(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記傾動連結部は、前記接続部側と前記傾動フレーム部側とに向かって交互に伸縮する伸縮体を備え、前記伸縮体の前記傾動フレーム部側の端部に前記自在継手が配されていることを特徴とする請求項1又は2記載の鋼板移送装置。
【発明を実施するための形態】
【0016】
前記自在継手は、球面凸部と、前記球面凸部の球面に沿って摺動するように嵌合された球面凹部とを備えた構成とすることが好ましい。
【0017】
また、前記傾動連結部は、前記接続部側と前記傾動フレーム部側とに向かって交互に伸縮する伸縮体を備え、前記伸縮体の前記傾動フレーム部側の端部に前記自在継手を配した構成とすることが好ましい。この場合、前記伸縮体の収縮に対して伸長させる方向に付勢する付勢手段を、更に備えた構成が好ましい。
【0018】
また、前記クランプ部のクランプ面に、前記鋼板の厚み方向に沿って複数の突起を形成した構成とすることが好ましい。
【0019】
以下、本発明に係る一実施形態の鋼板移送装置Aを
図1〜
図8に基づいて説明する。尚、以下で説明する各実施形態は、本発明を限定するものではない。
【0020】
図1〜
図3に示すように、鋼板移送装置Aは、パワーショベルやクレーン等の走行体(図示せず)に備えられたアームBの先端に設けられたリンク板B1、及び走行体からの操作によって伸縮する油圧シリンダB2に、接続部1を軸支することによって走行体に連結されており、油圧シリンダB2の伸縮に伴って回転するようにされている。
【0021】
鋼板移送装置Aは、接続部1に一体に設けられたフレーム部2と、鋼板Cの表面C1と平行に対面する底部30を有する傾動フレーム部3と、フレーム部2に対して傾動フレーム部3が傾動するように、両フレーム部を連結する傾動連結部4A〜4Dと、フレーム部2に、接続部1側と傾動フレーム部3側とにわたる方向(
図1において上下方向)に回転するように、且つ傾動フレーム部3側への回転限界位置(
図6参照)で鋼板Cを支持するように軸支された支持アーム5と、傾動フレーム部3に、鋼板Cの両側部C2、C2をクランプ(
図6参照)、及びクランプ解除(
図1参照)する方向にスライドするように配されたクランプ部6A、6Bと、走行体からの動力を、支持アーム5を回転させる動力として伝達する動力伝達部7と、クランプ部6A、6Bをスライドさせる動力として伝達する動力伝達部8とを具備している。
【0022】
以下の説明では、接続部1側を「上」、傾動フレーム部3側を「下」、クランプ部6A、6Bのスライド方向を「左右」、このクランプ部6A、6Bのスライド方向と平面方向で直交する方向を「前後」という。
【0023】
ここで、走行体からの動力とは油圧であり、この油圧を利用して動力伝達部7、8の後述する油圧シリンダ70、71、80、81を伸縮させることで、支持アーム5の回転、及びクランプ部6A、6Bのスライドを行うことができるようになっている。また、この油圧は、油圧シリンダB2の伸縮動作の動力にも利用されている。
【0024】
すなわち、鋼板移送装置Aは、走行体のオペレータによる各種操作によって、鋼板Cへの移動、鋼板Cのクランプ、移動、地面への設置等の各種作業を、補助者の補助を必要とせずに行うことができる。
【0025】
フレーム部2と傾動フレーム部3とは、傾動連結部4A〜4Dによって上下方向で連結されており、この傾動連結部4A〜4Dによって、傾動フレーム部3がフレーム部2に対して独立して傾動するようにされている(
図2参照)。
【0026】
また、フレーム部2と傾動フレーム部3とは、軸支部3Aによって、一方向(
図2において、左右方向)に傾動するように軸支されている。
【0027】
軸支部3Aは、前後方向の軸を有して傾動フレーム部3に設けられた支軸30Aと、フレーム部2に設けられ、支軸30Aが同軸、且つ回転自在に嵌合する支持部31Aとから構成されており、支持部31Aの軸を回転中心として、支軸30Aが回転することによって、傾動フレーム部3の左右方向の傾動を案内するようにされている。
【0028】
フレーム部2は、支持アーム5を回転させる動力伝達部7を内蔵したものであり、幅広とする前後面20、21がクランプ部6Aのクランプ方向と直交する方向に向くように配置されている。
【0029】
フレーム部2は、上端側に接続部1が位置し、幅狭とする左右端部に、支持アーム5の回転用、及び動力伝達部7の動作用の空間S1が設けられている。
