特許第6357476号(P6357476)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6357476右心室内の三尖弁の下方のヒス束にリードを送達するシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6357476
(24)【登録日】2018年6月22日
(45)【発行日】2018年7月11日
(54)【発明の名称】右心室内の三尖弁の下方のヒス束にリードを送達するシステム
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/365 20060101AFI20180702BHJP
   A61M 29/00 20060101ALI20180702BHJP
   A61N 1/05 20060101ALI20180702BHJP
   A61N 1/37 20060101ALI20180702BHJP
   A61N 1/39 20060101ALI20180702BHJP
【FI】
   A61N1/365
   A61M29/00
   A61N1/05
   A61N1/37
   A61N1/39
【請求項の数】8
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2015-530061(P2015-530061)
(86)(22)【出願日】2013年8月29日
(65)【公表番号】特表2015-526254(P2015-526254A)
(43)【公表日】2015年9月10日
(86)【国際出願番号】US2013057381
(87)【国際公開番号】WO2014036317
(87)【国際公開日】20140306
【審査請求日】2015年3月24日
【審判番号】不服2017-1619(P2017-1619/J1)
【審判請求日】2017年2月3日
(31)【優先権主張番号】61/695,170
(32)【優先日】2012年8月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505003528
【氏名又は名称】カーディアック ペースメイカーズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】シュロス、アラン シー.
(72)【発明者】
【氏名】トックマン、ブルース エイ.
(72)【発明者】
【氏名】レディ、ジー.シャンタヌ
【合議体】
【審判長】 内藤 真徳
【審判官】 熊倉 強
【審判官】 船越 亮
(56)【参考文献】
【文献】 特表2006−506211(JP,A)
【文献】 特表2010−503449(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0259272(US,A1)
【文献】 国際公開第2009/135075(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/365 ,
A61M 29/00 ,
A61N 1/05 ,
A61N 1/37 ,
A61N 1/39
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
右心室内の三尖弁の下方のヒス束にリードを送達するシステムであって、
基端部と、先端チップを有する先端部と、前記先端チップに開口部を有する内腔と、前記先端部の予め成形された湾曲部と、を有する外側ガイドカテーテルと、
内側ガイドカテーテルであって、基端部と、先端チップを有する先端部と、前記先端部に沿って予め成形された湾曲部と、前記先端チップに開口部を有する内腔と、少なくとも1つの電極と、前記少なくとも1つの電極と電気的に接続しかつ前記基端部まで延在する少なくとも1つの導体と、を有しており、前記外側ガイドカテーテルの内腔内で移動可能であり、かつ、前記外側ガイドカテーテルの先端チップの内腔の開口部から伸長可能である内側ガイドカテーテルと、
基端部と、先端部と、前記先端部の固定要素と、を有するアンカワイヤであって、前記内側ガイドカテーテルの内腔内で移動可能であり、かつ、前記内側ガイドカテーテルの先端チップの内腔の開口部から伸長可能であり、可撓性であり、前記固定要素が、前記ヒス束の組織を貫通して前記アンカワイヤを該ヒス束の組織に係留するように構成されている、アンカワイヤと、
植込み型リードであって、植込み型パルス発生器とインタフェースするように構成された基端部と、先端部と、前記先端部の少なくとも1つの電極と、前記少なくとも1つの電極に電気的に接続されかつ前記植込み型リードの基端部まで延在する少なくとも1つの導体と、前記ヒス束の組織を貫通し、かつ、前記植込み型リードを該ヒス束の組織に係留するように構成された固定要素と、前記アンカワイヤを収容するような寸法である内腔と、を有し、可撓性であり、前記アンカワイヤが前記ヒス束の組織に係留されかつ前記植込み型リードの内腔内に延在する間、前記固定要素前記ヒス束の組織に接触させるように、前記アンカワイヤ上を前進するように構成されている植込み型リードと、
を具備するシステム。
【請求項2】
前記外側ガイドカテーテルの先端部の湾曲部が150度と210度との間である、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記外側ガイドカテーテルの湾曲部が、前記外側ガイドカテーテルの第1軸を中心に回転可能であり、前記内側ガイドカテーテルの湾曲部が、前記内側ガイドカテーテルの湾曲部が前記外側ガイドカテーテルの先端チップの内腔の開口部を越えて延在するとき、第2軸を中心に前記外側ガイドカテーテルに対して回転可能であり、前記第1軸が前記第2軸と平行ではない、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記アンカワイヤの固定要素が第1らせん体であり、
前記植込み型リードの固定要素が、内腔を備えた第2らせん体であり、
前記第1らせん体および前記第2らせん体が、前記第1らせん体を前記第2らせん体の内腔を通して移動させることができるような寸法に設定されている、請求項に記載のシステム。
【請求項5】
前記アンカワイヤが、
前記アンカワイヤの基端部から先端部まで延在する導体と、
前記アンカワイヤの基端部から先端部まで前記導体を絶縁する電気絶縁体であって、前記固定要素が前記導体に電気的に接続され、さらに、前記固定要素が、前記ヒス束の組織から電気エネルギーを受け取り、または前記ヒス束の組織に電気エネルギーを送達するように、あるいはその両方を行うように、露出している、電気絶縁体と、
を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記外側ガイドカテーテルが、その湾曲部に沿った外面に電極を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記内側ガイドカテーテルの電極と前記アンカワイヤの固定要素とが、双極検知対として前記電極および前記固定要素により前記ヒス束からのバイオマーカ信号を検知するように構成された回路に電気的に接続されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記外側ガイドカテーテルの先端部の湾曲部が180度であり、前記外側ガイドカテーテルが、経血管的に導入され、上大静脈を下って延在し、右心室内で前記湾曲部を位置決めするように構成されており、
前記内側ガイドカテーテルの先端部の湾曲部が、前記外側ガイドカテーテルの湾曲部が右心室内にあり、かつ、前記内側ガイドカテーテルの湾曲部が前記外側ガイドカテーテルの内腔から延出するときに、前記ヒス束に近接する中隔壁の15ミリメートル下方に延在する、右心室内の三尖弁のすぐ下の標的領域のほうに、前記内側ガイドカテーテルの内腔の開口部を向けるような寸法に設定されている、請求項1に記載のシステム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、リード送達システムに関する。特に、本開示は、右心房からヒス束(房室束)を刺激するためのリードを安定させる送達システムに関する。
【背景技術】
【0002】
心調律管理システムは、患者の心臓を電気的に刺激してさまざまな心臓不整脈を治療するために有用である。心臓を電気的に刺激する提案されている方法は、ヒス束を刺激することを含む。ヒス束を直接刺激することにより、右心室および左心室の両方を生理学的に活性化させることができ、右心室尖部ペーシングで存在するペーシング誘発性同期不全を回避することができる。ヒス束を標的とする向上した送達システムが依然として必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は上記した懸案を鑑みてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
