特許第6357312号(P6357312)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6357312
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】成膜マスクの製造方法及び成膜マスク
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/04 20060101AFI20180702BHJP
【FI】
   C23C14/04 A
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-264326(P2013-264326)
(22)【出願日】2013年12月20日
(65)【公開番号】特開2015-120947(P2015-120947A)
(43)【公開日】2015年7月2日
【審査請求日】2016年10月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】500171707
【氏名又は名称】株式会社ブイ・テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100087505
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 春之
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(72)【発明者】
【氏名】水村 通伸
【審査官】 安齋 美佐子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−108143(JP,A)
【文献】 特開2012−035294(JP,A)
【文献】 特開2013−147739(JP,A)
【文献】 特開2013−165060(JP,A)
【文献】 特開2010−188418(JP,A)
【文献】 特開2013−165058(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00−14/58
C23C 16/00−16/56
B23K 26/382−26/388
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ーザ光が透過する透光窓を有し、該透光窓の外側の、少なくとも一対辺の側方領域における光透過率を、前記透光窓の縁部から側方に向かって漸減させたビーム整形用マスクを使用して整形されたレーザ光を樹脂製のフィルムに照射することにより、開口が前記レーザ光の照射面側に向かって広がるように傾斜した少なくとも1対の対向側壁を有する平面視多角形の開口パターンを形成する成膜マスクの製造方法であって、
前記開口パターンは、
前記ビーム整形用マスクにより整形された第1のレーザ光を照射して前記フィルムの開口パターン形成部に予め定められた深さの凹部を形成する工程と、
前記開口パターンに相似形の透光窓を有し、該透光窓の外側が遮光された別のビーム整形用マスクを使用して整形された第2のレーザ光を前記凹部内のフィルムに照射し、該フィルムを貫通する貫通開口を形成する工程と、
を実施して形成されることを特徴とする成膜マスクの製造方法。
【請求項2】
前記開口パターンは、複数対の対向側壁の傾き角度が、少なくとも前記レーザ光の照射面側で異なることを特徴とする請求項1記載の成膜マスクの製造方法。
【請求項3】
前記凹部の底面積は、前記貫通開口の開口面積よりも広いことを特徴とする請求項1記載の成膜マスクの製造方法。
【請求項4】
前記フィルムには、前記レーザ光の照射面側に前記開口パターンを内包する大きさの貫通孔を設けたメタルマスクが積層されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の成膜マスクの製造方法。
【請求項5】
前記開口パターン形成前に、前記フィルムと前記メタルマスクとの積層体をフレームの一端面に架張して固定することを特徴とする請求項4記載の成膜マスクの製造方法。
【請求項6】
基板上に開口パターンを介して成膜するための成膜マスクであって、
前記開口パターンは、開口が成膜源側に向かって広がる複数対の対向側壁を有し、該複数対の対向側壁の傾き角度が、少なくとも前記成膜源側で異なっており、
一方向に搬送されながら成膜される基板に対し、前記開口パターンの、前記成膜源とは反対側のマスク面に対する傾き角度の小さい対向側壁が前記基板の搬送方向と交差する方向となるように配置した状態で使用されることを特徴とする成膜マスク。
