(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
中空構造物の内部に貯蔵された粉粒体が固着状態となって中空構造物底部の排出口から排出できなくなった場合に、固着状態の粉粒体を崩して排出口から排出する方法であって、
前記中空構造物の天井部に形成された開口から前記中空構造物内の上部空間に所定長さのラックレールを垂下し、
前記ラックレールに沿って移動する昇降体を前記開口から前記ラックレールに沿って前記中空構造物内の上部空間まで降下させ、
前記開口から前記中空構造物内に運び込んだ部品を用いて前記中空構造物内の上部空間において前記昇降体に水平方向に張り出すように作業足場を構築し、
前記中空構造物底部の排出口を閉じた状態で、前記作業足場に安全帯で繋がれた作業員が前記作業足場の下方の固着状態となっている粉粒体を突き崩し、
突き崩した粉粒体を、前記作業足場の下方にて固着状態となっている粉粒体にその頂面から前記中空構造物底部の閉じた状態の排出口に架けて形成された通路に落とし、
前記通路が突き崩された粉粒体で塞がれた状態で、前記作業足場に安全帯で繋がれた作業員が前記作業足場の下方のラックレールの下端に次のラックレールを継ぎ足し、
前記中空構造物底部の排出口を開いて、前記通路に貯められた粉粒体を排出し、
継ぎ足したラックレールに前記昇降体を降下させて前記作業足場を下げるようにした、
ことを特徴とする中空構造物の内部で固着状態となった粉粒体の排出方法。
前記通路は、前記中空構造物内の粉粒体が中空構造物内面に固着積層することで中空構造物内に貯蔵された粉粒体にその頂面から中空構造物底部の排出口まで上下方向に形成されたラットホールであり、当初から形成されている、ことを特徴とする請求項1に記載の中空構造物の内部で固着状態となった粉粒体の排出方法。
前記通路は、前記中空構造物内にて固着状態となった粉粒体にボーリングによって上下方向に形成された人工孔であり、前記作業足場に安全帯で繋がれた作業員が前記作業足場の下方の固着状態となっている粉粒体を突き崩す工程よりも前に形成される、ことを特徴とする請求項1に記載の中空構造物の内部で固着状態となった粉粒体の排出方法。
【背景技術】
【0002】
サイロ、タンク、ビン、カントリーエレベーター等の中空構造物には,穀物や飼料等の粉粒体が貯蔵される。以下、サイロについて説明するが、タンク、ビン、カントリーエレベーター等の中空構造物についても同様である。サイロ内に貯蔵された穀物や飼料等の粉粒体は、貯蔵された粉粒体の総重量によって、サイロ内面に押し付けられて圧密された状態となるため、種々の条件によってはサイロ内にて固着状態となり、サイロ底部に設けられた排出口から適切に排出できなくなる場合がある。
【0003】
例えば、サイロ内に貯蔵された粉粒体は、比較的軟らかい性質である場合、粉粒体の水分含有量、粉粒体をサイロに入出荷するときの天候(湿度や気温)等の環境的な要因によっては、粉粒体自身の総重量によってサイロ内面に押し付けられて圧密状態となって固着し、それに粉粒体が更に押し付けられて積層する。かかる積層が繰り返されて層厚が増すと、サイロ内に貯蔵された粉粒体は、中央部分における上下方向に沿った細長い空間部分(ラットホール)を除き、サイロ内面に固着した状態となる。
【0004】
ラットホールが形成されると、サイロ天井部の開口からサイロ内に投入された新たな粉粒体は、直ちにラットホールを通ってサイロ底部の排出口から排出されてしまい(ファネルフロー)、サイロ内面に固着状態となった粉粒体は排出されない。すなわち、粉粒体の先入れ先出しができず、サイロ内面に固着状態となっている粉粒体が長期間サイロに残留することになる。残留状態の粉粒体は、変質する可能性がある。
【0005】
また、サイロ内に貯蔵された粉粒体は、粉粒体自身の総重量によって、漏斗状に形成されたサイロ底部の排出口の上方の部分にて圧密状態となり、アーチ状に固着する場合もある(ブリッジ)。ブリッジが形成されると、サイロ底部の排出口の上方がブリッジで覆われた状態となるため、サイロ内にてブリッジよりも上方に貯蔵された粉粒体がサイロ底部の排出口から排出されなくなる。
【0006】
ラットホールやブリッジによってサイロ内の粉粒体がサイロ底部の排出口から適切に排出されなくなった場合の対処方法として、本発明者(本出願人)は、サイロ内に天井部から底部に向けてラックレールを垂下し、ラックレールに沿って昇降する作業足場を構築し、作業足場に乗った作業員がサイロ内にて固着した粉粒体を突き崩し、サイロ底部の排出口から排出する方法を提案した(特許文献1、2参照)。
