【氏名又は名称】アリゾナ ボード オブ リージェンツ アクティング フォー アンド オン ビハーフ オブ アリゾナ ステイト ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】ARIZONA BOARD OF REGENTS ACTING FOR AND ON BEHALF OF ARIZONA STATE UNIVERSITY
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の一実施形態は、燃料電極、空気電極、及びイオン伝導性媒体を有する電気化学電池である。この電池は、例えば、再充電可能な金属空気電池のような金属空気電池の一部であってもよく、再充電不能であってもよい。燃料電極は、金属空気電池の実施形態における金属燃料のような燃料を酸化する。空気電極は、酸素のような空気を吸収・還元し、酸化物のような副産物を収容するように構成されてもよい。
【0027】
[酸素還元促進化合物]
金属空気電池の媒体を含む低温イオン液体へ酸素還元促進化合物を添加することにより、添加化合物のない同じ媒体に比べて、酸素還元の熱力学及び/又は動力学が改良される。酸素還元促進化合物物は酸素還元促進陽イオン(カチオン(cations))に解離するこ
とができる。この陽イオンは、単数又は複数の陰イオン(アニオン(anions))に配位し、酸素還元促進陽−陰イオン錯体を生成する。
【0028】
酸素還元促進化合物は様々な化合物とすることができる。例えば、添加剤の形態であってもよい。添加剤は無機又は有機分子を含んでもよい。添加剤は、また、水を含んでもよい。あるいは、添加剤は、金属(例えば、金属含有添加剤の金属)、有機分子、水、後述する添加剤のいずれか、又は、それらの組み合わせを含んでもよい。
【0029】
添加剤は、金属含有添加剤とすることができる。金属含有添加剤の金属は、適切な金属とする。例えば、一実施形態の金属添加剤の金属は、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、マンガン(Mn)、ガリウム(Ga)、及び亜鉛(Zn)のうち少なくとも1つである。金属含有化合物は、陽金属イオンに解離する。陽金属イオンは、溶液内で陰イオンと関連付けられ、及び/又は配位し、金属中心−陰イオン錯体(a metal centered-negative ion complex)を生成する。金属中心−陰イオン錯体は、化合物のないイオン液体に比べ
て、酸素還元反応熱力学及び/又は動力学を順に向上させる。
【0030】
有機分子は、適切な有機分子とすることができる。例えば、プロトン性有機分子であってもよい。したがって、添加剤を、プロトン性有機分子含有添加剤として示されることもある。プロトン性(protic)の用語については後述される。有機分子含有添加剤は、トリフルオロメタンスルホン酸(HTf)、ベンゾニトリル(benzonitrile):HTf、アセトフェノン(acetophenone):HTf、メタンスルホン酸(methanesulfonic acid)、ヒドロニウ
ムトリフレート(hydronium triflate)、ピリダジニウムトリフレート(pyridazinium triflate)、酢酸 、ピリジニウムトリフレート(pyridinium
triflate)、1,2−ジメチルイミダゾールトリフレート(1 ,2-dimethylimidaozlium triflate)、n,n−ジメチル−n−メチルアンモニウムトリフレート(n,n-diethyl-n-methylammonium
triflate)、2,2,2−トリフルオロエタノール(2,2,2-trifluoroethanol)、2−ブチル−1,1,3,3−テトラメチルグアニジニウムトリフレート(2-butyl-l,l,3,3-tetramethylguanidinium
triflate)、又はそれらの組合せを有していてもよい。ここで、HTfは、トリフルオロメ
タンスルホン酸(trifluoromethanesulfonic acid)として参照されてもよい。
【0031】
「錯体(complex)」及び「錯体生成(complexation)」の用語は、本技術分野で一般
的に知られた用語である。一実施形態では、錯体は化合物、分子、又は、相互にごく接近し、化学的に結合されることのない複数のイオンであってもよい。他の実施形態において、いくつかの化学的な結合が存在する。イオンが接近するのを可能にする引力はファンデルワールス力、水素結合等に起因して発生する。錯体の生成はここに記載されたシナリオ(scenarios)に限定されない。
【0032】
酸素還元反応、及び、その改良は、その反応の熱力学、動力学、又はその両者によって評価される。一実施形態では、熱力学が、平衡状態でのシステムの評価に使用される測定基準(metric)であり、一方、動力学が、反応率のような経時変化に基づくシステムの評価に使用される測定基準となる。熱力学パラメータの一例は、ターンオン電位(還元が開始される電位)、半波電位のような電圧(又は、電位)である。他方、動力学パラメータの一例は、電流(又は、電流密度)である。したがって、熱力学における改良は、酸素還元のターオン電位の変動又は半波電位の変動として測定される。動力学における改良は、所定の電位での電流密度の増加により測定される。さらに、金属イオン−陰イオン錯体の存在は、金属空気イオン液体電池の空気カソードの可逆性を促進できる。可逆性における改良は、具体的には、後に詳述するように、非プロトン性のイオン液体と互恵の関係となる。
【0033】
本明細書で説明する電気化学電池の酸化還元反応は、異なる数の電子の移動を含む。例えば、一実施形態において、酸素還元半反応は、酸素分子あたり少なくとも2つの電子の移動(例えば、酸素分子あたり少なくとも4つの電子の移動)を含む。後述するように、これら二つの組み合わせであってもよい。それぞれの反応は、利点を有する。例えば、1電子酸素還元反応は、高い可逆性を有し、効率的であるが、出力密度、電池電位、及び/又は、反応性が低くなる。一方、4電子反応は、最も高い出力密度を有するが、ラウンドトリップ効率(round-trip (RT) efficiency)は低く、触媒(過酸化物など)を必要とする。2電子反応は、中間の出力/効率を有するが、同時に過酸化物が不安定である課題がある。一方で、1電子反応のためのカソードは、極薄で、不変で、及び/又は防水であることが好ましい。他方、4電子反応のためのカソードは、薄く、不変で、及び/又は二機能性を有していることが好ましい。2電子反応のためのカソードは、一般的に、厚く、可変で、及び/又は多孔質である。一実施形態において、「二機能的」電極を、酸素還元及び酸素ガス発生のために使うことができる。一方、不変の電極はこれら2つの機能のうち一方のみに使うことができ、両方に使うことはできない。
【0034】
[イオン液体]
イオン伝導性媒体は、少なくとも1つ(1種)のイオン液体(IL)を含む。イオン液体は、一般的に、イオンを有する安定した液体を形成する塩を指す。すなわち、イオン液体は、完全に解離しており、本質的には陰及び陽イオンから構成される。したがって、イオン液体は、本質的に、電気を通す。さらに、イオン液体は、ごくわずかな蒸気圧、低い粘度、広い液相範囲(〜400℃)、調整可能な疎水性、高い熱安定性、広い電気化学窓(>5V)を有している。これらの性質により、イオン液体は、典型的に、蒸発すること