実施例1では、標的部位にリードを送達するシステムであって、基端部と、先端チップを有する先端部と、先端チップに開口部を有する内腔と、先端部の予め成形された湾曲部と、を有する外側ガイドカテーテルと、基端部と、先端チップを有する先端部と、先端チップに開口部を有する内腔と、少なくとも1つの電極と、少なくとも1つの電極と電気的に接続しかつ基端部まで延在する少なくとも1つの導体と、を有する内側ガイドカテーテルであって、外側ガイドカテーテルの内腔内で移動可能であり、かつ、外側ガイドカテーテルの先端チップの内腔の開口部から伸長可能である内側ガイドカテーテルと、基端部と、先端部と、先端部の固定要素と、を有するアンカワイヤであって、内側ガイドカテーテルの内腔内で移動可能であり、かつ、内側ガイドカテーテルの先端チップの内腔の開口部から伸長可能であり、可撓性であり、固定要素が、標的部位の組織を貫通してアンカワイヤを標的部位の組織に係留するように構成されている、アンカワイヤと、植込み型リードであって、植込み型パルス発生器とインタフェースするように構成された基端部と、先端部と、先端部の少なくとも1つの電極と、少なくとも1つの電極に電気的に接続されかつ植込み型リードの基端部まで延在する少なくとも1つの導体と、アンカワイヤを収容するような寸法である内腔と、を有し、可撓性であり、アンカワイヤが標的部位の組織に係留されかつ植込み型リードの内腔内に延在する間、植込み型リードの少なくとも1つの電極を標的部位に接触させるように、アンカワイヤ上で前進するように構成されている植込み型リードと、を具備するシステム。
【0005】
実施例2では、実施例1のシステムであって、標的部位が、右心室内の三尖弁の下方のヒス束である。
実施例3では、実施例1または2のいずれかのシステムであって、外側ガイドカテーテルの先端部の湾曲部が150度と210度との間である。
【0006】
実施例4では、実施例1〜3のいずれかのシステムであって、内側ガイドカテーテルが先端部に沿った湾曲部を備える。
実施例5では、実施例4のシステムであって、外側ガイドカテーテルの湾曲部が、外側ガイドカテーテルの第1軸を中心に回転可能であり、内側ガイドカテーテルの湾曲部が、内側ガイドカテーテルの湾曲部が外側ガイドカテーテルの先端チップの内腔の開口部を超えて延在するとき、第2軸を中心に外側ガイドカテーテルに対して回転可能であり、第1軸が第2軸と平行ではない。
【0007】
実施例6では、実施例1〜5のいずれかのシステムであって、植込み型リードが、標的部位の組織に貫通し、かつ、植込み型リードを標的部位の組織に係留するように構成された固定要素をさらに備える。
【0008】
実施例7では、実施例1〜6のいずれかのシステムであって、アンカワイヤの固定要素が第1らせん体であり、植込み型リードの固定要素が、内腔を備えた第2らせん体であり、第1らせん体および第2らせん体が、第1らせん体を第2らせん体の内腔を通して移動させることができるような寸法に設定されている。
【0009】
実施例8では、実施例1〜7のいずれかのシステムであって、アンカワイヤが、アンカワイヤの基端部から先端部まで延在する導体と、アンカワイヤの基端部から先端部まで導体を絶縁する電気絶縁体であって、固定要素が導体に電気的に接続され、さらに、固定要素が、標的部位の組織から電気エネルギーを受け取り、または前記標的部位の組織に電気エネルギーを送達するように、あるいはその両方を行うように、露出している電気絶縁体と、を備える。
【0010】
実施例9では、実施例1〜8のいずれかのシステムであって、外側ガイドカテーテルが、その湾曲部に沿った外面に電極を備える。
実施例10では、実施例1〜9のいずれかのシステムであって、内側ガイドカテーテルの電極とアンカワイヤの固定要素とが、双極検知対として電極および固定要素によりヒス束からのバイオマーカ信号を検知するように構成された回路に電気的に接続されている。
【0011】
実施例11では、右心室内の三尖弁の下方からヒス束にリードを送達するリード送達システムであって、基端部と、先端部と、先端チップと、先端チップに開口部を有する内腔と、先端部の予め成形された湾曲部と、を有する外側ガイドカテーテルであって、先端部の湾曲部がおよそ180度であり、外側ガイドカテーテルが、経血管的に導入され、上大静脈を下って延在し、右心室内で湾曲部を位置決めするように構成されている、外側ガイドカテーテルと、基端部と、先端部と、先端部に開口部を有する内腔と、先端部の少なくとも1つの電極と、電極から基端部まで延在するする少なくとも1つの導体と、先端部の湾曲部と、を有する内側ガイドカテーテルであって、外側ガイドカテーテルの内腔内で移動可能であり、かつ、外側ガイドカテーテルの先端チップの内腔の開口部から伸長可能であり、外側ガイドカテーテルの湾曲部が右心室内にあり、かつ、内側ガイドカテーテルの湾曲部が外側ガイドカテーテルの内腔から延出するとき、ヒス束に近接する中隔壁の約15ミリメートル下方に延在する、右心室内の三尖弁のすぐ下の標的領域において、内側ガイドカテーテルの先端部の湾曲部が、内側ガイドカテーテルの内腔の開口部を向けるような寸法である、内側ガイドカテーテルと、を具備するリード送達システム。
【0012】
実施例12では、実施例11のシステムであって、外側ガイドカテーテルをその基端部において回転させて、外側ガイドカテーテルの先端部の湾曲部をその中心軸を中心に回転させることができ、内側ガイドカテーテルの先端部の湾曲部が外側ガイドカテーテルの開口部を越えて延在するとき、内側ガイドカテーテルが外側ガイドカテーテルに対して回転可能であり、内側ガイドカテーテルの湾曲部が、外側ガイドカテーテルの中心軸に対して平行ではない軸に沿って回転可能である。
【0013】
実施例13では、実施例11または12のいずれかのシステムであって、基端部と、先端部と、先端部の固定要素と、を有するアンカワイヤであって、可撓性があり、内側ガイドカテーテルの内腔内で移動可能であり、かつ、内側ガイドカテーテルの開口部から伸長可能であり、固定要素が、標的部位の組織を貫通してアンカワイヤを標的領域の組織に係留するように構成されている、アンカワイヤをさらに備える。
【0014】
実施例14では、実施例13のシステムであって、アンカワイヤが、植込み型リードの内腔内で移動可能であり、かつ、リードがアンカワイヤ上を前進するときにリードを標的部位まで誘導するように構成されている。
【0015】
実施例15では、実施例13のシステムであって、内側ガイドカテーテルの電極とアンカワイヤの固定要素とが、双極検知対として電極および固定要素によりヒス束からのバイオマーカ信号を検知するように構成された回路に電気的に接続されている。
【0016】
実施例16では、ヒス束を刺激するリードを植え込む方法であって、外側ガイドカテーテルの少なくとも湾曲部を右心室内に導入するステップであって、外側ガイドカテーテルが外側ガイドカテーテルの先端部に開口部がある内腔を有する、ステップと、内側ガイドカテーテルの湾曲部を外側ガイドカテーテルの先端部の内腔の開口部から伸長させるステップであって、内側ガイドカテーテルが、外側ガイドカテーテルの内腔内で移動可能でありかつ内側ガイドカテーテルの先端部に開口部がある内腔を有する、ステップと、アンカワイヤの先端チップの固定要素を内側ガイドカテーテルの先端チップの開口部から伸長させるステップであって、アンカワイヤが、可撓性がありかつ内側ガイドカテーテルの内腔内で移動可能である、ステップと、アンカワイヤを右心室内の標的組織に、固定要素を組織に係合させることによって係留するステップであって、標的組織が、右心室内の三尖弁のすぐ下でありかつヒス束に近接する中隔壁の約15ミリメートル下に延在している、ステップと、植込み型リードの先端チップをアンカワイヤ上を標的組織まで前進させるステップであって、植込み型リードが内腔を有し、アンカワイヤが植込み型リードの前進中に植込型リードの内腔内にある、ステップを含む方法。
【0017】
実施例17では、実施例16の方法は、内側ガイドカテーテルの先端チップの電極を用いてヒス束を示すバイオマーカを検知することにより標的部位の位置を特定するステップをさらに含む。
【0018】
実施例18では、実施例17の方法であって、標的部位の位置を特定するステップが、固定要素を通してバイオマーカを示す信号を受け取ることによりバイオマーカを検知するステップをさらに含み、バイオマーカが、双極対としてアンカワイヤの固定要素と内側ガイドカテーテルの電極とによって検知される。
【0019】
実施例19では、実施例16〜18のいずれかの方法は、植込み型リードをアンカワイヤ上において標的組織まで前進させる前に、アンカワイヤが標的部位に取り付けられたままにしながら、アンカワイヤの上から外側ガイドカテーテルおよび内側ガイドカテーテルを取り除くステップをさらに含む。
【0020】
実施例20では、実施例16〜19のいずれかの方法は、内側ガイドカテーテルの湾曲部が、外側ガイドカテーテルの先端チップの内腔の開口部から伸長して内側ガイドカテーテルの先端チップを標的組織に接触させるとき、内側ガイドカテーテルを外側ガイドカテーテルに対して回転させるステップをさらに含む。
【0021】
実施例21では、植込み型リードであって、基端部と、先端部と、先端部の固定要素と、を有するアンカワイヤであって、固定要素が、組織を貫通してアンカワイヤを標的部位に係留するように構成されている、アンカワイヤと、植込み型リードであって、植込み型パルス発生器とインタフェースするように構成された基端コネクタと、先端部と、植込み型リードの先端部の少なくとも1つの電極と、少なくとも1つの電極に電気的に接続されかつ基端コネクタまで延在する少なくとも1つの導体と、アンカワイヤを収容するような寸法である内腔と、を有し、可撓性であり、アンカワイヤが標的部位の組織に係留され、かつ、アンカワイヤが植込み型リードの内腔内に延在する間、アンカワイヤ上を前進して少なくとも1つの電極を標的部位に接触させるように構成された植込み型リードと、アンカワイヤが植込み型リードの内腔内にあるとき、基端コネクタに機械的に接続し、かつ、アンカワイヤの基端部を植込み型リードの基端コネクタに取り付けるように構成された端子ピンと、を具備する植込み型リード。