【0007】
かかる方法によれば、サイロ内にて固着状態となっている粉粒体を突き崩す作業者が、作業足場に乗った状態で作業足場の下方の粉粒体を突き崩すことができるので、崩した粉粒体によって作業員が埋まる事態(崩落事故)を回避できる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0019】
(中空構造物(サイロ1)の内部で固着状態となった粉粒体2の排出方法の概要)
本発明の一実施形態に係るサイロ1内で固着状態となった粉粒体2の排出方法の工程の概要を添付図面に基づいて説明する。この方法は、
図1に示すように、サイロ1内に貯蔵された粉粒体2が固着状態となってサイロ底部の排出口3から排出できなくなった場合に、固着状態となっている粉粒体2を崩して排出口3から排出する方法である。なお、以下、サイロ1について説明するが、タンク、ビン、カントリーエレベーター等の中空構造物についても同様である。本方法の概要は、次の通りである。
【0020】
図6に示すように、サイロ1の天井部4に形成された開口5からサイロ1内の上部空間6に所定長さのラックレール7を垂下する。
図7に示すように、ラックレール7に沿って移動する昇降体8を開口5からラックレール7に沿ってサイロ1内の上部空間6まで降下させ、開口5からサイロ1内に運び込んだ部品9を用いて、
図8に示すように、サイロ1内の上部空間6において昇降体8に水平方向に張り出すように作業足場10(
図9参照)を構築する。
【0021】
図10に示すように、サイロ底部11の排出口3を閉じた状態で、作業足場10に安全帯12で繋がれた作業員13が作業足場10の下方の固着状態となっている粉粒体2を突き崩し、突き崩した粉粒体2を、
図11に示すように、作業足場10の下方にて固着状態となっている粉粒体2にその頂面からサイロ底部11の閉じた状態の排出口3に架けて形成された通路14(ラットホール、人工孔)に落とす。
【0022】
図12に示すように、通路14(ラットホール、人工孔)が突き崩された粉粒体2で塞がれた状態で、作業足場10に安全帯12で繋がれた作業員13が作業足場10の下方のラックレール7の下端に次のラックレール7を継ぎ足す。
図13に示すように、サイロ底部11の排出口3を開いて、通路14(ラットホール、人工孔)に貯められた粉粒体2を排出する。その後、
図14〜
図16に示すように、継ぎ足したラックレール7に昇降体8を降下させて作業足場10を下げる。
【0023】
上述したように、通路14(ラットホール、人工孔)が突き崩された粉粒体2で塞がれた状態で、作業足場10の下方のラックレール7の下端に次のラックレール7を継ぎ足し、継ぎ足したラックレール7に昇降体8を降下させて作業足場10を下げるという工程を繰り返すことで(
図17〜
図21)、ラックレール7を徐々に下方に延伸させて作業足場10を徐々に下降させ、サイロ1内にて固着した粉粒体2を上部から徐々に突き崩す。以下、詳述する。
【0024】
(サイロ1)
図1に示すように、粉粒体(穀物や飼料等)2を貯蔵するサイロ1は、筒状の胴部15と、すり鉢状(漏斗状)の底部11と、板状の天井部4とから構成されている。天井部4には、サイロ1内に粉粒体2を投入するための開口5(入荷口)が形成され、底部11には、サイロ1内の貯蔵された粉粒体2を排出するための排出口3(出荷口)が形成されている。出荷口3には、開閉弁16が設けられている。なお、入荷口5および出荷口3は、本実施形態ではサイロ1のセンターに配設されているが、センターからずれていてもよい。また、開口5は、入荷口に限られず、天井部4のセンターに設けられた点検用のマンホールであってもよい。
【0025】
本実施形態におけるサイロ1は、サイロ1の全長(高さ)は20〜30m程度、サイロ1の直径は5〜7m程度、入荷口5の口径は60cm程度、出荷口3の口径は60cm程度、サイロ1の貯蔵量は200〜1000t程度となっているが、このサイズに限定されるものではない。
【0026】
(ラットホール14)
