特許第6357379号(P6357379)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6357379
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】リニアアクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   B06B 1/04 20060101AFI20180702BHJP
   H02K 33/02 20060101ALI20180702BHJP
   B06B 1/14 20060101ALI20180702BHJP
【FI】
   B06B1/04 S
   H02K33/02 A
   B06B1/14
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-155282(P2014-155282)
(22)【出願日】2014年7月30日
(65)【公開番号】特開2016-30251(P2016-30251A)
(43)【公開日】2016年3月7日
【審査請求日】2017年6月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(74)【代理人】
【識別番号】100090170
【弁理士】
【氏名又は名称】横沢 志郎
(72)【発明者】
【氏名】武田 正
(72)【発明者】
【氏名】北原 裕士
(72)【発明者】
【氏名】須江 猛
【審査官】 三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−50693(JP,A)
【文献】 特開2003−80171(JP,A)
【文献】 特開2000−23439(JP,A)
【文献】 特開2009−166016(JP,A)
【文献】 特開2006−220775(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B06B 1/04
B06B 1/14
H02K 33/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
永久磁石を備えた可動体と、
該永久磁石を径方向外側で囲むコイルボビンを備えた固定体と、
前記可動体と前記コイルボビンとに接続され、前記コイルボビンに対して前記可動体が軸線方向に移動可能に支持された状態とするバネ部材と、
前記コイルボビンに巻回され、前記永久磁石とともに前記可動体を軸線方向に駆動する磁気駆動機構を構成するコイルと、
を有し、
前記可動体は、前記永久磁石に軸線方向の一方側で重なる第1コアと、前記永久磁石に軸線方向の他方側で重なる端板部、該端板部の外縁から軸線方向の他方側に延在して前記コイルを径方向外側で囲む筒状の側板部、および該側板部から径方向内側に突出した凸部を備えた第2コアと、を有し、
前記コイルボビンは、前記コイルが巻回された筒状胴部と、該筒状胴部の軸線方向の一方側端部から径方向外側に拡径する第1フランジ部と、該第1フランジ部に対して軸線方向の他方側で前記筒状胴部から径方向外側に拡径し、前記凸部に対して軸線方向の他方側で対向するとともに、前記側板部の内面に径方向内側で対向する第2フランジ部と、前記筒状胴部の外周面のうち、前記第2フランジ部より軸線方向の他方側において前記第2フランジ部に繋がる補強リブと、を有していることを特徴とするリニアアクチュエータ。
【請求項2】
前記バネ部材は、前記筒状胴部の軸線方向の他方側の端部に接続された固定体側連結部と、前記側板部に連結された可動体側連結部と、前記固定体側連結部と前記可動体側連結部とに接続されたアーム部と、を備えた板状バネ部材であって、
前記補強リブは、前記可動体側連結部と前記アーム部との接続位置から周方向にずれた位置に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項3】
前記補強リブは、前記アーム部の前記可動体側連結部との接続位置から当該アーム部の延在方向に沿って軸線方向の他方側から一方側に向けて傾いた斜面を軸線方向の他方側に向けていることを特徴とする請求項2に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項4】
軸線方向において前記固定体と前記可動体との間に挟まれたゲル状ダンパー部材を有していることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項5】
前記第1コアは、前記ゲル状ダンパー部材が内側に配置された貫通穴が形成され、
