(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
以下の図面において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明することがあり、重複する説明は省略または簡略化することがある。また、図面に記載の実施形態は、本発明を明瞭に説明するために模式化されており、製品として実際に提供される本発明の粘着シートのサイズや縮尺を正確に表したものではない。
【0042】
この明細書において「粘着剤」とは、前述のように、室温付近の温度域において柔らかい固体(粘弾性体)の状態を呈し、圧力により簡単に被着体に接着する性質を有する材料をいう。ここでいう粘着剤は、「C. A. Dahlquist, “Adhesion : Fundamental and Practice”, McLaren & Sons, (1966) P. 143」に定義されているとおり、一般的に、複素引張弾性率E
*(1Hz)<10
7dyne/cm
2を満たす性質を有する材料(典型的には、25℃において上記性質を有する材料)である。
【0043】
この明細書において「(メタ)アクリロイル」とは、アクリロイルおよびメタクリロイルを包括的に指す意味である。同様に、「(メタ)アクリレート」とはアクリレートおよびメタクリレートを、「(メタ)アクリル」とはアクリルおよびメタクリルを、それぞれ包括的に指す意味である。また、「(シクロ)アルキル」とは、鎖状アルキルおよびシクロアルキルを包括的に指す意味である。なお、「(シクロ)アルキル」を単に「アルキル」と表記することもある。
【0044】
本明細書中において「アクリル系モノマー」とは、1分子中に少なくとも1つの(メタ)アクリロイル基を有するモノマーをいう。また、「アクリル系重合物」とは、該重合物を構成するモノマー単位(構成モノマー成分)としてアクリル系モノマーを含む重合物をいう。すなわち、アクリル系モノマーに由来するモノマー単位を含む重合物をいう。したがって、ここでいう「アクリル系重合物」は、構成モノマー成分の一部または全部として、1分子中に少なくとも1つのメタクリロイル基を有するモノマーを含んでいてもよい。
【0045】
本明細書中において「主成分」とは、特記しない場合、典型的には50質量%を超えて含まれる成分を指す。例えば、モノマー混合物の主成分がアルキル(メタ)アクリレートであるとは、典型的には、該モノマー混合物の50質量%超がアルキル(メタ)アクリレートであることを意味する。また、例えばオレフィン系ゴム材料に含まれるポリマーの主成分がEPDMであるとは、典型的には、該オレフィン系ゴム材料に含まれるポリマーの総量の50質量%超がEPDMであることを意味する。
【0046】
また、以下の説明において「標準EPDM片」とは、ゼネラル・モーターズ(General Motors)社のWorldwide Engineering Standards, Material Specification Adhesives, GMW15201(2010年12月公開版)の3.1.4項に規定されている標準EPDMテストピースを指す。すなわち、ローレン・マニュファクチャリング(Lauren Manufacturing)社製のASTM D2000-00, Shore A, 70 durometer (black) dense (EPDM)、幅33.4 mm、厚さ3.2mmの長方形状EPDM片またはその相当品をいう。
【0047】
この明細書において「活性エネルギー線」とは、重合反応、架橋反応、開始剤の分解等の化学反応を引き起こし得るエネルギーをもったエネルギー線を指す。ここでいう活性エネルギー線の例には、紫外線、可視光線、赤外線のような光や、α線、β線、γ線、電子線、中性子線、X線のような放射線等が含まれる。
【0048】
この明細書において「粘着層」とは、JIS Z0237(2004)に準じて、SUS304ステンレス鋼板を被着体とし、23℃の測定環境下において2kgのローラを1往復させて上記被着体に圧着してから30分後に引張速度300mm/分の条件で180°方向に剥離した場合の剥離強度が0.1N/20mm以上である層をいう。
この明細書において「非粘着層」とは、上記粘着層に該当しない層をいい、典型的には上記剥離強度が0.1N/20mm未満である層をいう。23℃の測定環境下において2kgのローラを1往復させてSUS304ステンレス鋼板に圧着した場合に該ステンレス鋼板に貼り付かない層(実質的に粘着性を示さない層)は、ここでいう非粘着層の概念に含まれる典型例である。
【0049】
この明細書において「気泡含有層」とは、25℃において、当該層の見かけの体積に占める気泡の体積の割合が3体積%以上(典型的には5体積%以上)である層をいう。
この明細書において「非気泡含有層」とは、上記気泡含有層に該当しない層をいう。具体的には、25℃において、当該層の見かけの体積に占める気泡の体積の割合が3体積%未満(典型的には1体積%未満)である層をいう。
また、この明細書において「プラスチックフィルム」とは、典型的には非多孔質のプラスチック膜を指し、プラスチック繊維からなる織布や不織布、あるいは発泡シートとは区別される概念である。この明細書におけるプラスチックフィルムは、典型的には非気泡含有層に該当する。
【0050】
<標準EPDM板に対する粘着性>
ここに開示される粘着シートは、アクリル系重合物を含むアクリル系粘着剤層により構成された粘着面を有する。特に限定するものではないが、上記粘着シートは、好ましくは対EPDM初期剥離強度が5N/10mm以上である。
ここで、「対EPDM初期剥離強度」とは、上述した標準EPDM板またはその相当品を被着体に用いて、以下の方法により測定される値をいう。
【0051】
[対EPDM初期剥離強度測定方法]
測定対象の粘着シートを幅10mmの帯状に調製したものを測定サンプルとする。測定対象の粘着シートが両面粘着シートの形態である場合には、あらかじめ一方の粘着面を厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに貼り付けて裏打ちしておく。
被着体としての標準EPDM板の表面を、イソプロピルアルコール(IPA)を染み込ませた布で1方向に2回拭いて清掃する(清掃処理)。
23℃、50%RHの標準環境下にて、上記清掃後の被着体の表面に上記測定サンプルの粘着面を、2〜5kg程度の重さのローラを1往復させることにより圧着する。これを上記標準環境下に20分間保持した後、同環境下において、JIS Z0237(2004)に準じて、引張速度50mm/分の条件で180°引き剥がし粘着力[N/10mm]を測定する。測定は2回以上行い、それらの算術平均値を対EPDM初期剥離強度[N/10mm]とする。
【0052】
上記180°引き剥がし粘着力の測定は、市販の一般的な引張試験機を用いて行うことができる。例えば、ミネベア社製の万能引張圧縮試験機(装置名「引張圧縮試験機、TG−1kN」)を用いることができる。
なお、粘着シートの幅が10mm未満である場合等、幅10mmの帯状の測定サンプルを調製することが困難な場合には、幅αmmの測定サンプルを用いて測定された剥離強度[N/αmm]の値に10/αを乗じた値を対EPDM初期剥離強度[N/10mm]の代用値として採用することができる。
【0053】
ここに開示される粘着シートは、好ましくは、上記粘着面の対EPDM初期剥離強度が5N/10mm以上である。この対EPDM初期剥離強度は、7N/10mm以上であることが好ましく、10N/10mm以上であることがより好ましく、15N/10mm以上であることがさらに好ましい。このような対EPDM初期剥離強度を示す粘着シートによると、EPDMその他のオレフィン系ゴム材料に対する優れた初期接着性が実現され得る。かかる粘着シートは、例えば、後述する粘着シート付き部品(例えば、粘着シート付きウェザーストリップ)の構成要素として好適である。
対EPDM初期剥離強度の上限は特に制限されないが、通常は100N/10mm以下であり、典型的には50N/10mm以下である。
【0054】
ここに開示される粘着シートは、標準EPDM板の表面に直接貼り付けて7日後に180°の方向に引張速度50mm/分で剥離する場合における剥離強度が7N/10mm以上であることが好ましい。ここで、上記7日後の剥離強度は、被着体に粘着面を圧着してから23℃、50%RHの標準環境下に保持する期間を7日間とする点以外は上述した対EPDM初期剥離強度と同様にして測定される値をいう。以下、上記7日後の剥離強度を「対EPDM経時後剥離強度」ともいう。
対EPDM経時後剥離強度が7N/10mm以上である粘着シートは、EPDMその他のオレフィン系ゴム材料に対して、長期間にわたって優れた粘着性を発揮し得る。したがって、かかる粘着シートは、例えば、後述する粘着シート付き部品(例えば、粘着シート付きウェザーストリップ)の構成要素として好適である。また、このような粘着シートは、例えば両面粘着シートの形態で、EPDMその他のオレフィン系ゴム材料からなる表面を有する部材を所望の箇所に接合する用途等に好適である。上記接合の信頼性等の観点から、対EPDM経時後剥離強度が10N/10mm以上であることが好ましく、15N/10mm以上であることがより好ましく、20N/10mm以上であることがさらに好ましい。
対EPDM経時後剥離強度の上限は特に制限されないが、通常は100N/10mm以下であり、典型的には50N/10mm以下である。
【0055】
この明細書により提供される粘着シートの好ましい一態様では、該粘着シートが、
(1)対EPDM初期剥離強度が5N/10mm以上(好ましくは7N/10mm以上、より好ましくは10N/10mm以上、さらに好ましくは15N/10mm以上)である、および、
(2)対EPDM経時後剥離強度が7N/10mm以上(好ましくは10N/10mm以上、より好ましくは15N/10mm以上、さらに好ましくは20N/10mm以上)である、の両方を満たす。このような粘着シートは、例えば、後述する粘着シート付き部品(例えば、粘着シート付きウェザーストリップ)の構成要素として好適である。
【0056】
<粘着シートの構成>
ここに開示される粘着シートの形状や構造は特に限定されない。例えば、1層のアクリル系粘着剤層から構成される単層構造の粘着シートであってもよく、粘着面を構成するアクリル系粘着剤層の背面(粘着面とは反対側の表面)が他の層の非剥離性表面と貼り合わされた複層構造の粘着シートであってもよい。上記他の層は、アクリル系粘着剤層であってもよく、それ以外の粘着層または非粘着層であってもよい。
ここでいう粘着シートの概念には、粘着テープ、粘着ラベル、粘着フィルム等と称されるものが包含され得る。上記粘着剤層は、典型的には連続的に形成されるが、かかる形態に限定されるものではなく、例えば点状、ストライプ状等の規則的あるいはランダムなパターンに形成されていてもよい。また、本発明により提供される粘着シートは、ロール状であってもよく、枚葉状であってもよい。あるいは、さらに種々の形状に加工された形態の粘着シートであってもよい。
【0057】
[気泡含有層]
ここに開示される粘着シートの好ましい一態様として、該粘着シートが気泡含有層を含む態様が挙げられる。上記気泡含有層は、気泡構造を含む層として把握され得る。上記「気泡構造」は、ガス成分を有する構造であればよく、ガス成分のみからなり外殻を有しない構造である「気泡」であってもよいし、ガス成分が外殻内に封入された中空構造の粒子状物質(以下「中空粒子」ともいう。)であってもよい。上記外殻を構成する材料は特に限定されず、ガラス等のような無機材料であってもよく、有機材料であってもよい。
【0058】
上記気泡含有層は、上記粘着シートの第1の表面(第1粘着面)を構成するアクリル系粘着剤層であり得る。また、第1粘着面を構成するアクリル系粘着剤層に加えて他の層を含む粘着シートの場合、上記他の層が気泡含有層であってもよい。上記他の層が気泡含有層である場合、その気泡含有層は、常温において粘着性を示す層(気泡含有粘着層)であってもよく、常温において実質的に粘着性を示さない層(気泡含有非粘着層)であってもよい。2層以上の複数の層を含む構造(複層構造)の粘着シートの場合、それら複数の層のうち気泡含有層の数は、1層であってもよく2層以上であってもよい。
【0059】
粘着シートに気泡含有層を含ませることにより、該粘着シートに適度なクッション性が付与され得る。このことによって被着体表面の凹凸や段差を吸収し、被着体表面に粘着面をよりよく密着させることができる。被着体表面に対して粘着面がよく密着することは、EPDMその他のオレフィン系ゴム表面に対する粘着性の向上に有利に寄与し得る。また、このような気泡含有層は、粘着シートの柔軟性の向上(反発力の低減)にも寄与し得る。このことによって、粘着シートが曲面や段差を有する表面に沿って貼り付けられる場合や粘着シートの貼り付けられた被着体を変形させる場合等に、粘着シートが自身の反発力により該表面から剥がれる(浮き上がる)事象が効果的に抑制され得る。
【0060】
ここに開示される気泡含有層に含まれる気泡構造は、気泡(すなわち、外殻を有しない気泡)のみによるものであってもよく、中空粒子のみによるものであってもよく、気泡と中空粒子との両方によるものであってもよい。クッション性等の観点からは、気泡による気泡構造を少なくとも含む気泡含有層を有する粘着シートが好ましい。
気泡含有層に含まれる気泡は、独立気泡であってもよく、連続気泡であってもよく、これらが混在していてもよい。クッション性の観点からは、独立気泡を多く含む構成の気泡含有層がより好ましい。独立気泡の場合、気泡中に含まれる気体成分(気泡を形成するガス成分、以下「気泡形成ガス」と称する場合がある。)は特に制限されず、窒素、二酸化炭素、アルゴン等の不活性ガスの他、空気等の各種気体成分であり得る。気泡形成ガスとしては、該気泡形成ガスが含まれた状態で重合反応等を行う場合は、その反応を阻害しないものを用いることが好ましい。かかる観点およびコストの観点等から、気泡形成ガスとして窒素を好適に採用することができる。
【0061】
気泡の形状は、典型的には概ね球状であるが、これに限定されない。気泡の平均直径(平均気泡径)は特に制限されず、例えば1μm〜1000μm、好ましくは10μm〜500μm、さらに好ましくは30μm〜300μmの範囲から選択することができる。上記平均気泡径は、通常、気泡含有層の厚さの50%以下であることが適当であり、30%以下(例えば10%以下)であることが好ましい。
なお、上記平均気泡径は、典型的には走査型電子顕微鏡(SEM)により、好ましくは10個以上の気泡について、それらの気泡の直径を測定した結果を算術平均することにより求めることができる。このとき、非球状の形状の気泡については、同等の体積を有する球状の気泡に換算して平均気孔径を求めるものとする。
【0062】
気泡含有層に占める気泡の体積割合(気泡含有率)は、特に制限されず、目的とするクッション性や柔軟性が実現されるように適宜設定することができる。例えば、気泡含有層全体の体積(見かけの体積を指し、気泡含有層の面積および厚さから算出され得る。)に対して5〜50体積%とすることができる。気泡含有層が粘着剤層である場合には、気泡を含有させることの効果と粘着性能とのバランスを考慮して、気泡の体積割合を例えば8〜40体積%とすることが適当である。
【0063】
[気泡含有粘着層]
上記気泡含有層は、粘着面を構成するアクリル系粘着剤層であり得る。また、粘着面を構成するアクリル系粘着剤層に加えて他の層を含む構成の粘着シートでは、上記他の層が気泡含有層であってもよい。上記他の層は、アクリル系粘着剤層により構成された粘着面とは異なる粘着面を構成する気泡含有粘着層であってもよく、粘着面を構成しない気泡含有粘着層または気泡含有非粘着層であってもよい。上記他の層が気泡含有粘着層である場合、その粘着層は、アクリル系粘着剤層であってもよく、アクリル系粘着剤層以外の粘着剤層であってもよい。アクリル系粘着剤層以外の粘着剤層としては、ゴム系粘着剤層、ポリエステル系粘着剤層、ウレタン系粘着剤層、シリコーン系粘着剤層等が挙げられる。
【0064】
特に限定するものではないが、粘着面を構成するアクリル系粘着剤層以外の層として気泡含有粘着層を含む形態の粘着シートにおいて、その気泡含有粘着層を構成する粘着剤は、クッション性や柔軟性等の観点から、該粘着剤の全構成モノマー成分の組成に基づくガラス転移温度(Tg)が−40℃以下であることが好ましく、−50℃以下であることがより好ましい。Tgの下限は特に制限されないが、典型的には−80℃以上であり、例えば−70℃以上である。
好ましい一態様において、気泡含有粘着層を構成する粘着剤としては、該粘着剤の全構成モノマー成分の組成に基づくTgが、粘着面を構成するアクリル系粘着剤層の全構成モノマー成分の組成に基づくTgより低い粘着剤を好ましく採用し得る。このことによって、主に粘着面を構成するアクリル系粘着剤層の寄与による高いEPDM粘着性と、主に気泡含有粘着層の寄与による良好なクッション性とを兼ね備えた高性能な粘着シートが実現され得る。例えば、粘着面を構成するアクリル系粘着剤層のTgに対して、気泡含有粘着層を構成する粘着剤のTgは、5℃以上低いことが好ましく、10℃以上低いことがより好ましく、15℃以上(例えば20℃以上)低いことがさらに好ましい。気泡含有粘着層としてアクリル系粘着剤層を含む構成の粘着シートでは、上記Tgの関係を満たすことが特に有意義である。
【0065】
このような気泡含有粘着層を形成する方法としては、例えば、(1)あらかじめ気泡形成ガスが混入された粘着剤組成物(好ましくは、紫外線等の活性エネルギー線により硬化して粘着剤を形成するタイプの粘着剤組成物)を硬化させて気泡含有粘着層を形成する方法、(2)発泡剤を含む粘着剤組成物を用いて該発泡剤から気泡を形成することで気泡含有粘着層を形成する方法、等を適宜採用することができる。使用する発泡剤は特に制限されず、公知の発泡剤から適宜選択することができる。例えば、熱膨張性微小球等の発泡剤を好ましく用いることができる。
【0066】
上記(1)の方法による気泡含有粘着層の形成において、気泡形成ガスが混入された粘着剤組成物を調製する方法は特に限定されず、公知の気泡混合方法を利用することができる。例えば、装置の例としては、中央部に貫通孔を持った円盤上に細かい歯が多数ついたステータと、このステータと対向しており円盤上にステータと同様の細かい歯がついているロータと、を備えた装置等が挙げられる。この装置におけるステータ上の歯とロータ上の歯との間に気泡混入前の粘着剤組成物(粘着剤組成物前駆体)を導入し、ロータを高速回転させながら、気泡を形成させるためのガス成分(気泡形成ガス)を、上記貫通孔を通して粘着性組成物前駆体中に導入する。これにより、気泡が細かく分散され混合された粘着性組成物が得られる。
このように気泡形成ガスが混入された粘着剤組成物を、所定の面上に塗付して硬化させることにより、気泡含有粘着層を形成することができる。硬化方法としては、加熱する方法や、活性エネルギー線(例えば紫外線)を照射する方法等を好ましく採用することができる。気泡形成ガスが混入された粘着剤組成物に加熱や活性エネルギー線照射等を行って気泡を安定的に保持した状態で硬化させることにより、気泡含有粘着層を好適に形成することができる。
【0067】
粘着剤組成物前駆体への気泡形成ガスの混入性や気泡の安定性の観点から、粘着剤組成物には界面活性剤が添加されていてもよい。このような界面活性剤としては、例えば、イオン性界面活性剤、炭化水素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤等が挙げられる。なかでもフッ素系界面活性剤が好ましく、特に分子中にオキシアルキレン基(典型的には、炭素原子数2〜3のオキシアルキレン基)およびフッ素化炭化水素基を有するフッ素系界面活性剤が好ましい。フッ素系界面活性剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。好ましく使用し得るフッ素系界面活性剤の市販品として、AGCセイミケミカル株式会社製の商品名「サーフロンS−393」が例示される。
フッ素系界面活性剤の使用量は特に限定されない。例えば、気泡含有粘着層に含まれる全構成モノマー成分100質量部に対するフッ素系界面活性剤の使用量(固形分基準)を0.01〜3質量部程度とすることができる。フッ素系界面活性剤の使用による効果(例えば、気泡の混入性や安定性を向上させる効果)をよりよく発揮する観点からは、上記使用量を0.03質量部以上とすることが適当であり、0.05質量部以上とすることが好ましい。また、気泡含有粘着層が粘着面を構成する層である場合には、粘着性能の観点から、上記使用量を2質量部以下とすることが適当であり、1.5質量部以下とすることが好ましく、1質量部以下とすることがより好ましい。
【0068】
[気泡含有非粘着層]
ここに開示される粘着シートが気泡含有層として気泡含有非粘着層を有する場合、その気泡含有非粘着層は、例えば、公知の発泡シートであり得る。発泡シートの材質は特に制限されない。例えば、各種のプラスチック材料の発泡体(プラスチック発泡体)により形成された発泡体層を含む発泡シートを好ましく採用し得る。プラスチック発泡体を構成するプラスチック材料(ゴム材料を包含する意味である。)の種類に特に制限はない。プラスチック材料は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0069】
プラスチック発泡体の具体例としては、ポリエチレン製発泡体、ポリプロピレン製発泡体等のポリオレフィン系発泡体;ポリエチレンテレフタレート製発泡体、ポリエチレンナフタレート製発泡体、ポリブチレンテレフタレート製発泡体等のポリエステル系発泡体;ポリ塩化ビニル製発泡体等のポリ塩化ビニル系発泡体;酢酸ビニル系樹脂製発泡体;ポリフェニレンスルフィド樹脂製発泡体;ポリアミド(ナイロン)樹脂製発泡体、全芳香族ポリアミド(アラミド)樹脂製発泡体等のポリアミド系発泡体;ポリイミド系樹脂製発泡体;アクリル系樹脂製発泡体等のアクリル系発泡体;ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)製発泡体;ポリスチレン製発泡体等のポリスチレン系発泡体;ポリウレタン樹脂製発泡体等のポリウレタン系発泡体;等が挙げられる。また、上記プラスチック発泡体は、ポリクロロプレンゴム製発泡体等のゴム系発泡体であってもよい。例えば、ポリオレフィン系発泡体からなるポリオレフィン系発泡シート、ポリエステル系発泡体からなるポリエステル系発泡シート、ポリイミド系樹脂製発泡体からなるポリイミド系発泡シート、アクリル系発泡体からなるアクリル系発泡シート、ポリスチレン系発泡体からなるポリスチレン系発泡シート、ポリウレタン系発泡体からなるポリウレタン系発泡シート、ゴム系発泡体からなるゴム系発泡シート等を好ましく採用し得る。
【0070】
クッション性の観点から、常温において適度な弾性を示す発泡体(弾性発泡体)から形成された発泡シートが好ましい。例えば、後述する粘着シートの10%圧縮硬さと同様にして発泡シートの10%圧縮硬さを測定した場合、該10%圧縮硬さが概ね0.007Pa〜0.07Pa(より好ましくは0.01Pa〜0.07Pa)の範囲にある発泡シートを好ましく採用し得る。このような発泡シートを気泡含有層として含む粘着シートは、該粘着シートの10%圧縮硬さを後述する好ましい範囲に調整しやすいので好ましい。
【0071】
好ましい発泡体として、ポリオレフィン系発泡体が例示される。上記ポリオレフィン系発泡体を構成するプラスチック材料(すなわちポリオレフィン系樹脂)としては、公知または慣用の各種のポリオレフィン系樹脂を特に限定なく用いることができる。例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、メタロセン触媒系直鎖状低密度ポリエチレン等のポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。このようなポリオレフィン系樹脂は、1種を単独でまたは2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0072】
上記発泡シートの好適例として、耐候性等の観点から、ポリエチレン系樹脂の発泡体から実質的に構成されるポリエチレン系発泡シート、ポリプロピレン系樹脂の発泡体から実質的に構成されるポリプロピレン系発泡シート等が挙げられる。ここで、ポリエチレン系樹脂とは、エチレンを主モノマー(モノマーのなかの主成分、すなわち50質量%を超える成分)とする樹脂を指し、HDPE、LDPE、LLDPE等のほか、エチレンの共重合割合が50質量%を超えるエチレン−プロピレン共重合体やエチレン−酢酸ビニル共重合体等を包含し得る。同様に、ポリプロピレン系樹脂とは、プロピレンを主モノマーとする樹脂を指す。ここに開示される技術における発泡シートとしては、ポリエチレン系発泡シートを好ましく採用し得る。
【0073】
[非気泡含有層]
ここに開示される粘着シートが少なくとも1層の気泡含有層および少なくとも1層の非気泡含有層を含む場合、上記非気泡含有層は、粘着層(非気泡含有粘着層)であってもよく、非粘着層(非気泡含有非粘着層)であってもよい。
非気泡含有層が粘着層である場合、該粘着層は、アクリル系粘着剤層であってもよく、アクリル系以外の粘着剤層等であってもよい。アクリル系以外の粘着剤層としては、ゴム系粘着剤層、ポリエステル系粘着剤層、ウレタン系粘着剤層、シリコーン系粘着剤層等が挙げられる。
非気泡含有層が非粘着層である場合、該非粘着層としては、ポリプロピレンフィルム、エチレン−プロピレン共重合体フィルム、ポリエステルフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム等のプラスチックフィルム;アルミニウム箔、銅箔等の金属箔;等を、粘着シートの用途に応じて適宜選択して用いることができる。上記プラスチックフィルムとしては、無延伸フィルムおよび延伸(一軸延伸または二軸延伸)フィルムのいずれも使用可能である。
【0074】
ここに開示される粘着シートは、各種の繊維状物質の単独または混紡等による織布や不織布(和紙、上質紙等の紙類を包含する意味である。)等の層を含み得る。上記繊維状物質は、例えば、麻、綿等の天然繊維;ポリエステル、ビニロン等の合成繊維;アセテート等の半合成繊維;等であり得る。
本明細書において、このような繊維状物質の層は、粘着シートの状態において当該層を構成する繊維間のスペースに他の材料(粘着剤、熱可塑性樹脂等)が充填されている場合には、上記他の材料と繊維状物質との複合材料層として扱うものとする。したがって、この複合材料層の見かけの体積を100体積%として、上記繊維状物質の繊維間のスペースが上記他の材料によって97体積%を超えて埋め尽くされている場合には、その複合材料層は非気泡含有層として扱う。上記繊維間のスペースの3体積%以上が気泡として残っている場合には、その複合材料層は気泡含有層として扱う。
一方、繊維状物質の層において繊維間のスペースに他の材料が充填されていない場合には、その繊維状物質の層自体の見かけの体積に占める気泡の体積が3体積%以上である場合には気泡含有層として扱い、3体積%未満である場合には非気泡含有層として扱う。
ここに開示される粘着シートは、このような繊維状物質の層を含まない態様でも好ましく実施され得る。
【0075】
ここに開示される粘着シートの代表的な構成例を
図1〜
図7に模式的に示す。
(構成例1)
図1に示す粘着シート1は、アクリル系重合物を含むアクリル系粘着剤層(第1粘着剤層)21からなる両面粘着シートである。特に限定するものではないが、この粘着シート1は、好ましくは、粘着剤層21の第1の表面(第1粘着面)21Aおよび第2の表面(第2粘着面)21BのいずれかをEPDMの表面に直接貼り付けて測定される20分後剥離強度(対EPDM初期剥離強度)が5N/10mm以上である。
特に限定するものではないが、このような構成の粘着シート1は、粘着面21A,21Bの両方がEPDM等のオレフィン系ゴム表面に貼り付けられる態様で好ましく使用され得る。また、第1粘着面21Aがオレフィン系ゴム表面に貼り付けられ、第2粘着面21Bが各種の被着体表面(オレフィン系ゴム表面に限定されない。)に貼り付けられる態様等でも好ましく使用され得る。粘着剤層21は、2以上の複数のアクリル系粘着剤層が貼り合わされた複層構造(積層構造)の粘着剤層であってもよい。
【0076】
(構成例2)
図2に示す粘着シート2は、第1粘着面21Aを構成する第1粘着剤層21と、第2粘着面22Aを構成する第2粘着剤層22と、それらの間に配置された中間層23とを備える両面粘着シートである。これらのうち第1粘着剤層21はアクリル系粘着剤層である。すなわち、第1粘着面21Aはアクリル系粘着剤層(第1粘着剤層)21の表面である。第2粘着剤層22は、アクリル系粘着剤層であってもよく、アクリル系以外の粘着剤層であってもよい。アクリル系以外の粘着剤層としては、ゴム系粘着剤層、ポリエステル系粘着剤層、ウレタン系粘着剤層、シリコーン系粘着剤層等が挙げられる。中間層23は、その一方の表面23Aおよび他方の表面23Bの両方が非剥離性表面となっている。中間層23は、粘着層であってもよく、非粘着層であってもよい。特に限定するものではないが、この粘着シート2は、好ましくは、少なくとも第1粘着面21Aについて測定される対EPDM初期剥離強度が5N/10mm以上である。