【0022】
実施例22では、実施例21の植込み型リードであって、端子ピンが、内腔の基端開口部内に挿入されて、端子ピンを基端コネクタに機械的に接続するように構成されている。
実施例23では、実施例22の植込み型リードであって、端子ピンが、内腔の基端開口部に挿入される際にアンカワイヤを締め付けるように構成され、アンカワイヤを締め付けることにより、アンカワイヤが基端コネクタに取り付けられる。
【0023】
実施例24では、実施例21〜23のいずれかの植込み型リードであって、端子ピンが、アンカワイヤを電気接点に電気的に接続するように構成されている。
複数の実施形態を開示するが、本発明のさらに他の実施形態が、本発明の例示的な実施形態を示し記載する以下の詳細な説明から当業者には明らかとなろう。したがって、図面および詳細な説明は、限定するものではなく本質的に例示するものとしてみなされるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本開示のさまざまな態様による、パルス発生器および患者の心臓に植え込まれるリードを含むヒス束刺激システムの概略図である。
図2】本開示のさまざまな態様による、右心室内の外側ガイドカテーテルの概略図である。
図3】本開示のさまざまな態様による、外側ガイドカテーテルから先端側に延在する内側ガイドカテーテルの概略図である。
図4】本開示のさまざまな態様による、内側ガイドカテーテルから先端側に延在するアンカワイヤの固定要素の概略図である。
図5】本開示のさまざまな態様による、ガイドカテーテルによって支持されながら標的組織に固定されているアンカワイヤの概略図である。
図6】本開示のさまざまな態様による、標的組織に固定されたアンカワイヤの概略図である。
図7】本開示のさまざまな態様による、リードを標的組織まで誘導するアンカワイヤの概略図である。
図8】本開示のさまざまな態様による、標的組織に固定されているリードの概略図である。
図9】本開示のさまざまな態様による、標的組織に固定された、ガイドカテーテルから延在しているアンカワイヤの概略図である。
図10】本開示のさまざまな態様による、リードを標的組織まで誘導する、ガイドカテーテルから延在しているアンカワイヤの概略図である。
図11】本開示のさまざまな態様による、標的組織に固定されている、ガイドカテーテルから延在しているリードの概略図である。
図12】本開示のさまざまな態様による、標的組織に固定されている、アンカワイヤ上のリードの先端チップの拡大図である。
図13】本開示のさまざまな態様による、標的組織に固定されたリードの先端チップの拡大図である。
図14】本開示のさまざまな態様によるアンカワイヤの概略図である。
図15】本開示のさまざまな態様によるアンカワイヤの概略図である。
図16】本開示のさまざまな態様によるアンカワイヤの概略図である。
図17】本開示のさまざまな態様によるアンカワイヤを含むリードの基端コネクタの断面図である。
図18】本開示のさまざまな態様による、ヒス束への近接性を示すバイオマーカを示す人為的な信号トレースである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、さまざまな変更形態および代替形態が可能であるが、具体的な実施形態を図面に例として示し、以下詳細に説明するが、本発明を記載する特定の実施形態に限定するものではない。本発明は、添付の特許請求の範囲によって定義するような本発明の範囲内にあるすべての変更形態、均等物および代替形態を包含するように意図されている。
【0026】
心臓の出力は、心臓の腔の中およびそれらの間の収縮の同期に依存する。通常、各心周期は、心房の心筋細胞の収縮を起こす洞房結節の細胞の脱分極によって開始する。電気パルスは房室結節に進み、それにより、信号の伝播が遅延して心房が心室より前に収縮することができる。房室結節の先端部分はヒス束を有している。ヒス束は、脱分極信号を心室中隔の左脚および右脚に伝播させる。左脚および右脚は、脱分極信号を左心室および右心室にそれぞれ伝播させる。
【0027】
さまざまな状態が、心臓の正常な刺激伝導系を妨害し、それにより、不整脈がもたらされる可能性があり、心臓の出力に障害が発生する可能性がある。たとえば、房室結節に沿った伝導ブロックにより、心房および心室が調和せずに収縮する可能性がある。従来のペーシング療法は、右心室の尖部にリードを植え込むことにより心房と心室との間の伝導系をバイパスしようとし、そこでは、理想的には、心筋組織に送達される各パルスは脱分極波で伝播する。しかしながら、(たとえば、右心室の尖部の)作業心筋の直接刺激により、特殊伝導系線維を直接刺激する場合より低速で伝播する結果となる可能性がある。これらの理由および他の理由で、右心室の尖部または他の作業心筋部位のみにおけるペーシングにより、固有伝導系の同期収縮を繰り返すことが困難な場合がある。
【0028】
本開示は、特に、直接刺激するためにヒス束を標的とすることにより心臓の特殊伝導系を使用することに関する。特に、本開示は、1つまたは複数の電極をヒス束の神経線維と接触してまたはそれらに近接して固定することに関する。ヒス束には、複数の領域からアクセスすることができる。1つの領域は、右心室から右心房を分離する三尖弁のすぐ下の右心室内の中隔壁の最上部に沿う。しかしながら、この領域は、いくつかの理由で、リードを植え込むには困難な標的である可能性がある。第1に、その領域は、三尖弁の後方で右心室の隅になるものの中に押し込まれる。したがって、この標的部位にリードを植え込む操作は、不適切に拘束される可能性がある。さらに、その領域自体が小さく、狭い標的を示している。小さい領域に対して、ヒス束への近接性を示す近接場バイオマーカを検知するプローブを用いて位置が特定される場合であっても、プローブがリードと交換され、その後、リードがその領域の組織に取り付けられる間に、その領域との接触を維持することが困難である場合がある。最後に、拍動する心臓の動的環境によって、ヒス束の位置を特定し、その後ヒス束を刺激するようにリードを安定させるプロセスに、さらに障害が発生する。
【0029】
この部位にリードを植え込むことは困難であるが、この位置からヒス束を直接刺激することには、いくつかの特定の利点がある。たとえば、心房における房室結節に沿った、またはヒス束の基端部分に沿った伝導ブロックの場合、ヒス束を、電気経路をさらに下って刺激することは、同期収縮を維持するのに治療的により有効である。しかしながら、電気刺激が、電気経路をはるかに下って(たとえば、中隔の半ばまで)神経組織に直接送達される場合、刺激は、それぞれ左心室および右心室に通じる左脚および右脚の分岐点の下方に送達される可能性があり、それにより、一方の心室のみが刺激によって活性化されることになる。いくつかの実施形態では、ヒス束の直接刺激のためにリードの先端部を植え込むための標的部位は、中隔壁に沿った右心室内の三尖弁のすぐ下であり、三尖弁から中隔壁を約15ミリメートル下って延在する。本開示は、特に、ヒス束を直接刺激するためにこの部位でリードを取り付けるデバイス、システムおよび方法に関する。
【0030】
図1は、ヒス束30を直接刺激する刺激システム2の概略図を示す。刺激システム2は、植込み型パルス発生器6を含む。植込み型パルス発生器6は、生体電気信号を検知しかつ/または1つあるいは複数のリードを介して電気刺激を送達する回路を含むことができる。植込み型パルス発生器6は、1つまたは複数のリードを植込み型パルス発生器6に接続するリードインタフェース8(たとえば、ヘッダ)を含むことができる。リードインタフェース8は、1つまたは複数のリードの基端部のそれぞれの接点に個々に接続することができ、接点は、1つまたは複数のリード内の導体を介して1つまたは複数のリードの先端部の電気素子(たとえば、リング電極、導電性らせん体)とそれぞれ電気的に接続する。
【0031】
図1に示すように、ヒス束30を直接刺激するために植え込まれたリード10は、リードインタフェース8を介して植込み型パルス発生器6に接続されている。リード10は、ヒス束30と植込み型パルス発生器6との間で電気信号を搬送するように動作する。さまざまな実施形態では、リード10は、左鎖骨下静脈の壁に形成された血管進入部位から血管系に進入し、左腕頭静脈および上大静脈34を通って延び、右心房26を横切り、右心室24内でヒス束30に近接して植え込まれる。他の実施形態では、リード10は、たとえば、右鎖骨下静脈、左腋窩静脈、左外頸静脈、左内頸静脈または左腕頭静脈から血管系に進入することができる。他のさまざまな実施形態では、他の好適な血管アクセス部位を利用することができる。
【0032】
さまざまな実施形態では、リード10は、1つまたは複数の材料から形成されたリード本体と、リード本体内に形成された少なくとも1つの内腔と、植込み型パルス発生器6とインタフェースする近位コネクタと、リード10の先端部の1つまたは複数の電気素子(たとえば、リング電極、導電性らせん体)と、1つまたは複数の電気素子と近位コネクタとの間で電気エネルギー(たとえば、生体電気信号、刺激パルス)を伝導する1つまたは複数の導体と、を含む、多極医療電気リードである。リード10は、外面を有する可撓性管状体を備える。そのような管状体は、シリコーンゴムおよび/またはポリマー材料(たとえば、ポリウレタン)等のさまざまな材料から作製される。場合によっては、リードの先端部分は、リードの基端部分より可撓性がある。たとえば、右心室24内のヒス束30に近接するリードの先端部分に対応する、リード10の先端部の管状体および外面は、三尖弁28を横切りリードインタフェース8に続く基端部分に対して、剛性を低くすることができる。たとえば、先端部分のリード本体および外面をシリコーンから作製することができ、基端部分のリード本体および外面をポリウレタンから作製して、リードを基端部分よりも先端部分において可撓性を有するように構成することができる。
