特許第6357331号(P6357331)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6357331
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】オレフィン重合用触媒
(51)【国際特許分類】
   C08F 4/6592 20060101AFI20180702BHJP
   C08F 4/76 20060101ALI20180702BHJP
   C08F 10/00 20060101ALI20180702BHJP
【FI】
   C08F4/6592
   C08F4/76
   C08F10/00 510
【請求項の数】5
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2014-63753(P2014-63753)
(22)【出願日】2014年3月26日
(65)【公開番号】特開2015-183174(P2015-183174A)
(43)【公開日】2015年10月22日
【審査請求日】2017年3月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
(72)【発明者】
【氏名】中村 達也
(72)【発明者】
【氏名】金子 英之
【審査官】 久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−139617(JP,A)
【文献】 特開2005−306990(JP,A)
【文献】 特開2004−210923(JP,A)
【文献】 特開平10−259212(JP,A)
【文献】 特開平11−310607(JP,A)
【文献】 特開2004−217926(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 4/64−4/82
C08F 10/00−10/14
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
含フッ素有機化合物(F)、固体状有機アルミニウムオキシ化合物(B)、および遷移金属錯体(C)を含み、かつ下記(i)、(ii)、および(iii)から選ばれる少なくとも1つの要件を満たすことを特徴とする、オレフィン重合用触媒であり、
上記遷移金属錯体(C)が、下記一般式(4)または(5)で表される化合物であるオレフィン重合用触媒。
【化1】
【化2】
(上記式(4)および(5)中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、およびR14は水素、炭化水素基、またはケイ素含有炭化水素基であり、それぞれ同一でも異なっていてもよく、R1からR4までの隣接した基同士は互いに結合して環を形成してもよく、R5〜R12までの隣接した基同士は互いに結合して環を形成してもよく、Aは一部不飽和結合および/または芳香族環を含んでいてもよい炭素原子数2〜20の2価の炭化水素基であり、AはYと共に形成する環を含めて2つ以上の環構造を含んでいてもよく、Mは周期表第4族から選ばれた金属であり、Yは炭素またはケイ素であり、Qはハロゲン、炭化水素基、アニオン配位子または孤立電子対で配位可能な中性配位子であり、jは1〜4の整数であり、Qが2以上の場合には、Qは同一でも異なっていてもよい。)
(i)含フッ素有機化合物(F)がホウ素を含有しない化合物(A)であり、該化合物(A)が、ペンタフルオロフェノール、2,3,5,6−テトラフルオロフェノール、2,4,6−トリフルオロフェノール、2,3−ジフルオロフェノール、2,4−ジフルオロフェノール、2,5−ジフルオロフェノール、2,6−ジフルオロフェノール、3,4−ジフルオロフェノール、3,5−ジフルオロフェノール、2−フルオロフェノール、3−フルオロフェノール、4−フルオロフェノール、2−トリフルオロメチルフェノール、3−トリフルオロメチルフェノール、および4−トリフルオロメチルフェノールからなる群より選ばれる少なくとも1つのフッ素化フェノール類であり、該化合物(A)と、固体状有機アルミニウムオキシ化合物(B)とを接触させて得られる変性有機アルミニウムオキシオレフィン重合用固体触媒成分に、遷移金属錯体(C)を接触させてオレフィン重合用触媒を得る。
(ii)含フッ素有機化合物(F)がホウ素含有化合物(A')であり、該化合物(A')と、遷移金属錯体(C)とを接触させて得られるオレフィン重合触媒成分に、固体状有機アルミニウムオキシ化合物(B)を接触させてオレフィン重合用触媒を得る。
(iii)固体状有機アルミニウムオキシ化合物(B)と、遷移金属錯体(C)とを接触させて得られる有機アルミニウムオキシオレフィン重合用固体触媒に、含フッ素有機化合物(F)としてホウ素含有化合物(A')を接触させてオレフィン重合用触媒を得る。
【請求項2】
前記含フッ素有機化合物(F)が、固体状有機アルミニウムオキシ化合物(B)中のアルミニウム原子に対して0.2モル%以上20モル%以下の量で含まれることを特徴とする、請求項1に記載のオレフィン重合用触媒。
【請求項3】
前記固体状有機アルミニウムオキシ化合物(B)が、固体状メチルアルミノキサンであることを特徴とする、請求項1または2に記載のオレフィン重合用触媒。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のオレフィン重合用触媒を用いることを特徴とする、オレフィン重合体の製造方法。
【請求項5】
オレフィン重合体の製造が、懸濁液中、溶液中、または気相中で行われることを特徴とする、請求項に記載のオレフィン重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の成分を含むオレフィン重合用触媒およびそれを用いたオレフィン重合体の製造方法に関する。さらに詳しくは、含フッ素有機化合物で変性された固体状有機アルミニウムオキシ化合物を含むオレフィン重合用触媒、および、それを用いたオレフィン重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から高い重合活性でオレフィン重合体またはオレフィン共重合体を製造することのできる触媒として、ジルコノセンなどの遷移金属化合物と有機アルミニウムオキシ化合物(アルミノキサン)とからなるオレフィン重合触媒が知られている。
【0003】
また、触媒、および、ポリマーの粒子形状を制御するとともに反応器への付着を抑制するために遷移金属化合物およびアルミノキサンの少なくとも一方の成分をシリカ、アルミナ、シリカ-アルミナなどの多孔性無機酸化物担体に担持させた触媒を用いて、懸濁重合系または気相重合系においてオレフィンを重合する方法も知られている。これらの方法により粒子性状に優れたオレフィン重合体を得ることができる。
【0004】
さらに、固体触媒成分当たりの重合活性は助触媒であるアルミノキサンのシリカへの担持量を増やすことで向上する傾向となることが知られている。特許文献1には、小粒径で表面積の大きな粒子状担体を用いることにより、担体上にアルミノキサンを多量担持することを可能とした方法が提案されている。また特許文献2には、シリカを用いずにアルミノキサンのみからなる固体状アルミノキサンを合成し、粒子性状と重合活性の向上を両立させる方法が提案されている。
【0005】
しかしながらアルミノキサンは高価であることから、さらに高い重合活性を発現できる担持触媒系が望まれている。
例えば、フッ素化合物をシリカ担持アルミノキサンに添加することで活性が向上することが報告されている(特許文献3、4、5)。これは、遷移金属化合物の中心金属のルイス酸性度を向上させることで活性が向上するためと考えられる。しかしながら、これら変性シリカ担持アルミノキサンでは未だ工業的利用には触媒活性が不十分であり、さらに高い重合活性を発現できる担持触媒系が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−238520号公報
【特許文献2】WO2010/055652
【特許文献3】特許第3959132号
【特許文献4】特許第4783739号
【特許文献5】特表2009-543937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、かかる従来技術の状況において、重合活性を向上できるオレフィン重合用固体触媒成分を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、上記問題を解決するために種々の検討を行った。その結果、含フッ素有機化合物が含まれるオレフィン重合用触媒を用いることで上記課題を解決できることを見出し、本発明の完成に至った。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[6]に関する。
[1] 含フッ素有機化合物(F)、固体状有機アルミニウムオキシ化合物(B)、および遷移金属錯体(C)を含み、かつ下記(i)、(ii)、および(iii)から選ばれる少なくとも1つの要件を満たすことを特徴とする、オレフィン重合用触媒。
(i)含フッ素有機化合物(F)がホウ素を含有しない化合物(A)であり、該化合物(A)と、固体状有機アルミニウムオキシ化合物(B)とを接触させて得られる変性有機アルミニウムオキシオレフィン重合用固体触媒成分に、遷移金属錯体(C)を接触させてオレフィン重合用触媒を得る。
(ii)含フッ素有機化合物(F)がホウ素含有化合物(A')であり、該化合物(A')と、遷移金属錯体(C)とを接触させて得られるオレフィン重合触媒成分に、固体状有機アルミニウムオキシ化合物(B)を接触させてオレフィン重合用触媒を得る。
(iii)固体状有機アルミニウムオキシ化合物(B)と、遷移金属錯体(C)とを接触させて得られる有機アルミニウムオキシオレフィン重合用固体触媒に、含フッ素有機化合物(F)としてホウ素含有化合物(A')を接触させてオレフィン重合用触媒を得る。
【0010】
[2]前記含フッ素有機化合物(F)が、固体状有機アルミニウムオキシ化合物(B)中のアルミニウム原子に対して0.2モル%以上20モル%以下の量で含まれることを特徴とする、[1]に記載のオレフィン重合用触媒。
【0011】
[3]前記固体状有機アルミニウムオキシ化合物(B)が、固体状メチルアルミノキサンであることを特徴とする、[1]または[2]に記載のオレフィン重合用触媒。
[4]前記遷移金属錯体(C)の中心金属が周期表の第4族から選ばれることを特徴とする、請求項[1]〜[3]のいずれか1項に記載のオレフィン重合用触媒。
【0012】
[5][1]〜[4]のいずれか1項に記載のオレフィン重合用触媒を用いることを特徴とする、オレフィン重合体の製造方法。
[6]オレフィン重合体の製造が、懸濁液中、溶液中、または気相中で行われることを特徴とする、[5]に記載のオレフィン重合体の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、工業的に利用しやすいアルミノキサンであるメチルアルミノキサンを用いて得られる、高い重合活性を発現するオレフィン重合用触媒、および該触媒を用いたオレフィン重合体の製造方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係るオレフィン重合用触媒、およびそれを用いたオレフィンの重合方法について具体的に説明する。
なお、本発明において「重合」という語は、単独重合のみならず、共重合を包含した意味で用いられることがあり、「重合体」という語は単独重合体のみならず、共重合体を包含した意味で用いられることがある。
