(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記吸着式ヒートポンプにおける前記閉空間の内部には、前記領域としての第1領域、第2領域及び第3領域と、前記第1領域と前記第2領域とを連通する第1連通部分と、前記第2領域と前記第3領域とを連通する前記連通部分としての第2連通部分と、が設けられ、
前記第3領域は、前記第1連通部分で吸着質が流通する状態において、前記第2連通部分を介して前記第2領域との間に圧力差を生じ、
前記弁部材は、前記第2連通部分に配置されている
請求項2に記載のバルブ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、吸着式ヒートポンプにおける閉空間の各室同士を連通する連通口(連通路)を開閉する弁部材としては、エアシリンダ等のアクチュエータにより動作する弁部材がある。このような弁部材では、弁部材の一部が閉空間の外部に露出し、閉空間の外部に配置されたアクチュエータによって駆動される。
【0005】
この構成では、閉空間の内部が大気圧よりも低圧とされる一方、閉空間の外部が大気圧とされるため、大気圧が弁部材に作用し、弁部材を開弁又は閉弁する際に大気圧に対抗して弁部材を駆動する必要がある。これにより、弁部材を駆動する駆動力が大きくなる。
【0006】
本発明は、上記事実を考慮し、弁部材を駆動する駆動力を低減することができるバルブを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、大気圧よりも低圧とされた閉空間の内部に収容され、前記閉空間の内部に設けられた領域同士を連通する連通部分を開閉可能な弁部材と、前記閉空間の外部に配置され、前記連通部分が開放又は閉鎖されるように磁力により前記弁部材を駆動する駆動部と、を備え、
前記駆動部は、前記閉空間の外部に配置された磁性体に磁力によって前記弁部材を引き寄せることで前記弁部材を駆動する。
【0008】
請求項1の構成によれば、閉空間の内部に収容された弁部材を、駆動部が閉空間の外部から磁力により駆動する。これにより、閉空間の内部に設けられた領域同士を連通する連通部分を、弁部材が開放又は閉鎖する。
【0009】
ここで、請求項1の構成では、閉空間が大気圧よりも低圧とされているが、弁部材は閉空間の内部に収容されているため、弁部材に対して大気圧が作用しない。このため、弁部材の一部が閉空間の外部に露出して弁部材に対して大気圧が作用する場合に比べ、弁部材を駆動する駆動力を低減できる。
【0010】
請求項2の発明は、吸着式ヒートポンプに用いられる請求項1に記載のバルブであって、前記弁部材が、吸着質が流通する前記閉空間の内部に収容されると共に、冷熱及び温熱の少なくとも一方を生成する前記領域同士を連通する連通部分を開閉可能とされている。
【0011】
請求項2の構成によれば、冷熱及び温熱の少なくとも一方を生成する領域同士を連通する連通部分を、弁部材が開放又は閉鎖する。これにより、連通部分を通じて、吸着質が流通し、又は、吸着質の流通が停止する。
【0012】
ここで、請求項2の構成では、弁部材に対して大気圧が作用しないため、弁部材を駆動する駆動力を低減できる。これにより、弁部材が開放又は閉鎖する連通部分を大きくして、吸着質の流量を確保しても、駆動部の出力を抑えられる。
【0013】
請求項3の発明では、前記吸着式ヒートポンプにおける前記閉空間の内部に、前記領域としての第1領域、第2領域及び第3領域と、前記第1領域と前記第2領域とを連通する第1連通部分と、前記第2領域と前記第3領域とを連通する前記連通部分としての第2連通部分と、が設けられ、前記第3領域は、前記第1連通部分で吸着質が流通する状態において、前記第2連通部分を介して前記第2領域との間に圧力差を生じ、前記弁部材は、前記第2連通部分に配置されている。
【0014】
請求項3の構成によれば、第1連通部分を通じて第1領域と第2領域との間を吸着質が流通する状態において、第2連通部分を介して第2領域と第3領域との間で圧力差を生じる。
【0015】
ここで、弁部材は、駆動部の磁力による駆動力で駆動されるので、第2領域と第3領域との間に圧力差を生じても、領域間の圧力差で開閉されるバルブ(例えば、リードバルブ)とは異なり、第2連通部分を閉鎖することができる。これにより、第2連通部分を閉鎖した状態で、第1領域と第2領域との間で吸着質を流通させることができる。
【0016】