【0033】
リード10は、ヒス束30を直接刺激することができる組織の領域等の心臓組織に対して、リード10を固定することができる固定要素(たとえば、らせん体)を含むことができる。固定要素は、植込み型パルス発生器6のチャネルとインタフェースするようにリード10の基端部まで延在する導電体(たとえば、1つあるいは複数のコイルまたは1つあるいは複数のケーブル導体)に対して、電気的に結合することができる。したがって、固定要素は、リード10を組織に機械的にかつ電気的に結合し、センシングモードではヒス束30からの電気エネルギーの伝達および刺激モードではヒス束30への電気エネルギーの伝達を容易にすることができる。
【0034】
さまざまな位置におけるリードの配置は、ヒス束30を間接的に刺激することができるが、ヒス束の線維と接触するかまたはヒス束の線維のすぐ近くに(たとえば、5ミリメートル以内)1つまたは複数の電極を備えたリードは、ペーシングパルスによりヒス束30の組織を確実に捕捉する(すなわち、細胞を脱電極させ活性化信号を伝播させる)ことができる。たとえば、ヒス束30と接触する電極は、特殊伝導系の左心室脚および右心室脚の上方でヒス束30を捕捉することができ、それにより、脱分極波は左脚および右脚両方に沿って中隔38を下って進む。脱分極波は、左心室22および右心室24の作業心筋組織に広がることができ、それによって左心室22および右心室24は収縮する。
【0035】
図1は、植込み型パルス発生器6に接続されかつ心臓刺激のために植え込まれた単一リードのみを示すが、他のさまざまな実施形態は、生体電気活動を検知しかつ/またはヒス束30あるいは他の領域(たとえば、右心室の尖部、冠状静脈洞を介する左心室、右心房および/または左心房)を刺激する、代替的なリードおよび/または1つあるいは複数のさらなるリードを有することができる。たとえば、ヒス束ペーシングシステムは、ヒス束リード10に加えて、先端チップが右心室の尖部25に固定された右心室リードと、先端チップが右心房の組織に固定された右心房リードと、を有する3リードシステムであってもよい。ヒス束リード10は、ヒス束30を刺激することができ、ヒス束の捕捉が維持されないかまたは確実でない場合には、右心室リードによって心室捕捉もまた維持することができる。本システムを、右心室において収縮がないことが検知された場合に、右心室リードによって右心室の作業心筋にペーシングが送達されるように構成することができる。
【0036】
本明細書で述べたように、右心室内の三尖弁のすぐ下の標的位置にリードを送達することは、困難な処置である。最初に、ヒス束へのアクセスを提供する組織の小さい領域の位置を特定しなければならない。標的位置は、マッピング処置においてヒス束の電気的活性化を示す電気的バイオマーカを検知する電極を備えたカテーテルによって特定することができる。バイオマーカは、通常微弱であり、信号が、ヒス束に近接する電極によって(たとえば、バイオマーカを近接場信号として検知することにより)検知された場合にのみ現れる。さまざまな場合に、マッピングカテーテルの1つまたは複数の電極は、ヒス束へのアクセスを提供する組織と接触する必要がある。マッピングカテーテルによって位置が特定されると、リードをその小さい領域に前進させなければならない。小さい領域の位置は、マッピングカテーテルがリードと交換されている間に、かつ/または、リードを小さい領域に取り付けることができる前に、見失う可能性がある。しかしながら、本明細書に開示するデバイス、システムおよび技法は、図2図10に示すように、標的位置におけるリードの正確な配置および安定化を容易にすることができる。
【0037】
図2は、本開示の実施形態による外側ガイドカテーテル40を示す概略図である。外側ガイドカテーテル40は、たとえばポリアミドまたはポリウレタン等のポリマー材料から押出成形された管状体である。外側ガイドカテーテル40は、基端部41と、先端部43と、先端部43に沿った湾曲部42と、基端開口部および遠位開口部46を有する内腔と、を含む。外側ガイドカテーテル40を、心臓より上方で経静脈的に導入し、上大静脈34を下って前進させる。先端部43を、右心房を通って、三尖弁の開口部を通って、右心室24内に前進させる。図示するように、外側ガイドカテーテル40の湾曲部42は右心室24内にある。基端部41は、外側ガイドカテーテル40の操作を可能にするように体外に留まっている。図示するように、こうした操作は、外側ガイドカテーテル40の軸方向並進(たとえば、前進および/または後退)および/または外側ガイドカテーテル40の回転を含む。外側ガイドカテーテル40の基端部41の回転により、湾曲部42が、外側ガイドカテーテル40の中心線44を中心に回転する。
【0038】
外側ガイドカテーテル40の湾曲部42等のガイドカテーテルの湾曲部は、管状体を湾曲部の形状に曲げ、その後、湾曲部のある管状体を熱硬化させることによって形成することができる。ガイドカテーテルは、可撓性があるが、湾曲形状を呈するように湾曲部分に沿って機械的に付勢される。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のワイヤ(たとえば、ニチノールワイヤ)は、湾曲部42の形状を構造的に支持するために湾曲部に沿って配置することができる。いくつかの実施形態では、外側ガイドカテーテル40の湾曲部42は、中心線44(たとえば、湾曲部42に近接しかつ隣接する管状体の直線部分によって画定されている中心線44)に対して180度湾曲する。いくつかの実施形態では、湾曲部42は、中心線44に対しておよそ180度である。いくつかの実施形態では、湾曲部42は、中心線44に対して90度を超えかつ220度未満である。いくつかの実施形態では、湾曲部42は、内腔開口部46を、右心室24内の三尖弁28の下方のヒス束30の位置に向けながら、右心室の尖部25内に適合するような寸法である。いくつかの実施形態では、外側ガイドカテーテル40は、ヒス束30に面する右心室24の右壁等、右心室24の内面から突っ張る(brace)ように構成されている。いくつかの実施形態では、外側ガイドカテーテル40は、管状体の湾曲部42の先端側に直線部分を含む。
【0039】
内腔が、外側ガイドカテーテル40の全長にわたって延在し、外側ガイドカテーテル40の先端チップに開口部46を含む。外側ガイドカテーテル40の内腔内における物体の移動を容易にするように、外側ガイドカテーテル40の内腔の内側に、滑らかなコーティングまたは材料を提供することができる。
【0040】
いくつかの実施形態では、外側ガイドカテーテル40は、1つまたは複数の電極を含む。たとえば、図示するような外側ガイドカテーテル40は電極48を含む。電極48をリング電極とすることができるが、他の電極形状を提供することができる。電極48は、湾曲部42の頂点において外側ガイドカテーテル40に沿って配置される。電極48は、湾曲部42の頂点に配置することにより、湾曲部42が右心室24の尖部25内に設置されたときに右心室24の組織と接触する。外側ガイドカテーテル40の電極48は、外側ガイドカテーテル40の先端部43の外面において露出する。図2の実施形態では、外側ガイドカテーテル40に1つの電極48が示されているが、別法として、外側ガイドカテーテル40の先端部43に2つ以上の電極を配置することができる。たとえば、内腔開口部46に隣接する外側ガイドカテーテル40の先端チップに第2電極を配置することができる。
【0041】
電極48等の外側ガイドカテーテル40の電極は、外側ガイドカテーテル40の内腔内で基端部41のコネクタまで延在するそれぞれの導体と電気的に接続することができる。コネクタは、電極によって検知される生体電気信号を測定するように構成された回路と電気的に接続する。信号および/またはバイオマーカの指標は、回路の一部として画面に表示される。たとえば、外側ガイドカテーテル40の基端部41は、外側ガイドカテーテル40または他のカテーテルの1つまたは複数の電極を用いて、心臓信号を検知しかつ/または刺激を送達するように、ペーシングシステムアナライザと接続することができる。マッピングプロセスにおいて電極48(または他の電極)によって心臓信号を検知して、心臓内の特定の特徴の位置を確認することができる。たとえば、信号を検知しながら心臓組織に沿って、他のガイドカテーテル40(または他のカテーテル)の1つまたは複数の電極を移動させて、1つまたは複数の電極によって特定の信号が受信された場所に基づいて、心臓の解剖学的構造をマッピングすることができる。ヒス束30へのアクセスを提供する組織の小さい領域等、リード植込みのための標的部位の位置は、このようにマッピングすることによって特定することができる。
【0042】
