(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6357465
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】アルミニウムピストンの製造方法及びそれを用いたアルミニウムピストン
(51)【国際特許分類】
F02F 3/10 20060101AFI20180702BHJP
F02F 3/14 20060101ALI20180702BHJP
B23K 9/04 20060101ALI20180702BHJP
B23K 9/167 20060101ALI20180702BHJP
B23K 10/02 20060101ALI20180702BHJP
B23K 9/173 20060101ALI20180702BHJP
B23K 9/16 20060101ALI20180702BHJP
B23K 15/00 20060101ALI20180702BHJP
B23K 26/342 20140101ALI20180702BHJP
B23K 26/348 20140101ALI20180702BHJP
F02F 3/00 20060101ALI20180702BHJP
【FI】
F02F3/10 B
F02F3/14
B23K9/04 M
B23K9/167 A
B23K10/02 501A
B23K9/173 A
B23K9/16 K
B23K15/00 505
B23K26/342
B23K26/348
F02F3/00 J
【請求項の数】11
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-502265(P2015-502265)
(86)(22)【出願日】2013年3月25日
(65)【公表番号】特表2015-518536(P2015-518536A)
(43)【公表日】2015年7月2日
(86)【国際出願番号】EP2013056234
(87)【国際公開番号】WO2013144072
(87)【国際公開日】20131003
【審査請求日】2016年3月14日
(31)【優先権主張番号】102012204947.9
(32)【優先日】2012年3月28日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】506292974
【氏名又は名称】マーレ インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】MAHLE International GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カールハインツ ビング
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ハック
(72)【発明者】
【氏名】フランク シュナイター
【審査官】
村山 禎恒
(56)【参考文献】
【文献】
特表2009−503320(JP,A)
【文献】
特開2004−353034(JP,A)
【文献】
特開昭59−042196(JP,A)
【文献】
特開平08−103887(JP,A)
【文献】
特開平10−076388(JP,A)
【文献】
特開2010−043593(JP,A)
【文献】
特開平05−169257(JP,A)
【文献】
特開2008−051091(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K9/00
B23K9/007−9/013
B23K9/04
B23K9/14−10/02
B23K15/00−15/10
B23K26/00−26/70
F02F3/00−3/28
F16J1/00−1/24
F16J7/00−10/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウムピストン(1)における少なくとも窪みの端部(4)及び/又は窪みの底部(3)の領域に溶接処理を施して、少なくとも1つの付加的元素を前記アルミニウムピストン(1)のベース材料に導入して中間層(6)を生成する内燃機関用のアルミニウムピストンの製造方法において、