がなく、電気化学電池の充電/放電サイクルで消費されることがない。
【0035】
本明細書で説明する実施形態では、イオン液体は低温イオン液体を含む。イオン液体は、その融点以上20℃で、1mmHg以下の蒸気圧を有し、好ましくは、その融点以上20℃で、0.1mmHg以下又は0又は測定不可の蒸気圧を有する。室温イオン液体(RTIL)は、100℃以下で、1気圧のとき、安定した液体を形成する塩である(例えば、1気圧で、100℃以下の融点を有する。)。一実施形態で、低温イオン液体は、1気圧で、150℃以下の融点を有するイオン液体として定義される。低温イオン液体は、また、様々なRTILを含む。低温イオン液体のいくつかの例は、トリエチルアミニウム・メタンスルホナート(triethylammonium methanesulfonate)、1−メチル−3−オクチルイミダゾリウム
テトラクロロガリウム酸(1-methyl-3-octylimidazolium tetrachlorogallate)、ジエチルメチルアンモニウム・トリフラート(diethylmethylammonium triflate)、及び1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム・ビス(トリフルオロメタン)スルホンアミド(1-butyl-3-methylimidazolium
bis(trifluoromethane)sulfonamide)、又はそれらの組み合わせである。
【0036】
ここで説明する低温イオン液体は、テトラクロロアルミン酸(tetrachloroaluminate)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(bis(trifluoromethylsulfonyl)imide
)、メチルスルホナート(methylsulfonate)、硝酸塩、酢酸塩、又は誘導体、及び/又
はそれらの組み合わせを有するものであってもよい。また、ここで説明する低温イオン液体は、イミダゾリウム(imidazolium)、スルホニウム(sulfonium)、ピロリジニウム(pyrrolidinium)、ピリジニウム(pyridinium)、トリエチルアンモニウム(triethylammonium)、ジエチルメチルアンモニウム(diethylmethylammonium)、ジメチルエチルアンモニウム(dimethylethylammonium)、エチルアンモニウム(ethylammonium)、a−ピコリニウム(a-picolinium)、1,8−ビス(ジメチルアミノ)ナフタレン(1,8-bis(dimethylamino)naphthalene)、2,6−ジ−tert−ブチルピリジン(2,6-di-tert-butylpyridine)、四級化アンモニウム、ホスホニウム(phosphonium)、又は誘導体、及び/
又はそれらの組み合わせから構成されるグループから選択されたカチオンを有するものであってもよい。
【0037】
低温又は室温イオン液体は、1気圧におけるそれぞれの融点によって定義されるが、一部の実施形態において、電池は異なる気圧環境で動作させられ、よって、融点は動作気圧とともに変化する。したがって、1気圧での融点の参考は、これらの液体を定義するための参考点としてのみ用いられ、実際に使用する動作条件を暗示又は制限するものではない。
【0038】
イオン液体は、プロトン性及び非プロトン性の2つの形態を採りうる。プロトン性イオン液体は、酸化又は還元され、還元酸素のような陰イオンに配位する利用可能なプロトンを有している。一実施形態において、プロトン性イオン液体は、ブレンステッド酸(HA)からブレンステッド塩基(B)に移動するプロトンによって生成されるイオン液体であっ
てもよい。例えば、HA+B→A
-+BH
+ で示される。プロトン性イオン液体のカチオンが、可
逆性プロトンを含む場合、上記の反応は可逆であるということになる。それに対して、「強結合プロトン」の用語は、プロトン移動のエネルギー力学が、反応を可逆でなくするには適切ではないということを示す。
【0039】
いくつかの発生において、可逆的に、電気化学的に利用可能なプロトンを有する場合、イオン液体はプロトン性として参照される。すなわち、イオン液体分子の脱プロトン脱離基は、分解経路とはならない。プロトン性イオン液体の利用可能なプロトンは、酸素還元反応を増加させる。ここで、「プロトン性」の語は、添加剤、又は先に説明したプロトン性の性質を有するその他の化合物を説明するのにも用いられる。イオン液体がプロトン性イオン液体を有する一実施形態において、プロトン性イオン液体は、少なくとも可逆のプロトンを有する少なくとも1つのカチオンを含むことができる。
【0040】
プロトン性イオン液体のいくつかの例は、テトラクロロアルミン酸(tetrachloroaluminate)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(bis(trifluoromethylsulfonyl)imide)、メチルスルホナート(methylsulfonate)、硝酸塩、及び酢酸塩のアニオン、及びトリエチルアンモニウム(triethylammonium)、ジエチルメチルアンモニウム(diethylmethylammonium)、ジメチルエチルアンモニウム(dimethylethylammonium)、エチルアンモニウム(ethylammonium)、a−ピコリニウム(a-picolinium)、ピリジニウム(pyridinium)、及び1,8−ビス(ジメチルアミノ)ナフタレン(1,8-bis(dimethylamino)naphthalene)のカチオン、2,6−ジ−tert−ブチルピリジン(2,6-di-tert-butylpyridine)のカチオン、及びグアニジン(guanadines)誘導体のカチオン、又は、誘導体
、及び/又はそれらの組み合わせからなる組み合わせから合成される。
【0041】
非プロトン性イオン液体は、一般的に、プロトン活量を有しない。非プロトン性RTILのいくつかの例は、塩化物(Cl
-)、ヘキサフルオロホスファート(PF
6-),ヨウ化物、テ
トラフルオロホウ酸塩(tetrafluoroborate)、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)
イミド(C
2F
6NO
4S
2-)、又はトリフルオロメタンスルホナート(CF
3O
3S
-)のアニオン及
び、イミダゾリウム(imidazolium),スルホニウム(sulfonium),ピロリジニウム(pyrrolidinium),四級化アンモニウム又はホスホニウムのカチオン及びこれらの誘導体と
の組み合わせから合成される。プロトン活性を有さないにも関わらず、非プロトン性イオン液体はプロトンを有することができる。例えば、非プロトン性イオン液体は、少なくとも1つの強結合プロトンを有するカチオンを少なくとも1つ有することができる。イオン液体は、その他多くのオプションが存在する。本例のリストは、本発明を限定するものではない。
【0042】
幾つかの実施形態において、イオン液体は高い疎水性を有する。一実施形態において、
イオン伝導性媒体は疎水性を有する。これらの実施形態において、電解液の水分含有量は、本質的に0、又は10ppmより小さい水分含有量である。その他の実施形態において、