【0015】
<含フッ素有機化合物(F)>
本発明で用いる含フッ素有機化合物は、ホウ素を含有しない含フッ素有機化合物(A)と、ホウ素を含有する含フッ素有機化合物(A’)とに大別される。
【0016】
<ホウ素を含有しない含フッ素有機化合物(A)>
本発明で用いるホウ素を含有しない含フッ素有機化合物(A)としては、例えば、α,α,α−トリフルオロトルエン、α,α−ジフルオロトルエン、α−フルオロトルエン、オクタフルオロトルエン、1,2−ジ(フルオロメチル)ベンゼン、1,3−ジ(フルオロメチル)ベンゼン、1,4−ジ(フルオロメチル)ベンゼン、1,2−ビス(ジフルオロメチル)ベンゼン、1,3−ビス(ジフルオロメチル)ベンゼン、1,4−ビス(ジフルオロメチル)ベンゼン、1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1,3,5−トリス(トリフルオロメチル)ベンゼン、4−メチル−1−(トリフルオロメチル)ベンゼン、3−メチル−1−(トリフルオロメチル)ベンゼン、1,3−ビス(トリフルオロメチル)−4メチルベンゼン、1,4−ビス(トリフルオロメチル)−2−メチルベンゼン、1−エチル−3,5−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1−イソプロピル−4−(トリフルオロメチル)ベンゼン、1−(フルオロメチル)−4−フルオロ−2−(トリフルオロメチル)ベンゼン、1−(フルオロメチル)−2,4−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1−(1−フルオロエチル)ベンゼン、1,2−ジフルオロエチルベンゼン、3,3’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、4,4’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、2,2’−ビス(フルオロメチル)ビフェニル、3−(ジフルオロメチル)ビフェニル、1−(トリフルオロメチル)ナフタレン、2−(トリフルオロメチル)ナフタレン、1−(ジフルオロメチル)ナフタレン、2−(ジフルオロメチル)ナフタレン、1−(フルオロメチル)ナフタレン、1,8−ビス(フルオロメチル)ナフタレン、1−(フルオロメチル)−2−(メチル)ナフタレン、1−イソブチル−2−トリフルオロメチル−ナフタレン、1−メチル−4−トリフルオロメチル−ナフタレン、1−n−ブチル−5−トリフルオロメチル−ナフタレン、1−(トリフルオロメチル)アントラセン、2−(ジフルオロメチル)アントラセン、9−(フルオロメチル)アントラセン、9,10−ビス(トリフルオロメチル)アントラセン、9−(トリフルオロメチル)フェナントレン、トリフェニルフルオロメタン、ジフルオロジフェニルメタン、2−メチル−2−フルオロプロパン)、3−メチル−3−フルオロペンタン、3−メチル−3−フルオロヘキサン、1−メチル−1−フルオロシクロヘキサン、1,3−ジフルオロ−1,3,5−メチルシクロオクタン、2−メチル−2−フルオロヘプタン、1,2−ジフルオロ−1−メチルシクロオクタンなどの極性官能基を含まない化合物が挙げられる。これらの中でも、α,α,α−トリフルオロトルエンが好ましい。
【0017】
ホウ素を含有しない含フッ素有機化合物(A)であり、極性官能基をあわせて有する化合物としては、例えば、ペンタフルオロフェノール、2,3,5,6−テトラフルオロフェノール、2,4,6−トリフルオロフェノール、2,3−ジフルオロフェノール、2,4−ジフルオロフェノール、2,5−ジフルオロフェノール、2,6−ジフルオロフェノール、3,4−ジフルオロフェノール、3,5−ジフルオロフェノール、2−フルオロフェノール、3−フルオロフェノール、4−フルオロフェノール、2−トリフルオロメチルフェノール、3−トリフルオロメチルフェノール、4−トリフルオロメチルフェノール等のフッ素化フェノール類、ペンタフルオロベンズアミド、ペンタフルオロアニリン、ペンタフルオロ安息香酸、ペンタフルオロベンジルアルコール、ペンタフルオロチオフェノール、2,2,2−トリフルオロエチルアルコール、1H,1H−ペンタフルオロ−1−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロピルアルコール、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ペンタクロロフェノール、ペンタブロモフェノール、2−クロロ−4−フルオロフェノール、2−ブロモ−4−フルオロフェノール、2−ブロモ−4,5−ジフルオロフェノール、テトラフルオロカテコール、テトラフルオロハイドロキノンなどが挙げられる。これらの中でも、フッ素化フェノール類が好ましく、ペンタフルオロフェノールがより好ましい。
【0018】
<ホウ素を含有する含フッ素有機化合物(A')>
本発明で用いるホウ素を含有する含フッ素有機化合物(A’)としては、例えば、トリス(4−フルオロフェニル)ボロン、トリス(3,5−ジフルオロフェニル)ボロン、トリス(4−フルオロメチルフェニル)ボロン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボロンなどが挙げられる。。これらの中でも、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボロンが好ましい。
【0019】
また、ホウ素を含有する含フッ素有機化合物(A’)として、イオン性化合物も用いることができる。該イオン性化合物としては、下記一般式(1)で表される化合物が挙げられる。
【0020】
【化1】
上記式(1)中、Re+は、H+、カルベニウムカチオン、オキソニウムカチオン、アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、シクロヘプチルトリエニルカチオン、または遷移金属を有するフェロセニウムカチオンであり、Rf、Rg、RhおよびRiは、それぞれ独立してフッ素含有アリール基である。
【0021】
上記カルベニウムカチオンとしては、例えば、トリフェニルカルベニウムカチオン、トリス(メチルフェニル)カルベニウムカチオン、トリス(ジメチルフェニル)カルベニウムカチオン等の三置換カルベニウムカチオンなどが挙げられる。
【0022】
上記アンモニウムカチオンとしては、例えば、トリメチルアンモニウムカチオン、トリエチルアンモニウムカチオン、トリ(n−プロピル)アンモニウムカチオン、トリイソプロピルアンモニウムカチオン、トリ(n−ブチル)アンモニウムカチオン、トリイソブチルアンモニウムカチオン、ジ(n−オクタデシル)メチルアンモニウムカチオン等のトリアルキルアンモニウムカチオン;N,N−ジメチルアニリニウムカチオン、N,N−ジエチルアニリニウムカチオン、N,N,2,4,6−ペンタメチルアニリニウムカチオン等のN,N−ジアルキルアニリニウムカチオン;ジイソプロピルアンモニウムカチオン、ジシクロヘキシルアンモニウムカチオン等のジアルキルアンモニウムカチオンなどが挙げられる。これらアンモニウムカチオンの中でも、アリール基または高級アルキル基を有するアンモニウムカチオンが好ましく、ジ(n−オクタデシル)メチルアンモニウムカチオン;N,N−ジメチルアニリニウムカチオン、N,N−ジエチルアニリニウムカチオン、N,N,2,4,6−ペンタメチルアニリニウムカチオン等のN,N−ジアルキルアニリニウムカチオンがより好ましい。
【0023】
上記ホスホニウムカチオンとしては、例えば、トリフェニルホスホニウムカチオン、トリス(メチルフェニル)ホスホニウムカチオン、トリス(ジメチルフェニル)ホスホニウムカチオンなどのトリアリールホスホニウムカチオンなどが挙げられる。
【0024】
e+としては、カルベニウムカチオン、アンモニウムカチオンが好ましく、トリフェニルカルベニウムカチオン、N,N−ジメチルアニリニウムカチオン、N,N−ジエチルアニリニウムカチオンが特に好ましい。
上記一般式(1)で表される化合物のうち、例えば、下記化合物が挙げられる。
【0025】
1.Re+がカルベニウムカチオンの場合(カルベニウム塩)
上記一般式(1)で表される化合物であるカルベニウム塩としては、例えば、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルベニウムテトラキス(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリス(4−メチルフェニル)カルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリス(3,5−ジメチルフェニル)カルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどが挙げられる。
【0026】
2.Re+がアンモニウムカチオンの場合(アンモニウム塩)
アンモニウム塩としては、トリアルキルアンモニウム塩、N,N−ジアルキルアニリニウム塩、ジアルキルアンモニウム塩などが例示できる。
【0027】
上記一般式(1)で表される化合物であるトリアルキルアンモニウム塩としては、例えば、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリエチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(n−プロピル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラキス(4−トリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラキス(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、ジ(オクタデシル)メチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジ(オクタデシル)メチルアンモニウムテトラキス(4−トリフルオロメチルフェニル)ボレート、ジ(オクタデシル)メチルアンモニウムテトラキス(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレートなどが挙げられる。
【0028】
上記一般式(1)で表される化合物であるN,N−ジアルキルアニリニウム塩としては、例えば、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、N,N−ジエチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N,2,4,6−ペンタメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートが例示される。
【0029】
ジアルキルアンモニウム塩としては、具体的には、ジイソプロピルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどが挙げられる。これらN,N−ジアルキルアニリニウム塩の中でも、ペンタフルオロフェニル基を有するN,N−ジアルキルアニリニウム塩が好ましく、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(n−プロピル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジ(n−オクタデシル)メチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジエチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N,2,4,6−ペンタメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジイソプロピルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートがより好ましい。