サイロ1に貯蔵された粉粒体(穀物や飼料等)2は、粉粒体の水分含有量、粉粒体をサイロに入出荷するときの天候(湿度や気温)等の環境的な要因によっては、粉粒体2自身の総重量によって、サイロ1内面に押し付けられて圧密状態となって固着し、それに粉粒体2が更に押し付けられて積層する。かかる積層が繰り返されてラットホール14が形成される場合がある。
【0027】
本実施形態において、
図1に示すように、サイロ1内において、固着状態となっている粉粒体2にその頂面からサイロ底部11の排出口3に架けて形成された通路14は、ラットホールである。ラットホール14は、本実施形態に係る粉粒体2の排出方法が施工される前から(当初から)形成されている。
【0028】
(人工孔14:ボーリング孔)
また、サイロ1内に貯蔵された粉粒体2は、粉粒体自身の総重量によって、漏斗状に形成されたサイロ底部11の排出口3の上方の部分にて圧密状態となり、アーチ状に固着する場合もある(ブリッジ)。ブリッジが形成されると、サイロ1内に貯蔵された粉粒体2が全体的に固着状態となり得る。この場合、固着状態となった粉粒体2に、ボーリングによって上下方向に人工孔(ボーリング孔)を形成する。
【0029】
すなわち、上記通路14は、サイロ1内にて固着状態となった粉粒体に、ボーリングによって形成された、人工孔でもよい。かかる人工孔(ボーリング孔)14は、
図1に示す入荷口5からサイロ1内に挿入したボーリング機械によって、或いは、
図8に示す作業足場10に支持させたボーリング機械によって、固着状態となっている粉粒体2に、その頂面からサイロ底部1の排出口に架けて形成される。人工孔14は、
図10に示すように、作業員13が固着状態となっている粉粒体2を突き崩す工程よりも前に形成される。
【0030】
(ラックレール7を垂下する準備)
図2に示すように、サイロ1の天井部4の上面に、入荷口5の位置に合わせて、ラックレール7を吊下するための架台(櫓:やぐら)17が設置される。後述するように、ラックレール7には昇降体8が装着され、昇降体8には作業足場10が組み付けられるため、櫓17は、ラックレール7の重量に加えて昇降体8および作業足場10の重量を吊下できる強度が必要である。また、櫓17は、サイロ1の天井部4に装着されるため、サイロ1への負荷を軽減するべく軽量化する必要があり、複数のロッド材(メンバー)からケージ状(トラス状)に構成されている。
【0031】
図3に示すように、入荷口5に昇降体(駆動部)8が一時的に仮設置される。
図4に示すように、昇降体8は、上下に開口18、19を有するケーシング20と、その内部に設けられたピニオン21と、ピニオン21を駆動するモーター22と、ケーシング20の内部に設けられた押さえローラー23とを備えており、ピニオン21と押さえローラー23との間にラックレール7が挟持されるようになっている。
【0032】
昇降体8は、ラックレール7に沿って昇降できる構造であれば、上記構成に限られない。例えば、本実施形態に係る昇降体8は、
図4に示すように、2つのピニオン21の中間に1つの押さえローラーを23配置した構成であるが、2つの押さえローラー23の中間に1つのピニオン21を配置した構成でもよい。
【0033】
(ラックレール7の垂下)
図5に示すように、昇降体8のケーシング20の上部の開口18から所定長さのラックレール7を差し入れ、
図4に示すピニオン21をモーター22で回転させて、ラックレール7を下方に送り出し、ケーシング20の下部の開口19から下方に突出させる。そして、ラックレール7の上端が昇降体のケーシング20の上部の開口18から上方に突出している状態で、このラックレール7の上端に次のラックレール7を継ぎ足し、継ぎ足したラックレール7を同様にピニオン21によって下方に送り出す。この作業を繰り返すことで、
図6に示すように、サイロ1の天井部4に形成された入荷口5からサイロ1内の上部空間6にラックレール7を垂下する。この作業によれば、サイロ1の外部でラックレール7を継ぎ足して入荷口5からサイロ1内に垂下できるので、サイロ1の内部でラックレール7を継ぎ足す作業を行う場合と比べて安全性が高い。
【0034】
図6に示すように、入荷口5から垂下されるラックレール7の長さ(継ぎ足したラックレール7のトータルの長さ)は、ラックレール7の下端がラットホール(通路)14に差し込まれない長さとする。突き崩した粉粒体2をラットホール14に落とす際、ラックレール7がラットホール14内を落下する粉粒体2の妨げにならないようにするためである。なお、通路14がボーリングによって形成された人工孔である場合、上述したラットホール14を人工孔14と読み替える。ラックレール7の単体の長さは、例えば1.5〜2m程度のものが用いられる。
