特許第6357456号(P6357456)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6357456
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】シートベルト用リトラクタ
(51)【国際特許分類】
   B60R 22/415 20060101AFI20180702BHJP
   B60R 22/34 20060101ALI20180702BHJP
   B60R 22/353 20060101ALI20180702BHJP
【FI】
   B60R22/415
   B60R22/34 119
   B60R22/353
【請求項の数】4
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-215071(P2015-215071)
(22)【出願日】2015年10月30日
(65)【公開番号】特開2017-81512(P2017-81512A)
(43)【公開日】2017年5月18日
【審査請求日】2017年6月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】503358097
【氏名又は名称】オートリブ ディベロップメント エービー
(74)【代理人】
【識別番号】503175047
【氏名又は名称】オートリブ株式会社
(74)【復代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】日端 岩太
【審査官】 鈴木 敏史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−24478(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/007480(WO,A1)
【文献】 特開2014−34326(JP,A)
【文献】 特開2012−245827(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 22/415
B60R 22/34
B60R 22/353
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームに回転自在に支持され、ウェビングが巻装されるスピンドルと、
前記フレームに係合することで前記スピンドルのウェビング引き出し方向の回転をロックするロック部材と、
前記スピンドルに相対回転可能に支持されると共に、前記スピンドルに対して回転遅れを生じることにより前記ロック部材を作動するステアリングホイールと、
内外周面にそれぞれ内歯及び外歯が形成され、前記フレームに固定されるベアリングプレートに回転自在に配設されたラッチリングと、
前記ベアリングプレートに揺動自在に支持されるALRプレートと、該ALRプレートの揺動と連動して、前記ステアリングホイールと係脱するALRレバーと、を有し、前記ウェビングの全量引き出し付近で前記ALRプレートが揺動することで、前記ALRレバーが前記ステアリングホイールと係合して、前記スピンドルのウェビング引き出し方向の回転を阻止する自動ロック機構と、
前記ベアリングプレートに揺動自在に支持されるラッチリングロックプレートと、該ラッチリングロックプレートの揺動と連動して、前記ラッチリングの外歯と係脱するロックレバーと、を有し、前記ウェビングの巻き取り完了付近で、前記ラッチリングロックプレートが揺動することで、前記ロックレバーが前記ラッチリングの外歯との係合を解除して、エンドロックを防止するエンドロック防止機構と、
を備え、
前記ラッチリングロックプレートは、前記ロックレバーと前記ラッチリングの外歯との係合を解除する方向に揺動した際に、前記ALRレバーが前記ステアリングホイールとの係合を解除するように前記ALRプレートを揺動させるALRキャンセルレバーを備えることを特徴とするシートベルト用リトラクタ。
【請求項2】
前記ステアリングホイールの外周面に形成された歯部と係合可能な加速度センサレバーを有し、水平方向の加速度を検出する加速度センサをさらに備え、
前記ラッチリングロックプレートは、前記加速度センサレバーに当接離脱可能な加速度センサロックキャンセル部を備え、
前記加速度センサロックキャンセル部は、前記ウェビングの巻き取り完了付近で、前記ラッチリングロックプレートが揺動することで、前記加速度センサレバーに当接して、前記加速度センサレバーによるエンドロックを防止することを特徴とする請求項1に記載のシートベルト用リトラクタ。
【請求項3】
前記ラッチリングロックプレートは、前記ロックレバーを前記ラッチリングと係脱するように駆動するカム部と、前記加速度センサロックキャンセル部と、前記ALRキャンセルレバーと、を構成する単一部材であることを特徴とする請求項2に記載のシートベルト用リトラクタ。