【請求項7】
前記開口パターンは、樹脂製のフィルムに形成されていることを特徴とする請求項6記載の成膜マスク。
【請求項8】
前記フィルムの前記成膜源側の面には、前記開口パターンを内包する大きさの貫通孔を設けたメタルマスクが積層されていることを特徴とする請求項7記載の成膜マスク。
【請求項9】
前記成膜源側の面に、枠状のフレームをさらに備えたことを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載の成膜マスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製のフィルムにレーザ光を照射して開口パターンを形成する成膜マスクの製造方法に関し、特に開口パターンの側壁の傾き角度の制御を容易にし得る成膜マスクの製造方法及び成膜マスクに係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来の成膜マスクは、成膜作製するパターンに対応した、少なくとも1つの開口パターンを有する厚みが1μm以上50μm以下のマスク層を有し、そのマスク層上に、該マスク層が有する開口パターンを塞ぐことなく磁性体を有するものとなっていた(例えば、特許文献1参照)。そして、望ましくは、上記マスク層が有する開口パターンは、磁性体側の表面に向かって開口が広くなるようにテーパー状であるのがよいとされていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−249706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このような従来の成膜マスクにおいて、開口パターンの形成は、例えば、開口パターンに相似形の断面形状に整形されたレーザ光をフィルムに照射して行うものであったので、開口パターンの側壁の傾き角度を制御することが困難であった。
【0005】
特に、平面視矩形状の開口パターンの2対の対向側壁にて、一方の対向側壁と他方の対向側壁の傾き角度を異ならせることができなかった。したがって、従来の方法により製造される成膜マスクを使用して、基板を一方向に搬送しながら成膜しようとすると、成膜された薄膜の搬送方向と交差する方向の膜厚分布が、同方向の開口パターンの縁部によるシャドウの影響で不均一になるという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、このような問題点に対処し、開口パターンの側壁の傾き角度の制御を容易にし得る成膜マスクの製造方法及び成膜マスクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明による成膜マスクの製造方法は、レーザ光が透過する透光窓を有し、該透光窓の外側の、少なくとも一対辺の側方領域における光透過率を、前記透光窓の縁部から側方に向かって漸減させたビーム整形用マスクを使用して整形されたレーザ光を樹脂製のフィルムに照射することにより、開口が前記レーザ光の照射面側に向かって広がるように傾斜した少なくとも1対の対向側壁を有する平面視多角形の開口パターンを形成する成膜マスクの製造方法であって、前記開口パターンは、前記ビーム整形用マスクにより整形された第1のレーザ光を照射して前記フィルムの前記開口パターン形成部に予め定められた深さの凹部を形成する工程と、前記開口パターンに相似形の透光窓を有し、該透光窓の外側が遮光された別の整形用マスクを使用して整形された第2のレーザ光を前記凹部内のフィルムに照射し、該フィルムを貫通する貫通開口を形成する工程と、を実施して形成されるものである。
【0008】
また、本発明による成膜マスクは、基板上に開口パターンを介して成膜するための成膜マスクであって、前記開口パターンは、開口が成膜源側に向かって広がる複数対の対向側壁を有し、該複数対の対向側壁の傾き角度が、少なくとも前記成膜源側で異なっており、一方向に搬送されながら成膜される基板に対し、前記開口パターンの、前記成膜源とは反対側のマスク面に対する傾き角度の小さい対向側壁が前記基板の搬送方向と交差する方向となるように配置した状態で使用されるものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、フィルムにレーザ加工される開口パターンの開口がレーザ光の照射側に向かって広がるように傾斜した対向側壁の傾き角度を容易に制御することができる。したがって、開口パターンの開口が成膜源側に向かって広がる複数対の対向側壁を有しており、該複数対の対向側壁の傾き角度が、少なくとも成膜源側で異なる成膜マスクも容易に製造することができる。それ故、開口パターンの側壁が成膜のシャドウとなるのを抑制して膜厚が均一な薄膜を成膜することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明による成膜マスクの一実施形態を示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のO−O線断面矢視図、(c)は(a)のP−P線断面矢視図である。
