特許第6357446号(P6357446)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6357446
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】タイヤ着脱方法
(51)【国際特許分類】
   B60C 25/132 20060101AFI20180702BHJP
【FI】
   B60C25/132 B
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-106226(P2015-106226)
(22)【出願日】2015年5月26日
(65)【公開番号】特開2016-215971(P2016-215971A)
(43)【公開日】2016年12月22日
【審査請求日】2017年2月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000185916
【氏名又は名称】小野谷機工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087169
【弁理士】
【氏名又は名称】平崎 彦治
(72)【発明者】
【氏名】三村 義雄
【審査官】 岡▲さき▼ 潤
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−285059(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0269982(US,A1)
【文献】 米国特許第08613303(US,B1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0097340(US,A1)
【文献】 特開2003−237332(JP,A)
【文献】 特開2000−343919(JP,A)
【文献】 特開2014−162326(JP,A)
【文献】 特表2002−528311(JP,A)
【文献】 特開2009−262929(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0257501(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 25/132
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
揺動するアームをガイドレールに沿って移動する移動体に取付け、該アームの先端部にはホイールを装着して回転する為のチャック等の取付け部を設け、また回転するタイヤに直接係合するツールをガイドレールに沿って移動する移動台から延びるツールアームの先端に取付けて移動可能としたタイヤ着脱装置を用いてタイヤの着脱を行う方法において、両側のタイヤビードを固着状態から解除する為にタイヤの一方側から反対側へ上記ツールを移動するに際してタイヤに衝突しないように、移動台に取付けたセンサーから照射するレーザー光によってタイヤの存在を検出し、タイヤに近づいたことを検知して上記ツールアームを上方へ旋回して起立すると共に180°回転することで向きを変え、そしてタイヤをツールが通過したことを検知してツールアームは下方へ旋回して元の位置に倒れるように動作することを特徴とするタイヤの着脱方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はタイヤに直接係合するツールの位置及び向きを自動的に変えることが出来る機能を備えたタイヤ着脱装置を用いたタイヤの着脱方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
タイヤの着脱装置にも色々な型式が知られているが、基本的にはホイールを主軸に取付けて回転しながらビードローラをタイヤ側面並びにビード面に押圧することが出来るように構成している。図5は従来のタイヤ着脱装置を表わしている具体例であり、ベース(イ)に移動体(ロ)を取付け、該移動体(ロ)にはホイールを取着するチャック(ハ)が上下方向に揺動するアーム(ニ)の先端部に装着されている。
【0003】
また、上記ベース(イ)の上には2本のガイドレール(ホ)、(ホ)を平行に設け、該ガイドレール(ホ)、(ホ)には移動台(ヘ)を送り装置(例えば、シリンダー)を介して摺動自在に取着し、移動台上にはアーム先端にツール(ト)を備えている。