【0030】
傾動フレーム部3は、鋼板Cの表面C1と対面して接触する底部30と、底部30の上面に傾動連結部4A〜4Dが配置される前後2か所の配置部31、32が上方に向けて突設されている。尚、傾動連結部4A〜4Dは、全て同構成である。
【0031】
配置部31、32には、クランプ部6A、6B、及びクランプ部6A、6Bをスライドさせる動力伝達部8が夫々内蔵されており、左右端部にクランプ部6A、6Bのスライド用の空間S2が設けられている。
【0032】
配置部31、32は、前後方向にフレーム部2の左右端部よりも幅広となるように離間して設けられており、この配置部31、32の間を、フレーム部2の直下に位置し、傾動フレーム部3の傾動用の空間S3として確保している。
【0033】
傾動連結部4A、4Bは、フレーム部2の前面20と傾動フレーム部3の配置部31とにわたるように設けられ、傾動連結部4C、4Dは、フレーム部2の後面21と傾動フレーム部3の配置部31とにわたるように設けられている。
【0034】
傾動連結部4A〜4Dは、
図5に示すように、軸方向を上下方向とする伸縮体40と、伸縮体40の上端に設けられ、フレーム部2の前面20、21に固定される固定部41と、伸縮体40の下端と傾動フレーム部3の配置部31との上面にわたるように配置した自在継手42と、伸縮体40の収縮に対して伸長させる方向に付勢する付勢手段43とを備えている。
【0035】
伸縮体40は、上方の外筒40Aと、この外筒40Aに同軸でスライド自在に嵌合された内筒40Bとで構成され、外筒40Aの周面と内筒40Bの先端とに、付勢手段43を保持する環状の保持板40C、40Dが径方向に突設されている。
【0036】
この伸縮体40は、外筒40Aと内筒40Bとにわたって設けられたストッパ40Eによって、内筒40Bが外筒40Aに対して抜け止めされており、このストッパ40Eによる抜け止めによって、フレーム部2が傾動フレーム部3を吊り下げるように支持できるようになっている。
【0037】
固定部41は、外筒40Aの上面に突設された支持板41Aと、前面20、21に対してボルト・ナット(図示せず)により固定され、支持板41Aを左右方向に回転するように軸支する固定板41Bとから構成されている。
【0038】
自在継手42は、内筒40Bの下端面に下方に突設された球面凸部42Aと、配置部31の上面に固定され、球面凸部42Aに嵌合された球面凹部42Bとで構成されている。
【0039】
球面凸部42Aは、内筒40Bの下端面に、この内筒40Bの軸と同軸で突設された杆状部420Aと、この杆状部420Aの下端に一体に、且つ杆状部420Aの径よりも大径とする直径として形成された球状部421Aとで構成されている。
【0040】
球面凹部42Bは、配置部31の上面に固定される固定体420Bに、球状部421Aに適合する直径の球面として凹設されており、球状部421Aに対する嵌合状態において、球状部421Aの周面に沿って上下方向に摺動できるようにされている。
【0041】
すなわち、この自在継手42は、球面凸部42Aの球状部421Aに対する球面凹部42Bの嵌合によって構成されているので、球面凹部42Bの球状部421Aの球面に沿う上下方向の摺動により自在継手が折れ曲がるように動作し、この摺動による折れ曲がりが、伸縮体40の軸を中心とする360度の範囲中において、いずれの位置からでも行うことができるようになっている。
【0042】
また、球面凹部42Bの開口部の直径を球状部421Aの直径よりも小径とすることによって、球状部421Aに対して球面凹部42Bが抜け止めされて、球状部421Aに対する嵌合状態を保持できるようになっている。
【0043】
付勢手段43は、圧縮ばねであり、保持板40C、40Dの間に圧縮状態として配設されており、これによって、外筒40Aに対して伸縮方向にスライドする内筒40Bの伸長状態を保持し、付勢手段43の付勢力に抗する力が加わることによって圧縮されて、内筒40Bを収縮方向にスライドさせることができるようにされている。
【0044】
このような傾動連結部4A〜4Dによると、
図2に示すように、フレーム部2と傾動フレーム部3を連結することができると共に、傾動フレーム部3をフレーム部2に対して独立して傾動させることができる。
【0045】
また、伸縮体40の伸長状態を付勢手段43が保持しているので、走行体の走行時における振動による伸縮体40の連続する上下動を防ぐことができ、これによって、傾動フレーム部3の重量を支持する伸縮体40の破損等を防ぐことができる。