前記溶接処理により、以下の付加的元素のうちの少なくとも1つを、特定の濃度、すなわち、Niが2wt%〜7wt%、Cuが7wt%を超え且つ10wt%未満、及びFeが1.5wt%を超え且つ5wt%以下で導入することを特徴とするアルミニウムピストンの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
(単位長さ当たりに入力されるアークエネルギー)/(溶接貫通面積)の特定の比であるE/A((J/mm)/mm2))を持つ以下の溶接法のうちの1つは、前記溶接処理として、
E/Aが7J/mm3〜17J/mm3のタングステン不活性ガス溶接(TIG)のようなアーク溶接法、又はE/Aが6J/mm3〜16J/mm3のプラズマ溶接法(WP)、又はE/Aが80J/mm3〜90J/mm3のレーザビーム溶接法、又はE/Aが5J/mm3〜15J/mm3の電子ビーム溶接法が用いられることを特徴とするアルミニウムピストンの製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、
以下の方法のうちの1つは、単位長さ当たりE(J/mm)である特定のエネルギー入力を持つ前記溶接処理として、
Eが150J/mm〜450J/mmのタングステン不活性ガス溶接(TIG)のようなアーク溶接法、又はEが250J/mm〜700J/mmのプラズマ溶接法(WP)、又はEが100J/mm〜400J/mmのレーザビーム溶接法、又はEが500J/mm〜900J/mmの電子ビーム溶接法が用いられ、
前記中間層(6)の成分は、100℃〜300℃の範囲に予熱することを特徴とするアルミニウムピストンの製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法において、
前記溶接処理により、縦の長さの最大値Lが50μm未満である中間層(6)が生成されることを特徴とするアルミニウムピストンの製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法において、
前記アルミニウムピストン(1)のための以下の組成、すなわち、Alが60wt%〜90wt%、Siが8wt%〜20wt%、Cuが2wt%〜6wt%、Niが1wt%〜4wt%、及びMgが0.2wt%〜2wt%を持つベース材料を用いることを特徴とするアルミニウムピストンの製造方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法において、
前記アルミニウムピストン(1)のための以下の組成、すなわち、Alが75wt%〜85wt%、Siが10wt%〜13wt%、Cuが3.5wt%〜5wt%、Niが1.5wt%〜2.5wt%、及びMgが0.5wt%〜1.5wt%を持つベース材料を用いることを特徴とするアルミニウムピストンの製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法において、
アルミニウムピストン(1)の前記ベース材料は、各濃度が1wt%未満のFe、Mn、Ti、Zr、V、Ca、Sr、Na、Pのうちの少なくとも1つによって補足されることを特徴とするアルミニウムピストンの製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法において、
前記少なくとも1つの付加的元素は、前記溶接処理中に、粉末又はワイヤの状態で、溶融プールに直接に添加することを特徴とするアルミニウムピストンの製造方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法において、
前記少なくとも1つの付加的元素は、前記溶接処理よりも前に、溶射法、冷間ガス溶射法、箔状、ペースト状、直流電流堆積法又は化学堆積法を用いることにより、前記ベース材料自体に適用することを特徴とするアルミニウムピストンの製造方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法において、
前記溶接処理として、
金属不活性ガス溶接法、レーザプラズマ粉末ハイブリッド溶接法、又はレーザMIGハイブリッド溶接法を用いることを特徴とするアルミニウムピストンの製造方法。
【請求項11】
内燃機関のためのアルミニウムピストン(1)において、
