発明がこれらの実施例に限定されることはない。
【0041】
一、化合物の製造実施例
下記のような製造実施例において、核磁気共鳴(NMR)はバリアン(Varian)社製のMercury-Vx 300Mで測定した。NMR較正はδH 7.26 ppm(CDCl
3)、2.50 ppm(DMSO-d
6)、3.15 ppm(CD
3OD)である。試薬は、主に上海化学試薬会社によって提供された。薄層クロマトグラフィー(TLC)シリカゲル平板は、山東煙台会友シリカゲル開発有限会社製の型式HSGF 254である。化合物の精製に使用された順相カラムクロマトグラフィーのシリカゲルは、山東青島海洋加工工場分工場製の型式zcx-11であり、200-300メッシュである。
【0042】
製造実施例1:
製造実施例1.1:4-(N-p-フルオロベンジル-N-プロパルギル-アミノ)-2,6-ジメチルフェニルアミノギ酸メチル(K43)の合成
【0044】
化合物2,6-ジメチルアニリンK43-a(1.2g、10mmol)をジクロロメタン (4mL)およびピリジン(25mL)に溶解させ、p-トルエンスルホニルクロリド(p-TsCl)(2.29g、12mmol)を加え、6h還流させた。室温まで冷却し、反応系を3M 塩酸の溶液(20mL)に投入し、またジクロロメタン (20mL)を加え、分液し、得られた有機相を水(20mL)で2回洗浄し、濃縮し、残留物をエタノールに再結晶させ、得られた生成物K43-bは白色固体(2.1g、収量76%)である。
1H NMR (300 MHz, CDCl
3): δ 7.58(d, J=8.4Hz, 2H)、7.25(d, J=8.4Hz, 2H)、7.00-7.11(m, 3H)、5.96(s, 1H)、2.42(s, 3H)、2.04(s, 6H)。
【0045】
得られた化合物K43-b (2.10g、7.6mmol)を氷酢酸(AcOH) (40mL)中に溶解させ、水(40mL)及び硝酸ナトリウム(1.3g、15.2mmol)を加え、氷浴で0℃まで低下させ、濃硝酸(9mL)を加えた後に、反応系を4h加熱還流させ、反応が終了するまでTLCで観測し、水(20mL)を補充して加え、0℃まで冷却し、大量の淡黄色固体を析出させ、吸引濾過して得られた生成物K43-c(1.9g、収量78%)を、直接次の反応に使用した。
【0046】
化合物K43-c(1.9g、5.9mmol)及び水(0.75mL)を丸底フラスコ中に入れ、濃硫酸(10mL)を加え、40℃で保温しながら一晩反応させた。室温まで冷却し、それを砕いた氷及び2M 水酸化ナトリウム水溶液(15mL)に投入し、酢酸エチル(50mL)で抽出した。得られた有機相を水(20mL)で2回洗浄し、飽和食塩水(20mL)で1回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮して得られた生成物K43-dは、黄色固体(980mg、収量100%)であり、直接次の反応に使用した。
【0047】
化合物K43-d(1.52g、5.9mmol)とジクロロメタン (DCM)(40mL)をフラスコに入れ、攪拌しながら溶解させ、氷水浴で0℃まで低下させ、二炭酸ジ-tert-ブチル(Boc
2O)(2.58g、11.8mmol)を加えた。攪拌しながらゆっくりとトリエチルアミン(TEA)(1.77mL、12.9mmol)と4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)(722mg、5.9mmol)を加えた。30分後に室温まで昇温させて一晩反応し続けた。反応系を1M塩酸(30mL)で1回洗浄し、水(50mL)で2回洗浄し、飽和食塩水(40mL)で1回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ濃縮した後に、粗生成物をカラムクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル= 6:1)により精製し、得られた生成物K43-eは、淡黄色固体(1.84g、収量85%)であり、直接次の反応に使用した。
【0048】
前回のステップで得られた化合物K43-e(1.84g、5.0mmol)を酢酸エチル(EtOAc)(20mL)に溶解させ、窒素ガスの保護下で10%のPd/C (55mg、0.5mmol)を加え、水素ガスで3回置換させた後に、室温で攪拌しながら4h反応させた。水素ガスを撤去し、窒素ガスで3回置換させ、反応系を濾過し、濾過液を濃縮した後に、生成物K43-f (定量収量)を得た。
1H NMR(300 MHz, CDCl
3): δ 6.38(s, 1H), 3.52(s, 2H),2.05(s, 6H), 1.39(s, 18H)。
【0049】
前回のステップで得られた生成物K43-f(366mg、1.0mmol)とp-フルオロベンズアルデヒド(108μL、1.0mmol)を三つ口フラスコに入れ、トルエン(10mL)を加え、水分離器(water segregator)をかけた後に3h加熱還流させし、室温まで冷却し、減圧で濃縮して、トルエンを除去し、得られた粗生成物K43-gを再びメタノール(20mL)に溶解させ、激しく撹拌しながら少しずつ水素化ホウ素ナトリウム(NaBH
4)(76mg、2.0mmol)を加えた。加えた後に、室温で2h反応させ続けた。砕いた氷で反応をクエンチし、減圧で濃縮し、大部分のメタノールを除去し、残留物を酢酸エチル(20mL)に溶解させ、水(15mL)で2回洗浄し、飽和食塩水(10mL)で1回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮した後に、粗生成物をカラムクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル=10:1)により精製し、ベンジルで置換させた生成物K43-h(320mg、収量72%、黄色固体)を得た。
【0050】
得られた化合物K43-h(320mg、0.72mmol)をDMF(N,N-ジメチルホルムアミド)(5mL)に溶解させ、DIPEA(N,N-ジイソプロピルエチルアミン)(257μL、1.44mmol)とプロパルギルブロミド(84μL、1.08mmol)を加えた。65℃にて反応系を4h反応させ、その中に酢酸エチル(50mL)を滴下して得られたものを水(25mL)で2回洗浄し、飽和食塩水(20mL)で1回洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、残留物をカラムクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル=15:1)により精製し、プロパルギル基で置換させた中間体K43-i(312mg、収量90%)を得た。