【請求項4】
前記ALRプレートは、前記スピンドルと共に回転する駆動ギヤと噛合する第1のギヤを回動自在に支持し、
前記ラッチリングロックプレートは、前記駆動ギヤと噛合する第2のギヤ及び第3のギヤを回動自在に支持し、
前記駆動ギヤの側面と前記第1のギヤの側面には、前記ウェビングの全量引き出し付近で前記ALRプレートが揺動するように互いに当接可能な駆動突部と第1の突部がそれぞれ設けられ、
前記第2のギヤの側面には、前記ウェビングが所定量引き出される際に前記ラッチリングロックプレートが揺動して前記ロックレバーが前記ラッチリングの外歯と係合するように前記駆動突部と当接可能な第2の突部が設けられ、
第3のギヤの側面には、前記ウェビングの巻き取り完了付近で前記ラッチリングロックプレートが揺動して前記ロックレバーが前記ラッチリングの外歯と係合を解除するように前記駆動突部と当接可能な第3の突部が設けられることを特徴とする請求項1又は2に記載のシートベルト用リトラクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートベルト用リトラクタに関し、より詳細には、自動ロック機構とエンドロック防止機構とを備えるシートベルト用リトラクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の乗員等を座席に安全に保持するためのシートベルト用リトラクタとして、急な加速、衝突又は減速に反応する車体加速度感知手段によってウェビングの引き出しを物理的にロックする緊急ロック機構を備えて、乗員を効果的及び安全に拘束する緊急ロック式リトラクタが用いられている。また、チャイルドシート等を車両シートにシートベルトで固定するためのシートベルト用リトラクタとして、ウェビングを全量引き出したときに作動し、巻取り途中ではウェビングの引出しを阻止し、ウェビングの全量巻取りで作動解除する自動ロック機構を備えたものが用いられている。
【0003】
ところで、緊急ロック機構を備えたシートベルト用リトラクタでは、車両緊急時ではない不必要な時にも、スピンドル(巻取軸)のウェビング引き出し方向の回転がロックされることがある。即ち、車両取付け状態において、ウェビング引き出し状態から巻き取りバネのバネ力に従って急激にウェビングが全量巻き取られたとき、その衝撃で緊急ロック機構が作動して、スピンドルのウェビング引き出し方向の回転がロックされてしまうことがあり、この場合には、ウェビングの引き出しができなくなる。しかもこのとき、ウェビングは全量巻き取り状態にあるので、スピンドルはウェビング巻き取り方向にも回転できず、リトラクタは所謂エンドロック状態に陥るという問題があった。
【0004】
例えば、緊急ロック機構としては、次のようなものがある。一つは、ウェビングの急激な引き出しを感知してスピンドルのウェビング引き出し方向の回転を阻止するもの(ウェビング加速度感知手段:WS)、もう一つは車両の急減速状態を感知してスピンドルのウェビング引き出し方向の回転を阻止するもの(車体加速度感知手段:VSI)である。いずれの場合も、スピンドルと一体回転するロック部材の揺動により、ロック部材の爪を、スピンドルを支持するフレームの内歯に噛み合わせて、スピンドルをロックするようにしている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0005】
このようなリトラクタにおいて、エンドロックが起きるケースとしては、次の3つの場合がある。
(1)ウェビング加速度感知手段(WS)の誤作動によるもの。
一般的に、ウェビング加速度感知手段は、急速にベルトを引き出すと、マスの慣性でマス側の回転がスピンドルより遅れることで、ロック部材が外に飛び出して、フレームの内歯に噛み込む、という原理を用いている。ところが、急激なウェビング巻き取り後にウェビングが突っ張ると、勢いでマスがスピンドルに対して相対移動してしまい、ロック部材がフレームの内歯に噛んでしまう場合である。
(2)車体加速度感知手段(VSI)の誤作動によるもの。
ウェビングの急速な巻き取り等に伴い車体加速度感知手段に加速度が入力した際に、慣性部材であるボールが動き、レバーが揺動して、ラッチ部材に噛んでロックする場合である。
(3)ロック部材自体の誤作動によるもの。
ウェビングを巻き取った勢いで、ロック部材自体がフレームの内歯に噛んでしまう場合である。
【0006】
特許文献1に記載のシートベルトリトラクタは、スピンドルの回転に連動するカムプレートのカム溝に揺動阻止部材に設けられたカムフォロワを案内させ、揺動阻止部材のストッパ部を回動する。そして、このストッパ部が慣性体に当接して、慣性体を非作動位置に保持して慣性体の揺動を阻止する。これにより、ウェビングの巻取り完了時に、慣性体が作動してロックギヤ(ラチェットホイール)への係合を防止し、ウェビングの巻取り完了時のエンドロックを防止している。
【0007】