図2】本発明による成膜マスクにおける開口パターンを形成するためのレーザ加工装置の一構成例を示す正面図である。
図3】上記レーザ加工装置に使用するビーム整形用マスクの一構成例を示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)の一部拡大平面図、(c)は(b)に対応する部分の光透過率を示す説明図、(d)は(a)の透光窓を透過したレーザ光により加工される開口パターンの対向側壁の傾斜角度を説明する断面図である。
図4】従来のビーム整形用マスクの構成例を示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)の透光窓を透過したレーザ光により加工される開口パターンの対向側壁の傾斜角度を説明する断面図である。
図5】従来のメタルマスクを使用した蒸着を示す説明図であり、(a)は蒸着源の相対移動方向における蒸着膜の膜厚分布を示し、(b)は蒸着源の相対移動方向と交差する方向における蒸着膜の膜厚分布を示す。
図6図4に示すビーム整形用マスクを使用して開口パターンがレーザ加工された成膜マスクを使用した蒸着を示す説明図であり、(a)は蒸着源の相対移動方向における蒸着膜の膜厚分布を示し、(b)は蒸着源の相対移動方向と交差する方向における蒸着膜の膜厚分布を示す。
図7】本発明による成膜マスクを使用した蒸着を示す説明図であり、(a)は蒸着源の相対移動方向における蒸着膜の膜厚分布を示し、(b)は蒸着源の相対移動方向と交差する方向における蒸着膜の膜厚分布を示す。
図8】本発明による成膜マスクの製造方法において、開口パターンのレーザ加工の変形例を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明による成膜マスクの一実施形態を示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のO−O線断面矢視図、(c)は(a)のP−P線断面矢視図である。この成膜マスクは、基板上に開口パターンを介して成膜するためのもので、フィルムマスク1と、メタルマスク2と、金属フレーム3とを備えて構成されている。
【0012】
上記フィルムマスク1は、被成膜基板上に薄膜パターンを成膜するためのメインマスクとなるもので、例えば厚みが10μm〜30μm程度の、例えばポリイミドやポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂製のフィルムに、図1(a)に示すように、上記薄膜パターンに対応して平面視多角形の複数の開口パターン4を縦横マトリクス状に配置して備えたものである。好ましくは、線膨張係数が被成膜基板(以下、単に「基板」という)としてのガラスの線膨張係数に近似した3×10−6〜5×10−6/℃程度のポリイミドが望ましい。
【0013】
詳細には、上記開口パターン4は、開口が成膜源側(メタルマスク2側)に向かって広がるように傾斜した複数対(例えば、2対)の対向側壁を有しており、該複数対の対向側壁の傾き角度が、図1(b),(c)に示すように、少なくとも上記成膜源側(メタルマスク2側)で異なるものである。
【0014】
より詳細には、本発明の成膜マスクが基板を一方向に搬送しながら成膜する成膜装置に適用されるものである場合には、上記基板の搬送方向(図1(a)の矢印A方向(X軸方向に同じ))と交差する方向(Y軸方向)に対応した対向側壁の傾き角度を他の対向側壁の傾き角度よりも大きくするのが望ましい。
【0015】
上記フィルムの一面には、メタルマスク2が積層されている。このメタルマスク2は、上記開口パターン4を内包する大きさの貫通孔5を形成した、例えば厚みが30μm〜50μm程度の、例えばニッケル、ニッケル合金、インバー又はインバー合金等の磁性金属材料のシートであり、フィルムマスク1を支持するサブマスクとなるものである。
【0016】