【0051】
中間体K43-i(48mg、0.1mmol)をジクロロメタン(1mL)に溶解させ、氷水浴でTFA(トリフルオロ酢酸)(0.1mL)を加え、保温しながら2h反応させ、減圧で濃縮した後に、得られた粗生成物K43-jを再びジクロロメタン(1mL)に溶解させ、氷水浴で冷却し、DIPEA(35.0μL、0.2mmol)とクロロギ酸メチル(11.7μL、0.15mmol)を加え、氷水浴を撤去した後に、室温で1h反応させ、濃縮した後に、残留物をカラムクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル=8:1)により精製し、生成物K43(31mg、収量92%)を得た。
1H NMR(300 MHz, CDCl
3): M 7.27(dd, J=8.4, 5.4Hz, 2H), 7.02(t, J=9.0Hz, 2H), 6.59(s, 2H), 5.87(brs, 1H), 4.48(s, 2H), 3.96(d, J=2.1Hz, 2H), 3.73(brs, 3H), 2.13(s, 6H), 2.26(t, J=2.1Hz, 1H)。
13C NMR(75 MHz, CDCl
3): R 163.6(J=248.4Hz), 155.2, 138.3, 137.5, 135.2, 133.7(J=9.2Hz), 125.2, 122.0, 116.1(J=22.4Hz), 80.4, 73.0, 58.7, 53.0, 47.0, 21.0。HR-ESIMS (m/z):C
20H
22FN
2O
2 [M+H]
+計算値 341.1665、実測値341.1656。
【0052】
製造実施例1.2:製造実施例1と類似する製造工程で、下記K41,K46,K48のような化合物を得た。なお、下記表の化合物K40,K42,K44,K45,K49は参考例である。また、後述する化合物K50〜K59も参考例である。
【表1】
【0053】
製造実施例2:4-(N-P-フルオロベンジル-N-プロパルギル-アミノ)-2,6-ジメチルフェニルアミノギ酸メチル(K43)の合成
【化21】
【0054】
2,6-ジメチルアニリン(40g、0.33mol)をジクロロメタン(250mL)に溶解させ、この溶液中にDIPEA(115mL、0.66mol)を加えた。そして、氷水浴でゆっくりとクロロギ酸メチル(38.35ml、0.5mol)を滴下した後に、反応系を自然的に室温まで上昇させ、攪拌しながら一晩放置し、TLCには原料の反応が終了したことが示された。反応系中にゆっくりと1% HCl(60mL)を加え、攪拌により分層し、水層をジクロロメタンで抽出した。有機相を合併した後に飽和塩化ナトリウムで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮した。粗生成物を少量のジクロロメタンに溶解させ、石油エーテルを滴下して、固体を析出させて中間体K43-k(59g、収量88%)を得た。
1HNMR(300 MHz, CDCl
3):δ 7.08(s, 3H), 6.03(s, 1H), 3.76(s, 3H), 2.27(s, 6H)。
【0055】
化合物中間体K43-k(20g)を酢酸(90mL)に溶解させ、水(80mL)と亜硝酸ナトリウム(19.0、0.223mol)を加えた。氷水浴で冷却しながら65%濃硝酸(55mL)を滴下した。滴下中は反応系の温度を5℃以下に制御した。滴下した後に、反応系をゆっくりと室温まで昇温させ、30min攪拌し、そして140℃まで加熱し、4h還流させた。反応系を室温まで低下させた後に、氷水で反応をクエンチ(quench)して固体を析出させ、濾過した後に乾燥させて中間体K43-l(17.8g、収量71%)を得た。
1HNMR(300MHz, CDCl
3):δ 7.964 (s, 1H) , 7.082 (s, 1H) , 3.786 (s, 3H) , 2.364 (s, 3H) , 2.265(s, 3H)。
【0056】
中間体K43-l(15g、0.067mol)を酢酸エチル(200mL)に溶解させ、窒素ガスの保護下で10%パラジウム/炭素(1.5g)を加え、水素ガスで3回置換させた後に、室温で一晩反応させた。反応系を濾過し、濾過液を濃縮して、定量収量で中間体K43-mを得てから、直接次の反応を行った。
【0057】
中間体K43-m(13g、0.067mol)をトルエン(100mL)に溶解させ、p-トルエンスルホン酸(0.38g、0.002mol)とp-フルオロベンズアルデヒド(12.45g、10.8ml)を加え、水分離器をかけた後に加熱還流しながら水を4-5h分離した。TLCには原料の反応が終了したことが示された。減圧で反応系を濃縮し、中間体K43-nの粗生成物を得、直接次の反応に使用した。得られた粗生成物K43-nをメタノール(150mL)に溶解させ、氷水浴で冷却しながら水素化ホウ素ナトリウム(5.07g、0.13mol)を少しずつ加えた。そして、氷水浴を撤去し、室温で1-2h反応させた。TLCには反応が終了したことが示された。反応系を氷水浴中に投入し、攪拌し、固体を析出させ、濾過し、乾燥させて化合物中間体K43-o粗品を得た。得られた中間体K43-o粗品を少量のジクロロメタンに溶解させ、攪拌しながら石油エーテルを滴下して、オフホワイトの固体を析出させ、濾過し、乾燥させた後に中間体K43-o(11.1g、二段階の反応収量55%)を得た。
1HNMR(300MHz, CDCl
3):δ7.335-7.306 (dd, J=8.7Hz, 1H), 7.306-7.287(dd, J=5.7Hz, 1H), 7.049-7.027(dd, J=6.6Hz, 1H) , 7.027-6.991(dd, J=10.8 Hz,1H), 6.331(s, 2H), 5.892(s, 1H), 4.257(s, 2H), 3.933(s,1H), 3.744(s, 3H), 2.164 (s, 6H)。
【0058】