請求項4の発明は、前記閉空間の内部に収容され、前記連通部分を開放又は閉鎖する方向に前記弁部材を弾性力により付勢する弾性部材を備え、前記駆動部は、前記弾性部材の付勢力に対抗して前記弾性部材の付勢方向とは反対方向へ前記弁部材を駆動する。
【0017】
請求項4の構成によれば、弾性部材の付勢力により、弁部材が連通部分を開放又は閉鎖する。また、駆動部が、弾性部材の付勢力に対抗して弾性部材の付勢方向とは反対方向へ弁部材を駆動する。これにより、連通部分が開放又は閉鎖される。
【0018】
このように、駆動部は弁部材を一方向に駆動すればよいので、連通部分を開放する方向及び閉鎖する方向の両方向に駆動部が弁部材を駆動する場合に比べ、駆動部の構成を簡素化できる。
【0019】
請求項5の発明では、前記駆動部は、電磁石の前記磁力により前記弁部材を駆動すると共に、前記電磁石の電流におけるPWM制御により前記弁部材の開度を調整する。
【0020】
請求項5の構成によれば、駆動部が、電磁石の磁力により弁部材を駆動すると共に、電磁石の電流におけるPWM制御により弁部材の開度を調整する。これにより、領域間で流通する流体(例えば、吸着質)の流量を調整できる。
【0021】
請求項6の発明では、前記閉空間を形成する筐体は、非磁性材で形成されている。
【0022】
請求項6の構成によれば、閉空間を形成する筐体が非磁性材で形成されているので、駆動部から弁部材へ作用する磁力が影響を受けることを抑制できる。
【0023】
請求項7の発明では、前記筐体は、前記非磁性材としてのオーステナイト系ステンレスで形成されている。
【0024】
請求項7の構成によれば、筐体が非磁性材としてのオーステナイト系ステンレスで形成されているので、領域間で流通する流体として、水等を用いた場合でも筐体が腐食しにくい。
【0025】
請求項8の発明は、冷熱及び温熱の少なくとも一方を生成する複数の反応器と、前記反応器同士の間で吸着質を流通させ、大気圧よりも低圧とされた閉空間を前記複数の反応器とで形成する流通管と、前記流通管の内部に収容され、前記流通管を開閉可能な弁部材と、前記流通管の外部に配置され、前記流通管が開放又は閉鎖されるように磁力により前記弁部材を駆動する駆動部と、を備える。
【0026】
請求項8の構成によれば、流通管の内部に収容された弁部材を、駆動部が流通管の外部から磁力により駆動する。これにより、反応器同士の間で吸着質を流通させる流通管を、弁部材が開放又は閉鎖する。
【0027】
ここで、請求項8の構成では、大気圧よりも低圧とされた閉空間を複数の反応器及び流通管で形成しているが、弁部材は流通管の内部に収容されているため、弁部材に対して大気圧が作用しない。このため、弁部材の一部が閉空間の外部に露出して弁部材に対して大気圧が作用する場合に比べ、弁部材を駆動する駆動力を低減できる。
【0028】
請求項9の発明では、前記複数の反応器は、吸着質を蒸発させる蒸発器と、前記蒸発器の前記吸着質を吸着して前記蒸発器で冷熱を生成させる第1吸着器と、前記第1吸着器に吸着された前記吸着質を吸着して前記第1吸着器で冷熱を生成させ、前記蒸発器と前記第1吸着器との間で前記吸着質が流通する状態において前記第1吸着器との間で圧力差を生じる第2吸着器と、を有し、前記弁部材は、前記第1吸着器と前記第2吸着器との間で吸着質を流通させる前記流通管を開閉可能とされる。
【0029】
請求項9の構成によれば、蒸発器と第1吸着器との間で吸着質が流通する状態において第1吸着器と第2吸着器との間で圧力差を生じる。
【0030】
ここで、弁部材は、駆動部の磁力による駆動力で駆動されるので、第1吸着器と第2吸着器との間で圧力差を生じても、反応器間の圧力差で開閉されるバルブ(例えば、リードバルブ)とは異なり、第1吸着器と第2吸着器との間で吸着質を流通させる流通管を閉鎖することができる。これにより、流通管を閉鎖した状態で、蒸発器と第1吸着器との間で吸着質を流通させることができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明は、上記構成としたので、弁部材を駆動する駆動力を低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明に係る実施形態の一例を図面に基づき説明する。
【0034】
(吸着式ヒートポンプ12)
まず、吸着式ヒートポンプ12(以下、単に「ヒートポンプ12」という)の構成について説明する。
図1には、ヒートポンプ12の構成が示されている。
【0035】
ヒートポンプ12は、