詳細には、図1(a)に示すように、一列に並んだ複数の開口パターン4を内包する大きさのスリット状の貫通孔5が複数列設けられており、本発明の成膜マスクが基板を一方向に搬送しながら成膜する成膜装置に適用されるものである場合には、スリット状の貫通孔5の長軸が基板搬送方向(矢印A方向)と交差するように配置される。
【0017】
この場合、成膜マスクは、メタルマスク2が成膜源側となるようにして基板上に設置され、基板ホルダーに内蔵された磁石によりメタルマスク2が吸引されてフィルムマスク1を基板の成膜面に密着させる。
【0018】
上記メタルマスク2の上記フィルムマスク1とは反対側の面には、金属フレーム3が設けられている。この金属フレーム3は、上記メタルマスク2の周縁部を固定して支持するもので、例えばインバー又はインバー合金等から成る磁性金属部材で形成されており、上記メタルマスク2の複数列の貫通孔5を内包する大きさの開口6を有する枠状を成している。なお、フレームは、金属フレーム3に限られず、硬質樹脂から成るものであってもよいが、本実施形態においては、フレームは金属フレーム3である。
【0019】
次に、このように構成された成膜マスクの製造方法について説明する。
先ず、厚みが30μm〜50μm程度の例えばインバー又はインバー合金等の磁性金属材料のシートから、基板のサイズに合わせて予め定められた所定サイズのメタルシートが切り出される。
【0020】
次に、上記メタルシートの一面に例えばポリイミド等の樹脂液を塗布した後、これを200℃〜300℃程度の温度で硬化させて厚みが10μm〜30μm程度のフィルムを形成する。上記フィルムは、可視光を透過するものでも又は可視光を不透過のものであってもよく、特に限定されない。
【0021】
次いで、メタルシートの他面にフォトレジストを例えばスプレー塗布した後、これを乾燥させてレジストフィルムを形成し、次に、フォトマスクを使用してレジストフィルムを露光した後、現像し、複数列の貫通孔5の形成位置に対応させてスリット状の複数列の開口部を設けたレジストマスクを形成する。
【0022】
続いて、上記レジストマスクを使用して上記メタルシートをウェットエッチングし、レジストマスクの上記開口部に対応した部分のメタルシートを除去してスリット状の複数列の貫通孔5を設けてメタルマスク2を形成した後、レジストマスクを例えば有機溶剤に溶解させて除去する。これにより、メタルマスク2と樹脂製のフィルムとを積層したマスク用部材が形成される。なお、メタルシートをエッチングするためのエッチング液は、使用するメタルシートの材料に応じて適宜選択され、公知の技術を適用することができる。
【0023】
また、メタルシートをエッチングして貫通孔5を形成する際に、複数列の貫通孔5の形成領域外の予め定められた位置に基板に予め設けられた基板側アライメントマークに対して位置合わせするための、図1(a)に示すマスク側アライメントマーク用の貫通孔25を同時に形成してもよい。この場合、レジストマスクを形成する際に、上記貫通孔25に対応した位置にアライメントマーク用の開口部を設けるとよい。
【0024】
マスク用部材は上記方法によらず、他の方法で形成してもよい。例えば、フィルムの一面にシード層を例えば無電解めっきにより形成し、その上にフォトレジストを塗布してこれを露光及び現像し、複数列の貫通孔5の形成位置に対応させて複数列の島パターンを形成した後、該島パターンの外側領域にニッケル、ニッケル合金、インバー又はインバー合金等の磁性金属材料をめっき形成する。そして、島パターンを除去した後、該島パターンの形成位置のシード層をエッチングして除去することによりマスク用部材を形成してもよい。
【0025】
次いで、マスク用部材は、メタルマスク2側を金属フレーム3側として金属フレーム3の一端面に架張して固定される。マスク用部材の金属フレーム3への固定は、マスク用部材の周縁領域にフィルムマスク1側からレーザ光を照射してメタルマスク2と金属フレーム3とをスポット溶接して行うとよい。
【0026】
続いて、本発明の特徴である開口パターン形成工程に移る。この開口パターン形成工程は、メタルマスク2側からレーザ光Lを照射してメタルマスク2の複数列の貫通孔5内のフィルムに夫々一列に並べて複数の開口パターン4を形成する工程である。
【0027】
先ず、開口パターン形成工程において使用するレーザ加工装置について、図2を参照して説明する。