中間体K43-o(10g、0.033mol)をDMF (80mL)に溶解させ、DIPEA (8.54g、0.066mol )とプロパルギルブロミド (2.74mL、0.036mol)を加え、そして反応系を60℃で5h反応させた。TLCには反応が終了したことが示された。反応系を水中に投入し、攪拌して固体を析出させた。濾過し、乾燥させて得られたK43粗生成物をジクロロメタンに溶解させ、石油エーテルを滴下して固体を析出させ、濾過し、化合物K43(9.8g、収量87%)を得た。その
1H NMRは、製造の実施例1で得られたK43のそれと一致していた。
【0059】
製造実施例3:
製造の実施例3.1:4-(N-P-フルオロベンジル-N-プロパルギル-アミノ)-フェニルアミノチオギ酸メチル(K49)の合成
【化22】
【0060】
化合物p-ニトロアニリン(2.76g、20.0mmol)とp-フルオロベンズアルデヒド(2.1mL、20.0mmol)を150mL三つ口フラスコ中に入れ、トルエン(60mL)を加え、還流水分離器で水を3h分離し、室温まで冷却し、減圧で濃縮し、トルエンを除去して得られた中間体K49-aを再びメタノール(40mL)に溶解させ、激しく攪拌しながらNaBH
4(1.52g、40.0mmol)を少しずつ加えた後に、室温で3h反応させた。砕いた氷で反応をクエンチし、激しく攪拌しながら水(30mL)を一滴ずつ加え、大量の固体を析出させ、吸引濾過し、濾過ケークを無水エーテル(10mL)で2回洗浄して生成物K49-b(3.4g、収量70%、黄色固体)を得た。
1HNMR(300 MHz, CDCl
3): δ 8.08(d, J=9.3Hz, 2H), 7.31(dd, J
1=5.4Hz, J
2=8.4Hz, 2H), 7.06(t, J=8.7Hz, 2H), 6.57(d, J=9.3Hz, 2H), 4.86(s, 1H), 4.41(d, J=2.7Hz, 2H)。
【0061】
化合物K49-b(3.4g、14.0mmol)をDMF(40mL)に溶解させ、氷水浴で冷却しながらNaH(616mg、15.4mmol)を迅速に加えた後に、室温で0.5h反応させた。プロパルギルブロミド(1.22mL、15.4mmol)を加え、65℃で4h反応させ、その中に酢酸エチル(80mL)を加え、分液漏斗に移し、水(40mL)で2回洗浄した。有機相を合併し、飽和食塩水(30mL)で1回洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮した後に、残留物をカラムクロマトグラフィー(PE/EA=8:1)により精製し、生成物K49-c(3.4g、収量86%)を得た。
1HNMR(300 MHz, CDCl
3): δ 8.14(d, J=9.0Hz, 2H), 7.26(dd, J=5.4, 8.4Hz, 2H), 7.04(t, J=8.7Hz, 2H), 6.79(d, J=9.3Hz, 2H), 4.68(s, 2H), 4.17(d, J=2.1Hz, 2H), 2.32(t, J=2.1Hz, 1H)。
【0062】
得られた化合物K49-c(3.4g、12.0mmol)を無水エタノール(50mL)に溶解させ、氷酢酸(3.0mL)、Fe粉(1.3g) を加え、4h還流させ、未反応のFe粉を濾過除去し、濾過液をほぼ乾燥するまで濃縮して、再び酢酸エチル(70mL)に溶解させ、分液漏斗に移し、飽和炭酸水素ナトリウム(20mL)で1回洗浄し、水(40mL)で2回洗浄した。有機相を合併し、飽和食塩水 (30mL) で1回洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥させ濃縮して溶剤を除去した後に、得られた残留物をカラムクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル=4:1、3:1)により精製し、生成物K49-d(1.95g、収量64%、茶褐色固体)を得た。
13CNMR(75 MHz, CDCl
3): δ 162.3(J=243.3Hz), 142.4, 140.2, 134.6, 129.8(J=8.0Hz), 118.9, 116.5, 115.5(J=21.1Hz), 80.0, 73.0, 55.6, 41.4。
【0063】
化合物K49-d(508mg、2.0mmol)をジクロロメタン(10mL)に溶解させ、トリエチルアミン(750μL、5.2mmol)を加え、氷水浴でチオホスゲン(300μL、2.6mmol)を加えた後に、室温で3h反応させた。濃縮して溶剤を除去した後に、得られた残留物をカラムクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル=10:1)により精製し、生成物K49-e(576mg、収量96.0%、黄色油状物)を得た。
1HNMR(300 MHz, CDCl
3): δ 7.24(dd, J=8.4, 5.4Hz, 2H), 7.12(d, J=9.3Hz, 2H), 7.03(t, J=8.7Hz, 2H), 6.78(d, J=9.3Hz, 2H), 4.53(s, 2H), 4.03(d, J=2.1Hz, 2H), 2.25(t, J=2.1Hz, 1H)。
【0064】
化合物K49-e (150mg、0.5mmol)をメタノール(5mL)に溶解させ、一晩還流させ。濃縮して溶剤を除去した後に、粗生成物をプロパルギルブロミド(石油エーテル/酢酸エチル=8:1)により精製し、生成物K49(142mg、収量87.0%、黄色油状物)を得た。
1HNMR(300 MHz, CDCl
3): δ 8.40(brs, 1H), 7.24(dd, J=8.4, 5.4Hz, 2H), 7.11(d, J=9.3Hz, 2H), 7.02(d, J=9.3Hz, 2H), 6.82-6.85(m, 2H), 4.50(s, 2H), 4.10(s, 3H), 3.93(d, J=2.1Hz, 2H), 2.24(t, J=2.1Hz, 1H)。
【0065】
製造実施例3.2:4-(N-P-フルオロベンジル-N-プロパルギル-アミノ)-3-フルオロフェニルチオギ酸メチル(K50)の合成
【化23】
【0066】
製造の実施例3.
1と類似する製造工程で、化合物K50を製造した。
1HNMR (CDCl
3, 300 MHz):δ 8.25(brs, 1H), 7.38(dd, J=5.4, 8.4Hz, 2H), 7.09-7.15(m, 2H), 7.02(t, J=9.