前記ゲル状ダンパー部材は、前記永久磁石と前記固定体との間に挟まれていることを特徴とする請求項4に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項6】
前記ゲル状ダンパー部材は、シリコーンゲルからなることを特徴とする請求項4または5に記載のリニアアクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気駆動機構を備えたリニアアクチュエータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話気等の分野では、着信等を振動によって報知するデバイスが用いられており、かかるデバイスとしては、永久磁石を備えた可動体を固定体に設けたコイルで駆動するリニアアクチュエータが提案されている(特許文献1、2参照)。かかるリニアアクチュエータによれば、コイルに供給する駆動信号によって振動の強弱や周波数が可変である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−135755号公報
【特許文献2】特開2006−7161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
磁気駆動機構を備えたリニアアクチュエータにおいて、コイルに供給する駆動信号によって振動の強弱や周波数が可変となるように構成するには、可動体に十分な推力を付与する必要があるが、特許文献2に記載の構成のように、支軸の周りにコイルを配置し、コイルの周りに永久磁石を配置した場合、大きな推力を得ることができない。従って、永久磁石を径方向外側で囲むコイルボビンにコイルを巻回した構成を採用することが好ましい。ここで、永久磁石には、軸線方向の一方側で重なる第1コアと、軸線方向の他方側で重なる第2コアを設け、第2コアについては、永久磁石に軸線方向の他方側で重なる端板部、および端板部の外縁から軸線方向の一方側に延在してコイルを径方向外側で囲む筒状の側板部を設けることが好ましい。かかる構成によれば、コイルボビンにおいて第1フランジ部より軸線方向の他方側に位置する第2フランジ部と、第2コアとを利用してストッパを構成することができる。
【0005】
しかしながら、コイルボビンの第2フランジ部を利用してストッパを構成するには、第2フランジ部の厚さが薄く、十分な強度を有していない。
【0006】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、コイルボビンにおいて第1フランジ部より軸線方向の他方側に位置する第2フランジ部を利用してストッパを構成することができるリニアアクチュエータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係るリニアアクチュエータは、永久磁石を備えた可動体と、該永久磁石を径方向外側で囲むコイルボビンを備えた固定体と、前記可動体と前記コイルボビンとに接続され、前記コイルボビンに対して前記可動体が軸線方向に移動可能に支持された状態とするバネ部材と、前記コイルボビンに巻回され、前記永久磁石とともに前記可動体を軸線方向に駆動する磁気駆動機構を構成するコイルと、を有し、前記可動体は、前記永久磁石に軸線方向の一方側で重なる第1コアと、前記永久磁石に軸線方向の他方側で重なる端板部、該端板部の外縁から軸線方向の他方側に延在して前記コイルを径方向外側で囲む筒状の側板部、および該側板部から径方向内側に突出した凸部を備えた第2コアと、を有し、前記コイルボビンは、前記コイルが巻回された筒状胴部と、該筒状胴部の軸線方向の一方側端部から径方向外側に拡径する第1フランジ部と、該第1フランジ部に対して軸線方向の他方側で前記筒状胴部から径方向外側に拡径し、前記凸部に対
して軸線方向の他方側で対向するとともに、前記側板部の内面に径方向内側で対向する第2フランジ部と、前記筒状胴部の外周面のうち、前記第2フランジ部より軸線方向の他方側において前記第2フランジ部に繋がる補強リブと、を有していることを特徴とする。
【0008】
本発明では、可動体の駆動に磁気駆動機構を用い、かつ、バネ部材を可動体および固定体との間に接続してあるため、磁気駆動機構による推進力とバネ部材の付勢力とを利用して、可動体を軸線方向に駆動することができる。また、固定体では、永久磁石を径方向外側で囲むコイルボビンにコイルが巻回されている。このため、永久磁石およびコイルを大径化できるので、可動体に大きな推力を付与することができる。また、コイルボビンにおいて第1フランジ部より軸線方向の他方側に位置する第2フランジ部に対しては、第2フランジ部より軸線方向の他方側に設けられた補強リブが繋がっている。このため、第2フランジ部は十分な強度を有するので、第2フランジ部を利用してストッパを構成することができる。
【0009】