上述のように、酸素還元の熱力学、動力学又はその両方を改良するために、水が添加剤として、イオン伝導性媒体に添加される。ここで、水を添加すると、電解液(又はイオン伝導性媒体)系及び水溶液系となる。したがって、水に含まれるイオン液体は、溶液中の電解液としても参照される。例えば、約5〜約100,000ppmの水分、例えば、約10
〜約50,000ppmの水分、例えば、約100〜約10,000ppmの水分、約500〜約5,000ppmの水分が添加される。水分を添加すると、非プロトン系の酸素還元が改
良される場合があることが本発明者によって発見された。
【0043】
溶解度が10〜50,000ppmとなるように疎水性を調整することにより、イオン液
体における一定の水分活性を得ることが可能となる。さらにその他の実施形態において、プロトン性イオン液体を非プロトン性イオン液体に添加することもできる。このような添加は、滴定又はその他の適切は方法によって行うことができる。この態様で、プロトンは、主に、非プロトン性イオン液体に添加され、それにより、酸素還元反応が改良される。プロトン性イオン液体の添加は正確に制御できるので、所望のプロトン活性とすることができる。
【0044】
金属空気低温イオン液体電池の構造や動作のさらなる詳細については、米国特許出願第61/267,240号、第61/177,072号、第12/776,962号、第13/085,714号を参照することができる。これらの内容は全体として参照により本明細書に組み込まれる。
【0045】
[電気化学電池]
空気電極は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のような重合体を含む。空気電極は、触媒を含むこともできる。電気化学電池の化学的性質(chemistry)によって、触媒の
種類は変わってもよい。例えば、触媒は、酸化マンガン、ニッケル、熱分解コバルト、ポルフィリンに基づく触媒、活性炭素、ペロブスカイト(perovskites)、スピネル(spinels)、銀、プラチナ、及び/又はそれらの混合物のうちの少なくとも1つである。空気電極は、空気/ガスを透過させることができる。一実施形態では、空気電極は、外表面の1つに隔膜を有する。隔膜は、ガス、液体、又はその両方を透過させない。いくつかの例において、空気電極は、イオン伝導性媒体に含まれるイオン液体を含みながら、イオン伝導性媒体を寄せ付けないことが可能である。一実施形態において、例えば、空気電極は、低温イオン液体を寄せ付けない。
【0046】
燃料電極は、多孔質である。一実施形態では、燃料電極は、基材を有している。この基材は、例えば、液体、空気、又はその両方を透過させる。金属−酸化物副産物は、電気化学電池の動作時に生成される。この副産物は燃料電極に生成される。さらに、副産物は、燃料電極に収容される。同様に、そのような金属−酸化物副産物は、空気電極にも、生成及び/又は収容される。
【0047】
金属空気電池において、金属は燃料である。すなわち、放電時、金属はアノードで酸化され、電気的仕事のために用いられる電子を提供する。酸化反応は、以下の式で表される。
金属(Metal)→ 金属(Metal)
n++(n)e
- (1)
金属燃料は、どのような種類であってもよく、電着、吸着、物理的沈着、又は燃料電極上で提供され、燃料電極を形成する。燃料は、どのような金属であってもよく、例えば、合金又は水素化物であってもよい。例えば、燃料は、遷移金属、アルカリ金属、アルカリ土類金属、及びその他、又は「卑」金属を有していてもよい。遷移金属は、亜鉛、鉄、マンガン、及びバナジウムを含むが、これに限定されない。最も一般的なアルカリ金属は、
リチウムであるが、その他のアルカリ金属を用いることも可能である。アルカリ土類金属は、マグネシウムを含むが、これに限定されない。その他の金属は、アルミニウム及びガリウムを含むが、これに限定されない。本明細書で用いられるように、金属燃料の語は広く、元素金属、分子に結合した金属、合金、水素化物等の金属を含むあらゆる燃料を指す。燃料電極は、一部の実施形態では、電極体自体が金属燃料で形成される。
【0048】
燃料電極は、任意の構造及び構成を採ることができる。例えば、燃料電極は,複数の孔の三次元ネットワークを有する多孔質構造、メッシュスクリーン(mesh screen)、互いに
別体に構成された複数のメッシュスクリーン等の任意の好適な電極である。燃料電極は、別体の集電体を備える。または、燃料電極の燃料を保持する本体が導電性に構成され集電体となってもよい。一実施形態において、燃料電極は、燃料電極の外表面を提供する基材にラミネートされ、接着され、又は取り付けられている。この基材は、イオン液体が外表面から燃料電極を通って外側に透過しないように、イオン液体に対して液体非透過性であるか、実質的に液体非透過性である。この基材は、空気、特に酸素等の酸化剤に対して非透過性であり、電極で放電時に起こる燃料酸化の存在によって酸化剤還元等の任意の望ましくない寄生反応が起きるのを防止できるようなものであってもよい。金属燃料及び燃料電極に関する詳細は、米国特許出願第12/385,217号、第12/385,489号、第12/776,962号、第61/193,540号、第61/329,278号、第61/243,970号に見ることができる。これらの内容は全体として本明細書に組み込まれる。
【0049】
空気電極は、対電極である。放電時、空気電極の酸素は減少し、電子を消費する。酸素還元にはいくつか可能なメカニズムがある。酸素還元反応は、例えば、後に説明する3つのメカニズムのうち1つを通じて起こる。しかしながら、選択される化学系(イオン液体、電極材料)によっては、その他のメカニズムでも起こりうる。
【0050】
[酸素還元反応]
酸素還元反応は、水溶液系のpHに大きく依存する。しかしながら、高いpHにおいて、触媒が存在する場合、触媒の性質は、低いpHのときに比べると重要ではない。
【0051】
水溶液系での酸素還元反応(ORR)は、系の酸性度によって異なる形態をとる。水溶酸系において、反応は、例えば以下のように特徴付けられる。
Ο
2・-(ads)+H
+→HO
2・(ads)
HO
2・(ads)+H
++e
-→H
20
2,
H
20
2+2H
++2e
-→2H
20
正味の反応は以下のようになる。
0
2+4H
++4e
-→2H
20;E°=1.229V.
酸系において、いくつかのメカニズムが提案されている。「Durand et. al, Electrochimica Acta (2003), Sawyer et al. 1981」、「Sawyer et al. 1981」、「Analytical 化学的性質, vol. 54, pp. 1720 (1982)」、「Honda, 1986」を参照。一部の実施形態にお
いて、触媒は、有用な率を得るために提供される。触媒は、例えば、銀及び/又はプラチナであってもよい。一実施形態において、超酸化物のpkaは、水溶液系で約4.7である
が、共役塩基は、pkaが24であるかのようにふるまい、反応を十分に推進することがで
きる。したがって、水のようなごく弱い酸性しか存在しなくても、反応が進行することができる。
【0052】
他方、水溶塩基(アルカリ)系(aqueous basic (alkaline) system)において、反応
は以下のように特徴つけられる。
0
2・-(ads)+H
20→HO
2・(ads)+OH
-
HO
2・(ads)+e
-→H0
2-
HO
2-+H
20+2e
-→30H
-
正味の反応は以下のようになる。
0
2+2H
20+4e
-→40H
-;E°=0.401V.
