(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、パーソナルコンピュータ、携帯電話機、スマートフォン、PDA(Personal Digital Assistant)、デジタルカメラ、ビデオカメラ、音楽プレーヤ、ゲーム機、車両用ナビゲーション装置等の電子機器においては、SIM(Subscriber Identity Module)カード、MMC(R)(Multi Media Card)、SD(R)(Secure Digital)カード、miniSD(R)カード、xDピクチャーカード(R)(xD−Picture card)、メモリスティック(R)、メモリスティックDuo(R)、スマートメディア(R)、Trans−Flash(R)メモリカード、マイクロSD(R)カード等の各種メモリカードを利用するために、カードコネクタを備えている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
メモリカードは、通常、底面に複数の接続パッドを有し、カードコネクタに正しい姿勢で挿入すると、メモリカードの接続パッドがカードコネクタ内の接続端子と接触して導通される。これにより、カードコネクタが実装された基板は、カードコネクタを介してメモリカードへのアクセスが許容され、データの読み出しや書き込みを行うことが可能になる。
【0004】
近年、メモリカードは、データ量の増加や読み出し/書き込み速度の向上に伴い、周囲からのノイズに敏感なだけでなく、逆にノイズ源となって周囲に悪影響を及ぼす可能性が指摘されている。そこで、トレイを介してメモリカードを挿入するトレイ式のカードコネクタでは、ノイズ遮蔽機能を有する金属製のトレイでメモリカードを覆い、また、メモリカードを直接挿入する直挿し式のカードコネクタでは、ノイズ遮蔽機能を有する金属製のシェルでメモリカードを覆うことにより、ノイズの影響を低減している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、後縁に取り出し操作用の肉厚部が設けられたメモリカード(例えば、マイクロSD(R)カード)を対象とするカードコネクタ、特に、イジェクト機能を持たない直挿し式のカードコネクタでは、肉厚部の取り出し操作を許容するためにカードの後縁部分を広い範囲で露出させているので、ノイズの遮蔽性能が不十分であった。
【0007】
そこで、本発明は、上記の問題点に鑑みなされたものであって、後縁に取り出し操作用の肉厚部が設けられたカードを収容するものでありながら、肉厚部の取り出し操作を許容しつつ、シェルによるカードの被覆面積を拡大し、ノイズの遮蔽性能を向上させるソケット及びカードコネクタの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1に係る発明は、カードコネクタ用のソケットであって、カードを収容するハウジングと、ノイズを遮蔽可能な材料を用いて形成され、前記ハウジングに収容された前記カードを覆うシェルと、を備え、前記シェルが、前記カードの後縁に設けられた取り出し操作用の肉厚部を覆う拡張部を有し、前記拡張部が、その一部に前記肉厚部を取り出し操作するための切込みを有する。
【0009】
また、請求項2に係る発明は、前記切込みが、前記拡張部の中央部分に形成されている。
【0010】
また、請求項3に係る発明は、前記拡張部が、前記肉厚部の側縁まで覆い、その先端に基板への実装部を有する。
【0011】
また、請求項4に係る発明は、カードコネクタであって、請求項1〜3のいずれか一項に記載のソケットを備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、後縁に取り出し操作用の肉厚部が設けられたカードを収容するものでありながら、肉厚部の取り出し操作を許容しつつ、シェルによるカードの被覆面積を拡大し、ノイズの遮蔽性能を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る好適な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本明細書では、カードコネクタの構成要素のうち、カードを収容するための構成要素をカードコネクタ用のソケットと定義する。言い換えれば、カードコネクタの構成要素から、カードと電気的に接続するための構成要素を除いた部分がソケットである。以下、特に区別しない限り、ソケットについてもカードコネクタの用語を用いて説明する。