【0046】
また、自在継手42は、球面凹部42Bの球状部421Aの球面に沿う上下方向のスライドが、伸縮体40の軸を中心とする360度の範囲中において、いずれの位置からでも行うことができるため、地面に置かれた鋼板Cが傾斜していても、傾動フレーム部3の底部30を鋼板Cの表面C1に押し付けるように傾動連結部4Aを下降させれば、鋼板Cの傾斜角及び傾斜方向にかかわらず、傾動フレーム部3を鋼板Cの傾斜に合わせて傾動させることができる。
【0047】
傾動連結部4A〜4Dの傾動は、傾斜する鋼板Cの高い側に位置する傾動連結部4B、4Dの伸縮体40が付勢手段43の付勢力に抗して収縮すると共に、傾動連結部4A〜4Dの自在継手42の球面凹部42Bが、球状部421Aの球面に沿って上方向に摺動して自在継手42が折れ曲がるように動作することで行われる。
【0048】
したがって、この傾動連結部4A〜4Dによって、傾動フレーム部3の底部30を鋼板Cの表面C1に平行に接触させることができるので、傾動フレーム部3を鋼板Cのクランプが確実に行うことができるように自動的にセットすることができる。
【0049】
また、傾動フレーム部3の底部30を鋼板Cの表面C1に平行に接触するときに、伸縮体40が収縮することによって、接触時の衝撃を吸収することができ、これによって、傾動連結部4A〜4Dや傾動フレーム部3等の破損や故障等を防ぐことができる。
【0050】
また、傾動連結部4A〜4Dが複数であるので、球面同士の嵌合による自在継手42であっても、伸縮体40の軸を中心とする傾動フレーム部3の回転を防止することができる。
【0051】
これによって、アームBの動作に伴う鋼板移送装置Aの姿勢の変化があっても、傾動フレーム部3がフレーム部2に対して定位置を保持できるので、鋼板Cをクランプする位置への配置、クランプした鋼板Cの移送、及び設置を容易に行うことができる。
【0052】
本実施形態では、四個の傾動連結部4A〜4Dによって傾動フレーム部3を傾動可能に連結する構成として例示したが、傾動連結部4A〜4Dの個数は、四個に限らず、複数であれば、球体同士の嵌合による自在継手42であっても、伸縮体40の軸を中心とする傾動フレーム部3の回転を防止することができると共に、四個の傾動連結部4A〜4Dを備えたものと同じ効果を有するものとすることができる。
【0053】
また、一個の傾動連結部4Aによって、フレーム部2に対して傾動フレーム部3を傾動自在に連結することができる(図示せず)。この場合、前述した球面同士の嵌合による自在継手42を用いることができるが、傾動連結部4Aが一個であるので、このような自在継手42では、伸縮体40の軸を中心とする傾動フレーム部3の回転を防止することができない。
【0054】
傾動連結部4Aが一個である場合では、自在継手42に、周知の軸継手を用いると共に、外筒40Aに対する伸縮体40の軸を中心とする内筒40Bの回転が行われないようにすることによって、伸縮体40の軸を中心とする傾動フレーム部3の回転を防止することができる(図示せず)。
【0055】
支持アーム5は、
図1、
図6に示すように、先端にフック部50を有した左右一対のものであり、夫々、動力伝達部7によって上下方向に回転するように軸支されており、回転下限位置において、フック部50が鋼板Cを裏面C3側から支持するようされている。
【0056】
また、支持アーム5は、クランプ部6A、6Bでクランプした鋼板Cを上方に上げている際に、下方に回転させることによって、鋼板Cの裏面C3と、クランプされずに地面Gに置かれた鋼板Cの表面C1、或いは地面Gとの間に生じる空間Sにフック部50が挿入されて、フック部50が鋼板Cを裏面C3側から支持する支持状態となり、また、この支持状態から上方に回転させることによって、空間Sからフック部50が脱出して、フック部50による鋼板Cの支持が解除される。
【0057】
動力伝達部7は、走行体からの操作によって伸縮する油圧シリンダ70、71と、油圧シリンダ70、71の伸縮動を支持アーム5の回転動として伝達するリンク機構72、73とから構成されており、油圧シリンダ70、71の伸長で、リンク機構72、73が支持アーム5を下方向に回転させるように動作し、油圧シリンダ70、71の収縮で、リンク機構72、73が支持アーム5を上方向に回転させるように動作するようにされている。
【0058】