3Hz, 2H), 4.28(s, 2H), 4.12(brs, 3H), 3.93(d, J=2.1Hz, 2H), 2.27(t, J=2.1Hz, 1H)。
【0068】
化合物K49-d(508mg、2.0mmol)を無水トルエン(10mL)に溶解させ、トリエチルアミン(1.07mL、6.0mmol)とトリホスゲン(356mg、1.2mmol)を加えた後に、3h還流させた。濃縮して溶剤を除去した後に、得られた残留物をカラムクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル=10:1)により精製し、生成物K51-a(536mg、収量96%、黄色固体)を得た。
【0069】
化合物K51-a (84mg、0.3mmol)及びN,O-ジメチルヒドロキシアミン塩酸塩(35mg、0.36mmol)を無水トルエン(5mL)に溶解させ、トリエチルアミン(82μL、0.6mmol)を加え、室温で一晩反応させた。濃縮して溶剤を除去した後に得られた残留物をカラムクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル=8:1)により精製し、生成物K51(90mg、収量88%、黄色油状物)を得た。
1HNMR(300 MHz, CDCl
3): δ 7.54(brs, 1H), 7.32(dd, J=8.4, 5.4Hz, 2H), 7.24(d, J=9.3Hz, 2H), 7.01(t, J=8.4Hz, 2H), 6.89(d, J=9.3Hz, 2H), 4.45(s, 2H), 3.94(d, J=2.1Hz, 2H), 3.75(s, 3H), 3.17(s, 3H), 2.21(t, J=2.1Hz, 1H)。
【0070】
製造実施例4:
製造実施例4.1:N-[4-(N-P-フルオロベンジル-N-プロパルギル-アミノ)-フェニル]-2-メトキシアセトアミド(K52)の合成
【化25】
【0071】
化合物K49-d(100mg、0.4mmol)及びメトキシ酢酸(34μL、0.44mmol)、EDCI(1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩)(92mg、0.48mmol)を無水ジクロロメタン(5mL)に溶解させ、DIPEA(107μL、0.6mmol)を加え、室温で4h反応させた。その中に20ml酢酸エチルを加え、分液漏斗に移し、水(10mL)2回洗浄した。有機相を合併し、飽和食塩水 (10mL)で1回洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮して溶剤を除去した後に得られた残留物をカラムクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル=8:1)に精製し、生成物K52(104mg、収量80%)を得た。
1HNMR(300 MHz, CDCl
3): δ 8.10(s, 1H), 7.43(d, J=9.0Hz, 2H), 7.27(dd, J=5.4, 8.4Hz, 2H), 7.02(t, J=8.7Hz, 2H), 6.86(d, J=9.0Hz, 2H), 4.47(s, 2H), 4.00(s, 3H), 3.96(d, J=2.1Hz, 2H), 3.49(s, 3H), 2.22(t, J=2.1Hz, 1H)。
13C NMR(75 MHz, CDCl
3): δ 167.4, 162.3(J=243.6Hz), 146.1, 134.1, 134.0, 129.2(J=8.0Hz), 121.7, 115.8(J=21.6Hz), 115.6, 79.6, 72.7, 72.3, 59.5, 54.9, 40.5。HR-ESIMS (m/z):C19H20FN2O2 [M+H]
+ 計算値327.1509、実測値327.1501。
【0072】
製造実施例4.2:製造実施例1と類似する製造工程で、中間体K49-dより、相応する酸と縮合させて、下記のような化合物を得た。
【表2】
【0073】
製造実施例5:4-(N-P-フルオロベンジル-N-3,3-二重水素プロパルギル-アミノ)-アニリノギ酸メチル(K47)の合成
【化26】
【0074】
化合物プロピオール酸エチルK47-a(0.51mL、5.0mmol)を無水テトラヒドロフラン(THF)(10mL)に溶解させ、ドライアイス-アセトン浴で冷却しながら、上述した溶液に重水素化リチウムアルミニウム(157.5mg、3.75mmol)をゆっくりと加え、そして−40℃まで上昇させ、保温しながら5h反応させた。反応系を0.5mLメタノールでクエンチし、室温まで昇温させ、また飽和塩化アンモニウム水溶液でクエンチした。反応系を20mLエーテルで抽出して得られた有機相を水(15mL)で2回洗浄し、飽和食塩水(10mL)で1回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、約1mL溶剤まで慎重に濃縮し、得られた中間体K47-bを直接次の反応に使った。
【0075】
前回のステップで得られた中間体K47-bをジクロロメタン(10mL)に溶解させ、氷水浴で冷却しながらp-トルエンスルホニルクロリド(1.15g、6mmol)、トリエチルアミン(0.82mL、6mmol)を加え、保温しながら2h反応させた。反応系を砕いた氷に投入し、エーテルで抽出して得られた有機相を水(20mL)で2回洗浄した後に濃縮し、粗生成物をカラムクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル=8:1)により精製し、中間体p-トルエンスルホナートK47-c(80mg、収量13%、黄色固体)を得た。
1H NMR(300 MHz, CDCl
3): δ 7.82(d, J=8.4Hz, 2H), 7.35(d, J=8.4Hz, 2H), 2.45(s, 3H), 2.04(s, 1H)。
【0076】
K1は、WO2013060097における製造実施例1の方法により製造された。p-トルエンスルホナートK47-c(40mg、0.19mmol)と化合物K1(52mg、0.19mmol)とをDMF(3mL)に溶解させ、DIPEA(0.175mL、1.0mmol)を加えた。65℃で4h反応させた後に、その中に酢酸エチル(20ml)を滴下し、分液漏斗に移し、水(15mL)で2回洗浄した。得られた有機相を飽和食塩水(10mL)で1回洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥させ濃縮した後に、得られたK47粗品をカラムクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル=8:1)により精製し、化合物K47(55mg、収量92%、黄色油状物)を得た。
1HNMR(300 MHz, CDCl
3): δ 7.25-7.31(m, 4H), 7.02(t, J=8.7Hz, 2H), 6.85(d, J=8.7Hz, 2H), 6.68(s, 1H), 4.44(s, 2H), 3.75(s, 3H), 2.23(s, 1H)。
【0077】
製造の実施例6:4-(N-P-フルオロベンジル-N-3-シクロプロピルプロパルギル-アミノ)-アニリノギ酸メチル(K59)の合成
【化27】
【0078】