本発明において、前記バネ部材は、前記筒状胴部の軸線方向の他方側の端部に接続された固定体側連結部と、前記側板部に連結された可動体側連結部と、前記固定体側連結部と前記可動体側連結部とに接続されたアーム部と、を備えた板状バネ部材であって、前記補強リブは、前記可動体側連結部と前記アーム部との接続位置から周方向にずれた位置に設けられていることが好ましい。かかる構成によれば、コイルボビンに補強リブを設けても、補強リブとバネ部材のアーム部とが干渉しにくい。
【0010】
本発明において、前記補強リブは、前記アーム部の前記可動体側連結部との接続位置から当該アーム部の延在方向に沿って軸線方向の他方側から一方側に向けて傾いた斜面を軸線方向の他方側に向けていることが好ましい。かかる構成によれば、補強リブとバネ部材のアーム部との干渉を避けつつ、補強リブを周方向の広い範囲にわたって形成することができる。
【0011】
本発明において、軸線方向において前記固定体と前記可動体との間に挟まれたゲル状ダンパー部材を有していることが好ましい。かかる構成によれば、可動体の共振を抑制することができる。
【0012】
本発明において、前記第1コアは、前記ゲル状ダンパー部材が内側に配置された貫通穴が形成され、前記ゲル状ダンパー部材は、前記永久磁石と前記固定体との間に挟まれていることが好ましい。かかる構成によれば、軸線方向においてゲル状ダンパー部材を配置するスペースを拡大することができる。それ故、ゲル状ダンパー部材として軸線方向の寸法が大のものを配置することができるので、可動体の共振をより確実に抑制することができる。
【0013】
本発明において、前記ゲル状ダンパー部材は、例えば、シリコーンゲルからなる。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、可動体の駆動に磁気駆動機構を用い、かつ、バネ部材を可動体および固定体との間に接続してあるため、磁気駆動機構による推進力とバネ部材の付勢力とを利用して、可動体を軸線方向に駆動することができる。また、固定体では、永久磁石を径方向外側で囲むコイルボビンにコイルが巻回されている。このため、永久磁石およびコイルを大径化できるので、可動体に大きな推力を付与することができる。また、コイルボビンにおいて第1フランジ部より軸線方向の他方側に位置する第2フランジ部に対しては、第2フランジ部より軸線方向の他方側に設けられた補強リブが繋がっている。このため、第2フランジ部は十分な強度を有するので、第2フランジ部を利用してストッパを構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施の形態1に係るリニアアクチュエータの斜視図である。
図2】本発明の実施の形態1に係るリニアアクチュエータの分解視図である。
図3】本発明の実施の形態1に係るリニアアクチュエータの断面図である。
図4】本発明の実施の形態1に係るリニアアクチュエータにおいて、コイルを巻回したコイルボビンにバネ部材8を取り付けた様子を示す斜視図である。
図5】本発明の実施の形態1に係るリニアアクチュエータに用いたバネ部材、コイルボビンおよびコイルを分解した様子を軸線方向の他方側からみた分解斜視図である。
図6】本発明の実施の形態1に係るリニアアクチュエータに用いたコイルボビンの説明図である。
図7】本発明の実施の形態1に係るリニアアクチュエータに用いたコイルボビンの第1スリットから治具を挿入した状態を拡大して示す拡大断面図である。
図8】本発明の実施の形態2に係るリニアアクチュエータの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の説明において、軸線Lとは可動体6の中心軸線であり、軸線Lは可動体6の重心を通っている。また、以下の説明では、軸線Lが延在する方向(軸線方向)において、可動体6が位置する側を一方側L1とし、固定体2の固定板4が位置する側を他方側L2として説明する。
【0017】
[実施の形態1]
(全体構成)
図1は、本発明の実施の形態1に係るリニアアクチュエータ1の斜視図である。図2は、本発明の実施の形態1に係るリニアアクチュエータ1の分解視図である。図3は、本発明の実施の形態1に係るリニアアクチュエータ1の断面図であり、図3(a)、(b)、(c)は、可動体6が軸線L方向の他方側L2に位置する状態の断面図、可動体6が軸線L方向の中間位置(原点位置)に位置する状態の断面図、および可動体6が軸線L方向の一方側L1に位置する状態の断面図である。
【0018】
図1図2および図3(b)に示すように、本形態のリニアアクチュエータ1は、固定体2と、可動体6と、可動体6と固定体2とに接続されたバネ部材8とを有しており、バネ部材8は、固定体2に対して可動体6を軸線L方向に移動可能に支持している。また、リニアアクチュエータ1は、可動体6を軸線L方向に駆動する磁気駆動機構5を有している。