少なくとも窪みの端部(4)及び/又は窪みの底部(3)の前記領域に、請求項1〜10のうちのいずれか1項に記載の方法を施されたアルミニウムピストン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関のためのアルミニウムピストンの製造方法に関し、前記アルミニウムピストンは、請求項1の前文に従って、少なくとも窪みの端部及び/又は窪みの底部の領域に溶接処理が施される。また、本発明は、このような方法を用いて製造されるアルミニウムピストンに関する。
【背景技術】
【0002】
アルミニウムピストンの窪み領域における再溶融は、その強度を著しく増大する1つの実行可能な手段であり、また、それ故に、アルミニウムピストンの製品寿命を延ばす実行可能な手段である。しかしながら、このような再溶融プロセスには制限がある。なぜなら、特に、ピストンが高熱のストレスを受ける場合に、絞られたビームの照射領域に肉眼で見える程度の表面損傷が生じ得るからである。この損傷は、顕微鏡検査によって、熱機械的疲労、すなわち初期シリコンとアルミニウム母材(マトリックス)との間の相の境界に初期に生じるクラックによることが明らかとなる。この損傷は、2つの原因による。第1に、初期シリコン/アルミニウム母材の相の境界は、材料強度から見て弱い箇所を表し、この弱い箇所は、二相間の熱膨張係数の差によって悪化する。第2に、高温がシリコン骨格の変形及び劣化に導き、これにより、合金の強度を局所的に低下させることになり、結局は、温度変化によってクラックをより容易に生じさせることになる。熱機械的クラックに対して、できる限り高い耐性を得るには、この効果を防ぐ又は少なくともそれを緩和することが好ましい。
【0003】
特許文献1は、アルミニウムピストンを製造する一般的な方法を開示しており、そこには、溶接処理がアーク溶接法を用いて実行され、該溶接処理の後に、ピストンを100K/s〜1000K/sのレートで冷却することが開示されている。冷却レートの増大は、溶融中に晶出する粒子の細かさを増す結果となることが分かった。結局、知られた方法により、熱疲労に対する耐性の改善は達成されている。
【0004】
特許文献2は、内燃機関用のピストンを製造する付加的な方法を開示しており、そこでは、溶接処理する領域において材料を再溶融するために、少なくとも1つの窪みの底部を有する燃焼室の窪みの少なくとも1つの領域が溶接処理される。これは、溶接処理する領域において、材料の積み増しが特定できる深さで層状に制御され得ることを意味する。
【0005】
ピストンのさらなる製造方法は、特許文献3及び特許文献4の双方から知られる。
【0006】
また、特許文献5は、内燃機関用のアルミニウムピストンの強化方法を開示しており、該方法は、燃焼室の窪みの端部又は周囲の少なくとも一部を溶融することによって、銅及びニッケルを含む合金に適用する工程を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】欧州特許第1386687号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第102005034905号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第19902864号明細書
【特許文献4】独国特許発明第69102313号明細書
【特許文献5】独国特許発明第60022845号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
AlSiピストン合金の強度は、銅、ニッケル、鉄、マグネシウム及び他の元素の添加と、結果として生じる中間相(金属間相)とによって、増大することが良く知られている。また、これら合金元素の比率が高いほど、強度がより高くなる。熱機械的ストレスのもとにおいて、強度の増大は、繰り返しによる可塑性歪みの最小化と対応する。すなわち、熱機械的ストレスのもとにおいて、このような材料は、より高い弾性とより低い可塑性で変形し、製品寿命にとって有益となる。しかしながら、合金元素の増大は制限を受ける。なぜなら、特に、合金元素であるNi、Cu及びFeの量の増大によって、中間相が、大きく形成される傾向にあるか、又は粗い針若しくは破片を形成するからである。これらは、不利な効果を有する。なぜなら、材料がもろくなり、その結果、耐久性が大きく減じるからである。これは、上述した有利性を否定し、又は合金組成に依存し、状況を悪くさえし得る。