化合物アミノシクロプロピルギ酸メチル(690mg、6mmol)、炭酸セシウム(3.90g、12mmol)、BINAP(2,2'-ジ(ジフェニルホスフィノ)-1,1'-ビナフチル、124mg、0.2mmol)及びp-ブロモニトロベンゼン(1.2g、6mmol)を無水トルエン(50mL)に溶解させ、アルゴンガスが十分に置換した後に、触媒Pd(dba)
2(ジベンジリデンアセトンパラジウム、182mg、0.2mmol)を迅速に加え、その後に加熱還流させながら6h反応させた。室温まで冷却した後に、その中に60ml酢酸エチルを滴下し、得られた有機相を水(30mL)で2回洗浄し、飽和食塩水(10mL)で1回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ濃縮して溶剤を除去し、その後に、粗生成物をカラムクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル=10:1)により精製し、中間体K59-a(1.06g、収量75%、茶褐色固体)を得た。
1HNMR(300MHz、CDCl
3): δ 8.10(d, J=8.7Hz, 2H), 6.67(d, J=8.7Hz, 2H), 5.11(brs, 1H), 3.74(s, 3H), 1.68-1.72(m, 2H), 1.20-1.24(m, 2H)。
【0079】
中間体K59-a(1.06g、4.5mmol)をDMF(20mL)に溶解させ、氷水浴で水素化ナトリウム(NaH)(216mg、5.4mmol)を迅速に加えた後に、氷水浴を撤去し、室温で1h反応させ続けた。そして、p-フルオロベンジルブロミド(0.622mL、5.0mmol)を加え、65℃で3h反応させた。そして、その中に40ml酢酸エチルを加え、得られた有機相を水(30mL)で2回洗浄し、飽和食塩水(30mL)で1回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮して溶剤を除去した後に粗生成物をカラムクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル=12:1)により精製し、中間体K59-b(1.20g、収量83%)を得た。
【0080】
中間体K59-b(340mg、1.0mmol)を無水テトラヒドロフラン(10mL)に溶解させ、ドライアイスアセトン浴で冷却しながらDIBAL-H (水素化ジイソブチルアルミニウム、1M THF溶液、1.6mL、1.6mmol)を一滴ずつ加えた後に、保温しながら5h反応させ続け、そして0.5mlメタノールで反応をクエンチし、室温まで昇温させた。その中に20mL酢酸エチルを滴下し、得られた混合物をそれぞれ1M塩酸の水溶液(10mL)で1回洗浄し、水(15mL)で2回洗浄し、飽和食塩水(10mL)で1回洗浄した。有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮して溶剤を除去した後に、粗生成物をカラムクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル=6:1)により精製し、中間体K59-c(177mg、収量56%、油状物)を得た。
1H NMR(300 MHz, CDCl
3): δ 7.99(d, J=9.3Hz, 2H), 6.96-7.02(m, 4H), 6.74(d, J=9.7Hz, 2H), 4.73-4.94(m, 2H), 4.21(brs, 1H), 3.48(brs, 1H), 1.23-1.27(m, 4H)。
【0081】
中間体K59-c(177mg、0.56mmol)をジクロロメタン(5ml)に溶解させ、DMP(デス-マーチン(Dess-Martin)酸化剤、367mg、0.84mmol)を加える。室温で4h反応させ、反応系を濃縮した後に、カラムクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル=10:1)により精製し、中間体K59-d(150mg、収量85%、黄色固体)を得た。
1HNMR(300MHz, CDCl
3): δ 9.11(s, 1H), 8.05(d, J=10.5Hz, 2H), 6.99-7.11(m, 4H), 6.68(d, J=10.5Hz, 2H), 4.87(d, J=17.4Hz, 1H), 4.65(d, J=17.4Hz, 1H), 1.95-2.00(m, 1H), 1.51-1.63(m, 3H)。
【0082】
中間体K59-d(150mg、0.48mmol)及び無水炭素酸カリウム(K
2CO
3)(132mg、0.96mmol)をメタノール(5mL)に溶解させ、Bestmann試薬(ジメチルジアゾメチルホスホネート(dimethyl diazomethylphosphonate)、110mg、0.58mmol)を滴下した。室温で一晩反応させた後に、濃縮させて得られた残留物を再び20mL酢酸エチルに溶解させ、それぞれ水(15mL)で2回洗浄し、飽和食塩水(10mL)で1回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮して溶剤を除去した後に、得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル=8:1)により精製し、中間体K59-e(106mg、収量71%、茶褐色固体)を得た。
1HNMR(300 MHz, CDCl
3): δ 8.10(d, J=9.3Hz, 2H), 7.09-7.12(m, 2H), 6.98-7.04(m, 2H), 6.92(d, J=9.3Hz, 2H), 4.75(s, 2H), 2.19(s, 1H), 1.21-1.25(m, 4H)。
【0083】
得られた中間体K59-e(106mg、0.34mmol)を無水エタノール(5mL)に溶解させ、氷酢酸(0.2mL)、Fe粉(60mg)を加え、反応系を3h還流させ、未反応のFe粉を濾過除去し、濾過液を十分に濃縮して得られた残留物を再び20ml 酢酸エチルを溶解させ、それぞれ飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(10mL)で1回洗浄し、水(15mL)で2回洗浄し、飽和食塩水(10mL)で1回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮して溶剤を除去した後に、得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル=6:1、4:1)により精製し、中間体K59-f(82mg、収量86%、黄色固体)を得た。
1HNMR(300 MHz, CDCl
3): δ 7.20(dd, J=8.4, 5.4Hz, 2H), 6.98(t, J=8.4Hz, 2H), 6.84(d, J=9.3Hz, 2H), 6.60(d, J=9.3Hz, 2H), 4.50(s, 2H), 3.36(brs, 2H), 2.14(s, 1H), 1.18-1.20(m, 2H), 1.04-1.07(m, 2H)。
【0084】