いくつかの実施形態では、外側ガイドカテーテル40は偏向部分を含む。偏向部分は、湾曲部42の基端側でも先端側でもよい。偏向可能部分は、基端部41の機構(たとえば、つまみ、引金、レバー)によって、外側ガイドカテーテル40の先端部43を関節運動させる。その機構は、偏向部分に取り付けられたプルワイヤに対して張力を与えて、偏向部分が屈曲するかまたは他の方法で移動するようにする。こうした移動により、外側ガイドカテーテル40の先端チップを移動させることができる。
【0043】
図3は、内側ガイドカテーテル50を示す概略図である。図3の概略図によって、図2の例を引き続き示す。図3は、外側ガイドカテーテル40を通して内側ガイドカテーテル50を導入することを示す。内側ガイドカテーテル50は、基端部51および先端部53を備えた管状体である。内側ガイドカテーテル50は、外側ガイドカテーテル40に関連して言及した特徴を含む。内側ガイドカテーテル50の管状体は、外側ガイドカテーテル40に対して記載したものと同様に製造することができる。外側ガイドカテーテル40が心臓内にある間に、内側ガイドカテーテル50の少なくとも一部が外側ガイドカテーテル40の内腔開口部46から先端側に伸長するまで、内側ガイドカテーテル50を外側ガイドカテーテル40の内腔の基端開口部内に挿入することによって、心臓内に経血管的に導入することができる。内側ガイドカテーテル50を外側ガイドカテーテル40より長くすることができ、それによって、図3に示すように、内側ガイドカテーテル50の先端部53が、外側ガイドカテーテル40の内腔開口部46から延出することができる一方で、内側ガイドカテーテル50の基端部51が外側ガイドカテーテル40の基端内腔開口部から基端側に延在する。
【0044】
内側ガイドカテーテル50の基端部51は、体外に残り、かつ、図示されるように操作されて、外側ガイドカテーテル40に対して内側カテーテル50を軸方向に並進させる(たとえば、前進および/または後退させる)。外側ガイドカテーテル40に対する内側ガイドカテーテル50の回転により、内側ガイドカテーテル50の中心線54を中心に先端湾曲部52を回転させる。外側ガイドカテーテル40の湾曲部42と同様に湾曲部52を形成し支持する。いくつかの実施形態では、湾曲部52は、中心線54(たとえば、湾曲部52に近接し隣接する管状体の直線部分によって画定されている中心線54)に対しておよそ90度湾曲する。いくつかの実施形態では、湾曲部42は、中心線54に対して70度を超えかつ110度未満湾曲する。いくつかの実施形態では、湾曲部52を含む先端部53は、外側ガイドカテーテル40の湾曲部42が右心室内にあり、内側ガイドカテーテル50の湾曲部52が外側ガイドカテーテル40の内腔開口部46から延出するときに、ヒス束30に近接する中隔壁の領域に達するような寸法である。さらに、内側ガイドカテーテル50の先端チップがヒス束30に近接する中隔壁の標的領域に達することができるように、外側ガイドカテーテル40の内腔開口部46を位置決めすべく、外側ガイドカテーテル40を右心室の1つまたは複数の壁から突っ張るような寸法に設定することができる。
【0045】
いくつかの実施形態では、内側ガイドカテーテルは1つまたは複数の電極を含む。たとえば、内側ガイドカテーテル50は電極56を含む。電極56をリング電極とすることができるが、他の電極形状を採用することができる。内側ガイドカテーテル50の先端チップに電極56を配置し、それによって、電極56は、内側ガイドカテーテル50の先端チップが組織36と接触しているときに、組織36から電気信号を受け取ることができる。したがって、内側ガイドカテーテル50の先端チップは、近接場バイオマーカ(たとえば、ヒス束30に対する近接性を示すバイオマーカ)に対して検知している間に組織36に沿って移動することができる。いくつかの実施形態では、電極56によって受け取られる信号が、ヒス束30の特性に対して回路によって(たとえば、本明細書で述べるようにペーシングシステムアナライザによって)測定されている間に、右心室24内で中隔38の上方部分に沿って内側ガイドカテーテル50の先端チップを移動させることができる。検知信号からバイオマーカが特定されると、ヒス束30のバイオマーカが心臓組織の残りの部分の周囲の生体電気活動(たとえば、心房脱分極を示す遠視や信号)に比較して相対的に微弱であるため、電極56がヒス束30に近接していると判断することができる。場合によっては、双極対として検知する、互いおよび標的組織に近い2つの電気素子が、房室束30の微弱なバイオマーカを隔離することができる。双極対の両電気素子は、内側ガイドカテーテルにおいて、内側ガイドカテーテル50と外側ガイドカテーテル40との間に分散させられるか、または内側ガイドカテーテル50と別の部材(たとえば、本明細書でさらに述べるようなアンカワイヤ)との間に分散させられる。ヒス束30を示すバイオマーカの検出については、図18に関連してかつ本明細書の別の場所でさらに述べる。
【0046】
図3の実施形態では、内側ガイドカテーテル50に1つの電極56のみを示しているが、別法として、先端部53および/または内側ガイドカテーテル50の他の部分に2つ以上の電極を配置することができる。電極56は、内側ガイドカテーテル50の内腔内で内側ガイドカテーテル50の基端部51の電気コネクタまで延在する導体と電気的に接続することができる。内側ガイドカテーテル50の基端部51は、内側ガイドカテーテル50の1つまたは複数の電極によって心臓信号を検知するペーシングシステムアナライザまたは他の回路と接続することができる。マッピングプロセスにおいて電極56(または他の電極)によって心臓信号を検知して、心臓内の特定の特徴の位置を特定することができる。たとえば、心臓信号を検知している間に、内側ガイドカテーテル50および/または他のカテーテルの1つまたは複数の電極を心臓組織の表面に沿って移動させ、電極によって特定の信号が受け取られる場所に基づいて心臓の解剖学的構造をマッピングすることができる。ヒス束30へのアクセスを提供する組織の小さい領域等、リード植込みのための標的部位の位置をこのようにマッピングによって特定することができる。
【0047】
内腔は、内側ガイドカテーテル50の全長にわたって延在し、かつ、内側ガイドカテーテル50の先端チップの開口部58を含む。内側ガイドカテーテル50内での物体の移動を容易にするために、内側ガイドカテーテル50の内腔に滑らかなコーティングまたは材料(たとえば、PTFE)を設けることができる。図4に示すように、アンカワイヤ60は、内側ガイドカテーテル50の先端チップの内腔開口部58から先端側に延在するように、内側ガイドカテーテル50の内腔を通して移動させることができる。
【0048】
いくつかの実施形態では、内側ガイドカテーテル50は偏向部分を含む。偏向部分は、湾曲部52の基端側でも先端側であってもよい。偏向部分により、内側ガイドカテーテルの先端部53を、基端部51の機構(たとえば、つまみ、引金、レバー)によって関節運動させることができる。その機構は、偏向部分に取り付けられたプルワイヤに対して張力を与えて、偏向部分が屈曲するかまたは他の方法で移動するようにできる。こうした移動により、内側ガイドカテーテル50の先端チップを移動させることができる。たとえば、偏向部分の偏向をもたらす機構の作動によって、電極56および内腔開口部58を心臓組織を横切って(たとえば、スキャン処置において)移動させることができる。
【0049】
図4は、特にアンカワイヤ60を示す概略図である。図4の概略図は、図3の例を引き続き示している。アンカワイヤ60は、基端部61と固定要素62を有する先端部とを備える、中実コア、編組、コイル、管状体または他の形態であってもよい。たとえば1つまたは複数の金属ワイヤからアンカワイヤ60を製造することができる。アンカワイヤは、ステンレス鋼ワイヤ、ニチノールワイヤ、銀ワイヤ、銅ワイヤまたは他の材料のうちの1つまたは複数を含むことができる。本明細書で用いるアンカワイヤという用語は、必ずしも単一のワイヤに限定されず、単一ワイヤまたは複数のワイヤのさまざまな形態を含むことができることに留意されたい。アンカワイヤは、他の選択肢もあるが特に、中実コア、編組ワイヤ、1つあるいは複数のコイル状ワイヤおよび/またはこれらの特徴の組合せであってもよい。
【0050】
内側ガイドカテーテル50が外側ガイドカテーテル40の内腔内にある間に、内側ガイドカテーテル50の基端部51の内側ガイドカテーテル50の内腔内にアンカワイヤ60を挿入することによって、心臓内に経血管的に導入することができる。内側ガイドカテーテル50および外側ガイドカテーテル40よりもアンカワイヤ60を長くすることができ、それによって、図4に示すように、固定要素62が、内側ガイドカテーテル50の先端部53の内腔開口部58から出てかつそれを超えて延出することができる。
【0051】
いくつかの実施形態では、アンカワイヤ60の全長は、(たとえば、ペーシングシステムアナライザにより)生体電気信号を受け取りかつ/または電気刺激を送達する、本明細書で言及したような回路への電気的接続を容易にするように、固定要素62と基端部61の一部分とを除き、絶縁ポリマー材料(たとえば、パリレンまたはePTFE)によってコーティングされる。このように、固定要素62は、生体電気信号を検知しかつ/または刺激を送達する電極であってもよい。アンカワイヤ60は、固定要素62から基端部61まで導電性である。場合によっては、内側導体ワイヤ(たとえば、銀または銅)が設けられる一方で、1つまたは複数の他の材料(たとえば、ステンレス鋼、ニチノール)を用いて、アンカワイヤ60の外側部分が形成される。いくつかの実施形態では、固定要素62は、内側ガイドカテーテル50の先端チップの電極56と電極対であるように回路に接続することができる。固定要素62および電極56は、図4に示す構成において互いに近接し(たとえば、5ミリメートル以内)、したがって、ヒス束30を示すバイオマーカを示す信号等、微弱な近接場電気信号に感応する双極検知対である。