しかしながら、合金の十分な耐久性のためには、中間相を、できる限り微細に分散するような構造として生成することが絶対的に必要である。この問題の知られた解は、凝固レートの増大である。なぜなら、より高い凝固レートでは、中間相の成長時間が短くなり、その結果、より微細な構造が発達するためである。しかしながら、ピストンの製造に用いられる、重力ダイカストプロセスにおいて、凝固レートは、制限内で増大できるに過ぎない。該制限は、通常は非常に低く設定されていることから、技術的に実行可能な凝固レートは、銅、ニッケル及び鉄のより高い比率を持ち、且つ粗い中間相に発達させることがない、十分に細かい構造を生成するには不適切である。従って、この問題を避けるために、特に、アルミニウムピストンの場合において、望ましい合金は、局所的な溶接法によって製造される。ここで、アルミニウムピストンによる大きな有利性は、ヒートシンクとして作用することである。比較的に小さい溶融バスの熱は、極めて速やかな放熱が可能であり、際だって細かい中間相の形成をもたらす。しかしながら、全体的に細かさが増大した中間相を得られるにも拘わらず、これには、2つの逆の効果が結合されていることが明らかにされてきた。第1に、大規模で硬い中間相が分離して出現することである。これは、それらのサイズにより極めて不利とみなされる必要がある。第2に、極めて大きな破片状の中間相の数が増大し、それ故に、このことは高度に望ましくない。材料の微細構造の形成を導く要因は、他の事柄のうち、添加物、溶融バス内における該添加物の濃度及び分布、ベース材料、入力エネルギーのレベル、並びに使用される溶接法等に依存する。
【0009】
このように、本発明は、従来技術の知られた不利を克服するという問題に関わり、特に、大規模で、粗い針状若しくは破片状の中間相を大きく低減するか又は完全に消失し、これにより、処理した領域において、熱的疲労に対するより高い耐性を得る。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この問題は、独立請求項の主題による発明によって解決される。有利な実施形態は、従属請求項の主題である。
【0011】
本発明は、内燃機関のための知られたアルミニウムピストンを製造する一般的なアイデアに基づく。前記ピストンは、アルミニウムピストンのベース材料に少なくとも1つの付加的元素を導入し、且つ、中間相を生成するために、少なくとも窪みの端部及び/又は窪みの底部の領域に溶接処理が施される。付加的元素又は付加的材料には特定の選択がなされ、好ましくは、前記付加的元素を導入するために、単位長さ当たりのアークエネルギーの溶接貫通面積に対する所定の比率(E/A)を持つ溶接プロセスが用いられる。本発明によると、以下の少なくとも1つの付加的元素を溶接プロセスに用いると、特定の濃度、すなわち、Niが1wt%〜7wt%、Cuが1wt%〜15wt%、及び/又はFeが1wt%〜5wt%が導入される。加えて、本発明に係る方法には、E/Aが7J/mm
3〜17J/mm
3のタングステン不活性ガス溶接(TIG)のようなアーク溶接法、又はE/Aが6J/mm
3〜16J/mm
3のプラズマ溶接法(WP)、又はE/Aが80J/mm
3〜90J/mm
3のレーザビーム溶接法、又はE/Aが5J/mm
3〜15J/mm
3の電子ビーム溶接法のうちの1つの溶接法を用いることができる。言及した溶接法における、例えば熱放射及び反射等による効率の損失は考慮されない。特に、相応のアークエネルギー/溶接貫通面積の比であるE/Aと、上記の付加的元素と、相応の分布とを持つ上記の溶接法の組み合わせにより、それぞれの中間相が縦の長さの最大値Lが理想的に50μm未満であり、これにより極めて微細な構造となる微細構造が形成され得る。
【0012】
これに代えて、付加的元素又は付加的材料を導入するために、単位長さ当たり所定のアークエネルギーE(J/mm)を持つ溶接法は、好ましくは元素が予熱されている状態で使用され得る。溶接プロセスを用いる本発明によると、以下の付加的元素の少なくとも1つは、特定の濃度、すなわち、Niが1wt%〜7wt%、Cuが1wt%〜15wt%、及び/又はFeが0.5wt%〜5wt%が導入される。さらに好ましい実施形態においては、付加的金属は、Feが0.5wt%〜1wt%を含み得る。
【0013】