【0030】
上記一般式(1)で表される化合物であり、遷移金属を有するフェロセニウムカチオンを含む化合物としては、例えば、フェロセニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどが挙げられる。
【0031】
これら一般式(1)で表される化合物の中でも、Reがカルベニウムカチオン、アンモニウムカチオンである化合物が好ましい。また、一般式(1)で表される化合物の中でも、Rf、Rg、Rh、Riがフッ素含有アリール基である化合物好ましく、ペンタフルオロフェニル基である化合物がより好ましい。
【0032】
<固体状有機アルミニウムオキシ化合物(B)>
本発明で用いる固体状有機アルミニウムオキシ化合物(B)は、特に限定はなく、例えば、以下の文献B1)〜B6)に開示されたものを使用できる。
B1)WO2010/055652
B2)特開2000−95810号
B3)特開平8−319309号
B4)特開平7−300486号
B5)特開平7−70144号
B6)特開平7−42301号
固体状有機アルミニウムオキシ化合物(B)としては、具体的には、下記一般式(2)および(3)で表される化合物を挙げることができる。
【0033】
【化2】
【0034】
【化3】
上記一般式(2)および(3)中、Rは炭素数1〜10の炭化水素基、nは2以上の整数を示す。上記Rとしてはメチル基が好ましく(メチルアルミノキサン)、nは3以上が好ましく、10以上がより好ましい。
【0035】
これら化合物の中でも、固体状有機アルミニウムオキシ化合物(B)としては、文献B1)に開示のある化合物が好ましく用いられる。中でも、本発明に好ましく用いられる固体状有機アルミニウムオキシ化合物は、粒径が好ましくは1〜100μm、より好ましくは3〜50μm、さらに好ましくは4〜10μmである。
【0036】
本発明に係る固体状有機アルミニウムオキシ化合物の粒子形状については特に制限はないが、好ましくは球状である。
なお、本発明中で用いる「固体状」の意味は、本発明のアルミノキサン成分(B)が用いられる反応環境下において、成分(B)が実質的に固体状態を維持することである。より具体的には、例えば後述のように成分(A)と成分(B)とを接触させてオレフィン重合用固体触媒成分を調製する際、反応に用いられるヘキサンやトルエンなどの不活性炭化水素溶媒中、特定の温度・圧力環境下において成分(B)が固体状態であることを表す。また、例えば後述のように成分(B)を用いて調製されるオレフィン重合用固体触媒成分を用いて懸濁重合を行う場合にヘキサンやヘプタン、トルエンなどの炭化水素溶媒中、特定の温度・圧力環境下において触媒成分中に含まれる成分(B)が固体状態であることも必要な要件である。溶媒の代わりに液化モノマー中で重合を行うバルク重合や、モノマーガス中で重合を行う気相重合でも同様である。
【0037】
<遷移金属錯体(C)>
本発明で用いる遷移金属錯体(C)は、特に限定はなく、例えば、以下の文献C1)〜C14)に開示されたものを使用できる。
C1)特開平11−315109号
C2)特開2000−239312号
C3)EP−1008595号
C4)国際公開第01/55213号パンフレット
C5)特開2001−2731号
C6)EP−1043341号
C7)国際公開第98/27124号パンフレット
C8)Chemical Review 103, 283 (2003)
C9)Bulletin of the Chemical Society of Japan 76, 1493 (2003)
C10)Angewandte Chemie, Internatinal Edition.English 34 (1995)
C11)Chemical Review 8, 2587 (1998) 2587
C12)国際公開第2006/054696号パンフレット
C13)国際公開第2004/029062号パンフレット
C14)国際公開第01/27124号パンフレット
本発明で用いる遷移金属錯体(C)の中心金属は周期表の第4族から選ばれることが好ましい。上記遷移金属錯体(C)の中でも、文献C13)に開示される化合物が好ましく、下記一般式(4)または(5)で表される化合物がより好ましい。
【0038】
【化4】
【0039】
【化5】
上記式(4)および(5)中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、およびR14は水素、炭化水素基、またはケイ素含有炭化水素基であり、それぞれ同一でも異なっていてもよく、R1からR4までの隣接した基同士は互いに結合して環を形成してもよく、R5〜R12までの隣接した基同士は互いに結合して環を形成してもよく、Aは一部不飽和結合および/または芳香族環を含んでいてもよい炭素原子数2〜20の2価の炭化水素基であり、AはYと共に形成する環を含めて2つ以上の環構造を含んでいてもよく、Mは周期表第4族から選ばれた金属であり、Yは炭素またはケイ素であり、Qはハロゲン、炭化水素基、アニオン配位子または孤立電子対で配位可能な中性配位子であり、jは1〜4の整数であり、Qが2以上の場合には、Qは同一でも異なっていてもよい。
【0040】
上記R1〜R14となる炭化水素基としては、好ましくは炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数7〜20のアリールアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基、または炭素原子数7〜20のアルキルアリール基であり、1つ以上の環構造を含んでいてもよい。また、炭化水素基に含まれる水素の一部または全部に水酸基、アミノ基、ハロゲン基、フッ素含有炭化水素基などの官能基で置換されていてもよい。
【0041】
1〜R14となる炭化水素基としては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、2−メチルプロピル、1,1−ジメチルプロピル、2,2−ジメチルプロピル、1,1−ジエチルプロピル、1−エチル−1−メチルプロピル、1,1,2,2−テトラメチルプロピル、sec−ブチル、tert−ブチル、1,1−ジメチルブチル、1,1,3−トリメチルブチル、ネオペンチル、シクロヘキシルメチル、シクロヘキシル、1−メチル−1−シクロヘキシル、1−アダマンチル、2−アダマンチル、2−メチル−2−アダマンチル、メンチル、ノルボルニル、ベンジル、2−フェニルエチル、1−テトラヒドロナフチル、1−メチル−1−テトラヒドロナフチル、フェニル、ビフェニル、ナフチル、トリル、クロロフェニル、クロロビフェニル、クロロナフチルなどが挙げられる。
【0042】
上記R1〜R14となるケイ素含有炭化水素基としては、好ましくはケイ素数1〜4かつ炭素原子数3〜20のアルキルシリル基またはアリールシリル基であり、その具体例としては、トリメチルシリル、tert−ブチルジメチルシリル、トリフェニルシリルなどが挙げられる。
【0043】
フルオレン環上のR5〜R12までの隣接した基同士は、互いに結合して環を形成してもよい。そのような置換フルオレニル基としては、例えば、ベンゾフルオレニル、ジベンゾフルオレニル、オクタヒドロジベンゾフルオレニル、オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニルなどが挙げられる。
【0044】
また、フルオレン環上のR5〜R12は、合成上の容易さから左右対称、すなわちR5=R12、R6=R11、R7=R10、R8=R9であることが好ましく、フルオレン環とR5〜R12とからなる基としては、無置換のフルオレン、3,6−二置換フルオレン、2,7−二置換フルオレン、および2,3,6,7−四置換フルオレンがより好ましい。ここでフルオレン環上の3位、6位、2位、7位は、上記式(4)および(5)のR7、R10、R6、R11にそれぞれ対応する。
【0045】
上記一般式(4)のR13とR14としては、水素および炭化水素基が好ましい。R13またはR14となる好ましい炭化水素基の具体例としては、上述したものが挙げられる。
Yは炭素またはケイ素である。上記一般式(4)の場合は、R13およびR14はYと結合し、架橋部として置換メチレン基または置換シリレン基を構成する。R13およびR14とYとからなる好ましい基としては、例えば、メチレン、ジメチルメチレン、ジイソプロピルメチレン、メチルtert−ブチルメチレン、ジシクロヘキシルメチレン、メチルシクロヘキシルメチレン、メチルフェニルメチレン、フルオロメチルフェニルメチレン、クロロメチルフェニルメチレン、ジフェニルメチレン、ジクロロフェニルメチレン、ジフルオロフェニルメチレン、メチルナフチルメチレン、ジビフェニルメチレン、ジp−メチルフェニルメチレン、メチル−p−メチルフェニルメチレン、エチル−p−メチルフェニルメチレン、ジナフチルメチレンまたはジメチルシリレン、ジイソプロピルシリレン、メチル−tert−ブチルシリレン、ジシクロヘキシルシリレン、メチルシクロヘキシルシリレン、メチルフェニルシリレン、フルオロメチルフェニルシリレン、クロロメチルフェニルシリレン、ジフェニルシリレン、ジp−メチルフェニルシリレン、メチル−p−メチルフェニルシリレン、エチル−p−メチルフェニルシリレン、メチルナフチルシリレン、ジナフチルシリレンなどが挙げられる。
【0046】
上記一般式(5)の場合は、Yは、一部不飽和結合および/または芳香族環を含んでいてもよい炭素原子数2〜20の2価の炭化水素基Aと結合し、これらYおよびAからなる基全体でシクロアルキリデン基またはシクロメチレンシリレン基等を構成する。YおよびAからなる基の好ましい具体例としては、例えば、シクロプロピリデン、シクロブチリデン、シクロペンチリデン、シクロヘキシリデン、シクロヘプチリデン、ビシクロ[3.3.1]ノニリデン、ノルボルニリデン、アダマンチリデン、テトラヒドロナフチリデン、ジヒドロインダニリデン、シクロジメチレンシリレン、シクロトリメチレンシリレン、シクロテトラメチレンシリレン、シクロペンタメチレンシリレン、シクロヘキサメチレンシリレン、シクロヘプタメチレンシリレンなどが挙げられる。
【0047】
上記一般式(4)および(5)のMは、周期表第4族から選ばれる金属であり、例えば、チタニウム、ジルコニウム、ハフニウムなどが挙げられる。
上記一般式(4)および(5)のQは、ハロゲン、炭素原子数1〜20の炭化水素基、アニオン配位子、または孤立電子対で配位可能な中性配位子から選ばれるものである。上記式(4)および(5)中、複数のQが含まれる場合(jが2以上の場合)には、Qは同一でも異なってもよい。上記Qとなるハロゲンとしては、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などが挙げられる。上記Qとなる炭化水素基としては、上記R1〜R14となる炭化水素基として例示した基が挙げられる。上記Qとなるアニオン配位子としては、例えば、メトキシ、tert−ブトキシ等のアルコキシ基;フェノキシ;アセテート、ベンゾエート等のカルボキシレート基;メシレート、トシレート等のスルホネート基などが挙げられる。上記Qとなる孤立電子対で配位可能な中性配位子としては、例えば、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルメチルホスフィン等の有機リン化合物;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン等のエーテル類などが挙げられる。上記一般式(4)および(5)にQが複数含まれる場合には、Qは同一でも異なっていてもよいが、少なくとも一つはハロゲンまたはアルキル基であることが好ましい。
