特許第6357357号(P6357357)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6357357
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】コンクリート構造
(51)【国際特許分類】
   E04C 5/02 20060101AFI20180702BHJP
   E04C 5/18 20060101ALI20180702BHJP
   E04C 5/08 20060101ALI20180702BHJP
   E04C 3/26 20060101ALI20180702BHJP
   E04C 3/18 20060101ALI20180702BHJP
【FI】
   E04C5/02
   E04C5/18 105
   E04C5/08
   E04C3/26
   E04C3/18
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-119141(P2014-119141)
(22)【出願日】2014年6月9日
(65)【公開番号】特開2015-232217(P2015-232217A)
(43)【公開日】2015年12月24日
【審査請求日】2017年3月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124084
【弁理士】
【氏名又は名称】黒岩 久人
(72)【発明者】
【氏名】道越 真太郎
(72)【発明者】
【氏名】馬場 重彰
(72)【発明者】
【氏名】加藤 雅樹
【審査官】 星野 聡志
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭51−015522(JP,A)
【文献】 特開2005−083122(JP,A)
【文献】 特開2002−088928(JP,A)
【文献】 特開2006−104712(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0272267(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04C 5/02
E04C 3/18
E04C 3/26
E04C 5/08
E04C 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートに軸方向鋼材が埋設されたコンクリート構造であって、
複数本の互いに略平行な軸方向鋼材と、
当該複数本の軸方向鋼材を囲むせん断補強筋と、
前記複数本の軸方向鋼材を囲む割裂防止筋と、を備え、
前記軸方向鋼材は、複数本の上側梁主筋および複数本の下側梁主筋を含んで構成され、
前記割裂防止筋は、前記複数本の上側梁主筋の全てを囲む上側割裂防止筋と、前記複数本の下側梁主筋の全てを囲む下側割裂防止筋と、前記複数本の下側梁主筋のそれぞれの端部域を囲むスパイラル筋と、を備え、
前記上側梁主筋および下側梁主筋は、せん断補強筋と割裂防止筋とで二重または三重に拘束されていることを特徴とするコンクリート構造。
【請求項2】
コンクリートに軸方向鋼材が埋設されたコンクリート構造であって、
複数本の互いに略平行な軸方向鋼材と、
当該複数本の軸方向鋼材を囲むせん断補強筋と、
前記複数本の軸方向鋼材のうちの一部を囲む割裂防止筋と、を備え、
前記軸方向鋼材は、複数本の上側梁主筋および複数本の下側梁主筋を含んで構成され、
前記割裂防止筋は、前記複数本の下側梁主筋の全てを囲む下側割裂防止筋と、前記下側梁主筋のそれぞれの端部域を囲むスパイラル筋と、を備え、
前記下側梁主筋は、せん断補強筋と割裂防止筋とで二重または三重に拘束されていることを特徴とするコンクリート構造。
【請求項3】
前記せん断補強筋および前記下側割裂防止筋は、1本の鉄筋材を、アラビア数字の六の字を向かい合わせに重ねて配置した形状に折り曲げ加工して、一体に形成されていることを特徴とする請求項に記載のコンクリート構造。
【請求項4】
コンクリートに軸方向鋼材が埋設されたコンクリート構造であって、
複数本の互いに略平行な軸方向鋼材と、
当該複数本の軸方向鋼材を囲むせん断補強筋と、
前記複数本の軸方向鋼材のうちの一部を囲む割裂防止筋と、を備え、
前記軸方向鋼材は、複数本の上側梁主筋および複数本の下側梁主筋を含んで構成され、
前記割裂防止筋は、外側に位置する下側梁主筋についてのみ、梁の全長に亘って各下側梁主筋の全周を覆っており、