また、特許文献2に記載のシートベルトリトラクタは、遊星歯車機構によって回動するカム部材を有し、ロック手段としての一対のロックプレートが配設されたロック輪が全量巻き取り状態でスピンドルとの相対回転を阻止するエンドロック防止手段を備える。また、該シートベルトリトラクタは、遊星歯車機構の歯車及び他の歯車を介して他のカム部材を回動させることで自動ロック機構を構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9−58410号公報
【特許文献2】特開平10−129417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に開示されているシートベルト用リトラクタは、エンドロック防止機構を有しているが、自動ロック機構を備えていない。また、特許文献2に開示されているシートベルト用リトラクタは、自動ロック機構とエンドロック防止機構とが、それぞれ独立して設けられているため、シートベルト用リトラクタの機構が複雑となり、製造コストが増大するばかりでなく、シートベルト用リトラクタが大型になってしまう課題があった。
【0010】
また、自動ロック機構とエンドロック防止機構の各切換タイミングは、ウェビングの格納状態と、バックルラッチ状態(バックルにタングが差し込まれおり、且つ、ウェビングが最も巻かれている状態、つまり、シートに人が乗っていない状態、以下「空ラッチ状態」と称す。)の範囲でそれぞれ行われる。
自動ロック機構は、チャイルドシートを固定するために必要な機構で、空ラッチ状態で作動している必要がある。また、自動ロック機構は、ウェビング格納状態で、ウェビングの引き出しができるように確実に解除されている必要がある。
また、エンドロック防止機構は、空ラッチ状態では、ロック手段が機能するように非作動とされ、ウェビング格納状態では、作動することが要求される。
【0011】
空ラッチ状態とウェビング格納状態でのウェビングの引き出し量の差は、車両レイアウトによっては少ない場合があり、シートクッションの変形やウェビングの巻き斑、巻き締まり等に対するマージンも考慮して、自動ロック機構とエンドロック防止機構の各切換タイミングのばらつきを少なくすることが、顧客から求められている。
このようなウェビングの引き出し量の差が少ない車両では、各切換タイミングが空ラッチ状態とウェビング格納状態との間で確実に行われるように、シートベルト装置ごとに、ウェビングのアンカー縫製によるチューニングが行われており、この場合、コストアップの要因となる。
特に、特許文献2のような自動ロック機構とエンドロック防止機構とが、それぞれ独立して設けられている場合には、各切換えタイミングのばらつきによって、上記課題が存在する。
【0012】
本発明は、前述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、自動ロック機構とエンドロック防止機構とを組み合わせて、コンパクトな機構で両機能を達成することができるシートベルト用リトラクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
(1) フレームに回転自在に支持され、ウェビングが巻装されるスピンドルと、
前記フレームに係合することで前記スピンドルのウェビング引き出し方向の回転をロックするロック部材と、
前記スピンドルに相対回転可能に支持されると共に、前記スピンドルに対して回転遅れを生じることにより前記ロック部材を作動するステアリングホイールと、
内外周面にそれぞれ内歯及び外歯が形成され、前記フレームに固定されるベアリングプレートに回転自在に配設されたラッチリングと、
前記ベアリングプレートに揺動自在に支持されるALRプレートと、該ALRプレートの揺動と連動して、前記ステアリングホイールと係脱するALRレバーと、を有し、前記ウェビングの全量引き出し付近で前記ALRプレートが揺動することで、前記ALRレバーが前記ステアリングホイールと係合して、前記スピンドルのウェビング引き出し方向の回転を阻止する自動ロック機構と、
前記ベアリングプレートに揺動自在に支持されるラッチリングロックプレートと、該ラッチリングロックプレートの揺動と連動して、前記ラッチリングの外歯と係脱するロックレバーと、を有し、前記ウェビングの巻き取り完了付近で、前記ラッチリングロックプレートが揺動することで、前記ロックレバーが前記ラッチリングの外歯との係合を解除して、エンドロックを防止するエンドロック防止機構と、
を備え、
前記ラッチリングロックプレートは、前記ロックレバーと前記ラッチリングの外歯との係合を解除する方向に揺動した際に、前記ALRレバーが前記ステアリングホイールとの係合を解除するように前記ALRプレートを揺動させるALRキャンセルレバーを備えることを特徴とするシートベルト用リトラクタ。