図1に示されるように、タンク13と、蒸発/凝縮器14(反応器の一例)と、第1吸着器20(反応器の一例)と、第2吸着器22(反応器の一例)と、を有している。
【0036】
蒸発/凝縮器14の内部には、蒸発/凝縮室14A(第1領域の一例)が形成されている。この蒸発/凝縮器14は、蒸発器としての機能と、凝縮器としての機能とを併せ持っている。すなわち、蒸発/凝縮器14では、蒸発/凝縮室14Aの吸着質(液体の状態)にエネルギー(温熱)が作用すると、この吸着質が蒸発され、その際に冷熱が生成される。また、蒸発/凝縮器14では、蒸発/凝縮室14Aの吸着質(気体の状態)からエネルギーを奪うと、吸着質が凝縮され、その際に温熱が生成される。
【0037】
タンク13は、蒸発/凝縮器14に供給される吸着質を貯留する貯留部として機能する。タンク13は、供給管15によって蒸発/凝縮器14と連通されている。供給管15には、供給弁35が設けられている。供給弁35が開弁されると、供給管15が開放されてタンク13から蒸発/凝縮器14へ吸着質が供給される。
【0038】
第1吸着器20及び第2吸着器22の内部には、それぞれ、第1吸着室20A(第2領域の一例、領域の一例)及び第2吸着室22A(第3領域の一例、領域の一例)が形成されている。この第1吸着室20A及び第2吸着室22Aには、それぞれ、異なる種類の吸着剤が収容されている。第2吸着器22の吸着剤は、例えば、第1吸着器20の吸着剤よりも高い再生温度の熱で吸着質を脱着させる材料が選択される。
【0039】
本実施形態では、第1吸着器20の吸着剤は、例えばAQSOA−Z05(「AQSOA」は三菱樹脂の登録商標)であり、第2吸着器22の吸着剤は、例えば、Y型ゼオライトである。また、吸着質としては、例えば、水あるいはアンモニアを用いることができる。水及びアンモニアは、ヒートポンプ12において求められる条件(温度及び圧力)で吸着剤に対し吸着及び脱着し、しかも安価に調達できる。
【0040】
蒸発/凝縮器14、第1吸着器20及び第2吸着器22は、この順で、第1連通管16、第2連通管17(流通管の一例)により直列状に連通(接続)されている。
【0041】
第1連通管16の内部には、第1連通路16A(第1連通部分の一例)が形成されている。また、第1連通管16には、第1開閉バルブ18が設けられている。第1開閉バルブ18が開弁されると、第1連通管16(第1連通路16A)が開放されて第1吸着器20と蒸発/凝縮器14との間で吸着質の移動が可能となる。一方、第1開閉バルブ18が閉弁されると、第1連通管16(第1連通路16A)が閉鎖されて第1吸着器20と蒸発/凝縮器14との間で吸着質の移動ができなくなる。
【0042】
第2連通管17の内部には、第2連通路17A(第2連通部分の一例、連通部分の一例)が形成されている。また、第2連通管17には、第2開閉バルブ19(バルブの一例)が設けられている。第2開閉バルブ19が開弁されると、第2連通管17(第2連通路17A)が開放されて第2吸着器22と第1吸着器20との間で吸着質の移動が可能となる。一方、第2開閉バルブ19が閉弁されると、第2連通管17(第2連通路17A)が閉鎖されて第2吸着器22と第1吸着器20との間で吸着質の移動ができなくなる。
【0043】
なお、第2連通管17は、具体的には、第2開閉バルブ19に対する第1吸着器20側に配置された第1管71と、第2開閉バルブ19に対する第2吸着器22側に配置された第2管72と、第2開閉バルブ19の後述の弁箱42と、を有して構成されている。また、第2開閉バルブ19の具体的な構成については、後述する。
【0044】
蒸発/凝縮器14と第2吸着器22とは、第1吸着器20をバイパス(迂回)するバイパス管24により接続される。バイパス管24の内部には、バイパス路24Aが形成されている。また、バイパス管24には、バイパス弁26が設けられている。バイパス弁26が開弁されると、バイパス管24(バイパス路24A)が開放されて蒸発/凝縮器14と第2吸着器22との間で、第1吸着器20を経由することなく、吸着質の移動が可能となる。バイパス弁26が閉弁されると、バイパス管24(バイパス路24A)が閉鎖されて蒸発/凝縮器14と第2吸着器22との間で吸着質の移動ができなくなる。
【0045】
蒸発/凝縮器14には、2つの熱源(低温熱源28L及び中温熱源28M)を接続する接続管30Aが設けられている。接続管30Aは熱源側において、それぞれの熱源に対応して分岐しており、分岐部分には、開閉弁32L、32Mが設けられている。開閉弁32L、32Mが開弁されると、熱源から熱交換媒体が蒸発/凝縮器14に流れ、蒸発/凝縮器14で熱交換されて熱源に戻る。