前記外側に位置する下側梁主筋は、せん断補強筋と割裂防止筋とで二重に拘束されていることを特徴とするコンクリート構造。
【請求項5】
コンクリートに軸方向鋼材が埋設されたコンクリート構造であって、
複数本の互いに略平行な軸方向鋼材と、
当該複数本の軸方向鋼材を囲むせん断補強筋と、
前記複数本の軸方向鋼材のうちの一部を囲む割裂防止筋と、を備え、
前記軸方向鋼材は、複数本の上側梁主筋および複数本の下側梁主筋を含んで構成され、
前記割裂防止筋は、前記下側梁主筋と交差し、かつ、当該下側梁主筋の内側から外側の当該梁の角部に向かって、直線状に延びており、
前記下側梁主筋の一部は、せん断補強筋と割裂防止筋とで二重に拘束されていることを特徴とするコンクリート構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートに軸方向鋼材が埋設されたコンクリート構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、建物の主要構造部は、耐火性能に適合する耐火構造にする必要がある。特に、主要構造部が鉄骨造や木造の耐火建築物の場合、1時間耐火や2時間耐火といった所定の耐火性能を満たすように、主要構造部を耐火被覆材で覆う必要がある。
これに対し、主要構造部が鉄筋コンクリート造である場合は、鉄筋コンクリート内の鉄筋の周囲には被りコンクリートが設けられるため、耐火被覆材は不要であった。
【0003】
しかしながら、鉄筋は、火災により加熱温度が500℃前後になると、降伏強度が60%、弾性係数が60%程に低下する。その結果、鉄筋の応力負担能力が低下し、コンクリート内にて滑りが生じ、付着割裂ひびわれが発生する場合があった。
特に、鉄筋にプレストレスを導入した部材では、このような傾向が顕著となる。
【0004】
このような問題を解決するため、例えば、鉄筋コンクリート梁において、鉄筋のコンクリートの被り厚さを増大させたり、耐火性を有するコンクリートでさらに覆ったりすることにより、所定の耐火性能を確保することが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5323653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述のコンクリートのひびわれ防止手段では、かぶり厚さを増大させており、その結果、鉄筋コンクリート梁の断面寸法が大きくなり、設計の自由度が低下する場合があった。
【0007】
本発明は、耐火性能に優れ、かつ、設計の自由度を確保できる鉄筋コンクリート構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、軸方向鋼材の廻りにせん断補強筋および割裂防止筋を配筋することによって、コンクリートの拘束度合いを高めて、これによりコンクリート自体のひびわれ発生強度を増大できることに着眼し、本発明のひびわれ発生を防止できるコンクリート構造を発明するに至った。
【0009】
請求項1、2、4、5に記載のコンクリート構造(例えば、後述の鉄筋コンクリート梁1)は、コンクリートに軸方向鋼材が埋設されたコンクリート構造であって、複数本の互いに略平行な軸方向鋼材(例えば、後述の梁主筋30)と、当該複数本の軸方向鋼材を囲むせん断補強筋(例えば、後述のせん断補強筋40、拘束補強筋40A)と、前記複数本の軸方向鋼材のうちの一部を囲む割裂防止筋(例えば、後述の割裂防止筋50、50B、50C、50D、50E)と、を備え、当該一部の軸方向鋼材は、せん断補強筋と割裂防止筋とで二重に拘束されていることを特徴とする。
【0010】
なお、せん断補強筋および割裂防止筋は、軸方向鋼材に沿って、所定間隔を空けて配筋される軸方向鋼材の拘束補強筋を意味する。
【0011】
この発明によれば、割裂防止筋により軸方向鋼材の周囲のコンクリートを拘束して、コンクリート躯体自体のひびわれ発生強度を増大させ、コンクリートのひび割れ発生を防止する。よって、コンクリートのかぶり厚さを増大させたり、コンクリートの周囲を、耐火性を有するコンクリートでさらに覆ったりする必要がない。よって、耐火性能に優れるうえに、鉄筋コンクリート梁の断面寸法が大きくなるのを抑制できるので、コンクリート構造の設計の自由度を確保できる。
【0012】
請求項に記載のコンクリート構造は、前記せん断補強筋および前記割裂防止筋は、1本の鉄筋材を、アラビア数字の六の字を向かい合わせに重ねて配置した形状に折り曲げ加工して、一体に形成されていることを特徴とする。