特に限定するものではないが、このような構成の粘着シート2は、例えば、第1粘着面21AがEPDM等のオレフィン系ゴム表面に貼り付けられ、第2粘着面22Aが各種の被着体表面(オレフィン系ゴム表面に限定されない。)に貼り付けられる態様等で好ましく使用され得る。
【0077】
中間層23が粘着層である場合、該粘着層は、アクリル系粘着剤層であってもよく、アクリル系以外の粘着剤層であってもよい。アクリル系以外の粘着剤層としては、ゴム系粘着剤層、ポリエステル系粘着剤層、ウレタン系粘着剤層、シリコーン系粘着剤層等が挙げられる。
【0078】
中間層23が非粘着層である場合、その中間層23としては、例えば、ポリプロピレンフィルム、エチレン−プロピレン共重合体フィルム、ポリエステルフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム等のプラスチックフィルム;ポリウレタンフォーム、ポリエチレンフォーム、ポリクロロプレンフォーム等の発泡体からなる発泡体シート;各種の繊維状物質(麻、綿等の天然繊維、ポリエステル、ビニロン等の合成繊維、アセテート等の半合成繊維、等であり得る。)の単独または混紡等による織布および不織布(和紙、上質紙等の紙類を包含する意味である。);アルミニウム箔、銅箔等の金属箔;等を、粘着シートの用途に応じて適宜選択して用いることができる。上記プラスチックフィルムとしては、無延伸フィルムおよび延伸(一軸延伸または二軸延伸)フィルムのいずれも使用可能である。また、中間層23の表面23A,23Bの一方または両方には、コロナ放電処理やプライマー層の形成等の、該表面の非剥離性を高める表面処理が施されていてもよい。
【0079】
なお、
図2に示す粘着シート2は、第1粘着剤層(アクリル系粘着剤層)21と中間層23とからなり、かつ中間層23が粘着層である態様で実施されてもよい。すなわち、
図2に示す構成から第2粘着剤層22を除いた構成であってもよい。この態様の粘着シートでは、
図2に示す中間層23の他方の表面23Bが第2粘着面となる。かかる構成のシートは、例えば第1粘着面21AがEPDMその他のオレフィン系ゴム表面に貼り付けられ、中間層23の他方の表面23Bが各種の被着体表面(オレフィン系ゴム表面に限定されない。)に貼り付けられる態様で好ましく使用され得る。
【0080】
(構成例3)
図3に示す粘着シート3は、その第1の表面(第1粘着面)21Aを構成する第1粘着剤層21と、粘着シート3の第2の表面31Aを構成する背面層31とを備える片面粘着シートである。第1粘着剤層21はアクリル系粘着剤層である。背面層31は非粘着層であって、その少なくとも第1粘着剤層21側の表面31Bは非剥離性である。背面層31は、例えば、
図2の説明において非粘着性の中間層23として例示したプラスチックフィルム、織布、不織布、発泡体シート、金属箔等であり得る。特に限定するものではないが、この粘着シート3は、好ましくは、第1粘着面21Aについて測定される対EPDM初期剥離強度が5N/10mm以上である。
このような構成の粘着シート(片面粘着シート)3は、例えば、第1粘着面21AがEPDMその他のオレフィン系ゴム表面に貼り付けられる態様で好ましく使用され得る。背面層31の第1粘着剤層21側の表面31Bには、コロナ放電処理やプライマー層の形成等の、該表面の非剥離性を高める表面処理が施されていてもよい。また、背面層31のうち粘着シートの第2の表面を構成する表面31Aには、該表面の剥離性を高める処理(シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系等の剥離処理剤を用いた剥離処理層の形成や、ポリオレフィンフィルムのラミネート等)、該表面の非剥離性や印刷性を高める処理(コロナ放電処理等)、該表面の装飾性を高める処理(例えば、印刷、金属の蒸着)等の適宜の処理が施されていてもよい。
【0081】
(構成例4)
ここに開示される技術は、例えば
図4に示す粘着シート20のように、
図2に示す構成の粘着シート2における中間層23が気泡含有層223である態様で好ましく実施され得る。すなわち、
図4に示す粘着シート20は、第1粘着面221Aを構成する第1粘着剤層221と、第2粘着面222Aを構成する第2粘着剤層222と、それらの間に配置された中間層223とを備える両面粘着シートである。第1粘着剤層221は、アクリル系粘着剤層からなる非気泡含有粘着層であって、その表面が第1粘着面221Aとなっている。第2粘着剤層222は、アクリル系粘着剤層または他の粘着剤層からなる非気泡含有粘着層であって、その表面が第2粘着面222Aとなっている。中間層223は、気泡含有層であって、その一方の表面223Aおよび他方の表面223Bの両方が非剥離性表面となっている。中間層223は、気泡含有粘着層であってもよく、気泡含有非粘着層であってもよい。特に限定するものではないが、この粘着シート20は、好ましくは、少なくとも第1粘着面221Aについて測定される対EPDM初期剥離強度が5N/10mm以上である。
【0082】
図4に示す構成の粘着シート20では、第1粘着剤層221の背面(第1粘着面221Aとは反対側の面)が中間層223の一方の表面223Aにより支持されている。また、第2粘着剤層222の背面が中間層223の他方の表面223Bにより支持されている。すなわち、中間層223は、第1粘着剤層221および第2粘着剤層222の支持層となっている。
このように粘着剤層221,222が中間層223に支持された構成の粘着シートによると、粘着剤層221,222の性質と中間層223の性質とを好適に組み合わせることによって、それぞれの長所を活かした高性能な粘着シートが実現され得る。例えば、粘着面を構成する粘着剤層221はEPDMその他のオレフィン系ゴム表面に対する粘着性をより重視した構成とし、支持層としての中間層223はクッション性や凝集性をより重視した構成とする、等の調整を容易に行うことができる。また、粘着面を構成する粘着剤層221,222を非気泡含有層とし、中間層223を気泡含有層とすることにより、粘着面における高い平滑性と、粘着シート全体としての良好なクッション性とを高度に両立させることができる。粘着面を構成する粘着剤層221,222を非気泡含有層とすることは、粘着シートの外観品位の観点からも好ましい。
【0083】
(構成例4−1)
図4に示す構成を有する粘着シート20の一好適例として、第1粘着剤層221がアクリル系粘着剤層からなる非気泡含有粘着層であり、第2粘着剤層222がアクリル系粘着剤層または他の粘着剤層からなる非気泡含有粘着層であり、中間層223が気泡含有粘着層である構成が挙げられる。このような構成によると、中間層223が粘着層であるので、粘着剤層221,222と中間層223との間において充分な接合強度を確保しやすい。この接合強度の観点から、中間層223としてアクリル系粘着剤層を好ましく採用し得る。中間層223をアクリル系粘着剤層とすることは、粘着シート20の耐候性等の観点からも好ましい。上記耐候性の観点から特に好ましい態様として、粘着シート20に含まれる全ての層221,222,223がアクリル系粘着剤層である態様が挙げられる。
このような粘着シート20を作製する方法は特に限定されない。例えば、中間層223としての気泡含有粘着層を作製する工程と、粘着剤層221,222となるべき2つの独立した粘着剤層を作製する工程と、それらの粘着剤層を中間層223の一方の表面223Aおよび他方の表面223Bにそれぞれ貼り合わせる工程と、を含む方法により好ましく製造され得る。かかる製造方法の好ましい一態様として、上記気泡含有層および2つの独立した粘着剤層をいずれも活性エネルギー線(典型的には紫外線等の光)の照射により硬化させる態様が挙げられる。
中間層223は、単一の気泡含有粘着層からなる層であってもよく、複数の気泡含有粘着層が貼り合わされた複層構造(積層構造)の層であってもよい。中間層223が複数の気泡含有粘着層からなる積層構造を有する場合、個々の気泡含有粘着層の組成、気泡含有率、厚さ等は、互いに同一でもよく異なってもよい。中間層223に含まれる気泡含有粘着層の数は特に制限されず、例えば2層〜100層程度であり得る。粘着シートの生産性等の観点から、通常は2層〜50層程度が適当であり、例えば2層〜30層程度が好ましい。
【0084】
(構成例4−2)
図4に示す構成を有する粘着シート20の他の一好適例として、第1粘着剤層221および第2粘着剤層222がいずれもアクリル系粘着剤層からなる非気泡含有粘着層であり、中間層223が気泡含有非粘着層である構成が挙げられる。中間層223の表面223A,223Bの一方または両方には、コロナ放電処理やプライマー層の形成等の、該表面の非剥離性を高める表面処理が施されていてもよい。このような構成の粘着シート20は、中間層223が非粘着層であるので、該中間層(気泡含有層)をより広範な材料から選択することができる。例えば、中間層の厚さ、気泡含有率、圧縮硬さ、破断強度等を適宜に選択しやすく、このことによって粘着シート全体のクッション性や耐反撥性等を調節しやすいので好ましい。
【0085】
(構成例5)
図5に示す粘着シート10は、
図1に示す構成例1に係る粘着シート1の一態様であって、気泡含有粘着層121としてのアクリル系粘着剤層からなる両面粘着シートである。特に限定するものではないが、この粘着シート10は、好ましくは、気泡含有粘着層121の第1の表面(第1粘着面)121Aおよび第2の表面(第2粘着面)121Bのいずれかについて測定される対EPDM初期剥離強度が5N/10mm以上である。
特に限定するものではないが、このような構成の粘着シート10は、構成例1に係る粘着シート1と同様、気泡含有粘着層121の第1の表面(第1粘着面)121Aおよび第2の表面(第2粘着面)121Bの両方がEPDM等のオレフィン系ゴム表面に貼り付けられる態様で好ましく使用され得る。また、第1粘着面121Aがオレフィン系ゴム表面に貼り付けられ、第2粘着面121Bが各種の被着体表面(オレフィン系ゴム表面に限定されない。)に貼り付けられる態様等でも好ましく使用され得る。
【0086】
気泡含有粘着層121は、単一のアクリル系粘着剤層からなる粘着剤層であってもよく、複数のアクリル系粘着剤層が貼り合わされた複層構造(積層構造)の粘着剤層であってもよい。気泡含有粘着層121が複数のアクリル系粘着剤層からなる積層構造の粘着剤層である場合、個々のアクリル系粘着剤層の組成、気泡含有率、厚さ等は、互いに同一でもよく異なってもよい。気泡含有粘着層121に含まれるアクリル系粘着剤層の数は特に制限されず、例えば2層〜100層程度であり得る。粘着シートの生産性等の観点から、通常は2層〜50層程度が適当であり、例えば2層〜30層程度が好ましい。
【0087】
(構成例6)
図6に示す粘着シート30は、非気泡含有粘着層であって第1粘着面321Aを構成する第1粘着剤層321と、気泡含有粘着層であって第2粘着面322Aを構成する第2粘着剤層322とを備える両面粘着シートである。
このような構成を有する粘着シート30の一好適例として、第1粘着剤層(非気泡含有粘着層)321がアクリル系粘着剤層であり、この第1粘着剤層321が第2粘着剤層(気泡含有粘着層)322の表面322Bに支持されている構成が挙げられる。第1粘着剤層321としてのアクリル系粘着剤層は、好ましくは、後述する粘着剤層(A)である。第2粘着剤層322は、粘着剤層(A)であってもよく、粘着剤層(A)以外の粘着剤層であってもよい。例えば、第2粘着剤層322が粘着剤層(A)以外のアクリル系粘着剤層である構成を好ましく採用し得る。特に限定するものではないが、かかる構成の粘着シート30は、例えば、第1粘着面321Aがオレフィン系ゴム材料の表面等の低極性表面に貼り付けられ、第2粘着面322Aが各種の被着体表面(低極性表面に限定されない。)に貼り付けられる態様等で好ましく使用され得る。
【0088】
(構成例7)
図7に示す粘着シート40は、その第1の表面(粘着面)421Aを構成する粘着剤層421と、第2の表面431Aを構成する非粘着性の背面層431とを備える片面粘着シートである。粘着剤層421は、アクリル系粘着剤層からなる非気泡含有粘着層である。粘着剤層421としてのアクリル系粘着剤層は、好ましくは、後述する粘着剤層(A)である。粘着剤層421を支持する背面層(支持層)431は、気泡含有非粘着層であって、その少なくとも粘着剤層421側の表面431Bは非剥離性である。背面層431としては、上述した各種の発泡シートから適切なものを選択することができる。例えば、ポリオレフィン系発泡体から構成された発泡シートを好ましく採用し得る。特に限定するものではないが、このような構成の粘着シート(片面粘着シート)40は、例えば、粘着面421Aがオレフィン系ゴム材料等の低極性材料の表面に貼り付けられる態様で好ましく使用され得る。背面層431のうち粘着剤層421側の表面431Bには、コロナ放電処理やプライマー層の形成等の、該表面の非剥離性を高める表面処理が施されていてもよい。また、背面層431のうち粘着シート40の第2の表面を構成する表面431Aには、該表面の剥離性を高める処理(シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系等の剥離処理剤を用いた剥離処理層の形成や、ポリオレフィンフィルムのラミネート等)、該表面の非剥離性や印刷性を高める処理(コロナ放電処理等)、該表面の装飾性を高める処理(例えば、印刷、金属の蒸着)等の適宜の処理が施されていてもよい。
【0089】
図1〜
図7に例示される各粘着シートにおいて、図に示される各層は、それぞれ、単層構造であってもよく、複層構造(すなわち、複数の層を含む構造)であってもよい。また、粘着面以外の表面や各層の間にさらに他の層(プライマー層、剥離処理層、印刷層等の着色層、金属蒸着層、静電防止層、表面保護層)を有していてもよい。
【0090】
ここに開示されるいずれかの粘着シートは、その使用前(すなわち、被着体への貼付け前)において、その粘着面が、少なくとも該粘着面側が剥離面となっている剥離ライナーによって保護された形態であり得る。あるいは、例えば
図3に示す粘着シート3において、背面層31の表面31Aが剥離面となっており、粘着シート3を捲回することにより第1粘着面21Aが表面31Aに当接して保護された形態であってもよい。
【0091】
<アクリル系粘着剤層>
ここに開示される粘着シートは、アクリル系粘着剤層により構成された粘着面を備える。上記粘着面を構成するアクリル系粘着剤層の組成や構造に特に制限はない。好ましい一態様に係る粘着シートは、該粘着面をEPDMの表面に直接貼り付けて測定される剥離強度(標準EPDM板に対する20分後剥離強度)が5N/10mm以上である。
【0092】
以下、ここに開示される粘着シートにおいて粘着面を構成するアクリル系粘着剤層の好ましい態様につき説明するが、本発明の範囲を制限する意図ではない。
【0093】
[アミノ基含有(メタ)アクリレート(モノマーA)]
ここに開示される粘着シートの粘着面を構成するアクリル系粘着剤層は、典型的にはアクリル系重合物を含む。なお、ここでいう重合物の概念には、一般にオリゴマーと称されることのある比較的低重合度の重合物も包含される。
【0094】
ここに開示されるアクリル系粘着剤層としては、上記アクリル系重合物が、その構成モノマー成分としてアミノ基含有(メタ)アクリレート(以下「モノマーA」ともいう。)を含むものが好ましい。すなわち、モノマーAに由来するモノマー単位を含むアクリル系粘着剤層が好ましい。上記構成モノマー成分は、このようなアミノ基含有(メタ)アクリレートの1種を単独で含んでもよく、2種以上を組み合わせて含んでもよい。なお、この明細書中において、モノマーAに由来するモノマー単位を含むアクリル系粘着剤層を「粘着剤層(A)」ということがある。
【0095】
ここで、アミノ基含有(メタ)アクリレートとは、1分子中に少なくとも1つのアミノ基を有する(メタ)アクリレートを指す。重合反応性等の観点から、通常は、1分子中に1つのアミノ基を有するアミノ基含有(メタ)アクリレートが好ましい。
上記アミノ基含有(メタ)アクリレートにおけるアミノ基は、1級アミノ基(−NH
2)、2級アミノ基(−NHR
a)、3級アミノ基(−NR
aR
b)および4級アンモニウム基(−N
+R
aR
bR
c)のいずれでもよい。ここで、R
a,R
b,R
cは互いに同一のまたは異なる1価の有機基であり、互いに結合して環構造を形成していてもよい。R
a,R
b,R
cの炭素原子数は、例えば1〜20程度であり得る。重合反応性等の観点から、通常は、R
a,R
b,R
cがいずれも炭素原子数1〜20程度の炭化水素基であるアミノ基含有(メタ)アクリレートを好ましく採用し得る。なかでも、R
a,R
bがいずれも炭素原子数1〜20程度の(シクロ)アルキル基である3級アミノ基を有するアミノ基含有(メタ)アクリレート(例えば、N,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート)が好ましい。
【0096】
なお、上記アミノ基含有(メタ)アクリレートにおけるアミノ基の概念には、該アミノ基の窒素原子がアミド基を構成しているものは含まれないものとする。したがって、アクリルアミドやアクリロイルモルホリン等のアミド基含有(メタ)アクリレートは、ここでいうアミノ基含有(メタ)アクリレート(モノマーA)には該当しない。一方、アミド基を構成しないアミノ基を少なくとも1つ有する(メタ)アクリレートは、該アミノ基に加えてアミド基を有するものであっても、ここでいうアミノ基含有(メタ)アクリレートに該当し得る。
【0097】
ここに開示される技術の好ましい一態様において、上記アクリル系重合物は、以下の式(1)で表されるアミノ基含有(メタ)アクリレート(モノマーA)を構成モノマー成分として含み得る。
CH
2=CR
1COO(CH
2)
nNR
2R
3 (1)
上記式(1)において、R
1は、水素原子またはメチル基であり得る。nは、0〜6(典型的には0〜4、好ましくは1〜3)であり得る。R
2,R
3は、それぞれ独立に、水素原子および炭化水素基から選択され得る。炭化水素基の好適例として、炭素原子数1〜20の鎖状アルキル基および炭素原子数4〜20のシクロアルキル基が挙げられる。重合反応性等の観点から好ましい炭化水素基として、炭素原子数1〜16(例えば炭素原子数1〜12、典型的には炭素原子数1〜10)の鎖状アルキル基および炭素原子数4〜16(例えば炭素原子数4〜12、典型的には炭素原子数4〜10)のシクロアルキル基が例示される。上記鎖状アルキル基は、直鎖状または分岐状であり得る。なかでも炭素原子数1〜4(より好ましくは1〜3、典型的には1〜2)の鎖状アルキル基が好ましい。
【0098】
式(1)で表されるアミノ基含有(メタ)アクリレートの具体例として、N,N−ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノヘキシル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−メチル−N−エチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−メチル−N−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジプロピルアミノプロピル(メタ)アクリレート等のN,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート;N−メチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−エチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−イソプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−t−ブチルエチル(メタ)アクリレート、N−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のN−アルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート;N,N−ジメチルアミノ(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノ(メタ)アクリレート等のN,N−ジアルキルアミノ(メタ)アクリレート;N−メチルアミノ(メタ)アクリレート、N−エチルアミノ(メタ)アクリレート等のN−アルキルアミノ(メタ)アクリレート;アミノメチル(メタ)アクリレート、アミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノアルキル(メタ)アクリレート;アミノ(メタ)アクリレート;等が挙げられる。
【0099】
また、4級アンモニウム基を有するアミノ基含有(メタ)アクリレートの例としては、3級アミノ基を有するアミノ基含有(メタ)アクリレートのハロゲン化アルキル4級塩、例えばN,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートのハロゲン化アルキル4級塩が挙げられる。具体例としては、ジメチルアミノエチルアクリレート塩化メチル4級塩、ジメチルアミノエチルメタクリレート塩化メチル4級塩等が挙げられる。
【0100】
これらのうち好ましいアミノ基含有(メタ)アクリレートとして、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート(以下「DMAEA」と表記することがある。)、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート(以下「DMAEM」と表記することがある。)、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレートおよびN,N−ジエチルアミノエチルメタクリレートが挙げられる。なかでもDMAEAおよびDMAEMが好ましい。低極性表面(例えばオレフィン系ゴム材料からなる表面)への貼付けから時間が経っても剥離強度が低下しにくく、あるいはさらに剥離強度が上昇し得るという観点から、DMAEMが特に好ましい。
【0101】
[アミノ基含有(メタ)アクリレート以外のモノマー(モノマーB)]
上記アクリル系粘着剤層は、該アクリル系粘着剤層に含まれる重合物の構成モノマー成分として、アミノ基含有(メタ)アクリレート(モノマーA)に加えて、アミノ基含有(メタ)アクリレート以外のモノマー(以下「モノマーB」ともいう。)を含んでいてもよい。上記モノマーBは、アクリル系モノマーであってもよく、アクリル系以外のモノマー(例えば、(メタ)アクリロイル基以外のエチレン性不飽和基を有するモノマー)であってもよい。
【0102】
モノマーBとして使用し得るアクリル系モノマーの一好適例として、(シクロ)アルキル(メタ)アクリレート(以下「モノマーB1」ともいう。)が挙げられる。例えば、下記式(2)で表わされる(シクロ)アルキル(メタ)アクリレートが好ましい。
CH
2=CR
4COOR
5 (2)
上記式(2)において、R
4は、水素原子またはメチル基である。また、R
5は(シクロ)アルキル基であり、典型的には炭素原子数1〜20の鎖状アルキル基または炭素原子数4〜20のシクロアルキル基であり得る。粘着剤の貯蔵弾性率等の観点から、R
5が炭素原子数1〜16(例えば炭素原子数1〜12、典型的には炭素原子数1〜10)の鎖状アルキル基または炭素原子数4〜16(例えば炭素原子数4〜12、典型的には炭素原子数4〜10)のシクロアルキル基である(シクロ)アルキル(メタ)アクリレートを好ましく使用し得る。R
5が鎖状アルキル基である場合、該アルキル基は直鎖状または分岐状であり得る。
【0103】
R
5が炭素原子数1〜20の鎖状アルキル基であるアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。R
5が炭素原子数4〜20のシクロアルキル基であるシクロアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えばシクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0104】
なかでも好ましい(シクロ)アルキル(メタ)アクリレートとして、n−ブチルアクリレート(BA)、2−エチルへキシルアクリレート(2EHA)、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、t−ブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート(CHA)、シクロヘキシルメタクリレート(CHMA)、イソボルニルアクリレート(IBXA)、イソボルニルメタクリレート(IBXMA)等が例示される。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0105】
上記アクリル系粘着剤層に含まれる重合物の構成モノマー成分は、モノマーBとして、(シクロ)アルキル(メタ)アクリレート以外のモノマー(以下「モノマーB2」ともいう。)を含んでいてもよい。このようなモノマーは、凝集性、耐熱性、密着性等の諸性質の向上を目的として使用され得る。
【0106】
上記モノマーB2の例としては、官能基を有するモノマー(以下「官能基含有モノマー」ともいう。)が挙げられる。かかる官能基含有モノマーは、アクリル系粘着剤層に含まれる重合物に架橋点を導入し、アクリル系粘着剤層の凝集力を高める目的で添加され得る。そのような官能基含有モノマーとしては、
例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート等のエチレン性不飽和モノカルボン酸や、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸等のエチレン性不飽和ジカルボン酸等の、カルボキシル基含有モノマーおよびその金属塩(例えばアルカリ金属塩);
例えば無水マレイン酸、無水イタコン酸等の、上記エチレン性不飽和ジカルボン酸等の酸無水物等の酸無水物基含有モノマー;
例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12−ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート、(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類や、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ビニルアルコール、アリルアルコール、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル等の不飽和アルコール類等の、ヒドロキシル基(水酸基)含有モノマー;
例えば(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロールプロパン(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有モノマー;
例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアノ基含有モノマー;
例えばスチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸等のスルホン酸基含有モノマー;
例えば2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート等のリン酸基含有モノマー;
例えば2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリンのようなオキサゾリン基含有モノマー;
例えば(メタ)アクリロイルアジリジン、2−アジリジニルエチル(メタ)アクリレートのようなアジリジン基含有モノマー;
例えばグリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基(グリシジル基)含有モノマー;
例えばジアセトン(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリレート、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、アリルアセトアセテート、ビニルアセトアセテート等のケト基含有モノマー;
例えば2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート等のイソシアネート基含有モノマー;
例えばメトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、プロポキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシプロピル(メタ)アクリレート等のアルコキシ基含有モノマー;