アルカリ系において、いくつかのメカニズムが提案されている。「Ross, P. N., Handbook of Fuel Cells - Fundamentals, Technology and
Appliカチオンs, ch 31 (2003)」、「Ross,
P. N., Handbook of Fuel Cells - Fundamentals, Technology and Appliカチオンs, ch 31 (2003)」を参照。
【0053】
ドライプロトン性系でのORRは以下のメカニズムを有する。
0
2→0
2(ads)
0
2(ads)+e
-→0
2・-(ads)
0
・-(ads)+BH
+→HO
2・(ads)+B
HO
2・(ads)+e
-→H0
2-
HO
2-(ads)+BH
+→H
20
2+B
さらに、ペルオキシデート(peroxidate)のイオン液体によるプロトン化は、上記5番目の反応式に見られるように、BH
+のpka(過酸化pka=11.63)によって、過酸化物
を生成する。原則として、反応は、以下のように、水溶液系と同様に進行する。
H
20
2+e-→OH
-+OH
・(ads)
OH
・(ads)+e-→OH
-
20H
-+2BH
+→2H
20+2B
プロトン化は、BH
+のpkaに依存する。
【0054】
限定的でない第1の可能なメカニズムは、4電子酸素還元反応である。この酸素還元反応での生成物は、完全に還元された酸素ジアニオンである。4電子還元反応は以下の式で表される。
0
2+4e
-→20
2- (2)
系の特定の化学的性質によって、この反応は、溶解性の生成物を生成し、又は、局所的に、非溶解性の金属酸化物を生成する。式(3)は、4電子還元反応の例を表す。
4AlCl+30
2+12e
-→2Al
20
3+16C1
- (3)
この反応において、遊離したアニオンは連続するアノード反応を仲介する働きを行うことができる。その他の酸素還元メカニズムに比べて、4電子還元反応は増加したエネルギー密度と、酸素分子あたりに最大数の電子を抽出することに利点を有する。しかしながら、このメカニズムは、再充電時の酸素発生反応において酸素分離のために大きな過電圧を有する傾向がある。
【0055】
限定的でない第2の可能なメカニズムは、2電子過酸化物法(peroxide route)である。このメカニズムの例は、以下の式によって表される。
Zn
2++0
2+2e
-→Zn0
2 (4)
このメカニズムは、過酸化物反応の過電圧が比較的低いという利点を有する。また、この反応は、第1のメカニズムに比べて、再充電性がより改良される傾向もある。しかしながら、2電子過酸化物メカニズムは、4電子のプロセスに比べて、酸素電極でのエネルギ
ー密度が低い。
【0056】
限定的でない第3の可能なメカニズムは、4電子と2電子が混合した酸素還元反応である。このメカニズムは、異原子価カチオン(aliovalent cations)の還元力を利用(capitalize)する。このメカニズムの例は、以下の式で表される。
Mn
2++0
2+2e
-→Mn0
2 (5)
このメカニズムが他と異なる点(nuance)は、生成物が、異原子価金属の還元力によって生成され、完全に還元された0
2-種(0
2- species)を含むことである。この例で、Mn
2+は、右のMn
4+の状態に落ち着く。このメカニズムは、異原子価カチオンの還元力のおかげで、350mV以下程度と測定されるように、過電圧が低いという利点を有する。さらに、異原子価金属は、より効果的な電池を作製するために用いることができる。しかし、2電子と4電子が混合したメカニズムは、4電子のプロセスに比べて、酸素電極でのエネルギー密度が低い。
【0057】
図1は、一実施形態の酸素還元における金属イオン−イオン液体溶液の動力学及び熱力学のおける改良を示す空気電極半電池のサイクリックボルタモグラムである。この実施形態において、電解液は、6.1モル%のMn
2+を添加した酸素飽和(saturated)1−メチ
ル−3−オクチルイミダゾリウムクロライド(1-methyl-3-octyl-imidazolium chloride
)を有する。比較例の電解液は、金属イオンを添加しない酸素飽和1−メチル−3−オクチルイミダゾリウムクロライドである。
【0058】
図1の上部には、Mn(II)イオンを添加したAr飽和(脱気)1−メチル−3−オクチルイミダゾリウムクロライドイオン液体及びMn(II)イオンを添加しないAr飽和(脱気)1−メチル−3−オクチルイミダゾリウムクロライドイオン液体の基準サイクリックボルタモグラムが示されている。
図1の下部には、6.1モル%のMn
2+の添加が、酸素還元(酸素飽和1−メチル−3−オクチルイミダゾリウムクロライド)のターンオン電位(還元が開始される電位)を約260mV変動させることが示されている。すなわち、酸素還元反応の半電池電位は、酸素飽和1−メチル−3−オクチルイミダゾリウムクロライドイオン性電解液に6.1モル%のMn
2+が添加された基準電極に比べて、より正に変動する。Mn(II)に基づく電池において、この改良は、実際のエネルギーの約14%の増加に相当する。
【0059】
図1において、ボルタモグラムにおける変動の大きさは、半波電位A、Bにおける変動によって示される。半波電位は、ターンオン電位よりも簡単に示すことができる。半波電位(E
1/2)は、ポーラログラフ波(polarographic wave)電流が拡散電流(i
d)の半分に
等しくなるような電位である。すなわち、この電位で、拡散制御ポーラログラフ波の電流が全波の高さに到達する。可逆酸化還元系では、半波電位は濃度から独立している。
【0060】
図1は、また、活性型(activation regime)における還元動力学の促進を示す。イオ
ン液体電解液を含むMnの半波電位(約1.5V)において、電解液を含むMnの電流密度は
、比較例の電荷液の同じ電位(約1.5V)における電流密度の2.9倍である。さらに
、
図1の挿入図は、酸素飽和1−メチル−3−オクチルイミダゾリウムクロライドと6.1モル%のMn
2+の系の金属酸化物酸化反応が可逆であることを示す。
【0061】
一部の実施形態において、化合物を含む添加金属の金属は、金属(燃料)電極の金属と同じ金属である。別の実施形態において、添加金属は金属(燃料)電極の金属と異なっている。1つの側面において、添加金属化合物の金属イオンの溶解度は、燃料電極の金属イオンの溶解度よりも大きい。この側面において、添加金属化合物の金属イオンは、燃料金属酸化物が選択的に沈殿していても、酸素還元を促す。さらに、その他の実施形態において、異なる金属イオンを生成する化合物を含む2以上の異なる金属が低温イオン液体に添
加される。この実施形態では、必須ではないが、金属の1つは、金属(燃料)電極金属と同じ金属である。
【0062】
電池が動作を開始したとき、燃料電極は溶解し、金属イオンを媒体/溶液に添加する。化合物を含む金属を添加することによる熱力学及び/又は動力学における利点はすべてのサイクルで持続される。金属カチオンは、添加金属とともに、アノードからカチオンの錯体生成を促すアニオン(例えば、CI
-)を運ぶので、化合物を含む添加金属の初期量は、
「支持塩(supporting
salt)」として見ることができる。また、金属イオンが飽和し、金属酸化物(過酸化物、水酸化物、等)の沈殿が始まると、支持イオンにより、溶液中の金属中心イオンの一定の活動を維持することができる。
【0063】
図2は、追加の実施形態のサイクリックボルタモグラムを示す。具体的には、
図2は、(a)0.01モルの酢酸マンガン(II)+トリエチルメタンスルホン、(b)1.0モルのZnCl
2+ジエチルメチルアンモニウム・トリフラート、(c)5.0モルのAlCl