中間体K59-f(82mg、0.28mmol)をジクロロメタン (5mL)に溶解させ、DIPEA(0.10mL、0.56mmol)を加え、氷水浴でクロロギ酸メチル(34μL、0.44mmol)を滴下した後に、室温で30分反応させ、そしてその中に10ml 酢酸エチルを滴下し、得られた有機相をそれぞれ水(10mL)で2回洗浄し、飽和食塩水(10mL)で1回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮して溶剤を除去した後に、粗生成物をカラムクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル=6:1)により精製し、生成物K59(86mg、収量91%、黄色油状物)を得た。
1HNMR(300 MHz, CDCl
3): δ 7.15-7.21(m, 4H), 6.98(t, J=8.4Hz, 2H), 6.88(d, J=9.0Hz, 2H), 6.38(s, 1H), 4.59(s, 2H), 3.74(s, 3H), 2.13(s, 1H), 1.26-1.29(m, 2H), 1.10-1.14(m, 2H)。
13CNMR(75 MHz, CD
3OD): δ 162.1(J=147.8Hz), 155.2, 144.6, 135.9, 131.3, 128.3(J=6.0Hz), 120.2, 115.8, 114.9(J=21.0Hz), 84.8, 68.4, 55.9, 51.3, 42.6, 18.8。HR-ESIMS (m/z):計算値C20H20FN2O2 [M+H]
+339.1509、実測値 339.1505。
【0085】
製造の実施例7:4-(N-P-フルオロベンジル-N-プロパルギル-アミノ)-2,6-ジメチルフェニルアミノギ酸メチル塩酸塩の製造(K43・HCl)
【化28】
【0086】
化合物4-(N-P-フルオロベンジル-N-プロパルギル-アミノ)-2,6-ジメチルフェニルアミノギ酸メチル (K43)(510mg、1.5mmol)をジクロロメタン (5mL)に溶解させ、塩化水素の酢酸エチル溶液(5N、1mL)を加え、10分間攪拌した後に減圧で溶剤を濃縮除去して、4-(N-P-フルオロベンジル-N-プロパルギル-アミノ)-2,6-ジメチルフェニルアミノギ酸メチル-塩酸塩(K43・HCl)(565mg)を得た。
【0087】
製造の実施例7と同様の方法で、他の化合物の塩酸塩を得ることができる。
【0088】
二、電気生理学的実験の実施例
電気生理学的実験の実施例1:
電気生理学的実験に使用された細胞系は、チャイニーズハムスター卵巣細胞系(CHO-K1)であり、KCNQ cDNAを大腸菌に導入し形質転換させることによって、大腸菌に発現させ、プラスミド抽出およびシークエンシングの確認を行った。
【0089】
1.細胞の培養とトランスフェクション
チャイニーズハムスター卵母細胞(CHO-K1)(中国科学院細胞庫)の培養液の配合:50/50 DMEM/F-12(Cellgro、Mamassas、VA)に10%ウシ胎児血清(FBS)(Gibco, オーストラリア)、2mM L-グルタミン酸(Invitrogen)を入れた。KCNQチャネルの発現:トランスフェクションの24時間前に、CHO-K1細胞を60mmの培養皿に展開した。トランスフェクションには、Lipofectamine2000
TM 試薬(Invitrogen)が使用され、そのプロトコール(protocol)に従って操作した。、KCNQプラスミドの細胞への導入の成功の可能性の指標として、GFP(緑色蛍光タンパク質)をコトランスフェクション(共移入)した。
【0090】
2.CHO細胞における電気生理学的記録:
室温で、Axopatch-200B増幅器(Molecular Devices、Sunnyvale、CA)で全細胞電圧クランプ記録を行った。ホウケイ酸ガラス毛細管(World Precision Instrunents、Sarasota、FL)を伸ばして電極とし、電極内に細胞内液を充填した後の抵抗が3-5MΩである。細胞内液の配合(1L):145mMKCl(Sigma)、1 mM MgCl
2 (Sigma)、5 mM EGTA (Sigma)、10 mM HEPES(Sigma)、5mM MgATP (Sigma)(KOHでpH=7.3に調整した)。記録の期間、BPSかん流システム(ALA Scientific Instruments、Westburg、NY)で細胞外液を持続的にかん流させた。細胞外液成分(1L):140mM NaCl(Sigma)、5mM KCl(Sigma)、2mM CaCl
2 (Sigma)、1.5mM MgCl
2 (Sigma)、10mM HEPES(Sigma)、10mM Glucose(Sigma)(NaOHでpH=7.4に調整した)。電気信号を1kHzにフィルタリングした後にDigiData 1322AにおけるpClamp 9.2ソフトウェア(Molecular Devices、Sunnyvale、CA)を用いてデジタル信号に転換した。抵抗を直列に接続して信号損失の60-80%を補った。現在の研究では多段電圧スキームを採用した。スキームにおけるクランプ電圧は−80mVとし、刺激電圧は−90 mV〜60 mVとし、間隔は10mVの勾配電圧とし、電圧ごとの刺激時間は、2000msとした。
【0091】
3.実験結果:
V
1/2は、半活性化電圧(half activation voltage)であり、ΔV
1/2は、半活性化電圧の移動値であり、負号(−)は、電流活性化曲線の左へのシフトを表す。I/I
0は、電流増強倍数であり、ここで、I
0は、細胞にブランクの外液を提供した時(外液がブランク)の、−10mVのテスト電圧の刺激で生じた電流のピーク値の最大値であり、Iは、投与(化合物濃度が10μM)後の、−10mVのテスト電圧の刺激で生じた電流のピーク値の最大値であり、I/I
0>1は作動活性を表し、I/I
0<1は阻害活性を表す。Nは、測定した細胞の数を表し、である。NTは、未測定を表す。
【0093】
結果と討論:上述した電気生理学的テストの結果により、本発明に係る化合物は、KCNQカリウムチャネルの良好な作動活性を維持するだけでなく、一部の化合物のI/I
0電流増強倍数がWO2013060097に記載の化合物K21のI/I
0電流増強倍数(I/I
0=1.53±0.15)より明らかに高くなることが分かった。
【0094】
電気生理学的実験の実施例2:化合物K43とレチガビン(略称は「RTG」)とのKCNQ2ホモ四量体チャネルに対する作動活性の比較
【0095】
実験操作手順は、電気生理学的実験の実施例1と同様であり、KCNQ2チャネル用量効果曲線(DRC)検定には、KCNQ2プラスミドがトランスフェクションされたCHO-K1細胞を採用し、KCNQ2/3ヘテロ四量体チャネルDRC検定には、KCNQ2とKCNQ3プラスミドが共にトランスフェクションされたCHO-K1細胞を採用した。DRC曲線は、ボルツマン・シグモイド方程式(Boltzmann sigmoidal)によりフィッティングされ、その実験結果を
図1に示した。
【0096】
結果と討論:
図1において、EC
50= 1.53nM(K43)であり、EC
50= 1.32μM(RTG)である。図
1におけるDRCの比較結果により、化合物K43の
KCNQ2ホモ四量体チャネルに対する作動活性はレチガビンの800倍以上であり、K43の作動活性はレチガビンより遥に高いことが分かった。
【0097】
電気生理学的実験の実施例2:化合物K43とCF341(即ち、WO2013060097に記載のK21)及びレチガビン(略称は「RTG」)とのKCNQ2/3ヘテロ四量体チャネルに対する作動活性の比較
【0098】