上記レーザ加工装置は、XYステージ7と、該XYステージ7の上方に、レーザ光Lの進行方向の上流から下流に向かってレーザ光源8と、カップリング光学系9と、ビーム整形用マスク10と、結像レンズ11と、対物レンズ12とをこの順に備えている。また、対物レンズ12から結像レンズ11に向かう光路がハーフミラー13で分岐された光路上には、撮像カメラ14が配置され、対物レンズ12から結像レンズ11に向かう光路が、400nm以下のレーザ光Lを透過し、可視光を反射するダイクロイックミラー15で分岐された光路上には、照明光源16が配置されている。
【0028】
ここで、XYステージ7は、上面にマスク用部材17を載置してXY平面に平行な面内をXY方向に移動するもので、図示省略の制御装置によって制御されて、予め入力して記憶された移動量だけステップ移動するようになっている。
【0029】
上記レーザ光源8は、波長が400nm以下のレーザ光Lを発生する、例えばKrF248nmのエキシマレーザや、1064nmの第3高調波や第4高調波のレーザ光Lを放射するYAGレーザである。
【0030】
また、上記カップリング光学系9は、レーザ光源8から放射されたレーザビームを拡張するビームエキスパンダと、レーザ光Lの輝度分布を均一にして後述のビーム整形用マスク10に照射するフォトインテグレータ及びコンデンサレンズを含むものである。
【0031】
上記ビーム整形用マスク10は、マスク用部材17に照射されるレーザ光Lを、形成しようとする開口パターン4に相似形の断面形状を有するレーザビームに整形して射出するもので、開口パターン4に相似形の複数の透光窓18を、図1(a)に破線で囲って示す予め定められた単位領域内に位置する複数の開口パターン4の配列ピッチに対して、予め定められた拡大倍率で配置して備えたもので、透明なガラス基板や石英基板に被着させたクロム(Cr)等の遮光膜に上記透光窓18を形成したものである。
【0032】
詳細には、上記ビーム整形用マスク10は、開口パターン4に相似形の透光窓18を有し、該透光窓18の外側の、少なくとも一対辺の側方領域における光透過率を、上記透光窓18の縁部から側方に向かって漸減させた構成を有している。
【0033】
より詳細には、上記ビーム整形用マスク10は、図3(a)に示すように、透光窓18の、Y軸方向に対応した対辺の側方領域の遮光膜19に透光窓18の縁部から側方に向かって遮光部と透光部とが交互に設けられると共に、同図(b)に一部拡大して示すように遮光部の幅を透光窓18の縁部から離れるに従って徐々に広げることにより、Y軸方向(基板搬送方向と交差する方向に該当)に対応した対辺の側方領域における光透過率が透光窓18の縁部から離れるに従って段階的に減じるように、同図(c)に示すように光透過率にグラデーションを持たせている。これにより、同図(d)に示すように、フィルム20に照射されるレーザ光Lの光強度は、開口パターン4に対応した中央領域が最も強く、開口パターン4の縁部から側方に離れるに従って漸減する。
【0034】
なお、透光窓18の上記側方領域の光透過率を漸減させる方法としては、上述のように遮光膜19に遮光部と透光部とを交互に設けるものに限られず、対応領域の遮光膜19をハーフトーンにしてもよい。
【0035】
上記結像レンズ11は、後述の対物レンズ12と協働してビーム整形用マスク10に形成された複数の透光窓18をフィルム上に予め定められた倍率で縮小投影するもので集光レンズである。
【0036】
また、上記対物レンズ12は、上記結像レンズ11と協働してビーム整形用マスク10に形成された複数の透光窓18をフィルム上に予め定められた倍率で縮小投影すると共に、例えばマスク用部材17の金属フレーム3とは反対側に配置され、レーザ光Lの照射の位置決め基準となる基準パターンを設けた透明な基準基板21(図2参照)の上記基準パターンの像を取り込んで後述の撮像カメラ14により撮影可能とするものである。そして、対物レンズ12の結像位置とビーム整形用マスク10とは共役の関係を成している。
【0037】
上記撮像カメラ14は、基準基板21に設けられた上記基準パターンを撮影するものであり、例えば2次元画像を撮影するCCDカメラやCMOSカメラ等である。そして、対物レンズ12の結像位置と撮像カメラ14の撮像面とは共役の関係を成している。
【0038】
上記照明光源16は、可視光を放射する例えばハロゲンランプ等であり、撮像カメラ14の撮像領域を照明して撮像カメラ14による撮影を可能にさせるものである。
【0039】
なお、図2において、符号22は、対物レンズ12と協働して基準基板の基準パターンの像やレーザ加工により形成される開口パターン4の像等を撮像カメラ14の撮像面に結像させる結像レンズであり、符号23は、リレーレンズ、符号24は全反射ミラーである。