3+1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム・ビス(トリフルオロメタン)スルホンアミド,(d)GaCl
3+1−メチル−3−オクチルイミダゾリウムクロリド(テトラクロロガリウム酸
)(1:1)の金属酸化還元を示す。
図2に見られるように、これらのシステムのすべては、高度の可逆性を示す。
【0064】
その他の非限定的な実施形態において、イオン液体は、添加剤として溶解した0.5モルの亜鉛トリフラートを有するトリエチルアミニウム・マタンスルホナート(triethylammonium methanesulfonate (TEAMS))であり、亜鉛が金属燃料として使用される。このイ
オン液体における亜鉛と酸素の半電池反応のポテンショスタット法による研究では、約1.45Vの電池電位,及び,600Wh/kgを超える推定電池エネルギー密度が示された。0.5モル亜鉛トリフラートを有し50ppmの水が追加された同じTEAMSイオン液体のポテンショスタット法による研究では、約1.5Vの電池電位が示された。他の非限定的な実施
形態において、イオン液体は1.0モルの臭化亜鉛(ZnBr
2)が添加剤として溶解したTEAMSであり、亜鉛が金属燃料として用いられる。このイオン液体における亜鉛と酸素との半電池反応のポテンショスタット法による研究では、約1.3Vの電池電位、500Wh/kgを超える推定電池エネルギー密度、亜鉛・酸素反応の比較的高い可逆性が示された。これらの特徴は、二次(充電式)電池にとって有利である。
【0065】
他の例示的な実施形態において、イオン液体は、0.5モルの塩化マンガン(II)(MnCl
2)及び50ppmの水を添加剤として有する塩化メチルオクチルイミダゾリウムであってもよく、金属燃料としてマンガンを用いることができる。このイオン液体におけるマンガンと酸素との半電池反応のポテンショスタット法による研究では、約1.5Vの電池電位
、及び、約800Wh/kgを超える電池エネルギー密度が示された。さらに他の非限定的な
実施形態においては、イオン液体は、5.0モルのAlCl
3を添加剤として有する1−ブチ
ル−3−メチルイミダゾリウム・ビス(トリフルオロメタン)スルホンアミドであり、金属燃料としてアルミニウムが用いられる。このイオン液体中のアルミニウムの半電池反応のポテンショスタット法による研究では、約2.5〜2.8Vの電池電位、約2500〜
3000Wh/kgを超える推定電池エネルギー密度、及びアルミニウム反応の比較的高い可
逆性が示された。
【0066】
例示的な他の実施形態において、イオン液体は,添加剤として溶解した0.5モルのZnCl
2を有するジエチルメチルアンモニウム・トリフラート(DEMATf)であり、金属燃料と
して亜鉛が用いられる。この実施形態は、約1.3Vの推定電池電位を有する。さらに他
の非限定的な実施形態として、イオン液体は、0.5モルのZn(BF
4)
2(テトラフルオロホウ酸亜鉛)を有するDEMATfであってもよい。この実施形態は、約1.45Vの推定電池電
位を有する。
【0067】
図3は、本明細書に記載される一部の実施形態に従い、低温IL電気化学電池(「electrochemical cell」)を示す。電気化学電池には、通常、記号10を付す。後述のとおり、電気化学電池10は、第1電極12及び第2電極14を有する複数の電極を含む。その他の実施形態において、電気化学電池10の第1電極又は第2電極は、単一の電極以外の構成とすることもできる。したがって、
図1で示されたように、第1電極12及び第2電極14に単一の電極を使用することは、本発明を限定しない。
図1で示された非限定的な実施形態において、第1電極12は、カソードであり、より具体的には、空気カソードであり、以下、空気電極12として参照される。第2電極14は、アノードであり、以下、金属電極14として参照される。一実施形態において、以下に説明するように、電気化学電池10は、空気電極12での酸化剤の還元半反応と平行して、実質的には同時に、金属電極14での燃料の酸化半反応によって、電気を発生することができる。ここで示された実施形態は、本発明を限定するものではない。
【0068】
図3に示され、以下に詳述するように、空気電極12及び金属電極14は、その間に間隙16を形成するように離れている。低温イオン液体は、通常、記号18で示される。低温イオン液体18は、空気電極12及び金属電極14と同時に接するように間隙16に沿って流れる。一実施形態において、電気化学電池10はどの方向とすることもでき、低温イオン液体は説明された方向以外の方向にも流れることだできると理解されるべきである。したがって、
図1はいずれの方向でも参照でき、特定の方向に対する実施形態を限定するものではない。その他の実施形態において、低温イオン液体18は流れの全くなく、静的なものであってもよい。低温イオン液体18は、空気電極/低温イオン液体インターフェース24で、空気電極12と接触する。低温イオン液体18は、金属電極/低温イオン液体インターフェース26で、金属電極14と接触する。別の実施形態において、低温イオン液体は流れない。すなわち、電池には流れを強制するようなメカニズムは含まれていない。
【0069】
上述のとおり、空気電極12で還元半反応が起こる。一実施形態において、酸化剤20は、空気電極12での還元半反応を通じて、還元される。非限定的な説明として、金属電極14からの電子は、外部回路22(負荷等)に流れ、空気電極12に戻り、酸化剤20の還元を促す。酸化剤20は、空気電極12上の酸化剤還元反応部位で還元される。一実施形態において、酸化剤還元半反応を容易にするために、酸化剤還元反応部位21で、触媒が用いられる。空気電極12は、後述するように、酸化マンガン、ニッケル、熱分解コバルト、活性炭素、銀、プラチナ、その他の触媒剤、又は、酸化剤の還元を触媒する高酸素還元活性材料の混合物のような触媒剤を含む。一実施形態において、空気電極12は、多孔質である。この多孔質体は、広い表面積(high surface area)を有し、触媒剤を含
んでいてもよい。
【0070】
一実施形態において、空気電極12は、不活性又は「呼吸(breathing)」空気電極1
2であってもよい。空気電極12は、例えば窓を通じて又は酸化剤源に曝されることにより、受動的に露出される。また、空気電極12は、電気化学電池10の反応で消費するために酸化剤20を吸収する。すなわち、酸化剤20は、酸化剤源から空気電極12に浸透する。したがって、酸化剤20は、積極的に汲み出される必要や、例えば、注入口を通じて空気電極12に向けられる必要はない。空気電極12のあらゆる部分で酸化剤20は吸収され、浸透又は接触する。空気電極12は、一般的に「インプット(input)」と称さ
れる。インプットの用語は、空気電極12の酸化剤還元反応部位21での酸化剤還元半反応のために酸化剤を空気電極に運ぶすべての方法を広く網羅する。
【0071】
非限定的な説明によると、空気電極12は、外気に露出された外表面を有するガス透過
電極であって、酸化剤20が空気電極12に浸透する酸素を含むようになっていてもよい。同様に、空気電極12は、外表面に隔膜を有していてもよい。空気電極12の外表面を通じて酸化剤20を浸透させ、空気電極12の外表面を通じて低温イオン液体が流入するのを防ぐため、隔膜は、ガス透過性を有し、液体透過性を有さない。一実施形態において、空気電極12は、低温イオン液体18を透過させ、多孔質体に接触させるため、内側が液体透過性層で覆われていてもよい。
【0072】
低温イオン液体18と空気電極12との関係は、電気化学電池10全体のエネルギー密度に影響する。そのため、空気電極12からみた低温イオン液体18の蒸気圧及び表面張力特性は、注意深く選択される。例えば、一実施形態において、空気電極12は、低温イオン液体18のウィッキング(wicking)を防止するために、低温イオン液体18を寄せ