例えば3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン等のアルコキシシリル基含有モノマー;
その他、ビニル基を重合したモノマー末端にラジカル重合性ビニル基を有するマクロモノマー等が挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0107】
上記構成モノマー成分は、ガラス転移温度(Tg)の調整や凝集力の向上等の目的で、モノマーB2として、上記官能基含有モノマー以外のモノマーを含んでもよい。そのようなモノマーB2としては、
例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル、安息香酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル;
例えばスチレン、置換スチレン(α−メチルスチレン等)、ビニルトルエン等の芳香族ビニル化合物;
例えばアリール(メタ)アクリレート(例えばフェニル(メタ)アクリレート)、アリールオキシアルキル(メタ)アクリレート(例えばフェノキシエチル(メタ)アクリレート)、アリールアルキル(メタ)アクリレート(例えばベンジル(メタ)アクリレート)等の芳香族性環含有(メタ)アクリレート;
例えばN−ビニル−2−ピロリドン、N−メチルビニルピロリドン、N−ビニルピリジン、N−ビニルピペリドン、N−ビニルピリミジン、N−ビニルピペラジン、N−ビニルピラジン、N−ビニルピロール、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルオキサゾール、N−ビニルモルホリン、N−ビニルカプロラクタム、N−(メタ)アクリロイルモルホリン等の窒素原子含有環を有するモノマー;
例えばエチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン、イソブチレン等のオレフィン系モノマー;
例えば塩化ビニル、塩化ビニリデン等の塩素含有モノマー;
例えばメチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル系モノマー;
等が挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0108】
上記構成モノマー成分は、また、モノマーB2として、架橋等を目的として多官能モノマーを必要に応じて含んでもよい。そのような多官能モノマーとしては、例えば1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の、1分子中に2以上の重合性官能基(典型的には(メタ)アクリロイル基)を有するモノマーが挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。反応性等の観点から、通常は、1分子中に2以上(典型的には3以上)のアクリロイル基を有する多官能モノマーが好ましい。
【0109】
[全構成モノマー成分の組成]
上記アクリル系粘着剤層に含まれる全重合物の構成モノマー成分(以下「全構成モノマー成分」ともいう。)に占めるアクリル系モノマーの割合は、典型的には50質量%超であり、好ましくは70質量%以上、より好ましくは85質量%以上(例えば90質量%以上)であり得る。全構成モノマー成分の質量(m
T)に占めるアクリル系モノマーの質量の割合が実質的に100質量%(例えば98〜100質量%)であってもよい。また、アクリル系粘着剤層全体の質量に占めるアクリル系重合物の割合は、典型的には70質量%以上であり、好ましくは80質量%以上(例えば90質量%以上)であり得る。
【0110】
アクリル系粘着剤層がその構成モノマー成分としてアミノ基含有(メタ)アクリレート(モノマーA)を含む場合、該アクリル系粘着剤層の全構成モノマー成分の質量(m
T)に占めるモノマーAの質量(m
A)の割合(m
A/m
T)は、例えば0.2質量%超(典型的には0.5質量%超)であり得る。オレフィン系ゴム材料等の低極性材料に対する粘着性等の観点から、モノマーAの割合は、1.0質量%超が好ましく、2.0質量%超がより好ましい。
【0111】
好ましい一態様において、アミノ基含有(メタ)アクリレート(モノマーA)は、アクリル系粘着剤層の全構成モノマー成分の2.6質量%を超える割合で含まれ得る。換言すれば、ここに開示される技術におけるアクリル系粘着剤層には、モノマーAに由来するモノマー単位が、該アクリル系粘着剤層に含まれる全重合物の2.6質量%を超える割合(典型的には、アクリル系粘着剤層全体の2.6質量%を超える割合)で含まれていることが好ましい。このような組成のアクリル系粘着剤層は、オレフィン系ゴム材料からなる被着体その他の低極性の被着体に対して良好な粘着性を発揮し得る。この粘着性等の観点から、全構成モノマー成分の質量(m
T)に占めるモノマーAの質量(m
A)の割合(m
A/m
T)は、3質量%以上であることが好ましく、4質量%超であることがより好ましく、5質量%以上であることがさらに好ましい。より高い粘着性を得る観点から、m
A/m
Tを6質量%以上としてもよく、さらに7質量%以上としてもよい。m
A/m
Tの上限は特に制限されないが、重合反応性や初期粘着性等の観点から、通常は80質量%以下とすることが適当であり、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、典型的には50質量%未満である。上記アクリル系粘着剤層の形成に活性エネルギー線硬化型(例えば紫外線硬化型)の粘着剤組成物を用いる態様では、該粘着剤組成物の硬化性の観点から、m
A/m
Tを30質量%以下とすることが適当であり、25質量%以下(例えば20質量%以下)とすることが好ましい。
なお、粘着剤組成物の活性エネルギー線硬化性は、該粘着剤組成物からのアクリル系粘着剤の形成容易性、ひいては該アクリル系粘着剤を有する粘着シートの生産性としても把握され得る。以下、活性エネルギー線硬化性を単に「硬化性」と略記することがある。
【0112】
ここに開示される技術は、アクリル系粘着剤層が、m
Tの50質量%を超える割合(典型的には、50質量%を超えて97.4質量%未満の割合)で(シクロ)アルキル(メタ)アクリレート(モノマーB1)を含む態様で好ましく実施され得る。かかる態様によると、オレフィン系ゴム材料等の低極性材料に対する粘着性と重合反応性とが高レベルで両立され得る。上記重合反応性が良いことは、アクリル系粘着剤層の形成容易性(ひいては該アクリル系粘着剤層を有する粘着シートの生産性)にとって有利である。この重合反応性の観点から、m
Tに占めるモノマーB1の質量の割合は、例えば50質量%を超えて97質量%以下とすることができ、96質量%未満とすることが好ましく、95質量%以下とすることがより好ましく、94質量%以下(例えば93質量%以下)とすることがさらに好ましい。
【0113】
ここに開示される技術は、アクリル系粘着剤層の構成モノマー成分が、モノマーB1として鎖状アルキル(メタ)アクリレートを含む態様で好ましく実施され得る。鎖状アルキル(メタ)アクリレートを用いることにより、各種の被着体に対して良好な初期粘着性を示す粘着シートが実現され得る。m
Tに占める鎖状アルキル(メタ)アクリレートの質量の割合は、例えば20質量%以上とすることができ、通常は30質量%以上が適当であり、40質量%以上が好ましく、50質量%以上(典型的には50質量%超)がより好ましい。上記割合は、凝集性等の観点から、通常は95質量%以下が適当であり、好ましくは90質量%以下(例えば80質量%以下)である。
【0114】
ここに開示される技術は、アクリル系粘着剤層の構成モノマー成分が、モノマーB1としてシクロアルキル(メタ)アクリレートを含む態様で好ましく実施され得る。シクロアルキル(メタ)アクリレートを用いることにより、オレフィン系ゴム材料等の低極性材料に対する粘着性と粘着剤の凝集性とがより高レベルで両立され得る。アクリル系粘着剤層の構成モノマー成分がシクロアルキル(メタ)アクリレートを含む場合、m
Tに占めるシクロアルキル(メタ)アクリレートの質量(m
C)の割合(m
C/m
T)は、例えば1質量%以上とすることができる。シクロアルキル(メタ)アクリレートを用いることの効果をよりよく発揮させる観点から、m
C/m
Tは、5質量%以上とすることが適当であり、10質量%以上とすることが好ましく、15質量%以上(例えば20質量%以上、さらには25質量%以上)とすることがより好ましい。また、重合反応性等の観点から、通常はm
C/m
Tを50質量%未満とすることが適当であり、40質量%以下とすることが好ましく、35質量%以下(例えば30質量%以下)とすることがより好ましい。
【0115】
アクリル系粘着剤層の構成モノマー成分がシクロ
アルキル(メタ)アクリレートを含む場合、該粘着剤層の全構成モノマー成分におけるモノマーAの質量(m
A)とシクロ
アルキル(メタ)アクリレートの質量(m
C)との比(m
A/m
C)は特に制限されない。オレフィン系ゴム表面等の低極性表面に対する粘着性の観点から、上記比(m
A/m
C)の値を0.20以上(典型的には0.20超)とすることが効果的であり、0.22以上とすることが好ましく、0.24以上とすることがより好ましい。また、オレフィン系ゴム表面に対する粘着性と凝集性とをより高度に両立させる観点から、上記比(m
A/m
C)の値を0.30以上とすることが好ましく、例えば0.35以上とすることができる。上記比(m
A/m
C)の値の上限は特に制限されないが、重合反応性等の観点から、通常は0.70以下とすることが適当であり、0.65以下とすることが好ましく、0.50以下とすることがより好ましい。
【0116】
アクリル系粘着剤層に含まれる全構成モノマー成分が、モノマーB1として鎖状アルキル(メタ)アクリレートとシクロアルキル(メタ)アクリレートとの両方を含む場合、m
Tに占める鎖状アルキル(メタ)アクリレートの質量の割合は、例えば50質量%を超えて85質量%以下とすることができ、55質量%以上85質量%以下(例えば55質量%以上70質量%以下)とすることが好ましい。粘着性と凝集性とのバランスや重合反応性等を考慮して、全構成モノマー成分に含まれる鎖状アルキル(メタ)アクリレートとシクロアルキル(メタ)アクリレートとの質量比(鎖状アルキル(メタ)アクリレート/シクロアルキル(メタ)アクリレート)は、例えば1.5〜10とすることができ、1.7〜5.5とすることが好ましく、1.8〜3.5(例えば2.0〜3.0)とすることがより好ましい。
【0117】
アクリル系粘着剤層の構成モノマー成分がモノマーB2を含む場合、その含有量は、m
Tの例えば30質量%以下とすることができる。オレフィン系ゴム材料等の低極性材料に対する粘着性の観点から、モノマーB2の含有量は、m
Tの20質量%以下とすることが適当であり、10質量%以下とすることが好ましく、5質量%以下(例えば2質量%以下)とすることがより好ましい。
【0118】
ここに開示される技術は、m
Tに占めるカルボキシル基含有モノマーの質量の割合が0〜1質量%(より好ましくは0〜0.5質量%、さらに好ましくは0〜0.1質量%)である態様で好ましく実施され得る。ここで、m
Tに占めるカルボキシル基含有モノマーの質量の割合が0であるとは、少なくとも意図的にはカルボキシル基含有モノマーを用いないことを意味する。かかる組成のアクリル系粘着剤層は、カルボキシル基を含まないかその含有量が極めて少ないため、その表面(粘着面)が低極性となり得る。このことはオレフィン系ゴム材料等の低極性材料に対する粘着性の向上に有利に寄与し得る。m
Tに占めるカルボキシル基含有モノマーの質量と水酸基含有モノマーの質量との合計割合を0〜1質量%(より好ましくは0〜0.5質量%、さらに好ましくは0〜0.1質量%)とすることにより、より良好な結果が実現され得る。
【0119】
ここに開示される技術は、例えば、アクリル系粘着剤層の全構成モノマー成分のなかに、モノマーB2として多官能モノマーが含まれる態様で好ましく実施され得る。多官能モノマーの使用量は、m
Tの例えば2質量%以下(典型的には0.01〜1質量%、好ましくは0.02〜1質量%より好ましくは0.05〜0.5質量%)とすることができる。好ましい一態様として、モノマーB2として多官能モノマーのみを含む態様が挙げられる。他の好ましい一態様として、モノマーB2を実質的に含まない態様が挙げられる。
【0120】
アクリル系粘着剤層の全構成モノマー成分の組成は、その完全重合物のガラス転移温度(Tg)が−60℃以上−10℃以下となるように設定され得る。被着体(例えば、オレフィン系ゴム材料等のような低極性材料)に対する初期接着性の観点から、アクリル系粘着剤層の全構成モノマー成分の組成から算出されるTg(すなわち全構成モノマー成分の完全重合物のTg)は、−15℃以下であることが適当であり、−20℃以下であることが好ましく、−25℃以下であることがより好ましい。また、粘着剤の凝集性の観点から、上記Tgは、−60℃以上であることが適当であり、−55℃以上であることが好ましく、−50℃以上であることがより好ましい。ここに開示される技術の好ましい一態様において、上記全構成モノマー成分の組成から算出されるTgは、例えば−50℃〜−30℃(典型的には−45℃〜−30℃)であり得る。
【0121】
ここで、重合物のTgとは、該重合物を構成する各モノマーの単独重合体(ホモポリマー)のTgおよび該モノマーの質量分率(質量基準の共重合割合)に基づいてフォックス(Fox)の式から求められる値をいう。したがって、重合物のTgは、その構成モノマー成分の組成(すなわち、該重合物の合成に使用するモノマーの種類や使用量比)を適宜変えることにより調整することができる。ホモポリマーのTgとしては、公知資料に記載の値を採用するものとする。
【0122】
ここに開示される技術では、上記ホモポリマーのTgとして、具体的には以下の値を用いるものとする。
2−エチルヘキシルアクリレート −70℃
n−ブチルアクリレート −55℃
エチルアクリレート −22℃
メチルアクリレート 8℃
メチルメタクリレート 105℃
シクロヘキシルアクリレート 15℃
シクロヘキシルメタクリレート 66℃
イソボルニルアクリレート 94℃
イソボルニルメタクリレート 180℃
N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート 18℃
N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート 18℃
N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート 20℃
N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート 20℃
酢酸ビニル 32℃
2−ヒドロキシエチルアクリレート −15℃
スチレン 100℃
アクリル酸 106℃
メタクリル酸 228℃
上記で例示した以外のホモポリマーのTgについては、「Polymer Handbook」(第3版、John Wiley & Sons,Inc、1989年)に記載の数値を用いるものとする。
【0123】
「Polymer Handbook」(第3版、John Wiley & Sons,Inc、1989年)にも記載されていない場合には、以下の測定方法により得られる値を用いるものとする(日本国特許出願公開2007−51271号公報参照)。
具体的には、温度計、攪拌機、窒素導入管及び還流冷却管を備えた反応器に、モノマー100質量部、アゾビスイソブチロニトリル0.2質量部および重合溶媒として酢酸エチル200質量部を投入し、窒素ガスを流通させながら1時間攪拌する。このようにして重合系内の酸素を除去した後、63℃に昇温し10時間反応させる。次いで、室温まで冷却し、固形分濃度33質量%のホモポリマー溶液を得る。次いで、このホモポリマー溶液を剥離ライナー上に流延塗付し、乾燥して厚さ約2mmの試験サンプル(シート状のホモポリマー)を作製する。この試験サンプルを直径7.9mmの円盤状に打ち抜き、パラレルプレートで挟み込み、粘弾性試験機(ARES、レオメトリックス社製)を用いて周波数1Hzのせん断歪みを与えながら、温度領域−70〜150℃、5℃/分の昇温速度でせん断モードにより粘弾性を測定し、tanδのピークトップ温度をホモポリマーのTgとする。
【0124】
<粘着剤組成物>
ここに開示される技術におけるアクリル系粘着剤層は、上述のような組成の全構成モノマー成分を、重合物、未重合物(すなわち、重合性官能基が未反応である形態)、あるいはこれらの混合物の形態で含有するアクリル系粘着剤組成物を用いて形成され得る。上記アクリル系粘着剤組成物は、有機溶媒中に粘着剤(粘着成分)を含む形態の組成物(溶剤型粘着剤組成物)、粘着剤が水性溶媒に分散した形態の組成物(水分散型粘着剤組成物)、紫外線や放射線等の活性エネルギー線により硬化して粘着剤を形成するように調製された組成物(活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物)、加熱溶融状態で塗工され、室温付近まで冷えると粘着剤を形成するホットメルト型粘着剤組成物等の、種々の形態の粘着剤組成物であり得る。
【0125】
上記アクリル系粘着剤組成物は、モノマー混合物の重合反応物を含むことが好ましい。このモノマー混合物(すなわち、上記重合反応物の構成モノマー成分)は、全構成モノマー成分のうち少なくとも一部を含有する。したがって、上記モノマー混合物の重合反応物には、全構成モノマー成分のうち少なくとも一部が、重合された形態(重合物の形態)で含まれている。このように全構成モノマー成分の少なくとも一部を重合物の形態で含有するアクリル系粘着剤組成物は、該組成物の取扱性(例えば、塗工性、保存性)や粘着性能等の点で有利である。
【0126】
上記モノマー混合物の重合反応物は、該モノマー混合物を少なくとも部分的に重合させることにより調製することができる。上記モノマー混合物の重合方法は特に限定されず、従来公知の各種重合方法を適宜採用することができる。例えば、溶液重合、エマルション重合、塊状重合等の熱重合(典型的には、熱重合開始剤の存在下で行われる。);紫外線等の光を照射して行う光重合(典型的には、光重合開始剤の存在下で行われる。);β線、γ線等の放射線を照射して行う放射線重合;等を適宜採用することができる。なかでも光重合が好ましい。
【0127】
重合の態様は特に限定されず、従来公知のモノマー供給方法、重合条件(温度、時間、圧力、光照射量、放射線照射量等)、モノマー以外の使用材料(重合開始剤、界面活性剤等)等を適宜選択して行うことができる。例えば、モノマー供給方法としては、全モノマー混合物を一度に反応容器に供給(一括供給)してもよく、徐々に滴下して供給(連続供給)してもよく、何回分かに分割して所定時間ごとに各分量を供給(分割供給)してもよい。モノマー混合物は、一部または全部を、溶媒に溶解させた溶液もしくは水に乳化させた分散液として供給してもよい。
【0128】
上記モノマー混合物の重合にあたっては、重合方法や重合態様等に応じて、公知または慣用の重合開始剤の1種または2種以上を適宜選択して使用することができる。
【0129】
[熱重合開始剤]
熱重合用の開始剤としては、特に限定されるものではないが、例えばアゾ系重合開始剤、過酸化物系開始剤、過酸化物と還元剤との組み合わせによるレドックス系開始剤、置換エタン系開始剤等を使用することができる。熱重合は、例えば20〜100℃(典型的には40〜80℃)程度の温度で好ましく実施され得る。
【0130】
アゾ系重合開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチルアミジン)、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]ハイドレート、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)等が例示される。
【0131】
過酸化物系開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、過酸化水素等が例示される。
【0132】
レドックス系開始剤としては、過酸化物とアスコルビン酸との組み合わせ(過酸化水素水とアスコルビン酸との組み合わせ等)、過酸化物と鉄(II)塩との組み合わせ(過酸化水素水と鉄(II)塩との組み合わせ等)、過硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウムとの組み合わせ等が例示される。
置換エタン系開始剤の具体例にはフェニル置換エタン等が含まれる。
【0133】
[光重合開始剤]
光重合には、各種の光重合開始剤を使用することができる。光重合開始剤としては、特に限定されるものではないが、例えばケタール系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、ベンゾインエーテル系光重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤、α−ケトール系光重合開始剤、芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤、光活性オキシム系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンジル系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤等を用いることができる。
【0134】
ケタール系光重合開始剤の具体例には、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(例えば、BASF社製の商品名「イルガキュア651」)等が含まれる。
【0135】
アセトフェノン系光重合開始剤の具体例には、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニル−ケトン(例えば、BASF社製の商品名「イルガキュア184」)、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−t−ブチル−ジクロロアセトフェノン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(例えば、BASF社製の商品名「イルガキュア2959」)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(例えば、BASF社製の商品名「ダロキュア1173」)、メトキシアセトフェノン等が含まれる。
ベンゾインエーテル系光重合開始剤の具体例には、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテルおよびアニソールメチルエーテル等の置換ベンゾインエーテルが含まれる。
【0136】
アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤の具体例には、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド(例えば、BASF社製の商品名「イルガキュア819」)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−2,4−ジ−n−ブトキシフェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(例えば、BASF社製の商品名「ルシリンTPO」)、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド等が含まれる。
【0137】
α−ケトール系光重合開始剤の具体例には、2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフェノン、1−[4−(2−ヒドロキシエチル)フェニル]−2−メチルプロパン−1−オン等が含まれる。芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤の具体例には、2−ナフタレンスルホニルクロライド等が含まれる。光活性オキシム系光重合開始剤の具体例には、1−フェニル−1,1−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)−オキシム等が含まれる。ベンゾイン系光重合開始剤の具体例にはベンゾイン等が含まれる。ベンジル系光重合開始剤の具体例にはベンジル等が含まれる。
【0138】
ベンゾフェノン系光重合開始剤の具体例には、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、ポリビニルベンゾフェノン、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等が含まれる。
チオキサントン系光重合開始剤の具体例には、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、ドデシルチオキサントン等が含まれる。
【0139】
このような熱重合開始剤または光重合開始剤の使用量は、重合方法や重合態様等に応じた通常の使用量とすることができ、特に限定されない。例えば、モノマー混合物100質量部に対して開始剤0.001〜5質量部(典型的には0.01〜2質量部、例えば0.01〜1質量部)とすることができる。
【0140】
<重合反応物(a)>
ここに開示される技術の好ましい一態様において、上記粘着剤組成物は、鎖状アルキル(メタ)アクリレートを含むモノマー混合物の重合反応物(a)を含有し得る。上記モノマー混合物に占める鎖状アルキル(メタ)アクリレートの割合は、例えば20質量%以上とすることができ、通常は40質量%以上が適当であり、50質量%以上が好ましい。重合反応性等の観点から、上記モノマー混合物に占める鎖状アルキル(メタ)アクリレートの割合は、好ましくは50質量%超、より好ましくは55質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上(例えば60質量%超)である。上記割合は、オレフィン系ゴム材料等の低極性材料に対する粘着性や粘着剤の凝集性等の観点から通常は98質量%以下が適当であり、95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下(例えば85質量%以下、典型的には80質量%以下)であることがより好ましい。
【0141】
上記モノマー混合物は、典型的には、重合反応物(a)の構成モノマー成分に対応する組成を有する。このモノマー混合物は、粘着剤層の全構成モノマー成分中に含まれるアミノ基含有(メタ)アクリレート(モノマーA)の少なくとも一部を含み得る。全構成モノマー成分中に含まれるモノマーAの全部が上記モノマー混合物に含まれていてもよい。あるいは、上記モノマー混合物はモノマーAを含まず、全構成モノマー成分のうち上記モノマー混合物以外の部分(例えば、後述するアクリル系オリゴマー(b)の構成モノマー成分)にモノマーAが含まれていてもよい。
【0142】
上記モノマー混合物がモノマーAを含む場合、該モノマー混合物におけるモノマーAの含有割合は、例えば0.2質量%超とすることができる。モノマーAの効果をよりよく発揮させる観点から、上記含有割合は、0.5質量%以上が適当であり、0.7質量%以上が好ましく、1.0質量%以上(例えば1.2質量%以上)がより好ましい。オレフィン系ゴム材料等の低極性材料に対する粘着性をさらに向上させる観点から、上記含有割合を1.5質量%以上(典型的には1.5質量%超)としてもよく、2.0質量%以上としてもよく、さらに3.0質量%以上としてもよい。上記モノマー混合物におけるモノマーAの含有割合の上限は特に制限されない。重合反応性や初期粘着性等の観点から、例えば20質量%以下とすることができ、通常は17質量%以下とすることが適当であり、15質量%以下とすることが好ましく、12質量%以下(例えば10質量%以下)とすることがより好ましい。
【0143】
この重合反応物(a)は、上記モノマー混合物を少なくとも部分的に重合させて得られた結果物であり得る。すなわち、上記重合反応物(a)は、上記モノマー混合物の部分重合物であってもよく、完全重合物であってもよい。重合反応物(a)におけるモノマーの重合転化率(モノマーコンバーション)は特に制限されない。したがって、上記重合反応物(a)は、未反応(未重合)のモノマーを含んでもよく、実質的に含まなくてもよい。ここで、未反応のモノマーを実質的に含まないとは、未反応モノマーの含有割合が重合反応物(a)の1質量%未満(典型的には0.1質量%未満)であることをいう。また、上記重合反応物(a)は、該反応物を得るための重合の際に用いられたモノマー以外の材料(例えば、重合開始剤、溶媒、分散媒等)を含んでもよい。
【0144】
[重合反応物(a)が部分重合物である態様]