【0048】
また、遷移金属錯体(C)として、文献C1)、文献C12)に開示のある化合物も好ましく用いられ、好ましい化合物としては、例えば、以下の構造を有する化合物が挙げられる。
【0049】
【化6】
【0050】
【化7】
【0051】
【化8】
【0052】
<オレフィン重合用触媒の製法>
本発明のオレフィン系重合用触媒は、含フッ素有機化合物(F)、固体状有機アルミニウムオキシ化合物(B)、および遷移金属錯体(C)を含ませるように作製するが、その際には、下記(i)、(ii)、および(iii)から選ばれる少なくとも1つの要件を満たすことが必要である。
【0053】
<要件(i) オレフィン重合用触媒(E)の製法>
オレフィン重合用触媒(E)は、含フッ素有機化合物(F)としてホウ素を含有しない化合物(A)を用い、該化合物(A)と、固体状有機アルミニウムオキシ化合物(B)とを接触させて得られる変性有機アルミニウムオキシオレフィン重合用固体触媒成分(D)に、遷移金属錯体(C)を接触させて、作製する(要件(i))。
本発明の要件(i)に係るオレフィン重合用触媒(E)を作製するにあたり、各成分の使用法、添加順序は以下の方法が例示される。
【0054】
変性有機アルミニウムオキシオレフィン重合用固体触媒成分(D)の作製
変性有機アルミニウムオキシオレフィン重合用固体触媒成分(D)は、上述したホウ素を含有しない含フッ素有機化合物(A)に固体状有機アルミニウムオキシ化合物(B)を接触させることで得られる。
【0055】
前記含フッ素有機化合物(A)に固体状有機アルミニウムオキシ化合物(B)を接触させる際には、含フッ素有機化合物(A)が固体状有機アルミニウムオキシ化合物(B)に対して、好ましくは0.2モル%以上20モル%以下の量で含まれるように用いる。また(A)に(B)を接触させる際の温度は−10℃〜110℃が好ましい。
【0056】
含フッ素有機化合物(A)に固体状有機アルミニウムオキシ化合物(B)の接触は、通常溶媒の存在下、好ましくは炭化水素溶媒存在下で行われる。上記炭化水素溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族炭化水素;ヘキサン、ヘプタン、デカン、シクロヘキサン等の飽和炭化水素;テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル等のエーテル類;クロロホルム、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素などが挙げられ、これらの中でも、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;ヘキサン、ヘプタン、デカン等の飽和脂肪族炭化水素が好ましい。上記溶媒は、固体状有機アルミニウムオキシ化合物(B)に対し、通常2〜100重量倍、好ましくは4〜70重量倍の量で用いられる。また、該溶媒は、接触時に単独で添加されてもよいし、固体状有機アルミニウムオキシ化合物(B)の希釈溶剤の形態で添加されてもよい。
【0057】
オレフィン重合用触媒(E)の作製
本発明のオレフィン重合用触媒(E)は、先に調製した変性有機アルミニウムオキシオレフィン重合用固体触媒成分(D)に、遷移金属錯体(C)を接触することで得られる。これらの接触は、例えば、特開2009−144148号公報、国際公開第2008/075717号公報、特開2004−238520号公報などに記載される接触方法と同様の方法により行うことができる。
【0058】
上記遷移金属錯体(C)は、前記工程で得られた変性有機アルミニウムオキシオレフィン重合用固体触媒成分(D)の固形分に対し、好ましくは0.3〜10重量%の量で添加され、接触混合される。添加時の温度および接触混合時の温度は、好ましくは0〜100℃である。また、接触混合に要する時間は、好ましくは10分間〜3時間である。
【0059】
遷移金属錯体(C)は溶媒に希釈して用いてもよい。希釈用溶媒としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;ヘキサン、ヘプタン、デカン、シクロヘキサン等の飽和炭化水素が好ましい。
【0060】
<要件(ii) オレフィン重合用触媒(E')の製法>
オレフィン重合用触媒(E')は、含フッ素有機化合物(F)としてホウ素含有化合物(A')を用い、該化合物(A')と、遷移金属錯体(C)とを接触させて得られるオレフィン重合触媒成分(G)に、固体状有機アルミニウムオキシ化合物(B)を接触させて、作製する(要件(ii))。
本発明の要件(ii)に係るオレフィン重合用触媒(E')を作製するにあたり、各成分の使用法、添加順序は以下の方法が例示される。
【0061】
オレフィン重合触媒成分(G)の作製
オレフィン重合触媒成分(G)は、含フッ素有機化合物(F)としてホウ素含有化合物(A')を用い該ホウ素含有化合物(A')に遷移金属錯体(C)を接触させることで得られる。
【0062】
前記ホウ素含有化合物(A')に遷移金属錯体(C)を接触させる際には、含ホウ素含有化合物(A')が後に添加する固体状有機アルミニウムオキシ化合物(B)に対して、好ましくは0.2モル%以上20モル%以下の量で含まれるように用いる。また(A')に(C)を接触させる際の温度は、−10℃〜40℃が好ましい。
【0063】
含ホウ素含有化合物(A')に遷移金属錯体(C)の接触は、通常炭化水素溶媒存在下で行われる。上記炭化水素溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族炭化水素;ヘキサン、ヘプタン、デカン、シクロヘキサン等の飽和炭化水素;テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル等のエーテル類;クロロホルム、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素などが挙げられ、これら炭化水素溶媒の中でも、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;ヘキサン、ヘプタン、デカン等の飽和脂肪族炭化水素が好ましい。上記溶媒は、遷移金属錯体(C)に対し、通常20〜500重量倍、好ましくは80〜300重量倍の量で用いられる。また、該溶媒は、接触時に単独で添加されてもよいし、遷移金属錯体(C))の希釈溶剤の形態で添加されてもよい。
【0064】
オレフィン重合用触媒(E’)の作製
本発明のオレフィン重合用触媒(E')は、先に調製したオレフィン重合触媒成分(G)に、固体状有機アルミニウムオキシ化合物(B)を接触することで得られる。これらの接触は、例えば、特開2009−144148号公報、国際公開第2008/075717号公報、特開2004−238520号公報などに記載される接触方法と同様の方法により行うことができる。
【0065】
オレフィン重合触媒成分(G)は、固体状有機アルミニウムオキシ化合物(B)の固形分に対し、オレフィン重合触媒成分(G)の調製に使用した遷移金属錯体(C)あたりで、好ましくは0.3〜10重量%の量で添加され、接触混合される。添加時の温度および接触混合時の温度は、好ましくは0〜100℃である。また、接触混合に要する時間は、好ましくは10分間〜3時間である。
【0066】
<要件(iii) オレフィン重合用触媒(E")の製法>
オレフィン重合用触媒(E")は、固体状有機アルミニウムオキシ化合物(B)と、遷移金属錯体(C)とを接触させて得られる有機アルミニウムオキシオレフィン重合用固体触媒(E0)に、含フッ素有機化合物(F)としてホウ素含有化合物(A')を接触させて、作製する(要件(iii))。
本発明の要件(iii)に係るオレフィン重合用触媒(E")を作製するにあたり、各成分の使用法、添加順序は以下の方法が例示される。
【0067】
有機アルミニウムオキシオレフィン重合用固体触媒(E0)の作製
有機アルミニウムオキシオレフィン重合用固体触媒(E0)は、固体状有機アルミニウムオキシ化合物(B)と遷移金属錯体(C)を接触させることで得られる。これらの接触は、例えば、特開2009−144148号公報、国際公開第2008/075717号公報、特開2004−238520号公報などに記載される接触方法と同様の方法により行うことができる。
【0068】
本発明に係る遷移金属錯体(C)は、固体状有機アルミニウムオキシ化合物(B)の固形分に対し、好ましくは0.3〜10重量%の量で添加され、接触混合される。添加時の温度および接触混合時の温度は、好ましくは0〜100℃である。また、接触混合に要する時間は、好ましくは10分間〜3時間である。
【0069】
遷移金属錯体(C)は溶媒に希釈して用いてもよい。希釈用溶媒としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;ヘキサン、ヘプタン、デカン、シクロヘキサンなどの飽和炭化水素が好ましい。
【0070】
オレフィン重合用触媒(E”)の作製
本発明のオレフィン重合用触媒(E")は、先に調製した有機アルミニウムオキシオレフィン重合用固体触媒(E0)と、含フッ素有機化合物(F)として前記ホウ素含有化合物(A')を接触することで得られる。
【0071】
有機アルミニウムオキシオレフィン重合用固体触媒(E0)に前記ホウ素含有化合物(A')にを接触させる際には、ホウ素含有化合物(A')を有機アルミニウムオキシオレフィン重合用固体触媒(E0)に対して、好ましくは0.2モル%以上20モル%以下の量で用いる。また(E0)に(A')を接触させる際の温度は、−10℃〜40℃が好ましい。
【0072】
ホウ素含有化合物(A')は溶媒に希釈して用いてもよい。希釈用溶媒としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;ヘキサン、ヘプタン、デカン、シクロヘキサン等の飽和炭化水素が好ましい。これらの溶媒は、有機アルミニウムオキシオレフィン重合用固体触媒(E0)に対し、通常2〜100重量倍、好ましくは4〜70重量倍の量で用いられる。
【0073】
<有機金属化合物(H)および有機金属化合物接触触媒(I)>
本発明のオレフィン重合用触媒(E)、(E’)、または(E”)は、必要に応じて有機金属化合物(H)をさらに接触させたものでもよい。有機金属化合物(H)を接触させたオレフィン重合用触媒(E)、(E’)、または(E”)は、それぞれ、有機金属化合物接触触媒(I)、(I’)、または(I”)として用いることができる。
【0074】
上記有機金属化合物(H)は、好ましくは周期律表第13族元素含有化合物であり、より好ましくは有機アルミニウム化合物、さらに好ましくはトリイソブチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、ジイソブチルアルミニウムヒドリドである。
【0075】