付けない。すなわち、低温イオン液体18が、毛細管のような態様で空気電極12を通じて流入するのを防ぐ。その他の実施形態において、空気電極12は、空気電極12で所望の電気化学反応を可能にすることを目的として、低温イオン液体18をより広い表面部位に曝し、吸収するため、多孔性を有する。空気電極12は、反応効率をあげるために、酸化剤還元反応部位21での触媒の装飾(decoration)を支援できる。一実施形態において、触媒は、空気電極12の酸化剤還元反応部位21での酸化剤還元反応の触媒の活性を促進できる金属イオンによって装飾(decorate)されてもよい。空気電極12は、反応物を提供するとともに、空気電極12から酸化剤還元反応の生成物を取り除くため、高いイオン伝導率を有していてもよい。一実施形態において、空気電極12は、外部負荷22から酸化剤還元反応部位21まで電子を運ぶために、高い電気伝導率特性を有していてもよい。空気電極12及び低温イオン液体18の特性は、さらに規定されてもよい。
【0073】
一実施形態において、金属−酸化物副産物28が、金属電極14で生成される。そこで、水溶電解液の還元酸化剤イオンは、過酸化物及び/又は水酸化物を配位、すなわち、水を生成するための電子を水分子に提供する。それにより、蒸気圧と腐食による問題が増加する。この非限定的な実施形態において、低温イオン液体18は、空気電極12での酸化剤還元反応と、還元酸化物イオンの金属電極14への伝導を促す。この結果を支援して、低温イオン液体18は、還元酸化剤イオンと相互作用を行う可溶性種を含むことができる。ここで、低温イオン液体18は、典型的にはプロトン性である。低温イオン液体18は、また、金属電極に移動する還元酸化剤イオンを支援する。非限定的な説明により、還元酸化剤イオンの移動は、対流による移送、又は伝導による移送又は拡散による移送を指す。低温イオン液体18は、また、金属電極14に残存する酸化金属−燃料イオンを支援することもできる。それにより、低温イオン液体18は、還元酸化剤イオンと酸化金属−燃料イオンとの反応を促し、金属−酸化物副産物28を生成する。一実施形態において、金属−酸化物副産物28は、金属電極14に収容される。金属−酸化物副産物28が金属電極14に収容される一実施形態は、一次電池(例えば、再充電不能電池)として使用されるのに最も適している。それは、酸素が金属電極14に収容され、還元酸素種の酸化のための酸素発生電極に対して局所的に利用することができないからである。
【0074】
その他の実施形態において、金属−酸化物副産物28は、空気電極12で生成される。この非限定的な実施形態において、空気電極12は、酸化剤還元反応部位21での酸化剤還元反応を触媒する。一実施形態において、(典型的には非プロトン性の)低温イオン液体18は、純金属又は金属合金と、化学的に混合可能である。また、高濃度の酸化金属−燃料イオンが低温イオン液体18に存在することができる。その他の実施形態において、金属イオンは電解液に添加される。金属イオンは、空気電極12で金属−酸化物副産物28を生成する。上述のとおり、添加された金属イオンは、金属電極と同じ金属であってもよく、同じ金属でなくてもよい。その他の実施形態において、金属酸化物副産物28は局所的に空気電極12に収容される。金属酸化物副産物28は、放電時、空気電極12に局所的に生成され、収容される。そのため、(局所的に収容された金属酸化物に存在する)
酸素が迅速に供給され、再充電時、空気電極において局所的に利用可能である。この態様において、電池の可逆性が改良される。それに対して、酸化物がイオン液体電解液に収容される場合、酸化物は典型的に電解液全体に分散し、空気電極で利用可能な酸化物の量は、電解液/空気インターフェース及び電解液内でインターフェースに対して酸化物が拡散する割合に制限される。
【0075】
空気電極12が、十分な大きさの細孔を有し、酸化物を空気電極12に収容できるので、空気電極で金属酸化物を局所的に収容することができる。すなわち、細孔の大きさは酸化物の大きさに依存する。このような細孔のネットワークは、空気電極の収容能力を増加させる。
【0076】
その他の実施形態において、低温イオン液体18は、金属電極14で、これらの酸化金属−燃料イオンが溶媒和するのを支援する。すなわち、低温イオン液体のイオンは、金属−燃料イオンを囲み、それにより、低温イオン液体18は、溶媒和酸化金属−燃料イオンが空気電極12に移動するのに伴って、金属−燃料イオンの生成の維持を支援する。典型的には、低温イオン液体18は、非プロトン性とされる。非限定的な説明により、溶媒和酸化金属−燃料イオンの移動は、溶媒和酸化金属−燃料イオンの対流による移送、又は伝導による移送又は拡散による移送を指す。空気電極12で、溶媒和金属−燃料イオンは、還元酸化剤イオンと反応し、この反応により、金属−酸化物副産物となる。一実施形態において、金属−酸化物副産物28は空気電極12で収容される。
【0077】
一実施形態において、金属−酸化物副産物28は、空気電極12での酸化剤還元反応を触媒する。一実施形態において、電気化学電池10は、再生式の電気化学電池と酸素再生システムを有する。例えば、2009年8月28日に出願された米国特許出願第12/549,617号において、そのような装置の例が示される。これらの内容は全体として参照により本明細書に組み込まれる。
【0078】
一実施形態において、酸化剤源は、外気であり、酸化剤20は酸素である。一実施形態において、酸化剤20としての酸素は、空気電極12で還元され、還元酸素イオンを生成する。一実施形態において、酸素は、再生式の電気化学電池で使われる進展された(evolved)酸素再生システムから供給される。有益な実施形態となる電気化学電池のその他の
例は、例えば、2009年8月28日に出願された米国特許出願第12/549,617号において示される。これらの内容は全体として参照により本明細書に組み込まれる。
【0079】
ここで説明する電解液及び/又はイオン伝導性媒体は、その他の電池の構成においても使用することができる。例えば、別の電池の構成は、同時係属する2009年12月7日に出願された米国特許出願第61/267,240号及び2010年5月10日に出願された米国特許出願第12/776,962号に示される小さい巻線型電池を備える。これらの内容は全体として参照により本明細書に組み込まれる。すべての層(電極及び電解液層又は層)は、(柔軟性を有する固体又は半固体、又は本質的に従順な(conformable)
で柔軟と考えられる液体として)柔軟性を有し、電池が、酸素を吸収するために露出された空気電極のその他の表面で、巻かれ、曲げられ、その他の非直線的な配置に構成されるのを可能にする。空気の浸透を防ぐための柔軟なセパレータが、燃料と空気電極の外表面の間に配置され、それらの空間を維持して空気が空気電極の外表面に浸透するのを可能にする。セパレータは、格子状で、波状の構造などを含むような構成であってもよい。
【0080】
図4は、一実施形態による方法を示す。この実施形態は、金属イオンをイオン液体と混合し、金属イオン−陰イオン錯体を有する溶液を生成する工程(102)、溶液を酸素に露出する工程(104)、酸素を電気化学的に還元する工程(106)を含む。金属燃料電極で金属−酸化物副産物を生成する工程(108)、金属電極で金属−酸化物副産物を
収容する工程(110)、空気電極で金属−酸化物副産物を生成する工程(112)、又は空気電極で金属−酸化物副産物を収容する工程(114)のうち、単数又は複数の工程を任意に含んでいてもよい。
【0081】
したがって、低温又は室温イオン液体の添加剤は、様々な方法で、酸素還元反応を促進するカチオン(陽イオン)を提供できることがわかる。上述のとおり、カチオンは、イオン液体において単数又は複数の陰イオンに配位し、金属イオン−陰イオン錯体を生成する金属イオンであってもよい。金属イオン−陰イオン錯体は、酸素還元の熱力学及び/又は動力学を改良し、空気電極で金属燃料の酸化物の生成及び収容を促す。酸素還元反応が起きる条件下で、カソード付近及びカソード内の金属イオンが高濃度であることによって、還元酸素種の錯化及び後続するそれらの種の沈殿が起こる。それにより、空気電極での酸化物の生成及び収容が促される。添加剤は、同じ目的で、陽イオン(H
