特許第6357249号(P6357249)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6357249ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンコポリマー組成物を含む物品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6357249
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンコポリマー組成物を含む物品
(51)【国際特許分類】
   C08L 71/12 20060101AFI20180702BHJP
   C08L 83/12 20060101ALI20180702BHJP
   C08K 5/521 20060101ALI20180702BHJP
   C08K 5/5399 20060101ALI20180702BHJP
   C08K 7/14 20060101ALI20180702BHJP
   C08K 7/06 20060101ALI20180702BHJP
   C08K 3/34 20060101ALI20180702BHJP
   C08K 3/40 20060101ALI20180702BHJP
   G03G 15/20 20060101ALI20180702BHJP
   F04D 29/38 20060101ALI20180702BHJP
   H01M 2/02 20060101ALI20180702BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20180702BHJP
【FI】
   C08L71/12
   C08L83/12
   C08K5/521
   C08K5/5399
   C08K7/14
   C08K7/06
   C08K3/34
   C08K3/40
   G03G15/20 505
   F04D29/38 Z
   H01M2/02 A
   B60R16/02 610A
【請求項の数】6
【全頁数】53
(21)【出願番号】特願2016-567020(P2016-567020)
(86)(22)【出願日】2015年4月20日
(65)【公表番号】特表2017-514970(P2017-514970A)
(43)【公表日】2017年6月8日
(86)【国際出願番号】US2015026612
(87)【国際公開番号】WO2015171293
(87)【国際公開日】20151112
【審査請求日】2017年1月11日
(31)【優先権主張番号】14/270,478
(32)【優先日】2014年5月6日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508171804
【氏名又は名称】サビック グローバル テクノロジーズ ベスローテン フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】リエツァウ、クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 匠
【審査官】 小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/015945(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 71/12
C08L 83/12
B60R 16/02
C08K 3/34
C08K 3/40
C08K 5/521
C08K 5/5399
C08K 7/06
C08K 7/14
F04D 29/38
G03G 15/20
H01M 2/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物を含む物品であって、
前記物品は、フューザーホルダーであり
前記組成物は、全ての重量%は組成物の総重量を基準として、
ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマーと第1のポリ(フェニレンエーテル)とを含むポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物10重量%と、
第2のポリ(フェニレンエーテル)を55〜75重量%と、
有機リン酸エステル、ホスファゼン、又はそれらの組合せを含む難燃剤を5〜25重量%と、
補強充填剤を10〜35重量%と、
含むことを特徴とする物品。
【請求項2】
前記補強充填剤は、ガラス繊維を含むことを特徴とする請求項に記載の物品。
【請求項3】
前記組成物は、ゴム改質ポリスチレン、アルケニル芳香族モノマー及び共役ジエンの非水素化ブロックコポリマー、アルケニル芳香族モノマー及び共役ジエンの水素化ブロックコポリマー、アクリレートコアシェル型耐衝撃性改良剤、及びそれらの組合せからなる群から選択された耐衝撃性改良剤を1〜10重量%更に含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の物品。
【請求項4】
前記組成物は、10〜20重量%の補強充填剤を含み、前記補強充填剤は、ガラス繊維を含むことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の物品。
【請求項5】
組成物を含む物品であって、
前記物品は、フューザーホルダーであり、
前記組成物は、全ての重量%は組成物の総重量を基準として、
ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマーと第1のポリ(フェニレンエーテル)とを含むポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物を2〜10重量%と、
ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)を含む第2のポリ(フェニレンエーテル)を55〜75重量%と、
ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)を含む難燃剤を5〜15重量%と、
ガラス繊維を含む補強充填剤を10〜20重量%と、
ポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレンブロックコポリマーを1〜5重量%と、
含み、
前記ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマーは、
下記の構造を有するフェニレンエーテル繰り返し単位を含むポリ(フェニレンエーテル)ブロックと、
下記の構造を有するポリシロキサンブロックと、
を含み、
nは、30〜60であり、
前記第1のポリ(フェニレンエーテル)は、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)を含
ことを特徴とする物品。
【請求項6】
組成物を含む物品であって、
前記物品は、ファンブレード、ハイブリッド及び電気輸送機関のバッテリー部品、自動車の運動エネルギー回生システムの部品、及び電気自動車のジャンクションボックスからなる群から選択され、
前記組成物は、全ての重量%は組成物の総重量を基準として、
ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマーと第1のポリ(フェニレンエーテル)とを含むポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物を53〜63重量%と、
ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)を含む難燃剤を15〜25重量%と、
ガラス繊維を含む補強充填剤を15〜25重量%と、
0.5〜3重量%の直鎖状低密度ポリエチレンと、
を含み、
前記ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマーは、
下記の構造を有するフェニレンエーテル繰り返し単位を含むポリ(フェニレンエーテル)ブロックと、
下記の構造を有するポリシロキサンブロックと、
を含み、
nは、30〜60であ
ことを特徴とする物品。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
ポリ(フェニレンエーテル)は、優れた耐水性、寸法安定性、及び生来の難燃性で知られるプラスチックの種類である。強度、剛直性、化学的耐性、及び耐熱性などの特性は、他の様々なプラスチックとブレンドすることにより、例えば鉛管固定具、電気ボックス、自動車部品、及び電線及びケーブルの絶縁などの消費者用及び産業用製品の広範な要件を充足するように適合させることができる。
【0002】
ポリ(フェニレンエーテル)ベースの組成物から製造される部品には、高い難燃性が要求されるものがある。例えば、電子写真複写機のフューザーホルダー、ファンブレード、ハイブリッド及び電気輸送機関のバッテリー部品、自動車の運動エネルギー回生システムの部品、及び電気自動車のジャンクションボックスである。ポリ(フェニレンエーテル)は本来難燃性であるが、しばしば耐衝撃性改良剤や流動促進剤などの、組成物の加工性や機械特性を向上させるが難燃性を低下させる他の成分とブレンドされる。したがって、ポリ(フェニレンエーテル)とこれらの他の成分とのブレンドには、しばしば難燃性の添加剤が必要とされる。
【0003】
成形した部品の一部は、Underwriter's Laboratory社の要綱94「プラスチック材料の燃焼試験、UL94」の20mm垂直燃焼性試験において、V−0の燃焼性評価が要求される。このV−0評価は、ポリ(フェニレンエーテル)組成物においては、難燃剤の含有量を増加させ、可燃性成分の含有量を低減させたとしても、達成するのが困難でありうる。また、V−0評価が達成される場合、しばしば、低減された耐熱性及び低減された剛性が犠牲にされる。
【0004】
高い耐熱性及び剛性を維持しつつ、UL94でV−0評価を示すポリ(フェニレンエーテル)含有部品がなお必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
1つの実施の形態は、組成物を含む物品であって、前記物品は、電子写真複写機のフューザーホルダー、ファンブレード、ハイブリッド及び電気輸送機関のバッテリー部品、自動車の運動エネルギー回生システムの部品、及び電気自動車のジャンクションボックスからなる群から選択され、前記組成物は、全ての重量%は組成物の総重量を基準として、ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー、ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサングラフトコポリマー、又はそれらの組合せを含むポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンコポリマーを0.5〜85重量%と、有機リン酸エステル、ホスファゼン、又はそれらの組合せを含む難燃剤を5〜25重量%と、補強充填剤を10〜35重量%と、を含み、前記物品がフューザーホルダーである場合、前記組成物は、ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマーと第1のポリ(フェニレンエーテル)とを含むポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物を2〜10重量%含み、55〜75重量%の第2のポリ(フェニレンエーテル)を更に含むことを特徴とする物品である。
【0006】
この及び他の実施の形態が、以下に詳述される。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明者らは、特定量のポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンコポリマーと、難燃剤と、補強充填剤とを含む組成物から製造された部品(本明細書において「物品」とも呼ぶ)が、高い耐熱性及び剛性を維持しつつ、UL94でV−0評価を示すことを特定した。ある実施の形態において、高い耐熱性は、ASTM D648−07に準拠して、厚さ6.4mmの試験片を用い、エッジワイズ試験方向、支持スパン100mm(B法)、応力1.82MPa、撓みが0.25mmに達した時に読み取り、加熱速度毎分2℃で測定した熱変形温度が、110〜180℃、具体的には130〜170℃であることで示される。ある実施の形態において、高い剛性は、ASTM D790−07elに準拠して、厚さ6.4mmの試験片を用い、23℃、支持スパン101.6mm、試験速度毎分2.54mmで測定した曲げ弾性率が、3500〜7000MPa、具体的には4500〜6500MPaであることで示される。ある実施の形態において、組成物は、部品の射出成形を容易にする高いメルトフローを示す。高いメルトフローは、ASTM D1238−04に準拠して、300℃、5kgの負荷を使用、自動時間調整(B法)、キャピラリー直径2.0955mm、キャピラリー長さ8.00mmで測定したメルトボリュームフローレートが、10〜30cm/10分、具体的には10〜25cm/10分であることで客観的に示されうる。
【0008】
組成物の難燃性、耐熱性、及び剛性から恩恵を受ける物品の例は、電子写真複写機のフューザー(定着器)ホルダー(フューザーゲート、フューザーカバー、及びフューザーフレームを含む)、ファンブレード(パーソナルコンピューター、サーバー、ルーター、及びベースステーションなどのコンピューター及び通信機器において使用されるファンのブレード;冷蔵庫、冷凍庫、洗濯機、乾燥機、電子レンジ、食器洗浄機、空調機器、及び音声映像機器などの電気製品において使用されるファンのブレード;及びロボットなどの産業機器において使用されるファンのブレードを含む)、ハイブリッド及び電気輸送機関のバッテリー部品(バッテリーケース、バッテリーモジュールケース、バッテリーターミナルブロック、バッテリースペーサー、及びバッテリートレーを含む)、自動車の運動エネルギー回生システムの部品(バッテリーモジュールケース及びコンデンサーケースを含む)、及び電気自動車のジャンクションボックスを含む。