【0052】
アンカワイヤ60の基端部61は、体外に留まり、図示するように、内側ガイドカテーテル50および外側ガイドカテーテル40に対してアンカワイヤ60が軸方向に並進し(たとえば、前進および/または後退)かつ/または回転するように操作することができる。内側ガイドカテーテル50および外側ガイドカテーテル40に対するアンカワイヤ60の回転により、固定要素62を回転させて、固定要素62を組織36に固定することができる。内側ガイドカテーテル50は、固定要素62が組織36を貫通するのを可能にするようにアンカワイヤ60を突張り固定する(brace)ことができる。たとえば、内側ガイドカテーテル50の湾曲部53の内側内腔壁の裏面によってアンカワイヤ60を突張り固定することで、活性化した固定要素62が、組織36を貫通してヒス束30にアクセスするのに十分な力を組織36に加えることができる。固定要素62によってヒス束30に近接する相対的に強靭な中心線維体の貫通を可能にするために、基端部61と固定要素62との間で可能な限り大きい直接トルク伝達を可能にすべく、アンカワイヤ60が十分なねじり剛性を有するように構成することができる。いくつかの実施形態では、アンカワイヤ60は、線維組織等、強靭な構造体内に固定要素62を貫通させる場合であっても、基端部61の1回の回転がゼロから最小限の減衰で固定要素62まで伝達されるように、可能な限り無限大に近いねじり剛性と、約1:1のトルク伝達とを有する。およそ1:1のトルク伝達比により、線維組織内への固定プロセスに対して精密な制御が可能になり、臨床医が、ヒス束バイオマーカが最大化したときに停止することができる。固定要素62は、心臓組織を貫通するように鋭利な端部を含み、組織への係留を維持するのに十分剛性を有することができる。心臓組織36の中心線維体を通して貫通し、かつ、ヒス束30と接触するように、固定要素62を十分長くすることができる。さまざまな実施形態では、固定要素62は約2.5ミリメートル長である。固定要素62は導電性金属から作製することができるため、アンカワイヤ60の安定化とともに検知および/または刺激に使用することができる。本明細書で言及するあらゆる固定要素は、上述したように構成することができる。図示するように、ヒス束30の一部は、心臓組織36の下にある。図5は、固定要素62が、ヒス束30と接触するように組織36を貫通した状態を示す。
【0053】
図5は、特に、安定化したアンカワイヤ60を示す概略図である。図5の概略図は、図4の例を引き続き示している。図5は、固定要素62が組織36に固定されたことを示す。図示するように、固定要素62は、らせん体であり、組織36内にねじ込まれている。本明細書で述べるように、ヒス束30等、標的を示す生体電気信号を検知するために固定要素62を使用することができる。したがって、固定要素62が組織36内に前進している間に、固定要素62を用いて信号を検知して、ヒス束30を示す信号のあらゆる変化を評価することができる。たとえば、ヒス束30を示す微弱なバイオマーカは、組織の表面から(たとえば、内側ガイドカテーテル50の先端チップの電極58および/または電極として機能する固定要素62によって)検知することができ、固定要素62が組織36を貫通しヒス束30に近づくように移動するに従い、信号は強くなる。固定要素62の前進(たとえば、固定要素62がアンカワイヤ60の回転によって前進する場合)は、固定要素62がヒス束30と接触し、アンカワイヤ60と組織36との間の固定が安定しているときに停止させられる。場合によっては、ヒス束30を示す検知されたバイオマーカの特性が最大化するかまたは閾値を超えたとき、固定要素62の前進を停止させる。特性の最大化は、ヒス束30を示す形態学的バイオマーカの振幅がピークになるかまたは横ばいになることを含む。閾値は、ヒス束30に十分に近接しているかまたは直接接触していることを表し、検知されたバイオマーカの特性が閾値を超えると、固定要素62の前進を停止させる。閾値を超えるかまたは他の何らかの方法で標的領域への近接性を示す検知されたバイオマーカの特性は、形態学的バイオマーカの振幅である。
【0054】
いくつかの実施形態では、ヒス束30への近接性は、ヒス束30を電気刺激によってどの程度まで捕捉することができるかを判断することによって評価される。たとえば、パルスは、電気素子(たとえば、内側ガイドカテーテル50の電極56および/またはアンカワイヤ60の固定要素62)を通して送達することができる。(たとえば、心室の収縮のタイミングが変化するか否かにより、またはQRS形態変化により判断されるように)パルスがヒス束30を捕捉し損なった場合、マッピングを続けるように電極を移動させることができ、かつ/または、固定要素をさらに組織内に前進させることができる。送達されたペーシングパルスが、心室収縮のタイミングを変化させて、ヒス束30の捕捉を明示するまで、プロセスを続けることができる。場合によっては、ペーシングパルスからのヒス束30の電気的活性化は、ヒス束30がパルスの送達に追従して電気的に活性化するか否かを検知することによって検出することができる。ヒス束30の電気的活性化のためのバイオマーカについて、本明細書において説明する。ヒス束30の検出された電気的活性化を用いて、ヒス束30を捕捉するために電極が適切に位置決めされた時を判断することができる。
【0055】
アンカワイヤ60が組織36に固定され、固定要素62がヒス束30に十分近いかまたは直接接触していると判断されると、アンカワイヤ60が組織36に取り付けられたままである間に、外側ガイドカテーテル40および/または内側ガイドカテーテル50を取り除くことができる。場合によっては、内側ガイドカテーテル50を最初に引き抜くことができ、その後、外側ガイドカテーテル40を引き抜くことができる。場合によっては、内側ガイドカテーテル50および外側ガイドカテーテル40を一緒に引き抜くことができる。場合によっては、内側ガイドカテーテル50および/または外側ガイドカテーテル40は、アンカワイヤ60の基端部61を越えて基端側に単に引っ張ることができる。いくつかの実施形態では、特に電気的接続が生体電気信号を検知するようにアンカワイヤ60によってなされるか、またはアンカワイヤ60の上にリードが配置されるとき、内側ガイドカテーテル50および/または外側ガイドカテーテル40は、アンカワイヤ60およびあらゆる関連する電気的接続および/または機械的接続を適所に残すことができる一方で、内側ガイドカテーテル50および/または外側ガイドカテーテル40をアンカワイヤ60から取り除くのを可能にするように、剥離または分割特徴を有することができる。
【0056】
図6は、特に安定化アンカワイヤ60を示す概略図である。図6の概略図は、図5の例の一部の拡大断面図である。図6は、上述したように内側ガイドカテーテル50および外側ガイドカテーテル40が引き抜かれたことを示す。アンカワイヤ60は、固定要素62によって組織36に固定されているため、内側ガイドカテーテル50および外側ガイドカテーテル40を取り除いた後に残る。内側ガイドカテーテル50および外側ガイドカテーテル40を取り除くことにより、リードをアンカワイヤ60の上に通すことを可能にする。このように、本開示のリード送達システムにより、リードが送達される前に正確な位置特定及び標的部位への固定が可能になる。
【0057】
図7は、特に、アンカワイヤ60の上のリード10の前進を示す概略図である。図7の概略図は、図6の例を引き続き示している。リード10は、オーバ・ザ・ワイヤ(over−the−wire)リードである。リード10は、リード10を軸方向に並進させ(たとえば、前進および/または後退させ)かつ/または回転させるように操作することができる基端部11を含むことができる。リード10は、概して可撓性があり、アンカワイヤ60上を前進するとき、アンカワイヤ60を追従する。リード10は、リード10がアンカワイヤ60上を前進する際にアンカワイヤ60が通過することができる内腔を含む。
【0058】
リード10は、固定要素16および電極18を含む。電極18および固定要素16は、生体電気信号を検知しかつ/または電気刺激を送達するために導電性であってもよい。1つのリング電極18を示すが、リード10は、複数のリング電極(たとえば、0、2つ、3つ、4つ等)および/または他の電気素子(たとえば、除細動コイル)を含むことができる。各電気素子(たとえば、リング電極、導電性固定らせん体)は、植込み型パルス発生器6のそれぞれのチャネルに電気的に接続するように、リードの1つまたは複数の内腔内を基端部コネクタまで延びるそれぞれの導体に電気的に接続することができる。固定要素16は、リード10の先端チップ14から延在する導電性固定らせん体としてもよく、それは、(たとえば、検知しかつ/または刺激を送達する)電極として機能する。図7に示すように、固定要素16は、リード10がアンカワイヤ60上を前進する間にアンカワイヤ60が進むことができる内腔を含むことができる。固定要素16が組織36と接触するまで、リード10を前進させることができ、接触は、リードが前進する際にリード10の基端部11において感じられる相対的に大きい抵抗により、かつ/または、固定要素16から検知される電気信号により、検出することができる。固定要素62の組織36内への前進およびリード10の固定を容易にするように、リード10を基端部11において回転させることができる。