【0013】
この発明によれば、せん断補強筋と割裂防止筋とを一体に形成して拘束補強筋とし、この拘束補強筋を軸方向鋼材に沿って配筋したので、鉄筋材の使用量を低減して施工費を削減できる。
つまり、一部の軸方向鋼材について、コンクリートの表面から軸方向鋼材の表面までの被り厚さ部分に、せん断補強筋および割裂防止筋として機能する拘束補強筋を、二重に拘束するように配筋した。このように、2種類の拘束補強筋を互いに沿わせて配置することで、軸方向鋼材の被り厚さを小さくすることなく、2本分の鉄筋を配筋することができる。
【0014】
本発明のコンクリート構造は、両端剛接合梁であり、前記割裂防止筋は、梁端部域では、梁上端の軸方向鋼材のそれぞれについて全周を覆っており、梁中央域では、梁下端の軸方向鋼材のそれぞれについて全周を覆うことを特徴とする。
【0015】
両端剛接合梁では、梁端部の上端筋および梁中央部の下端筋に大きな引張力が作用し、この部分にコンクリートにひび割れが発生しやすい。
そこで、この発明によれば、両端剛接合梁のコンクリートひび割れが発生しやすい箇所に割裂防止筋を配置したので、両端剛接合梁において、のコンクリートのひび割れの発生を効率的に防止できる。
【0016】
請求項4に記載のコンクリート構造は、両端が非剛接合の梁であり、前記割裂防止筋(例えば、後述の割裂防止筋50B)は、梁の全長に亘って、梁下端の軸方向鋼材のそれぞれについて全周を覆うことを特徴とする。
【0017】
両端非剛接合梁では、梁の全長に亘って下端筋に引張力が作用し、この部分にコンクリートにひび割れが発生しやすい。
この発明によれば、両端非剛接合梁のコンクリートひび割れが発生しやすい箇所に割裂防止筋を配置したので、ひび割れの発生を効率的に防止できる。
【0018】
請求項5に記載のコンクリート構造は、梁であり、前記割裂防止筋(例えば、後述の割裂防止筋50C)は、前記梁下端の軸方向鋼材と交差し、かつ、当該梁下端の軸方向鋼材の内側から外側に向かって、直線状に延びることを特徴とする。
【0019】
この発明によれば、割裂防止筋を直線状として、梁の下端側に配置したので、割裂防止筋を加工して軸方向鋼材を囲む必要がないから、割裂防止筋の配筋作業が容易となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、軸方向鋼材の周囲に、せん断補強筋および割裂防止筋を配置することでコンクリートを拘束して、コンクリート躯体自体のひびわれ発生強度を増大させ、コンクリートのひび割れ発生を防止する。したがって、コンクリートのかぶり厚さを増大させたり、コンクリートの周囲を、耐火性を有するコンクリートでさらに覆ったりする必要がない。よって、耐火性能に優れるうえに、鉄筋コンクリート梁の断面寸法が大きくなるのを抑制できるので、コンクリート構造の設計の自由度を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第1実施形態に係るコンクリート構造が適用された鉄筋コンクリート梁の断面図である。
図2図1の部分拡大図および断面図である。
図3】前記実施形態に係る鉄筋コンクリート梁のせん断補強筋および割裂防止筋の構造を示す図である。
図4】本発明の第2実施形態に係るコンクリート構造が適用された鉄筋コンクリート梁の断面図である。
図5】本発明の第3実施形態に係るコンクリート構造が適用された鉄筋コンクリート梁の断面図である。
図6】本発明の第4実施形態に係るコンクリート構造が適用された鉄筋コンクリート梁の断面図である。
図7】本発明の第5実施形態に係るコンクリート構造が適用された鉄筋コンクリートスラブの断面図である。
図8】本発明の変形例に係るコンクリート構造が適用された鉄筋コンクリート梁の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、ひびわれ発生を防止するコンクリート構造に係わる発明である。本発明は、軸方向鋼材の周囲に、せん断補強筋および割裂防止筋を配筋することでコンクリート自体のひびわれ発生強度を増大させて、ひびわれ発生を防止できるコンクリート構造を提供する。
本発明では、上側梁主筋、下側梁主筋、せん断補強筋、および割裂防止筋を備えた鉄筋コンクリート梁を提案している。このコンクリート構造により、コンクリートのひびわれ発生を防止することができる。