【0040】
次に、このように構成されたレーザ加工装置を使用して行う開口パターン形成工程について説明する。
先ず、上記基準パターンを形成した基準基板21の基準パターンを形成した面とは反対側の面21aにマスク用部材17のフィルムを対向させた状態で、マスク用部材17と上記基準基板21とを図示省略のアライメントマークを使用して位置決めした後、フィルム20を基準基板21の上記面21aに密着させる。
【0041】
次に、図2に示すように、一体化された上記マスク用部材17と上記基準基板21とをマスク用部材17をレーザ光Lの照射側として、XYステージ7上に位置決めし、載置する。
【0042】
次いで、XYステージ7が移動して対物レンズ12がマスク用部材17のレーザ加工開始位置に位置付けられる。詳細には、撮像カメラ14により、レーザ加工開始位置の単位領域の例えば中心位置に対応して上記基準基板21に設けられた基準パターンを撮影し、該基準パターンを撮像中心に位置付ける。なお、この撮像中心は、対物レンズ12の光軸に合致している。
【0043】
続いて、レーザ加工装置の光学ユニットを対物レンズ12の光軸に沿って予め定められた距離だけZ軸方向に上昇させ、対物レンズ12の結像位置をマスク用部材17のフィルムと上記基準基板21との界面に位置付ける。
【0044】
引き続いて、レーザ光源8が起動されてパルス発振し、複数ショットのレーザビームが放射される。放射されたレーザビームは、カップリング光学系9により拡張され、強度分布が均一にされたレーザ光Lとなってビーム整形用マスク10に照射する。
【0045】
ビーム整形用マスク10に照射したレーザ光Lは、該ビーム整形用マスク10の複数の透光窓18を透過することにより断面形状が開口パターン4の形状と相似形に整形されて、複数のレーザ光Lとなってビーム整形用マスク10を射出する。そして、対物レンズ12により、フィルム20上に集光される。
【0046】
この場合、図4(a)に示すような、透光窓18の外側が遮光膜19で遮光された従来技術のビーム整形用マスク10により整形されたレーザ光Lは、同図(b)に太い実線で示すように、X(及びY)軸方向の光強度分布が略均一であるため、このようなレーザ光Lによりフィルム20に加工される開口パターン4の対向側壁4aは、同図(b)に示すようにレーザ光Lの照射側(成膜源側に相当)とは反対側のフィルム面(マスク面)20aに対して70°〜80°の急峻な傾き角度(大きい傾き角度)を有するものとなる。
【0047】
一方、本発明においては、図3(a)に示すように、上記透光窓18のY軸方向(メタルマスク2の貫通孔5の長軸方向に相当)に対応して対向する対辺の側方領域は、前述したように、光透過率が透光窓18の縁部から側方に向かって漸減するように形成されているため、ビーム整形用マスク10を射出したレーザ光LのY軸方向の光強度分布は、同図(d)に太い実線で示すように、開口パターン4に対応した中央領域が強く、開口パターン4の縁部に対応した位置から外側に向かって強度が漸減するものとなる。したがって、上記のようなレーザ光Lによりフィルム20に加工される開口パターン4の対向側壁4aは、同図に示すようにレーザ光Lの照射側(成膜源側に相当)とは反対側のフィルム面(マスク面)20aに対して25°〜30°の浅い傾き角度(小さい傾き角度)を有するものとなる。
【0048】
この場合、図3(a)に示すように、上記透光窓18のX軸方向に対応して対向する対辺の側方領域は、光透過率のグラデーション処理が施されていないため、同方向の光強度分布は均一であり、加工された開口パターン4の同方向に対向する側壁の傾き角度は、従来技術と同じように、レーザ光Lの照射側とは反対側のフィルム面20aに対して70°〜80°となる。
【0049】
レーザ加工開始位置の単位領域に複数の開口パターン4が形成されると、XYステージ7がX又はY軸方向に予め定められた距離だけステップ移動し、2番目の単位領域、3番目の単位領域…と、各単位領域に順繰りに複数の開口パターン4がレーザ加工される。こうして、フィルム20の予め定められた所定位置に複数の開口パターン4がレーザ加工され、フィルムマスク1が形成される。
【0050】