+)を提供する水であってもよい。水は事前に添加されてもよく、自然吸収特性により空気電極を通して水蒸気として吸収されてもよい。したがって、酸素還元の熱力学及び/又は動力学を添加剤が改良する実施形態において、添加剤は酸素還元促進添加剤を指すものであってもよい。酸素還元促進添加剤は、添加剤、水、又は、同じ目的で、イオン液体の陰イオンに配位するためのカチオンを提供するその他の添加剤を含む金属であってもよい。同様に、放電時、添加剤が、空気電極での金属燃料の酸化物の生成及び収容を促すような実施形態において、添加剤は、局所酸化物生成促進添加剤を指すものであってもよい。局所酸化物生成促進添加剤は、添加剤、水、又は、同じ目的で、イオン液体の陰イオンに配位するための陽カチオンを提供するその他の添加剤を含む金属であってもよい。酸素還元促進添加剤及び局所酸化物生成促進添加剤の機能は、相互に排他的なものではなく、同じ添加剤が両者の機能を提供するものであってもよい。したがって、局所酸化物生成促進添加剤は、酸素還元促進添加剤であってもよい。
【0082】
イオン液体で水分が必要かどうかは、イオン液体が燃料電極に接触する場合に使用される金属燃料の反応性によって決定される。例えば、金属の反応性が高い場合、幾つかの実施形態において、水分は、自己放電を起こすことがあり(すなわち、燃料電極での金属酸化及び水素発生である)、したがって、水分を避け又は最小化し、イオン液体が疎水性を有するようにすることが好ましい。そのような反応性が高い金属は、周期表の1〜6、13、14族である。周期表の7〜12族のような反応性が低い金属については、水分による利点は、幾つかの実施形態における不利な点を上回ることもあるため、水分を使うこともできる。水分による利点は、空気電極によって水蒸気を吸収することで供給される。これに対して、金属添加剤は、長期間経つと、沈殿するため、補充が必要である。
【0083】
様々な実施形態において、金属及び空気電極の間(分離されたものを用いるのであれば、帯電電極との間)でイオン伝導性媒体は、イオン液体を各電極に接触させる代わりに、複数の層を有する。例えば、膜のようなインターフェースで分離された2つのイオン液体、又はイオン液体と半固体の電解液を用いてもよい。
【0084】
[イオン液体の添加剤]
上述のように、イオン伝導性媒体は、少なくとも1つの酸素還元促進化合物を備えることができる。一実施形態において、その量が、通常、イオン伝導性媒体のイオン液体の量よりも小さいので、その化合物は「添加剤」ととらえられる。例えば、添加剤のイオン液体に対する濃度比率は、少なくとも約1:1000、例えば、少なくとも約1:500、約1:100、約1:10、約1:5、約1:1である。
【0085】
幾つかの実施形態において、そのような化合物は、局所酸化物生成促進化合物を用いないイオン液体に対して、放電時、空気電極での金属燃料の酸化物の生成及び収容を増加させることができる(局所)酸化物生成促進化合物であってもよい。一実施形態において、
局所酸化物生成促進化合物/添加剤は、イオン伝導性媒体に添加され、添加剤は、局所酸化物生成促進陽イオンを生成する媒体に溶解する。酸素還元促進化合物と同様に、局所酸化物生成促進化合物の陽イオンは、局所酸化物生成促進陽−陰イオン錯体を生成する単数又は複数の陰イオンに配位する。本明細書に記載された酸素還元促進化合物は、前述の化合物のいずれかであってもよい。
【0086】
酸素還元促進化合物を添加することにより得られる大きな利点の1つは、酸素還元の熱力学、動力学、又はその両方を改良できることである。一実施形態において、化合物は、少なくとも1つの陰イオンに配位する陽イオンに解離し、陽−陰イオン錯体を生成する。この錯体は、ターンオン電位、半波電位、及び/又は半波電位の電流密度の大きく影響することができる。添加剤よって、反応の可逆性も影響を受けることがある。
【0087】
例えば、一実施形態において、酸素還元促進陽−陰イオン錯体は、酸素還元促進化合物を添加しない前記イオン液体に対して、ターンオン電位を200mV以上変動させる。その変動は、約100mV、約150mV、約240mV、約300mV、約350mV、約400mV、約500mV以上、又はそれ以上であってもよい。
【0088】
一実施形態において、酸素還元促進陽−陰イオン錯体は、酸素還元促進化合物を有さないイオン液体に対して、半波電位での電流密度を増加させることができる。電流密度は、添加剤添加前と実質的に同じ値に維持することもできる。
【0089】
その他の実施形態において、酸素還元促進陽−陰イオン錯体は、酸素還元促進化合物が添加されないイオン液体に対して、酸素還元の半波電位を約1V以上変動させることがで
きる。その変動は、約0.1V、約0.5V、約1V、約1.5V、約2V、約2.5V以上、又はそれ以上であってもよい。
【0090】
添加剤によっては、添加剤のプロトンが、プロトン性イオン液体を用いないイオン伝導性媒体の酸素還元の熱力学、動力学、又はその両方を改良することができる。一実施形態において、プロトンが存在することにより、放電時、プロトン性イオン液体を用いないイオン伝導性媒体に比べて、空気電極での金属燃料の酸化物生成及び収容を増加することができる。
【0091】
上述の電気化学電池のイオン伝導性媒体は、1以上のイオン液体を有する。一実施形態において、イオン伝導性媒体は、イオンの1対ごとに少なくとも1つの利用可能なプロトンを備える少なくとも1つのプロトン性液体及び少なくとも1つの非プロトン性イオン液体を有することができる。例えば、媒体は、1、2、3、4又はそれ以上の非プロトン性イオン液体を、単独で又は1、2、3、4、又はそれ以上のプロトン性イオン液体と共に有することができる。プロトン性イオン液体は、イオン対毎に少なくとも1つの利用可能なプロトンを有することができる。例えば、少なくとも1つのプロトン性イオン液体が非プロトン性イオン液体に添加された場合、プロトン性イオン液体の量は非プロトン性のものより小さいので、プロトン性イオン液体は、上述のように、添加剤とみることができる。
【0092】
2つ(又はそれ以上の)イオン液体が混合され、上述の電気化学電池の1つとなり得るイオン伝導性媒体を生成することができる。特に、媒体は、酸素ガスのようなガスに露出され、酸素の電気化学還元が始まるのを可能にする。酸素還元促進化合物は、同様に、少なくとも1つのイオン液体に混合され、イオン伝導性溶液/媒体を生成することもできる。
【0093】
プロトン性及び非プロトン性イオン液体のイオン伝導性媒体内の量は、媒体の化学的性
質によって変更することができる。例えば、プロトン性イオン液体の非プロトン性イオン液体に対する濃度の割合は、少なくとも約1:1000であり、例えば、少なくとも約1:500、1:100、1:10、1:5、1:1である。また、プロトン性イオン液体の量は、非プロトン性イオン液体より大きくてもよい。その場合、例えば、プロトン性イオン液体の非プロトン性イオン液体に対する割合は、少なくとも1:0.5であり、例えば、少なくとも1:0.1、1:0.05、1:0.01である。
【0094】
上述のように、プロトン性イオン液体は、少なくとも1つの可逆性プロトンを有するカチオンを少なくとも1つ有することができる。プロトン源(添加剤)のプロトンのpkaは
、プロトン源に依存する。「pka」の語は、当業者によって、酸(の)解離定数を対数で
表したもの(logarithmic measure)を示すものと認識される。強酸は、例えば、約−2
未満のpka値を有することができる。一実施形態において、プロトン性イオン液体は、1