【0046】
第1吸着器20には、3つの熱源(低温熱源28L、中温熱源28M及び高温熱源28H)を接続する接続管30Bが設けられている。接続管30Bは熱源側において、それぞれの熱源に対応して分岐しており、分岐部分には、開閉弁34L、34M、34Hが設けられている。開閉弁34L、34M、34Hが開弁されると、熱源から熱交換媒体が第1吸着器20に流れ、第1吸着器20で熱交換されて熱源に戻る。
【0047】
第2吸着器22には、2つの熱源(中温熱源28M及び高温熱源28H)を接続する接続管30Cが設けられている。接続管30Cは熱源側において、それぞれの熱源に対応して分岐しており、分岐部分には、開閉弁36M、36Hが設けられている。開閉弁36M、36Hが開弁されると、熱源から熱交換媒体が第2吸着器22に流れ、第2吸着器22で熱交換されて熱源に戻る。
【0048】
低温熱源28L、中温熱源28M及び高温熱源28Hの具体例は特に限定されないが、中温熱源28Mは低温熱源28Lよりも高温であり、高温熱源28Hは中温熱源28Mよりも高温である。たとえば、低温熱源28Lとしては、冷却対象を冷却する(冷熱を得る)ために管路29Lを循環している冷媒の熱源を挙げることができる。中温熱源28Mとしては、冷却対象の外部(室外)において外部と熱交換するために管路29Mを流れる熱交換媒体の熱源を挙げることができる。高温熱源28Hとしては、ヒートポンプ12を再生するために管路29Hを流れる熱交換媒体の熱源を挙げることができる。
【0049】
そして、ヒートポンプ12では、蒸発/凝縮器14、第1吸着器20、第2吸着器22、第1連通管16、第2連通管17及びバイパス管24によって、大気圧よりも低圧とされた閉空間が形成されている。この閉空間は、蒸発/凝縮室14A、第1吸着室20A、第2吸着室22A、第1連通路16A、第2連通路17A及びバイパス路24Aによって構成されている。また、閉空間は、蒸気(気体状態の吸着質)が流通する空間であり、少なくとも使用環境下において外部に対して気密とされる空間である。
【0050】
(第2開閉バルブ19)
次に、第2開閉バルブ19の具体的な構成について説明する。
図2及び
図3には、第2開閉バルブ19の具体的な構成が示されている。
【0051】
第2開閉バルブ19は、
図2及び
図3に示されるように、筐体40と、弁部材50と、圧縮コイルバネ70(弾性部材の一例)と、駆動部80と、を有している。
【0052】
弁部材50は、第2開閉バルブ19における可動部分であり、弁部材50の全体が磁性材で形成されている。磁性材としては、例えば、フェライト系ステンレスが用いられる。弁部材50は、具体的には、弁棒52(軸部)と、弁棒52の下端に設けられた弁体54と、弁棒52の上端に設けられた芯部56と、を有している。
【0053】
弁棒52は、上下方向に延びており、筐体40に設けられた軸受69によって上下方向(軸方向)に移動可能に支持されている。弁体54は、円盤状に形成されており、筐体40内に設けられた弁座43に接触して流路を開閉する機能を有している。弁体54の下面には、弁体54と弁座43との間をシールするシール部材としてのOリング53が設けられている。芯部56は、弁棒52よりも拡径されている。なお、弁部材50は、少なくとも芯部56が磁性体で構成されていればよい。
【0054】
筐体40は、非磁性材で形成されている。非磁性材としては、例えば、オーステナイト系ステンレスが用いられる。筐体40は、具体的には、第2連通管17の第1管71及び第2管72と連通する弁箱42と、芯部56が収容される収容部60と、を有している。弁箱42は、L字状に吸着質を流通させる略L字状の管で構成されている。
【0055】
弁箱42の一端部42Aは下方に開口しており、弁箱42の他端部42Bは側方(
図2における左側)に開口している。そして、弁箱42の一端部42Aが第2連通管17の第1管71と連通(接続)されている。弁箱42の他端部42Bが第2連通管17の第2管72と連通(接続)されている。
【0056】
このように、弁箱42は、第1管71及び第2管72と連通しており、前述したように、弁箱42、第1管71及び第2管72によって第2連通管17が構成されている。本実施形態では、弁箱42及び収容部60を含む筐体40の内部空間は、ヒートポンプ12における前述の閉空間の一部を構成している。なお、弁箱42の一端部42Aが第2連通管17の第2管72と連通し、弁箱42の他端部42Bが第2連通管17の第1管71と連通する構成であってもよい。