好ましい一態様において、上記重合反応物(a)は、モノマー混合物を部分的に重合させた部分重合物であり得る。ここで「部分重合物」とは、その構成モノマー成分が部分的に重合された重合反応物をいう。このような部分重合物は、典型的には、モノマー混合物の一部から形成された重合物と未反応のモノマーとが混在するシロップ状(粘性のある液状)を呈する。以下、かかる性状の部分重合物を「ポリマーシロップ」または単に「シロップ」ということがある。上記モノマー混合物を部分的に重合させる際の重合方法は特に制限されず、上述のような各種重合方法を適宜選択して用いることができる。例えば光重合法を好ましく採用し得る。
【0145】
このような部分重合物(典型的にはポリマーシロップ)におけるモノマー混合物の重合転化率(モノマーコンバーション)は特に限定されない。例えば、重合転化率を70質量%以下とすることができ、60質量%以下とすることが好ましい。該部分重合物を含む粘着剤組成物の調製容易性や塗工性等の観点から、通常、上記重合転化率は、50質量%以下が適当であり、40質量%以下(例えば35質量%以下)が好ましい。重合転化率の下限は特に制限されないが、典型的には1質量%以上であり、例えば2質量%以上とすることができる。粘着性能等の観点から、上記重合転化率は、通常、5質量%以上が適当であり、10質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましく、20質量%以上がさらに好ましく、25質量%以上が特に好ましい。
【0146】
ここで、重合反応物の重合転化率は、以下の方法で求められる。
(重合転化率測定)
重合反応物から約0.5gのサンプルを採取して精秤する(質量Wp
1)。次いで、該サンプルを130℃に2時間加熱することにより未反応モノマーを揮発させ、その加熱後に残ったサンプルの質量を精秤する(質量Wp
2)。重合転化率は、各値を以下の式に代入することにより求められる。
重合転化率[%]=(Wp
2/Wp
1)×100
【0147】
モノマー混合物を部分的に重合させる際の重合方法は特に制限されず、上述のような各種重合方法を適宜選択して用いることができる。効率および簡便性の観点から、上記モノマー混合物を部分的に重合させる方法として、光重合法を好ましく採用し得る。光重合によると、光の照射量(光量)等の重合条件によって、上記モノマー混合物の重合転化率を容易に制御することができる。
【0148】
重合反応物(a)としてモノマー混合物の部分重合物を含む粘着剤組成物は、該組成物中に含まれる未反応のモノマー(上記モノマー混合物に由来するモノマー以外のモノマーを含み得る。)を適切な手段で重合させることにより硬化させて粘着剤を形成し得るように構成することができる。粘着剤組成物を硬化させるための重合方法は特に制限されない。例えば、上記モノマー混合物を部分的に重合させる際に用いた重合方法と同じであってもよく、異なってもよい。かかる態様の粘着剤組成物は、モノマー混合物の一部から形成された重合物を未反応モノマー中に含む形態(典型的には、上記重合物が未反応モノマーに溶解した形態)であるので、溶媒または分散媒によって希釈されなくても、常温で塗工可能な粘度を有するものであり得る。したがって、溶媒を実質的に含まない粘着剤組成物(無溶剤型粘着剤組成物)として好適である。このような無溶剤型粘着剤組成物は、光照射や放射線照射等の適切な硬化手段(重合手段)を適用することによって粘着剤層を形成することができる。無溶剤型の粘着剤組成物は、有機溶媒を実質的に含まないので環境衛生の観点から好ましい。また、粘着剤組成物の乾燥設備や有機溶媒の回収設備を必要とせず、あるいは上記設備を小型化または簡略化し得るという点でも有利である。
なお、粘着剤組成物が溶媒を実質的に含まないとは、該粘着剤組成物のうち粘着剤形成成分の割合が95質量%以上(典型的には98質量%以上、好ましくは99質量%以上)であることをいう。換言すれば、粘着剤組成物のうち溶媒の含有割合が5質量%以下(典型的には2質量%以下、好ましくは1質量%以下)であることをいう。
【0149】
重合反応物(a)として部分重合物を含む粘着剤組成物(典型的には無溶剤型の粘着剤組成物)は、例えば、上記モノマー混合物を適当な重合方法により部分的に重合させて得られた重合反応物(a)と、必要に応じて用いられる他の成分(例えば、光重合開始剤、架橋剤、後述するアクリル系オリゴマー(b)、未反応のモノマー等)とを混合することによって容易に調製することができる。
【0150】
重合反応物(a)として部分重合物を含む粘着剤組成物から粘着剤を形成する際の硬化方法(重合方法)としては、光重合法を好ましく採用することができる。光重合法によって調製された重合反応物(a)を含む粘着剤組成物では、その硬化方法として光重合法を採用することが特に好適である。光重合法により得られた重合反応物(a)は、すでに光重合開始剤を含むので、この重合反応物(a)を含む粘着剤組成物をさらに硬化させて粘着剤を形成する際、新たな光重合開始剤を追加しなくても光硬化し得る。あるいは、光重合法により調製された重合反応物(a)に、必要に応じて光重合開始剤を追加した組成の粘着剤組成物であってもよい。追加する光重合開始剤は、重合反応物(a)の調製に使用した光重合開始剤と同じでもよく、異なってもよい。光重合以外の方法で調製された粘着剤組成物は、光重合開始剤を添加することにより光硬化性とすることができる。光硬化性の粘着剤組成物は、厚手の粘着剤層を容易に形成し得るという利点を有する。
【0151】
光重合開始剤の使用量は特に制限されず、例えば、上述の一般的な光重合開始剤の使用量を適宜採用することができる。なお、ここでいう光重合開始剤の使用量は、重合反応物(a)を得るための部分重合において用いられた光重合開始剤と、その後に追加され得る光重合開始剤との合計量を指す。
【0152】
重合反応物(a)が部分重合物である場合、該部分重合物の重量平均分子量(Mw)は、例えば3×10
4〜500×10
4程度であり得る。上記部分重合物を含む粘着剤組成物の粘着性能等の観点から、上記部分重合物のMwは、5×10
4以上であることが好ましく、10×10
4以上(例えば20×10
4以上)であることがより好ましい。ここに開示される技術の好ましい一態様において、上記部分重合物のMwは30×10
4以上(より好ましくは40×10
4以上、さらに好ましくは50×10
4以上、例えば60×10
4以上)であり得る。かかる態様によると、より良好な粘着性能が実現され得る。また、粘着剤組成物の調製容易性や塗工性等の観点から、通常、上記部分重合物のMwは、200×10
4以下であることが好ましく、150×10
4以下であることがより好ましい。
【0153】
ここで、上記部分重合物のMwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定することができる。より具体的には、例えば、GPC測定装置として商品名「HLC−8120GPC」(東ソー(株)製)を用い、上記部分重合物をサンプルとして、下記の条件にて測定し、標準ポリスチレン換算値として算出することができる。
(GPC測定条件)
・サンプル濃度:約2.0g/L(テトラヒドロフラン溶液)
・サンプル注入量:20μL
・カラム:商品名「TSKgel,SuperAWM−H+superAW4000+superAW2500」(東ソー(株)製)
・カラムサイズ:各6.0mmI.D.×150mm
・溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
・流量:0.4mL/分
・検出器:示差屈折計(RI)
・カラム温度(測定温度):40℃
【0154】
なお、上記部分重合物中に含まれ得る未反応のモノマーは、上記GPC測定から求められるMwの値にはほとんど影響しない。したがって、部分重合物をサンプルとする上記GPC測定により得られたMwの値を、該部分重合物中に含まれる重合物のMwを表すものとして把握することができる。
【0155】
重合反応物(a)の構成モノマー成分(すなわちモノマー混合物)の組成は、該構成モノマー成分から形成される完全重合物のTgが−70℃以上−20℃以下となるように設定され得る。被着体(例えば、オレフィン系ゴム材料等のような低極性材料からなる被着体)に対する初期接着性の観点から、Tgが−30℃以下であることが好ましく、−35℃以下(例えば−40℃以下)であることがより好ましい。また、粘着剤の凝集性の観点から、Tgが−65℃以上(例えば−60℃以上)であることが好ましい。ここに開示される技術の好ましい一態様において、重合反応物(a)の構成モノマー成分の組成に基づくTgは、例えば−60℃〜−35℃(典型的には−60℃〜−40℃)であり得る。
【0156】
重合反応物(a)としてモノマー混合物の部分重合物を含む粘着剤組成物は、上記重合反応物(a)および必要に応じて用いられる開始剤(モノマー混合物の部分重合に用いられた開始剤であってもよく、その後に追加された開始剤であってもよく、それらの両方であってもよい。)の他に、必要に応じて架橋剤等の硬化剤を含有してもよい。硬化剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0157】
(多官能モノマーを含む重合反応物(a))
上記硬化剤の一好適例として、モノマーB2として例示したような多官能モノマーが挙げられる。このような多官能モノマーは、架橋剤としても把握され得る。多官能モノマーは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。反応性等の観点から、通常は、アクリレート型の多官能モノマー(すなわち、1分子内に2以上のアクリロイル基を有する多官能モノマー)がより好ましい。
【0158】
なお、重合反応物(a)を得るためのモノマー混合物としては、多官能モノマーを実質的に含有しない組成のモノマー混合物(換言すれば、1分子中に含まれる重合性官能基の数が1であるモノマーからなるモノマー混合物)を好ましく使用し得る。ここで、モノマー混合物が多官能モノマーを実質的に含有しないとは、該モノマー混合物に占める多官能モノマーの割合が0.05質量%以下(典型的には0.01質量%以下)であることをいう。かかる組成のモノマー混合物によると、重合反応物(a)に含まれる重合物の未反応モノマーへの溶解性を高めることができる。また、重合転化率の割に重合反応物(a)(ポリマーシロップ)の粘度を低くすることができるので好ましい。好ましい一態様に係る粘着剤組成物は、例えば、多官能モノマーを実質的に含有しないモノマー混合物の部分重合物である重合反応物(a)と、該重合反応物(a)に添加(後添加)された多官能モノマーとを含み得る。
【0159】
上記硬化剤の他の好適例として架橋剤が挙げられる。架橋剤としては、アクリル系粘着剤の分野において公知ないし慣用の架橋剤を使用することができる。例えば、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、シリコーン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、シラン系架橋剤、アルキルエーテル化メラミン系架橋剤、金属キレート系架橋剤等を挙げることができる。あるいは、かかる架橋剤を実質的に含まない粘着剤組成物であってもよい。
【0160】
重合反応物(a)としてモノマー混合物の部分重合物を含む粘着剤組成物は、必要に応じて、上記重合反応物(a)とは別に重合された重合反応物(以下、第2重合反応物ともいう。)を含んでもよい。上記第2重合反応物は、アクリル系粘着剤層の全構成モノマー成分のうち、上記重合反応物(a)の構成モノマー成分とは別の一部に相当する構成モノマー成分からなる部分重合物または完全重合物であり得る。ここに開示される粘着剤組成物は、上記第2重合反応物として、例えば、上記重合反応物(a)中に含まれる重合物よりも低Mwの重合物(好ましくは、その構成モノマー成分が50質量%を超える割合でアクリル系モノマーを含む組成の重合物)を含有し得る。かかる組成の粘着剤組成物は、活性エネルギー線(典型的には紫外線)の照射等により硬化して、オレフィン系ゴム材料の表面のような低極性表面に対する粘着性に優れた粘着剤を形成し得る。
【0161】
上記第2重合反応物は、上記粘着剤において、被着体(例えばオレフィン系ゴム材料のような低極性材料からなる被着体)に対する粘着性および粘着剤の凝集性の少なくとも一方を改善する粘着付与剤として機能し得る。上記第2重合反応物は、この粘着剤組成物を活性エネルギー線照射(例えば紫外線照射)により硬化させる場合に、一般的なアクリル系粘着剤用の粘着付与樹脂(典型的には、ロジン系、テルペン系等の粘着付与樹脂)に比べて硬化阻害(例えば、上記粘着剤組成物中に含まれる未反応モノマーの重合阻害)を起こしにくいので好ましい。したがって、ここに開示される粘着剤組成物が活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物として構成されている場合、該粘着剤組成物は、ロジン系、テルペン系等の一般的な粘着付与樹脂の含有量が0〜10質量%(より好ましくは0〜5質量%、さらに好ましくは0〜2質量%)であることが好ましい。ここで、含有量が0質量%であるとは、粘着付与樹脂を含有しないことを意味する。
【0162】
(アクリル系オリゴマー(b))
好ましい一態様に係る粘着剤組成物は、上記第2重合反応物として、Mwが2×10
4以下(典型的には0.1×10
4〜2×10
4)のアクリル系オリゴマー(b)を含み得る。このアクリル系オリゴマー(b)は、その構成モノマー成分としてアクリル系モノマー(すなわち、1分子中に少なくとも1つの(メタ)アクリロイル基を有するモノマー)を含む重合物である。したがって、アクリル系オリゴマー(b)は、構成モノマー成分の一部または全部として、1分子中に少なくとも1つのメタクリロイル基を有するモノマーを含んでいてもよい。アクリル系オリゴマー(b)の構成モノマー成分の占めるアクリル系モノマーの割合は、典型的には50質量%超であり、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上である。好ましい一態様において、アクリル系モノマーの割合が80質量%以上であってもよく、90質量%以上であってもよい。実質的にアクリル系モノマーのみからなる組成のアクリル系オリゴマー(b)であってもよい。
【0163】
特に限定するものではないが、アクリル系オリゴマー(b)の構成モノマー成分の組成(すなわち重合組成)は、該アクリル系オリゴマー(b)のTgが10℃以上150℃以下となるように設定され得る。ここで、アクリル系オリゴマー(b)のTgとは、該アクリル系オリゴマー(b)の構成モノマー成分の組成に基づいて、全構成モノマー成分の組成に基づくTgと同様にして求められる値をいう。アクリル系オリゴマー(b)のTgは、被着体表面(例えば、オレフィン系ゴム材料のような低極性材料からなる表面)に対する初期接着性の観点から、120℃以下であることが好ましく、100℃以下であることがより好ましい。また、アクリル系オリゴマー(b)のTgは、粘着剤の凝集性の観点から、15℃以上であることが好ましく、20℃以上(より好ましくは25℃以上)であることがより好ましい。ここに開示される技術の好ましい一態様において、アクリル系オリゴマー(b)Tgは、例えば35℃〜80℃であり得る。
【0164】
アクリル系オリゴマー(b)は、典型的には、その構成モノマー成分を重合させることにより作製され得る。重合方法や重合態様は特に限定されず、従来公知の各種重合方法(例えば、溶液重合、エマルション重合、塊状重合、光重合、放射線重合等)を、適宜の態様で採用することができる。必要に応じて使用し得る開始剤の種類や使用量についても概ね上述のとおりであるので、ここでは繰り返さない。
【0165】
アクリル系オリゴマー(b)のMwは、オレフィン系ゴム材料の表面等の低極性表面に対する粘着性等の観点から、1.5×10
4以下が好ましく、1×10
4以下がより好ましく、0.8×10
4以下(例えば0.6×10
4以下)がさらに好ましい。また、粘着剤の凝集性等の観点から、アクリル系オリゴマー(b)のMwは、800以上が好ましく、0.1×10
4以上(例えば0.2×10
4以上)がより好ましい。なお、アクリル系オリゴマー(b)のMwは、重合反応物(a)に含まれる重合物のMwと同様、GPCにより測定することができる。
【0166】
アクリル系オリゴマー(b)の分子量を調整するために、その重合中に連鎖移動剤を用いることができる。使用し得る連鎖移動剤の例としては、メルカプト基を有する化合物、チオグリコール酸およびその誘導体等が挙げられる。メルカプト基を有する化合物の具体例には、オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン等が含まれる。チオグリコール酸およびその誘導体の具体例には、チオグリコール酸の他、チオグリコール酸エチル、チオグリコール酸プロピル、チオグリコール酸ブチル、チオグリコール酸t−ブチル、チオグリコール酸2−エチルヘキシル、チオグリコール酸オクチル、チオグリコール酸デシル、チオグリコール酸ドデシル、エチレングリコールのチオグリコール酸エステル、ネオペンチルグリコールのチオグリコール酸エステル、ペンタエリスリトールのチオグリコール酸エステル等のチオグリコール酸エステルが挙げられる。なかでも好ましい連鎖移動剤の例として、チオグリコール酸およびn−ドデシルメルカプタンが挙げられる。
【0167】
連鎖移動剤の使用量は特に制限されず、目的とするアクリル系オリゴマー(b)のMw等に応じて適宜調節することができる。通常は、アクリル系オリゴマー(b)の構成モノマー成分100質量部に対して、連鎖移動剤を0.1〜20質量部(好ましくは0.2〜15質量部、さらに好ましくは0.3〜10質量部)程度用いることが好ましい。
【0168】
重合反応物(a)とアクリル系オリゴマー(b)とを含む粘着剤組成物において、アクリル系オリゴマー(b)の含有量は、重合反応物(a)100質量部に対して、例えば1質量部以上とすることができ、通常は3質量部以上とすることが適当である。アクリル系オリゴマー(b)の効果をよりよく発揮させる観点からは、重合反応物(a)100質量部に対するアクリル系オリゴマー(b)の含有量は、5質量部以上とすることが好ましく、10質量部以上(例えば15質量部以上)とすることがより好ましい。また、粘着剤組成物の硬化性等の観点から、重合反応物(a)100質量部に対するアクリル系オリゴマー(b)の含有量は、150質量部以下とすることが適当であり、100質量部以下(例えば70質量部以下)とすることが好ましい。オレフィン系ゴム材料の表面等の低極性表面に対する粘着性等の観点から、上記含有量を50質量部以下とすることがより好ましく、40質量部以下(例えば30質量部以下)とすることがさらに好ましい。
【0169】
(モノマーAの含有割合)
ここに開示される技術は、上記粘着剤組成物が重合反応物(a)およびアクリル系オリゴマー(b)を含み、それらの一方または両方が構成モノマー成分にアミノ基含有(メタ)アクリレート(モノマーA)を含む態様で好ましく実施され得る。
【0170】
このように重合反応物(a)およびアクリル系オリゴマー(b)を含む粘着剤組成物において、重合反応物(a)の構成モノマー成分にモノマーAが含まれる場合、その含有割合は、該構成モノマー成分の例えば0.1質量%以上(典型的には0.2質量%以上)とすることができる。モノマーAの効果をよりよく発揮させる観点から、上記含有割合は、0.2質量%超が適当であり、0.5質量%以上が好ましく、0.7質量%以上がより好ましく、1.0質量%以上(例えば1.2質量%以上)がさらに好ましい。オレフィン系ゴム材料等の低極性材料に対する粘着性をさらに向上させる観点から、上記含有割合を1.5質量%以上(典型的には1.5質量%超)としてもよく、2.0質量%以上としてもよく、さらに3.0質量%以上としてもよい。重合反応性や初期粘着性等の観点から、重合反応物(a)の構成モノマー成分におけるモノマーAの含有割合は、通常、25質量%以下が適当であり、典型的には20質量%以下、好ましくは15質量%以下、より好ましくは12質量%以下(例えば10質量%以下)であり得る。
【0171】
アクリル系オリゴマー(b)がその構成モノマー成分にモノマーAを含む場合、その含有割合は、該構成モノマー成分の0.5質量%以上が適当であり、1質量%以上(例えば2質量%以上、典型的には3質量%以上)が好ましい。オレフィン系ゴム材料等の低極性材料の表面に対する粘着性をさらに向上させる観点から、上記含有割合は、10質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましく、20質量%以上(例えば25質量%以上)がさらに好ましい。アクリル系オリゴマー(b)の構成モノマー成分におけるモノマーAの含有割合の上限は特に制限されない。例えば、アクリル系オリゴマー(b)がモノマーAの単独重合体であってもよい。重合反応性や初期粘着性等の観点から、アクリル系オリゴマー(b)の構成モノマー成分におけるモノマーAの含有割合は、90質量%以下が適当であり、典型的には80質量%以下、好ましくは70質量%以下、より好ましくは65質量%以下(例えば60質量%以下)であり得る。
【0172】
好ましい一態様に係る粘着剤組成物は、重合反応物(a)とアクリル系オリゴマー(b)との両方がその構成モノマー成分にモノマーAを含む。かかる態様の粘着剤組成物において、アクリル系オリゴマー(b)の構成モノマー成分として含まれるモノマーAの質量A
Oの、重合反応物(a)の構成モノマー成分として含まれるモノマーAの質量A
Sに対する比(A
O/A
S)は、特に制限されず、例えば0.1〜25(典型的には0.2〜20)程度であり得る。オレフィン系ゴム材料の表面等の低極性表面に対する粘着性の観点から、上記比(A
O/A
S)は、0.5以上であることが適当であり、0.7以上が好ましく、1.0以上がより好ましく、1.2以上(例えば1.5以上)がさらに好ましい。また、上記比(A
O/A
S)は、通常、15以下とすることが適当であり、例えば10以下(典型的には7以下)とすることができる。
【0173】
(重合反応物(a)の組成)
ここに開示される技術は、重合反応物(a)の構成モノマー成分が、モノマーB1として鎖状アルキル(メタ)アクリレートを含む態様で好ましく実施され得る。その割合は、重合反応物(a)の構成モノマー成分の30質量%以上とすることができ、通常は40質量%以上が適当であり、50質量%以上が好ましく、60質量%以上(典型的には60質量%超)がより好ましい。重合反応物(a)の構成モノマー成分にモノマーAが含まれる場合において、該構成モノマー成分に含まれるモノマーA以外の成分のうち鎖状アルキル(メタ)アクリレートの占める割合は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上(例えば70質量%以上)であり得る。モノマーA以外の成分の全部が鎖状アルキル(メタ)アクリレートであってもよい。すなわち、重合反応物(a)の構成モノマー成分は、鎖状アルキル(メタ)アクリレートおよびモノマーAからなる組成であり得る。
【0174】
ここに開示される技術は、重合反応物(a)の構成モノマー成分が、モノマーB1としてシクロアルキル(メタ)アクリレートを含む態様で好ましく実施され得る。かかる態様によると、オレフィン系ゴム材料等の低極性材料の表面に対する粘着性と粘着剤の凝集性とがより高レベルで両立され得る。シクロアルキル(メタ)アクリレートの含有割合は、重合反応物(a)の構成モノマー成分の例えば1質量%以上とすることができ、通常は3質量%以上が適当であり、5質量%以上が好ましく、10質量%以上(例えば15質量%以上)がより好ましい。また、上記含有割合は、重合反応性等の観点から、通常は50質量%未満とすることが適当であり、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下(例えば30質量%以下、典型的には25質量%以下)であり得る。
【0175】
好ましい一態様において、重合反応物(a)の構成モノマー成分は、鎖状アルキル(メタ)アクリレートおよびシクロアルキル(メタ)アクリレートを含む。鎖状アルキル(メタ)アクリレートとシクロアルキル(メタ)アクリレートとの質量比(鎖状アルキル(メタ)アクリレート/シクロアルキル(メタ)アクリレート)は、例えば1〜20とすることができ、通常は2〜10とすることが好ましく、3〜5とすることがより好ましい。
重合反応物(a)の構成モノマー成分にモノマーAが含まれる場合において、該構成モノマー成分に占めるモノマーA以外の成分のうち鎖状アルキル(メタ)アクリレートとシクロアルキル(メタ)アクリレートとの合計量の占める割合は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは85質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上(例えば95質量%以上)であり得る。ここに開示される技術は、重合反応物(a)の構成モノマー成分が鎖状アルキル(メタ)アクリレート、シクロアルキル(メタ)アクリレートおよびモノマーAからなる態様で好ましく実施され得る。
【0176】
重合反応物(a)の構成モノマー成分の好適な具体例として、2EHAとCHAとDMAEMとを含む組成、2EHAとBAとCHAとDMAEMとを含む組成、BAとCHAとDMAEMとを含む組成、2EHAとCHAとDMAEAとを含む組成、2EHAとBAとCHAとDMAEAとを含む組成、BAとCHAとDMAEAとを含む組成、2EHAとCHMAとDMAEMとを含む組成、2EHAとBAとCHMAとDMAEMとを含む組成、BAとCHMAとDMAEMとを含む組成、2EHAとCHMAとDMAEAとを含む組成、2EHAとBAとCHMAとDMAEAとを含む組成、BAとCHMAとDMAEAとを含む組成、等が挙げられる。なかでも、少なくともCHAを含む組成が好ましい。
【0177】
(アクリル系オリゴマー(b)の組成)
ここに開示される技術は、アクリル系オリゴマー(b)が、モノマーB1としてシクロアルキル(メタ)アクリレートを含む態様で好ましく実施され得る。その含有割合は、オレフィン系ゴム材料等の低極性材料の表面に対する粘着性および粘着剤の凝集性の観点から、アクリル系オリゴマー(b)の構成モノマー成分の例えば5質量%以上とすることができ、通常は10質量%以上が適当であり、20質量%以上が好ましく、30質量%以上(例えば40質量%以上)がより好ましい。
アクリル系オリゴマー(b)の構成モノマー成分にモノマーAが含まれる場合において、該構成モノマー成分に含まれるモノマーA以外の成分のうちシクロアルキル(メタ)アクリレートの占める割合は、70質量%以上が適当であり、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上(例えば95質量%以上、典型的には97質量%以上)であり得る。ここに開示される技術は、アクリル系オリゴマー(b)の構成モノマー成分がシクロアルキル(メタ)アクリレートおよびモノマーAからなる態様で好ましく実施され得る。
【0178】
シクロヘキシル(メタ)アクリレートとしては、上述のCHA、CHMA、IBXA、IBXMA等を好ましく使用し得る。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
アクリル系オリゴマー(b)の好適な具体例として、CHMAとDMAEMとの共重合体、CHMAとIBXMAとDMAEMとの共重合体、CHMAとIBXAとDMAEMとの共重合体、CHAとDMAEMとの共重合体、CHAとIBXMAとDMAEMとの共重合体、CHAとIBXAとDMAEMとの共重合体、CHMAとDMAEAとの共重合体、CHMAとIBXMAとDMAEAとの共重合体、CHMAとIBXAとDMAEAとの共重合体、CHAとDMAEAとの共重合体、CHAとIBXMAとDMAEAとの共重合体、CHAとIBXAとDMAEAとの共重合体、等が挙げられる。なかでも、少なくともCHMAを含む共重合体が好ましい。
【0179】
(紫外線照射条件)
好ましい一態様において、粘着剤組成物から粘着剤を形成する際の光重合は、紫外線照射により行うことができる。紫外線照射に用いられる紫外線ランプとしては、波長300〜400nm領域にスペクトル分布をもつものが好適に用いられる。例えば、ケミカルランプ、ブラックライト(例えば、東芝ライテック社製のブラックライト)、メタルハライドランプ等を光源として用いることができる。特に、波長300〜400nmにおける照度が1〜50mW/cm
2となるように紫外線を照射することが好ましい。紫外線の照度を50mW/cm
2以下(典型的には40mW/cm
2以下、例えば30mW/cm
2以下)とすることは、より良好な粘着特性を得る観点から有利である。紫外線の照度を1mW/cm
2以上(より好ましくは2mW/cm
2以上、例えば3mW/cm
2以上)とすることは、生産性の観点から有利である。上記紫外線の照度は、ピーク感度波長約350nmの工業用UVチェッカー(トプコン社製、商品名「UVR−T1」、受光部型式UD−T36)を用いて測定することができる。
【0180】
[重合反応物(a)が完全重合物である態様]