(2) 前記ステアリングホイールの外周面に形成された歯部と係合可能な加速度センサレバーを有し、水平方向の加速度を検出する加速度センサをさらに備え、
前記ラッチリングロックプレートは、前記加速度センサレバーに当接離脱可能な加速度センサロックキャンセル部を備え、
前記加速度センサロックキャンセル部は、前記ウェビングの巻き取り完了付近で、前記ラッチリングロックプレートが揺動することで、前記加速度センサレバーに当接して、前記加速度センサレバーによるエンドロックを防止することを特徴とする(1)に記載のシートベルト用リトラクタ。
(3) 前記ラッチリングロックプレートは、前記ロックレバーを前記ラッチリングの外歯と係脱するように駆動するカム部と、前記加速度センサロックキャンセル部と、前記ALRキャンセルレバーと、を構成する単一部材であることを特徴とする(2)に記載のシートベルト用リトラクタ。
(4) 前記ALRプレートは、前記スピンドルと共に回転する駆動ギヤと噛合する第1のギヤを回動自在に支持し、
前記ラッチリングロックプレートは、前記駆動ギヤと噛合する第2のギヤ及び第3のギヤを回動自在に支持し、
前記駆動ギヤの側面と前記第1のギヤの側面には、前記ウェビングの全量引き出し付近で前記ALRプレートが揺動するように互いに当接可能な駆動突部と第1の突部がそれぞれ設けられ、
前記第2のギヤの側面には、前記ウェビングが所定量引き出される際に前記ラッチリングロックプレートが揺動して前記ロックレバーが前記ラッチリングの外歯と係合するように前記駆動突部と当接可能な第2の突部が設けられ、
第3のギヤの側面には、前記ウェビングの巻き取り完了付近で前記ラッチリングロックプレートが揺動して前記ロックレバーが前記ラッチリングの外歯と係合を解除するように前記駆動突部と当接可能な第3の突部が設けられることを特徴とする(1)又は(2)に記載のシートベルト用リトラクタ。
【発明の効果】
【0014】
本発明のシートベルト用リトラクタによれば、ベアリングプレートに揺動自在に支持されるALRプレートと、該ALRプレートの揺動と連動して、ステアリングホイールと係脱するALRレバーと、を有し、ウェビングの全量引き出し付近でスピンドルのウェビング引き出し方向の回転を阻止する自動ロック機構と、ベアリングプレートに揺動自在に支持されるラッチリングロックプレートと、該ラッチリングロックプレートの揺動と連動して、ラッチリングの外歯と係脱するロックレバーと、を有し、ウェビングの巻き取り完了付近で、ロックレバーがラッチリングの外歯との係合を解除してエンドロックを防止するエンドロック防止機構と、を備える。また、ラッチリングロックプレートは、ロックレバーとラッチリングの外歯との係合を解除する方向に揺動した際に、ALRレバーがステアリングホイールとの係合を解除するようにALRプレートを揺動させて自動ロック機構を解除するALRキャンセルレバーを備える。これにより、簡単、且つコンパクトな構成で自動ロック機構とエンドロック防止機構とを構成することができる。また、エンドロック防止機構の作動タイミングと、自動ロック機構の解除タイミングのばらつきを最小にすることができ、2つの切換えタイミングを空ラッチ状態とウェビング格納状態との間で確実に設定することができる。このため、空ラッチ状態とウェビング格納状態との間でウェビングの引き出し量の差が少ない車両であっても、ウェビングのアンカー縫製によるチューニングをシートベルト装置ごとに行う必要がなくなり、コストダウンを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態のシートベルト用リトラクタの分解斜視図である。
図2図1に示すシートベルト用リトラクタの断面図である。
図3】ウェビングセンサレバーがステアリングホイールに組み付けられた状態を示す側面図である。
図4】スピンドルに固定されたドライブギヤによりギヤ列を介して揺動駆動されるALRプレート及びラッチリングロックプレートの側面図である。
図5】自動ロック機構、及びエンドロック防止機構の要部分解図である。
図6】車体加速度感知手段を構成する加速度センサレバーの斜視図である。
図7】ウェビングが全量格納され、エンドロック防止機構が作動した状態を示す側面図である。
図8】所定量のウェビングが引き出され、ラッチリングロックプレートが揺動してエンドロック防止機構が解除された状態を示す側面図である。
図9】更にウェビングが引き出されたELR状態を示す側面図である。
図10】ウェビングが全量引き出され、ALRレバーがステアリングホイールと係合してウェビングの引き出しを阻止する状態を示す側面図である。
図11図10の状態からウェビングが巻き戻され、自動ロック機構が作動した状態を示す側面図である。