オレフィン重合用触媒(E)、(E’)、 または(E”)と有機金属化合物(H)との接触は、溶媒中で行われることが好ましい。好ましい溶媒としては上述の遷移金属錯体(C)の希釈用の溶媒と同種の溶媒があげられ、これら溶媒の中でも、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;ヘキサン、ヘプタン、デカン、シクロヘキサンなどの飽和炭化水素が好ましい。
【0076】
<オレフィン重合体の製造方法>
本発明のオレフィン重合体の製造方法は、前記のオレフィン重合用触媒(E)、(E’)、もしくは(E”)または有機金属化合物接触触媒(I)、(I’)、もしくは(I”)を用い、オレフィンを重合させる方法である。また、オレフィン重合体の製造を行う際には、必要に応じて前記有機金属化合物(H)を共存させることができる。
【0077】
オレフィンとしては、例えば、エチレン、炭素原子数3〜20のオレフィン、それ以外のビニル結合を有するモノマーなどが挙げられる。
炭素原子数が3〜20のオレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン等のα−オレフィン;シクロペンテン、シクロヘプテン、ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、テトラシクロドデセン、2−メチル1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン等の環状オレフィンなどが挙げられる。
【0078】
ビニル結合を有するその他のモノマーとしては、例えば、スチレン、ビニルシクロヘキサン、ジエン、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、無水マレイン酸等の極性モノマーなどが挙げられる。
【0079】
これらオレフィンの中でも、エチレンおよび炭素数3〜20のα−オレフィンが好ましく、エチレンおよびプロピレンがより好ましい。これらオレフィンは1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0080】
オレフィンの重合は溶液重合法、懸濁重合法などの液相重合法、または気相重合法のいずれによって実施してもよい。
液相重合法において用いられる不活性炭化水素溶媒としては、例えば、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン等の脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;エチレンクロリド、クロルベンゼン、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素、およびこれら溶媒の混合物などを挙げることができる。また、重合にα−オレフィンを用いる場合には、α−オレフィン自身を溶媒として用いることもできる。
【0081】
本発明のオレフィン重合体の製造方法において、重合系中の有機アルミニウムオキシ化合物(B)の濃度は、0.001〜1000mmol/Lが好ましく、より好ましくは0.01〜200mmol/Lである。
【0082】
オレフィンの重合温度は、通常−50〜+200℃、好ましくは0〜170℃、特に好ましくは60〜170℃の範囲である。重合圧力は、通常 常圧〜10MPa、好ましくは常圧〜5MPaの範囲である。重合反応は、回分式、半連続式、連続式のいずれの方式により行ってもよい。また、重合を反応条件の異なる2段以上に分けて行うことも可能である。
【0083】
得られるオレフィン重合体の分子量は、重合系に水素を存在させるか、または重合温度を変化させることによって調節することができる。
オレフィンの重合時には、ファウリング抑制あるいは粒子性状改善を目的として、下記成分(J)を共存させることができる。成分(J)としては、例えば、(j-1)ポリアルキレンオキサイドブロック、(j-2)高級脂肪族アミド、(j-3)ポリアルキレンオキサイド、(j-4)ポリアルキレンオキサイドアルキルエーテル、(j-5)アルキルジエタノールアミン、(j-6)ポリオキシアルキレンアルキルアミンなどが挙げられる。これら成分(J)は1種単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。これら成分(J)の中では、(j-1)、(j-2)、(j-3)、および(j-4)が好ましく、(j-1)、(j-2)がより好ましく、(j-1)が特に好ましい。重合系中の成分(J)の濃度は、0.1〜1000mg/Lが好ましく、1〜100mg/Lがより好ましい。
【0084】
成分(J)は溶媒に希釈して用いてもよい。好ましい溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;ヘキサン、ヘプタン、デカン等の飽和炭化水素などが挙げられる。なお、ここでいう「希釈」とは、成分(J)に対して不活性な液体と成分(J)とが混合された状態のもの又は分散された状態のものも全て含む。すなわち、溶液又は分散液であり、より具体的には、溶液、サスペンジョン(懸濁液)又はエマルジョン(乳濁液)である。これらの中でも、成分(J)が溶媒に溶解した溶液状態となるものが好ましい。
【実施例】
【0085】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら制約を受けるものではない。
以下に示す触媒製造例や重合例は、特に断りのない場合は乾燥窒素雰囲気下で行った。なお、実施例において各種物性は以下のように測定した。
【0086】
[元素分析]
株式会社島津製作所製ICP(誘導結合プラズマ) 発光分析法装置:ICPS−8100型を用いて測定を行った。アルミニウム、ジルコニウムの定量、定性分析には、試料を硫酸および硝酸にて湿式分解後、定容(必要に応じてろ過及び希釈含む)したものを検液とした。またケイ素の定量、定性分析には試料を炭酸ナトリウムにて溶融後、塩酸を加え溶解し、定容および希釈したものを検液とした。
【0087】
[MFR]
オレフィン重合体のMFRは、テスター産業製TP−406型MFR計を用いASTM D1238−89に従い、190℃、2.16kg荷重の条件下で測定した。
【0088】
[嵩密度(BD)]
オレフィン重合体の嵩密度は、ASTM D 1895−96 A法に準じて測定を行った。
【0089】
[走査型電子顕微鏡]
走査型電子顕微鏡による粒子の観察は粒子に白金スパッタリングを行い、日本電子株式会社製JSM−6510LV電子顕微鏡を用いた。また、白金スパッタリング処理は日本電子株式会社製JFC−1600を用いた。
【0090】
[固体状アルミノキサン(B)の調製]
固体状アルミノキサンの調製は、国際公開2010/055652に記載の方法(予備実験1および実施例5)、および、特開2013−49783号に記載の方法(実施例1)に準じて実施した。
【0091】
具体的には、充分に窒素置換した2000mLの四口フラスコに攪拌棒を装着し、これに窒素雰囲気下、0.5mol/Lに調整したトリメチルアルミニウムのトルエン溶液1000mLを装入した。この溶液を15℃になるまで冷却し、これに安息香酸21.8gを溶液の温度が25℃以下になるような速度でゆっくりと添加し、その後50℃で加熱熟成を1時間行った。この時、トリメチルアルミニウムと安息香酸の酸素原子のモル比は、1.40であった。反応液を70℃で4時間加熱し、その後60℃で6時間加熱した後、一度室温まで冷却した。次いで100℃で8時間加熱し、固体状アルミノキサンを析出させた。溶液を30℃以下まで冷却した後、洗浄のためにn−ヘキサン1000mLを攪拌下に添加した。30分間静置した後、上澄み液1500mLを除去し、さらにn−ヘキサン1500mLを攪拌下に添加した。15分間静置した後、上澄み液1500mLを除去し、さらにn−ヘキサン150mLを攪拌下に添加した。最後に15分間静置した後、上澄み液1800mLを除去し、n−ヘキサンを総量が250mLになるように添加した。
【0092】
得られた固体状アルミノキサンのヘキサンスラリーの一部を採取し、濃度を調べたところ、スラリー濃度:23.8mg/mL、Al濃度:0.340mmol/mLであった。また、得られた固体状アルミノキサンを走査型電子顕微鏡により粒子を観察したところ平均粒子径は5.3μm、比表面積は19.1m2/mmol―Alであった。
【0093】
[比較例1]
[オレフィン重合用触媒(E0)の合成]
充分に窒素置換した100mLの四口フラスコに攪拌棒を装着し、これに窒素雰囲気下、上記で調製した固体状メチルアルミノキサン(B)のヘキサンスラリーをアルミニウム換算で2.77mmol入れ、その懸濁液を攪拌しながら、室温下(20℃)、ジ(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジメチル0.00921mmolのヘプタン溶液1.0mLを加えた後、触媒/ヘキサン/ヘプタンスラリーの総量が20.0mLになるようにヘプタンを添加した。60分攪拌した後、攪拌を停止し、オレフィン重合用触媒(E0)を得た。得られた懸濁液中の固体触媒成分の濃度を調べたところ、Zr濃度0.0420mg/mL、Al濃度3.73mg/mLであった。
【0094】
[オレフィン重合体(エチレン重合体)の製造]
充分に窒素置換した内容積1リットルのSUS製オートクレーブに精製ヘプタン500mLを入れ、エチレンを流通し、液相および気相をエチレンで飽和させた。飽和後にガスを水素−エチレン混合ガス(水素濃度:1.25vol%)に切り替えた。ここに、トリイソブチルアルミニウムのn−デカン溶液(Al=1.0mol/L)0.25mmol、ポリアルキレンオキシグリコール(商品名:アデカプルロニックL−71、旭電化工業株式会社製)の4g/Lヘキサン溶液0.62mLを添加した。さらにオレフィン重合用触媒(E0)を固体成分換算で6.00mg装入し、75℃に昇温して、0.65MPa・Gとなるように水素−エチレン混合ガス(水素濃度:1.25vol%)を連続的に供給し、60分間重合を行った。オートクレーブを冷却および残留ガスをパージして重合を停止した。重合器の内壁にはエチレン重合体の付着が見られなかった。得られたエチレン重合体のスラリーを桐山ロート(φ95mm、ろ紙No.5B)でろ過した。ろ紙のつまりはなかった。エチレン重合体を80℃で10時間、減圧乾燥を行った。得られたエチレン重合体(PE)は46.65gであり、重合活性は160kg−PE/mmol−Zr・hr、生産性は7775g−PE/g−cat.・hrであった。ポリマー分析の結果、嵩密度は0.34g/cm3、MFR=27.65g/10分、であった。
【0095】
[実施例1]
[ペンタフルオロフェノール変性固体状メチルアルミノキサン(D1)の合成]
充分に窒素置換した100mLの四口フラスコに攪拌棒を装着し、これに窒素雰囲気下、上記で調製した固体状メチルアルミノキサン(B)のヘキサンスラリーをアルミニウム換算で2.77mmol入れ、その懸濁液を攪拌しながら、室温下(20℃)、0.0261mol/Lのペンタフルオロフェノール(ワコーケミカル製)のヘプタン溶液0.21mLを加えた後、2時間攪拌した。攪拌を停止し、ペンタフルオロフェノール変性固体状メチルアルミノキサン(D1)を得た。
【0096】
[オレフィン重合用触媒(E1)の合成]
先に合成したペンタフルオロフェノール変性固体状メチルアルミノキサン(D1)からそのまま続けて合成した。懸濁液を攪拌しながら、室温下(20℃)、ジ(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムメチル0.00921mmolのヘプタン溶液1.0mLを加えた後、触媒/ヘキサン/ヘプタンスラリーの総量が20.0mLになるようにヘプタンを添加した。60分攪拌した後、攪拌を停止し、オレフィン重合用触媒(E1)を得た。得られた懸濁液中の固体触媒成分の濃度を調べたところ、Zr濃度0.0418mg/mL、Al濃度3.75mg/mLであった。