【0059】
図8は、特に安定化したリード10を示す概略図である。図8の概略図は、図7の例を引き続き示している。図8は、固定要素16が組織36を貫通しており、ヒス束30を直接刺激しかつリード10を安定させるようにヒス束30と接触していることを示す。
【0060】
図6図8は、内側ガイドカテーテル50および外側ガイドカテーテル40が取り除かれた後の、アンカワイヤ60上のリード10の前進を示すが、リード10送達中、ガイドカテーテルのいずれかまたは両方を適所に残すことができる。こうした場合、リード10は、標的部位まで前進する際にガイドカテーテル(たとえば、内側ガイドカテーテル50および外側ガイドカテーテル40のいずれかまたは両方)の内腔を通って進む間に、アンカワイヤ60上を進むことができる。図9図11は、図6図8の実施形態に対する代替形態である実施形態を示し、図9図11の実施形態は、リード10がアンカワイヤ60上を前進する際、内側ガイドカテーテル50および外側ガイドカテーテル40を右心室内でアンカワイヤ60上に残す。具体的には、図9は、図5の例を引き続き示しており、そこでは、アンカワイヤ60は、内側ガイドカテーテル50の内腔開口部58から延在し、組織36に取り付けられている。リード10は、内側ガイドカテーテル50の基端開口部内に挿入し、内側ガイドカテーテル50の内腔内で前進させることができる。
【0061】
図10は、図9の例を引き続き示す概略図である。図10は、内側ガイドカテーテル50の先端部53の内腔開口部58から延在しているリード10を示す。リード10の固定要素16は、拡張状態(たとえば、図10に示すサイズ)で内側ガイドカテーテル50の内腔内に適合することができ、内側ガイドカテーテル50の内腔の内面によってより小さいサイズまで縮小させることができる。場合によっては、特に、固定要素16が内腔内で圧縮される場合、組織36と内側ガイドカテーテル50の内腔開口部58との間の空間を残して、固定要素16の組織貫通部分の組織36との適切な位置合せを保証することができるように、固定要素16が組織36に係合する前に、内腔の外側で非拘束状態になるようにすることができる。組織36と内側ガイドカテーテル50の内腔開口部58との間に残される空間は、固定要素16の長さより大きくすることができる。場合によっては、組織36と内側ガイドカテーテル50の内腔開口部58との間に残される空間は、固定要素16の長さよりわずかに大きくすることができる。場合によっては、組織36と内側ガイドカテーテル50の内腔開口部58との間に残される空間は、固定要素16の長さと略等しくすることができる。
【0062】
固定要素16は、アンカワイヤ60上を進む間に、組織36と係合するように、内側ガイドカテーテル50の内腔の開口部14から出るように前進させることができる。このように、アンカワイヤ60は、内側ガイドカテーテル50がリード10に対する支持を提供することができる一方で、事前に特定された組織標的にリード10を誘導し続けることができる。たとえば、リード10は、特に可撓性があることにより、右心室からヒス束30を刺激する特定の心臓環境に対して構成することができ、ガイドカテーテルは、リード10の先端部において固定要素16が組織36を貫通するのに十分な力を発生させるのに役立つように、突張り支持を提供することができる。固定要素が前進する際に、内側ガイドカテーテル50の先端チップは、組織36の数ミリメートル以内にあって、突張り支持を提供することができる。
【0063】
図11は、図10の例を引き続き示す概略図である。図11は、リード10の固定要素16が組織36内に前進してヒス束30と接触したことを示す。リード10が安定化すると、一方または両方のガイドカテーテルを取り除くことができる。たとえば、リード10がアンカワイヤ60上を前進する間、内側ガイドカテーテル50および/または外側ガイドカテーテル40が適所に残る場合、リード10が組織36に取り付けられると、内側ガイドカテーテル50および/または外側ガイドカテーテル40を取り除くことができる。場合によっては、ガイドカテーテルは引き抜かれる。場合によっては、リード10および/またはリード10に接続された他の構成要素の周囲からガイドカテーテルを取り除くのを容易にするために、本明細書で述べたように、ガイドカテーテルを剥離するかまたは分割することができる。図9図11は、リード10が、内側ガイドカテーテル50および外側ガイドカテーテル40の両方を通って前進する状態を示すことに留意されたい。他の実施形態では、リード10の前進の前に、内側ガイドカテーテル50が取り除かれ、リード10は、外側ガイドカテーテル40の内腔内においてアンカワイヤ60上を前進する。他の実施形態では、リード10の前進の前に、外側ガイドカテーテル40が取り除かれ、リード10は、内側ガイドカテーテル50の内腔内においてアンカワイヤ60上を前進する。リード10と内側ガイドカテーテルの内腔50および/または外側ガイドカテーテル40の内腔は、リード10が、内側ガイドカテーテル50の内腔および/または外側ガイドカテーテル40の内腔内を移動することができるような寸法に設定することができる。
【0064】
図12は、特に、安定化したリード10およびアンカワイヤ60を示す概略図である。図12の概略図は、図8または図11の例の一部の拡大断面図である。特に、図12は、組織36を貫通しヒス束30と接触している固定要素16のより近接した図を示す。図12はまた、アンカワイヤ60の固定要素62がリード10の固定要素内にあることも示す。具体的には、固定要素16および62の各々はらせん体であり、アンカワイヤ16のらせん体は、リード10のらせん体と同軸である。アンカワイヤ60のらせん体は、リード10のらせん体の内腔内で移動可能(たとえば、軸方向に並進可能および/または回転可能)である。
【0065】
いくつかの実施形態では、アンカワイヤ60は、長期植込みのためにリード10の内腔内に残すことができる。アンカワイヤ60の基端部61またはアンカワイヤ60の他のいずれかの部分は、リード10および/または植込み型パルス発生器6に接続することができる。場合によっては、リード10は、リード10の先端チップに直接取り付けられた固定要素16を含まず、代りに、長期植込みのためにリード10を安定させるためにアンカワイヤ60の固定要素62に頼る。こうした場合、アンカワイヤ60をリード10に取り付けることができる。アンカワイヤ60をリード10に取り付けるさまざまな選択肢について、本明細書においてさらに述べる。
【0066】
いくつかの実施形態は、リード10を安定させるためのアンカワイヤ60の長期植込みに関するが、他の実施形態は、リード10が組織36に固定された後にアンカワイヤ60を取り除くことに関する。いくつかの実施形態では、アンカワイヤ60は、ヒス束30へのアクセスを提供するものとして、マッピング処置において事前に特定された標的領域における固定を容易にするように、一時的に用いられる。たとえば、アンカワイヤ60は、三尖弁の下方でヒス束30に関連する小さい領域の位置を特定するための器具としての役割を果たし、それにより、標的の位置が失わることなく、リードを領域まで前進させ長期植込みのためにリードを安定させることができる。したがって、リード10の安定化に続いて、アンカワイヤ60を取り除くことができる。図13は、図12の例を引き続き示す概略図であり、そこでは、アンカワイヤ60が取り除かれてリード10が残っている。アンカワイヤ60の固定要素62を回転させて、組織36から固定要素62を分離することができる。固定要素62は、リード10の固定要素16の内腔内にある間に、かつ、アンカワイヤ60がリード10の内腔内に延在している間に、組織36から分離することができる。固定要素16および62の両方がらせん体であるいくつかの実施形態では、らせん体の巻を反対方向とすることができ、それにより、アンカワイヤ60のらせん体をねじって外すことにより、リード10の内腔と内腔内で回転するアンカワイヤ60との間の摩擦係合によりリード10のらせん体が緩まない。たとえば、アンカワイヤ60は、右回りまたは左回りのらせん体を有することができ、リード10は、右回りまたは左回りの他方のらせん体を有することができる。
【0067】
図4図9では、固定要素62をらせん体として示すが、さまざまな実施形態では、固定要素62は異なる形態を有することができる。図14図16は、さまざまなアンカ形態を示す。図14は、固定要素72を備えるアンカワイヤ70の概略図である。この場合、アンカワイヤ70の本体71はワイヤコイルであり、固定要素72はらせん体である。アンカワイヤ70は、(たとえばマンドレルの周囲に)巻回される1本または複数本のワイヤから作製され、コイルの形状をとるように熱処理される。いくつかの実施形態では、コイル状の1本または複数本のワイヤの内腔内に1本または複数本の非コイル状ワイヤが設けられ、1本または複数本の非コイル状ワイヤは、追加の安定性および/または導電性を提供する。アンカワイヤ70は、その本体71に沿って第1外径(たとえば、アンカワイヤ70の基端部から固定要素72の基端部まで及ぶ部分)を有するように巻回することができる。1本または複数本のワイヤは、本体71から固定要素72に移行する増大する直径を有するようにさらに巻回することができる。固定要素72は、マンドレルのより大きい部分の周囲に1本または複数本のワイヤを巻回するか、または、巻回の後に先端ワイヤ巻線を拡張することによって作製することができる。いくつかの実施形態では、本体71に沿ったワイヤの巻の向きは、固定要素72の巻の向きとは反対方向である。たとえば、本体71は、右回りまたは左回りの巻を有することができ、固定要素は右回りまたは左回りの巻の他方を有することができる。種々の巻の向きが、固定要素72のらせん体を組織内にかつ/または組織から出るようにねじるのを可能にしながら、本体71の完全性を維持することができる(たとえば、回転により、本体71の巻が伸びない)。ワイヤは、本体71に沿って絶縁することができ、電気エネルギーの検知および/または送達を可能にするように固定要素72に沿って露出させることができる。