このような支持アーム5によると、クランプ部6A、6Bでクランプした鋼板Cの裏面C3を支持することによって、万が一クランプ部6A、6Bのクランプが外れた場合でも、鋼板Cの落下を防ぐことができる。
【0059】
また、支持アーム5は、走行体からの操作で伸縮する油圧シリンダ70、71によって、回転動作が行われるようにされているため、作業者の手によって回転操作を行わなくても、支持アーム5による鋼板Cの支持、及び支持解除を行うことができる。
【0060】
クランプ部6A、6Bは、
図1、
図2、
図6に示すように、夫々、先端にクランプ面60A、60Bを有した左右一対のものであり、夫々、右側が動力伝達部8によって左右方向にスライドするように支持されスライド部61A、61Bであり、左側が底部30に固定された固定部62A、62Bである。
【0061】
クランプ面60A、60Bは、
図8(a)に示すように、鋼板Cの側面C2に対面するように、スライド部61A、61B、及び固定部62A、62B(図示では、スライド部61Aのみ)から下方に向かって突設されており、上端から下端に向かって外方に拡がる傾斜面として形成されている。
【0062】
クランプ面60A、60Bには、鋼板Cの厚み方向に沿って複数の突起63が形成されており、この複数の突起63が鋼板Cの側面C2、C2をクランプしたときに鋼板Cの側面C2、C2に圧接することで、クランプ時の滑り止めとして機能するようにされている。
【0063】
動力伝達部8は、走行体からの操作によって伸縮する油圧シリンダ80、81を備えており、油圧シリンダ80、81の伸縮動をスライド部61A、61Bの左右のスライド動として伝達するようにされており、油圧シリンダ80、81の伸長で、スライド部61A、61Bをクランプ方向(図面上左方向)にスライドさせ、油圧シリンダ80、81の収縮で、スライド部61A、61Bをクランプ解除方向(図面上、右方向)にスライドさせるようにされている。
【0064】
このようなクランプ部6A、6Bによると、走行体からの操作によって油圧シリンダ80、81の伸縮によって、強制的にクランプ、及びクランプ解除するように動作させられるため、鋼板Cのクランプ、及びクランプ解除を確実に行うことができる。
【0065】
また、滑り止めとなる複数の突起63によって、鋼板Cのクランプ時のクランプ機能を高めることができる。
【0066】
また、クランプ面60A、60Bが、上端から下端に向かって外方に拡がる傾斜面として形成されているので、複数枚重ねられた鋼板Cの最上段の一枚のみを、鋼板の厚みにかかわらず確実にクランプすることができ、これにより、鋼板Cを一枚ずつ移送できると共に、地面に設置することができる。
【0067】
突起63の他の構成としては、
図8(b)(c)に示すものが例示できる。このような突起63が形成されたクランプ面60A、60Bによっても、
図8(a)に示すクランプ面60A、60Bと同じ効果が期待できる。
【0068】
以上の鋼板移送装置Aによると、鋼板Cに対するクランプ位置への誘導動作、クランプ部6A、6Bのクランプ動作、及びクランプ解除動作、支持アーム5の支持、及び支持解除動作、クランプ、及び支持された鋼板Cの移送動作、設置場所への鋼板Cの設置動作、等の鋼板移送装置Aの各種動作を、補助者の補助を必要とせずに、走行体からの操作のみによって行うことができる。
【0069】
また、クランプ部6A、6Bのクランプ動作が、動力伝達部8の油圧によって強制的に行われ、しかも、クランプ面60A、60Bの複数の突起63によって滑り止めがされているので、鋼板Cのクランプの確実性を高めることができ、搬送中の振動等でクランプの外れを防止することができる。
【0070】
また、傾動フレーム部3が鋼板Cの傾斜に合わせて自動的に傾斜するようにされているため、地面Gに置かれた鋼板Cが傾斜していても、傾動フレーム部3の底部30を鋼板Cの表面C1に平行に接触させることができることによって、クランプ部6A、6Bによる鋼板Cのクランプを確実、且つ容易に行うことができる。
【0071】
したがって、鋼板移送装置Aは、鋼板Cの搬送・移動・設置等を、迅速、且つ容易に、しかも安全に行うことができる。
【0072】
この鋼板移送装置Aは、支持アーム5が、フレーム部2の前後面20、21に軸支されていると共に、動力伝達部7が、フレーム部2の前後面20、21の間と支持アーム5とにわたるように設けられているため、基本的には、傾動フレーム部3が左右方向にのみ傾動するように設定されている。