実験操作手順は電気生理学的実験の実施例1と同様であり、KCNQ2/3ヘテロ四量体チャネルは、10μLのLipo2000当たり4ngのプラスミドである。KCNQ2とKCNQ3プラスミドを1:1の質量比で共にトランスフェクションした。トランスフェクションの24時間後、トリプシン(Sigma、中国)で消化させた後に再びポリ-L-リジン(poly-L-lysine) (Sigma)に浸したスライドが展開されている60 mmの培養皿に展開した。KCNQ2/3ヘテロ四量体チャネルDRC検定には、KCNQ2とKCNQ3プラスミドが共にトランスフェクションされたCHO-K1細胞を採用し、DRC曲線は、ボルツマン・シグモイド方程式(Boltzmann sigmoidal) によりフィッティングされ、その実験の結果を
図2に示した。
【0099】
結果と討論:
図2において、EC
50= 49nM(K43)であり、EC
50=1.9μM(K21)である。
図2におけるDRC比較結果により、化合物K43のKCNQ2/3ヘテロ四量体チャネル(体内のM電流の主の媒介チャネル)に対する作動活性は、それぞれK21 (EC
50=990nM)とレチガビン(文献報告EC
50 =1.6μM、Sanker Rら、Epilepsia, 2012, 53, 412-424)の作動活性の20倍および30倍以上であり、K43のKCNQ2/3ヘテロ四量体チャネルに対するアゴニスト作用も化合物K21およびレチガビンより遥に高いことが分かった。
【0100】
三、生体内での化合物の薬力学効果の評価に関する実施例
生体内での薬力学効果の実施例1:経口・胃かん流により投与された化合物K41・HClとK43・HClの、MES(最大電気ショック)で発作を起こさせた動物モデルに対する予防・治療の作用
【0101】
本実験では、YLS-9A型生理・薬理電気刺激装置を使用し、マウスに電気刺激を与えて痙攣の発作を起こさせた。具体的なパラメータとしては、セット8を選択し、刺激電圧を160 Vとし、刺激時間を5.4 secとした。実験のときに、体重が18-22gであるSPF級の健康な雄のKMマウスを選択し、KMマウスの耳の先端部位を生理塩水で十分に濡らし、耳のクリップ電極で電気刺激を1回与えた後、後肢の強直性伸長を痙攣の指標とし、実験の前日には、動物をスクリーニングし、死亡および全身の強直性伸長がない動物を淘汰し、要求に適合する動物をケージにランダムに入れ、水を自由に飲むようにし、正式な実験前には動物を8h禁食させた。
【0102】
実験の当日には、各測定用の化合物を新たに調製した。レチガビン塩酸塩を超純水に直接に所望の濃度となるように溶解した。K41・HCl、K43・HClの調製比例は、5%のジメチルスルホキシド(DMSO)+95%の1%トゥイーン80(1% Tween80)とした。即ち、実験用化合物をそれぞれ量り、終体積5%のDMSOで十分溶解させ、さらに所望の体積の1% Tween80を十分に混濁させて所定の濃度の医薬品の混濁液を調製した。前日の動物をランダムに組み分けし(各組の動物の数は10匹)、マーキングし、体重を測定した後に、各実験用医薬品と溶媒(5%DMSO+95%(1%Tween80))とをそれぞれ経口・胃かん流によって投与した。投与した体積は0.2ml/10gであり、各化合物の投与量の範囲は、それぞれレチガビンが1mg/kg〜56mg/kgであり、K41・HClが1mg/kg〜40mg/kgであり、K43・HClが0.5mg/kg〜4mg/kgであり、投与して30min後にMES検定を行った。検定パラメータは上記と同様である。各組で全身強直間代性痙攣を発生した動物の数を記録し、各実験用化合物のMESによって痙攣を誘発させたマウスの保護率を計算し、化合物の用量‐効果曲線を描く。Graphpad Prism 5ソフトウェアにより分析し作図して、
図3のような各化合物の用量‐効果曲線が得られた。
【0103】
結果と討論:MES検定の結果は、経口によって予め投与されたレチガビン塩酸塩、化合物K41・HClとK43・HClは、MESによって痙攣を誘発させたマウスに対していずれも用量依存性の保護作用を示した。各化合物のED
50(50% の有効量)において、それぞれレチガビン塩酸塩は21.80mg/kgであり、95% CI(95%の信頼区間)は19.03mg/kg〜24.97mg/kgであり、K41・HClは4.80mg/kgであり、95% CIは3.42mg/kg〜6.74mg/kgであり、K43・HClは1.60mg/kgであり、95% CIは1.35mg/kg〜1.88mg/kgである。化合物K43とK41の抗MESの効能はいずれもレチガビンより強い。
【0104】
四、化合物のTD50テストの実施例
マウスロータロッドの実施例1:経口・胃かん流により投与された化合物K41・HClとK43・HClの、マウスの運動バランスに対する影響
【0105】
本実験には、YLS-4C型マウスロータロッド型疲労試験機を用いた。ロータロッドの径は3cmであり、回転速度は6rpmとした。実験時に、SPF級の健康なKM種類のマウス(雌と雄とをそれぞれ半分、体重は18-22g)を選んだ。実験の前日に、マウスをロータロッドに載置してトレーニングとスクリーニングを行った。トレーニングするときには、マウスの尾の先端を手でつかみ、ロータロッド上を爬行させ、所定時間後にはマウスの尾を徐々に放し、マウスが尾に頼らずに身体のバランスが取れたら、手を完全に放した。また、飛び跳ねたり、身をすくめて痙攣を引き起こしたりするマウスは淘汰した。なお、各期間を1minとして三つの期間を設定し、マウスが三つの期間でいずれもロータロッドから落下しなければ、そのマウスが実験の要求を満たしていると認定した。要求に適合する動物を性別に従ってケージにランダムに入れ、食べ物や水を自由に摂取するようにした。
【0106】
実験の当日には、各実験用化合物を新たに調製した。調製方法はMES検定試験と同様であり、薬剤の混濁度が十分でない場合には、それを20min間超音波で十分に混濁させた。前日にスクリーニングによって要求に適合して動物をランダムに組み分けし(各組の動物の数は10匹、雌と雄とはそれぞれ半分)、マーキングし、体重を測定した後に、各実験用薬剤と溶媒(5%DMSO+95%(1% Tween80))とをそれぞれそれぞれ経口・胃かん流で投与した。投与の体積は0.2ml/10gであり、各化合物の投与量の範囲は、それぞれレチガビンが30mg/kg〜150mg/kgであり、K41・HClが30mg/kg〜180mg/kgであり、K43・HClが90mg/kg〜210mg/kg)であり、投与して30 min後にロータロッド実験を行なった。使用した実験パラメータは上記と同様であり、各組においてロータロッドから落下した動物の数を記録し、各化合物のマウスのバランス運動機能に対する影響を分析した。Graphpad Prism 5ソフトウェアにより分析し作図して、
図4のような各化合物の投与量の、マウスのバランス運動機能に対する損傷の曲線(%)を得た。
【0107】
結果と討論:ロータロッド試験の結果、各化合物のTD
50(50%急性神経毒性用量)において、それぞれレチガビンが74.21 mg/kgであり、95% CIが69.65 mg/kg〜79.07 mg/kgであり、K41・HClが103.40 mg/kgであり、95% CIが72.62 mg/kg〜147.20 mg/kgであり、K43・HClが152.40 mg/kgであり、95% CIが104.30 mg/kg〜222.60 mg/kgである。医薬品の保護係数P.I.(Protective index)=TD