【0019】
(可動体6の構成)
可動体6は、磁気駆動機構5を構成する永久磁石53を1つ有している。永久磁石53は、軸線Lを中心軸線とする円柱状であり、軸線L方向においてN極とS極とに着磁されている。また、可動体6は、永久磁石53に軸線方向の一方側L1で重なる第1コア71と、永久磁石53に軸線L方向の他方側L2で重なる第2コア72とを備えている。
【0020】
第1コア71は、軸線Lを中心とする円環状であり、中心に貫通孔710を有している。また、第1コア71は、外径寸法が永久磁石53の外径寸法よりわずかに大きく、第1コア71の外周面715は、永久磁石53の外周面535より径方向外側に張り出している。かかる第1コア71は、永久磁石53の軸線L方向の一方側L1の面に接着等の方法で固定されている。
【0021】
第2コア72は、永久磁石53に軸線L方向の他方側L2で重なる端板部721と、端板部721の外縁から軸線L方向の一方側L1に延在する円筒状の側板部722とを備え
ている。また、側板部722の軸線L方向の一方側L1の端部で径方向内側に突出したストッパ用の凸部723を有している。本形態において、第2コア72は、3枚の磁性板(第1磁性板76、第2磁性板77、および第3磁性板78)によって構成されている。
【0022】
第1磁性板76は、永久磁石53に軸線L方向の他方側L2で重なる円形の端板部761と、端板部761の外縁から軸線L方向の一方側L1に延在する円筒状の側板部762とを備えている。第2磁性板77は、第1磁性板76の端板部761よりわずかに小さな円板状であり、第1磁性板76の端板部761に軸線L方向の一方側L1で積層されている。この状態で、第2磁性板77は、穴773の縁等を利用して第1磁性板76の端板部761に溶接されている。このため、第2コア72の端板部721は、第1磁性板76の端板部761と、第2磁性板77とによって構成されている。従って、第2コア72の端板部721の厚さは、第1磁性板76の端板部761の板厚と第2磁性板77の板厚との和に相当し、第1コア71の板厚より大である。なお、第2磁性板77の軸線L方向の他方側L2の面は、外周縁に沿って段部774が形成されている。
【0023】
第3磁性板78は円筒状の胴部781を有しており、胴部781の軸線L方向の他方側L2の端部が第1磁性板76の側板部762の軸線L方向の一方側L1の端部に溶接等によって連結されている。このため、第2コア72の側板部722は、第1磁性板76の側板部762と、第3磁性板78の胴部781とによって構成されている。ここで、第1磁性板76の側板部762の軸線L方向の一方側L1の端部には、周方向の複数個所に切り欠き763が形成されており、第1磁性板76の側板部762と第3磁性板78の胴部781とを溶接等によって連結する際、切り欠き763には、後述するバネ部材8の可動体側連結部82が保持される。また、第3磁性板78は胴部781の軸線L方向の一方側L1の端部で径方向内側に折れ曲がった環状部782を有しており、かかる環状部782によって、第2コア72のストッパ用の凸部723が構成されている。このように構成した第2コア72は、第2磁性板77が永久磁石53の軸線L方向の他方側L2の面に接着等の方法で固定されている。
【0024】
(固定体2の構成)
図4は、本発明の実施の形態1に係るリニアアクチュエータ1において、コイル55を巻回したコイルボビン3にバネ部材8を取り付けた様子を示す斜視図であり、図4(a)、(b)は、コイルボビン3を軸線L方向の他方側L2からみた斜視図、およびコイルボビン3を軸線L方向の一方側L1からみた斜視図である。図5は、本発明の実施の形態1に係るリニアアクチュエータ1に用いたバネ部材8、コイルボビン3およびコイル55を分解した様子を軸線L方向の他方側L2からみた分解斜視図である。図6は、本発明の実施の形態1に係るリニアアクチュエータ1に用いたコイルボビン3の説明図であり、図6(a)、(b)、(c)、(d)は、コイルボビン3を軸線L方向の他方側L2からみた平面図、コイルボビン3を軸線L方向の一方側L1からみた底面図、コイルボビン3の側面図、およびコイルボビン3のスリットを軸線L方向の他方側L2からみた様子を拡大して示す説明図である。
【0025】
図2図3(b)、図4図5および図6に示すように、固定体2は、磁気駆動機構5のコイル55が巻回されたコイルボビン3を有している。コイルボビン3は、可動体6に対して軸線L方向の一方側L1で重なる底板部31と、底板部31から軸線L方向の他方側L2に突出した円筒部32とを備えており、円筒部32は、永久磁石53と第2コア72の側板部722との間で永久磁石53を径方向外側で囲んでいる。また、固定体2は、コイルボビン3の底板部31に対して可動体6とは反対側(軸線L方向の一方側L1)に重なる固定板4を備えている。