図12】ウェビングが巻き取り完了付近まで巻き取られ、ラッチリングロックプレートが揺動してエンドロック防止機構が作動すると共に、ALRプレートが揺動して自動ロック機構のロックが解除される状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係るシートベルト用リトラクタの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。本実施形態のシートベルト用リトラクタは、ウェビング加速度感知手段と車体加速度感知手段とを有する緊急ロック機構と、自動ロック機構と、エンドロック防止機構と、を備える。
【0017】
図1及び図2に示すように、このシートベルト用リトラクタ1は、ウェビング(図示略)が巻装される金属製(例えば、アルミ合金製)のスピンドル10と、カバー12に収容されてスピンドル10を巻き取り方向に回転付勢するバネ式の巻取装置11と、スピンドル10を回転自在に支持する金属製のコ字状のフレーム13と、ロック部材としての金属製(例えば、鉄製)のロックドック20と、樹脂製のステアリングホイール30と、慣性体としての機能を併せ持つ樹脂製のウェビングセンサレバー40と、フレーム13に固定されるベアリングプレート60と、ベアリングプレート60に回動自在に配設されるラッチリング50と、自動ロック機構70と、緊急ロック機構を作動状態と非作動状態とに切換えるエンドロック防止機構90と、スピンドル10の軸14に固定されるドライブギヤ81と、車体の加速度を感知する車体加速度感知手段としての加速度センサ100と、ベアリングプレート60を覆うように、フレーム13に固定されるカバー部材15と、を主に備えている。
【0018】
フレーム13は、スピンドル10の軸方向の中央部分を挟んで対向する左右側板13A、13Bを有し、一方の側板13Aの外側に緊急ロック機構、自動ロック機構70及びエンドロック防止機構90が配置され、他方の側板13Bの外側に巻取装置11が配置されている。スピンドル10の一端側の軸14は、ステアリングホイール30、ベアリングプレート60を貫通し、その先端にはドライブギヤ81が一体回転するように嵌着されている。
【0019】
フレーム13の側板13Aの円形開口の内周には、ロックドック20の爪22が係合可能な多数の内歯17が形成されている。ロックドック20は、スピンドル10の一方の端面と該端面に固着された金属製(例えば、鉄製)のセーフティプレート25との間に確保された空間に変位自在に収容され、オメガスプリング26によって爪22がフレーム13の内歯17から離れるロック解除方向に保持されている。また、ロックドック20は、ステアリングホイール30に形成されたカム孔31に挿入されるカムピン21を備える。
【0020】
図3に示すように、ステアリングホイール30は、スピンドル10に相対回転可能に支持され、ロックドック20のカムピン21が係合するカム孔31と、ウェビングセンサレバー40の軸孔41に嵌合してウェビングセンサレバー40を揺動自在に支持する凸軸32と、外周面に形成された歯部34とを有している。
【0021】
カム孔31は、スピンドル10に対してステアリングホイール30が相対回転するときに、カムピン21を介してロックドック20の爪22を外方に押し出す。例えば、ウェビング引き出し時に、スピンドル10に対してステアリングホイール30が回転遅れを生じた場合に、スピンドル10とステアリングホイール30の相対回転により、ロックドック20をロック側へ作動させる。そして、外に飛び出させた爪22を、フレーム13の内歯17に噛み合わせることにより、スピンドル10をフレーム13の内歯17にロックさせ、ウェビング引き出し方向の回転を機械的にロックする。
【0022】
ウェビングセンサレバー40は、所定の慣性力を有するように従来のウェビングセンサレバーより比較的大きく形成されており、ラッチリング50の内歯52に係合可能な爪42を備え、ステアリングホイール30の凸軸32に揺動自在に嵌合している。軸孔41に対して爪42と反対側の腕43とステアリングホイール30の突片33との間には、ウェビングセンサスプリング58が装着されて爪42を内方に引っ込める方向(ラッチリング50の内歯52から離間する方向)にウェビングセンサレバー40を回転付勢している。従って、通常時には、爪42がラッチリング50の内歯52と係合しない非作動位置に保持される。即ち、ステアリングホイール30、ウェビングセンサレバー40、ウェビングセンサスプリング58は、ウェビング加速度感知手段を構成する。
【0023】
これにより、乗員の急な移動によりウェビングが引き出され、ウェビングセンサレバー40が慣性力によって回動し、ウェビングセンサレバー40の爪42が外方に突き出されて、ラッチリング50の内歯52に噛合する。これにより、ウェビング加速度感知手段は、ステアリングホイール30のウェビング引き出し方向の回転を阻止する。
【0024】
ラッチリング50は、外周面及び内周面にそれぞれ複数の外歯51及び内歯52が設けられたリング状に形成され、フレーム13に固定されるベアリングプレート60に回転自在に配設されている。なお、図2に示すように、ステアリングホイール30の歯部34と、ラッチリング50の外歯51とは、軸方向に離間しており、且つ、外歯51は、歯部34よりも径方向内側に形成されている。