【0057】
弁箱42の内部には、弁箱42の内壁から径方向内側に張り出した前述の弁座43が設けられている。この弁座43が、弁体54を受けるようになっている。また、弁箱42は、弁部材50の弁棒52が差し通された通し孔44を有する天板45を有している。
【0058】
収容部60は、弁箱42の天板45と接合される下板部62と、下板部62から立設された円筒部64と、円筒部64の上端に配置された上板部66と、を有している。下板部62には、下板部62と弁箱42の天板45との間をシールするシール部材68が設けられている。また、下板部62には、弁棒52をその軸方向に移動可能に支持する前述の軸受69が設けられている。
【0059】
本実施形態では、弁部材50の芯部56が収容部60内に収容されると共に、弁部材50の弁体54が弁箱42内に収容されており、弁部材50の全体が閉空間である筐体40内に収容されている。なお、収容部60及び弁箱42は、それぞれ、複数の構成部材が組み付けられて構成されていてもよい。
【0060】
圧縮コイルバネ70は、上板部66と芯部56との間に配置されており、弾性力により芯部56を下方へ押している。これにより、弁部材50を下方(第2連通管17を閉鎖する方向)へ付勢している。
【0061】
駆動部80は、筐体40の外部に配置されている。駆動部80は、具体的には、ケース82と、コイル84と、芯体86と、を有している。ケース82は、円筒部82Aと、円筒部82Aの上端に配置された円形状とされた上板部82Bと、円筒部82Aの上端に配置された円形状とされた下板部82Cと、を有している。下板部82Cには、収容部60の円筒部64が差し通される円孔82Dが形成されている。
【0062】
芯体86は、円柱状又は円筒状に形成された磁性体で構成されている。芯体86は、ケース82内における上板部66の上側であって、芯部56の同軸上に配置されている。
【0063】
コイル84は、円筒状に形成されている。コイル84は、ケース82内において、収容部60の円筒部64及び芯体86の周囲を囲むように配置されている。このコイル84に電源(図示省略)から電流が流れることで、弁部材50の自重及び圧縮コイルバネ70の付勢力に対抗して、芯部56が芯体86に引き寄せられる。これにより、第2開閉バルブ19が開弁される(
図2参照)。このように、駆動部80が、芯体86及びコイル84で構成された電磁石の磁力により弁部材50を駆動し、第2開閉バルブ19が開弁される。
【0064】
一方、弁部材50が駆動されず芯部56に芯体86への引力が作用しない場合は、圧縮コイルバネ70が芯体86を下方へ押すと共に弁部材50に自重が作用する。これにより、第2開閉バルブ19が閉弁される(
図3参照)。
【0065】
(冷熱の生成方法)
次に、本実施形態のヒートポンプ12を用いて冷熱を生成する生成方法を説明する。以下において、開弁状態であると明記した弁(バルブを含む)以外の弁(バルブを含む)は、閉弁されている。
【0066】
ヒートポンプ12を用いて冷熱を生成するには、以下のように、冷熱生成工程と、再生工程と、を交互に行う。
【0067】
<冷熱生成工程>
冷熱生成工程では、まず、以下の冷熱生成ステップ1を行ってから、以下の冷熱生成ステップ2を行う。
【0068】
[冷熱生成ステップ1]
冷熱生成ステップ1では、
図4に示されるように、開閉弁32Lを開弁して、蒸発/凝縮器14に低温熱源28Lから熱交換媒体を移動させる。また、開閉弁34Mを開弁して、第1吸着器20に中温熱源28Mから熱交換媒体を移動させる。そして、第1開閉バルブ18を開弁する。
【0069】
これにより、蒸発/凝縮器14で吸着質が蒸発し、
図4に矢印F1で示されるように、この吸着質が第1吸着器20で吸着される。蒸発/凝縮器14で蒸発した吸着質を第1吸着器20で吸着することで、蒸発/凝縮器14において冷熱が生成される。
【0070】
[冷熱生成ステップ2]
次に、冷熱生成ステップ2を行う。冷熱生成ステップ2では、まず、
図5に示されるように、開閉弁32L、34M、第1開閉バルブ18を閉弁する。
【0071】
そして、開閉弁34Lを開弁して、第1吸着器20に低温熱源28Lから熱交換媒体を移動させる。さらに、開閉弁36Mを開弁して、第2吸着器22に中温熱源28Mから熱交換媒体を移動させる。そして、第2開閉バルブ19を開弁する。
【0072】
これにより、第1吸着器20で吸着質が蒸発し、