【0015】
図1は、本発明の実施形態に係るカードコネクタのカード取り出し状態を示す斜視図である。
図1に示すカードコネクタ1は、本発明のソケットが適用されたカードコネクタであり、図示しない電子機器の基板に実装され、その内部には後述するカード101が挿入される。これにより、カード101は、カードコネクタ1を介して電子機器に装着される。なお、電子機器は、例えば、パーソナルコンピュータ、携帯電話機、スマートフォン、PDA、デジタルカメラ、ビデオカメラ、音楽プレーヤ、ゲーム機、車両用ナビゲーション装置等であるが、いかなる種類の機器であってもよい。
【0016】
なお、本実施形態において、カードコネクタ1の各部の構成及び動作を説明するために使用される上、下、左、右、前、後等の方向を示す表現は、絶対的なものでなく相対的なものであり、カードコネクタ1又はその部品が図に示される姿勢である場合に適切であるが、カードコネクタ1又はその部品の姿勢が変化した場合には、姿勢の変化に応じて変更して解釈されるべきものである。
【0017】
図2は、本発明の実施形態に係るカードを示す図であり、(a)はカードの平面図、(b)はカードの底面図である。
図1及び
図2に示すように、カードコネクタ1に挿入されるカード101は、後縁に取り出し操作用の肉厚部111が設けられたカードである。本実施形態においては、マイクロSD(R)カードを例示して説明するが、後縁に取り出し操作用の肉厚部が設けられたカードであれば、いかなる種類のカードであってもよい。
【0018】
図2に示すように、マイクロSD(R)カードからなるカード101は、略長方形の板形状を有しており、その後縁に前述した取り出し操作用の肉厚部111が形成されている。具体的には、カード101の上面後縁部から上方に突出する凸部によって肉厚部111が構成されており、該肉厚部111の前端縁に形成される段差部112に爪や指、或いはピンなどの道具を引っ掛けることにより、カード101の取り出し操作が容易になる。
【0019】
一方、カード101の底面には、複数の接続パッド151が配設されている。具体的には、カード101の底面における前端寄りの位置に、前端縁に沿って並ぶように複数の接続パッド151が配設されている。
【0020】
カード101は、上下反転姿勢による誤挿入や、前後反転姿勢による誤挿入を防止するために、左右及び前後において非対称の形状を有する。具体的には、前端側の右端縁部に切欠き部121を有しており、カードコネクタ1の内部空間をこの形状に合わせることにより、カード101の誤挿入が規制される。
【0021】
図3は、本発明の実施形態に係るカードコネクタのシェルを外した状態を示す斜視図、
図4は、本発明の実施形態に係るカードコネクタのカード挿入状態を示す図であり、(a)はカードコネクタの平面図、(b)はカードコネクタの側面図、(c)はカードコネクタの背面図である。
図3及び
図4に示すように、カードコネクタ1は、合成樹脂等の絶縁性材料によって一体的に成形されたハウジング11と、金属等の導電性材料からなる板材に打抜き、折曲げ等の加工を施すことによって一体的に成形され、ハウジング11の上側に取付けられたカバー部材としてのシェル61とを有し、前端部に形成された挿入口1aから挿入されるカード101を収容する。そして、シェル61は、挿入されたカード101及びハウジング11の上方を覆うようになっている。
【0022】
ハウジング11は、実装される基板面に沿う底板部11aと、底板部11aの後縁から立ち上がる後壁部11bと、底板部11aの一側縁から立ち上がる側壁部11cとを有する。底板部11aは、接続端子51が取付けられた端子保持部11dを備える。端子保持部11dの上面には、前後方向に沿う複数の端子保持溝(図示せず)が並列状に形成されており、複数の接続端子51は、各端子保持溝によって位置決めされた状態で、端子保持部11dに対して固定されている。
【0023】
接続端子51は、端子保持部11dに固定される基部51aと、基部51aから後方に延在する接触部51bと、基部51aから前方に延在する基板接続部51cとを有する。接触部51bは、基部51aから後方に向けて斜め上方に延在しており、挿入されるカード101の接続パッド151に弾性的に接触して電気的に接続される。また、基板接続部51cは、電子機器の基板に形成された配線パターンに対し、半田付け等によって電気的に接続される。なお、底板部11aにおける接触部51bの下方位置には、厚さ方向に貫通する開口11eが形成されているが、この開口11eは、必要に応じて省略することができる。