【0009】
組成物は、ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー、ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサングラフトコポリマー、又はそれらの組合せを含むポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンコポリマーを含む。
【0010】
ある実施の形態において、組成物は、ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンコポリマーを含む。ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンコポリマーは、ポリ(フェニレンエーテル)ブロックとポリシロキサンブロックを含む。ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマーは、1つのポリ(フェニレンエーテル)ブロックと1つのポリシロキサンブロックを含むジブロックコポリマー;2つのポリ(フェニレンエーテル)ブロックと1つのポリシロキサンブロック、又は、1つのポリ(フェニレンエーテル)ブロックと2つのポリシロキサンブロックを含むトリブロックコポリマー;及び少なくとも2つのポリ(フェニレンエーテル)ブロックと少なくとも2つのポリシロキサンブロックを含むマルチブロックコポリマーを含む。
【0011】
ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンジブロック及びトリブロックコポリマーは、1価フェノールとヒドロキシアリール末端ポリシロキサンの混合物の酸化重合により合成できる。酸化重合は、目的生成物としてポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマーを含むポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物を生成し、副生成物としてポリ(フェニレンエーテル)を生成する。本明細書においては、この反応生成物に存在するポリ(フェニレンエーテル)を、組成物中に任意成分として存在する、ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物に由来しない「第2のポリ(フェニレンエーテル)」と区別するために、「第1のポリ(フェニレンエーテル)」と呼ぶことがある。ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマーから第1のポリ(フェニレンエーテル)を分離する必要はない。したがって、ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマーは、ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマーに加えて第1のポリ(フェニレンエーテル)を含むポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロック反応生成物として本組成物に導入されてもよい。
【0012】
ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマーが、1価フェノールとヒドロキシアリール末端ポリシロキサンの混合物の酸化重合により合成される場合、ポリ(フェニレンエーテル)ブロックは、1価フェノールの重合生成物である。
【0013】
ある実施の形態において、1価フェノールは、下記の構造を有し、
【化1】
ポリ(フェニレンエーテル)ブロックは、下記の構造を有するフェニレンエーテル繰り返し単位を含む。
【化2】
ここで、それぞれの繰り返し単位において、Zは、それぞれ個々に、置換又は無置換のC−C12のヒドロカルビルチオ基、置換又は無置換のC−C12のヒドロカルビロキシ基、又は三級ヒドロカルビル基ではない置換又は無置換のC−C12のヒドロカルビル基であり、Zは、それぞれ個々に、水素原子、置換又は無置換のC−C12のヒドロカルビルチオ基、置換又は無置換のC−C12のヒドロカルビロキシ基、又は三級ヒドロカルビル基ではない置換又は無置換のC−C12のヒドロカルビル基である。本明細書において用いられる「ヒドロカルビル基」という用語は、それ自体で用いられる場合も、接頭辞、接尾辞、又は別の用語のフラグメントとして用いられる場合も、炭素及び水素のみを含む残基を指す。残基は、脂肪族、芳香族、直鎖、環式、二環式、分岐鎖、飽和、又は不飽和であってもよい。残基は、脂肪族、芳香族、直鎖、環式、二環式、分岐鎖、飽和、及び不飽和の炭化水素部分の組合せを含んでもよい。しかし、ヒドロカルビル残基が置換されているものとして記載される場合、ヒドロカルビル残基は、オプションで、置換基の炭素原子及び水素原子上にヘテロ原子を含んでもよい。例えば、置換されているものとして記載される場合、ヒドロカルビル残基は、1以上のカルボニル基、アミノ基、ヒドロキシル基を含んでもよいし、ヒドロカルビル残基の骨格中にヘテロ原子を含んでもよい。一例として、フェニレンエーテル繰り返し単位のZは、末端の3,5−ジメチル−1,4−フェニル基と酸化重合触媒のジ−n−ブチルアミン成分との反応により生成されたジ−n−ブチルアミノメチル基であってもよい。ある実施の形態において、1価フェノールは、2,6−ジメチルフェノール、2,3,6−トリメチルフェノール、又はそれらの組合せを含み、ポリ(フェニレンエーテル)ブロックは、それぞれ、2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル繰り返し単位、すなわち、下記の構造を有する繰り返し単位、
【化3】
2,3,6−トリメチル−1,4−フェニレンエーテル繰り返し単位、又はそれらの組合せを含む。
【0014】
ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマーが、1価フェノールとヒドロキシアリール末端ポリシロキサンの混合物の酸化重合により合成される場合、ポリシロキサンブロックは、ヒドロキシアリール末端ポリシロキサンの残基である。ある実施の形態において、ポリシロキサンブロックは、下記の構造を有する繰り返し単位を含む。
【化4】
ここで、R及びRは、それぞれ個々に、水素原子又はC−C12のヒドロカルビル基であり、ポリシロキサンブロックは、更に、下記の構造を有する末端単位を含む。
【化5】
ここで、Yは、水素原子、C−C12のヒドロカルビル基、又はC−C12のヒドロカルビロキシ基であり、R及びRは、それぞれ個々に、水素原子又はC−C12のヒドロカルビル基である。ある実施の形態において、ポリシロキサン繰り返し単位は、ジメチルシロキサン(−Si(CHO−)単位を含む。ある実施の形態において、ポリシロキサンブロックは、下記の構造を有する。
【化6】
ここで、nは、20〜60である。
【0015】
とくに具体的な実施の形態において、ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマーは、下記の構造を有するフェニレンエーテル繰り返し単位を含むポリ(フェニレンエーテル)ブロックと、
【化7】
下記の構造を有するポリシロキサンブロックとを含み、
【化8】
ここで、nは、30〜60である。
【0016】
ヒドロキシアリール末端ポリシロキサンは、少なくとも1つのヒドロキシアリール末端基を含む。ある実施の形態において、ヒドロキシアリール末端ポリシロキサンは、1つのヒドロキシアリール末端基を有し、この場合、ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンジブロックコポリマーが形成される。別の実施の形態において、ヒドロキシアリール末端ポリシロキサンは、2つのヒドロキシアリール末端基を有し、この場合、ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンジブロックコポリマー、及び/又は、ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサン−ポリ(フェニレンエーテル)トリブロックコポリマーが形成される。ヒドロキシアリール末端ポリシロキサンは、分岐構造を有していてもよい。これにより、3以上のヒドロキシアリール末端基が可能となり、対応する分岐鎖ブロックコポリマーの形成が可能となる。
【0017】
ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物を調整するためのとくに具体的な手順において、1価フェノールは、2,6−ジメチルフェノールであり、ヒドロキシアリール末端ポリシロキサンは、35〜60のジメチルシロキサン単位を含むオイゲノールキャップポリジメチルシロキサンであり、酸化共重合は、170〜220分の反応時間で実行され、ヒドロキシアリール末端ポリシロキサンは、1価フェノールとヒドロキシアリール末端ポリシロキサンを合わせた重量の2〜7重量%を構成する。
【0018】
ある実施の形態において、ヒドロキシアリール末端ポリシロキサンは、20〜80のシロキサン繰り返し単位、具体的には25〜70のシロキサン繰り返し単位、より具体的には30〜60のシロキサン繰り返し単位、さらに具体的には35〜50のシロキサン繰り返し単位、さらに具体的には40〜50のシロキサン繰り返し単位を含む。ポリシロキサンブロック内のシロキサン繰り返し単位の数は、共重合及び単離条件により本質的には影響を受けないので、原料であるヒドロキシアリール末端ポリシロキサン内のシロキサン繰り返し単位の数と同量である。別の方法が知られていない場合は、ヒドロキシアリール末端ポリシロキサン分子ごとのシロキサン繰り返し単位の数の平均は、核磁気共鳴(NMR)のシロキサン繰り返し単位に関連する信号強度とヒドロキシアリール末端基に関連する信号強度とを比較する方法により測定することができる。例えば、ヒドロキシアリール末端ポリシロキサンが、オイゲノールでキャップされたポリジメチルシロキサンである場合、プロトン核磁気共鳴(H NMR)のジメチルシロキサン共鳴のプロトンとオイゲノールのメトキシ基のプロトンの強度を比較する方法により、シロキサン繰り返し単位の数の平均を測定することができる。
【0019】
ある実施の形態において、ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物は、少なくとも30000原子質量単位の重量平均分子量を有する。例えば、反応生成物は、30000〜150000原子質量単位、具体的には35000〜120000原子質量単位、より具体的には40000〜90000原子質量単位、さらに具体的には45000〜70000原子質量単位の重量平均分子量を有してもよい。ある実施の形態において、ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物は、10000〜50000原子質量単位、具体的には10000〜30000原子質量単位、より具体的には14000〜24000原子質量単位の数平均分子量を有する。
【0020】
ある実施の形態において、ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物は、クロロホルム中25℃でのウベローデ(Ubbelohde)粘度計による測定で、少なくとも0.3dL/gの固有粘度を有する。ある実施の形態において、固有粘度は、0.3〜0.5dL/g、具体的には0.31〜0.5dL/g、より具体的には0.35〜0.47dL/gである。
【0021】
ヒドロキシアリール末端ポリシロキサンがブロックコポリマーに導入される効率の一つの指標は、反応生成物中のいわゆるポリ(フェニレンエーテル)「テール」基の含量の低さである。2,6−ジメチルフェノールの単独重合において、生成分子の多くは、直線状の生成分子の一方の末端が3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル基の「ヘッド」により、他方の末端が2,6−ジメチルフェノキシ基の「テール」により終結された、いわゆる「ヘッド−テール」型の構造を有する。したがって、1価フェノールが、2,6−ジメチルフェノールからなる場合、ポリ(フェニレンエーテル)のテール基は下記の構造を有する。
【化9】
「2,6−ジメチルフェノキシ基」という語は1価基を指し、2価の2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル基を含まないことに留意されたい。1価フェノールとヒドロキシアリール末端ポリシロキサンの共重合において、ヒドロキシアリール末端ポリシロキサンのブロックコポリマーへの導入により、フェニレンエーテル「テール」基の含量は低下する。したがって、ある実施の形態において、1価フェノールは、2,6−ジメチルフェノールからなり、反応生成物は、反応生成物の重量を基準として、0.4重量%以下、具体的には0.1〜0.4重量%の2,6−ジメチルフェノキシ基を含む。2,6−ジメチルフェノキシ基のテール末端基の含量の低さは、反応生成物において、2,6−ジメチルフェノールホモポリマーの含量が低減され、所望のポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマーの含量が増加されていることの指標となる。
【0022】
ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物は、それ自体が1価フェノールの酸化生成物であるジフェノキノンに由来する基を更に含んでもよい。例えば、1価フェノールが2,6−ジメチルフェノールである場合、ジフェノキノンは3,3',5,5'−テトラメチル−4,4'−ジフェノキノンである。共重合のビルド段階(build phase)中に、ジフェノキノンは、通常、対応するビフェニル基としてヘッド−テール型ポリ(フェニレンエーテル)の「テール」末端に導入される。更なる反応中に、末端ビフェニル基は、第1のポリ(フェニレンエーテル)鎖の内部のビフェニル基となりうる。ある実施の形態において、1価フェノールは、2,6−ジメチルフェノールからなり、反応生成物は、0.1〜2.0重量%、具体的には1.1〜2.0重量%の2,6−ジメチル−4−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−フェノキシ(「ビフェニル」)基を含む。ビフェニル基は、2官能(ヘッド−ヘッド型又はヒドロキシル基で両末端が終結された)構造にのみ存在する。したがって、ビフェニル基の含量の低さは、反応生成物において、このような2官能の2,6−ジメチルフェノールホモポリマーの含量が低減され、所望のポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマーの含量が増加されていることの指標となる。
【0023】
ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物のポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー含量は、核磁気共鳴分光法(NMR)により推測できる。例えば、1価フェノールが2,6−ジメチルフェノールであり、ヒドロキシアリール末端ポリシロキサンがオイゲノール二末端ポリジメチルシロキサンである場合、反応生成物は、ヘッド−テール型ポリ(フェニレンエーテル)ホモポリマー、ヘッド−ヘッド型ポリ(フェニレンエーテル)ホモポリマー(ビフェニル基を含む)、及びポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサン−ポリ(フェニレンエーテル)トリブロックコポリマーの混合物に近似できる。混合物の核磁気共鳴分析が、下記の構造を有する「ヘッド基」と、
【化10】
下記の構造を有する「テール基」と、
【化11】
下記の構造を有する「ビフェニル基」と
【化12】
の相対含有量を決定するために用いることができる。ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサン−ポリ(フェニレンエーテル)トリブロックコポリマー(PSP)の含有量は、下記のように算出することができる。
PSP=1/2([ヘッド基]−[テール基]−2[ビフェニル基])
【0024】
ある実施の形態において、ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物は、ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマーに、ヒドロキシアリール末端ポリシロキサン原料の75重量%以上を導入する。具体的には、ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマーに導入されたヒドロキシアリール末端ポリシロキサンの量は、少なくとも80重量%、より具体的には少なくとも85重量%、さらに具体的には少なくとも90重量%、さらに具体的には少なくとも95重量%であってもよい。
【0025】
ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物の調整、特性分析、及び特性に関する詳細は、Carrilloらによる米国特許第8,017,697号、第8,669,332号、及び第8,722,837号にある。
【0026】
ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマーを生成するために、上述した酸化共重合法に加えて、ポリエステル化法を用いることができる。ポリエステル化法が用いられる場合、生成物は、少なくとも2つのポリ(フェニレンエーテル)ブロックと少なくとも2つのポリシロキサンブロックを含むマルチブロックコポリマーである。したがって、ある実施の形態において、ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマーは、ヒドロキシ二末端ポリ(フェニレンエーテル)、ヒドロキシアリール二末端ポリシロキサン、及び芳香族二酸塩化物の共重合の生成物であるポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンマルチブロックコポリマーを含む。
【0027】
ヒドロキシ二末端ポリ(フェニレンエーテル)は、下記の構造を有してもよい。
【化13】
ここで、x及びyは、それぞれ独立に、0〜約100であり、ただし、xとyの和は少なくとも2であり;それぞれのQは、ハロゲン原子、無置換又は置換されたC−C12のヒドロカルビルチオ基、無置換又は置換されたC−C12のヒドロカルビロキシ基、少なくとも2つの炭素原子がハロゲン原子と酸素原子を隔てている無置換又は置換されたC−C12のハロヒドロカルビロキシ基、及び三級ヒドロカルビル基ではない無置換又は置換されたC−C12のヒドロカルビル基からなる群から独立に選択され;それぞれのQは、水素原子、ハロゲン原子、C−C12のヒドロカルビルチオ基、C−C12のヒドロカルビロキシ基、少なくとも2つの炭素原子がハロゲン原子と酸素原子を隔てているC−C12のハロヒドロカルビロキシ基、及び三級ヒドロカルビル基ではない無置換又は置換されたC−C12のヒドロカルビル基からなる群から独立に選択され;Lは、下記の構造を有し;
【化14】
ここで、それぞれのR及びRは、水素原子、ハロゲン原子、無置換又は置換されたC−C12のヒドロカルビルチオ基、無置換又は置換されたC−C12のヒドロカルビロキシ基、少なくとも2つの炭素原子がハロゲン原子と酸素原子を隔てている無置換又は置換されたC−C12のハロヒドロカルビロキシ基、及び三級ヒドロカルビル基ではない無置換又は置換されたC−C12のヒドロカルビル基からなる群から独立に選択され;zは、0又は1であり;Yは、下記からなる群から選択された構造を有し、
【化15】
ここで、R−R10は、それぞれ独立に、水素原子又はC−C12のヒドロカルビル基である。
【0028】
ある実施の形態において、ヒドロキシ二末端ポリ(フェニレンエーテル)は、下記の構造を有する。
【化16】
ここで、Qは、それぞれ独立に、メチル基又はジ−n−ブチルアミノメチル基であり、a及びbは、それぞれ独立に、0〜約100であり、ただし、aとbの和は、3〜100である。ある実施の形態において、aとbの和は、4〜30である。
【0029】
ポリエステル化法において使用される芳香族二酸塩化物は、例えば、テレフタロイルクロリド、イソフタロイルクロリド、4,4'−ビフェニルジカルボニルクロリド、3,3'−ビフェニルジカルボニルクロリド、3,4'−ビフェニルジカルボニルクロリド、4,4'−オキシビス(ベンゾイルクロリド)、3,3'−オキシビス(ベンゾイルクロリド)、3,4'−オキシビス(ベンゾイルクロリド)、4,4'−スルホニルビス(ベンゾイルクロリド)、3,3'−スルホニルビス(ベンゾイルクロリド)、3,4'−スルホニルビス(ベンゾイルクロリド)、ナフタレン−2,6−ジカルボニルクロリド、又はそれらの組合せであってもよい。ある実施の形態において、芳香族二酸塩化物は、テレフタロイルクロリドを含む。
【0030】
上述したように、ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンマルチブロックコポリマーをポリエステル化法により調整する場合、それは、少なくとも2つのポリ(フェニレンエーテル)ブロックと少なくとも2つのポリシロキサンブロックを含む。しかし、それは、それぞれの種類のブロックをより多く含んでもよい。例えば、ある実施の形態において、ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンマルチブロックコポリマーは、約5〜約25のポリ(フェニレンエーテル)ブロックと約10〜約30のポリシロキサンブロックを含む。
【0031】
ポリエステル化法と、それにより調整されたポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンマルチブロックコポリマーに関する更なる詳細は、Kamalakaranらによる米国特許第8,309,665号にある。ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンマルチブロックコポリマーを生成する別の方法は、Cellaらに記述されている。
【0032】
ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンコポリマーは、ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサングラフトコポリマーを含んでもよい。ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサングラフトコポリマーは、ポリ(フェニレンエーテル)骨格と、ポリ(フェニレンエーテル)骨格のフェニレンエーテル単位の内部(末端ではない)に少なくとも1つのポリシロキサングラフトを含む。ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサングラフトコポリマーは、上記で定義した1価フェノールと、下記の構造を有するフェノール−ポリシロキサンマクロマーの酸化共重合により調整することができる。
【化17】
ここで、R11は、ハロゲン原子、無置換又は置換されたC−C12のヒドロカルビルチオ基、無置換又は置換されたC−C12のヒドロカルビロキシ基、少なくとも2つの炭素原子がハロゲン原子と酸素原子を隔てている無置換又は置換されたC−C12のハロヒドロカルビロキシ基、又は三級ヒドロカルビル基ではない無置換又は置換されたC−C12のヒドロカルビル基であり;R12は、水素原子、ハロゲン原子、無置換又は置換されたC−C12のヒドロカルビルチオ基、無置換又は置換されたC−C12のヒドロカルビロキシ基、少なくとも2つの炭素原子がハロゲン原子と酸素原子を隔てている無置換又は置換されたC−C12のハロヒドロカルビロキシ基、又は三級ヒドロカルビル基ではない無置換又は置換されたC−C12のヒドロカルビル基であり;R11は、C−C20のヒドロカルビレン基であり;R14は、それぞれ独立に、水素原子又はC−C12のヒドロカルビル基であり;R15は、C−C12のヒドロカルビル基であり;mは、3〜100である。具体的な実施の形態において、1価フェノールは2,6−ジメチルフェノールであり、フェノール−ポリシロキサンマクロマーにおいて、R11はメチル基であり、R12は水素原子であり、R13はトリメチレン(−CH−CH−CH−)であり、それぞれのR14はメチル基であり、R15はメチル基であり、mは20〜60である。ある実施の形態において、1価フェノールとフェノール−ポリシロキサンマクロマーのモル比は、酸化共重合中、10:1〜1000:1、具体的には20:1〜100:1である。ある実施の形態において、ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンマクロマーにおけるシロキサンの重量%は、0.5〜10重量%、具体的には1〜8重量%である。酸化共重合により調整されたポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサングラフトコポリマーに関する更なる詳細は、Blohmらによる米国特許第5,281,686号にある。ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサングラフトコポリマーは、ヒドロキシアリール末端ポリシロキサンの存在下におけるポリ(フェニレンエーテル)の再分配により調整することもできる。この手順は、Blohmらによる米国特許第5,596,048号に記載されている。
【0033】
組成物は、ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマーとポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサングラフトコポリマーの混合物を含んでもよい。
【0034】
ある実施の形態において、組成物は、ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンコポリマーに共有結合したポリシロキサンを0.025〜5重量%含む。言い換えれば、ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンコポリマーは、全体として0.025〜5重量%のポリシロキサンを組成物に寄与する。ある実施の形態において、共有結合したポリシロキサンの量は、組成物の総重量を基準として、0.025〜2重量%、具体的には0.05〜1重量%である。別の実施の形態において、共有結合したポリシロキサンの量は、組成物の総重量を基準として、1〜6重量%、具体的には2〜4重量%である。ある実施の形態において、組成物のポリシロキサン含有量は、実質的に、ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンコポリマーに導入されたポリシロキサンからなる。ある実施の形態において、ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンコポリマーは、ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンコポリマーの総重量を基準として、1〜8重量%のシロキサン繰り返し単位と、12〜99重量%のフェニレンエーテル繰り返し単位を含む。これらの範囲内で、シロキサン繰り返し単位の量は、2〜7重量%、具体的には3〜6重量%、より具体的には4〜5重量%であってもよく、フェニレンエーテル繰り返し単位の量は、93〜98重量%、具体的には94〜97重量%、より具体的には95〜96重量%であってもよい。