この場合、前述したように、撮像カメラ14により、レーザ加工開始位置の単位領域の例えば中心位置に対応して上記基準基板21に設けられた基準パターンを撮影し、その位置を確認した後、該基準パターンの位置を基準にしてXYステージ7をX,Y軸方向にステップ移動しながら複数の開口パターン4を形成する。その際、XYステージ7の機械精度に基づいて予め定められた距離だけステップ移動しながら各単位領域に複数の開口パターン4を形成してもよいが、各単位領域の中心位置に対応して基準基板21に設けられた基準パターンを撮像カメラ14で撮影し、該基準パターンに撮像カメラ14の例えば撮像中心(対物レンズ12の光軸に一致)を位置決めした後、複数の開口パターン4をレーザ加工してもよい。
【0051】
又は、マスク側アライメントマーク用の貫通孔25(図1参照)内に、予めマスク側アライメントマークをレーザ加工した後、該マスク側アライメントマークを基準にして、XYステージ7をX又はY軸方向に予め定められた距離だけステップ移動しながら、各単位領域に複数の開口パターン4を形成してもよい。
【0052】
次に、本発明の成膜マスクを使用して行う成膜について説明する。ここでは、一例として蒸着装置に適用した場合について説明する。なお、ここで説明する蒸着装置は、基板を一定方向に搬送しながら薄膜パターンを蒸着形成するものである。
【0053】
先ず、真空チャンバー内に移動可能に設けられた基板ホルダーに基板が設置される。さらに、上記基板上に成膜マスクがフィルムマスク1側を基板側として設置される。このとき、真空チャンバー内に設けられたカメラにより、基板の基板側アライメントマークと成膜マスクに設けられたマスク側アライメントマークとが撮影され、両マークが予め定められた所定の位置関係となるように基板と成膜マスクが位置決めされる。その後、基板ホルダーに内蔵された磁石の磁力を成膜マスクのメタルマスク2に作用させてメタルマスク2を吸引し、フィルムマスク1を基板の成膜面に密着させる。
【0054】
次に、真空チャンバー内の真空度が予め定められた所定値となるまで真空引きされた後、基板ホルダーが成膜マスクを構成するメタルマスク2の貫通孔5の長軸と交差する方向(X軸方向又は矢印A方向)に、基板及び成膜マスクと一体的に一定速度で移動を開始する。同時に、蒸着源26(図5〜7参照)が加熱されて蒸着が開始される。なお、図5〜7においては、説明の便宜から蒸着源26を成膜マスクの上方に配置した状態で示しているが、実際の蒸着装置においては、蒸着源26が成膜マスクの下側に配置される。
【0055】
上記のような基板を移動しながら蒸着する蒸着装置の蒸着源26は、一般に、基板の移動方向(相対的に蒸着源26が移動する方向であり、矢印A方向又はX軸方向に相当)と交差する方向(Y軸方向)に複数の単位蒸着源26aを並べて配置した構造を有しており(例えば、図5(b)参照)、蒸着源26の相対移動方向(矢印A方向)の両サイドには、遮蔽板27が備えられている(例えば、図5(a)参照)。したがって、同方向の蒸着粒子の最小発散角度θtは、上記遮蔽板27によって、蒸着源26の開口面(対向する成膜マスクのマスク面に平行な面)に対して略70°〜80°に制限される。一方、蒸着源26を構成する各単位蒸着源26aの相対移動方向と交差する側(Y軸方向)には、上記遮蔽板27がないため(例えば、図5(b)参照)、同方向の蒸着粒子の最小発散角度θeは、蒸着源26の開口面に対して略20°〜30°と浅い角度となる。
【0056】
したがって、開口パターン4の側壁の傾き角度を任意に制御することができない、従来のメタルマスク2のみで構成した成膜マスクを使用した場合には、図5(a)に示すように、矢印Aで示す蒸着源26の相対移動方向の蒸着粒子の最小発散角度θtが略70°〜80°に制限されているため、開口パターン4の同方向の対向側壁4aの傾き角度が70°〜80°と急峻であっても、同方向の対向側壁4aが蒸着のシャドウとならず、同方向における蒸着膜の膜厚分布は、略均一になる。
【0057】
しかしながら、図5(b)に示すように、矢印Aで示す蒸着源26の相対移動方向と交差する方向(Y軸方向)の蒸着粒子の最小発散角度θeは制限されないため、蒸着粒子が略20°〜30°の浅い角度で成膜マスクに入射する。したがって、同方向の開口パターン4の対向側壁4aが蒸着のシャドウとなり、同方向における蒸着膜の膜厚分布が不均一になる。即ち、蒸着膜の同方向の両端部における膜厚が薄くなる。
【0058】
また、図4(a)に示すような従来のビーム整形用マスク10を使用して開口パターン4がレーザ加工されたフィルムマスク1を有する成膜マスクの場合も同様に、図6(a)に示すように、矢印Aで示す蒸着源26の相対移動方向(X軸方向)の蒸着粒子の最小発散角度θtが略70°〜80°に制限されているため、同方向の開口パターン4の対向側壁4aの傾き角度が70°〜80°と急峻であっても、同方向の対向側壁4aが蒸着のシャドウとならず、同方向における蒸着膜の膜厚分布は、略均一になる。