【0024】
ハウジング11における側壁部11cの前端部分には、カード101の挿入を案内するとともに、カード101の誤挿入を規制する挿入案内部11fが設けられている。挿入案内部11fは、カード101の前端右角部を誘い込む傾斜面を有しており、カード101の前端右角部に切欠き部121が位置する姿勢においてのみカード101の挿入を許容するように形成位置が設定されている。
【0025】
なお、ハウジング11における後端右角部の内側には、第1接点部材52と第2接点部材53とによって構成され、カード101の挿入を検出するカード検出スイッチが配設されているが、このカード検出スイッチは、必要に応じて省略することができる。
【0026】
シェル61は、略矩形の天板部62と、天板部62の左右側縁から下方に延在する側板部63と、天板部62の後縁から下方に延在する後板部64とを有する。側板部63及び後板部64には、複数の係合孔63a、63b、64aが形成されている。シェル61をハウジング11の上側に取付ける際、これらの係合孔63a、63b、64aがハウジング11側に形成される係合突起11g、11h、11iに係合することにより、シェル61がハウジング11に固定される。
【0027】
シェル61は、側板部63及び後板部64の下端部から外側方に延在する複数の実装部65を有する。これらの実装部65は、電子機器の基板に形成されたグランドパターンに対し、半田付け等によって電気的に接続される。これにより、シェル61は、電子機器の基板に対して強固に固定されるとともに、良好なノイズ遮蔽機能を発揮することが可能になる。
【0028】
従来、後縁に取り出し操作用の肉厚部111が設けられたカード101を対象とするカードコネクタ、特に、イジェクト機能を持たない直挿し式のカードコネクタでは、肉厚部111の取り出し操作を許容するためにカード101の後縁部分を広い範囲で露出させているので、ノイズを十分に遮蔽できない虞があった。
【0029】
そこで、本発明の実施形態に係るカードコネクタ1では、シェル61の前端部に、カード101の肉厚部111を上方から覆う拡張部66を設けるとともに、拡張部66の一部に、肉厚部111を取り出し操作するための切込み67を形成している。このようにすると、後縁に取り出し操作用の肉厚部111が設けられたカード101を収容するカードコネクタ1でありながら、肉厚部111の取り出し操作を許容しつつ、シェル61によるカード101の被覆面積を拡大し、ノイズの遮蔽性能を向上させることが可能になる。
【0030】
切込み67の数は、1つが好ましい。その理由は、切込み67の数を増やすと、シェル61によるカード101の被覆面積が減少し、ノイズの遮蔽性能が低下するからである。ただし、切込み67の数は、1つに限定されず、必要に応じて増やすこともできる。
【0031】
切込み67の形成位置は、拡張部66の左右中央部分が好ましい。その理由は、切込み67を介してカード101の肉厚部111(段差部112)を取り出し操作する際、その操作力がバランス良くカード101に作用し、カード101を円滑かつ容易に取り出すことができるからである。ただし、切込み67の形成位置は、拡張部66の左右中央部分に限定されず、必要に応じて左右中央部分からずれた位置に切込み67を形成することもできる。例えば、切込み67の数を2つとし、2つの切込み67を介して肉厚部111(段差部112)の2箇所を同時に取り出し操作する場合は、2つの切込み67を左右に振り分けられた位置に形成することが好ましい。
【0032】
切込み67の形状は、ある程度の取り出し操作性を確保した上で、可及的に狭小とすることが好ましい。その理由は、切込み67が大きいと、シェル61によるカード101の被覆面積が減少し、ノイズの遮蔽性能が低下するからである。
【0033】
また、拡張部66は、その左右側縁から下方に延在して肉厚部111の側縁を覆う側面拡張部68と、その先端から外側方に延在し、基板のグランドパターンに半田付け等で接続される実装部69とを有することが好ましい。その理由は、シェル61によるカード101の被覆面積が増加し、ノイズの遮蔽性能が向上するだけでなく、拡張部66を基板に対して強固に固定することができるからである。ただし、側面拡張部68及び実装部69は、必要に応じて省略してもよい。