ここに開示される技術は、また、上記重合反応物(a)が重合転化率95質量%超(典型的には99質量%超)の完全重合物である態様でも好ましく実施され得る。このような重合反応物(a)を含む粘着剤組成物は、未反応モノマーを実質的に含まないことが好ましい。例えば、未反応モノマーの含有割合が1質量%未満、より好ましくは0.5質量%未満であることが好ましい。重合反応物(a)が完全重合物である場合、そのMwは、20×10
4以上であることが好ましく、より好ましくは30×10
4以上であり、例えば40×10
4以上であり得る。重合反応物(a)のMwの上限は特に限定されないが、粘着剤組成物の調製容易性や塗工性等の観点から、通常は重合反応物(a)のMwが200×10
4以下であることが好ましく、150×10
4以下であることがより好ましい。
かかる態様は、例えば、溶剤型粘着剤組成物、水分散型粘着剤組成物(典型的にはエマルション状の粘着剤組成物)等のように、粘着成分が溶媒で適度な粘度に希釈(溶解または分散)された形態の粘着剤組成物に好ましく適用することができる。かかる形態の粘着剤組成物は、比較的高分子量の完全重合物を含むことにより、該組成物を乾燥させる等の簡便な硬化処理により高性能の粘着剤層を形成することができる。好ましい一態様において、重合反応物(a)の構成モノマー成分は、アクリル系粘着剤層に含まれる全構成モノマー成分と実質的に同じ組成であり得る。
【0181】
溶剤型の粘着剤組成物は、例えば、重合反応物(a)の構成モノマー成分に対応する組成のモノマー混合物を溶液重合に供することによって容易に調製することができる。重合溶媒としては、酢酸エチル、トルエン、ヘキサン、これらの混合溶媒等の、アクリル系モノマーの溶液重合において公知ないし慣用の有機溶媒を用いることができる。溶液重合の態様は特に限定されず、従来公知の態様を適宜採用することができる。必要に応じて使用し得る開始剤の種類や使用量についても概ね上述のとおりであるので、ここでは繰り返さない。また、溶液重合以外の重合方法によって得られた重合反応物を適当な有機溶媒に溶解させることによっても、溶剤型の粘着剤組成物を調製することができる。生産性等の観点から、溶液重合による調製が好ましい。
【0182】
エマルション状の粘着剤組成物は、例えば、重合反応物(a)の構成モノマー成分に対応する組成のモノマー混合物をエマルション重合に供することによって容易に調製することができる。エマルション重合の態様は特に限定されず、従来公知の態様を適宜採用することができる。必要に応じて使用し得る開始剤の種類や使用量についても概ね上述のとおりであるので、ここでは繰り返さない。あるいは、エマルション重合以外の重合方法によって得られた重合反応物を水性溶媒(典型的には水)に、典型的には適当な乳化剤の存在下で乳化させることによっても、エマルション状の粘着剤組成物を調製することができる。生産性等の観点から、エマルション重合による調製が好ましい。
【0183】
粘着剤組成物(典型的には、溶剤型または水分散型の粘着剤組成物)には、重合反応物(a)の他に、必要に応じて、上述のような架橋剤を含有させることができる。架橋剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。特に好ましい架橋剤として、イソシアネート系架橋剤およびエポキシ系架橋剤が例示される。
【0184】
イソシアネート系架橋剤としては、各種の多官能イソシアネート化合物を用いることができる。具体例としては、1,2−エチレンジイソシアネート、1,4−ブチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等の低級脂肪族ポリイソシアネート類;シクロペンチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加キシレンジイソシアネート等の脂環族ポリイソシアネート類;2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート類等が挙げられる。これらは、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、上記イソシアネート系架橋剤として、例えば、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート付加物(日本ポリウレタン工業社製、商品名「コロネートL」)、トリメチロールプロパン/ヘキサメチレンジイソシアネート付加物(日本ポリウレタン工業社製、商品名「コロネートHL」)、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(日本ポリウレタン工業社製、商品名「コロネートHX」)、トリメチロールプロパン/キシリレンジイソシアネート付加物(三井化学社製、商品名「タケネートD−110N」)等の市販品を用いることもできる。
【0185】
エポキシ系架橋剤としては、各種の多官能エポキシ化合物を用いることができる。具体例としては、例えば、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、ジグリシジルアニリン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビタンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、o−フタル酸ジグリシジルエステル、トリグリシジル−トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、レゾルシンジグリシジルエーテル、ビスフェノール−S−ジグリシジルエーテルの他、分子内にエポキシ基を2つ以上有するエポキシ系樹脂等が挙げられ、これらは、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、上記エポキシ系架橋剤として、例えば、三菱ガス化学社製の商品名「テトラッドC」(1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン)、同社製の商品名「テトラッドX」(N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン)等の市販品を用いることもできる。
【0186】
架橋剤の使用量は、通常、アクリル系粘着剤層に含まれる全構成モノマー成分100質量部に対して凡そ0.01〜15質量部とすることが適当であり、凡そ0.1〜10質量部(例えば凡そ0.2〜2質量部)程度とすることが好ましい。かかる使用量で架橋剤を含む粘着剤組成物は、オレフィン系ゴム材料等の低極性材料に対する粘着性と凝集性とのバランスの良い粘着剤を形成しやすいので好ましい。
【0187】
粘着剤組成物(典型的には、溶剤型または水分散型の粘着剤組成物)には、必要に応じて粘着付与剤を含有させることができる。粘着付与剤としては、例えば、ロジン系、テルペン系、炭化水素系、エポキシ系、ポリアミド系、フェノール系、ケトン系等の、アクリル系粘着剤の分野において公知ないし慣用の粘着付与樹脂を採用することができる。このような粘着付与樹脂は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。粘着付与樹脂の使用量は特に制限されないが、オレフィン系ゴム材料等の低極性材料に対する粘着性と粘着剤の凝集性とのバランスを考慮して、通常は、アクリル系粘着剤層に含まれる全構成モノマー成分100質量部に対して凡そ10〜100質量部(より好ましくは15〜80質量部、さらに好ましくは20〜60質量部)が適当である。
あるいは、粘着付与剤として上述したアクリル系オリゴマー(b)を用いてもよく、上記のような粘着付与樹脂とアクリル系オリゴマー(b)とを併用してもよい。
【0188】
<添加剤>
ここに開示される技術における粘着剤組成物は、本発明の効果が著しく妨げられない範囲で、可塑剤、軟化剤、充填材、着色剤(顔料、染料等)、酸化防止剤、レベリング剤、安定剤、防腐剤等の、アクリル系粘着剤に用いられ得る公知の添加剤を必要に応じてさらに含有してもよい。
例えば、粘着剤組成物を光重合法により硬化させて粘着剤層を形成する場合、該粘着剤層を着色させるために、光重合を疎外しない程度の顔料(着色顔料)を着色剤として使用することができる。粘着剤層の着色として黒色が望まれる場合には、例えば、着色剤としてカーボンブラックを好ましく用いることができる。カーボンブラックの使用量は、着色の度合いや光重合反応性等を考慮して、例えば、目的とする粘着剤層100質量部に対して0.15質量部以下(例えば0.001〜0.15質量部)、好ましくは0.01〜0.1質量部の範囲から選択することが望ましい。
【0189】
<粘着剤のゲル分率>
ここに開示されるいずれかの粘着シートに具備されるアクリル系粘着剤層は、該粘着剤層を構成する粘着剤のゲル分率が、質量基準で、例えば凡そ10%以上であることが好ましい。かかるゲル分率が実現されるように、該粘着剤層の形成に用いられる粘着剤組成物の構成モノマー成分の組成、該構成モノマー成分の重合転化率、粘着剤組成物中に含まれる重合物のMw、多官能モノマーの使用の有無および使用量、架橋剤の使用の有無および使用量、粘着剤層の形成条件(粘着剤組成物の硬化条件、例えば光照射条件や乾燥条件)等の条件を適宜設定するとよい。凝集性の観点から、上記ゲル分率は、15%以上が適当であり、20%以上が好ましく、25%以上(例えば30%以上)がより好ましい。また、粘着性(例えば、オレフィン系ゴム材料等の低極性材料に対する粘着性)の観点から、上記ゲル分率は、90%以下が適当であり、85%以下が好ましく、80%以下(例えば75%以下)がより好ましい。好ましい一態様において、上記ゲル分率は、70%以下とすることができ、60%以下が好ましく、50%以下(より好ましくは45%以下、例えば40%以下)がさらに好ましい。
【0190】
上記ゲル分率は、以下の方法により測定することができる。すなわち、測定サンプル約0.1gを、平均孔径0.2μmのテトラフルオロエチレン樹脂製多孔質シートで巾着状に包み、口を凧糸で縛る。テトラフルオロエチレン樹脂製多孔質シートと凧糸の合計質量Wa(mg)は予め計測しておく。そして、包みの質量(粘着剤と包みの合計質量)Wb(mg)を計測する。この包みを容量50mLのスクリュー管に入れ(1個の包みにつきスクリュー管1本を使用する。)、このスクリュー管に酢酸エチルを満たす。これを室温(典型的には23℃)で7日間静置した後、上記包みを取り出して120℃で2時間乾燥させ、乾燥後における包みの質量Wc(mg)を計測する。該粘着剤のゲル分率(%)は、上記Wa,WbおよびWcを以下の式:
ゲル分率[%]=(Wc−Wa)/(Wb−Wa)×100
に代入することにより求められる。上記テトラフルオロエチレン樹脂製多孔質シートとしては、日東電工(株)製の商品名「ニトフロン(登録商標)NTF1122」(平均孔径0.2μm、気孔率75%、厚さ85μm)またはその相当品を使用することができる。
【0191】
<充填材>
ここに開示される粘着シートは、充填材を含有する粘着剤層を含んでいてもよい。粘着剤層に充填材を含ませることにより、該粘着剤層の凝集性が向上し得る。また、充填材の使用により、後述する粘着シートの10%圧縮硬さや破断強度を調節することができる。充填材を含有する粘着剤層は、粘着面を構成する粘着剤層であってもよく、粘着面を構成しない粘着剤層であってもよい。また、充填材を含有する粘着剤層は、気泡含有層であってもよく、非気泡含有層であってもよい。
【0192】
充填材としては、各種の粒子状物質を用いることができる。かかる粒子状物質の構成材料は、例えば、銅、ニッケル、アルミニウム、クロム、鉄、ステンレス等の金属;アルミナ、ジルコニア等の金属酸化物;炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化窒素等の炭化物;窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素等の窒化物;炭化カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、ガラス、シリカ等の無機材料;ポリスチレン、アクリル樹脂(例えばポリメチルメタクリレート)、フェノール樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、尿素樹脂、シリコーン樹脂、ナイロン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリイミド、シリコーン、塩化ビニリデン等のポリマー;等であり得る。あるいは、火山シラス、砂等の天然原料粒子を用いてもよい。このような粒子状物質の外形は特に制限されず、例えば、球状、フレーク状、不定形状等であり得る。粒子状物質の粒子構造は特に制限されず、例えば、緻密構造、多孔質構造、中空構造等であり得る。
【0193】
好ましい一態様において、上記充填材として、中空構造の粒子状物質、すなわち中空粒子を使用することができる。中空粒子を含有する粘着剤層が光硬化型(例えば紫外線硬化型)の粘着剤組成物から形成される層である場合には、該粘着剤組成物の光硬化性(重合反応性)の観点から、無機材料からなる中空粒子を採用することが好ましい。そのような中空粒子の例として、中空ガラスバルーン等のガラス製のバルーン;中空アルミナバルーン等の金属化合物製の中空バルーン;中空セラミックバルーン等の磁器製の中空バルーン等が挙げられる。
【0194】
中空ガラスバルーンとしては、例えば富士シリシア化学社製の商品名「ガラスマイクロバルーン」、東海工業社製の商品名「セルスターZ−20」、「セルスターZ−27」、「セルスターCZ−31T」、「セルスターZ−36」、「セルスターZ−39」、「セルスターZ−39」、「セルスターT−36」、「セルスターPZ−6000」、ファインバルーン社製の商品名「サイラックス・ファインバルーン」、ポッターズ・バロッティーニ社製の商品名「Q−CEL(商標)5020」、「Q−CEL(商標)7014」、商品名「Sphericel(商標)110P8」、「Sphericel(商標)25P45」、「Sphericel(商標)34P30」、「Sphericel(商標)60P18」、昭和化学工業社製の商品名「スーパーバルーンBA−15」、「スーパーバルーン732C」等の市販品を用いることができる。
【0195】
使用する中空粒子の平均粒子径は特に制限されない。例えば、1μm〜500μm、好ましくは5μm〜400μm、より好ましくは10μm〜300μm、さらに好ましくは10μm〜200μm(例えば10μm〜150μm)の範囲から選択することができる。中空粒子の平均粒子径は、通常、当該中空粒子を含有する層の厚さの50%以下であることが適当であり、30%以下(例えば10%以下)であることが好ましい。
中空粒子の比重は特に制限されないが、粘着剤組成物中における均一分散性や機械的強度、紫外線透過性等を考慮して、例えば0.1〜1.8g/cm
3、好ましくは0.1〜1.5g/cm
3、さらに好ましくは0.1〜0.5g/cm
3(例えば0.2〜0.5g/cm
3)の範囲から選択することができる。中空粒子の使用量は特に限定されず、例えば、該中空粒子を含有する粘着剤層の体積の10〜50体積%程度とすることができる。
【0196】
このような充填材(例えば中空粒子)は、非粘着層を含む構成の粘着シートにおいて、該非粘着層に含有されていてもよい。非粘着層における好ましい充填材の種類、構造、平均粒子径、比重等は、該充填材が粘着層に含まれる場合と同様である。粘着層および非粘着層の両方に充填材が含有されていてもよい。
【0197】
ここに開示される粘着シートは、例えば
図4に示す中間層223のように粘着面を構成しない気泡含有層が充填材を含有し、
図4に示す第1粘着層221および第2粘着層222のように粘着面を構成する非気泡含有層は充填材を含有しない態様で好ましく実施され得る。このような構成の粘着シートは、粘着性と凝集性とを高レベルで両立するものとなり得る。
【0198】
<粘着シートの厚さ>
ここに開示される粘着シートにおいて、その粘着面を構成するアクリル系粘着剤層の厚さは、例えば1μm以上とすることができる。粘着性の観点から、上記厚さは、5μm以上が適当であり、10μm以上が好ましく、20μm以上(例えば30μm以上、典型的には35μm以上)がより好ましい。好ましい一態様において、粘着面を構成するアクリル系粘着剤層の厚さを40μm以上(典型的には50μm以上)とすることができる。粘着面を構成するアクリル系粘着剤層の厚さが70μm以上(例えば90μm以上)であってもよい。これらの厚さは、例えばアクリル系粘着剤層により構成された第1粘着面と、他の粘着剤層により構成された第2粘着面を有する粘着シートにおいて、上記第2粘着面を構成する粘着剤層の厚さにも好ましく適用され得る。
なお、粘着面を構成するアクリル系粘着剤層に加えて、粘着面を構成しない粘着剤層(すなわち、粘着シートの表面に露出しない粘着剤層)を含む態様の粘着シートにおいて、該粘着剤層の厚さの下限は特に限定されず、例えば0.05μm以上(典型的には0.1μm以上)であり得る。
【0199】
粘着面を構成する粘着剤層の厚さの上限は特に制限されない。厚さの上限の好適値は、該粘着剤層を含む粘着シート全体の構成等によっても異なり得る。
例えば、アクリル系粘着剤層が非気泡含有粘着層である場合、その厚さは、例えば約1000μm以下とすることができる。凝集性等の観点から、通常は、上記厚さを700μm以下とすることが適当であり、600μm以下(例えば500μm未満)とすることが好ましい。好ましい一態様において、上記厚さは、250μm以下(より好ましくは200μm以下、典型的には120μm以下、例えば70μm以下)であり得る。これらの厚さは、粘着面を構成しない非気泡含有粘着層や、粘着面を構成するアクリル系以外の非気泡含有粘着層にも好ましく適用され得る。
粘着面を構成するアクリル系粘着剤層が気泡含有粘着層である場合、その厚さは、例えば約10mm以下とすることができる。粘着剤層の形成容易性(例えば、光硬化性)や凝集性の観点から、上記厚さは、通常、5mm以下が適当であり、2mm以下(例えば1mm以下)が好ましい。これらの厚さは、粘着面を構成しない気泡含有粘着層や、粘着面を構成するアクリル系以外の気泡含有粘着層にも好ましく適用され得る。
【0200】
ここに開示される粘着シートが非気泡含有非粘着層(例えばプラスチックフィルム)を含む場合、その厚さは特に限定されず、例えば0.001μm以上(典型的には0.01μm以上、例えば0.1μm以上)であり得る。非気泡含有非粘着層の厚さの上限は特に限定されないが、粘着シートの柔軟性等の観点から、通常は500μm未満が適当であり、250μm未満が好ましく、200μm未満(例えば100μm未満)がより好ましい。
ここに開示される粘着シートが気泡含有非粘着層(例えば、ポリエチレン系発泡シート等のポリオレフィン系発泡シート)を含む場合、その厚さは特に限定されない。好ましい一態様において、上記気泡含有非粘着層の厚さは、10μm以上約10mm以下(より好ましくは20μm以上5mm未満、典型的には50μm以上2mm未満、例えば100μm以上1mm未満)であり得る。
【0201】
ここに開示される粘着シート全体の厚さ(剥離ライナーの厚さは含まない。)は特に限定されない。粘着シート全体の好適な厚さは、該粘着シートの構成や使用目的、使用態様等によっても異なり得る。
ここで、粘着シート全体の厚さとは、
図2に示すような両面粘着シートでは第1粘着面21Aから第2粘着面22Aまでの間の厚さを指し、
図3に示すような基材付き片面粘着シートでは第1粘着面21Aから基材31の背面(第2の表面31A)までの間の厚さを指す。すなわち、ここでいう粘着シート全体の厚さには、剥離ライナーの厚さは含まれない。
【0202】
気泡含有層を含まない構成の粘着シートの場合、その厚さは、通常、5μm以上が適当であり、粘着性の観点から10μm以上が好ましく、20μm以上(例えば30μm以上、典型的には35μm以上)がより好ましい。EPDMその他のオレフィン系ゴム材料に対する粘着性の観点から、上記厚さが50μm以上であることが好ましく、70μm以上であることがより好ましく、80μm以上(例えば90μm以上)であることがさらに好ましい。粘着シートの厚さは、例えば約1000μm以下とすることができ、凝集性等の観点から800μm以下が適当であり、700μm以下(例えば600μm未満)が好ましい。好ましい一態様において、上記厚さは、300μm以下(より好ましくは250μm以下、典型的には150μm以下、例えば100μm以下)であり得る。
【0203】
また、気泡含有層を含む構成の粘着シートの場合、その厚さは、例えば10μm以上とすることができ、通常は50μm以上(典型的には100μm以上)とすることが好ましい。クッション性等の観点からは、上記粘着シートの厚さは、300μm以上が適当であり、500μm以上が好ましく、700μm以上(例えば1000μm以上)がより好ましい。上記粘着シートの厚さは、例えば約15mm以下とすることができ、通常は約10mm以下が適当であり、7mm以下が好ましく、5mm以下(例えば3mm以下)がより好ましい。
【0204】
気泡含有層と非気泡含有層とを含む粘着シートにおいて、該粘着シート全体の厚さに占める気泡含有層の厚さの割合は特に限定されず、例えば10%以上とすることができる。粘着シートのクッション性や柔軟性の観点から、上記気泡含有層の厚さの割合は、好ましくは25%以上、より好ましくは50%以上、さらに好ましくは70%以上である。さらに高いクッション性等を得る観点から、粘着シート全体の厚さのうち気泡含有層の厚さの割合が80%以上であってもよく、85%以上であってもよく、90%以上であってもよい。なお、ここに開示される技術は、例えば
図5に示すように、粘着シートが気泡含有粘着層のみからなる態様でも好ましく実施され得る。この場合、粘着シート全体の厚さに占める気泡含有層の厚さの割合は100%となる。
【0205】
また、例えば
図4に示すように、粘着面を構成する粘着剤層221,222が中間層223に支持された構成の粘着シート20において、粘着シート全体の厚さのうち粘着面を構成する粘着剤層221,222の厚さの占める割合は、それぞれ、例えば0.1%以上とすることができる。粘着性等の観点から、通常は、上記厚さの割合を0.5%以上とすることが適当であり、1%以上とすることが好ましく、2%以上とすることがより好ましく、3%以上とすることがさらに好ましい。
ここに開示される粘着シートが非気泡含有非粘着層(例えばプラスチックフィルム)を含む場合、該粘着シート全体の厚さに占める非気泡含有非粘着層の厚さの割合は特に限定されないが、通常は20%以下とすることが適当である。より高い追従性を得る観点から、上記非気泡含有非粘着層の厚さの割合を10%以下とすることが好ましく、5%以下とすることがより好ましい。
【0206】
<粘着シートの特性>
[圧縮硬さ]
特に限定するものではないが、ここに開示される粘着シートが気泡含有層を含む構成である場合、その10%圧縮硬さが0.2Pa以下であることが好ましい。ここで粘着シートの10%圧縮硬さとは、測定温度25℃において、該粘着シートを平板で挟み込み、それを当初の厚さ(100%)に対して90%の厚さとなるまで圧縮したときの荷重をいう。粘着シート全体の厚さが25mmに満たない場合には、該粘着シートを厚さが25mm以上となる最少の枚数だけ積み重ねたものを上記平板で挟み込んで10%圧縮硬さを測定するものとする。
10%圧縮硬さを0.2Pa以下とすることにより、被着体の表面形状や変形に対する粘着シートの追従性が向上し、該粘着シートを被着体の表面によりよく密着させ得る。より高い追従性を得る観点から、粘着シートの10%圧縮硬さは、例えば0.1Pa以下とすることができ、0.07Pa以下であることが好ましく、0.05Pa以下であることがより好ましい。また、粘着シートの取扱性等の観点から、10%圧縮硬さは0.007Pa以上が適当であり、0.01Pa以上であることが好ましく、0.02Pa以上であることがより好ましい。
粘着シートの10%圧縮硬さは、JIS K6767に準拠して測定することができる。粘着シートの10%圧縮硬さは、例えば、気泡含有層の種類(組成、気泡含有率、厚さ等)、非気泡含有層の有無、粘着シート全体の厚さに占める気泡含有層の厚さの割合、充填材の使用の有無等により制御することができる。
【0207】
[破断強度]
特に限定するものではないが、ここに開示される粘着シートが気泡含有層を含む構成である場合、その破断強度は5Pa以下であることが好ましい。ここで粘着シートの破断強度とは、該粘着シートの長手方向(MD)に沿って幅10mmの短冊状の試験片を切り出し、JIS K7161に準拠して、測定温度25℃において、上記試験片を引張速度300mm/分、チャック間距離50mmの条件でMD方向に引っ張って破断したときの荷重をいう。破断強度を5Pa以下とすることにより、被着体の表面形状や変形に対する粘着シートの追従性が向上し、該粘着シートを被着体の表面によりよく密着させ得る。より高い追従性を得る観点から、粘着シートの破断強度は3Pa以下であることが好ましく、2.5Pa以下(例えば2Pa以下)であることがより好ましい。また、粘着シートの取扱性や凝集性等の観点から、破断強度は0.1Pa以上が適当であり、0.3Pa以上(例えば0.5Pa以上)であることが好ましい。粘着シートの破断強度は、例えば、気泡含有層の種類(組成、気泡含有率、厚さ等)、非気泡含有層の有無、粘着シート全体の厚さに占める気泡含有層の厚さの割合、充填材の使用の有無等により制御することができる。
【0208】
[凝集性]
ここに開示される粘着シートは、以下の保持力試験においてサンプルが落下するまでの時間(保持時間)が15分以上となる程度の凝集性を有することが好ましい。
(保持力試験)
測定対象の粘着シートを幅20mmの帯状に調製したものを測定サンプルとする。測定対象の粘着シートが両面粘着シートの形態である場合には、あらかじめ一方の粘着面を厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに貼り付けて裏打ちしておく。
被着体としてのステンレス鋼(SUS)板に上記サンプルの一端の粘着面を、幅20mm、長さ20mmの接着面積にて、5kgのローラを1方向に1回転がすことにより圧着する。これを上記標準環境下に24時間保持した後、JIS Z0237(2004)に準じて、上記SUS板を40℃の環境下に垂下し、上記サンプルの自由端に500gの荷重を付与する。その荷重が付与された状態で40℃の環境下に保持し、サンプルがSUS板から剥がれて落下するまでの時間を測定する。
測定は、各粘着シートにつき2つ以上の測定サンプルを用いて行い、それらの算術平均値を保持時間とする。
【0209】
上記保持力試験による保持時間が15分以上である粘着シートは、例えば両面粘着シートの形態で、各種の被着体を所望の箇所に接合する用途等に好適である。上記接合の信頼性等の観点から、上記保持時間が20分以上であることが好ましく、30分以上であることがより好ましい。
【0210】
<被着体>
ここに開示される粘着シートは、上述のように、EPDMに対する粘着性に優れた粘着面を有する。したがって、EPDMその他のオレフィン系ゴム表面やその他低極性材料の表面を含む、各種の材料からなる表面に対して良好な粘着性を示すものとなり得る。上記粘着面が貼り付けられる被着体の材質は特に制限されず、例えば、ステンレス鋼(SUS)、アルミニウム、亜鉛メッキ鋼板等の金属材料;ガラス、セラミックス等の無機材料;ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体(ABS)、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂材料;EPDMやオレフィン系熱可塑性エラストマー等のオレフィン系ゴム材料;天然ゴムやアクリルゴム、スチレン系熱可塑性エラストマー等の、オレフィン系ゴム以外のゴム材料;これらの複合素材;等からなる表面を備える被着体であり得る。また、アクリル系、ポリエステル系、アルキド系、メラミン系、ウレタン系、酸エポキシ架橋系、あるいはこれらの複合系(例えばアクリルメラミン系、アルキドメラミン系)等の塗料による塗装面に貼り付けられてもよい。
【0211】
ここに開示される粘着シートは、上記アクリル系粘着剤層(例えば粘着剤層(A))により構成された粘着面が、オレフィン系ゴム材料、オレフィン系ゴム以外のゴム材料またはポリオレフィン系樹脂からなる表面に貼り付けられる態様で好ましく使用され得る。上記ポリオレフィン系樹脂の例としては、LDPE、LLDPE、HDPE、メタロセン触媒系直鎖状低密度ポリエチレン等のポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。
【0212】
ここに開示される粘着シートの特に好ましい使用態様として、上記アクリル系粘着剤層(例えば粘着剤層(A))により構成された粘着面がオレフィン系ゴム材料からなる表面(以下、オレフィン系ゴム表面ともいう。)に貼り付けられる態様が挙げられる。上記粘着面は、標準EPDM板に対する粘着性が高い。したがって、EPDMその他のオレフィン系ゴム材料に対して優れた粘着性を発揮し得る。
【0213】