【0026】
コイルボビン3において、円筒部32は、コイル55が巻回された筒状胴部321と、
筒状胴部321の軸線L方向の一方側L1の端部から径方向外側に拡径した円環状の第1フランジ部322と、第1フランジ部322に対して軸線L方向の他方側L2で筒状胴部321から径方向外側に拡径した円環状の第2フランジ部323とを有している。
【0027】
ここで、軸線L方向からみたとき、第2フランジ部323は、第1フランジ部322より大径である。従って、筒状胴部321にコイル55を巻回した状態で、第1フランジ部322は、コイル55の外周面からわずかに径方向外側に突出しているのに対して、第2フランジ部323は、コイル55の外周面から第1フランジ部322より径方向外側に大きく突出している。
【0028】
コイルボビン3において、円筒部32の軸線L方向の一方側L1の端部から径方向内側に底板部31が設けられており、底板部31の中央には貫通穴310が形成されている。また、第2フランジ部323は、筒状胴部321の先端面328より軸線L方向の一方側L1に設けられている。
【0029】
図2および図3に示すように、固定板4は、コイルボビン3の底板部31に対して可動体6とは反対側(軸線L方向の一方側L1)に重なる円板部41と、円板部41の周方向の1個所から径方向外側に突出した矩形の基板支持部42とを有している。基板支持部42には配線基板46が支持されており、配線基板46には、コイル55の端部551、552が接続されている。
【0030】
(バネ部材8の構成)
図2図3(b)、図4および図5に示すように、バネ部材8は、固定体2(コイルボビン3)に連結された固定体側連結部81と、可動体6(第2コア72)に連結された可動体側連結部82と、固定体側連結部81と可動体側連結部82とに接続された複数本のアーム部83とを備えた板状バネ部材である。本形態において、固定体側連結部81は、円環状であり、可動体側連結部82およびアーム部83より径方向内側に位置する。ここで、固定体側連結部81には、コイルボビン3の筒状胴部321の先端面328から軸線L方向の他方側L2に突出した突起329が嵌る穴819が形成されており、この状態で、固定体側連結部81と筒状胴部321の先端面328とが連結されている。
【0031】
可動体側連結部82は、周方向で3つに分割されており、3つの可動体側連結部82の各々からアーム部83が周方向に延在している。かかる3つの可動体側連結部82はいずれも、図1および図2を参照して説明したように、第1磁性板76の側板部762と第3磁性板78の胴部781とを溶接等によって連結する際、切り欠き763に保持される。
【0032】
(ボビン3の第1スリット311の構成)
図7は、本発明の実施の形態1に係るリニアアクチュエータ1に用いたコイルボビン3の第1スリット311から治具30を挿入した状態を拡大して示す拡大断面図である。
【0033】
図4および図5に示すように、コイルボビン3において、底板部31には、周方向の複数個所に第1スリット311が円弧状に形成されており、軸線L方向からみたとき、第1スリット311は、筒状胴部321の内周面325(円筒部32の内周面325)と可動体6の第1コア71の外周面715との隙間G(図3(b)および図7参照)と重なる位置にある。より具体的には、図7に示すように、軸線L方向からみたとき、第1スリット311の外周縁311aは、筒状胴部321の内周面325(円筒部32の内周面325)と重なる位置にあり、第1スリット311の内周縁311bは、第1コア71の外周面715と重なる位置にある。その結果、可動体6の永久磁石53と固定体2のコイル55との位置が精度よく設定されている。
【0034】
かかる構成は、リニアアクチュエータ1の組み立て工程において、固定体側連結部81をコイルボビン3に固定した後、バネ部材8の可動体側連結部82を第2コア72に固定する際、第1スリット311から薄板状の治具30(シム)を挿入して、治具30を筒状胴部321の内周面325(円筒部32の内周面325)と第1コア71の外周面715との隙間Gに介在させることにより、可動体6とコイルボビン3との位置決めを行う。そして、この状態で、バネ部材8の可動体側連結部82を第2コア72に固定する。
【0035】
図4および図6に示すように、コイルボビン3の底板部31には、第1スリット311より径方向内側に第2スリット312が形成されている。かかる第2スリット312は、バネ部材8を介して可動体6をコイルボビン3に取り付けた後、コイルボビン3の底板部31に固定板4を接着剤(図示せず)により固定する際、固定板4から切り起こされた位置決め板43が嵌ることにより、コイルボビン3と固定板4との位置決めが行われる。