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の実施形態の説明にあたって、同一構成要件については同一符号を付し、その説明を省略もしくは簡略化する。
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態に係るコンクリート構造が適用された鉄筋コンクリート梁1の断面図である。図2(a)は、図1の部分拡大図であり、図2(b)は、図2(a)のA−A断面図である。
【0024】
鉄筋コンクリート梁1は、鉄筋コンクリート柱2同士の間に架設されたプレストレストコンクリート梁であり、梁の長さ方向に延びるコンクリート体20と、このコンクリート体20に埋設されて梁1の軸方向に延びる複数本の軸方向鋼材としての梁主筋30と、梁の長さ方向に所定間隔おきに設けられてこれら梁主筋30の全体を外側から囲むせん断補強筋40と、を備える(図3(a)参照)。
【0025】
この鉄筋コンクリート梁1は、梁主筋30の両端を引っ張った状態でコンクリートを打設し、コンクリートが硬化した後に引張力を開放することで、コンクリートに圧縮力を導入した、プレテンション方式のコンクリート梁である。
【0026】
梁主筋30は、鉄筋材であり、梁1の上側に位置する6本の上側梁主筋31と、梁1の下側に位置する6本の下側梁主筋32と、を備える。
【0027】
これら梁主筋30のうちの一部には、図3(b)にも示すように、これら梁主筋30を囲む割裂防止筋50が設けられている。
具体的には、割裂防止筋50として、6本の上側梁主筋31を囲む矩形枠状の上側割裂防止筋51と、6本の下側梁主筋32を囲む矩形枠状の下側割裂防止筋52と、割裂防止筋50Bと、が設けられている。
割裂防止筋50Bは、下側梁主筋32のそれぞれの両端側に設けられたスパイラル筋である。この割裂防止筋50Bについては、後に詳述する。
【0028】
これにより、6本の上側梁主筋31は、せん断補強筋40と上側割裂防止筋51とで二重に拘束されており、6本の下側梁主筋32は、せん断補強筋40と下側割裂防止筋52とで二重に拘束されている。
【0029】
本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)割裂防止筋51、52により、上側梁主筋31および下側梁主筋32の周囲のコンクリートを拘束して、コンクリート躯体自体のひびわれ発生強度を増大させ、コンクリートのひび割れ発生を防止する。よって、鉄筋コンクリート梁について、コンクリートのかぶり厚さを増大させたり、耐火性を有するコンクリートでさらに覆ったりする必要がない。よって、耐火性能に優れるうえに、鉄筋コンクリート梁の断面寸法が大きくなるのを抑制できるので、鉄筋コンクリート梁1の設計の自由度を確保できる。
【0030】
〔第2実施形態〕
図4(a)は、本発明の第2実施形態に係るコンクリート構造が適用された鉄筋コンクリート梁1の断面図である。
本実施形態では、拘束補強筋40Aの構造が、第1実施形態と異なる。
すなわち、拘束補強筋40Aは、図4(b)に示すように、1本の短尺鉄筋より、鉄筋加工冶具を用いてせん断補強筋と割裂防止筋とを互いに沿わせて一体に形成したものである。具体的には、各拘束補強筋40Aは、1本の鉄筋を、アラビア数字の六の字を向かい合わせに重ねて配置した形状に折り曲げ加工したもので、一筆書きで加工できる。
この拘束補強筋40Aは、梁主筋30の全体を囲んでおり、この拘束補強筋40Aの下部は、6本の下側梁主筋32を囲んでいる。
【0031】
本実施形態によれば、上述の(1)の効果に加えて、以下のような効果がある。
(2)せん断補強筋と割裂防止筋とを一体に形成して拘束補強筋40Aとし、この拘束補強筋を梁主筋30に沿って配筋したので、鉄筋材の使用量を低減して施工費を削減できる。
つまり、一部の梁主筋30について、コンクリートの表面から梁主筋30の表面までの被り厚さ部分に、せん断補強筋および割裂防止筋として機能する拘束補強筋40Aを、二重に拘束するように配筋した。このように、拘束補強筋40Aを用いることで、梁主筋30の被り厚さを小さくすることなく、2本分の鉄筋を配筋することができる。
【0032】
(3)せん断補強筋および割裂防止筋を別々に配筋しなくても、梁主筋30に沿って拘束補強筋40Aを配筋すれば、せん断補強筋および割裂防止筋を一緒に配筋できる。よって、配筋作業の作業効率を向上できる。
【0033】
〔第3実施形態〕
図5は、本発明の第3実施形態に係るコンクリート構造が適用された鉄筋コンクリート梁1の断面図である。