【0035】
ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンコポリマーは、分子量が非常に小さい種を比較的少量含んでもよい。したがって、ある実施の形態において、ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンコポリマーは、分子量が10000原子質量単位より小さい分子を25重量%未満、具体的には、分子量が10000原子質量単位より小さい分子を5〜25重量%、より具体的には、分子量が10000原子質量単位より小さい分子を7〜21重量%含む。ある実施の形態において、分子量が10000原子質量単位より小さい分子は、5〜10重量%のシロキサン繰り返し単位、具体的には、6〜9重量%のシロキサン繰り返し単位を含む。
【0036】
同様に、ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンコポリマーは、分子量が非常に大きい種を比較的少量含んでもよい。したがって、ある実施の形態において、ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンコポリマーは、分子量が100000原子質量単位より大きい分子を25重量%未満、具体的には、分子量が100000原子質量単位より大きい分子を5〜25重量%、より具体的には、分子量が100000原子質量単位より大きい分子を7〜23重量%含む。ある実施の形態において、分子量が100000原子質量単位より大きい分子は、3〜6重量%のシロキサン繰り返し単位、具体的には、4〜5重量%のシロキサン繰り返し単位を含む。
【0037】
組成物は、組成物の総重量を基準として、0.5〜85重量%のポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンコポリマーを含む。ある実施の形態において、ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンコポリマーの量は、1〜20重量%、具体的には、2〜10重量%である。別の実施の形態において、ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンコポリマーの量は、30〜85重量%、具体的には、40〜75重量%、より具体的には、53〜63重量%である。
【0038】
ある実施の形態、とくに、ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンコポリマーの量が50重量%未満である実施の形態において、組成物に第2のポリ(フェニレンエーテル)を含ませることが有益でありうる。本明細書において使用される「第2のポリ(フェニレンエーテル)」という用語は、ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応に由来しないポリ(フェニレンエーテル)を指す。第2のポリ(フェニレンエーテル)は、第1のポリ(フェニレンエーテル)と化学的に同一であってもよいし、異なっていてもよい。好適な第1及び第2のポリ(フェニレンエーテル)は、下記の式を有する繰り返し構造単位を含むポリ(フェニレンエーテル)を含む。
【化18】
ここで、Zは、それぞれ独立に、ハロゲン原子、無置換又は置換されたC−C12のヒドロカルビルチオ基、無置換又は置換されたC−C12のヒドロカルビロキシ基、少なくとも2つの炭素原子がハロゲン原子と酸素原子を隔てている無置換又は置換されたC−C12のハロヒドロカルビロキシ基、又は三級ヒドロカルビル基ではない無置換又は置換されたC−C12のヒドロカルビル基であり;Zは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、無置換又は置換されたC−C12のヒドロカルビルチオ基、無置換又は置換されたC−C12のヒドロカルビロキシ基、少なくとも2つの炭素原子がハロゲン原子と酸素原子を隔てている無置換又は置換されたC−C12のハロヒドロカルビロキシ基、又は三級ヒドロカルビル基ではない無置換又は置換されたC−C12のヒドロカルビル基である。
【0039】
ある実施の形態において、第2のポリ(フェニレンエーテル)は、クロロホルム中25℃でのウベローデ(Ubbelohde)粘度計による測定で、0.2〜1dL/gの固有粘度を有する。この範囲内で、第2のポリ(フェニレンエーテル)の固有粘度は、0.2〜0.5dL/g、具体的には、0.2〜0.4dL/g、より具体的には、0.25〜0.35dL/gであってもよい。
【0040】
ある実施の形態において、第2のポリ(フェニレンエーテル)は、2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル単位、2,3,6−トリメチル−1,4−フェニレンエーテル単位、又はそれらの組合せを含む。ある実施の形態において、第2のポリ(フェニレンエーテル)は、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)を含む。ある実施の形態において、第2のポリ(フェニレンエーテル)は、クロロホルム中25℃でのウベローデ(Ubbelohde)粘度計による測定で、0.2〜0.4dL/g、具体的には、0.25〜0.35dLの固有粘度を有するポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)を含む。
【0041】
組成物中に存在する場合、第2のポリ(フェニレンエーテル)は、組成物の総重量を基準として、5〜84.5重量%、具体的には、20〜80重量%、より具体的には、55〜75重量%の量で使用されてもよい。
【0042】
ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンコポリマー及び任意成分である第2のポリ(フェニレンエーテル)に加えて、組成物は、難燃剤を含む。難燃剤は、有機リン酸エステル、ホスファゼン、又はそれらの組合せを含む。
【0043】
ある実施の形態において、難燃剤は、有機リン酸エステルを含む。有機リン酸エステル難燃剤の例は、フェニル基、置換されたフェニル基、又はフェニル基と置換されたフェニル基の組合せを含むリン酸エステルや、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)などのレゾルシノールのビス(アリールホスフェート)エステルだけでなく、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)などのビスフェノールのビス(アリールホスフェート)エステルを含む。ある実施の形態において、有機リン酸エステルは、トリス(アルキルフェニル)ホスフェート(例えば、CAS登録番号第89492−23−9号又はCAS登録番号第78−33−1号)、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)(CAS登録番号第57583−54−7号)、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)(CAS登録番号第181028−79−5号)、トリフェニルホスフェート(CAS登録番号第115−86−6号)、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート(例えば、CAS登録番号第68937−41−7号)、及びそれらの組合せから選択される。
【0044】
ある実施の形態において、有機リン酸エステルは、下記の式を有するビス(アリールホスフェート)を含む。
【化19】
ここで、Rは、それぞれ独立に、C−C12のアルキレン基であり;R20及びR21は、それぞれ独立に、C−Cのアルキル基であり;R16、R17、及びR19は、独立に、C−C12のヒドロカルビル基であり;R18は、それぞれ独立に、C−C12のヒドロカルビル基であり;nは、1〜25であり;s1及びs2は、独立に、0、1、又は2に等しい整数である。ある実施の形態において、OR16、OR17、OR18、及びOR19は、独立に、フェノール、モノアルキルフェノール、ジアルキルフェノール、又はトリアルキルフェノールに由来する。
【0045】
当業者に広く認識されているように、ビス(アリールホスフェート)は、ビスフェノールに由来する。ビスフェノールの例は、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、及び1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタンを含む。ある実施の形態において、ビスフェノールは、ビスフェノールAを含む。
【0046】
ある実施の形態において、難燃剤は、ホスファゼンを含む。ホスファゼンは、下記の構造を有する繰り返し単位を含む化合物である。
【化20】
ここで、R22は、それぞれ独立に、C−Cのアルコキシ基、無置換又は置換されたフェノキシ基、又は無置換又は置換されたナフチルオキシ基である。フェノキシ基又はナフチルオキシ基に置換基が存在する場合、置換基は、例えば、C−Cのアルキル基、C−Cのアルコキシ基、又はフェニル基であってもよい。
【0047】
ある実施の形態において、ホスファゼンは、下記の構造を有する環状オリゴホスファゼンを含む。
【化21】
ここで、R22は、上記で定義され、aは、3〜12、具体的には、3〜6である。ある実施の形態において、aは、3であり、R22は、それぞれ独立に、無置換のフェノキシ基である。
【0048】
ある実施の形態において、ホスファゼンは、下記の構造を有する直鎖状オリゴホスファゼン又はポリホスファゼンを含む。
【化22】
ここで、R22は、上記で定義され;bは、3〜1000であり;Aは、−N=P(O)(R22)又は−N=P(R22であり;Bは、−P(R22又は−P(O)(R22である。
【0049】
ホスファゼンは、フェニレン基、ビフェニレン基、又は下記の構造を有する基を含む架橋されたポリホスファゼンであってもよい。
【化23】
ここで、Xは、C−Cのアルキリデン基、O、S、又はSOである。この架橋基は、一般に、それぞれの末端においてホスファゼンのリン原子に直接結合する。
【0050】
環状オリゴホスファゼン、直鎖状オリゴホスファゼン、直鎖状ポリホスファゼン、及び架橋ホスファゼンの少なくとも2つの混合物が使用されてもよい。ある実施の形態において、ホスファゼンは、ホスファゼンの重量を基準として、少なくとも80重量%の環状ホスファゼンを含む。
【0051】
ホスファゼンを生成する方法は既知であり、ホスファゼンは、例えば、伏見製薬所からラビトル(登録商標)FP-100及びラビトル(登録商標)FP-110、ID-BiochemからIDB-Poretar-201、及び大塚化学からSPB-100として市販されている。
【0052】
有機リン酸エステル、ホスファゼン、又はそれらの組合せに加えて、難燃剤は、任意成分として、金属ジアルキルホスフィン酸塩、窒素含有難燃剤、金属水酸化物、又はそれらの組合せを更に含んでもよい。
【0053】
本明細書において用いられる「金属ジアルキルホスフィン酸塩」との用語は、少なくとも1つの金属陽イオンと少なくとも1つのジアルキルホスフィン酸陰イオンとを含む塩を指す。ある実施の形態において、金属ジアルキルホスフィン酸塩は、下記の式を有する。
【化24】
ここで、R及びRは、それぞれ独立に、C−Cのアルキル基であり;Mは、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、又は亜鉛であり;dは、2又は3である。R及びRの例は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、及びn−ペンチル基を含む。ある実施の形態において、R及びRはエチル基であり、Mはアルミニウムであり、dは3である(すなわち、金属ジアルキルホスフィン酸塩は、トリス(ジエチルホスフィン酸)アルミニウムである)。
【0054】
ある実施の形態において、金属ジアルキルホスフィン酸塩は、粒子の形態である。金属ジアルキルホスフィン酸塩の粒子は、40μm以下の中央粒径(D50)、より具体的には、30μm以下のD50、更に具体的には、25μm以下のD50を有してもよい。さらに、金属ジアルキルホスフィン酸塩は、マスターバッチを形成するために、ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物、任意成分の第2のポリ(フェニレンエーテル)、又は任意成分の耐衝撃性改良剤と組み合わされてもよい。金属ジアルキルホスフィン酸塩マスターバッチは、熱可塑性組成物に含まれるよりも多い量の金属ジアルキルホスフィン酸塩を含む。組成物の他の成分に金属ジアルキルホスフィン酸塩を追加するためにマスターバッチを使用することにより、金属ジアルキルホスフィン酸塩を容易に追加することができ、分散を改良することができる。
【0055】
窒素含有難燃剤は、窒素含有ヘテロ環式塩基と、リン酸又はピロリン酸又はポリリン酸を含むものを含む。ある実施の形態において、窒素含有難燃剤は、下記の式を有する。
【化25】