【0097】
[エチレン重合体(オレフィン重合体)の製造]
オレフィン重合用触媒(E0)を前記合成したオレフィン重合用触媒(E1)に変更することを除いては、比較例1と同様にしてエチレン重合体を製造した。結果を表1に記す。
【0098】
[実施例2]
[ペンタフルオロフェノール変性固体状メチルアルミノキサン(D2)の合成]
充分に窒素置換した100mLの四口フラスコに攪拌棒を装着し、これに窒素雰囲気下、上記で調製した固体状メチルアルミノキサン(B)のヘキサンスラリーをアルミニウム換算で2.77mmol入れ、その懸濁液を攪拌しながら、室温下(20℃)、0.0261mol/Lのペンタフルオロフェノール(ワコーケミカル製)のヘプタン溶液2.12mLを加えた後、2時間攪拌した。攪拌を停止し、ペンタフルオロフェノール変性固体状メチルアルミノキサン(D2)を得た。
【0099】
[オレフィン重合用触媒(E2)の合成]
ペンタフルオロフェノール変性固体状メチルアルミノキサン(D1)を上記ペンタフルオロフェノール変性固体状メチルアルミノキサン(D2)に変更することを除いては、実施例1と同様にしてオレフィン重合用触媒(E2)の合成を行った。得られた懸濁液中の固体触媒成分の濃度を調べたところ、Zr濃度0.0419mg/mL、Al濃度3.74mg/mLであった。
【0100】
[エチレン重合体(オレフィン重合体)の製造]
オレフィン重合用触媒(E0)を前記合成したオレフィン重合用触媒(E2)に変更し、固体触媒の挿入量が下記表1に記載の量となるように変更することを除いては、比較例1と同様にしてエチレン重合体を製造した。結果を表1に記す。
【0101】
[実施例3]
[ペンタフルオロフェノール変性固体状メチルアルミノキサン(D3)の合成]
充分に窒素置換した100mLの四口フラスコに攪拌棒を装着し、これに窒素雰囲気下、上記で調製した固体状メチルアルミノキサン(B)のヘキサンスラリーをアルミニウム換算で2.77mmol入れ、その懸濁液を攪拌しながら、室温下(20℃)、0.261mol/Lのペンタフルオロフェノール(ワコーケミカル製)のヘプタン溶液2.12mLを加えた後、2時間攪拌した。攪拌を停止し、ペンタフルオロフェノール変性固体状メチルアルミノキサン(D3)を得た。
【0102】
[オレフィン重合用触媒(E3)の合成]
ペンタフルオロフェノール変性固体状メチルアルミノキサン(D1)を上記ペンタフルオロフェノール変性固体状メチルアルミノキサン(D3)に変更することを除いては、実施例1と同様にしてオレフィン重合用触媒(E3)の合成を行った。得られた懸濁液中の固体触媒成分の濃度を調べたところ、Zr濃度0.0419mg/mL、Al濃度3.78mg/mLであった。
【0103】
[エチレン重合体(オレフィン重合体)の製造]
オレフィン重合用触媒(E0)を前記合成したオレフィン重合用触媒(E3)に変更し、固体触媒の挿入量が下記表1に記載の量となるように変更することを除いては、比較例1と同様にしてエチレン重合体を製造した。結果を表1に記す。
【0104】
[実施例4]
[3,4,5―トリフルオロフェノール変性固体状メチルアルミノキサン(D4)の合成]
充分に窒素置換した100mLの四口フラスコに攪拌棒を装着し、これに窒素雰囲気下
、上記で調製した固体状メチルアルミノキサン(B)のヘキサンスラリーをアルミニウム換算で2.77mmol入れ、その懸濁液を攪拌しながら、室温下(20℃)、0.0242mol/Lの3,4,5―トリフルオロフェノール(東京化成工業製)のヘプタン溶液0.23mLを加えた後、2時間攪拌した。攪拌を停止し、3,4,5―トリフルオロフェノール変性固体状メチルアルミノキサン(D4)を得た。
【0105】
[オレフィン重合用触媒(E4)の合成]
ペンタフルオロフェノール変性固体状メチルアルミノキサン(D1)を上記3,4,5―トリフルオロフェノール変性固体状メチルアルミノキサン(D4)に変更することを除いては、実施例1と同様にしてオレフィン重合用触媒(E4)の合成を行った。得られた懸濁液中の固体触媒成分の濃度を調べたところ、Zr濃度0.0421mg/mL、Al濃度3.80mg/mLであった。
【0106】
[エチレン重合体(オレフィン重合体)の製造]
オレフィン重合用触媒(E0)を前記合成したオレフィン重合用触媒(E4)に変更し、固体触媒の挿入量が下記表1に記載の量となるように変更することを除いては、比較例1と同様にしてエチレン重合体を製造した。結果を表1に記す。
【0107】
[実施例5]
[α,α,α−トリフルオロトルエン変性固体状メチルアルミノキサン(D5)の合成]
充分に窒素置換した100mLの四口フラスコに攪拌棒を装着し、これに窒素雰囲気下、上記で調製した固体状メチルアルミノキサン(B)のヘキサンスラリーをアルミニウム換算で2.77mmol入れ、その懸濁液を攪拌しながら、室温下(20℃)、減圧で溶媒を留去した。粉末の固体状メチルアルモキサンにトルエン8.0mLを添加し、トルエンスラリーとした。これに、0.0164mol/Lのα,α,α−トリフルオロトルエン(和光純薬工業製)のトルエン溶液0.56mLを加えた後、30分間攪拌した。続けて、オイルバスにより100℃で30分間反応させた。オイルバスを外して自然放冷し、α,α,α−トリフルオロトルエン変性固体状メチルアルミノキサン(D5)を得た。
【0108】
[オレフィン重合用触媒(E5)の合成]
ペンタフルオロフェノール変性固体状メチルアルミノキサン(D1)を上記α,α,α−トリフルオロトルエン変性固体状メチルアルミノキサン(D5)に変更することを除いては、実施例1と同様にしてオレフィン重合用触媒(E5)の合成を行った。得られた懸濁液中の固体触媒成分の濃度を調べたところ、Zr濃度0.0421mg/mL、Al濃度3.74mg/mLであった。
【0109】
[エチレン重合体(オレフィン重合体)の製造]
オレフィン重合用触媒(E0)を前記合成したオレフィン重合用触媒(E5)に変更し、固体触媒の挿入量が下記表1に記載の量となるように変更することを除いては、比較例1と同様にしてエチレン重合体を製造した。結果を表1に記す。
【0110】
[実施例6]
[α,α,α−トリフルオロトルエン変性固体状メチルアルミノキサン(D6)の合成]
充分に窒素置換した100mLの四口フラスコに攪拌棒を装着し、これに窒素雰囲気下、上記で調製した固体状メチルアルミノキサン(B)のヘキサンスラリーをアルミニウム換算で2.77mmol入れ、その懸濁液を攪拌しながら、室温下(20℃)、減圧で溶媒を留去した。粉末の固体状メチルアルモキサンにトルエン8.0mLを添加し、トルエンスラリーとした。これに、0.0164mol/Lのα,α,α−トリフルオロトルエン(和光純薬工業製)のトルエン溶液1.12mLを加えた後、30分間攪拌した。続けて、オイルバスにより100℃で30分間反応させた。オイルバスを外して自然放冷し、α,α,α−トリフルオロトルエン変性固体状メチルアルミノキサン(D6)を得た。
【0111】
[オレフィン重合用触媒(E6)の合成]
ペンタフルオロフェノール変性固体状メチルアルミノキサン(D1)を上記α,α,α−トリフルオロトルエン変性固体状メチルアルミノキサン(D6)に変更することを除いては、実施例1と同様にしてオレフィン重合用触媒(E6)の合成を行った。得られた懸濁液中の固体触媒成分の濃度を調べたところ、Zr濃度0.0420mg/mL、Al濃度3.79mg/mLであった。
【0112】
[エチレン重合体(オレフィン重合体)の製造]
オレフィン重合用触媒(E0)を前記合成したオレフィン重合用触媒(E6)に変更し、固体触媒の挿入量が下記表1に記載の量となるように変更することを除いては、比較例1と同様にしてエチレン重合体を製造した。結果を表1に記す。
【0113】
[実施例7]
[α,α,α−トリフルオロトルエン変性固体状メチルアルミノキサン(D7)の合成]
充分に窒素置換した100mLの四口フラスコに攪拌棒を装着し、これに窒素雰囲気下、上記で調製した固体状メチルアルミノキサン(B)のヘキサンスラリーをアルミニウム換算で2.77mmol入れ、その懸濁液を攪拌しながら、室温下(20℃)、減圧で溶媒を留去した。粉末の固体状メチルアルモキサンにトルエン8.0mLを添加し、トルエンスラリーとした。これに、0.0164mol/Lのα,α,α−トリフルオロトルエン(和光純薬工業製)のトルエン溶液2.24mLを加えた後、30分間攪拌した。続けて、オイルバスにより100℃で30分間反応させた。オイルバスを外して自然放冷し、α,α,α−トリフルオロトルエン変性固体状メチルアルミノキサン(D7)を得た。
【0114】
[オレフィン重合用触媒(E7)の合成]
ペンタフルオロフェノール変性固体状メチルアルミノキサン(D1)を上記α,α,α−トリフルオロトルエン変性固体状メチルアルミノキサン(D7)に変更することを除いては、実施例1と同様にしてオレフィン重合用触媒(E7)の合成を行った。得られた懸濁液中の固体触媒成分の濃度を調べたところ、Zr濃度0.0421mg/mL、Al濃度3.68mg/mLであった。
【0115】
[エチレン重合体(オレフィン重合体)の製造]
オレフィン重合用触媒(E0)を前記合成したオレフィン重合用触媒(E7)に変更し、固体触媒の挿入量が下記表1に記載の量となるように変更することを除いては、比較例1と同様にしてエチレン重合体を製造した。結果を表1に記す。
【0116】
[実施例8]
[α,α,α−トリフルオロトルエン変性固体状メチルアルミノキサン(D8)の合成]
充分に窒素置換した100mLの四口フラスコに攪拌棒を装着し、これに窒素雰囲気下、上記で調製した固体状メチルアルミノキサン(B)のヘキサンスラリーをアルミニウム換算で2.77mmol入れ、その懸濁液を攪拌しながら、室温下(20℃)、減圧で溶媒を留去した。粉末の固体状メチルアルモキサンにトルエン8.0mLを添加し、トルエンスラリーとした。これに、0.0164mol/Lのα,α,α−トリフルオロトルエン(和光純薬工業製)のトルエン溶液3.36mLを加えた後、30分間攪拌した。続けて、オイルバスにより100℃で30分間反応させた。オイルバスを外して自然放冷し、α,α,α−トリフルオロトルエン変性固体状メチルアルミノキサン(D8)を得た。
【0117】
[オレフィン重合用触媒(E8)の合成]
ペンタフルオロフェノール変性固体状メチルアルミノキサン(D1)を上記α,α,α−トリフルオロトルエン変性固体状メチルアルミノキサン(D8)に変更することを除いては、実施例1と同様にしてオレフィン重合用触媒(E8)の合成を行った。得られた懸濁液中の固体触媒成分の濃度を調べたところ、Zr濃度0.0418mg/mL、Al濃度3.71mg/mLであった。
【0118】
[エチレン重合体(オレフィン重合体)の製造]
オレフィン重合用触媒(E0)を前記合成したオレフィン重合用触媒(E8)に変更し、固体触媒の挿入量が下記表1に記載の量となるように変更することを除いては、比較例1と同様にしてエチレン重合体を製造した。結果を表1に記す。
【0119】
[実施例9]
[α,α,α−トリフルオロトルエン変性固体状メチルアルミノキサン(D9)の合成]