【0035】
(昇降体8の降下)
図6に示すように、ラックレール7を継ぎ足して入荷口5からラットホール14の入口まで延伸した後、昇降体8のケーシング20の上部の開口18から上方に突出しているラックレール7の上端と櫓17の頂部とをワイヤー24等の連結部材で連結する。そして、昇降体8を入荷口5に仮設置している仮設置機構(図示せず)を取り外す。これにより、ラックレール7および昇降体8の重量は、ワイヤー24を介して櫓17に吊下された状態となる。その後、
図4に示す昇降体8の内部のピニオン21を、ラックレール7を下方に送り出すときとは逆方向に回転させることで、
図7に示すように、昇降体8を入荷口5からラックレール7に沿ってサイロ1内の上部空間6まで降下させる。昇降体8のピニオン21を駆動するモーター22(
図4参照)の駆動(正回転、逆回転)は、櫓17の近傍に設けた操作盤を操作することで、遠隔制御(有線または無線)される。かかる作業は、全てサイロ1の外部での作業であり、サイロ1の内部での作業がないため、安全性が高い。
【0036】
(作業足場10の構築)
昇降体8をサイロ1内の上部空間6まで降下させた後、
図7に示すように、入荷口5からサイロ1内に運び込んだ部品9を用いて、サイロ1内の上部空間6において昇降体8に水平方向に張り出すように作業足場10を構築する(
図8参照)。
【0037】
図7に示すように、構築作業を行う作業員25は、櫓17に取り付けられたウィンチ26から繰り出されたワイヤーに安全帯を介して連結されており、入荷口5からサイロ1内に進入する。作業足場10の部品9は、櫓17に取り付けられた別のウィンチ27から繰り出されたワイヤーに連結されており、入荷口5からサイロ1内に搬入される。作業員25は、サイロ1内の上部空間6において、ウィンチ26のワイヤーに吊り下げられた状態で、別のウィンチ27のワイヤーに吊り下げられた部品9を昇降体8に組み付ける。これにより、
図8に示すように、昇降体8に水平方向に張り出すように作業足場10が構築される。
【0038】
作業足場10は、
図9(b)に示すように、昇降体8を中心としてサイロ1の径方向に放射状に配置された径方向部材28と、径方向部材28同士を接続する周方向部材29とを有する。径方向部材28は、サイロ1の周方向に等角度(例えば30度)で複数(例えば12本)配設され、周方向部材29は、サイロ1の径方向に間隔を隔てて複数列(例えば3列配設されている。径方向部材28と周方向部材29との間には、床板30が敷設されている。
図9(b)において、床板30は、作図の都合上、一部のみを表記している。
【0039】
また、作業足場10は、
図9(a)に示すように、補強部材31と、斜材32とを有し、全体としてケージ状に構成されている。径方向部材28の先端には、ガイドローラー33が設けられている。ガイドローラー33は、作業足場10がラックレール7に沿って昇降する際、サイロ1の内面に接触して昇降を案内するものである。
【0040】
作業足場10の重量は、
図8に示すように、ラックレール7、ワイヤー24および櫓17を介してサイロ1の天井部4に支持される。従って、サイロ1の強度上の負担を考慮し、作業足場10の重量を出来るだけ軽くすることが好ましい。本実施形態においては、作業足場10は、径方向部材28、周方向部材29、床板30、補強部材31、斜材32などからケージ状に構成されたスペースフレーム構造となっているので、
図10に示すように、作業員13が乗って作業する際に必要な強度を確保しつつ、可能な限りの軽量化を図っている。なお、作業足場10には、昇降体8の駆動モーター22(
図4参照)を制御するための操作盤を設けてもよい。
【0041】
(粉粒体2の突き崩し)
作業足場10が完成した後、
図10に示すように、サイロ底部11の出荷口3の開閉弁16を閉じた状態で、作業足場10に安全帯12で繋がれた作業員13が作業足場10の下方の固着状態となっている粉粒体2を突き崩す。そして、突き崩した粉粒体2を、
図11に示すように、ラットホール14(またはボーリングによって形成された人工孔)に落とす。
【0042】
作業員13は、
図10に示すように、作業足場10に乗った状態で床板30の隙間からロッドやレーキ34等で粉粒体を突き崩してもよいし、