6以下のpkaである可逆性プロトンを少なくとも1つ有するカチオンを少なくとも1つ有
する。このpkaは、例えば、14以下、12以下、10以下、8以下、6以下、4以下、
2以下である。pkaは、負数であってもよい。例えば、pkaは、−2以下であり、−4以下、−6以下、−8以下、−10以下、−12以下のような値である。
【0095】
本明細書の説明は、反応性が高い金属の電池化学的性質を活性化(drive)させるルイ
ス酸系(Lewis acid system)に容易に適用することができる。本明細書の実施形態も、
また、ルイス酸系に適用することができる。
【0096】
[非限定例]
添加剤の酸素還元反応への効果を試験するために、一連のプロトン性添加剤がイオン伝導性媒体に添加された。非プロトン性イオン液体 BdMelm:Tfが、添加剤のホストとして
用いられた。試験装置の構成の写真が、
図5(a)に示され、
図5(b)に測定管/測定室の拡大概念図が示された。この特定のイオン液体は、電気化学空気、及びイオンの水安定性よって選択され、BMlmでの超酸化物のプロトン化は、非常に乾燥した系でも観察された。例えば、BDMelm
Tfは、約35℃の融点を有し、約1.4g/mLの密度を有し、コットレル(Cottrell)を通じて重量測定及び測定される約2.5mMの酸素安定性を有し、コットレルでGCの乾燥酸素還元反応で測定されるように約7.5x10−6cm2/sの拡散性を有している。例えば
、
図5(f)を参照。また、イオン液体は、溶媒平衡効果を最小化するTfの過度酸性の利点を有していた。この乾燥非プロトン性イオン液体系のさらなる利点は、
図5(c)のサイクリックボルタモグラムで示されるように、不変の電極、高い可逆性、高い反応性、を含み、
図5(d)の酸素分子あたりの電子の数と電位の関係に関するL−K解析の結果を含む。
図5(e)は、10mV/sで、窒素脱気での62ppmの水における、(空白として用
いられる、制御データ)BDMelm:Tfのリニアスイープボルタンメトリー及びその他の特性
に関する追加背景解析データを示す。
【0097】
プロトン性添加剤の範囲が適定され、それぞれの系での電気化学ORR分析が実質的に行われる。表1は、これらの添加剤に関する結果の概要を示す。表1に示されるように、一連の範囲のpka値は、約16から約−14である、これらは
図6にも示される。
【0098】
トリフルオロメタンスルホン酸(HTf)、ベンゾニトリル:HTf、アセトフェノン:HTf、
メタンスルホン酸、ヒドロニウムトリフレート、ピリダジニウムトリフレートを含む反応は4電子の移動を含むことが分かった。酢酸、ピリジニウムトリフレート、1,2−ジメチルイミダゾールトリフレート、n,n−ジメチル−n−メチルアンモニウムトリフレートを含む反応は、2電子の移動を含む。そして、水を含む反応は、1電子の系を含む。
【表1】
【0099】
図7(a)−(b)は50℃で、水をプラチナディスク((a)に対応)及びGCディスク((b)に対応)への添加剤とする実施形態のサイクリックボルタモグラフを示す。一連の水分含有量は、約850 mM(5BdMelm Tf毎に約1H
20)である最も高い濃度によって知ることができる。
図7(c)−(d)は、50℃で、プラチナディスク((c)に対応)及びGCディスク((d)に対応)の10mV/sでのLSVに関する追加データを示す。
図7(e)−(f)は、プラチナディスク((e)に対応)及びGCディスク((f)に対応)の酸素分子あたりの電子の数と電位の関係に関するL−K解析の結果を示す。水の濃度が大きかったとしても、超酸化物が優性であることが分かった。
【0100】
図8(a)−(c)は、HTfをプロトン性添加剤とする実施形態のサイクリックボルタ
モグラフを示す。酸素還元反応のための半波電位で1Vより大きな変動があることが分か
った。可逆性が無くなることも分かった。
図8(d)〜(e)は、L−K解析の結果を示す。HTfが100mMのとき、プラチナディスクに4電子反応が含まれ、GCに最初の反応
の2電子反応が含まれることが分かった。
【0101】
図9(a)−(b)は、HMeSをプロトン性添加剤とする実施形態のサイクリックボルタモグラフを示す。
図9(c)−(d)は、L−K解析の結果を示す。この結果は、
図8で示されるものに類似することが分かった。酸素還元反応のための半波電位で1Vより大き
な変動があった。可逆性が無くなることも分かった。
【0102】
図10(a)−(b)は、PryH
+をプロトン性添加剤とする実施形態のサイクリックボ
ルタモグラフを示す。
図10(c)−(d)は、L−K解析の結果を示す。L−K解析からは、プラチナ及びGCディスクの両方の4電子酸素還元反応で、弱酸が生成されることが分かった。
図11(a)−(b)は、TFEtOHをプロトン性添加剤とする実施形態のL−K解析の結果を示す。この図からは、2電子の移動を含む酸素還元反応のみが観察されることが分かった。
【0103】
図12は、プラチナ及びGCディスクについて、水でのプロトン性添加剤のpkaと酸素
還元反応発現の関係を観察することができる溶媒平衡効果を示す。
図11に示されるよう
に、プラチナは、一般的に、GCよりも高い酸素還元反応発現電圧を有する。また、酸素還元反応発現電圧は、pkaの増加とともに増加するが、pkaが0〜−5に達したとき、少なくともGCのものは横ばいになるように見える。
【0104】
図13(a)−(b)は、プラチナ及びGCのpkaの機能として、酸素還元反応のター
オン電位を示す。水素酸化還元電位による脱気及び酸素飽和イオン液体の間の推定RE移動には100mVの誤差があることが分かる。カソード及びアノード掃引の水素電位は、(E
1/2 + E
1/2)/2で定義される。酸素還元反応のターンオン電位は、100m/sでのターフェルプロットCV(Tafel plot CV)及びカソード掃引時の1600rpmから
求まる。
【0105】
この結果は、酸素還元反応が超酸化物(未希釈、水、及び低プロトン性添加物)から過酸化物(TFEtOH)に及び、さらなる酸性種を有する4電子の範囲の生成物で調整可能であったことを示す。プロトン性添加剤源及びpkaは、酸素還元反応の反応メカニズムに影響
することが分かった。この実験における添加剤としての水の量(〜1M)の増加は、酸素還元反応にほとんど影響を与えないことが分かった。これらの頻度の水素結合(イオン対ごとにわずか1/5)は、バルク水として作用するのを防ぐ。有機塩は、より低い濃度で影響があることが分かった。そして、−2.5より小さなpkaでは反応が観察できず、BdMelm Tfイオン液体における実質的な溶媒平衡効果が示唆されていた。
【0106】
本発明の前述の説明は、実例および説明の目的のために示されたものである。前述した説明は網羅的であることは意図されず、また開示された正確な形態に発明を限定することも意図されず、修正例および変形例は、前述した教示を考慮して可能であり、または本発明の実行から得られてもよい。図面及び説明は、本発明の原理およびその実用化について説明するために選択されたものである。本発明の範囲は、本願明細書に添付された特許請求の範囲とそれらの均等物によって定めることを意図されている。
【0107】
冠詞「a」及び「an」は、本明細書では、その冠詞の文法的な目的語が一つ又は一つ以上(即ち、少なくとも一つ)であることを指すのに用いられる。例として、「ポリマー樹脂(a polymer resin)」は、1つのポリマー樹脂又は1つ以上のポリマー樹脂を意味
する。本明細書で挙げられたいずれの範囲も、包括的ものである。本明細書全体を通じて使用される「実質的」及び「約」の語は、小さな変動を示し及び説明するために用いられる。例えば、それらによって、±5%以下、例えば、±2%以下、±1%以下、±0.5%以下、±0.2%以下、±0.1%以下、±0.05%以下を示すことができる。