【0025】
図4及び図5に示すように、自動ロック機構70は、ベアリングプレート60に突出して設けられた軸部61に、ALRプレート71が揺動自在に支持されている。ALRプレート71は、側面から突出する軸部72と、ALRレバー74を揺動するための溝カム73と、を備える。
【0026】
ALRプレート71の軸部72には、ドライブギヤ81と噛合するALR用ギヤ82が回動自在に嵌合する。ドライブギヤ81の側面には、扇状の駆動突部81aが設けられている。また、ALR用ギヤ82の側面には、駆動突部81aと当接可能な扇状の第1の突部82aが設けられている。ドライブギヤ81は、スピンドル10の軸14に固定されてスピンドル10と一体回転する。
【0027】
ALRプレート71の溝カム73には、ALRレバー74から側方に突出する凸部75が嵌合する。ALRレバー74は、その一端がベアリングプレート60の支持孔63で揺動可能に支持されている。これにより、ALRプレート71が作動(揺動)すると、ALRレバー74が溝カム73に駆動されて揺動して、先端に設けられた爪76を、ベアリングプレート60の切欠き部64に臨むステアリングホイール30の歯部34に係合及び離脱させる。
【0028】
エンドロック防止機構90は、ベアリングプレート60に突出して設けられた軸部62に、ラッチリングロックプレート91が揺動自在に支持されている。ラッチリングロックプレート91は、側面から突出する軸部92,93と、ロックレバー94を揺動するための溝カム96と、を備える。
【0029】
ラッチリングロックプレート91の軸部92,93には、それぞれドライブギヤ81と噛合するラッチリングロックギヤ83及びラッチリングリリースギヤ84が回動自在に嵌合する。ラッチリングロックギヤ83の側面には、駆動突部81aと当接可能な扇状の第2の突部83aが設けられ、ラッチリングリリースギヤ84の側面には、駆動突部81aと当接可能な扇状の第3の突部84aが設けられている。
【0030】
ラッチリングロックプレート91の溝カム96には、ロックレバー94から側方に突出する凸部95が嵌合する。ロックレバー94は、その一端がベアリングプレート60の支持孔65で揺動可能に支持されている。これにより、ラッチリングロックプレート91が作動(揺動)すると、ロックレバー94は、溝カム96に駆動されて揺動して、先端に設けられた爪97を、ベアリングプレート60の切欠き部66に臨むラッチリング50の外歯51に係合及び離脱させる。
【0031】
また、ラッチリングロックプレート91は、加速度センサレバー103の係止片107に対向配置されて、加速度センサレバー103の作動を許容する作動位置と、加速度センサレバー103の作動を阻止する非作動位置との間を移動可能な加速度センサロックキャンセル部98と、ALRプレート71に当接してALRプレート71を揺動可能なALRキャンセルレバー99とを有し、溝カム96、加速度センサロックキャンセル部98、及びALRキャンセルレバー99を構成する単一部材からなる。
【0032】
加速度センサ100は、ベアリングプレート60とカバー部材15との間に配置されるセンサホルダ101と、センサホルダ101内に格納され、水平方向の加速度に応じて変位する慣性体(ボール)102と、軸孔105に挿通される支持軸106により回動自在に配置され、ステアリングホイール30の外周面に形成された歯部34に対してその先端歯先104が接近離間する加速度センサレバー103と、を備える。
【0033】
図6に示すように、加速度センサレバー103には、軸孔105と反対側に設けられた先端歯先104から横方向に延設された係止片107を有する。係止片107には、ラッチリングロックプレート91の加速度センサロックキャンセル部98が対向して配置されている。
【0034】
そして、車体加速度に応じてボール102が移動することにより、加速度センサレバー103が揺動して先端歯先104がステアリングホイール30の歯部34に係合して、ステアリングホイール30をロックする。
【0035】
次に、図7図12を参照して自動ロック機構70及びエンドロック防止機構90の作用について説明する。
説明の都合上、ウェビングは、全量がスピンドル10に巻き取られて収容された、図7に示す状態にあるものとする。このとき、図7に示すように、ALRプレート71は、軸部61を中心として時計方向に回動した位置にある。また、ラッチリングロックプレート91は、軸部62を中心として時計方向に回動した位置にある。
【0036】
従って、自動ロック機構70は、ALRレバー74の爪76とステアリングホイール30の歯部34との係合が解除されている。また、エンドロック防止機構90は、ロックレバー94の爪97とラッチリング50の外歯51との係合を解除し、且つ加速度センサロックキャンセル部98は加速度センサレバー103の作動を阻止する非作動位置に位置し、ALRキャンセルレバー99は、ALRプレート71の左側面に当接している。