上記チャック(ハ)にはホイールが固定され、ホイールに装着されているタイヤに上記ツール(ト)を構成している皿形ディスク(チ)を側面から押圧してタイヤを回転しながら該ホイールから取外すことが出来る。また、ツール(ト)には皿形ディスク(チ)と対を成してタイヤツメ(ヌ)を有している。
【0004】
皿形ディスク(チ)はホイールのフランジに近接した位置に配置されて該タイヤの側面を押圧する。すなわち、タイヤビードはホイールのビード部に固着している為に、フランジに接しない程度の隙間を残して、タイヤを回転しながら側面を押圧することでホイールから外れる。また、タイヤツメ(ヌ)はタイヤビードに係止してタイヤが回転するならば、該タイヤビードはホイールから外される。
【0005】
ところが、ホイールに装着されているタイヤを取外す場合、上記皿形ディスク(チ)にて一方側面からのみ回転するタイヤを押圧しても外れない場合がある。すなわち、タイヤビードがホイールのビード部に固着している状態では不可能であり、その為に両側のタイヤビードを固着状態から解除する必要がある。その為には、タイヤツールをタイヤの反対側へも移動して該タイヤビードを解除しなくてはならない。
【0006】
図6はツール(ヌ)がタイヤ(ル)を越えて反対側へ移動すると共にその向きを反転した場合である。チャック(ハ)にはタイヤ(ル)を装着したホイール(オ)が固定されており、この状態で回転するタイヤ(ル)の左側ビードをツール(ヌ)の皿形ディスク(チ)にて押圧することでホイールビード部からタイヤビードは解除される。そして、(b)に示すようにツール(ヌ)を移動してタイヤ(ル)の反対側へ移動し、再び右側のタイヤビードを押圧するならば解除される。
【0007】
このように両ビードがホイールビード部から解除されたところで、皿形ディスク(チ)をタイヤ側面に押圧するならば、タイヤ(ル)はホイール(オ)から外される。
ところで、図6の(a)の状態から(b)のようにツール(ヌ)を移動する場合、該ツール(ヌ)を装着している移動台(ヘ)がガイドレール(ホ)、(ホ)に沿ってスライドする。
【0008】
移動台(ヘ)をスライドさせる場合、ツール(ヌ)がタイヤ(ル)に衝突しないように注意しなくてはならない。そして、タイヤ(ル)の右側へ移った段階でツール(ヌ)の向きを反転しなくてはならず面倒である。
ところで、特開2005−53281号に係る「タイヤ着脱装置」、特開平9−123717号に係る「タイヤ着脱装置」は従来の装置であり、色々なタイヤ着脱装置が知られている。そして、これらの各装置のツールはガイドレールに沿って移動できるように構成している。
【特許文献1】特開2005−53281号に係る「タイヤ着脱装置」
【特許文献2】特開平9−123717号に係る「タイヤ着脱装置」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このように、従来のタイヤ着脱装置はガイドレールに沿って移動する移動台にツールを取付け、タイヤの着脱を行う際には上記ツールをタイヤを挟んでそれぞれの側へ移動して配置しなくてはならない。この移動に際してツールがタイヤに衝突するなどの問題が発生する。本発明が解決しようとする課題はこの問題点であり、ツールがタイヤに当たらないように自動的に移動すると共に、その向きを変えることが出来るようにしたツールの反転機構を備えたタイヤ着脱装置を用いてのタイヤ着脱方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明において用いるタイヤ着脱装置はホイールを固定するチャックを移動体に取付けたアーム先端部に装着し、そして伸縮出来るツールアームの先端にツールを取付けた移動台を備えている。ベースにはガイドレールを有して上記移動体はガイドレールに載って移動することが出来、同じく移動台もベースに設けたガイドレールに載って移動することが出来るようにしている。したがって、基本的な外観構造は従来のタイヤ着脱装置と共通している。
【0011】
上記ツールは伸縮するツールアームの先端に取付けられ、該ツールアームは基部に設けた基軸を中心として上方に旋回可能としている。そこで、ツールアームが基軸を中心として旋回するように移動台にはシリンダーを取付け、シリンダーのピストンロッド先端がツールアームと連結している。ピストンロッドが伸びるならばツールアームは倒れてタイヤの中心を向き、ピストンロッドが縮むならばツールアームは旋回して上方へ立ち上がることが出来る。
【0012】