図5に矢印F2で示されるように、この吸着質が第2吸着器22で吸着される。
【0073】
以上のように、冷熱生成ステップ2では、第1吸着器20で吸着質を蒸発させて、第1吸着器20から吸着質を脱着することで、第1吸着器20を再生している。そして、第1吸着器20の再生時に吸着質が脱着する際の脱着エネルギーを利用して、冷熱を生成している。
【0074】
<再生工程>
冷熱生成工程を行うと、特に冷熱生成ステップ2において、第2吸着器22に吸着質が吸着されるため、以下の第1再生方法、又は以下の第2再生方法を行うことで再生する。
【0075】
[第1再生方法]
第1再生方法は、第1吸着器20を用いない再生方法である。第1再生方法では、
図6に示されるように、開閉弁32Mを開弁し、蒸発/凝縮器14に中温熱源28Mから熱交換媒体を移動させる。また、開閉弁36Hを開弁して、第2吸着器22に高温熱源28Hから熱交換媒体を移動させる。そして、バイパス弁26を開弁する。
【0076】
これにより、高温熱源28Hの熱を受けて第2吸着器22の吸着質が脱着され、第2吸着器22が再生される。第2吸着器22に吸着されていた吸着質は、
図6に矢印F3で示されるように、蒸発/凝縮器14に移動して凝縮される。
【0077】
以上が第1再生方法である。なお、第1再生方法において、開閉弁32Mに代えて、開閉弁32Lを開弁してもよい。さらに、開閉弁32Lを開弁する場合、低温熱源28L及び中温熱源28Mの温度によっては、開閉弁36Hに代えて開閉弁36Mを開弁することも可能である。
【0078】
[第2再生方法]
第2再生方法は、第1吸着器20を用いる再生方法であり、再生ステップ1及び再生ステップ2を交互に行う。なお、第2再生方法を行うにあたり、第1吸着器20は、上記した冷熱生成方法、特に冷熱生成ステップ2において、吸着質が脱着されており、実質的に再生されている。
【0079】
(再生ステップ1)
再生ステップ1では、
図7に示されるように、開閉弁34Mを開弁し、第1吸着器20へ中温熱源28Mから熱交換媒体を移動させる。また、開閉弁36Hを開弁し、第2吸着器22へ高温熱源28Hから熱交換媒体を移動させる。そして、第2開閉バルブ19を開弁する。
【0080】
これにより、高温熱源28Hの熱を受けて第2吸着器22の吸着質が脱着され、第2吸着器22が再生される。第2吸着器22に吸着されていた吸着質は、第1吸着器20に移動して吸着される。
【0081】
(再生ステップ2)
第1吸着器20が吸着平衡に達すると、再生ステップ2を行う。再生ステップ2では、
図8に示されるように、開閉弁32Mを開弁し、蒸発/凝縮器14へ中温熱源28Mから熱交換媒体を移動させる。また、開閉弁34Hを開弁し、第1吸着器20へ高温熱源28Hから熱交換媒体を移動させる。そして、第1開閉バルブ18を開弁する。なお、
図8では、開閉弁36Hも開弁しているが、開閉弁36Hは閉弁されていてもよい。
【0082】
これにより、高温熱源28Hの熱を受けて第1吸着器20の吸着質が脱着され、第1吸着器20が再生される。第1吸着器20に吸着されていた吸着質は、蒸発/凝縮器14に移動して凝縮される。
【0083】
以上が第2再生方法である。第2再生方法では、第1再生方法と比較して、高温熱源28Hの温度が低くても、第2吸着器22を再生できる。第1再生方法では、第2再生方法と比較して、第1吸着器20において吸着質の吸着と脱着とを繰り返さないので、第2吸着器22の再生に必要な総エネルギーは小さくなり、効率的に第2吸着器22を再生できる。
【0084】
(本実施形態の作用効果)
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
【0085】
本実施形態の構成によれば、前述のように、冷熱生成ステップ1では、第1開閉バルブ18を開弁する。そして、蒸発/凝縮器14で吸着質が蒸発し、
図4に矢印F1で示されるように、この吸着質が第1吸着器20で吸着され、蒸発/凝縮器14において冷熱が生成される。このように、冷熱生成ステップ1では、第1開閉バルブ18を開弁し、蒸発/凝縮器14から第1吸着器20へ吸着質を流通させる。
【0086】
本実施形態では、冷熱生成ステップ1において、第2吸着器22は、吸着及び脱着を行っていないので、第1吸着器20よりも低圧となる。すなわち、冷熱生成ステップ1において、第1吸着器20と第2吸着器22との間で圧力差が生じる。
【0087】