ここで、gは、1〜10000であり、fとgの比は、0.5:1〜1.7:1、具体的には、0.7:1〜1.3:1、より具体的には、0.9:1〜1.1:1である。この式は、1以上のプロトンがリン酸部分からメラミン部分へ移動した種を含むことが理解されよう。gが1である場合、窒素含有難燃剤は、メラミンリン酸塩(CAS登録番号第20208−95−1号)である。gが2である場合、窒素含有難燃剤は、メラミンピロリン酸塩(CAS登録番号第15541−60−3号)である。gが平均で2より大きい場合、窒素含有難燃剤は、メラミンポリリン酸塩(CAS登録番号第56386−64−2号)である。ある実施の形態において、窒素含有難燃剤は、メラミンピロリン酸塩、メラミンポリリン酸塩、又はそれらの組合せである。窒素含有難燃剤がメラミンポリリン酸塩である、ある実施の形態において、gの平均値は、2〜10000、具体的には、5〜1000、より具体的には、10〜500である。窒素含有難燃剤がメラミンポリリン酸塩である、ある実施の形態において、gの平均値は2〜500である。メラミンリン酸塩、メラミンピロリン酸塩、及びメラミンポリリン酸塩を調整する方法は、当分野において既知であり、全て市販されている。例えば、メラミンポリリン酸塩は、例えばKasowskiらによる米国特許第6,025,419号に記載されるように、ポリリン酸とメラミンの反応により調整されてもよいし、Jacobsonらによる米国特許第6,015,510号に記載されるように、メラミンピロリン酸塩を窒素中290℃で重量変化がなくなるまで加熱することにより調整されてもよい。ある実施の形態において、窒素含有難燃剤は、メラミンシアヌレートを含む。
【0056】
窒素含有難燃剤は、低い揮発性を有していてもよい。例えば、ある実施の形態において、窒素含有難燃剤は、25℃から280℃、具体的には25〜300℃、より具体的には25〜320℃へ、毎分20℃の速度で加熱したとき、1重量%未満の重量減少を示す。
【0057】
好適な金属水酸化物は、耐火性を付与することが可能な全ての金属水酸化物、及びそのような金属水酸化物の組合せを含む。金属水酸化物は、難燃性添加組成物(fire additive composition)、及び/又は、難燃性熱可塑性組成物の処理中に、実質的に分解しないように選択される。本明細書において、「実質的に分解しない」とは、難燃性添加組成物による所望のレベルの難燃性の付与を妨げない分解の量と定義される。金属水酸化物の例は、水酸化マグネシウム(例えば、CAS登録番号第1309?42?8号)、水酸化アルミニウム(例えば、CAS登録番号第21645?51?2号)、水酸化コバルト(例えば、CAS登録番号第21041?93?0号)、及びこれらの組合せを含むが、これらに限られない。ある実施の形態において、金属水酸化物は、水酸化マグネシウムを含む。ある実施の形態において、金属水酸化物の平均粒径は、10μm以下であり、及び/又は、純度は、90重量%以上である。ある実施の形態において、金属水酸化物が実質的に水を含まないことが望ましい。これは、例えば、120℃で1時間乾燥したときの重量減少が1重量%未満であることにより示される。ある実施の形態において、例えばステアリン酸又は他の脂肪酸により、金属水酸化物をコーティングしてもよい。
【0058】
難燃剤の量は、組成物の総重量を基準として、5〜25重量%であってもよい。ある実施の形態において、難燃剤の量は、5〜20重量%、具体的には5〜15重量%である。別の実施の形態において、難燃剤の量は、10〜25重量%、具体的には15〜25重量%である。
【0059】
ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物、任意成分の第2のポリ(フェニレンエーテル)、及び難燃剤に加えて、組成物は、補強充填剤を含む。補強充填剤は、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、珪灰石、ハロイサイト、粘土、滑石、雲母、ガラスフレーク、中実ガラスビーズ、中空ガラスビーズ、中実セラミックビーズ、中空セラミックビーズ、及びそれらの組合せを含む。ある実施の形態において、補強充填剤は、ガラス繊維を含む、又は、ガラス繊維からなる。
【0060】
好適なガラス繊維は、E、A、C、ECR、R、S、D、及びNEガラス、及び石英のガラス繊維を含む。ある実施の形態において、ガラス繊維は、2〜30μm、具体的には5〜25μm、より具体的には10〜15μmの直径を有する。ある実施の形態において、コンパウンド前のガラス繊維の長さは、2〜7mm、具体的には3〜5mmである。好適なガラス繊維は、例えばOwens Corning、日本電気硝子、PPG、及びJohns Manvilleを含む供給元から市販されている。
【0061】
補強充填剤は、任意成分として、ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物との相溶性を改良するために、接着促進剤を含んでもよい。接着促進剤は、クロム錯体、シラン、チタン酸塩、ジルコアルミネート、プロピレン無水マレイン酸コポリマー、反応性セルロースエステルなどを含む。
【0062】
補強充填剤は、組成物の総重量を基準として、10〜35重量%の量で用いられてもよい。ある実施の形態において、補強充填剤の量は、10〜25重量%、具体的には10〜20重量%である。別の実施の形態において、補強充填剤の量は、15〜30重量%、具体的には15〜25重量%である。
【0063】
組成物は、任意成分として、耐衝撃性改良剤を更に含む。耐衝撃性改良剤は、例えば、ゴム改質ポリスチレン、アルケニル芳香族モノマー及び共役ジエンの非水素化ブロックコポリマー、アルケニル芳香族モノマー及び共役ジエンの水素化ブロックコポリマー、アクリレートコアシェル型耐衝撃性改良剤(例えば、架橋ポリ(ブチルアクリレート)コアとグラフトポリ(メチルメタクリレート)シェルを有するもの)、及びそれらの組合せを含む。
【0064】
耐衝撃性改良剤は、ゴム改質ポリスチレンを分でもよい。ゴム改質ポリスチレンは、ポリスチレン及びポリブタジエンを含む。ゴム改質ポリスチレンは、「耐衝撃性ポリスチレン」又は「HIPS」とも呼ばれる。ある実施の形態において、ゴム改質ポリスチレンは、ゴム改質ポリスチレンの重量を基準として、80〜96重量%、具体的には88〜94重量%のポリスチレンと、4〜20重量%、具体的には6〜12重量%のポリブタジエンを含む。好適なゴム改質ポリスチレンは、例えば、SABIC Innovative PlasticsからHIPS3190として市販されている。
【0065】
耐衝撃性改良剤は、アルケニル芳香族モノマー及び共役ジエンの非水素化ブロックコポリマーを含んでもよい。簡潔にするために、この成分を「非水素化ブロックコポリマー」と呼ぶ。非水素化ブロックコポリマーは、非水素化ブロックコポリマーの重量を基準として、10〜90重量%のポリ(アルケニル芳香族)含有量と、90〜10重量%のポリ(共役ジエン)含有量を含んでもよい。ある実施の形態において、非水素化ブロックコポリマーは、非水素化ブロックコポリマーの重量を基準として、ポリ(アルケニル芳香族)含有量が10〜40重量%、具体的には20〜35重量%、より具体的には25〜35重量%、更に具体的には30〜35重量%である低ポリ(アルケニル芳香族)含有非水素化ブロックコポリマーである。別の実施の形態において、非水素化ブロックコポリマーは、非水素化ブロックコポリマーの重量を基準として、ポリ(アルケニル芳香族)の含有量が40〜90重量%、具体的には50〜80重量%、より具体的には60〜70重量%である高ポリ(アルケニル芳香族)含有非水素化ブロックコポリマーである。
【0066】
ある実施の形態において、非水素化ブロックコポリマーは、40000〜400000原子質量単位の重量平均分子量を有する。数平均分子量及び重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィーにより、ポリスチレン標準との比較に基づいて測定することができる。ある実施の形態において、非水素化ブロックコポリマーは、200000〜400000原子質量単位、具体的には220000〜350000原子質量単位の重量平均分子量を有する。別の実施の形態において、非水素化ブロックコポリマーは、40000〜200000原子質量単位、具体的には40000〜180000原子質量単位、より具体的には40000〜150000原子質量単位の重量平均分子量を有する。
【0067】
非水素化ブロックコポリマーを調整するために使用されるアルケニル芳香族モノマーは、下記の構造を有してもよい。
【化26】
ここで、R23及びR24は、それぞれ独立に、水素原子、C−Cのアルキル基、又はC−Cのアルケニル基を表し;R25及びR29は、それぞれ独立に、水素原子、C−Cのアルキル基、塩素原子、又は臭素原子を表し;R26、R27、及びR28は、それぞれ独立に、水素原子、C−Cのアルキル基、又はC−Cのアルケニル基を表し、又は、R26及びR27は、中央の芳香環とともにナフチル基を形成し、又は、R27及びR28は、中央の芳香環とともにナフチル基を形成する。具体的なアルケニル芳香族モノマーは、例えば、スチレン、p−クロロスチレンなどのクロロスチレン、α−メチルスチレン及びp−メチルスチレンなどのメチルスチレン、及び3−t−ブチルスチレン及び4−t−ブチルスチレンなどのt−ブチルスチレンを含む。ある実施の形態において、アルケニル芳香族モノマーは、スチレンである。
【0068】
非水素化ブロックコポリマーを調整するために使用される共役ジエンは、C−C20の共役ジエンであってもよい。好適な共役ジエンは、例えば、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2−クロロ−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、及びそれらの組合せを含む。ある実施の形態において、共役ジエンは、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、又はそれらの組合せである。ある実施の形態において、共役ジエンは、1,3−ブタジエンからなる。
【0069】
非水素化ブロックコポリマーは、(A)アルケニル芳香族化合物に由来する少なくとも1つのブロックと、(B)共役ジエンに由来する少なくとも1つのブロックとを含むコポリマーである。ブロック(A)及び(B)の配置は、直鎖構造、グラフト構造、及び分岐鎖を含む又は含まないラジアルテレブロック構造を含む。直鎖状ブロックコポリマーは、テーパーの付いた直鎖状構造、及びテーパーの付いていない直鎖状構造を含む。ある実施の形態において、非水素化ブロックコポリマーは、テーパーの付いた直鎖状構造を有する。ある実施の形態において、非水素化コポリマーは、テーパーの付いていない直鎖状構造を有する。ある実施の形態において、非水素化ブロックコポリマーは、アルケニル芳香族モノマーをランダムな導入を含む(B)ブロックを含む。直鎖状ブロックコポリマー構造は、ジブロック(A−Bブロック)、トリブロック(A−B−Aブロック又はB−A−Bブロック)、テトラブロック(A−B−A−Bブロック)、及びペンタブロック(A−B−A−B−Aブロック又はB−A−B−A−Bブロック)構造、及び(A)及び(B)を合計で6ブロック以上含む直鎖状構造を含む。ここで、それぞれの(A)ブロックの分子量は、別の(A)ブロックの分子量と同じであってもよいし、異なっていてもよく、それぞれの(B)ブロックの分子量は、別の(B)ブロックの分子量と同じであってもよいし、異なっていてもよい。ある実施の形態において、非水素化ブロックコポリマーは、ジブロックコポリマー、トリブロックコポリマー、又はそれらの組合せである。
【0070】
ある実施の形態において、非水素化ブロックコポリマーは、アルケニル芳香族化合物及び共役ジエン以外のモノマーの残基を含まない。ある実施の形態において、非水素化ブロックコポリマーは、アルケニル芳香族化合物及び共役ジエンに由来するブロックからなる。非水素化ブロックコポリマーは、これらのモノマー又は他の任意のモノマーから形成されたグラフトを含まない。非水素化コポリマーは、炭素原子及び水素原子からなり、したがって、ヘテロ原子を含まない。
【0071】
ある実施の形態において、非水素化ブロックコポリマーは、無水マレイン酸などの1以上の酸官能化剤の残基を含む。
【0072】
ある実施の形態において、非水素化ブロックコポリマーは、ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレントリブロックコポリマーを含む。ある実施の形態において、非水素化ブロックコポリマーは、ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレントリブロックコポリマーを含む。
【0073】
非水素化ブロックコポリマーを調整する方法は、当分野において既知であり、非水素化ブロックコポリマーは、市販されている。市販されている非水素化ブロックコポリマーの例は、Kraton Performance Polymers Inc.からKraton D1101及びD1102の商標で市販されるポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレントリブロックコポリマー、及びChevron Phillips Chemical CompanyからKRESIN KK38、KR01、KR03、及びKR05の商標で市販されているスチレン−ブタジエンラジアルテレブロックコポリマーを含む。
【0074】
耐衝撃性改良剤は、アルケニル芳香族化合物及び共役ジエンの水素化ブロックコポリマーであってもよい。簡潔にするために、この成分を「水素化ブロックコポリマー」と呼ぶ。水素化ブロックコポリマーは、水素化ブロックコポリマーにおいては共役ジエンに由来するブロック(B)内の脂肪族不飽和部分の含有量が水素化により少なくとも部分的に低減されることを除いて、非水素化ブロックコポリマーと同じである。ある実施の形態において、(B)ブロックにおける脂肪族不飽和度は、少なくとも50%、具体的には少なくとも70%、より具体的には少なくとも90%低減される。