また、移動台にはセンサーを取付け、センサーから発するレーザー光線などにてタイヤの位置を検知することが出来る。すなわち、移動台がガイドレールに沿って移動し、ツールがタイヤに近づいたならばアームは旋回して立ち上がり、タイヤを越えて移動したところで、元の位置に倒れることが出来る。勿論、タイヤを越えたこともセンサーで検出される。そして、所定の位置まで移動したならば、ツールの向きが反転するように構成している。
【0013】
ここで、センサーは移動台側に取付ける場合に限定せず、タイヤが装着される移動体側に取付けることも可能である。そして、センサーの第1の目的は移動台の移動によってツールがタイヤに衝突しないように検出するもので、移動台の移動、ツールアームの上方への旋回、ツールの反転運動、及びツールアームの下方への旋回動作に関しての手順は特に限定しない。
【発明の効果】
【0014】
本発明が対象とするタイヤ着脱装置は、ガイドレールに沿ってツールを移動する場合、該ツールを取付けた移動台にはセンサーが設けられ、該センサーにてタイヤが存在する領域が検出される為に、ツールがタイヤに衝突することはない。
すなわち、移動台が移動してツールがタイヤに近づいたならば、アームは自動的に旋回して立ち上がり、ツールはタイヤを避けて移動することが出来る。従来のように作業者が手でツールを持ち上げてタイヤを避ける必要はない。
【0015】
勿論、移動台が移動を開始する前にツールアームが立ち上がるように動作させることも出来る。そして、所定の位置まで移動したツールはその向きを反転し、ツールアームは下方へ旋回して倒れ、直ちにタイヤの着脱作業に取り掛かることが出来、実質的な作業効率は向上する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係るタイヤ着脱方法を構成するツールの反転移動機構を備えたタイヤ着脱装置を示す平面図。
図2】本発明に係るタイヤ着脱方法を構成するツールの反転移動機構を備えたタイヤ着脱装置を示す側面図。
図3】ツールの反転機構を示す具体例。
図4】ツール及びツールアームの動作を示す具体例。
図5】一般的なタイヤ着脱装置で、平面図、正面図、及び側面図。
図6】ツールがタイヤの反対側へ移動した場合。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1図2は本発明に係るタイヤ着脱方法を構成するタイヤ着脱装置の実施例であり、基本的な構造は前記図5に示す装置と共通している。同図において、1はベース、2はツール、3はチャック、4はツールアーム、5はチャックアームをそれぞれ表している。ベース1に設けている2本のガイドレール7,7には移動体6が載り、該移動体6はガイドレール7,7に沿って移動することが出来る。
【0018】
ここで、移動手段としては一般に油圧で作動するシリンダーが用いられている。そして、上記チャックアーム5は移動体6に取付けられ、軸8を介して上下方向に揺動することが出来る。チャックアーム5の先端部には上記チャック3が取付けられて、該チャック3はモータ(図示なし)によって回転することが出来るように成っている。
【0019】
一方、上記ツール2はツールアーム4の先端に取着されている。そして、ツールアーム4は移動台9に取付けられているが、移動台9に取着したブラケット12の軸10を中心として上下方向に旋回することが出来るように成っている。ここで、ツールアーム4の旋回手段として油圧で作動するシリンダー11が用いられ、該シリンダー11はブラケット12に取付けられると共に、ピストンロッドの先端はツールアーム4に連結している。
【0020】
そこで、シリンダー11のピストンロッドが伸びるならばツールアーム4は倒れてタイヤの中心方向に向き、ピストンロッドが縮むならば図2に示すようにツールアーム4は上方へ旋回して起立する。ツールアーム4を取付けている移動台9はベース1の設けた2本のガイドレール13,13の上に載り、ガイドレール13,13に沿って移動することが出来る。ここで、移動台9の移動手段としては一般にシリンダー(図示なし)が用いられる。
【0021】
上記ツール2は円板状の皿形ディスク14とタイヤツメ15を有し、皿形ディスク14は回転自在に取付けられてタイヤの側面及びビード付近を押圧してタイヤをホイールから外すことが出来る。そして、タイヤツメ15はタイヤビードに係止し、タイヤが回転することでホイールからビードが外される。ただし、本発明ではツールの形態に関しては特に限定せず、筒形をしたビードローラをツールアーム4の先端に取付けることも出来る。
【0022】