【0073】
鋼板移送装置Aの各部材の連結部分や軸支部分には、動作を滑らかにするためにある程度「遊び」が設けられているが、仮に、傾動フレーム部3を、軸によって左右方向にのみ傾動させるように支持した場合、傾動フレーム部3に前後方向へ傾動する力が加わった際に、その力が連結部分や軸支部分に集中するため、長期間の使用によって、連結部分や軸支部分が摩耗し、「遊び」が大きくなると共に、この「遊び」が大きくなることによって、鋼板移送装置Aの動作中のガタツキ、及びガタツキによる衝撃の発生の要因となる。
【0074】
本実施形態の鋼板移送装置Aは、傾動フレーム部3が自在継手42によって360度の傾動が可能となっているため、傾動フレーム部3に前後方向へ傾動する力が加わった際に、この力を傾動連結部4A〜4Dの伸縮体が収縮することによって吸収することができ、これによって、衝撃による支軸30A、及び支持部31Aの破損や変形等を防ぐことができる。
【0075】
尚、前述したように、クランプ部6A、6Bのクランプの確実性が高いので、支持アーム5を備えない鋼板移送装置Aとすることも可能であり、動力伝達部8の油圧の力によっては、突起63を備えないクランプ部6A、6Bとすることも可能である。
【0076】
以下、本発明に係る第二実施形態の鋼板移送装置A’を
図9〜
図14に基づいて説明する。尚、第一実施形態と重複する部位についての説明は、同符号を付すことにより省略する。
【0077】
鋼板移送装置A’は、
図11〜
図14に示すように、傾動フレーム部3が左右・前後に傾動するように支持されたものであり、鋼板Cの傾斜方向が、左右方向であっても前後方向であっても、傾動フレーム部3を鋼板Cの傾斜方向に沿わせることができるようにしたものである。
【0078】
第一実施形態の鋼板移送装置Aは、支持アーム5を作動させる動力伝達部7の油圧シリンダ70、71が、フレーム部2と傾動フレーム部3に直接設けられた支持アーム5にわたるように設けられたものであり、これによって、傾動フレーム部3が左右方向にのみ傾動するようになっている。
【0079】
第一実施形態の鋼板移送装置Aに対して、第二実施形態の鋼板移送装置A’は、傾動フレーム部3に立設された支承板300に、支持アーム5が軸支されると共に、動力伝達部7の油圧シリンダ70、71とリンク機構72、73とが、支承板300と支持アーム5とにわたるように軸支され、この支承板300内で、油圧シリンダ70、71を収縮させることで、リンク機構72、73を介して支持アーム5を作動させるようにされている。
【0080】
支軸30Aには、支持部31Aに嵌合する部位に球面体32Aが形成され、支持部31Aには、球面体32Aが適合して嵌合する形状の嵌合凹部33Aが形成されており、この球面体32が嵌合凹部33Aに対して、360度の範囲で回転できるようになっている。
【0081】
また、フレーム部2と支承板300とにわたるように、傾動フレーム部3の左右・前後の傾動を案内すると共に、球面体32Aの回転による傾動フレーム部3のガタツキを抑制するガイド部10が設けられている。
【0082】
ガイド部10は、フレーム部2に、左右方向にスライド自在に支持されたスライド杆10Aと、スライド杆10Aの先端側(支承板300側)を上下スライド自在に嵌合するガイド管11Aとから構成されている。
【0083】
スライド杆10Aは、丸棒状ものであり、左右方向に沿う軸を有してフレーム部2に固定された支持管100Aに対して、同軸でスライド自在に嵌合され、
図12に示すように、傾動フレーム部3の左右方向の傾動に伴って、左右方向にスライドするようにされている。
【0084】
また、スライド杆10Aの先端には、スライド杆10Aの直径よりも大径とする球状突起10Bが形成されており、この球状突起10Bがガイド管11Aに側面から左右方向に抜け止めされた状態で嵌合されている。
【0085】
ガイド管11Aは、軸方向を上下方向として立設されており、内径を球状突起10Bと同等程度とし、スライド杆10A側の側面には、長手方向がガイド管11Aの軸方向に沿い、ガイド管11Aの内外を貫通するように形成されたガイド孔11Bを備えている。
【0086】
このようなガイド部10は、
図10、
図12に示すように、スライド杆10Aの球状突起10Bがガイド管11Aの内側に嵌合された状態では、スライド杆10Aがガイド孔11Bを貫通すると共に、球状突起10Bがガイド孔11Bによって抜け止めされている。