加えて、本発明に係る方法において、以下の溶接プロセスのうちの1つが使用され得る。すなわち、Eが150J/mm〜450J/mmのタングステン不活性ガス溶接(TIG)のようなアーク溶接法、又はEが250J/mm〜700J/mmのプラズマ溶接法(WP)、又はEが100J/mm〜400J/mmのレーザビーム溶接法、又はEが500J/mm〜900J/mmの電子ビーム溶接法のうちの1つであり、ここで、元素は、好ましくは、100℃〜300℃の間の温度に予熱される。特に、単位長さ当たり所定のアークエネルギー、予熱、並びに所定の付加的元素及びそれと関連した濃度を持つ上記の溶接法の組み合わせによって、それぞれの中間相が、縦の長さの最大値Lが理想的に50μm未満であり、これにより、極めて微細な構造となる微細構造が形成され得る。
【0014】
一般に、従来例に係る知られた否定的な効果の防止は、互いに異なる程度で相互作用する極めて多数のプロセスパラメータと関連付けられた。上記の複雑な関係にも拘わらず、プロセスウィンドウは、微細に分布された中間相を伴う構造を生じさせ、また、粗い針状、破片状、又は大規模の中間相を含まないことが解決され得ることは、全くより大きな驚きであった。このような粗い中間相が存在しないことにより、固有の強度が高まる際に、その耐久性は、著しくでも、その反対でも、どちらの影響も受けない。微細に分布された中間相は、高温下において、モールド内で発達する初期シリコン粒子を支持することを助け、これにより、シリコン骨格を安定させる。
【0015】
有利な展開として、本発明に係る溶接プロセスを用いて付加された付加的元素の濃度は、Niが2wt%〜7wt%、Cuが3wt%〜15wt%、及びFeが1wt%〜5wt%又は0.5wt%〜5wt%である。これは、以前の段落に記載された個々の付加的元素の濃度のさらなる限定であり、これは、強度のさらなる増大が達成されることを意味する。もちろん、上記の元素のニッケル、銅及び鉄は、これらの組み合わせだけでなく、それぞれの濃度において個々に添加してもよいことは、まったく明白である。
【0016】
本発明に係る方法の有利な展開として、ベース材料には、以下の組成が用いられる。すなわち、Alが60wt%〜90wt%、Siが8wt%〜20wt%、Cuが2wt%〜6wt%、Niが1wt%〜4wt%、及びMgが0.2wt%〜2wt%である。特に好ましくは、該元素は、以下のように限定される。すなわち、Alが75wt%〜85wt%、Siが10wt%〜13wt%、Cuが3.5wt%〜5wt%、Niが1.5wt%〜2.5wt%、及びMgが0.5wt%〜1.5wt%である。さらに、ベース材料は、もちろん、他の鉄、マンガン、チタン、ジルコニウム、カルシウム、ストロンチウム、ナトリウム、燐、又はバナジウムを、特に微量元素の状態だけでなく、選択的に添加されても、少量の比率で含むことができる。とりわけ、このようなアルミニウム合金は、内燃機関、特にディーゼル機関の動作中に生じる高熱及び機械的な力に対して特に耐性がある。
【0017】
本発明の他の鍵となる特徴及び効果は、従属請求項に従い、図面に従い、且つ図面に基づいた形状の関連した記述に従う。
【0018】
上記の特徴及び以下に説明される特徴は、特定の組み合わせに対応することができるだけでなく、他の組み合わせ、又は本発明の範囲から逸脱しない孤立の状態で適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は本発明の一実施形態に係る方法に用いるピストンの窪みの端部への付加的元素の導入を表す模式的な部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に係る好ましい例示的実施形態は、図面に表され、以下の記述により詳細が説明される。
【0021】
唯一の
図1は本発明に係る方法に用いるピストンの窪みの端部への付加的元素の導入を表している。
【0022】
図1によると、本発明に係る方法によって製造されたアルミニウムピストン1は、詳細には図示されない燃焼室と対向し、窪みの底部3及び窪みの端部4を持つ窪み2を有している。アルミニウムピストン1の周囲を囲むように、環状溝5が、図示されないピストンリングを受けるために、知られた方法で設けられている。
【0023】