充分に窒素置換した100mLの四口フラスコに攪拌棒を装着し、これに窒素雰囲気下、上記で調製した固体状メチルアルミノキサン(B)のヘキサンスラリーをアルミニウム換算で2.77mmol入れ、その懸濁液を攪拌しながら、室温下(20℃)、減圧で溶媒を留去した。粉末の固体状メチルアルモキサンにトルエン8.0mLを添加し、トルエンスラリーとした。これに、0.0164mol/Lのα,α,α−トリフルオロトルエン(和光純薬工業製)のトルエン溶液6.71mLを加えた後、30分間攪拌した。続けて、オイルバスにより100℃で2時間反応させた。オイルバスを外して自然放冷し、α,α,α−トリフルオロトルエン変性固体状メチルアルミノキサン(D9)を得た。
【0120】
[オレフィン重合用触媒(E9)の合成]
ペンタフルオロフェノール変性固体状メチルアルミノキサン(D1)を上記α,α,α−トリフルオロトルエン変性固体状メチルアルミノキサン(D9)に変更することを除いては、実施例1と同様にしてオレフィン重合用触媒(E9)の合成を行った。得られた懸濁液中の固体触媒成分の濃度を調べたところ、Zr濃度0.0420mg/mL、Al濃度3.77mg/mLであった。
【0121】
[エチレン重合体(オレフィン重合体)の製造]
オレフィン重合用触媒(E0)を前記合成したオレフィン重合用触媒(E9)に変更し、固体触媒の挿入量が下記表1に記載の量となるように変更することを除いては、比較例1と同様にしてエチレン重合体を製造した。結果を表1に記す。
【0122】
[参考例2]
[ペンタフルオロフェノール変性固体状メチルアルミノキサン(D10)の合成]
充分に窒素置換した100mLの四口フラスコに攪拌棒を装着し、これに窒素雰囲気下、上記で調製した固体状メチルアルミノキサン(B)のn−ヘキサンスラリーをアルミニウム換算で2.77mmol入れ、その懸濁液を攪拌しながら、室温下(20℃)、0.261mol/Lのペンタフルオロフェノール(ワコーケミカル製)のヘプタン溶液10.6mLを加えた後、2時間攪拌した。攪拌を停止し、ペンタフルオロフェノール変性固体状メチルアルミノキサン(D10)を得た。
【0123】
[オレフィン重合用触媒(E10)の合成]
ペンタフルオロフェノール変性固体状メチルアルミノキサン(D1)を上記ペンタフルオロフェノール変性固体状メチルアルミノキサン(D10)に変更することを除いては、実施例1と同様にしてオレフィン重合用触媒(E10)の合成を行った。得られた懸濁液中の固体触媒成分の濃度を調べたところ、Zr濃度0.0420mg/mL、Al濃度3.74mg/mLであった。
【0124】
[エチレン重合体(オレフィン重合体)の製造]
オレフィン重合用触媒(E0)を前記合成したオレフィン重合用触媒(E10)に変更することを除いては、比較例1と同様にしてエチレン重合体を製造した。結果を表1に記す。
【0125】
[参考例3]
[α,α,α−トリフルオロトルエン変性固体状メチルアルミノキサン(D11)の合成]
充分に窒素置換した100mLの四口フラスコに攪拌棒を装着し、これに窒素雰囲気下、上記で調製した固体状メチルアルミノキサン(B)のヘキサンスラリーをアルミニウム換算で2.77mmol入れ、その懸濁液を攪拌しながら、室温下(20℃)、減圧で溶媒を留去した。粉末の固体状メチルアルモキサンにトルエン8.0mLを添加し、トルエンスラリーとした。これに、0.328mol/Lのα,α,α−トリフルオロトルエン(和光純薬工業製)のトルエン溶液8.4mLを加えた後、30分間攪拌した。続けて、オイルバスにより100℃で2時間反応させた。オイルバスを外して自然放冷し、α,α,α−トリフルオロトルエン変性固体状メチルアルミノキサン(D11)を得た。
【0126】
[オレフィン重合用触媒(E11)の合成]
ペンタフルオロフェノール変性固体状メチルアルミノキサン(D1)を上記α,α,α−トリフルオロトルエン変性固体状メチルアルミノキサン(D11)に変更することを除いては、実施例1と同様にしてオレフィン重合用触媒(E11)の合成を行った。得られた懸濁液中の固体触媒成分の濃度を調べたところ、Zr濃度0.0413mg/mL、Al濃度3.71mg/mLであった。
【0127】
[エチレン重合体(オレフィン重合体)の製造]
オレフィン重合用触媒(E0)を前記合成したオレフィン重合用触媒(E11)に変更することを除いては、比較例1と同様にしてエチレン重合体を製造した。結果を表1に記す。
【0128】
[比較例4]
[トリイソブチルアルミニウム接触触媒(I0)の合成]
比較例1と同様にしてオレフィン重合用触媒(E0)の合成を行った。このスラリーに1mol/Lのトリイソブチルアルミニウムのn−デカン溶液0.1mLを撹拌しながら加えた。20℃で3時間反応を行い、トリイソブチルアルミニウム接触触媒(I0)を得た。
【0129】
[エチレン重合体(オレフィン重合体)の製造]
オレフィン重合用触媒(E0)を前記合成したオレフィン重合用触媒(I0)に変更することを除いては、比較例1と同様にしてエチレン重合体を製造した。結果を表1に記す。
【0130】
[実施例10]
[トリイソブチルアルミニウム接触触媒(I2)の合成]
オレフィン重合用触媒(E0)を実施例2で合成したオレフィン重合用触媒(E2)に変更することを除いては、比較例4と同様にしてトリイソブチルアルミニウム接触触媒(I2)の合成を行った。
【0131】
[エチレン重合体(オレフィン重合体)の製造]
オレフィン重合用触媒(E0)を前記合成したオレフィン重合用触媒(I2)に変更し、固体触媒の挿入量が下記表1に記載の量となるように変更することを除いては、比較例1と同様にしてエチレン重合体を製造した。結果を表1に記す。
【0132】
[実施例11]
[トリイソブチルアルミニウム接触触媒(I7)の合成]
オレフィン重合用触媒(E0)を実施例7で合成したオレフィン重合用触媒(E7)に変更することを除いては、比較例4と同様にしてトリイソブチルアルミニウム接触触媒(I7)の合成を行った。
【0133】
[エチレン重合体(オレフィン重合体)の製造]
オレフィン重合用触媒(E0)を前記合成したオレフィン重合用触媒(I7)に変更し、固体触媒の挿入量が下記表1に記載の量となるように変更することを除いては、比較例1と同様にしてエチレン重合体を製造した。結果を表1に記す。
【0134】
<実施例1〜11、比較例1、4、参考例2、3の対比>
実施例1〜9と比較例1とを対比すると、含フッ素有機化合物の添加により活性向上の効果が見られる。また、実施例1〜9と参考例2、3を対比すると、含フッ素有機化合物の添加量が多すぎる場合には活性が低下している。これらのことから、含フッ素有機化合物の添加量には最適な範囲があり0.2モル%以上20モル%以下である。
【0135】
実施例2、7、10、11と比較例1、4とを対比すると、トリイソブチルアルミニウムと接触させることによりこれら実施例の触媒は比較例の触媒と比較して、ともわずかであるが活性が向上している。トリイソブチルアルミニウムの添加により、ごくわずかな空気中の水分や溶媒のロット差などに由来する極わずかな不純物等の影響、すなわち外乱の影響を受けにくい、安定した触媒活性を有する触媒となっていると思われる。
【0136】
【表1】
【0137】
[実施例12]
[オレフィン重合触媒成分(G1)の合成]
充分に窒素置換した100mLの四口フラスコに攪拌棒を装着し、これに窒素雰囲気下、ジ(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド0.00921mmolのトルエン溶液1.0mLを入れ、その溶液を撹拌しながら、室温下(20℃)、1mol/Lのトリイソブチルアルミニウムのn−デカン溶液0.1mLを加えた。20℃で10分間撹拌を行った後、ジ(n−オクタデシル)メチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート0.00969mmolのヘプタン溶液2.4mLを室温下(20℃)加えた後、10分攪拌し、オレフィン重合触媒成分(G1)を得た。
【0138】
[オレフィン重合用触媒(E’12)の合成]
充分に窒素置換した100mLの四口フラスコに攪拌棒を装着し、これに窒素雰囲気下、上記で調製した固体状メチルアルミノキサン(B)のヘキサンスラリーをアルミニウム換算で2.77mmol入れ、その懸濁液を攪拌しながら、室温下(20℃)、先に合成したオレフィン重合触媒成分(G1)溶液全量を加え、触媒/ヘキサン/ヘプタン/トルエンスラリーの総量が20mLになるようにヘプタンを添加した。4時間攪拌した後、攪拌を停止し、オレフィン重合用触媒(E’12)を得た。得られた懸濁液中の固体触媒成分の濃度を調べたところ、Zr濃度0.0422mg/mL、Al濃度3.94mg/mLであった。
【0139】
[エチレン重合体(オレフィン重合体)の製造]
オレフィン重合用触媒(E0)を前記合成したオレフィン重合用触媒(E’12)に変更することを除いては、比較例1と同様にしてエチレン重合体を製造した。結果を表2に記す。
【0140】
[実施例13]
[オレフィン重合触媒成分(G2)の合成]
充分に窒素置換した100mLの四口フラスコに攪拌棒を装着し、これに窒素雰囲気下、ジ(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド0.00921mmolのトルエン溶液1.0mLを入れ、その溶液を撹拌しながら、室温下(20℃)、1mol/Lのトリイソブチルアルミニウムのn−デカン溶液0.1mLを加えた。20℃で10分間撹拌を行った後、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート0.00969mmolのトルエン溶液9.7mLを室温下(20℃)加えた後、10分攪拌し、オレフィン重合触媒成分(G2)を得た。
【0141】
[オレフィン重合用触媒(E’13)の合成]
オレフィン重合触媒成分(G1)を上記オレフィン重合触媒成分(G2)に変更することを除いては、実施例12と同様にしてオレフィン重合用触媒(E’13)を得た。得られた懸濁液中の固体触媒成分の濃度を調べたところ、Zr濃度0.0423mg/mL、Al濃度4.02mg/mLであった。
【0142】
[エチレン重合体(オレフィン重合体)の製造]
オレフィン重合用触媒(E0)を前記合成したオレフィン重合用触媒(E’13)に変更することを除いては、比較例1と同様にしてエチレン重合体を製造した。結果を表2に記す。
【0143】
[比較例5]
[ジ(n−オクタデシル)メチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート変性固体状メチルアルミノキサン(D12)の合成]
充分に窒素置換した100mLの四口フラスコに攪拌棒を装着し、これに窒素雰囲気下、上記で調製した固体状メチルアルミノキサン(B)のヘキサンスラリーをアルミニウム換算で2.77mmol入れ、その懸濁液を攪拌しながら、室温下(20℃)、ジ(n−オクタデシル)メチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート0.00969mmolのヘプタン溶液2.4mLを加えた後、2時間攪拌した。攪拌を停止し、ジ(n−オクタデシル)メチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート変性固体状メチルアルミノキサン(D12)を得た。
【0144】
[オレフィン重合用触媒(E12)の合成]
ペンタフルオロフェノール変性固体状メチルアルミノキサン(D1)を上記ジ(n−オクタデシル)メチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート変性固体状メチルアルミノキサン(D12)に変更することを除いては、実施例1と同様にしてオレフィン重合用触媒(E12)の合成を行った。得られた懸濁液中の固体触媒成分の濃度を調べたところ、Zr濃度0.0419mg/mL、Al濃度3.77mg/mLであった。