図11に示すように、作業足場10の下方の粉粒体2に乗った状態でツルハシやスコップ35、電動工具(ブレーカー、チッパー)等で粉粒体2を突き崩してもよい。作業員13は、いずれの場合であっても、安全帯12で作業足場10に繋がれている。
【0043】
図10に示すように、粉粒体2を突き崩すことによって、作業足場10の下方にスペースが形成されるため、
図11に示すように、そのスペースに作業足場10をラックレール7に沿って下降させる。これにより、粉粒体2に乗った作業員13と作業足場10との距離(高さ差)を縮められるため、粉粒体2に乗った状態で突崩作業を行う作業員13は、短い長さの安全帯12を使用して作業でき、安全性が高まる。
【0044】
(ラックレール7の継ぎ足し)
図11に示すように、ラットホール(または人工孔)14が突き崩された粉粒体2で塞がれた状態となった後、
図12に示すように、作業足場10に安全帯12で繋がれた作業員13が作業足場10から下方に突き出ているラックレール7の下端に次のラックレール7を継ぎ足す。
【0045】
図12において、作業員13がラックレール7を継ぎ足す作業を行う際、ラットホール(または人工孔)14の内部が突き崩された粉粒体2で塞がれた状態となっているので、仮に(万一)安全帯12が外れた場合であっても、作業員13がラットホール(または人工孔)14内をサイロ底部11まで落下する転落事故を抑制でき、高い安全性の下でラックレール7の継足作業を行える。また、作業員13は、ラットホール(または人工孔)14に貯められた粉粒体2の上面に乗った状態で作業できるので、作業性が向上する。
【0046】
ここで、
図10に示す粉粒体2の突崩作業は、
図11に示すようにラットホール(または人工孔)14がその入口近傍まで粉粒体2で詰まった状態となるまで、継続することが好ましい。
図12に示すラックレール7の継足作業において、ラットホール(または人工孔)14に貯められた粉粒体2の上面に乗った作業員13が、作業足場10の下方から突き出たラックレール7の下端に新たなラックレール7の上端を接続する継足作業を行う際、レール同士の接続部に手が届き易く、作業性を高めることができるからである。また、作業員13を作業足場10に繋ぐ安全帯12の長さが不要に長くなる事態を回避でき、安全性を高めることができるからである。なお、
図11の作業足場10を
図12の位置まで下降させることで、作業員13が使用する安全帯12の長さを可及的に短くしている。
【0047】
(粉粒体2の排出)
ラックレール7を継ぎ足した後、
図13に示すように、作業足場10を作業員13が乗った状態でラックレール7に沿って上昇させる。そして、作業員13が入荷口5からサイロ1の外部に出た後、サイロ底部11の出荷口3の開閉弁16を開く。これにより、ラットホール(または人工孔)14に一時的に貯められた粉粒体2が出荷口3から排出される。このとき、作業員13はサイロ1の外部に出ているので、排出される粉粒体2に巻き込まれることはなく、安全である。
【0048】
(作業足場10の降下)
粉粒体2を排出した後、作業員13が入荷口5からサイロ1内に進入して作業足場10に乗り、
図14に示すように、作業足場10を降下させる。そして、出荷口3の開閉弁16を閉じた状態で、作業足場10に安全帯12で繋がれた作業員13が、固着した粉粒体2の突崩作業を行い、突き崩した粉粒体2を、
図15に示すように、ラットホール(またはボーリングによって形成された人工孔)14に落とす。なお、
図14は
図10と同様の作業であり、
図15は
図11と同様の作業である。
【0049】
その後、
図16に示すように、作業足場10を先に
図12において継ぎ足したラックレール7の位置まで降下させる。そして、作業足場10に安全帯12で繋がれた作業員13が、作業足場10の下方から突き出たラックレール7に次のラックレール7を継ぎ足す。
図16は
図12と同様の作業である。その後、
図17に示すように、作業足場10を上昇させて作業員13が入荷口5からサイロ1の外部に出た後、出荷口3の開閉弁16を開いて、ラットホール14に貯められた粉粒体2を排出する。
図17は
図13と同様の作業である。
【0050】
(作業の繰り返し)