50 / ED
50 により、レチガビン、化合物K41・HClとK43・HClの MES試験におけるP.I値を計算した。そのP.I値は、それぞれ3.40、21.54と95.25であり、化合物K43とK41の神経毒性、副作用はいずれもレチガビンにより弱いことを示したので、より広い治療濃度域を有する。
【0108】
五、薬物動態学的研究の実施例
薬物動態学的研究の実施例1:化合物K41・HClとK43・HClのマウスの脳組織における分布の研究
【0109】
化合物の調合:K41・HClの場合、16%DMSO/20%TWEEN80/64%生理塩水で調製された0.5 mg/ml溶液を胃かん流で投与し、さらに1%TWEEN含有の生理塩水で0.2mg/mlまで希釈した溶液を静脈投与した。K43・HClの場合、5% DMSO/5%TWEEN80/80%生理塩水で調製された0.5 mg/ml溶液を胃かん流で投与し、さらに1%TWEEN含有の生理塩水で0.2mg/mlまで希釈した溶液を静脈投与した。
【0110】
実験の設計:
体重が18-20gである雄の健康な84匹のICRマウスを、試験前に12h断食させ、水は自由に飲むようにした。投与の2h後はすべてのマウスに給食させた。具体的な手順は下記表の通りである。
【0112】
サンプルの採集:
胃かん流後のマウスを、上記の時刻ごとに3匹ずつ腹大動脈から放血して殺処分した。各動物から0.5mlの全血を採集し、ヘパリン化試験管に入れ、11000rpmで5min間遠心して血漿を分離させ、−20℃の冷蔵庫に冷凍保存した。動物を殺処分した後、解剖して全脳を摘出し、冷たい生理食塩水で残留の血液を洗浄し、乾燥させた後、ラベルを貼り、−20℃の冷蔵庫に冷凍保存した。静脈投与したマウスを、上記の設定時刻にマウスの眼窩静脈叢から静脈血を0.2ml採集し、ヘパリン化試験管に入れ、11000rpmで5min間遠心して血漿を分離させ、−20℃の冷蔵庫に冷凍保存した。液体クロマトグラフィータンデム質量分析により血漿と脳組織における各化合物の濃度を測定した。
【0113】
実験結果:
得られた血漿の濃度データにより、Phoenix 1.3ソフトウェア(米国のPharsight社)のノンコンパートメントモデルを用いて、投与後の薬物動態学パラメータを計算した。
【0114】
マウスに対するK41・HClの、5mg/kgの胃かん流投与と2mg/kgの静脈注射との薬物動態学パラメータ
【表5】
【0115】
マウスに対するK43・HClの、5mg/kgの胃かん流で投与と2mg/kgの静脈注射との薬物動態学パラメータ
【表6】
【0116】
実験の結論:
5mg/kgの化合物K41・HClをマウスに胃かん流投与した後、血漿および脳組織における薬物(医薬品)K41・HClの濃度がピークとなる時間T
maxは0.25hであり、薬物K41・HClの脳組織における濃度は血漿の濃度の2.6倍である。化合物K41・HClの、ICRマウス体内での経口バイオアベイラビリティは91.9%である。
【0117】
5mg/kgの化合物 K43・HClをマウスに胃かん流投与した後、血漿および脳組織における薬物K43・HClの濃度がピークとなる時間T
maxは0.25hであり、化合物K43・HClの脳組織における濃度は血漿の濃度の7.2倍である。化合物K43・HClの、ICRマウス体内での経口バイオアベイラビリティは22.5%である。
【0118】
WO2013060097の開示によれば、同様の実験の条件下で20mg/kg用量のレチガビンを胃かん流で投与した場合は、マウス脳における暴露量は血漿の16%だけであり、用量20mg/kgのレチガビンを静脈投与した場合は、マウス脳における暴露量は血漿の14%だけである。従って、上述したマウス体内から薬物動態の実験結果により、化合物K41・HClとK43・HClは、レチガビンより良好な脳組織の濃度分布を有し、マウス体内での脳組織における分配係数はWO2013060097に記載の化合物K21に相当するか、またはより優れる。
【0119】
薬物動態学研究の実施例2:K43の静脈投与及び経口投与後のラットの脳組織における分布の研究
【0120】
実験の目的:
化合物K43をスプラーグドーリー(Sprague Dawley)ラットに静脈投与および経口投与後に、異なるタイミングで血のサンプルと脳組織を採集し、LC-MS/MSで実験用薬物を投与した後の、ラットの血漿と脳におけるK43の濃度を測定し、薬物動態に関連するパラメータを計算し、化合物K43のラット体内での経口バイオアベイラビリティ状況および脳組織の分布の状況を観察する。
【0121】
実験の設計:
24匹のSDラットは、上海SLAC実験動物有限責任会社が提供し、下記の表にしたがって実験を行なった。
【表7】
*薬物の濃度は、遊離基により計算した。
**第二の組は、24hのタイミングで採集した脳組織サンプルであり、第三組〜第八組は、0.25、0.5、1、2、4、6hのタイミングで採集した脳組織サンプルである。
【0122】
サンプルの採集:
1匹ごとに眼窩から毎回約0.15mL血液を採集し、EDTAK2で抗凝固した。IV組の採集タイミングは、実験用薬物(被験物)の投与前(0hr)と実験用薬物の投与後の5min、15min、30min、1h、2h、4h、6h、8h及び24hであり、PO組の採集タイミングは、実験用薬物の投与前(0hr)と実験用薬物の投与後の15min、30min、1h、2h、4h、6h、8hと24hである。脳組織のサンプリングの採集時間は0.25、0.5、1、2、4、6と24hである。サンプリングした血液は氷上に置き、1時間内に血漿を遠心分離させた(遠心条件:12000 rpm/分、2分、4℃)。採集した血漿を分析する前に−20℃の温度で保存した。
【0123】
実験の結論:
得られた血漿濃度データにより、WinNonlin V6.3のノンコンパートメントモデルを用いて、投与後の薬物動態学パラメータを計算した。
【0124】
SDラットに静脈投与後のK43(静脈(IV), 0.500 mg/kg)の主な薬物動態学パラメータ
【表8】
【0125】
SDラットに投与後のK43(経口、PO、5.00 mg/kg)の主な薬物動態学パラメータ
【表9】
【0126】
SDラットに投与後のK43(経口、PO、5.00 mg/kg)の脳組織における主な薬物動態学パラメータ
【表10】
【0127】
実験の結論:
K43のSDラット体内での薬物動態学の研究及び脳組織分布の研究の結果によれば、静脈(IV)投与後(用量0.5 mg/kg)の、ラット体内での半減期は1.41±0.191hrであり、クリアランスCLは35.8±1.70 mL/kg/minであり、Vssは2.76±0.324 L/kgである。
【0128】
経口(PO)投与(用量5.00 mg/kg)後の、K43のラット体内での血漿濃度の平均ピーク時間は2.33±1.53 hrであり、ピーク濃度は103±37.8ng/mLであり、AUC
0→24hrは742±554hr*ng/mLであり、化合物K43のSDラット体内での経口バイオアベイラビリティは32.2±24.1%である。
【0129】
経口(PO)投与(用量5.00 mg/kg)後の、K43のラット体内での脳組織の平均ピーク時間は2.00 hrであり、ピークの平均濃度は366 ng/gであり、AUC
0→24hrは2895 hr*ng/gであり、SDラット体内での脳組織の化合物K43のAUC
0→24hrは、血漿中のそれの3.90倍である。