【0034】
つぎに、カードコネクタ1に対するカード101の挿入操作及び取り出し操作について、
図1及び
図5を参照して説明する。
【0035】
図5は、本発明の実施形態に係るカードコネクタのカード挿入/取り出し手順を示す図であり、(a)はカード挿入途中/取り出し途中を示すカードコネクタの斜視図、(b)はカード挿入状態を示すカードコネクタの斜視図である。
カードコネクタ1にカード101を挿入する場合は、利用者が手指等によってカード101を持ち、前方から挿入口1aを介してカードコネクタ1の内部にカード101を挿入する。このとき、カード101は、
図1に示すように、肉厚部111が手前側に位置し、接続パッド151が設けられる底面が下側を向き、切欠き部121が前端右側に位置する姿勢で挿入される。これにより、カード101は、
図5の(a)に示すように、シェル61の天板部62及び左右の側板部63に沿って挿入される。
【0036】
続いて、利用者は、
図5の(b)に示すように、カードコネクタ1に対する挿入限界位置までカード101を押し込み操作する。挿入限界位置は、例えば、カード101の前端とハウジング11の後壁部11bとの当接、或いは、カード101の切欠き121の後端とハウジング11の挿入案内部11fとの当接によって規定される。
【0037】
そして、カードコネクタ1の挿入限界位置までカード101を押し込み操作すると、その挿入過程でカードコネクタ1の接続端子51がカード101の接続パッド151に接触し、電気的に接続される。これにより、カードコネクタ1が実装される電子機器にカード101が装着され、電子機器によるカード101へのアクセスが可能になる。
【0038】
また、カードコネクタ1の挿入限界位置までカード101を押し込み操作すると、カード101の上面及び側縁がシェル61で覆われる。このとき、カード101の後縁に形成される取り出し操作用の肉厚部111もシェル61の拡張部66によって覆われる。これにより、カード101の上面略全域がシェル61によって覆われることになり、良好なノイズ遮蔽性能が得られる。
【0039】
一方、カード101をカードコネクタ1から取り出す場合は、肉厚部111の前端縁に形成される段差部112に爪や指、或いはピンなどの道具を引っ掛け、カード101を引き出し方向に操作する。このとき、本発明の実施形態に係るカードコネクタ1では、カード101の肉厚部111がシェル61の拡張部66によって覆われているが、拡張部66の一部には、切込み67が形成されているので、切込み67を介したカード101の取り出し操作が許容される。
【0040】
以上に述べた実施形態のカードコネクタ1によれば、カード101を収容するハウジング11と、ノイズを遮蔽可能な材料を用いて形成され、ハウジング11に収容されたカード101を覆うシェル61と、を備え、シェル61が、カード101の後縁に設けられた取り出し操作用の肉厚部111を覆う拡張部66を有し、拡張部66が、その一部に肉厚部111を取り出し操作するための切込み67を有するので、後縁に取り出し操作用の肉厚部111が設けられたカード101を収容するカードコネクタ1でありながら、肉厚部111の取り出し操作を許容しつつ、シェル61によるカード101の被覆面積を拡大し、ノイズの遮蔽性能を向上させることができる。
【0041】
また、切込み67は、拡張部66の中央部分に形成されているので、切込み67を介してカード101の肉厚部111(段差部112)を取り出し操作する際、その操作力がバランス良くカード101に作用し、カード101を円滑かつ容易に取り出すことができる。
【0042】
また、拡張部66は、肉厚部111の側縁まで覆い、その先端に基板への実装部69を有するので、シェル61によるカード101の被覆面積が増加し、ノイズの遮蔽性能が向上するだけでなく、拡張部66を基板に対して強固に固定することができる。
【0043】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【0044】
例えば、前述した実施形態のシェル61は、金属等の導電性材料からなる板材に打抜き、折曲げ等の加工を施すことによって成形されているが、ノイズ遮蔽性を備えていれば、いかなる材料で形成されていてもよい。例えば、導電性の樹脂で形成されたシェルや、絶縁性の樹脂で形成され、表層にメッキ等で導電性の膜が成膜されたシェルであってもよい。