【0075】
市販されている水素化ブロックコポリマーの例は、Kraton Performance Polymers Inc.からKRATON G1701及びG1702として市販されているポリスチレン−ポリ(エチレン−プロピレン)ジブロックコポリマー;Kraton Performance Polymers Inc.からKRATON G1641、G1650、G1651、G1654、G1657、G1726、G4609、G4610、GRP-6598、MD-6932M、MD-6933、及びMD-6939として市販されているポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロックコポリマー;Kraton Performance Polymers Inc.からKRATON G1730として市販されているポリスチレン−ポリ(エチレン−プロピレン)−ポリスチレントリブロックコポリマー;Kraton Performance Polymers Inc.からKRATON G1901、G1924、及びMD-6684として市販されている無水マレイン酸−グラフトポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロックコポリマー;Kraton Performance Polymers Inc.からKRATON MD 6670として市販されている無水マレイン酸−グラフトポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン−スチレン)−ポリスチレントリブロックコポリマー;旭化成からタフテック(登録商標)H1043として市販されているポリスチレンを67重量%含むポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロックコポリマー;旭化成からタフテック(登録商標)H1051として市販されているポリスチレンを42重量%含むポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロックコポリマー;旭化成からタフテック(登録商標)P1000及びP2000として市販されているポリスチレン−ポリ(ブタジエン−ブチレン)−ポリスチレントリブロックコポリマー;クラレからセプトン(登録商標)S8104として市販されているポリスチレンを60重量%含むポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロックコポリマー;クラレからセプトン(登録商標)S4044、S4055、S4077、及びS4099として市販されているポリスチレン−ポリ(エチレン−エチレン/プロピレン)−ポリスチレントリブロックコポリマー;クラレからセプトン(登録商標)S2104として市販されているポリスチレンを65重量%含むポリスチレン−ポリ(エチレン−プロピレン)−ポリスチレントリブロックコポリマーを含む。
【0076】
ある実施の形態において、耐衝撃性改良剤は、ポリスチレンの含有量が25〜35重量%であり、重量平均分子量が200000〜400000原子質量単位であるポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレントリブロックコポリマーである。
【0077】
耐衝撃性改良剤は、組成物に含まれる場合、組成物の総重量を基準として、1〜10重量%、具体的には1〜5重量%の量で使用されてもよい。
【0078】
組成物は、任意成分として、炭化水素樹脂を更に含んでもよい。炭化水素樹脂の例は、脂肪族炭化水素樹脂、水素化脂肪族炭化水素樹脂、脂肪族/芳香族炭化水素樹脂、水素化脂肪族/芳香族炭化水素樹脂、脂環式炭化水素樹脂、水素化脂環式樹脂、脂環式/芳香族炭化水素樹脂、水素化脂環式/芳香族炭化水素樹脂、水素化芳香族炭化水素樹脂、テルペン樹脂、水素化テルペン樹脂、テルペン−フェノール樹脂、ロジン及びロジンエステル、水素化ロジン及びロジンエステル、及びそれらの混合物である。本明細書において使用される「水素化」は、炭化水素樹脂について言及される場合、完全に、実質的に、及び部分的に水素化された樹脂を含む。好適な芳香族樹脂は、1〜30重量%の芳香族を含有する芳香族修飾脂肪族樹脂、芳香族修飾脂環式樹脂、及び水素化芳香族炭化水素樹脂を含む。上記の任意の樹脂は、当分野において既知である方法を用いて、不飽和エステル又は酸無水物によりグラフト化されてもよい。このようなグラフト化により、樹脂の特性を高めることができる。ある実施の形態において、炭化水素樹脂は、水素化芳香族炭化水素樹脂である。
【0079】
好適な炭化水素樹脂は、市販されており、例えば、ExxonMobil Chemical社から市販されているEMPR 100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、116、117、及び118樹脂、及びOPPERA樹脂;日本の荒川化学工業から市販されているアルコン(登録商標)P140、P125、P115、M115、及びM135、及びスーパーエステル(登録商標)ロジンエステル;Arizona Chemical Companyから市販されているSYLVARES(商標)ポリテルペン樹脂、スチレン変性テルペン樹脂、及びテルペンフェノール樹脂;Arizona Chemical Companyから市販されているSYLVATAC及びSYLVALITEロジンエステル;Cray Valleyから市販されているNORSOLENE脂肪族芳香族樹脂;DRT Chemical Companyから市販されているDERTOPHENEテルペンフェノール樹脂及びDERCOLYTEポリテルペン樹脂;Eastman Chemical Companyから市販されているEASTOTAC樹脂、PICCOTAC樹脂、REGALITE及びREGALREZ水素化脂環式/芳香族樹脂、及びPICCOLYTE及びPERMALYNポリテルペン樹脂、ロジン、及びロジンエステル;Goodyear Chemical Companyから市販されているWINGTACK樹脂;Neville Chemical Companyから市販されているクマロン/インデン樹脂;日本ゼオンから市販されているクイントン(登録商標)酸変性C5樹脂、C5/C9樹脂、及び酸変性C5/C9樹脂;ヤスハラケミカルから市販されているクリアロン(登録商標)水素化テルペン樹脂を含む。ある実施の形態において、炭化水素樹脂は、水素化テルペン樹脂である。ある実施の形態において、炭化水素樹脂は、飽和多脂環式炭化水素樹脂である。
【0080】
炭化水素樹脂は、ASTM E28に準拠して測定した軟化点が少なくとも120℃であってもよい。具体的には、軟化点は、120〜180℃、具体的には130〜170℃、より具体的には140〜160℃であってもよい。ある実施の形態において、炭化水素樹脂は、水素化脂環式炭化水素樹脂、水素化テルペン樹脂、又はそれらの組合せを含む。ある実施の形態において、炭化水素樹脂は、軟化点が120〜135℃である水素化脂環式炭化水素樹脂を含む。このような樹脂の例は、荒川化学工業から市販されている軟化点が約125℃であるアルコン(登録商標)P125である。ある実施の形態において、炭化水素樹脂は、軟化点が135〜145℃である水素化脂環式炭化水素樹脂を含む。このような樹脂の例は、荒川化学工業から市販されている軟化点が約140℃であるアルコン(登録商標)P140である。ある実施の形態において、炭化水素樹脂は、軟化点が145〜160℃である水素化テルペン樹脂を含む。このような樹脂の例は、ヤスハラケミカルから市販されているクリアロン(登録商標)P150である。
【0081】
炭化水素樹脂は、組成物に含まれる場合、組成物の総重量を基準として、1〜8重量%、具体的には2〜6重量%の量で使用されてもよい。
【0082】
組成物は、任意成分として、トリヒドロカルビルホスファイトを更に含んでもよい。トリヒドロカルビルホスファイトは、一般式P(OR30を有する。ここで、R30は、それぞれ独立に、C−C18のヒドロカルビル基である。ある実施の形態において、R30は、それぞれ独立に、C−C18のアルキル基である。別の実施の形態において、少なくとも1つのR30は、C−C18のアリール基である。ある実施の形態において、R19は、それぞれ独立に、無置換又は置換されたC−C18のアリール基である。好適なトリヒドロカルビルホスファイトは、例えば、トリオクチルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリドデシルホスファイト、フェニルジデシルホスファイト、デシルジフェニルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリトリルホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリトリトールジホスファイトなど、及びそれらの組合せを含む。好適なトリヒドロカルビルホスファイトは、更に、スピロジホスファイト、例えば、3,9−ビス[2,4−ビス(1,1−ジメチルエチル)フェノキシ]−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン(CAS登録番号第26741−53−7号;CibaからIRGAFOS(商標)126の商標で市販)を含む。ある実施の形態において、アリールホスファイトは、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト(CAS登録番号第31570−04−4号)を含む。ある実施の形態において、アリールホスファイトは、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリトリトールジホスファイト(CAS登録番号第26741−53−7号)を含む。
【0083】
トリヒドロカルビルホスファイトは、組成物に含まれる場合、組成物の総重量を基準として、0.05〜1重量%、具体的には0.1〜0.5重量%の量で使用されてもよい。
【0084】
組成物は、任意成分として、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を更に含んでもよい。直鎖状低密度ポリエチレンは、エチレンと、より長い鎖のオレフィン、例えば、1−ブテン、1−ヘキセン、又は1−オクテンなどとコポリマーである。ある実施の形態において、直鎖状低密度ポリエチレンは、エチレンと1−ブテンのコポリマーである。直鎖状低密度ポリエチレンは、通常、約0.92g/cmの密度を有する。直鎖状低密度ポリエチレンは、組成物に含まれる場合、組成物の総重量を基準として、0.5〜5重量%、具体的には0.5〜3重量%の量で使用されてもよい。
【0085】
組成物は、任意成分として、当分野において既知の1以上の添加剤を更に含んでもよい。例えば、組成物は、オプションで、安定剤、離型剤、滑剤、加工助剤、ドリップ防止剤、核剤、紫外線ブロッカー、染料、顔料、抗酸化剤、帯電防止剤、膨張剤、鉱油、金属不活性剤、アンチブロッキング剤など、及びそれらの組合せから選択された添加剤を更に備えてもよい。このような添加剤は、組成物に含まれる場合、通常、組成物の総重量を基準として、総量で5重量%以下、具体的には4重量%以下、より具体的には3重量%以下の量で使用される。
【0086】
組成物は、オプションで、必要なもの以外のポリマーを含まなくてもよい。例えば、組成物は、ポリアミド及びポリエステルを、それぞれ、1重量%以下含んでもよい。ある実施の形態において、組成物は、4重量%以下、具体的には3重量%以下、より具体的には2重量%以下のポリオレフィンを含む。ある実施の形態において、組成物は、直鎖状低密度ポリエチレン以外のポリオレフィンを1重量%以下含む。別の実施の形態において、組成物は、任意のオレフィンを1重量%以下含む。
【0087】
組成物の1つの利点は、同様の製品への応用に使用されるガラス充填ポリエステルにおいて通常使用されるハロゲン系難燃剤を使用しなくても、UL94でV−0評価を達成することができることである。したがって、組成物は、組成物の総重量を基準として、0.1重量%以下のハロゲン原子、具体的には0.01重量%以下のハロゲン原子を含んでもよい。ある実施の形態において、組成物は、ハロゲン原子を含まない。
【0088】
ある実施の形態において、物品は、フューザーホルダーであり、組成物は、2〜10重量%のポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物を含み、55〜75重量%の第2のポリ(フェニレンエーテル)を更に含む。これらの実施の形態において、補強充填剤の量は、オプションで、10〜20重量%であり、補強充填剤は、オプションで、ガラス繊維を含む。また、これらの実施の形態において、組成物は、オプションで、アルケニル芳香族化合物と共役ジエンの水素化ブロックコポリマーを1〜5重量%更に含む。
【0089】
とくに具体的な実施の形態において、物品は、フューザーホルダーであり、ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンコポリマーは、ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物の形態で提供されるポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマーを含み、ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマーは、下記の構造を有するフェニレンエーテル繰り返し単位を含むポリ(フェニレンエーテル)ブロックと、
【化27】
下記の構造を有するポリシロキサンブロックとを含む。
【化28】