【0145】
[エチレン重合体(オレフィン重合体)の製造]
オレフィン重合用触媒(E0)を前記合成したオレフィン重合用触媒(E12)に変更することを除いては、比較例1と同様にしてエチレン重合体を製造した。結果を表2に記す。
【0146】
[比較例6]
[N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート変性固体状メチルアルミノキサン(D13)の合成]
充分に窒素置換した100mLの四口フラスコに攪拌棒を装着し、これに窒素雰囲気下、上記で調製した固体状メチルアルミノキサン(B)のヘキサンスラリーをアルミニウム換算で2.77mmol入れ、その懸濁液を攪拌しながら、室温下(20℃)、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート0.00969mmolのトルエン溶液9.7mLを加えた後、2時間攪拌した。攪拌を停止し、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート変性固体状メチルアルミノキサン(D13)を得た。
【0147】
[オレフィン重合用触媒(E13)の合成]
ペンタフルオロフェノール変性固体状メチルアルミノキサン(D1)を上記N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート変性固体状メチルアルミノキサン(D13)に変更することを除いては、実施例1と同様にしてオレフィン重合用触媒(E13)の合成を行った。得られた懸濁液中の固体触媒成分の濃度を調べたところ、Zr濃度0.0420mg/mL、Al濃度3.78mg/mLであった。
【0148】
[エチレン重合体(オレフィン重合体)の製造]
オレフィン重合用触媒(E0)を前記合成したオレフィン重合用触媒(E13)に変更することを除いては、比較例1と同様にしてエチレン重合体を製造した。結果を表2に記す。
【0149】
<実施例12、13、比較例1、5、6の対比>
実施例12、13と比較例1、5、6とを対比すると、含フッ素有機化合物がホウ素元素を有する化合物であった場合、添加順序により活性が大きく変わることがわかる。
【0150】
【表2】
【0151】
[実施例14]
[オレフィン重合用触媒(E"14)の合成]
充分に窒素置換した100mLの四口フラスコに攪拌棒を装着し、これに窒素雰囲気下、上記で調製した固体状メチルアルミノキサン(B)のヘキサンスラリーをアルミニウム換算で2.77mmol入れ、その懸濁液を攪拌しながら、室温下(20℃)、ジ(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジメチル0.00921mmolのヘプタン溶液1.0mLを加えた後、60分攪拌した。攪拌を停止し、オレフィン重合用触媒(E0)を得た。このスラリーにジ(n−オクタデシル)メチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート0.00969mmolのヘプタン溶液2.4mLを室温下(20℃)加え、触媒スラリーの総量が20mLになるようにヘプタンを添加した。5時間攪拌してオレフィン重合用触媒(E"14)の合成を行った。得られた懸濁液中の固体触媒成分の濃度を調べたところ、Zr濃度0.0418mg/mL、Al濃度3.75mg/mLであった。
【0152】
[エチレン重合体(オレフィン重合体)の製造]
オレフィン重合用触媒(E0)を前記合成したオレフィン重合用触媒(E"14)に変更し、固体触媒の挿入量が下記表3に記載の量となるように変更することを除いては、比較例1と同様にしてエチレン重合体を製造した。結果を表3に記す。
【0153】
[実施例15]
[オレフィン重合用触媒(E"15)の合成]
ジ(n−オクタデシル)メチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートの使用量を0.0185mmolのヘプタン溶液4.6mLに変更することを除いては、実施例14と同様にしてオレフィン重合用触媒(E"15)の合成を行った。得られた懸濁液中の固体触媒成分の濃度を調べたところ、Zr濃度0.0421mg/mL、Al濃度3.80g/mLであった。
【0154】
[エチレン重合体(オレフィン重合体)の製造]
オレフィン重合用触媒(E0)を前記合成したオレフィン重合用触媒(E"15)に変更し、固体触媒の挿入量が下記表3に記載の量となるように変更することを除いては、比較例1と同様にしてエチレン重合体を製造した。結果を表3に記す。
【0155】
[実施例16]
[オレフィン重合用触媒(E"16)の合成]
ジ(n−オクタデシル)メチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートの使用量を0.0277mmolのヘプタン溶液6.9mLに変更することを除いては、実施例14と同様にしてオレフィン重合用触媒(E"16)の合成を行った。得られた懸濁液中の固体触媒成分の濃度を調べたところ、Zr濃度0.0420mg/mL、Al濃度3.77g/mLであった。
【0156】
[エチレン重合体(オレフィン重合体)の製造]
オレフィン重合用触媒(E0)を前記合成したオレフィン重合用触媒(E"16)に変更し、固体触媒の挿入量が下記表3に記載の量となるように変更することを除いては、比較例1と同様にしてエチレン重合体を製造した。結果を表3に記す。
【0157】
[実施例17]
[オレフィン重合用触媒(E"17)の合成]
ジ(n−オクタデシル)メチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートの使用量を0.0369mmolのヘプタン溶液9.2mLに変更することを除いては、実施例14と同様にしてオレフィン重合用触媒(E"17)の合成を行った。得られた懸濁液中の固体触媒成分の濃度を調べたところ、Zr濃度0.0420mg/mL、Al濃度3.76g/mLであった。
【0158】
[エチレン重合体(オレフィン重合体)の製造]
オレフィン重合用触媒(E0)を前記合成したオレフィン重合用触媒(E"17)に変更し、固体触媒の挿入量が下記表3に記載の量となるように変更することを除いては、比較例1と同様にしてエチレン重合体を製造した。結果を表3に記す。
【0159】
[実施例18]
[オレフィン重合用触媒(E"18)の合成]
充分に窒素置換した100mLの四口フラスコに攪拌棒を装着し、これに窒素雰囲気下、上記で調製した固体状メチルアルミノキサン(B)のヘキサンスラリーをアルミニウム換算で2.77mmol入れ、その懸濁液を攪拌しながら、室温下(20℃)、ジ(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジメチル0.00921mmolのヘプタン溶液1.0mLを加えた後、60分攪拌した。攪拌を停止し、オレフィン重合用触媒(E0)を得た。このスラリーにトリス(ペンタフルオロフェニル)ボロン(ワコーケミカル製)0.0369mmolのトルエン溶液9.2mLを室温下(20℃)加えた後、5時間攪拌してオレフィン重合用触媒(E"18)の合成を行った。得られた懸濁液中の固体触媒成分の濃度を調べたところ、Zr濃度0.0418mg/mL、Al濃度3.70g/mLであった。
【0160】
[エチレン重合体(オレフィン重合体)の製造]
オレフィン重合用触媒(E0)を前記合成したオレフィン重合用触媒(E"18)に変更することを除いては、比較例1と同様にしてエチレン重合体を製造した。結果を表3に記す。
【0161】
[実施例19]
[オレフィン重合用触媒(I"16)の合成]
充分に窒素置換した100mLの四口フラスコに攪拌棒を装着し、これに窒素雰囲気下、上記で調製した固体状メチルアルミノキサン(B)のヘキサンスラリーをアルミニウム換算で2.77mmol入れ、その懸濁液を攪拌しながら、室温下(20℃)、ジ(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジメチル0.00921mmolのヘプタン溶液1.0mLを加えた後、60分攪拌した。攪拌を停止し、オレフィン重合用触媒(E0)を得た。このスラリーに1mol/Lのトリイソブチルアルミニウムのn−デカン溶液0.1mLを撹拌しながら加えた。20℃で3時間反応を行い、トリイソブチルアルミニウム接触触媒(I0)を得た。このスラリーにジ(n−オクタデシル)メチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート0.0277mmolのヘプタン溶液6.9mLを室温下(20℃)加え、触媒スラリーの総量が20mLになるようにヘプタンを添加した。3時間攪拌してオレフィン重合用触媒(I"16)の合成を行った。得られた懸濁液中の固体触媒成分の濃度を調べたところ、Zr濃度0.0420mg/mL、Al濃度4.02g/mLであった。
【0162】
[エチレン重合体(オレフィン重合体)の製造]
オレフィン重合用触媒(E0)を前記合成したオレフィン重合用触媒(I"16)に変更し、固体触媒の挿入量が下記表3に記載の量となるように変更することを除いては、比較例1と同様にしてエチレン重合体を製造した。結果を表3に記す。
【0163】
[実施例20]
[オレフィン重合用触媒(I"18)の合成]
充分に窒素置換した100mLの四口フラスコに攪拌棒を装着し、これに窒素雰囲気下、上記で調製した固体状メチルアルミノキサン(B)のヘキサンスラリーをアルミニウム換算で2.77mmol入れ、その懸濁液を攪拌しながら、室温下(20℃)、ジ(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジメチル0.00921mmolのヘプタン溶液1.0mLを加えた後、60分攪拌した。攪拌を停止し、オレフィン重合用触媒(E0)を得た。このスラリーに1mol/Lのトリイソブチルアルミニウムのn−デカン溶液0.1mLを撹拌しながら加えた。20℃で3時間反応を行い、トリイソブチルアルミニウム接触触媒(I0)を得た。このスラリーにトリス(ペンタフルオロフェニル)ボロン(ワコーケミカル製)0.0369mmolのトルエン溶液9.2mLを室温下(20℃)加え、触媒スラリーの総量が20mLになるようにヘプタンを添加した。3時間攪拌してオレフィン重合用触媒(I"18)の合成を行った。得られた懸濁液中の固体触媒成分の濃度を調べたところ、Zr濃度0.0419mg/mL、Al濃度4.10g/mLであった。
【0164】
[エチレン重合体(オレフィン重合体)の製造]
オレフィン重合用触媒(E0)を前記合成したオレフィン重合用触媒(I"18)に変更することを除いては、比較例1と同様にしてエチレン重合体を製造した。結果を表3に記す。
【0165】
<実施例12、14〜20、比較例1、4、5の対比>
実施例12、14〜18と比較例1、5を対比すると、含フッ素有機化合物がホウ素元素を有する化合物であった場合、添加順序により活性が大きく変わることが見られる。実施例16、18、19、20と比較例1、4を対比すると、トリイソブチルアルミニウム接触により3触媒系ともわずかであるが活性が向上している。トリイソブチルアルミニウムの添加により、ごくわずかな空気中の水分や溶媒のロット差などに由来する極わずかな不純物等の影響、すなわち外乱の影響を受けにくい、安定した触媒活性を有する触媒となっていると思われる。
【0166】
【表3】