気泡含有層を含み、かつ粘着剤層(A)により構成された粘着面を有する粘着シートの好ましい使用態様として、上記粘着面がオレフィン系ゴム材料、オレフィン系ゴム以外のゴム材料またはポリオレフィン系樹脂からなる表面に貼り付けられる態様が挙げられる。粘着剤層(A)により構成された粘着面は、モノマーAの効果により、低極性の表面に対して良好な親和性を示し得る。このようなモノマーAの効果と、粘着シートが気泡含有層を含むことによる高い密着性(被着体の表面形状や変形に対する高い追従性)とが相俟って、オレフィン系ゴム材料やポリオレフィン系樹脂のような低極性の材料の表面に対する優れた粘着性が発揮され得る。また、上記の高い追従性により被着体の変形によく追随し得るので、オレフィン系ゴム材料その他のゴム材料のように弾性変形しやすい材料からなる被着体に対しても優れた粘着性が発揮され得る。
【0214】
気泡含有層を含み、かつ粘着剤層(A)により構成された粘着面を有する粘着シートの特に好ましい使用態様として、粘着剤層(A)の表面として構成された粘着面がオレフィン系ゴム表面に貼り付けられる態様が挙げられる。上記粘着面は、モノマーAの効果により、オレフィン系ゴム表面(例えばEPDMからなる表面)に対する親和性が高い。このモノマーAの効果と、粘着シートが気泡含有層を含むことによりオレフィン系ゴム材料の表面形状や変形に対する追従性が高いこととが相俟って、オレフィン系ゴム材料に対して特に優れた粘着性が発揮され得る。
【0215】
ここで、オレフィン系ゴム材料とは、オレフィン系ゴムを含む材料(典型的には、該材料の50質量%を超えてオレフィン系ゴムを含む材料)をいう。その具体例には、エチレン−プロピレンゴム(EPM)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、ブチルゴム(IIR)などのオレフィン系ゴムの他、かかるオレフィン系ゴムを含む各種の樹脂材料が含まれる。オレフィン系ゴムを含む樹脂材料は、例えば、熱可塑性樹脂(例えば、ポリプロピレン等のポリオレフィン)にオレフィン系ゴムがブレンドされた樹脂材料であり得る。かかる樹脂材料の典型例として、上記熱可塑性樹脂をハードセグメントとし、オレフィン系ゴムをソフトセグメントとするオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)が挙げられる。
【0216】
上記オレフィン系ゴム材料は、オレフィン系ゴムの他、カーボンブラック、着色剤、可塑剤、充填材、加硫剤、加硫促進剤、発泡剤等の、ゴム成形体に用いられ得る公知の添加剤を、必要に応じて含有してもよい。
可塑剤としては、例えばパラフィンオイル、ワックス類、ナフテン類、アロマ類、アスファルト類、乾燥油類(例えばアマニ油)、動植物油類、低分子量ポリマー類、フタル酸エステル類、リン酸エステル類、アルキルスルホン酸エステル類等が用いられ得る。
充填材としては、例えばカーボンブラック、亜鉛華、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸ないしその塩類、タルク、雲母、ベントナイト、シリカ、アルミナ、アルミニウムシリケート、アセチレンブラック、アルミニウム粉等が用いられ得る。
加硫剤としては、例えば硫黄、硫黄化合物類、セレン、酸化マグネシウム、一酸化鉛、酸化亜鉛、有機過酸化物類、ポリアミン類、オキシム類(例えばp−キノンジオキシム、p,p’−ジベンゾイルキノンジオキシム等)、ニトロソ化合物類(例えばp−ジニトロソベンジン)、樹脂類(例えばアルキルフェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド縮合物等)、アンモニウム塩類(例えば安息香酸アンモニウム)等が用いられ得る。
加硫促進剤としては、例えばジチオカルバミン酸類(例えばジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛等)、チアアゾール類(例えば2−メルカプトベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジスルフィド等)、グアニジン類(例えばジフェニルグアニジン、ジ−o−トリルグアニジン等)、スルフェンアミド類(例えばベンゾチアジル−2−ジエチルスルフェンアミド、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド等)、チウラム類(例えばテトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド等)、キサントゲン酸類(例えばイソプロピルキサントゲン酸ナトリウム、イソプロピルキサントゲン酸亜鉛等)、アルデヒドアンモニア類(例えばアセトアルデヒドアンモニア、ヘキサメチレンテトラミンなど)、アルデヒドアミン類(例えばn−ブチルアルデヒドアニリン、ブチルアルデヒドモノブチルアミン等)、チオウレア類(例えばジエチルチオウレア、トリメチルチオウレア等)が用いられ得る。
【0217】
ここに開示される粘着シートの好ましい適用対象(貼付け対象)として、オレフィン系ゴム(例えばEPDM)にカーボンブラックおよびパラフィンオイルの一方または両方が配合された組成のオレフィン系ゴム材料が例示される。粘着面を構成するアクリル系粘着剤層が粘着剤層(A)である場合、かかるオレフィン系ゴム材料に貼り付けられる態様によると、該粘着剤層(A)がその構成モノマー成分にモノマーAを含むことの効果が特によく発揮され得る。
【0218】
<粘着シート付き部品>
ここに開示される粘着シートは、アクリル系粘着剤層(例えば粘着剤層(A))により構成された粘着面が各種の材質からなる部材の表面に貼り付けられる態様で用いられて、該表面に対して良好な粘着性(例えば剥離強度)を発揮し得る。したがって、本発明の他の側面として、部材と、上記アクリル系粘着剤層により構成された粘着面を有する粘着シートとを含み、該粘着面(上記アクリル系粘着剤層の表面)が上記部材の表面に貼り付けられている粘着シート付き部品が提供される。
かかる粘着シート付き部品の一好適例として、オレフィン系ゴム表面を備える部材と、上記アクリル系粘着剤層により構成された粘着面を有する粘着シートとを含み、該粘着面が上記オレフィン系ゴム表面に貼り付けられている粘着シート付き部品が挙げられる。上記粘着シートとしては、ここに開示されるいずれかの粘着シートを好ましく採用し得る。
【0219】
このような粘着シート付き部品は、上記粘着面がオレフィン系ゴム表面に直接貼り付けられている構成であり得る。ここで「直接貼り付けられている」とは、上記粘着面とオレフィン系ゴム表面との間に他の層(プライマー層等)が介在されていないことをいう。かかる構成の粘着シート付き部品は、例えばオレフィン系ゴム材料の表面と粘着面との間にプライマー層が介在する構成に比べて、製造工程を簡略化し得るので生産性が良い。また、従来の典型的なプライマー層は有機溶媒中にプライマー層形成成分を含む溶液(プライマー溶液)を塗付して乾燥させることにより形成されるところ、かかる溶液の使用を省略し得ることは環境負荷低減の観点から好ましい。また、プライマー溶液の塗付・乾燥に係る設備が不要となるため、粘着シート付き部品の製造設備を簡略化することができる。さらに、プライマー溶液を乾燥させる工程が不要となるため、エネルギー効率の点からも有利である。
【0220】
特に限定するものではないが、上記オレフィン系ゴム表面を備える部材の具体例としては、ウェザーストリップ、ピラーモールやベルトモール、ルーフモール等のモール類、バンパー、ラジエータホースやヒータホース等のホース類、ブレーキカップ、車両内装材等の車両用ゴム部品;ルーフィングシート等の建築用ゴム製品;電線の被覆材;コンベアベルト;等が挙げられる。ここで、ウェザーストリップとは、典型的には車両のボディおよび/または部品に取り付けられて、車両のドアや窓、トランクリッド、ボンネット等の開口部と該開口部を塞ぐ部品(ドアパネル、窓ガラス等)との隙間をシールする部材(典型的には中空の帯状部材)をいう。上記ウェザーストリップの具体例には、ドアウェザーストリップ、オープニングトリムウェザーストリップ、ウィンドウウェザーストリップ、ガラスランチャンネル等と称されるものが含まれ得る。ここに開示される技術は、例えば、上記オレフィン系ゴム表面を備える部材が車両用ゴム部品(特に、ウェザーストリップ等の柔軟な中空部材)である態様で好ましく実施され得る。
【0221】
ここに開示される粘着シート付き部品は、上記粘着面がオレフィン系ゴム表面に直接貼り付けられている構成であって、上記オレフィン系ゴム材料表面から上記粘着シートを180°の方向に引張速度50mm/分で剥離するときの剥離強度が5N/10mm以上であることが好ましく、7N/10mm以上であることがより好ましい。このような粘着シート部品は、上記部材と上記粘着シートとの接合の信頼性が高いので好ましい。かかる接合信頼性等の観点から、上記剥離強度は、10N/10mm以上であることが好ましく、15N/10mm以上であることがより好ましく、20N/10mm以上であることがさらに好ましい。
【0222】
好ましい一態様において、上記粘着シート付き部品は、両方の表面が粘着面として構成された両面粘着シートを含み、該両面粘着シートの一方の粘着面が上記部材のオレフィン系ゴム表面に直接貼り付けられている態様であり得る。かかる構成の粘着シート付き部品は、上記粘着シートの他方の粘着面を所望の場所に貼り付けることにより、上記オレフィン系ゴム表面を備える部材をその場所に簡単に固定することができる。例えば、上記オレフィン系ゴム表面を備える部材が車両用のウェザーストリップである場合、このウェザーストリップを車両のボディや部品(ドアパネル等)に簡単に取り付けることができる。
【0223】
ここに開示される粘着シート付き部品の一例を
図8に模式的に示す。この粘着シート付き部品500は、構成モノマー成分にモノマーAを含むアクリル系粘着剤層(粘着剤層(A))51からなる粘着シート5と、オレフィン系ゴム材料を中空の帯状に成形(典型的には押出成形)してなるドアウェザーストリップ52とを含む。粘着シート5の第1粘着面51Aは、粘着剤層(A)の表面であって、ドアウェザーストリップ52の表面52Aに直接貼り付けられている。かかる構成の粘着シート付き部品500において、粘着シート5の第2粘着面51Bをドアパネル60の表面60Aに圧着することにより、このドアパネル60にドアウェザーストリップ52を容易に固定することができる。上記圧着は、粘着シート5の第2粘着面51Bやドアパネル60の表面60Aを特段加熱しなくても、常温で速やかに行うことができる。
【0224】
ここに開示される粘着シート付き部品の他の一例を
図9に模式的に示す。この粘着シート付き部品50は、
図4に示す構造であって上述した構成例4−1に対応する構成の粘着シート20と、オレフィン系ゴム材料を中空の帯状に成形(典型的には押出成形)してなるドアウェザーストリップ52とを含む。粘着シート20の第1粘着面221Aは、アクリル系粘着剤層(好ましくは粘着剤層(A))の表面であって、ドアウェザーストリップ52の表面52Aに直接貼り付けられている。かかる構成の粘着シート付き部品50において、粘着シート20の第2粘着面222Aをドアパネル60の表面60Aに圧着することにより、このドアパネル60にドアウェザーストリップ52を容易に固定することができる。上記圧着は、粘着シート20の第2粘着面222Aやドアパネル60の表面60Aを特段加熱しなくても、常温で速やかに行うことができる。
【0225】
なお、典型的なウェザーストリップは長尺状(例えば、長さが100cm程度またはそれ以上の長尺状)である。また、一般にウェザーストリップは押出成形法により製造されることから、その長尺方向の形状は、自由状態では直線状または緩やかな曲線状である。このようなウェザーストリップは、通常、その長尺方向を所定の取り付けラインに沿って変形させた状態(曲げた状態)で車両に取り付けられる。したがって、ウェザーストリップを固定するための両面粘着シートは、上記変形に対して高い追従性を有することが望ましい。両面粘着シートの一方の表面がウェザーストリップに貼り付けられた構成の粘着シート付きウェザーストリップ(粘着シート付き部品)を変形させて他方の粘着面を車両ボディ等の所定位置に圧着する態様で該所定位置にウェザーストリップの取り付けが行われる場合には、上記両面粘着シートが高い追従性を有することが特に有意義である。
そこで、上記部材がウェザーストリップ等の長尺状のゴム部材である場合、該部材に貼り付けられて粘着シート付き部品を構成するための粘着シートとして、粘着剤層(A)により構成された粘着面を有しかつ少なくとも1つの気泡含有層を含む粘着シートを特に好ましく採用し得る。このような構成の粘着シートは、気泡含有層を含むことから柔軟であり、被着体の表面形状や変形に対する追従性が良い。したがって、上記のような粘着シート付きウェザーストリップの構成要素として好適である。また、上記粘着シートは、気泡含有層を有することからクッション性が良い。このことは、ウェザーストリップの表面の形状に対する追従性の向上に寄与するほか、該ウェザーストリップが取り付けられる表面の形状(段差等)に対する追従性を向上させる観点や、ウェザーストリップの表面と該ウェザーストリップが取り付けられる表面との間隔のばらつきを吸収する観点等からも有利である。
【0226】
<粘着シート付き部品の製造方法>
ここに開示される粘着シート付き部品を製造する方法としては、オレフィン系ゴム表面を備えるオレフィン系ゴム成形体(オレフィン系ゴム部品)を用意することと、アクリル系粘着剤層により構成された粘着面を有する粘着シートを用意することと、上記オレフィン系ゴム成形体の表面に上記粘着面を貼り付けることとを包含する方法を好ましく採用することができる。
【0227】
ここに開示される粘着シートは、アクリル系粘着剤層(好ましくは粘着剤層(A))の表面として構成された粘着面がオレフィン系ゴム表面に対して良好な親和性を示す。したがって、上記粘着面を上記オレフィン系ゴム成形体の表面に貼り付ける操作は、該オレフィン系ゴム成形体の表面(粘着シートが貼り付けられる表面。以下「貼付対象面」ともいう。)や上記粘着面を特段加熱することなく行うことができ、かかる貼付け操作によってもオレフィン系ゴム成形体に対する良好な粘着性が発揮され得る。あるいは、ここに開示される粘着シートは、生産性向上等の観点から、貼付対象面および/または粘着面を加熱する態様でオレフィン系ゴム表面に貼り付けられてもよい。通常は、貼付対象面や粘着面を特段加熱することなく貼り付ける態様を好ましく採用し得る。かかる態様によると、上記加熱する態様に比べて、エネルギーコストを節約することができる。また、より簡易な設備によって貼付けを行うことができ、貼付条件の管理も容易であるので好ましい。上記貼付けは、典型的には常温で(例えば0℃〜50℃、典型的には10℃〜40℃程度の温度環境下で)行うことができる。
【0228】
ここに開示される粘着シートは、常温で各種の被着体に貼り付けられる態様で用いられて、該被着体に対して十分な粘着性を示し得る。一方、ここに開示される粘着シートは、貼付対象面および/または粘着面を加熱する態様で被着体に貼り付けられてもよい。例えば、被着体の温度(典型的には、貼付対象面の温度と概ね一致する。)を常温よりも意図的に高くした状態で粘着シートを貼り付ける態様を好ましく適用することができる。このことによって、さらに高い剥離強度が実現され得る。加熱温度は特に限定されず、被着体の耐熱性、作業性、加熱により得られる効果の程度等の兼ね合いを考慮して適宜設定すればよい。例えば、被着体の温度は、50℃を超える温度とすることができ、75℃以上とすることが好ましく、100℃以上とすることがより好ましい。加熱温度の上限は、例えば200℃以下とすることができ、通常は175℃以下とすることが適当である。このように被着体の温度を高めた状態で粘着シートを貼り付ける手法は、例えばオレフィン系ゴム等の低極性の被着体への貼り付けにおいて好ましく適用され得るほか、その他の種々の被着体への貼り付けにおいても適用されて有意な効果を発揮し得る。また、上述した好ましい加熱温度は、被着体(貼付対象面)の加熱温度として採用し得るほか、粘着面の加熱温度としても採用し得る。
【0229】
ここに開示される粘着シート付き部品製造方法は、オレフィン系ゴム成形体の表面(貼付対象面)に適当な清掃処理を施し、その清掃後の表面に上記粘着面を貼り付ける(好ましくは、直接貼り付ける)態様で好ましく実施され得る。かかる態様によると、オレフィン系ゴム表面に粘着シートがより強固に貼り付けられている粘着シート付き部品が製造され得る。
上記清掃処理としては、貼付対象面に洗浄液を接触させる処理を好ましく採用し得る。使用する洗浄液は特に限定されない。例えば、有機溶媒を含む洗浄液を好ましく用いることができる。有機溶媒の例としては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール;アセトン、メチルイソブチルケトン、シクサヘキサノン等の低級ケトン;酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、2−メチルピロリドン等の鎖状または環状アミド;トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒;等が挙げられる。これらは、1種を単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。あるいは、水を含む洗浄液を用いてもよい。例えば、上記のような有機溶媒と水との混合溶媒を好ましく使用し得る。オレフィン系ゴム成形体を劣化させにくく、かつ取り扱いやすいことから、通常は、低級アルコールまたは水と低級アルコールとの混合溶媒を洗浄液として好ましく採用し得る。洗浄液の一好適例としてイソプロピルアルコール(IPA)が挙げられる。
【0230】
洗浄液を用いた清掃処理は、例えば、オレフィン系ゴム成形体のうち貼付対象面を含む部分を洗浄液に浸漬する処理、洗浄液を含ませた布で処理対象面(被処理面)を拭く処理、処理対象面に洗浄液を吹きつける処理等であり得る。これらの処理は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて適用することができる。処理の程度(例えば、洗浄液への浸漬時間、処理対象面を拭く回数、洗浄液の吹付けレート等)や態様は、粘着シート付き部品の使用目的や使用態様を考慮して適宜選択し得る。操作の簡易性の観点から、洗浄液を含ませた布で処理対象面を拭く処理を好ましく採用し得る。特に限定するものではないが、洗浄液を含ませた布で処理対象面を拭く回数は、例えば1〜50回程度とすることができ、生産性等の観点から、通常は1〜30回程度とすることが適当である。
【0231】
好ましい一態様に係る粘着シート付き部品製造方法を、
図10を参照しつつ説明する。すなわち、オレフィン系ゴム成形体(例えば、
図9に示すようなドアウェザーストリップ52)を用意し、その表面(貼付対象面)52Aを洗浄液で清掃する処理を行う(ステップS10)。例えば、IPAを含ませた布で貼付対象面52Aを1〜20回程度拭く。その清掃処理後の貼付対象面52Aに粘着シートを圧着する(ステップS20)。例えば
図9に示すように、
図4に示す粘着シート20の第1粘着面221Aを、貼付対象面52Aに圧着する。この圧着は、オレフィン系ゴム成形体および粘着シートのいずれも特段加熱することなく、常温環境下にて行うことができる。このようにして、オレフィン系ゴム成形体の表面に粘着シートが直接接合している粘着シート付き部品が好適に製造され得る。
【0232】
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。なお、以下の説明において「部」および「%」は、特に断りがない限り質量基準である。
【0233】
<略号一覧>
以下の説明では、モノマーおよび架橋剤の名称を以下の略号で表すことがある。
[モノマー]
2EHA:2−エチルヘキシルアクリレート
BA:n−ブチルアクリレート
CHA:シクロヘキシルアクリレート
CHMA:シクロヘキシルメタクリレート
IBXMA:イソボルニルメタクリレート
DMAEA:ジメチルアミノエチルアクリレート
DMAEM:ジメチルアミノエチルメタクリレート
ACMO:N−アクリロイルモルホリン
AA:アクリル酸
MAA:メタクリル酸
2HEA:2−ヒドロキシエチルアクリレート
[架橋剤]
TMPTA:トリメチロールプロパントリアクリレート
TMP−3P:エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート(大阪有機化学工業社製、商品名「ビスコート360」)
HDDA:1,6−ヘキサンジオールジアクリレート
DPHA:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
【0234】
<実験例1>
[粘着シートの作製]
(例H1)
2−エチルへキシルアクリレート(2EHA)77.9部、シクロヘキシルアクリレート(CHA)20.5部およびN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEM)1.5部からなるモノマー混合物を、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(BASF社製、商品名「イルガキュア651」)0.05部および1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(BASF社製、商品名「イルガキュア184」)0.05部とともに四つ口フラスコに投入し、窒素雰囲気下、紫外線に曝露して部分的に光重合させることにより、重量平均分子量(Mw)が30×10
4のポリマーと未反応モノマーとを含むシロップ(h1)を得た。このシロップ(h1)における上記モノマー混合物の重合転化率は、約30%であった。
シクロヘキシルメタクリレート(CHMA)70部および
DMAEM30部からなるモノマー混合物に、n−ドデシルメルカプタンを配合し、窒素ガスを吹き込んで溶存酸素を除去した。次いで、この混合物を90℃に昇温し、過酸化物系開始剤として日油株式会社製の商品名「パーヘキシルO」0.005部および同社製の商品名「パーヘキシルD」0.01部を加えた。これを90℃で1時間攪拌した後、1時間かけて150℃まで昇温し、150℃で1時間攪拌した。次いで、1時間かけて170℃まで昇温し、170℃で60分間攪拌した。次に、170℃の状態で減圧し、1時間攪拌して残留モノマーを除去して、Mwが0.5×10
4のアクリル系オリゴマー(h1)を得た。
上記シロップ(h1)100部に、上記オリゴマー(h1)を20部、架橋剤としてTMPTAを0.12部、光重合開始剤として綜研化学社製の商品名「P−02」0.30部を添加して混合することにより、本例に係る粘着剤組成物を調製した。
一方の面がシリコーン系剥離処理剤で処理された剥離面となっている厚み38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを2枚用意した。そのうち1枚目のPETフィルムの剥離面上に上記粘着剤組成物を、光照射後の厚さが500μmとなるように塗付した。その塗付された粘着剤組成物の上に2枚目のPETフィルムの剥離面を被せ、これに紫外線を照射することにより、上記粘着剤組成物を硬化させて粘着剤層を形成した。紫外線の照射は、ブラックライト(15W/cm)を用いて、光照度3mW/cm
2(ピーク感度波長約350nmの工業用UVチェッカー(トプコン社製、商品名「UVR−T1」、受光部型式UD−T36)により測定)で2分照射した後、東芝ライテック社製の低照度メタルハライドランプを用いて、光照度8mW/cm
2(上記UVチェッカーにより測定)で1分照射する条件で行った。このようにして、上記粘着剤組成物を紫外線硬化させて得られた粘着剤層からなる粘着シートを得た。この粘着シートの第1粘着面および第2粘着面は、上記2枚のPETフィルム(剥離ライナー)によりそれぞれ保護されている。
なお、本例においてアクリル系オリゴマー(h1)を得るためのモノマー混合物には、モノマー100部に対して6部のn−ドデシルメルカプタンを配合した。本実験例および他の実験例において、アクリル系オリゴマー(h1)以外のアクリル系オリゴマーを作製する際には、所望のMwを有するアクリル系オリゴマー(b)が得られるように、必要に応じてn−ドデシルメルカプタンの使用量を調節した。
【0235】
(例H2)
光重合開始剤を2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(BASF社製、商品名「イルガキュア651」)0.25部に変更した点以外は例H1と同様にして、本例に係る粘着剤組成物を調製した。この粘着剤組成物を用いた他は例H1と同様にして、本例に係る粘着シートを得た。
【0236】
(例H3)
架橋剤を1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)0.14部に変更した他は例H2と同様にして、本例に係る粘着シートを作製した。
【0237】
(例H4)
架橋剤をジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)0.13部に変更した他は例H2と同様にして、本例に係る粘着シートを作製した。
【0238】
(例H5)
CHMA50部および
DMAEM50部からなるモノマー混合物を用いた他はアクリル系オリゴマー(h1)の作製と同様にして、Mwが0.5×10
4のアクリル系オリゴマー(h5)を得た。
例H1で作製したシロップ(h1)100部に、アクリル系オリゴマー(h5)20部、架橋剤としてTMPTA0.12部、光重合開始剤としてビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド(BASF社製、商品名「イルガキュア819」)0.20部を添加して混合することにより、本例に係る粘着剤組成物を調製した。この粘着剤組成物を用いた他は例H1と同様にして、本例に係る粘着シートを得た。
【0239】
(例H6〜例H8)
光重合開始剤の量をそれぞれ0.30部、0.40部および0.50部に変更した他は例H5と同様にして、例H6〜例H8に係る粘着シートを得た。
【0240】
(例H9)
2EHA80部およびCHA20部からなるモノマー混合物を、例H1と同様に部分的に光重合させて、Mwが30×10
4のポリマーと未反応モノマーとを含むシロップ(h9)を得た。重合転化率は約30%であった。
モノマーとしてCHMAのみを用いた点以外はアクリル系オリゴマー(h1)の作製と同様にして、Mwが0.5×10
4のアクリル系オリゴマー(h9)を得た。
上記シロップ(h9)100部に、上記アクリル系オリゴマー(h9)20部、架橋剤としてTMPTA0.12部、光重合開始剤として綜研化学社製の商品名「P−02」0.30部を添加して混合することにより、本例に係る粘着剤組成物を調製した。この粘着剤組成物を用いた他は例H1と同様にして、本例に係る粘着シートを得た。
【0241】
[性能評価]
(対EPDM初期剥離強度(20分後剥離強度))
各粘着シートを幅10mmの帯状に裁断して測定サンプルを作製した。その一方の粘着面を覆うPETフィルム(剥離ライナー)を剥がし、剥離処理されていない厚さ50μmのPETフィルムに貼り付けて裏打ちした。
被着体としての標準EPDM板の表面に、IPAを染み込ませた布で上記表面を1方向に2回拭き取る清掃処理を施した。
23℃、50%RHの標準環境下にて、上記サンプルの他方の粘着面を覆う剥離ライナーを剥がし、2kgのローラを1往復させて上記清掃処理後の標準EPDM板に圧着した。これを上記標準環境下に20分間保持した後、同環境下において、万能引張圧縮試験機(ミネベア社製、装置名「引張圧縮試験機、TG−1kN」)を使用し、JIS Z0237(2004)に準じて、引張速度50mm/分の条件で180°引き剥がし粘着力[N/10mm]を測定した。測定は2回行い、それらの算術平均値を算出した。
【0242】
(対EPDM経時後剥離強度(7日後剥離強度))
測定サンプルを標準EPDM板に圧着した後、標準環境下に保持する期間を20分間から7日間に変更した点以外は上記対EPDM初期剥離強度の測定と同様にして、180°引き剥がし粘着力[N/10mm]を測定した。測定は2回行い、それらの算術平均値を算出した。
【0243】
(保持力)
上記で得られた各粘着シートを幅20mmの帯状に裁断して測定サンプルを作製した。その一方の粘着面を覆うPETフィルム(剥離ライナー)を剥がし、剥離処理されていない厚さ50μmのPETフィルムに貼り付けて裏打ちした。次いで、上記サンプルの他方の粘着面を覆う剥離ライナーを剥がし、被着体としてのステンレス鋼(SUS)板に該サンプルの一端を、幅20mm、長さ20mmの接着面積にて、5kgのローラを1方向に1回転がすことにより貼り付けた。これを23℃、50%RHの標準環境下に24時間保持した後、JIS Z0237(2004)に準じて、上記SUS板を40℃の環境下に垂下し、上記サンプルの自由端に500gの荷重を付与した。その荷重が付与された状態で40℃の環境下に2時間保持し、サンプルがSUS板から剥がれて落下するまでの時間を測定した。