以上の作業繰り返す。すなわち、ラットホール14が突き崩された粉粒体2で塞がれた状態で、作業足場10の下方から突出しているラックレール7に次のラックレール7を継ぎ足し、継ぎ足したラックレール7に作業足場を降下させるという作業を繰り返すことで、サイロ1内にて固着状体となっている粉粒体2を上部から徐々に突き崩してサイロ底部11の出荷口3から排出する。
【0051】
そして、
図18に示すように、作業足場10をサイロ1の下部まで降下させたならば、作業足場10に安全帯12で繋がれた作業員13がサイロ1内にて固着状体となっている粉粒体2を全て突き崩し、
図19に示すように、サイロ底部11に貯める。その後、作業足場10に安全帯12で繋がれた作業員13が、サイロ底部1に貯められた粉粒体2の上に乗った状態でラックレール7を継ぎ足す。
【0052】
その後、
図20に示すように、作業足場10をサイロ1内の上部に上昇させ、作業員13が入荷口5からサイロ1の外部に出た後、出荷口3の開閉弁16を開き、サイロ底部11に貯められた粉粒体2を全て排出する。こうして、サイロ1内にて固着状態となっていた粉粒体2を全て突き崩して排出できる。
【0053】
(作業足場10の解体、取り出し)
その後、
図21に示すように、作業足場10を最後に継ぎ足したラックレール7の位置まで降下させる。そして、作業足場10に乗った作業員、開閉弁16を取り外し出荷口3からサイロ1内に進入した作業員が、サイロ1内の底部11に位置する作業足場10を解体し、解体した部品(径方向部材28、周方向部材29、床板30、補強部材31、斜材32など)を出荷口3からサイロ1の外部に搬出する。以上で作業が終了する。
【0054】
(作用・効果)
以上説明したように、本実施形態に係る中空構造物(サイロ1)の内部で固着状態となった粉粒体2の排出方法によれば、サイロ1内にて固着状態となった粉粒体2を突き崩す作業者13が、粉粒体2の上方に位置する作業足場10に支持されているので、崩れた粉粒体2によって作業員13が埋まる事態(崩落事故)を防止できる。
【0055】
また、サイロ1内にて固着状態となっている粉粒体2に上下方向に形成された通路(ラットホール、人工孔)14を、突き崩した粉粒体2の排出路として利用するのみならず、突き崩した粉粒体2を一時的に貯める仮置スペースとしても利用している。すなわち、サイロ底部11の排出口3を閉じた状態で、突き崩した粉粒体2をラットホール(人工孔)14に落として一時的に貯め、ラットホール(人工孔)14が粉粒体2で塞がれた状態でラックレール7を継ぎ足しているので、仮に(万一)安全帯12が外れた場合であっても、作業員13がラットホール(人工孔)14内をサイロ底部11まで落下する事態(転落事故)を防止でき、高い安全性の下でラックレール7の継足作業を行える。
【0056】
作業足場10の下方から突出しているラックレール7に次のラックレール7を継ぎ足し、継ぎ足したラックレール7に作業足場10を降下させるという作業を繰り返すことで、サイロ1内にて固着状体となっている粉粒体2を上部から徐々に突き崩してサイロ底部11の出荷口3から排出でき、最終的にはサイロ1にて固着状態となっている全ての粉粒体2を安全に突き崩して排出することができる。従って、安全に粉粒体の詰まりの問題(ラットホール、ブリッジ等)を解消できる。
【0057】
以上、添付図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述した各実施形態に限定されないことは勿論であり、特許請求の範囲に記載された範疇における各種の変更例又は修正例についても、本発明の技術的範囲に属することは言うまでもない。
【課題】中空構造物(サイロ等)の内部にて固着状態となった粉粒体を、安全にサイロ底部の排出口から排出できる、サイロ内で固着状態となった粉粒体の排出方法を提供する。
【解決手段】サイロ1の天井部4に形成された開口5からサイロ1内にラックレール7を垂下し、昇降体8を開口5からラックレール7に沿ってサイロ1内に降下させ、開口5からサイロ1内に運び込んだ部品9を用いて昇降体8に作業足場10を構築し、サイロ底部11の排出口3を閉じた状態で、作業足場10に安全帯12で繋がれた作業員13が粉粒体2を突き崩し、突き崩した粉粒体2をラットホール(またはボーリング孔)14に落とし、ラットホール14が粉粒体2で塞がれた状態で、作業足場10に安全帯12で繋がれた作業員13がラックレール7を継ぎ足し、排出口3を開いて通路14に貯められた粉粒体2を排出し、継ぎ足したラックレール7に作業足場10を下げる。