そして、上記チャック3にはタイヤ16を装着したホイール17が取付けられ、ホイール17の中央穴にチャック3が係合することで固定される。該チャック3は複数のリンクを組み合せた構造であって、その為にホイール17の中央穴の内径が如何様であっても係合して取付けることが出来る。ただし、このチャック3はホイール17を取付ける為の1手段に過ぎず、他の取付け手段を用いて構成することも可能である。
【0023】
本発明のタイヤ着脱装置では、移動台がガイドレールに沿って移動する場合、倒れた状態にあるツールアーム先端のツール2がタイヤ16に衝突しないように構成している。すなわち、ツール2が移動してタイヤ16に近づいたならば、ツールアーム4は上方へ旋回して起立することが出来、起立したツールアーム先端のツール2はタイヤ16に当たることなく、該タイヤ16を越えて移動することが出来る。勿論、移動台9が移動を開始する段階で、ツールアーム4を上方へ旋回して起立するように制御することも可能である。
タイヤ16を越えて移動したならば、ツールアーム4は倒れて元の位置(向き)に戻される。
【0024】
ところで、移動台9にはレーザー光を発するセンサー18を取付けている。レーザー光を照射する移動台9が移動してツール2がタイヤ16に近づいたことを検知し、ツールアーム4は上方へ旋回して起立する。そしてタイヤ16を越えたことを検知してツールアーム4は下方へ旋回して倒れる。このセンサー18からの信号は電磁弁へ送信されてシリンダー11を作動してピストンロッドを伸縮させることが出来る。
ツール2がタイヤ16を越える為に起立した状態で、ツール2はその向きを反転する。勿論、ツール2の向きを反転する動作は、移動してタイヤ16を越えた段階で行うことも出来る。
【0025】
図3はツール反転機構を示す具体例である。上記ツールアーム4は移動台9に固定したブラケット12に取付けられているが、このブラケット12にはラック19を取付け、該ラック19はシリンダー20の作動によってスライドすることが出来るように構成している。そして、ツールアーム4の基部にはピニオン21を設け、このピニオン21は上記ラック19と噛合っている。
【0026】
そこで、シリンダー20が作動してラック19がスライドするならば、ピニオン21は回転し、ツールアーム4の先端に取付けているツール2の向きを変えることが出来る。
図3(a)はシリンダー20のピストンロッドが伸びてラック19は右方向へ移動した状態を示し、この場合にはツール2の皿形ディスク14は左側に位置している。これに対して、図3(b)ではシリンダー20のピストンロッドが縮んでラック19は左方向へ移動した状態を示し、この場合にはツール2の皿形ディスク14は右側に位置している。すなわち、ツール2は180°回転してその向きが反転している。
【0027】
図4(a)〜(i)はツールの移動及び反転動作の1具体例を表している
(a)はツール2がタイヤ16の左側(表側)に位置している場合。
(b)はツール2を先端に取付けているツールアーム4が上方へ旋回している場合。
(c)はツールアーム4が上方へ旋回して起立した場合。
(d)はツール2が180°回転して向きを反転した場合。
(e)は移動台9が右方向(裏側方向)へ移動を開始した場合。この際、センサー18からレーザー光が照射される。
(f)は移動台9が移動してセンサー18からのレーザー光がタイヤ16に当たってタイヤ16の存在を検出する場合。
(g)は移動台9がさらに移動してレーザー光にてタイヤ16を通過したことを検出する場合。
(h)は移動台9がさらに所定の位置まで右側(裏側)ヘ移動する場合。
(i)は移動台9が所定の位置でツール2を取付けているツールアーム4が下方へ旋回して倒れ、元の位置に戻った場合。
【0028】
ここで、上記図4(a)〜(i)に示すツール2及びツールアーム4の動作は1具体例に過ぎず、一部の動作の順序を違わせることは可能である。そして、ツール2をタイヤの右側(裏側)から左側(表側)へ移動するように制御する場合もある。
ツール2の反転機構は前記図3に示すようなラック−ピニオンを用いた機構に限定するものではない。
【符号の説明】
【0029】
1 ベース
2 ツール
3 チャック
4 ツールアーム
5 チャックアーム
6 移動体
7 ガイドレール
8 軸
9 移動台
10 軸
11 シリンダー
12 ブラケット
13 ガイドレール
14 皿形ディスク
15 タイヤツメ
16 タイヤ
17 ホイール
18 センサー
19 ラック
20 シリンダー
21 ピニオン


図1
図2
図3
図4
図5
図6