測定は、各粘着シートにつき2つの測定サンプルを用いて行い、それらの算術平均値を算出した。
【0244】
得られた結果を表1に示す。剥離強度の測定結果を示す欄の「−」は、当該剥離強度が未測定であることを示す。また、表1には、各例に係る粘着シートを構成する粘着剤層について、上述した方法により測定したゲル分率の値を併せて示している。
【0246】
表1に示されるように、例H1〜例H8の粘着シートは、対EPDM初期剥離強度がいずれも5N/10mm以上であり、EPDMに対する初期粘着性に優れたものであった。例H1と例H2〜例H4との比較、および例H5と例H6〜例H8との比較からわかるように、ゲル分率を40%以下とすることにより、対EPDM初期剥離強度は向上する傾向であった。
また、例H6〜例H8の粘着シートは、いずれも、対EPDM初期剥離強度が7N/10mm以上であることに加えて対EPDM経時後剥離強度が10N/10mm以上であり、経時後の粘着性も良好であった。
また、例H5〜例H8の粘着シートは、いずれも上記保持力試験においてサンプルが落下するまでの時間(保持時間)が15分以上であり、実用上充分な凝集性を有するものであった。
【0247】
<実験例2>
(例K1)
例H1で作製したシロップ(h1)100部に、アクリル系オリゴマー(h1)20部、架橋剤としてTMPTA0.12部、光重合開始剤としてビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド(BASF社製、商品名「イルガキュア819」)0.4部を添加して混合することにより、本例に係る粘着剤組成物を調製した。
一方の面がシリコーン系剥離処理剤で処理された剥離面となっている厚み38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを2枚用意した。そのうち1枚目のPETフィルムの剥離面上に上記粘着剤組成物を、光照射後の厚さが100μmとなるように塗付した。その塗付された粘着剤組成物の上に2枚目のPETフィルムの剥離面を被せ、これに紫外線を照射することにより、上記粘着剤組成物を硬化させて非気泡含有粘着層を形成した。紫外線の照射は、ブラックライト(15W/cm)を用いて、光照度5mW/cm
2(ピーク感度波長約350nmの工業用UVチェッカー(トプコン社製、商品名「UVR−T1」、受光部型式UD−T36)により測定)、光量1500mJ/cm
2の条件で行った。このようにして、上記粘着剤組成物を紫外線硬化させて得られた粘着剤層からなる粘着シートを得た。この粘着シートの第1粘着面および第2粘着面は、上記2枚のPETフィルム(剥離ライナー)によりそれぞれ保護されている。
【0248】
(例K2)
例H1で作製したシロップ(h1)100部に、アクリル系オリゴマー(h1)20部、架橋剤としてTMPTA0.12部、光重合開始剤としてビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド(BASF社製、商品名「イルガキュア819」)0.4部およびガラスバルーン4部を添加して混合することにより、本例に係る粘着剤組成物を調製した。ガラスバルーンとしては、ポッターズ・バロティーニ(Potters Ballotini)社製の中空ガラスビーズ(硼珪酸ガラス製、製品名「Sphericel(商標)25P45」、粒径範囲30μm〜60μm、平均粒子径45μm、密度0.25g/cm
3)を使用した。この粘着剤組成物を用いた点以外は例K1と同様にして、本例に係る粘着シートを得た。
【0249】
(例K3)
ガラスバルーンの使用量をシロップ(h1)100部に対して8部とした点以外は例K2と同様にして、本例に係る粘着シートを得た。
【0250】
(例K4)
ガラスバルーンの使用量をシロップ(h1)100部に対して12部とした点以外は例K2と同様にして、本例に係る粘着シートを得た。
【0251】
(例K5)
例H1で作製したシロップ(h1)100部に、アクリル系オリゴマー(h1)20部、架橋剤としてTMPTA0.12部、光重合開始剤としてビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド(BASF社製、商品名「イルガキュア819」)0.4部および炭酸カルシウム5部を添加して混合することにより、本例に係る粘着剤組成物を調製した。炭酸カルシウムとしては、丸尾カルシウム社製から入手可能な重質炭酸カルシウム(平均粒子径3.2μm、比表面積0.7m
2/g)を使用した。この粘着剤組成物を用いた点以外は例K1と同様にして、本例に係る粘着シートを得た。
【0252】
(例K6〜例K8)
炭酸カルシウムの使用量を、シロップ(h1)100部に対してそれぞれ10部、15部および20部とした点以外は例
K5と同様にして、例K6〜例K8に係る粘着シートを得た。
【0253】
(例K9)
例H1で作製したシロップ(h1)100部に、アクリル系オリゴマー(h1)20部、架橋剤としてTMPTA0.12部、光重合開始剤としてビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド(BASF社製、商品名「イルガキュア819」)0.4部およびシラスバルーン12.5部を添加して混合することにより、本例に係る粘着剤組成物を調製した。シラスバルーンとしては、昭和化学工業社製の商品名「スーパーバルーンBA−15」(粒径範囲20μm〜300μm、嵩密度0.12〜0.18g/cm
3)を使用した。この粘着剤組成物を用いた点以外は例K1と同様にして、本例に係る粘着シートを得た。
【0254】
[性能評価]
上述した実験例1と同様にして、対EPDM初期剥離強度、対EPDM経時後剥離強度および保持力を評価した。得られた結果を表2に示す。
【0256】
表2に示されるように、例K1〜例K9の粘着シートは、いずれも、対EPDM初期剥離強度が5N/10mm以上、対EPDM経時後剥離強度が7N/10mm以上であり、EPDMに対する粘着性に優れたものであった。例K2および例K5〜例K8では特に良好な結果が得られた。
【0257】
<実験例3>
[気泡含有層を含む粘着シートの作製]
(例L1)
気泡含有粘着層の作製:
2EHA90部およびアクリル酸(AA)10部からなるモノマー混合物に、光重合開始剤として2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(BASF社製、商品名「イルガキュア651」)0.05部および1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニル−ケトン(BASF社製、商品名「イルガキュア184」)0.05部を配合した後、窒素雰囲気下で重合転化率が7.0%になるまで紫外線を照射して、重量平均分子量(Mw)が500×10
4のポリマーと未反応モノマーとを含むシロップ(L1)を調製した。
上記シロップ(L1)100部に、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)(日本化薬製、商品名「KAYARAD DPHA」(アクリル当量97))0.10部(モノマー成分100モルに対して0.028モル)、光重合開始剤として2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(BASF社製、商品名「イルガキュア651」)0.03部、平均粒子径45μmのガラスバルーン(東海工業社製、商品名「セルスターZ−27」、比重0.27)9.0部を均一混合し、脱泡処理した。脱泡処理後、フッ素系界面活性剤(商品名「サーフロンS−393」、AGCセイミケミカル株式会社製;側鎖にポリオキシエチレン基およびフッ素化炭化水素基を有するアクリル系共重合体;Mw8300)0.7部を添加して、粘着剤組成物前駆体を調製した。
中央部に貫通孔を持った円盤上に細かい歯が多数ついたステータと、歯のついているステータと対向しており円盤上にステータと同様の細かい歯がついているロータとを備えた装置を用い、そのステータ上の歯とロータ上の歯との間に上記粘着剤組成物前駆体を流入させ、ロータを高速回転させながら上記貫通孔を通して上記粘着剤組成物前駆体に窒素ガスを導入した。これにより粘着剤組成物前駆体に気泡を混合して、気泡を含む粘着剤組成物を調製した。なお、気泡は、この気泡含有粘着剤組成物の全体積に対して約20体積%となるように混合した。
一方の面がシリコーン系剥離処理剤で処理された剥離面となっている厚み38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを2枚用意した。上記気泡含有粘着剤組成物に、光重合開始剤として「イルガキュア651」0.03部を追加し、さらに酸化防止剤(BASF社製、商品名「イルガノックス1010」)0.5部および顔料(大日精化社製、商品名「AT DN101」)0.02部を添加して混合した。これを1枚目のPETフィルムの剥離面上に、光照射後の厚さが1.2mmとなるように塗付した。その塗付された粘着剤組成物の上に2枚目のPETフィルムの剥離面を被せ、これに紫外線を照射することにより、上記気泡含有粘着剤組成物を硬化させて厚さ1.2mmの気泡含有粘着層を形成した。紫外線の照射は、光照度5mW/cm
2(ピーク感度波長約350nmの工業用UVチェッカー(トプコン社製、商品名「UVR−T1」、受光部型式UD−T36)により測定)ブラックライトを用いて、重合転化率が99%に達するまでに必要な時間だけ行った。
【0258】
非気泡含有粘着層の作製:
2EHA37.9部、n−ブチルアクリレート(BA)37.9部、CHA21.1部およびDMAEM3.1部からなるモノマー混合物を、例H1と同様に部分的に光重合させて、Mwが70×10
4のポリマーと未反応モノマーとを含むシロップ(L1)を得た。重合転化率は約30%であった。
このシロップ(L1)100部に、例h1で作製したアクリル系オリゴマー(h1)20部、TMPTA0.12部および綜研化学社製の光重合開始剤(商品名「P−02」)0.30部を添加して混合することにより、本例に係る粘着剤組成物を調製した。
一方の面がシリコーン系剥離処理剤で処理された剥離面となっている厚み38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを2枚用意した。そのうち1枚目のPETフィルムの剥離面上に上記粘着剤組成物を、光照射後の厚さが40μmとなるように塗付した。その塗付された粘着剤組成物の上に2枚目のPETフィルムの剥離面を被せ、これに紫外線を照射して上記粘着剤組成物を硬化させた。紫外線の照射は、ブラックライト(15W/cm)を用いて、光照度5mW/cm
2(ピーク感度波長約350nmの工業用UVチェッカー(トプコン社製、商品名「UVR−T1」、受光部型式UD−T36)により測定)、光量1500mJ/cm
2の条件で行った。このようにして厚さ40μmの粘着シート(L1)を得た。この粘着シート(L1)は、構成モノマー成分にモノマーAを含む非気泡含有粘着層(粘着剤層(A))からなる粘着シートである。
【0259】
気泡含有層を含む粘着シートの作製:
上記で作製した気泡含有粘着層(厚さ1.2mm)の一方の表面に、上記で作製した粘着シート(L1)(厚さ40μm)を貼り合わせた。このようにして、気泡含有粘着層とその片面に積層された非気泡含有粘着層(粘着剤層(A))とを含む合計厚さ約1.24mmの粘着シートを得た。
【0260】
(例L2)
非気泡含有粘着層の作製:
2EHA91部およびアクリル酸(AA)9部からなるモノマー混合物を、例H1と同様に部分的に光重合させて、Mwが115×10
4のポリマーと未反応モノマーとを含むシロップ(L2)を得た。
このシロップ(L2)100部に、TMPTA0.12部および綜研化学社製の光重合開始剤(商品名「P−02」)0.30部を添加して混合することにより、本例に係る粘着剤組成物を調製した。
この粘着剤組成物を、例L1における非気泡含有粘着層の作製と同様に硬化させて、厚さ40μmの粘着シート(L2)を得た。この粘着シート(L2)は、構成モノマー成分にモノマーAを含まない非気泡含有粘着層からなる粘着シートである。
気泡含有層を含む粘着シートの作製:
例L1で作製した気泡含有粘着層(厚さ1.2mm)の一方の表面に、例L1で作製した粘着シート(L1)に代えて、上記粘着シート(L2)を貼り合わせた。その他の点は例L1と同様にして、気泡含有粘着層とその片面に積層された非気泡含有粘着層とを含む合計厚さ約1.24mmの粘着シートを得た。
【0261】
[性能評価]
(対EPDM初期剥離強度)
IPAを染み込ませた布で標準EPDM板の表面を1方向に拭き取る回数を10回とした点、および標準EPDM板に測定サンプルを圧着する際に5kgのローラを1往復させた点以外は実験例1と同様にして、180°引き剥がし粘着力[N/10mm]を測定した。測定は2回行い、それらの算術平均値を算出した。得られた結果を表3に示す。
【0263】
上記表に示されるように、例L1の粘着シートは、EPDMに対して高い初期剥離強度を示した。なお、標準EPDM板の表面を拭き取る回数を2回とした場合にも、明らかに10N/10mm以上の対EPDM剥離強度が得られることが確認された。
【0264】
例L1に係る粘着シートにつき、さらに以下の性能評価を行った。被着体としては標準EPDM片を使用した。IPAを染み込ませた布で上記被着体の表面を1方向に10回拭き取る清掃処理を行った後、例L1に係る粘着シートの非気泡含有粘着層の表面を上記清掃処理後の被着体表面に圧着した。得られた結果を表4に示す。なお、表4中の「初期剥離強度」の欄には、上記で測定した対EPDM初期剥離強度の値を示している。
【0265】
(常態剥離強度)
粘着シートを幅10mmの帯状に裁断して測定サンプルを作製した。その一方の粘着面(気泡含有粘着層の表面)を覆うPETフィルム(剥離ライナー)を剥がし、剥離処理されていない厚さ50μmのPETフィルムに貼り付けて裏打ちした。23℃、50%RHの標準環境下にて、上記サンプルの他方の粘着面(非気泡含有粘着層の表面)を覆う剥離ライナーを剥がし、5kgのローラを1往復させて被着体に圧着した。上記標準環境下に72時間保持した後、同環境下において、万能引張圧縮試験機(ミネベア社製、装置名「引張圧縮試験機、TG−1kN」)を使用し、JIS Z0237(2004)に準じて、引張速度50mm/分の条件で180°引き剥がし粘着力(常態剥離強度[N/10mm])を測定した。
【0266】
(熱間剥離強度)
剥離試験を行う環境を上記標準環境から80℃の環境に変更した点以外は常態剥離強度と同様にして180°引き剥がし粘着力(熱間剥離強度[N/10mm])を測定した。
【0267】
(耐熱剥離強度)
初期剥離強度と同様にして被着体に粘着シートを圧着し、上記標準環境下に72時間保持した後、80℃の環境下に7日間保持した。これを上記標準環境下に1日保持した後、同環境下にて初期剥離強度と同様にして180°引き剥がし粘着力(耐熱剥離強度[N/10mm])を測定した。
【0268】
(低温初期剥離強度)
初期剥離強度の測定において、被着体に粘着シートを圧着する環境、圧着後に保持する環境、および剥離強度測定を行う環境を、いずれも上記標準環境から5℃の環境に変更した。その他の点については初期剥離強度と同様にして180°引き剥がし粘着力(低温初期剥離強度[N/10mm])を測定した。
【0269】
(加湿条件に保持された場合の剥離強度)
初期剥離強度と同様にして被着体に粘着シートを圧着し、上記標準環境下に72時間保持した後、50℃、98%RHの湿熱条件下に7日間保持した。これを上記標準環境下に1日保持した後、同環境下にて初期剥離強度と同様に180°引き剥がし粘着力(加湿後剥離強度[N/10mm])を測定した。
【0270】
(温水に浸漬して保持された場合の剥離強度)
初期剥離強度と同様にして被着体に粘着シートを圧着し、上記標準環境下に72時間保持した後、40℃の水に浸漬して7日間保持した。これを水から引き上げて上記標準環境下に1日保持した後、同環境下にて初期剥離強度と同様に180°引き剥がし粘着力(温水浸漬後剥離強度[N/10mm])を測定した。
各測定は2回行った。それらの算術平均値を表4に示した。
【0272】
上記表に示されるように、例L1に係る粘着シートは、種々の評価条件においてEPDMに対して優れた粘着性を示すことが確認された。
【0273】
<実験例4>
[粘着シートの作製]
(例A1)
2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)78部、n−ブチルアクリレート(BA)20部およびN,N−ジメチルアミノエチルアクリレート(DMAEA)2部からなるモノマー混合物を、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(BASF社製、商品名「イルガキュア651」)0.05部および1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニル−ケトン(BASF社製、商品名「イルガキュア184」)0.05部とともに四つ口フラスコに投入し、窒素雰囲気下、紫外線に曝露して部分的に光重合させることにより、重量平均分子量(Mw)が45×10
4のポリマーと未反応モノマーとを含むシロップ(a1)を得た。このシロップ(a1)における上記モノマー混合物の重合転化率は、約30%であった。
このシロップ(a1)100部に、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)0.10部および2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(BASF社製、商品名「イルガキュア651」)0.12部を添加して混合することにより、本例に係る粘着剤組成物を調製した。
一方の面がシリコーン系剥離処理剤で処理された剥離面となっている厚み38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを2枚用意した。そのうち1枚目のPETフィルムの剥離面上に上記粘着剤組成物を、光照射後の厚さが40μmとなるように塗付した。その塗付された粘着剤組成物の上に2枚目のPETフィルムの剥離面を被せ、これに紫外線を照射することにより、上記粘着剤組成物を硬化させて粘着剤層を形成した。紫外線の照射は、ブラックライト(15W/cm)を用いて、光照度5mW/cm
2(ピーク感度波長約350nmの工業用UVチェッカー(トプコン社製、商品名「UVR−T1」、受光部型式UD−T36)により測定)、光量1500mJ/cm
2の条件で行った。このようにして、上記粘着剤組成物を紫外線硬化させて得られた粘着剤層からなる粘着シートを得た。この粘着シートの第1粘着面および第2粘着面は、上記2枚のPETフィルム(剥離ライナー)によりそれぞれ保護されている。
この粘着剤層(粘着シート)は、該粘着剤層に含まれる全重合物の構成モノマー成分のうち2.0%がアミノ基含有(メタ)アクリレート(ここではDMAEA)の質量である。すなわち、上記全重合物の構成モノマー成分の質量(m
T)に占めるアミノ基含有(メタ)アクリレートの質量(m
A)の割合(m
A/m
T)が2.0%である。
【0274】
(例A2)
2EHA76部、BA20部およびDMAEA4部からなるモノマー混合物を用いた他は例A1と同様にして、Mwが34×10
4のポリマーと未反応モノマーとを含むシロップ(a2)を得た。このシロップ(a2)を用いて例A1と同様に粘着剤組成物の調製、塗付および紫外線照射を行って、本例に係る粘着シートを得た。この粘着剤層(粘着シート)は、該粘着剤層に含まれる全重合物の構成モノマー成分のうち4.0%がアミノ基含有(メタ)アクリレート(ここではDMAEA)である。
【0275】
(例A3)
DMAEAに代えてN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEM)2部を含むモノマー混合物を用いた他は例A1と同様にして、Mwが54×10
4のポリマーと未反応モノマーとを含むシロップ(a3)を得た。このシロップ(a3)を用いて例A1と同様に粘着剤組成物の調製、塗付および紫外線照射を行って、本例に係る粘着シートを得た。この粘着剤層(粘着シート)は、該粘着剤層に含まれる全重合物の構成モノマー成分のうち2.0%がアミノ基含有(メタ)アクリレート(ここではDMAEM)である。
【0276】
(例A4)
2EHA76部、BA20部、アクリル酸(AA)4部および2−ヒドロキシエチルアクリレート(2HEA)0.15部からなるモノマー混合物を用いた他は例A1と同様にして、Mwが115×10
4のポリマーと未反応モノマーとを含むシロップ(a4)を得た。このシロップ(a4)を用いて例A1と同様に粘着剤組成物の調製、塗付および紫外線照射を行って、本例に係る粘着シートを得た。
【0277】
(例A5)
DMAEAに代えてN−アクリロイルモルホリン(ACMO)2部を含むモノマー混合物を用いた他は例A1と同様にして、Mwが68×10
4のポリマーと未反応モノマーとを含むシロップ(a5)を得た。このシロップ(a5)を用いて例A1と同様に粘着剤組成物の調製、塗付および紫外線照射を行って、本例に係る粘着シートを得た。
【0278】
[性能評価]
(対EPDM剥離強度;引張速度300mm/分)
上述した標準EPDM片を被着体として、以下の手順で180°引き剥がし粘着力(対EPDM剥離強度)を測定した。すなわち、上記で得られた各粘着シートを幅10mmの帯状に裁断して測定サンプルを作製した。その一方の粘着面を覆うPETフィルム(剥離ライナー)を剥がし、剥離処理されていない厚さ25μmのPETフィルムに貼り付けて裏打ちした。23℃、50%RHの標準環境下にて、上記サンプルの他方の粘着面を覆う剥離ライナーを剥がし、2kgのローラを1往復させて被着体に圧着した。これを上記標準環境下に所定時間保持した後、同環境下において、万能引張圧縮試験機(ミネベア社製、装置名「引張圧縮試験機、TG−1kN」)を使用し、JIS Z0237(2004)に準じて、引張速度300mm/分の条件で180°引き剥がし粘着力[N/10mm]を測定した。
剥離強度測定は、(1)被着体の表面にそのまま(すなわち、清掃処理を行うことなく)粘着シートを圧着した場合と、(2)IPAを染み込ませた布で上記被着体の表面を1方向に2回拭き取る清掃処理を行った後に粘着シートを圧着した場合とのそれぞれについて、粘着シートの圧着から30分後および7日後に行った。
得られた結果を表5に示す。
【0280】
上記表に示されるように、アミノ基含有(メタ)アクリレート(モノマーA)を含有するモノマー混合物の部分重合物であるシロップ(重合反応物(a))を用いて得られた例A1〜A3の粘着シートは、被着体としてのEPDMに対して、構成モノマー成分にモノマーAを含まない例A4,A5の粘着シートに比べて明らかに高い粘着性(剥離強度)を示した。より詳しくは、モノマーAに代えてAAと2HEAを用いた例A4に比べて、清掃処理の有無を問わず、また初期(30分後)および経時後(7日後)のいずれの条件でも、より高い剥離強度を示した。また、モノマーAに代えてアミド基含有(メタ)アクリレート(ACMO)を用いた例A5と比べても、より高いEPDM粘着性を示した。特に、清掃処理後のEPDMに対しては、モノマーAの使用によるEPDM粘着性の改善効果がより顕著に認められた。
また、モノマーAのなかでもDMAEMを用いた例A3では、DMAEAを用いた例A1,A2に比べて、清掃処理なしの条件では経時による剥離強度の低下がより少なく、清掃処理ありの条件では経時により剥離強度が向上するという、より好ましい結果が得られた。
【0281】
<実験例5>
[粘着シートの作製]
(例B1)
2EHA76部、BA20部、AA4部および2HEA0.15部からなるモノマー混合物を、例A1と同様に部分的に光重合させて、Mwが115×10
4のポリマーと未反応モノマーとを含むシロップ(b1)を得た。
シクロヘキシルメタクリレート(CHMA)97部および
DMAEM3部からなるモノマー混合物に、n−ドデシルメルカプタンを配合し、窒素ガスを吹き込んで溶存酸素を除去した。次いで、この混合物を90℃に昇温し、過酸化物系開始剤として日油株式会社製の商品名「パーヘキシルO」0.005部および同社製の商品名「パーヘキシルD」0.01部を加えた。これを90℃で1時間攪拌した後、1時間かけて150℃まで昇温し、150℃で1時間攪拌した。次いで、1時間かけて170℃まで昇温し、170℃で60分間攪拌した。次に、170℃の状態で減圧し、1時間攪拌して残留モノマーを除去して、Mwが0.2×10
4のアクリル系オリゴマー(b1)を得た。
上記シロップ(b1)100部に、上記オリゴマー(b1)20部、TMPTA0.10部および2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(BASF社製、商品名「イルガキュア651」)0.10部を添加して混合することにより、本例に係る粘着剤組成物を調製した。
この粘着剤組成物を用いた他は例A1と同様にして、本例に係る粘着シートを得た。この粘着シートは、粘着剤層に含まれる全重合物の構成モノマー成分の質量(m
T)に占めるアミノ基含有(メタ)アクリレート(ここではDMAEM)の質量(m
A)の割合(m
A/m
T)が0.5%である。また、m
Tに占めるシクロアルキル(メタ)アクリレート(ここではCHMA)の質量(m
C)の割合(m
C/m
T)は16.2%である。
【0282】
(例B2〜B5)
アクリル系オリゴマー(b1)の作製において、n−ドデシルメルカプタンの使用量を調節することにより、表6に示すMwのアクリル系オリゴマー(b2)〜(b5)を得た。これらのオリゴマー(b2)〜(b5)をそれぞれ用いた他は例B1と同様にして、例B2〜B5に係る粘着シートを得た。
【0283】
(例B6)
CHMA94部および
DMAEM6部からなるモノマー混合物を用いた点以外はアクリル系オリゴマー(b1)の作製と同様にして、Mwが0.6×10
4のアクリル系オリゴマー(b6)を得た。このオリゴマー(b6)を用いた他は例B1と同様にして、本例に係る粘着シートを得た。
【0284】
(例B7)
CHMA91部および
DMAEM9部からなるモノマー混合物を用いた点以外はアクリル系オリゴマー(b1)の作製と同様にして、Mwが0.63×10
4のアクリル系オリゴマー(b7)を得た。このオリゴマー(b7)を用いた他は例B1と同様にして、本例に係る粘着シートを得た。
【0285】
(例B8)
モノマーとしてCHMAのみを用いた点以外はアクリル系オリゴマー(b1)の作製と同様にして、Mwが0.5×10
4のアクリル系オリゴマー(b8)を得た。このオリゴマー(b8)を用いた他は例B1と同様にして、本例に係る粘着シートを得た。
【0286】
[性能評価]
(対EPDM剥離強度;引張速度300mm/分)
上記で得られた各粘着シートにつき、実験例4と同様にして対EPDM剥離強度を測定した。
得られた結果を表6に示す。
【0288】
上記表に示されるように、モノマー混合物の部分重合物(シロップ)と、モノマーAに由来するモノマー単位を含むオリゴマーとを配合して調製された粘着剤組成物を用いて得られたB1〜B7の粘着シートは、モノマーAに由来するモノマー単位を含まない粘着剤組成物を用いて得られた例B8の粘着シートに比べて、清掃処理の有無に拘らず、より良好な対EPDM粘着性を示した。より具体的には、例B1〜B7の粘着シートは、初期(30分後)において例B8と同等以上の剥離強度を示し、経時後(7日後)には例B8よりも明らかに高い剥離強度を示した。すなわち、モノマーAの使用による対EPDM剥離強度向上効果は、初期においても認められ、経時後においてはよりよく発揮される傾向にあった。なお、例B1〜例B5の比較から、少なくともMwが0.2×10
4以上の範囲では、使用するオリゴマーのMwが低くなると、対EPDM剥離強度(特に初期剥離強度)を向上させる効果は概して高くなる傾向にあることがわかる。
【0289】
<実験例6>
[粘着シートの作製]
(例C1)
2EHA78部、シクロヘキシルアクリレート(CHA)20部およびDMAEM2部からなるモノマー混合物を、例A1と同様に部分的に光重合させて、重量平均分子量(Mw)が30×10
4のポリマーと未反応モノマーとを含むシロップ(c1)を得た。このシロップ(c1)における上記モノマー混合物の重合転化率は、約30%であった。
上記シロップ(c1)100部に、TMPTA0.16部および2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(BASF社製、商品名「イルガキュア651」)0.12部を添加して混合することにより、本例に係る粘着剤組成物を調製した。この粘着剤組成物を用いて、光量を3000mJ/cm
2とした点以外は例A1と同様にして、本例に係る粘着シートを得た。
この粘着シートを構成する粘着剤層は、全構成モノマー成分の質量(m
T)に占めるアミノ基含有(メタ)アクリレート(ここではDMAEM)の質量(m
A)の割合(m
A/m
T)が2.0%である。また、m
Tに占めるシクロアルキル(メタ)アクリレート(ここではCHA)の質量(m
C)の割合(m