ここで、nは、30〜60であり;補強充填剤は、ガラス繊維を含み;難燃剤は、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)を含み;組成物は、ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物を2〜10重量%と、難燃剤を5〜15重量%と、補強充填剤を10〜20重量%とを含み;組成物は、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)を含む第2のポリ(フェニレンエーテル)を55〜75重量%と、ポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレンブロックコポリマーを1〜5重量%とを更に含む。
【0090】
ある実施の形態において、物品は、ファンブレード、ハイブリッド及び電気輸送機関のバッテリー部品、自動車の運動エネルギー回生システムの部品、及び電気自動車のジャンクションボックスからなる群から選択され、組成物は、ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物を53〜63重量%含む。これらの実施の形態において、補強充填剤の量は、オプションで、15〜25重量%であり、補強充填剤は、オプションで、ガラス繊維を含む。また、これらの実施の形態において、組成物は、オプションで、アルケニル芳香族化合物と共役ジエンの水素化ブロックコポリマーを0〜4重量%含む。また、これらの実施の形態において、組成物は、オプションで、直鎖状低密度ポリエチレンを0.5〜3重量%含む。
【0091】
とくに具体的な実施の形態において、物品は、ファンブレード、ハイブリッド及び電気輸送機関のバッテリー部品、自動車の運動エネルギー回生システムの部品、及び電気自動車のジャンクションボックスからなる群から選択され、ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンコポリマーは、ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物の形態で提供されるポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマーを含み、ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマーは、下記の構造を有するフェニレンエーテル繰り返し単位を含むポリ(フェニレンエーテル)ブロックと、
【化29】
下記の構造を有するポリシロキサンブロックと、
【化30】
を含み、nは、30〜60であり;補強充填剤は、ガラス繊維を含み;難燃剤は、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)を含み;組成物は、ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物を53〜63重量%と、難燃剤を15〜25重量%と、補強充填剤を15〜25重量%とを含み、組成物は、0.5〜3重量%の直鎖状低密度ポリエチレンを更に含む。
【0092】
上述したように、物品は、電子写真複写機のフューザーホルダー、ファンブレード、ハイブリッド及び電気輸送機関のバッテリー部品、自動車の運動エネルギー回生システムの部品、又は電気自動車のジャンクションボックスであってもよい。本明細書に記載された組成物により製造されたものを除いて、このような物品は既知であり、それらの製造方法も既知である。例えば、Hiraokaらによる米国特許第5,499,087号は、電子写真複写機のフューザーホルダーを記載する。このような物品を形成する好適な方法は、単層及び多層押出し、射出成形、ブロー成形、フィルム押出し、異形押出し、引抜成形、圧縮成形、加熱成形、加圧成形、ハイドロフォーミング、真空成形などを含む。上記の物品の製造方法の組合せが用いられてもよい。ある実施の形態において、物品は、射出成形により形成される。これらの実施の形態の一部において、射出成形は、285〜330℃、具体的には295〜325℃のバレル温度、及び、60〜120℃、具体的には80〜110℃の金型温度を用いる。
【0093】
本明細書において開示される全ての範囲は端点を含み、端点はそれぞれ独立して組み合わせ可能である。本明細書において開示されるそれぞれの範囲は、開示された範囲内にある任意の点又はサブ範囲の開示を構成する。
【0094】
本発明は、少なくとも以下の実施の形態を含む。
【0095】
実施の形態1:組成物を含む物品であって、前記物品は、電子写真複写機のフューザーホルダー、ファンブレード、ハイブリッド及び電気輸送機関のバッテリー部品、自動車の運動エネルギー回生システムの部品、及び電気自動車のジャンクションボックスからなる群から選択され、前記組成物は、全ての重量%は組成物の総重量を基準として、ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー、ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサングラフトコポリマー、又はそれらの組合せを含むポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンコポリマーを0.5〜85重量%と、有機リン酸エステル、ホスファゼン、又はそれらの組合せを含む難燃剤を5〜25重量%と、補強充填剤を10〜35重量%と、を含み、前記物品がフューザーホルダーである場合、前記組成物は、ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマーと第1のポリ(フェニレンエーテル)とを含むポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物を2〜10重量%含み、55〜75重量%の第2のポリ(フェニレンエーテル)を更に含むことを特徴とする物品。
【0096】
実施の形態2:前記ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンコポリマーは、前記ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマーを含むことを特徴とする実施の形態1に記載の物品。
【0097】
実施の形態3:前記組成物は、前記ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー及び第1のポリ(フェニレンエーテル)を含むポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物を含み、前記ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマーは、下記の構造を有するフェニレンエーテル繰り返し単位を含むポリ(フェニレンエーテル)ブロックと、
【化31】
下記の構造を有するポリシロキサンブロックと、
【化32】
を含み、nは30〜60であることを特徴とする実施の形態2に記載の物品。
【0098】
実施の形態4:前記ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマーは、ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンマルチブロックコポリマーを含むことを特徴とする実施の形態2に記載の物品。
【0099】
実施の形態5:前記ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマーは、前記ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサングラフトコポリマーを含むことを特徴とする実施の形態1に記載の物品。
【0100】
実施の形態6:前記補強充填剤は、ガラス繊維、炭素繊維、珪灰石、ハロイサイト、粘土、滑石、雲母、ガラスフレーク、中実ガラスビーズ、中空ガラスビーズ、中実セラミックビーズ、中空セラミックビーズ、及びそれらの組合せからなる群から選択されることを特徴とする実施の形態1から5のいずれかに記載の物品。
【0101】
実施の形態7:前記補強充填剤は、ガラス繊維を含むことを特徴とする実施の形態1から5のいずれかに記載の物品。
【0102】
実施の形態8:前記難燃剤は、有機リン酸エステルを含むことを特徴とする実施の形態1から7のいずれかに記載の物品。
【0103】
実施の形態9:前記有機リン酸エステルは、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)を含むことを特徴とする実施の形態8に記載の物品。
【0104】
実施の形態10:前記難燃剤は、ホスファゼンを含むことを特徴とする実施の形態1から9のいずれかに記載の物品。
【0105】
実施の形態11:前記難燃剤は、環状オリゴ(ビス(フェノキシ)ホスファゼン)、直鎖状オリゴ(ビス(フェノキシ)ホスファゼン)、直鎖状ポリ(ビス(フェノキシ)ホスファゼン)、架橋ポリ(ビス(フェノキシ)ホスファゼン)、又はそれらの組合せを含むことを特徴とする実施の形態10に記載の物品。
【0106】
実施の形態12:前記組成物は、ゴム改質ポリスチレン、アルケニル芳香族モノマー及び共役ジエンの非水素化ブロックコポリマー、アルケニル芳香族モノマー及び共役ジエンの水素化ブロックコポリマー、アクリレートコアシェル型耐衝撃性改良剤、及びそれらの組合せからなる群から選択された耐衝撃性改良剤を1〜10重量%更に含むことを特徴とする実施の形態1から11のいずれかに記載の物品。
【0107】
実施の形態13:前記物品は、フューザーホルダーであり、前記組成物は、ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマーと第1のポリ(フェニレンエーテル)とを含むポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物を2〜10重量%含み、55〜75重量%の第2のポリ(フェニレンエーテル)を更に含むことを特徴とする実施の形態1に記載の物品。
【0108】
実施の形態14:前記組成物は、10〜20重量%の補強充填剤を含み、前記補強充填剤は、ガラス繊維を含むことを特徴とする実施の形態13に記載の物品。
【0109】
実施の形態15:前記組成物は、アルケニル芳香族化合物と共役ジエンの水素化ブロックコポリマーを1〜5重量%更に含むことを特徴とする実施の形態13又は14に記載の物品。
【0110】
実施の形態16:前記物品は、フューザーホルダーであり、前記組成物は、ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマーと第1のポリ(フェニレンエーテル)とを含むポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物を含み、前記ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマーは、下記の構造を有するフェニレンエーテル繰り返し単位を含むポリ(フェニレンエーテル)ブロックと、
【化33】
下記の構造を有するポリシロキサンブロックと、
【化34】
を含み、nは、30〜60であり、前記第1のポリ(フェニレンエーテル)は、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)を含み、前記補強充填剤は、ガラス繊維を含み、前記難燃剤は、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)を含み、前記組成物は、前記ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物を2〜10重量%と、前記難燃剤を5〜15重量%と、前記補強充填剤を10〜20重量%と、を含み、前記組成物は、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)を含む第2のポリ(フェニレンエーテル)を55〜75重量%と、ポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレンブロックコポリマーを1〜5重量%と、を更に含むことを特徴とする実施の形態1に記載の物品。
【0111】
実施の形態17:前記物品は、ファンブレード、ハイブリッド及び電気輸送機関のバッテリー部品、自動車の運動エネルギー回生システムの部品、及び電気自動車のジャンクションボックスからなる群から選択され、前記組成物は、ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマーと第1のポリ(フェニレンエーテル)とを含むポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物を53〜63重量%含むことを特徴とする実施の形態1に記載の物品。
【0112】
実施の形態18:前記組成物は、15〜25重量%の前記補強充填剤を含み、前記補強充填剤は、ガラス繊維を含むことを特徴とする実施の形態17に記載の物品。
【0113】
実施の形態19:前記組成物は、アルケニル芳香族モノマー及び共役ジエンの水素化ブロックコポリマーを0〜4重量%更に含むことを特徴とする実施の形態17又は18に記載の物品。
【0114】
実施の形態20:前記組成物は、直鎖状低密度ポリエチレンを0.5〜3重量%更に含むことを特徴とする実施の形態17から19のいずれかに記載の物品。
【0115】
実施の形態21:前記物品は、ファンブレード、ハイブリッド及び電気輸送機関のバッテリー部品、自動車の運動エネルギー回生システムの部品、及び電気自動車のジャンクションボックスからなる群から選択され、前記組成物は、ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマーと第1のポリ(フェニレンエーテル)とを含むポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物を含み、前記ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマーは、下記の構造を有するフェニレンエーテル繰り返し単位を含むポリ(フェニレンエーテル)ブロックと、