【0036】
このようにして、コイルボビン3の底板部31に固定板4を接着剤により固定した際、第1スリット311および第2スリット312は、接着剤により塞がれることにより、固定体2の内側において、可動体6と固定体2との間は、径方向外側に向けて開口する開口部20のみで外部と連通する。従って、可動体6と固定体2との間はエアーダンパーとして機能する。
【0037】
なお、第1スリット311および第2スリット312において、軸線L方向の一方側L1の開口縁にはテーパ面311t、312tが形成されている。従って、第1スリット311および第2スリット312に対して治具30や位置決め板43を容易に挿入することができる。また、接着剤が第1スリット311および第2スリット312に向けて容易に流れ込む。
【0038】
(粘着部材45の構成)
図1図2および図3に示すように、固定板4には、開口部20に沿って粘着部材45が設けられている。本形態において、粘着部材45は、固定板4の軸線L方向の他方側L2の面に固着された粘着テープや粘着性を備えた塗布物である。本形態において、粘着部材45は、軸線L方向からみたとき、固定体4において、コイルボビン3の第1フランジ部322の外縁と重なる位置に沿って円環状に形成されている。
【0039】
(ボビン3の補強リブ33の構成)
本形態のリニアアクチュエータ1において、可動体6と固定体2との間には、第2コア72の内周面727に径方向内側で対向する第2フランジ部323の外周端部327によって、外力により可動体6が軸線Lに直交する方向に移動した際に可動体6の可動範囲を規制する第1ストッパが構成されている。また、可動体6と固定体2との間には、第2コア72の凸部723と第2フランジ部323とによって、外力により可動体6が軸線Lの他方側L2に移動した際に可動体6の可動範囲を規制する第2ストッパが構成されている。
【0040】
但し、第2フランジ部323は、薄い円環部であり、ストッパ用として強度が不十分である。そこで、本形態では、コイルボビン3の円筒部32の外周面のうち、第2フランジ部323より軸線L方向の他方側L2には第2フランジ部323に繋がる補強リブ33が構成されている。本形態において、補強リブ33の外周面330は、軸線L方向からみたとき、第2フランジ部323の外周端部327と重なっている。
【0041】
ここで、補強リブ33は、アーム部83の可動体側連結部82との接続位置820から周方向にずれた位置に設けられている。また、補強リブ33は、アーム部83の可動体側連結部82との接続位置820からアーム部83の延在方向に沿って軸線L方向の他方側
L2から一方側L1に向けて傾いた斜面335を軸線L方向の他方側L2に向けている。すなわち、補強リブ33は、周方向の寸法が軸線L方向の他方側L2で短く、軸線L方向の一方側L1で長くなっており、最も長い部分が第2フランジ部323と繋がっている。
【0042】
(ゲル状ダンパー部材9の構成)
図2および図3に示すように、本形態のリニアアクチュエータ1において、軸線L上の位置において固定体2と可動体6との間にはゲル状ダンパー部材9が配置されている。
【0043】
より具体的には、固定体2において、固定板4は、可動体6(永久磁石53)に対して軸線L方向の一方側L1で第1コア71の貫通穴710およびボビン3の底板部31の貫通穴310を介して対向する固定体側対向部になっており、軸線L方向において、永久磁石53と固定板4との間には、円柱状のゲル状ダンパー部材9が配置されている。ここで、ゲル状ダンパー部材9は、軸線L方向の一方側L1の面が固定板4に接着剤により固定され、他方側L2の面は、永久磁石53に接着剤により固定されている。この状態で、ゲル状ダンパー部材9は、第1コア71の貫通穴710の内側、およびボビン3の底板部31の貫通穴310の内側を貫通している。
【0044】
本形態において、ゲル状ダンパー部材9は、針入度が90度から110度のシリコーンゲルからなる。針入度とは、JIS−K−2207やJIS−K−2220で規定されているように、25℃で9.38gの総荷重をかけた1/4コーンの針が5秒間に入り込む深さを1/10mm単位で表わした値であり、この値が小さいほど硬いことを意味する。
【0045】
(本形態の動作および主な効果)