C/m
T)は20.0%である。上記粘着剤層の構成モノマー成分に含まれるアミノ基含有(メタ)アクリレートの質量(m
A)とシクロアルキル(メタ)アクリレートの質量(m
C)との比(m
A/m
C)は0.10である。
【0290】
(例C2)
CHMA97部およびメタクリル酸(MAA)3部からなるモノマー混合物を用いた点以外はアクリル系オリゴマー(b1)の作製と同様にして、Mwが0.35×10
4のアクリル系オリゴマー(c2)を得た。
例C1で作製したシロップ(c1)100部に、上記オリゴマー(c2)20部、TMPTA0.16部および2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(BASF社製、商品名「イルガキュア651」)0.10部を添加して混合することにより、本例に係る粘着剤組成物を調製した。この粘着剤組成物を用いた他は例C1と同様にして、本例に係る粘着シートを得た。
【0291】
(例C3)
CHMA97部および
DMAEM3部からなるモノマー混合物を用いた点以外はアクリル系オリゴマー(b1)の作製と同様にして、Mwが0.5×10
4のアクリル系オリゴマー(c3)を得た。
例C1で作製したシロップ(c1)100部に、上記オリゴマー(c3)20部、TMPTA0.16部および2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(BASF社製、商品名「イルガキュア651」)0.10部を添加して混合することにより、本例に係る粘着剤組成物を調製した。この粘着剤組成物を用いた他は例C1と同様にして、本例に係る粘着シートを得た。この粘着シートを構成する粘着剤層は、全重合物の構成モノマー成分の質量(m
T)に占めるDMAEMの質量(m
A)の割合(m
A/m
T)が2.2%である。また、上記DMAEMのうち、オリゴマー(c3)に由来するDMAEMの質量(A
O)とシロップ(c1)に由来するDMAEMの質量(A
S)との比(A
O/A
S)は0.3である。
【0292】
(例C4)
CHMA70部および
DMAEM30部からなるモノマー混合物を用いた点以外はアクリル系オリゴマー(b1)の作製と同様にして、Mwが0.5×10
4のアクリル系オリゴマー(c4)を得た。
例C1で作製したシロップ(c1)100部に、上記オリゴマー(c4)20部、TMPTA0.16部および2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(BASF社製、商品名「イルガキュア651」)0.12部を添加して混合することにより、本例に係る粘着剤組成物を調製した。この粘着剤組成物を用いた他は例C1と同様にして、本例に係る粘着シートを得た。
なお、本例においてアクリル系オリゴマー(c4)を得るためのモノマー混合物には、モノマー100部に対して6部のn−ドデシルメルカプタンを配合した。本実験例および他の実験例において、アクリル系オリゴマー(c4)以外のアクリル系オリゴマーを作製する際には、所望のMwを有するアクリル系オリゴマー(b)が得られるように、必要に応じてn−ドデシルメルカプタンの使用量を調節した。
【0293】
(例C5)
CHMA50部および
DMAEM50部からなるモノマー混合物を用いた点以外はアクリル系オリゴマー(b1)の作製と同様にして、Mwが0.5×10
4のアクリル系オリゴマー(c5)を得た。
このオリゴマー(c5)を用いた点以外は例C4と同様にして、本例に係る粘着剤組成物を調製した。この粘着剤組成物を用いた他は例C1と同様にして、本例に係る粘着シートを得た。
【0294】
(例C6)
2EHA76部、CHA20部およびDMAEM4部からなるモノマー混合物を用いた点以外はシロップ(c1)の作製と同様にして、重量平均分子量(Mw)が30×10
4のポリマーと未反応モノマーとを含むシロップ(c6)を得た。重合転化率は約30%であった。
このシロップ(c6)100部に、TMPTA0.16部および2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(BASF社製、商品名「イルガキュア651」)0.10部を添加して混合することにより、本例に係る粘着剤組成物を調製した。この粘着剤組成物を用いた点以外は例C1と同様にして、本例に係る粘着シートを得た。
【0295】
(例C7)
例C6で作製したシロップ(c6)100部に、例C4で作成したオリゴマー(c4)20部、TMPTA0.16部および2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(BASF社製、商品名「イルガキュア651」)0.10部を添加して混合することにより、本例に係る粘着剤組成物を調製した。この粘着剤組成物を用いた点以外は例C1と同様にして、本例に係る粘着シートを得た。
【0296】
(例C8)
オリゴマー(c4)に代えてオリゴマー(c5)を用いた他は例C7と同様にして、本例に係る粘着シートを得た。
【0297】
(例C9)
2EHA80部およびCHA20部からなるモノマー混合物を用いた点以外はシロップ(c1)の作製と同様にして、重量平均分子量(Mw)が30×10
4のポリマーと未反応モノマーとを含むシロップ(c9)を得た。重合転化率は約30%であった。
このシロップ(c9)100部に、例C2で作製したオリゴマー(c2)20部、TMPTA0.16部および2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(BASF社製、商品名「イルガキュア651」)0.12部を添加して混合することにより、本例に係る粘着剤組成物を調製した。この粘着剤組成物を用いた点以外は例C1と同様にして、本例に係る粘着シートを得た。
【0298】
[性能評価]
(対EPDM剥離強度;引張速度300mm/分)
上記で得られた各粘着シートにつき、実験例4と同様にして対EPDM剥離強度を測定した。ただし、本実験例では、IPAを染み込ませた布で表面を1方向に2回拭き取る清掃処理を行った被着体について、圧着から30分後の剥離強度のみを測定した。
得られた結果を表7に示す。
【0300】
上記表に示されるように、シロップおよびオリゴマーの少なくとも一方が構成モノマー成分としてモノマーAを含む例C1〜例C8の粘着シートによると、いずれの構成モノマー成分にもモノマーAを含まない例C9の粘着シートに比べて、より高い対EPDM剥離強度が得られることが確認された。また、m
A/m
Tが2.6%よりも大きい例C4によると、m
A/m
Tが2.6%以下である例C3に比べて、より高い対EPDM剥離強度が得られた。
また、シロップとオリゴマーとの両方が構成モノマー成分としてモノマーAを含む例C3,C4,C5,C7,C8によると、構成モノマー成分にモノマーAを含まないオリゴマーを用いた例C2や、オリゴマーを用いない例C1,C6に比べて、より高い対EPDM剥離強度が得られた。なかでも、A
O/A
Sが0.5以上である例C4,C5,C7,C8によると、A
O/A
Sが0.5未満である例C3に比べて、さらに高い対EPDM剥離強度が得られた。また、同じシロップを用いた粘着剤組成物において、m
A/m
Cの値が0.20より大きい例C4,C5によると、m
A/m
Cの値が0.20以下である例C3に比べて、より高い対EPDM剥離強度が得られた。同様に、同じシロップを用いた粘着剤組成物において、m
A/m
Cの値が0.20より大きい例C7,C8によると、m
A/m
Cの値が0.20以下である例C6に比べて、より高い対EPDM剥離強度が得られた。
【0301】
<実験例7>
[粘着シートの作製]
(例D1)
2EHA38.2部、BA38.2部、CHA21.2部およびDMAEM2.3部からなるモノマー混合物を、例A1と同様に部分的に光重合させて、Mwが70×10
4のポリマーと未反応モノマーとを含むシロップ(d1)を得た。重合転化率は約30%であった。
このシロップ(d1)100部に、例C4で作製したオリゴマー(c4)20部、TMPTA0.10部および綜研化学社製の光重合開始剤(商品名「P−02」)0.30部を添加して混合することにより、本例に係る粘着剤組成物を調製した。この粘着剤組成物を用いた他は例A1と同様にして、本例に係る粘着シートを得た。
【0302】
(例D2,D3)
シロップ(d1)100部に対するTMPTAの配合量をそれぞれ0.12部および0.14部とした他は例D1と同様にして、例D2,D3に係る粘着シートを得た。
【0303】
(例D4,D5)
TMPTAに代えて、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート(大阪有機化学工業社製、商品名「ビスコート360」)(TMP−3P)を、シロップ(d1)100部に対してそれぞれ0.16部および0.18部配合した。その他の点については例D1と同様にして、例D4,例D5に係る粘着シートを得た。
【0304】
(例D6〜D10)
オリゴマー(c4)に代えて例C5で作製したオリゴマー(c5)を用いた他は例D1〜D5とそれぞれ同様にして、例D6〜D10に係る粘着シートを得た。
【0305】
(例E1〜E10)
2EHA37.9部、BA37.9部、CHA21.1部およびDMAEM3.1部からなるモノマー混合物を、例A1と同様に部分的に光重合させて、重量平均分子量(Mw)が70×10
4のポリマーと未反応モノマーとを含むシロップ(e1)を得た。重合転化率は約30%であった。
シロップ(d1)に代えてシロップ(e1)を用いた他は例D1〜D10とそれぞれ同様にして、例E1〜E10に係る粘着シートを得た。
なお、例E1〜E10において使用したシロップ(e1)のTgは約−48℃、例E1〜E5において使用したオリゴマー(c4)のTgは約50℃、例E6〜E10において使用したオリゴマー(c5)のTgは約40℃である。例E1〜E10に係る粘着シートの粘着剤層を構成する全構成モノマー成分の組成から算出されるTgは、約−36℃〜−38℃である。
【0306】
(例E11)
2EHA40部、BA40部およびCHA20部からなるモノマー混合物を、例A1と同様に部分的に光重合させて、重量平均分子量(Mw)が70×10
4のポリマーと未反応モノマーとを含むシロップ(e11)を得た。重合転化率は約30%であった。
このシロップ(e11)100部に、例B8で作製したオリゴマー(b8)20部、TMPTA0.12部および綜研化学社製の光重合開始剤(商品名「P−02」)0.30部を添加して混合することにより、本例に係る粘着剤組成物を調製した。この粘着剤組成物を用いた他は例A1と同様にして、本例に係る粘着シートを得た。
【0307】
(例F1〜F10)
2EHA37.6部、BA37.6部、CHA20.9部およびDMAEM3.8部からなるモノマー混合物を、例A1と同様に部分的に光重合させて、重量平均分子量(Mw)が70×10
4のポリマーと未反応モノマーとを含むシロップ(f1)を得た。重合転化率は約30%であった。
シロップ(d1)に代えてシロップ(f1)を用いた他は例D1〜D10とそれぞれ同様にして、例F1〜F10に係る粘着シートを得た。
【0308】
[性能評価]
(対EPDM剥離強度;引張速度300mm/分)
上述した標準EPDM片を被着体として、以下の手順で180℃引き剥がし粘着力(対EPDM剥離強度)を測定した。すなわち、上記で得られた各粘着シートを幅15mmの帯状に裁断して測定サンプルを作製した。その一方の粘着面を覆うPETフィルム(剥離ライナー)を剥がし、剥離処理されていない厚さ25μmのPETフィルムに貼り付けて裏打ちした。23℃、50%RHの標準環境下にて、上記サンプルの他方の粘着面を覆う剥離ライナーを剥がし、2kgのローラを1往復させて被着体に圧着した。これを上記標準環境下に所定時間保持した後、同環境下において、万能引張圧縮試験機(ミネベア社製、装置名「引張圧縮試験機、TG−1kN」)を使用し、JIS Z0237(2004)に準じて、引張速度300mm/分の条件で180°引き剥がし粘着力[N/15mm]を測定した。
剥離強度測定においては、IPAを染み込ませた布で上記被着体の表面を1方向に2回拭き取る清掃処理を行った後に粘着シートを圧着した。その圧着から20分後および7日後に剥離強度を測定した。
【0309】
(保持力)
上記で得られた各粘着シートを幅20mmの帯状に裁断して測定サンプルを作製した。その一方の粘着面を覆うPETフィルム(剥離ライナー)を剥がし、剥離処理されていない厚さ25μmのPETフィルムに貼り付けて裏打ちした。次いで、上記サンプルの他方の粘着面を覆う剥離ライナーを剥がし、被着体としてのステンレス鋼(SUS)板に該サンプルの一端を、幅20mm、長さ20mmの接着面積にて貼り付けた。これを23℃、50%RHの標準環境下に30分間保持した後、JIS Z0237(2004)に準じて、上記SUS板を40℃の環境下に垂下し、上記サンプルの自由端に500gの荷重を付与した。その荷重が付与された状態で40℃の環境下に2時間保持し、サンプルがSUS板から剥がれて落下するまでの時間を測定した。2時間経過後に落下していなかったサンプルについては、最初の貼り付け位置からのズレ距離(mm)を測定した。測定は2回行い(すなわちn=2)、落下するまでの平均時間または2時間経過後の平均ズレ距離を算出した。一方のサンプルが落下し、他方のサンプルが落下しなかった場合には、両方の結果を併記した。
【0310】
得られた結果を表8〜表10に示す。これらの表には、各例に係る粘着シートを構成する粘着剤層について、上述した方法により測定したゲル分率の値を併せて示している。
【0314】
例8〜表10に示されるように、粘着層に含まれるアクリル系重合体の構成モノマー成分としてモノマーAを含む例D1〜D10、E1〜E10およびF1〜F10の粘着シートは、構成モノマー成分にモノマーAを含まない例E11の粘着シートに比べて、初期(20分後)および経時後(7日後)のいずれにおいても、明らかに高い対EPDM剥離強度を示した。また、これらの表に示される結果から、粘着剤の凝集性(保持力)の観点からは、ゲル分率25%以上が好ましく、30%以上がより好ましいことがわかる。
【0315】
<実験例8>
[粘着シートの作製]
(例G1)
2EHA79部、CHA20.3部およびDMAEM0.8部からなるモノマー混合物を、例A1と同様に部分的に光重合させて、重量平均分子量(Mw)30×10
4のポリマーと未反応モノマーとを含むシロップ(g1)を得た。重合転化率は約30%であった。
このシロップ(g1)100部に、例C4で作製したオリゴマー(c4)20部、TMPTA0.10部および綜研化学社製の光重合開始剤(商品名「P−02」)0.30部を添加して混合することにより、本例に係る粘着剤組成物を調製した。この粘着剤組成物を用いた他は例A1と同様にして、本例に係る粘着シートを得た。
【0316】
(例G2)
CHMA50部、イソボルニルメタクリレート(IBXMA)20部および
DMAEM30部からなるモノマー混合物を用いた点以外はアクリル系オリゴマー(b1)の作製と同様にして、Mwが0.5×10
4のアクリル系オリゴマー(g2)を得た。オリゴマー(c4)に代えてオリゴマー(g2)を用いた他は例G1と同様にして、本例に係る粘着シートを得た。
【0317】
(例G3)
CHMA15部、IBXMA35部および
DMAEM50部からなるモノマー混合物を用いた点以外はアクリル系オリゴマー(b1)の作製と同様にして、Mwが0.5×10
4のアクリル系オリゴマー(g3)を得た。オリゴマー(c4)に代えてオリゴマー(g3)を用いた他は例G1と同様にして、本例に係る粘着シートを得た。
【0318】
(例G4)
例C4で作製したオリゴマー(c4)に代えて例C5で作製したオリゴマー(c5)を用いた他は例G1と同様にして、本例に係る粘着シートを得た。
【0319】
[性能評価]
(対EPDM剥離強度;引張速度300mm/分)
上記で得られた各粘着シートにつき、実験例4と同様にして対EPDM剥離強度を測定した。
剥離強度測定は、(1)被着体の表面にそのまま(すなわち、清掃処理を行うことなく)粘着シートを圧着した場合と、(2)IPAを染み込ませた布で上記被着体の表面を1方向に2回拭き取る清掃処理を行った後に粘着シートを圧着した場合とのそれぞれについて、粘着シートの圧着から20分後および7日後に行った。
得られた結果を表11に示す。
【0321】
上記表に示されるように、オリゴマーとしてCHMAとIBXMAとモノマーAとの共重合体を用いた例G2,G3の粘着シートは、オリゴマーとしてCHMAとモノマーAとの共重合体を用いた例G1,G4の粘着シートと同様、EPDMに対する良好な粘着性を示すものであった。特に、例G3の結果は、IBXMAとモノマーAとを含む共重合組成のオリゴマーを用いることにより、対EPDM剥離強度に特に優れた粘着シートが実現される可能性を示している。
【0322】
<実験例9>
[粘着シートの作製]
(例J1〜J4)
例E2,例E5,例E7および例E10に係る粘着剤組成物をそれぞれ用い、各粘着剤組成物を光照射後の厚さが50μmとなるように塗付した点以外は例D1と同様にして、例J1,例J2,例J3および例J4に係る粘着シートを得た。
【0323】
(例J5)
例E11で作製したシロップ(e11)100部に、例C4で作製したオリゴマー(c4)20部、TMPTA0.12部および綜研化学社製の光重合開始剤(商品名「P−02」)0.30部を添加して混合することにより、本例に係る粘着剤組成物を調製した。この粘着剤組成物を用いた点以外は例J1と同様にして、本例に係る粘着シートを得た。
【0324】
(例J6)
例E11に係る粘着剤組成物を用い、該粘着剤組成物を光照射後の厚さが50μmとなるように塗付した点以外は例D1と同様にして、本例に係る粘着シートを得た。
【0325】
上記で得られた粘着シートについて、各種の被着体に対する剥離強度を測定した。
(対EPDM剥離強度)
上述した標準EPDM片を被着体として、以下の手順で180°引き剥がし粘着力(対EPDM剥離強度)を測定した。すなわち、各粘着シートを幅10mmの帯状に裁断して測定サンプルを作製した。その一方の粘着面を覆うPETフィルム(剥離ライナー)を剥がし、剥離処理されていない厚さ25μmのPETフィルムに貼り付けて裏打ちした。23℃、50%RHの標準環境下にて、上記サンプルの他方の粘着面を覆う剥離ライナーを剥がし、2kgのローラを1往復させて被着体に圧着した。これを上記標準環境下に所定時間保持した後、同環境下において、万能引張圧縮試験機(ミネベア社製、装置名「引張圧縮試験機、TG−1kN」)を使用し、JIS Z0237(2004)に準じて、引張速度300mm/分の条件で180°引き剥がし粘着力[N/10mm]を測定した。
剥離強度測定においては、IPAを染み込ませた布で上記被着体の表面を1方向に10回拭き取る清掃処理を行った後に粘着シートを圧着した。その圧着から7日後に剥離強度を測定した。
【0326】
(対PP剥離強度)
被着体として新神戸電機社製のポリプロピレン板(PP板)を使用した点、圧着前の清掃処理においてIPAに代えてエチルアルコールを使用した点および該エチルアルコールによる拭き取り回数を1方向に2回とした点以外は上記対EPDM剥離強度の測定と同様にして、測定サンプルの他方の粘着面を上記被着体に圧着した。その圧着から20分後および7日後に、上記対EPDM剥離強度の測定と同様に引張速度300mm/分の条件で180°引き剥がし粘着力[N/10mm]を測定した。
【0327】
(対ABS剥離強度)
被着体として新神戸電機社製のアクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体樹脂板(ABS板)を使用した点以外は上記対PP剥離強度の測定と同様にして、圧着から20分後および7日後における180°引き剥がし粘着力[N/10mm]を測定した。
【0328】
(対PS剥離強度)
被着体としてPR東プラ社製の高密度ポリスチレン板(PS板)を使用した点以外は上記対PP剥離強度の測定と同様にして、圧着から20分後および7日後における180°引き剥がし粘着力[N/10mm]を測定した。
得られた結果を表12に示す。
【0330】
上記表に示されるように、構成モノマー成分にモノマーAを含む粘着剤組成物から得られた例J1〜J5の粘着シートは、構成モノマー成分にモノマーAを含まない粘着剤組成物から得られた例J6の粘着シートに比べて対EPDM剥離強度の点で明らかに優れていた。これら例J1〜J5の粘着シートは、低極性材料であるポリオレフィン(ここではポリプロピレン)に対しても良好な粘着性を示した。また、ABS板やポリスチレン板に対する剥離強度も高かった。このように、例J1〜J5の粘着シートは、低極性表面に対する粘着性が改善されたことにより、各種の被着体に対して優れた粘着性を示すものであった。シロップおよびオリゴマーの両方が構成モノマー成分にモノマーAを含む粘着剤組成物から得られた例J1〜J4では、シロップおよびオリゴマーのいずれか一方が構成モノマー成分にモノマーAを含む粘着剤組成物から得られた例J5に比べて、さらに良好な結果が得られる傾向であった。
【0331】
<実験例10>
[気泡含有層を含む粘着シートの作製]
(例M1)
光照射後の厚さが90μmとなるように粘着剤組成物を塗付した点以外は例E2と同様にして、非気泡含有層からなる粘着シートを作製した。この粘着シートを、例L1で作製した厚さ1.2mmの気泡含有粘着層の一方の表面に貼り合わせた。このようにして、気泡含有粘着層とその片面に積層された非気泡含有粘着層(粘着剤層(A))とを有する合計厚さ約1.29mmの粘着シートを得た。この例M1に係る粘着シートにつき、以下の性能評価を行った。
【0332】
[性能評価]
粘着シートを幅10mmの帯状に裁断して測定サンプルを作製した。その一方の粘着面(気泡含有粘着層の表面)を覆うPETフィルム(剥離ライナー)を剥がし、剥離処理されていない厚さ50μmのPETフィルムに貼り付けて裏打ちした。23℃、50%RHの標準環境下にて、上記測定サンプルの他方の粘着面(非気泡含有粘着層の表面)を覆う剥離ライナーを剥がし、2kgのローラを3往復させて被着体に圧着した。
被着体としては標準EPDM片を使用した。IPAを染み込ませた布で上記被着体の背面を軽く拭き、該背面を両面テープでPP板に固定して被着体ユニットを作製した。上記測定サンプルの圧着は、被着体の表面(貼付対象面)の清掃処理を行うことなく、上記被着体ユニットを所定の温度環境下に保持して被着体を所定温度(被着体温度)に調整し、該被着体ユニットを上記標準環境下に取り出した後すぐに行った。上記被着体温度は、0℃、23℃、60℃、80℃、120℃または150℃とした。保持時間は2分程度とした。
被着体に圧着した測定サンプルを上記標準環境下に72時間保持した後、同環境下において、万能引張圧縮試験機(ミネベア社製、装置名「引張圧縮試験機、TG−1kN」)を使用し、JIS Z0237(2004)に準じて、引張速度50mm/分の条件で180°引き剥がし粘着力[N/10mm]を測定した。結果を表13に示す。
【0334】
上記表に示されるように、被着体を常温以上の温度に加熱した状態で粘着シートを貼り付けることにより、さらに剥離強度が向上する傾向が認められた。被着体温度75℃以上では特に良好な結果が得られた。
【0335】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0336】
また、以上の説明から明らかなように、この明細書により開示される事項には以下のものが含まれる。
【0337】
(1a)粘着シートであって、
該粘着シートの少なくとも一方の表面は粘着面として構成されており、
前記少なくとも一方の表面は、アクリル系重合物を含むアクリル系粘着剤層の表面であり、
前記アクリル系重合物は、その構成モノマー成分としてアミノ基含有(メタ)アクリレートを含み、
少なくとも1つの気泡含有層を含む、粘着シート。
【0338】
(2a) 前記気泡含有層を含む支持層と、該支持層に支持された前記アクリル系粘着剤層とを含む、上記(1a)に記載の粘着シート。
【0339】
(3a) 前記気泡含有層として、気泡を含有する粘着剤からなる気泡含有粘着層を有する、上記(1a)または(2a)に記載の粘着シート。
【0340】
(4a) 前記気泡含有層として、プラスチック発泡体により形成された発泡体層を含む発泡シートを有する、上記(1a)から(3a)のいずれかに記載の粘着シート。
【0341】
(5a) 前記粘着シートの10%圧縮硬さが0.01Pa〜0.07Paである、上記(1a)から(4a)のいずれか一項に記載の粘着シート。
【0342】
(6a) 前記粘着シートの破断強度が0.3Pa〜2.5Paである、上記(1a)から(5a)のいずれかに記載の粘着シート。
【0343】
また、以上の説明から明らかなように、この明細書により開示される事項には、さらに以下のものが含まれる。
【0344】
(1b)オレフィン系ゴム材料からなる表面に貼り付けられる粘着シートであって、
前記粘着シートは、前記オレフィン系ゴム材料からなる表面に貼り付けられる粘着面を備え、
前記粘着面は、アクリル系重合物を含むアクリル系粘着剤層の表面であり、
前記アクリル系重合物は、その構成モノマー成分としてアミノ基含有(メタ)アクリレートを含む、オレフィン系ゴム貼付用粘着シート。
【0345】
(2b)前記アミノ基含有(メタ)アクリレートは、前記アクリル系粘着剤層に含まれる全重合物の構成モノマー成分のうち2.6質量%を超える割合で含まれている、上記(1b)に記載のオレフィン系ゴム貼付用粘着シート。
【0346】
(3b)前記アクリル系粘着剤層は、アクリル系粘着剤組成物を用いて形成された層であり、
前記アクリル系粘着剤組成物は、鎖状アルキル(メタ)アクリレートを含むモノマー混合物の重合反応物(a)を含み、
前記モノマー混合物には、該モノマー混合物の0.2質量%を超える割合で前記アミノ基含有(メタ)アクリレートが含まれている、上記(1b)または(2b)に記載のオレフィン系ゴム貼付用粘着シート。
【0347】
(4b)前記アクリル系粘着剤層は、アクリル系粘着剤組成物を用いて形成された層であり、
前記アクリル系粘着剤組成物は、鎖状アルキル(メタ)アクリレートを含むモノマー混合物の重合反応物(a)と、重量平均分子量が2×10
4以下のアクリル系オリゴマー(b)とを含有し、
前記重合反応物(a)および前記アクリル系オリゴマー(b)の少なくとも一方は、その構成モノマー成分として前記アミノ基含有(メタ)アクリレートを含む、上記(1b)から(3b)のいずれかに記載のオレフィン系ゴム貼付用粘着シート。
【0348】
(5b)前記重合反応物(a)および前記アクリル系オリゴマー(b)は、いずれも、その構成モノマー成分として前記アミノ基含有(メタ)アクリレートを含む、上記(4b)に記載のオレフィン系ゴム貼付用粘着シート。
【0349】
(6b)粘着シート付き部品であって、
オレフィン系ゴム材料からなる表面を備える部材と、
少なくとも一方の表面が粘着面として構成されている粘着シートとを含み、
前記粘着面が前記オレフィン系ゴム材料からなる表面に貼り付けられており、
前記粘着面は、アクリル系重合物を含むアクリル系粘着剤層の表面であり、
前記アクリル系重合物は、その構成モノマー成分としてアミノ基含有(メタ)アクリレートを含む、粘着シート付き部品。
【0350】
(7b)前記粘着面は、前記オレフィン系ゴム材料からなる表面に直接貼り付けられている、上記(6b)に記載の粘着シート付き部品。
【0351】
(8b)前記オレフィン系ゴム材料に含まれるポリマーの主成分がエチレンプロピレンジエンゴムである、上記(6b)または(7b)に記載の粘着シート付き部品。
【0352】
(9b)前記オレフィン系ゴム材料はカーボンブラックを含む、上記(6b)から(8b)のいずれかに記載の粘着シート付き部品。
【0353】
(10b)前記オレフィン系ゴム材料からなる表面を備える部材がウェザーストリップである、上記(6b)から(9b)のいずれかに記載の粘着シート付き部品。
【0354】
(11b)オレフィン系ゴム材料からなる表面を備えるオレフィン系ゴム成形体を用意する工程と、
少なくとも一方の表面が粘着面として構成されている粘着シートを用意する工程と、
前記オレフィン系ゴム材料からなる表面に前記粘着面を貼り付ける工程とを包含し、
ここで、前記粘着面は、アクリル系重合物を含むアクリル系粘着剤層の表面であり、
前記アクリル系重合物は、その構成モノマー成分としてアミノ基含有(メタ)アクリレートを含む、粘着シート付き部品製造方法。
【0355】
(12b)前記粘着面を貼り付ける工程では、前記オレフィン系ゴム材料からなる表面に前記粘着面を直接貼り付ける、上記(11b)に記載の方法。
【0356】
(13b)前記オレフィン系ゴム材料からなる表面に有機溶剤を含む洗浄液を接触させる清掃処理を施した後、その清掃処理後の表面に前記粘着面を直接貼り付ける、上記(11b)または(12b)に記載の方法。
【0357】
(14b)前記粘着面を貼り付ける工程は常温で行われる、上記(11b)から(13b)のいずれかに記載の方法。
【0358】
(15b)前記オレフィン系ゴム成形体がウェザーストリップである、上記(11b)から(14b)のいずれか一項に記載の方法。