【0037】
図7に示す状態から所定量ウェビングを引き出すと、図8に示すように、スピンドル10と共に回転するドライブギヤ81の駆動突部81aが、ラッチリングロックギヤ83の第2の突部83aに当接し、ラッチリングロックプレート91が軸部62を中心として反時計方向に回動する。
【0038】
これにより、凸部95が溝カム96と嵌合しているロックレバー94が時計方向に回動してロックレバー94の爪97とラッチリング50の外歯51とが係合する。また、加速度センサロックキャンセル部98も、反時計方向に回動して加速度センサレバー103の作動を許容する作動位置に移動して、緊急ロック機構(ウェビング加速度感知手段及び車体加速度感知手段)の作動を可能とする状態となる。即ち、緊急ロック機構の非作動状態から作動可能状態に切換えられる。
【0039】
この切換えタイミングは、通常、全量のウェビングが、スピンドル10に巻き取られた状態(ウェビング格納状態)からウェビングが引き出されてバックルがタング(いずれも図示せず)にラッチされる状態(空ラッチ状態)までの間に設定される。また、この切換え動作に伴って、ALRキャンセルレバー99は、ALRプレート71から離間する。
【0040】
更に、ウェビングのバックルがアンカー(いずれも図示せず)にラッチ可能となる状態、或いはそれ以上にウェビングが引き出されると、図9に示すELR状態となる。この状態では、ウェビングの引出し、巻き込みが自由であり、巻取装置11のバネ力による弱い力で乗員を拘束する。また、緊急時には、緊急ロック機構(ウェビング加速度感知手段及び車体加速度感知手段(加速度センサ100)が有効に作動して、ウェビングの引出しをロックして乗員を安全に保護する。
【0041】
更に、ウェビングが全量引き出されると、図10に示すように、ドライブギヤ81の駆動突部81aがALR用ギヤ82の第1の突部82aに当接して、ALRプレート71を、軸部61を中心として反時計方向に回動させる。これにより、凸部75が溝カム73に嵌合するALRレバー74は時計方向に回動してALRレバー74の爪76がステアリングホイール30の歯部34に係合する。この状態では、ステアリングホイール30の回転が阻止されるので、ウェビングの引出しが阻止され、巻き取りのみが可能となる。即ち、自動ロック機構70が作動状態となって、チャイルドシート等を車両シートに固定可能となる。
【0042】
図10に示す状態から所定の長さのウェビングが巻き取られるまでの間は、図11に示すように、ALRプレート71及びラッチリングロックプレート91は反時計方向に回動した状態、即ち、ウェビングの引出しが阻止されると共に、緊急ロック機構が有効に作動可能となっている。
【0043】
そして、ウェビングが完全に収納される直前まで巻き取られると、図12に示すように、ドライブギヤ81の駆動突部81aがラッチリングリリースギヤ84の第3の突部84aに当接して、ラッチリングロックプレート91が軸部62を中心として時計方向に回動する。
【0044】
これにより、凸部95が溝カム96に嵌合するロックレバー94が反時計方向に回動して、ロックレバー94の爪97とラッチリング50の外歯51との係合を解除する。また、加速度センサロックキャンセル部98は、時計方向に回動して加速度センサレバー103の作動を阻止する非作動位置に移動する。
【0045】
同時に、ALRキャンセルレバー99は、ALRプレート71の左側面を押圧してALRプレート71を軸部61を中心として時計方向に回動させる。ALRプレート71の時計方向への回動により、ALRレバー74の爪76とステアリングホイール30の歯部34との係合が解除されて図7に示す初期状態に戻る。即ち、自動ロック機構70のロックがキャンセルされてウェビングの引出しが可能となる。
【0046】
また、図7及び図12に示す状態では、加速度センサロックキャンセル部98によって加速度センサレバー103の作動が阻止されているので、加速度センサ100に衝撃力が作用しても加速度センサ100によってウェビングの引出しがロックされる誤動作が発生することはない。また、ロックレバー94の爪97とラッチリング50の外歯51との係合が解除されているので、ラッチリング50はベアリングプレート60に対して自由に回転することができる。従って、ウェビングセンサレバー40の誤作動によって爪42がラッチリング50の内歯52に噛合しても、ウェビングの引出しがロックされることはない。即ち、ウェビングの全量巻き込み時に、ウェビングの巻き込みも引出しもできなくなるエンドロックが防止される。
【0047】