以上説明したように、本形態のリニアアクチュエータ1において、コイル51への通電を休止している期間、可動体6は、図3(b)に示すように、可動体6の質量とバネ部材8の保持力(付勢力)とが釣り合った原点位置にある。この状態で、コイル51に正弦波や反転パルス等を供給すると、まず、可動体6は、磁気駆動機構5によって推進力を受け、図3(c)に示すように、バネ部材8の付勢力に抗して、軸線L方向の一方側L1に移動する。その際の移動量は、コイル51に供給される電流値と、バネ部材8の付勢力とによって規定される。そして、バネ部材8の付勢力によって、原点位置に戻った後、逆向きの推進力を受け、図3(a)に示すように、バネ部材8の付勢力に抗して、軸線L方向の他方側L2に移動する。このようにして、可動体6を軸線L方向で振動する。その際の移動量は、コイル51に供給される電流値と、バネ部材8の付勢力とによって規定される。また、振動の周波数は、コイル51に供給される電流の周波数によって規定される。このため、振動の強弱や周波数が可変である。
【0046】
ここで、可動体6には円柱状の永久磁石53が1つ設けられ、固定体2では、永久磁石53を径方向外側で囲むコイルボビン3にコイル55が巻回されている。このため、永久磁石53およびコイル55を大径化できる。また、可動体6は、永久磁石53の軸線L方向の両側に第1コア71および第2コア72を備えているため、コイル55に鎖交する磁束密度が高い。従って、永久磁石53が1つであるという簡素な構成でも、可動体6に大きな推力を付与することができる。
【0047】
また、バネ部材8は、可動体6の永久磁石53を径方向外側で囲むコイルボビン3に接続されている等、可動体6が永久磁石53の径方向外側でバネ部材8に支持されている。このため、可動体6がバネ部材8によって安定した状態で支持されているため、可動体6を支軸で支持しなくても、可動体6に傾きが発生しにくい。それ故、本形態によれば、少ない部品点数でリニアアクチュエータ1を構成することができるとともに、可動体6に適正な振動を発生させることができる。
【0048】
また、第2コア72では、第1磁性板76と第2磁性板77とが積層されているため、第1磁性板76に対する絞り加工の際の制約から厚さに制限がある場合でも、第2コア72の端板部721を十分な厚さとすることができる。例えば、第2コア72の端板部721の厚さ(端板部762の板厚と第2磁性板77の板厚との和)が第1コア71の板厚より大である。それ故、コイル55に鎖交する磁束密度を高めることができるので、可動体6に大きな推力を付与することができる。
【0049】
また、コイルボビン3の底板部31には、軸線L方向からみたとき、コイルボビン3の円筒部32の内周面325と可動体6の外周面との間に構成された隙間Gに重なる第1スリット311が周方向の複数個所に形成されている。このため、リニアアクチュエータ1を組み立てる際、図7を参照して説明したように、第1スリット311からシム等の治具30を配置して円筒部32の内周面325と可動体6の外周面との間に適正な隙間Gを設けることができる。従って、周方向のいずれの個所においても、隙間Gの幅を適正に設定できるので、可動体6を支軸で支持しなくても、可動体6に傾きが発生しにくい。ここで、第1コア71は、永久磁石53より大径であるため、前記の隙間Gは、円筒部32の内周面325と第1コア71の外周面715との間に位置する。このため、永久磁石53の外周面535と円筒部32の内周面325との間で位置決めを行う場合より、可動体6の外周面と円筒部32の内周面325との位置決めを行いやすい。
【0050】
また、振動の周波数は、コイル51に供給される駆動信号の周波数によって規定される。その際、可動体6が、可動体6の質量とバネ部材8のバネ定数に対応する周波数で共振することがあるが、本形態では、固定体2の固定板4と可動体6の永久磁石53との間にゲル状ダンパー部材9が設けられており、かかるゲル状ダンパー部材9は、可動体6の移動に追従して変形しながら可動体6の振動を吸収する。このため、可動体6の共振を抑制することができる。また、ゲル状ダンパー部材9は、針入度が90度から110度である。このため、ゲル状ダンパー部材9は、ダンパー機能を発揮するのに十分な弾性を有するとともに、ゲル状ダンパー部材9が破断して飛散するような事態が発生しにくい。また、ゲル状ダンパー部材9は、可動体6および固定体2の双方に接着固定されているため、可動体6の移動に伴ってゲル状ダンパー部材9が移動することを防止することができる。
【0051】
また、第1コア71およびコイルボビン3の底板部31には、ゲル状ダンパー部材9が内側に配置された貫通穴710、310が形成され、ゲル状ダンパー部材9は、軸線L方向において、固定板4と永久磁石53との間に挟まれている。このため、ゲル状ダンパー部材9を可動体6とコイルボビン3との間に配置する場合に比して、軸線L方向においてゲル状ダンパー部材9を配置するスペースを拡大することができる。それ故、ゲル状ダンパー部材9として軸線L方向の寸法が大のものを配置することができるので、可動体6の共振をより確実に抑制することができる。