【0059】
しかしながら、図6(b)に示すように、矢印Aで示す蒸着源26の相対移動方向と交差する方向(Y軸方向)の蒸着粒子の最小発散角度θeは制限されていないため、蒸着粒子が略20°〜30°の浅い角度で成膜マスクに入射する。したがって、同方向の開口パターン4の対向側壁4aが蒸着のシャドウとなり、同方向における蒸着膜の膜厚分布が不均一になる。即ち、蒸着膜の同方向の両端部における膜厚が薄くなる。
【0060】
一方、本発明による成膜マスクによれば、図7(a)に示すように、矢印Aで示す蒸着源26の相対移動方向の両サイドの対向側壁の傾き角度は、従来の成膜マスクと同様に、70°〜80°と急峻であるが、同方向の蒸着粒子の最小発散角度θtが略70°〜80°に制限されているため、従来技術と同様に、同方向の開口パターン4の対向側壁4aが蒸着のシャドウとならず、同方向における蒸着膜の膜厚分布は、略均一になる。
【0061】
さらに、本発明による成膜マスクは、図7(b)に示すように、矢印Aで示す蒸着源26の相対移動方向と交差する方向(Y軸方向)の開口パターン4の対向側壁4aの傾き角度が、蒸着源26側とは反対側のフィルム面20aに対して25°〜30°の浅い角度で形成されているため、同方向の開口パターン4の対向側壁4aが矢印Aで示す蒸着源26の相対移動方向と交差する方向(Y軸方向)から25°〜30°の浅い角度で成膜マスクに入射する蒸着粒子に対して蒸着のシャドウとならない。したがって、同方向における蒸着膜の膜厚分布も略均一になる。
【0062】
図8は本発明による成膜マスクの製造方法において、開口パターン4のレーザ加工の変形例を示す工程図である。
先ず、図3(a)に示すような、レーザ光Lが透過する透光窓18を有し、該透光窓18の外側の、少なくとも一対辺の側方領域における光透過率を、透光窓18の縁部から側方に向かって漸減させたビーム整形用マスク(第1のビーム整形用マスク)10を使用して整形された第1のレーザ光L1を開口パターン形成部に対応したフィルム20の部分に照射し、図8(a)に示すように予め定められた所定深さの凹部28を形成する。
【0063】
その後、図4(a)に示すような、開口パターン4に相似形の透光窓18を有し、該透光窓18の外側が遮光されたビーム整形用マスク(第2のビーム整形用マスク)10を使用して整形された第2のレーザ光L2を、図8(b)に示すように上記凹部28の底部28aにて、開口パターン4の形成部に対応したフィルム20の部分に照射し、貫通開口29を形成する。こうして、図8(c)に示すように、フィルム20の少なくともレーザ光Lの照射面側に、レーザ光Lの照射側に向かって広がる少なくとも1対の対向側壁4aを有する開口パターン4を形成することができる。
【0064】
この場合、図8(c)に示すように、凹部28の底面積が上記貫通開口29の開口面積よりも広くなるように第1のビーム整形用マスク10の透光窓18を形成すれば、第1のレーザ光L1の照射位置が予め定められた所定位置よりもΔdだけずれた場合にも、貫通開口29を上記凹部28内の上記所定位置に形成することができる(図8(a),(b)参照)。したがって、凹部28の形成位置精度は、貫通開口29の形成位置精度よりも低くてよい。
【0065】
なお、上記実施形態においては、フィルムマスク1とメタルマスク2とを積層した積層体をフレームに固定した成膜マスクについて説明したが、本発明はこれに限られず、フレームは無くてもよい。さらに、フィルムマスク1又はメタルマスク2のみであってもよく、上記フィルムマスク1又はメタルマスク2をフレームに固定したものであてもよい。
【0066】
また、上記実施形態においては、蒸着装置に適用される成膜マスクについて説明したが、本発明はこれに限られず、スパッタリング装置や他の成膜装置に適用されるものであってもよい。
【0067】
さらに、本発明は、当業者にとって本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で様々な置換、変形及び変更が可能であり、前述の実施形態及び添付された図によって限定されるものではない。
【符号の説明】
【0068】
1…フィルムマスク
2…メタルマスク
3…金属フレーム
4…開口パターン
4a…対向側壁
5…貫通孔
10…ビーム整形用マスク
18…透光窓
20…フィルム
20a…フィルム面(マスク面)
28…凹部
29…貫通開口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8