そして、本実施形態では、弁部材50は、駆動部80の磁力による駆動力で駆動されるので、第1吸着器20と第2吸着器22との間で圧力差を生じても、吸着器間の圧力差で開閉されるリードバルブ等のバルブ(第1比較例)とは異なり、第2連通管17を閉鎖することができる。これにより、冷熱生成ステップ1において、第2連通管17を閉鎖した状態で、蒸発/凝縮器14から第1吸着器20へ吸着質を流通させることができる。
【0088】
ここで、駆動部の駆動力を用いて駆動されるバルブとしては、
図9に示すバルブ100(第2比較例)がある。
図9に示すバルブ100は、弁体104を有する弁部材105をシリンダ―102で駆動する。弁体104に設けられたベローズ106により、大気圧とされた空間外部と、大気圧よりも低圧とされた空間内部とをシールする(
図9のA部分が低圧部分、
図9のB部分が大気圧部分)。このため、バルブ100では、弁体104の上面に大気圧が作用し、弁体104を開弁する際に大気圧に対抗して弁部材105を駆動する必要がある。これにより、弁部材105を駆動する駆動力が大きくなる。
【0089】
これに対して、本実施形態では、弁部材50は、閉空間とされた筐体40の内部に収容されているため、弁部材50に対して大気圧が作用しない。このため、バルブ100のように弁部材105の一部に大気圧が作用する場合に比べ、弁部材50を駆動する駆動力を低減できる。
【0090】
このように、弁部材50の駆動力が低減できるので、弁部材50が開閉する弁座43の開口径を大きくして、吸着質の流量を確保しても、駆動部80の出力を抑えられる。
【0091】
また、本実施形態では、弁部材50が閉空間とされた筐体40の内部に収容されているため、筐体40の壁(天板45及び下板部62)により、閉空間の内部と外部とのシール性が確保される。したがって、バルブ100のようにベローズ106を用いる場合に比べ、簡易かつ安価な構成で、閉空間の内部と外部との間でリークすることを抑制できる。
【0092】
また、本実施形態では、圧縮コイルバネ70の付勢力により、弁部材50が第2連通管17を閉鎖する。また、駆動部80が、圧縮コイルバネ70の付勢力に対抗して弁部材50を駆動して、第2連通管17を開放する。このように、本実施形態では、駆動部80は弁部材50を一方向に駆動すればよいので、第2連通管17を開放する方向及び閉鎖する方向の両方向に駆動部80が弁部材50を駆動する場合に比べ、駆動部80の構成を簡素化できる。
【0093】
さらに、本実施形態では、閉空間を形成する筐体40は、非磁性材としてのオーステナイト系ステンレスで形成されている。このように、筐体40が非磁性材であるため、駆動部80から弁部材50へ作用する磁力が影響を受けることが抑制される。また、筐体40が、非磁性材としてオーステナイト系ステンレスで形成されているため、吸着質として水を用いた場合でも筐体40が腐食しにくく、駆動部80が弁部材50を駆動する磁力の磁場の透過性に優れる。
【0094】
(第2開閉バルブ19の第1変形例)
第2開閉バルブ19は、
図10に示されるように、弁部材50の開度が調整可能な構成としてもよい。
【0095】
図10に示す構成では、弁体54は、下方に向けて徐々に縮径されるテーパ状(円錐台状)に形成されている。また、弁体54が収容された筐体40の周壁41も下方に向けて徐々に縮径されるテーパ状に形成されている。
【0096】
この構成では、駆動部80のコイル84に流す電流において、PWM(pulse width modulation)制御を実行することで、弁部材50に対する駆動力が変化する。これにより、弁部材50に対する駆動力と圧縮コイルバネ70の付勢力とつり合う位置が変化する。このため、弁体54が停止する停止位置が変化する。このように、駆動部80のコイル84に流す電流において、PWM(pulse width modulation)制御を実行することで、弁体54の停止位置が制御される。
【0097】
また、
図11に示されるように、弁体54の停止位置によって、弁部材50の開度が変更される。すなわち、弁体54の停止位置によって、弁体54と周壁41との距離Lが変化する。このように、弁体54と周壁41との距離Lが変化することで、弁体54と周壁41との間の空間の断面積が変化するので、第2連通管17を流通する吸着質の流量が調整できる。
【0098】
(第2開閉バルブ19の第2変形例)
第2開閉バルブ19は、
図12に示されるように、三方弁として構成されていてもよい。第2開閉バルブ19が三方弁とされた場合では、