【0052】
また、固定体2は、底板部31に対して可動体6とは反対側に重なる固定板4を備えているため、底板部31に第1スリット311等が形成されていても、軸線L方向の一方側L1を固定板4で塞ぐことができる。従って、永久磁石53の外周面535と円筒部32の内周面325との間等に異物が侵入しにくい。また、固定板4は、第1スリット311等を塞いでいるため、可動体6とコイルボビン3との間や、可動体6と固定板4との間がエアーダンバーとして作用する。このため、ゲル状ダンパー部材9のみを利用した場合に比して、可動体6の共振をより確実に抑制することができる。また、ゲル状ダンパー部材9に求められる要求を緩和することができる。
【0053】
また、固定板4の軸線L方向の他方側L2の面には、可動体6と固定板4との開口部20に沿って粘着部材45が設けられているため、開口部20から可動体6と固定板4との間に侵入しようとする塵等の異物を粘着部材45で捕捉することができる。従って、永久
磁石53の外周面535と円筒部32の内周面325との間等に異物が侵入しにくい。
【0054】
また、本形態では、コイルボビン3の第2フランジ部323をストッパに用いているが、第2フランジ部323には補強リブ33が繋がっている。このため、第2フランジ部323は十分な強度を有するため、第2フランジ部323を利用してストッパを構成することができる。また、補強リブ33は、バネ部材8の可動体側連結部82とアーム部83との接続位置820から周方向にずれた位置に設けられているため、コイルボビン3に補強リブ33を設けても、補強リブ33とバネ部材8のアーム部83とが干渉しにくい。また、補強リブ33は、アーム部83の可動体側連結部82との接続位置820からアーム部83の延在方向に沿って軸線L方向の他方側L2から一方側L1に向けて傾いた斜面335を軸線L方向の他方側L2に向けている。このため、補強リブ33とバネ部材8のアーム部83との干渉を避けつつ、補強リブ33を周方向の広い範囲にわたって形成することができる。
【0055】
[実施の形態2]
図8は、本発明の実施の形態2に係るリニアアクチュエータ1の断面図である。なお、本形態の基本的な構成は、実施の形態1と同様であるため、共通する部分には同一の符号を付してそれらの説明を省略する。
【0056】
実施の形態1では、固定板4の軸線L方向の他方側L2の面に粘着部材45として粘着テープや粘着性を備えた塗布物を設けたが、本形態では、図8に示すように、固定板4の軸線L方向の他方側L2の面に形成された溝48内に粘着部材45を配置してもよい。かかる構成によれば、粘着部材45を配置するスペースを容易に確保することができる。
【0057】
[その他の実施の形態]
上記実施の形態では、ゲル状ダンパー部材9を接着剤により固定した構造を採用したが、ゲル状ダンパー部材9を形成するための前駆体を設けた後、前駆体をゲル化させ、ゲル状ダンパー部材9自身の接着力によって、ゲル状ダンパー部材9を固定してもよい。例えば、実施の形態2ではゲル状ダンパー部材9を形成するためのUV硬化性の前駆体を設けた後、前駆体にUVを照射してゲル化させ、ゲル状ダンパー部材9自身の接着力によって、ゲル状ダンパー部材9を固定してもよい。
【0058】
上記実施の形態では、軸線L上に円柱状のゲル状ダンパー部材9を設けたが、さらに軸線Lの周りにゲル状ダンパー部材9を配置してもよい。また、軸線L上に代えて、軸線Lの周りにゲル状ダンパー部材9を配置してもよい。
【符号の説明】
【0059】
1・・リニアアクチュエータ、2・・固定体、3・・コイルボビン、4・・固定板、5・・磁気駆動機構、6・・可動体、8・・バネ部材、9・・ゲル状ダンパー部材、20・・開口部、30・・治具、31・・底板部、32・・円筒部、33・・補強リブ、45・・粘着部材、48・・溝、51・・コイル、53・・永久磁石、55・・コイル、71・・第1コア、72・・第2コア、76・・第1磁性板、77・・第2磁性板、78・・第3磁性板、81・・固定体側連結部、82・・可動体側連結部、83・・アーム部、310・・底板部の貫通穴、311・・第1スリット、312・・第2スリット、322・・第1フランジ部、323・・第2フランジ部、325・・円筒部の内周面、335・・斜面、710・・第1コアの貫通穴、715・・第1コアの外周面、721・・第2コアの端板部、723・・ストッパ用の凸部、761・・第1磁性板の端板部、762・・第1磁性板の側板部、820・・アーム部の可動体側連結部との接続位置、G・・隙間、L・・軸線、L1・・一方側、L2・・他方側
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8