以上説明したように、本実施形態のシートベルト用リトラクタ1によれば、ベアリングプレート60に揺動自在に支持されるALRプレート71と、該ALRプレート71の揺動と連動して、ステアリングホイール30と係脱するALRレバー74と、を有し、ウェビングが全量引き出された際にスピンドル10のウェビング引き出し方向の回転を阻止する自動ロック機構70と、ベアリングプレート60に揺動自在に支持されるラッチリングロックプレート91と、該ラッチリングロックプレート91の揺動と連動して、ラッチリング50の外歯51と係脱するロックレバー94と、を有し、ウェビングの巻き取り完了付近で、ロックレバー94がラッチリング50の外歯51との係合を解除してエンドロックを防止するエンドロック防止機構90と、を備える。また、ラッチリングロックプレート91は、ロックレバー94とラッチリング50の外歯51との係合を解除する方向に揺動した際に、ALRレバー74がステアリングホイール30との係合を解除するようにALRプレート71を揺動させて自動ロック機構70を解除するALRキャンセルレバー99を備える。
これにより、ALRレバー74がステアリングホイール30との係合を解除するようにALRプレート71を揺動させる部材を別途設ける必要がなく、簡単、且つコンパクトな構成で自動ロック機構70とエンドロック防止機構90とを構成することができる。また、エンドロック防止機構90の作動タイミングと、自動ロック機構70の解除タイミングのばらつきを最小にすることができ、2つの切換えタイミングを空ラッチ状態とウェビング格納状態との間で確実に設定することができる。このため、空ラッチ状態とウェビング格納状態との間でウェビングの引き出し量の差が少ない車両であっても、ウェビングのアンカー縫製によるチューニングをシートベルト装置ごとに行う必要がなくなり、コストダウンを図ることができる。
【0048】
また、ラッチリングロックプレート91は、加速度センサレバー103に当接離脱可能な加速度センサロックキャンセル部98を備え、該加速度センサロックキャンセル部98は、ウェビングの巻き取り完了付近で、加速度センサレバー103に当接して、加速度センサ100によるエンドロックを防止するので、エンドロックをより確実に防止することができる。
【0049】
また、ラッチリングロックプレート91は、ロックレバー94をラッチリング50と係脱するように駆動する溝カム96と、加速度センサロックキャンセル部98と、ALRキャンセルレバー99と、を構成する単一部材であるので、自動ロック機構70及びエンドロック防止機構90をコンパクトに設計して、シートベルト用リトラクタ1を小型にすることができる。
【0050】
また、ALRプレート71は、ドライブギヤ81と噛合するALR用ギヤ82を回動自在に支持し、ラッチリングロックプレート91は、ドライブギヤ81と噛合するラッチリングロックギヤ83及びラッチリングリリースギヤ84を回動自在に支持する。ドライブギヤ81及びALR用ギヤ82の側面には、ウェビングの全量引き出し付近で互いに当接してALRプレート71を揺動させる駆動突部81aと第1の突部82aが設けられ、ラッチリングロックギヤ83の側面には、ウェビングが所定量引き出される際に駆動突部81aと当接してロックレバー94がラッチリング50の外歯51と係合するようにラッチリングロックプレート91を揺動させる第2の突部83aが設けられ、ラッチリングリリースギヤ84の側面には、ウェビングの巻き取り完了付近で駆動突部81aと当接してロックレバー94がラッチリング50の外歯51と係合を解除するようにラッチリングロックプレート91を揺動させる第3の突部84aが設けられているので、スピンドル10と一体回転する1つのドライブギヤ81により、自動ロック機構70及びエンドロック防止機構90の切換えを制御することができ、機構を簡素化することができる。
【0051】
尚、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。
【符号の説明】
【0052】
1 シートベルト用リトラクタ
10 スピンドル
13 フレーム
20 ロックドック(ロック部材)
30 ステアリングホイール
34 歯部
40 ウェビングセンサレバー
50 ラッチリング
51 外歯
52 内歯
60 ベアリングプレート
70 自動ロック機構
71 ALRプレート
74 ALRレバー
81 ドライブギヤ(駆動ギヤ)
81a 駆動突部
82 ALR用ギヤ(第1のギヤ)
82a 第1の突部
83 ラッチリングロックギヤ(第2のギヤ)
83a 第2の突部
84 ラッチリングリリースギヤ(第3のギヤ)
84a 第3の突部
90 エンドロック防止機構
91 ラッチリングロックプレート
94 ロックレバー
96 溝カム(カム部)
98 加速度センサロックキャンセル部
99 ALRキャンセルレバー
100 加速度センサ
103 加速度センサレバー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12