図13に示されるように、例えば、第1開閉バルブ18がなくなり、第1連通管16の第1吸着器20に接続された端部が、第2開閉バルブ19に接続される。
【0099】
図12に示す構成では、弁箱42の内部には、側断面視にてE字状の流路49が形成されている。流路49は、ポート(接続口)49A、49B、49Cを有している。ポート49A、49B、49Cは、それぞれ、蒸発/凝縮器14の蒸発/凝縮室14A、第1吸着器20の第1吸着室20A及び第2吸着器22の第2吸着室22Aと連通(接続)している。さらに、弁体54には、側断面視にてコ字状(U字状)の流路54Aが形成されている。
【0100】
この構成では、駆動部80が駆動することで、弁部材50の自重及び圧縮コイルバネ70の付勢力に対抗して、芯部56が芯体86に引き寄せられる。これにより、
図12に示されるように、弁体54の流路54A及びポート49A、49Bを介して、蒸発/凝縮器14の蒸発/凝縮室14Aと、第1吸着器20の第1吸着室20Aとが連通した状態となる。
【0101】
また、駆動部80が駆動されない場合は、圧縮コイルバネ70が芯体86を下方へ押すと共に弁部材50に自重が作用する。これにより、
図14に示されるように、弁体54の流路54A及びポート49B、49Cを介して、第1吸着器20の第1吸着室20Aと第2吸着器22の第2吸着室22Aとが連通した状態となる。
【0102】
さらに、弁体54は、駆動部80のコイル84に流す電流において、PWM(pulse width modulation)制御を実行することで、弁部材50を中間位置に停止させてもよい。これにより、
図15に示されるように、ポート49A、49B、49Cの間の壁部により、弁体54の流路54Aが閉鎖される。弁体54の流路54Aが閉鎖されることで、蒸発/凝縮器14の蒸発/凝縮室14A、第1吸着器20の第1吸着室20A及び第2吸着器22の第2吸着室22Aが、非連通の状態となる。
【0103】
(他の変形例)
次に、本実施形態の他の変形例について説明する。
本実施形態のヒートポンプ12は、蒸発/凝縮器14を有していたが、蒸発器及び凝縮器は、別体で構成されていてもよい。
【0104】
本実施形態では、第1吸着器20と第2吸着器22との間に配置された第2開閉バルブ19に、本発明のバルブを適用した例について説明したが、本発明のバルブは、他のバルブに適用してもよい。例えば、本発明のバルブは、蒸発/凝縮器14と第1吸着器20との間に配置された第1開閉バルブ18や、蒸発/凝縮器14と第2吸着器22との間に配置されたバイパス弁26に適用してもよい。
【0105】
本発明のバルブは、冷熱及び温熱を生成する反応器(例えば、蒸発/凝縮器、吸着器)と、冷熱を生成する第1反応器(例えば、蒸発器、吸着器)と、温熱を生成する第2反応器(例えば、凝縮器、吸着器、蓄熱器)と、のいずれか2つが連通する連通部分に配置されたバルブに適用することが可能である。
【0106】
さらに、本発明のバルブは、弁部材が収容される閉空間が大気圧よりも低圧とされていればよく、吸着式のヒートポンプに適用する場合に限られない。
【0107】
また、本実施形態では、弾性部材の一例として、圧縮コイルバネ70を用いたが、これに限られない。弾性部材の一例としては、例えば、引張コイルバネや板バネ等の他のバネと用いてもよい。また、弾性部材としては、金属材料や、ゴムを含む樹脂材料で形成されたものを用いることができる。
【0108】
また、本実施形態では、圧縮コイルバネ70の付勢力により、弁部材50が第2連通管17を閉鎖し、駆動部80の磁力による駆動力で弁部材50を駆動して、第2連通管17を開放していたが、これに限られない。例えば、圧縮コイルバネ70の付勢力により、弁部材50が第2連通管17を開放し、駆動部80の磁力による駆動力で弁部材50を駆動して、第2連通管17を閉鎖してもよい。また、圧縮コイルバネ70等の弾性部材を用いず、駆動部80の磁力による駆動力によって弁部材50の開放及び閉鎖の両方を行ってもよい。
【0109】
本実施形態の吸着器には、吸着剤によって吸着質を吸着及び脱着する構成に限定されず、たとえば、吸着質の飽和蒸気圧以下の圧力で吸着質と反応することで、系の圧力を飽和蒸気圧以下に下げることが可能な反応器であってもよい。ここでいう反応には、物理吸着、化学吸着、吸収、化学反応等が含まれる。
【0110】
本発明は、上記の実施形態に限るものではなく、その主旨を逸脱しない範囲内において種々の変形、変更、改良が可能である。例えば、上記に示した変形例は、適宜、複数を組み合わせて構成してもよい。