【0087】
また、
図12に示すように、傾動フレーム部3が左右に傾動するとき、ガイド管11Aがスライド杆10Aにガイドされながら上下方向にスライドすると共に、この上下方向のスライドでスライド杆10Aを左右方向にスライドさせることによって、傾動フレーム部3の左右の傾動をガイドするようにされている。
【0088】
また、
図13、
図14に示すように、傾動フレーム部3が前後に傾動するとき、スライド杆10Aの軸を中心としてガイド管11Aが前後方向に回転することによって、傾動フレーム部3の前後の傾動をガイドするようにされている。
【0089】
更に、傾動フレーム部3が左右に傾動した状態でも、スライド杆10Aの軸を中心としてガイド管11Aが前後方向に回転して傾動フレーム部3を前後に傾動させることができる。
【0090】
すなわち、鋼板移送装置A’は、油圧シリンダ70、71が、フレーム部2とかかわりなく、支持アーム5を軸支した支承板300に軸支され、更に、支持部31Aの嵌合凹部33Aに対して支軸30Aの球面体32Aが360度方向に回転自在に支持されているため、傾動フレーム部3を360度の範囲で傾動させることができる。
【0091】
傾動フレーム部3を360度の範囲で傾動させることができるので、鋼板Cの傾斜方向にかかわらず、傾動フレーム部3を鋼板Cに対面させることができる。
【0092】
しかも、傾動フレーム部3の360度の範囲の傾動を、ガイド部10の、スライド杆10Aの左右スライド、及びガイド管11Aのスライド杆10Aによりガイドされる上下スライド、並びにスライド杆10Aの軸を中心とするガイド管11Aの回転によって、ガイドすることができる。
【0093】
その上、フレーム部2とガイド管11Aとを連結するように、スライド杆10Aが配置されているので、球面体32の中心を上下方向に通過する軸を中心とする傾動フレーム部3の回転(平面方向の回転)を阻止することができる。
【0094】
傾動フレーム部3の平面方向の回転を阻止することによって、傾動フレーム部3を鋼板Cに対して対面させる際に、傾動フレーム部3の平面方向への振れを防止し、これによって、クランプ部6A、6Bが傾動フレーム部3を確実にクランプできる位置となるように、傾動フレーム部3の底部30を鋼板Cの表面C1に対して平行に対面させることができる。
【0095】
そして、鋼板移送装置A’の基本的な作用・効果は、第一実施形態の鋼板移送装置Aと同様であり、すなわち、傾動連結部4A〜4Dの伸縮体の付勢力によって、傾動フレーム部3の傾動前の状態を保持することができると共に、傾動フレーム部3の鋼板Cに対して対面させるときに、鋼板Cの傾斜に合わせて、傾動連結部4A〜4Dの自在継手42が、付勢手段43の付勢力に抗して折れ曲がると共に、付勢手段43の付勢力に抗して伸縮体40が伸縮することで、傾動フレーム部3の底部30を鋼板Cの表面C1に対して平行に対面させることができる。
【0096】
したがって、この傾動連結部4A〜4Dによって、傾動フレーム部3の底部30を鋼板Cの表面C1に平行に接触させることができるので、傾動フレーム部3を鋼板Cのクランプが確実に行うことができるように自動的にセットすることができる。
【0097】
また、傾動フレーム部3の底部30を鋼板Cの表面C1に平行に接触するときに、伸縮体40が収縮することによって、接触時の衝撃を吸収することができ、これによって、傾動連結部4A〜4Dや傾動フレーム部3等の破損や故障等を防ぐことができる。
【0098】
また、傾動連結部4A〜4Dが複数であるので、球面同士の嵌合による自在継手42であっても、伸縮体40の軸を中心とする傾動フレーム部3の回転を防止することができる。
【0099】
これによって、アームBの動作に伴う鋼板移送装置Aの姿勢の変化があっても、傾動フレーム部3がフレーム部2に対して定位置を保持できるので、鋼板Cをクランプする位置への配置、クランプした鋼板Cの移送、及び設置を容易に行うことができる。
【0100】
第二実施形態のクランプ部6A、6Bは、左右双方に、スライド部61A、61Bを備えたものであり、左右のスライド部61A、61Bが油圧シリンダ80、81の伸縮によってスライドするようにされている。
【0101】
すなわち、第二実施形態のクランプ部6A、6Bは、左右双方に、左右にスライドするスライド部61A、61Bを備えているため、幅の異なる各種鋼板Cをクランプするのに、広い範囲で対応することができる。