本実施形態では、割裂防止筋50Bの構造が、第1実施形態と異なる。すなわち、鉄筋コンクリート梁1は、両端が非剛接合の梁である。
また、割裂防止筋50Bは、下側梁主筋32のうち外側に位置するものに設けられる。具体的には、割裂防止筋50Bは、これらの下側梁主筋32のそれぞれついて、鉄筋コンクリート梁1の全長に亘って全周を覆うスパイラル筋である。なお、スパイラル筋とは、軸方向鋼材の周囲にらせん状に巻かれた鉄筋を意味する。
【0034】
本実施形態によれば、上述の(1)の効果に加えて、以下のような効果がある。
(4)両端非剛接合梁のコンクリートひび割れが発生しやすい箇所に割裂防止筋50Bを配置したので、両端非剛接合梁において、コンクリートのひび割れの発生を効率的に防止できる。
【0035】
〔第4実施形態〕
図6は、本発明の第4実施形態に係る鉄筋コンクリート構造が適用された鉄筋コンクリート梁1の断面図である。
本実施形態では、割裂防止筋50Cの構造が、第1実施形態と異なる。
すなわち、割裂防止筋50Cは、鉄筋コンクリート梁1の縦断面視で、下側梁主筋32と交差し、かつ、この下側梁主筋32の内側から外側に向かって、直線状に延びている。
【0036】
本実施形態によれば、上述の(1)の効果に加えて、以下のような効果がある。
(5)割裂防止筋50Cを直線状として、梁1の下端側に配置した。したがって、割裂防止筋を加工して軸方向鋼材を囲む必要がないから、割裂防止筋50Cの配筋作業が容易となる。
【0037】
〔第5実施形態〕
図7は、本発明の第5実施形態に係るコンクリート構造が適用された鉄筋コンクリートスラブ3の断面図である。
本実施形態では、鉄筋コンクリートスラブ3に適用された点が、第1実施形態と異なる。
すなわち、鉄筋コンクリートスラブ3は、平板状のコンクリート体60と、このコンクリート体60に埋設されたスラブ筋70と、を備える。
スラブ筋70は、鉄筋材であり、スラブ3の上側に位置し、かつ、互いに交差して格子状に設けられた上側主筋71A、71Bと、スラブ3の下側に位置し、かつ、互いに交差して格子状に設けられた下側主筋72A、72Bと、を備える。
ここで、上側主筋71Aおよび下側主筋72Aを軸方向鉄筋とすると、これら上側主筋71Aおよび下側主筋72Aの一部を囲む割裂防止筋50Dが設けられている。
具体的には、割裂防止筋50Dとして、3本の上側主筋71Aを囲む上側割裂防止筋53と、2本の下側主筋72Aを囲む下側割裂防止筋54と、が設けられている。
【0038】
本実施形態によれば、上述の(1)と同様の効果がある。
【0039】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、上述の各実施形態では、軸方向鋼材として梁主筋30やスラブ筋70などの鉄筋材を用いたが、これに限らず、PC鋼線を用いてもよい。
上述の第1実施形態では、割裂防止筋50を閉鎖型の矩形枠状としたが、この割裂防止筋50の形状は特に限定されず、円環状、八角形状、スパイラル状、コの字形状など、どのような形状でもよい。
【0040】
上述の第1実施形態では、割裂防止筋50により、6本の下側梁主筋32の全てを囲むようにしたが、これに限らず、割裂防止筋50Eは、割裂の生じやすい出隅部に設ければよく、図8に示すように、梁1の下側出隅部の下側梁主筋32を囲んでいればよい。
【0041】
上述の各実施形態では、鉄筋コンクリート梁1や鉄筋コンクリートスラブ3に本発明を適用したが、これに限らず、本発明を鉄筋コンクリート壁などにも適用できる。
上述の第1〜第4実施形態では、鉄筋コンクリート梁1を、緊張力を導入したプレストレストコンクリート梁としてが、これに限らず、緊張力を導入しない梁としてもよい。
【符号の説明】
【0042】
1…鉄筋コンクリート梁(コンクリート構造)
2…鉄筋コンクリート柱
3…鉄筋コンクリートスラブ(コンクリート構造)
20…コンクリート体
30…梁主筋(軸方向鋼材)
31…上側梁主筋(軸方向鋼材)
32…下側梁主筋(軸方向鋼材)
40…せん断補強筋
40A…拘束補強筋
50、50B、50C、50D、50E…割裂防止筋
51、53…上側割裂防止筋
52、54…下側割裂防止筋
60…コンクリート体
70…スラブ筋
71A、71B…上側主筋(軸方向鋼材)
72A、72B…下側主筋(軸方向鋼材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8