ここで、アルミニウムピストン1に、より耐性を持たせるために、特に高熱及び機械的ストレス下の領域において、すなわち窪みの底部3及び/又は窪みの端部4の領域において、少なくとも1つの付加的元素が、中間相6を生成するために、本発明に係る方法によってアルミニウムピストン1のベース材料に導入される。本発明に係る溶接法により、以下の付加的元素のうちの少なくとも1つが、窪みの端部4及び/又は窪みの底部3に、特定の濃度で、すなわち、Niが1wt%〜7wt%、Cuが1wt%〜15wt%、及びFeが1wt%〜5wt%で導入される。Niの濃度は、好ましくは、2wt%〜7wt%に限られ、Cuの濃度は、3wt%〜15wt%に限られる。また、溶接法として、特定のアークエネルギー/溶接貫通面積の比であるE/A
((J/mm)/mm2))を持つ以下の溶接法のうちの1つ、すなわち、E/Aが7J/mm
3〜17J/mm
3のタングステン不活性ガス溶接(TIG)のようなアーク溶接法、又はE/Aが6J/mm
3〜16J/mm
3のプラズマ溶接法(WP)、又はE/Aが80J/mm
3〜90J/mm
3のレーザビーム溶接法、又はE/Aが5J/mm
3〜15J/mm
3の電子ビーム溶接法のうちの1つが用いられる。
【0024】
他の実施形態において、以下の付加的元素のうちの少なくとも1つが、窪みの端部4及び/又は窪みの底部3に、本発明に係る溶接法を用いて特定の濃度で、すなわち、Niが1wt%〜7wt%、Cuが1wt%〜15wt%、及びFeが0.5wt%〜5wt%で導入される。Niの濃度は、好ましくは、2wt%〜7wt%に限られ、Cuの濃度は、3wt%〜15wt%に限られる。また、溶接法として、特定のアークエネルギー/溶接貫通面積の比であるE/A(J/mm
3)を持つ以下の溶接法のうちの1つ、すなわち、E/Aが150J/mm
3〜450J/mm
3のタングステン不活性ガス溶接(TIG)のようなアーク溶接法、又はE/Aが250J/mm
3〜700J/mm
3のプラズマ溶接法(WP)、又はE/Aが100J/mm
3〜400J/mm
3のレーザビーム溶接法、又はE/Aが500J/mm
3〜900J/mm
3の電子ビーム溶接法のうちの1つが用いられる。
【0025】
ここで、付加的元素は、窪みの底部3又は窪みの端部4に、特定の組み合わせだけでなく、それぞれの示された濃度に単体で導入され得ることは、追記されるべきである。
【0026】
示された付加的元素の濃度を考慮し、且つ溶接法のタイプを考慮する本発明に係る溶接法により、中間相6は、縦の長さの最大値Lが理想的に50μm未満となるように生成され得る。これは、中間相が、全体に極めて微細な構造であり、これにより、特に粗い針状相又は破片状相が妨げられ得ることを意味する。粗い針状相のような、粗い構造的特性が存在しないことにより、固有の強度が増大するにつれて、その耐久性は、逆に、影響を受けない。そこで、高温下において、微細に分布された中間相6は、モールド内で発達する初期シリコン粒子を支持することを助け、これにより、また、シリコン骨格の安定を助ける。
【0027】
アルミニウムピストン1に用いられるベース材料は、Alが60wt%〜90wt%、Siが8wt%〜20wt%、Cuが2wt%〜6wt%、Niが1wt%〜4wt%、及びMgが0.2wt%〜2wt%の組成を持つことができる。もし、Al成分が75wt%〜85wt%に制限されれば、Si成分は10wt%〜13wt%で、Cu成分は3.5wt%〜5wt%で、Ni成分は1.5wt%〜2.5wt%で、Mg成分は0.5wt%〜1.5wt%である。もちろん、アルミニウムピストン1のベース材料は、微量元素の状態の他の元素によって補足可能であるか、又は各濃度が1wt%未満のFe、Mn、Ti、Zr、Ca、Sr、Na、P及び/又はVのような、目標とされたように添加が可能である。付加的元素のNi、Cu及び/又はFeは、溶接プロセス中に、例えば、粉末又はワイヤの状態で、溶融プールに直接に添加することができる。ここで、付加的元素は、もちろん、溶接プロセスよりも前に、溶射法、冷間ガス溶射法、箔状、ペースト状、直流電流(ガルバニック)堆積法又は化学堆積法を用いることにより、アルミニウムピストン1のベース材料自体に適用され得る。
【0028】
本発明に係る溶接法、及び該方法に用いられた溶接パラメータ又は付加的元素により、特に微細な中間相6が生成され得る。これと同時に、とりわけ、粗い針状相又は破片状相を妨げることができ、このように製造されたアルミニウムピストン1の耐久性を極めて大きく増大させる。