【化35】
下記の構造を有するポリシロキサンブロックと、
【化36】
を含み、nは、30〜60であり、前記補強充填剤は、ガラス繊維を含み、前記難燃剤は、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)を含み、前記組成物は、前記ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物を53〜63重量%と、前記難燃剤を15〜25重量%と、前記補強充填剤を15〜25重量%と、を含み、前記組成物は、0.5〜3重量%の直鎖状低密度ポリエチレンを更に含むことを特徴とする実施の形態1に記載の物品。
【0116】
本発明は、下記の非限定的な実施例により更に説明される。
【0117】
[比較実施例1〜15]
これらの比較実施例は、ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物ではなく、ポリ(フェニレンエーテル)ホモポリマーを使用する。組成物の調整に使用した成分を表1に要約する。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【0118】
樹脂組成物を、毎分350回転、スループット毎時18キログラム(毎時40ポンド)で、供給口からダイへ240℃/260℃/290℃/290℃/290℃のバレルセット温度を用いて運転したWerner&Pfleiderer社の30ミリメートル内径ZSK二軸押出機内でコンパウンドした。ガラス繊維は押出機の下流で追加し、他の全ての固体成分は供給口に追加し、液体の難燃剤(But-TPP又はBPADP)は供給口とガラス繊維を供給した位置との間の位置で注入した。コンパウンドした樹脂は、ストランドカットによりペレット化した。
【0119】
熱変形温度及び撓み特性のASTM試験のための試験物品を、VanDorn社の120トン射出成形機を用いて、バレル温度288〜310℃(550〜590°F)、金型温度約88℃(約190°F)で射出成形した。厚さ1.0又は1.5ミリメートルの燃焼試験片を、VanDorn社の80トン射出成形機を用いて、バレル温度299〜321℃(570〜610°F)、金型温度88〜99℃(190〜210°F)で射出成形した。
【0120】
射出成形した燃焼試験片の難燃性を、Underwriter's Laboratory社の要綱94「プラスチック材料の燃焼試験、UL94」の20mm垂直燃焼性試験に準拠して測定した。試験の前に、厚さ1.0又は1.5ミリメートルの短冊状試験片を、少なくとも24時間、23℃、相対湿度50%に調節した。UL94の20mm垂直燃焼性試験において、10本の短冊状試験片のセットを試験した。それぞれの試験片に接炎してから離し、試験片の自己消炎のために必要な時間(第1残炎時間、t1)を記録した。つづいて再び接炎してから離し、試験片の自己消炎のために必要な時間(第2残炎時間、t2)と無炎燃焼持続時間(残じん時間、t3)を記録した。V−0の評価を達成するためには、個々の試料のそれぞれについて残炎時間t1及t2が10秒以下でなければならず、10個の試料全ての残炎時間の合計(10個の試料全てのt1+t2)が100秒以下でなければならず、個々の試料のそれぞれについて第2残炎時間と残じん時間の和(t2+t3)が30秒以下でなければならず、どの試料も支持クランプまで燃え上がってはならず、火玉又はドロップにより脱脂綿のインジケーターが燃えてはならない。V−1の評価を達成するためには、個々の試料のそれぞれについて残炎時間t1及びt2が30秒以下でなければならず、10個の試料全ての残炎時間の合計(10個の試料全てのt1+t2)が500秒以下でなければならず、個々の試料のそれぞれについて第2残炎時間と残じん時間の和(t2+t3)が60秒以下でなければならず、どの試料も支持クランプまで燃え上がってはならず、火玉又はドロップにより脱脂綿のインジケーターが燃えてはならない。V−2の評価を達成するためには、個々の試料のそれぞれについて残炎時間t1及びt2が30秒以下でなければならず、10個の試料全ての残炎時間の合計(10個の試料全てのt1+t2)が250秒以下でなければならず、個々の試料のそれぞれについて第2残炎時間と残じん時間の和(t2+t3)が60秒以下でなければならず、どの試料も支持クランプまで燃え上がってはならないが、火玉又はドロップによる脱脂綿のインジケーターの着火は許容される。V−2の評価を達成しない組成物は、失敗したとみなされる。
【0121】
摂氏温度の単位で示される熱変形温度(HDT)の値は、ASTM D648−07に準拠して、厚さ6.4mmの試験片(厚さ3.2mmと明記した場合を除く)を用い、エッジワイズ試験方向、支持スパン100mm(B法)、応力1.82MPa、撓みが0.25mmに達した時に読み取り、加熱速度毎分2℃、組成物につき3つの試料で測定した。
【0122】
それぞれMPaの単位で示される曲げ弾性率及び曲げ強さの値は、ASTM D790−07elに準拠して、厚さ6.4mmの試験片を用い、23℃、支持スパン101.6mm、試験速度毎分2.54mm(毎分0.1インチ;A法)、組成物につき3つの試料で測定した。
【0123】
組成物及び結果を表2に要約する。表2において、成分の量は、組成物の総重量を基準とした重量%で表す。
【0124】
表2の結果は、厚さ1.5mmの試験片におけるV−0評価の難燃性の達成は、非常に高い難燃剤の含有量(≧21.00重量%)、及び、対応して低い熱変形温度(≦112℃)を有する比較実施例1〜3に限られることを示す。厚さ1.0mmにおけるV−0評価の難燃性は、106℃の低い熱変形温度を有する比較実施例1でのみ観測された。
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【0125】
[比較実施例16〜23]
これらの実施例は、熱変形温度が少なくとも150℃で、少なくとも10%のガラス繊維を含む組成物の厚さ1.5mmの試験片が、対応する非充填組成物(比較実施例16及び20)がV−0評価の難燃性を有するにもかかわらず、V−0評価を達成することができないことを示す。本発明の組成物による特性のバランスと比較すると、充填されない比較実施例16及び20は、少なくとも曲げ弾性率の点で不十分であり、充填された比較実施例17〜19及び21〜23は、少なくともUL94評価の点で不十分である。
【表3-1】
【表3-2】
【0126】
[実施例1〜6、比較実施例24及び25]
これらの本発明の実施例及び比較実施例は、ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマーを水素化ブロックコポリマーSEBSと組み合わせて使用する例を示す。本発明の実施例1〜6は全て、少なくとも155℃の熱変形温度と、厚さ1.5mmにおいてV−0のUL94評価と、3500MPaより大きい曲げ弾性率を有する。比較実施例24及び25は、充填されておらず、実質的により低い熱変形温度、曲げ弾性率、及び曲げ強さを示す。
【表4-1】
【表4-2】
【0127】
[実施例7〜15、比較実施例26]
これらの本発明の実施例及び比較実施例は、改良されたメルトフローを達成するための方法を示す。
【0128】
cm/10分の単位で示されるメルトボリュームフローレート(MVR)の値は、ASTM D1238−04に準拠して、300℃、負荷5kg、自動時間調整(B法)、キャピラリー直径2.0955mm、キャピラリー長さ8.00mm、試験試料形状はペレット、試験前に70℃で1時間試料を調節、組成物につき1つの試料で5点読み取りで測定した。
【0129】
表5の結果は、高い熱変形温度と、1.5mmでのUL94のV−0評価を維持しつつ、メルトフローが増加するように、本発明の組成物を改変することができることを示す。本発明の実施例13は、ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマーの含有量を低減させても、1.5mmにおいてV−0の結果のままとなることを示す。本発明の実施例15は、混合された補強充填剤の使用を示す。実施例は、炭化水素樹脂の流動促進剤(実施例10〜15)及び/又はAO626などの酸化防止剤の使用によっても、メルトフローの増加を達成することができることを示す。炭化水素樹脂又はホスファイトの酸化防止剤のいずれも用いない本発明の実施例7は、かなり低いメルトフローを示す。比較実施例26は、再び、ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマーではなくポリ(フェニレンエーテル)ホモポリマーを含み、より高い難燃剤の含有量によっても1.5mmにおいてV−0の燃焼性評価とならないことを示す。
【表5-1】
【表5-2】
【0130】
[実施例16〜19]
これらの本発明の実施例は、水素化ブロックコポリマーの欠落は、より高い熱分解温度に関係があることを示す。
【表6】
【0131】
[実施例20及び21、比較実施例27及び28]
これらの本発明の実施例及び比較実施例は、全て20%のガラス繊維補強剤を含み、ポリ(フェニレンエーテル)ホモポリマーではなくポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物を使用することにより、耐熱性を犠牲にすることなく改良された難燃性を得ることができることを示す。比較実施例28は、比較実施例27に比べてHIPSの含有量を低減し、難燃剤及びポリ(フェニレンエーテル)ホモポリマーを増加させても、1.5mmにおいてV−0の燃焼性能とするには不十分であることも示す。
【表7】
【0132】
[実施例22及び23、比較実施例29及び30]
これらの本発明の実施例及び比較実施例は、全て30%のガラス繊維補強剤を含み、ポリ(フェニレンエーテル)ホモポリマーではなくポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物を使用することにより、耐熱性を犠牲にすることなく改良された難燃性を得ることができることを更に示す。比較実施例30は、比較実施例29に比べてHIPSの含有量を低減し、難燃剤及びポリ(フェニレンエーテル)ホモポリマーを増加させても、1.5mmにおいてV−0の燃焼性能とするには不十分であることも示す。
【表8】
【0133】
[実施例24〜26、比較実施例31〜36]
これらの20%のガラス繊維で補強されたポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマーを含む組成物が、110℃よりも高い熱変形温度を維持しつつ、厚さ0.75mmでUL94のV−0評価を達成するもできることを示す。比較実施例36は、V−0評価を達成したが、熱変形温度が不十分であった。
【表9-1】
【表9-2】
【0134】
[実施例27〜43、比較実施例37〜39]
これらの実施例は、ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物を0.5重量%しか含まない組成物により、厚さ1.5mmでUL94のV−0評価を達成することを示す。これらの実施例は、第1のポリ(フェニレンエーテル)(ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物に由来)及び第2のポリ(フェニレンエーテル)(別に追加;実施例28〜43参照)を含む組成物を更に示す。
【0135】
それぞれJ/mの単位で表されるノッチ付きアイゾットの値及びノッチなしアイゾットの値は、ASTM D256−08に準拠して、2フィートポンド(2.71J)のハンマーエネルギーを用い、25℃、試験片の断面寸法3.2×12.7mmで測定した。それぞれMPaの単位で表される曲げ弾性率、降伏曲げ応力、及び降伏破断応力の値は、ASTM D790−07elに準拠して、厚さ6.4mmの試験片を用い、支持スパン101.6mm、試験速度毎分2.54mm(毎分0.1インチ;A法)、組成物につき3つの試料で測定した。それぞれMPaの単位で表される引張モジュラス及び破断引張応力、及び%の単位で表される引張破断伸びは、ASTM D638−08に準拠して、厚さ3.2mmのタイプI試験片を用い、ゲージ長50mm、試験速度毎分5mmで測定した。
【0136】
結果は、0.5〜40重量%のポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物を含む組成物が、厚さ1.5mmでUL94のV−0評価を示すことを示す。物理的特性は全ての試料について測定はしたわけではないが、得られた結果は、2〜40重量%のポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマー反応生成物を含む組成物が、ASTM D648−07に準拠して、1.82メガパスカル(MPa)の応力、6.4mmの試料厚さを用いて測定した熱変形温度が少なくとも150℃であり、ASTM D790−07elに準拠して、6.4mmの試料厚さを用いて測定した曲げ弾性率が少なくとも5000MPaであることを示す。ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマーを含まない比較実施例37及び38と、ポリ(フェニレンエーテル)−ポリシロキサンブロックコポリマーを0.4重量%しか含まない比較実施例39は、厚さ1.5mmでUL94のV−0評価を達成しない。
【表10-1】
【表10-2】
【表10-3】
【表10-4】
【0137】
[実施例44]
この実施例は、高い難燃性、耐熱性、及びメルトフローを示す組成物を示す。
【表11】