【0068】
図15は、固定要素76を備えたアンカワイヤ74の概略図である。この実施形態では、アンカワイヤ74の本体75はワイヤコイルを備え、固定要素76はフックを備えている。アンカワイヤ74の本体75は、1本または複数本のワイヤを巻回してコイルを形成することによる等、図14のアンカワイヤ60の本体71と同様に構成することができる。アンカワイヤ74の固定要素76は、フックに形成された(たとえば、フックの形状に曲げられ熱硬化された)本体75のワイヤから作製することができる。フックは、組織と接触するようにガイドカテーテルから前進させ、その後、組織を貫通するように回転および/または前進させてアンカワイヤ74を組織内で安定させることができる。
【0069】
図16は、固定要素80を備えたアンカワイヤ78の概略図である。この実施形態では、アンカワイヤ78の本体79は単一の単線によって形成されている。単一の単線は絶縁体81を含むことができる。アンカワイヤ78の固定要素80は、組織を貫通し、その後、抜けに抵抗することができる、湾曲部を備えている。アンカワイヤのいくつかの実施形態では、固定要素は、アンカワイヤの長期植込みに特に適している可能性がある、1つまたは複数のタイン(tine)を備えることができる。
【0070】
図17は、リード82の近位コネクタの概略図であり、近位コネクタは、植込み型パルス発生器のリードインタフェースと接続するように構成されている。リード82の近位コネクタは、図1の植込み型パルス発生器6のリードインタフェース8とインタフェースするように、リード10の近位コネクタに対応することができる。近位コネクタは、植込み型パルス発生器の種々のチャネルと電気的に接続する複数の接点84、88を備えることができる。2つの接点84、88を示すが、さまざまな実施形態では、単一の接点または4つの接点等、より少ないかまたはより多い数を提供することができる。接点84は、導体98に電気的に結合された接点リングとすることができ、導体98は、リード82の先端部の電気素子と電気的に接続している。
【0071】
リード82は、リード82の近位コネクタの本体の基端部に挿入することができる端子ピン86をさらに含む。端子ピン86は、アンカワイヤ92をリード82に機械的に接続することができる。端子ピン86は、アンカワイヤ92を接点88に電気的に接続することができる。リード82の本体は、内腔90を含むことができる。リード82は、本明細書で述べたようにアンカワイヤ92上を前進させることができ、アンカワイヤ92は内腔90内に延在している。端子ピン86は、内腔95をさらに含むことができ、その内部にアンカワイヤ92が延在することができる。アンカワイヤ92およびリード82が安定化する(たとえば、本明細書で述べたように組織に固定される)と、リード82に対するアンカワイヤ92の長さを確定することができる。そして、端子ピン86は、リード82の本体の内腔90の近位開口部内に完全に挿入させることができる。図17に示すように、内腔90は近位部分に沿って狭くなり、内腔90を狭くすることによってアンカワイヤ92を締め付けるように端子ピン86のアーム96を内側に付勢して、アンカワイヤ92をリード82に対して機械的に接続することができる。いくつかの実施形態では、内腔90の狭くなっている部分の中に、かつ、端子ピン86の細くなっている先端部分に、相補的なねじ切りが設けられて、端子ピン86がリード82に固定される。そして、端子ピン86の近位末端と同一平面にアンカワイヤ92の基端部を切断することができる。端子ピン86の接点88をアンカワイヤ92と電気的に接続して、アンカワイヤ92の露出部分(たとえば、ヒス束に近接する固定要素の非絶縁先端部分)との電気的接続を提供することができる。したがって、アンカワイヤの基端部をリードの基端コネクタに機械的にかつ電気的に接続するために、端子ピンまたは他の特徴を設けることができる。
【0072】
図18は、心周期の連続した事象に対応するバイオマーカを含む人為的な信号トレース100を示す。これらおよび/または他のバイオマーカの検知を用いて、ヒス束を特定することができる。特に、マッピング処置中に心臓組織と接触する1つまたは複数の電極から検知された1つまたは複数のバイオマーカの認識を用いて、1つあるいは複数の電極の位置を求め、かつ/または、1つまたは複数の電極が標的(たとえば、ヒス束)に近接しているか否かを判断することができる。
【0073】
ヒス束は、心房脱分極102に続いてかつ心室脱分極106の前に電気的に活性である。1つまたは複数の電極は、遠隔電場心房脱分極102および後続する心室脱分極106を検知することができる。心房脱分極102と後続する心室脱分極106との間で特定の信号特徴が検知されない場合、1つまたは複数の電極はヒス束に近接していないと判断することができる。ヒス束に関連するヒス束脱分極104が心房脱分極102と心室脱分極106との間で検出される前に、心臓組織に沿って1つまたは複数の電極を連続的に再配置するかまたは組織内に前進させることができる。ヒス束の組織は、心房または心室のいずれかの電気的活性組織よりはるかに小さい。したがって、ヒス束によって生成されるバイオマーカ信号特徴は、心房脱分極102および心室脱分極106に比較して微弱である。1つまたは複数の電極がヒス束に近い(たとえば、10ミリメートル以内、ただしこの距離は患者間で異なる可能性がある)ときにのみ、ヒス束脱分極104が信号トレース100に現れる可能性がある。マッピング処置では、ガイドカテーテル(たとえば、内側ガイドカテーテルおよび/または外側ガイドカテーテル)の1つあるいは複数の電極および/またはアンカワイヤの導電性部分は、心臓組織の表面に沿って移動させて電気的活動を検知することができる。心房脱分極102と心室脱分極106との間のヒス束脱分極104の出現は、ヒス束に対する近接性を示し、その出現が検出されたときに、1つまたは複数の電極が配置されている表面領域を、ヒス束にアクセスするための標的位置として留意することができる。最高振幅のヒス束脱分極104を生成する位置が特定されるまで、1つまたは複数の電極は、心臓組織の表面に沿ってさらに移動させることができる。そして、ヒス束脱分極104の振幅がピークになるかまたは閾値に達する(ヒス束との接触を示すことができる)まで、この特定された位置の組織内にアンカワイヤの固定要素を前進させることができる。そして、リードがこの位置に植え込まれることを確実にするように、アンカワイヤ上にリードを進めることにより、リードをこの位置に植え込むことができる。いくつかの実施形態では、ヒス束は、組織に(たとえば、ガイドカテーテルまたはアンカワイヤの)電極を通して電気刺激を送達することによって特定され、その後、電気的活動を検知して、ヒス束が捕捉されたか否かが判断される。そして、ヒス束の最も確実な捕捉をもたらす位置は、リードの送達のために組織と係合したアンカワイヤの固定要素を有することができる。場合によっては、固定要素を通して送達されたパルスがヒス束を捕捉するまで、固定要素を標的組織内に前進させることができる。
【0074】
アンカワイヤおよび他の特徴の使用は、ヒス束を刺激するリードを安定させる文脈において考察しているが、本明細書に開示したデバイス、システムおよび方法は、心臓に関連するかまたは他の何らかの器官に関連するかに関らず、アンカワイヤを介してリードを他の解剖学的位置に送達するように適合させることができる。したがって、アンカワイヤを用いる本明細書で言及したデバイス、システムおよび方法は、アンカワイヤ上をリードの先端チップを標的組織まで送達するために使用することができる。さまざまな実施形態は、アンカワイヤを標的部位の組織に固定し、その後、リードをアンカワイヤ上で標的部位まで前進させるために1つのガイドワイヤカテーテル(たとえば、内側ガイドカテーテル50または外側ガイドカテーテル40のいずれか)のみを使用することができることをさらに留意されたい。
【0075】
本発明の範囲から逸脱することなく、考察した例示的な実施形態に対してさまざまな変更および追加を行うことができる。上述した実施形態は特定の特徴について述べているが、本発明の範囲は、特徴の異なる組合せを有する実施形態、および記載した特徴のすべては含まない実施形態も含む。したがって、本発明の範囲は、請求項の範囲内にあるこうしたすべての代替形態、変更形態および変形形態を、それらのすべての均等物とともに包含するように意図されている。
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
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図17
図18